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NEWS Japan 29号 - 日本TMA 日本ターンアラウンド・マネジメント協会
NEWS Japan No.29 秋号 2011. 11. 25 Message ●事業再生における購買適正化のありかた クライシス・マネジメント に注目 ……株式会社ベクトル 代表取締役社長 ト部 憲 2 立川 昭吾(たちかわ しょうご) ●2011 TMA Annual Convention に参加して 盛りだくさんの 4 泊 6 日でした 日本 TMA 理事 ㈱ TSK プランニング 代表取締役 ……後藤千恵子税理士事務所 税理士 後藤千恵子 7 10 月 25 日からサンディエゴで開催された TM A 年次総会 に 参 加した。 印 象 に 残 った セッション は“Turnaround Sponsored ●国内ビジネススクール ケースコンペティション 2011 Management vs. Crisis Management”であった。アメリ 10 増えると予測されている。このセッションでは、事業再生と いう分野をさらに細分化し、クライシス・マネジメントに焦点 ●TMAssist 活動報告 新しいステージに入った TMAssist 活動 をあてていた。日本では、とりあえず資金の流出を止めるな ……日比公認会計士事務所 公認会計士 日比将博 12 SPO N SO RS 日本 T M A スポンサー カも不況であり、ターンアラウンド・マネジメントのニーズが どの応急措置と考えられている部分を、アメリカではクライシ ス・マネジメントとして、新たな領域を築きつつあるように見 えた。 16 クライシス・マネジメントは、 「洪水を止める仕事」である。 たとえば、ターンアラウンド・マネジメントの期間を 2 年とす れば、クライシス・マネジメントは 14 週間でやる。短期的 問題の処理を行なう。分析前の処理であり、戦略よりも関 係者の対応・調整が重要になる。とりあえず企業を存続させ、 一時的に安定させる仕事である。また、クライシス・マネジャー は、幅広い経験が必要で、様々な業界を知っていなければな 2011 年 11 月 25 日発行 ● 第 29 号 ● 季刊 らず、よい人よりも性格的に強い人の方が向いているという 発行所 ことであった。 特定非営利活動法人 日本でも、金融円滑化法が終了すれば、クライシス・マネ 日本ターンアラウンド・マネジメント協会 〒 160-0022 東京都新宿区新宿 1-7-1 新宿 171 ビル 7F ジメントのニーズが一気に高まるだろう。そういう意味でも、 TEL: 03-5269-2303 FAX: 03-5269-1482 このセッションは大変興味深かった。具体的な手法や重要 E-mail: [email protected] な指摘もいろいろと出ていたので、今後、セミナーなど皆さ URL: http://www.tmajapan.org んとお会いする機会を通じてお伝えしたい。 事業再生における 購買適正化のありかた 株式会社ベクトル 代表取締役社長 ト部 憲 1.高まるコスト削減ニーズ 私達の会社は2003年に設立してから、コンサルティングを皮切りに以後一貫して「人事のトータル・ ソリューション」をキーワードに事業領域を拡大して参りましたが、この4月より「コストダウンを中心と した企業価値最大化ソリューション」を目的に新会社(ベクトル ・ バリュー・コンサルティング)を設立い たしました。その設立目的は、少子高齢化・事業の海外展開に伴う雇用調整や事業設備の縮小などが、今後 も続いていくことを予想し、人事関連コスト以外もカバーしながら、戦略策定のコンサルティングを行うこ とによって、顧客企業の事業価値の最大化と安定化とをより図っていくことにあります。 信用調査機関の調べでは、今年の国内企業の倒産件数は対前年で微増傾向にあり、倒産理由としては運転 資金不足によるものが顕著に伸びているとの結果となっています。一方で、減収下であっても計画的にコス トダウンに取り組み、利益率向上している企業も多く存在しています。 新会社も設立後半年で、すでに50社以上の企業から引き合いを頂いており、確かな手応えを感じており ます。新会社での主な事業内容は以下の通りですが、コンサルティング事業については、1年程度の期間で 弊社が購買活動全般についてエージェントとして活動し、コスト削減分の一部を成功報酬フィーとして頂く 新ビジネスを行っております。 ●業務コンサルティング事業 ・購買業務改善を支援による、最適コストでの調達支援 ・直接資材・間接資材コスト削減の実施 ・BCP / BCM 構築の支援、およびリスク/コストの最適化支援 ●経営戦略構築 ・BSC(バランス・スコア・カード)導入・構築支援と、実効性の高い経営計画の構築 ・経営分析ツール(V・MAP)による企業診断の実施 ●業務可視化コンサルティング ・業務の見える化などによる、業務効率改善支援 2 2011.11.25 2.企業におけるコスト削減の実情 私達がお会いした企業経営者、経営企画・購買部門担当者の殆どの方は、コスト削減の重要性を認識して いましたが、実際にコスト削減効果のためのアクションを起こせない方が多くおられました。その原因とし ては、主に前提となる現状分析が不十分で、コスト削減の方向性が定まらないことが挙げられます。 <コスト削減 現状分析面での問題点> ①企業全体で、どの品目にどの位コストが掛かっているのかが押さえられていない ②どの品目をコスト削減すべきか、優先順位付けがなされていない ③品目毎に、どのような仕様のものを購入しているのか、実態が押さえられていない ④品目毎に、削減目標をどのように設定すべきかがわからない ⑤そもそも上記①~④までの業務を行う人的な余裕がない また、仮に現状分析ができていたとしても、推進体制・方針・品質・進め方・スキル・マインドなどが問 題となり、結果的にコスト削減に失敗する事例も多々発生しています。 <コスト削減活動 失敗例> ①推進体制 最初だけトップの指示でスタートするが、やがてトップが無関心・不関与となり、既存の組織の枠組 みで仕事のやり方が踏襲され、一部門やコンサルタントへ丸投げの活動となってしまい、結果的に中だ るみから形骸化してしまった。 ②方針 トップが数年で替わり、一貫性の無い VE 提案要求などが展開され社内には、厭戦感があり、ビジネ スパートナーが「またか・・」と疲れている。 ③品質 ・生産能力や品質レベル等を無視した調達先選定をしてしまい、工場サイドが調達に苦労している。 やがで、工程を守るため在庫を多く積むようになり、デッドストックが発生しているが、見かけ上 のコストダウン達成額で全社的に満足している。 ・不適合が発生するたびに再発防止策を強化し、検査員増員等によるビジネス・パートナーへ過剰な 負担をかけコストアップばかりさせている。 ④進め方 ・コストダウンをビジネス・パートナーに要求するばかりで、明らかに分かっている社内のムダを調 整できない。 ・毎年定期的にコストダウンを要求されるのが慣例化しているため、コストダウン見積りを小出しさ れ、バイヤーが俺の手柄と自慢している。 ・開発設計/製造技術/生産技術が「これは特殊」「あれも特殊」と不可侵領域のオンパレードをつ くり小手先の「リップネゴ活動」に終始する ⑤スキル 2011.11.25 3 業界知識や情報、商品特性、調達品目の評価~価格査定能力を持っていないため、過剰品質になって も分からない。高いものを買っている。 ⑥マインド 「これはできない」「これはムリ」など、購買に関する聖域が多々ある。また「やったことがない」「失 敗したくない」など、後ろ向きなマインドが組織内に蔓延している。 3.コスト削減を成功させるためのKFS 前述のような問題点・失敗例を踏まえ、コスト削減を成功させるには、「現状の可視化」「目標設定」 「コ ストダウン手法の選択」 「サプライヤー対応」を効果的に行い、社内合意の下にコスト削減活動を円滑に進 めていく必要があります。 (1)現状の可視化 コストダウンの第一歩は、どの品目にどの位コストが掛かっているのか、全社レベルで正しく現状把 握し、その結果を関係者で共有することです。具体的には企業の過去一定期間(例.1年)での品目毎 の費用実績を可視化・共有化することで、自社購買の実態について正しく理解頂けるように努めていま す。 (2)目標設定 企業におけるコスト削減活動では、一律で削減目標率を設定することが多く行われていますが、デフ レ傾向下にあっては、本来は実際の市場価格とより連動させて、より適正価格で調達できるよう、可能 性を探るべきです。そのためには、購買方法やサプライヤーの見直しを含めて、大幅な見直しが必要に なります。 弊社では、独自データである品目別削減見込率に、品目別実績額を乗じた金額を削減見込額として設 定します。 また、削減品目の優先順位を決めるためには、上記削減見込み額と、削減の難易度(例.サプライヤー との交渉のみ=低、購買プロセス全般の見直し=高)の2象限で品目をプロットし、特に問題がなけれ ば削減額が大きくかつ削減難易度が低い品目から優先的に削減を進めます。 <削減対象の選択イメージ> 4 2011.11.25 (3)コストダウン手法の選択 具体的なコストダウンは「単価/価格引下げ」「現状見直し」「手法変更」「消費量削減」の4つの視 点に基づき実施します。 ①単価/価格引下 a)リバースオークション インターネット上で、複数(100~200社)の入札参加企業間で、競争入札を行います。 品質の担保は入札仕様書により行います。 b)共同購買 汎用品を他社と共同で購買することで、大量購入による単品価格の引き下げを図ります。 ②現状見直し c)契約見直し 現在の契約内容を見直し、使用頻度・使用量等から、最も利便性・費用に優れた契約形態を 選択します。 d)サプライヤー変更 既存のサプライヤーから、より高品質・低価格で安定供給できるサプライヤーへの変更を行 います。 ③手法変更 e)アウトソーシング 非コア業務のアウトソーシングにより、PDCAとコストダウンが回る仕組みを作ります。 f)業務改善 サプライヤー評価、購買プロセス整備、ITツール活用などのノウハウにより購買業務の改 善を図ります。 ④消費量削減 g)デマンドコントロール 電力などの使用量が一定量を超えないよう、システム的に監視・制御します。 (4)サプライヤー対応 リバースオークション、共同購買などの手法を選択する際に、サプライヤーが変更となった場合にロー コストで安定的に供給できる能力が担保できるかが、懸念されます。信用面・過去実績などの視点でサ プライヤー候補企業を評価し選定しておくことが必要になります。 4.労務費のコスト削減 コスト削減は、一般的には「間接資材系」「材料費・外注費」などのコストを優先して削減を図っていき ますが、事業再生を行う場合には「労務費」の削減も課題になります。具体的には、賃金水準をはじめとす る労働条件の見直し、雇用調整の実施、労務構成の変更などが施策として挙げられます。これらの施策は短 期間に集中して展開する必要があります。 2011.11.25 5 <人員対策の事例> 5.最後に 去る 10 月 5 日にスティーブ ・ ジョブス氏が死去しましたが、彼が初めて商品化に成功したパーソナル・ コンピューターの普及は、情報のデジタル化やハードウェアの汎用化など産業構造に大きな変革を与えまし た。その影響は日本企業が持っていた、生産技術の高さを前提とした付加価値創造モデルの解体に大きく作 用したものと考えられます。 そのような問題意識から、2000年代前半には国が主体となって、供給過多の状態を解消すべく、事業 再生ビジネスを立上げ、実際にいくつかの業界再編が行われました。以後も金融・素材・重工業・総合家電・ 流通などあらゆる業界で、過去には考えられなかった業界再編が進行しています。 いずれにせよ、国内企業は過去のしがらみを捨てて、企業の永続的な存続のために、真剣に知恵を絞る時 期に差し掛かっていると思われます。日々、TMのために闘っておられる皆様と、私たちのような組織人事・ コスト削減のプロフェッショナルとが協働し、事業再生の成功確率を高めていく機会が今後増えてくること を期待しております。 うら べ けん ト部 憲 プロフィール 株式会社ベクトル 代表取締役社長 1956年大阪府生まれ。大阪市立大学卒業後、株式会社ダイエーに入社。 本社人事部門畑を歩む。この間日経連一般職賃金制度部会委員、同社会保障 制度部会委員を歴任。2001 年人事本部副本部長就任後、2003 年同社を退社 し、組織・人事コンサルティングファーム・株式会社ベクトルを設立。2011 年 4 月には「コストダウンを中心とした企業価値最大化ソリューション」の ための新会社、ベクトル・バリュー・コンサルティングを設立、代表取締役 社長に就任、現在に至る。 6 2011.11.25 2011 TMA Annual Convention に参加して 盛りだくさんの 4 泊 6 日でした 後藤千恵子税理士事務所 税理士 日本 TMA 理事 後藤千恵子 今年のTMA年次総会は、10 月 25 日から 27 日 サンディエゴ三日目、朝 8 時 30 分、年次総会の にかけて、カルフォルニア州サンディエゴのヒル 開会です。今回の TMA 年次総会の総参加者は約 トン・サンディエゴ・ベイフロントに於いて開催 600 人。7 年前、私が初めて参加したニューヨーク されました。 での年次総会の総参加者は 1000 人以上でしたから、 現地へは片道 12 時間は掛かるので、4 泊 6 日の アメリカの事業再生業界も他の業界同様厳しい経 旅行となります。サンディエゴ到着翌日は、まず 営状況ということでしょうか。今回も、日本のメ TMA の受付を済ませ、オープニング・レセプショ ンバーのために同時通訳が準備されていました。 ンまでの時間を使ってサンデエゴの町を散策しま した。 基調講演は、ツイッターの共同創業者であるビ ズ・ストーン氏でした。ツイッターは、とても手 サンディエゴはカリフォルニア州西南端の町で、 軽に意思を伝達することのできるツールです。昨 メキシコまで車で 20 分というところに位置します。 今では、選挙や革命に影響を与えるほど世界中で 全米で人口が 7 番目、カリフォルニア州ではロサ 利用されています。 ンゼルスに次ぐ大都市です。落ち着いた街並み、 きれいな街というのが、私達の印象でした。 「技術だけで何かが起こるわけではない。ツール を使っている人達が改革をしているのだ。」「機会 ここには海軍や海兵隊の基地があり、日本人に を待つのではなく、機会は作るのだ。」「成功する は馴染のある空母ミッドウエーが博物館として一 ためには、失敗も経験しなければならない。 」「早 般に公開されています。私達も、艦内を日本語ガ ければ早いほど、大きなインパクトとなる。これは、 イドのテープを聞きながら見てまわりました。ま 会社に対しても個人に対しても同じ。」 た、CDMA 携帯のチップで有名なクアルコム本社 これらは、グーグルを辞めてツイッターの創業 が郊外の高台にあり、訪れてみてびっくりです。 に参加し、今年の6月にはツイッターを離れ、先 辺り一帯の建物にクアルコムの表示がされている にツイッターを辞めたウイリアムズ氏と共に新た のです。 な事業に進んだ彼らしい言葉でないでしょうか。 様々なテーマでセッション(分科会)が行なわれた 左から許斐理事長、立川理事、日本 TMA 設立総会の講演者 ハワード・ブラウンスタイン氏、稲村副理事長、後藤理事 2011.11.25 7 コンベンション会場での昼食 TMA エグゼクティブ・ダイレクター リンダさん(左から 3 人目)と サンディエゴの町を散策 ジャパン・セッション 講師の雪江悟氏(前列右)と 基調講演後の分科会は、 「チャプター 11(連邦破 産法 11 条)の中での競合的な計画:一時的、それ とも永遠か ?」に参加しました。 サンカル、リーマン、フレモント・ゼネラルの はないでしょうか。 午後二つ目の分科会は、「事業再生対危機管理」 に参加しました。いままで事業再生士の仕事と考 えられていたもののうち、初期段階での緊急性の 事例を基に、チャプター 11 を適用した場合におけ ある対応について危機管理(crisis management) る競合的な計画について、利害関係者間の調整を として分けて考えているようでした。 行いその承認に至るまでの経緯について発表され 夜は、ジャパンセッションでした。元ソニーの ました。それぞれの計画を簡単に比較できるよう 米国法人のマーケティングディレクターで、現在 な一覧表を作成し各債権者に提示したこと、また、 は永住権を持ち、アメリカで起業家として活躍さ 妥協できる内容で、かつ生産性のある計画を詳細 れている雪江悟さんがゲストでした。 に提案することで債権者を納得させたということ でした。 2001 年に友人と起業した話、知人に誘われて CEO として参画した会社の OTC BB 上場の話、今 ランチタイムの後は、表彰式です。大中小と会 関わっている数々の事業の話は、とても興味深い 社の規模を分けて、各規模で事業再生に貢献があっ ものでした。そして最近では、TMA についても関 た方が表彰されます。 心があったということでした。 午後の分科会では、まず「中小企業の事業再構 総会最終日は、1 時間の分科会が 2 回ありました。 築の仕方:落とし穴の回避及び好機の活用」に参 まず、「国境を越えた債権の極意:南米やその他諸 加しました。中小企業については、銀行交渉が最 国」と題して、南米諸国における相違点と類似点 重要だということです。また、創業者一族による について理解した上で、国境を越えての再生ビジ 家族経営による弊害を解消すること、個人と会社 ネスの課題と最新の動向が話し合われました。 の区別がいいかげんになっているところから整理 その後の分科会では、 「回復に元気のない4つの しなければならないというのは、日本でも同じで 注目すべき業種:ヘルスケア、メディア、不動産及 8 2011.11.25 び銀行部門」でした。これらの業種、日本でも今後 後は、サンディエゴで取れる大きな雲丹に舌鼓を 問題になってくると思われます。各産業に内在する 打ちました。 リスクと脅威を見極める必要があるようです。 27 日 11 時 45 分、盛りだくさんの TMA 年次総 TMA 年次総会の間は、いつも慌ただしくも不思 議と自分の仕事の見直しができます。帰国したこ れからは、書き出したことの実行へ、努力の毎日 会は終わりました。 さて、最終日の夜は、いつものとおり日本レス です。 トランで打ち上げでした。日本酒や焼酎で乾杯の スポンサーのブースも数が減少 許斐理事長と TMA 前会長パトリックさん 退役空母ミッドウェイ博物館でのレセプション(稗田会員) 左から許斐理事長、事務局 牧野、後藤理事、立川理事、日比会員 【 誤記についてのお詫び】 TMA NEWS Japan No.28(2011 年 7 月 25 日発行)に誤記がありました。訂正箇所は以下の通りですので、お詫 びして訂正させていただきます。 14 ページの「Turnaround Professional ● ATP 合格者数」の表のタイトル 〈誤〉 事業再生士補(ATP)資格試験合格者数 2011 年度(秋) 〈正〉 事業再生士補(ATP)資格試験合格者数 2010 年度(秋) 特定非営利活動法人日本ターンアラウンド・マネジメント協会 事務局 2011.11.25 9 Sponsored ●国内ビジネススクール ケースコンペティション 2011 2011 年 8 月 17 日、慶應義塾大学 藤原洋記念ホールで「企業再生案件に対する状況分析と戦略提言」 をテーマに『国内ビジネススクール ケースコンペティション 2011(JBCC2011)』の本選が開催されま した。 JBCC は、「学生の学生による学生のためのケースコンペティション」として、国内のビジネススクー ルの学生が独自に運営するものです。当協会でも事業再生分野に寄与する活動として協賛・協力いたし ました。 第 2 回となる 2011 年のコンペティションでは、オリジナルの課題ケースとして東北地方の中堅製造業 が出題され、15 校、68 チーム、256 名が被災企業の再生という難しいテーマに取り組みました。参加規模は、 昨年の 8 校、20 チーム、73 名の実績を大きく上回り、本選には予 選を通過した 9 チームが出場し、プレゼンテーションを行ないま した。 当協会からは、許斐理事長が本選の審査員として出席いたしま した。 慶應義塾大学 藤原洋記念ホール 優勝(グロービス経営大学院 芳村直洋・平松憲治・高津守・ 岡村雄樹チーム) 審査員:日本 TMA 許斐義信理事長 10 2011.11.25 準優勝(一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 小野常雄・ 上野由樹・吉田理・後藤孝幸チーム) 審査員:株式会社経営共創基盤 代表取締役 CEO 冨山和彦氏 参加者と株式会社経営共創基盤 代表取締役 CEO 冨山和彦氏 (左から 3 人目) 、 許斐理事長(左から4人目) 参加校 小樽商科大学ビジネススクール 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科 グロービス経営大学院経営研究科経営専攻 慶応義塾大学大学院経営管理研究科 一橋大学大学院商学研究科経営学修士コース 一橋大学大学院国際企業戦略研究科国際経営コース 明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科 立教大学大学院ビジネスデザイン研究科 早稲田大学ビジネススクール 名古屋商科大学大学院ビジネススクール 南山大学大学院ビジネス研究科 京都大学経営管理大学院 プレゼンテーションの様子 神戸大学大学院経営学研究科 同志社大学大学院ビジネス研究科 九州大学ビジネススクール 詳細は JBCC2011 のウェブサイトをご覧下さい。http://jbcc2011.web.fc2.com/ 書籍紹介 新米社長チワワ VS 政府系金融機関 ◇著 者:古尾谷未央 ◇出版社:同友館 ◇ 価 格 : 1 ,8 9 0 円 ( 税 込 ) 1,000 以上の企業を指南してきた、 元政府系金融マンが語る お金と経営のストーリー 2011.11.25 11 TMAssist 活動報告 新しいステージに入ったTMAssist 活動 日比公認会計士事務所 公認会計士 TMAssist 実行委員会 副委員長 日比 将博 既に、震災から7ヶ月が経過し、その間 TMAssist 活動も休まず続けている。 二度にわたる仙台での無料相談会、web 上で受け付けているメール相談、被災地 域での情報収集、経済産業省に対する情報提供等、色々な形で活動を行っている。 それにしても、被災地を訪問するたびに知らされるのが東北大震災による被災 状況が甚大過ぎて、個別企業に対する救済をしていたら、とても間に合わないと 言う事である。 今回の震災により、被災した地域、特に沿岸部においては水産業に関連する産 業が津波によって壊滅的な被害を被った。この被害から立ち直り再度事業を立ち上げるには設備投資資金が 必要となるが、自己資本が薄い我が国の中小企業は設備資金を自己資本で賄うための手段を持っていない。 結局、金融機関からの長期借入で賄うしか無いが、安易な借入は二重ローンの状況を作り上げ、更なる資金 繰りの悪化を招く結果となる。岩手県をモデルとして地元の金融機関にヒアリングしたところ、中小企業は 二重ローンを回避するために、設備資金を国からの補助金で賄おうと考えていた。しかしながら、グループ 補助金と呼ばれるこの補助金は設備資金の4分の2を国が、4分の1を県が補助してくれるはずであったが、 応募者多数で予算が足らなくなったため、結局、国と県合わせて4分の1の補助金しか出ない結果となって しまった。足らない部分に関して長期借入金でまかなえるのかというと金融機関にとっても簡単に融資に応 じる状況ではないし、なによりも、借入金での資金調達では二重ローン問題はそのまま残ってしまう。 一方、二重ローン救済策として岩手県と経済産業省で8月初旬にファンド機能を使ったスキームの基本合 意書が交わされたが、この政府案のスキームでは無事救済される対象となる企業は非常に限られてくると予 想され、被災企業の大多数がその選外に漏れてしまう。 そこで、我々は別の形で広く被災地域の企業の救済を図れるスキームを作り上げようという事となり、一 つのモデルを考案した。 このスキームで考慮に入れた点は以下の通りである。 ① 被災地域の企業は中小企業が多く個別に新規融資や増資を期待できる状況では無い。 ② 個々の企業の収益力はさほど大きくないため、高収益を期待したファンド資金等ではエグジットが描 けない。 ③ 地元金融機関自身も被災企業で有り企業の過剰債務を債権放棄によって解消する体力は無い。 また、我が国の多くの中小企業が持っている三つの問題点、すなわち、 ・ 自己資本が少ない(過小資本の問題) ・ 事業規模に比して過剰な設備を有している(投資不効率の問題) 12 2011.11.25 ・ 過去の成功体験に縛られ環境変化に対応した経営ができていない(マネジメントの問題) も同時に解消できるように心がけた。 以上のことから、今回のスキームでは次の様な特徴を持たせている。 (1)被災地域全体の復興に繋がるよう、関連業種を一つの経済共同体とみて持株会社方式によって事業 を集約している。今回は水産加工業をイメージして作成した。 (2)持株会社の参加に入れる企業は一業種につき一社または数社とし、同業種は事前に合併や営業譲渡 により集約しておく。これによって、過剰な設備投資、過剰な競争状態を避けることが可能となる。 (3)同業者の合併の際には事前に会社の財務状況等に応じて金融機関から DDS あるいは長期のリスケ 等によって財務の安定性を確保しておく。但し、財務状況が悪すぎる会社については営業譲渡また は会社分割によって一部を切り出しての再編を行うが単純な合併は行わない。これによって、金融 機関の債権放棄額を最小限にとどめることが可能となる。 (4)持株会社の資金は、取引関係からメリットを得られる(と思われる)水産加工業者、商社、流通業 者を中心とする。また、出資を通じて被災地を支援したいと思っている人達を集めた応援ファンド を組成する。これにより、長期の資本の出し手を期待し、エグジット問題を回避する。 (5)持株会社は設備保有会社も兼ねており、新規設備を取得し子会社にリースする。更に、不動産投資 に関しては第三セクターを用意し、そこを通じて賃貸を行う。これによって、各子会社は設備のた めの一時的な資金を調達すること無く新規設備を獲得できる。また、最小限の設備取得にすること によって設備の稼働率を上げ投資の回収期間を短くできる。 (6)持株会社及び各事業会社の経営者は全体をまとめる能力のある経営者を参加企業の経営者達から選 任するか、あるいは、外部より招聘する。これによって、マネジメントの近代化を図る。 最終的に図 1 のような企業体ができあがる。持株会社を頂点として業種に関連する会社を子会社としてぶ ら下げる。必要であれば子会社の入れ替え等を行う。 今後は、このスキームを実際に実行に移し、より多くの被災企業を救済していくことになる。 【図 1】出来上がりイメージ図 【図 1】出来上がりイメージ図 持株会社兼設備保有会社 業種別子会社1 業種別子会社2 業種別子会社3 業種別子会社4 2011.11.25 13 具体的な作業工程 具体的な作業工程 活動内容 目的 注意点 第一ステップ【図 2】 第二ステップ【図 3】 第三ステップ【図 4】 第四ステップ【図 5】 業種別に同業者の被災 資金の受け皿としての 持株会社と業種別会社 各地域において第三セ 企業を合併、分割等で 会社を設立する。調達 において株式交換によ クターを用意し、第三 集約し、会社を統合す した資金は賃貸用各種 り業種別会社を完全子 セクターにて必要不動 る。製氷業、倉庫業、 設備を取得するために 会社化する。また、業 産の取得及び親会社へ 運送業など関連業種に 利用する。 種別子会社に対して必 の貸付を行う。各子会 関しても同様に集約す 要な設備資産を貸し付 社へは持株会社から転 る。 ける。 貸し。 規模の経済の追求によ 資金使途を明確にした 関連業種の取りまと 投資資金が多額になる る過剰設備・過剰競争 健全会社の設立。最少 め。多くの英知を結集 不動産投資に関しては 状態の解消 投資額による設備購 して一つの目標に向け 第三セクターを通じて 入。 たマネジメントを実現 公的な資金を入れても する。 らう。 金融機関と十分な調整 資金の調達先として 業種別子会社に既存設 事務処理が煩雑になら を行い、債務超過部分 は、金融機関による借 備があれば、当該設備 ないように第三セクタ に関しては DDS ある 入以外にも商社や流通 は持株会社が買取り、 ーの取引先は親会社だ いは超長期(DDS に匹 業、食品加工業などの リースバックを行う。 けに絞る。実際に使う 敵する程度)のリスケ 一般事業会社を検討す その結果、子会社は一 のは子会社であるため を行い会社の安定を図 る。更に地域の一体感 切設備を持たないオペ 同時に転貸し契約の締 っておく。 や連携感を醸成するた レーションだけの会社 結も必要となる。また、 めに県民ファンドや市 となる。また、当該ス 第三セクターは30年 民ファンドなどの『応 キームに参加した経営 程度の賃借収入で投資 援ファンド』を組成し、 者の中から全体をまと 資金を回収して、事業 株主に迎える。 また、 める能力に長けている 者に払い下げる。 中小企業基盤整備機構 人を持株会社の経営者 や日本政策金融公庫な に迎え入れるか、外部 ど政府系の金融機関か から経営者を招聘す らの長期資金を導入す る。 る。 TMA の 集約対象企業の財務状 資産購入が最低規模で オブザーバー参加によ 適正賃料のシミュレー 役割 況・収益状況の確認や 済むような最適解の検 る会議のまとめ役 ション(投資回収プラ 経営計画の策定は短期 討 間で多数に登ると予想 される。その為、CTP を動員し集中して作業 を行う。 14 2011.11.25 ン)の策定 【図 2】第一ステップ 【図 2】第一ステップ 仲卸業 A 業種別での会社の統合 承継会社:財務内 流動資産 流動負債 固定資産 固定負債 のれん 劣後借入 続困難な会社は被合併会社と 資本 しない。CTP による判断。 合併 容が良い会社 特に財務内容の悪い会社や継 合併 仲卸業 B 流動資産 流動負債 固定資産 固定負債 債務超過 劣後借入 部分 or 超長期 仲卸業 C 借入 仲卸業 D 流動資産 流動負債 固定資産 固定負債 流動資産 流動負債 債務超過 劣後借入 固定資産 固定負債 部分 or 超長期 債務超過 借入 部分 資本 資本 資本 【図 3】 第二ステップ 【図 3】第二ステップ 持株会社兼資産保有会社 の設立 持株会社兼 資産保有会社 金融機関 出資・又は融資 流動資産 流動負債 リース用物件の 固定資産 固定負債 購入 賃貸用各種設備 商社・流通業 食品加工会社 資本 応援ファンド 中小企業基盤整備機構等 【図 4】 第三ステップ 【図 4】第三ステップ 持株兼資産保有会社 持株会社による業種別会社の取得 流動負債 :必要資産のリース 固定資産 固定負債 :株式交換による完全子会社化 賃貸用資産 資本 流動資産 子会社株式 仲卸業 製氷業 倉庫業 運送業 流動資産 流動負債 流動資産 流動負債 流動資産 流動負債 流動資産 流動負債 固定資産 固定負債 固定資産 固定負債 固定資産 固定負債 固定資産 固定負債 のれん 劣後借入 のれん 劣後借入 のれん 劣後借入 のれん 劣後借入 資本 資本 資本 資本 【図 5】第四ステップ 【図 5】第四ステップ 第三セクターによる不動産取得と賃貸 第三セクター 不動産の取得 流動資産 流動負債 固定資産 固定負債 不動産 持株兼資産保有会社 流動資産 流動負債 地方自治体からの出資 資本 一括賃貸 転貸し 各子会社 流動資産 流動負債 固定負債 固定資産 固定負債 固定資産 賃貸用資産 資本 のれん 子会社株式 劣後借入 資本 Sponsors 株式会社銀行研修社 KRB コンサルタンツ株式会社 www.tma ja p an .o rg www.turna rou n d .org 株式会社 TSK プランニング アクタスアドバイザリー株式会社 いけうち会計事務所 株式会社 TTM デルタ経営コンサルティング合同会社 税理士法人はやぶさ 日比公認会計士事務所 Certification 認定事業再生士(CTP)・事業再生士補(ATP)資格に ついては、ウェブサイトをご覧下さい。 www.a c tp .jp