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5. ホウレンソウのカドミウム吸収特性の解明と含量予測技術の開発

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5. ホウレンソウのカドミウム吸収特性の解明と含量予測技術の開発
26
岐阜 県農 業技術 セ ンター研 究報 告
第 8号 126∼ 33(2008)
ホウ レン ソウのカ ドミウム 吸収特性 の 解明 と含量予測技術の開発
Charactcristics oF cadmium absorption by spinach and cstimation oF cadmium content in spinach by soil analysis
砂川
匡・ 袖 垣 ― 也 '・ 安 田雅 晴
沢野 定憲
Tadashi SUNAKAWA,Kazuya SODECAKI*,Masaharu YASUDA,Sadanori SAヽ
VANO
約 :ホ ウ レン ソ ウは 十壌 中 の交換 態 のカ ドミウム (Ca)を 主体 に吸 収 し、無 機 結合態Cdな ど他 形 態 のCdも 吸収 し う
要
る こ とが わか った。 ホ ウ レン ソ ウ可食 部 のCd含 量 には明 らか な品種 差違 が あ っ た。 またpHを 高 くす る こ とで 可食 部 Cd
含 量 が減 少 す る品種 と変 わ らな い 品種 が あ つた。 この こ とか ら交換 態Cdの 吸収 と他 形態 のCdの 吸 収 の割 合 は 品種 毎 に
違 うもの と推 測 され た。 グライ 土で の栽 培 中に交換 態 Cdが 増加 し可 食 部Cd含 量 が 高 まった こ とか ら水 田転 作畑 で はCd
含 量 が 高 くな る もの と予想 され る。 士壌 Cd濃 度 、 土壌 の 水抽 出濾 液 の着 色 、 十壌 の窒 素含 量 か ら可 食 部Cd含 量 の 大 ま
か な危 険域 の予 測 は 可能 で あ つ た。
キー ワー ド :カ ドミウム 、 ホ ウ レン ソ ウ、吸収
緒
た 最 大 葉 長 25cm程 度 の もの を 中心 と した。 t壌 の Cd濃
言
長 年 の摂 取 に よ り腎機 能 障 害 を引 き起 こす 可能性 が あ
る と され る カ ドミウム (cd)に は食 品 中含 有 量 の 国 際 基
い
準値 が 設 定 され て い る 。 現在 国 内 で は 玄米 に の み 設 定
され て い るが 、国際 基準 に適 合 させ るた め近年 中に国 内
て 十壌 汚染 防 止 法 の 方 法 に準 じた
2(1)お
よび (2)
の 方 法 に よる もの とす る.
(1)露 地 栽培
うね 幅 75cm× 2条 ×株 問2 1cm
基 準値 が 設 定 され る見通 しで あ る。
葉 菜 類 の 代 表 格 で あ る ホ ウ レ ン ソ ウ (ジ
177
αc′ a
ο々″ιca ι)は Cdを 吸 収 しやす く含有 量 も高 い こ とが知
め
られ て お り 、平成 14年 に農 水省 が 実施 した 国 内産農 畜
産 物 等 の 実態 調査 で は 、国 内生産 の 3%が 国際 基準値 の
02■ g/kgよ り高 か つ た゛。 将 来 、 ホ ウ レン ソ ウ生産 者 に
とつて Cd対 策 は 重 要 課 題 に な る と と もに
度 の 定量分析 につ い ては 、特 に説 明 しない 場合 は 以 下令
① 2002年 春採 り栽培 (播 種 2001/10/16、 収穫2002/1/31
∼2/6、 褐色低地土、土壌Cd濃 度0 12mg/kg)
② 2003年 秋採 り栽培 (播 種2003/10/2、 収穫2003/11/3、
褐色低地 十、 tttCd濃 度 O13mg/kg)
(2)ポ
ッ ト栽培
(ハ
ウス内での 雨除け栽培 )
大 き な産 地
① 2003年 秋採り栽培 (播 種2003/9/24、 収穫 11/5、 褐色低
を抱 え る岐 阜県 で は農 協 や 行政 に も対策 や 支援 を求 め ら
地十、十壌 Cd濃 度 0 13mg/kg、 1/2000aワ グネルポット
れ る よ うにな る と予想 され る。 対策 技術 と して は
7株 植 え)
十壌
汚 染 リス クの 予 測 技 術 、 作 物 の Cd吸 収 を抑 え る技 術 が
:
② 2004年 春採 り栽培 (播 種2003/11/17、
収穫200433、
考 え られ るが 、 ホ ウ レン ソ ウの Cd吸 収 特 性 は 未解 明 で
褐色低地土、土壌Cd濃 度0 13mg/kg 1720008ワ グネ
あ りこれ ら技術 の構 築 にお け る障壁 とな つてい る。
ルポ ッ ト:7株 植 え)
本研 究 ではホ ウ レン ソ ウの 吸収 抑 制 技術 の確 立の た め
③ 2003年 秋採 り栽培 (播 種200311018、 収穫2003/12/3、
に必 要 な Cdの 吸 収 特性 の 解 明 と収 穫 物 Cd含 量 の 予 測 技
褐色低地 t、 11壌 Cd濃 度0 13mg/kg、 1/2000aワ グネ
術 の 開発 に つい て2003∼ 2007年 度 の 5カ 年 に わた り試 験
ルポ ッ ト:7株 植 え)
を行 った の で報 告す る。
02004年 秋採り栽培 (播 種2004/10/12、 収穫 2004/12/10、
表 1の 十壌 、1/5000aフ グネルボット:3株 植え)
試験 方法
1
栽培 試験
それ ぞれ の試 験 に応 じて 露地栽培 とハ ウス 内 で の 雨除
けポ ッ ト栽培 、 雨除 けハ ウス栽培 にて栽培試 験 を行 つた。
施 肥 は地 域慣行 に よ り行 つた。 収 穫 は流 通 品相 当にな っ
*現 岐阜 県農政部農業技術課
(3)/ヽ ウス ト
雨除 す来え
培
平 うね、条間 16cm× 株間7cm
2007年 夏採 り栽培 幡 種 2007/7/上 旬、収穫2007/8/下
旬、品種 改 良夏 ―
番)
現地栽培 を想定 し19点 の様 々なCd濃 度 の黄色 十混 じり
27
黒 ボ ク 土あ るい は 黒 ボ ク 土混 じ りの黄 色 十を入 手 し栽培
した濾 71kを 得 た。 分 光 光度 計
に用 い た。
ャ ンモ ー ドにて水 を ブ ラン ク と し200∼ 600nmま での濾 液
の 吸光度 を測 定 し、そ の 波長 にお け る着 色程 度 と した。
表
l
t壌
11壊 の 類 男
沖積
1
1
l
(mgF縄
備考
行 鳳 塩酸)
o 24
3
来 菜 を加 熱 乾燥 し (80℃ 、 2日
0 24
水 口上壊
0 14
0 20
黒 ボ ク土
0 20
0 19
た。
(2)定 量 分析
0 28
グライ H[
)粉 末 に した試 料 を熱
硝 酸 過 塩 素 酸 分 解 法 に よ り湿 式 分 解 を行 い 分 解 液 を得
0 23
0 21
灰色低地 上
作 物体 分 析
(1)Cdの 抽 出
0 26
丼沖積 土
立U2000)の 波長 ス キ
土壌 の内訳
の 種類
褐 色低 地
(日
水 旧 上壌
Cd定 量 は 分 解 液 をMIBK― DDTC法 に よ り有 機 溶 媒 抽
出後 フ レー ム原 子 吸 光 法 か 、分解 液 を直接 ICP発 光 光 度
法 に よ り行 つ た 。 新 lll重 は 乾 燥 重 に 五 訂 日本 食 品成 分
0 07
表 の 水 分 値 (食 品 100g中 ホ ウ レン ソ ウ924g、
黄色 Jl
コマ ツナ
941g、 フ ダ ン ソウ922g)を カロ算 して算 出 した。
岩屑
1 16
:
結 果 と考 察
2
1
土 壌 分析
風 中L細 十 とOlヽ塩 酸 を 1:5の 比 で混 和撹拌 し (30℃ 、
1 1iF.5振
と う)、 濾 過 (JIS5B濾 紙 )に て濾 液 を得 た。
2,Cdの 定量 分 析
抽 │‖ 濾 液 を用 い フ レー ム原 子 吸 光 法
(日
立 Z5000)
二よ り行 っ た 。 フ レー ム 原 子 吸 光 法 が 使 え な い 微 量範
用 は 、 フ レー ム レス原 子 吸光法
(日
立Z5000)ま た はイ
オ ン結合 プ ラズマ 発光 光度 分析 法 (Thcrmo Elcctron■ is
lntrcpid H XSP DUO)に よ リイ
テった。
ホ ウ レン ソ ウ品種 は多系交配による複数系統 の親 か ら
なるFlで 構成 されてお り品種 間差 が大 きい。そ こで 主要
な品種を用いて露地栽培① による春採 り露地栽培、露地
栽培② に よる秋採 り露地栽培 を行 い 、可食 部 のCd含 量
を調査 した。栽培 したホ ウ レン ソ ウの 可食 部 Cd含 量 を
図
1、
2に 可食 部Cd含 量 と根 部Cd含 量 との 関係 を図 3
に示す。
栽培後 のpHは それ ぞれ 579、
580で はぼ 同 じであっ
た。 可食部 Cd含 量は明 らかな品種 間差 が み られ た。秋
(3)形 態別 逐 次抽 出
定 本 らに よ る改変 形 態 分別 法 (McLarcnら の 形 態別 分
ワ1法 の 変 法 )に よ り行 っ た 1)。 風 乾細 +15gを
ホウ レンソウのCdの 蓄積性
005M
採 りと冬採 りの 共通の品種である次郎丸 、 リー ド、タイ
タ ン、パ ン ドラ、ア クテ ィブ、サ ン ピア 、サ ンピアテ ン
の Cd含 量は若干 の変動 が あ るものの タイ タ ン を除き ど
24時 間 )し 遠 心 分 離
にて 得 た上 澄 み を交換 態 画分 と した.そ の 沈殿 と25%
食部 Cd含 量 と根 部Cd含 量 との間には 1%の 有意水準で相
酢酸 15mLを 混 和撹 拌 (30℃ 、24時 間 )し 遠 き́分離 にて 得
関 があつた
た上 澄 み を無機 結 合 態 画 分 と した。 そ の 沈殿 と6%過 酸
′
ヒ水 素 水 25mLを 混 和 後 温 浴 に て 蒸 発濃 縮 した 後 25%酢
よ る春 採 り栽 培 を行 い 、 ホ ウ レン ソ ウの 部位 別 の Cdの
酸 15mLと 混和撹 拌 (30℃ 、24時 間 )し 遠 心分 離 に て得 た
蓄積 性 につ い て他 の 葉菜 との比 較 を行 つ た。 図 4、 5に 部
Ca(N03)2)15mLと 混 和 撹 II(30℃
L澄 み を有機 結 合 態 画分 と した。 そ の沈殿 と酸性 シュ ウ
の 品種 もほぼ 同様 の濃度 系列 を示 した
(図
(図 1、
2)。 可
3)。
次 にポ ッ ト栽 培① に よる秋 採 り栽 培 とポ ッ ト栽 培② に
位 別 の Cd含 量 の結 果 を示 す 。
酸 ア ンモ ニ ウム71k45mLと ア ス コル ビン酸 15gを 混不口後温
秋採 り、春採 りともに どの 葉菜 1)葉 柄 部 の 乾物 あた り
て 1時 間抽 出 した 後遠 心 分 離 にて得 た上 澄み を遊離
の Cd含 量 が 他 の 部位 に 比 べ て少 な くな る傾 向 に あ っ た
12rに
酸 化物 吸蔵 態 画分 と した。
(4)十 壌 中 の 炭 素 と窒 素 の 定量
風 乾細 十に つ い てCNコ ー ダー (YanacO MT 700)に て
演J定 を行 つ た。
(5)水 浸 Hl液 の 着 色程 度 の測 定
(図 4、
5)。 他 の 葉 菜 に比ベ コマ ツナ は どの 部位 にお
い て もCd含 量 が 低 く
根 部 と葉 身 部 の Cd含 量 が ほぼ 同
じで あ っ た。 ホ ウ レン ソ ウゃ フ ダ ン ソウは葉 身 よ りも根
部 のCd含 量 が高 か った。
以上 の こ とか ら、 コマ ツナ に比 べ てホ ウ レン ソ ウや フ
風 乾細 十 と水 を 1:5の 比 で撹 拌抽 ‖│し (30℃ 、1時 間
ダ ン ソ ウは Cdを よ り多 く蓄 積 し、 ホ ウ レン ソ ウ品種 に
振 と う)、 濾 過 (IIS5Bl15紙 )に て無 色 ∼ 黄 褐 色 に着 色
は Cd蓄 積 性 に 明確 な 品種 間 差 異 が あ る こ とが 明 らか と
28
な った。
ン ソ ウの 可 食 部 Cd含 量 の 増 減 に つ い て も検 討 した が 品
種 間 に見 られ る よ うな明確 な差 異 は認 め られ なか った。
︵
〓●里 ゝ Eヽo
なお 、今 回 の試 験 で は秋 採 りと春採 りにお け るホ ウ レ
Aオ ラ
図4
図1
よ
黒
ミ 苓
↑
ゞ喜
I贅 itiミ
:薔
:」
:ミ
il:ミ
】
ミ
::
ホウ レンソウ品種 の可食部Cd含 量 (2002年 春採 り)
0こyヽじ嘱 “3 論“日
図5
口回
鴎日案
´、
ハい
トヘレト
ー
卜﹄
,ハト
ハ¨卜﹄ 、■
卜、 ベー ●ト
ヽ一 いヽ
ヽ、¨゛ト
・
い 工ヽレヽ
工ヽいヽ い
ユ ーい
口榊
葺ば
拭 旨κ
0ヽ、 ヽ、
・
ハ︵ヽい
2
フタ〃 つ
タイ
ル
ンロ町ヽ
72rィ ア
]η ナ
部 位 別の Cd蓄 積 性 (2004春 採 り)
ホ ウ レン ソウが 吸収 す るCdの 形 態
ホ ウ レン ソ ウや 他 の 葉 菜 が どの 形 態 の Cdを 吸 収 しや
す い か確認 をす るた め 、 ポ ッ ト栽培 ③ に よ る秋 採 り栽 培
を行 つた 。 図
ホウ レンソウ品種 の可食部Cd含 量 (2003年 秋採 り)
ユψ ナ
部 位 別 の Cd蓄 積性 (2003秋 採 り)
′
ヽオ ラ
図2
ア″ イ
ア
コ
〓 ●り く ●E ︶つ0
︵
,11騒
タイル
6、
7に 十壌 pHと
可 食 部 Cdの 関係 を 、 図
8に 形 態別抽 出画分 とpHと の F15係 を示す。
フ ダ ン ソウ と コマ ツナ は 十壊 のpH低 下 に伴 い 可 食 部 の
Cd含 量 が 増 加 した が
ホ ウ レン ソ ウで は 品種 に よ る違
FLν ヽこ 嘱 也3 ■“ F
い が 大 き くlll向 は 一 様 で は な か つ た (図
,こ α′ヨθ
6、
7)。
ア
クテ ィブ とタィ タ ンは フ ダ ン ソ ウや コマ ツナ と同様 土壊
F0805
の pH低 下 に 伴 い 可 食 部 Cd含 量 が 増 加 した が (図 6)、
″=ノ 7
パ ン ドラで は減 少 、 次 郎 丸 で はpHの 影 響 は 明 らか で な
か つた (図 7)。
この 栽培 11壌 はpllの 低 下 に (+い │[壌 中
の 交換態 Cd濃 度 が増加 す る傾 向に あ つたが 、無機 結合 態
00
0 1
02
03
04
根部Cd含 ■(mノ │い
図
3
Cd、
有機 結 合 態 Cd、 酸化 物 吸蔵 態 Cdに もそ の 傾 向 が 見
られ る もの の程 度 は微 少 で あ つた (lKj 8)。
“
葉菜 のCd含 量の地 上 部 と地下部の関係 (2003年 )
コマ ツナ 、 フ ダ ン ソ ウ、 ア クテ ィブ 、 タイ タ ンの 可食
部 Cd含 量 の 低 下 分 と交換 態 Cd濃 度 の減 少 分 が「nじ 傾 向
を示 す こ とか ら、 これ らの 葉 菜 は 主 に交 換 態 Cdを 吸 収
して い る と予想 され る。 しか しバ ン ドラ と次郎 丸 は交 換
態 Cd濃 度 の 減 少 分 と可 食 部 Cd含 量 の 変 動 分 が 同 じltl向
に な い こ とか ら、 交換 態 Cd以 外 の Cdを 吸 収 す る害」
合が
大 きい と推 測 され る。
これ らの こ とか ら、 これ らの 葉 来 の Cdの 吸収 元 は 主
と して 交換 態 の Cdで あ り、 Cdの 吸 収抑 制 対策 と して 土
壌 口1を 高 め る こ とが有 効 で あ る こ とを示 唆 して い る。 そ
29
して パ ン ドラや 次 郎 丸 の よ うに交 換 態 以 外 の Cdを 多 く
ソ ウ〉コマ ツナ の 順 に 高 か っ た (図 9)。
吸収 で きる機 能 を併せ 持 つ 品種 が あ って 、そ の 吸収 配 分
い て も可食 部 Cd含 量 は灰 色 低 地 士お よび グ ライ 十 (い
はそれ ぞれ 異 な り、そ の 吸収性 の相 異 が 吸収 量 の 品種 差
ず れ も水 田 土壌 よ り採 取 )で 高 く、 黒 ボ ク土お よび 黄 色
と して 現れ て い る と推淑1さ れ た。
土で 低 い傾 向で あ つた。 どの 品 目や 品種 にお い て もグ ラ
どの 葉 菜 にお
イ 十 を除 き全 て の 土壌 で栽 培 後 に交 換 態 Cdが 減 少 した
4
3
0こ や ヽじ = れ8 量” に
ロ
△
0
(図 101、 2、 3、 4)。
ブ
ア″ィ
%,シ
Cdも 全 て の 土壌 で栽 培 後 に 減 少 した。 可 食 部 Cd含 量 が
"レ
2
―――――● " マ
ツカ
ー … … ●"■
カ
"0"ィ
ーーーーー●,71シ
……… ●
ル")
`0イ
低 か っ た 黒 ボ ク土 と黄 色 土 に は 交換 態 Cdが わ ず か しか
1
無 く、灰 色 低 地 土以 外 で は 交換 態 Cdと 無 機 結 合 態 Cdが
)
多 い傾 向で あ つた。 有機 結合 態 は どの 土壌 で も栽 培 後増
0
加 した。 これ らの傾 向は どの葉菜 で も同 じで あ っ た。
45
6
図
程度 は小 さい もの の無機 結 合 態
50
55
,H
60
これ らの結 果 か ら、 グライ 土 を除 いた他 全 ての 十壌 に
収穫後土壌のpHと 可食部 Cdと の 関係 (n=8)
お い て 栽 培 後 の 減 少 程 度 が 最 も大 きい の は 交 換 態 Cdで
あ るた め 、 交換 態 Cdが 葉菜 の 可 給 態 Cdの 供 給 に 大 き く
関 わ っ て い る と 予想 され る。 同時 に 減 少 程 度 は 小 さい
い る こ とか ら 可給態 Cdの 供 給 に 関 わ つ て い る と思 われ
ロ
4
3L里 ヽこ 劇 伽8 縮 嶺 F
5
もの の 無機 結 合 態 Cdl)栽 培 後 の 十壌 中含 量 が 減 少 して
△
3
る。 これ らの こ とは 前 項 の 試 験 で 確 認 した こ と と一 致
2
Δ
Rf=θ
′′ジヨ
す る。 グライ 土は強 い還 元状 態 に あ り、空気 との接 触 が
ロ
ハンドラ
●
△
次郎丸
‐‐ … … 籠 いントラ
〉
0
●“
"(次
pH
図7
郎丸〉
60
収穫後土壌 のpHと 可食部 Cdと の 関係 (n=8)
多 くな つた こ とで 無機 結 合 態や 有機 結合 態 の一 部 が 酸化
され 可溶 化 し交 換 態 Cdに 移 行 した もの と考 え られ る。
従 つ て 交換 態 Cdが 増 加 す る水 田転 換 畑 で は 葉 菜 の Cd含
量 が 高 くな る もの と予 想 され る。 栽 培 後 土壌 の 有機 結
合 態 Cdが 顕 ♯ に 増加 した が 、 これ は 交換 態 Cdを 主 と し
た 可給 態 Cdか ホ ウ レン ソ ウ根 部 に取 り込 まれ 細 根 断 片
と と もに 十壌 中 に残 存 じ有 機 結 合 態 Cdに 移 行 した もの
︵
モ∽νゝE︶
嘔 ヨ量 ﹁
0
呻 咄 咄 ¨ 嘲
で 、 これ が 十壌 の 有 機 結 合 態 Cdの 増 分 に 寄 与 した も の
犠晟J麟 a
“
‖り■"`
▼6
:奮 ]鷹
= │・
=
と推 渦1さ れ る。
醜
口
ヽ
つ
ヽメ
`黎 I
―
60
図 8土 壌の pHと 土壌 中の形態別Cdと の関係
3
里e▲ 晏×× ×
oi::な
:◆
◆::l
②
図 9各 土壌で栽培 した葉菜可食部のCd含 量
土壌 の種類による吸収の違 い
土壌 の種類 (表 1)に よる葉菜 のCd吸 収量 の違 い を確
認す るために 、 ポ ッ ト栽培④ に よる秋 採 り栽培 を行 っ
た。図9に それ らの 土壌 で栽培 した葉菜 のCd含 量 の結果
を、図 101、
2 3、 4に 葉菜それぞれ につい て栽培 前
後 の 土壌の形態別Cdの 変化 を示す。
葉菜可食部 のCd含 量は概 ね ノ`ン ドラ=次 郎丸 〉フダ ン
(mg/kgDW)
30
015
010
005
増 ●
,
〓 嗜 前
〓 培 籠
菫焙前
載 培 ■
,
菫珀前
■■
摯培 前
t嗜 住
菫 増前
菫 培■
摯 培前
■ ■a
〓 焙
,
歳 嗜前
菫埼後
畿 培 後
彙培 螢
■■前
摯培後
〓培 前
摯 堵餞
菫■ 前
〓 嗜後
菫 焙前
菫珀 悛
載堵前
量崎棧
ヨ 培前
摯培 ‘
菫増 前
菫培饉
重崎前
菫培■
菫培前
〓 埓●
〓
前
,
摯焙 ●
■前
,
ユ”崚
■ ■前
②
貴 色土
●埼前
〓 嗜 ●
摯埓前
彙 略 0
彙培 前
″
)
図 103栽 培前後の土壌中 Cd形 態の変化 (ホ ウ レンソウ バン ドラ
〓 嗜 前
● 堵 ■
燿 増 前
■■●
〓 埼前
崚崎 崚
︱︱l ③
〓 培 前
菫培
量嗜
量培 ■
︱︲ 0
■培 前
〓 培 後
ユ嗜 前
〓 培後
菫 埼 前
〓 崎 後
菫 崎前
②
貴色土
″
彙 培 前
畿培後
摯 焙 ●
畿 培 前
〓 培 後
鷲 培 前
畿 培 後
菫 培 前
摯 嬌 後
載 培 前
菫 嗜 籠
● ヽ 前
着 略 棧
〓 培 前
載 培 校
,
載 培 前
彙 綸
畿 培 前
載皓●
■培前
彙 綸 ‘
彙■前
晟 培 前
015
マ ツナ )
〓 培 ●
● 培 前
● 埼 棧
〓 培 前
● ■ 饉
●■ 前
童 埼 後
〓 嗜 前
堵 俊
,
童 埼前
●■ 後
彙 培 前
● ■ ■
摯 培 前
摯 堵 ■
︱1 0
■ 前
,
● ■ ■
な珀 前
● ■■
童 培 前
●培 ●
幾 焙 前
104栽 培 前 後 の 土 壌 中 Cd形 態 の 変 イヒ (フ ダ ンソウ)
図
②
灰色低地 土
ユボク土
②
0 1
②
■ボク土
グライ土
灰色低嗜土
││● 低 地土
1螢
前
1後 1前 l al rll●
②
O l
②
0 1
③
前
″
″
次郎丸 )
(ホ ウ レンソウ
102栽 培前後の土壊中 Cd形 態の変化
図
②
②
l
①
②
責色土
グライ土
灰色 低 地 土
褐色低地土
l
①
10
②
②
彙色 土
│1色 低 地 土
(コ
図 101栽 培前後の土壊 中 Cd形 態の変化
②
灰 色 ll地 土
贔ポク■
0 10
③
0
020
015
010
015
010
4
ホ ウ レン ソウの可給 態 Cdの 評価 法
E νヽじ
劇佃8 量佃F
000
るの で 、 うま く予測 で きる推 定
法 の 開 発 が 望 まれ る .水 稲 で
図 11-1
040
060
土壌 CImg/り
図 11-2
土 壌 Cd(001N)と 可 食部 Cdと
の 関係
の 関係
0
0
0
0
06
04
02
00
0
言 νゝ←
嘔伽8 縮 侶 F
ホ ウ レン ソ
50 55 £ H65 70
塩
培 した ホ ウ レン ツウ (200ア イ
・7
■
月上 旬岳 料 、8月 下 名
り
.ミ 千
〔 、
0000 0001 0002 0003 0004
080
土壌C(mg/10
土 壌 Cd(01N)と 可 食 部 Cdと
は 001N塩 酸 抽 │1性 Cdに よ り玄
い
米 中Cd含 量 を推 定す る方 法 が
確 市 さオして い るが
020
080
060
040
020
000
図 12-1
土壌 pHと 可 食 部 Cdと の関 係
0
図 122
500
1000
1500
土壌 Eα μS/cm)
土 壌 ECと 可 食 部 Cdと の 関 係
つ い て 、 可 食 部 の Cd含 量 との
関係 が予想 され る士壊 分析値 の
5
10
塩 酸 柚 出 し た Cd濃 度 と 可 食
図 13-1
8 6 4 2 0
0 0 0 0 0
●こνゝε
劇輌3 景=F
0
い て 確 認 を 行 つ た 。 十壌 か ら
1
15
20
炭素含量(%)
炭素 含量 と可 食 部 Cdと の 関係
15
窒素含量(%)
図 132 窒 素 含量 と可食部 Cdと の 関係
部 Cd含 量 と の 関 係 は 、 01ヽ
001N塩 酸
0
04
02
0∞
86
oQ
♂働ゝビ﹁
劇“8量嶽ぽ
塩 酸 (r=0809)、
0鴨
栽培 後 十壊 のpHお よび塩 類 濃
度 (EC)と 可 食 部 Cd含 量 との 関
図 141
れ なか った
(WL=300nm)
010
015
020
抽 出 液吸 光 度
図 14-2
濾 液 呈 色 と可 食 部 Cdと の 関 係
(WL=400nm)
00
0∞
8
6“2
0繁卍蜘ヽP﹁
颯佃8 量佃F
られ たか つた (図 131、
0 0 0 0 0
た が 、 と もに 有 意 な 相 関 は fi
04
00
06
8
2∞
係 は ほ ぼ 司 じパ タ ー ン を 示 し
E νヽこ
劇佃3 乖佃F
素 含 景 と可 食 部 Cd含 量 との ■
m %L液
°
∞ °
2)
可 食 ‖;含 量 が 最 大 び)
試 料 を 除 く と室 素 含 量 の 相 関
(r=0577)li 1 9。 水 準 て 有 意 で
あ った。
005
(図 121 2)
十壌 中 の 炭 素 含 量 お よ び 室
なお
"
濾 液 呈 色 と可 食 部 Cdと の 関係
係 は 、 ともにイi意 な相 関は得 ら
000
出液吸光農
図 14-3
吸
%&
濾 液呈 色 と可 食 部 Cdと の 関係
(WL=500nm)
彼 ‰液
概
翼
怪
000 °
図 14-4
濾 液呈 色 と可食 部 Cdと の 関 係
(WL=530nrn)
32
土壌 か ら水 浸 出 した 濾 液 を 着 色 程 度 (無 色 ∼ 黄 褐
色 )に つ い て想 定 され る吸 収 波 長 範 囲 に て 波 長 ス キ ャ
報告 で も有機 物投 入 がCd吸 収 を抑 制す る と した結 果 が 存
」
在す る 。
ン し、 可 食 部 Cd含 量 との 相 関 を取 つ た と こ ろ 、 波 長
作付 け前 に栽培 者 自身 の 園場 の危 険域 予測 は重 要 で、
(WL)300nm(r=0613)と 400nm(r‐ 0592)に 1%の 有 意水 準
前述 の 土壌 の 高pH維 持化 、品種 選 定そ して堆 肥 の継 続 的
で有 意 な相 関 が得 られ た。 (図 141、 2、 3、 4)。
投入 とあわせ て行 う必 要 が あ る と思 われ る。 この試 験 で
こ
の 黄褐 色 の 着色 は水溶性 の腐植 物質 に よ る もの と考 え ら
は簡 易 な土壌 診 断 に よ り危 険度 を予測 す る手法 を検討 し
れ る。
そ の 可能性 を示 唆 した。 なお 、予測精 度 を さ らに 向上 さ
可食 部 Cd含 量 と相 関 が あ る 十壌 cd濃 度 、濾 液 着 色 、
せ るた め には温 度 とCd吸 収 特性 等 今 回 の試 験 で は未検 討
空 素 含 量 が 可給 態 Cd吸 収 量 の 推 定 に で き る と考 え られ
の部 分 が残 され てお り、 引 き続 き ホ ウ レン ソ ウのCd吸 収
:体 で あ るので 、
る。 土壌 窒 素含 量 と濾 液 呈色 は腐植 が 〕
特性 に 関す る詳 細 な検討 が必 要 で あ る。
腐 植 が Cdの 保 持 に大 き く関 わ つて い る も の と推 測 され
る。
従 つ て 、 ホ ウ レン ソ ウの 可 食 部 Cd含 量 の推 定 は公 定
法 で あ る01臨 酸 抽 出 に よ る土壌 Cd濃 度 か ら大 まか な
謝
辞
危 険性 予 測 の推 定 は可能 で あ るが、 さ らに窒 素含 量 と濾
本研究 の実施に当た り、土壌試料入手に多大な協力 を
液 着 色 を加 えて 推 定 す る こ とで危 険 性 予 測 の 信 頼 性 は
頂 い た県内各農業改良普及 センターの関係各位 に深 く感
よ り高 ま る もの と考 え られ た 。 こ こで は 、 それ ぞれ の
謝す る。
関係 か ら得 られ た 回帰 式 を用 い誤差 を考 慮 して推 定値 が
Codex基 準値 の1/2で あ る0 1mg/kgFWを 限 界点 と して危 険
域 を設 定 した。 (図 111,2、 132、 141,2)。 なお 、
引用 文 献
1)厚 生労働省
これ まで の試 験結 果 か ら もわ か る よ うに、 ホ ウ レン ソ ウ
http1//、 ハ
ハv
の 可 食 部 の Cd含 量 は様 々 な 条件 で変 動 す る の で 、 この
2)菊 地直
:
mhlw go jp/houdOu/2003/12/h1209-lc html101
木村武 ・ 宮地直道
山崎浩道
1治
村上」
:
予測 法 を よ り精密 な予■1法 に発 展 させ るた め には今 後 の
野菜 のカ ドミウム濃度 に対す るカ ドミウム 吸収抑
詳細 な検 証 がZ、 要 で あ る。
制技術 の 効果 ,野 菜茶業研 究所研 究報告第 5号 25∼
32(2006)
総合考察
以 上 の試 験 に よ リホ ウ レン ソ ウは品種 に よ つ てその配
分 は 異 な る もの の 交 換 態 の Cdを 主体 に 吸 収 す る こ と、
無機 結 合 態 Cdな ど他 形 態 の Cdも 吸 収 し うる こ とが わ か
3)農
4)定
水省 :http://ww maff go jp/cd/
本 ・ 飯 村 ら :土 壌 中 重 金 属 の 形 態 別 分 別 法 の 検
IE誌 64(6)645-653(1994)
口
寸、 土月
5)茨
城 県 :ホ ウ レ ン ソ ウの カ ドミ ウ ム 濃 度 の 品 種 間
った 。 交換 態 Cdの 存 在 量 は 十壌 の pHが 上 昇 す る こ とに
差 異 と制 御 ・ 推 定 法 の 実 用 性 、茨 城 農 セ 平 成 16年 度
よつ て 減 少 す る の で 、 作 物 の Cd吸 収 を抑 制 す るた め の
成 果 情 報 、 http://wvv pref ibaraki jp/bukyoku/
基本 的 な対 策 は 土壊 pHを 高 く維 持す る こ とで あ る こ とが
nourin/noken/
確 認 され た。
ま た ホ ウ レン ソ ウの Cdの 吸 収 特 性 は 品種 に よ る差 が
6)二
重 県 :土 壌 001M塩 酸抽 出 カ ドミウ ム 濃 度 を基礎
と した水 稲 カ ドミウ ム 吸 収 抑 制 対 策 、 二 重科 技 セ 平
大 き い た め 、 Cd吸 収 を ll「 制 したい の で あれ ば 低 吸 収 な
成 17年 度 成 果 情 報 、
品種 を選 定す べ き と考 え られ る。 この こ とは栽 培 者 が 作
http://www matc pref mic ip/Marc/sEIKA/H17/
付 け候 補 品種 全 て の Cd吸 収 特 性 を把 握 して お く必 要 が
03seikaH17 pdf
あ る こ とを意味 してい る。
また グ ライ 土 で栽 培 中 に交 換 態 Cdが 増 加 した こ とか
ABSTR∪ CT
ら水 田転 換 畑 で は様 々 な作 物 の Cd含 量 が 高 くな る と予
Cadmium(Cd)in sOil absOrbed by spinach is considcrcd to
想 され る。 この こ とは水 田転 作 して 作付 けす る ときには
be in cxchangcable Form mostly , and in inorganic binded
高 Cdに な るお それ が あ る の で 、転 作 水 田で の 栽 培 で は
form and othcr fOrms partially Cd cOntent in 5od scction Of
注意 が必 要 であ る こ とを意 味 してい る。
spinach was nuctuatcd with difForoncc of harvcsting stages
また 、 土壌 中の 空 素分 と水 浸 出液 の 着 色 が ホ ウ レン ソ
, and thcsc nuctuatiOn
ヽ
verc di∬ ered by cach oF spinach
ウの Cd含 量 と逆 相 関 に あ つた こ とか ら、堆 肥 を継 続 的
varieties ln additiOn , therc wcrc spinach varietics which
に入れ る こ とが対策 の一 つ で あ る可能性 が あ り、既 存 の
wcrc dccrcasod Or nOt dccrcascd Cd contcnt 、
vith highcr
33
pH
Thus sharc of Cd in cach chcmical Form absorbcd by
By cOmbining soil analysis cach Cd cOncentration in soil,
spinach are cxpccted to bc difFcrcnce by cach oF spinach
coloration oF watcr extraction of sOil and nitrogcn in soil,
varlctics
it was possible of rough cstimating hazardous lcvel o,Cd
During cultivating spinach with glcysol, thcro wcre incrcase
contont in spinach
that Cd in oxchangcablc form and Cd contcnt in food
scction oF spinach Thcrcforc , whcn cultivating crops with
no― paddy
ncld convertcd From paddy neld , the Cd cOntcnt
of crops arc expcctcd to bc highc「
paddy ncld
than with perennial no―
KEⅥ Ⅳ ORDS
Cadmium,Spinach,Absorption
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