...

主題名 ①「きまりは何のために」 ②「みんなが気持ちよく過ごせる場所」 ③

by user

on
Category: Documents
9

views

Report

Comments

Transcript

主題名 ①「きまりは何のために」 ②「みんなが気持ちよく過ごせる場所」 ③
事例1 「お客様」
(出典:
「小学校道徳読み物資料集」文部科学省)を活用した事例
主題名
①「きまりは何のために」
②「みんなが気持ちよく過ごせる場所」
③「みんなが楽しむためには」
小学校 第5学年
4-(1)公徳心・遵法・権利と義務
主題名①「きまりは何のために」
1
目標
公徳心を持ってきまりを守り,社会生活の中での自分の義務を果たそうとする心情を育む。
2 指導と評価の計画
過
学習活動と主な発問
程
1 2枚の写真を見て考える。
○2枚の写真を比べて感じたこと
導
は何ですか。
○きまりがあるのに守れないのは
入
どうしてでしょう。
2
展
開
前
段
資料「お客様」を読み,話し合
う。
○わたしは,どうして注意ばかり
する係の人を快く思っていなか
ったのでしょう。
○あなたが,
「わたしたちはお金を払って入
場しているんです。お客様な
んですよ。
」
という言葉を聞いたら,どう思
いますか。
◎わたしは何が変だと思ったの
でしょう。どうして,そのよう
に考えたのですか。
(付箋→グ
ループ討議→全体討議)
・きまりを守らないお客様の態
度。
・周りの人のことを考えずに,自
分勝手に行動するお客様。
・お客様に謝り,お礼を言ってい
る係の人。
学習の様子を見取る視点
見通し,振り返り
活動の留意点
◇2枚の写真に関心を持 ・きまりを守っている写真
ち,自分の考えを持って
と守られていない写真
いる。
を見比べることで,主題
に関わる問題意識を持
たせる。
◇わたしの気持ちを考え
ている。
◇わたしに照らし合わせ
て,自分の考えを持って
いる。
◇付箋に自分の考えを書
いている。
◇グループ討議で自分の
意見を伝えたり,友達
の意見をしっかりと聞
き,受け止めたりして
いる。
☆期待する反応が見られなかったときの指導
・付箋に書いた意見を発表させ,出てきた意見に順位を付けさせる。それをもとに,な
ぜ,そのように考えたのかグループで討議させる。
(付箋→全体討議→グループ討議)
-1-
展
3
開
後
何のためにきまりがあるのか話
し合う。
○何のためにきまりがあると思い
ますか。
段
終
末
4
教師の説話を聞く。
5
本時のまとめをする。
◇自分の経験を振り返り ・道徳的価値の自覚を深め
ながら,ワークシートに
るために,これまでの自
自分の考えを書いてい
分の経験や考え方を振
る。
り返るようにする。
◇本時の学習を振り返り
ながら,教師の話を聞い
ている。
3 学習指導の様子
(1) 見通す,振り返る活動について
①見通す活動「本時の主題に関わる問題意識を持たせる工夫」
ア 道徳的価値に関する写真の提示
実際に撮影してきた写真「通路に座り込んでいる観客(写真1)」と「周りの人も見える
ように考えている観客(写真2)
」の2枚を提示した。写真1の説明をした瞬間に児童は「え
っ,ルールを無視したってこと」
「自分勝手」と口々に話していた。本時の道徳的価値に関す
る写真を提示することで,本時で何について考えるのか児童自身が気付くことができた。さ
らに,主題名を板書することで,確かな見通しを持つことができたと考える。
【写真1
【写真2 周りの人も見えるように考えて
いる観客】
通路に座り込んでいる観客】
〈児童の意見〉
・人のためを思っている。
・自分たちで考えたルールーを守っている。
・自分のことも考えている。
・みんなのために。
〈児童の意見〉
・人のためを思っていない。
・ルールを守っていない。
・勝手に理由を付けている。
・自分一人のことしか考えていない。
イ 問題意識を持たせるための発問
写真を提示した後,問題意識
を持たせるために「きまりがあ
るのに守れないのはどうしてで
しょう。
」という発問をした。
「自
分の こ と しか 考 えて い ない か
ら。」
「欲だけで行動している。」
などの意見が出された。同時に,
「確かに自分もそうだ。
」という
意見もあり,問題意識を高める
きっかけになったと考える。
きまりがあるのに守
れないのはどうして
でしょう。
○自分のことしか考えていな
いから。
○欲だけで行動しているから。
◇確かに自分もそうだ。
-2-
②振り返る活動「学習内容をもとに,ねらいとする道徳的価値の自覚を深める」
展開後段で「何のためにきまりがあると思いますか」という発問をし,ワークシートに記入
させた。多くの児童が導入,展開前段を受け,以下のような意見を記入した。
・人のため自分のため。
・みんなが安全に平和にくらせるようにするため。
・みんな平等にするため。
・人に迷惑をかけないようにするため。
中には,今までの自分の経験や考えをふまえて記入している児童もいた。しかし,発問に対
する的を射た答えが書けていない児童もいた。そこで,授業を展開していく中で児童から出て
きた意見を考慮し,
「どうしてきまりを守らなければいけないのでしょう。」や「きまりを守る
ために大切にしていかなければいけないことは何でしょう。」「お話に出てきた女の子は,この
出来事から何を学んだのでしょう。
」などの発問に替えることで,さらにねらいとする道徳的価
値の自覚を深めることにつながったのではないかと考える。
(2) 道徳的価値の自覚を深めるために行った言語活動について
①自分の考えを持ち,考えを広めるための「グループ討議」
中心発問である「わたしは何が変だと思ったのでしょう」に対する考えは多様なものになる
と考えた。そこで,まず自分の意見を付箋に記入し,付箋を提示しながら討議することとした。
書くことを通して思考力を働かせ,自分の考えを整理したうえでグループ討議を行い,自分と
異なる意見に接することで自分の考えを深めることができる。自分と異なる意見を否定するの
ではなく,協同的に議論していくことを通して,言葉の能力が生かされ,高められていく。
予想していた通り,中心発問に対する考えは様々なものであった。中でも,最も多かったの
は「ルールを守らないお客様を注意していただけなのに,そのお客様にお礼を言ったり謝った
りしている係の人が変だ」という意見であった。次に多かったのは,「ルールを守らないお客
様」
「周りのことを考えていないお客様」であった。たった一人だが,「ルールがあることが変
だ」と答えた児童もいた。同調する意見もあったが,「ルールがなかったらどうなっていたの
かな。」という周りからの質問を考えていくうちに「やっぱり,ルールはなければいけないの
かも。
」と変容していった。
①A さんと言い方は
違うけれど,同じ意
見だよ。Bさんの考
えも納得できる。
③何で,ルールを守
らないお客様が変
なのかを考えてみ
よう。
②みんなの意見に
はないけれど,
ルールを守らな
いお客様もおか
しくないかな。
【写真3
付箋を活用した話合いの様子】
【写真4
付箋記入例】
②自分の生活や本時の授業を振り返るための「ワークシート」
書くことを通して思考力を働かせ,自分の考えを整理することができると考え,展開後段及
び終末でワークシートを活用した。
・きまりは絶対守らなければいけないことがよく分かった。
・きまりはぼくが考えていたより大事だということが分かった。ぼくはルールを守る人になり
-3-
たい。
・注意書きやアナウンスがなくても,自分で考えて人に迷惑をかけることがないように行動し
たい。
・ぼくもこれまでルールを守らなかったことがたくさんありました。でも,今日の授業を通し
て,そんな自分がはずかしいと思いました。だからもう,ルールを守らないというようなこ
とはしないようにしようと思いました。
・自分のことだけではなく,他人のことも考えて行動できることが大切。
・私はルールを守ることが普通だと思っていたけれど,いろいろな考えの人がいるのだと知り
ました。でも,周りの人の気持ちも考えてあげたほうがいいと思いました。
・きまりを守ることは当たり前のことだと思います。みんなと自分のためにきまりをしっかり
守ったほうがいいと思いました。
・これからもきまりを守っていこうと思いました。そして,守っていない人がいたら注意した
いと思います。
・改めてきまりの大切さを知りました。
「お客様」を通して学んだことを生活で生かして生きた
いです。
・
「きまりがあることが変だ」
という友達の意見に賛成もできるし反対もできるなと思いました。
なぜなら,細かすぎると誰も守らなくなるからです。でも私は,きまりを守らなければいけ
ないと思います。
ワークシートを活用することで,本音や苦しかった過去や明るい未来など,みんなの前では
言えないことを書けることがある。また,授業中には思うように伝えられなかったことも,記
入することで意見をまとめることができるというメリットもある。
今回は,ワークシート作成段階で指導者側が発問を記入してしまったが,
「子供たちと授業を
つくっていく」「子供たちから出た言葉を大切にする」という2つの観点をふまえると,発問
をあらかじめ記入しておかないほうがよいと感じた。
-4-
主題名②
1
「みんなが気持ちよく過ごせる場所」
目標
ルールやマナーを守らずに自分の権利を主張する登場人物が登場する資料を批判的に読み,考えたり,
話し合ったりすることを通して,自他の権利を尊重し,進んで公徳を大切にしようとする心情を育む。
2 指導と評価の計画
過
見通し,振り返り
学習活動と主な発問
学習の様子を見取る視点
程
活動の留意点
1「私たちの道徳」124ページを
導
読み,公徳について考える。
〇写真のようにマナーを守らない人 ◇進んで自分の考えや感 ・私たちの道徳124ペ
入
たちを見て,あなたはどんな気持
情を表現している。
ージを活用し,本時の
ちになりますか。
ねらいである公徳心に
ついて考えさせる。
2 資料「お客様」を読んで,話し
合う。
〇登場人物の言葉や言動について, ◇話し合ってみたい場面
あなたが気になった場面はどこで
について考えながら読
すか。みんなで話し合ってみたい
んでいる。
展
場面を教えてください。
◇話し合ってみたい場面
(全体討議)
を積極的に発表したり,
開 <例>
友達が発表した場面に
・お客と係の人のやりとりの様子を
ついて共感したりして
前
見るわたし。
いる。
・ショーが始まったが,前の人が肩
段
車をしてしまい,まったく見えな
くなったわたし。
・お客と係の人のやりとりを見てい
るわたし。
◎私は,最後の場面で,どんなこ
とを考えたのでしょうか。
(グループ討議)
◇公徳を観点に意見を述
べている。
・グループで話し合う
ことで,主体的な意
見を出させる。
☆期待する反応が見られなかったときの指導
全体討議で話し合った場面を振り返り,「わたし」の気持ちを見つめ直させる。
展
開
後
段
終
末
3 資料を振り返って話し合う。
〇どうすれば,遊園地にいる人たち ◇今までの自分の行動を ・資料を振り返って,自
(お客様も従業員も)が気持ちよ
振り返りながら,意見を
分自身の経験や考えな
くすごせるのだろう。
述べている。
どを反映させるように
する。
4 教師の説話を聞く。
・観光地のたくさんの注意書きの看 ◇本時の授業を振り返り
板を例に,きまりの必要性につい
ながら話を聞いている。
て話す。
-5-
3 学習活動の様子
(1) 見通し,振り返る活動について
①見通す活動
本時に行った「
『私たちの道徳5・6年』の本時のねらいに関わる写真が載っているページを
見て,本時の学習について見通しを持たせる」という活動について,授業後に児童に感想を聞
き,その効果を検証した。
質問「授業のはじめに『私たちの道徳』を使ってお話をしましたが,その話で,今日の学習に
ついてどんなことを考えればよいか,わかりましたか」
はい 26名
いいえ 2名
〇「はい」と答えた児童の意見
・海にごみを捨てたり,自転車を勝手にとめたりしてはいけないと考えられたから。
・私たちの身の周りにはルールを守らない人がいるというこ
とが分かったから。
・きまりを守るにはどうすればよいか,考えられたから。
・ルールを守らないといけないとわかったから。
・いろんな悪いことが書いてあって,これはだめだと思った。
〇「いいえ」と答えた児童の意見
・資料で読む話がまだわからなかったから。
②振り返る活動
本時の展開後段で行った「資料から感じたことを振り返りながら話し合う」活動について,
児童に感想を聞き,その効果を検証した。
質問「授業の終わりの方で,自分が行くのはどんな遊園地がいいか,というテーマで考えまし
たが,今日の読み物は,テーマを考える上で役に立ちましたか」
はい 28名
いいえ 0名
〇「はい」と答えた児童の意見
・「お客さん」というお話が,どんなに迷惑なことか分かり,いい参考になった。
・遊園地で登場人物と同じような行動を見ることがあって,考える材料になった。
・お話の中で,きまりを守らない人に係の人がちゃんと注意していた。
・よくありそうな話で考える役に立った。
・自分勝手な行動をするとどうなるか,ということを考える参考になった。
・自分だけがよくても,他の人には迷惑で,ちゃんと人のことも考えないといけないと思った。
見通す活動については,子供たちに提示した資料がねらいに近づきすぎてしまい,資料を
読んだ後の児童の感じ方が固定していってしまったように感じた。人間の弱さに焦点を当て
たり,本音の部分を引き出したりする場合は,あまり遠くまで見通さない方がいい場合もあ
るように感じた。見通す方向や範囲については熟慮する必要があると思う。
振り返る活動については,これまでも展開後段や終末において,大切にされてきたことで
ある。ねらいとする価値を意識しながら,児童の言葉を中心に振り返り,ねらいを達成でき
るよう努めたい。
(2) 道徳的価値の自覚を深めるために行った言語活動について
展開後段で自分の考えを持たせた上で,ペアでの意見交換を行い,全体でまとめる形をとっ
たが,理想の遊園地の雰囲気というテーマでの話合いだったので,各自思い思いの意見を持ち,
語り合っていた。ルールを守るというところでは,多くの児童が共通した意見を持っていたの
で,柔らかい表情で話し合っていた。
また,導入での写真がルールを守ることの大切であることのメッセージが強すぎたため,考
えが偏った面もある。全体討議などをして,もう少し考えを広めたり,深めたりするような工
夫も必要だと感じた。
-6-
(3) 指導の実際
①導入
「私たちの道徳5・6年」の124ページの写真を見せた。
「ルールを守らない様子を見てど
うか」という問いをしたところ,「嫌な気持ちになる」「その場所にはいたくない」という意見
が出された。写真の世界だけではなく,私たちの身の周りでも残念ながら見られる場面である
ことを確認した。
「今日の読み物は,そんな場面に遭遇したらどんな気持ちになるかということ
を考えながら読みましょう」と投げかけた。
②展開前段
資料を読んだ後,児童に話し合ってみたい場面や,みんなで考えてみたい場面について聞く
と,以下の2つの場面が挙げられた。
ア ショーが始まり,父親が子供を肩車した場面
イ 「お客様なんですよ」と言い寄られ,係の人が頭を下げた場面
このことから,「お客様である父親と注意する係の人の二人の思いを考えることを通して,み
んなが気持ちよく過ごせる社会とはどういうものか」ということを考えることとした。
アの場面についての児童の意見
・楽しみにして見に来たんだから,せめて自分の子供に見せてあげたい。
・子供がよく見えなそうだなぁ。よし,肩車しよう。
・注意があったけど,大丈夫だろう。子供に見せられればいい。
・子供がかわいそうだから,肩車しちゃえ。
・回りよりも子供の方が大事。お金を払ってるんだから,いいじゃないか。
*「このお父さんは,子供思いのいいお父さんですね。子供のために肩車をしてくれるなん
て。こういうお父さんは嫌ですか?」と揺さぶりをかけた。子供たちはそろって,
「好きで
す」と答えるものの,煮え切らない様子であった。また,
「ぼくだったら,ルールを守るよ
う注意するよ。
」という児童もいた。
「子供を思う気持ちは大切だけど,周りのことを考え
ていないことがいけないんだね」とまとめた。
イの場面の頭を下げた係の人の気持ちについての児童の意見
・お客様のためを思っているつもりだったけど,周りの人にいろいろ言われてしまった。
・もう少し,周りの人のこともわかってほしい。
・自分の子供だけでなく,みんなのことも考えてほしい。
・本当はもっと注意したいけどお金を払ってるって言われて嫌だ。
・こっちの身にもなってほしい。
・ダメと言ってもやめないから嫌な気持ちになる。いますぐやめ
てもらいたい。
・お客様だけど,やっていいこととだめなことがある。
でもいいすぎたかな。
・他の人に迷惑がかかるから,注意をしているのに,なぜ自
分がおこられなければいけないの。
・いくらお客様でもきまりを守ってくれなきゃ困る。
・ルールを守ってほしいだけなのに。
*どの児童も,この場面に対して読み物の主人公同様,
「変だ」と感じたようである。父親の
主張はやはり,わがまま勝手であると感じ,係の人に同情する思いが強く感じられた。こ
の二人のやり取りをもとにして,後段の発問につなげた。
③展開後段
「どんな遊園地だと,みんなが気持ちよく過ごせるだろうか。」という発問に対する児童の反応。
-7-
・お金を払っているからといって自由にしないできまりを守る。
・みんなでルールを守って,譲り合う。
・お客様も係の人も笑顔でいられるところ。
・大人も工夫して,前に子供,後ろが大人のように譲り合う。
・一人一人が見えない人のために譲ってくれる。
・係の人が注意をしなくていいような,譲り合いのある遊園地。
・係の人が注意してもしっかりいうことを聞く。
・係の人がみんなが納得するような注意をしてくれる。
・広くて,椅子がたくさんある。(解決論的な発想の児童もいた)
*多くの児童が,ルールを守るというねらいに向かう考えを挙げたが,他にも,工夫や助け合い,
譲り合い,思いやりなどルールを守る上で大切な部分についても考え,
「みんなが笑顔」や「み
んなが納得する」というような公徳の大切さにも気付くことができたようである。ルールを守
ることの大切さとともに,
「みんなが楽しむために人のことを考えることが必要なんだね」とま
とめた。
④終末
中国人留学生を観光地に連れて行ったとき,美しい場所にも関わらず,日本語や中国語,英
語などで観光客に禁止事項が書いてある看板がいくつも立っていたのを見た。その留学生はそ
れを見て,「看板に書いてある中国語は,禁止する言葉だけだよ,恥ずかしいね」と悲しそう
に言った。「どこの言葉であれ,みんなが楽しむところ,きれいなところに,○○してはいけ
ないなんて看板がない社会がいいですね。そんな場所を作っていきたいですね」と話して,授
業を終えた。
⑤学習感想
・ルールを守ってしっかり生活したいと思いました。自分のことだけじゃなくて,人のことも考
えて生活したいと思いました。
・きまりは自分だけではなく,みんなのためにある。きまりを守らないと,他の迷惑になるとわ
かりました。
・みんなのためにルールを守ることはとても大切だな,と思いました。注意されたらきちんと守
っていきたいです。これからも思いやりを忘れないでいます。
・ぼくもあのお話のように,周りのことを気が付いていないかもしれないので気を付けたいです。
・社会でいろんな悪いことが起きていることを知りました。人の迷惑になることが増えているな
ぁと思いました。私はそういう悪いことをしないようにしてルールを守っていきたいです。
・子供のことを考えてやっているが,ルールだし,人に迷惑がかかるなと思った。だけどルール
を守ればすごく楽しくなるなと思った。
・この社会をよくするは私たちだとよく分かったのでよかったです。
-8-
主題名③
1
「みんなが楽しむためには」
目標
登場人物の気持ちを通して,公共の場においてマナーを守る義務について考え,義務を果たそう
とする態度を育てる。
2
指導と評価の計画
学習活動と主な発問
見通し,振り返り
活動の留意点
1
導
入
遊園地の写真から,本時の
学習について話し合う。
○写真を見てどんなことを感
じますか。
2 資料を読んで,話合いのテ
ーマを決める。
○資料を読んで,気になったこ
とや話合いたいことを 発表
しましょう。
学習の様子を見取る視点
◇これまでの経験や写真から
感じことを話している。
◇資料から感じたことや気に ・資料から感じたことを,共感
なることをメモし,発表し
したことや批判的に捉えた
ている。
ことを発表し,学習全体の見
通しを持たせる。
話合いのテーマ「わたしは遊園地での出来事から何を学んだのか。」
3
登場人物の気持ちについ
て話し合う。
○お客様に向かって係の人が
注意をしているのはど うし
てだろう。
展
開
○お客が係の人に文句を言う
のはどうしてだろう。
◇登場人物の気持ちについて
考えている。
・話合いのテーマに沿って児童
が気になったことを中心に
登場人物の気持ちを考える。
◇お客と係の人を客観的に捉
え,それぞれの立場や気持
ちを考えている。
○わたしは何が変だと思った
のだろう。
◇主人公の視点でお客と係の
人の思いから,客観的に捉
えている。
◎わたしは何を学んだのだ
ろう。
◇話合いのテーマと授業の
流れを関連付けて,自分の
考えを示している。
・グループで意見を交換し,
学級全体で話し合わせ
る。話合いのテーマと関
連させて自分の考えを発
表させる。
☆期待する姿が見られなかった場合の指導
登場人物の思いを振り返り,主人公が何を感じたのか推測してもらう。
終
末
4 本時の学習を振り返る
○本時の学習で学んだことを
自分の生活にどのよう に生
かそうと思いますか。
◇話し合ったことから,本時
で学んだことと,自分のこれ
からの生活について考えてい
る。
-9-
板書計画
「お客様」
係
の
人
「わたしは遊園地の出来事から,何を学んだのか。」
何が変なのか?
注意するのはどうして?
◎ お客だからと言って,迷惑をかけては
いけない。
◎ 係の人が謝るのはおかしい。
● お客様が危険だから。
● 怪我をされては困るから。
● 他のお客様の迷惑になるから。
わ
た
し
係の人に文句を言うのは?
お
客
様
3



お金を払っている。
周りの人もやっている。
気分が暗くなる。
「わたしは,何を学んだのか。」
● 公共の場では,守らなければならないこ
とがある。
● お客であっても,その場のマナーは守ら
なければならない。
● 夢の国だからこそ,みんなのマナーが大
切である。
学習指導の様子
(1) 見通す,振り返る活動について
①見通す活動
本実践では,資料を読んでから児童が感じたことや気になったこと,つまり「心の引っかかり」
から,
「話合いのテーマ」を設け学習を行った。児童の考えをもとに話合いのテーマを決めたこと
で,児童が「何のために話し合うのか」という見通しを持つことにつながった。また,教師の資
料吟味に偏ることなく,児童が主体的に話し合うことにもつながる。
資料を読む視点としては,共感的,自己投影的に捉える「あるある」,分析的に捉える「いいね」,
批判的に捉える「どうして」
,うまく説明はできないが何か心に残る「気になる」の4点とし,読
みながらメモをとるようにしている。
〈メモのヒント〉
「あるある」自分にも同じようなことがあった。
「いいね。
」この話がいいと思うのはなぜ。
「どうして」意味が分からない。不思議。
「気になる」心にのこる。ひっかかる。
児童が資料から感じたことは以下のとおりであった。
ア 「あるある」
・ショーが人だかりで見えないことや,ショーが見えなくてフェンスに登ったことがあった。
・家族で行った時に前の人が肩車をしていて全然前が見えなかったことがあった。
・見たいショーが混んでいて見ることができなかったということがあった。
・やってはいけないことをやってけがをした事がある。
・人だかりは見えにくい。
・野球の試合で前の人が立って見えなかった。
・目上の人だと気を使って注意ができない。
・花壇のフェンスに登ってショーを見た事がある。この話と同じで注意された。
・お父さんに肩車してもらったことがあるけど,いつも後ろに行く。
・係の人が注意しても,聞かないというのはあると思う。
-10-
イ 「いいね」
・係の人がお客の安全や他のお客の気持ちを考えて注意しているのがいいと思った。
ウ 「どうして」
・どうして「肩車をしないでください」と言われたのに男の人は肩車をしたのか。
・いくらお客様だからって,周りの人の事を考えないで自分勝手にするのはなぜか。
・ショーを見る方がいいか,安全に注意を守る方がいいか不思議に思った。
・どうして「係の人は少し赤い顔になって」怒りなのか,はずかしさなのか分からない。
・
「ビデオやカメラを頭より上に持ち上げたりしないようにしてください」とあるが,ショー
をどうやって見ればいいのかと思う。
・どうして人の注意に耳をかたむけない人が多いのか。
・なぜ注意しただけなのに,係の人が頭を下げるのか。
エ 「気になる」
・「納得できないものを勝手にいろいろ押し付けるのはおかしいんじゃないですか。わたし
たちはお金をはらって入場しているんです。お客様なんですよ。」と言った言葉の意味が
よく分からない。だって後ろに人に迷惑をかけるし,自分だけじゃないのになんで子供を
肩車したのか気になる。
・パレードを見る時,たしかに後ろの人は見づらいけど,係の人は危ないから注意している
のに,お客さんだからって,それはあまりよくないと思う。
・周りの人のことを考えていたのか。
・係の人が「危ないですから木に登ったり肩車したりしないでください」と言っているのに,
それをやぶっていて,中には木から落ちて,私だったらとても後悔すると思う。
※上記の発言から,話合いのテーマを設けようとしたが,なかなかまとまらなかった。そこ
で児童が「どうして」と思ったことをもとに,係の人とお客の立場の思いについて考え,
「わたし(主人公)は,何を学んだか」ということを分析的に捉えることとした。
②振り返る活動
振り返る活動については,自分の生活を振り返り,
「本時の学習から何を学んだのか」をノー
トに記入させた。このことにより,心の変容や新たに考えたこと,改めて考えたことを整理す
ることができる。以下は児童の記述内容である。
・思いやりを持ちたいと思った。男の人みたいになりたくないから。
・後ろの人,周りの人の事を考える!マナー(ルール)を守る事はとても大切。理由は自分が
そういうことをやられたら嫌だし,他の人にも迷惑。これからも気を付けたい。
・私は今日の学習で人の迷惑になることをしないようにしようと思いました。理由はこの話に
出てきた男は周りの人に迷惑をかけていてはずかしいと思ったからです。
・他の人の気持ちを考えて,迷惑にならないようにする。理由は,以上のようなことをすれば,
安全にみんなが楽しくショーや野球の試合を見られるから。
・人の気持ちを考える。人に迷惑にならないようにする。大人になったら男の人みたいになら
ない。マナーを守ること。
・男の人のように人に迷惑をかけないよういこれからも気を付けたい。
・ショーを見るほうがいいか,安全に注意を守る方がいいか,まだ不思議。
・ルールを守る。理由はルールを守れば,みんなが気持ちよくショーを見られるから。
・ショーを見るためにどう改善していくべきか,みんな平等に見るためにどうしたらいいか。
・みんなが楽しく気持ちよく使って行くべきかを考えた方がいいと思う。またこんなようなこ
とが起きた時に考えた方がいいと思うから。
・ショーは人の迷惑にならないように,自分も見られるように見る。理由は人に迷惑をかける
と,他の人が嫌だから。
・ルールを守ればケガもしないから.自分がケガをしないためにルールを守る。
・ショーを楽しく見るために,みんなで協力する。人に迷惑をかけるというのは,いけないと
思う。ショーをしてフェンスに登ってはいけないこと。
・私は改めて普段の生活からみんなに迷惑をかけないようにしていきたい!!理由は,今日の男
-11-
の人みたいにみんなに迷惑をかけたくないから。
・どこに行ってもマナーを守って,自分がされたらイヤなことは,人にもしないようにする。
・人の迷惑にならない。自分がやられたからこそ,他の人にしてはいけないと思った。
・この勉強をして,どこかに行った時に,マナーを守りたいと思いました。それは,みんなに
迷惑をかけないように,みんなが楽しめるようにしたいからです。
・マナーの大切さ。してはいけないことをして,落ちたから自業自得。係員に迷惑をかけてい
ると思った。
・人の気持ちを考え迷惑にならないようにルールやマナーを守ることが大切だと学んだ。
※それぞれの学習の感想を交流することまですれば,本当に考えを磨き合うことになると考え
る。児童から授業で出された意見から話合いを進めても,教師が考えてもらいたい意見は出
される。そうなると児童が自分たちの考えから授業を進めることができるため,問題意識を
持って授業に参加できる。また発言しない児童やできない児童もワークシートを通して学習
したことを見取ることもできるだろう。
(2) 道徳的価値の自覚を深めるために行った言語活動について
①話し合う活動について
児童が「どうして」と思ったことをもとに,係の人とお客の立場の思いについて考え,「わ
たし(主人公)は,何を学んだか」ということについて話し合った。
「係の人が赤い顔をして謝っているのはどうしてか」について。
(以下 S:児童,T:教師)
T「係の人はどうして赤い顔をして謝っているのかな。」
S「きっとはずかしいんだと思う。」
S「多分周りに人がたくさんいるからはずかしい。」
S「男の人に怒っているんじゃない。」
T「はずかしいのに注意したのは何のためかな?」
S「お客が危ないから注意したと思う。」
S「お客のために注意したのに怒られるなんてかわいそう。」
「わたしは何を学んだのか」について。
・相手を困らせない。危ない事をしない。他の人の気持ちを考える。
・ショーの間,子供を肩車したり,ビデオやカメラを頭より上に持ち上げたりしてはいけな
い理由が分かった。
・マナーの大切さ,注意された事を守る事,人の事を考える事,マナーを守らないでけがを
した事があるから思った。
・迷惑や危険なことをしてもよいことはない。これからは,自分も気を付けていきたい。
・他の人の気持ちを考え,他の人の迷惑にならないようにする。
・ショーは人の迷惑にならないように見た方がいい。お客さんの考えも,もっともだけど,
係の人の考えをまもらないといけないと思った。でも係の人の考えを聞かないとケガをす
るなどのことがある。
・自分が大人になったら,こんな男の人みたいにしちゃいけないことを学んだ。
・わたしが,今度何かのショーに行った時は,他のお客様に迷惑をかけないようにする。
・お客様の気持ちを学んだ。そして,係の人の気持ちも学んだ。ケンカはよくないし,注意
されたことは,守らないといけないと思えた。
・他の人の気持ちを考え,安全に,他の人に迷惑をかけないようにする。
ここで,ルールとマナーについての話題に移行したので,ルールとマナーの違いについ
てどのように考えるか話し合ってもらった。すると,
「ルールは守るべきこと,守らなけれ
ばいけないこと」「マナーは守ったほうがいいこと。みんなのためにすること」
などと意見が出された。
-12-
Fly UP