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PDFダウンロード - ベネッセ教育総合研究所
Interview
コミュニケーション・スキルを高める
プロジェクト・ベース学習
── 「目的」ではなく「手段」としてのスキル獲得を──
●
上杉賢士[千葉大学大学院教育学研究科教授]
ア
メリカのチャータースクールで開発され、
欧米に実践の動きが広がりつつあるプロジェクト・ベース学習。
日本におけるプロジェクト・ベース学習研究の第一人者である上杉賢士先生は、
うえすぎ けんし
●
千葉大学大学院教育学研究科教授(学校教育臨床専攻)
。
千葉大学卒業後、小学校教諭、千葉市教育委員会
指導課指導主事等を経て現職。
この学びのスタイルが子どもたちのコミュニケーション・スキルを
2007年、NPO法人日本PBL研究所を設立した。
伸ばす可能性を秘めていると話す。
著書に『プロジェクト・ベース学習で育つ
プロジェクト・ベース学習が子どものコミュニケーション・スキルを
子どもたち∼日米18人の学びの履歴∼』
(共著/学事出版)など。
どのように高めていくのか話をうかがった。
コミュニケーション・スキルの育成が
実現を果たし、また社会の担い手として育つための手段とし
自己目的化する危険
て、スキルがあるわけです。
この 10 年、学校教育の世界では、情報教育や環境教育、あ
ョン・スキルを身に付けさせるためのプログラムが開発され、
るいは食育など、さまざまな教育の必要性が叫ばれてきまし
学校現場に導入する動きが見られます。
た。例えば食育についていえば、食に関する正しい知識と選択
それらはコミュニケーションの内容を「挨拶をする」
「自分
する力を養うことで、よりよい生活を送ることが目的となるわ
の意思を相手に伝える」
「相手の気持ちを聞く」というように
けですが、本来は手段である「食について学ぶこと」がそのま
一つひとつのスキルに細かく分解して、それぞれを子どもたち
ま学校教育の目標に位置付けられています。同様に情報教育
に着実に習得させようとするものが中心です。恐らくそうし
や環境教育も目標として掲げられる傾向にあります。そうす
た基礎レベルから学ばせなければ、初歩的なコミュニケーシ
ると教育の目標が多重に設定されることになるために、その
ョンさえ成り立たないところまで、子どもたちの状態は深刻
先の最終的なゴールが見えにくくなる状況が生まれています。
私はその取り組み自体は、意味のあることだと思います。
学習活動を行う上で前提となるスキルが水準に達していない
のなら、その能力を培うトレーニングは必要でしょう。
食育や情報教育、環境教育、そしてコミュニケーション教
育はそれぞれ重要です。ただしそれらは本来、学校教育が達
成するべき最終的なゴールではなく、
「子どもの自己実現」と
「社会の担い手の育成」というゴールに達するための手段です。
しかし私が危惧するのは、コミュニケーション・スキルを
この目的と手段の関係を意識しておかないと、コミュニケー
育てることが、教育の「手段」ではなく、
「目的」になっては
ション・スキルの獲得をもって教育的達成と見なしてしまう
いないだろうか、ということです。
ような転倒が起きてしまいます。
コミュニケーション・スキルを高めることは、教育の手段
ではありますが、目的ではありません。スキルとは、あるゴー
周囲の環境への適応は
ルがあって、そのゴールに到達するための手段として活用さ
ゴールへの途中経過にすぎない
れるものです。学校教育におけるゴールとは、当事者である子
私がコミュニケーション・スキルを身に付けることを教育
どもの立場でいえば「自己実現」でしょうし、教育する側の立
の目標とするのではなく、その先のゴールをイメージしておく
場であれば「社会の担い手の育成」でしょう。子どもが自己
べきだと考えるのは、生徒指導の分野でも同じような問題が
2008
になっているということでしょう。
NO.11
近年、子どもたちにソーシャル・スキルやコミュニケーシ
23
コミュニケーション・スキルを高めるプロジェクト・ベース学習
Interview
発生していることを念頭に置いているからです。
戦後日本に入ってきた「ガイダンス」の概念は、日本では
「生徒指導」と訳されました。もともとガイダンスでは、子ど
もが五つの段階を踏んだ上で、最終段階に到達することが目
指されています。
まず最初の段階が、
「自己に対する理解を深める」
。次が「そ
の能力を最高度に活用する」
。三つ目が「周囲の環境に満足に
適応できるようになる」
。四つ目は「賢明な決定と問題解決のた
めの能力を獲得する」
。そして最終段階である五つ目の段階が
「民主社会の担い手として成長する」です。ところが現実に日本
の教育現場で行われている生徒指導は、三つ目の「周囲の環境
に満足な適応ができるようになる」にほぼ終始しています。
図表[1]MNCSで使われたプロジェクト企画書作成の手順書
① このプロジェクトを通して得られること、解明できると思うこ
とを 3 つ以上あげなさい
② 学校を卒業したあと、あなたのプロジェクトをどう生かしてい
きますか。あなたが住む地域社会、世界にとってこのプロジェ
クトの重要性はどこにありますか
③ ブレーンストーミング
④ プロジェクトを完成させるために必要な課題や活動と終了日
⑤ 必要な情報源を種類の違うものを少なくとも 3 つ以上(そのうち
少なくとも 1 つは実在の人物)
⑥ このプロジェクトでどの領域をカバーできると思いますか
⑦ このプロジェクトを何単位にしますか
⑧ 計画の承認(アドバイザー、プロジェクト計画チーム)
上杉賢士・市川洋子著『プロジェクト・ベース学習で育つ子どもたち
∼日米18人の学びの履歴∼』より。2002∼03年に使用されたもの
今の教育現場では、いじめや不登校など、多くの場面で子
どもたちが、学校という環境に満足に適応できていない状況
を目指した指導を行うことは、意味のあることだと思います。
に陥っています。コミュニケーション不全も、周囲の環境への
しかし本来最も重要なのは、スキルを学ばせる授業時間を
不適応の一つといえるのかも知れません。もはや教員だけで
特別に設けて、その時間内でスキル教育を行うことではなく、
は対応できないほど事態は差し迫っており、学校に心理カウ
子どもがコミュニケーション・スキルを発揮せざるを得ない
ンセラーを配置したり、福祉分野と連携したりすることも欠
ような環境、密度の濃いコミュニケーションが頻繁に発生す
かせなくなっています。ですから生徒指導が三つ目の段階の
るような学びが、あらゆる教育活動において用意されている
「周囲の環境に満足な適応ができるようになる」ことに注力せ
ことです。すなわち子どもたちが、ある学びの目標に向かって
ざるを得ないのは、十分に理解できます。
学習を進める中で、仲間と意見交換をしたり、学校外の大人
しかし一方で、
「周囲の環境に満足に適応できる」ようにす
にコンタクトを取ったりするうちに、コミュニケーション能力
ることが生徒指導の主眼になっているために、
「賢明な決定と
が鍛えられていく場面を、日常的に設定していることが大切
問題解決のための能力を獲得する」や「民主社会の担い手と
なのです。
して成長する」という高次の段階へと子どもの能力を高めて
逆にいえばこれまでの日本の学校教育は、そうした面をか
いく視点が、今の生徒指導には欠如しています。そのため問
なり疎かにしてきました。よく指摘されるように、高校入試や
題行動を起こす児童・生徒が減少すれば、あるいは教室の荒
大学入試への対応という固有の事情がある日本では、余計な
れが静まれば、「よい状態である」と見なされます。しかし
ことを考えずに入試に必要な内容をできるだけ効率的に覚え
「周囲の環境に満足な適応ができるようになる」ことは、最終
るという方向に教育が偏りがちです。授業の方法も、教師が
ゴールにたどり着くまでの途中経過にすぎません。
子どもたちのコミュニケーション・スキルを高めるための
子どもに知識を一方的に注入するスタイルから抜け出せてい
ません。
取り組みについても、同じことがいえます。スキルを獲得させ
では子どもの学びの中に多様なコミュニケーション活動が
たら、そのスキルを活用して何を目指すのかを、明確に意識
含まれている学習とは、どのようなものなのでしょうか。私が
しておく必要があります。
大きなヒントになる実践として注目しているのが、アメリカの
ミネソタ州にあるミネソタ・ニューカントリースクール(以下
24
プロジェクト・ベース学習が
MNCS)が開発し、欧米に広がりつつあるプロジェクト・ベー
コミュニケーション・スキルを高める
ス学習です。ちなみに MNCS は、中・高校生が学ぶチャータ
前述したように、子どもが基礎的なコミュニケーション・
ースクールです。
スキルを身に付けていない状況では、スキルの習得そのもの
プロジェクト・ベース学習では、生徒が自らの興味・関心、
特集 「コミュニケーション」を考える― 子どもたちの他者とのかかわり―
図表[2]学びのモデルとしての特徴∼関係性の視点から∼
伝統的教授法
プロジェクト・ベース学習による
ラーニング・コミュニティの形成
教師
教師
対面
同行
学び合う関係
関係性の拡大
学習者
学習者
問題意識に沿ってプロジェクトを立ち上げ、課題追究を行う
いる人や住民、専門家など、実在の人物から情報を得ること
学習スタイルをとっています。プロジェクトのテーマは、図表
を必須としていることです。先の「低燃費車の開発」の例で
1 のようなフォーマットに沿って、アドバイザーと呼ばれる教
いえば、自動車メーカーの関係者やユーザー、環境問題の専
師と協力しながら決めていきます。そして生徒は 1 テーマにつ
門家などがインタビュー対象として考えられます。また、教師
き約 100 時間、年間 10 のプロジェクトに臨みます。MNCS で
と生徒が共に「同行者」としての立場で学ぶことで、新たな
は、数学を除いて教科制が廃止されており、すべてのカリキュ
関係性がそこに生まれます。このように、学びの関係が地域
ラムがプロジェクト・ベース学習によって構成されています。
へ広がり、多様になっていくことをプロジェクト・ベース学習
に自由に学習をさせていて、必要とされる学力が本当に付く
インタビューは、非常に高度なコミュニケーション・スキ
のか」ということでしょう。MNCS では、生徒にミネソタ州
ルが要求される行為です。インタビューの対象者がどのよう
で卒業に必要とされる履修単位を示した基準表を渡していま
な情報や問題意識を持っており、それを引き出すにはどんな
す。生徒はプロジェクトを企画するときには基準表を参考に
質問を投げかければよいかを考えなくてはいけません。言葉
しながら、そのプロジェクトに取り組むことでどの教科・領
だけではなく、表情や仕草など非言語的な要素にも意識を向
域の学習ができるかを考えます。例えば「低燃費車の開発」
けることが求められます。あらかじめ質問項目を用意しつつ
をテーマにしたとすれば、
「物理学の法則」の単位を 5 分の 1
も、状況に応じて臨機応変に質問内容を変えていくことも大
単位、
「環境システム」の単位を 3 分の 1 単位取得できるとい
切です。なおかつ、ただ相手に気持ちよく話してもらえばよい
うふうに設定していくわけです。また、各自のプロジェクトの
わけではなく、こちらが欲しい情報を確実に入手できなくて
結果を発表する場を設け、学校が掲げる到達基準を満たして
は、インタビューは成功とはいえません。
いるかを判定します。そして 7 年間のプロジェクト・ベース学
MNCS の生徒たちは、自分の興味・関心に沿って設定した
習を通じて、卒業に必要とされるさまざまな教科・領域を学
課題を追究するために、こうした真剣味溢れるインタビュー
んでいきます。このようにして生徒の興味・関心に沿った学
を、卒業までに携わる 70 ものプロジェクトの中で繰り返し経
習と、学力保障の両立を図っています。MNCS の生徒たちは、
験していくことになります。プロジェクト・ベース学習では、
定期的に行われる州の学力テストでも高水準の結果を残して
学びの中に子どもたちのコミュニケーション・スキルを磨く
います。
機会が日常的に盛り込まれているのです。
さて、このプロジェクト・ベース学習において重要なポイ
MNCS のもう一つの特徴は、
「有能な社会人の育成」という
ントであるのが、プロジェクトを進めるときに、地域で働いて
教育目標を明確に掲げ、生徒に示していることです。生徒は
2008
では「ラーニング・コミュニティ」と呼んでいます(図表 2)
。
NO.11
こうしたプロジェクト型の学習で危惧されるのは、
「子ども
25
コミュニケーション・スキルを高めるプロジェクト・ベース学習
Interview
プロジェクトの企画書を書くときには、必ずプロジェクトごと
図表[3]自律学習者のための評価基準表
に「学校を卒業した後、あなたのプロジェクトをどう生かして
いきますか。あなたが住む地域社会、世界にとってこのプロジ
ェクトの重要性はどこにありますか」という問いに答えなくて
はいけません。つまり生徒たちは、自分が設定した課題が、社
会の課題とどのような関わりを持っているかを常に意識せざ
るを得ないわけです。
さらに生徒には、有能な社会人になるために必要な資質・
能力を示した「自立学習者のための評価基準表」が手渡され、
プロジェクトが終了するごとにそれを見ながら、そうした資
質・能力がどれだけ獲得できたかを自己評価します。評価基
準表は「プロジェクトの基礎的スキル」
「批判的思考スキル」
ラ
イ高
フ パ フ
ォ ー マ ン
ス ・評
ス
キ価
ル
︵ リーダーとまとめ役
他がついてくる、見通しを持つ、結果
を出す、他を尊重する、時間の効果
的利用ができる、優先事項を理解す
る、
やり抜く、代表ができる
仲介役と交渉役
問題解決策を探し出す、問題解決の
ために意見を述べる、尊敬心を示す
ことができる、
オープンマインドである、
積極的に耳を傾ける
次のことを始める、見通しを立てる、 問題点に対する知識がある、事実に
指導力を発揮しようとするがうまくい 基づくコミュニケーション能力がある、
実践的解決策を見つけようとしている、
かない
耳を傾ける
プ ロ
ジ
ェ
ク
ト
ご
と
の
評
価
低
実際的ではない、
見通しを立て始める、
協力者がいない、 問題解決を試みるが、
実際にリードできない、
目標達成まで 問題意識はあるが効果的な交渉が
できない、関係を築けない
やり通せない
他に悪い影響を与える、
目標がない
状況を乱す
︶
上杉賢士・市川洋子著『プロジェクト・ベース学習で育つ子どもたち
∼日米18人の学びの履歴∼』を基に作成
「ライフパフォーマンス・スキル」
「特定のプロジェクトには関
係付ける必要のないスキル」の四部構成となっており、
「ライ
イディアに対して、私は「全面的に協力したい」と申し出ました。
フパフォーマンス・スキル」では、
「リーダーとまとめ役」
、あ
2006 年 2 月、市長は千葉県東総文化会館に集まった旭市内
るいは「仲介役と交渉役」として、コミュニケーション能力を
「旭市を日本一の町にするために、
の中学 1 年生全員に対して、
どれだけ発揮することができたかをチェックすることになって
ぜひ皆さんのご意見を頂きたい」と語りかけました。続いて私
。
います(その後、年々改良されている)
(図表 3)
が、プロジェクト・ベース学習のオリエンテーションを生徒に
私は冒頭で目的と手段の話をしましたが、MNCS のプロジ
ェクト・ベース学習では、目的は「有能な社会人の育成」で
実施。またその後も、教師を対象にした研修会を何度も開催
しました。
あり、そのための手段の一つとして「コミュニケーション能力
こうして「総合的な学習の時間」を使った一大プロジェク
の育成」が位置付けられています。目的と手段の関係がはっ
トがスタート。約 650 名の生徒が計 126 ものプロジェクトを
きりとしています。
起こし、その年の夏に提言としてまとめられました。
中でも印象深かったのは、K さんの「旭市の交通を便利にし
中学生が市に政策を提言
よう∼高齢化社会に向けて∼」という提言でした。旭市には市
実際に市政に反映される可能性も
が運営しているコミュニティバスが走行していますが、K さん
教科中心のカリキュラム編成であり、しかも知識習得型の
は「自分が住んでいる H 地区は、バスの本数が少なく不便であ
授業スタイルになっている日本の学校教育において、今すぐ
る」と感じていました。そこでほかの市民の意見を聞くため
MNCS 型のプロジェクト・ベース学習を全面的に導入するの
に、旭駅で街頭インタビューを敢行。その結果、どの年代も共
は難しいのかも知れません。現状では、まず学ぶべき内容が特
通して交通の不便さを感じているということが分かりました。
定されていない「総合的な学習の時間」に、いかにプロジェク
次に K さんは市役所を訪問して、市内循環バスを走らせる
ト・ベース学習の思想を組み込んでいくかが、子どもが学び
ことはできないかを尋ねました。担当者は、
「走らせることは
の中でコミュニケーション能力を伸ばしていけるかどうかの
可能だが、運転手を雇用する財源が乏しい」と答えました。
鍵を握っていると思います。私が実際に携わった例を一つ紹
介しましょう。
千葉県の房総半島の東端に、旭市という人口約 7 万人余りの
市があります。その旭市の市長が向こう 10 年間の総合計画を立
26
バスの走行本数を増やすのには限界があるようです。しか
し交通網の整備は必要です。特に K さんが意識したのが、バ
スしか交通手段がない高齢者の存在でした。
K さんは、地区別の高齢者人口と、バスの走行本数を調べ、
てる上で、市内の中学生の意見を反映させたいという意向を持
地区別にバス 1 台当たりで高齢者を何人抱えているかを算出
っていることが私に伝わってきました。例を見ない画期的なア
してみました。すると K さんが住んでいる H 地区と A 地区が、
特集 「コミュニケーション」を考える― 子どもたちの他者とのかかわり―
突出して抱えている高齢者の数が多いことが判明しました。
ただし A 地区には JR が走っており、バス以外の移動手段があ
ります。しかしバスに頼るしかない H 地区の高齢者にとって、
この状況は極めて深刻です。
こうした事実を踏まえた上で、K さんは旭市に「高齢社会
を迎えるに当たって、お年寄りに生き生きと活動してもらう
ためにも、またお年寄りと若者の交流の機会を確保するため
にも、交通網の再整備が不可欠である」と提案したのです。
プロジェクト・ベース学習では実在の人物から情報を得る
ことが必須となっていますが、K さんは市民への街頭インタビ
ューや市役所の担当者へのインタビューでそれを行いました。
さらに高齢者という自分とは違う立場にいる人たちのことを
念頭に置きながら、今回の提言をまとめています。他者とコ
ミュニケーションを取りつつ、かつ地域や地域に住む人々の
ことを考えながら学びに取り組む。旭市の中学生たちにとっ
ては、非常に大きな経験になる共に、今後こうした活動を続
けるモチベーションにもなったと思います。
『旭市総合計画』の中に「コミュ
ちなみに K さんの提言は、
ニティバスについては、高齢化による交通弱者の増加や公共
施設を結ぶ手段として市民のニーズは高まっており、利便性
を確保しながら、効率よく運行することが課題となっていま
す」
「より効率的なルートとするため、調査・検討を行い再編
します」という文言として盛り込まれています。この総合計画
には、ほかの中学生の提言も数多く反映されています。
では「探究型」を展開するときに、モデルとなる学びとして
何があるかといえば、私はプロジェクト型学習をおいてほかに
次期指導要領に通じる
ないと思います。前述したようにプロジェクト・ベース学習
「探究型」学習の可能性
は、現状では「総合的な学習の時間」で最も効果的に活用で
の育成を図る「探究型」
、習得型と探究型をつなげる「活用型」
そこでも有効に機能させることが可能になります。
子どもたちのコミュニケーション・スキルが危機的な状況
の三つの学びの態様を提起しています。私は中教審が「探究
を迎えているのなら、日常的な授業を通して子どもたちがコ
型」に言及していることに注目しています。
ミュニケーション能力を高め合っていく場を、意識的につく
PISA 型学力では、知識習得型の学力ではなく、理解力や判
り出していかなくてはいけないと思います。
断力、論理構成力を学力とみなしていますが、先に国内で行
われた全国学力・学習状況調査は、この PISA 型学力を測る内
容となっていました。恐らく国はこれからの時代に必要な学
力として、PISA 型学力を想定しているものだと思われます。
中教審が「探究型」や「活用型」の学びに言及しているのも、
そうした背景があるのでしょう。
References
●「PBL ブックレット創刊号∼学びから始まる教育改革∼」特定非営利活動法
人日本PBL研究所編/特定非営利活動法人日本PBL研究所/2007年
●『学びの情熱を呼び覚ますプロジェクト・ベース学習』ロナルド・ J ・ニュ
ーエル著/上杉賢士・市川洋子監訳/学事出版/2004年
●『行為する授業∼授業のプロジェクト化をめざして∼』H.グードヨンス著/
久田敏彦他訳/ミネルヴァ書房/2005年
●『新版カリキュラム研究入門』安彦忠彦編/勁草書房/1999年
2008
な知識・技能の育成を図る「習得型」
、自ら学び自ら考える力
きますが、
「探究型」の学びが各教科に入ってきたときには、
NO.11
現在中教審は、次期学習指導要領の改訂に向けて、基礎的
27
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