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今後のインターネット公報の 在り方に関する 調査研究報告書

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今後のインターネット公報の 在り方に関する 調査研究報告書
平成25年度
特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書
今後のインターネット公報の
在り方に関する
調査研究報告書
平成26年2月
株式会社価値総合研究所
要
約
特許庁は全ての公報の電子化及びインターネットを通じた迅速な提供に際し、改竄防止や提供
調査の目的 方法などの技術・運用と公報に含まれる個人情報の取扱いについて検討する。
論点1:インターネット公報の推進に向けた技術・運用面
論点1-1:インターネット公報における改竄防止等のための技術的対応
論点1-2:利用者の利便性を考慮したインターネットによる公報の提供方法
調査の論点
論点2:インターネット公報の推進に向けた法律面
論点2-1:公報における個人情報の取扱い
論点2-2:データベース提供事業者における公報の個人情報の取扱い
利便性を考慮し
た公報の発行
改ざん防止 のた
めの技術的対応
公報の発行
個人情報
の取扱い
(実用新案、
意匠、商標)
ユーザ
インターネ
ット
電子署名
検証ソフト
情報提供事業者
公開公報等
特許願
明細書等
個人情報
の取扱い
特許庁
出願人
※ネットの情報と同じものをメディ
アで提供(公報情報)
電子署名
検証ソフト
自社DB
SDI調査 等
データベース
提供事業者
検索サービス
公開公報等
( 特許)
審査請求書
自社DB
INPIT(IPDL)
意見書
補正書
拒絶審査不服
審判請求書
出願
マスター
データ
公報情報
審判情報
審決公報
審査書類情
報
特許料
納付書
インターネット
出願ソフト
公報情報
書誌・
経過情報等
重複排除・
標準化
※オンライン閲覧機能
で閲覧可能(閲覧は
有償)
WIPO,EPOなど海外知財庁
PATENTSCOPE
(WIPO)
国内外
公開情報調査
経過情報
整理標準化
データ
検索
サービ
ス
インター
ネット
個人情報
の取扱い
整理標準化
データ
整理標準化
データ
INPIT
国内アンケート 調査
サイト閲覧
論点1
個人情報
の取扱い
論点2
国内ヒアリング調査
海外ヒアリング調査
調査の方法
委員会
調査の結論
論点1-1
改竄防止等対策としては、SSLサーバ証明方式とする。
論点1-2
上記論点1-1のSSLサーバ証明方式に変更する場合であっても、公報(XML、
図面)とともにPDFも提供する。発行頻度は週次、発行時間は夜間とする。
論点2-1
公報にかかる個人情報は、出願人・発明者とも住所の概略表示を基本とする。
論点2-2
データベース提供事業者においては、公報に関する個人情報が第三者提供に
なると懸念されることから、現行の枠組みにおいてはオプトアウトの対応を図るこ
とが望ましい。
- i -
1.調査目的
平成 25 年 3 月 15 日に改定された最適化計画において、特許庁からの産業財産権情報の
提供に関連して、
「情報発信力の強化とユーザの利便性向上」が目標として掲げられ、具体
的な施策として、
「特許等に関するインターネット公報対応による迅速化」及び「ユーザへ
の情報提供の迅速化や API の提供の検討」が記載されている。
かかる最適化計画を踏まえ、特許庁は全ての公報の電子化及びインターネットを通じた
迅速な提供について検討を進めていく必要がある。この検討に際しては、実装上の課題や
法律上の課題等、整理していくべき課題が複数存在する状況である。
本調査事業では、特許庁が既にインターネット化している公報の実績や他庁におけるイ
ンターネット・データ提供サービスの実態を踏まえつつ、上記各種課題に関する諸外国に
おける状況の確認、ユーザニーズの調査等を行い、法制度の観点も視野に入れて各種課題
の解決方針や具体的実現方法を取りまとめ、最適化計画に掲げられている上記施策を実行
するための基礎資料とする。
2.本調査における論点
本調査における論点としては、下記の 4 点である。
論点 1:インターネット公報の推進に向けた技術・運用面
論点 1-1:インターネット公報における改竄防止等のための技術的対応
論点 1-2:利用者の利便性を考慮したインターネットによる公報の提供方法
論点 2:インターネット公報の推進に向けた法律面
論点 2-1:公報における個人情報の取扱い
論点 2-2:データベース提供事業者における公報の個人情報の取扱い
3.調査内容・方法
(1) 委員会による検討
本調査研究に関して専門的な視点から検討、分析、助言を得るために、本調査研究に関
して専門的な知見を有する学識経験者等7名で構成される調査研究委員会を設置し、3回
開催した。
(2) 国内外公開情報調査
書籍、調査研究報告書、審議会報告書及びインターネット情報等を利用して、本調査研
- ii -
究の内容に関する文献等を調査、整理及び分析し、アンケート調査、ヒアリング調査及び
委員会における検討の基礎資料とした。
(3) 国内アンケート調査
インターネット公報の推進にあたり、個人情報保護、情報の提供方法(電子認証の必要
性)など、特許庁もしくは特許電子図書館(Industrial Property Digital Library、以下、
「IPDL」という。)における情報提供・検索サービスの利用状況、範囲や質について意向を
把握することを目的に実施した。また、ヒアリング対象者を抽出するための資料とした。
アンケート調査は、公報等を利用して各種サービスを提供する情報提供事業者を対象と
した「情報提供者向けアンケート調査」と、公報等を利用する我が国企業、弁理士事務所
等を対象とした「ユーザ向けアンケート調査」の二種類を実施した。
(4) 国内ヒアリング調査
前述の国内アンケート調査の結果を踏まえ、インターネット公報及び DVD-ROM 公報を利
用している回答者(情報提供事業者 6 者、エンドユーザ 3 者)を対象に、アンケートでの
回答内容の補足及び本調査で検討している対応策に関する考えについてヒアリングを実施
した。
なお、国内ヒアリングの結果については、委員会の方針検討の材料とすると共に、本報
告書の総合的な取りまとめに活用した。
(5) 海外ヒアリング調査
国内外公開情報調査から得られた情報を補足するため、WIPO、EPO(欧州)、USPTO(米国)、
DPMA(ドイツ)、KIPO(韓国)の 5 か国・地域における知財庁を対象にヒアリング調査を実
施した。
なお、海外ヒアリングの結果については、委員会の方針検討の材料とすると共に、本報
告書の総合的な取りまとめに活用した。
4.インターネット公報の推進に向けた技術面・運用面について
(1)インターネット公報における改竄防止等のための技術的対応(論点 1-1)
現行のインターネット公報において、特許庁は公報データをダウンロードする者に対し
て、ダウンロードする当該ファイルが特許庁から提供したものであり、改竄されていない
ことを保証している。
- iii -
今後、特許や審決がインターネット公報として提供される場合、その案件数や容量が従
来の実用新案、意匠、商標と比べても多く、ユーザにとって、大量のファイルのダウンロー
ドや電子署名の認証作業が必要となること、あるいは特許庁にとっても電子署名の有効期
限切れにかかる再付与作業が発生することなどが課題である。
そのため、現在の改竄防止対策と同等の安全性を確保しつつ、利便性等を考慮した公報
の発行の在り方について、下記に示すように電子署名もしくは SSL サーバ証明を用いた改
竄防止対策について 5 つの案を設定し、それぞれ案についてセキュリティ面、ユーザ利便
性、運用面、法的側面、困難性(実現可能性)の観点から比較検討した。
特許庁とユーザ間における
改竄防止等の技術対策
対応案
電子署名
付与
電子文書単位での
改竄防止等の対応単位
単件ごとに付与
発行単位に付与
(現行)
証明の更新
有効期限が切れる前に
再付与を行う
案1-1
有効期限が切れたあとは
再付与しない
案1-2
有効期限が切れる前に
再付与を行う
有効期限が切れたあとは
再付与しない
SSLサーバ証明
XMLファイル
(セキュリティなし)
SSLサーバ証明の
更新は行う
案1-3(現行方式)
案1-4
案2
案 1 は、電子署名を利用することにより、入手したファイルの出所が特許庁であること、
特許庁から入手したファイルが改竄されていないことを保証するものである。ユーザは当
該電子署名付きのファイルをダウンロードし、電子署名の認証作業することでアーカイブ
された公報ファイルを取得することができる。
現在のインターネット公報は案 1-3 の提供方式であり、週次で発行された公報(XML、図
面、PDF)を発行日単位でアーカイブした後、アーカイブしたファイルに対して電子署名を
付して提供している。したがって、解凍後の単件毎の公報には改竄防止対策がとられてい
るものではない。つまり、ユーザが第三者にある特定の公報を提供(二次提供)する場合、
ユーザと第三者間の改竄防止までは担保されていない。
一方、案 1-1 及び案 1-2 は、案 1-3-及び案 1-4 と異なり、発行日単位では無く単件毎で
の電子署名を付した提供となる。ユーザが当該単件の公報を解凍せずに第三者に提供(二
次提供)した場合でも当該単件の公報ファイルに電子署名が付与された状態が確保される。
しかしながら、ユーザ利便性からみると、公開特許公報のように1発行あたりの掲載件数
が多い場合は一つ一つの電子署名の検証やダウンロードなどが必要となり、案 1-3 と比べ
ると劣後する。運用面では多数の公報に電子署名の付与するためのサーバ数を増やすこと
で分散処理が可能となるが、コストを勘案する必要がある。
案 1-2 及び案 1-4 は、案 1-1 及び案 1-3 と異なり、電子署名の有効期限が切れた場合に
- iv -
は再交付しない方法である。再交付しない分運用面の負担は軽減するが、有効期限切れし
た公報はセキュリティ面で改竄防止措置がとられないこととなり、有効期限切れした公報
にアクセスしたいユーザの利便性が下がる懸念がある。
案 2 は、案 1 と異なり、電子署名ではなく SSL サーバ証明により特許庁と利用者間の改
竄を防止する方式である。改竄防止の手法としては、ユーザに入手先のインターネット公
報発行サイトが特許庁サイトであることを保証し、かつ、特許庁とユーザ間の通信による
改竄の防止を担保する点では案 1-1~1-4 と同等である。また、特許庁の公報発行の目的や
利用者のニーズを考慮しても、特許庁の公報発行時のセキュリティとして、特許庁とユー
ザ間の改竄防止を担保すれば十分で有り、当該公報のユーザ間の二次提供時の改竄防止ま
では求められていないと考えられるから、案 2 は、現行の案 1-3 の電子署名と同等のセキュ
リティレベルを担保できる。
また、案 2 の場合、提供するファイルは XML など生データである(ファイルには暗号化
処理を施さない)ため、利用者は特許庁のインターネット発行サイトからダウンロードす
るだけで、当該ファイルを利用することができるため、案 1 の電子署名の方式よりユーザ
利便性も高い。運用面でもサーバ側のサーバ証明書を更新すればよいなど、案 1 と比較し
ても同等もしくは良くなる。
なお、アンケート調査やヒアリング調査等により現行と同等の改竄防止対策が採られて
いる SSL サーバ証明方式でも問題ないといった意見も多くあった。
したがって、今後インターネット公報を特許・審決等に拡張していく際には、現状と同
等のセキュリティレベルは確保しつつ、ユーザ利便性、運用面が向上する案 2(SSL サーバ
証明による提供)で対応することが最も望ましいと考えられる。ただし、案 2 については
省令改正の必要性があるため、省令改正が行われるまでは当面の間、案 1-3 もしくは案 1-4
で運用しつつ、省令改正後は速やかに案 2 で対応することも考えられる。
(2)利用者の利便性を考慮したインターネットによる公報の提供方法(論点 1-2)
利用者の利便性を考慮したインターネットによる公報の提供にあたっては、以下のよう
な課題があげられる。
・ 特許に関して現行の意匠・商標等と同様の発行方法(電子署名の付与)を継続した場
合、特許については、意匠・商標と比べて発行対象となる情報量が多くなるため、結
果、ユーザはダウンロードの回数や電子署名の検証作業が増え、ユーザ利便性が低下
するため、発行頻度、単位の見直しが必要となる。
・ 今後、発行済み公報を随時蓄積し、オンラインで入手可能とする場合、それに対応し
たストレージ容量も確保する必要があるため、過去の公報をどこまでオンラインで入
手可能とすることがユーザの利便性との関係で効率的であるか、また、ストレージの
制約により一定期間のみオンラインで入手可能とする場合、オンラインで入手可能と
した期間以前の公報を入手するための手段の確保をどうすべきか検討する必要がある。
- v -
アンケート調査によりインターネット公報の利用者は情報提供事業者が大半であり、エ
ンドユーザは IPDL や民間のサービスを利用していることが明らかとなった。
そのため、インターネット公報の主たる対象利用者を情報提供事業者とし、アンケート
調査およびヒアリング調査などを踏まえ、インターネット公報の提供方法としては下記が
望ましいとした。
表-インターネット公報の提供方法
項目
対応策
発行頻度
現在と同じ「週に 1 回程度」を基本とする。
ファイル提供形式
公報は XML 形式のファイルであるが、情報提供事業者の顧客におい
て PDF での利用ニーズも高いことから引き続き PDF の提供も行う。
その場合、XML、図面、PDF を一括で提供する現行の方法の他、情報
量の多さに鑑み、XML、図面と PDF を分けて提供する方法も検討する。
発行単位
ファイルの発行単位は、対象ユーザが主に情報提供事業者向けと
なっていることも鑑みれば、複数件数纏まった形式での提供が望ま
しい。
今後、対象ユーザをエンドユーザとするような場合においては、1 件
単位を最小と単位としつつ、週次は纏めてダウンロード出来るなど、
ユーザインターフェースにおいて双方選択できる仕組みの検討も必
要となると考えられる。
提供期間(ダウン
ロード可能期間)
情報提供者、エンドユーザともオンラインで入手可能な情報の提供
期間は長ければ長いほどよいが最低1年間程度は蓄積されているこ
とが望ましい。なお、サーバ上での掲載期間を超えた公報について
は別途入手できる手段の確保が必要である。ヒアリング調査におい
ては、サーバ上での掲載期間は、発行後数ヶ月でもよいものの、バッ
クアップとしての媒体での提供に関する要望もあった。
発行時間
発行時間は、業務開始時間などを踏まえて現行の夜間の要望が高い
ことから、夜間とする。
5.インターネット公報の推進に関する法律面について
(1)公報における個人情報に関する取扱い(論点 2-1)
特許庁では特許法等に基づき、出願人等の個人情報を取得し、またこれを公報の掲載項
目として公開している。
しかしながら、IPDL などインターネットを用いた検索サービスに蓄積された公報情報の
- vi -
項目として氏名及び住所が掲載されていることについて、昨今のインターネットの爆発的
普及や個人情報保護に対する意識の高まりを鑑みれば、今後、公報に掲載される氏名、住
所又は居所等をマスクや省略するなどの配慮を行うことも考えられる。一方で、特許を有
することを主張したい、積極的に公開したいという出願人・発明者のニーズや、産業財産
権情報を活用する際の手がかりの一つとしても利用されていることを考慮すると、一概に
公報から氏名・住所をマスクするなどの対処が適切とも言えない。また、諸外国では、日
本と同様に公報に住所や氏名を掲載しているものの、住所については都市名までの概略表
示としている場合も多い状況である。
本調査では、特に論点となる発明者及び出願人の「住所」の取扱いについて重点的に検
討を行った。検討にあたっては、出願から対外提供サービスまでにおける個人情報の取得・
提供の段階別に対応策を整理し、次に当該段階における住所の公開・非公開の判断のタイ
ミングによる取扱いの対応案を検討した(下図参照)。
案C-2:情報提供事業者で非表示
個人情報
(氏名・住所)
の取扱い
特許庁
出願人
案D:個人情報取扱の説明
強化(実体的な対応なし)
個人情報
(氏名・住所)
の取扱い
公報の発行
インターネット
公開公報等
情報提供事業者
(実用新案、
意匠、商標)
特許願
明細書等
データベース提供事業者
※ネットの情報と同じ
ものをメディアで
提供(公報情報)
電子署名
検証ソフト
自社DB
出願
マスター
データ
個人情報
(氏名・住所)
の取扱い
特許料
納付書
インターネット
出願ソフト
案A:出願時対応
(法改正)
SDI調査
翻訳 等
自社DB
INPIT(IPDL)
拒絶審査不服
審判請求書
検索サービス
電子署名
検証ソフト
公開公報等
(特許)
審査請求書
意見書
補正書
ユーザ
公報情報
公報情報
審判情報
審決公報
整理標準化
データ
検索
サービス
インターネット
サイト閲覧
審査書類情報
書誌・
経過情報等
重複排除・
標準化
個人情報
(氏名・住所)
の取扱い
経過情報
※オンライン閲覧機能で
閲覧可能(閲覧は有償)
WIPO,EPOなど海外知財庁
案B:公報発行時
(法改正)
PATENTSCOPE
(WIPO)
整理標準化
データ
整理標準化
データ
INPIT
個人情報
(氏名・住所)
の取扱い
図-個人情報の取得・提供の段階別対応策
- vii -
案C-1:IPDLでは非表示
個人情報の取得・提供の段階
住所の公開・非公開の判断のタイミング
案A
出願時対応
案B
公報発行時対応
案1:住所は非公開(概略表記)
案2-1:住所の公開・非公開を事前選択
(公開公報時の判断が継続)
公開公報、審決公報、権利公報
案2-2:公開後、申告に対応
(オプトアウト的対応)
特許庁から要請
案C 公報発行後
対外提供サービス時
案1:住所は非公開(概略表示)
案C-1
IPDL検索サービスで非表示
案2-1:住所の公開・非公開を事前選択
※案Bの判断が継承される(INPIT,民間事業
者が本人に確認するものではない)
案C-2
民間事業者サービスで非表示
案D
個人情報の取り扱いに関する説明強化(実体的な対応無し)
特許庁から要請
案2-2:公開後、申告に対応
※データベース提供事業者は、オプトアウト対
応+特許庁からの要請
図-公報における個人情報(住所又は居所)の取扱いの対応策
案 A~D について、産業財産権の周知等、個人情報の流通範囲等の観点からメリット・デ
メリットを整理した。
(i)案 A:出願時に住所の詳細を取得しない
出願時に特許庁が住所等を取得しないため、特許庁自体が当該個人情報を利用できず、
産業財産権の周知や第三者が権利者へのアクセス性が低下するほか、特許庁が出願人との
連絡がとりにくいという事務処理上のデメリットが大きいことから適切ではない。
(ⅱ)案 D:出願時に個人情報の取扱いについての説明を強化する
IPDL や公報サイトへの掲載に関して、案 A~C に関わらず特許庁や関係機関で取り組む
べき事項である。
具体的にはガイドラインの作成や出願ソフトの改造などが考えられる。
(ⅲ)案 B:公報発行時に対応
公報発行時に対応することにより、当該公報を利用する川下の IPDL やユーザも含む民間
事業者に個人情報が提供されないため、個人情報保護の観点から効果が大きい。一方で、
例えば、出願人や発明者の住所を概略表示にした場合、権利者等へのアクセス性や同一人
物の識別性の低下などが懸念されるが、情報提供事業者及びエンドユーザへのヒアリング
によれば、原簿の閲覧など所定の手続きを踏んで入手が可能ならば、業務に大きな支障を
- viii -
与えるほどの問題にはならないと考えられる。
また、後述の案 C-1、C-2 とは異なり、公報と IPDL あるいは情報提供事業者が提供する
情報に差異がなくなるため、ユーザが混乱することもない。
(ⅳ)案 C-1:IPDL で非表示
IPDL のみで対応した場合、IPDL で概略表示した場合でも、別途、公報からは個人情報の
入手可能な状態であるため、個人情報保護の観点からは十分ではない面がある。
しかしながら、案 B の実現には法改正が必要となるため、その実現までは、対応につい
て法改正が特段不要である IPDL について先行的に対応することも想定される。
(ⅴ)案 C-2:情報提供事業者で非表示
情報提供事業者のみで対応した場合、不特定多数の人が容易に閲覧できる公報や IPDL
から個人情報の入手が可能であるため、個人情報保護の観点からは十分でない面がある。
情報提供事業者1がオプトアウト(個人情報保護法第 23 条第 2 項)の対応を図れば、個
人情報保護法上の対応は実施されることになる。
しかしながら、ヒアリング調査等によれば情報提供事業者のサービスは主に法人向けの
ユーザ数が限定されたものであるため、不特定多数のアクセスがある訳でもなく、実際、
個人情報に関するクレームがほとんどない。さらに、情報提供事業者においてオプトアウ
トで対応することによる影響(例えば、既に流通してしまった個人情報の事後的な削除を、
多数の情報提供事業者に求めていくことは、非現実的である)を踏まえると、個人情報を
情報提供事業者のみが非表示とすることで得られる効果は低いと想定される。
したがって、案 C-2 は、仮に実施するにしても、単独での実施ではなく、案 C-1 とあわ
せた対応が望ましい。
(vi)住所の公開・非公開の判断のタイミングについて
上記案 B 及び C-1 において、住所の非表示の判断のタイミングとしては、案 1~案 2-2
(案 2-1、案 2-2 は特許庁からの要請)が考えられるが、案 2-2 の事後的な対応を行うよ
りも、事前の対応が可能となる、案 1(非公開)もしくは案 2-1(事前選択)が望ましいと
考えられる。出願人・発明者の個々の意見を反映させるならば、案 1 より案 2-1 が望まし
いが、出願人・発明者毎に対応が異なると、第三者が混乱する上、出願人・発明者間で公
平性が担保できないため、案 1 の一律非公開(概略表示)とすることが望ましい。
1
オプトアウトが必要となる情報提供事業者は、後述する「(2)データベース提供事業者における個人情報の取扱い」で
定義する「データベース提供事業者」が該当する。
- ix -
(2)データベース提供事業者における個人情報に関する取扱い(論点 2-2)
本調査では、案 C-2「情報提供事業者で非表示」を採用した場合の運用(特に、
「データ
ベース提供事業者」での対応)について更に検討を行った。
ここで、「データベース提供事業者」とは、情報提供事業者のうち、特許庁及び IPDL か
ら提供される公報及び公報情報をもとに個人情報を含むデータベースを構築し、オンライ
ン検索サービスなどにより、当該データベースを第三者に提供している事業者とする。
データベース提供事業者が特許庁からの産業財産権情報を取り扱う上で課題となる事項
としては以下のとおりである。
・ 特許庁ホームページ「出願にかかる個人情報について」において特許庁としての個人
情報の利用目的を提示しているが、これが出願人等に十分に認識されていない可能性
がある。
・ データベース提供事業者が公報に含まれる個人情報を取得することは問題ないが、こ
れをさらに第三者へ提供することを本人から明示的に同意を得ているとは言い難い。
公報で提供された個人情報のデータベース提供事業者から第三者への提供に関しては、
現行の枠組みでは本人からの同意を得て取得した個人情報とは言いがたいため、この場合、
個人情報保護法上は、データベース提供事業者が個人情報取扱事業者として個別にオプト
アウトの対応を図るべき事案と解される。一方、データベース提供事業者は、特許庁から
受領したデータを加工・改変せずに第三者へ提供していること、あるいは公報の情報を改
変せずにそのまま用いてサービス提供することがデータベース提供事業者のサービスの信
頼性を担保しているというのが現状である。特許庁としては、このような状況を踏まえ、
公報情報の利用と保護のバランスを図りながら、データベース提供事業者への対応を促し
ていく必要がある。
また、個人情報保護法上、データベース提供事業者が発明者等からの利用停止の申請に
応じてオプトアウトの対応を図った場合でも、発明者等から個人情報の利用停止の申請を
受けた当該データベース提供事業者は、特許庁や他の事業者へ当該利用停止の申請に関す
る情報を提供・報告する義務はない。そのため、一般的に、発明者等は、各データベース
提供事業者の存在を把握した上で、各データベース事業者に対して利用停止の申請手続き
を行う必要があるため、多大な労力を要することとなる。
そのため、例えば、特許庁において発明者等から個人情報の利用停止にかかる申請を受
付、これをデータベース提供事業者へ削除や非公開の依頼を行うことも一案として考えら
れる。
なお、上記の特許庁がデータベース提供事業者等に個人情報の利用停止等の依頼を行う
案の場合、データベース提供事業者には本人からではなく特許庁から利用停止の連絡を受
けることとなるため、個人情報保護法に基づく、利用停止等(個人情報保護法第 27 条)や
オプトアウト(同法第 23 条 2 項)による手続きとはならない。
- x -
したがって、特許庁とデータベース提供事業者との関係においては、公報を入手する際
に利用規約を提示し、契約に基づく対応を促すことが考えられる。
- xi -
今後のインターネット公報の在り方に関する調査研究委員会名簿
委員長
南 孝一
委
日本国際知的財産保護協会
理事長
員
江幡
奈歩
阿部・井窪・片山法律事務所
加藤
義宣
富士通(株) 知的財産権本部 知的財産・スタンダード戦略統括部 部長
坂本
智弘
日本弁理士会特許制度運用協議委員会
瀬戸
洋一
産業技術大学院大学情報アーキテクチャ専攻 教授
竹内
英二
(一社)日本情報経済社会推進協会
中島
栄輝
(株)発明通信社 常務取締役
弁護士
委員長
電子署名・認証センター 副センター長
(50 音順 敬称略)
オブザーバ
森藤 淳志
山本 浩市
赤穂 州一郎
清藤 弘晃
本多
山永
清川
青嶋
加藤
山中
鈴木
仁
滋
恵子
恭一
博英
隆幸
貴久
事務局
青木 成樹
井上 陽介
山口 まみ
丸山 智由
特許庁 総務部 総務課 情報技術統括室 特許情報企画室長
特許庁 総務部 総務課 情報技術統括室 知的財産情報分析官
特許庁 総務部 総務課 情報技術統括室 特許情報企画調査班長(室長補佐)
特許庁 審査第一部審査官(計測(距離・電器測定))
(元総務部 総務課 情報技術統括室 特許情報企画室長補佐)
特許庁 総務部 総務課 情報技術統括室 特許情報企画調査係長(室長補佐)
特許庁 総務部 総務課 情報技術統括室 意匠計画係長(室長補佐)
特許庁 総務部 総務課 情報技術統括室 商標計画係長(室長補佐)
特許庁 総務部 普及支援課 公報企画班長(課長補佐)
特許庁 総務部 普及支援課 公報企画班
特許庁 総務部 企画調査課 研究班長(課長補佐)
特許庁 総務部 企画調査課 研究班
株式会社価値総合研究所
株式会社価値総合研究所
株式会社価値総合研究所
株式会社価値総合研究所
主席研究員
主任研究員
主任研究員
副主任研究員
目
次
I. 調査概要 ..................................................................
1. 調査目的 ..................................................................
2. 本調査における論点 ........................................................
3. 調査内容・方法 ............................................................
(1) 委員会による検討 ..........................................................
(2) 国内外公開情報調査 .......................................................
(3) 国内アンケート調査 .........................................................
(4) 国内ヒアリング調査 .........................................................
(5) 海外ヒアリング調査 .........................................................
1
1
1
2
2
2
2
3
4
II. 産業財産権情報の提供に関する動向及び既往調査 ............................. 5
1. 公報発行の目的と役割 ...................................................... 5
2. インターネット公報とは .................................................... 5
3. 国の行政機関における公報等の発行状況 ...................................... 8
(1) 技術的な対応例 ........................................................... 8
(2) 個人情報に関わる対応例 ................................................... 10
4. 近年の個人情報保護に関する動向把握 ....................................... 14
(1) 近年の個人情報保護に関する動向 ........................................... 14
(2) 諸外国の状況 ............................................................ 19
5. 本調査の論点に関する既往調査の整理 ....................................... 21
(1) 平成 10 年度「オンライン(インターネット)による公報発行に関する調査研究報告書」 ... 21
(2) 平成 22 年度「産業財産権情報提供サービスの現状と今後に関する調査報告書」 ..... 21
III. 諸外国・地域の動向 .....................................................
1. WIPO .....................................................................
(1) 産業財産権情報のインターネット提供について .................................
(2) 特許情報のインターネット提供における技術面、運用面での対応 ..................
(3) 特許情報の提供と個人情報保護について .....................................
(4) 産業財産権及び個人情報保護に関する法令・規則等の変更について ..............
2. EPO ......................................................................
(1) 産業財産権情報のインターネット提供について .................................
(2) 特許情報のインターネット提供における技術面、運用面での対応 ..................
(3) 特許情報の提供と個人情報保護について .....................................
(4) 産業財産権及び個人情報保護に関する法令・規則等の改正事項等 ................
(5) 民間の情報提供事業者への対応について .....................................
3. DPMA .....................................................................
24
24
24
27
29
31
31
31
34
35
36
36
37
(1) 産業財産権報のインターネット提供について ...................................
(2) 特許情報のインターネット提供における技術面、運用面での対応 ..................
(3) 特許情報の提供と個人情報保護について .....................................
(4) 民間の情報提供事業者への対応について .....................................
4. USPTO ....................................................................
(1) 産業財産権情報のインターネット提供について .................................
(2) 特許情報のインターネット提供における技術面、運用面での対応 ..................
(3) 特許情報の提供と個人情報保護について .....................................
(4) 産業財産権及び個人情報保護に関する法令・規則等の改正事項等 ................
(5) 民間の情報提供事業者への対応について .....................................
5. KIPO .....................................................................
(1) 産業財産権情報のインターネット提供について .................................
(2) 特許情報のインターネット提供における技術面、運用面での対応 ..................
(3) 特許情報の提供と個人情報保護について .....................................
37
39
39
40
42
42
43
44
46
46
46
46
48
48
(4) 産業財産権及び個人情報保護に関する法令・規則等の改正事項等 ................
(5) 民間の情報提供事業者への対応について .....................................
6. 我が国におけるインターネット公報との比較 .................................
(1) 公報の改竄防止に関する技術的対応について .................................
(2) 個人情報及び民間提供事業者への対応 ......................................
51
51
52
52
55
IV. インターネット公報の推進に向けた技術面・運用面の対応策について .......... 57
1. インターネット公報の改竄防止等のための技術的な対応について ............... 57
(1) 現状と課題 ............................................................... 57
(2) 諸外国の状況 ............................................................ 59
(3) アンケート調査及びヒアリング調査 ............................................ 59
(4) インターネット公報の改竄防止にかかる技術的な対応策案 ........................ 60
(5) 改竄防止にかかる技術的な対応策に関する検討 ............................... 67
2. 利用者の利便性を考慮したインターネットによる公報の提供方法 ............... 71
(1) 現状と課題 ............................................................... 71
(2) 諸外国の状況 ............................................................ 72
(3) アンケート調査及びヒアリング調査 ............................................ 72
(4) 利用者の利便性を考慮したインターネットによる公報の提供方法の検討 ............. 75
V. インターネット公報の推進に向けた法律面について ........................... 77
1. 公報における個人情報に関する取扱い ....................................... 77
(1) 現状と課題 ............................................................... 77
(2) 諸外国の状況 ............................................................ 82
(3) アンケート調査及びヒアリング調査 ............................................ 84
(4) 公報における個人情報の取扱いに関する対応策案 ............................. 87
(5) 公報以外の個人情報の取扱いの考え方 ....................................... 97
2. データベース提供事業者における産業財産権情報の取扱い ..................... 98
(1) 現状と課題 ............................................................... 98
(2) 諸外国の状況 ............................................................ 99
(3) アンケート調査及びヒアリング調査 ............................................ 99
(4) データベース提供事業者における情報の取扱いの対応策について ................ 99
参考資料Ⅰ
参考資料Ⅱ
国内アンケート調査票(様式) ................................... 105
関連条文 ....................................................... 127
I. 調査概要
1. 調査目的
平成 25 年 3 月 15 日に改定された最適化計画において、特許庁からの産業財産権情報の
提供に関連して、
「情報発信力の強化とユーザの利便性向上」が目標として掲げられ、具体
的な施策として、
「特許等に関するインターネット公報対応による迅速化」及び「ユーザへ
の情報提供の迅速化や API の提供の検討」が記載されている。
かかる最適化計画を踏まえ、特許庁は全ての公報の電子化及びインターネットを通じた
迅速な提供について検討を進めていく必要がある。この検討に際しては、実装上の課題や
法律上の課題等、整理していくべき課題が複数存在する状況である。
本調査事業では、特許庁が既にインターネット化している公報の実績や他庁におけるイ
ンターネット・データ提供サービスの実態を踏まえつつ、上記各種課題に関する諸外国に
おける状況の確認、ユーザニーズの調査等を行い、法制度の観点も視野に入れて各種課題
の解決方針や具体的実現方法を取りまとめ、最適化計画に掲げられている上記施策を実行
するための基礎資料とする。
書籍、既往の調査研究報告書、審議会報告書及びインターネット情報等を利用して、本
調査研究の内容について、調査分析及び整理を行い、国内外公開情報調査レポートとして
取りまとめた。
2. 本調査における論点
本調査における論点としては、下記のとおりである。
論点 1:インターネット公報の推進に向けた技術・運用面
論点 1-1:インターネット公報における改竄防止等のための技術的対応
論点 1-2:利用者の利便性を考慮したインターネットによる公報の提供方法
論点 2:インターネット公報の推進に向けた法律面
論点 2-1:公報における個人情報の取扱い
論点 2-2:データベース提供事業者における公報の個人情報の取扱い
- 1 -
3. 調査内容・方法
(1)委員会による検討
本調査研究に関して専門的な視点から検討、分析、助言を得るために、本調査研究に関
して専門的な知見を有する学識経験者等 7 名で構成される調査研究委員会を設置した。
委員会の開催及び検討事項は下表の通り。
開催回
第1回
日時
平成 25 年 12 月 4 日
13:00~15:00
第2回
平成 26 年 1 月 20 日
13:00~15:00
第3回
平成 26 年 2 月 7 日
10:00~12:00
表 I-1 委員会開催状況
議事次第
1.開会
2.挨拶
3.委員紹介
4.議事
(1)本調査の概要
(2)本委員会における論点整理について
(3)今後の調査の進め方について
5.閉会
1.開会
2.議事
(1)第 1 回委員会における指摘事項と対応について
(2)アンケート調査結果の概要について
(3)インターネット公報における個人情報の取扱いについて
(4)インターネット公報における改竄防止等の技術的対応について
3.閉会
1.開会
2.議事
(1)第 2 回委員会における指摘事項と対応について
(2)ヒアリング調査結果の概要について
(3)インターネット公報における個人情報の取扱いについて
(4)本調査のとりまとめについて
3.閉会
(2)国内外公開情報調査
書籍、調査研究報告書、審議会報告書及びインターネット情報等を利用して、本調査研
究の内容に関する文献等を調査、整理及び分析し、国内外公開情報調査レポートとして取
りまとめた。本報告書においてはⅡ~Ⅲにおいて調査した事項を整理している。
(3)国内アンケート調査
インターネット公報の推進にあたり、個人情報保護、情報の提供方法(電子認証の必要
- 2 -
性)など、特許庁もしくは IPDL における情報提供・検索サービスの利用状況、範囲や質に
ついて意向を把握することを目的とした。また、ヒアリング対象者を抽出するための資料
とした。
アンケート調査は、公報等を利用して各種サービスを提供する情報提供事業者を対象と
した「情報提供者向けアンケート調査」と、公報等を利用する我が国企業、弁理士事務所
等を対象とした「ユーザ向けアンケート調査」の二種類を実施した。
アンケート種類
情報提供事業者向け
【情報提供事業者】
産業財産権情報
ユーザ向け
【エンドユーザ】
表
対象
特許情報提供事
業者(87 者)
我が国企業等
(125 者)
弁理士事務所
(54 者)
I-2 アンケート調査対象
公報との関わり
選定基準
公報情報の二次利 特許庁・特許情報提供事業者リスト集、日本
用者
特許情報機構(Japio)イヤーブック 2012 年版
より抽出
出願人、公報情報
特許保有・出願件数が多い企業・大学
利用者
代理人
特許制度運用協議委員会所属の委員
◯ 実施方法・期間
・ 配布方法:郵送による配布。また、株式会社価値総合研究所ホームページからアンケー
ト調査票をダウンロード可能とした。
・ 回収方法:メール、FAX、郵送
・ 実施期間:平成 25 年 12 月 11 日(水)~平成 26 年 1 月 9 日(木)
◯ 配布回収状況
表 I-3 アンケート配布回収状況
アンケート種類
配布数
回収数
情報提供事業者向け
87
19
エンドユーザ向け
179
85
全体
266
104
回収率
21.8%
47.5%
39.1%
(4)国内ヒアリング調査
前述の国内アンケート調査の結果を踏まえ、インターネット公報及び DVD-ROM 公報を利
用している回答者を対象に、アンケートでの回答内容の補足及び本調査で検討している対
応策に関する考えをヒアリングした。
なお、国内ヒアリングの結果については、委員会の方針検討の材料とすると共に、本報
告書の総合的な取りまとめに活用した。
◯ ヒアリング対象
- 3 -
・ 情報提供事業者
6者
・ エンドユーザ
3者
◯ ヒアリング項目
・ アンケート回答に関する理由等
・ インターネット公報の提供に関する検討案
・ 公報等における個人情報の取り扱い
(5)海外ヒアリング調査
国内外公開情報調査から得られた情報を補足するため、WIPO、EPO(欧州)、USPTO(米国)、
DPMA(ドイツ)、KIPO(韓国)の 5 か国・地域における知財庁を対象にヒアリング調査を実
施した。
なお、海外ヒアリングの結果については、委員会の方針検討の材料とすると共に、本報
告書の総合的な取りまとめに活用した。
- 4 -
II. 産業財産権情報の提供に関する動向及び既往調査
ここでは本調査研究を進めるにあたり、産業財産権情報の役割や提供の現状を整理する
とともに、既存調査における論点や考え方について文献やインターネットなど国内外の公
開情報から整理した。
1. 公報発行の目的と役割
特許庁は特許法(特許法第 193 条等)に基づき、特許公報等を発行している。
発行の目的として、
「特許庁編
工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第 19 版〕」
(特
許庁、平成 25 年 6 月)によれば、特許公報(特許法第 66 条第 3 項)は、特許出願及び特
許権に関して必要な事項を広く一般公衆に知らせるために発行するものとされている。
公開特許公報(特許法第 64 条)等の公開情報は、出願公報の制度の目的は「審査の遅
延により、出願された発明の内容が長期間公表されず、そのため、企業活動を不安定にし、
また重複研究、重複投資を招いているという弊害を除去することである。」とされている。
また、「公報発行案内」(特許庁)によれば、公開特許公報を発行されることにより、企
業等が既に公開されている出願情報を調査し、重複出願や重複研究等を回避することがで
きるほか、最新技術動向を把握することにより、新技術の研究や新事業への展開・創作等
の参考として利用・活用できるとされている。
特許公報等の権利情報については、
「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第 19 版〕」
によれば、特許法第 66 条第 3 項において規定されている特許公報の項目は、「広く公衆に
特許権の内容を知らしめるために必要な事項」として定められているものである。
また、「公報発行案内」(特許庁)によれば、特許公報を発行されることにより、権利者
は取得した権利範囲を第三者に明示することができ、権利侵害を防止し、権利の実施を促
進できるものとされている。
2. インターネット公報とは
前述のように特許庁は特許法等に基づき公報を発行する義務があり、その発行媒体につ
いては、紙から CD-ROM、DVD-ROM を経て、現在は特許、審決を除きインターネットにて発行
している(表 II-1
公報の発行状況の変遷
参照)。
特許、審決に関する公報については平成 27 年度を目途にインターネット化を進める予定
である。
- 5 -
平成 25 年 1 月末現在、「特許庁インターネット利用による公報発行サイト2」によれば、
インターネット公報の概要は下記の通り。
(1)インターネット利用による公報の仕様
公報の仕様は、「公報仕様 特許、実用新案 第4版」及び「公報仕様 意匠、商標、公開・国際商標、審決
第8版」に準拠します。
(2)インターネット利用による公報の発行サイクル
原則として、登録実用新案公報は毎週木曜日、意匠公報は毎週月曜日、商標公報は毎週火曜日、公開・国
際商標公報は毎週木曜日に発行します。
なお、最新の公報発行予定については、公報発行予定表をご参照ください。
(3)提供時間
24時間、行政機関の休日を含め、常時提供とします。ただし、機器メンテナンス等の理由により一時的に停
止する場合があります。
(4)提供期間
インターネット利用により発行した公報は、順次当サイトに蓄積します。
(5)インターネット利用による送受信のためのプロトコル
「HTTP」及び「FTP」を採用しています。
(6)アーカイブ形式
「Zip」及び「Tar」を採用しています。
(7)電子署名
公報データはそれぞれ Zip 形式、Tar形式でアーカイブし、そのファイル容量が一定の大きさ以上の場合は
分割を行い、それぞれのファイルにPKCS#7の規格に従い電子署名を行っています。
公報をインターネットにより発行する場合は、電子署名を付して発行する必要がある3。
なお、インターネットを用いたサービスである IPDL によって提供されている情報は「公
報情報」という位置づけであり、特許法に基づく公報とは異なる(電子署名も付されてい
ない)。
2
http://www.publication.jpo.go.jp/utility/do/usr/topmenu?lang=j [最終アクセス日:2014 年 2 月 3 日]
工業所有権に関する手続き等の特例に関する法律施行規則 第 35 条第 2 項
3
- 6 -
表 II-1 公報の発行状況の変遷
収録公報種
別
紙
CD-ROM
DVD-ROM
インターネット
現状
特許・実
用新案公
報
公開特許
公報
明治 23 年~(特)
明治 38 年~(実)
平成 6 年 1 月~
平成 16 年 7 月
~
時期未定
原則週 1 回(水)発行
設定登録から約 10~
11 週で発行
特許公報/実用
新案公報
昭和 46 年~
平成 5 年 1 月~
平成 16 年 1 月
~
時期未定
原則週 1 回(木)発行
出願から 1 年 6 月経過
後
登録実用
新案公報
-
平成 6 年 7 月~
平成 16 年 1 月
~
平成 18 年 1 月~
意匠公報
昭和 8 年~
商標・商
標書換登
録公報
明治 22 年~
公開・国
際商標公
報
-
審決公報
大正 13 年~
原則週 1 回(木)発行
設定登録から約 3~4
週で発行
翌週に DVD-ROM 公
報情報発行
原則週 1 回(月)発行
設定登録から約 4~5
週で発行
翌週に CD-ROM 公報
情報発行
原則週 1 回(火)発行
設定登録から約 4~5
週で発行
翌週に CD-ROM 公報
情報発行
原則週 1 回(木)発行
出願から約 3~4 週で
発行
翌週に CD-ROM 公報
情報発行
原則月 1 回(最終金)
発行
公開特許公報/
公表特許公報/
再公表特許/公
開実用新案公報
登録実用新案公
報
特許庁公
報
(公示号
等)
昭和 25 年~
※平成 18 年 1
月~(公報情
報)
-
平成 19 年 1 月~
-
平成 22 年 1 月~
-
平成 22 年 1 月~
平成 12 年 1 月~
-
時期未定
-
-
時期未定
平成 12 年 1 月~
※平成19 年 1 月
~
(公報情報)
平成 12 年 1 月~
※平成22年 1 月
~(公報情報)
平成 12 年 2 月~
※平成22年 1 月
~(公報情報)
(平成 26 年 12 月末現在)
- 7 -
発行日は種類により
異なる
原則月 1 回、又は不
定期
意匠公報/協議
不成立意匠出願
公報
商標公報/商標
書換登録公報
公開商標/公開
国際商標公報/
国際商標公報
審決公報/決定
公報/再審公報
/判決公報/判
定公報
審査請求・技術
評価書請求リスト
/特許・実用新
案最終処分リスト
/商標最終処分
リスト/更新登録
商標目録/公示
号/特別公示号
3. 国の行政機関における公報等の発行状況
(1)技術的な対応例
我が国における公報発行の歴史は古い一方、近年、廃止が増えている。そこで、国立国
会図書館の情報検索データより、国立国会図書館に所蔵されている記録から、現時点でも
発行されている公報及びその他不特定多数の閲覧対象となるものについて整理すれば、以
下となる。
電子署名を利用しているのは官報のみであり、その他は ID・パスワードの付与、編集不
可とした PDF による配布である。
表 II-2 国の行政機関が発行する公報
技術的
対応
ID,PW
省庁名・組織名 公報名称
概要
財務省
(大蔵省)
関税週報
公益財団法人に日本関税協会が発行。関税法に関する情
報提供がメイン。紙媒体は週 1 回発行。
薬務公報
特に対応な
医薬品、医療機器、再生医療等に係る「薬事法」関連情
し
報を提供。発行主体は薬務公務社。紙媒体が主で、月 3
回(1、11、21 日)発行。
厚生労働省
経済産業省
経済産業公
報
最高裁判所
裁判所時報
総務省
独立行政法人
国立印刷局
金融庁
選挙公報
官報
EDINET
昭和 24 年の発行以来、行政と産業界をつなぐパイプ役 紙媒体
として、また経済産業省の広報活動としての使命を果た
している。提供情報は、政策関連、通商・貿易関連、景
気動向関連、統計、エネルギー関連等幅広く、発行頻度
は、土・日・祝祭日・年末年始を除く毎日である。
紙媒体
最高裁の判決について、1948(昭和 23)年 1 月 1 日以降 2
週間に 1 回発行。
総務省はインターネット上での選挙公報の公開は認め
てこなかったが、東日本大震災後に被災 3 県の選挙では
転居した住民への利便性を考慮し、特例で認め、2012
年の衆院選より全国で可能となった。
明治 16(1883)年に国の機関としての諸報告や資料を公
表する「国の公報紙」「国民の広告紙」としての使命を
もって発行。内閣官報局、内閣印刷局、大蔵省印刷局等
を経て、平成 15 年 4 月以降は(独)国立印刷局が行政
機関の休日を除いて毎日発行。
EDINET とは、
「金融商品取引法に基づく有価証券報告書
等の開示書類に関する電子開示システム」である。以前
は、紙媒体で提出されていた有価証券報告書、有価証券
届出書等の開示書類を、その提出から公衆縦覧等に至る
までの一連の手続を電子化したもの。
- 8 -
編集不可
PDF
電子署名
ID,PW
◯ 電子署名の付与
・ 官報
平成 15(2003)年 7 月 15 日付官報から、官報紙面の PDF に、電子署名およびタイムスタ
ンプ(電子文書の確定時刻を証明する技術で、その文書がいつから存在しているのか、と
いうことと、その時点から第三者だけでなく作成者本人にも改竄されてないことを証明す
るもの)の付与を行っている。タイムスタンプについては、平成 18(2006)年 6 月 1 日付官
報より、時刻配信業務及び時刻認証業務の認定を受けたタイムスタンプ方式に変わった。
◯ ID/パスワードの付与
・ 関税週報
公益財団法人日本関税協会が発行する、主として関税三法に係る情報を提供する。情報
提供対象は賛助会員限定であり、会員に対して ID やパスワードを発行する。
・ EDINET
EDINET を利用するユーザには書類を提出する「開示書類等提出者」と提出された書類
を閲覧する「開示情報利用者」に分けられ、前者にはユーザ ID、パスワードの情報が必
要。後者には不要。
◯ 編集不可 PDF ファイル
・ 選挙公報
2011 年の東日本大震災以降、選挙公報について地方公共団体の選挙管理委員会の HP に
おける公開が可能となった。総務省自治行政局選挙部から各都道府県の選挙管理委員会に
対しては、PDF の改竄防止の措置を講じるよう通達され、各市町村は県の方針に沿って対
応している状況である。埼玉県、神奈川県、及び静岡市に電話で確認したところ、PDF ファ
イルの編集不可の処置をとっているところがほとんどの状況である。
◯ 特に対応はしていない
・ 薬務公報
発行主体は薬務公報社という民間企業である。厚生労働省とは直接関連する機関ではな
いが、60 年前の発行時に経緯から現在も薬事法に関連する情報提供を行う。情報提供対象
は事前会費予約制である。PDF ファイルには改竄防止の処置は行われていない。ただし、
依然として紙媒体が主流だとのこと。
◯ インターネットではアクセス不可
- 9 -
インターネットで公報を発行していないのは、下記の二つである。
・ 経済産業広報
土・日・祝祭日・国民の休日・年末年始休刊日(12/29~1/4)を除く毎日、経済産業調
査会より国内購読者に直接届く日刊
・ 裁判所時報
月 2 回発刊され、一般財団法人法曹会から購買希望者に送付される(送料別:年間 5,000
円前後)
◯ その他(登記・供託オンライン申請システム4)
登記・供託オンライン申請システムとは、申請・請求をインターネット又は LGWAN・政
府共通ネットワークを利用して行うシステムである。登記・供託オンライン申請システム
は,平成 23 年 2 月 14 日から、法務省オンライン申請システムとは別のシステムとして運
用を開始した。登記・供託オンライン申請システムを利用することにより、登記所等の窓
口に出向くことなく、自宅やオフィスなどからインターネット又は LGWAN・政府共通ネッ
トワークによる申請・請求や電子公文書の取得が可能となる。
登記・供託オンライン申請システムでは、データを暗号化して通信を行う SSL(Secure
Sockets Layer),及び安全な通信を行うために必要な証明書(以下「政府共用認証局自己
署名証明書」という。)により、インターネット上の脅威を防止している。
また、登記・供託オンライン申請システムホームページからダウンロードできるソフト
ウェアには電子署名を付与し、法務省が作成したものであることを明らかにしている。
登記・供託オンライン申請システムでは、以下のホームページ等において SSL 通信を利
用している。
・ 申請者情報登録画面(ユーザ登録に関するページは全て該当)
・ ログイン画面以降の画面(各種申請・請求等)
・ ソフトウェア及びマニュアルのダウンロード(登記・供託オンライン申請システムホー
ムページからダウンロードできる全てのソフトウェア及びマニュアルが該当。)
(2)個人情報に関わる対応例
4
http://www.touki-kyoutaku-net.moj.go.jp/[最終アクセス日:2014 年 2 月 3 日]
- 10 -
(i) インターネット官報
官報については、内閣府から官報の編集、印刷及び普及事務を委託されている(独)国
立印刷局がインターネットによる独自事業として、30 日間分の官報掲載内容の無料配信
サービス及びそれ以前の官報掲載内容に関する有料検索サービスを提供している。
電子版の官報については、掲載されている破産者等の個人情報が、一部サイトにおいて
容易に検索できることに対し、破産者や弁護士会から改善を求める意見があり、公開期間
拡大に当たっては、更に多くの情報の二次・三次利用の可能性が高まることから、個人情
報の取扱いを含め情報提供の方法について平成 21 年以降、グーグル等の汎用検索エンジ
ンに対して、掲載されている個人情報が、検索対象外となるよう設定しているところであ
る。
(ii) 品種登録制度/品種登録データベース
種苗法(平成 10 年法律第 83 号)に基づく、品種登録制度においては同法第 5 条におい
て、出願人は氏名、住所又は居所等を提出しなければならない。また、農林水産大臣は同
法 13 条に基づき、出願者等の氏名及び住所を公開しなければならないとされている。
しかしながら、以前は出願者及び育成者の氏名及び住所を官報で公示していたが、平成
18 年 6 月より農林水産省生産局長通知により育成者の住所を公示事項から除外している。
また、農林水産省から上記にかかる情報を提供されている独立行政法人種苗管理セン
ターにおいては下図のようにホームページ上で個人情報ファイル簿の提示と個人情報にか
かる開示請求、訂正請求、利用停止請求書を受け付けている。
- 11 -
資料:(独)稲苗管理センターホームページ(http://www.ncss.go.jp/main/info/kojinjoho/kojinjoho.html#gaiyo)
(iii) 無線局免許情報
電波法施行規則(昭和 25 年電波監理委員会規則第 14 号)を改正し、平成 19 年 1 月よ
り、免許人等の個人の氏名・住所は、周波数利用可能性を検討する上で不要な情報なので
公表しないこととした。
(iv) 判例検索システムサイト(裁判所)
裁判所の判例検索システムサイト(平成 9 年 5 月開始)においては、個人情報保護法の
- 12 -
施行とは関係なく、プライバシーへの配慮により、①住所については自然人、法人全て不
掲載、②氏名(名称)については、裁判官の判断(掲載することにより不利益となるか否
かの判断)により、実名で公表しているもの、又は、「A、B、X」等に置き換えて掲載して
いるものがある。当事者からの申し出もあるが、必ずしも認められるとは限らない。
(v) 住居表示台帳(総務省から各市町村に委任)
住居表示に関する法律(昭和 37 年法律第 119 号)に基づき、各自治体はそれぞれの条
例に基づいて住居表示を決定している。
住居表示台帳に住居表示が記載される(例:「東京都港区虎ノ門一丁目 14 番 1 号」、こ
こで最後の号数は建物等の入り口の所在によって決められるので、建物を新・改築したと
きは該当する役所にて号数を決定する。)ものであり、建物の所有者や名称など個人情報は
一切記載がない。
市町村は住居表示台帳又は複写を閲覧させる義務がある。市町村によってはホームペー
ジで域内の地図に対応させた住居表示を閲覧可能としている場合がある。この場合には閲
覧制限は設けられていない。
(vi) 固定資産における縦覧と閲覧制度
固定資産については、閲覧制度と縦覧制度が存在する。前者は自身が所有する固定資産
の課税台帳の内容をみることができる制度。また、借地・借家人その他固定資産を処分す
る権利を有する一定の方も、使用または収益の対象となる部分について閲覧できる。
他方、後者の縦覧制度は、市内に所有する土地や家屋にかかる固定資産税の納税者は、
市内全域の土地や家屋(土地のみを所有する方は土地、家屋のみを所有する方は家屋)の
価格(評価額)を土地価格等縦覧帳簿・家屋価格等縦覧帳簿により縦覧できる制度である。
- 13 -
4. 近年の個人情報保護に関する動向把握
(1)近年の個人情報保護に関する動向
(i) パーソナルデータの取り扱い
個人情報保護法では、第二条において「個人情報」を「生存する個人に関する情報であっ
て、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別すること
ができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別する
ことができることとなるものを含む)」と定義している。
近年は、インターネットやスマートフォンなどによる位置情報取得など情報通信技術の
発達により、多数のパーソナル情報が創出される反面、意図しないところで個人が識別で
きる可能性が高まってきている。
つまり、本調査で論点としている出願人の氏名や住所など、従来型の個人を特定するた
めのデータだけでなく、インターネットの閲覧履歴、SNS、位置情報、画像情報などによっ
て個人を特定することができることが、個人情報、プライバシーの観点から課題となって
いる。
政府においては、平成 24 年度に総務省が「パーソナルデータの利用・流通に関する研究
会」を設置し、平成 25 年 6 月 12 日には「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会
報告書
~パーソナルデータの適正な利用・流通の促進に向けた方策~」が公表されたと
ころである。
その後、平成 25 年 6 月に内閣官房において「パーソナルデータに関する検討会」が設置
され、パーソナルデータの扱い等について検討がなされている。
総務省の報告書によれば、日本の個人情報保護法を含むプライバシー保護・個人情報保
護のルールは、パーソナルデータの利活用を禁止することを目的とするものではなく、パー
ソナルデータを適正に利活用するため、プライバシー保護等とパーソナルデータの利活用
の調和を図ることを目的とするものである。
パーソナルデータの利活用に関する課題の多くは、パーソナルデータの利活用のルール
が明確でないため、企業にとっては、どのような利活用であれば適正といえるかを判断す
ることが困難であること、消費者にとっては、自己のパーソナルデータが適正に取り扱わ
れ、プライバシー等が適切に保護されているかが不明確になっており、懸念が生じている
ことにある。
パーソナルデータの利活用において、プライバシー等の観点から問題となり得るのは、
- 14 -
特定の個人と結びつきが強い場合である。
そして、パーソナルデータの利活用のうち、プライバシー等に係るルールの適用関係が
必ずしも明確でなく、取扱い上その判断に困難な問題が生じる可能性が大きいのは、パー
ソナルデータの利用・流通の過程において、個人識別性などの特定の個人との結びつきの
強弱を容易に判断することが困難な場合である。
特に、パーソナルデータが、二次利用、三次利用されるような場合においては、当初は
特定の個人との結びつきが弱かったとしても、多くの情報が集積され、分析されることに
より、個人識別性が生じるなど特定の個人との結びつきが強まる可能性があり、判断が困
難な問題が生じる。このような場合には、二次利用者、三次利用者等が、単独でパーソナ
ルデータの本人の同意を取得すること等は困難であることから、パーソナルデータの利活
用に係る仕組み全体で適正な取扱いを確保する必要がある。
また、現行の個人情報保護法については、小規模事業者の扱い、共同利用の在り方、民
間事業者・行政機関・独立行政法人等・各地方公共団体で規律が異なること、プライバシー
保護を実質的に確保するための認証制度の在り方など様々な課題が指摘されている。
① パーソナルデータの利活用の基本理念及び原則
まず、パーソナルデータの保護の目的を明らかにするという観点から、パーソナルデー
タの利活用の基本理念として、以下の事項を明確にすべきである。
◯ 個人情報保護を含むパーソナルデータの保護は、主としてプライバシー保護のために
行うものである。
◯ プライバシーの保護は、絶対的な価値ではなく、表現の自由、営業の自由などの他の
価値との関係で相対的に判断されるべきものである
なお、上記において、
「主として」としたのは、個人情報保護法の目的が「個人の権利利
益を保護すること」
(同法第1条)とされていることを踏まえたものである。また、ここで
いうプライバシーとは、基本的に個人の自己情報コントロールの側面を念頭に置いたもの
である
その上で、上記のパーソナルデータの利活用の基本理念を具体化するものとして、次の
7 項目をパーソナルデータ利活用の原則として提示する
・ 透明性の確保
パーソナルデータの利用に関し、本人が必要な情報に容易にアクセスする機会を提
供すること。
・ 本人の関与の機会の確保
パーソナルデータの本人が、パーソナルデータをどのように利用されるかについて
- 15 -
関与する機会を確保すること。
・ 取得の際の経緯(コンテキスト)の尊重
パーソナルデータの利用は、本人がパーソナルデータを提供した際の経緯(コンテ
キスト)に沿って、本人の期待と合致する形態で行うこと。
・ 必要最小限の取得
パーソナルデータの取得は、パーソナルデータの利用目的の実現のため必要最小限
のものとすること。
・ 適正な手段による取得
パーソナルデータの取得は、適正な手段によるものとすること。
・ 適切な安全管理措置
パーソナルデータは、パーソナルデータの性質に沿って適切な安全管理措置をとる
こと。
・ プライバシー・バイ・デザイン
パーソナルデータを利用する者は、商品開発時などそのビジネスサイクルの全般に
わたって、プライバシーの保護をデザインとしてあらかじめ組み込んでおくこと
保護されるパーソナルデータは、そのプライバシー性の高低により、次の 3 類型に分類
し、それぞれの類型に応じて適正に取り扱うべきである。
◯ 一般パーソナルデータ
(保護されるパーソナルデータのうちプライバシー性が高くないもの)
◯ 慎重な取扱いが求められるパーソナルデータ
(保護されるパーソナルデータのうちプライバシー性が高いもの。
一般パーソナルデータ又はセンシティブデータ以外の保護されるパーソナルデータ)
◯ センシティブデータ
(保護されるパーソナルデータのうちプライバシー性が極めて高いもの)
② パーソナルデータの範囲
一般パーソナルデータの範囲については、例えば、以下のようなものが含まれると考え
られる。
・ 氏名など本人を識別する目的などで一般に公にされている情報
・ 本人の明確な意図で一般に公開された情報
・ 名刺に記載されている情報など企業取引に関連して提供される情報(ビジネ
ス関連情報)
- 16 -
慎重な取扱いが求められるパーソナルデータの範囲については、例えば、以下のような
ものが含まれると考えられる。なお、慎重な取り扱いが求められるパーソナルデータにつ
いては、情報によりプライバシー性の程度に相違があり、これに応じた適正な取扱いが求
められると考えられる。
◯ スマートフォンやタブレット端末など移動体端末に蓄積される以下のようなパーソナ
ルデータ
・ 電話帳情報
・ GPS などの位置情報
・ 通信内容・履歴、メール内容・送受信履歴等の通信履歴
・ アプリケーションの利用履歴、写真・動画
・ 契約者・端末固有 ID
◯ 継続的に収集される購買・貸出履歴、視聴履歴、位置情報等
センシティブデータの範囲については、諸外国における定義や、現在の各省庁の個人情
報保護法に基づくガイドライン等も踏まえて、我が国の実情に適合したものとする必要が
あるが、例えば、以下のようなものとすることが考えられる。
・ 思想、信条及び宗教に関する情報
・ 人種、民族、門地、身体・精神障害、犯罪歴、病歴その他の社会的差別の原因となる
おそれのある事項に関する情報
・ 勤労者の団結権、団体交渉その他団体行動に関する情報
・ 集団示威行為への参加、請願権の行使その他の政治的権利の行使に関する情報
・ 健康又は性生活に関する情報
また、金融・財産情報については、EU や現在の各省庁の個人情報保護法に基づくガイド
ラインではセンシティブデータとされていないものの、他人に知られたくないという意味
でプライバシー性が相当程度高い情報であるといえることから、我が国の実情に照らして
センシティブデータに含まれるとすることについて、更に検討していくべきと考えられる。
③ パーソナルデータの取扱いの在り方
パーソナルデータの取扱いについては、パーソナルデータのプライバシー性の高低によ
る分類や、取得の際の経緯に沿った取扱いである場合と沿わない取扱いである場合の区分
に応じて、適正に行うべきである。
例えば、一般パーソナルデータについて、取得の際の経緯(コンテキスト)に沿った取
扱いをする場合は、一般的には、明示的な同意を求める必要はないと考えられる。
- 17 -
一方、取得の際の経緯(コンテキスト)に沿わない取扱いやセンシティブデータの取扱
いについては、原則として、明示的かつ個別的な同意を求めることが必要となると考えら
れる。
なお、ここで、
「個別的」な同意とは、画面上でのクリックなど特定のパーソナルデータ
についての特定の取扱いについての同意であることを本人が認識した上で行うことを前提
とした同意を意味し、
「包括的」な同意(契約約款による同意など本人が特定のパーソナル
データについての特定の取扱いについて認識することは必ずしも前提としていない同意)
の反対概念と整理している。また、
「明示的」な同意とは、画面上でのクリックや文書によ
る同意など外部的に同意の事実が明確である同意を意味し、状況により同意の意思が推測
される場合の「黙示」の同意の反対概念として整理している。
また、慎重な取扱いが求められるパーソナルデータの取扱いの在り方については、以下
のように整理できるのではないかと考えられるが、その具体的な在り方(どのような情報
がプライバシー性が比較的低く、どのような情報がプライバシー性が比較的高いと考える
べきか等)については、具体的な利活用状況に即して今後更に検討していく必要があると
考えられる。
一方、パーソナルデータの本人は、原則として、当該パーソナルデータの取扱いについ
て同意した場合であっても当該同意を撤回すること(明示的な同意をしていない場合に、
オプトアウトの意思表示をすることを含む。)ができることとすべきである。
なお、この場合の同意の撤回の効果については、それ以後のパーソナルデータの取扱い
の停止を求めるものであって、それ以前のパーソナルデータの取扱いを違法・不当なもの
とするものではないと考えることが適当である。
(ii) 番号法
2013 年 5 月 24 日に、社会保障・税番号制度(以下「番号制度」)を規定した「行政手続
における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(以下「番号法」)が、
参議院本会議で可決、成立した。社会保障・税番号(以下「個人番号」)は、2015 年後半
から住民一人ひとりに通知され、2016 年から社会保障や税の分野などで利用が開始される
予定となっている。番号制度は、所得の正確な捕捉により社会保障や税の公平性を向上さ
せ、行政運営の効率化、手続の簡素化を図り、住民の利便性を向上するとともに、不正受
給等を防止することなどが目的とされている。
したがって、個人番号は社会保障分野には利用できる事務が指定されており、出願人や
発明者を識別するコードとして利用することはできない。
一方、法人番号に関しては、国税庁長官から、13 桁の法人番号が法人等に通知されるこ
- 18 -
とになっている。個人番号と異なり、法人番号は原則として公表され、また、民間での自
由な利用も可能とされている。したがって、出願人及び発明人が法人である場合には利用
する価値があるか検討する必要がある。
(2)諸外国の状況
(i) 米国
(a) パーソナルデータ保護に関する制度
米国ではパーソナルデータの保護に関し、分野横断的な法律は存在せず、分野ごとの個
別法と自主規制を基本とするものとなっている。
米国のパーソナルデータの保護については、独立行政委員会である FTC(Federal Trade
Commission:連邦取引委員会)が大きな役割を果たしており、自主規制の遵守についての
監督、排除措置、課徴金の賦課等の執行措置等を行っている。
(b) 消費者プライバシー権利章典等最近の動向
2012 年 2 月、ホワイトハウスにより政策大綱「ネットワーク化された世界における消費
者データプライバシー」が発表された。同政策大綱では「消費者プライバシー権利章典」
が提示された。
また、同政策大綱の発表後、FTC は、2012 年 3 月、消費者データを収集し利用する企業
の行動枠組みについてまとめた報告書である「急速に変化する時代における消費者プライ
バシーの保護」を発表した。
(ii) EU
(a) データ保護指令
欧州では、1995 年、分野横断的にパーソナルデータ保護に関し、「個人データの取扱い
に係る個人の保護及び当該データの自由な移動に関する 1995 年 10 月 24 日の欧州議会及び
理事会の 95/46/EC 指令」29 が採択され、加盟国は当該指令を遵守するために必要な国
内法の整備を義務づけられた。
同指令第 28 条は、各加盟国にデータ保護のための独立した監督機関の設置を義務づけて
いる。これに基づき各国で設置されたデータ保護機関(Data Protection Authority(DPA))
- 19 -
が、各国内でパーソナルデータ保護の監督やを行うとともに、同指令第 29 条に基づき全加
盟国のデータ保護機関が構成する機関(第 29 条作業部会(Article 29 Working Party)と
呼ばれる。)が政策提言等の積極的な活動を行っている。
また、同指令第 25 条は、EU 域内から第三国への個人データの移転は、原則として第三
国が十分なレベルの保護措置を確保していることを条件としているが、上記の第29条作
業部会は、その「十分なレベルの保護措置」の要素の1つとして、
「独立した機関の形態を
なす外部監督の制度」をあげている。
(b) eプライバシー指令
上記の分野横断的なデータ保護指令に加え、電子通信部門におけるパーソナルデータ保
護に関する特則を規定するものとして、2002 年に「電子通信部門における個人データの処
理とプライバシーの保護に関する 2002 年 7 月 12 日の欧州議会及び理事会の 2002/58/EC
指令」が採択され、加盟国は当該指令を遵守するために必要な国内法の整備を義務づけら
れた。
(c) データ保護規則提案
2012 年 1 月、欧州委員会は「データ保護指令」を抜本的に改正する「個人データの取扱
いに係る個人の保護及び当該データの自由な移動に関する欧州議会及び理事会の規則(一
般的データ保護規則)の提案」35 を欧州議会及び理事会に提案・公表した。
同規則提案においても、各加盟国に独立した監督機関の設置を義務づけていることやE
U域内から第三国への個人データの移転は原則として第三国が十分なレベルの保護措置を
確保していることを条件としていることは、現行のデータ保護指令と同様である。なお、
同規則提案においては、
「十分なレベルの保護措置」の要素の 1 つとして、独立した監督機
関の存在及びそれが効果的に機能していることが明記されている(同規則提案第 4 条第 2
項(b))。
(iii) その他
パーソナルデータの保護については、欧米諸国等の先進国で先行的に制度が整備されて
きたが、他の地域においても徐々に整備が進められ、現在では大半の国でパーソナルデー
タ保護に関する法律が制定されるに至っており、そのうち多くの国でパーソナルデータの
保護のための独立した第三者機関が設置されている。
- 20 -
5. 本調査の論点に関する既往調査の整理
(1)平成 10 年度「オンライン(インターネット)による公報発行に関する調査研究報
告書」
同報告書においては、公報をインターネットで発行するにあたって採るべき技術的措置
として、原本の維持があげられている。
原本の維持にあたっては、特許庁内における公報データの改竄防止と流通経路上での公
報データの改竄防止を考慮する必要があり、前者は「ファイアウォール、電子署名技術、
公報発行システムの隔離、原本のバックアップ等の手立てが考えられる。」とされている。
一方、後者については「流通経路上での改ざん防止にあたっても、電子署名技術が活用で
きると考えられる。」とされている5。
(2)平成 22 年度「産業財産権情報提供サービスの現状と今後に関する調査報告書」6
(i) インターネット公報推進に関する全般的な要望
同報告書によれば、インターネット公報の推進に関して以下のような意見があった。
・ 既にインターネット公報のサービスが行われている登録実用新案公報、意匠公報、商
標公報類と同様の形態でよい
・ 特許を含めて統一するのであれば、どのような形態でもよい
・ 現行どおりでよいがメンテナンスを減らしてほしい
・ 現在使用している検索システムを今後も使用するために、従前どおりの媒体での公報
情報のマージナルコスト提供が望ましい
また、インターネット公報に関する提供形態についての要望を、インターネット公報推
進による各社への影響についての意見別内訳を含めて示す。インターネット公報推進によ
る「ポジティブな影響がある」と「影響はない」のいずれの意見をもつ事業者も、
「任意の
単位でのダウンロード」についての要望が多いことがわかる。
5
平成 10 年度特許庁工業所有権制度問題調査報告書 「オンライン(インターネット)による公報発行に関する調査研究
報告書」5 頁(財団法人知的財産研究所、1999 年 3 月)
6
平成 22 年度「産業財産権情報提供サービスの現状と今後に関する調査報告書」(特許庁、2011 年 2 月)
- 21 -
(ii) 改竄防止方法
インターネット公報の改竄防止方法についての要望については、インターネット公報の
推進が「ポジティブな影響がある」と「影響はない」のいずれの意見をもつ事業者も、
「現
行のままでよい」との要望が多い。
インターネット公報の
改竄防止方法
表 II-3 改竄防止の方法に関する意向
内訳(件数)
全体
ポジティ 影響は
ネガティ
(件数)
ブな影
ない
ブな影
響がある
響がある
現行のままでよい
その
他
65
23
27
5
9
2
0
0
0
0
0
0
12
3
5
0
3
0
3
2
1
0
0
0
他の方法に変更すべき
廃止し、利便性を向上、原本性確
認可とすべき
その他
不明
資料:「平成 22 年度産業財産権情報提供サービスの現状と今後に関する調査報告書」(特許庁)より作成
(iii) データ提供のリアルタイム化
データ提供のリアルタイム化については以下のような意見が見られた。
・ ビジネス拡大の可能性は高まるが、システムの改訂等の規模はかなり大きく、情報の
提供方法や形態(定量データ形式でダウンロードできるようになった場合等)によっ
てはネガティブな影響も考えられる
・ データ提供方式に変更が生じる場合は最低でも 12 ヶ月程度の余裕を持って告知して欲
しい
・ また、顧客に常に新しい情報の提供を求められており、データは新鮮度が重要である
ことから、データのタイムラグの短縮化を要望する
・ 反対に、特許庁の情報提供と情報提供事業者のサービスのタイムラグが目立つように
なることを懸念する意見もある。
(iv) データ提供単位と手段
データ提供単位と手段については以下のような意見が見られた。
- 22 -
・ データ提供単位と手段については「1 日分を単位とした更新データのインターネット提
供」と「1 週間分を単位とした更新データのインターネット提供」が多く、全体では
ほぼ同数である。
・ 内訳を見れば、「1 日分を単位とした更新データのインターネット提供」では、データ
提供のリアルタイム化に「ポジティブな影響がある」との意見をもつ事業者が多い
・ 「1 週間分を単位とした更新データのインターネット提供」では、データ提供のリアル
タイム化に「影響はない」との意見をもつ事業者が多い
表 II-4 データの提供単位と手段に関する意向
内訳(件数)
データ提供単位と手段
1 日分を単位とした更新データのイ
ンターネット提供
1 週間分を単位とした更新データの
インターネット提供
2 週間に 1 度程度媒体での更新
データのマージナルコスト提供
更新日等の情報により選択した
データのダウンロード
その他
全体
(件数)
ポジティ
ブな影響
がある
影響はな
い
ネガティ
ブな影響
がある
不明
31
14
9
0
5
3
29
9
15
2
3
0
5
0
1
1
3
0
18
8
6
1
3
0
1
1
0
0
0
0
資料:「平成 22 年度産業財産権情報提供サービスの現状と今後に関する調査報告書」(特許庁)より作成
- 23 -
その他
III. 諸外国・地域の動向
ここでは、諸外国・地域における公報情報のインターネットによる提供状況や個人情報
の取り扱いについて、インターネットや文献等から整理した。
1. WIPO
(1)産業財産権情報のインターネット提供について
国連の専門機関である WIPO は、知的財産権の保護促進と加盟国間の協力を大きな目的と
する。この目的達成のための任務として WIPO 設立条約7に明記されているものには「知的
所有権の保護に関して情報を収集し及び広報活動を行う」ことも含まれている。
増大する知的財産に関する情報を収集し、これを広く提供することは WIPO としての任務
である8。
世界知的所有権機関を設立する条約
第 3 条 機関の目的
機関の目的は、次のとおりとする。
(i)諸国間の協力により、及び適当な場合には他の国際機関との協力により、全世界にわたつて知的
所有権の保護を促進すること
(ⅱ)管理に関する同盟間の協力を確保すること
第 4 条 任務
第 3 条に定める目的を達成するため、機関は、その適当な内部機関を通じて、各同盟の権限を侵すこと
なく、
(i)全世界にわたって知的所有権の保護を改善すること及びこの分野における各国の国内法令を調和
させることを目的とする措置の採用を促進する。
(ⅱ)パリ同盟、パリ同盟に関連して設立された特別の同盟及びベルヌ同盟の管理業務を行う。
WIPO に国際出願又は国際出願として提出されたものに関する記録は電子媒体で保存す
ることが出来る(特許協力条約(PCT)規則 93.3)。
特許協力条約(PCT)
第九十三規則
記録及び一件書類の保存記録及び一件書類の保存
7
世界知的所有権機関を設立する条約(日本語版)
http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/wipo/cew/chap1.htm#law1 [最終アクセス日:2014 年 2 月 3 日]
8
夏目健一郎「WIPO の特許情報データベース PATENTSCOPE」1 頁, 世界知的所有権機関 日本事務所(2013)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/56/7/56_425/_pdf[最終アクセス日:2014 年 2 月 3 日]
- 24 -
93.1 受理官庁
各受理官庁は、国際出願又は国際出願として提出されたものに関する記録(受理官庁用写しを含む。)
を当該国際出願日又は、国際出願日を認めない場合には、当該受理の日から少なくとも十年間保存する。
93.2 国際事務局
(a)国際事務局は、国際出願の一件書類(記録原本を含む。)を当該記録原本の受理の日から少なくと
も三十年間保存する。
(b)国際事務局の基本的な記録は、無期限に保存する。
93.3 国際調査機関及び国際予備審査機関
各国際調査機関及び各国際予備審査機関は、その受領した各国際出願の一件書類を当該国際出願日から
少なくとも十年間保存する。
93.4 複製物
この第九十三規則の規定の適用上、記録、写し及び一件書類は、光学的、電子的又はその他の複製物と
して保存することができる。ただし、その複製物は、93.1 から 93.3 までの規定に従って記録、写し及
び一件書類を保存する義務が履行されるようなものであることを条件とする。
インターネットで提供する根拠としては、WIPO 特許情報製品•サービス利用に関する利
用規約(2011 年 5 月 5 日)に以下の記載がある。
WIPO 特許情報製品•サービス利用に関する利用規約(2011 年 5 月 5 日)
2.権利の付与
2.1 PCT データ製品とサービス - WIPO は顧客が、ここで述べられる条件とセクション 3 に概説され
る枠組みの範囲内における PCT のデータ製品とサービスに含まれる情報にアクセスし、利用することを
許可する。この規約に特別の定めがない限り、顧客は、完全な PCT データの製品の再販、あるいは無償
配布(の危険性)がなければ、PCT データ製品とサービス上のデータに関する以下のような利用方法で
世界的規模の、非独占的権利を有する。
(a)検索可能なデータベースの情報を獲得、ダウンロード、保存すること。
(b)電子ネットワークと電子的抽出した情報のコピー、再フォーマット、配布、送信、二次的著作物
を作成すること。
(C)ダウンロード、プリントアウトを作成、複製、再フォーマット、解析、印刷などの印刷、またプ
リントアウトしたものや電子抽出物を表示することを含んだ情報アクセスと利用する権利をユー
ザに与えること。
(d)上記に関連する、情報のプリントアウトまたは抽出物をコピーして配布すること。
2.2 子会社、関連会社、および企業の同じグループのメンバーを含む第三者への完全な PCT データプ
ロダクトの転送は、顧客が、データとデータキャリアの使用をやめ、全てのデータとキャリアを転送し、
作成したコピーを削除あるいは破壊、また第三者が WIPO に対しこれらの条件が遵守されていると書面
で保障した場合のみ許可される。
2.3 国内/広域特許コレクション- WIPO はここに定める条件下で、顧客が国内/広域特許コレクションに
含まれる情報にアクセスし利用することを許可する。利用規約に特別の定めがない限り、顧客は、国/
広域特許コレクションに含まれるデータの以下の利用に関して、世界的かつ非排他的な権利を有するも
のとする。
(a)WIPO が提供するオンラインサービスでクエリを作ること。
(b)WIPO 提供サービスによる個々のドキュメントを閲覧、ダウンロード、保存する事。
- 25 -
顧客は、国内/広域特許コレクションに含まれているデータに関し以下のような利用権利を持たない。
(a)WIPO 提供サービスによるドキュメントの大量に取得、ダウンロード、保存を行う事。
(b)WIPO 提供サービスによるドキュメントの大量コピー、一括再フォーマット又は大部分の再配布を
実行する事。
上記の用途以外のいかなる使用も、WIPO の事前の同意を受けなければならない。
オンライン特許情報提供サービスとしては、以下のとおり。
① PATENTSCOPE9(特許検索、経過情報、包袋情報(WIPO 管理分))
・ PATENTSCOPE 検索サービス:2005 年にスタートした、1978 年以降 PCT 条約に基づき提
出された開示された 220 万件以上の国際特許出願を含む 3,500 万件の書誌データを
WIPO が無償で提供する特許検索システム。37 の国・地域の文献をカバー10、カナダ、
オーストラリア、英国、ドイツ、ポルトガルも追加予定11。2015 年までに 4000 万件の
特許文献情報を収集する予定であるが、大容量データの扱い、言語の壁、国内特許文
献の充実化等が課題としている12。検索インターフェイスは9言語(英語、ドイツ語、
スペイン語、フランス語、日本語、韓国語、ポルトガル語、ロシア語、中国語)で用
いることができ、また携帯電話用インターフェイスも作成されている。
・ PATENTSCOPE web サービス:公開された PCT 出願のデータを公開日に自動でダウンロー
ド出来る有償サービスである(600 スイスフラン/年)。全ての公開された国際出願(XML
形式)のための書誌データ、全ての公開された国際出願(TIFF 形式)のための画像、
英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語だけでなく、日本語と韓国語(近
日発売)(PDF 形式)で公開されている全ての国際出願の全文明細書及び特許請求の範
囲(OCR の出力)を含む。
・ PATENTSCOPE 検索サービス及び PATENTSCOPE web サービスでは、バルクダウンロードは
認められていない。また、同一の IP アドレスから1分あたり 10 回以上の検索は認め
られていない。過度の使用を行った ID や IP アドレスはサービスを一時的に、あるい
は恒久的に拒否される可能性がある13。
9
本項で特に注釈がない文書については、下記を参照している。
PATENTSCOPE
http://www.wipo.int/patentscope/en/ [最終アクセス日:2014 年 2 月 3 日]
10
PATENTSCOPE
http://patentscope.wipo.int/search/ja/help/data_coverage.jsf [最終アクセス日:2014 年 2 月 3 日]
11
夏目健一郎「WIPO の特許情報データベース PATENTSCOPE」1 頁, 世界知的所有権機関 日本事務所(2013)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/56/7/56_425/_pdf[最終アクセス日:2014 年 2 月 3 日]
12
同上
13
PATENTSCOPE 利用規約 WIPO 特許情報製品•サービス利用(2011 年 5 月 5 日)に関する利用規約
- 26 -
WIPO 特許情報製品•サービス利用に関する利用規約(2011 年 5 月 5 日)
(抜粋)
3.承認された利用
3.1 PATENTSCOPE 検索サービス- PATENTSCOPE 検索サービスは、WIPO が顧客に無料で提供している PCT
国際特許出願及び国内/広域特許コレクションの検索サービスである。このサービスは、大量コピー
用ではないため、以下の事柄が遵守されるべきである:
(a)1つの IP アドレスから 1 分あたり関連する検索が 10 を超えないこと
(b)自動化されたクエリはできない。
3.2
PATENTSCOPE Web サービス- PATENTSCOPE Web サービスは、顧客が公開された国際特許出願のイン
ターネット文書にアクセスできる有料のサービスである。このサービスは、一括ダウンロード用で
はないため、以下の点に違反しないこと:
(a)加入者の個々の IP アドレスからの 1 分あたりの検索関連アクションが 10 を超えないこと。
不当/過度の利用は、与えられたユーザ ID や IP アドレスが一時的または恒久的に拒否される可能
性がある。
(2)特許情報のインターネット提供における技術面、運用面での対応
(i) 特許公報の改竄防止に関する技術的対応
PATENTSCOPE は http 接続である。そこで提供されているファイル形式は、PDF 形式、XML
形式、TIFF 形式と複数存在する。検索利便性のため、検索用には XML 形式が用意されてい
る。PCT 出願の OCR は毎週実施しているが、品質の悪いものは後日人手で修正・分析を施
している14。
OCR による提供は、オリジナルとの差異があるものとしており、PCT 出願書類をスキャン
した PDF 版をオリジナル文書の電子コピーとみなしている。
(ii) 提供する情報のデータ量、更新頻度、発行時間等
PATENTSCOPE の書誌情報及び関連書類は日々更新される。また出願の公開は毎週木曜日
(木曜日が祝祭日で国際事務局の休日にあたる場合は、翌日の金曜日)に行われる15。
書類及びデータの種類
表 III-1 提供データ
収録範囲(収録範囲は国際
出願日により異なる。)
備考
http://www.wipo.int/patentscope/en/data/terms.html[最終アクセス日:2013 年 12 月 10 日]
14
Mr. Iustin Diaconescu「PATENTSCOPE と Global Brand Database~WIPO のパテントスコープとグローバル・ブラン
ド・データベースの最新情報」WIPO, 49 頁
http://www.japio.or.jp/fair/files/2013/2013wipo02.pdf [最終アクセス日:2014 年 2 月 3 日]
15
PATENTSCOPE データベースの内容
http://www.wipo.int/patentscope/ja/db/content.html[最終アクセス日:2014 年 2 月 3 日]
- 27 -
国際事務局における利用可能な最新の書誌情
報
国際出願ステイタスリポート
公開された PCT 国際出願(イメージフォーマッ
ト)
以下の言語により公開された明細書及び請求
の範囲のテキスト:
‐英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語及
びロシア語
日本語
1978 年から現在
1998 年 7 月から現在
1978 年から現在
1978 年から現在
2008 年 7 月から現在
優先権書類
規則 4.17 に基づく申し立て
国際予備審査報告(IPER)
‐国際予備審査報告の英訳
2001 年 1 月から現在
2001 年 3 月から現在
2002 年 1 月から 2003 年 12 月
‐国際調査機関の見解書(WO-ISA)
‐国際調査機関の見解書に対する非公式コメ
ント
‐特許性に関する国際予備報告(第一章)
(IPRP
Chapter I)
‐国際調査機関の見解書の英訳
‐特許性に関する国際予備報告(第一章)の英
訳
‐特許性に関する国際予備報告(第二章)
(IPRP
Chapter ⅱ)
‐特許性に関する国際予備報告(第二章)の英
訳
2004 年 1 月から現在
‐願書(PCT/RO/101)
‐優先権書類の提出または送付に関する通知
(PCT/ IB/304)
‐変更の記録の通知(PCT/ IB/306)
PCT 出願のファイルコンテンツ
2006 年 1 月から現在
2009 年 1 月から現在
PCT 国内段階に関する情報
個々の特許庁により異なる
2004 年 1 月から現在
データフォーマットに
関する詳細情報に関し
ては、以下のページを参
照してください:
http://www.wipo.int/p
ctdb/ja/data_formats.
js
PCT 規則 94.1(c)の規定
により、国際事務局は、
最低 1 つの選択官庁によ
り請求された場合に、当
該選択官庁に代わり国
際予備審査報告の写し
を、優先日から 30 ヶ月
経過後に提供する。
優先日から 30 ヶ月経過
後に利用可能。
PCT 規則 94.1(c)の規定
により、国際事務局は、
最低 1 つの選択官庁によ
り請求された場合に、当
該選択官庁に代わり国
際予備審査報告の写し
を、優先日から 30 ヶ月
経過後に提供する。
非公開書類を除く
また、バルクデータは、下記の方法で有償入手可能である。
・ PCT-Text:現在の年の全ての国際出願についての書誌データ(XML 形式)及び、現在の
週に公開されている全ての国際出願のフロントページ描画イメージ(TIFF 形式)等が
- 28 -
FTP サーバ経由で提供されている。
・ PCT XML Backfile:XML バック分(XML 形式)。DVD により提供。
・ PCT Backfile Bibliographic:書誌データバック分(XML 形式)。DVD により提供。
・ PCT-Images:元の文書の電子コピー(TIFF 形式)。DVD により提供。
・ PCT OCR Backfile Asian languages:アジア言語バック分(XML 形式)。DVD により提
供。
・ PCT OCR Backfile non-Asian languages:アジア以外の言語バック分(XML 形式)。DVD
により提供。
(3)特許情報の提供と個人情報保護について
国際公開(International Publication)においては出願人の氏名・住所、発明者の氏名・
住所を掲載する必要があり、PCT 規則では以下のような取り扱いとなっている。
・ PCT 規則 4.4(c)において、願書様式に記載するあて名が発明者の「自宅の」であるこ
とを要求していない。どのあて名を記載するかは出願人/発明者の問題となり、国内
段階においては、国際事務局は発明者の自宅のあて名以外のあて名を使うことに対し
て異議を唱えない。
・ PCT 規則 4.5(a)(ⅱ) 及び 4.6(a) において、願書様式に出願人 及び/若しくは 発
明者のあて名を記載するように規定されている。しかし、PCT 規則 26.2 の 2(b) は、
少なくとも出願人のうちの一人であって受理官庁に国際出願をする資格を有する者の
名称及びあて名が記載されている場合には、十分であるとみなしている。よって、受
理官庁は出願人に他の出願人/発明者のあて名を補充することを求めない。
・ 願書様式にあて名を記載しないことを選択し、受理官庁の訂正の求めに返答しなくと
も、出願手続は継続され、出願人/発明者のあて名がないままで出願は公開される。
この欠陥の結果は国内段階の問題となる16。
16
PCPCT NEWSLETTER-日本語抄訳-,WIPO, 1 月号,86 頁(2007 年)
- 29 -
特許協力条約に基づく規則 (PCT 規則)
4.4 氏名又は名称及びあて名
(a)自然人の氏名については、姓及び名を記載するものとし、姓を名の前に記載する。
(b)法人の名称については、完全な公式の名称を記載する。
(c)あて名については、郵便物が速やかに当該あて名に配達されるための慣習上の要件を満たすよ
うに記載するものとし、いかなる場合においても、全ての該当する行政単位(住居番号があると
きはその番号を含む。)を記載する。指定国の国内法令が住居番号を記載することを要求してい
ない場合には、その番号の記載がないことは、当該指定国においていかなる影響をも及ぼすも
のではない。出願人との速やかな連絡を可能にするため、出願人又は、該当する場合には、代理
人若しくは共通の代表者の加入電信番号、電話番号、ファクシミリ番号又は他の同様の通信手
段についてはこれらに相当する情報を記載することが望ましい。
(d)各出願人、各発明者又は各代理人については、一のあて名のみを記載する。ただし、出願人又は
二人以上の出願人がある場合にあつて全ての出願人を代表する代理人が選任されていないと
きは、出願人又は二人以上の出願人がある場合の共通の代表者については、願書に記載された
あて名に加え、通知が送付されるための他のあて名を記載することができる。
4.5 出願人
(a) 願書には、出願人又は、二人以上の出願人があるときは、各出願人につき、次の事項を記載す
る。
(ⅰ) 氏名又は名称
(ⅱ) あて名
(ⅲ) 国籍及び住所
(b) 出願人の国籍については、出願人が国民である国の国名を記載する。
(c) 出願人の住所については、出願人が居住者である国の国名を記載する。
(d) 願書には、異なる指定国について異なる出願人を記載することができる。この場合には、願書
には各指定国又は各指定国群ごとに出願人を記載する。
(e) 出願人が受理官庁として行動する国内官庁に登録されている場合には、その番号又は他の表
示を願書に記載することができる。
4.6 発明者
(a) 4.1(a)
(ⅳ)又は(c)
(ⅰ)の規定が適用される場合には、願書には、発明者又は、二人以上
の発明者があるときは、各発明者につき、その氏名又は名称及びあて名を記載する。
(b) 出願人が発明者である場合には、願書には、(a)の規定による記載に代えてその旨の陳述を
記載する。
(c) 発明者の記載に関し指定国の国内法令の要件が同一でない場合には、願書には、異なる指定国
について異なる者を発明者として記載することができる。この場合には、願書には、各指定国又
は各指定国群において 特定の者又は同一の者を発明者とすべき旨の個別の陳述を記載する。
第二十六 規則
国際出願の要素の受理官庁による点検及び受理官庁に提出する補充
26.2 の 2 第十四条(1)(a)(ⅰ)及び(ⅱ)に規定する要件の点検
(a)(略)
(b)二人以上の出願人がある場合には、4.5(a)
(ⅱ)及び(ⅲ)に規定する表示が、少なくとも出
願人のうちの一人であつて 19.1 の規定に基づき受理官庁に国際出願をする資格を有する者に
ついてされているときは、第十四条(1)(a)(ⅱ)の規定の適用上、十分なものとする。
- 30 -
米国特許法改正前は、米国を指定国とする目的で PCT 出願様式に発明者を出願人として
表示する必要があったが、米国特許法改正に伴い、その必要がなくなった。PCT 出願の国
際出願日の認定において発明者の氏名とあて名の提供は求められていないが、WIPO では、
発明者の氏名とあて名を出願時に出願様式に記載することを推奨している。ほとんどの指
定国(或いは選択国)において、発明者の氏名とあて名が出願過程のある時点で提供され
ることを要求しているため、国内段階において、それぞれの指定官庁(或いは選択官庁)
に対して情報を提供するのにかかる時間を節約するためにも、出願時にそれらの情報を含
んでいることが最も適当であるとしている17。
2009 年からプライバシーへの対応として、PATENTSCOPE での個人情報の取り扱いについ
て、書誌情報タブでは「発明者」、個人の「出願人」のあて名は非表示としている。一方、
Document(書類)タブでは加工は行っておらず、公報、願書等の書類ではイメージ形式で
はあるが、あて名は表示されている。
書誌情報タブからはあて名は非表示としているが、あて名情報は DB 内に保有しているの
で PATENTSCOPE 内での検索キーとしては依然として利用可能である。
公開情報から特定の情報を削除するよう要求することは PCT では不可能としている。
(4)産業財産権及び個人情報保護に関する法令・規則等の変更について
特になし
2. EPO
(1)産業財産権情報のインターネット提供について
欧州特許の付与に関する条約(EPC)第 93 条に基づき、欧州特許出願を公開しているほ
か、長官の決定・通知を根拠としている。
EPC 第 93 条
欧州特許出願の公開
(1) 欧州特許庁は、欧州特許出願を次の時期に、速やかに公開する。
(a) 出願日から又は優先権が主張されている場合は優先日から 18 月経過後、又は
(b) 出願人から請求があった場合は、上記期間の満了前
(2) 欧州特許の付与の決定が(1)(a)にいう期間の経過前に効力を生じるに至った場合は、欧州特許出願
は、欧州特許明細書と同時に公開される。
17
PCT NEWSLETTER-日本語抄訳-WIPO, 12 月号(2012 年)
http://www.wipo.int/export/sites/www/pct/ja/newslett/2012/12_2012.pdf [最終アクセス日:2014 年 2 月 3 日]
- 31 -
書類閲覧に関する 2007 年 7 月 12 日付の欧州特許庁長官の決定(Spec.ed.No.3 OJ EPO2007, J.2.)
欧州特許庁長官は、第 126 条(4)と EPC 規則 145(2)と PCT 規則 94.3 に関して以下のように決定した。
第1条
オンライン書類閲覧
(1)欧州特許申請と取得された特許と、欧州特許庁が特許協力条約下で指定あるいは選択官庁となった
場合の国際出願(international application under PCT)の案件は Register Plus オンラインサー
ビスを通じて無料の閲覧が可能。欧州特許庁はその敷地内にオンライン書類閲覧の為のコンピュー
タを提供する。
(2)無料のオンライン書類閲覧導入後は、原則として欧州特許庁の敷地では紙の書類閲覧を行わない。
(3)まだ電子形態に保存されてない書類閲覧が要求されたときは、原則として案件が既に効力を失って
いなければ(unless it has already been destroyed) (EPC 規則 147)、出願あるいは発行番号の 10
就業日以内にオンライン化される。有効な出願あるいは発行番号は書類閲覧の請求に相当する。書
面で別に書類閲覧を依頼する必要はない。
(4)段落 3 は口頭手続きが間近あるいはすでに行った場合には適用しない。
(5)全体あるいはその中にスキャンできない部分がある案件(Files or parts thereof that are not
scannable shall be made available for inspection in their original form or as filed.)は 、
原文書あるいは出願された形態で閲覧できるような形態にされる。よって欧州特許庁の敷地内で行
われる。
第2条
紙の書類閲覧
(1)紙の書類閲覧は請求によって利用できる。請求した場合、前もって事務費を支払うものとする。事
務費が支払われるまでは請求が行われたとは認められない。
(2)100 ページ以上にわたる場合、欧州特許庁は、通常案件のコピーを含んだ電子記憶媒体のみ提供する。
特に紙での請求をする場合は、100 ページを超えた分に関して追加の料金が発生する。追加の事務費
の送り状は書類と一緒に送付される。
(3)請求に応じて欧州特許庁の手続きを踏んだ紙の閲覧も(paper copies jade available under
paragraph 1) 認定する。事務費が払われるまでは認可の申請が行われたとは認められない。
(4)請求された電子記憶媒体あるいは手続きを踏んだ書類に関して通常少なくとも 4 週間かかる。
第 3 条 廃止された以前の決定(Previous decisions superseded)
決定の効力発生とともに書類閲覧に関する 2003 年 6 月 6 日付の欧州特許庁長官の決定(OJ EPO 2003,
370)は適用されなくなる。
第4条
効力発生
この決定は改正法第 8 条に従って特許条約の改正分が発効した時点で効力が発生する。
2007 年 7 月 12 日ミュンヘンにて作成
Alison BRIMELOW
長官
- 32 -
EPO におけるオンライン特許情報提供サービスは以下のとおり。
① ESPACENET18(特許検索)
EPO が、提供しているオンライン情報検索サービスの代表的なサービス。85 の国及び特
許機関から入手した 19 世紀初めから最新の文献までを網羅、約 8,000 万件の特許文献が蓄
積されている。
番号や日付、分類、出願人名、発明者名、技術用語で検索でき、検索結果は一覧表示か
ら指定して詳細表示(書誌・抄録・代表図面)ができる。詳細表示では、原文献や引用・被
引用、パテントファミリー、INPADOC リーガルステータスへのリンクがある。また、Patent
Register の当該番号へのリンクもあり、EPO へ出願されている場合は、EPO での経過情報
の詳細を確認することができる。
インターフェイスの言語は英語・仏語・独語、日本語のインターフェイスがある。ヘル
プも日本語に訳されているが更新されていない部分があり、現時点では英語版の方が最新
情報を得られる。
② European Patent Register19(経過情報、包袋情報)
全ての EP 特許出願の公開以降の手続情報が閲覧可能である。
・ リーガルステータスデータ
・ EPO 包袋中の全ての公開文献 ("file wrapper")
・ Espacenet へのリンク
・ European Publication Server へのリンク
・ 各種データの表示 (主要データ、リーガルステータス、イベント履歴、引用、パテン
トファミリー、全文献/文献フィルター)
③ European Publication server20(公報ダウンロード)
European Publication Server では、EP 特許出願、EP 登録特許明細書、修正された文献
18
19
20
Espacenet
http://worldwide.espacenet.com/?locale=en_EP [最終アクセス日:2013 年 12 月 4 日]
European Patent Register
http://www.epo.org/searching/free/register.html [最終アクセス日:2013 年 12 月 4 日]
European publication server
https://data.epo.org/publication-server/?lg=en[最終アクセス日:2013 年 12 月 4 日]
- 33 -
が PDF 及び XML 形式で閲覧・ダウンロードが可能である。また、検索等の機能として以下
のような特徴がある。
・ 文献番号、出願番号、発効日、種別コード、IPC による検索が可能
・ European Patent Register, Espacenet,及び PATENTSCOPE へのリンク
・ 機械翻訳機能あり
(2)特許情報のインターネット提供における技術面、運用面での対応
(i) 特許公報の改竄防止に関する技術的対応
ESPACENET は http 接続であり、EuropePatentRegister、European Publication sever
は https 接続となっている。改竄防止に関する技術的な対応ついて、特定の規定は存在し
ない。そこで提供されているファイル形式は、2006 年以前は PDF と GML であったが、現在
は PDF、XML、Zip などである。
包袋閲覧は 10 年前から全てオンライン European Patent Register で行っている。紙書
類はスキャンしている。
EPC 規則 147(3)で「電子ファイルに組み込まれた書類は、原本とみなす」としている。
スキャンした情報が原本となるため、図面に関しては復元できないなど問題がある。なお、
EPC 規則 49 条により、出願人はスキャン可能なものでなければならないとしている。
EPC 規則 147 ファイルの構成、維持及び保存
(1) 欧州特許庁は、全ての欧州特許出願及び特許に関するファイルを構成し、維持し、保存する。
(2) 欧州特許庁長官は、これらのファイルを構成し、維持し、保存する様式を定める。
(3) 電子ファイルに組み込まれた書類は、原本とみなす。
(4) 全てのファイルは、次のことが生じた年の終わりから少なくとも 5 年間保存する。
(a) 出願が拒絶され、取り下げられ又は取下とみなされること
(b) 特許が欧州特許庁によって取り消されること、又は
(c) 特許又は第 63 条(2)に基づくそれと対応する保護が、指定諸国中の最終国において消滅する
こと
(5) (4)を損なうことなく、出願であって、第 76 条に基づく分割出願又は第 61 条(1)(b)に基づく
新たな出願を生じさせたものに関するファイルは、後者の出願中の何れかに関するファイルと、
少なくとも同じ期間保存する。この規定は、その結果として生じる欧州特許に適用する。
EPC 規則 49 出願書類の提示に関する通則
(1) 第 14 条(2)又は規則 40(3)に基づいて提出された翻訳文は、欧州特許出願を構成する書類とみ
なす。
(2) 出願を構成する書類は、特にスキャニング、写真、静電的方法、写真オフセット及びマイクロ
- 34 -
フィルムによって、電子的に及び直接に任意の部数の複製をすることができるようにして提示
する。用紙には、裂け目、しわ及び折り目があってはならない。用紙は、片面のみを使用する。
(3) ~(12)略
(ii) 提供する情報のデータ量、更新頻度、発行時間等
European Publication serve の新規公開分は、毎週公開日(通常水曜日)の 14 時(中
央ヨーロッパ標準時)にアップロードされている。
(3)特許情報の提供と個人情報保護について
住所・氏名等の取扱いは EPC 規則により規定されている。EPC 規則 41 によれば、発明者
の完全な氏名と住所の記載は出願人の義務であり、公開情報であり、民間情報提供者が利
用できるものである。出願人は署名をもって正確性を確認する。
住所・居所の記載については、EPO と連絡をとるために十分な情報を提供しなければな
らない。住所・居所は自宅ではなく、会社の住所を記載することも可能である。会社住所
記載は、個人情報の保護という観点よりも、企業・業務により出願されるためによる。
公報における住所表記の省略理由は法的なものではなく、一枚の表紙で情報を収めた
かったからという、書類の省スペース上の問題(特に出願人や発明者が複数の場合、その
住所だけでもかなりのスペースを要することになる)。
EPC 規則 41
付与を求める願書
(1) 欧州特許の付与を求める願書は、欧州特許庁によって作成された様式によって提出する。
(2) 願書には、次の事項を記載する。
(a) 欧州特許の付与を求める旨の申立
(b) 発明の名称。これは、明確かつ簡潔に発明の技術的表示を陳述し、かつ、全ての架空名称を排除
する。
(c) 出願人の名称、宛先及び国籍、並びに出願人の居所又は主たる営業所が所在する国。自然人の名
称は、姓によって表示し、その後に名を続ける。法人、及び団体に関する法律に基づいて法人と
同等である団体の名称は、その公式呼称によって表示する。宛先は、迅速な郵便配達のために適
用される通常の要件に従って表示し、また、住居番号がある場合はそれを含め、関連する全ての
行政単位を含める。ファックス及び電話の番号を表示することが望ましい。
(d) 出願人が代理人を任命している場合は、代理人の名称及び営業所の宛先であって、(c)の規定に
よるもの
(e) 該当する場合は、その出願が分割出願である旨の表示及び先の欧州特許出願の番号
(f) 第 61 条(1)(b)の対象である事例の場合は、原欧州特許出願の番号
(g) 適用可能な場合は、申立であって、先の出願の優先権を主張し、かつ、先の出願の出願日及び出
願国又は指定国を表示しているもの
(h) 出願人又はその代理人の署名
(i) 願書に添付した書類の一覧。この一覧は、願書に添えて提出する明細書、クレーム、図面及び要
約の枚数も表示する。
- 35 -
(j) 発明者が出願人である場合は、発明者の表示
(3) 出願人が 2 以上である場合は、願書は、共通代理人として 1 の出願人又は代理人を指名することが
望ましい。
また、発明者は EPC 規則 20(1)により表示権を放棄することができる。表示権を放棄で
きるのは公開される前までである。情報が公開された後に、表示権の放棄はできない。
EPS 規則 20
発明者についての言及の公表
(1) 指定された発明者は、公開される欧州特許出願及び欧州特許明細書において言及される。ただし、
同人がそのように言及される権利を放棄する旨を書面により欧州特許庁に通知するときは、この限
りでない。
(2) 第三者が、欧州特許庁に対し、欧州特許の出願人又は所有者は当該人を発明者として指定すべき旨
を決定している最終決定を提出した場合に、(1)を適用する。
(4)産業財産権及び個人情報保護に関する法令・規則等の改正事項等
特になし
(5)民間の情報提供事業者への対応について
データ利用規約は EPO と OPS ユーザとの契約事項となる。OPS のデータ利用規約(Terms
and conditions for use of the EPO's Open Patent Services)にはデータに含まれる個
人情報の取扱については特段の記載はない。OPS ユーザとの関係で紛争事項があった場合
にはドイツの法令に準拠してドイツ連邦管轄の裁判所になる(EPC 第 9 条)。
ユーザ(業者)は各国の法律に基づき対応する必要がある。その点は EPO の管轄外であ
る。
EPC 第 9 条 責任
(1) 機構の契約上の責任は、関連契約に適用される法律により定められる。
(2) 機構又は欧州特許庁の職員がその職務の遂行中に与えた損害に関する機構の非契約上の責任は、ド
イツ連邦共和国の法律により定められる。損害がヘーグの支庁、又は支局又はこれらに属する職員
によりもたらされた場合は、その支庁又は支局のある締約国の法律が適用される。
(3) 機構に対する欧州特許庁職員の個人的責任は、服務規定又は雇用条件に定められる。
(4) (1)及び(2)に基づく紛争を解決するために管轄権を有する裁判所は、次のとおりとする。
(a) (1)に基づく紛争に関しては、ドイツ連邦共和国の管轄裁判所。ただし、当事者間で締結された
契約が他の締約国の裁判所を指定する場合は、この限りでない。
(b) (2)に基づく紛争に関しては、ドイツ連邦共和国の管轄裁判所又は当該支庁若しくは支局のある
締約国の管轄裁判所。
- 36 -
3. DPMA
(1)産業財産権報のインターネット提供について
2013 年 10 月にドイツ連邦特許法が改正された(2013 年 10 月 24 日公布)。主たる改正点
は以下のとおりである21。
◯ 特許出願ファイルのインターネットを介した閲覧について
・法改正により、第 31 条の規定によりインターネットを介した包袋閲覧が可能となる。第
31 条の特許出願ファイルの対象は原則、庁と出願人の間の書類全てである。なお、DPMA
では 2001 年から特許公報 A、B、C 全てを電子データで公開済みである。
・DPMA が作成したサーチレポートは、これまでオンラインでは公開されていなかったが、
インターネットを介して閲覧可能となった。
◯ 出願公開等の電子形態での伝達について
・庁保有データを特許情報の利用を目的として第三者(プロバイダ)に渡すことに対する
法的根拠がなかったが、今回の法改正で明確化された(第 32 条(1))。改正目的は実施
中のプロバイダへのデータ提供を連邦データ保護法へ確実に適合させることである。
2013 年法律改正に基づくドイツ特許法の改正内容
22
第 31 条
(1) 略
(2) 何人も、次の場合は、特許出願のファイルを自由に閲覧することができる。
1. 出願人が特許庁に対してファイルの閲覧についての同意を表明し、かつ、発明者を指定している
場合、又は
2. 出願日(第 35 条)又は出願に関して先の日付が主張されている場合はその日から、18 月が経過し
ている場合であって、かつ、第 32 条(5)に基づく通知が公告されているとき
(3) ファイルの閲覧が何人に対しても認められている場合は、そのファイルに付属するひな形及び見本
の閲覧も、何人に対しても認められる。
(3a) ファイルの閲覧が何人に対しても認められている限り、そのファイルが電子的に処理されている
ときは、その閲覧はインターネットを介しても認められる。
(3b) (1)から(3a)までの定めるファイル閲覧は、ある法規がそれを妨げるか、あるいは連邦データ保護
法第 3 条(1)の意味する当事者の保護価値のある利益が明確な形で優位を占めている限りは除外さ
れる。
(4)・(5) 略
21
「ドイツ連邦特許法改正法,公布される」、JETRO デュッセルドルフ事務所(2013 年 10 月 29 日 )
「2013 年法律改正に基づくドイツ特許法の改正内容 (日本語仮訳) 」, JETRO デュッセルドルフ事務所(2013 年 7
月)
22
- 37 -
第 32 条
(1) 特許庁は、次のものを公表する。
1. 出願公開
2. 特許明細書、及び
3. 特許公報
公表は電子形態で行うことができる。特許情報を目的とする更なる処理又は利用のために、特許庁
は第 1 文に挙げた記録文書の記載を第三者に電子形態で伝達することができる。この伝達は、閲覧
が除外されている限りは(第 31 条(3b))、行われない。
(2) 略
(3) 特許明細書には、特許付与の基礎となった特許クレーム、発明の説明及び図面を含める。特許明細
書はまた、出願の対象である発明の特許性を判断する際に特許庁が考慮に入れた公知技術(第 43 条
(1))も記載しなければならない。要約(第 36 条)が未だ公表されていない場合は、これも特許明細
書に含める。
(4)・(5) 略
DPMA におけるオンライン特許情報提供サービスとしては、以下のとおり。
① DEPATISnet23(特許検索)
世界中から特許公報検索をすることができる。DPMA 内部のドイツ DEPATIS 特許情報シス
テムデータを使用することができる。検索については 5 つモード(初心者、専門家、Ikofax、
パテントファミリー、PIZ サポート)が用意されている。
DEPATISnet の特徴は以下のとおりである。
・ DPMA の無料のサービスである
・ 最新のドイツ語文書のデータは、発行日(通常は木曜日)に入手可能である。
・ 書誌データまたは PDF の元文書でもリストの結果を表示することができる。
・ ページごとに閲覧することができ、文書の特定の部分(サブ文章)に直接アクセスで
きる。
・ ページごとまたは文書全体を印刷可能である。
・ サービスはドイツ語と英語で検索可能である。
・ DEPATISnet 経由で国際特許分類(IPC)とそれに対応する標語インデックスを検索可能
である。
23
DEPATISnet(http://www.dpma.de/english/service/e-services/depatisnet/index.html)
2 月 3 日]
- 38 -
[最終アクセス日:2014 年
② DPMA register24 (経過情報)
DPMA register では、以下の公表物の全ての書誌データと手続き/リーガルステータス
データが提供されている。
特許・実用新案
・
1981 年 1 月 1 か以降は登録
された特許および登録実用
新案
・ 旧 GDR の効力が残っている
もの
・ 補充的保護証明書と植物保
護製品に関するデータ
・ 地勢図
商標
・
・
・
・
・
・
1894 年 10 月以降に登録され
たドイツ国家商標上のデー
タ
1998 年 1 月 1 日以降登録さ
れたドイツ国家商標上の
データ
ドイツ商標記録
出願に拒否または撤回され
たドイツ商標出願
削除されたドイツ商標
地理的起源の兆候(主に記
録)
意匠
・
・
・
1988 年 7 月 1 日以降に出願
日を持つ全ての登録と削除
された意匠
1998 年 1 月 1 日以降の全て
の登録と削除された意匠の
リーガルステータスデータ
2004 年 6 月 1 日以降に登録
された意匠の完成画像
資料:DPMA サイト(http://www.dpma.de/index.html)
(2)特許情報のインターネット提供における技術面、運用面での対応
(i) 特許公報の改竄防止に関する技術的対応
DPMA からの情報提供(インターネットによる検索サービス)は、https 接続か http 接続
のいずれかをユーザが選択可能である。
(ii) 提供する情報のデータ量、更新頻度、発行時間等
週次で提供されており、最新情報は 8 週間ダウンロード可能である。
(3)特許情報の提供と個人情報保護について
住所・氏名等の取扱いは、ドイツ特許法に基づく。
DPMA register 及び公報においては、個人情報のデータベースを極力保有しないことを
原則としており、出願人・発明者の住所表記は省略(国、都市、郵便番号まで)されてい
る。
24
DPMA register (https://register.dpma.de/DPMAregister/Uebersicht?lang=en)[最終アクセス日:2014 年 2 月 3 日]
- 39 -
(4)民間の情報提供事業者への対応について
庁保有データは契約を締結することにより第三者が入手できるようになっている。標準
契約書25には、利用目的としていくつか選択肢を用意しており、利用者(プロバイダ)は
そこから選択、または記述する。また、利用者が行ってはならない事項としては、情報を
目的外に乱用すること(例えば住所だけを抜き出して別のデータベースをつくるなど)
、人
の格付けに利用するなどが記載されている。
標準契約書において利用目的を明確にすることで、連邦データ保護法の利用目的に明確
に対応している。
また、標準契約書では、DPMA が情報受取人に提供したデータ、つまり個人情報やデータ、
添付書類の一部の削除などに関する訂正について連絡する場合、情報受取人は影響のある
データファイルやこれらのデータから生み出された製品を遅滞なく修正しなくてはならな
いと定めている。
契約書雛形(抜粋)
セクション 3
データ提供、使用権の目的制限
1. セクション 1 とセクション 2 で言及された知的財産権に関する、DPMA 提供のデータは以下の目的
のみに限られる。(チェックマークをつけてください)
○ a) 内部的に知的財産権の認識、管理、チェック目的で情報受取人が自身の知的財産権のデータ
コレクションの確立、開発及び拡大目的(例えばデータベース)としての為
○
b)権限を受けた第三者(あてはまる場合の検討の為)に知的財産権を認識、管理、チェックで
きるように情報受取人が自身の知的財産権のデータコレクションの確立、開発及び拡大目的の
為(例えばデータベースとして)
○ c)(a)と b)で言及された以外の)知的財産権に関する情報製品やサービスの開拓やマーケティ
ングのため;
情報製品やサービスのコンテンツを特定してください。情報受取人/ターゲットグループの分野につ
いて述べてください。可能な限り正確な情報を提供してください。
___________________________
___________________________
___________________________
○ d)科学的活動
25
DPMAdatenabgabe, (2010 年 1 月 12 日アップデート)
- 40 -
科学的作業の目的についての情報を提供してください。契約研究の場合、契約発注者を示してくだ
さい。可能な限り正確な情報を提供してください。
___________________________
___________________________
___________________________
○ e) 他の目的
出来る限り正確な情報を出してください
___________________________
___________________________
___________________________
2.
本契約を締結することによって、情報受取人は項目 1 で言及した目的で、データを使用する、単純
で非排他的な権利を得る。この権利は、第三者に譲渡しないものとする。
他のいかなる目的によるデータ加工も、使用も認められない。特に認められないのは、
-DPMA が提供したデータ及びデータセットを、全部あるいは部分的に第三者に譲渡すること; 項目
1の b)から d)までの目的の使用範囲内での提供はこの禁止事項の対象外である。
-アドレスの商業開拓の為に提供されたデータ及びデータセットを使用、出力すること
-情報受取人が正当に知的財産権に登録し、更新し管理する権利あるいは資格があると思わせるよう
な行動に関わるデータやデータコレクションの利用
-自然人の格付け目的の為のデータ使用
同様に、情報受取人は、このような認められないやり方で第三者にデータの加工や利用をさせては
ならない。
3.
DPMA が供給したデータが本契約のセクション 2 で言及した提供範囲の中に含まれないデータを含
んでいるときは、情報受取人は其のデータの加工あるいは利用をしてはならない。
セクション 5
秘密保持と安全性
1. DPMA から供給されたデータファイルが知的財産権の特許出願人あるいは知的財産権の保持者の利
益の為に、公開されていないデータあるいはまだ公開されてないデータが含まれている場合、情報
受取人は、このことに気付いた範囲内で、あるいは少なくとも法的条項に従って発行が認められる
日付の前にこれらのデータを一切、加工あるいは使用してはならない。
情報受取人はこのようなデータの秘密を保持できるよう出来る範囲で、必要なあらゆる手立てを
講じなくてはならない。さらに、情報受取人は自分のスタッフに、該当する場合、加工あるいは使
用を受託した人々に対して第 1 文や第 2 文(sentences 1 and 2)による秘密保持の為の必要性に
ついて十分に知らせ、秘密保持の約束をさせるものとする。(ドイツ連邦データ保護法セクション
5)
2.
DPMA が情報受取人に提供したデータ、つまり個人情報やデータ、添付書類の一部の削除などの訂正
について連絡する場合、情報受取人は影響のあるデータファイルやこれらのデータから生み出され
た製品を遅滞なく修正しなくてはならない。情報受取人は、これまで起きなかったあるいは起こさ
れなかった、第1文(sentence1)による、修正から起きる第三者の請求に対して DPMA を免責にする
ものとする。
3.
情報受取人は、インターフェイスを利用する一方、認められた先端技術により、データの安全性を
- 41 -
確保するあらゆる手段を講じなくてはならない。ドイツ連邦情報技術安全局の提言を実行しなくて
はならない。
4. USPTO26
(1)産業財産権情報のインターネット提供について
米国の情報政策は OMB Circular(米国連邦政府行政管理予算局通達)A-130 による、行
政の保有する情報を、適正な価格で提供することを推進する指針に則る。特許情報につい
ても OMB 通達 A-130 に則って運用される。
電子形態による特許公報の公表は、特許法27第 10 条に規定されている。
特許法
第 10 条 公表
(a) 長官は、次のものを、印刷、タイプ又は電子形態をもって公表することができる。
(1) 明細書及び図面を含む、特許及び公開特許出願、並びにそれらの写し。特許商標庁は、写真平
版のために特許に係る図面の見出しを印刷することができる。
(2) 商標登録証(説明及び図面を含む)、及びその写し
(3) 合衆国特許商標庁公報
(4) 特許及び特許権者、並びに商標及び商標登録人の年度別索引
(5) 特許及び商標事件に関する年次決定集
(6) 特許法、その施行規則、商標に関する法律及びその規則、並びに特許商標庁の業務に関する回
状その他の刊行物に関するパンフレット
(b) 長官は、(a)(3)、(4)、(5)及び(6)に記載した刊行物を、特許商標庁が使用を望む刊行物と交換す
ることができる。
オンライン特許情報提供サービスとしては、アメリカ特許商標庁から産業財産権情報と
して、アメリカに出願された特許(意匠を含む)と商標の情報がオンラインで提供されてい
る。アメリカの特許制度により、「特許」として提供されている中には、Design Patent と
Plant Patent が含まれている。
① PatFT(米国登録特許検索)
USPTO が運営する、米国特許(意匠特許含む)公報を検索・閲覧できる登録公報データベー
スである。1976 から現在までの全ての特許のフルテキスト、1790 年から現在までの全ての
特許の PDF 画像が格納されている。情報は毎週火曜日、週次で更新される。
26
27
本項、特に注釈のないものは USPTO ホームページによる。http://www.uspto.gov/[最終アクセス日:2014 年 2 月 3 日]
合衆国法典第 35 巻(35 U.S.C.)-特許(2011 年 1 月 4 日改正)
- 42 -
② AppFT(米国公開特許検索)
USPTO が運営する、米国特許(意匠特許含む)公報を検索・閲覧できる公開公報データベー
スである。2001 年以降の特許出願のフルテキストとイメージ画像を格納。週次で更新(木
曜日)。
③ PAIR(経過情報、包袋、優先権等)
USPTO が運営する、米国特許の経過情報閲覧、審査経過書類入手(公開を経た出願のみ)、
年金支払状況等を確認できるデータベースである。
誰でもアクセスできる Public PAIR System と、出願人や代理人等関係者だけがアクセス
できる Private PAIR System がある。
④ Official Gazette for Patents (特許公報)
USPTO による提供。書誌テキストと各特許の代表図面が含まれている。週次で更新(火
曜日)。単件で閲覧可能となっている。
(2)特許情報のインターネット提供における技術面、運用面での対応
(i) 特許公報の改竄防止に関する技術的対応
USPTO Patent Fulltext Database(PatFT/AppFT)にて、公報(PDF(画像)及びテキスト
情報)が入手可能である。
PatFT/AppFT 及び Public PAIR System には誰でもアクセスできるようにしており、http
接続としている。一方、Private PAIR System については、セキュアな環境として https
接続としている。
(ii) 提供する情報のデータ量、更新頻度、発行時間等
USPTO は、最終的には無料で、オンラインの全てのデータの製品を提供する予定として
いる。ほとんどのデータ製品は無償で、すでに米国特許商標庁から提供されている。全て
の商標バルクデータおよび多くの特許バルクデータは無料で USPTO からオンラインで入手
可能である。データ量が多い、または複雑ないくつかの特許データに関しては、有償での
- 43 -
みデータを提供しているが、これは物理メディアまたはバンド幅の考慮事項が設けられて
いるためである。
なお、USPTO ではなく委託した民間企業から無料で全てのバルクデータがダウンロード
できるようにしている(後述「(5)民間の情報提供事業者への対応について」を参照)。
バルクデータは通常 Zip ファイルの形式で提供され、TIFF や PDF 画像、ASCⅱ構造化ファ
イルや連結 XML 文書を含む。
個々のバルクデータファイルは、一般的に数メガバイトから数ギガバイトまでのサイズ
の範囲である。
法律または特定の合意によって禁止されない限り、データの使用に対する規制はない。
(3)特許情報の提供と個人情報保護について
米国ではパーソナルデータの保護に関し、分野横断的な法律は存在しない。
米国特許改革法28が 2011 年 9 月 16 日に成立し、米国特許法が改正された(完全施行 2013
年 3 月 16 日)。米国特許法 118 条の改正により、発明者以外の者(譲受人(assignee)等)
が出願人となることが許容され、発明者が自動的に出願人とみなされなくなった(2012 年
9 月 16 日施行)。
特許法
第 118 条 発明者以外の者による出願
発明者が特許出願をすることを拒否する、又は適切な努力をしたにも拘らず発明者を発見することがで
きず若しくは発明者に連絡することができない場合は、発明者から発明を譲渡され若しくは書面により
譲渡の同意を得ている者、又はそれ以外に、出願行為を正当化する事項に関する十分な財産的権利を証
明する者は、該当する事実の証明に基づき、かつ、出願行為が当事者の権利を確保するため又は回復す
ることができない損害を防ぐために必要であることを立証して、発明者の代わりに代理人として特許出
願をすることができる。長官は、当該発明者に、長官が十分であるとみなす通知を行い、かつ、長官が
定める規則に従って、特許を付与することができる。
出願人・発明者の住所の記載については、改正前の出願人(=発明者)では申請書類に
は全部住所が記載されていたが、改正後、出願データシートには発明者については氏名、
住所、郵便住所(国籍は不要)
、出願人名(企業等)については、氏名、住所、郵便番号を
記載することとなった29。郵便住所は、通常の郵便受取先であり、例えば発明者の職場や
28
リーヒ・スミス米国発明法(Leahy-Smith America Invents Act)
出願データシート 37 CFR 1.76、米商務省特許商標庁
https://www.iprsupport-jpo.go.jp/syutsugan/pdf/America/US-AIA14_jp.pdf [最終アクセス日:2014 年 2 月 3 日]
29
- 44 -
私書箱を含むものである。
特許法改正前は米国特許出願の際に発明者による宣言書等の提出が求められていたが、
改正後は発明者ではなく譲受人が出願できるようになった。ただしその場合でも規則
1.46(d)により、発明者の Declaration(宣言書)等の提出は必須となる。
Declaration(宣言書)には、発明者の氏名を記載するが、住所の記載は不要である。
特許法規則 1.46:譲受人、譲受人となる義務下にある人、あるいは、発明に対し十分な権利を有する
者による出願
1.46(a)
譲受人、譲受人となる義務下にある人、あるいは、発明に対し十分な権利を有する者は、関連する事
実と当事者の権利を維持するために出願をすることが必要であるということを証明することで、発明
者の代理人として、特許出願をすることが可能である。
1.46(b)~(c) 略
1.46(d)
たとえ、発明に対する部分的あるいは全ての権利が譲渡されていても、あるいは、そのような義務下
にあったとしても、規則 1.64 の例外に該当する場合を除いて、Oath(宣誓書)または Declaration
(宣言書)は真の発明者によってサインされなければならない。
1.46(e) 略
USPTO 発信の特許公報、特許検索データベース PatFT/AppFT に掲載される出願人(発明
者)の個人情報に関しては、法改正前は出願人(発明者)の住所は部分住所(市・州まで)
として掲載されていた。改正後も出願人、発明者の住所は部分住所(市・州まで)が記載
されている。
パブリック・ペア・システム(Public PAIR System;特許出願情報検索)において、詳
細な個人情報を含む包袋が提供されている。出願書類では公開されない情報についても、
包袋では公開されており、結局、出願人の住所も包袋において全部住所記載が公開されて
いる状況である。
① インターネット公報等におけるその他関連事項
個人の安全保障番号、クレジット番号、銀行振り込み口座番号等の、保護すべき個人情
報については墨塗り等の措置を取っている。
- 45 -
② 個人情報保護のための技術的な措置
出願人等の氏名・住所は公開すべき情報との位置づけであり、匿名化や暗号化は実施し
ていない。
(4)産業財産権及び個人情報保護に関する法令・規則等の改正事項等
前述の通り、米国特許法の改正により、出願人、発明者の個人情報の取り扱いが変更さ
れている。
(5)民間の情報提供事業者への対応について
従来、特許・商標情報を大量に入手するには、USPTO のウェブサイトからファイル単位
で入手するか、CD、DVD、デジタルテープなど一括で入手する以外に方法がなく、その価格
も数万ドルに及んでいた。無償でもっと多くの人が容易に特許と商標を使えるようにとい
う目的で、USPTO は Google Patents Search(2010 年~2013 年 6 月)や Reed Technology
社(2013 年 6 月~)と契約し、これら民間事業者が特許・商標情報を無償でバルクデータを
提供するサービスを行っている。
5. KIPO
(1)産業財産権情報のインターネット提供について
韓国特許法第 217 条の 2 において、特許文書の効率的な電子化のために電子化機関を指
定することができる根拠規定がある。また、第 221 条(特許公報)にて、特許公報を電子的
媒体(CD-ROM)で発行することも可能となっている(第 221 条第 2 項、第 3 項)。
韓国特許法
第 217 条の 2(特許文書電子化業務の代行)
①特許庁長は、特許に関する手続を効率的に処理するために必要であると認める場合には、特許出
願・審査・審判・再審に関する書類又は特許原簿を電算情報処理組織と電算情報処理組織の利用技
- 46 -
術を活用して電子化する業務又はこれと類似した業務(以下、“特許文書電子化業務”という。)を
産業通商資源部令が定める施設および人材を備えた法人に委託して遂行させることができる。
②削除
③第 1 項の規定によって特許文書電子化業務の委託を受けた者(以下、
“特許文書電子化機関”
という。)
の役員・職員又はその職にあった者は、職務上知った特許出願中の発明に関して秘密を漏出したり
盗用してはいけない。
④特許庁長は、第 28 条の 3 第 1 項の規定による電子文書で提出されなかった特許出願書その他産業
通商資源部令が定める書類を第 1 項の規定によって電子化し、これを特許庁又は特許審判院で使用
する電算情報処理組織のファイルに収録することができる。
⑤第 4 項の規定によってファイルに収録された内容は、当該書類に記載された内容と同一なものとみ
なす。
⑥第 1 項の規定による特許文書電子化業務の遂行方法及びその他特許文書電子化業務の遂行のために
必要な事項は産業通商資源部令で定める。
⑦特許庁長は、特許文書電子化機関が、第 1 項の規定による産業通商資源部令が定める施設および人
材基準に達せず、特許庁長が要求する是正措置に応じない場合には、特許文書電子化業務の委託を
取消すことができる。この場合、あらかじめ意見を述べる機会を付与しなくてはならない。
第 221 条
①特許庁長は大統領令で定めるところにより、特許公報を発行しなければならない。
②特許公報は、産業通商資源部令が定めるところにより電子的媒体で発行することができる。
③特許庁長は、電子的媒体で特許公報を発行する場合には、情報通信網を活用して特許公報の発行事
実・主要目録及び公示送達に関する事項を知らせなければならない。
オンライン特許情報サービスとしては以下のとおりである。
① KIPRIS(特許検索)
一般人がインターネットを通じて無料で知的財産情報(特許・意匠・商標)を検索・閲
覧できるよう韓国特許情報院(KIPI)が提供している国内外知財情報検索サービスである。
以下の特徴を持つ。出願は毎日、登録は週次で公開している。
・ 初心者向けの General search
・ プロや専門家向けの Advanced search
・ 知財情報の検索:韓国及び海外(欧米、日本 etc)の特許、実用新案、意匠、商標
・ My Folder(マイフォルダ)、 Similar Search Query(類似検索式)、Synonym Dictionary
(同義語辞書)などの便利な機能
② KIPRISplus(バルクデータ提供)
KIPI が提供する、企業や研究開発機関、知財情報プロバイダらのシステムにリンクさせ
ることで、知財情報データをさらに簡便なアクセスで広範に利用できるようにしたオンラ
インサービスである。
- 47 -
・ 開発・運用環境を問わない標準化されたフォーマット
・ 知財情報検索:韓国及び海外(欧米、日本 etc)の特許、実用新案、意匠、商標
・ 代表図面の一括表示や検索された案件同士の対比などの便利な機能
特許情報利用活性化のために利用者が願う範囲及び形態でデータを提供する「データ
オーダーメード提供サービス」を提供しており、有償でのバルクデータ提供が可能である。
③ KIPOnetⅢ(電子出願システム、経過情報、包袋情報)
インターネットを活用した電子出願システム。包袋情報の閲覧が可能となっている。
(2)特許情報のインターネット提供における技術面、運用面での対応
(i) 特許公報の改竄防止に関する技術的対応
PDF 形式による公報とテキスト形式(XML 形式)による公報があるが、PDF が正で、XML
検索インデックスとなっている。KIPRIS は http 接続。
(ii) 提供情報のデータ量、更新頻度、発行時間等
KIPRISplus では、公報データのバルク提供を行っている。
(3)特許情報の提供と個人情報保護について
韓国における個人情報保護法は、2011 年 3 月 29 日に制定され、2012 年 4 月 1 日から施
行されている。ここで、同個人情報保護法の第 6 条では、特別な規定がない限り個人情報
を保護する旨の規定がある。これは、個別法があれば、個別法に基づいて個人情報を利用
可能とするものである。
韓国個人情報保護法
第 6 条(他の法律との関係)
個人情報の保護については、
「情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律」
、
「信用情報の利
用及び保護に関する法律」等、他の法律に特別の規定がある場合を除いては、この法律で定める
ところによる。
- 48 -
この点、KIPO は、韓国の特許法等における公報発行に係る規定(特許法第 64 条(出願公
開)、第 87 条(特許権の設定登録及び登録公告)、実用新案法第 15 条、第 21 条、韓国産業
意匠保護法第 23 条第 2 項、第 39 条、商標法第 24 条で規定している。特許公報の掲載項目
は、特許法施行法令第 19 条等の下部の法律で明記している。
韓国特許法施行法令
第 19 条(特許公報)
①法第 221 条の規定による特許公報はこれを登録公告用特許公報と公開用特許公報に区分する。
②登録公告用特許公報には次の各号の事項を掲載する。
1.特許権者の氏名及び住所(法人の場合には、その名称及び営業所の所在地)
2.出願番号・分類記号及び出願年月日
3.発明者の氏名及び住所
4.特許番号及び設定登録年月日
5.登録公告年月日
6.優先権主張に関する事項
7.変更出願または分割出願に関する事項
8.特許出願書に添付された明細書・図面及び要約書
9.出願公開番号及び公開年月日
10. 法第 66 条の 2 による職権補正に関する事項
11.法第 133 条の 2、第 136 条または第 137 条により訂正された内容
12.その他に特許庁長が必要であると認められる事項
③公開用特許公報には次の各号の事項を掲載する。ただし、公共秩序または善良な風俗を紊乱に
したり公衆の衛生を害する虞があると認められる事項は掲載しない。
1.出願人の氏名及び住所(法人の場合には、その名称及び営業所の所在地)
2.出願番号・分類記号及び出願年月日
3.発明者の氏名及び住所
4.出願公開番号及び公開年月日
5.特許出願書に添付された明細書・図面及び要約書
6.優先権主張に関する事項
7.変更出願または分割出願に関する事項
8.法第 60 条第 2 項の規定による出願審査の請求事実。ただし、出願公開時にその事実が掲
載されなかった時には、当該出願の公開番号・分類記号及び出願番号をその審査請求事実
とともに追後発行される公開用特許公報に掲載しなければならない。
9.法第 63 条の 2 の規定により誰でもその特許出願が特許されることができないという趣旨
の情報を証拠とともに特許庁長に提供できるという趣旨
10.その他特許出願の公開に関係される事項
④~⑤略
掲載項目については、出願人の氏名及び住所、出願書の出願番号および日付、発明者氏
名および住所)に基づいて、出願人、発明者、権利者の指名と住所を掲載するとともに、
閲覧に係る条文(特許法第 216 条(書類の閲覧等))に基づいて包袋(ドシエ)情報を閲覧
可能としている。
なお、日本では、行政機関に適用される個人情報保護法と民間事業者に適用される個人
情報保護法が別の法律となっているが、韓国では一つの法律である。
- 49 -
KIPO は、特許法等に基づき、完全な住所を公開することとしていたが、個人出願人(法
人は除く)や発明者の住所は、部分公開(住所の一部だけを公開)を選択可能とする特許
法施行令改正を実施した(特許、実用新案は完了。意匠、商標も対応予定)。
より具体的には、特許法施行令第 19 条第 4 項により、出願人等が、住所の公開について、
全てまたは部分のいずれかを出願時に選択可能とする。ただし、全部公開を選択した者が、
事後的に公開取り下げを訴えても、取り下げることは出来ない。
ここで選んだ住所の記載方法は、公報及び KIPOnet(インターネットを利用した電子出
願システム)における閲覧で適用される。
特許法施行令
第 19 条(特許公報) ①~③ 略(前述)
④ 特許庁長は、第 2 項及び第 3 項によって自然人である特許権者、自然人である出願人または発明者
の住所を掲載する場合、その特許権者、出願人または発明者の申請があればその住所の一部のみを
掲載することができる。
⑤ 第 4 項による申請方法及び手続き、住所の掲載範囲は、特許庁長が定めて告示する。
付則<大統領令第 24645 号、2013.06.28>
第 1 条(施行日)
この令は、2013 年 7 月 1 日から施行する。ただし、第 9 条第 5 号の 3 の改正規定は 2013 年 9 月 23 日
から施行し、第 19 条第 2 項から第 4 項までの改正規定は 2014 年 7 月 1 日から施行する。
第 2 条~第 3 条
略
第 4 条(特許公報に関する適用例)
第 19 条第 4 項の改正規定は、付則第 1 条ただし書きによる施行日以後に発行される登録公告用特許公
報または公開用特許公報に住所の一部のみを掲載するように申請する場合から適用する。
韓国では、個人情報保護法が施行されてから、個人情報保護に対する関心が高まってお
り、特許情報に含まれる住所等の個人情報を保護してほしいという外部からの要望が増え
ている。
KIPO では、同法が制定される以前から一部対応を実施しており、KIPO における個人情報
管理の現状は以下のとおりである。
出願人、発明者および権利保有者の完全な自宅住所は公報で公開する。KIPO ホームペー
ジの「オンライン公報」として 3 カ月間掲載する。同時に KIPRIS にも掲載される。
公報発行から 3 ヶ月経過以降は、KIPRIS のみで公報にアクセス可能となる。
KIPRIS 上では、テキスト形式の公報では住所は都市、地区、行政区のみ提供する。KIPRIS
- 50 -
の「公報の全文閲覧」(PDF 公報)では完全な住所を掲載する。
個人住所情報を含む全文公報の DB は KIPRISplus(バルク)を介して提供する。
包袋情報の閲覧は、KIPOnet のみで可能としており、バルクでは一般提供していない。
KIPOnet では住所等の個人情報を削除せず提供。出願者及び第三者が閲覧可能(いずれも
電子認証が必要)。ただし、紙媒体の書類については、手作業で公開したくない情報にマス
ク作業を行っている。
韓国における個人情報保護の気運の高まりに対応して、庁内外の関係者、専門家を集め
た討論会を開くなど、検討を行ってきたところである。
(4)産業財産権及び個人情報保護に関する法令・規則等の改正事項等
前述の通り、個人情報保護法(2012 年 4 月 1 日施行)第 6 条に、特別な規定がない限り
個人情報を保護する旨の規定がある。これは、個別法があれば、個別法に基づいて個人情
報を利用可能とするもので、KIPO は、韓国の特許法等における公報発行に係る規定に基づ
いて、出願人、発明者、権利者の氏名と住所を掲載するとともに、閲覧に係る条文に基づ
いて包袋情報を閲覧可能としている。
(5)民間の情報提供事業者への対応について
民間事業者(WIPS 等)は、完全な自宅住所を含んだ公報情報サービスを提供することが
基本である。
- 51 -
6. 我が国におけるインターネット公報との比較
(1)公報の改竄防止に関する技術的対応について
対象
組織
オンライン特許情報提供サービス
産業財産権及び個人情報保護に関する法令・規
則等についての最近の論点・改正事項等
産業財産権情報につ
いて、インターネット
で情報提供を行うに
際しての根拠法令
○PATENTSCOPE(特許検索、経過情報、 z特になし
包袋情報(WIPO 管理分))
zWIPO 特許情報製
品・サービス利用に
関する利用規約に
て規定
z特になし
zEPC の 93 条に基づ
き、欧州特許出願を
公開
z加えて、長官の決
定・通知が根拠
特許情報のインターネットによる情報提供におけるニーズ及び技術
面・運用面での対応
提供する情報の
特許公報の改竄防止に関する技術的対応
データ量、更新頻
度、発行時間等
zスキャンした PDF をオリジナルのコピーとみな z週次で提供
している。XML は検索用データ。
zhttp 接続
WIPO
2
5
-
○ESPACENET(特許検索)
○Europe Patent Register(経過情
報、包袋情報)
○European Publication server(公
報ダウンロード)
EPO
z特定の規定は存在しないが、EPO で策定してい
る IT ロードマップに基づいて安全性の確保を
実施。
○ESPACENET)は http 接続、
○Europe Patent Register、European
Publication server は https 接続
z提供形式は 2006 年以前は PDF と GML、現在は
PDF、XML、Zip。
z包袋閲覧は10年前から全てオンライン
European Patent Register(紙書類はスキャン)
zスキャンした情報が原本となるため、図面に関
しては復元できないなど問題があると認識。
EPC 施行規則 49 条により、出願人はスキャン可
能なものでなければならないとしている。出願
人に対し、図面はスキャンして分かる状態のも
のを提出するよう指導。
z週次で提供
対象
組織
オンライン特許情報提供サービス
zドイツ特許法改正
z左記参照
○特許出願ファイルのインターネットを介し
た閲覧について
・法改正によりインターネットを介した包袋閲
覧が可能となった。
・特許出願ファイル(31 条)の対象は原則、庁
と出願人の間の書類全て。
・2001 年から特許公報 A、B、C 全てを電子デー
タで公開済。
・DPMA が作成したサーチレポートが、インター
ネットを介して閲覧可能となった。
○出願公開等の電子形態での伝達について
・庁保有データを特許情報の利用を目的として
第三者(プロバイダ)に渡すことに対する法
的根拠がなかったが、今回の法改正で明確化
(32条(1))。改正目的は実施中のプロ
バイダへのデータ提供を連邦データ保護法
への確実な適合。
○電子署名の要否及び廃止について
・商標に関する事項であり、特許情報とは関係
なし
○PatFT(米国登録特許検索)
z米国特許庁改正(完全施行 2013 年 3 月 16 日)
。 zインターネットで
○AppFT(米国公開特許検索)
出願人と発明者は必ずしも同一ではなくなっ
の提供は明文化さ
○PAIR(経過情報、包袋、優先権等) た。
れていないが、電子
○Official Gazette for Patents (公
媒体での公報情報
報ダウンロード)
提供は特許法第 10
条に規定。
○DEPATISnet(特許検索)
○DPMA register(経過情報)
DPMA
(ドイ
ツ)
3
5
USPTO
(米
国)
産業財産権及び個人情報保護に関する法令・規
則等についての最近の論点・改正事項等
産業財産権情報につ
いて、インターネット
で情報提供を行うに
際しての根拠法令
特許情報のインターネットによる情報提供におけるニーズ及び技術
面・運用面での対応
提供する情報の
特許公報の改竄防止に関する技術的対応
データ量、更新頻
度、発行時間等
zhttp 接続と https 接続の双方があり、ユーザ
z週次で提供
は、いずれかを選択できる。
z最新情報は 8 週間
ダウンロード可能
zUSPTO Patent Fulltext Database(PatFT/AppFT) z米国特許公報は、
は、公報(PDF(画像)及びテキスト情報)で
毎週火曜日に更新
入手可能。
zUSPTO は特許・商
zhttp 接続
標情報のバルク
データを有償で提
供
z民間に委託してバ
ルクデータを週次
で提供
対象
組織
KIPO
(韓国)
オンライン特許情報提供サービス
○KIPRIS(特許検索)
○KIPRISplus(バルクデータ提供)
○KIPOnet(電子出願システム、経過
情報、包袋情報)
○インターネット公報
○IPDL
JPO(日
本)
産業財産権及び個人情報保護に関する法令・規
則等についての最近の論点・改正事項等
z韓国の特許法等における公報発行に係る規定
に基づいて、出願人、発明者、権利者の氏名
と住所を掲載するとともに、閲覧に係る条文
に基づいて包袋(ドシエ)情報を閲覧可能と
している。
産業財産権情報につ
いて、インターネット
で情報提供を行うに
際しての根拠法令
zインターネットで
の提供は明文化さ
れていないが、特許
法第 217 条2におい
て電子化機関の推
進、
第 221 条第2項、
第3項において特
許公報を電子媒体
で発行可能と規定。
z「行政手続き等に
おける情報通信の
利用に関する法律」
第八条第2項「国
は・・・(略)・・・
情報通信の技術の
利用における安全
性及び信頼性を確
保するよう努めな
ければならない」
特許情報のインターネットによる情報提供におけるニーズ及び技術
面・運用面での対応
提供する情報の
特許公報の改竄防止に関する技術的対応
データ量、更新頻
度、発行時間等
zPDF が正式。XML は検索インデックスという扱
z出願は毎日、登録
い。
は週次。
zKIPRIS は http 接続
zKIPRISplus では、
公報データをバル
ク提供
zインターネットによる公報発行には信頼性、原
本性を確保するため電子署名を付した XML ファ
イルの提供を行っている。
z法律で技術的手法まで定められているもので
はない。
z週次が基本
・インターネット公
報では、発行開始
時からの情報が
入手可能
4
5
-
(2)個人情報及び民間提供事業者への対応
個人情報の取扱の根拠法令等
zPCT 規則にて規定。
WIPO
zEPC 規則により規定。
zIP5 で個人情報にかかるテーマが取
り上げたとは聞いているが、具体的
には不明
EPO
5
5
-
zドイツ特許法
DPMA
USPTO
zパーソナルデータの保護に関し、分
野横断的な法律は存在しない。
z米国特許法 118 条の改正により、発
明者以外の者(譲受人等)が出願人
となることが許容され、発明者が自
動的に出願人とみなされなくなっ
たため、発明者についての個人情報
の取扱が規定された。
インターネット公報等における個人情報保護
z国際公開(International Publication)において出願人の氏名・住所、発明者
の氏名・住所を掲載
zPCT 規則は、下記の通り。
・願書様式に記載するあて名が発明者の「自宅の」であることを要求していない。
どのあて名を記載するかは出願人/発明者の問題となり、国内段階においては、
国際事務局は発明者の自宅のあて名以外のあて名を使うことに対して異議を唱
えない。
・願書様式にあて名を記載しないことを選択し、受理官庁の訂正の求めに返答しな
くとも、出願手続は継続され、出願人/発明者のあて名がないままで出願は公開
される。この欠陥の結果は国内段階の問題となる。
z発明者の完全な氏名と住所の記載は出願人の義務であり、公開情報であり、民間
情報提供者が利用できるもの。出願人は署名をもって正確性を確認。
z住所・居所の記載については、EPO と連絡をとるために十分な情報を提供しなけ
ればならない(EPC 施行規則 41 条)。住所・居所は自宅ではなく、会社の住所を
記載することも可能。会社住所記載は、個人情報の保護という観点よりも、企業・
業務による出願のため。
z公報における住所表記の省略理由は法的なものではなく、省スペースの問題(特
に出願人や発明者が複数の場合等)。
z発明者は EPC 規則 20(1)により表示権を放棄することができる。表示権を放棄で
きるのは公開される前まで。情報が公開された後に表示権の放棄は不可。
zDPMA register 及び公報においては、個人情報の DB を極力保有しないことを原則
としており、出願人発明者の住所表記は省略(国、都市、郵便番号まで)。
z公開のためにマスクが必要となるは主に個人出願者。一般個人による出願の場
合、申請時にきちんと整理された記述になっておらず、様々な内容を混ぜて書い
た内容で申請してくることがあるため。
z出願人とのやり取りにおいて受領した書類に関して、例えば出願人のレターヘッ
ドなど出願人のテンプレートの記載に口座番号等があっても公開情報と見なし
てマスキングはしないが、文面にある場合はマスキングする。
z著作権の関係から閲覧ができない情報は当然インターネット閲覧でも除外し、書
誌情報でしか伝えない。
z公報には出願人、発明者とも部分住所(市・州まで)を掲載。
zUSPTO 発信の PatFT/AppFT に掲載される個人情報
・出願人・発明者の住所は部分住所(市・州まで)を掲載。
・匿名化や暗号化は実施していない。
・個人の安全保障番号、クレジット番号、銀行振り込み口座番号等の保護すべき個
人情報は墨塗り等の措置
z包袋情報がインターネット化されているため、出願人、発明者の全部住所を調べ
ることは可能。
民間提供事業者への対応
zWIPO 特許情報製品•サービス利用(2011 年 5 月 5 日)に関す
る利用規約が存在する。
zデータ利用規約は EPO と OPS ユーザとの契約。OPS ユーザと
の関係で紛争事項があった場合にはドイツ法に準拠してドイ
ツ連邦管轄の裁判所になる(EPC9 条)。
zユーザ(業者)は各国の法律に基づき対応する必要がある。
z庁保有データは標準契約を締結することにより第三者が入手
できるようになっている。利用目的としていくつか選択肢を
用意しており、利用者(プロバイダ)はそこから選択、また
は記述。行ってはならない事項として記載するのは、情報を
目的外に乱用すること(例えば住所だけを抜き出して別の
データベースをつくるなど)、人の格付けに利用することな
ど。
z標準契約で利用目的を明確にすることで、連邦データ保護法
の利用目的の明確に対応。
zGoogle Patents Search や、Reed Technology 社は USPTO
との契約により特許・商標情報を無償でバルクデータで提供。
KIPO
JPO
個人情報の取扱の根拠法令等
z個人情報保護法第 6 条により、個別
法に基づいて個人情報を利用可能
としている。
z韓国の特許法等における公報発行
に係る規定(特許法第 64 条(出願公
開)、第 87 条(特許権の設定登録及
び登録公告)等で規定。特許公報の
掲載項目は、特許法施行法令第 19
条等の下部の法律で明記。
インターネット公報等における個人情報保護
民間提供事業者への対応
z出願人、発明者および権利保有者の完全な自宅住所は公報で公開。KIPO ホーム
z民間事業者(WIPS 等)は、完全な自宅住所を含んだ公報情報
ページの「オンライン公報」として 3 カ月間掲載。同時に KIPRIS にも掲載。
サービスを提供することが基本。
z公報発行から 3 ヶ月経過以降は、KIPRIS のみで公報にアクセス可能。
zKIPRIS 上では、テキスト形式の公報では住所は都市、地区、行政区のみ提供。
KIPRIS の「公報の全文閲覧」(PDF 公報)では完全な住所を掲載。
z個人住所情報を含む全文公報の DB は KIPRISplus(バルク)を介して提供。
z包袋情報の閲覧は、KIPOnet のみで可能。バルクでは一般提供していない。KIPOnet
では住所等の個人情報を削除せず提供。出願者及び第三者が閲覧可能(いずれも
電子認証が必要)。
z個人出願人(法人は除く)や発明者の住所は、部分公開(住所の一部だけを公開)
を選択可能とする規則改正を実施(特許、実用新案は完了。意匠、商標も対応予
定)。出願人等が住所の公開について、全てまたは部分のいずれかを出願時に選
択可能とする(事後的な取り下げは不可)。公報及び KIPOnet(インターネット
を利用した電子出願システム)における閲覧で適用。
行政機関の保有する個人情報の保護
に関する法律
特許法に基づいて、公開している。民間事業者もデータとして入手が可能
同左
6
5
-
IV. インターネット公報の推進に向けた技術面・運用面の対応策について
1. インターネット公報の改竄防止等のための技術的な対応について
(1)現状と課題
(i) 現状
「II.2 インターネット公報とは」で説明したとおり、現在、実用新案、意匠、商標等に
ついてはインターネットで公報が発行されている。発行に際しては発行単位ごとに Zip 形
式あるは Tar 形式でアーカイブし、そのファイル容量が一定の大きさ以上の場合は分割を
行い、それぞれのファイルに PKCS#7 の規格に従い電子署名を付して提供されている30。
利用者はインターネット公報サイトからダウンロードした公報データを閲覧するには、
特許庁から提供される電子署名検証プログラムを用いて電子署名を検証する作業が必要と
なる。電子署名検証プログラムで検証されると、アーカイブされた公報データ等が出力さ
れ、さらにこれを解凍後ビューワー等で閲覧することとなる(下図参照)。電子署名を認証
後に出力されるファイル(Zip ファイル等)及びそのアーカイブを解凍した後のファイル
(1 件ごとの公報データ)には電子署名は付与されていない。
図 IV-1 インターネット公報発行サイト及び解凍後のファイル
30
電子署名については、
「工業所有権にかかる手続き等の特例に関する法律施行規則」
(平成 2 年 9 月 12 日通商産業省令
第 41 号)第 35 条 2 項に規定されている。
- 57 -
以上の仕組みにより、特許庁は、現行のインターネット公報において、公報データをダ
ウンロードする者に対して、ダウンロードする当該ファイルが特許庁から提供したもので
あり、改竄されていないことを保証している。なお、解凍された後に閲覧可能となる公報
データには電子署名が付されていないため、これらの公報データについては特段改竄防止
等の対策がとられているわけではない。
特許庁
署名を検証して、解凍
されたファイルには署名
は付与されない
図 IV-2 特許庁から利用者への改竄防止の範囲イメージ
(ii) 課題
今後、特許や審決に関する公報をインターネット公報で提供することを視野に入れた場
合、その案件数や容量が従来の実用新案、意匠、商標等と比べても多いため、現行の実用
新案、意匠、商標等の提供方式を継続する場合には以下のような課題がある。
・ 特許は意匠、商標などに比べて週次で発行される件数も多く、単件あたりのデータ量
も多いため、新規に電子署名を付与する対象が増加するともに、分割して提供する公
報が増える。例えば、特許の公開公報の場合、1発行あたり 4,400MB(4.3GB)程度で
あることから、44 ファイルに分割されることとなる。したがって、利用者は発行毎に
44 回ダウンロードと電子署名の検証作業が生じる。
・ 公報のデータ量に比例して電子署名の付与作業(ファイル分割も含む)が増えるため、
結果、膨大なサーバ処理時間を要する。特に、電子署名の有効期限切れ(3年間)に
よる付け替え作業が大きな負担となる。
・ 電子署名の検証作業には、電子署名検証プログラムを動作できる環境が必要となる。
例えば、平成 25 年 11 月末現在、電子署名検証プログラムの動作環境は、OS として
Windows XP Professional SP2、Windows2000 Professional SP4(Windows7 は動作確認
- 58 -
済み)となっており、Windows8 や Windows 以外の OS に対応出来ていない31。
(iii) 検討事項
前述の現状及び課題を踏まえ、検討すべき事項として以下のとおり。
◯ 公報の改竄防止と利用者の利便性を考慮したインターネットによる公報を発行するた
めにはどのような技術的な対応策が想定されるか
(2)諸外国の状況
ここでは「III 諸外国・地域の動向」で整理した事項のうち、特に関連する内容を示す。
海外特許庁のインターネットでの情報提供(検索サイト)やデータ提供サイトにおいて
は http 接続で取得が可能なサイト、改竄防止等の技術的対応策として SSL サーバ証明
(https 接続)を採用している例が見られた。
また、ドイツ特許庁のサービス(DPMAdatenabgabe)では、事業者がドイツ特許庁と契約
締結後(有償)、バルクデータを入手できるサイトにアクセス可能となる(ID,PW が提供)。
韓国では PDF を公報の原本とし、日本で採用している XML は検索用の情報提供という位
置づけとなっている。
電子署名に関しては、出願時のやりとりなど出願人と知財当局との間では採用されてい
るものの、公報の発行や公報情報の提供に際して電子署名を付与しているケースは見られ
なかった。法的に公報をインターネットで公開することを担保しているケースはあるが、
その提供方法や技術的な手法についてまで法律で規定されている例はない。
(3)アンケート調査及びヒアリング調査
アンケート調査によれば、データベース提供事業者、エンドユーザとも現行と同じよう
に電子署名を付与されたファイルを望む回答が最も多いが、SSL サーバ証明方式による提
供もほぼ同数の回答を得ている。
また、ヒアリング調査を行った結果、電子署名方式が望ましい回答した企業でも電子署
名と同等のセキュリティレベルが担保され、ダウンロード後の利便性が向上する SSL サー
バ証明方式がよいとする回答が多かった。
31
マイクロソフト社によれば、WindowsXP のサポートは平成 25 年 4 月 9 日(日本時間)までとなっている。
- 59 -
表 IV-1 公報の発行形式(情報提供事業者)
発 行 さ れ る XML 、 図
電子署名は付与
面、PDF のデータのう
意匠、商標のよう されていないが、
ち、PDF のみを編集不
に電子署名が付 https 接続などセ
可とした形式で提供(残
与されたファイル キ ュ ア な 回 線 で
りの XML 及び図面には
でよい
発行されていれ
何ら改竄防止策を講じ
ばよい
ない)されればよい。
データ
ベース提
供事業者
合計
6
4
4
3
17
35.3%
23.5%
23.5%
17.6%
100.0%
表 IV-2 公報の発行形式(エンドユーザ)
発行される XML、図面、
電子署名は付与
PDF のデータのうち、
意匠、商標のよ さ れ て い な い
PDF のみを編集不可と
うに電子署名が が、https 接続
した形式で提供(残り
付与されたファ などセキュアな
の XML 及び図面には何
イルでよい
回線で発行され
ら改竄防止策を講じ
ていればよい
ない)されればよい。
エンド
ユーザ
その他
その他
合計
12
11
3
3
29
41.4%
37.9%
10.3%
10.3%
100.0%
(4)インターネット公報の改竄防止にかかる技術的な対応策案
(i) 情報セキュリティ対策とは
情報セキュリティ確保にかかる目標事項は「1992 OECD 情報システムのセキュリティの
ためのガイドライン」以降、一般的に下表に示す 3 項目が列挙される。JIS Q 27002 (ISO/IEC
27002) では、情報セキュリティを「情報の機密性、完全性および可用性を維持すること。
さらに、真正性、責任追跡性、否認防止および信頼性のような特性を維持することを含め
てもよい。」と定義している。また、各府省の情報セキュリティポリシーに関する基本的な
(内閣官房情報セ
考え方等を記した「情報セキュリティポリシーに関するガイドライン32」
キュリティ対策推進会議決定,平成 12 年 7 月 18 日)においては「情報資産の機密性、完全
性及び可用性を維持すること」と定義されている。
本調査においては、特許庁から提供される公報データが利用者へ提供されるまでの間に
改竄されていない状態を確保する、完全性に関して検討するものである。
32
[情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」、内閣官房情報セキュリティ対策推進会議決定(2000 年 7 月 18
日)http://www.kantei.go.jp/jp/it/security/taisaku/guideline.html
[最終アクセス日 2013 年 12 月 2 日]
- 60 -
表 IV-3 情報セキュリティの確保
項目
概要
機密性(Confidentiality) 情報へのアクセスを認められた者だけが、その情報にアクセスできる状態
を確保すること
完全性(Integrity)
情報が破壊、改竄又は消去されていない状態を確保すること
可用性(Availability)
情報へのアクセスを認められた者が、必要時に中断することなく、情報及
び関連資産にアクセスできる状態を確保すること
(ii) 完全性確保(改竄防止)のための情報セキュリティ対応策
完全性確保(改竄防止)のための技術的な対応策としては、現行の電子署名による方式
も含め、以下のような技術がある。
① 電子署名・暗号化
電子署名とは、電子文書に対して行われる電磁的な署名。インターネット上のサイン(署
名)や押印のようなものである。電子署名の特徴としては、以下のとおり。
・ 電子文書の作成者が特許庁であること、作成された電子文書に対する改竄が行われて
いないことを確認できる。
・ 電子署名が正しいか、利用者は認証局に対して検証作業が必要となる。
・ 電子署名には有効期限がある。また、電子署名を有効な状態とするためには、定期的
に再付与を行う必要がある。
② SSL サーバ証明
電子署名がファイルに対する「改竄」
「なりすまし」を防止する技術であるのに対し、通
信経路を暗号化する技術としては、「SSL サーバ証明」がある。SSL サーバ証明とは、SSL
とサーバ証明の二つの側面を持つ。前者の SSL(Secure Sockets Layer)はインターネッ
ト上で情報を暗号化して送受信できる仕組みであり、後者のサーバ証明とは利用者がアク
セスしたサイトが存在しうるのか、サイト所有者の存在を証明するものである。インター
ネットショッピング等において一般的に利用されている技術である。SSL サーバ証明の特
徴としては以下のとおり。
・ サイト所有者の情報・送信情報の暗号化に必要な鍵・証明書発行者の署名データを持っ
- 61 -
た電子証明書を用いる。問合せページやネットショッピングの決済ページなどで使わ
れている。
・ サーバを証明する仕組みは電子署名とほぼ同じ。サーバ証明は、情報を暗号化する SSL
の機能に加え、サイトを運営する企業の存在、身元を確認できる機能を備えている。
・ サーバの存在証明と、送信時の暗号化を行う仕組みで、個々の電子文書を暗号化して
いるものではない。
・ サーバ証明にも有効期限がある。
③ VPN(Virtual Private Network、仮想プライベートネットワーク)
VPN は暗号化通信によりインターネット上の 2 つの地点を接続し、そのセッション上で
仮想的なネットワーク(LAN)を構成することにより離れた場所にあるコンピュータ同士や
ネットワーク同士を安全かつ自由に接続することができる。
不特定多数を対象とした公報の発行および提供という観点からすれば、特許庁と利用者
間で個別に通信インフラを設置することは実現性に乏しいため、本調査では以降の検討対
象とはしない。
④ 電子署名付き PDF
PDF ファイルに電子署名を追加することができる。文書に署名するには、デジタル ID を
取得するか、または Acrobat で Self-Sign デジタル ID を作成する必要がある。前述の
電子署名は政府共用認証局から発行された電子証明書であるが、この場合は外部の民間認
証局から発行された電子証明書となる。また、公報の発行とは異なるが、
「II.3.(1)技術
的な対応例」で示した様に登記・供託オンライン申請システム(法務省)では電子署名付
き PDF も対応したプラグインを提供し、申請手続き等において利用可能としている。
ただし、特許庁では XML 形式のファイルを公報としており、PDF はサービスとして提供
しているものであるため、PDF ファイルに限定されている本技術は、本調査では以降の検
討対象とはしない。
⑤ タイムスタンプ
タイムスタンプとは、当該文書がタイムスタンプを刻印されている時刻より前に存在し、
その時刻以降改竄されていないことを証明するものである。
公報においては、時刻の概念が存在しないこと、タイムスタンプの認証そのものは、特
- 62 -
許庁が発行したものであることを証明することにはならない。特許庁が発行したものであ
ることを証明しかつ改竄防止を行うには、前述の電子署名が必要となる。したがって、タ
イムスタンプのみをもって公報発行の改竄防止対策の対応策とはなり得ないため、本調査
では以降の検討対象とはしない。
(iii) 公報発行の目的・役割を踏まえた求められる要件
「II.1 公報発行の目的と役割」で説明したように、特許法に基づき発行される公報の目
的・役割は以下の2点である。
・ 早期に特許出願の内容を公衆に知らせて、重複出願や重複研究を回避すること
・ 広く公衆に特許権の内容を知らしめること
このため、インターネット公報は発行した内容についてインターネットを通じて正確に
伝えるためのセキュリティ面と、広く公衆が知ることができるようユーザ利便性の観点か
ら以下の要件を満たす必要がある。
① セキュリティに関する要件
前述の「インターネット公報は発行した内容をインターネットを通じて正確に伝える」
要件を満たすためには、正確なデータ通信を実現するためのセキュリティ要件として、
・ ユーザがインターネットから取得した公報が、特許庁が発行した公報であって、入手
の過程で改竄されていないこと
・ 特許庁の公報発行サイトそのものが外部から侵入され改竄されていないこと
が求められる。
なお、後者はインターネット公報に限らず、不正アクセス対策としてサイト自体のセキュ
リティ対策を講じるべき事項であることから本調査では前者について検討を進めるとする。
② ユーザ利便性に関する要件
インターネット公報の発行した内容を、広く公衆に知らしめるためには、公報発行サイ
トから公報を入手(ダウンロード)し閲覧するまで、できる限り手間がかからない方が望
ましい。
- 63 -
上記①及び②の両方の要件を満たす技術的な対応策として、前述の「(2)情報提供サイト
における改竄防止に関する対応例」の「(ⅱ)完全性確保(改竄防止)のための情報セキュ
リティ対応策」のうち、対応策となり得る「電子署名」及び「SSL サーバ証明」が選択肢
として考えられる。
- 64 -
表 IV-4 電子署名と SSL サーバ証明の特徴等
技術的
対応
特徴
特許庁が発行した公
報という証明
入手の過程で改
竄されない担保
備考
電子署名
・電子文書に対して行われ
る電磁的な署名。ネット
上のサイン(署名)のよ
うなもの
・電子文書の作成者が特許
庁であること、作成され
た電子文書に対する改竄
が行われていないことを
確認できる。
・電子署名が正しいか、利
用者側で検証作業が必要
となる。
・有効期限がある また、電
子署名を有効な状態とす
るためには、定期的に再
付与を行う必要がある。
・電子署名を検証す
れば確認が可能
・特許庁からダウン
ロードした者が第
三者にそのまま
(検証せずに)転
送して、第三者が
署名の検証するこ
とで確認は可能
・特許庁以外のサー
バからも電子署名
つきの複製ファイ
ルは提供可能とな
る
・ダウンロード
ファイルに署
名されている
ため、改竄等の
防止が担保さ
れる
・現行は、CD-ROM
公報等のデータ
を丸ごと電子署
名として付与し
ていることか
ら、特許庁と利
用者間での改竄
防止を担保して
いる。
SSL サー
バ証明
・ SSL は Secure Socket
Layer の略で、インター
ネット上で情報を暗号化
して送受信できる仕組
み。
・サイト所有者の情報・送
信情報の暗号化に必要な
鍵・証明書発行者の署名
データを持った電子証明
書を用いる。問合せペー
ジやネットショッピング
の決済ページなどで使わ
れている。
・サーバを証明する仕組み
は電子署名とほぼ同じ。
・サーバ証明は、情報を暗
号化する SSL の機能に加
え、サイトを運営する企
業の存在、身元を確認で
きる機能を備えている。
・ ダ ウ ン ロー ド の 際 にパ
ケット毎に両端で暗号
化・復号の処理が必要な
ため、非 SSL 方式よりも
通信時間がかかる。
・アクセスしたサイ
トは特許庁の設置
するサーバである
ことが証明されて
いる
・特許庁と利用者
間の回線では
改竄等防止が
担保される
・サーバの存在証
明と、送信時の
暗号化を行う仕
組みで、個々の
電子文書を暗号
化しているもの
ではない。
・サーバ証明にも
有効期限がある
が、サーバの更
新をすればよい
ため、電子署名
ほど再付与作業
の負担がない
- 65 -
(iv) 具体の対応策
前述のセキュリティ要件を満たす対応策案として、以下の5パターンが想定される。
特許庁とユーザ間における
改竄防止等の技術対策
対応案
電子署名
付与
電子文書単位での
改竄防止等の対応単位
単件ごとに付与
発行単位に付与
(現行)
証明の更新
有効期限が切れる前に
再付与を行う
案1-1
有効期限が切れたあとは
再付与しない
案1-2
有効期限が切れる前に
再付与を行う
有効期限が切れたあとは
再付与しない
SSLサーバ証明
XMLファイル
(セキュリティなし)
SSLサーバ証明の
更新は行う
案1-3(現行方式)
案1-4
案2
図 IV-3 セキュリティ要件を満たす対応策案
案1
電子署名
案2
SSL サーバ証明
案 1-1
概要
電子署名を単件毎に付与するとともに有効期限が切れる前に再交付を
行う。
案 1-2
電子署名を単件毎に付与するが、有効期限が切れた場合は再交付を行
わない
案 1-3
発行単位で電子署名を付与し、有効期限が切れる前に再交付を行う。
案 1-4
発行単位で電子署名を付与し、有効期限が切れる前に再交付を行わな
い。
案2
SSL サーバ証明で XML 等を配信する。SSL サーバ証明の更新は行う
- 66 -
(5)改竄防止にかかる技術的な対応策に関する検討
前述で改竄防止にかかる技術的な対応策として想定した案 1-1 から案 2 の 5 つの案につ
いて、セキュリティ面、ユーザ利便性、運用面、法的側面、困難性(実現可能性)の 5 つ
の観点から比較整理した(表 IV-5 技術的な対応策の整理)。
- 67 -
表 IV-5 技術的な対応策の整理
案 1-1
電子署名/
単件付与/
再付与あり
案 1-2
電子署名/
単件付与/
再付与なし
案 1-3
(現行)
電子署名/
バルク付与/
再付与あり
案 1-4
電子署名/
バルク付与/
再付与なし
案2
SSL サーバ証明/
生データ/
再付与あり
セキュリティ面
○1件単位で改竄防止可能
○特許庁と利用者間の改竄防止
○第三者に送付しても改竄防止は担
保できる
○有効期限は更新される
ユーザ利便性
×署名確認のためのユーザ操作が煩雑
(署名検証作業煩雑)
△DL 件数に制限あり(1回500件程度)
のため、ダウンロード回数が増える。
運用面
○電子署名付与作業は単件で軽
いため、処理時間が短い。
×署名付与のサーバが必要(SSL
に比べコスト高)
×署名確認のユーザ操作が煩雑
法的側面
○省令改正
が不要
○1件単位で改竄防止可能
○特許庁と利用者間の改竄防止
○第三者に送付しても改竄防止は担
保できる
×ただし、有効期限内のみ
△最新のデータについては、署名確認の
ためのユーザ操作が煩雑
△電子署名の有効期限が切れた公報は
インターネット上に公開しないため、アク
セス性が低下する。
・案 1-1 と同じ
×有効期限切れの公報の提供に
関する対策が必要
△再付与しな
いことは省
令改正なし
で可能か
○発行単位での改竄防止
○特許庁と利用者間の改竄防止
×電子署名の承認後、解凍したファ
イルを第三者に送付した場合、第
三者は改竄防止の確認はできな
い。
○有効期限は更新される
○発行単位での改竄防止
○特許庁と利用者間の改竄防止
×電子署名の承認後に解凍したファ
イルを第三者に送付した場合、改
竄防止の確認はできない
×ただし、有効期限内のみ
△署名確認のためのユーザ操作が煩雑
(署名解除作業)
△特に特許の場合、一発行単位の DL の
際に回数激増(1発行単位で44回程
度)
△電子署名付与作業の回数は減
るが一回あたりの時間は増える
×署名付与のサーバが必要
×現行サーバの仕様を踏まえた提
供(分割)が必要
○省令改正
が不要
△最新のデータについては、署名確認の
ためのユーザ操作が煩雑
△電子署名の有効期限が切れた公報は
インターネット上に公開しないためアクセ
ス性が低下。
△新しい公報について特に特許の場合、
一発行単位の DL の際に回数激増(1
発行単位で44回程度)
○署名確認のためのユーザ操作が不要
○電子署名についての DL 回数の軽減
(例えば、1発行を1回で DL することも
可能)
△非 SSL 方式と比べると通信時間がかか
る
・案 1-3 と同じ
×有効期限切れの公報の提供に
関する対策が必要
△再付与しな
いことは省
令改正なし
で可能か
○電子署名を発行単位で付
すことは、可能(現行踏襲)
○サーバの証明書の更新のみで継
続運用可能
○公報ファイル自体への電子署名
の付与及び更新作業が不要なた
め、負担が少ない
×省令改正
が必要
△システム改造により実現可
能
△省令改正がなければ実現
不可
○特許庁サーバから提供された情報
○特許庁と利用者間の改竄防止
×ダウンロード後、第三者に送付した
場合、第三者はファイルの改竄
防止の確認はできない
○サーバの有効期限は更新される
困難性(実現可能性)
△電子署名を「単件」毎に付
すには、サーバを増やすこと
などによる分散処理対応が
可能であるが、コストを勘案
する必要がある。
△再付与についてはサーバ負
荷が大きい。
△電子署名を「単件」毎に付
すことは、サーバを増やすこ
となどによる分散処理対応
が可能であるが、コストを勘
案する必要があるの
△再付与についてもサーバ負
荷が大きく現実的ではない。
○電子署名を発行単位で付
すことは、可能(現行踏襲)
×再付与についてもサーバ負
荷が大きく現実的ではない。
8
6
-
下図は、案 1-1 から案 2 のセキュリティ面とユーザ利便性を模式的に示したのが図 IV-4
である。
(ユーザ利便性)
容易
SSL
案2
電子署名
案1-3
現行
案1-4
手間が
かかる
案1-1
案1-2
有効期限まで
有効期限まで
(セキュリティ)
ユーザ~第三者間
特許庁~ユーザ間
図 IV-4 対応案におけるセキュリティとユーザ利便性の関係イメージ
案 1 は、電子署名を利用することにより、入手したファイルの出所が特許庁であること、
特許庁から入手したファイルが改竄されていないことを保証するものである。ユーザは当
該電子署名付きのファイルをダウンロードし、電子署名の認証作業することでアーカイブ
された公報ファイルを取得することができる。
現在のインターネット公報は案 1-3 の提供方式であり、
「II.2 インターネット公報とは」
で説明したように、週次で発行された公報(XML、図面、PDF)を発行日単位でアーカイブ
した後、アーカイブしたファイルに対して電子署名を付して提供している。したがって、
解凍後の単件毎の公報には改竄防止対策がとられているものではない。つまり、ユーザが
第三者にある特定の公報を提供(二次提供)する場合、ユーザと第三者間の改竄防止まで
は担保されていない。
一方、案 1-1 及び案 1-2 は、案 1-3-及び案 1-4 と異なり、発行日単位では無く単件毎で
の電子署名を付した提供となる。ユーザが当該単件の公報を解凍せずに第三者に提供(二
次提供)した場合でも当該単件の公報ファイルに電子署名が付与された状態が確保される。
しかしながら、ユーザ利便性からみると、公開特許公報のように1発行あたりの掲載件
- 69 -
数が多い場合は一つ一つの電子署名の検証やダウンロードなどが必要となり、案 1-3 と比
べると劣後する。運用面では多数の公報に電子署名の付与するためのサーバ数を増やすこ
とで分散処理が可能となるが、コストを勘案する必要がある。
案 1-2 及び案 1-4 は、案 1-1 及び案 1-3 と異なり、電子署名の有効期限が切れた場合に
は再交付しない方法である。再交付しない分運用面の負担は軽減するが、有効期限切れし
た公報はセキュリティ面で改竄防止措置がとられないこととなり、有効期限切れした公報
にアクセスしたいユーザの利便性が下がる懸念がある。
案 2 は、案 1 と異なり、電子署名ではなく SSL サーバ証明により特許庁と利用者間の改
竄を防止する方式である。改竄防止の手法としては、ユーザに入手先のインターネット公
報発行サイトが特許庁サイトであることを保証し、かつ、特許庁とユーザ間の通信による
改竄の防止を担保する点では案 1-1~1-4 と同等である。また、「IV.1.(4)(iii)公報発
行の目的・役割を踏まえた求められる要件」や利用者のニーズを考慮すると、特許庁の公
報発行時のセキュリティとして、特許庁が発行したものであり、かつ、特許庁とユーザ間
の伝達における改竄がないことを保証するという、特許庁とユーザ間のセキュリティを担
保すれば十分で有り、当該公報のユーザ間の二次提供時のセキュリティまでは求められて
いないと考えられるから、案 2 は、現行の案 1-3 の電子署名と同等のセキュリティレベル
を担保しているといえる。
また、案 2 の場合、提供するファイルは XML など生データである(ファイルには暗号化
処理を施さない)ため、利用者は特許庁のインターネット発行サイトからダウンロードす
るだけで、当該ファイルを利用することができるため、案 1 の電子署名の方式よりユーザ
利便性も高い。運用面でもサーバ側のサーバ証明書を更新すればよいなど、案 1 と比較し
ても同等もしくは良くなる。
なお、アンケート調査やヒアリング調査等により現行と同等の改竄防止対策が採られて
いる SSL サーバ証明方式でも問題ないといった意見も多くあった。
したがって、今後インターネット公報を特許・審決等に拡張していく際には、現状と同
等のセキュリティレベルは確保しつつ、ユーザ利便性、運用面が向上する案 2(SSL サーバ
証明による提供)で対応することが最も望ましいと考えられる。ただし、案 2 については
省令改正の必要性があるため、省令改正が行われるまでは当面の間、案 1-3 もしくは案 1-4
で運用しつつ、省令改正後は速やかに案 2 で対応することも考えられる。
- 70 -
2. 利用者の利便性を考慮したインターネットによる公報の提供方法
(1)現状と課題
(i) 現状
「II.2 インターネット公報とは」で説明したように、現在、特許、審決等を除いた実用
新案、意匠、商標については電子署名を付したファイルとして提供され、無償で入手可能
である。公報の発行頻度は、原則として登録実用新案公報は毎週木曜日、意匠公報は毎週
月曜日、商標公報は毎週火曜日、公開・国際商標公報は毎週木曜日と週1回発行されてい
る。また、発行済みの過去の公報についてもインターネット公報を開始した時期から全て
入手可能となっている。
特許や審決については、DVD-ROM もしくは CD-ROM で週1回発行されており、入手にあたっ
てはマージナルコストでの販売となっている。
一方で、インターネット公報で発行される「公報」をもとにした公報情報を検索できる
インターネットサービス(IPDL やデータベース提供事業者によるオンライン検索サービス
など)が存在しており、直接的なインターネット公報の利用者は情報提供事業者が中心と
想定される。
(ii) 課題
利用者の利便性を考慮したインターネットによる公報の提供にあたっては、以下のよう
な課題が挙げられる。
・ 特許に関して現行の意匠・商標等と同様の発行方法(電子署名の付与)を継続した場
合、特許については、意匠・商標と比べて発行対象となる情報量が多くなるため、結
果、ユーザはダウンロードの回数や電子署名の検証作業が増え、ユーザ利便性が低下
するため、発行頻度、単位の見直しが必要となる。
・ 今後、発行済み公報を随時蓄積し、オンラインで入手可能とする場合、それに対応し
たストレージ容量も確保する必要があるため、過去の公報をどこまでオンラインで入
手可能とすることがユーザの利便性との関係で効率的であるか、また、ストレージの
制約により一定期間のみオンラインで入手可能とする場合、オンラインで入手可能と
した期間以前の公報を入手するための手段の確保をどうすべきか検討する必要がある。
(iii) 検討事項
- 71 -
前述の現状及び課題を踏まえ、検討すべき事項として以下のとおり。
◯ 利用者の利便性を考慮した、公報の発行頻度、単位、時間、オンラインで入手可能な
期間はどの程度とするか。
(2)諸外国の状況
ここでは「III 諸外国・地域の動向」で整理した事項のうち、特に関連する内容を示す。
諸外国におけるインターネットでの公報の発行頻度は週次での提供が多い。発行の時間
帯は例えば EPO では海外との時差などを踏まえ、14 時など日中に行われているケースもあ
る。
また、提供方法として、インターネットでの検索等の情報公開とは別にバルクデータの
入手サイトを設けている場合がある。ドイツ(DPMAdatenabgabe)では、契約者(42 ユー
ロ)は最新の情報が週次で提供されるほか、8 週間はダウンロードが可能。過去のアーカ
イブにアクセスできる契約も別途ある。韓国(KIPRISplus)では特許情報利用活性化のた
めに利用者が願う範囲及び形態でデータを提供する「データオーダーメード提供サービス」
を提供しており、有償でのバルクデータ提供が可能であるなど、バルク提供については別
途手段を設けている。
(3)アンケート調査及びヒアリング調査
(i) 公報の利用状況
本調査におけるアンケート調査の結果によれば、情報提供事業者においてはインター
ネット公報や DVD-ROM 公報、DVD-ROM 公報情報の利用は 4~5 割となっており、民間のオン
ライン検索サービスを利用している割合が最も多い。エンドユーザにおいては、IPDL や民
間のオンライン検索サービスなどが多く、インターネット公報及び DVD-ROM 公報は 2 割程
度である。
- 72 -
利用率
表 IV-6 公報の利用状況
情報提供
事業者
(N=19)
エンドユーザ (N=40)
(自社向けシステムデータベース構
築している回答者のみ)
22.5%
インターネット公報
42.1%
DVD-ROM 公報 CD-ROM 公報
52.6%
DVD-ROM 公報情報、CD-ROM 公報情報
(1 週遅れ)
42.1%
15.0%
紙媒体で発行されているもの
10.5%
17.5%
IPDL
57.9%
92.5%
民間のオンライン検索サービスや SDI 調査結果
73.7%
75.0%
複写
36.8%
35.0%
5.3%
10.0%
その他
(全体 16.5%)
22.5%
(全体 15.3%)
① インターネット公報の発行頻度
インターネット公報の発行頻度は、現在と同じ「週に 1 回程度でよい」が最も多いが、
エンドユーザは、もう少し発行頻度を上げてほしいという割合が相対的に高かった。
データベース提供事
業者
表 IV-7 公報の発行頻度(情報提供事業者)
週に 1 回程度でよい 毎日や隔日など発行
その他
(現在と同じ)
頻度を上げてほしい
有効回答
公開特許公報等公開
関係の公報
15
88.2%
2
11.8%
0
0.0%
17
特許公報等の権利関
係の公報
13
81.3%
3
18.8%
0
0.0%
16
エンドユーザ
表 IV-8 公報の発行頻度(エンドユーザ)
週に 1 回程度でよい 毎日や隔日など発行
その他
(現在と同じ)
頻度を上げてほしい
有効回答
公開特許公報等公開
関係の公報
52
62.7%
21
25.3%
10
12.0%
83
特許公報等の権利関
係の公報
50
60.2%
23
27.7%
10
12.0%
83
- 73 -
② 公報の発行単位
ファイルの発行単位は、情報提供事業者は現在と同じ「複数件纏まった形式」がよいと
回答する割合が高かった。また、エンドユーザは、「複数件纏まった形式」と「1 件ずつ」
と回答する割合が同程度となっている。また、どちらか選択できるようにしてほしいとい
う意見も目立った。
③ インターネット公報でのファイル提供形式
ファイルの提供形式は、現在と同じ「XML、図面、PDF 全て必要」が大多数であった。ま
た、
「XML、図面、PDF をセットで提供」、
「PDF は別ファイルとして提供」がほぼ同数となっ
た。
情報提供事業者
表 IV-9 公報でのファイル提供形式(データベース提供事業者)
XML、図面、PDF 全て必要
XML、図面、PDF の全て
その他
が必要ということはない
XML、図面、 XML 及び図 PDF のみ
XML 及び図
PDF をセット 面をセットと
提供され
面のみが提
で提供(現在 すると共に、
れば、XML 供されれ
と同じ)
PDF は、別
及び図面
ば、PDF が
ファイルとして が無くても 無くても特に
提供
特に支障
支障はない
はない
有
効
回
答
公開特許公報等公開
関係の公報
8
47.1%
8
47.1%
1
5.9%
0
0.0%
0
0.0%
17
特許公報等の権利関
係の公報
8
47.1%
8
47.1%
1
5.9%
0
0.0%
0
0.0%
17
エンドユーザ
表 IV-10 公報でのファイル提供形式(エンドユーザ)
XML、図面、PDF 全て必要 XML、図面、PDF の全てが その他
必要ということはない
XML、図面、 XML 及び図 PDF のみ提
XML 及び図
PDF をセッ 面をセット 供されれ
面のみが提
トで提供
とすると共 ば、XML 及び 供されれ
(現在と
に、PDF は、 図面が無く ば、PDF が無
同じ)
別ファイル ても特に支 くても特に
として提供 障はない
支障はない
公開特許公報等公開
関係の公報
28
34.1%
24
20.3%
14
17.1%
3
3.7%
特許公報等の権利関
係の公報
27
33.3%
23
28.4%
15
18.5%
3
3.7%
- 74 -
13
15.9%
13
16.0%
有
効
回
答
82
81
④ 公報の提供期間
情報提供事業者、エンドユーザとも過去 1 年分(長ければ長いほどよい)は蓄積できる
ことが望ましいとの声が大きかった。
なお、サーバ上での掲載期間を超えた公報については、別途入手できる手段や、バック
アップとして媒体での提供を望む声があった。
情報提供事業者
公開特許公報等公
開関係の公報
特許公報等の権利
関係の公報
エンドユーザ
公開特許公報等公
開関係の公報
特許公報等の権利
関係の公報
表 IV-11 公報の提供期間(情報提供事業者)
過去
過去
過去
過去
1ヶ月分
3 ヶ月分
半年分
1 年分
3
2
1
8
16.7%
11.1%
5.6%
44.4%
3
1
2
8
16.7%
5.6%
11.1%
44.4%
表 IV-12 公報の提供期間(エンドユーザ)
過去
過去
過去
過去
1ヶ月分
3 ヶ月分
半年分
1 年分
7
10
6
33
8.6%
12.3%
7.4%
40.7%
6
7.4%
11
13.6%
6
7.4%
33
40.7%
その他
有効回答
4
22.2%
4
22.2%
その他
18
18
有効回答
25
30.9%
81
25
30.9%
81
⑤ 公報の発行時間
現行は夜間に行っているが、アンケート調査からも現行の夜間のニーズが高かった。
(4)利用者の利便性を考慮したインターネットによる公報の提供方法の検討
アンケート調査およびヒアリングなどを踏まえ、インターネット公報の提供方法として
は下記が望ましいと考えられる。アンケート調査により、インターネット公報の利用は情
報提供事業者が大半であり、エンドユーザは IPDL や民間のサービスを利用している。その
ため、インターネット公報においては主たる対象利用者を情報提供事業者として検討する。
① インターネット公報の発行頻度
インターネット公報の発行頻度は、現在と同じ「週に 1 回程度」を基本とする。
- 75 -
② インターネット公報でのファイル提供形式
公報は XML 形式のファイルであるが、情報提供事業者及びエンドユーザにおいても PDF
での利用ニーズも高いことから引き続き PDF の提供も行う。
ファイルの形式は、アンケート調査からは現在と同じ「XML、図面、PDF セットで提供」
に加え、
「PDF は別ファイルで提供」もほぼ同数程度の希望があったため、今後、
「PDF は別
ファイルで提供」できる仕組みの検討も必要となると考えられる。
③ インターネット公報の発行単位
ファイルの発行単位は、対象ユーザが主に情報提供事業者向けとなっていることも鑑み
れば、
「複数件纏まった形式」での提供が望ましい。今後、対象ユーザをエンドユーザとす
るような場合においては、1 件単位を最小と単位としつつ、週次は纏めてダウンロード出
来るなど、ユーザインターフェースにおいて双方選択できる仕組みの検討も必要となると
考えられる。
④ 公報の提供期間
情報提供事業者、エンドユーザともオンラインで入手可能な情報の提供期間は長ければ
長いほどよいが最低1年間程度は蓄積されていることが望ましい。なお、サーバ上での掲
載期間を超えた公報については別途入手できる手段の確保も検討する必要がある。
⑤ 公報の発行時間
発行時間は、業務開始時間などを踏まえて現行の夜間の時間帯とする。
- 76 -
V. インターネット公報の推進に向けた法律面について
1. 公報における個人情報に関する取扱い
(1)現状と課題
(i) 現状
特許庁は特許法に基づき、特許出願等において発明者及び出願人は氏名、住所を取得し
ている。また、これらの個人情報は特許法第 64 条等により公報として公開すべき項目とし
て定められていることから、公報等として公開されることになる。
したがって、特許庁ホームページ等で個人情報の利用目的を明示しているほか、個人情
報ファイル簿(表 V-2 参照)へ登録されている。
公開された情報は公報情報として、INPIT や民間事業者にもデータとして提供されてい
る。
この個人情報(出願人、発明者の氏名と住所)は、同姓同名の判別、膨大な特許公報か
ら必要な情報を抽出するための検索項目、権利の買取やラインセンシングの交渉など、権
利者へアクセスするために活用されている重要な情報項目の一つとなっている。
◯ 住所又は居所について
特許法第 36 条は、特許出願をする際に提出すべき願書等について規定したものであり、
同条第 1 項では、「特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所」及び「発明者の氏名及
び住所又は居所」を記載した願書を提出しなければならない旨が規定されている。また、
特許法施行規則第 23 条において、願書の様式第 26 を用いることが規定されている。かか
る規定に基づいて特許庁は個人情報を取得している。
ここで、「住所」とは、人の生活の本拠である場所を意味し、また、「居所」とは、継続
して居住しているものの生活の本拠というほどその場所との結びつきが強くない場所を意
味しており、識別番号を記載する場合を除いて、それらを正確に(簡略化することなく)
記載することが求められている。
なお、住所又は居所として、
「私書箱」等の郵便等の受け取り場所の記載は認められてい
ない。他方、実務慣行上、発明者が従業員である場合の居所については、当該従業員が所
属する法人の本店や研究所等の所在地を記載することは許容されている。
- 77 -
公報等の種類
出願公開公報(特
許法第 64 条第 2
項)
特許掲載公報(特
許法第 66 条第 3
項)
審決公報(特許法
第 157 条第 2 項第
2 号、第 193 条第
2 項第 6 号)
整理標準化データ
(平成 11 年 3 月開
始)
IPDL(平成 11 年 3
月開始)
書類の閲覧
表 V-1 特許公報等に掲載される個人情報
含まれる個人情報
特許出願人 : 識別番号、氏名又は名称及び住所又は居所
代理人 : 識別番号、氏名又は名称
発明者 : 氏名及び住所又は居所
特許権者 : 識別番号、氏名又は名称及び住所又は居所
代理人 : 識別番号、氏名又は名称
発明者 : 氏名及び住所又は居所
当事者(請求人、被請求人) : 氏名又は名称及び住所又は居所
参加人 : 氏名又は名称及び住所又は居所
代理人 : 氏名又は名称(第 157 条では、住所及び居所も掲載項目となっている。)
整理標準化データは、特許庁が保有している出願や権利に関する電子データ(出願の
書誌情報や経過情報等)を編集したもの
発行時点の情報のみから構成される公報データと組み合わせることにより、企業や民間
事業者の個別ニーズに則した多様なサービスを構築することが可能となる。
提供される書誌情報には、最新の出願人等の氏名・住所が含まれ、個人情報が提供さ
れている(ただし、公報が公報発行時点の情報である点で相違している。)
IPDL は、産業財産権情報がより幅広く、かつ、簡便に利用される環境を整備するため
に、公報データと整理標準化データを基にデータベース化したものである。
特許庁が発行した明治以降の特許、実用新案、意匠及び商標に関する公報類や、そ
れぞれの出願の審査や登録状況が確認できる経過情報等を格納しており、情報量が豊
富であること、さらに、無料であることから、産業財産権情報に関する基礎的な社会イン
フラとなっている。
特許法では、出願関係書類の閲覧制度が整備されており、閲覧可能な書類の中には
個人情報を含むものがある。
特許法第 186 条の規定により、一定の手数料を納付すれば、何人も特許に関して書類
の閲覧を請求することができる。ただし、同条第 1 項第 1~5 号には、特許庁長官が秘
密を保持する必要があると認めるときは、閲覧対象としない旨規定されている。なお、書
類の閲覧には、特許庁窓口での紙原本の閲覧(特許法 186 条第 1 項)、特許庁窓口
での端末(映像面)による閲覧、及び特許庁外の端末から特許庁システムへのアクセス
により閲覧するオンライン閲覧(特例法 16 第 12 条第 1 項)がある。
- 78 -
公報等の種類
含まれる個人情報
〈閲覧対象の書類に含まれる個人情報〉
上記(i)に示した個人情報に加え、以下の個人情報が含まれている。
・出願書類 :予納台帳番号 17、現金納付の納付書番号、電子現金納付の納付番号
印影(認証機能の有無を問わない)又はサイン
・審判書類 :出願書類と同様。
・登録申請書(紙手続のみ可)
:申請者の氏名、住所
印影(認証機能の有無を問わない)又はサイン
質権の債権額
・庁内書類の一部
:出願人と審査官の面接の結果を記した面接記録において、面接出頭者の押印又はサ
インを求めており、また、電話・FAX 等の通信記録である応対記録において、出願人
(代理人)から審査官が受信したファクシミリ等に記載された知的財産権担当のメールア
ドレス、担当者名、住所、部署等が記載されているケースがある。
・登録原簿 :特許権者、専用実施(使用)権者、通常実施(使用)権者、質権者の氏名
及び住所、質権の設定状況(債権額等)等が掲載されている。
・閲覧請求書 :請求人の識別番号、氏名、住所、電話番号、印影又は識別ラベル等
(オンラインによる閲覧請求手続の場合は、印影又は識別ラベルを除く。)
・交付請求書 :閲覧請求書と同じ
・証明請求書 :閲覧請求書と同じ
- 79 -
出典:「出願に係る個人情報について(特許庁ホームページ)」
(http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/tetuzuki/t_gaiyou/syutugann_kojin_jyouhou.htm)[最終アクセス日:
2014 年 2 月 3 日]
図 V-1 出願にかかる個人情報について
- 80 -
表 V-2 特許庁が登録している個人情報ファイル
個人情報ファイル 産業財産権出願業務用ファ 産業財産権審判業務用ファ 産業財産権登録ファイル
の名称
イル
イル
特許庁
特許庁
特許庁
行政機関の名称
総務部情報システム課
総務部情報システム課
個人情報ファイル 総務部情報システム課
が利用に供される
事務をつかさどる
組織の名称
個人情報ファイル 産業財産権の審査に関する事 産業財産権の審判に関する事 産業財産権に関する登録原簿
務及び産業財産権情報の迅速 務及び産業財産権関係情報の の調整及び産業財産権関係情
の利用目的
報の迅速な提供
迅速な提供
な提供
1 氏名、2 住所、3 国籍、4 電話番 1 氏名、2 住所、3 国籍、4 電話番 1 氏名、2 住所、3 国籍、4 電話番
記録項目
号、5 ファクシミリ番号、6 担 号、5 ファクシミリ番号、6 審 号、5 ファクシミリ番号、6 発
当審査官、7 発明等の名称、8 決、7 判決結果、8 出願日、9 出 明等の名称、7 出願日、8 出願
出願日、9 出願番号、10 公開 願番号、10 公開日、11 公開番 番号、9 公開日、10 公開番号、
日、11 公開番号、12 登録日、13 号、12 登録日、13 登録番号、14 11 登録日、12 登録番号、13 審
審判請求日、15 審判請求番号、 決日、14 存続期間の延長・移
登録番号
転・消滅又は処分の制限
16 審決日
特許法、実用新案法、意匠法 特許法、実用新案法、意匠法 特許法、実用新案法、意匠法
記録範囲
及び商標法に基づく出願等の 及び商標法に基づく審判請求 及び商標法に基づく権利を有
手続者、発明者、創作者及び の手続者及びその手続者の代 する者
理人
その手続者の代理人
本人からの手続
本人からの手続、産業財産権
記録情報の収集方 本人からの手続
審判業務用ファイル
法
記録情報の経常的 独立行政法人工業所有権情 独立行政法人工業所有権情 独立行政法人工業所有権情
報・研修館、不特定多数への 報・研修館、不特定多数への 報・研修館、不特定多数への
提供先
閲覧
閲覧
閲覧
開示請求等を受理 (別途、個別法に基づき開示 (別途、個別法に基づき開示 (別途、個別法に基づき開示
する組織の名称及 請求等ができますので、詳し 請求等ができますので、詳し 請求等ができますので、詳し
くは、所管部署にお問い合わ くは、所管部署にお問い合わ くは、所管部署にお問い合わ
び所在地
せください。
)
せください。
)
せください。
)
-
-
訂正及び利用停止
に関する他の法律
又はこれに基づく
命令の規定による
特別の手続等
個人情報ファイル 法第 2 条第 4 項第 1 号(電算 法第 2 条第 4 項第 1 号(電算 法第 2 条第 4 項第 1 号(電算
処理ファイル)
処理ファイル)
処理ファイル)
の種別
なし
なし
令第9条に該当す なし
るファイル
出典:総務省ホームページより(株)価値総合研究所作成
◯ 公報における個人情報の掲載の主旨
特許庁ホームページ「公報に関して:よくあるご質問」によれば、
「個人情報を公報に掲
載する趣旨は、特許権が極めて強力な権利であるため誰がそのような権利を有しているか
を特定し、公示する必要があること、出願人についても仮保護としての補償金請求権(特
- 81 -
許法第 65 条)が発生すること、拡大された先願の地位(特許法第 29 条の 2)や特許を受
ける権利の存否の確認をする資料となること等、様々な必要性に基づいております。」とさ
れている。
(ii) 課題
前述のとおり、特許庁では特許法等に基づき、出願人等の個人情報を取得し、またこれ
を公報の掲載項目として公開している。そして、特許庁が特許法等に基づき、出願人等の
個人情報を取得し、またこれを公報として公開していることは行政機関の個人情報保護法
にも抵触しない。
しかしながら、IPDL などインターネットを用いた検索サービスに蓄積された公報情報の
項目として氏名及び住所が掲載されていることについて、昨今のインターネットの爆発的
普及や個人情報保護に対する意識の高まりを鑑みれば、今後、公報に掲載される氏名、住
所又は居所等をマスクや省略するなどの配慮を行うことも考えられる。一方で、特許を有
することを主張したい、積極的に公開したいという出願人・発明者のニーズや、産業財産
権情報を活用する際の手がかりの一つとしても利用されていることを考慮すると、一概に
公報から氏名・住所をマスクするなどの対処が適切とも言えない。また、諸外国では、日
本と同様に公報に住所や氏名を掲載しているものの、住所については都市名までの概略表
示としている場合も多い状況である。
(iii) 検討事項
前述の現状及び課題を踏まえ、本調査では特に論点となる発明者及び出願人の「住所」
の取扱いについて重点的に以下の検討を行った。
◯ 出願人及び発明者の個人情報(特に住所又は居所)をどこまで流通させるか
◯ 公開情報、権利情報、経過情報等の区分によって住所の取り扱いを変えるべきか
◯ 住所の掲載の範囲は一部もしくは全部を非掲載にすべきか
(2)諸外国の状況
ここでは「III 諸外国・地域の動向」で整理した事項のうち、特に関連する内容を示す。
諸外国において日本のように住所・氏名等が個人情報として問題となっている認識はな
いのが現状であった。下記に示すように、住所の取扱いについては勤務先の住所を記載し
- 82 -
てもよい場合や省略表示となっていることなども問題となっていない要因と思われる。
・ 公報では住所を簡略化して記載例として EPO がある。簡略化した理由としては画面レ
イアウトの関係から住所は都市名までしか表示させていないとのことであり、個人情
報保護の観点とは異なる。
・ DPMA register 及び公報においては、個人情報のデータベースを極力保有しないことを
原則としているため、出願人発明者の住所表記は省略している(国、都市、郵便番号
まで)。(DPMA)
・ 出願人の住所は簡略化(市・州まで)して掲載。(USPTO)
・ 発明者に関しては個人情報を記載することの拒否権がある。ただし、公開後は対応し
ない。(EPO)
・ 個人出願人(法人は除く)や発明者の住所は部分公開を選択可能とする規則改正を実
施。(KIPO)
・ 出願人の氏名、住所等連絡先が分かれば良いという考え方である。発明者へのアクセ
スは出願人が担保する。(EPO)
・ 公開前の情報であれば、記載の変更は可能。公開後の取り下げは不可(EPO、KIPO)
・ 個人情報及びプライバシーの観点からマスキングの対象となる情報は存在する
・ 経済的な理由や申請期限に間に合わない場合の理由(診断書など)については、イン
ターネットだけでなく全般的にマスキングあるいは非公開情報となる。(DPMA)
・ 個人の出願人(代理人を立てている場合は問題ない)の場合、記載する内容が精査さ
れていないため、技術的な事項を掲載すべきところに上記の支払繰り延べのお願い等
が記載されているなどの場合にマスキングする。(DPMA)
・ 個人の安全保障番号、クレジット番号、銀行振込口座番号等はマスキングの対象(USPTO)
・ 出願時の書式に、第三者に情報を提供することを明記している。また、法律でも第三
者提供を位置づけた(DPMA)
- 83 -
図 V-2 米国の特許公報の例(住所は都市名までの記載)
(3)アンケート調査及びヒアリング調査
- 84 -
エンドユーザにおいては出願人・発明者の氏名・住所の使用目的は、
「特定の発明者・出
願者を抽出するため」が最も多い。また、出願人等の住所・氏名の表記の必要性について
は、情報提供事業者は発明者・出願人とも氏名と住所の表記が必要という回答が多く、エ
ンドユーザは、発明者の住所は概略でよいという回答が多い結果となった。
ヒアリング調査によれば、情報提供事業者は出願人、発明者の住所は必ずしも正確なも
のではなく、市区町村など概略表示でも対応可能であるとの意見が多く見られた。
一方で、特許庁から提供される公報等に含まれる個人情報については、特許庁から提供
された情報を提供しているだけであり、取得した情報に関する第三者提供は自社が取り
扱っている個人情報という認識は高くない。
表 V-3 氏名・住所の利用目的
回答数
比率
発明者・出願人の同姓同名を判別するため
43
50.6%
特定の発明者・出願者を抽出するため
67
78.8%
ライセンス契約や買取などの打診など、権利者にアクセスするため
21
24.7%
6
7.1%
その他(識別番号を調べるため等)
(n=85)
- 85 -
表 V-4 氏名住所の表記の必要性(情報提供事業者)
出願人の氏名
発明者・出願人 と 住 所 が あ れ 発明者・出願人
とも、氏名と住 ば、発明者の住 とも、住所は概
情報提供事業者
所 の 表 記 が 必 所は概略(市町 略(市町村名な
要
村名など)だけ ど)だけでよい
でよい
公開特許公報等公開関係の公報
8
7
3
42.1%
36.8%
15.8%
特許公報等の権利関係の公報
8
7
その他
0
0.0%
42.1%
36.8%
15.8%3
0.0%0
審決公報等の経過の公報
6
31.6%
5
25.8%
3
15.8%
0
0.0%
整理標準化データの各書誌データ及
び経過情報
9
47.4%
3
15.8%
3
15.8%
0
0.0%
表 V-5 氏名住所の表記の必要性(エンドユーザ)
出願人の氏名と
発明者・出願 住所があれば、 発明者・出願人
人とも、氏名 発明者の住所は とも、住所は概
エンドユーザ
と住所の表記 概略(市町村名 略(市町村名な
が必要
など)だけでよ ど)だけでよい
い
公開特許公報等公開関係の公報
27
33
17
31.8%
38.8%
20.0%
特許公報等の権利関係の公報
28
34
15
32.9%
40.0%
17.6%
審決公報等の経過の公報
24
33
19
29.2%
39.9%
22.4%
- 86 -
その他
5
6.9%
5
6.9%
4
4.7%
(4)公報における個人情報の取扱いに関する対応策案
まず、出願から対外提供サービスまでの個人情報の取得・提供の段階別に対応策を整理
し、次に案 B 及び案 C については当該段階における住所の公開・非公開のタイミングによ
る対応案を検討する。
個人情報の取得・提供の段階
住所の公開・非公開の判断のタイミング
案A
出願時対応
案B
公報発行時対応
案1:住所は非公開(概略表記)
公開公報、審決公報、権利公報
案2-1:住所の公開・非公開を事前選択
(公開公報時の判断が継続)
案2-2:公開後、申告に対応
(オプトアウト的対応)
特許庁から要請
案C 公報発行後
対外提供サービス時
案C-1
IPDL検索サービスで非表示
案C-2
民間事業者サービスで非表示
案D
個人情報の取り扱いに関する説明強化(実体的な対応無し)
案1:住所は非公開(概略表示)
案2-1:住所の公開・非公開を事前選択
※案Bの判断が継承される(INPIT,民間事業
者が本人に確認するものではない)
特許庁から要請
案2-2:公開後、申告に対応
※データベース提供事業者は、オプトアウト対
応+特許庁からの要請
図 V-3 検討のステップと対応策案
(i) 個人情報の取得・提供の段階別による対応策
個人情報の取得・提供の段階別による対応策として考えられるパターンは下表の通り。
最上流の出願時に対応する案 A から公報発行時に対応する案 B、対外提供サービス時に対
応する案 C が想定され、実体的な対応はしないが個人情報の取扱いに関する説明を強化す
る案 D の 4 案である。
- 87 -
表 V-6 対応策案
対応案
案 A 出願時対応
出願時に特許庁が情報を取得しない。もしくは住所は概略表記とする。
案 B 公報発行時対応
公報発行時に、住所を非表示対応する。
案 C 対外提供サービス対応
C-1 は、IPDL 検索サービスで非表示(マスク対応)とする。非表示の対応は
(IPDL 検索サービス、民間事業者 INPIT が実施
への公報提供時の対応)
C-2 は民間事業者が検索サービスなど第三者提供を行う場合は非表示(マ
スク対応)とする。非表示の対応は民間事業者が実施
案 D 個人情報の取り扱いに関する 出願時等に個人情報の第三者提供など取り扱いに関する説明を強化する。
説明強化 (実体的な対応無し)
なお、案 B(一部開示の場合)、C と並行した対応も可能
案C-2:情報提供事業者で非表示
個人情報
(氏名・住所)
の取扱い
特許庁
出願人
案D:個人情報取扱の説明
強化(実体的な対応なし)
個人情報
(氏名・住所)
の取扱い
公報の発行
インターネット
公開公報等
情報提供事業者
(実用新案、
意匠、商標)
特許願
明細書等
データベース提供事業者
※ネットの情報と同じ
ものをメディアで
提供(公報情報)
電子署名
検証ソフト
自社DB
出願
マスター
データ
個人情報
(氏名・住所)
の取扱い
特許料
納付書
インターネット
出願ソフト
案A:出願時対応
(法改正)
SDI調査
翻訳 等
自社DB
INPIT(IPDL)
拒絶審査不服
審判請求書
検索サービス
電子署名
検証ソフト
公開公報等
(特許)
審査請求書
意見書
補正書
ユーザ
公報情報
公報情報
審判情報
審決公報
整理標準化
データ
検索
サービス
インターネット
サイト閲覧
審査書類情報
書誌・
経過情報等
重複排除・
標準化
個人情報
(氏名・住所)
の取扱い
経過情報
※オンライン閲覧機能で
閲覧可能(閲覧は有償)
WIPO,EPOなど海外知財庁
INPIT
PATENTSCOPE
(WIPO)
案B:公報発行時
(法改正)
整理標準化
データ
整理標準化
データ
個人情報
(氏名・住所)
の取扱い
案C-1:IPDLでは非表示
図 V-4 個人情報の取得・提供の段階別の対応策案
(ii) 個人情報の取得・提供の段階別による対応策についての検討
案 A~D について、産業財産権の周知等、個人情報の流通範囲等の観点からメリット・デ
メリットを整理した(表 V-7
個人情報の取得・提供の段階別)。
① 案 A:公報出願時に対応
出願時に特許庁が住所等を取得しないため、特許庁自体が当該個人情報を利用できず、
産業財産権の周知や第三者が権利者へのアクセス性が低下するほか、特許庁が出願人との
- 88 -
連絡がとりにくいという事務処理上のデメリットが大きいことから適切ではない。
② 案 D:個人情報取扱の説明強化
IPDL や公報サイトへの掲載に関して、案 A~C に関わらず特許庁や関係機関で取り組む
べき事項である。具体的にはガイドラインの作成や出願ソフトの改造などが考えられる。
③ 案 B:公報発行時に対応
公報発行時に対応することにより、当該公報を利用する川下の IPDL やユーザも含む民間
事業者に個人情報が提供されないため、個人情報保護の観点から効果が大きい。一方で、
例えば、出願人や発明者の住所を概略表示にした場合、権利者等へのアクセス性や同一人
物の識別性の低下などが懸念されるが、情報提供事業者及びエンドユーザへのヒアリング
によれば、原簿の閲覧など所定の手続きを踏んで入手が可能ならば、業務に大きな支障を
与えるほどの問題にはならないと考えられる。
また、後述の案 C-1、C-2 とは異なり、公報と IPDL あるいは情報提供事業者が提供する
情報に差異がなくなるため、ユーザが混乱することもない。
なお、実現に際しては法改正を伴う。
④ 案 C-1:IPDL で非表示
IPDL のみで対応した場合、IPDL で概略表示した場合でも、別途、公報からは個人情報の
入手可能な状態であるため、個人情報保護の観点からは十分ではない面がある。
しかしながら、案 B の実現には法改正が必要となるため、その実現までは、対応につい
て法改正が特段不要であり、IPDL について先行的に対応することも想定される。
⑤ 案 C-2:情報提供事業者で非表示
情報提供事業者のみで対応した場合、不特定多数の人が容易に閲覧できる公報や IPDL
から個人情報の入手が可能であるため、個人情報保護の観点からは十分でない面がある。
情報提供事業者33がオプトアウト(個人情報保護法第 23 条第 2 項)の対応を図れば、個
人情報保護法上の対応は実施されることになる。
しかしながら、ヒアリング調査等によれば情報提供事業者のサービスは主に法人向けの
ユーザ数が限定されたものであるため、不特定多数のアクセスがある訳でもなく、実際、
個人情報に関する問合せや削除依頼もほとんどない。さらに、情報提供事業者においてオ
33
オプトアウトが必要となる情報提供事業者は、後述する「(2)データベース提供事業者における個人情報の取扱い」
で定義する「データベース提供事業者」が該当する。
- 89 -
プトアウトで対応することによる影響(例えば、既に流通してしまった個人情報の事後的
な削除を、多数の情報提供事業者に求めていくことは、非現実的である)を踏まえると、
個人情報を情報提供事業者のみが非表示とすることで得られる効果は低いと想定される。
したがって、案 C-2 は、仮に実施するにしても、単独での実施ではなく、案 C-1 とあわ
せた対応が望ましい。
- 90 -
表 V-7 個人情報の取得・提供の段階別による効果
対応案
案A
出願時対応
(そもそも JPO が情
報を取得しない)
案B
公報発行時対応
出願時に特許庁が情報を
取得しない。もしくは住所
は概略表記とする。
産業財産権の周知等
個人情報の流通範囲等
備考 (法律面、その他必要な措置)
×権利者特定時等において、第三者 ○最上流による効率的な対応が可能
の個人情報へのアクセス性の低
(取得しない)
下する
△法改正が必要(特 ○法改正の内容(例えば、出願人
許法第 36 条、特
の住所を削除)によっては書
許法施行規則第
類の送達等の事務処理が不可
23 条)
能となる。
公報発行時に、住所を非表示 ×公開する場合に比較して、住所情 ○川下(IPDL・プロバイダ)へ情報
対応する。
報へのアクセスについて、ユーザ
が流通しない
の利便性が低下する
○特許庁内は住所情報を管理でき
るため、審査官や閲覧者は所定の
スキームでアクセス可能
△法改正が必要(特 △公報システム、出願ソフト改
許法第 64 条、第
造が必要
66 条)
○法施行前の提供済みの公報へ
の対応が明確になる
△左記とあわせて整理標準化・
IPDL(書類情報照会)につい
ても対応が必要
C-1
○公報から情報を取得可能
○IPDL からの流出は避けられる
○法改正不要
案C
IPDL
検索サービスで非表示
×公報と
IPDL
データ(公報情報)
×公報が提供される限り、公報をも
対外提供サービス対応
が乖離する
とに IPDL 以外のサイトで検索可能
(IPDL 検索サービス、 (マスク対応)とする。
非表示の対応は INPIT が実施
(特に、インターネット公報・海
となる可能性が残る。
民間事業者への公報
外送付データ、プロバイダ等と
提供時の対応)
IPDL データとの乖離)
C-2
○公報からは情報取得可能
民間事業者が検索サービスな ×情報提供サービスにおいて出願
ど第三者提供を行う場合は非
人等の情報は必要とされている
表示(マスク対応)とする。
ためサービスが低下する恐れが
非表示の対応は民間事業者(
ある
情報提供事業者)が実施
案D
個人情報の取り扱い
に関する説明強化
(実体的な対応無し)
出願時等に個人情報の第三者 ○現行通り
提供など取り扱いに関する説
明を強化する。
なお、案 B(一部開示の場合)、
C と並行した対応も可能
×公報や IPDL で提供される限り、い ○法改正不要
ずれかのサイトやサービスで検索
可能となる可能性が残る
○事業者による運用対処のため、早
期の対応が可能。
×拘束力が乏しく実効性が不明
○早期の対応が可能。
×個人情報削除の要望が多い個人発
明者への実効性が乏しい
○法改正不要
△IPDL 改造が必要
×民間事業者のシステム改修が
必要となる
△ガイドライン、販売時の注意
書き等で関する対策が必要
(SDI 調査などには利用する
が、検索サービスでは表示し
ないなど)
○出願ソフトの改造を実施すれ
ば、出願ソフトユーザへの効
果的な周知が可能
1
9
-
(iii) 案 B 及び案 C における住所の公開・非公開の判断のタイミングによる対応策
ここでは、案 B、案 C に関して、個人情報(特に住所又は居所)の取り扱いについて検
討する。
公報等における個人情報(住所又は居所)を非公開とする場合の具体的な対応策案とし
ては下表の通り。住所を一律非公開(概略表示)とする案 1、住所を公開・非公開とする
ことを事前に選択する案 2-1、公報公開後に発明者等本人からの申告により非公開(概略
表示)とする案 2-2 の 3 案である。
表 V-8 住所の公開・非公開の対応策案
内容
案1
○一律非公開(概略公開)とする。
ただし、住所の概略(例:市町村レベル)まで公開とする。
案 2-1
○公開・非公開(概略公開)を事前選択可能とする。
案 2: 住所は公開か非公開(概略公 ○事後の変更も許容する選択肢もあり
開)を選択可能な仕組みを準備する 案 2-2
○公報公開後、申告された場合にのみ、非公開(概略公開)とする(オ
プトアウト)
案 1: 住所は非公開(概略表示)
アンケート調査やヒアリングから住所を非公開(概略表示)することにより懸念される
事項と状況については以下の 3 点が考えられる。
◯ 同一人物の識別性の低下について
同一法人名、同姓同名が同一市区町村内に存在する場合に生じる事項であるが、件数も
限られる。情報提供事業者へのヒアリングによれば、住所は名寄せ利用されており、かつ
都道府県や市区町村レベルでしか利用されていないこともあり、公報の住所が市区町村レ
ベルの表示でも問題ない可能性が高い。実際に識別が必要になった場合は原簿を確認する
ことで識別可能なため、同一人物の識別性の低下は大きな影響にならないと考えられる。
◯ 権利者等へのアクセス性の低下について
出願者等の住所の確認は、現在のように無償で何人も閲覧できるというアクセス性は低
減するが、実際には原簿を閲覧することでアクセス性は担保することで対応可能と考える。
◯ 出願人と発明者の取扱いの違いについて
- 92 -
海外庁について、例えば、EPO では、発明者については個人情報を掲載しないという選
択も可能である。また、韓国では、個人出願人や発明者は住所を部分公開することが可能
となっている。
アンケートやヒアリングの結果によれば、出願人と発明者によって違いは大きくないが
どちらかといえば発明者の住所が概略もしくはなくてもよいという回答が多い。
出願人については、個人情報保護法上の問題となる個人出願人のみ住所を非表示対応す
ることも考えられるが、一方で、法人と個人とに区別することは、公平性を欠けるとの指
摘もある。
案 1、案 2-1 及び案 2-2 について、個人情報保護等と産業財産権の周知の観点から、メ
リット・デメリットを整理した(表 V-9
住所の公開・非公開の対応策)。
- 93 -
表 V-9 住所の公開・非公開の対応策の整理
内容
個人情報保護等の効果
案1
○非公開としたい出願人等への対応が
案 1:
○一律非公開(概略表記)とする。 可能となる
※概略表記とは例えば、市区町 △公開したい出願人等の意向に合わな
住所は非公開とする
村レベルまで。
い
案 2-1
○非公開としたい出願人等への対応が
○公開・非公開(概略表記)を事
可能となる
前選択可能とする。
○公開したい出願人等の意向にも合う
○事後の変更も許容する選択肢も △削除にあたって本人確認が必要とな
あり
る(事後の場合)
案 2:
住所は公開か非公
開(概略公開)を選
択可能な仕組みを
準備する
産業財産権の周知等
△一律的に第三者から出願人等へのア
クセス性が低下する
△出願人等の同一人物の識別性が低下
する可能性がある
○本人の同意を確認するため、民間事
業者等への提供もあわせて確認がで
きる
△選択制にすることで、出願人等が容
易に非公開とする可能性が排除でき
ない
案 2-2
○非公開としたい出願人等への対応が ○案 1 や案 2-1 の懸念事項(△印)は
○公報公開後、申告された場合に
可能となる
軽減される
のみ、非公開(概略表記)とす ○公開したい出願人等の意向にも合う ○一旦、公開される
る(オプトアウト)
○公報公開後の出願人等の状況変化
(出願時は公開が問題なかった)に
も対応可能である
×一旦、公開される
×流通済みの情報の対応が困難
△削除にあたって本人確認が必要とな
る
△事後対応する場合は件数によっては
手間がかかる
備考
・韓国は個人出願人
や発明者は住所
を部分公開が可
能
・EPO は発明者が個
人情報を掲載し
ないことを選択
可能
4
9
-
(iv) 案 B 及び案 C における住所の公開・非公開の判断のタイミングについての検討
前述した案 B、案 C-1、案 C-2 と案 1、案 2-1、案 2-2 の組み合わせによるメリット・デ
メリットを整理した(表 V-10
個人情報(住所)の取扱いに関する対応策)。
案 B 及び C-1 において、住所の非表示の判断のタイミングとしては、案 1~案 2-2(案
2-1、案 2-2 は特許庁からの要請)が考えられるが、案 2-2 の事後的な対応を行うよりも、
事前の対応が可能となる、案 1(非公開)もしくは案 2-1(事前選択)が望ましいと考えら
れる。もし、仮に、出願人・発明者の個々の意見を反映させるならば、案 1 より案 2-1 が
望ましいが、出願人・発明者毎に対応が異なると、第三者が混乱する上、出願人・発明者
間で公平性が担保できないため、案 1 の一律非公開(概略表示)とすることが望ましい。
(v) 案 2 における事後的に情報を非表示とする際の本人確認について
本調査では、案2における事後的に情報を非表示とする際の本人確認について、更に検
討を行った。
本人等からの申告にもとづいて、住所を非表示とする場合、その申告者が本人であると
いうことを確認する必要がある。
個人情報保護法では、本人確認も含め、本人からの開示等の求めに個人情報取扱事業者
が応じる手続については、各事業者において定めることができるとしている(法第 29 条第
1 項)。ただし、個人情報取扱事業者がその手続を定めるに当たっては、本人にとって過重
な負担とならないよう配慮することとされているため(法第 29 条第 4 項)、不必要に膨大
な証明書等の提示を求めることや、過度に煩雑な手続を設けることなどは、個人情報保護
法上、不適切と考えられる。
「個人情報保護法に関するよくある疑問と回答 」(消費者庁)によれば、本人確認等の
手続きについては事業者が定めることができるとされている。
国や独立行政法人においては、保有個人情報利用停止請求書34の標準様式を用いる場合
が多く、標準様式における本人確認資料としては、運転免許証、健康保険被保険者証、住
民基本台帳カード(住所記載があるもの)、在留カードなどが提示されている。
また、民間事業者における本人確認においては、上記に加えて、住民票や印鑑登録証明
書の原本などが例としてあげられている。
34
(独)工業所有権情報・研修館における「保有個人情報利用停止請求書」等
www.inpit.go.jp/about/privacy/format/ko_teishi.pdf [最終アクセス日:2014 年 2 月 3 日]
- 95 -
表 V-10 個人情報(住所)の取扱いに関する対応策(纏め)
産業財産権の周知等
個人情報の保護
住所の取扱方法の違いによる影響等
備考
(法律面及びその他必要な措置)
○特許庁内は住所情報を管理で ○川下(IPDL・プロバイダ)へ →案 1:非公開
△法改正が必要(特許法第 64
B
きるため、審査官や閲覧者は
情報が流通しない
△権利者等へのアクセス性や同一人物の識別性が低下す
条、第 66 条)
公報発行時に対応
所定のスキームでアクセス可 ○所定のスキームでアクセス
るケースがある
△公報システム、原本ソフト、
(法改正+公報システ
能
するため、閲覧者が特定でき △公表したいとする者には原簿閲覧での対応となるた
出願ソフト等多数の庁内シ
ム改造)
△公開する場合と比較して、発
る
め、アクセス性は低下する
ステムの改造が必要
明者や出願人へのアクセス性
が低下する(IPDL,プロバイダ
等も含む)
○公報としては発行済
×川下へは情報が流通済み
(訂正公報は発行しない)
(○申請後は公報としては流通
しない)
C-1
IPDL で は 非 表 示
(マスク対応)
(法改正を行わない
+IPDL 改造)
C-2
情報提供事業者で
非表示(マスク対応)
ガイドライン、Q&A の
作成
△あわせて整理標準化・IPDL
→案 2-1:事前選択
○本人の意向に基づく情報のみ IPDL や民間へ流通する。 (書類情報照会)についても
対応が必要
→案 2-2:事後対応
△法改正が必要(特許法第 64
×非公開のための本人確認手続きが必要
条、第 66 条)
△発行済み公報はダウンロードできない状態とする(原 △公報システム、原本ソフト、
簿閲覧は可能)
出願ソフト等多数の庁内シス
テムの改造が必要
○公報からは情報取得可能
○クレームの原因の一つであ →案 1:非公開
○法改正不要(案 1)
×公報と IPDL データ(公報情
る IPDL からの流出は避けら ○権利者等へのアクセス性や公開したい意向は公報で担 △法改正が必要(案 2-1)
報)が乖離する
れる
保される
△IPDL の改造が必要
(特に、インターネット公報・ ×公報データが提供される限
海外送付データ、プロバイダ
り、IPDL 以外のサイトで検 →案 2-1:事前選択
等と IPDL データとの乖離)
索可能となる可能性が残る。 ○(特許庁へ提示した)本人の意向に基づく情報のみ、
提供される。
×公報発行時に削除すべき情報も合わせて提供される場
合、案 2-2 と同じ
→案 2-2:事後対応
○特許庁からの要請に対応可能
○公報からは情報取得可能
○情報提供事業者各社の運用 →案 1:非公開
○法改正不要
△情報提供サービスにおいて出
対処のため、早期の対応が可 ×自主的に非公開とさせることは実現性に乏しい
×民間事業者のシステム改造
願人等の情報は必要とされて
能。
が必要
→案 2-1:事前選択
いるためサービスが低下する ×公報や IPDL で提供される限 ○(特許庁へ提示した)本人の意向に基づく情報のみ、 △ガイドライン、販売時の注意
恐れがある
り、いずれかのサイトやサー
書き等で関する対策が必要
提供される
△公報と異なる情報を使ってい
ビスで検索可能となる可能 ×公報発行時に削除すべき情報も合わせて提供される場 (SDI 調査などには利用する
ることとなり、サービスとし
性が残る
が、検索サービスでは表示し
合は、案 2-2 に同じ
ての信頼性を低下させる可能 ×拘束力が乏しく実効性が不 →案 2-2:事後対応
ないなど)
性がある
明
×現状、削除要請に対応していない
△特許庁からの要請に対応可能
6
9
-
(5)公報以外の個人情報の取扱いの考え方
以下、上記「公報」についての検討を踏まえて、特許庁から対外提供している「公報」
以外の情報(「審査書類」、「書誌情報」)についても検討を行う。
(i) 審査書類情報:
審査書類情報は法律により閲覧制度が設けられているが、IPDL 審査書類情報照会サービ
スは特許法において直接的に規定されてないサービスである。
したがって、前述の整理を踏襲すれば、特許法に直接的な規定にはない IPDL 審査書類情
報照会サービスについては、IPDL の公報情報の検索サービスと同様に対応を図ることが考
えられる。
(ii) 書誌情報
書誌情報は法律上、提供しているものではなく、IPDL 経過情報照会サービスは特許法に
直接的に規定のないサービスである。また、民間へ提供している情報として整理標準化デー
タが存在する。これも特許法には直接的に規定のないサービスである。
したがって、IPDL 経過情報照会サービスや整理標準化データについても、IPDL の公報情
報の検索サービスと同様の対応することが考えられる。
- 97 -
2. データベース提供事業者における産業財産権情報の取扱い
(1)現状と課題
(i) 現状
本調査では、案 C-2「情報提供事業者で非表示」を採用した場合の運用(特に、
「データ
ベース提供事業者」での対応)について更に検討を行った。
ここで「データベース提供事業者」とは、情報提供事業者のうち、特許庁及び IPDL から
提供される公報及び公報情報をもとに個人情報を含むデータベースを構築し、オンライン
検索サービスにより、当該データベースを第三者に提供している事業者とする。
公報に含まれる発明者、出願人の氏名、住所又や居所は、前述のようにデータベースと
して構築されていることから個人情報保護法の「個人データ」
(個人情報保護法第 2 条第 4
項)に該当すると考えられる。データベース提供事業者は、公報に関する個人データを
5,000 件以上 1 年間以上保有していることから、個人情報保護法に基づく個人情報取扱事
業者に該当するものと考えられ、データベース提供事業者が提供するサービスによっては、
個人情報保護法上の第三者への提供にあたるとも解釈され得る。
また、データベース提供事業者においては、特許庁から提供された情報を利用してサー
ビス提供していることがサービスとしての信頼性を担保する一因となっている。
(ii) 課題
データベース提供事業者が特許庁からの産業財産権情報を取り扱う上で課題となる事項
としては以下のとおりである。
・ 特許庁ホームページ「出願にかかる個人情報について」において特許庁としての利用
目的を提示しているが、これが出願人等に十分に認識されていない可能性がある。
・ データベース事業者が公報を取得することは問題ないが、これをさらに第三者へ提供
することを本人から明示的に同意を得ているとは言い難い。
(iii) 検討事項
前述の現状及び課題を踏まえ、本調査において検討すべき事項は以下のとおり。
◯ 特許庁から発明者等の住所など一部の情報を提供しなかった場合に、業務上大きな支
障が生じるのか。
- 98 -
◯ データベース提供事業者は個人情報の取扱いとしてオプトアウト(個人情報保護法第
23 条 2 項)の対応する必要性があるのか
◯ 特許庁が出願人等からの申告により削除対応する場合に民間事業者への削除要請の在
り方はどうあるべきか(前述の案 2-1、2-2 における対応)
(2)諸外国の状況
ここでは「III 諸外国・地域の動向」で整理した事項のうち、特に関連する内容を示す。
ドイツでは、特許法の改正において明確に第三者(情報プロバイダ)に提供することが
位置づけられた。民間事業者のバルクデータの利用に関する契約の雛形が提供されており、
利用目的などを記載する必要があるほか、情報受取人に提供したデータ(個人情報やデー
タ、添付書類の一部の削除など)に関する訂正について連絡する場合、情報受取人は影響
のあるデータファイルやこれらのデータから生み出された製品を遅滞なく修正しなくては
ならない旨が標準契約にて規定されている。
また、韓国では公開後に削除要請を行っていきたいとしている。
(3)アンケート調査及びヒアリング調査
アンケート調査によれば、前述のとおりデータベース提供事業者は、特定の発明者・出
願者を抽出するため、あるいは発明者・出願人の同姓同名を判別するために発明人及び出
願者の氏名・住所を必要としている。
ヒアリング調査を実施したところ、特定の発明者・出願者を抽出や、発明者・出願人の
同姓同名を判別する際、出願人については住所が正確に分かる方が望ましいものの、発明
者・出願人へのアクセスについては原簿等で確認することが可能な状態であれば、住所を
概略表示としても業務上大きな支障はないと回答が多かった。
個人情報の対応について、個人情報にかかるクレームをうけた事業者(3 社)も存在す
るが、クレームへの対応として情報の削除を行ったデータベース提供事業者は存在しな
かった。その理由としては、特許庁から提供された情報でありこれを変更することはデー
タベースとしての信頼性や価値を失うことから考えていないことがあげられる。
(4)データベース提供事業者における情報の取扱いの対応策について
データベース提供事業者における公報に含まれる個人情報の取扱いについては、
「V.1 公
報における個人情報に関する取扱い」の検討結果が反映された場合、将来的には公報に含
- 99 -
まれる個人情報の取扱いが現在と異なる可能性がある。
現段階においては、公報に個人情報が含まれ、これを利用する民間事業者は個人情報取
扱事業者であるという仮定で民間事業者が対応すべき事項として、民間事業者のうち、特
にデータベース提供事業者が対応すべきオプトアウトと特許庁からの要請に基づき個人情
報の利用を停止する場合の2点について検討する。
(i) 特許庁から発明者等の住所など一部の情報を提供しなかった場合に、業務上大きな
支障が生じるのか
アンケート調査やヒアリング調査、海外における住所の表記の仕方を鑑みると、公報等
において、発明者や出願人の住所が概略表示となっても業務上大きな支障は生じないと考
えられる。
したがって、前述の「V.1 公報における個人情報に関する取扱い」における対応策の考
え方を採用することは問題ないことが確認できた。
(ii) データベース提供事業者におけるオプトアウトの必要性
公報で提供された個人情報のデータベース提供事業者から第三者への提供に関しては、
現行の枠組みでは本人からの同意を得て取得した個人情報とは言いがたいため、この場合、
個人情報保護法上は、データベース提供事業者が個人情報取扱事業者として個別にオプト
アウトの対応を図るべき事案と解される。一方、データベース提供事業者は、特許庁から
受領したデータを加工・改変せずに第三者へ提供していること、あるいは公報の情報を改
変せずにそのまま用いてサービス提供することがデータベース提供事業者のサービスの信
頼性を担保しているというのが現状である。特許庁としては、このような状況を踏まえ、
公報情報の利用と保護のバランスを図りながら、データベース提供事業者への対応を促し
ていく必要がある。
また、個人情報保護法上、データベース提供事業者が発明者等からの利用停止の申請に
応じてオプトアウトの対応を図った場合でも、発明者等から個人情報の利用停止の申請を
受けた当該データベース提供事業者は、特許庁や他の事業者へ当該利用停止の申請に関す
る情報を提供・報告する義務はない。そのため、一般的に、発明者等は、各データベース
提供事業者の存在を把握した上で、各データベース事業者に対して利用停止の申請手続き
を行う必要があるため、多大な労力を要することとなる。
そのため、例えば、特許庁において発明者等から個人情報の利用停止にかかる申請を受
付、これをデータベース提供事業者へ削除や非公開の依頼を行うことも一案として考えら
- 100 -
れる35。
(iii) 特許庁からの要請により事後的に個人情報を非表示とする場合の対応について
前述(ii)及び「V.1 公報における個人情報に関する取扱い」において検討したように
特許庁において公報発行後、事後的に公開の停止を行う可能性がある。
ここでは特許庁が発明者・出願人からの申告により、個人情報(住所)を非表示(概略
表示)とする場合、これに合わせて公報入手済みの利用者(データベース提供事業者を含
む)に対して、当該情報の削除を要請する場合、特許庁が講じるべき対応について検討す
る。
ここでの想定は、データベース提供事業者には本人からではなく特許庁から利用停止の
連絡を受けることとなるため、個人情報保護法に基づく、利用停止等(個人情報保護法第
27 条)やオプトアウト(同法第 23 条 2 項)による手続きとはならない。
したがって、特許庁とデータベース事業者の関係においては、公報を入手する際に利用
規約を提示し、契約に基づく対応を促すことが考えられる。
具体的には、入手時に下記の事項を含む利用規約を提示してその同意を得ることである。
公報の利用者に対する利用規約に含める場合の文例案
※利用者とは、公報をダウンロードする全ての者を指す。
(公報に含まれる個人情報の第三者提供について)
利用者は、個人情報保護法の個人情報取扱事業者に該当する場合、個人情報保護法第 23 条第2項に基
づき、公報の個人データを第三者に提供することが可能ですが、出願人および発明者から個人情報の第
三者への提供停止を求められた場合は、当該個人データを削除し、第三者への提供を停止するものとし
ます。
(個人情報の第三者への提供の停止・削除について)
利用者は、特許庁が出願人および発明者から個人情報の提供の停止・削除を求められた旨の連絡を受け
た場合、合理的な期間および範囲でこれに応じるものとします。
一方、実効性や運用の観点から見ると、以下のような点を留意する必要がある。
・ 事後的に公報取得者への連絡するための連絡先(メールアドレス)を取得が必要
・ 利用停止を依頼することが個人情報を再提供することになりかねないこと
・ 特許庁から直接取得した者には効果があるが、さらに二次的に提供された者までには
効果がないこと、利用停止の実施にかかる報告や確認を求めるかなど実行性を担保す
る仕組みをさらに検討する必要がある
35
データベース提供事業者がオプトアウトの対応を図らなくて良いということを意図するものではない。
- 101 -
① 事後的に公報取得者への連絡するための連絡先(メールアドレス)を取得が必要
現在、インターネット公報発行サイトでは、下図のように「この情報は、当サイトの円
滑な運営のため、また、障害発生時の連絡に利用します」してメールアドレスを取得して
いるところである。例えばこれを「この情報は、当サイトの円滑な運営、個人情報の第三
者提供の利用停止にかかるご連絡、また障害発生時の連絡に利用します。」といった提示に
より、連絡先となるメールアドレスを取得する必要がある。
図 V-5 インターネット公報発行サイト(特許庁)における取得時のメールアドレス入力画面
② 特許庁からの削除要請に対する民間事業者等の対応報告など実行性の担保
特許庁から事業者に対して削除や停止の要請を行った場合、特許庁としてどこまで確認
や報告を必要とするか、事務手続きの手間などを勘案して定める必要がある。
また、特許庁から公報を直接取得した者には連絡を行うため効果があるが、二次的に提
供された者までには効果がないこと、確認の程度如何によっては実効性の低いものとなる
可能性があることに留意する必要がある。
特許庁から直接公報を取得した者までを対象とし、利用停止・削除の報告までは原則求
めないことを基本とし、必要に応じて確認をとるといったことが考えられる。
- 102 -
資料Ⅰ
アンケート調査票(様式)
情報提供者向けアンケート
- 105 -
- 106 -
- 107 -
- 108 -
- 109 -
- 110 -
- 111 -
- 112 -
- 113 -
- 114 -
情報利用者向けアンケート
- 115 -
- 116 -
- 117 -
- 118 -
- 119 -
- 120 -
- 121 -
- 122 -
- 123 -
- 124 -
資料Ⅱ
関連条文
■経済産業省設置法
(平成十一年七月十六日法律第九十九号)
(所掌事務)
第四条 経済産業省は、前条の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。
一 ~
六 (略)
七 民間における技術の開発に係る環境の整備に関すること。
八 ~ 五十九 (略)
六十 弁理士に関すること。
六十一 (略)
六十二 所掌事務に係る国際協力に関すること。
六十三 ~六十四 (略)
第三節 特許庁
(任務)
第二十四条 特許庁は、発明、実用新案、意匠及び商標に関する事務を行うことを通じて、
経済及び産業の発展を図ることを任務とする。
(所掌事務)
第二十五条 特許庁は、前条の任務を達成するため、工業所有権に関する出願書類の方式
審査、工業所有権の登録、工業所有権に関する審査、審判及び指導その他の工業所有権の
保護及び利用に関する事務並びに第四条第一項第七号、第六十号及び第六十二号に掲げる
事務をつかさどる。
■知的財産基本法
(平成十四年十二月四日法律第百二十二号)
第十九条
国は、事業者が知的財産を活用した新たな事業の創出及び当該事業の円滑な実
施を図ることができるよう、知的財産の適正な評価方法の確立、事業者に参考となるべき
経営上の指針の策定その他事業者が知的財産を有効かつ適正に活用することができる環境
の整備に必要な施策を講ずるものとする。
2
前項の施策を講ずるに当たっては、中小企業が我が国経済の活力の維持及び強化に果
たすべき重要な使命を有するものであることにかんがみ、個人による創業及び事業意欲の
ある中小企業者による新事業の開拓に対する特別の配慮がなされなければならない。
第二十条
国は、知的財産に関する内外の動向の調査及び分析を行い、必要な統計その他
の資料の作成を行うとともに、知的財産に関するデータベースの整備を図り、事業者、大
学等その他の関係者にインターネットその他の高度情報通信ネットワークの利用を通じて
迅速に情報を提供できるよう必要な施策を講ずるものとする。
- 127 -
■特許法
(昭和三十四年四月十三日法律第百二十一号)
(特許出願)
第三十六条
特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に
提出しなければならない。
一
特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二
発明者の氏名及び住所又は居所
2
願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書を添付しなければならな
い。
3
前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一
発明の名称
二
図面の簡単な説明
三
発明の詳細な説明
4
前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならな
い。
一
経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知
識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるこ
と。
二
その発明に関連する文献公知発明(第二十九条第一項第三号に掲げる発明をいう。以
下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知つているも
のがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明
に関する情報の所在を記載したものであること。
5
第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許
を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければなら
ない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である
記載となることを妨げない。
6
第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一
特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
二
特許を受けようとする発明が明確であること。
三
請求項ごとの記載が簡潔であること。
四
その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。
7
第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した発明の概要その他
経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。
(出願公開)
第六十四条
特許庁長官は、特許出願の日から一年六月を経過したときは、特許掲載公報
の発行をしたものを除き、その特許出願について出願公開をしなければならない。次条第
一項に規定する出願公開の請求があつたときも、同様とする。
2
出願公開は、次に掲げる事項を特許公報に掲載することにより行う。ただし、第四号
から第六号までに掲げる事項については、当該事項を特許公報に掲載することが公の秩序
又は善良の風俗を害するおそれがあると特許庁長官が認めるときは、この限りでない。
一
特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二
特許出願の番号及び年月日
- 128 -
三
発明者の氏名及び住所又は居所
四
願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項並びに図面の内容
五
願書に添付した要約書に記載した事項
六
外国語書面出願にあつては、外国語書面及び外国語要約書面に記載した事項
七
出願公開の番号及び年月日
八
前各号に掲げるもののほか、必要な事項
3
特許庁長官は、願書に添付した要約書の記載が第三十六条第七項の規定に適合しない
ときその他必要があると認めるときは、前項第五号の要約書に記載した事項に代えて、自
ら作成した事項を特許公報に掲載することができる。
(特許権の設定の登録)
第六十六条
特許権は、設定の登録により発生する。
2
第百七条第一項の規定による第一年から第三年までの各年分の特許料の納付又はそ
の納付の免除若しくは猶予があつたときは、特許権の設定の登録をする。
3
前項の登録があつたときは、次に掲げる事項を特許公報に掲載しなければならない。
ただし、第五号に掲げる事項については、その特許出願について出願公開がされていると
きは、この限りでない。
一
特許権者の氏名又は名称及び住所又は居所
二
特許出願の番号及び年月日
三
発明者の氏名及び住所又は居所
四
願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項並びに図面の内容
五
願書に添付した要約書に記載した事項
六
特許番号及び設定の登録の年月日
七
前各号に掲げるもののほか、必要な事項
4
第六十四条第三項の規定は、前項の規定により同項第五号の要約書に記載した事項を
特許公報に掲載する場合に準用する。
(審決)
第百五十七条
審決があつたときは、審判は、終了する。
2
審決は、次に掲げる事項を記載した文書をもつて行わなければならない。
一
審判の番号
二
当事者及び参加人並びに代理人の氏名又は名称及び住所又は居所
三
審判事件の表示
四
審決の結論及び理由
五
審決の年月日
3
特許庁長官は、審決があつたときは、審決の謄本を当事者、参加人及び審判に参加を
申請してその申請を拒否された者に送達しなければならない。
(証明等の請求)
第百八十六条
何人も、特許庁長官に対し、特許に関し、証明、書類の謄本若しくは抄本
の交付、書類の閲覧若しくは謄写又は特許原簿のうち磁気テープをもつて調製した部分に
記録されている事項を記載した書類の交付を請求することができる。ただし、次に掲げる
書類については、特許庁長官が秘密を保持する必要があると認めるときは、この限りでな
い。
- 129 -
一
願書、願書に添付した明細書、特許請求の範囲、図面若しくは要約書若しくは外国語
書面若しくは外国語要約書面若しくは特許出願の審査に係る書類(特許権の設定の登録又
は出願公開がされたものを除く。)又は第六十七条の二第二項の資料
二
拒絶査定不服審判に係る書類(当該事件に係る特許出願について特許権の設定の登録
又は出願公開がされたものを除く。)
三
特許無効審判若しくは延長登録無効審判又はこれらの審判の確定審決に対する再審
に係る書類であつて、当事者又は参加人から当該当事者又は参加人の保有する営業秘密が
記載された旨の申出があつたもの
四
個人の名誉又は生活の平穏を害するおそれがあるもの
五
公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるもの
2
特許庁長官は、前項第一号から第四号までに掲げる書類について、同項本文の請求を
認めるときは、当該書類を提出した者に対し、その旨及びその理由を通知しなければなら
ない。
3
特許に関する書類及び特許原簿のうち磁気テープをもつて調製した部分については、
行政機関の保有する情報の公開に関する法律 (平成十一年法律第四十二号)の規定は、適
用しない。
4
特許に関する書類及び特許原簿のうち磁気テープをもつて調製した部分に記録され
ている保有個人情報(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律 (平成十五年法律
第五十八号)第二条第三項 に規定する保有個人情報をいう。)については、同法第四章 の
規定は、適用しない。
(特許公報)
第百九十三条
特許庁は、特許公報を発行する。
2
特許公報には、この法律に規定するもののほか、次に掲げる事項を掲載しなければな
らない。
一
出願公開後における拒絶をすべき旨の査定若しくは特許出願の放棄、取下げ若しくは
却下又は特許権の存続期間の延長登録の出願の取下げ
二
出願公開後における特許を受ける権利の承継
三
出願公開後における第十七条の二第一項の規定による願書に添付した明細書、特許請
求の範囲又は図面の補正(同項ただし書各号の規定によりしたものにあつては、誤訳訂正
書の提出によるものに限る。)
四
特許権の消滅(存続期間の満了によるもの及び第百十二条第四項又は第五項の規定に
よるものを除く。)又は回復(第百十二条の二第二項の規定によるものに限る。)
五
審判若しくは再審の請求又はこれらの取下げ
六
審判又は再審の確定審決(特許権の設定の登録又は出願公開がされたものに限る。)
七
訂正した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項並びに図面の内容(訂正をすべき
旨の確定した決定又は確定審決があつたものに限る。)
八
裁定の請求若しくはその取下げ又は裁定
九
第百七十八条第一項の訴えについての確定判決(特許権の設定の登録又は出願公開が
されたものに限る。)
- 130 -
■特許法施行規則
(昭和三十五年三月八日通商産業省令第十号)
(願書の様式)
第二十三条 願書(次項から第五項までの願書を除く。)は、様式第二十六により作成しな
ければならない。
2 ~6 (略)
様式第 26(第 23 条関係)
【書類名】特許願
【整理番号】
(【提出日】平成
年
月
【あて先】特許庁長官
(【国際特許分類】)
【発明者】
【住所又は居所】
【氏名】
【特許出願人】
【識別番号】
【住所又は居所】
【氏名又は名称】
(【国籍】)
【代理人】
【識別番号】
【住所又は居所】
【氏名又は名称】
(【手数料の表示】)
(【予納台帳番号】)
(【納付金額】)
【提出物件の目録】
【物件名】特許請求の範囲
【物件名】明細書
【物件名】(図面
【物件名】要約書
ST-9
日)
殿
(72)
(71)
(74)
1
1
1)
1
■パリ条約
第四条の3 発明者掲載権
発明者は、特許証に発明者として記載される権利を有する。
- 131 -
■行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律
(平成十四年十二月十三日法律第百五十一号)
(国の手続等に係る情報システムの整備等)
第八条
国は、行政機関等に係る手続等における情報通信の技術の利用の推進を図るため、
情報システムの整備その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
2
国は、前項の措置を講ずるに当たっては、情報通信の技術の利用における安全性及び
信頼性を確保するよう努めなければならない。
3
国は、行政機関等に係る手続等における情報通信の技術の利用の推進に当たっては、
当該手続等の簡素化又は合理化を図るよう努めなければならない。
■工業所有権に関する手続等の特例に関する法律
(平成二年六月十三日法律第三十号)
(磁気ディスク等による公報の発行)
第十三条
特許法第百九十三条 の特許公報、実用新案法第五十三条 の実用新案公報、意
匠法第六十六条 の意匠公報又は商標法第七十五条 の商標公報(以下この条において「特
許公報等」という。)は、経済産業省令で定めるところにより、磁気ディスクをもって発行
することができる。
2
特許公報等の発行は、特許公報等に掲載すべき事項であって特許庁の使用に係る電子
計算機に備えられたファイルに記録された情報を、経済産業省令で定めるところにより、
電子情報処理組織を使用して送信し、これを当該情報の提供を受けようとする者の使用に
係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法によりすることができる。
3
前項に規定する方法による特許公報等の発行は、特許公報等に掲載すべき事項を特許
庁の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに入力し、当該ファイルに記録された情
報の提供を受けようとする者の求めに応じてその使用に係る電子計算機に特許庁の使用に
係る電子計算機から送信し得る状態となった時に行われたものとする。
■工業所有権に関する手続等の特例に関する法律施行規則
(平成二年九月十二日通商産業省令第四十一号)
(読み取り専用光ディスク等による公報の発行)
第三十五条
法第十三条第一項 に規定する磁気ディスクは、読み取り専用光ディスクと
する。
2
法第十三条第二項 の規定により特許公報等に掲載すべき事項であつて特許庁の使用
に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された情報を電子情報処理組織を使用して
送信する場合においては、当該情報に電子署名を行い、インターネットに接続された自動
公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のう
ち自動公衆送信(公衆によつて直接受信されることを目的として公衆からの求めに応じ自
動的に送信を行うことをいい、放送又は有線放送に該当するものを除く。以下この項にお
いて同じ。)の用に供する部分に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信
する機能を有する装置をいう。)を使用するものとする。
- 132 -
■行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律
(平成十五年五月三十日法律第五十八号)
(個人情報の保有の制限等)
第三条 行政機関は、個人情報を保有するに当たっては、法令の定める所掌事務を遂行す
るため必要な場合に限り、かつ、その利用の目的をできる限り特定しなければならない。
(利用目的の明示)
第四条 行政機関は、本人から直接書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっ
ては認識することができない方式で作られる記録(第二十四条及び第五十五条において「電
磁的記録」という。)を含む。)に記録された当該本人の個人情報を取得するときは、次に
掲げる場合を除き、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。
一~三 (略)
四 取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められるとき。
(利用及び提供の制限)
第八条 行政機関の長は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個
人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。
2~4 (略)
(正確性の確保)
第五条 行政機関の長(第二条第一項第四号及び第五号の政令で定める機関にあっては、
その機関ごとに政令で定める者をいう。以下同じ。)は、利用目的の達成に必要な範囲内
で、保有個人情報が過去又は現在の事実と合致するよう努めなければならない。
(安全確保の措置)
第六条 行政機関の長は、保有個人情報の漏えい、滅失又はき損の防止その他の保有個人
情報の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。
2 前項の規定は、行政機関から個人情報の取扱いの委託を受けた者が受託した業務を行
う場合について準用する。
(従事者の義務)
第七条 個人情報の取扱いに従事する行政機関の職員若しくは職員であった者又は前条第
二項の受託業務に従事している者若しくは従事していた者は、その業務に関して知り得た
個人情報の内容をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に利用してはならない。
(利用及び提供の制限)
第八条 行政機関の長は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個
人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。
2 前項の規定にかかわらず、行政機関の長は、次の各号のいずれかに該当すると認める
ときは、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供することがで
きる。ただし、保有個人情報を利用目的以外の目的のために自ら利用し、又は提供するこ
とによって、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるとき
- 133 -
は、この限りでない。
一 本人の同意があるとき、又は本人に提供するとき。
二 行政機関が法令の定める所掌事務の遂行に必要な限度で保有個人情報を内部で利用す
る場合であって、当該保有個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。
三 他の行政機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人に保有個人情報
を提供する場合において、保有個人情報の提供を受ける者が、法令の定める事務又は業務
の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、当該個人情報を利用すること
について相当な理由のあるとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、専ら統計の作成又は学術研究の目的のために保有個人情
報を提供するとき、本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるとき、その
他保有個人情報を提供することについて特別の理由のあるとき。
3 前項の規定は、保有個人情報の利用又は提供を制限する他の法令の規定の適用を妨げ
るものではない。
4 行政機関の長は、個人の権利利益を保護するため特に必要があると認めるときは、保
有個人情報の利用目的以外の目的のための行政機関の内部における利用を特定の部局又は
機関に限るものとする。
(保有個人情報の提供を受ける者に対する措置要求)
第九条 行政機関の長は、前条第二項第三号又は第四号の規定に基づき、保有個人情報を
提供する場合において、必要があると認めるときは、保有個人情報の提供を受ける者に対
し、提供に係る個人情報について、その利用の目的若しくは方法の制限その他必要な制限
を付し、又はその漏えいの防止その他の個人情報の適切な管理のために必要な措置を講ず
ることを求めるものとする。
(個人情報ファイルの保有等に関する事前通知)
第十条 行政機関(会計検査院を除く。以下この条、第五十条及び第五十一条において同
じ。)が個人情報ファイルを保有しようとするときは、当該行政機関の長は、あらかじめ、
総務大臣に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。通知した事項を変更しよう
とするときも、同様とする。
一 個人情報ファイルの名称
二 当該行政機関の名称及び個人情報ファイルが利用に供される事務をつかさどる組織の
名称
三 個人情報ファイルの利用目的
四 個人情報ファイルに記録される項目(以下この章において「記録項目」という。)及び
本人(他の個人の氏名、生年月日その他の記述等によらないで検索し得る者に限る。次項
第九号において同じ。)として個人情報ファイルに記録される個人の範囲(以下この章にお
いて「記録範囲」という。)
五 個人情報ファイルに記録される個人情報(以下この章において「記録情報」という。)
の収集方法
六 記録情報を当該行政機関以外の者に経常的に提供する場合には、その提供先
七 次条第三項の規定に基づき、記録項目の一部若しくは第五号若しくは前号に掲げる事
項を個人情報ファイル簿に記載しないこととするとき、又は個人情報ファイルを個人情報
ファイル簿に掲載しないこととするときは、その旨
八 第十二条第一項、第二十七条第一項又は第三十六条第一項の規定による請求を受理す
- 134 -
る組織の名称及び所在地
九 第二十七条第一項ただし書又は第三十六条第一項ただし書に該当するときは、その旨
十 その他政令で定める事項
2~3 (略)
(個人情報ファイル簿の作成及び公表)
第十一条 行政機関の長は、政令で定めるところにより、当該行政機関が保有している個
人情報ファイルについて、それぞれ前条第一項第一号から第六号まで、第八号及び第九号
に掲げる事項その他政令で定める事項を記載した帳簿(第三項において「個人情報ファイ
ル簿」という。)を作成し、公表しなければならない。
2~3 (略)
■個人情報の保護に関する法律
(平成十五年五月三十日法律第五十七号)
第二条
(略)
2 この法律において「個人情報データベース等」とは、個人情報を含む情報の集合物で
あって、次に掲げるものをいう。
一 特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成した
もの
二 前号に掲げるもののほか、特定の個人情報を容易に検索することができるように体系
的に構成したものとして政令で定めるもの
(略)
5 この法律において「保有個人データ」とは、個人情報取扱事業者が、開示、内容の訂正、
追加又は削除、利用の停止、消去及び第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有
する個人データであって、その存否が明らかになることにより公益その他の利益が害され
るものとして政令で定めるもの又は1年以内の政令で定める期間以内に消去することとな
るもの以外のものをいう。
第四章
個人情報取扱事業者の義務等
第一節 個人情報取扱事業者の義務
(利用目的の特定)
第十五条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以
下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。
2
個人情報取扱事業者は、利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と相当の関
連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。
(利用目的による制限)
第十六条 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により
特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。
2
個人情報取扱事業者は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を
- 135 -
承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承
継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り
扱ってはならない。
3
前二項の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。
一
法令に基づく場合
二
人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得る
ことが困難であるとき。
三
公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、
本人の同意を得ることが困難であるとき。
四
国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行
することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事
務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
(適正な取得)
第十七条
個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはな
らない。
(取得に際しての利用目的の通知等)
第十八条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的
を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなけ
ればならない。
2
個人情報取扱事業者は、前項の規定にかかわらず、本人との間で契約を締結すること
に伴って契約書その他の書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識す
ることができない方式で作られる記録を含む。以下この項において同じ。)に記載された当
該本人の個人情報を取得する場合その他本人から直接書面に記載された当該本人の個人情
報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。
ただし、人の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要がある場合は、この限りでな
い。
3
個人情報取扱事業者は、利用目的を変更した場合は、変更された利用目的について、
本人に通知し、又は公表しなければならない。
4
前三項の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。
一
利用目的を本人に通知し、又は公表することにより本人又は第三者の生命、身体、財
産その他の権利利益を害するおそれがある場合
二
利用目的を本人に通知し、又は公表することにより当該個人情報取扱事業者の権利又
は正当な利益を害するおそれがある場合
三
国の機関又は地方公共団体が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必
要がある場合であって、利用目的を本人に通知し、又は公表することにより当該事務の遂
行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
四
取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合
(第三者提供の制限)
第二十三条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意
を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
- 136 -
一 法令に基づく場合
二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得る
ことが困難であるとき。
三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、
本人の同意を得ることが困難であるとき。
四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行す
ることに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務
の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
2 個人情報取扱事業者は、第三者に提供される個人データについて、本人の求めに応じ
て当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止することとしている場合で
あって、次に掲げる事項について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得
る状態に置いているときは、前項の規定にかかわらず、当該個人データを第三者に提供す
ることができる。
一 第三者への提供を利用目的とすること。
二 第三者に提供される個人データの項目
三 第三者への提供の手段又は方法
四 本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止するこ
と。
(利用停止等)
第二十七条 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データが
第十六条の規定に違反して取り扱われているという理由又は第十七条の規定に違反して取
得されたものであるという理由によって、当該保有個人データの利用の停止又は消去(以
下この条において「利用停止等」という。)を求められた場合であって、その求めに理由が
あることが判明したときは、違反を是正するために必要な限度で、遅滞なく、当該保有個
人データの利用停止等を行わなければならない。ただし、当該保有個人データの利用停止
等に多額の費用を要する場合その他の利用停止等を行うことが困難な場合であって、本人
の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りでない。
2
個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データが第二十三
条第一項の規定に違反して第三者に提供されているという理由によって、当該保有個人
データの第三者への提供の停止を求められた場合であって、その求めに理由があることが
判明したときは、遅滞なく、当該保有個人データの第三者への提供を停止しなければなら
ない。ただし、当該保有個人データの第三者への提供の停止に多額の費用を要する場合そ
の他の第三者への提供を停止することが困難な場合であって、本人の権利利益を保護する
ため必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りでない。
3
個人情報取扱事業者は、第一項の規定に基づき求められた保有個人データの全部若し
くは一部について利用停止等を行ったとき若しくは利用停止等を行わない旨の決定をした
とき、又は前項の規定に基づき求められた保有個人データの全部若しくは一部について第
三者への提供を停止したとき若しくは第三者への提供を停止しない旨の決定をしたときは、
本人に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。
(理由の説明)
- 137 -
第二十八条 個人情報取扱事業者は、第二十四条第三項、第二十五条第二項、第二十六条
第二項又は前条第三項の規定により、本人から求められた措置の全部又は一部について、
その措置をとらない旨を通知する場合又はその措置と異なる措置をとる旨を通知する場合
は、本人に対し、その理由を説明するよう努めなければならない。
(開示等の求めに応じる手続)
第二十九条 個人情報取扱事業者は、第二十四条第二項、第二十五条第一項、第二十六条
第一項又は第二十七条第一項若しくは第二項の規定による求め(以下この条において「開
示等の求め」という。)に関し、政令で定めるところにより、その求めを受け付ける方法を
定めることができる。この場合において、本人は、当該方法に従って、開示等の求めを行
わなければならない。
2
個人情報取扱事業者は、本人に対し、開示等の求めに関し、その対象となる保有個人
データを特定するに足りる事項の提示を求めることができる。この場合において、個人情
報取扱事業者は、本人が容易かつ的確に開示等の求めをすることができるよう、当該保有
個人データの特定に資する情報の提供その他本人の利便を考慮した適切な措置をとらなけ
ればならない。
3
開示等の求めは、政令で定めるところにより、代理人によってすることができる。
4
個人情報取扱事業者は、前三項の規定に基づき開示等の求めに応じる手続を定めるに
当たっては、本人に過重な負担を課するものとならないよう配慮しなければならない。
(手数料)
第三十条 個人情報取扱事業者は、第二十四条第二項の規定による利用目的の通知又は第
二十五条第一項の規定による開示を求められたときは、当該措置の実施に関し、手数料を
徴収することができる。
2
個人情報取扱事業者は、前項の規定により手数料を徴収する場合は、実費を勘案して
合理的であると認められる範囲内において、その手数料の額を定めなければならない。
■工業所有権に関する手続等の特例に関する法律
(平成二年六月十三日法律第三十号)
(ファイルに記録されている事項の閲覧等の請求)
第十二条
何人も、特許庁長官に対し、次に掲げる事項について、経済産業省令で定める
ところにより電子情報処理組織を使用して行う閲覧を請求することができる。ただし、国
際出願(国際出願法第二条 に規定する国際出願をいう。以下同じ。)に係る事項について
は、この限りでない。
一
ファイルに記録されている事項(経済産業省令で定める手続に係る事項に限る。)
二
特許法第二十七条第一項 の特許原簿、実用新案法第四十九条第一項 の実用新案原簿、
意匠法第六十一条第一項 の意匠原簿又は商標法第七十一条第一項 (同法第六十八条の二
十七 において読み替えて適用する場合を含む。)の商標原簿のうち磁気テープ(これに準
ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物を含む。)をもって調製さ
れた部分に記録されている事項であって経済産業省令で定めるもの
2
何人も、特許庁長官に対し、ファイルに記録されている事項を記載した書類の交付を
- 138 -
請求することができる。ただし、国際出願に係る事項については、この限りでない。
3
特許法第百八十六条第一項 ただし書及び第二項 (実用新案法第五十五条第一項 に
おいて準用する場合を含む。)、意匠法第六十三条第一項 ただし書及び第二項 並びに商標
法第七十二条第一項 ただし書及び第二項 の規定は、前二項の規定による閲覧又は書類の
交付に準用する。
4
ファイルについては、行政機関の保有する情報の公開に関する法律 (平成十一年法
律第四十二号)の規定は、適用しない。
5
ファイルに記録されている保有個人情報(行政機関の保有する個人情報の保護に関す
る法律 (平成十五年法律第五十八号)第二条第三項 に規定する保有個人情報をいう。)に
ついては、同法第四章 の規定は、適用しない。
- 139 -
禁 無 断 転 載
平成 25 年度
特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書
今後のインターネット公報の在り方に関する
調査研究報告書
平成 26 年 2 月
請負先
株式会社 価値総合研究所
〒100-0004 東京都千代田区大手町二丁目 2 番 1 号
URL
電話
03-5205-7900
FAX
03-5205-7922
http:// www.vmi.co.jp
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