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月と地球 - 公益財団法人日本宇宙少年団

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月と地球 - 公益財団法人日本宇宙少年団
(天体2)
クレーターの上に立って地球を見よう!
月と地球
<目
1.ねらい<目的と概要> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2.カリキュラム実施のための情報やヒント ・・・・・・・1
2-1.観測
2-2.講義・実験
3.カリキュラム手順・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
3-1.観測
3-2.(発展その1)クレーターの上に輝く地球は?
3-3.(発展その2)クレーターの上に輝く地球は?
4.安全対策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
5.科学する心を育てるヒント・・・・・・・・・・・・・・・5
次>
6.この教材を行う(用いる)ことのできる子どものレベル
・・・・5
7.その教材を行う(用いる)ことのできる分団の
経験年数・・・・5
8.関連項目 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
8-1.学習指導要領との関連
8-2.活動総覧(活動マップ)
8-3.教材系統図(カリキュラムマップ)
9.資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
本教材は宇宙とのつながりを軸として科学を身近に感じてもらうために作った
科学教材です。本教材の利用による事故等については一切責任を持ちかねます
ので、本教材の利用は、経験のある指導者の指導の下に行って下さい。
2005年(平成17年)3月31日
日本宇宙少年団
教材検討グループ
クレーターの上に立って地球を見よう!
- 月と地球 -
1.
ねらい<目的と概要>
月を望遠鏡で観測して、その美しさや不思議さを堪能してもらう。
月の満ち欠けは、月、太陽、地球の位置関係によるものだが、頭では分かっても、なかなか現実
のものとしては実感できない。そこで、実際にこれらを観察すると同時に、模型を作ってその位置
関係を立体的に体感させる。
望遠鏡を使って月を観察して、月のクレーターをスケッチし、その模型を作成することにより月
面の立体的な地形を実感する。
(以下は小学校高学年以上)
(発展その1)
紙人形を地球儀、月球儀及びクレーター模型の上に置いてみることにより、それぞれの天
体がどの方向、どの高度に見えるかを考える。こうして、クレーターの上に輝く地球をイメ
ージできるようにする。
(発展その2)
地球から見る月の動きと、月から見る地球の動きや様子の関係を考える。
2.カリキュラム実施のための情報やヒント
2-1[観測]
1)天体観測プログラムにおいては、当日の天体情報の把握が最も重要であるので、そのための
情報入手源を紹介する。
ⅰ.天文年鑑(誠文堂新光社:945 円)1年間の天文現象の予報を掲載。観測者必携。
ⅱ.天文手帳(地人書館:840 円)
〃
ⅲ.天文ガイド(誠文堂新光社:700 円)1ヶ月の天文現象の予報とトピックの解説。
望遠鏡や双眼鏡の宣伝、紹介記事が豊富。
ⅳ.月刊天文(地人書館:700 円)1ヶ月の天文現象の予報とトピックの解説。
Ⅴ.ジュニアサイエンティスト(日本宇宙少年団:500 円)毎月ごとの天体観測の情報も
載っています。
ⅵ.国立天文台のウェッブサイト
「ほしぞら情報
トップページは
http://www.nao.ac.jp/
、この中の
http://www.nao.ac.jp/hoshizora/index.html」に毎月の観測に適し
た星空の情報が掲載されています。
2)望遠鏡の準備
ⅰ.屈折望遠鏡(口径 6cm~8cm)
月面の中倍率(100 倍くらい)までの観測ならこの程度で大丈夫。赤道儀方式の架台が
望ましい。
ⅱ.反射望遠鏡(口径 20cm 程度)
1
シュミット・カセグレンタイプ(いわゆるシュミカセ)がコンパクトで扱いやすく値段
も手頃である。惑星観測には、このくらいの口径の方が有利。赤道儀方式の架台が望ま
しい。
2―2[講義・実験]
1)クレーター模型
自分が見たものを立体的に再現し理解するために、観測時に描いたスケッチを元に紙粘土で
作成する。もともと一方向からしか見えないものを想像して作るものなので、厳密さより、
子供のイマジネーションを大切にしたい。
2)紙人形
月面上、地球上に立つ人間を表すために使うので、基本的には紙切れ1枚で小さく作りたい。
3.カリキュラム手順
3-1[観測]
1)望遠鏡を使って月面のクレーターを観測し、そのスケッチを行う。
ⅰ.スケッチについて
天体観望会などでただ漠然と望遠鏡を見る場合と比べて、スケッチという目的を持って
観察をさせると、子供たちは強く集中して望遠鏡をのぞき込むようになる。また、スケッ
チさせることにより、子供によっては全く見えていなかったことに気づかされることもあ
る。
望遠鏡当たりの人数が多い場合は、10 秒程度確認してはスケッチ用紙に記入させる、
といった方法でも対応可能である。また、実際のスケッチの前に、簡単な練習をさせた方
がまごつかなくてよい。学校の授業ではないので、子供が楽しむことを最優先にしたい。
ⅱ.クレーターの選択
その日見える最もきれいな、又は特徴のあるクレーターを好みにより選べばよいが、
後々の議論のことを考えると、月面の中央近く(中央の入り江付近)のクレーター(例え
ばプトレマイオスやヒッパルコスなど)を選択する方が楽かもしれない。(P.6、資料1
参照)
なお望遠鏡で眺めて陰影がありかつ変化があって美しいのは月齢8のころ(半月を過ぎた当
たり)であると言う人が多いので、最初に子供たちに見てもらう月はこのころがねらい目かも
知れない。
2)スケッチをもとに、紙ねんどによりクレーターの立体模型を作成する。
ⅰ.月面地形についての解説
天文年鑑にある程度詳しい月面図が掲載されている。
地球上の市や町と比較してどの程度の大きさであるのか、子供たちが理解できるように
工夫をしてみたい。
ⅱ.主なクレーターの直径
プトレマイオス
153km
アルザケール
97km
クラヴィウス
225km
コペルニクス
93km
アルフォンスス
110km
ヒッパルコス
150km
ティコ
85km
アルキメデス
83km
http://www.ne.jp/asahi/stellar/scenes/moon.html
等にクレーターの直径を含めた解説があるので参考にできる。
2
3)できあがったクレーターに自分が立ったつもりになって(小さな砂粒を自分に見立てるのも一
興)、想像をめぐらせてみよう。
ⅰ.はるか数十 km 向こうに存在する、自分を取り囲む高さ数千 m の巨大な壁。(阿蘇の外
輪山を想像してみよう・・・・ただし南北 25km、東西 18km、高さ 1km)
ⅱ.そこにぽつんと立っている自分。
ⅲ.そして、その自分を上から見つめている僕。
ⅳ.砂粒のような自分が空を見上げると、そこには僕の巨大な顔が・・・・。
つまり、月面のクレーターや海を、地球から見上げて観察するということは、はるかに高い
場所(地球)から月を見下ろしているのと同じだということを理解させたい。
<以下の(発展
その1,その2)は小学校高学年以上>
3-2
その1)クレーターの上に輝く地球は?
(発展
カリキュラムⅠで月を見上げた僕と月・太陽の位置関係、カリキュラムⅡで作成したクレータ
ー上で地球を見上げる自分と地球・太陽の位置関係を考える。
1)地球儀上で自分たちが立っている位置を確認する。
2)月球儀上で、作成したクレーターの位置を確認する。
3)人間の紙人形を地球儀と月球儀、およびクレーターに貼り付ける。
(チェックポイント)
ⅰ.人形の置き方について具体的な指示はせずに、子供自身に置かせてみる。
(人形を寝かせた子がいたら、それは人間のどんな姿勢に対応するのか議論して
みよう)
ⅱ.立たせた人形の体の方向、地面に垂直に立っているか、等をチェックしよう。
4)カリキュラムⅠにおいて確認した地球、月、太陽の位置関係をもとに、その人形にとって
どの方向に地球、月、太陽があるかを考える。
(チェックポイント)
ⅰ.地球上においた人形が太陽の方向を向いていれば、左方向のどの角度、どの高
度に月があるかを確かめ、それが先ほど実際に月と太陽を観測したときの状況
と一致しているか考える。
ⅱ.同様の議論を月面上に置いた人形についても行う。
ⅲ.上記の議論から、クレーターに置いた人形から見て、どの方向、どの高度に地
球が見えているはずか議論する。
ⅳ.その位置に地球の小さな粘土模型を置いてみるのもおもしろい。
3-3
(発展
(発展
(発展
その2)クレーターの上に輝く地球は?
その1)において、クレーターから見上げる地球がどの位置に見えるのか考えたが、
その2)では、その地球がどのように変化して見え、動いていくのか考える。
1)月は満ちかけはするが、常に同じ模様(海、山脈、クレーターなど)が見えており、反対
側がみえないことを説明する。
3
2)「天体Ⅰ
月の満ち欠けの観測」で作成した模型により、月は1回公転する間に1回自転
するため、常に片側だけを地球に向けており、地球からは月の裏側が見えないことを説明
し、理解させる。
3)数日後の月と地球の位置関係において、もう一度(発展
その1)における議論を行い、
地球がどの位置に見えるかを考えさせる。
(チェックポイント)
ⅰ.数日たった場合においても上記2)の事実と(発展
その1)の議論により数
日前と同じ位置に地球が見えることを確認する。
(理解を容易にするヒント)
ⅱ.(発展
その1)の議論において、注目するクレーターを月の中央あたり(中
央の入り江付近)のクレーターにするとよい。(例えばプトレマイオスかヒッ
パルコス)こうすると、月面から見える地球は頭の真上に見えることになる。
→
地球からみると、月の中央付近に立っている人の頭のてっぺんが見える
ⅲ.数日後においても、月の模様は変わらないので、やはり月の中央に先日のクレ
ーターがあり、そこに人が立っていて、その頭のてっぺんが見えている。逆に
その人からは頭の真上に数日前と同じように地球が見えている。
4)以上の議論から、月が裏側を見せないという事実だけから以下の認識が得られること
を理解させる。
地球から見ると、月は1日余りで空を1回転し(見かけ上の公転)、こちら側の面だ
けを地球に見せる(見かけ上自転しない)。
一方、月から見ると、地球は天空上の1カ所にとどまり(見かけ上公転しない)、約
24 時間で1回転する(見かけ上の自転)。
(チェックポイント)
ⅰ.つまり、地球上では月の出、月の入りが毎日起こっているが、月面上において
は、地球の出、地球の入りは起こらない。
ⅱ.地球に面した側においては、永遠に地球が見えており、月の裏側においては永
遠に地球は見えない。これが、我々地球人が月の裏側を見ることができないこ
との月面人の立場に立った解釈である。
※より正確に言うと、月の自転軸が軌道面に垂直でないことなどから生じる月の
「秤動」現象により月面全体の59%が地球から観測可能である。これに伴い月
から見た地球の天球上における位置も若干ふらついている。
4.安全対策(子どもに危険を予知させる指導を含む)
望遠鏡や双眼鏡で太陽を直視する事故が起こらないよう、日没までの全時間、全機器について、
リーダーを専任で付けておくこと。対物レンズキャップを必ず装着しておく。特に、望遠鏡のファ
インダーは、リーダー側も見落としやすく、子供は小さなものなので好奇心でのぞき込みやすいの
で注意する。
夜間の観測では原則として一人一人に懐中電灯を持たせること。その際、他人の目に光が入ると
星が見えなくなることを教えて、足下のみを照らすように指導する。
リーダーは観測場所を事前に日中と夜間について視認性や安全性を確認すること。観測時には、
あらかじめ時刻を決めておいてその時刻になったら点呼すると良い。
4
5.科学する心を育てるための具体的なヒント
望遠鏡で見る月の美しさをじっくりあじあわせてあげることが大切。
望遠鏡でクレーターを観察するとき、しばらくしてからクレーターの影を眺めさせる。クレータ
ーの上に立つ自分を想像できるように模型を使わせて自由に考えさせる。「月に立って地球を見
る」という視点をうまく導入できると想像がふくらんで来る。月に立った宇宙飛行士になったつも
りになれるかどうか。地球から月を見ているときのように、月から見た地球の満ち欠けを想像する
ことができる。
また、子供たち同士で、月の長い一日について話し合ってみるのも楽しい。
6.この教材を用いることのできる子どものレベル
小学校低学年から可能である。(発展
その1,その2)は小学校高学年以上。
7.この教材を用いることができる活動団体の経験年数
結成したばかりの団体で対応は可能であるが、天体カリキュラムⅠを行った後にカリキュラムⅡ
を行う。リーダーが望遠鏡の操作に慣れておく必要がある。または地元のアマチュア天文同好会に
依頼するなどの方策をとる。
8.関連項目
8-1.学習指導要領との関連
小学校編:小学4年(C)「地球と宇宙」の
月や星
中学校編:第2分野(6)地球と宇宙
高等学校編:地学(1)
8-2.活動総覧(活動マップ):「月を見よう」
8-3.教材系統図(カリキュラムマップ):「2
天体を知ろう(学習)」
2.2太陽系「地球と月」
8-4.キーワード:月、満ち欠け、月齢、クレーター、自転、公転
5
9.資料
(資料1)「月面とその観測」中野
繁著(発行:恒星社厚生閣)より
教材提供 :日本宇宙少年団おおいた分団
追記、編集:「宇宙航空分野における次世代人材育成のためのリーダー育成支援」検討委員会
日本宇宙少年団 教材検討グループ
お問合せ先:財団法人日本宇宙少年団
TEL.03-5542-3254 FAX.03-3551-4870
e-mail [email protected]
発行
:宇宙航空研究開発機構 広報部
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