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の結晶化過程の研究(PDF形式、290kバイト)
Signal-to-News IR/Raman Customer News Letter FT-IRによるPoly(ethylene-2,6-naphthalate)の結晶化 過程の研究1) サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 IR/Raman 営業部 編集発行 : マーケティング部 M98003 はじめに 結果および考察 y FT-IR FT-IR分光法は、高分子鎖のコンフォメーションの情報が得 PENの結晶にはα-およびβ-結晶がある。高分子のため、そ y in-situ られるため、固体、液体及びゲル高分子のキャラクタリゼー シ ョ ン に 広 く 用 い ら れ て い る 。 2-6) FT-IR を 用 い て Poly (ethylene terephthalate)(PET)の研究をした例は多いが、3-5) PET と 構 造 が 類 似しているPoly(ethylene-2,6-naphthalate) (PEN)についての研究はほとんど無い。 ここでは、in-situ の FT-IR測定を行い、PENの等温溶融結晶 れらの結晶は単独では存在せず、非晶と混ざっていたり、あ るいは2つの結晶が混ざりあったりして存在する。ゆえに純粋 なα-やβ-結晶のスペクトルを得るには、差スペクトルを取る Key Words y PEN y 結晶化 y ホットステージ 化の際に起こるコンフォメーション変化を調べた結果を紹介 する。 実験 帝人から供与された分子量 Mn が21000である PEN (図1) をサンプルとして用いた。融点は256℃であった。KBr 結晶 板に PEN を少量置き、ホットプレートで溶融して薄膜を作り サンプルとした。そのサンプルをもう一つの KBr 結晶板で挟 み、メトラートレド製 FT82HT ホットステージに入れ、そのホッ トステージをDTGS検出器を備えたサーモフィッシャー社製 FT-IRのサンプル室にセットした。FT-IRスペクトルは分解能 2cm-1、積算回数64回で得た。サンプルは、280℃で5分間サ ンプルを溶融し10℃/minで冷却して、240℃に保ち FT-IR 測 必要がある。 図2 に PEN の非晶(下)、α-およびβ-結晶(上と中)の FTIR スペクトルを示した。1476cm-1 は、エチレングリコール基が ト ラ ン ス の コ ン フ ォ メ ー シ ョ ン を 取 っ た と き の CH2 の 挟 み (scissoring)振動に帰属できる(図3)。一方、1453cm-1 はエ チレングリコール基がゴーシュのコンフォメーションを取った ときの CH2 の挟み振動に帰属できる(図3)。1348、1339、お よび1331cm-1 のバンドは全て、トランスコンフォメーションの CH2 の縦ゆれ(wagging)振動に帰属されるが、それぞれβ結晶、非晶、およびα-結晶由来である。 定を行なった。 図2 図1 PENの非晶サンプルのスペクトル(下)、α- および β-結晶に対応する差スペクトル(上および中) Poly(ethylene-2,6-naphthalate)の構造式 図3 エチレングリコール基のトランス型および ゴーシュ型の構造 280℃で5分間 PEN を溶融した後、240℃の等温で180分間熱 処理した時の in-situ FT-IR 測定の結果を 図4 に示した。それ ぞれの図中には熱処理時間が0、30、60、84、120 および 180 分のスペクトルを示し、矢印は熱処理時間が 0 から 180分の 間でのバンド強度変化を示している。α-結晶のピークである 2911、997、977 および 927cm-1 のバンドは時間と共に増加す る。ここで、α-結晶のバンドの位置が 図2 と違っているのは、 図2 は常温で、図4 は 240℃ で測定されたためである。また、 1337cm-1 のバンドも増加している。 M98003 サーモフィッシャー サイエンティフィック株式会社 図5 図4で得られたスペクトルの差スペクトル。 差スペクトルは1450cm-1のゴーシュバンドが消える ように 9、15、30、45 および 54min のスペクトルから 0min のスペクトルを引き算している。 結論 図4 280℃で5分間 PEN を溶融した後、240℃の等温で 180分間熱処理した時の in-situ FT-IR スペクトル。 0、30、60、84、120 および180は、熱処理時間(分)を 示す。 図5に、図4で得られたスペクトル(240℃で熱処理)の差スペ クトルを示した。差スペクトルは 1450cm-1 のゴーシュバンドが ゼロになるように、時間 0min のスペクトルを差し引いてい る。図5 の差スペクトルは、下から順に 9、15、30、45 および 54minである。9min の差スペクトルには 997 および 977cm-1 のバンドが無いことから、α-結晶はその間には生成していな いことがわかる。また、1338cm-1 のバンドがあることから、0~ 9minの間は非晶トランスが増えていることが分かる。15~ 54minの間では、1330、997 および 977cm-1 のバンドの強度 が増していることからα-結晶が成長していることが分かる。ま た、45min および 54min の差スペクトルには 1345cm-1 付近 にショルダーが生じている。このショルダーはβ-結晶の存在 を意味している。以上のことから、240℃での等温結晶化過 程では、まず初期に非晶トランスが増加し、その後α-結晶が 成長する。さらに後に、β-結晶が成長することが分かった。 スペクトロスコピー営業本部 IR/Raman 営業部 横浜本社 045-453-9210 大阪支店 06-6863-1552 E-mail [email protected] FT-IRとホットステージを組み合わせることにより、高分子の 等温結晶化過程を in-situ で観測できることを示した。この方 法を用いれば、高分子だけでなく種々のサンプルの熱変化 による構造変化を in-situ で測定することができるので、サン プルの特性をより深く理解する一助となると考える。 謝辞 この研究は東京都立大学工学部木村恒助教授との共同研 究でなされたものである。ここに謝辞を表します。 文献 1) F.Kimura,T.Kimura,A.Sugisaki,M.Komatsu,H.Sata, and E.Ito,J.Polym,Sci,Part B:Polm.Phys.35, 2741 (1997). 2) J.L.Koenig,in Spectroscopy of Polymers,ACS Professional Reference Book,the American Chemical Society,Washington,DC,1992,p.76. 3) I.M.Ward,Chem,Ind,London,1102(1957). 4) A.Miyake,J.Polym,Sci,38 , 479(1959). 5) J.Liu and J.L.Koenig,Anal.Chem,59, 2609(1987). 6) M.Kobayashi,T.Nakaoki,and N.Ishihara, Macromolecules,23, 78(1990). www.thermofisher.co.jp (日本) www.thermo.com (グローバル) ©2007 Thermo Fisher Scientific Inc. All rights reserved. All trademarks are the property of Thermo Fisher Scientific Inc. and its subsidiaries. Specification, terms and pricing are subject to change. Not all products are available in all countries. Please consult your local sales representative for details.