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第2部 環境を取り巻く 現状と課題
第2部 環境を取り巻く 現状と課題 第2部では、碧南市の環境を取り巻く現状を把握するとともに、 環境の保全と創造に向けた課題について整理します。 7 第1章 へきなんの環境を取り巻く現状 へきなんの環境像を描くためには、現在のへきなんの環境を把握し、へきなんの特性にあ った望ましい環境像とは何かを考えることが必要です。 本章では、現在のへきなんの環境を取り巻く現状について、自然環境、社会環境及び生活 環境の3つに分類し、過去から現在までの変遷や特徴を整理します。 1 自然環境 (1)河川・湖沼 本市は、中部圏の中心都市名古屋市から40km圏内に位置し、北は油ヶ淵、東は矢作川、南 及び西は衣浦港と、周囲を水に囲まれ、地形は、碧海台地と矢作川沖積地からなる平坦地となっ ています。市内には一級河川矢作川(延長117km、流域面積1,830km 2 )、鹿乗川(延 長16km、流域面積44km 2 )が市の東部を南北に流れており、蜆川を始めとして6つの二 級河川と4つの準用河川があります。これらの河川により豊かな自然環境が形成されていますが、 油ヶ淵周辺や蜆川沿いは、地盤も低く満潮時の降雨による河川の氾濫や高潮による被害を受けや すい状況にあります。 ■一・二級河川(国・県管理) ■準用河川 一級河川 矢作川 河川名 沢渡川 古江川 八村川 堀川 鹿乗川 二級河川 蜆川 長田川 高浜川 新川 油ヶ淵 稗田川 延長 0.300km 0.600km 0.140km 1.080km 指定年月日 S49.12.25 S49.12.25 S49.12.25 S49.12.25 一級河川は国が、二級河川は県が管理しており、それぞれの河川整備計画に基づき整備が進め られていますが、本市はその事業と併せて関連事業を推進しています。 二級河川蜆川の整備は、緊急防災対策事業として位置づけられ、最重要課題とされていること から、ポンプ場の整備が進められています。また、流域内陸部の浸水防除のため、雨水貯留施設 の設置の検討も必要となります。 一級河川矢作川の整備については、管理者である国に対して要望するとともに、矢作川堤防の 防災機能と南北交通の円滑化を兼ねた道路整備を進めるため、国と共同して堤防リフレッシュ事 業を継続して推進しています。 一級河川及び二級河川の管理者(国及び県)に対して高潮対策としての堤防、水門の耐震化及 びポンプ場の整備等の河川改修を要望するとともに、台風や都市型集中豪雨による市街地の浸水 被害を防止し、安全な市民生活の確保ができるよう総合治水対策を推進する必要があります。 県下唯一の自然湖沼「油ヶ淵」は、水に囲まれた碧南市の北部に位置し、県営公園の指定を 受け、水に囲まれる本市の代表的な景色となっています。 8 第2部 環境を取り巻く現状と課題 第 1 章 へきなんの環境を取り巻く現状 湖に流れこむ地域(流域)は、北は新幹線三河安城駅、東は安城市桜井町、南は西尾市米津 町まで広がっていて、その広さは約58km 2(本市の約1.6倍、安城市の約0.7倍、西尾市 の約0.8倍、高浜市の4.5倍)あり、高浜川及び新川を通して衣浦港から三河湾へと流れ出 ています。 水深は平均で約3m、最も深いところでも5m程度で、周辺の地盤の高さは海抜0m程度し かなく、水面は満潮時には海面より低くなるため、 海の水と河川の水が混じりあう(汽水域) 環境となっています。そのため、高浜川と新川に海の水を食い止める扉(防潮水門) が整備さ れ、台風時の高潮等から地域を守っています。 また、同時に周辺の農地に海水が入って作物がとれなくなってしまうこと(塩害)を防ぐた めに、油ヶ淵の水位と海の水位の差を利用して干潮時に開き満潮時に閉まる扉(常時排水ゲー ト)が設置されていて海水の侵入を抑えています。 油ヶ淵は、もともと入江だった場所が1600年頃、矢作川の付け替えによって内水面化し たものです。油ヶ淵という名前の由来は、 「竜灯伝説」によるものとされています。応仁寺の大 階段を下った正面の水際には、葦原を刈り込んで作った舟入ありました。現在は、治 水堤防に よって、寺と湖沼との関係は分断されてしまいましたが、舟入のあった付近は公園化され 花し ょうぶ園として市民に親しまれています。 蜆川は、権現町地内で衣浦港に注ぐ、河川延長約4.8km、流域面積約6.5km 2の二級河川 です。流域は、全て碧南市で市の南東部に位置しています。蜆川流域及びその周辺に山はなく、 起伏が小さい平坦な地形が広がっており、地質は、砂や泥を主とする層が低地を中心に広がり、 衣浦港に面する臨海部は埋立地となっています。また、蜆川流域は東海地震に係る地震防災対策 強化地域及び東南海・南海地震防災対策推進地域に指定されています。 蜆川の歴史は江戸時代初期に、油ヶ淵の湖水を排水するために開削されたことに端を発して います。その後、伏見屋新田等の干拓に伴い、徐々に延伸されましたが、江戸時代中期になる と矢作川の影響により河口に土砂が堆積したため、油ヶ淵には新たな水路(現在の新川)が開 削され、蜆川は干拓地の排水を流すのみとなりました。さらに、江戸時代後期にかけて伏見屋 外新田や前濱新田等の新田干拓が進められ、現在の形態に至りました。 (2)植生と生きもの 植生については、蜆川流域の南部及び北東部に 畑地雑草群落、中央部の蜆川沿いでは水田雑草群 落が見られます。 水に囲まれた特性を活かし、古くから埋め立て による開発が進められ、矢作川沿いの平七新田、 伏見屋新田、前浜新田の開発が行なわれました。 出典 9 碧南市緑の基本計画 2010~2020 ■油ヶ淵・底生生物調査結果の概要 かつてはヤマトシジミが畑の肥料にするほど採れたといわれ、昭和37年度まではシジ ミ漁も行われていましたが、淡水化のため現在は生息が確認されていません。平成4年度 及び5年度の調査によると、油ヶ淵の中央付近では底生生物があまり生息していない地点 もあり、イトミミズやゴカイ等底質の汚濁に強い種の生息が確認されているのみです。沿 岸付近ではフジツボ類、水生昆虫等が確認され、ヌマガイやタガイの淡水二枚貝も報告さ れています。 【平成20年度】 油ヶ淵の4地点で湖底の泥を採取し、その泥の中に生息する生物について調査した結果、 平成17年度から19年度と同様に、比較的汚濁が進んだ場所で多くみられるイトミミズ 類やゴカイ類、ユスリカ類が多く採取されました。平成19年度に減少したゴカイ類につ いては、1地点を除き再び採取されるようになりましたが、個体数は少ない状態となって います。また、平成19年度に初めて採取された特定外来生物 ※ に指定されているカワヒバ リガイは、平成20年度は採取されませんでしたが、現在も生息が確認されています。 資料:「平成20年度油ヶ淵生物モニタリング調査」調査結果 ■油ヶ淵・水生生物調査結果の概要 実施時期 平成20年8月22日(夏期)及び平成20年11月27日(秋期) 調査方法 国土交通省河川水辺の国勢調査マニュアル(ダム湖・湖沼・魚介類調査編) の魚類調査に準ずる方法。 1)油ヶ渕漁業協同組合に依頼し建網(定置網)を調査地点に数日前からセットし た。調査実施日に建網を揚げ捕獲された魚類等を確認した。 2)沿岸については投網及び四手網とたも網を使い調査日に捕獲した。また、午前 中にビン胴を6箇所セットし午後に揚げ、捕獲された魚類等を確認した。 調査項目 1)捕獲魚類名 2)捕獲個体数(割合) 4)調査時の天候、気温及び水温 3)捕獲個体の全長 5)透視度 6)エビ及びカニ等捕獲種名 調査で確認された魚類は14科24種でした。また、魚類以外の生物として6種確認さ れました。全体に汚濁に強い種や、塩分に対して広く適応できる種が多く見られました。 「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(外来生物法)で特定外 来生物に指定されているカダヤシ、ブルーギル及びウシガエルが確認されました。同様に 特定外来生物に指定されているオオクチバスは、平成20年度は確認されませんでしたが、 現在も生息が確認されています。また、生態系に悪影響を及ぼしうるとして環境省により 要注意外来生物に選定されているタイリクバラタナゴ、アメリカザリガニ及びミシシッピ アカミミガメが確認されました。他に、国外外来種であるコイ(飼育型)、国内外来種であ るワカサギ、ゲンゴロウブナ(ヘラブナ)、ハス及びギギが確認されました。過去には、要 注意外来生物に選定されているカムルチー、国外外来種であるロリカリア類(プレコ)も 確認されています。 環境省による第4次レッドリスト ※ (日本の絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト) に掲載されているニホンウナギ、ミナミメダカ(メダカ南日本集団)及びニホンスッポン が確認されました。 10 第2部 環境を取り巻く現状と課題 第 1 章 へきなんの環境を取り巻く現状 また、近年、アリゲーターガーの生息も確認されており、ハス、ギギ、オオクチバス、 ブルーギル、カムルチー及びウシガエル等の肉食性の外来種と共に、在来種への影響が危 惧されています。 ■油ヶ淵水生生物調査結果経年一覧 魚 ニシン科 ウナギ科 キュウリウオ科 アユ科 シラウオ科 コイ科 ドジョウ科 ギギ科 ナマズ科 ロリカリア科 サヨリ科 メダカ科 カダヤシ科 ボラ科 タイワンドジョウ科 スズキ科 サンフィッシュ科 アジ科 ヒイラギ科 ハゼ科 魚種数 類 コノシロ ニホンウナギ ワカサギ アユ シラウオ オイカワ ハス タモロコ モツゴ コウライモロコ カマツカ ニゴイ コイ(飼育型) ゲンゴロウブナ フナ類 タイリクバラタナゴ ドジョウ ギギ ナマズ ロリカリア類(プレコ) サヨリ ミナミメダカ カダヤシ ボラ メナダ カムルチー スズキ オオクチバス ブルーギル ギンガメアジ ヒイラギ ヨシノボリ類 ヌマチチブ マハゼ 種数 平成 平成 平成 5年度 10年度 15年度 20年度 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + 21 29 24 24 平成 平成 平成 平成 5年度 10年度 15年度 20年度 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + 20科34種 水生動物(魚類を除く) クルマエビ科 テナガエビ科 アメリカザリガニ科 モクズガニ科 ヌマガメ科 スッポン科 アカガエル科 平成 サルエビ テナガエビ アメリカザリガニ モクズガニ + + + + ニホンスッポン ウシガエル + + + + + + 7科7種 3 5 6 ミシシッピアカミミガメ 11 + + + + + + + + 6 + (3)みなとまち碧南の歴史 衣ヶ浦にのぞむ大浜と半田は、江戸時代には廻 明治 23 年 船の根拠地で江戸に向けて清酒、食酢、味醂及び 米等を送りだす重要な湊町でした。ここに集積し た商業機能は、新川・高浜の三州瓦や乙川・成岩 の知多木綿の生産を拡大し、矢作川右岸の棚尾に は鋳物工場を、成岩の神戸川沿いには晒工場を展 開させ、在来工業の中核地を形成していきます。 明治19年に武豊線が敷設され、明治32年に 武豊港が開港場に指定されると、武豊港に陸揚げ された大豆、塩及び綿が、知多及び三河両地方の 醸造業や木綿業の発達を促し、近代工業へと成長 させていきました。この開港は、さらに吉浜に代 表される養鶏業の発達も支え、地域の変貌に大き な影響を及ぼしました。大正4年には、大浜~刈 出典:日本図誌体系(中部) 谷~知立の三河鉄道が開通すると、大浜も鉄道で 東海道線と結ばれることとなりました。 鉄道の開設や名古屋及び四日市の開港にともない港の商業機能は失われていきましたが、昭 和に入り戦争体制が強化されると、碧南地方では既存の鋳物工業が軍需工業に組み込まれ、昭 和20年には地元業者の合同により航空機の生産工場が造られます。 内務省国土局は、こうした立地動向と広い干拓 新田、整備された鉄道網(昭和3年西尾線、昭和 昭和 45 年 11年蒲郡線)を踏まえて、昭和18年に臨海工 業地帯造成計画を発表しました。これは、「衣浦 港整備ならびに衣浦臨海工業地帯造成計画」に継 承され、大浜及び刈谷等湾内8港を重要港湾衣浦 港として整備、湾東岸840ha、西岸830ha の臨海工業用地が造成されました。東岸では、木 材工業団地、食料コンビナート及び自動車関連企 業が立地しました。 出典:日本図誌体系(中部) 12 第2部 環境を取り巻く現状と課題 第 1 章 へきなんの環境を取り巻く現状 コラム 自然からの恵み(生物多様性と生態系サービス) 人の暮らしは、自然から得る様々な恵みに支えられています。自然からの恵みのこと を、生態系サービスと呼んでいます。生態系サービスには、食糧や燃料の供給、水や空 気の浄化、気候や洪水の調節等があり、健康、安全及び快適な生活や経済活動の支えと なっています。 生態系サービスを維持するためには、生きものや生態系が豊かであること、すなわち 生物多様性が確保されていることが必要です。生物多様性には、樹林やため池、農地、 河川、干潟等の「生態系の多様性」、様々な種類の生きものにより生態系を支える「種 の多様性」、同じ種類でも地域により形態や行動等の特徴が異なる「遺伝子の多様性」 の 3 つの多様性があります。 生物多様性は、およそ 40 億年という長い進化の歴史を経て形成されてきたものであ り、一度失ってしまえば容易には元に戻りません。 人の暮らしや社会経済活動は、その大部分を生態系サービスに支えられています。し かし、大量生産、大量消費型の社会経済活動は、利便性やコストを重視し、海外等から の資源や食糧に頼るあまり、かつてあった流域圏での資源循環や連携が希薄となってい ます。 熱帯雨林の急激な減少、種の絶滅の進行への危機感、人類存続に欠かせない生物資源 の消失の危機感等が動機となり、生物とその生息環境を共に保全する包括的な枠組みを 設けるため、1992年に国連環境開発会議において生物多様性条約が採択されました。 生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が、2010年10月に名古屋市で開催 され、遺伝資源へのアクセスと利益配分の国際ルールである「名古屋議定書」や人類と 自然の共生を目指す2050年と2020年に向けた長短期の世界共通目標である「愛知目 標(愛知ターゲット)」等が採択されました。 13 (人・世帯) 2 社会環境 (1)人口 人口は平成25年3月31日現在、 72,159人でこれは県人口の約 1%にあたります。また、国勢調査 では増加傾向にあります。 世帯数は26,320世帯、1世 帯当たりの人口は2.74人となっ ています。 国立社会保障・人口問題研究所に 碧南市の人口及び世帯数の推移 資料データ:国政調査 ( %) よる平成22年(2010年)を 100とした場合の本市の平成52 年(2040年)人口推計は、右記 のとおりとなっており、総人口は 10%減、15歳未満人口は25% 減、15歳以上64歳未満人口は 20%減、65歳以上人口は40% 増と推計されています。 碧南市の将来人口推計 資料データ:国立社会保障・人口問題研究所 (2)土地利用 市区町村別人口(日本の将来人口推計) 本市は東西に8km、南北に12kmの広が りを持ち、本市の面積は35.86km 2となっ ています。本市全体が都市計画区域であり、平 成21年度現在、市街化区域は59.0%に当 たる2,117haです。 市街化区域内における用途地域の割合は、住 居系が約43.0%、商業系が約6.1%、工業 系が約50.9%となっており、臨海部の工業 専用地域約31.3%を除くと住居系の土地利 用の割合が高くなっています。市街化区域外縁 部には市街化農地が比較的多く、潤いのある環 境を形成し、市街化調整区域である矢作川沿い や市域北部には優良な農地が広がっています。 本市では、窯業、鋳物業及び醸造業といった伝統産業が市街地を中心として栄えた経緯があ り、現在のような住宅と工場が混在した市街地形成となっています。これらの住工混在地域で は、工場の拡張や改築、周辺への環境問題に苦慮しており、移転先としての新たな工場用地が 必要とされています。さらに、旧市街地では、老朽化した木造家屋が多く道路整備の遅れから 狭あい道路が多い、いわゆる密集市街地となっており、生活環境や防災活動に対する懸念が持 14 第2部 環境を取り巻く現状と課題 第 1 章 へきなんの環境を取り巻く現状 たれています。このため、路地の良さを生かしつつ緊急車両の進入路確保及び市民の避難路確 保を図ることが必要であり、狭あい道路を拡幅し住民が安心して安全に住めるまちにする必要 があります。 市の西側南北に名鉄三河線が運行されており、北新川駅、新川町駅、碧南中央駅及び碧南駅 の4駅があり、各駅を中心として商店街が発達しているものの、宅地の市街化区域外縁への拡 大により駅周辺の空洞化が進んでいることから、拠点施設の整備や商業地域の活性化 及び再編 によりその利便性を一層向上させ、集約型の市街地整備を図る必要があります。 ■将来都市構造図 N 凡 例 広域連携軸 都市軸 緑の拠点 緑の環境軸 水の環境軸 中心核 サブ核 住宅ゾーン 住工共生ゾーン 生産・流通ゾーン 農地ゾーン 出典 碧南市都市計画マスタープラン2010⇒2020 15 (3)産業 本市の産業は、窯業、鋳物業及び醸造業等の伝統的産業と衣浦臨海工業地帯にある自動車関 連産業等の産業、自然に恵まれた地域での農業及び漁業等の第一次産業が、調和のとれた形で 形成されています。また、臨海部では、現在約150社が操業しており、県企業庁造成による 臨海部の工業用地は完売しています。 風土を生かし、古くから栄えてきた伝統的産業には、三州瓦、鉢等の窯業、日用品から機械 鋳物へと発展した鋳物業、みりん、清酒及びみそ等の醸造業があります。 本市では伝統的産業や自動車関連の企業も多く、広い臨海部の工業専用地域があるものの、 住工が混在している地域が広がっており、周辺環境との調和と住工分離の促進を図りながら、 住環境の整備や新たな工業用地の確保と整備を進める必要があります。 露地野菜(にんじん、たまねぎ、かんしょ)や水稲、小麦、大豆等の栽培による農業や、油 ヶ淵の内水面漁業、天然の栄養が行き届き魚介類の生育も良い三河湾を中心とした内湾漁業が 古来より盛んです。 産業技術の高度化が進む中、今後本市の産業の振興を図るためには、先端技術の導入や新産 業の育成、技術を生かした新たな分野への展開の促進とともに、古来からの自然の恵みを大切 にしていくことが必要です。 (4)歴史・文化・観光 本市は昭和20年代までは白砂青松の海岸と衣浦温泉に多くの観光客が訪れていたものの、 昭和30年代からの衣浦臨海工業地帯の整備により海岸はなくなり、その後新たに臨海部に建 設された碧南緑地、臨海公園、海浜水族館、青少年海の科学館及び明石公園等の施設や油ヶ淵 花しょうぶ園などが観光施設として利用されています。 古くから近郷近在の方々に親しまれてきた志貴毘沙門天や三面大黒天等寺院や文化財施設 のほか、近年整備した哲学たいけん村無我苑やあおいパークといった体験型施設が広域的に利 用されています。当地出身で日本近代工芸の先駆者のひとりであった藤井達吉を顕彰する藤井 達吉現代美術館も、市内外から多くの方が訪れています。 本市の観光は、碧南市観光協会との連携により推進しています。現在、桜まつり、広藤園藤 まつり、花しょうぶまつり等の観光イベント、市内に数多くある神社及び仏閣探訪や九重みり ん時代館を始めとするみりん醸造工場や製菓(煎餅)工場等を対象とする産業観光、大浜地区 歩いて暮らせるまちづくり推進委員会や、大浜てらまちウォーキング実行委員会が主体の市民 手作りのイベントである大浜てらまちウォーキング等、地域資源を活用した特色ある観光、ま ちなか観光を中心に様々な活動を展開しています。 昭和59年度に始まった市と商工会議所が主催する「へきなん優良みやげ推奨品制度」は、 推奨品にふさわしい市内商工業者の商品を認定登録商品として認定し、 2年間、認定シールを 貼付し販売する制度で、優良商品の開発を促進する制度となっています。 碧南市では、美しい愛知づくり景観資源として38資源が選定されています。 16 第2部 環境を取り巻く現状と課題 第 1 章 へきなんの環境を取り巻く現状 (5)財政の逼迫 わが国の地方自治体は、ここ数年、極めて厳しい財務状況に直面しています。地方税収等の 落込みや減税に伴う減収の補てん、経済対策に伴う公共投資の追加等により地方債が急増して います。また、少子高齢社会に突入し始めた現在、歳入も年々減少の一途をたどっています。 本市の財政規模は、平成19年度まで拡大を続けてきましたが、平成20年秋からの金融危 機による世界的な景気の急激な後退を受け税収は減少しました。 今後、必要な行政サービスを提供しながら、財務状況の改善を図るためにも、適正な財政運 営を行う必要があります。 (6)NPO ※ 法人の定着及び拡大 1995年の阪神淡路大震災におけるボランティアやNPOの活動が契機となり、NPOは 注目を集めるようになりました。1998年3月に「特定非営利活動促進法」 ( 通称「NPO法」) が成立し、同年12月に施行され、この法律により、NPOの法人格取得が可能となりました。 2003年から2007年まで年間約5,000法人が増加、その後勢いがやや衰え、2007 年から2010年までは年間約3,000法人が増加しており、現在では約4万のNPO法人が 事業活動を展開しています。 (7)ボランティア活動の活発化 ボランティア活動には、道路・公園等の清掃、海浜美化活動(ごみ集め)、植樹、森林の間伐 等自然や環境を守るための活動や、社会福祉、防災、芸術文化及びまちづくりのための活動等 いろいろな種類の活動がたくさんあります。ボランティアは主体的に行うもので精神的な報酬 がボランティア活動の力になります。一人ひとりの人間を大切にし、全ての人が共に人間らし く生きられる社会を築くための活動として活発化しています。 (8)地域コミュニティ ①協働のまちづくりへの要請 1980年代、西欧諸国において財政の逼迫や、市民活動の活発化等を背景に、英国ではそ れまで主に行政が提供してきた「公共的サービス」を、市民や事業者等が行政と協力し合いな がらそれぞれの役割を担うという「新しい公共(NPM:ニューパブリックマネジメント)」 の考え方が生まれました。 右肩上がりの経済に支えられ、幅広い分野で公共サービスを提供してきた日本の行政も、多 様化する住民ニーズや地域の課題に的確に対応することが次第に難しくなり、平成の時代に入 ってからその考えが徐々に浸透してきました。 17 行政に一方的に任せるのではなく、心の豊かさを尊重し、社会に貢献することや自己を豊か にすることに関心や意欲を持ち、地域の課題に自主的及び主体的に取り組むことによって、新 しい社会を実現しようとする「協働」という考えが高まっています。これにより、それまで行 政が行ってきたまちづくりを、NPO法人、地域コミュニティ、ボランティア団体及び事業者 も担う認識が高まり、公共サービスの提供を行政以外の組織が担う機会が多くなっています。 市民の地方自治や行政への効果的な参画の仕方や、協働を促進するための情報公開のあり方、 求められる人材の発掘と育成、そして、地域を元気にする活動や地域課題を解決する新たな仕 組みづくり等が求められています。 ②地域力の向上 本市では、これまで町内会組織を中心とした地域コミュニティが、行政運営を支える基盤と なっていました。しかし、市民生活が多様化し、限られた財源の中で、これまでのように地域、 市民の要請に応え続けることは難しくなってきました。 地域の中から新たな風を呼び起こしていくことは、今後の行政運営には重要であり、新たな ボランティアや市民活動団体、NPO法人等が数多く芽生えるまち、育つことができるまちを 意識的に考え、導いていく必要があります。また、次代を担う若い世代へのまちづくりの意識 啓発、自主的な活動への支援も必要となっています。さらに、行政と地域コミュニティが いっ しょになって地域づくりの取組を推進するために、中核を担うリーダーの人材育成や組織づく り等を展開することにより地域力の向上を図ることが必要です。 ③市民と行政の連携と協働 市民生活の多様化が進み、愛着のもてる地域づくりには、市民一人ひとりの積極的な関わり が求められ、果たすべき役割も大きくなっています。 一方、行政には、地域にある様々な人や資源を効果的に連携させ、活性化させるコーディネ ーターとしての役割や、市民や事業者が自らの力で新たな活動を行う原動力を培う機会を提供 することが必要となります。 これからの本市のまちづくりは、市民、事業者、行政が果たすべき責任と役割を明確にして、 パートナーシップの構築による市民協働の推進、あるいは、市民が主体性を持って取り組む まちづくりを進めていかなければなりません。そのためには、それぞれが持つ情報、手法及び ネットワーク等を活用することにより、目的を共有し、意見交換しながら事業を進める等、さ らなる連携が重要です。 行政が取り組むべき課題が高度化及び複雑化する中、市民とともに克服していくことが必要 となるため、今後は、市民、事業者、行政の協働によるまちづくりに積極的に取り組むことが 必要です。 18 第2部 環境を取り巻く現状と課題 第 1 章 へきなんの環境を取り巻く現状 コラム 暮らしの変化 昔の暮らし かつての日本は、自然の循環の中で資源をまかなっていました。 リユース ※(再使用)やリサイクルにより、資源を最大限に活用する「ものを最 後まで無駄なく使い切る」暮らしをしていました。物品は、リサイクル資源として 利用しやすい素材でつくられ、焼却して出た灰も肥料として使用するなど、廃棄す るものは非常に少ない暮らしでした。 適量な生産、適量な消費及び最小限の廃棄という、資源節約型の消費社会であり、 資源がうまく循環し自然と共生している社会でした。 現代の暮らし 明治以降の日本は、自由貿易に移行し、産業の興隆が始まりました。 原材料は海外から低コストで輸入し、高品質の製品に加工して海外へと輸出しま した。国内で産出できる資源の範囲で生活を営んでいたかつての社会ではなく、化 石燃料、鉱物及び木材等の資源を輸入することにより、大量生産、大量消費及び大 量廃棄の社会へと変化しました。 また、生産と流通の効率化は、自然条件や歴史等の風土によって形成されてきた 生活圏域の範囲を超えることとなりました。物流は生産地から都市への一方通行と なり、廃棄物が再利用される循環の仕組がなくなっていきました。 この結果、現代は、資源やものや廃棄物が自然の循環におさまりきらない社会に なってしまいました。 19 3 生活環境 (1)大気質 昭和30年代後半に始まる経済の高度成長期において、大気汚染及び水質汚濁を始めとする 環境汚染が著しく進行しましたが、住民の健康を保護し、良好で快適な生活環境を保全するた めに、国をあげて公害防止及び環境保全対策を推進してきました。 その結果、最近では国、県、市、市民及び事業者がそれぞれの立場における公害防止努力に より全般的に改善されてきています。しかし、産業構造の変化及び消費の多様化等に伴い、有 害物質による環境汚染のみならず地球温暖化及びオゾン層破壊 ※ を始めとする地球的規模の環 境問題についても、身近な問題となってきました。 ○二酸化硫黄 ※ は、ほぼ横ばい状態で推移。昭和50年以降環境基準 ※ に適合。 ○二酸化窒素 ※ は、近年ほぼ横ばい状態で推移。環境基準に適合する良好な状態。 ○浮遊粒子状物質 ※ は、平成11年度から平成24年度までは、平成23年度以外は2 測定局とも環境基準に適合。5月に発生した黄砂が原因と考えられるが特定には至ら ず。 ○降下ばいじんは、昭和52年度以降横ばい傾向。平成24年度の4地点の年平均値は 3.45t/km2・月、やや汚染と判断される状況。 ○大気中重金属等は、昭和58年度より調査を実施。平成24年度においても全ての項 目で環境上の目安よりもかなり低い数値を示し、良好な状態を維持。 ○大気中ダイオキシン類 ※ の平成24年度の調査結果は、年平均値0.036pg-TEQ/m3 であり、環境基準である0.6pg-TEQ/m3 を下まわっており基準適合。 ○空間放射線量は、増加傾向は見られず基準値内で安定。 ○微小粒子状物質(PM2.5) ※ は、県において平成23年4月からその常時監視を開 始し、平成25年4月1日現在、県内では30箇所の測定局において測定を実施。将 来的には100箇所の測定局の設置が予定され、碧南市内でも碧南文化会館に1箇所、 川口町に1箇所の設置が予定されています。 (2)水質 健康項目の調査結果が良好であるのに対し、生活項目では環境基準 ※ を超える数値が測定さ れています。衣浦港及び油ヶ淵は、水の入れかわりが少なく滞留しやすい閉鎖性水域であり、 窒素及び燐等の栄養塩類による汚濁負荷量の増加に伴い、富栄養化状態(微生物の異常発生し やすい状態で、衣浦港ではこれが赤潮の要因となる)が進行し、水質が悪化しやすい特質を持 っていることが原因と言われています。 20 第2部 環境を取り巻く現状と課題 第 1 章 へきなんの環境を取り巻く現状 ○健康項目(8項目)については、15調査地点すべての地点で環境基準に適合。 ○すべての河川で環境基準に適合。ここ数年のBOD ※ 年平均値は概ね横ばい傾向。 ○油ヶ淵内の2調査地点では、COD ※ 75%水質値は5.5及び6.1㎎/L であり環境 基準である5㎎/L 以下を達成していない。河川同様生活排水による汚濁が考えられ る。環境基準は適合していないが、ここ数年のCOD年平均値は横ばい傾向。 ○海域の衣浦湾南部4調査地点では、環境基準に適合。ここ数年のCOD年平均値は横 ばい傾向。 (3)土壌 環境基準の定められているものの内、調査をしたカドミウム、全シアン、有機燐、鉛、六価 クロム、砒素、総水銀、アルキル水銀、PCB ※ 及び銅の10項目については、すべての調査 地点で環境基準に適合しています。農用地における土壌中のカドミウム、砒素及び銅について もすべての調査地点で環境基準に適合しています。 (4)騒音・振動 私たちは、生活環境の違いこそあれ、色々な音に囲まれて生活しています。音は私たちの心 に安らぎを与えたり、様々な情報を伝える機能をもつ反面、生活様式の多様化した現代社会に おいては、時として、私たちにとって不必要で望ましくない音、いわゆる騒音として問題とな ってくることがあります。 騒音の種類としては、工場及び事業場の機械騒音、交通騒音及び飲食店等の営業騒音等があ りますが、感覚的及び心理的な面において、身近な公害でありながら解決の困難な公害の一つ となっています。 振動においても、騒音と同じように発生源として工場、建設作業及び交通等があり、睡眠障 害や心理的な影響があると言われています。 住工混在による工場等の発生源と住宅の隣接の解消が騒音及び振動問題解決の有効な手立 てと考えられますが、これが問題解決を困難にしているものの一つでもあります。また、生活 様式や個々の価値観の多様化が苦情の発生を多くしている原因にもなっています。 本市では市内における騒音把握のため環境騒音8地点、自動車騒音2地点 (最終的には10 地点)の調査を実施しています。調査結果は、すべて環境基準に適合しています。 21 (5)悪臭 私たちは生活様式、産業形態の多様化に伴い、多種多様な臭いに囲まれて生活しています。 臭いは、時として私たちの心に、すがすがしさや安らぎを与えるものである反面不快感や嫌悪 感を与えるものです。 不快な臭いの原因となる物質は生活環境をそこなうおそれがあるため、悪臭防止法により悪 臭物質として22物質が規制されており、規制地域毎に規制基準が定められていました。しか し近年、既存の物質濃度規制では効果が現れない悪臭原因物質の複合臭や特定悪臭物質以外の 未規制物質などの原因による事例がいくつか見受けられます。 そこで、これらの事例にも対応するため、人の嗅覚を用いて、気体又は水の悪臭の程度に関 する値「臭気指数」により規制する「臭気指数規制」を導入しました。「臭気指数規制」は平 成18年10月1日から県内45市町村で適用されました。 また、県民の生活環境の保全等に関する条例により15業種について、毎年悪臭物質の排出 の状況について届出が義務づけられています。 (6)公害苦情 公害苦情は、市民の生活上、大きな問題の一つです。その適切な処理は、市民の健康と文化 的な生活を守るために、また紛争の未然防止のためにも必要であり、愛知県西三河県民事務所 等の関係行政機関とも協力し早期の解決に努めています。 公害苦情は、工場、事業所等製造業に起因するものが相変わらず多くありますが、日常生活 に伴って生じるもの等もあり、複雑多岐にわたっています。 平成24年度の新規に受付した公害苦情は95件あり、例年同様、住居系地域及び準工業地 域で多発しています。その主な種別は、大気汚染26件、騒音20件及び悪臭23件となって います。 公害苦情の解決のためには、事業者の公害防止意識の高揚はもちろんのこと、日常生活に伴 って生じる苦情については、法規制とは別に、良好な隣人関係の確立、各自のモラルの向上が 望まれます。 出典 碧南市「平成25年度版環境の状況に関する報告書」 22 第2部 環境を取り巻く現状と課題 第 1 章 へきなんの環境を取り巻く現状 (7)廃棄物処理 本市におけるごみの総量は、平成19年度以降、減少傾向にあります。 (t) ごみの総量 (t) (t) リサイクルしないごみ 資源ごみ 碧南市一般廃棄物処理基本計画(平成21年3月)では、リサイクル率を平成35年度ま でに35%以上とすることを目標としています。 出典 23 碧南市一般廃棄物処理基本計画(平成21年3月) ■市民1人1日あたりのごみの総排出量 単位:g/人・日 市民1人1日あたりのごみの総排出量 同左(資源を除く家庭系ごみ) 平成20年度 1,073 619 平成21年度 1,026 608 平成22年度 1,008 606 平成23年度 1,017 613 平成24年度 1,014 608 (8)エネルギー・資源 使用電力は、平成21年度まで減少傾向にありましたが、平成22年度以降、増加に転じ ています。ガスも同様の傾向を示しています。 電灯・電力需要状況 区 電 灯 電 力 分 単位:口、MWh 平成 20 年 平成 21 年 平成 22 年 平成 23 年 平成 24 年 口数 36,239 36,150 36,271 36,649 36,930 使用量 161,253 158,156 168,752 162,537 162,363 - - - - - 1,126,328 1,065,908 1,136,338 1,277,556 1,229,442 口数 使用量 ※数値は各年度末(4月~翌年3月)現在。 資料:中部電力㈱碧南サービスステーション 出典:碧南市の統計(平成25年版) 都市ガス供給状況 区 総 数 単位:件、㎥ 分 平成 20 年 期 末 取 付 メ ー タ ー 数 期 末 調 定 件 数 平成 21 年 平成 22 年 平成 23 年 平成 24 年 77 - - - - 66 - - - - 70,552,291 68,027,010 75,838,904 75,051,249 67,952,438 数 58 - - - - 年間消費量 30,357 30,456 30,575 29,623 37,100 数 14 - - - - 年間消費量 70,213,530 67,798,717 75,619,576 74,838,135 67,738,625 数 5 - - - - 年間消費量 308,404 197,837 188,753 183,491 176,713 数 - - - - - 年間消費量 - - - - - 年間消費量 戸 家庭用 戸 工業用 戸 商業用 戸 その他 各年3月31日現在 資料:東邦ガス(株) ※戸数については取付メーター数を記載。 ※都市ガス供給地域・・・屋敷町1丁目、4丁目、白砂町、立山町、平山町、浜町のうち市道須浜線以西、 明石町、須磨町、塩浜町、玉津浦町、港本町、田尻町、六軒町、縄手町、鷲塚町、雨池町(簡易ガス団 地県営鷲塚住宅の供給地点を除く) ※年間消費量は、前年4月から区分年3月までのガス使用量 出典:碧南市の統計(平成25年版) 24 第2部 環境を取り巻く現状と課題 第 1 章 へきなんの環境を取り巻く現状 (9)地球環境問題 ※ 20世紀における資源浪費を伴う大量生産、大量消費及び大量廃棄型の経済成長は、化石燃 料使用量の増加、温室効果ガスの排出、森林の減少及び劣化、環境汚染等を通じて、地球温暖 化、竜巻やゲリラ豪雨等の異常気象、地下水減少、砂漠化、大気汚染、土壌汚染及び生物種の 減少といった様々な問題を生み出しています。21世紀は、こうした地球的課題に対応し、環 境に配慮した持続可能な経済社会への転換を図り、資源の循環利用や環境負荷の低減等を目指 していくことが国際社会における喫緊の課題となっています。 2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う計画停電等は、自然エネルギー等の再生 可能エネルギー利用の重要性とともに、ライフスタイル及びビジネススタイルを見直し、省エネ ルギー及び省資源を促進することの大切さを再認識させる大きな教訓となりました。 森林や農地土壌による二酸化炭素の吸収、農山漁村に豊富に存在するバイオマス ※ や太陽光、 水力及び風力等の再生可能エネルギーの利用等を図り、これらによって温室効果ガス排出量の 削減に大きく貢献することが期待されています。また、農林水産業を通じて、多くの生物に貴 重な生息及び生育環境を提供していることを踏まえた対応が求められています。 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2013年に第5次評価報告書をまとめまし た。これによると、1880年から2012年の間で、世界平均地上気温は0.85℃上昇して おり、最近30年の各10年間の世界平均地上気温は、1850年以降のどの10年間よりも高 温である と報告されています。 2012年11月にカタールのドーハで開催された気候変動枠組条約第18回締約国会議 (COP18)において、京都議定書 ※ の温室効果ガス削減義務を2013年以降も継続し、 すべての国が参加する新たな枠組みを2020年に発効させるとした「ドーハ気候ゲートウェ イ」と名付けられた一連の合意が採択され、参加する先進国全体で1990年比で2013年 から2020年の第2約束期間に18%の削減を目指すことになりました。 日本は前回の会議より、議定書そのものからは離脱しないものの、削減義務の延長には参加 せず、自主的な取組みを続け、削減量等の報告義務を負うこととなっています。 環境に配慮した持続可能な経済社会への転換に向けて、我が国も主導的な役割を果たしてい く必要があります。このため、農業、農村及び食品産業においても、環境に配慮した生産活動 を適切に推進することとしています。 再生可能エネルギーの電力利用をはじめとする新たな取組を進めていくこととし、さらに、 農林水産分野における生物多様性の保全に向けた活動を促進するとともに、こうした分野にお ける我が国の技術及び知見を国際協力等を通じて普及する等、国際的な課題の解決にも積極的 に貢献していくこととしています。 25 第2章 環境基本計画の目標達成状況 ここでは、計画の総合的な5つの評価指標における目標の達成状況について整理します。 評価指標 目標及び目標達成状況 温室効果ガス排出量 目標 京都議定書で日本政府が約束した数値(1990年を基準として2 008年から2012年の間に6%を削減する)を勘案して市民推進 組織と市が協議して目標数値を決定します。 目標達成状況 平成27年度分算定予定。 油ヶ淵の水質と透明度 ごみ処理量と再資源化率 環境基準 環境宣言した市民 目標 水 質:測定地点における環境基準の達成とさらなる改善 透明度:2004年度平均値の倍以上 目標達成状況 水質 ・COD75%水質値は5.5及び6.1㎎/L であり環 境基準である5㎎/L 以下を達成していない。改善され ているがここ数年のCOD年平均値は横ばい傾向。 透明度・透明度の測定から透視度の測定に移行。 目標 市民推進組織と市が協議して目標数値を決定します。 目標達成状況 平成19年度に碧南市一般廃棄物処理基本計画を策定し、再資源化 率の平成25年度目標を23%に決定したが、平成23年度の実績は 20%です。 ごみの総排出量等は、横ばい傾向。 目標 環境基準の達成と達成しているものについては、さらなる改善を 目標とします。 目標達成状況 大気 ・二酸化硫黄は、昭和50年以降環境基準に適合。 ・二酸化窒素は、近年、環境基準に適合する良好な状態。 浮遊粒子状物質 ※ は、平成23年度以外は2測定局とも環 境基準に適合。西端大気汚染測定所ついては、平成24 年度に測定機器の不備による測定値バックグラウンドの 異常が確認され、これを平成22及び23年度にも考慮 すると横ばい傾向。 ・光化学オキシダント ※ は、環境基準に不適合。 ・ダイオキシン類 ※ の平成21年度から24年度の調査結 果は、環境基準である0.6pg-TEQ/m 3を下まわっており 基準適合。 水質 ・油ヶ淵、海域の化学的酸素要求量(COD)は、改善さ れてきている。 ・油ヶ淵以外は環境基準に適合。 ・生物化学的酸素要求量(BOD)は、すべての河川で環 境基準に適合。 騒音 ・環境騒音は、環境基準に適合。 土壌 ・カドミウムをはじめ調査した10項目すべての調査地点 で環境基準に適合。 目標 宣言した人数の目標7万人 目標達成状況 平成24年度末には、目標の1/3の24,000名を超えた。 26 第2部 環境を取り巻く現状と課題 第3章 環境の保全と創造に向けた課題 第3章 環境の保全と創造に向けた課題 ここでは、現行計画における分野別環境施策(環境プロジェクト全般)及び先導的環境施策 (リーディングプロジェクト)の進捗状況からみた主な課題について整理します。 自然環境の保全 ○近年横ばい傾向の環境指標が多く見られる。 ○ごみ拾い等の活動は直接浄化に結びつくが、活動母体を県や市といった大きな単位と して動かすことが必要である。 ○ 生態系に悪影響を及ぼしている外来種の駆除を進めることが必要である。 まちづくり ○廃食用油の回収等により市民の環境保全意識の高揚にもつなげるとともに、協力者の 輪を広げることが必要である。 ○町並み保全には住民の理解と協力、景観形成意識の高揚が必要である。 ○広域的な連携による保全活動が必要である。 ひとづくり ○人材育成や環境教育の推進には長期的な視点が必要である。 ○環境リーダー養成講座受講後の環境リーダーとしての活動状況の把握が必要である。 ○行政と市民が連携して、地区の魅力を広く情報発信する必要がある。 循 環 ○ごみの総排出量をより減らすために発生抑制について啓発していく必要がある。 ○ごみの堆肥化、飼料化等の再資源化の更なるPRが必要である。 ○再生可能エネルギーの積極的な活用を促進することが必要である。 27 28