...

物理 e-learning のための教材開発モジュールの設計

by user

on
Category: Documents
5

views

Report

Comments

Transcript

物理 e-learning のための教材開発モジュールの設計
物理 e-learning のための教材開発モジュールの設計
高見友幸1)、平井史郎1)、加藤常員2)
大阪電気通信大学 総合情報学部1)、大阪電気通信大学 工学部1)
〒575-0063 大阪府四條畷市清滝 1130-70
TEL: 072-876-3317
1.はじめに
E-mail: [email protected]
が非常に急激であり、昨年改訂された
Web サーバーサイト開発用ツールである Flex2
Actionscript2.0 で高機能な画像処理クラスが追加
を用いて、高校生・大学1~2年生を対象とした物
され、今年改訂された Actionscript3.0 では、クラ
理 e-learning 用の教材モジュールを設計・試作した。
ス構造の再編成がなされて、描画速度が極端に速く
物理現象の精密なアニメーションを用いた教材の
なった。現時点で Actionscript3.0 を使うことので
開発を主要目的とするが、これに加えて、新しい形
きる開発環境には、Flex2 と Flash9(プレビュー版)
態の物理演習問題の開発ということも意図されて
がある。
いる。
物理現象のアニメーションは従来から初等物理
の教材としてしばしば用いられてきたが、問題点と
3.教材開発モジュール
初等物理の主要分野から題材を選択して、
して次の2点を挙げることができる。
Actionscript3.0 プログラムによる物理現象のアニ
(1)物理現象の計算部のプログラミングは簡単で
メーションを制作した。これらのアニメーションを
あるが、その結果をアニメーションとして表示する
1個の Web サイト形態のアプリケーション中に集
プログラミングの習得に時間を要する。このため、
積させ、教材開発モジュールとしてまとめた。
個別の教材開発は困難である。
教材開発モジュールの表示画面例を図1に示す。
(2)高精細で見栄えのするアニメーションを作成
最上部の4つのリンクボタンにより、表示したいア
するのがむずかしい。このため、意図したほどには
ニメーションの分野(力学、電磁気等)を選択する。
教授効果、学習効果を得ることができない。
その下のタブナビゲータにより、各分野別に用意さ
ここでは、これらの問題点の改善を図るべく、
れた問題(弾性衝突、剛体の回転等)を選択する。
Actionscript3.0 プログラムを導入するとともに、
画面下部のタブナビゲータでは、アニメーションの
Actionscript3.0 と連動して使用することのできる
初期値パラメータ、シミュレーションのモード、画
Flex2 を用いて教材モジュールのインタフェースを
面の色、物体のサイズ等を変更することができる。
制作した。講演では、教材モジュールのいくつかを
以下に試作した教材開発モジュールの特徴を列挙
紹介し、このモジュールの特徴を生かした利用形態
する。
について議論したい。
(1)モジュールは1個の Flash9 ムービーの実行
ファイル(swf ファイル)として提供される。この
2.Actionscript3.0
ため、Web による公開は容易であり、実行環境にも
Actionscript は Web サイトのアニメーション制
依存しない。また。直接の配布により、インターネ
御ツール Flash に付属するプログラミング言語で
ット非接続の環境においても利用することが可能
ある。オブジェクト指向設計用の言語として類似す
となる。
る Java や C#と比較して、画像や音声に関連するメ
(2)アニメーションを再生しつつ、その題材の物
ディア系プログラムの開発が容易であるという特
理的条件や画面デザインを変更することで、アニメ
徴をもつ。また、プログラミング言語としての発展
ーションを修正することが可能である。この修正は、
社団法人 私立大学情報教育協会
平成18年度 大学教育・情報戦略大会
同一の画面上に配置されたスクロールバーを調整
存在しなかった。もし物理と Actionscript プログラ
することによりなされる。
ミングの両方を同時に学習することを前提にする
(3)モジュールの中に集積されているアニメーシ
なら、Actionscript3.0 は物理の演習授業に非常に有
ョンは、それぞれを単体の swf ファイルとして切り
用ではないかと考える。
離し、モジュール外部に取り出すことができ、モジ
ュール外部でも Flash9 ムービーとして利用するこ
とが可能である。
5.まとめ
Flex2 を用いて Web ページのレイアウトとイン
(4)修正を行ったアニメーションは、モジュール
タフェースを作成し、Actionscript3.0 を用いて物理
の使用終了後もその修正が保持される。次の起動時
現象のアニメーションを作成した。これを1個のア
には、修正されたバージョンのアニメーションが再
ップリケーションにまとめて、初等物理 e-learning
生される。
用の教材開発モジュールとした。Actionscript3.0
(5)画面を右クリックすることで、アニメーショ
のプログラミングでは、アニメーション設計が非常
ンのソースコード(Actionscript3.0)をダウンロー
に容易となる。この特徴を生かすことで、試作した
ドすることができる。この仕組みは Flex2 で標準に
モジュールは、e-learning 教材であると同時に、新
用意されているものであり、すべての Flex2 アプリ
しい教材の開発ツールとしての機能を持たすこと
ケーションに共通している。
が可能となった。将来的には、プログラミング手法
(特に微分方程式の実装)と初等物理を合わせて学
4.モジュールの利用形態
本モジュールでは、授業を実施する側と授業を受
習することのできるモジュールとして完成させる
予定である。
講する側で異なる利用形態を想定することができ
る。
授業を実施する側においては、Actionscript プロ
グラムに立ち入ることなくアニメーションを修正
できることの利点が大きい。各アニメーションの修
正は、スクロールバー等を調整して細かく行うこと
ができる。このように、モジュールの使用者は実施
する授業シナリオに合わせてモジュールを最適化
させ教材としてより適した形で活用することがで
きる。
授業を受講する側においては、アニメーションを
変更させることで学習効果が得られる。しかし、さ
らに大きい効果は、演習問題として採用することの
図1:試作したモジュールの画面例。上部のリンク
できる範囲が大幅に広がるという点だと考えてい
ボタンの選択は力学、すぐ下のタブナビゲータの選
る。通常、初等物理の演習例題には、解析的に答え
択は自由落下運動となっている。初期値(物体の初
の出る題材のみが使用される。しかし、プログラミ
速度、電荷の初期分布等)、物理的条件(床の反発
ングによる数値解法を問題の解法として取り入れ
係数、相互作用の種類等)、デザイン(アニメーシ
た場合、たいていの問題の解は提示可能である。こ
ョンの背景色、物体のサイズ等)、問題の環境(衝
のため、多彩な例題を使った演習授業を実現できる。
突する物体の個数、運動領域の範囲等)を画面下部
これまでは、計算し、さらにアニメーション表示ま
のタブナビゲータで変更することができる。
でするための適したプログラミング言語が存在し
なかった。少なくとも簡単なプログラミング言語は
社団法人 私立大学情報教育協会
平成18年度 大学教育・情報戦略大会
Fly UP