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「住宅産業のニューパラダイム」の概要(案)(PDF形式

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「住宅産業のニューパラダイム」の概要(案)(PDF形式
資料5
(案)
今後の住宅産業のあり方に関する研究会報告
「住宅産業のニューパラダイム」の概要
平成20年3月
はじめに
本報告書は、国民の多様な居住ニーズに対応した住生活環境を産業面から担うとともに、
我が国経済が内需主導で拡大していく上で、住宅産業がその牽引役を果たしていくため、
従来型のパラダイムを転換し、新たな産業像を構築することを提言している。
なお、昨今、住宅供給のみならず建材や住宅設備、メンテナンスやリフォームまで含め
たサプライチェーン全体で捉えるべきテーマが増加していることから、住宅供給、建材、
住宅設備、インテリア、DIY、これらの流通や住生活サービス産業など住生活に関わる需要
に応える産業を幅広く「住宅産業」として捉える。
第1章
住宅産業の現状と課題
戦後、政策的支援と相俟って、一大産業に成長した住宅産業は、我が国の住宅の量的充
足、質的向上に大きく貢献した。しかし、新築需要が頭打ちする中、工場生産というだけ
では差別化要素とはならなくなっている。サプライチェーン全体での取組や新たなビジネ
スモデルの構築、住まい手の潜在的需要の喚起などに取り組みながら、引き続き発展する
方策を検討する必要がある。その際、海外における住宅市場も欠かせない要素である。
第2章
生まれつつある変化の兆し
大手住宅メーカーでは、過去に供給した住宅に関するリフォーム、不動産流通・金融等
のストックビジネスへの展開を目指す動きが増えつつある。
一方、大パワービルダーが工場生産手法によらず、ファブレス、部材一括仕入れなどの
手法を活用しながら、新たなサプライヤーとして大手住宅メーカーに匹敵する規模に成長
しているなど、競争優位性の源泉に変化が見られる。
また、建材・住宅設備分野では、ストックビジネス重視の動きが発展し、経営統合・提
携等によって、住まい手のニーズに対するトータルコーディネート、ワンストップサービ
スを提供する事例も生まれている。
その他、住生活分野における多様なニーズに対応して住生活価値を向上させる新たなサ
ービスを提供するビジネスの取組など、住宅産業のビジネスモデルの様々な変革の動きが
見られ、従来の住宅産業の枠組みでプレーヤーを捉えることが出来なくなっている。
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第3章
住宅産業のニューパラダイム
こうした住宅産業の変化の兆しを踏まえれば、今後は、住宅を無機質なハコと捉えるの
ではなく、住生活の価値を実現していくためのものとして捉えることが求められている。
住宅産業にとっても、住宅が工場生産によるか否かや数値化されたスペックではなく、「顧
客(=住まい手)への住生活提案能力」が新たな競争の軸として重要になっていく。
今後は、住宅の価値が住まい手との関係性の中で生まれることを再認識しつつ、住宅と
いうハードのハコを提供するだけではなく、住まい手のライフスタイルにあわせ価値ある
生活の場を提供し続けることで、住まい手の生活価値の付加を実現していくことが今後の
住宅産業のパラダイムになっていくと考えられる。
また、我が国の住宅政策における住宅の長寿命化推進の動きは、住宅産業が住宅ストッ
クをプラットフォームとして活用し新たなビジネスを展開する可能性が開ける契機である。
これにより、住宅の利用価値や住まい手の利便性が高まるとともに住宅産業にとっても収
益の安定性が高まることが期待される。
第4章
目指すべき産業像
上記のようなパラダイムの変化に対応しつつ、住宅産業が目指すべき産業像は、以下の
4つである。
(1)新築販売収益依存のビジネスモデルから継続収益モデルへの転換
新築販売時の収益に依存したビジネスから、長寿命住宅をプラットフォームとして活
用し、住宅ストックに関する金融・リフォーム等様々なサービスを継続的収益源とする
ビジネスモデルに転換していく。
また、住宅の長期使用を進めるためのメンテナンスについて多様な手段を提供してい
く。住まい手によるメンテナンス促進のため、関係業界が連携し、部材の標準化、共通
化を進めるとともに、要望と選択に応じ適切な対価でのワンストップサービスも提供。
(2)業種の枠を超えた効率化
住宅は多くの部品の集合体であり、現場での施工工程が存在するため、部品調達
も含めた物流と人員配置の効率化・連携の必要性が特に大きい。
現状では、住宅メーカーの工程管理システムや基幹業務システムの多くが社内の
みか一部協力企業と情報共有。建材・住宅設備メーカーでも、販売店、工務店向け
に独自の業務システムを提供しているが、相互運用が確保されない場合が多い。
サプライチェーン全体の効率化には、部門や企業の壁を越えた情報共有と全体最
適化するための協業の仕組みが重要。住宅メーカーなどのサプライチェーンの核と
なる事業者がまとめ役となって、新たな協業のプラットフォームを作る発想が必要。
(3)住生活提案産業への進化
潜在的な住生活ニーズに応え、関連産業とも連携し、「暮らしの『場』提案産業」と
して、時間、ソフト、空間の三つの軸に沿って、以下の方向性で潜在需要を掘り起こし、
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フロンティアを創造していく。
① ストック価値の向上:
住まい手に対し住宅の継続的な利用価値を支える仕組みを提供する。
② 生活価値の向上:
住まい手に対し新たなライフスタイルを提案、サポートする仕組みを提供する。
③ エリア価値の向上:
住まい手に対し地域全体の価値を高める仕組みを提供する。
(4)国際展開の可能性
海外での住宅市場の成長を取り入れるべく、我が国住宅産業の強みといえる技術や
住宅供給モデル、さらにはトータルな住生活・住文化を軸に国際展開。これは省エネ、
環境面での国際貢献ともなりうる。
こうした産業像の実現に当たっては、意欲と能力のある事業者が、自らが培ってきた経
営ノウハウや、人材、技術、情報等の蓄積を生かしつつ先駆的に取り組み、住宅産業の新
たな発展を先導することが期待される。
第5章
政策的取組
目指すべき産業像を実現するため、住宅産業のみならず、住まい手、政府等もその基盤
づくりに取り組むことが必要である。特に、政府においては以下の政策的取組を検討すべ
きである。
(1)長寿命住宅の基盤作り
関連業界における協議会の設置、そこでの部材(柱・梁等の構造躯体、クロス・床材
等の内装材、キッチン・浴室等の設備部材、サッシ等の開口部など)の共通化、メンテ
ナンスプログラムのひな形に従った維持管理の取組を支援。また、外装材の長期耐久性
能の評価手法確立への取組を進める。長寿命住宅に関する不動産信託や税制についても
検討。
(2)情報化への先行的取組
電子タグの活用により効率化を進めるとともに、業種を超えたトレーサビリティを確
保し、製品安全、化学物質管理、環境・リサイクル等の課題解決にも活用。
(3)新たな住宅産業人材の育成
建築、インテリア、不動産流通、金融等幅広い知識を有する新たな住生活総合人材を
育成。その際、既存の資格制度との連携なども視野に置く。生活者が適切な住宅を選択
できるよう専門的な知見と公正中立な立場からサービスを行う住生活エージェントの
社会的定着を支援。また、熟練技能者の高齢化の中で、技能を継承するものづくり人材
の育成充実も課題。
(4)国際展開に向けて戦略的なブランドイメージの発信
高い技術レベルにある日本型住宅供給モデルを海外に提案、発信し、Cool Japan の統
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一的なブランドイメージを確立。その際、我が国留学経験者の活用、産学官の様々なネ
ットワークも活用。また、生活関連産業ブランド育成事業や新日本様式 100 選などの政
策的取組も活用。
(5)住宅における省エネルギーの促進
住宅における省エネルギー促進について、建築材料の断熱性能表示制度の対象拡大や
省エネ改修税制の見直しを検討。また、新たな断熱改修工法の提案、住宅の知識を有す
る省エネアドバイザー、未来型省エネルギー住宅のあり方を示すプロジェクト等を検討。
新エネルギー普及についても、太陽光発電等の新たな可能性にも着目しつつ見直しを含
め検討課題。
(6)関係省庁の連携
金融、税制、建築全般、林野、エネルギー、環境などに関わる行政を総合的に推進す
るため、関係省庁で密接に連携して、政府一体となって取り組み。
おわりに
理念や課題解決の考え方を示すだけでなく、具体的な取組を着実に進めることが重要で
ある。住宅産業が発展するためには当該産業に働く者が将来の夢や目標を持つことが必要
である。住宅産業は我が国経済を牽引し、国民の住生活を豊かにしていく産業でありたい
という気概・自立心としての「志」が将来を切り拓く。
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