...

『電子商取引の経済学』 第10章電子決済システム 吉田ゼミ 2 回生 保田

by user

on
Category: Documents
21

views

Report

Comments

Transcript

『電子商取引の経済学』 第10章電子決済システム 吉田ゼミ 2 回生 保田
『電子商取引の経済学』 第10章電子決済システム
吉田ゼミ 2 回生 保田真一
電子決済(クレジットカード、キャッシュカード)を可能にしている事実:
通貨、紙幣、硬貨といったものは貨幣的な価値を移転するのに使われる道具であるが、そ
れらとは異なって電子決済システムは、支払いの約束または契約を移転するものである。
デジタルマネーという製品に多大な関心が向けられている。市場で売買可能であることか
ら、その価値や有用性、利益制は市場によって決まる。
決済パターン
アメリカでは、小切手が一日 2 億枚も使われている。
小切手がここまで利用されているのはなぜか?
個人も企業も小切手清算が行われるまでの間(フロート)に利益を得ることができるから。
決済方法の選択には単純な便利さや取引費用低減以外の要素も影響する!
電子決済システムの種類
様々なインターネット決済規格やプロトコルが存在するが、それらは主に中間業者による
決済、電子資金移動(EFT)による決済、電子マネーによる決済の3グループに分けるこ
とができる。
電子商取引における決済システムに求められる条件とは?
「ウェブにおける購入に便利で、ネットワークでの転送が可能であり、電子的な干渉に強
く、小額の取引でも費用有効性が高いものであること。
」
決済プロセス
通常の購入におけるプロセス 売り手の特定
製品選択
価格見積もり
注文、支払条件の合意
身元のチェック
決済メカニズムの有効性のチェック
商品とレシートの交換 etc.
オンライン決済を対面決済の代わりに利用するためには、オンライン決済システムは、上
記の段階の全てまたは一部を決済機能の中に備える必要がある。
電子商取引では対面のやり取りが無いため、機密情報や身元の不確実性などといった安全
性に関する問題に対処する必要がある。電子商取引では安全性、身元、認証、決済のサポ
ートなどを提供する中間業者が必要である。
中間業者をはさんだ取引システムは次の3種類に分けられる。
1.
顧客の注文情報だけのケース
買い手、売り手の身元、製品名、支払額、その他販売条件は提供するが、決済情報、つま
りクレジットカードナンバー、小切手口座番号といったものは提供しないケース。中間業
者は中央集権化された商取引の実現者として、売り手・買い手双方のメンバー情報と支払
い情報を持つことになり、両者に代わって決済に関する決済秘密情報を処理する。
秘密の金融情報はオンラインで送信されないため、インターネットの安全性の低さは問題
にならない。
このケースで重要な問題は中間業者の信頼性である。
安全なオフライン決済 オンライン取引及び確認
売り手の 売り手
銀行
I 商品、
中間業者 D サー
番 ビス
号
買い手の
銀行 買い手
:決済
:決済要求及び確認
2.
重要な決済情報(クレジット番号や銀行口座番号など)を注文と一緒に送るケース
これは金融に電子データ交換(EDI)を用いたオープンなインターネットシステムである。
EFT を利用して決済を行うには、オンライン決済サービスに注文、勘定、受け取りを処理
する機能を追加する必要がある。決済システムはデジタルチェック(小切手のイメージ)
を使用し、既存の決済ネットワークに依存することができる。SET(Secure Electronie
Transaction)プロトコルは、Visa と MasterCard が提唱するクレジットカードベースのシ
ステムでデジタル証明を使用する。これは一種のデジタルクレジットカードである。
① のシステムは登録メンバー以外には利用できないのに対し、これは従来の支払い
システムと同様にほとんど全ての人々に対して有効である。このシステムでは、
クレジットカード情報はコンピュータで暗号化されているため、売り手はこうし
た機密情報を見ることなく情報の有効性を確認するだけで済む。しかし情報送信
時に第三者が秘密情報をインターセプトした場合、その情報が盗まれたクレジッ
トカードや、キャッシュカードのように悪用されることがありうる。
このシステムの問題は、オープンなインターネットシステムであるため安全性が低くなる
ということと、異なる決済プロトコルの相互運用性をどう保証するのかということである。
オンライン取引及び確認
売り手の
銀行
売り手
情報 商品、
決済サービス:EFT/EDI/VAN (小切手又は サー
による安全なオフライン決済 クレジット ビス
カード)
買い手
買い手の
銀行
:決済(NFT)
:決済情報
3.
決済情報を送信しないが、価値を表すデジタル製品であるデジタルマネーを送信する
ケース
デジタルマネー決済システムは、現金決済と同じように匿名性と便利さという利点がある。
同時に、二重使用、偽造、保管が重要な問題となる。
中間業者は外部貨幣(アメリカ通貨など)をオンライン市場で流通する内部通貨(トーク
ンや Ecash など)に変換する電子バンクとして機能することになる。
②のようなクレジットカードに基づく支払いは、取引費用がかなり安くても小額の購入に
は適していない。小額取引には、デジタルマネー決済システムの方が有効である。
デジタルマネーを発展させる主な動機は、現金取引の場合に提供されるプライバシー保護
機能を有していることである。電子決済システムでは、秘密の決済情報がネットワークで
やり取りされるが、デジタルマネーの場合、支払い情報で無く金額が転送される。安全性
が確保されるのだ。
さらに重要な機能は、二人の当事者が第三者を通さずにマネーを交換するピアツーピア取
引をオンラインまたはオフラインで行うことができることである。これを著者は貨幣革新
としている。
外部貨幣の決済 内部貨幣の移転
売り手の 仲介業者は外部貨幣と 売り手
銀行 内部貨幣を変換する
I 商品、
中間業者 D サー
番 ビス
号
買い手の
銀行 買い手
:外部貨幣の流れ
:内部貨幣の流れ
取引の情報内容
名前や住所、電子メールアドレス、電話番号など、買い手の特定可能な個人情報は消費ま
たは選好のデータと関連付けることができる。売り手は消費者情報を使って製品をカスタ
マイズし、買い手を価格で差別化し、各消費者が支払う意志がある最大の価格を請求する
ことができる。消費傾向や選好に関する情報をコントロールするために消費者がとること
のできる防衛手段は、取引のプライバシーを守ることだけである。
信頼性のある第三者を利用する決済システムの場合は、中間業者を使ってプライバシーを
保護する。
デジタルマネーは買い手の完全な匿名性を保証する。特にピアツーピア取引は完全に匿名
なので追跡することはできない。
取引の効率
クレジットカード利用の決済のためには高価な閉じられたプライベートネットワークを構
築する必要があった。インターネットを利用することによって過大なインフラ費用を大幅
に低減すれば、小規模な売り手や個人でも顧客に対して小切手やクレジットカード決済オ
プションを提供できるようになる。
経済に与える影響
取引速度(貨幣流通速度)の変化は実際の経済にはほとんど影響を与えない。一方、取引
の機会が増えると実際の経済は拡大する。貨幣がさらに便利になれば、経済において貨幣
が流通する方法も容易になるが、実際の効果は取引費用を低減することで経済的な効率と
経済活動全体のレベルを高めることにある。現在、提案されている多くの電子決済システ
ムは、取引費用にあまり効果が無ければ、実践的な経済効果なしに既存の決済システムに
とって変わるだけかもしれない。
多くの人が国際的な電子通貨を保有することを望む場合、政府による公開市場操作では通
貨量や金利を有効にコントロールできない場合がある。為替レートが支配的な外国通貨と
ともに変動する小さな国のように、国内貨幣政策は世界的なデジタルマネーによって無効
になることもありえる。
市場構成への影響
従来の取引では、取引を開始するのに必要な身元確認、認証、証明機能は、決済プロセス
から独立している。対照的に、電子決済システムはこうした事前チェックを同様に行わな
ければならないのに加え、決済、市場インフラ、証明、安全性、保険などの様々な機能を
統合しなければならない。このため、新しい種類の市場制度や価値創造プロセスが生じ、
競争に影響を与え、垂直的な統合を容易にする。
電子決済システムが相互運用性を欠いている場合、例えば消費者は各商店街へ行く度にそ
れぞれ独自の決済システムのメンバーにならなくてはいけない。
電子商取引では次々と新しい種類の製品が需要され、消費行動が新しくなるので、電子決
済システムもこうした変化に対応しなければならない。例えば、情報製品の小規模なセッ
ト販売や小額個別販売のために費用対効果の高い小額個別決済システムが必要となろう。
電子決済システムが取り組んでいる主な問題は、取引費用の低減や安全性の強化だけでは
なく、使用価値を付け加えて消費者の支持を得ようとか、様々な決済中間業者のために効
率的な価格戦略をとれるようにするといったことである。なぜなら、消費者の支払い意志
は取引費用だけでなく、便利さや、匿名性、オフラインでは利用出来ない他の要素のため
に増加することもあるからである。
デジタルマネーと政府
世界的なデジタルマネーの登場によって、外貨取引が消滅するということも考えられうる。
しかし、デジタルマネーによって既存の貨幣単位が増え、外国為替レートや取引が複雑化
するだけということも同様にありえる。
政府はいくつかの分野で自ら進んで、あるいは否応なしに重要な役割を果たす。
a.民間貨幣が発生することによる政府歳入の現象に対応しなければならない。
貨幣鋳造費用と貨幣の価値の相違から利益が生まれる。これを貨幣発行益という。したが
って、民間貨幣が発行されると、貨幣発行役や他の通貨操作に関連する政府の歳入の一部
が失われる。
b.様々な規制を設ける必要がある。
消費者保護や法律強化問題、政府の監視が必要なマネーロンダリング問題などを含んでい
る。
c.デジタルマネーを発行できるのは誰かについて法律的及び貨幣的な問題を解決せねば
ならない。
d.オンラインオペレータは物理的に移動することなく業務を他国のサーバーに移すこと
ができるため、政府の対策に効果が無い場合もありうることである。
要約
電子商取引のために過剰なほどの決済システムが提案されているが、適切な決済メカニズ
ムが無いため多くの企業はオンライン商取引をするのに消極的である。
消費者はクレジットカードシステムに慣れ親しんでいるので、電子商取引の標準としてそ
れの電子バージョンが普及する可能性がある。
しかし、比較的高額な取引のために開発された既存の決済方法は、ウェブベースの情報取
引には達していない。こうした小額な取引のためには費用対効果の高い個別小額決済方法
が不可欠である。
デジタル製品と同様にデジタルマネーの将来は市場の需要と供給によって決まる。したが
って隙間市場を開拓した決済システムが登場し、消費者は便利さ、費用、プライバシー、
信用拡大の利点などを選択して適切な決済方法を使用することになりそうである。
適切な決済方法が確立されれば、インターネットに商業的な情報時代が本格的に実現され
ることになるだろう。
Fly UP