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発展途上国への環境技術の啓発・普及に関する事業

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発展途上国への環境技術の啓発・普及に関する事業
平成16年度
発展途上国への環境技術の啓発・普及に関する事業
事業概要
1.補助事業の概要
(1)事業の目的
東南アジア、特にタイ・マレーシアの両国は急激な工業発展を続けていたが、数
年前に発生した経済破綻は環境対策に大きな遅れを生じさせ、結果として水質汚染
や有害廃棄物の不法処理など多くの環境問題が多発・顕在化しており、両国ではそ
の対策が緊急の課題となっている。
また、タイ工業省及びマレーシア科学技術環境省(現・天然資源・環境省)の要
請で過去 3 回に亘り環境技術フォーラムを開催し、多くの産官学の関係者に日本の
環境技術・装置について指導を行い、環境技術・装置の普及に貢献してきたが、ま
だまだ十分に普及されておらず、タイ・マレーシア両国から引き続き協力を望む声
が多い。
このような背景があり、我が国の環境装置メーカが保有する環境技術・装置の中
からタイ・マレーシアに最適な環境技術・装置の技術指導等を行い、両国環境技術
のレベルアップを図るとともに、自立的に環境対策が進展するシステムを整備する
ことを目的とする。
(2)実施内容・成果
本事業の実施内容は、1)政策提言、2)現地での環境技術フォーラム開催の2つに分
けられる。
1)政策提言
対象国の環境施策、環境汚染、技術レベル、ニーズ等の調査を行った結果、①税制、
②継続的支援の仕組み作り、の2点について提言を行った。
①税制
(a)海外投資等損失準備金制度の変更
環境インフラ BOT 等案件への出資者にも適用する。出資比率 10%以上、積立率
100%以上とし、10 年据置後、最長 10 年で取り崩しとする。
(b)日本の出資者の間接税額控除
BOT 案件への出資比率 10%以上の出資者に適用する。
②継続的支援の仕組み作り
(a)運転・維持管理等への資金協力
施設整備に重点を置いた資金協力から、施設整備後のプラントの運転、維持管理、
ひいては事業運営まで視野に入れたソフトウェア面での協力に対して資金協力(期
限付き無償)を行う。日本の ODA 資金で整備した施設を、日本の技術力で継続して
運転・維持管理し、継続的に環境サービスを提供する。
(b)公的研究機関での国際協力用技術開発の実施
相手国の予算とニーズに合ったシステムを提案可能にするため、公的研究機関で
装置やメンテナンスの研究開発を行う。効果的で相手国のニーズに合った国際協力
を実現するため、国として必要な技術開発を行う。これも、「日本が援助した装置が
稼働していない」等と批判されてきたことに対応するものである。
(c)メンテナンス大学の設立
日本国内での設立のみならず、相手国にも分校を設立して現地の技術者を教育訓
練する機関を設立する。これまでの施設整備に対する資金供与という「顔の見えな
い国際協力」から、このような現地での教育機関の運営をとおして、
「顔の見える国
際協力」を実現する。
この大学には、実際の運転訓練ができる規模のプラントと、そのプラントから排
出されるものの適正な処理・処分方法を用意することが望まれる。ただし、どこか
一カ所に整備するのではなく、大学自体は仮想的なものとし、アジア各国に日本の
ODA 資金で整備した施設に教官を配置し、各プラントでの実習をもって教育とし、そ
の全体を日本で掌握し、一定の教育訓練を経た者には資格を与えるといった方法が
現実であると考えられる。
日本の ODA 資金で整備した施設の運転・維持管理は、この大学から資格を与えら
れた者が担当するようになることが望まれる。
(d)「成長するインフラ」という考え方を国際協力に取り入れる
例えば、下水道の全く整備されていない地域に完璧な下水道を整備する計画を立
て、いきなり高級な処理施設を整備するのではなく、最終的な姿(グランドデザイン)
を相手国とともに立案して念頭に置きつつも、その時の経済状況などを鑑み適切と
考えられる規模やスペックのインフラから段階的に整備するという考え方を取り入
れる。当初は、部分的かつ低スペックなインフラを整備し、徐々に、相手国の経済
状況に応じてグレードアップしていくという「成長するインフラ」という考え方で
の援助を行う。
そして、相手国で環境サービス事業を展開し、そこで得られた適正な利潤を、さ
らに相手国の環境インフラを改善するために再投資するための仕組み作りを行う。
これを実現するため、国際協力のあり方について、要請主義から「地球環境保全
と相手国の環境保全主義」を部分的に導入することをはかる。
(e)環境面での相手国への情報提供
環境サービス事業は、商業ベースのプラントと違い事業化ベースにのらない案件
も多く、環境の重要性を相手国に理解してもらうための啓発活動(例:コンファレ
ンスの開催 etc)を国として開催する。
2)現地での環境技術フォーラム開催
下記の通り環境技術フォーラムを開催した。
① 環境技術情報交流フォーラム(マレーシア)
日時:2005 年 2 月 28 日(月)
場所:クアラルンプール
内容:マレーシア政府、自治体、大学、コンサル及び環境関連企業の担当者と
環境分野での現地事業化等、環境ビジネスに関する意見交換・情報交流
を行った。日本側約 30 名、マレーシア側約40名が参加した。
② 環境技術フォーラム(タイ)
日時:2005 年 3 月 3 日(木)
場所:バンコク
内容:タイ政府、自治体、大学、コンサル及び環境関連企業の担当者等に対し、
水・廃棄物処理、大気汚染、地球環境・エネルギー等の分野別に、我が国
の環境装置メーカが有する環境技術・装置の技術発表、技術指導等を行っ
た。約500名の参加者であった。
2.予想される事業実施効果
(1)地球環境保全への貢献
東南アジアの環境対策は、世界的にみても変容が激しく、環境負荷要素の大なる
地域である。環境負荷は、産業活動に密接に関連するため、この地域の負荷低減に
関する政策は、地球環境保全に寄与する。
(2)対象国における環境装置産業の育成支援効果
日本の環境装置産業の有する技術の移転等により当該国の環境保全産業の育成
を図ることにより、自助努力による環境対策を推進することが可能となる。
(3)日本の環境装置産業への効果
・日本の環境装置産業市場の確保
これらの国は、欧米にとっても有力な市場である。日本の立ち遅れは技術の
主導を欧米に渡すことになり、日本の業界にとり死活問題となる。
日本の環境装置産業の有する技術の移転等により当該国の環境保全産業の育
成を図ることにより、今後の日本の環境装置市場を確保することにつながる。
・海外拠点の形成
現地生産、環境監視等の技術育成は、国際的な幅広い環境ビジネスの形成に
つながる。
3.本事業により作成した印刷物等
○平成16年度
発展途上国への環境技術の啓発・普及に関する報告書
○環境技術フォーラム技術資料(タイ配布用、マレーシア)
○環境技術フォーラム技術資料(タイ用ポスター、マレーシア用ポスター)
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