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ルイスフォーム断面を有する2次元浮体の 波による漂流速度について

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ルイスフォーム断面を有する2次元浮体の 波による漂流速度について
ル イスフォーム断面を 有する 2 次元浮体の
波に よる漂流速度に ついて
運 動 性 能 部 *南 真 紀 子 ,谷 澤 克 治
1
まえが き
2.2
浮体と計 測装置
荒 天 下に おけ る 航 行 不 能 船 舶 の 漂 流 防 止 等に 関
供 試 浮 体に は ル イ ス フォー ム 断 面 を 有 す る 2 次
す る 研 究の 一 環とし て ,運 動 性 能 部では 大 波 高 時
元 浮 体を 用 い た 。主 要 目を 表 1 に 示 す。浮 体は 図 -2
の 漂 流 運 動 の 研 究 を 担 当し て い る 。本 研 究の 目 的
に 示 す よ う に ジ ン バル ,ロ ード セル ,ヒ ーブ ロッ
は ,航 行 不 能 船 舶の 波に よ る 漂 流 運 動を 精 度よ く
ド,キャリッジ で 構 成され た 動 揺 計 測 装 置に 取り 付
推 定 す る 手 法を 開 発 す る こと に あ る 。漂 流 運 動 を
け られ てい る 。この 動 揺 計 測 装 置は 水 槽に 取り 付
推 定 す る ために は まず 船 舶に 働 く 波 漂 流 力を 正
け ら れ たレ ール 上を 滑ら か に 動き 浮 体の 水 平 方 向
確に 把 握 す る 必 要が あ る 。これ まで の 研 究では 波
の 運 動 を 拘 束し な い 。
漂 流 力の 推 定 法を 確 立 す る た め ,弱い バ ネで 係 留
計 測 項 目は ,浮 体 運 動( ロ ール ,ヒ ーブ,スウェ
さ れ た 浮 体に 働 く 波 漂 流 力 を 実 験 ,理 論 ,数 値 計
イ ),水 面 の 上 下 動 ,漂 流 速 度 で あ る 。水 面 の 上
算 の 3 面 か ら 研 究し ,線 形 と 非 線 形 の 数 値 計 算に
下 動は ,6 個 の 波 高 計を 用い て 計 測し た 。そ の う
よ る 波 漂 流 力の 計 算 値が 共に 計 測 値とよ く 一 致 す
ち 5 個 を 浮 体 よ り 造 波 機 側に 設 置し ,合 田 の 方 法
るこ とを 確 認し た 1)2)3) 。そ こで 次 に ,漂 流 速 度 の
4)
推 定 法の 開 発に 焦 点を 移し ,基 礎デ ー タを 収 集 す
は ,基 準 点を 通 過 する 時 間を ストップ ウォッチで 計
るため 2 次 元 水 槽に おい て 漂 流を 許し た 状 態で 浮
測し 基 準 点 間の 平 均 速 度 とし て 求 め た 。原 点を 造
体の 波 浪 中 運 動と 漂 流 速 度 の 計 測を 行った 。また ,
波 機より 5.0m の位 置に とり,基 準 点を 1m 間 隔で 設
今 までに 得られ てい る 波 漂 流 力の 計 算 値を 用 い て
け た 。計 測 区 間の 全 長は 8.0m で ,漂 流 速 度は 計 測
漂 流 速 度の 推 定を 試み た 。本 報で は これ ら の 結 果
区 間 内で 一 定 値に 収 束し た 。
を 用 い て 入 射 波 と 反 射 波を 分 離し た 。漂 流 速 度
に ついて 報 告する 。
2
2.1
表 1 主要目
水槽実験
2次 元水槽
本 実 験は 海 上 技 術 安 全 研 究 所 海 洋 開 発 工 学 部の
Breadth
B
0.40
m
Length
L
0.49
m
Draft
d
0.20
m
2 次 元 水 槽 (長 さ=26m, 幅=0.5m,水 深=0.5m) に お
い て 実 施し た 。図-1 に 示 すよ うに 本 水 槽 の 左 端に
は 吸 収 式 造 波 機が ,右 端に は 消 波 板が 備 えら れ て
Displacement
W
39.2
kg
Metercenter height
GM
0.054
m
Lewis Form parameter
H0
1.00
い る 。また ,水 槽 の 側 面に は レ ール が 取 り 付け ら
Lewis Form parameter
σ
1.00
れ てい る 。
Natural Roll Period
Tr
1.32
1ch - 5ch
6ch
2.3
s
入射波
本 実 験 で は 、規 則 波 と 不 規 則 波 の 両 方 を 用 い
0.5m
た 。規 則 波は 無 次 元 化 波 数 (kB/2) が 0.4-2.0 ,波 高
図-1 2 次 元 水 槽
(HW ) が 2.0cm-7.0cm のも の で あ る 。こ の と き 波 傾
斜 (HW /λ) では 0.010-0.064 とな る 。また ,不 規 則 波
は 波 の パ ワ ー ス ペ ク ト ル を ISSC ス ペ クト ル とし ,
Rail
Carriage
Heaving rod
Gimbal
Drifting Speed (V/ Bg )
0.1
k
Exp.
0.08
2
99
1.4
a=
0.06
0.04
0.02
Load cell
200 mm
0
0
0.01
0.02
0.03 0.04
Hw / λ
0.05
0.06
0.07
0.06
0.07
0.1
400 mm
図-2 浮 体 模 型と 計 測 装 置
目 視 観 測 波 周 期 (TV ) を 0.88sec,1.02sec,1.32sec,
1.57sec ( TV に 対 応 す る 無 次 元 化 波 数 (kV B/2) で
は ,1.051 ,0.800 ,0.532 ,0.419 に 相 当 す る )と 変 化
さ せ ,それぞ れ 波 高を 5 点 計 測し た 。本 報で は ,TV
に 対 応 す る 波 長 λV と ,平 均 波 高 (H̄W = 0.625H V )
Drifting Speed (V/ Bg )
k
Exp.
0.08
034
1.4
a=
0.06
0.04
0.02
0
に よ る H̄W /λV を 不 規 則 波 の 代 表 波 傾 斜 と 呼 ぶ こ
0
0.01
0.02
0.03 0.04
Hw / λ
0.05
とに す る 。
抗力係数
浮 体 模 型の 抗 力 係 数を 求 め る た めに 浮 体 模 型を
曳航し ,速度と 浮体に かか る流体 抗力を計 測し た 。
流 体 抗 力はジ ン バル と ヒ ーブ ロッド の 間に 取り 付
け た ロ ード セル を 用 い て 計 測し た 。図-3 に そ の 結
果 を 示 す。横 軸は 速 度 (V (m/s)) で あ り,縦 軸は 流
Drifting Speed (V/ Bg )
0.1
2.4
k
Exp.
0.08
0.06
0.04
6839
a=0.
0.02
体 抗 力 (FD (N )) で あ る 。実 線は 実 験 点 の 2 次 の 回
帰 曲 線で あ る 。流 体 抗 力は ,速 度 の 2 乗 に 比 例し
FD =
0
0
0.01
0.02
0.03 0.04
Hw / λ
0.05
0.06
0.07
図-4 規 則 波 中で の 漂 流 速 度 と 波 傾 斜 の 関 係
1
ρACD V 2
2
(1)
と 表 され る 。こ こで ,A は 浮 体の 投 影 面 積 ,CD は
抗 力 係 数で あ る 。曳 航 試 験に よ り こ の 浮 体に おけ
3.0
2.5
Exp.
る 抗 力 係 数は CD = 1.449 と求 めら れ た 。
FD=71.007V2
FD (N)
2.0
3
実験結果
1.5
はじ めに 規 則 波 中で の 実 験 結 果 を 無 次 元 化 波 数
1.0
(kB/2) が 0.50,0.70,2.00 のも の に つ い て 図-4 に 示
す。横 軸が 波 傾 斜 ,縦 軸が 無 次 元 化 速 度( フル ー
√
ド 数 ,V / Bg )で あ る 。図 中 の 黒 丸 は 実 験 点 で ,
実 線 は 実 験 点 の 回 帰 直 線 で あ り,そ の 係 数 a を 図
中に 示し て い る 。図よ り 漂 流 速 度は お お む ね波 高
0.5
0
0
0.05
0.10
V (m/s)
0.15
図-3 流 体 抗 力 と 速 度 の 関 係
0.20
と 線 形 の 関 係で あ る と い え る 。
1.5
kV
Exp.
0.08
Linear Simulation
1
02
1.5
a=
0.06
1.0
CW
Drifting Speed (V/ Bg )
0.1
0.04
0.5
0.02
0
0
0.01
0.02
0.03 0.04
Hw / λv
0.05
0.06
0.07
0
0
0.5
Drifting Speed (V/ Bg )
0.1
kV
0.04
V
1
√
=
2
Bg
0.02
0.01
0.02
2.0
79
.36
a=1
0.06
0
0
1.5
図-6 数 値 計 算に よ る 波 漂 流 力
Exp.
0.08
1.0
k
0.03 0.04
Hw / λv
0.05
0.06
0.07
図-5 不 規 則 波 中で の 漂 流 速 度 と 波 傾 斜の 関 係
CW λ2 HW
ACD λ
(3)
と な り,比 例 関 係が 得られ 実 験 結 果と 定 性 的に 一
致 す る 。本 報で は , CW λ2 /ACD を 波 漂 流 速 度 係
数と 定 義 する 。次に (3) 式 を 定 量 的に 評 価 す る 。そ
のた め に は CW を 与 え る 必 要が あ るが ,これ は 数
値 計 算 等に よ り 高 精 度で 推 定 す る こ と が で き る 。
次に ,不 規 則 波 中で の 実 験 結 果を 無 次 元 化 波 数
図-6 に CW の 計 算値を 示 す 2) 。図の 横 軸は 無 次元 化
(kV B/2) が 0.419 ,1.051 のものに つい て 図-5 に 示す。
波 数 (kB/2) で あ る 。この CW を 用 いて 波 漂 流 力 を
これ ら は TV で は 1.57sec と 0.88sec で あ る 。横 軸は
推 定し た も の を 図-7 に 実 線 で 示 す。横 軸は 無 次 元
代 表 波 傾 斜 ,縦 軸は 図-4 と 同 様 の フ ル ード 数で あ
化 波 数 ,縦 軸は 波 漂 流 速 度 係 数で あ る 。ま た ,図
る 。実 線は 実 験 点の 回 帰 直 線で 不 規 則 波に おい て
中の 黒 丸は 規 則 波 中の 実 験で ,白 抜き の 丸は 不 規
も 波 漂 流 速 度 は H̄W と お お む ね 線 形 の 関 係 が あ
則 波 中 の 実 験で 得 ら れ た 回 帰 係 数で あ る 。規 則 波
るこ とが わ か る 。不規 則 波 中の 実 験では 実 験 毎に
中の 実 験 結 果は 推 定 値と お お むね一 致し てい る こ
異な る 時 系 列 信 号で 造 波し て い る た め ,入 射 波 の
とが わ か る 。ただし ,kB/2 < 0.5 の 長 波 長 域に お
時 系 列も 実 験 毎に 異なって い るが 漂 流 速 度は 安 定
いては 実 験 結 果が 推 定 値より 大き く な る 傾 向が あ
し て お り 再 現 性 の 高 い 実 験 結 果が 得ら れ た 。
る 。これ に 関 す る 考 察は 本 講 演 集の「 球 形ブ イの
4
波に よ る 漂 流 速 度に つ い て 」で 述 べら れ て い る 。
漂流速度の推定法
不 規 則 波 中の 計 測 結 果に つ い ては ,規 則 波 の も
波 漂 流 速 度は 波 漂 流 力と 流 体 抗 力の 釣 り 合 いで
決 定 され る 。波 漂 流 力は 波 高 の 2 乗 に 比 例し ,
の と 整 合 性が あ り,λV と H̄W 用 い る こ と に よ り
規 則 波 中 と 同 様に 推 定が で き る と 考 え ら れ る 。
最 後に ,図-4,図-5 に 示し た 回 帰 直 線は ,原 点 を
FW
1
2
= ρgBCW HW
8
(2)
通 過し てい な いが これ は 摩 擦の 影 響に よ る もの と
考えら れ る 。計 測 装 置 全 体で は 摩 擦が 7g 程 度あ り
と 表 され る 。こ こ で CW は 浮 体 の 動 特 性と 波 長に
浮 体が 動き 出 すために は 波 漂 流 力が これ 以 上の 大
よ り 定 ま る 無 次 元 化 波 漂 流 力で あ る 。(1) 式 と (2)
き さ に な る 必 要が あ る 。図-6 に 示 すよ うに 波 漂 流
式の 釣 り 合いか ら 漂 流 速 度と 波 高の 関 係 式を 求 め
力が 最も 大き くな る 無 次 元化 波 数 0.7 付近で は ,摩
る と,
擦の 影 響が 相 対 的に 小さい ので 回 帰 直 線が 原 点の
近 く を 通 過し て い る 。
4.0
Exp.(Regular wave)
Exp.(Irregular wave)
Estimation
Coefficient
a
3.0
2.0
1.0
0
0
0.5
1.0
k
1.5
2.0
図-7 波 漂 流 速 度 係 数
5
あとが き
参考文献
1. 規 則 波 中に おい て ,漂 流 速 度は 漂 流 力 と 流 体
1) 谷 澤 克 治 ,南 真 紀 子 : 非 線 形 シ ミュレ ーショ
ン に よ る 波 漂 流 力の 推 定 ,第 72 回 船 研 研 究 発
表 会 講 演 集 ,1998,pp181-185
2) 谷 澤 克 治 ,南 真 紀 子 ,沢 田 博 史 : 波 漂 流 力に
抗 力 の 釣 り 合 いか ら 決 定さ れ ,波 高と 線 形の
及ぼ す水 底 段 差 の 影 響に つ い て ,造 船 学 会 論
関 係が あ る 。
文 集 ,vol.187 ,2000
2 次 元に おけ る 浮 体の 波 漂 流 速 度に つ い て 実 験
を 行 い ,また 数 値 計 算で 得 ら れ た 値 と 比 較 検 討 す
る こ と に よ り 次 の こ とが 明ら か に なった 。
2. 不 規 則 波 中に お け る 漂 流 速 度は , λV と H̄W
3) Tanizawa,K., Minami,M. and Naito,S. : Estima-
を 規 則 波の 波 長 と 波 高に 当 ては め る こ とで 規
tion of wave drift force by numerical wave tank
Proc. 9th ISOPE Conf., vol.3, Brest, (1999)
4) 合 田 良 実 ,鈴 木 康 正 ,岸 良 安 治 ,菊 池 治 : 不
規 則 波 実 験に おけ る 入・反 射 波の 分 離 測 定 法,
則 波 と 同 様に 推 定で き る 。
3. 実 験で 求め た 抗 力 係 数 と 線 形 数 値 計 算 よ り 求
めた 漂 流 力 係 数 を 用 い て 推 定し た 漂 流 速 度 係
数は 計 測 値 と お お む ね 一 致し た 。
今 回 用 いた 線 形 数 値 計 算は 漂 流 速 度を 考 慮し た
もの で は な いが ,その 値 を 用い て も 推 定は 可 能で
あ る 。さら に 速 度 影 響 を 考 慮 す る ことに よ り 推 定
精 度が 上げ ら れ る と 考 え られ るので ,今 後 漂 流 速
度を 考 慮し た 線 形 数 値 計 算を 行い ,実 験 値との 検
討 を 行 う つも り で あ る 。
港 湾 技 研 資 料, vol.248,pp3-24, (1976)
5) 野 尻 ,村 山 : 規 則 波 中 の 2 次 元 浮 体に 働 く 漂
流 力に 関 する 研 究 ,西 部 造 船 会会 報 ,第 51 号 ,
(1975)
6) Maruo,H. : The drift of a body floating on waves,
J.S.R., Vol.4, No.3, (1960)
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