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オフライン教示システム 『K―OTS32』Windows 版について
Vol. 39. 1999―12(No.356) 技術レポート [Ⅱ] オフライン教示システム Windows 版について 『K―OTS32』 はら すすむ 原 督 ㈱神戸製鋼所 溶接カンパニー 溶接システム部 1.は じ め います。 に 神戸製鋼は、このような背景から、従来の MS― オフライン教示はロボットティーチングをパソコ ン上で行うもので、ティーチング作業の省力化、安 DOS 版 を ベ ー ス に Windows 版『K―OTS32』を 開 発しましたので、その報告を行います。 1) 全性の確保に役立つものとして期待されます 。 神戸製鋼は、このようなオフライン教示の利点に 着目し、8 6年ウエルディングショーへの出展以来、 パソコンベースのオフライン 教 示 シ ス テ ム『K― OTS』を販売してきました。 2.オフライン教示の取り組み 表1に神戸製鋼のオフライン教示に関する取り組 みをまとめます。 神戸製鋼では、従来の16ビットコントローラ型対 さて、最近のパソコンはめざましい性能向上を遂 応 ARC―MAN VX 販売とほぼ同時期にオフライ げると同時に、低価格なパソコンが提供されるよう ン教示システム『K―OTS16』を開発しています。 になってきました。また、基本ソフトである Win- このソフトは、当時としては珍しく、コンピュータ dows は操作性に優れ、事実上の世界標準となって グラフィックを駆使し、パソコン上で動作すること から、画期的であると評価を頂いておりました。 いっぽう、現行の K―OTS32は、95年1月にリリ 表1 オフライン教示に関する取り組み 日 付 区分 86年4月 87年4月 6 RON に対応し MS―DOS 版で開発しました。この K―OTS16リリース(MS―DOS 版) K―OTS32においては、パソコンの性能向上も手伝 32ビットコントローラ型対応ロボット ARCMAN RON シリーズリリース(電動6軸多間接型) 第2期 97年3月 99年10月∼ 容 内 第1期 16ビットコントローラ型対応ロボット ARCMAN VX シリーズリリース(電動6軸多間接型) 95年1月 95年12月 ースされた32ビットコントローラ対応型ロボット 第3期 って、ワークとロボットとの干渉チェックを標準装 備しました。また、シミュレーションにおいても、 ロボットソフトをそのまま実装することができるた K―OTS32リリース(MS―DOS 版) め、高い精度のロボットプログラム検証、評価がで K―OTS32 Ver.2 リリース(MS―DOS 版) きるツールとして仕上がってきています。さらに、 K―OTS32 Ver. 2. 3 リリース(Windows 版) 水平すみ肉1パス溶接など比較的容易な継手につい 技術レポート[Ⅱ] ては、簡易パス生成機能により自動的に作成するこ 1), 2) とができるようになっています 。 Windows 版 K―OTS3 2は、基本ソフトである Win- 箱内面など、ロボットがワークに隠れてしまう場合 でも、溶接線が透けてみえるため、ティーチングが よりしやすくなりました(図2)。 dows が保有する機能を利用し、より豊かな画面表 現が可能なものへと完成し、9 9年1 0月にリリースさ れています。 3. 3 3次元 CAD データの活用 オフライン教示を実施するにあたっては、ワーク ※ MS―DOS, Windows (9 5, 9 8) は 米 MicroSoft 社 の 商 標 登 モデルが必要になります。K―OTS32では、内蔵 CAD を装備し、その中でモデルを作成することができま 録です。 3.Windows 版の特徴 すが、設計段階での3次元化が進められている場合 には、CAD データも流用することができます。図 3. 1 パソコンを選ばない。 Windows ベ ー ス で 開 発 す る こ と に よ り、従 来 NEC の PC98 2 1シリーズに加え、NX シリーズ、IBM PC 互換機(DOS/V 機)での動作が可能になりまし た(表2) 。 3. 2 画面表示がより豊かに。 紙面の都合上、カラーでお見せできないのが残念 ですが、従来のシェーディング表示(面塗り)に各 種色指定が追加されました。また、従来の MS―DOS 版は画面の解像度が6 40*4 00ドットに限られていま したが、Windows 版にて、この制約を取り払うこ とができるため、より鮮明な画面仕上がりとなりま した(図1) 。さらに、画面表示に透明色が加わり、 図1 Windows 版 表示画面 表2 対応パソコン 項 目 パソコン 仕 様 デスクトップ:NEC PC9821 シリーズ、 NX シリーズ デスクトップ:IBM PC 互換機(DOS/V 機) CPU Pentium(2 0 0MHz 以上)※1 メモリ 3 2MB 以上※1, 2 ハードディスク 1GB 以上 フロッピー装置 3. 5” (3モード:1. 4 4MB, 1. 2MB, 7 2 0KB) 基本ソフト Windows9 5, 9 8 プリンタ端子 5ピン D―sub2 パラレル I/0 etc ※1 取扱うワークモデルのデータ量が大きい場合は、さらに増設する 必要があります。 ※2 Windows9 8ご利用の場合は、6 4M 以上必要になります。 図2 シェーディング機能の拡充 7 技術レポート[Ⅱ] 3は、 3次元 CAD で作成されたデータを K―OTS32 サポートしています。このため、プログラムを1元 で取り込めるようにデータ変換を行う『CADCNV』 化するためには、K―OTS32のインストールと Win- というソフトです(オプション)。データ変換は、 dows でネットワークの簡単な設定をすれば、実現 CAD で作成された CAD データファイル名を指定 できるようになっています。 し、 「変換開始」ボタンをクリックするという簡単 な操作で行えます。 図4に LAN の活用例を示します。図4では、事 務所側に、CAD 用パソコンと K―OTS 用パソコン なお、3次元データから直接取り込むことが確認 があります。また、工場側には、各ロボットに対し できたのは STL 形式データです。その他の DXF、 てプログラム転送用のパソコンがあり、これらのパ IGES 形式については、2次元図面を取り込むこと ソコンを LAN で結合しています。 ができ、K―OTS 内蔵 CAD おいて対話処理にて3 いっぽう、運用手順は、以下のようになります。 次元化することができます。また、DXF,IGES 形 まず、事務所 CAD で作成されたプログラムを K― 式データの3次元対応については、現在計画中です。 OTS パソコンで取り込み、前述の CADCNV にて ※ DXF は米 AutoDESK 社の商標登録です。 データ変換を行い、ワークモデルを作成します。次 IGES (Initial Graphic Exchange Specification)は CAD に、K―OTS32を用いて、作成されたワークモデル システム間のデータ交換用国際規格として無償で公開さ に対して、ロボット教示(ティーチング)を行いま れているデータ仕様です。 3. 4 LAN の活用が簡単に これまで複数のパソコンで作成されるプログラム の一元化のためには、サーバパソコンを核としたハ ード的なネットワーク構築と、LAN 専用ソフトが 必要でした。 す。そして、作成されたロボットプログラムをシミ ュレーションによって確認した後、ロボットプログ ラムをサーバパソコンとして利用している工場パソ コンに書き込みます。 いっぽう、工場側パソコンから各ロボットにプロ グラムを転送するためには、従来ロボットに直接接 最近のパソコンでは、LAN アダプタを搭載して 続されているパソコンがプログラムを独自に持たな いるものが 多 く、ま た、LAN 機 能 を Windows が ければなりませんでした。Windows 版により、工 図3 CADCNV の画面 図4 LAN の活用 8 技術レポート[Ⅱ] 場パソコンを LAN で結合させることができるた ボットがある場合、溶接条件は不均一になりがちで め、パソコン間で、プログラムを個別管理する必要 すが、データバンクというデータ形式で LAN を通 がなくなりました。 じての受け渡しができるため、事務所からの溶接品 また、事務所パソコンより、工場パソコンのロボ ットプログラムを調べることができるため、わざわ ざ工場に出向く必要もなくなりました。 このように LAN を活用することで、プログラム の一元化ができるため、ロボットプログラムの管理 が簡単になったといえます。また、工場で多数のロ 質管理にも役立つものと考えます。 な お、K―OTS32 Windows 版 の 仕 様 は 表3を ご 参考ください。 4.周 辺 ソ フ ト 今 回、K―OTS32 Windows 版 の 完 成 に 伴 い、各 種周辺ソフトも Windows 化を進めてます。 4. 1 データサーバ 表3 K―OTS3 2 Windows 版仕様 項 目 対応ロボット 内 容 3 2ビットコントローラ対応 ARCMAN RON, XL 画面解像度(ディスプレイに依存) ワイヤフレーム、隠線消去表示 表 示 シェーディング表示 拡大・縮小、視点移動・回転 2D 入力機能 プリミティブ図形入力 モデル修正機能(ミラー変換 ETC) モデル配置 モデリング 簡易据え付け ワーク配置キャリブレーション機能 大量のプログラムをパソコンで、ワークの種類ご とに管理するためのソフトで、工場での様々な運用 に合わせて、以下の機能を持っています(図5)。 a.ファイル管理機能 ロボットプログラム、データバンクなどを複 写、名称変更、削除することができます。 b.個別伝送 32C を パソコン側データをロボットに RS―2 通じて送信、または、ロボット側のデータをパ ソコン側に受信する機能です。 c.半自動伝送 個別伝送同様ロボットとのデータのやり取り 面→3D 機能 表示パーツ数(メモリ依存) 命令データ、軌跡編集機能あり 教 示 プログラム、データバンク編集 簡易パス生成 干渉チェック ポジショナ連動 シミュレーション スライダ連動 タクトタイム積算 FD, HD 入力 データ I/O シリアル通信(オプション) 画面のハードコピー そ の 他 オンラインヘルプ 画面内計測機能 図5 データサーバの画面 9 技術レポート[Ⅱ] に利用します。半自動伝送により、指定された 5.お プログラムおよび関連するプログラム、データ バンクをも一度に送受信することができます。 d.自動伝送(オプション) 工場ラインと連動し、ワークがロボットに投 わ り に 今回、オフライン教示システム『K―OTS32』の Windows 版とその周辺ソフトについてご紹介しま した。 入されたタイミングで、プログラムをロボット ご説明しましたように、Windows 版により、K― に送信するために利用します。プログラムを送 OTS32の画面表示機能が拡大しています。いっぽ 信するワークの機種名については、RS―232C う、パソコンの性能・操作性向上、低価格化にも著 を介して、タッチパネルなどからの情報を取得 しいものがあります。こうしたことから、今後は、 します。 パソコンを使ったオフライン教示がますます普及し e.2点シフト(オプション) ていくものと考えています。また、Windows 版に 橋梁パネルなどワークが床置きで、配置する より、K―OTS32による LAN 構築が簡単になった 場所が定まらない場合に、配置された位置に合 こと、LAN を活用することで、オフライン教示の わせてプログラムをシフトする機能です。ワー 運用がより便利になったこともおわかり頂けたと思 クの位置を取得する方法として、カメラを使っ います。今後は、こうした仕組みを活用し、様々な た方法と、ロボットを使った方法の2種類用意 分野における溶接ラインでの適用を試みるととも してます。 に、Windows 版の機能、操作性の向上に努めたい f.メモリ運転(オプション) と考えております。また、Windows 版の完成によ 2点シフトと併せて利用します。ワーク定盤 り、前号で紹介しました『鉄骨溶接システム用教示 に複数のワークを並べて、これらのワークを予 データ編集ソフトウェア』3)と同じプラットホーム 約運転するときに使います。 で利用できるため、これらを併せた新たな利用方法 も追求していきたいと思います。 4. 2 一括干渉チェック(開発計画中) 多品種少量生産で、K―OTS で確認するデータが 大量にある場合、一括干渉チェックを用いると、確 認作業が簡単になります。 一括干渉チェックは、事前に確認すべきワークと プログラムを画面にセットすれば、複数のワークに 対して連続運転で、干渉チェック、ロボット動作範 囲チェックを実施します。 一括干渉チェックはチェックの結果を記録として 参考文献 2/Arc 用 Pro 版」 の利用 1)原 : 「K―OTS3 1 9 9 7年 溶接だより技術がいど Vol. 3 7. 1 9 9 7―8 6 (No. 3 2 8) , P1 2―P1 2』によるロボッ 2)原 : 「汎用オフライン教示『K―OTS3 ト教示の自動化』 1 9 9 9年 溶接だより 技術がいど Vol. 3 9. 1 9 9 9―5 0 (No. 3 4 9) , P7―P1 3)定廣: 「ARCMAN―RON 鉄骨溶接システムと教示デー 残します。このため、万一、プログラムに不具合が タ編集ソフトウェアバージョン4. 0のご紹介」 あったとしても、後でまとめて修正することができ 1 1 9 9 9年 溶接だより 技術がいど Vol. 3 9. 1 9 9 9―1 るため、大量のプログラムがある場合でも効率よく 0 (No. 3 5 5) , P7―P1 作業を進めることができます。 10