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第5回

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第5回
n
Seaso
第5回
第
2
2
現代の発明家から次世
代への
リレーメッセージ
ー
ックス プロデューサ
(株)スクウェア・エニ
い ち む ら
りゅう た
ろう
市村 龍太郎 さん
いまから20年以上前に家庭用ビデオゲームとし
て発売された「ドラゴンクエスト」は、世代を超え、
ビデオゲームの枠を超え、今なお人々に愛され続
ドラゴンクエスト
モンスターバトルロード
けています。
その理由には、
「ドラゴンクエスト」自体のおも
しろさだけではなく、新しいユーザーを増やす工
夫がありました。
それは、発明者であり、プロデューサーでもあ
る市村さんの現状に対する問題 意 識やアイデア、
そして何より、人を楽しませるものを作りたいとい
う情熱が生み出したものなのです。
製品紹介
1986年に第1作が発売され、以降人気が続いている家庭用ビデオゲー
ム「ドラゴンクエスト」シリーズに登場する、多彩なキャラクターやモ
ンスターが描かれたカードを使い、敵モンスターと対戦を繰り広げる
アーケードカードゲーム機です。もともとシリーズで好評の対戦システ
ムを、ふたつの操作ボタンで遊べるよう簡略化し、なおかつ高い戦略性
があり、短時間でも満足度の高い遊びが楽しめるゲーム性を実現してい
ます。また、勝敗を決する要因になる「ゆうきゲージ」にボタン操作の
タイミングが影響を与えたり、ゲーム機に設置された「剣」を実際に動
かすことで勝負に決着をつけたりする要素も取り入れ、ダイナミックな
ゲーム展開も楽しめるようになっています。
市村さんが開発に携わった
「ドラゴンクエスト モンスターバトルロードⅡ」
製品・技術の発明・開発に取りかかったきっかけ
このタイトルを企画する当時、私はドラゴンクエストのユーザーが大人になっていく一方で、新し
い子供のユーザーが入ってきていないことを問題意識として持っていました。
なんとか子供たちにドラクエを伝える方法はないものかと考えていたときにちょうど、「甲虫王者ム
シキング(※)
」のようなキッズカードゲーム機にたくさんの子供たちが集まっている光景を見かけま
した。そのとき、まったく新しいジャンルで、こんなにもたくさんの子供たちを熱中させているコン
テンツがあるなんて!と感心し、そして「悔しい!」という強いジェラシーを感じたんです。ならば
このジャンルに挑戦して、多くの子供たちにドラクエを伝えてみよう!と思ったのです。
「悔しい!」というような「強い想い」は企画や開発をするうえで非常に大切な原動力だと思うのです。
私は、この想いに火がついて、この企画を作り出すことになりました。
※「甲虫王者ムシキング」は、株式会社セガの登録商標です。
第2期
第5回 ̶ ①
Season
次世代への
現代の発明家から
5回
リレーメッセージ
第
2
(株)スクウェア・エニックス プロデューサー
い ち むら
りゅう た
ろう
市村 龍太郎 さん
ドラゴンクエスト
モンスターバトルロード
発明・製品開発に当たってとくに工夫した点や苦労した点
当時、
「キッズカードゲーム」というジャンルにはたくさんのゲームがあり、その中で後発である我々
が戦うために必要なコンセプトを掲げました。「圧倒的なインパクト」と「シンプルかつ奥深いゲーム性」
の2点です。私が頭にイメージしたゲーム機の手書きイラストが掲載されていると思いますが(恥ずかしい)
ゲーム機の中央に「剣」がぶっ刺さっています。
一目見て「触ってみたい!」と思わせるインパクトを出しています。そしてボタン2つだけのシンプル
操作で、小さな子供から、ドラクエファン
の大人まで遊べる奥深いゲーム性を追及
したのです。
特に苦労したのは、ゲームがある局面に
なると剣がせり上がってきて、さらに突き
刺すという機構の実現でした。当初、機構
担当者は安全性や耐久性など、色々な面か
ら見て実現は不可能に近いと言っていま
した。しかし、
「圧倒的なインパクト」を
実現するためには絶対に乗り越えるべき
ハードルとして、開発メンバー全員で試行
錯誤して、なんとか機構を考え出し、実現
に結びつけました。結果として、この剣の
機構はやはりこのゲームの代名詞とも言
える最大の特徴となったのです。
市村さんによる手書きイラストと「ドラゴンクエスト モンスターバトルロード」
次世代へのメッセージ
発明は、何か発明しようと思って生まれるものではありません。何かの目的を達成するために生ま
れてくるものです。
私は、
「人を楽しませたい」という大きな目的のために、あらゆる手段や方法を考えて、考え抜い
た結果それが「発明」につながりました。大切なのは先にも述べましたが「強い想い」です。そして、
その想いを共有できる「頼れる仲間」がいることで、よりその目的へ確実に近づけるのだと思います。
ほう び
そして目的を達成できたときには、すばらしいご褒美が待っています。たくさんの人たちに「面白
い!」
「こんなゲームが遊べるなんて幸せです!」
「ありがとう!」とお言葉をいただけたとき、このゲー
ムを作って本当によかったなと思いました。そして関係スタッフのみんなに、「このゲームに関われて
本当に良かったです。」と言ってもらえたときに、もっと幸せを感じることができて、思わず泣いてし
まいました。関わったすべての人たちが幸せで楽しんでもらえたときの喜びや達成感は、他では味わ
えないものです。
そんな、たくさんの人たちが幸せになるものを作っていってください。きっとその先には、すばら
しい発明が待っているはずです!
第2期
第5回 ̶ ②
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