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大邦法律速報-2016年7号

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大邦法律速報-2016年7号
<7 月号· Executive Summary>
You Tube 等の動画サイトでは、投稿されたゲームの実況録画の放映がメジャーな分野の一つに
なっていますが、それは著作権上どのような取り扱いになっているのでしょうか? 日本では、著作権
法上、ゲームは「映画の著作物」とされており、ゲーム画面を録画・録音することは「著作物の複製」
に該当することになります。従って、ゲーム・メーカー等の著作権の権利者の許可なく、これをネット
に公開することは違法となるのが原則です。ただ、ゲーム・メーカー等は、様々な条件を付けて、許
容しているのが実態です。さて、最近、上海で、ゲームの映像を巡って、二つの異なった訴訟事件に
ついて判決が下され、話題を呼んでいます。「判例考察——デジタル・ゲームの競技映像は、映画に
類似する著作物に該当するであろうか?」では、中国でのゲーム産業及び動画サイトの近年の勃興
を背景に、ゲームの実況動画のネット配信について著作権法上の問題点を論じています。
さて、次に信用情報について。クレジットカードやローンの申し込みをした際には、審査にパスする
必要がありますが、その審査をする際に重要になるのが、その申し込みをした個人の信用情報です。
日本では、カードやローンの支払い状況、残高等の信用情報が各種信用情報機関によって収集さ
れて、会員に提供されています。中国では個人及び企業の信用情報については、公的部門の関与
度合いが深いと認識されていますが、近時、上海で地方立法の方向性が示されたことを踏まえ、「信
用関係法規の立法に関する考察」では、先ず、国及び地方レベルでの法律・法規の制度を概観した
上で、今後の課題等を考察しています。
以上
⿻ IP in China
判例考察——デジタル・ゲームの競技映像は、映画に類似する著
作物に該当するであろうか?
( by/陳斌寅)
先日、上海裁判所は、ゲーム映像の著作権を巡って起きた「奇
跡」紛争事件と、「DOTA2」生中継に関する紛争事件について、
夫々、判決を下し、社会的に注目を集めている。奇跡紛争事件
において、裁判所は、ゲーム映像が映画に類似する著作物に該
大邦法律速報
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当すると認定した。他方、
「DOTA2」生中継紛争事件においては、
デジタル・ゲームの競技映像が著作法上の著作物に該当しない
と認定した。一見、矛盾しているように見える二つの判決をど
のように理解すれば良いであろうか?…… 「全文」
------------------------2016.07
No.121
本ニュースレターは無料でご
提供する法律情報でありま
す。
⿻ 行政法規
信用関係法規の立法に関する考察
(by/呂璇璇)
2016 年 2 月、上海市人民代表大会のオフィシャル微信には、「上
海市人大常委会 2016 年政務要点(草案)」が掲載されており、その
予備項目に「上海市社会信用システム建設条例」の起草が含まれて
いる。本稿では、現行の信用関係法規に基づき、法に携わる者の視
点から、今回の上海での地方立法について、下記に幾つかの意見
を述べる。 …… 「全文」
⿻新法速報
(表 題 をクリックすると全 文 が
ご覧 いただけます。)
1.
「信 用 順 守 への連 合奨 励と信 用 喪 失 への連 合懲戒 制 度
の整 備 による社 会 誠実 信用 構 築 の促進 に関 する指 導 意
上 海 大 邦法 律 事務 所
住所:上海市南京西路 819 号
中創大厦 21 階
TEL:8621-52134900
FAX:8621-52134911
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見 」の発 布 /国 務 院
2.
「香 港 ・マカオ住 民 の中国国 内 での個 人 工 商登 記管 理 条
件 の緩 和 に関する意 見 」の発 布 /国 家 工商 総 局
3.
「資 本 項 目 外貨 決 済管 理政 策 の改 革及 び規範 に関 する
通 知 」の発 布 /国 家外 貨管 理 局
4、 「上 海 市 企 業賃 金 支払 弁法 」の発 布 /上 海 市人 力資 源 ・社
会保障局
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ご提示:本ニュースレターは無料でご提供する法律情報ります。大邦法律速報の版権は上海大邦法律事務所に帰属して
います。ご興味のある皆様方を中心にご参考までにお送りさせて頂いてます。News Letter 中の文章は、弊事務所弁護
士の正式な法的意見を提供するものではありません。リーガル・サービスの提供が必要な場合は弁護士へその旨具体
的にご相談下さい。お問い合わせ、配信の新規登録・変更・停止は、[email protected] までご連絡ください。
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2016. 07. 01
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判例考察——デジタル・ゲームの競技映像は、映画に類似する著作物に該当するであろ
うか?
文/陳斌寅
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先日、上海裁判所は、ゲーム映像の著作権を巡って起きた「奇跡」紛争事件と、「DOTA2」生中継に関
する紛争事件について、夫々、判決を下し、社会的に注目を集めている。奇跡紛争事件において、裁判
所は、ゲーム映像が映画に類似する著作物に該当すると認定した。他方、「DOTA2」生中継紛争事件に
おいては、デジタル・ゲームの競技映像が著作法上の著作物に該当しないと認定した。一見、矛盾して
いるように見える二つの判決をどのように理解すれば良いであろうか?
一、二つの紛争事件に対する裁判所の判決理由
「DOTA2」生中継に関する紛争事件は、中国国内で、デジタル・ゲーム競技の中継映像を巡って、起
きた初めての紛争事件である。裁判所は、下記の理由に基づき、デジタル・ゲームの競技映像が著作法
上の著作物に該当しないと判定した。「本件に関わるゲームの競技は、シナリオ等の事前設計が存在し
ない。競技映像は、ゲームに参加した両方のプレイヤーがゲーム・ルールに従って操作を行ない、形成
された動画であり、その競技経過を客観的且つ直観的に表現したものである。 ゲームの競技経過には
偶然性を有するので、複製することができない。更に競技結果にも不確定性が存在することから、競技映
像が著作法上の著作物に該当しないと認定するのが相当である」。
一方、奇跡紛争事件において、裁判所は、ゲーム映像について、次のように認定した。「其々のプレイ
ヤーの操作によって、具体的に表示される連続影像は、異なってくるが、ゲーム開発者が、プレイヤーの
操作による影像の変化の範囲を予め織り込んだ上で、ストーリーを設定し、統一的な作品として、ゲーム
を製作していることから、プレイヤーはゲーム開発者の設定を超えて、画面を修正することができない。ま
た、プレイヤーが、ゲーム映像に、ゲーム開発者の事前設定を超えた内容を加えたことを証明する証拠
も提出されていないことから、プレイヤーの操作は著作物の創作性の要件を満たしていないと考えられる。
それ故、ゲーム映像を映画に類似する著作物と認定するのが相当である。その著作権は、ゲーム開発者
に帰属する」。
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二、 判決理由に関する分析
上記の判決結果から見れば、裁判所が同様の問題に対し、矛盾した認定を下したと誤解されるかも知
れない。然しながら、上記の判決理由と紛争事件の具体的な内容を分析すれば、二つの判決の着目点
の相違を理解することができるであろう。
1. 起訴事由の異なり
「DOTA2」生中継に関する紛争事件において、原告は自社が生中継権を有するデジタル・ゲームの競
技映像(ゲーム進行動画)が、被告に無断配信されたとして、訴訟を提起した。プレイヤーのゲーム操作
によって、形成されたゲーム映像が著作物に該当するか否かが主な争点となっている。他方、奇跡紛争
事件においては、原告は、被告のオンラインゲームが自社の人気ゲーム「奇跡」の全体概念と具体的構
成要素を盗用したと主張した。原告の一部の主張内容が重複しているが、完全に一致しているわけでは
ない。
2. デジタル・ゲームの競技映像が著作法上の著作物には該当しない
奇跡紛争事件においても、裁判所はゲームの事前設定映像と競技映像を区別している。ゲームの事
前設定の連続影像を、映画に類似する著作物と認定する場合には、次の三つの固定要素を具備する必
要があるとされている。①地図、場景、モンスター、NPC 等の要素を含む静止画場景。②事前設定の連
続影像と連続影像の組み合わせ。③静止画場景と事前設定影像を繋げるストーリー設定。その上で、裁
判所は、ゲームの競技映像について、「プレイヤーが、ゲーム映像に、ゲーム開発者の事前設定を超え
た内容を加えたことを証明する証拠も提出されていないから、プレイヤーの操作は著作物の創作性の要
件を満たしていない」 と認定した。
尚、「DOTA2」生中継に関する紛争事件においては、「競技経過に偶然性を有することから、複製する
ことができない。更に、競技結果にも不確定性が存在することから、競技映像が著作法上の著作物に該
当しないと認定するのが相当である」と明確に判示した。
奇跡紛争事件において、裁判所はゲームの事前設定映像が、映画に類似する著作物に該当すると
認定した。然しながら、ゲーム競技又はゲーム進行映像については、「DOTA2」生中継に関する紛争事
件と同様に、著作品に該当しないと判示した。
3. ゲームの競技映像が著作物に該当することが認められなかった理由
裁判所は、二つの紛争事件に対し、ゲームの競技映像が著作物に該当しないと、一致して認定して
いる。 但し、「DOTA2」生中継に関する紛争事件では、著作物の定義に重点を置き、奇跡紛争事件で
は、創作的行為に重点を置き、認定を行った。
「著作権法実施条例」第二条は、著作物の認定は、独創性と複製性の要件を満たす必要があると定め
いている。「DOTA2」生中継に関する紛争事件の判決は、この点について、「競技経過に偶然性を有す
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ることから、複製することができない。更に、競技結果にも不確定性が存在することから、著作物の複製性
の要件を満たすことができない」との見解を示した。
「著作権法実施条例」第三条は、著作物法における創作は、文学、芸術、科学作品を形成する知的活
動である。奇跡紛争事件の判決は、この点について、「プレイヤーによるゲーム競技映像に、ゲーム開発
者が事前設定した以外の素材が加えられていない」との見解を示した。新しい素材も作成されていないこ
とから、プレイヤーの競技映像が、文学、芸術、科学作品に該当するか否かを検討する必要もないと言え
る。
筆者は、奇跡紛争事件におけるプレイヤーによるゲームの競技動画が、著作物に該当しないとの判
断に賛同している。競技動画は複製することができない。競技結果に不確定性が存在するのはゲームに
事前設定されている範囲内で、プレイヤーの主体的参加によって、多様なストーリーが展開された結果
である。複製不能及び不確定性は相対的なものである。ストーリーの展開経過及び表示内容は複製する
ことができる。文学、芸術、科学作品を形成するか否かは、プレイヤーの操作が創作性を有するか否か
に係っていると言える。例えば、映画のカメラワークは限らているものである。その具体的な運用に、偶然
性を有することから、結果に不確定性が存在する。撮影作品が、著作物に該当するか否かは、撮影内容
が、著作法における著作物の要件を満たしているか否かに係っていると言える。
三、 競技動画に関する著作物認定及び著作品種類区分の意義
著作物に関わる紛争事件を審理する際、裁判所は通常、先に著作物認定及び著作物種類の区分を
行う。なぜ、そのような認定を行うことが必要であろうか。筆者は、少なとくも次の三つの理由があると考え
ている。
先ず、著作物認定及び著作品種類区分は、紛争事件の係争対象の利益が、著作権法に基づき、調
整することができるか否かを確定するために、行なわれるものである。
第二に、著作品種類の区分は、権利種類の明確化によって、権利侵害の認定を図るものである。「著
作権法」は、4種の人身権利(著作者人格権)、12種の財産権利及び1種の包括的権利を定めている。
権利者の権利行使の限界を定めたものではなく、非権利者による権利侵害の禁止を明示したものである。
尚、権利ごとに、適用される著作物も異なっている。例えば、賃貸権は、映画作品及びコンピュータ作品
のみに適用される。展覧権は、美術作品に適用される。従って、本のレンタルは、権利侵害に当たらない
とされるが、映画・ビデオ作品のレンタルは、権利侵害に当たるとされる。実際に審理する際に、裁判所
は、著作品種類を確定した上、関連事件における非権利者の行為が権利侵害に当たるか否かを確定す
る必要があると言える。
最後に、著作品種類区分は、損害賠償額の確定に関わっている。著作権法の規定によれば、損害賠
償額は、権利者の受けた損失又は権利侵害者が不正に得た利益によって、算定されるとして、かかる金
額の算定ができない場合には、裁判所が事情酌量し、賠償額を確定することができる。実際の所、権利
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者の受けた損失又は権利侵害者が不正に得た利益を算定することは非常に困難であることから、殆どの
判例では、裁判所が事情酌量し、賠償額を確定することとなっている。著作品種類の区分は、損害賠償
額の酌量に重大な影響を与えていると言える。
文字作品と美術作品への権利侵害の賠償額が相対的に低い(一枚の作品の賠償額が千元を下回る
ケースもある)ので、オンライン・ゲームが文字作品、美術作品、音楽作品と認定された場合には、ゲーム
製作及び運営過程の労働価値と商業価値を十分に反映することができないと言える。他方、映画・ビデ
オ作品の製作過程は、ゲームと類似しており、商業価値も比較的高いことから、映画と映画に類似する
著作品(映画・ビデオ作品)に該当すると認定された場合には、比較的高額な賠償を得ることができると
考えられる。
デジタル・ゲーム及びゲーム競技産業は急速に発展している中、知的財産権法律の関連分野への保
護規定は十分に整備されているとは言い難い。権利救済を図るため、権利者は様々な手段を講じるよう
になっている。 目下、裁判所は、不正競争防止法を主な依拠法として、ゲーム競技映像及び生中継映
像へ権利保護を図っている。尚、ゲーム競技を録画したものを録音・録画製品として、著作権保護を与え
る判例もある。直接的な保護規定が定めされていないことから、法律面での関連課題の検討は非常に有
益であり、ゲーム競技産業の保護に有利に働くであろう
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行 政 法 規
信用関係法規の立法に関する考察
文/呂璇璇
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中国における「信用」関係の法律は国レベルの政策、行政法規及び地方規則等が併存しており、
その規制対象によって、公的分野の「信用管理」を中心とする市場の監督管理制度及び民間分野
の信用活動、即ち、経済分野の「信用調査」を中心とする監督管理制度に分けられる。
公的分野の信用関係法規については、2007 年、信用情報システムの構築を法的範疇に組み入れ
た中国初の公共の信用関係法規を陝西省が発布しており、2014 年6月には、国務院が「社会信用
システム構築に関する企画綱要(2014 年―2020 年)」
(以下、
「国家綱要」)を公布、更には、直近
の 2016 年3月には、上海市が「上海での公共信用情報の集計及び使用管理弁法」等を公布してい
る。民間分野の信用関係法規については、2002 年に江蘇省、北京市、広東省、浙江省等が公布し
た個人及び企業信用調査に関わる規則、2013 年3月及び 12 月に中国人民銀行が公布した「信用
調査業管理条例」
、
「信用調査機構管理弁法」等が挙げられる。
信用立法の主管部門及び範囲から見れば、公的分野の「信用管理」については、国務院及び関
連主管部門が、管理監督責任を負い、公共信用情報の集計、使用及び関連奨励・懲戒制度を実施
している。一方、民間分野の「信用調査」については、中国人民銀行が管理監督責任を負い、海
外先進国の「信用調査」制度と同様の制度が導入されている。2016 年、上海市人民代表大会のオ
フィシャル微信には、
「上海市人大常委会 2016 年政務要点(草案)」が掲載されており、その予備
項目に「上海市社会信用システム建設条例」の起草が含まれている。本稿では、現行の信用関係
法規に基づき、法に携わる者の視点から、今回の上海での地方立法について、下記に幾つかの意
見を述べる。
一、 「信用調査」に関する立法概要及び関連分析
現在の所、中国では、信用調査分野において、
「信用調査業の管理条例」、
「信用調査機構の管
理弁法」等の国務院規定、
「深セン市個人信用調査及び信用評価の管理弁法」
、
「江蘇省個人信用
調査及び信用評価の管理弁法」等の地方法規が施行されている。中国の信用調査活動は、その
サービス対象によって、企業を対象とする信用調査業務(企業信用調査)及び個人を対象とす
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る信用調査業務(個人信用調査)に分けられ、企業に関する信用調査は届出制度、個人に関する
信用調査は、行政許可制度(今のところ、政府に許可された個人信用調査会社は、未だない)が
施行されている。現行の「信用調査」規定は、主に下記の二つの内容が含まれている。
一、信用調査会社の設立、経営に関する規定、
二、情報主体の情報収集コンプライアンス、使用、異議処理等を含む信用調査業務の展開に
関するコンプライアンスに関する規定
中国の信用調査制度は、情報通信技術の進歩に伴って、発展してきたと言える。情報技術の
革新によって、信用調査は、更に便利になっている。欧米先進国の「信用調査」制度と比べ、中
国は、信用情報収集(即ち、
「選択オプション」問題)、個人プライバシー保護及び情報収集の必
要性、信用情報の安全、信用修復(不良信用情報期限過ぎの調査不可制度)等の問題等に対し、
更に慎重に対処する必要があろう。中国人民銀行より公布された「信用調査業の管理弁法(草
案)
」
(銀徴信「2016」5 号)は、
「信用調査機構」、
「情報提供者」、
「情報使用者」の定義及び其々
の法的責任、
「個人財産情報」
、
「その他の個人情報」及び収集原則、
「個人信用調査製品」の内容
及び主体要求、
「信用調査機構」へのコンプライアンス要求の規範化、国境を超えた情報流動の
制限等について詳細に定めている。こられの規定は、ネット環境下の信用調査によって、発生
しうる情報主体の権益への侵害及び情報安全問題の解決に資するであろう。
二、 公的分野の信用管理制度の概要及び分析
国家綱要が発布された後、中国当局は行政通知・命令等を通じて、公的分野の信用管理制度
の充実化を図っている。国務院より公布された「信用順守への連合奨励と信用喪失への連合懲
罰制度の整備による社会信義誠実システム構築の促進に関する指導意見」
(国発「2016」33 号)
は、その重要なポイントについて規定しており、
「国家綱要」と同様に、社会信用システムの健
全化を図り、信用を中心とする新しい市場の監督管理体制の構築を促進するという目標を掲げ
ている。
信用を中心とする新しい市場の監督管理体制を構築することは、法に基づく行政制度が絶え
ず整備されていくことの具現化であり、その目標を実現するためには、下記の問題を明確化さ
せる必要があると言えよう。
1、社会の信義誠実は、信用調査業界の「信用」に該当するのか。
2、公的分野の「信用管理」は、道徳面における「信義誠実」と法律面における「法律順守」、
「契約履行」を区別する必要があるか。
3、公的分野の「信用管理」に対し、関連する国家基準を設け、信用と関わる各種の行為と状
態の定義を定める必要があるか。
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三、 今回の地方立法に関する考察
民間分野の信用立法と比べ、公的分野の「信用管理」制度の立法は、民生に重点を置いている
と言える。地方政府は、立法の際に、上位法及びその他の部門法の関連規定を順守した上で、実
際に存在する課題の解決を図り、下記の要点について検討する必要があると考えられる。
1、情報主体に自己の情報について自主決定権、即ち「個人情報」の所有権を与える必要性。
「個人情報」と「ビッグデータ」の関係を明確化し、情報主体に「個人情報」収集の承諾
を撤回する権利を与える。実際のところ、消費者の「個人データ」の流動経由ルートにあ
る各サプライヤーがそれらのデータを違法に販売、提供、加工、使用する可能性があるの
で、規制を行なわなければ、
「個人信用調査」機構が乱立し、相互の情報の乗り入れが欠如
する「情報孤島」問題、
「データ基準が形成し難い」等の問題を生じ、信用調査の信憑性が
損なわれ、業界の長期的発展にマイナスの影響を与える恐れがある。
2、情報主体に充分な「同意権」を与える必要性。個人情報を集取する際に、情報主体に選択
オプション権に与え、その明確的な同意を得ると同時に、選択オプション権の行使により、
取引と福利分配を受けるチャンスを失うことがないよう合理的に制度を設計する必要があ
ろう。
3、個人情報の提出基準を定め、第三者が公共信用情報収集プラットフォーム、金融基礎デー
タベース、その他の情報収集プラットフォームに提供するデータの品質を向上させ、無効
データによる妨害を回避することを図る。2016 年 2 月に設立された「全国社会信用標準化
に関する技術委員会」
(国標委総合「2016」9 号)は、地方の立法に技術支援を提供するこ
とが可能となっている。
4、信用奨励懲罰制度に関する評価の仕組みを導入し、必然性、関連性のないの個人情報の濫
用が情報主体の福利減損を生じることを回避する。公的分野の奨励懲罰制度は司法解釈を
法的根拠としている。実際に実施する際は、国家政策の支持と各部門間の協力も必要とな
るので、科学的かつ普遍的な評価システムと適用準則を制定する必要があろう。
最後に、公共情報と金融情報の公的分野と民間分野の間での無制限の共有については慎重を期
する必要があろう。将来、国境を超えたデータ流動は、国際貿易の重要な構成部分となるであろ
う。特に、金融、医療分野においては、重要な信用データの安全規則を定める必要があると言え
よう。
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新 法 速 報
1、 「信用順守への連合奨励と信用喪失への連合懲戒制度の整備による社会誠実信用構築の促進
に関する指導意見」の発布/国務院
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国務院(2016年6月12日)は、
「信用順守への連合奨励と信用喪失への連合懲戒制度の整備によ
る社会誠実信用構築の促進に関する指導意見」(以下、「意見」
)を発布した。
「意見」は、信用情報の開示及び共有を更に進め、社会信用システムの構築を促進する方針
を示している。市場主体が法に基づき、誠実に経営を行なうことを促し、市場の正常秩序を維
持し、誠実信用を守る社会環境の構築を図るために、法規に基づく信用奨励・約束手段を運用
し、政府、社会が共同で参画できる政府部門・業界分野の垣根を超えて信用順守への連合奨励
と信用喪失への連合懲戒制度を整備するよう要求している。
【法規全文】
2、 「香港・マカオ住民の中国国内での個人工商登記管理条件の緩和に関する意見」の発布/国家工商
総局
目 次 に戻 る
国家工商総局(2016年5月31日)は、
「香港・マカオ住民の中国国内での個人工商登記管理条件
の緩和に関する意見」
(以下、
「意見」
)を発布し、香港・マカオ住民の中国国内での個人工商登記
登録、外資審査、身分確認等において、関連条件を緩和し、香港、マカオ永久住民の中国公民(以
下、香港・マカオ住民)による中国国内での投資・起業を奨励する方針を示した。【法規全文】
3、「資本項目外貨決済管理政策の改革及び規範に関する通知」の発布/国家外貨管理局
目 次 に戻 る
国家外貨管理局(2016 年 6 月 15 日)は、
「資本項目外貨決済管理政策の改革及び規範に関す
る通知」を発布した。
「通知」は発布日より施行されることとなっている。その主な内容は以下の通りである。
一、外債資金の外貨任意決済を全面的に実施する。二、国内機構の資本項目の外貨任意決済政
策を統一する。三、外貨管理関連規定に従い、国内機構の資本項目の外貨収入及び外貨決済資
金を使用する必要があり、資本項目収入使用に対し、ネガティブ・リスト管理を施行すること
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を明らかにした。その上、関連ネガティブ・リストの項目を大幅に削減した。四、資本項目収
入及び外貨決済資金の支払管理を規範化し、業務展開三原則に基づき、真実性審査を行うよう
要求している。五、事後監督管理を強化し、規定違反行為に対し、厳しく処罰する。【法規全
文】
4、「上海市企業賃金支払に関する弁法」の発布/上海市人力資源・社会保障局
目 次 に戻 る
上海市人力資源・社会保障局(2016 年 6 月 27 日)は、改正「上海市企業賃金支払に関する
弁法」を発布した。2016 年 8 月 1 日より、施行されることになっている。現行の「上海市企業
賃金支払に関する弁法」は同時に、廃止されることとなる。
新しい「弁法」は、実務上、労働争議が多発している残業手当及び休暇手当の算定基準、一
部の法定休日の給与算定等の問題について定めた上、伝染病を罹患する疑いのある労働者又は
病原携帯者の密接接触者に対し、雇用企業はその隔離観察期間において、通常出勤と同じ給与
を支払う必要があると規定している。【法規全文】
今月号写真
「その他の日本語版の中国法律情報は、こちらからお入りください。」
その他の中国語版の中国法律情報:
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今月号写真:
撮影者:
潘麗雲
弁護士
写真説明: Azure Window マルタ共和国GOZO島、2016年2月に撮影。
本ニュースレターは無料でご提供する法律情報であります。本ニュースレターに掲載されている文章は弁護士個人の見解で
あり、当事務所の意見を代表するものではありません。皆様へご参考までにお送りさせていただいており、弁護士の正式な
法的意見ではありません。当事務所又は弁護士は、読者が本ニュースレターに含まれる情報をもとにして行なわれた如何な
る行為に対しても法的責任を負いません。具体的な問題がございましたら、またリーガル・サービスが必要な場合は弁護士に
直接ご相談ください。お問い合わせ、配信の新規登録・変更・停止は、その旨を担当弁護士或いは [email protected] までご
連絡ください。可能な限り迅速にご対応いたします。ご理解とご協力の程よろしくお願い申し上げます。
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