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平成 23 年度新メカニズム実現可能性調査 インド・LED 照明普及を通じ

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平成 23 年度新メカニズム実現可能性調査 インド・LED 照明普及を通じ
平成 23 年度 環境省委託事業
平成 23 年度新メカニズム実現可能性調査
インド・LED 照明普及を通じた業務用ビル省エネ推進
に関する新メカニズム実現可能性調査
報告書
平成 24 年 3 月
株式会社
日本総合研究所
目次
Ⅰ.概要編
1. 調査実施体制: .................................................................................................................... 5
2. 事業・活動の概要: ............................................................................................................. 5
(1)事業・活動の内容 ..................................................................................................... 5
(2)ホスト国における状況: ........................................................................................... 6
(3)新メカニズムとしての適格性: ................................................................................ 7
(4)事業・活動の普及方策について: ............................................................................ 7
3. 調査の内容: ....................................................................................................................... 7
(1)調査課題 ................................................................................................................... 7
(2)調査内容: ................................................................................................................. 8
4. 新メカニズム事業・活動の実現可能性に関する調査結果: ................................................ 12
(1)事業・活動の実施による排出削減効果 .................................................................. 12
(2)リファレンスシナリオ及びバウンダリーの設定: ................................................. 16
(3)モニタリング手法・計画: ..................................................................................... 16
(4)温室効果ガス排出量及び削減量: .......................................................................... 18
(5)排出削減効果の測定・報告・検証(MRV)手法:................................................ 20
(6)環境十全性の確保: ................................................................................................ 24
(7)その他の間接影響: ................................................................................................ 24
(8)利害関係者のコメント: ......................................................................................... 25
(9)事業・活動の実施体制: ......................................................................................... 25
(10)資金計画: ............................................................................................................. 26
(11)日本製技術の導入促進方策: ................................................................................ 26
(12)今後の見込と課題: .............................................................................................. 26
5. コベネフィットに関する調査結果 ..................................................................................... 27
6. 持続可能な開発への貢献に関する調査結果 ........................................................................ 28
Ⅱ.詳細編
1. 調査の背景: ..................................................................................................................... 29
(1)国際交渉・議論の動向............................................................................................. 29
(2)ホスト国の新メカニズムに対する考え方 .............................................................. 33
2.調査対象事業・活動: ....................................................................................................... 36
(1)事業・活動の内容 .................................................................................................... 36
(2)企画立案の背景 ....................................................................................................... 36
(3)ホスト国における状況............................................................................................. 37
(4)新メカニズムとしての適格性: .............................................................................. 42
(5)事業・活動の普及: ................................................................................................ 42
3.調査の方法: ..................................................................................................................... 43
(1)調査実施体制: ....................................................................................................... 43
(2)調査課題: ............................................................................................................... 43
(3)調査内容: ............................................................................................................... 44
4. 調査結果: ......................................................................................................................... 81
(1)事業・活動の実施による排出削減効果 ................................................................... 81
(2)リファレンスシナリオ及びバウンダリーの設定: ................................................. 85
(3)モニタリング手法・計画: ..................................................................................... 86
(4) 温室効果ガス排出量及び削減量: ........................................................................ 88
(5)排出削減効果の測定・報告・検証(MRV)手法:................................................ 90
(6)環境十全性の確保: ................................................................................................ 95
(7)その他の間接影響: ................................................................................................ 95
(8)利害関係者のコメント: ......................................................................................... 96
(9)事業・活動の実施体制: ......................................................................................... 97
(10)資金計画: ............................................................................................................. 98
(11)日本製技術の導入促進方策: .............................................................................. 106
(12)今後の見込と課題: ............................................................................................ 106
5. コベネフィットに関する調査結果 .................................................................................... 107
6. 持続可能な開発への貢献に関する調査結果 ...................................................................... 108
Ⅱ.詳細編
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
1. 調査の背景:
(1)国際交渉・議論の動向
①世界の温室効果ガス削減に対する動き
温室 効果ガス削 減に向けた世界の動きは、京都議定書の次期枠組みについての
交渉に焦点が絞られている。現在、世界全体の温室効果ガス削減のプラットフォーム
の役割を果たしている京都議定書は、2012 年末に期限が終了する。その後の新たな
国際的枠組みについてはまだ確定しておらず、交渉が進められている段階である。本
項では、直近の国際交渉の場であった 2011 年末の COP17 を軸に、各国のスタンスを
整理し世界の動向を把握する。
(ア) COP17 直前の各国のスタンス
ⅰ)従来の各国の主張
従来、次期枠組み交渉については、先進国と新興国の大きく 2 つのグルー
プに分かれて主張が対立していた。先進国側は、排出量が増加している新興
国も排出削減の義務を負い、削減行動に対して、計測、報告、検証可能な仕
組を義務付ける、新しい枠組みを構築すべきであると主張していた。
一方で新興国側は、次期枠組みは京都議定書の期限を延長して利用すべ
きであると主張してきた。これは、先進国による温室効果ガスの蓄積が温暖化
の原因であるため、先 進国がまずは削減目標を示すべきで、新興 国の削減
行動に関しても先進国からの技術的、資金的サポートの仕組が必要であると
の考えに基づくものである。
ⅱ)COP17 直前の各国の主張(先進国)
しかし COP17 前には、先進国内でも、EU、日露加、米国間で異なった主張
が表面化し始めた。EU は新興国側に一部譲歩して、次期枠組みでは主要排
出国が削減義務を負い、かつ次期枠組み交渉の開始が担保されるのであれ
ば、新しい枠組みが開 始するまでの期間は京都議定書の期間延長に応じる
という立場を示した。一方で、日本、ロシア、カナダは、従来の先進国側の主
張と同様、京都議定書の削減義務対象国だけでは世界の排出量の 1/4 程度
<29>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
しかカバーできず、京都議定書の延長では温暖化対策への効果が薄いとし
て、京都議定書の延長には全く応じず、次期枠組みについては米国と新興
国も含めた主要排出国が削減義務を負うべきであるという立場を示した。京都
議定書から離脱し削減義務対象国ではない米国も、新しい枠組みを構築す
べきであるという立場で、次期枠組みについては、中国が削減義務を負うので
あれば米国も削減義務を負う可能性があるという立場を示した。
三者の主張に違いが現れ始めた背景には、次のような各国の思惑がある。
EU は、一部新興国側に譲歩することで、新しい次期枠組みの交渉を優位に
進めたいという考えがあると推測される。日露加は、従来の先進国の考えと同
様、現在の京都議定書では地球温暖化防止に対する効果が低く、かつ先進
国の経済活動に対して不利な状況が作り出されているという考えを有している
と推測される。米国は、排出量削減に対して消極的ではないと考えられるが、
中国と比較して不利な立場になりたくはないと考えていると推測される。
ⅲ)COP17 直前の各国の主張(新興国)
新興国内では、インドや中国などの経済発展の著しい国と、その他の国で
違いが表面化し始めた。インドは従来同様、先進国の過去の膨大な排出量を
踏まえたうえでの公平性の確保を主張し、京都議定書を次期枠組みとして利
用することを求める立場を示した。一方、その他新興国は EU 案を受け入れ、
京都議定書を一定期間延長した後は新しい枠組みに移行することを受諾す
る立場を示した。
インドとその他新興 国の立場が分かれた大きな要因として、インドは主要排
出国であるため先進国が主張する新しい枠組みでは削減義務を負わなけれ
ばならないのに対し、その他新興国は主要排出国に含まれず、削減義務を負
う可能性が低いことがあげられる。
インドは、新興国内でも立場の違いが表面化し始めたため、同じ立場である
中国と国際交渉の場では連携していくことを公表した上で COP17 に臨んだ。
<30>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
図表1 各国の主張のまとめ
従来の各国の主張
新興国
先進国
• 京 都 議 定 書 の期 限を延 長 し、既 存 • 新しい枠組みを構築すべき。
 新興国の排出量も拡大して
の枠組みを継続すべき。

現 在 の地 球 温 暖 化 の原 因
いるため、責任を負うべきであ
は先 進 国 の温 室 効 果 ガスの蓄
る。
積 にあるため、先 進 国 と新 興 国
が同 等 の義 務 を負うのはおかし
い。
COP17 直前の各国の主張
新興国
印・中など
次期枠組
みについて
京都議定
書の延長
について
先進国
その他
EU
京都議定
書の延長
-
米
日・露・加
新しい枠組み
応じる
応じる
(新しい枠組
みの交渉開
始が条件)
(立場を
示さず)
応じない
(イ) COP17 における論点
前述のような状況の中、COP17 の次期枠組み交渉では、まず次期枠組みと
して京都議定書を延長するか、新しい枠組みを構築するかの議論がなされた。
新しい枠組みを構築することが決定した後は、主に新しい枠組みの骨子や、
新しい枠組みが開始するまでの期間、京都議定書を延長させるかどうかが大
きな論点となった。
(ウ) COP17 の決定事項
2011 年 12 月、南アフリカのダーバンにおいて COP17 が開催された。
ダーバン合意では、次期枠組みとして、米国、中国を含む主要排出国が参
加 する新たな枠 組 みに 2015 年 までに合 意 すること、および京 都 議 定 書 を
2013 年以降も延長することが決議された。
<31>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
次期枠組みについては、京都議定書の延長ではなく、新しい枠組みを構築
することが決定された。新しい枠組みの骨子については、対象国の範囲が主
要排出国である点と、法的拘束力が当初議長案からは弱められた「議定書、
別の法律文書または法的効果のある合意」という表現で採択された点以外は
未定である。新たな枠組み構築に向けては、2012 年前半に特別作業部会を
設置して交渉を開始し、2015 年までに新たな枠組みを採択する予定である。
そのため新たな枠組みが発行するのは 2020 年以降となる。
次期枠組みまでの京都議定書の延長については、延長することのみ決定し
たが 、延 長 期 間 の 各 国 の 削 減 目 標 、運 用 ルールなどの 詳 細 に ついては 、
2012 年の COP18 に議論が先送りされた。京都議定書の延長に関して、日露
加は断固拒否の立場を貫いた。結果、三ヶ国は期間延長には参加せず、削
減量などの報告義務は負うが削減義務は負わない立場となった。
図表2 ダーバン合意のまとめ
主な決定事項
1.
詳細
次 期 枠 組 み 対象国
には、新しい枠 組 み
を構築する
主要排出国とする
枠組みの法的拘束力
議 定 書 、別 の法 律 文 書 または
法的効果のある合意とする
2012 年前半に特別作業部会を
その他事項
設置して交渉を開始し、2015 年
までに新たな枠組みを構築する
2.
新 し い 枠 組 詳細ルール
みが効 力 を発 するま
• 各国の削減目標
では、京 都 議 定 書 を
• 運 用 ルール
延長させる
2012 年 COP18 に議論を先送り
な する
ど
(エ) COP17 でのインドの動き
COP17 において、インドは中国と協調して交渉にあたった。特に新たな枠組
みが法的拘 束力を持つことに対しては最後まで反対の立場を示していたが、
最終的には中国と共に法的拘束力の意味合いが弱まった案に合意した。
<32>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
(2)ホスト国の新メカニズムに対する考え方
①インド側の二国間オフセットメカニズムにおける意思決定プロセス
インド側で最終的に政策を取りまとめる省庁は、気候変動対策の国際交渉の責任
を持つ森林環境省(MoEF:Ministry of Forest & Environment Department)である。
また、制度の詳細設計については、下表のように技術ごとに各省が担当している。担
当省が対象技術の範囲や排出削減量の測定方法などの具体的な制度設計をしたう
えで、MoEF が全体の整合性を取り、政策全体を設計し、政府に提案する流れとなっ
ている。
図表3 二国間オフセットメカニズムの意思決定プロセスのまとめ
役割
政策の取りまとめ
担当省庁
森 林 環 境 省 ( MoEF : Ministry of Forest &
Environment Department)
エ ネ ル ギ ー 効 率 局 ( BEE : Bureau of Energy
省エネルギー
政策の
詳細設
計
Efficiency)
• 電力省(MOP:Ministry of Power)傘下
再 生 可 能 エ ネ ル 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 省 ( MNRE : Ministry of
ギー
原子力
New and Renewable Energy)
原 子 力 局 ( DAE : Department of Atomic
Energy)
その他電力一般
電力省(MOP:Ministry of Power)
②インド側の二国間オフセットメカニズムに対する懸念
日印は 2010 年 10 月の日印首脳会談において、気候変動分野に関する二国間協
力については合意したものの、インド側は二国間オフセットメカニズムの導入について
必ずしも積極的ではない。
さらにインド内部においても、中央政府と州政府では考え方が異なっている。中央
政府は二国間オフセットメカニズムに対していくつかの懸念点を抱いており、議論す
るには時期尚早だと考えている。一方、州政府は経済的メリットがあれば積極的に導
入したいと考えている。
中央政府が懸念している点は主に次の 2 点である。1 点目は、二国間オフセットメカ
ニズムの国際的な位置付けが定まっていない点である。中央政府は、次期枠組みの
具体的な内容が未定の中、二国間オフセットメカニズムについても実際に利用できる
<33>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
のかわからない状態であるため、制度についての判断はできないとしている。もう 1 点
は、制 度の具体的な仕組が未確定な点である。中央政府としては制度の詳細が把
握できない中、大枠としては賛同できるが、実際の制度として合意できるかはわから
ないという姿勢である。具体的なヒアリング内容は下表のとおりである。
<34>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
図表4 二国間オフセットメカニズム関係者へのヒアリングまとめ
ヒアリング先
内 容

中 Dr. Mathur
次の 3 点が明らかになるまでは、二国間オフセットメ
央 Director
カニズムについて議論することは時期尚早である。
政 General,
 国際的な位置付けの明確化
 CDM やその他国際システムとの整合性のと
府 BEE:Bureau of
り方
Energy
 制度の具体的な仕組の決定
Efficiency
 対象技術
 クレジットの取引方法
 価格の設定方法
 排出量の算定方法 など
 CDM 以上に実用的であることの証明
 CDM との違いを明確に示し、メリットを説明
Nanda 
Dr.
インド中央政府は二国間オフセットメカニズムに対し
Kumar,
て関心はあるものの、国際的枠組みではないため、
財団法人地球
まだ交渉する段 階ではないと考えているのではない
環境戦略研究
か。

機関
新 興国 と協 調して気 候 変動 の国 際 交 渉にあたって
(IGES:Institute
いるため、新 興 国と大 きく異 なる主 張をすることもな
for
いだろう。
Global
Environmental
Strategies)
州 Dr.
S.
K. 
CDM クレジット価格よりも二国間オフセットメカニズム
政 Nanda ,
のクレジット価格の方 が高いのであれば、是 非推進
府 Principal
したい。
Secretary,
Forest
&
Environment
Department,
MoEF, Gujarat
State
<35>
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最終報告書(詳細版)
2.調査対象事業・活動:
(1)事業・活動の内容
本事業は、インド国で二国間オフセット・クレジット制度を活用しつつ LED 照明機器
を導入し、電力使用量削減及び GHG 排出削減を達成するため、LED 照明機器の実
証実験を通じて削減効果の測定を実施し、二国間オフセット・クレジット制度としての適
格性を検証するものである。
インドの恒常的な電力不足への対応として大規模な電源開発が進んでいるが、石炭
火力等の化石燃料電源を中心とするものであり、同国の温室効果ガス(GHG)排出量
を増加させる主因となっている。GHG 増加を抑えるには供給側・需要側それぞれで対
策を考える必要があり、需要側の対策の一つとして省エネ促進が挙げられる。
省エネ方策の一つとして、業務用ビルの使用電力の 2~4 割程度を占める照明設備
を省エネ型機器(具体的には LED 照明機器への取替えが挙げられる。LED 機器への
取替えは、電力使用量を抑制し、GHG 排出削減に寄与する。特に日本製 LED 照明
機器は、技術面で世界をリードしているにもかかわらず、インドでは初期投資重視のた
め、インドの LED 照明機器市場では十分に存在感を示せていないため、中長期的なコ
スト削減効果を理解してもらい、二国間オフセット・クレジット制度の下で日本製 LED 照
明機器をインドで普及させ、より大きな省エネ効果と GHG 削減効果を確保する。
商業用・産業用の建物が多いデリー市のモデル施設(150~200 平米程度の業務用
ビル)において、照明実績データに基づいて LED 照明機器導入モデルを検証すること
で、デリー市内の商業用・産業用施設への LED 照明機器の導入、さらにはインド全土
への展開の実現に寄与すると考える。
(2)企画立案の背景
(1)で記載したとおり、インド国における日系 LED 機器メーカーのプレゼンスは、他
国の企業に比べて事業展開は緒に就いた段階である。一方でインド側も、電力不足の
状況に対して、これまでは、エネルギーの創出(供給側のコントロール)で問題解決を図
ろうとしてきた。
しかしここにきて、インド側の意識の変 化が見られるところである。弊 社がインド工 業
連盟の環境ビジネスセンターとの意見交換を行ったところによると、「環境技術そのもの
<36>
H23 新メカ FS
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だけでなく日本の持つ環境対策ノウハウを含めてインドには必要」であり、「具体的には
ビルの省エネルギー対策技術の導入や、工場やオフィスでのエネルギー使用量のモニ
タリング結果を用いた従業員教育を積極的に取り入れたい」などの意見がみられた。
日系メーカーの製品に対しては、インド人もその品質の高さを十分理解しているとこ
ろではあるが、諸外国のメーカーに比べて、個別機器の売り込み方という点で、劣って
いるという認識を持たれていることもまた事実である。そこで、日系メーカーの省エネル
ギー製品である LED 照明機器を実際にインドの業務用ビルに実証実験として導入し、
その結果を削減効果の実測データとしてインド側各機関へ提案することにより、二国間
オフセット・クレジット制度と省エネルギーを用いたインド側への実効的かつ効率的な提
案ができると考えたところである。
(3)ホスト国における状況
①ホスト国の政策等の国内状況に関する情報
インドにおける省エネルギー政策は 1970 年代に遡ることが出来る。ただし、本格的に
省エネルギーが政策としてとりただされるようになるのは 1990 年以降であり、2000 年以
降になってその活動が具体的なものとなってきている。
これら省エネルギー政策に関する動向を時系列に従って確認し、その後ポイントとな
る省エネルギー法(Energy conservation acts 2001)、総合エネルギー政策(Integrated
Energy Policy:2006)について、それぞれ内容を確認する。
(ア) 省エネルギーに関する政策の歴史的動向
インドにおける省エネルギー対策は、1970 年代のオイルショックを契機として、
主 に 石 油 製 品 の 節 約 を 目 的 と し た 石 油 節 約 調 査 協 会 ( Petroleum
Conservation Research Association : PCRA) の 設 置 か ら 始 ま っ た と い え る 。
PCRA は 、 石 油 ・ 天 然 ガ ス 省 ( Ministry of Petroleum and Natural Gas:
MOPNG)の傘下に設置された。
しかし、その後は省 エネルギーに関する活動は広がりを見せていない。政策
の中で省エネルギーが再び注目されるようになるのは、1990 年以降である。具
体的には、計画委員会(Planning Commission)が策定するインド国全体の総
合的な政策である五カ年計画にその目標が示されるようになった。1990 年以
降の五カ年計画における省エネ政策では、次のような目標を設置している。
<37>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
第 8 次五ヵ年計画(1992~1996 年度)においては、省エネルギー対策として
100 億ルピーが準備され、電力で 5,000 メガワット、石油は 6 メガトンの節約を目
標とした。
続く第 9 次五ヶ年計画(1997~2002 年)では、電力負荷率の向上を課題とし
て州レベルで 60%から 65%への向上、国全体で 64%から 70%への向上が目
標として設定された。第 9 次計画期に注目すべきは、インド省エネルギー法の
制定である。省エネルギー法制定後、その推進機関として、電力省下に設置さ
れたエネルギー効率局(Bureau of Energy Efficiency :BEE)が 2002 年に組成
された。この省エネルギー法および BEE が、現在でもインドの省エネルギー政
策の中心的役割を果たしている。
第 10 次 5 ヶ年計画(2003~2007)では、推定需要量 719,000 メガワット時の
約 13%に相当する 95,000 メガワット時の削減目標が設定された。当該削減の
内訳として、電力装置・システム(工業部門等)で 80,000 メガワット時、照明(家
庭、商業及び工業部門)で 10,000 メガワット時、エネルギー利用の多い産業で
5,000 メガワット時の削減目標が設定されている。
現在の第 11 次五ヶ年計画(2007~2012 年度)では、数値目標として 2012 年
に 2007 年比で 5%の消費電力の削減を掲げた。当該目標を達成するための
国家レベルの機関として BEE が指定され、州政府の機関として州政府指定機
構(State designated agencies: SDAs)を設置している。
11 次五カ年計画においては、各部門に省エネ活動の内容を示している。主な
部門の活動内容は次のとおりである。
i)
産業部門:産業部門での省エネ政策として、15 の産業を指定し、エ
ネルギーの効率利用のためのマニュアル/ガイドを制定する。15 産業
は、2001 年に制定された省エネルギー法に指定する産業と同じであ
る。
ii)
中小企業:州政府指定機構が BEE と協力し、25 のクラスターを組成
し研究を行う。基本的に BEE で掲げる基本政策と同じ。
iii)
商業ビル及び施設:BEE は、商業ビル及び施設向けのマニュアルを
準備する。それらを元に、州政府指定機構は、エネルギー監査を開
始し、各州で 10 の政府関係施設で実施する。BEE はまた、州政府
指 定 機 構 が 推 進 す る 省 エ ネ ル ギ ー ビ ル デ ィ ン グ 規 約 ( Energy
conservation building codes: ECBC)を支援する。
iv)
住居・民生部門:エネルギー・ラベリング・プログラムを引き続き推進
する。
v)
公道照明及び公的な水ポンプ:州政府認定機構は、州政府と連携
<38>
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していくつかの省エネポンプ及び省エネ照明のパイロットプロジェクト
を推進する。
農業部門:州政府認定機構は、農業部門における省エネの成功事
vi)
例の紹介を通して省エネ活動を推進する。
輸 送部 門:道 路 輸送 にかかる石 油 消費は、インド国 全 体の消費 の
vii)
約 1/3 を占めるため、自動車から電車への輸送手段のシフト、道路イ
ンフラの整備、EV 自動車当の普及などにより、エネルギー消費を削
減する必要がある。
第 12 次 5 ヶ年計画は、2011 年 12 月現在計画委員会において作成中であ
る。計画委員会のウェブサイトでは、第 12 次 5 ヶ年計画のドラフトが提示さ
れており、それらの中から省エネルギーに関する内容も含まれている。ドラフ
トにおいて言及されている省エネルギープログラムは5つであり、これらが次
期 5 ヶ年計画の中の中心的な取組みとなると予測される。5つのプログラム
はそれぞれ次の通り。
i) 省エネ基準及びラベリングスキーム
ii) 省 エネルギービルディング規 約 (Energy conservation building codes:
ECBC)
iii) 産業部門における省エネルギー推進:8部門の 467 の産業ユニットに対
して省エネルギーの目標数値を定めて、取組みを推進
iv) 住宅部門における照明:Bachat Lamp Yojana (BLY) Scheme などの推
進
v) 農業用ポンプの省エネルギー化
(イ) 省エネルギー法(Energy conservation acts 2001)
省エネルギー法は 2001 年に制定された。また省エネルギー法を受けて、電力
省の中に BEE が設置されている。
省エネルギー法では、エネルギー多消費産業として 15 の業種を指定し、省エ
ネルギーのためのアクションプランを策定することとされた。15 業種は、1)アルミ
ニウム、2)肥料、3)鉄鋼、4)セメント、5)紙パルプ、6)塩化アルカリ、7)製糖、
8)繊維、9)化学製品、10)鉄道輸送、11)港湾、12)輸送部門(産業及びサー
ビス)、13)石油化学・石油精製、14)発電所・送配電会社、15)商業ビル・施設
であり、これらの部門 には公認監査人による不定期のエネルギー監査を義務
付けている。
(ウ) 総合エネルギー政策(Integrated Energy Policy:2006)
<39>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
第 10 次五ヵ年計画期には、それまで各省庁により個別に推進されてきたエネ
ルギー政 策 を取 りまとめた総 合 エネルギー政 策 ( Integrated Energy Policy:
2006)が計画委員会により作成された。総合エネルギー政策では、省エネルギ
ー政策に関して中長期的に実施すべき事項として次の点をあげている。
i) エネルギー需要増に応えるための施策として、エネルギー効率と DSM
によりコストが最も低くなるプランと政策アプローチを採用する。規制委
員会は DSM を募集する一方で、新たな発電容量も認める。
ii) 理論的に最小となるエネルギー消費値を与えるベンチマークを、産業
の各分野やホテル、病院、ビル等に示す。5 年から 10 年のスパンでエネ
ルギー消費効率を改善させるためにロードマップを各産業で作成する。
iii) 政府、鉄道、防衛、公共部門もエネルギーを大量に消費するセクター
である。これらのセクターにおいては、年間の最小ライフ・サイクル・コスト
を考慮のうえ購買行動をとるようにする。
iv) その他の電気製品においてもライフ・サイクル・コストを考慮した購買を
行う。
v) NTPC と SEB に対し石炭ベースの発電設備の効率性の改善を求める。
vi) トラックによる貨物輸 送を列車に転換する。それには、交通ルートの建
設と the Container Corporation の独占を改めることが重要となる。
vii) 効率的なエネルギー利用が可能な水上輸送を促進する。
viii)
都市部の大量輸送機関の利用を促進する。
ix) ハイブリッド車と FFV(エタノール混合自動車)の普及を促進する
また、同政策では省エネルギー関連の機関は BEE へ集約し、BEE が省エネ
ルギー関連政策に関する全ての権限を持ち推進すべきであると謳われている
が、現時点で実現には至っていない。
②当該分野と気候変動との政策面での関連性
インド国は、気 候変 動 に対する自主計画として、2008 年に「国家気候変動行動計
画」を発表し、その計画の下、気候変動対策を推進している。また、COP15 後の 2010
年 1 月に UNFCC に提出した中期目標では、2005 年比で GDP 比排出原単位 20%~
25%削減を掲げている。ただし、この中期目標ではコペンハーゲン合意への言及がなく、
インド国では、あくまでも自主的な削減目標とされている。
インド国の「国家気候変動行動計画」では、8 つの優先国家事業があり、省エネはそ
の 1 つである。8 つのミッションは次の通り。省エネルギーに関しては、National Mission
for Enhanced Energy Efficiency (NMEEE)で取り扱われている。
・
National Solar Mission
<40>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
・
National Mission for Enhanced Energy Efficiency
・
National Mission on Sustainable Habitat
・
National Water Mission
・
National Mission for Sustaining the Himalayan Ecosystem
・
National Mission for a Green India
・
National Mission for Sustainable Agriculture
・
National Mission on Strategic Knowledge for Climate Change
「 国 家 気 候 変 動 行 動 計 画 」 で は 省 エ ネ 達 成 認 証 ス キ ー ム ( Perform Achive and
Trade: PAT)など特に産業部門の省エネに焦点が当てられる。当スキームにおいては、
省エネルギーの効果を測定可能にし、省エネルギー効率の高い製品の使用を促進す
るために CDM のスキームが活用されている。省エネ達成認証スキーム等4つの施策が
展開されている。
・
省エネ達成認証スキーム(Perform Achieve and Trade: PAT)
エネルギー排出権の売買メカニズムを取り入れることで、大型産業及び工場の
エネルギー効率を高める。9 つの部門の 700 を越える事業者が対象となる。対象
部門は、①セメント、②肥料、③鉄鋼、④製紙・パルプ、⑤鉄道、⑥火力発電所
の 6 部門の事業所のうちエネルギー消費量が石油換算3万トン以上の事業者、
⑦塩素アルカリ業で、同年間 12,000 トン以上の事業者、⑧アルミニウム業で、同
年間 7,500 トン以上、⑨繊維行で、同 3,000 トン以上の事業者である。
・
省 エ ネ ル ギ ー 促 進 ス キ ー ム ( Market Transformation for Energy Efficiency:
MTEE)
省エネルギーの効果を測定可能にし、省エネルギー効率の高い製品の使用を
促進する。CDM のスキームを活用する。
・
省エネルギーファイナンス(Financing of Energy Efficiency: FEE)
省エネルギーに取り組 む全ての産業が利用しうるファイナンス・スキームを開発
する。例えば省エネルギープロジェクトへの低金利融資、リスク保証や ESCO の
促進など。
・
省 エ ネ ル ギ ー 経 済 開 発 フ レ ー ム ワ ー ク ( Framework for Energy Efficient
Economic Development: FEED)
省エネルギー経済開 発を促進する事業者に対するプロジェクトリスクファンド保
証、省エネ向けのベンチャーファンドの組成など。
<41>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
「国家気候変動行動計画」から派生したジャワハルラルネルー国家太陽光ミッション
の一環として、新・再生可能エネルギー省が国内 60 都市を「ソーラーシティ」として開発
することを発表し、このミッション内で LED の導入を奨励している。
(4)新メカニズムとしての適格性:
今後の経済成長に伴い、インド国の照明設備の市場規模(金額ベース)は、2020 年
には 2010 年の 3 倍以上になると予測されている。しかしその内訳を見ると、全照明設備
の 79%を白熱灯が占め、LED は 1%に満たない(ともに数量ベース)という状況からもわ
かるとおり、低効率の照明器具が広く使われている(出所:Industry Report on General
Lighting、Electrical Components Manufacturers Association)。
省エネルギー政策として、エネルギー効率局(Bureau of Energy Efficiency :BEE)を
はじめとする政府機関により省エネプログラムが実施されてはいるものの、照明設備に
特化した施策は見受けられない。このため、業務用ビルにおける電力使用量の 2~4 割
を占める照明設備において、一般的な照明設備と比較して大きな初期投資を伴う LED
照明が急速に普及する状況とは考えづらい。したがって、日本メーカーの LED 照明を
普及させ、インドにおける電力消費量・GHG 排出量の削減を実現する本事業は、客観
的に見て追加的であると考えられ、二国間オフセット・クレジット制度の下で排出削減量
を定量化し評価することに適格性があると考えた。
(5)事業・活動の普及:
本事業において、業務用ビルにおける電力削減効果、GHG 排出削減効果を測定す
る。インド国では、低効率な照明機器を使用している業務用ビルが多いと想定されるこ
とから、電力使用量が削減でき、なおかつ二国間オフセット・クレジット制度を活用でき
る LED 照明機器を、実削減データを用いて提案することで、インド国における当該事
業を普及させることができると考える。
なお、商業用・産業用の建物が多いデリー市のモデル施設(150~200 平米程度の
業務用ビル)において、照明実績データに基づいて LED 照明機器導入モデルを検証
することで、デリー市内の商業用・産業用施設への LED 照明機器の導入、さらにはイン
ド全土への展開の実現に寄与すると考えるものである。
<42>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
3.調査の方法:
(1)調査実施体制:
•
受託者:株式会社 日本総合研究所
•
外注先:パナソニック株式会社:LED 照明機器による電力消費量の計測と関連
業務
•
外注先:ANCHOR Electricals Pvt. Ltd:照明機器交換・復旧
•
外注先:Evalueserve Pvt. Ltd:インドにおける LED 照明機器の市場環境調査
•
協力企業:株式会社三井住友銀行:資金計画に関する調査と関連業務
(2)調査課題:
・
対象国の気候変動を巡る情勢と政策の概況
 業務用施設における省エネ政策と具体的な活動
 省エネルギー関連政策
 インドにおける各政府系機関の取り組み
 業務用ビルにおけるエネルギー消費に関する規制動向
 省エネ政策における LED 照明機器の位置付け
 インドの電力事情の現状と今後の見通し
・
当該技術・製品等が対象とする市場や関連政策等の概況
 インドにおける照明機器の市場の状況
 LED 照明機器の市場規模
 LED 照明機器の今後の市場成長見通し
 LED 照明機器の主要製品・価格等の状況
 LED 照明機器のサプライチェーンの状況
 LED 照明機器市場の主要プレイヤー
 LED 照明機器市場における近年の動向
 関連政策の状況
 政府部門における LED 関連プロジェクト
・
現地における実証実験場所の状況
 実証実験候補地の既存設備機器等の概要
<43>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
 実証実験の方法論
・
二国間オフセット・クレジット制度事業・活動の実現可能性
(3)調査内容:
①対象国の気候変動を巡る情勢と政策の概況
(ア) 業務用施設における省エネ政策と具体的な活動
「 国 家 気 候 変 動 行 動 計 画 」 で は 省 エ ネ 達 成 認 証 ス キ ー ム ( Perform
Achieve and Trade: PAT)など特に産業部門の省エネに焦点が当てられる。
また、新たに建設される商業ビルに対して、ECBC(省エネルギービルディ
ング規約:Energy conservation Building Code)が規定されており、
省エネルギー対策が促進されている。
ECBC は、インド政府が 2007 年に制定した規約で、新たに建設する
商業ビルで、接続負荷が 500 キロワット以上もしくは、電力需要が 600
ボルトアンペア以上の施設に対して、省エネルギー対策を促進するも
の。この条例では、壁、天井、窓、照明システム、冷暖房空調システ
ム、配電システム、温水及び水の汲み上げシステムに関して省エネル
ギー対策を規定している。
また、既存の建物に関する同種規約として、EEEB( Energy Efficiency
in Existing Building) Scheme が制定されている。既存のオフィスビ
ル、ホテル、医療施設等においても、約 23~46%の省エネルギーが可
能とされ、第一フェーズとして、9 つの政府ビルをモデルに計測を実
施し、第二フェーズではそれを 17 の施設で実施する。
(イ) 省エネ政策における LED 照明機器の位置付け
インド経済は、2031 年度までの期間年率8~9%の経済成長を維持する
目標が掲げられており、それらを達成するためにはエネルギーは現在の3~
4倍の供給料が必要とされている。これらのエネルギー量を賄うためには、
現在の約6倍ともいわれる発電量が必要となる。
このような状況下において、省エネルギー技術の導入は、エネルギー消
費を抑える有効な手段と考えられており、特に LED を中心とする照明機器
は、もっとも素早く省エネルギーを実現出来る製品である。LED 照明は、最
も効率的な省エネルギー照明システムであるが、市場の黎明期にあり、様々
<44>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
なルールやガイドラインが未整備な状況にあるため、政府による介入・普及
支援が必要となっている。
こ れ ら の 状 況 を 踏 ま え 、 国 家 製 造 業 競 争 力 委 員 会 ( National
Manufacturing Competitiveness Council- NMCC)は、2009 年 12 月に、
LED 照明機器の普及に向けたメカニズムの検討委員会(コア・コミッティ)を
設置した。委員会は、電力省の増設事務次官(Additional Secretary)を筆
頭とし、新・再生可能エネルギー省、情報技術局、環境省、BEE で構成され
た。
本委員会での検討結果を踏まえ、インドにおける LED 照明機器の普及
促進に向けたロードマップが作成された。そのロードマップにおける第一の
ス テ ッ プ が 、 独 立 し た モ ニ タ リ ン グ と 評 価 を 行 う 国 家 メ カ ニ ズ ム ( Central
Institutional Mechanism)を設計することであった。本メカニズムにおける委
員は、電力省大臣、事務次官をトップに、都市開発省、新・再生可 能エネ
ルギー省、情報技術局、産業政策・促進局、規制当局フォーラム(Forum of
Regulators)、BIS(Bureau of Indian Standards)、BEE(Bureau of Energy
Efficiency)、EESL(Energy Efficiency Services Limited)で構成 されてい
る。
また、「国家気候変 動 行動計画」から派生したジャワハルラルネルー国
家太陽光ミッションの一環として、新・再生可能エネルギー省が国内 60 都
市を「ソーラーシティ」として開発することを発表し、このミッション内で LED
の導入を奨励している。
(ウ) インドの電力事情の現状と今後の見通し
中央電力庁の資料によると、2010 年現在、インド全土で 92,848GWh の
電力が不足している。2021 年には、電力不足は 1,914,508GWh まで拡大す
ると予測している。
インド国は計画委員会が策定する 5 ヵ年計画に基づいて、電力開発を行
っている。近年は特に、経済成長に伴う電力需要の拡大を満たす為に高い
目標値が挙げられているが、第 8 次 5 カ年計画(1992 年~1997 年)から達
成率は半分程度に留まっている。
電力開発が進まない要因としては主に次の 2 つが指摘されている。1 つ
目は電力体系の歪さ、2 つ目は高い送配電ロスである。1 つ目の電力体系
の歪さとは、政策的に農業や家庭向けの電力料金が非常に低く設定してい
る点を指す。農業・家庭向けの電気料金を低くする代わりに、商業や工業
向けの電力料金は高額となっている。そのため、大口の電力需要家は自家
<45>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
発電設備を導入しており、結果として優良な顧客を逃している。また、消費
量の約半分を占める農業・家庭向けは、電力料金の回収率が低く、電力事
業会社の経営を悪化させる要因ともなっている。2 つ目の高い送配電ロスと
は、送配電ロスが約 30%と高い点を指す。送配電ロスの主な原因は盗電と
料金不払いである。送配電ロスの問題は、電力投資を行う際の料金回収リ
スクにも影響を与え、民間投資を阻む大きな要因の一つとなっている。
インド国の電源構成は IEA『World Energy Outlook 2010』によると、2008
年時点で、石炭が 69%、石油が 4%、天然ガスが 10%、原子力が 2%、水
力が 14%、新エネルギーが 2%である。この割合が 2035 年には石炭が 52%、
石油が 1%、天然ガスが 14%、原子力が 6%、水力が 13%、新エネルギー
が 14%と予測している。日本エネルギー経済研究所『アジア/世界エネルギ
ーアウトルック 2011』では、2035 年には、石炭は 69%、石油が 2%、天然ガ
スが 13%、原子力が 5%、水力が 7%、新エネルギー等が 4%になると予測
している。
②当該技術・製品等が対象とする市場や関連政策等の概況
(ア) インドにおける照明機器の市場の状況
ⅰ)概況
 2009 年のインドの照明市場は約 1,247 億円で、屋外照明が 70%、屋内照
明が 30%を占めている。LED照明市場は約 37.9 億円で、2011-15 年の
CAGRは 48%と予測されている 1 。図表5は、照明タイプ別のマーケットシェ
アを示しており、高輝度ランプが約 7 割と最大のシェアを占めている。
1
Frost & Sullivan Report 2010, ELCOMA, LEDMA
<46>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
図 表5 : Indian Lighting Market, JPY 124.7 billion (2009)
Incandescent Lamps
1%
Fluorescent
lamps(Tube+CFLs)
27%
High Intensity lamps
69%
LEDs
3%
Source: Frost & Sullivan Report, 2010
図表6は、2009 年の LED 照明の用途別シェアを示している。LED 照明は照
明市場全体の約 3%を占めており、LED 照明市場では街路灯が最大シェアを
占めている。
図 表6 : Indian LED Lighting Market, JPY 3.79 billion (2009)
Indoor Lighting Outdoor Lighting
5%
20%
Rural Lighting
30%
Street Lighting
45%
Source: Frost & Sullivan Report, 2010
インドの多くの企業は、LED 照明器具の完成品を輸入するのではなく、付加
価値と価格低減を目的として、インド国内で照明器具の組み立てを行っている。
売上では HID(高輝度照明)が最大シェアを占めているが、販売量では蛍光灯
と白熱灯が最大シェアを占めている。LED 照明市場は販売量でもシェアは非
常に低い。
<47>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
“屋内用 LED 照明の約 60%はホスピタリティ分野によるものである。オフィス分野は 10%を
占めるにとどまり、まだ黎明期と言える。 “
-
Osram India へのインタビュー
LED Manufacturers association (LEDMA)によると、LED 照明市場は 2015
年までに 864.4 億円に成長する。図表7は、照明市場全体と LED 照明市場
の成長を示したものである。
図 表7 : PROJECTED INDIAN LIGHTING MARKET (2011-15)(in JPY billion)
300
(JPY Billion)
250
150
192
171
153
36%
100
50
0
241
215
200
22%
17%
12
2011
59
87
43
29
18
28%
2013
2012
Total Lighting Market
2014
2015
LED Lighting market
Source: LED Manufactures Association(LEDMA)
ⅱ)LED 市場の成長要因
LED 市場の主な成長要因は:
•
技術革新が LED 照明の価格低減をもたらし、既存の照明機器との格差
が縮小する。現在は、LED 照明:既存照明=1:5 だが、2015 年には 1:
2.5 になると予測されている。
•
現在は製品試験のために海外の試験施設に製品を一旦輸出している
が、国内に試験施設が設置され、製品規格が確立すれば、国内での
LED 照明の品質基準チェックが可能になる。
<48>
H23 新メカ FS
•
最終報告書(詳細版)
メーカーによる LED 照明のプロモーションにより、人々の LED 照明の認
知が高まる。
•
2009 年には 30%だった LED 照明への物品税が 2010 年には 10%に引
き下げられた。4%の特別相殺関税の全額免除に伴い、2011 年には 5%
に引き下げられる。これにより販売価格も低減する。
Philips、 Osram、GEなどの主要メーカーはICLsの製造中止している。長
期的に見てこういった企業は環境保全技術に注力している 17 . また、インドに
は製造工場がほとんどないため、インドに製造工場を設置する企業は、伝統
的な照明器具メーカーに対し競争力を持つことを期待するとともに、ヨーロッ
パや東南アジア、オーストラリアへの商品輸出にも対応できる。LED市場拡
大に貢献するもう一つの要因は、LED照明と代替可能な技術が無いため、メ
ーカーの競争プラットフォームが同じで差別化要素は価格しかなく、消費者
が市場をコントロールできるということである。 企画やプロトコルが設定されれ
ば、現在LED照明市場の大部分を占める非組織的メーカーは組織的メーカ
ーのために共通プラットフォームが作られるため淘汰されるだろう。
図表8 に、照明タイプ別浸透率の推移を示す。
図 表8 : LAMP TECHNOLOGY PENETRATION IN INDIA 2
% Penetration of Lighting Products
120%
100%
80%
60%
40%
20%
0%
2005
2010
LED
0%
1%
2017
3%
HID
15%
15%
13%
Halogen
3%
2%
1%
Fluorescent
59%
73%
83%
Incandescent
23%
9%
0%
Source: Frost & Sullivan Report, 2010
2
Frost & Sullivan Report, 2010
<49>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
“政府は屋内照明への LED 照明導入よりも、回収期間の短い街路灯への LED 照明
導入に注力している。また、LED 照明市場は黎明期にあるため、 LED 照明の浸透を
加速させるような政策が求められている。 ”
- Dixon Technologies へのインタビュー
ⅲ)LED 照明企業のサプライチェーン
図表9は多国籍 LED 照明企業のサプライチェーンを示している。
<50>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
図 表9 : Supply Chain of International LED lighting Manufacturer
半 導 体 チッ プ を輸 入
インド企業の場合
(MIC
Electronics) イ ン ド 国 内 で
LED 照 明 器 具 の
製造・組み立て
イ ン ド 国外 の 試験 施 設
で LED 照 明 器 具 の検 査
イ ン ド 国内 の 試験 施 設
で LED 照 明 器 具 の検 査
試 験 終 了後
大量生産
Osram
会 社 の 保有 /運 営す る
倉庫
Sujana
独自のディストリ
ビューションネッ
トワークまたは独
立したディストリ
ビューター
最 終 消 費者
Source: Primary Interviews
注:- Philips はインド国内に組立工場を保有せず、輸入した LED 照明器具の完成 品を、販売チャネルを
通じてディストリビューションしている。
<51>
H23 新メカ FS
•
最終報告書(詳細版)
多くのビジネスはプロジェクトベースで行われている。例えば、2010 年、
コモンウェルス・ゲーム関連の約 1.57 億円規模の 1 プロジェクトを 1 つの
企業が請け負った。
•
LED 商品を小売に流通させているプレイヤーは、Distributor を通じて行
っている。
•
小売を通じた LED 商品の需要は他の照明機器と比較して非常に少な
いため、Stockists、Super-Stockist、Sub-Stockist、Wholesaler のプレゼ
ンスは大きくないのが現状である。
•
全ての LED 製造企業が自社で倉庫をもつか倉庫を運営している。
Distributor は小売や消費者へのディストリビューションの役割を担って
いる(どこへディストリビューションするかはプロジェクトによって異なる)。
•
企業が選定した Distributor は、商品の需要に応じて Wholesaler や
Stockist の役割を担う。
•
Osram は 99%のビジネスを Distributor 経由で行っている。商品はマレ
ーシアの工場で製造された LED チップを輸入し、インド国内の組立工場
で完成品に組み立てている。
•
Sujana group は提携先の CREE (米) 、Nichia (日)から LED チップを輸
入し、Hyderabad にある工場兼試験施設で完成品に組み立てている。
•
Lighting Science Group (LSG) は LSG の供給する LED チップをノイダ
の工場で完成品に組み立てている Dixon technologies とジョイントベン
チャーを行っている。
<52>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
ⅳ)インドにおける一般的な消費財のサプライチェーン構造
図 表1 0: General Supply chain of FMCG products in India
Case I
Manufacturer
Wholesalers/Sub-st
Distributor/
Traditional
Retailers
Modern Retailers
Consumer
Super Distributor/
Super Stockist
Institutional
accounts, such as
hotels, restaurants,
t
Case II
Manufacturer
Carrying &
Forwarding Agents
Dealer
Institutional accounts, such
as hotels, restaurants, etc
Retailers
Wholesaler/Sub-Stoc
ki t
Consumers
Source: Primary interviews
<53>
H23 新メカ FS
Intermediary
最終報告書(詳細版)
Role
• Dealer とメーカーの仲介者として
機能する。
• 特定メーカーのディストリビュー
ションに独占的な責任を持つ。
• 消費者レベルで商品に不具合が見
Carrying and Forwarding Agent
つかった場合、メーカーのために欠
陥商品を回収する責任がある。
• 通常は、1 社の C&FA が全ての
Distributor の需要に応じる。
• Distributor は様々な業態の小売
や、下位レベルの Sub Dealer、
Distributor に商品をディストリビ
ューションする責任を持つ。
• Distributor は小口の需要に応える
Distributor/Stockist/Dealer
ために保管(Stock)も行う。この
意味で Distributor は Stockist と
呼ばれることもある。
• 一般的に Distributor は州内のディ
ストリビューションに責任を持つ。
• このレベルの Distributor は一般的
に Tier III 都市や農村部のサプラ
イチェーンに存在する。
Wholesaler/Sub-stockist/Sub-Dealer
• (Distributor との)大きな違いは、
小売店にのみ販売する点である。
• Wholesaler は 1 市内の需要に応え
る。
<54>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
ⅴ)地域の競争環境
図表11はインドの LED 製造工場を示している。
図表11: Manufacturing plants of LED manufacturers in India
LED メ ー カ ー と
Distributor の ハ
ブ
MIC Electronics
Philips
LED Goldwyn
Dixon Technologies(LSG)
Havells
Osram
Sujana group
Kwality Group
MIC Electronics
Manufacturing Plant
Assembly Plant
Sales Headquarters
Source – Primary & Secondary Search
注
:- 1. Manufacturing plant:LED チップと完成品の両方を製造している拠点
2. Assembly plant:輸入した LED チップ を完成品に組み立てている拠点
3.Sales offices:完成品を輸入して販売する拠点
<55>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
図表11にて示すとおり、LED 照明機器メーカー及びディストリビュ
ーターは、首都である北部のデリー周辺に集積していることがわかる。
LED 照明機器はインドにおいて黎明期の商材であり、新製品の政府の許
認可及び政策との調整が必要であるため、必然的にデリーに集積してい
るものと思われる。
ⅵ)主要企業の動向
以下では、LED
の主要メーカーについて、歴史、ビジネス構造、近年
の動向について、簡潔に記載する。
Philips Electronics 3 :
Philips Lumileds は Philips Electronics Ltd の LED 部門である。1999 年に
設立され、最大の LED 照明メーカーの一つである。Philips Lumileds の本社は
カリフォルニア州サン・ホセにあり、オランダ、日本、マレーシア、シンガポールに
経営拠点が、世界中に販売拠点がある。効率的な LED 照明により従来の明る
い照明と同等の明るさを実現する LUXEON と呼ばれる特許を取得した技術を
持っている。
2010 年、LED 関連商品売上が全世界売上に占める比率は 2009 年の 8%か
ら 13%超に成長した。LED 照明は 2010 年の Philips Electronics の主要な成
長要因になっている。
ビジネスストラクチャー:
Philips Lumileds は以下の LED 照明を提供している
-
Indoor Lighting
-
Outdoor Lighting
-
Automotive Lighting
-
Potable Lighting – This includes flashlights, head lamps, bicycle lamps, etc.
Philips Lumileds は LED 照明部品メーカーである Future Lighting Solutions と
3
http://www.philips.co.in/, Annual Report 2010
<56>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
提携し、世界に通用する LUXEON LEDs を供給している。提携を通じて、顧客
に対し、幅広い商品の中から顧客ニーズに適切な商品を提供できる。
プロダクト・ポートフォリオ
Philips Lumileds は幅広い商品を展開している。 Philips Lumileds のブランド
は以下の通りである。:
•
LUXEON Rebel
•
LUXEON A
•
LUXEON C
•
LUXEON H
•
LUXEON S
•
LUXEON Flash – LED’s for flash lights of cameras.
•
LUXEON Altilon – LED for automotive industry.
•
SnapLED – LED’s for automotive industry
•
SignalSure - LED’s for automotive industry
•
SuperFlux - LED’s for automotive industry
Philips は、新興国での LED 照明市場をビジネス拡大のための注力分野に
位置づけている。
<57>
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最終報告書(詳細版)
“ 我々は Lumileds を含む LED ビジネスにおいて、 R&D や設備屋の大規模投資を行い、照明分野での統合さ
れたバリューチェーンの確立に大幅な進歩を遂げた “
“ 売上高 7,778 億円、 2009 年比 15 %増。これは一般照明および車両用証明の売上回復および、 Lumileds の
LED ビジネスの成長によってもたらされた。 “
“ 新興国市場において、 7 %成長を達成した。この多くは中国とインドの二桁成長に支えられている “
“ 前年比売上増は、前年度比 20 %増を達成した新興国市場の成長によってもたらされた。新興国市場の売上
高が全売上に占める割合は、 2009 年の 34 %から 38 %超に成長し、これは中国、インド、ブラジルの売上に支
えられている。 “
“ インドは急 速に成 長する市 場である。インドのエンドユーザーニーズに対するフィリップスの深 いコミットメントを明 確
にするため、フィリップスはインドにおいて新たな 5W の LED ランプを開発した。 現地消費者の洞察を活用するため
に、新製品開発を推進するための主要市場のローカルチームに権限を委譲している。 “
- Annual report 2010 から抜粋
サプライチェーンの構造:
Philips はインド国内に製造工場や組立工場を保有せず、検査済みの LED
照明器具の完成品を輸入し、Future Electronics を通じてディストリビューション
している。
OSRAM 4 :
企業概要:
Osram はミュンヘンに本社を置く多国籍照明機器メーカーである。インドへの
参入は 1994 年。2010 年の世界売上は 4,841 億円である。Osram はインドで
幅広い LED 商品を展開している。2010 年のインド国内での LED 商品の売上
は 4.5-5.0 億円であった。その 60-70%は ITC hotels、The Taj、などのホスピタ
リティ産業によるものである。
4
http://www.osram.com/osram_com/LED/index.html, Annual Report 2010
<58>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
インドの LED 照明市場に対する見通しは明るいとしており、今後 5 年間は年
率 15-20%の成長を見込んでいる。
プロダクト・ポートフォリオ:
Osram はインドで幅広い LED 商品を展開している。商品カテゴリーは:以下の
通りである。
•
LED 2 in 1 Lamps
•
LED Deco Classic professional lamps
•
LED Reflector professional lamps
•
LED Special professional lamps
•
LED Classic professional lamps
•
LED Deco Reflector professional lamps
•
LED Deco Classic consumer lamps
•
LED Reflector consumer lamps
•
LED Classic consumer lamps
•
LED Deco Reflector consumer lamps
•
LED Special consumer lamps
ビジネス戦略:
LED 市場でのシェアを拡大するために Osram が実行する主要な取り組みは以
下の通りである。:
•
マレーシアの製造工場の生産能力を拡大する
•
M&A によりバリューチェーンを強化する E.g. Traxon.
•
イノベーション: E.g. OBEROS 世界で最初の OLED(有機 EL)パネル
への投資
Osram の LED 照明の顧客には、 ITC hotels、The Taj、Tanishq、 Louis
Vuitton などがある。
<59>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
SUJANA Group 5
企業概要:
Sujana Group は、インドで最大の企業グループのひとつで、2009 年の売上
高は約 920 億円であった。鉄鋼、通信、エンジニアリング、家電製品、国際貿
易、エネルギー、都市インフラやヘルスケア分野で事業を展開している。
Sujana Energy Limited は Sujana group の 1 事業部で'Green & Energy
efficient' 商 品 や発 電 技 術 を、インド国 内 だ けでなく、シンガポール、香 港 、
UAE、インドネシア、モーリシャス、ケニヤ、ザンビア、ルワンダ、米国で展開して
いる。
プロダクト・ポートフォリオ:
Sujana Energy limited は、ソーラー電気、LED 照明、浄水、エネルギーマネ
ジメントに関連する商品を展開している。
LED 分野の商品は以下の通りである。
•
Indoor lighting
 Downlight 8W
 Downlight 13W
 Troffer Light 20W
 Troffer light 40W
 Bulb 5W
•
Outdoor Lighting
 Street lights
•
Portable Lighting
 Flame
 Flare
ビジネス戦略:
5
http://sujana.com/energy/index.php?option=com_content&view=article&id=101&Itemid=2
29
<60>
H23 新メカ FS
•
最終報告書(詳細版)
2010 年 5 月、Sujana Energy Limited はインドの LED 市場において日亜化
学(日)と戦略的提携を結んだ。Sujana Energy Limited は GREE(米)とも提
携している。
•
2010 年 8 月、Sujana Energy Limited は、The Energy and Resources
Institute (TERI)と提携を結びんだ。これは、最近のフラッグシッププログラム
である「Lighting a billion lives’ (LaBL)」に関連するものである。LaBL は、
新しいソーラーランタンのモデルを活用して、灯油ランタンをランタンソーラ
ー照明装置で置き換え、10 億人の農村部人口の生活に清潔で安全な照
明を提供するすることを目的としている。
•
このパートナーシップのもと、Sujana group は高輝度 LED 照明の組み込ま
れた先端のソーラーランタンを製造する。
“ 我々は創業3年で 75 億円の売上成長を目標としている “ 純利益の成長は 20-30 %と見込まれている。 Sujana
は白熱電球の代替として、50-60 %の電力削減効果のある LED 電球に注力している。
“LED 商品は既存の照明と比べ 2 倍の価格だが、表部で信頼性が高い。 1 日 5-6 時間の使用で、寿命は 15
年である。 “
Dixon Technologies India 6 :
企業概要
Dixon Technologies はノイダに本社をおくインド EMS のリーディングカンパニ
ーである。2009-10 年の売上高は 153 億円であった。同社はテレビ、DVD、洗
濯機、CFL、LED などの商品を展開している。
同社は Lighting Science Group(LSG)(米)とジョイントベンチャーを行い、
Lighting Science Group の商品のインドにおける独占販売代理店となっている。
2011 年末までに LED 商品で 300 万円の収入を見込んでおり、今後 5 年間は
年率 15-20%での成長が期待されている。
6
http://www.dixoninfo.com/lighting.php, Primary Research
<61>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
Dixon Technologies は LED に関して 2 つのブランドを展開している:
•
DEFINITY – 商業用・家庭用の LED 照明
•
PROFILIC Series – 街路灯用の LED 照明
ビジネス戦略:
•
2011 年 8 月、60W、1,150 円の LED ランプを発売すると発表した。
•
同社はインドの LED 街路灯の分野に注力している。
•
Dixon Technologies の Deputy Managing Director は、「インドでは毎年、8
億個の白熱球、3 億個の CFL が販売されており、市場では、これらの高効
率、長寿命、無毒の製品が人気を博している。」としている。「このパートナ
ーシップの経済的・環境的影響は非常に大きいものである。古いスタイルの
電球は 600 億 KW 時の電気を消費する。これはインド全体の 7%である。
LSG 社の DIFINITY ブランドは 70%以上電力を削減でき、それは 500MW
の発電能力を持つ火力発電所 32 個分と同等量になる。」。
•
Dixon Technologies India Pvt Ltd は、ノイダにインド市場向けの LSG 商品
を製造する 7.5 億円の施設を設置した。
“LGS とのパートナーシップはインド市場への LED 技術の大規模な導入を可能にする。我々は 2 年
以内にマーケットリーダーになれると見込んでいる。 ”
Bajaj Electricals 7 :
企業概要:
Bajaj group はインド最大のビジネスグループの一つで、自動車や金融サービ
ス、電気分野で事業展開している。
7
http://www.bajajelectricals.com/LED-Portable-Lights-c-172.aspx, annual report 2009
<62>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
Bajaj Electricals は Bajaj group の 1 分野で傘下に、技術・プロジェクト、家電、
扇風機、照明機器、照明、Morphy Richards の 6 つのユニットを持っている。
2010 年末の Bajaj Electricals の売上高は 426 億円であった。
プロダクト・ポートフォリオ:
Bajaj Electricals は 2009 年に LED 商品を販売開始した。現在同社は、ポー
タブル LED 照明商品を展開している。しかしながら、その他の商業用や家庭用
の LED 商品はまだ発売されていない(今後発売予定)。
2009 年、Ruud Lighting Inc(米)と提携し、同社の LED 関連商品を SAARC
諸国に販売し、インドで Ruud Lighting (BETA LED)の商品をインドで製造する
権利を獲得した。この動きは同社が LED 照明市場にシフトしてきていることを示
している。
“ グリーン、環境にやさしい技術・商品に力を入れる企業目的に沿って、 BU は LED 商品への大規模な進出を計
画 している。 LED 携 帯 型 照 明への進出はこの動きの一 環 である。これらの商 品の都 市 部および農 村 部でのマ
ーケティングのために、強いディストリビューションネットワークが存在する。 ”
- Annual report 2010 から抜粋
<63>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
LED Goldwyn 8
企業概要
LED Goldwyn は LED 照明と LED 照明用の光学レンズの企画と製造を行っ
ている。さらに同社は以下のサービスも提供している。
○エネルギーコンサルティング:
•
Developing strategies for energy audit
•
Identification of energy projects.
•
Cost benefit analysis.
•
Action plan to set implementation priority.
•
Detailed study for energy saving projects.
•
Advising on measures for energy conservations.
•
Advising on monitoring the implementation of LED Lighting
○ 照明デザインコンサルティング:
Goldwyn は顧客に効率的で環境に優しい照明設備をデザインするためのコン
サルティングサービスを提供している。 同社はデザイナーや設計士、技術者やビ
ル/住宅オーナーなどと共同し効果的な照明ソリューションを提供している。
○トレーニングプログラム:
Goldwyn がユーザーに行う LED 技術訓練プログラムは、LED 技術に関する知
識とインサイトを提供する。 プログラムは以下に焦点を当てている。:
•
Basics of Electrical Principals
•
Basics of Lighting
•
LED Technology
•
Evaluating lighting systems through effective audits
•
Achieving energy-effective lighting systems with high regard to lighting
quality and occupants
8
•
Examining the latest lighting products for your applications
•
Performing lighting calculations to obtain proper light levels
•
Evaluating and implementing effective lighting control strategies
•
Reviewing environmental impacts of lighting efficiency projects
http://www.goldwynled.com/default.aspx
<64>
H23 新メカ FS
•
最終報告書(詳細版)
Calculating and documenting savings achieved through lighting
improvements
•
Assuring compliance with building energy codes
•
Implementing effective lighting maintenance practices
プロダクトポートフォリオ:
LED Goldwyn は様々な産業を顧客に幅広い商品を提供している:
オフィス向け
-
LED 2 x 2 屋内照明
-
LED 拡散器付き円形ダウンライト
-
LED 4 X 1 屋内照明
-
LED ストリップバトンライト
ショッピング・モール向け
-
LED Bulled Light
-
LED ストリップバトンライト
-
LED ジンバルライト
-
LED トラックライト
-
LED 拡散器付き円形ダウンライト
-
LED ウォールライト
-
LED スポットライト
住居向け
-
LED 電球
-
LED スポットライト
-
LED 拡散器付き円形ダウンライト
-
LED ストリップバトンライト
同様に多くの商品をその他の顧客にも展開している:
• 工場、倉庫
• 鉄道、空港
• 都市部、農村部照明
• 屋外広告
• ガソリンスタンド
<65>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
顧 客 に は 、 Delhi Metro Rail Corporation LTD 、 Tata 、 Maruti Suzuki 、
Reliance Industries LTD、などが含まれる。
サプライチェーン:
Goldwyn の製造工場はニューデリー近郊に位置している。
Havells 9
企業概要:
Havells は売上高 850 億円で、アジア、ヨーロッパ、米国など世界中で展開し
ている。
図 表1 2: Total Global Sales for 2010-11 (JPY 85 billion)
Source: Investor presentation
家庭用スイッチギア、モジュラースイッチ、工業用スイッチギア、ケ
ーブル・ワイヤー、照明・照明器具、扇風機などの耐久消費財など、幅
広い商品を展開している。
図 表1 3: Global Sales of lamps in 2010-11 (JPY 30.8 Billion)
9
http://www.havells.com/Admin/SiteMedia/Havells%20India%20September%202011%20U
SA.pdf
<66>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
CFL and LED:
Market Share = 23%
Source: Investor Presentation
ビジネス戦略:
Globalization: 経営戦略のコアはビジネス地域の拡大である。2007
年にSylvaniaを買収したが、これは電気分野で100年の歴史のあるブラ
ンドの世界的プレゼンスとヨーロッパやラテンアメリカに広がるディ
ストリビューションネットワークを活用することが目的である。
Growth in Developing Countries: 2011年、Havellsの連結収益の70%
は、インドやタイといったアジア・ラテンアメリカの新興国が占めて
いた。新興国からの収益拡大が関心分野となっている。
プロダクト・ポートフォリオ:
展開するLED商品は以下の通りである。:
• LED Tunnel Tek L 56 (14x1W High brightness LED)
• LED Tunnel Tek S 56 ( tunnel light with 4 LED panels of 14x1W
High brightness)
• Jeta 30 LED (30W flood light)
• Endura City Liner S60 (30 ×1W LED panel)
• Endura Lite SQ Swivel
• Endura Lite RD Swivel
• Endura DL 16W (16W downlighter)
<67>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
• Endura Flat Panel (48w recess mounting luminaire)
• Endura Lite LED Flexi Strip 5M (Flexible LED strip)
Wipro 10
企業概要:
Wipro lighting は is Wipro Limited の 1 事業で、インドでの売上
高は 1,234 億円である。Wipro lighting は以下の照明分野の製造を行
っている:
•
商業用照明, 近代的オフィス
•
照明コントロール Lighting Controls
•
製造業、製薬業 Manufacturing & Pharmaceutical
•
給油ポンプ Designer Petrol Pumps
•
屋外構造物 Architectural Outdoors
プロダクト・ポートフォリオ:
Wipro Lighting は幅広い分野で商品を提供している:
•
LED ダウンライト
•
LED キャビネットライト
•
LED サイネージライト、 コーブライト
•
LED アンダーウォーターライト
•
LED 投光照明
•
LED ドライブオーバー、ウォークオーバー
•
LED アクセント照明
ビジネス戦略:
Focus on key customer segments: Wipro Lighting は小売だけでな
く特定の顧客セグメントへの販売を行っている。製薬や製油セクター
は同社からの商品供給を受けている。
10
http://www.wiprolighting.com/modules/about_us/overview.php
<68>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
LED Business 11 :
2010 年の Wipro Lighting の LED 商品からの収入は 4.4 億円である。
これは同年における LED 市場の 10%程度を占めている。
Crompton Greaves 12
企業概要:
Crompton Greaves の 2011 年の営業収入は 1,560 億円である。同社は
インド最大のビジネスグループの一つ Avantha Group の参加である。
Crompton Greaves は変圧器やスイッチギアなどの電力システムや発電
機や交流電源などの工業用装置、扇風機や照明危機などの消費者向け
商品を展開している。
図 表1 4: Net Sales and EBITDA for Crompton Greaves over 2010-11.
Source: Annual Report 2011
プロダクト・ポートフォリオ:
展開する商品分野は以下の通りである。
11
Primary Research
12
Company Website
<69>
H23 新メカ FS
•
LED 街路灯
•
屋外照明 (Landscape Luminaries)
•
LED 投光照明
•
商業用照明
•
LED 照明
最終報告書(詳細版)
2008 年、オランダを拠点とする Lemnis Lighting との提携を発表した。
この動きは、同社が成長するインドの LED 照明市場に注力することを示し
ている
MIC Electronics
企業概要:
MIC electronics は LED 照明や LED ディスプレイの設計、製造、開発を行っ
ている。同社は 1988 年に設立され、インドだけでなく、韓国、米国、豪州にも
オフィスを持つ。
2010 年の売上高は 420 億円。Larsen & Turbo LTD、 P&G、 State Bank of
India。 Maruti Udyog LTD などを顧客にもつ。
プロダクト・ポートフォリオ
MIC は LED ディスプレイ、LED 照明のカテゴリーで商品展開をしている。展開
する LED 照明の種類:
•
屋内照明 (一般照明、商業用照明等含む)
•
屋外照明 (街路灯、投光照明等含む)
•
鉄道客車照明 (客車用照明、緊急用照明等含む)
•
ソーラー照明, (街路灯、家庭用照明、ランタン等含む)
図 表1 5: Net Sales and EBITDA for MIC Electronics over 2008-10.
<70>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
Source: Annual Report 2010
ビジネス戦略:
同社は政府のプロジェクトへ最大の投資を行っている企業の一つである。特
に Indian Railways に関連するプロジェクトが多い。LED 市場では地場系最
大のプレイヤーである。
<71>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
(参考)LED 商業分野における最近のトピックス
•
MIC Electronics – 2010 年、MIC Electronicsは、3.61 億円規模の
LED照明の案件を受注したと発表したその大部分は政府機関から
である。例えば、Uttar Pradesh New and Renewable Energy
Development Agencyから、LED街路灯の導入について 9.96 億円
の受注をしている 13 。
•
De Core Science & Technologiesの子会社であるDe Core
Nanosemiconductors Limitedは、2011 年末までにインド国内に半
導体チップの製造工場を設立予定である。工場の生産能力は 4 億
チップと見込まれており、このチップの大部分をLED照明に使用す
ることが計画されている。同社によると、インド国内で製造される
LED商品の 50%は輸出され、国内で販売される 50%のうちの
60-70%は農村人口がターゲットとされる 14 。
•
2010 年 2 月、Schneider ElectricはLEDを適用したIn-Diyaと呼ば
れる照明システムを上市した。In-Diya照明システムは、電力サービ
スが行き届かない農村部をターゲットにしている。In-Diyaは、外部
充電池を電源としており、屋内照明を 8-15 時間バックアップする電
力を供給することができる 15 。
•
2011 年、世界最大のLED照明メーカーの一つであるLighting
Science Groupは、成長するインド亜大陸のLED市場を開拓するた
め地場系LEDメーカーのDixons Technologyとコラボレーションした。
13
http://www.ledinside.com/news_MIC_20101126
14
http://www.business-standard.com/india/news/de-core-to-setrs-900-cr-semiconductor-chi
ps-plant-for-leds/389606/
15
http://www2.schneider-electric.com/sites/corporate/en/press/press-releases/viewer-pressreleases.page?c_filepath=/templatedata/Content/Press_Release/data/en/shared/2010/02/2
0100210_schneider_electric_launches_in_diya_a_highly_energy_efficient_led_base.xml
<72>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
この取り決めにより、Dixon TechnologyはLighting Science Groupの
高品質な商品の代理店としての機能を担うことになる 16 。
•
Lighting Science Group はDixon technologiesとの初の共同商品
を上市する。2011 年末までに、1,150 円以下の 60WのLED電球が
発売される 17 .
•
Philips は数多くのプロジェクトを受注している。同社は情報技術サ
ービスのプロバイダーである Cognizant technologies の新しいオフ
ィスに LED ダウンライトを導入した。
•
Philips は The Kolkata Municipal Corporation とコラボレーションし
て、コルカタに 300 の街路灯を導入した。このプロジェクトは
Kolkata Municipal Corporation と Climate Group との連携によって
実施され、ナトリウム灯(sodium vapor lamps)を利用した既存の街
路灯の電力消費の削減を目的に行われた。
•
Philips Electronics は近年、成長著しいインドのLED市場に資本
を投下する、との戦略の変更を明らかにした。同社は家庭用・商業
用ビルだけでなく、インド農村部での適用プロモーションを通じて
LED商品の売上拡大を図っていく 18 。
•
インドの大手LEDメーカーであるInstapowerは、政府の所有する多
くの建物にLED照明を導入するプロジェクトをインド政府から受注し
た。これらの建物には、ニューデリーのApollo Hospital、インド門、
ニューデリーの主要高速道路、大統領府、Safdarjung Hospitalが
含まれる 19 。
16
http://www.ledinside.com/lighting_science_group_20110609
17
http://www.ledinside.com/node/13896
18
http://www.lighting.philips.com/main/projects/kolkata_municipal_corporation.wpd?CID=in
19
Company website
<73>
H23 新メカ FS
•
最終報告書(詳細版)
地球をクリーンな場所にすることを目的としたNPO法人であるThe
Climate groupは、エネルギー効率の良いLED街路灯をThane、
Kolkata、Haldiaに導入することを計画している。同グループは、
Thaneに 314、 273 LED’s in Kolkataに 273、Haldiaに 290 のLED
照明を導入することを計画している 20 。
•
Hyperion Green Energy India Private Limited は、アンドラプラデ
シュ州ラジャムンドリ(Rajamundry)で、既存の 10,948 の街路灯を
LED照明に置き換えるプロジェクトを獲得。このプロジェクトが完了
すれば、60%の電力が削減できる。この契約のもと、同社はMIC
electronicsとコラボレーションを行っている 21 。
•
Hyperion Green Energy India Private Limited は、Vijayawada の
BRTS corridor や Hyderabad の ESI Hospital にソーラー電源の
LED 照明を導入するプロジェクトも受注している。
20
http://www.ledinside.com/india_20110729
21
http://www.faaida.com/shares/company/announceDisplay.php?ppg=5&icode=MICELECT&
max=40&show=1
<74>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
(参考)ケーススタディ 22 : Sujana Energy Limited
課題:
Sujana Energy の顧客は広いオフィスの電力コストを削減する現実的な方法を必
要としていた。顧客は既存の照明需要をまかなうエネルギー効率の良い代替案を
探していた。
解決策:
顧 客 は CFL 電 球 を使 用 したダウンライトを数 多 く使 用 し ていた 。そのため、
Sujana Energy ハイデラバードのオフィスにあった 228 の照明を省電力の LED 照明
と置き換えた。
Sujana Energy の調査によると、これにより 60%のエネルギー削減が実現された。
また、メンテナンスコストは年間で 410,871 円の削減になった。
置き換えられた 228 の照明の一覧は以下の通りである。
22
Description
Quantity
32 LED Troffer Light
93
10 LED Down Light
28
6 LED Down Light
28
4 LED Bulb
70
1×1 10 LED Light
9
Company website
<75>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
(イ) 関連政策の状況
 政府部門における LED 関連プロジェクト
–
Rajiv Gandhi Green Vidyutikaran Yojana (RGGVY)
・ 2005 年に始まった、農村部の貧困線以下の世帯に無料で電
力供給を行い、農村部の電化を達成するためのプロジェクト。
・ RGGVY のフェーズ1での活動の一環として、貧困線以下の全
ての世帯に効率照明機器として CFL が導入された。
・ フェーズ2では CFL 電球を LED 電球を入れ替えることが計画さ
れており、そのためのコストは 49 億円と見込まれている。
o The Indian central budget 2010-11 は、LED照明の中央物品税(the
central excised duty)を 8%からCFLと同等の 4%に引き下げた 23 。
o The Haryana Renewable Energy Development Agencyは、インドのTier II
都市であるGurgaonにソーラー電源のLED照明の導入することを計画して
いる 24 。
o The Nation Defence academy of Indiaは、3,100 近くの水銀灯やナトリウム
灯を利用した街路灯をLED照明に置き換えることを計画している。 これ
により約 5,500 Kwh/日の削減が見込まれる 25 。
o Tirupatiはインドで最も重要な巡礼地の一つである。Avni Energy
Solutionsは約 140 のLED街路灯をこの都市に導入した。この街路灯に使
用されたのは、CREE group の 72WのXLamp LEDである。これにより、年
間約 497,250 円の削減が見込まれている 26 。
23
http://indiabudget.nic.in/ub2010-11/bh/bh1.pdf
24
http://www.ledinside.com/gurgaon_20110801
25
http://www.ledinside.com/india_20110325
26
http://www.creeledrevolution.com/revolutionaries/city-tirupati-india
<76>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
o インド政府は、ChennaiとKapurthalaで建設する新しい鉄道の空調付き客
車および寝台車へのLED照明の導入についてMIC Electronics Ltd と契
約した 27 。
o 政府は the National Mission for Enhanced Energy Efficiency (NMEEE)
のもと、特に LED 照明などの省エネ産業に金銭的なインセンティブを与
えることを計画している。
o The Bureau of Indian Standards (BIS) has come out with specifications
for LED lights and the government has created a testing facility at
Central Power Research Institute (CPRI) to examine LED lights to the
star rating 28 .
Rajiv Gandhi Grameen Vidyutikaran Yojana 29
o 2005 年に開始されたこのプロジェクトは、農村に住む貧困線以下(BPL)
の世帯に無料で電力を供給し、電力供給の行き届かない村部を電化す
ることを目的としている。
o RGGVY の一部として、全ての BPL 世帯に省電力化を目的として CFL1
つが供給される Bachat Lamp Yojana (BLY)事業が実施された。
o RGGVY の第一フェーズの後、LED 照明を BLY 事業に統合する取り組
みが行われ、第二フェーズにおいては CFL 電球の代わりに LED 電球が
供給される。ここには約 49 億円の費用が必要になる。
27
http://www.ledinside.com/india_20110301
28
http://www.hindustantimes.com/Energy-efficiency-industry-to-get-incentives-from-the-gov
ernment/Article1-714566.aspx
29
http://rggvy.gov.in/rggvy/rggvyportal/index.html
<77>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
Ministry of Power Scheme 30
o 中央電力発電ユニットから 5 ㎞圏内にある全ての村の電化が電力省によ
り開始された。
o The Centre for Scientific & Industrial Research (CSIR)はインドでの
LED・OLED 照明開発のための 7.6 億円規模のプロジェクトを発表した。
最初のバージョンの LED は 2012 年 3 月が計画されている。
o LED 市場成長の障害を克服するために、同省は以下のことを推奨してい
る;

初期段階においては、ホテルや病院、街路灯、スタジアムなど利
用度の高い商業用途に集中する。
o 同省は憂慮する組織に ED 照明を RGGVY の第二フェーズに組み込むこ
とをアドバイスした。これは、約 500 万の BPL 世帯に 1 つの LED 照明の
ための 48 億円の追加投資を意味する。
o また、同省は政策介入によって LED 需要を調整することを計画。BEE や
MoP による政策介入が、CFL の売上を 2003-04 の 0.2 億円から 2009-10
の 2.5 億円に拡大を実現した。同省はこの成功体験を LED 照明にも適
用する予定である。
30
http://powermin.gov.in/
<78>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
③現地における実証実験場所の状況
(ア) 実証実験候補地の既存設備機器等の概要
•
今回実証実験の実施サイトは、デリー市南部の業務用ビルの一室(111
㎡)である。当該オフィスの内装を以下に記す。
•
既設照明機器の台数・合計ワット数は以下の通りである。
 44W×40 台=1,760W
 88W×10 台=880W
 合計;2,640W
部屋全景1
照明器具1
部屋全景2
照明器具2
分電盤
<79>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
(イ) 実証実験の方法論
•
本 実証実験では、業務用ビルの1フロア(の一部)を用いて、従来型電球から
LED 照明機器への取替えを行う。
•
電力削減量の計測にあたっては、配電盤に電力計測機器を設置することによ
り、従来型電球の電力消費量、取替え後の LED 照明機器の電力消費量を計
測するものである。
•
従来の照明レイアウト及び LED 照明のレイアウトを以下に記す。照明変更前の
部屋内の照 度分布は実測により、図表16の様になっている事を確認した。平
均照度は約 260(lux)程度である。これを踏まえ、変更後の照度分布および平
均照度が同等となるように LED 照明機器のレイアウトを設定した(図表17)。
図表16:既存照明レイアウト
図表17:LED照明レイアウト
<80>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
4. 調査結果:
(1)事業・活動の実施による排出削減効果
①排出削減効果をもたらす理由・根拠とその実証方法
本事業では、業務用ビルの使用電力の 2~4 割程度を占めると言われる照明設備を
省エネ型機器、具体的には LED 照明機器に取り替えることによる GHG 排出量を削減
する。本事業における排出削減効果は、LED 照明機器の高効率性によりもたらされ、
プロジェクト実施前後における消費電力量の削減量を計測、もしくは推計することにより
実証される。
本調査においては、インドの商業ビルにおける実証実験を通じて、消費電力量が削減
されることを実証した。実証実験の概要、及び結果は以下を参照のこと。
(ア) 実証実験の概要
実証実験の概要は以下の通り。
•
実験対象業務用ビルの Admin area を対象に、照明器具を LED に入れ
替え、消費電力量の変化を検証。
•
入れ替え前の照明器具は、CFL「18W×2」が 40 セット(80 ユニット)、
「FPL36W×2」が 10 セット(20 ユニット)。
 CFL 器具には 8W の安定器消費電力を、FPL 器具には 16W の安定
器消費電力を必要とする
•
変更後の照明器具は、LED 照明機器(Model no. NNP71200、8.3W)が
120 ユニット。
•
消費電力量の測定に際し、「照明機器を変更する範囲」と「分電盤 で
計測可能な最小単位」に齟齬があったため、分電盤の改修を行った。
<81>
H23 新メカ FS
最終報告書(詳細版)
(イ) 実証実験の結果
実証実験の結果、図表18のとおり、1 時間あたりの消費電力量が削減される
ことを実証した。
図表18:照明機器変更前後の1時間あたり消費電力量
照 明機 器 実施期間
2012 年 2 月
変更前
9hour
1日あたり点灯時間
消 費 電 力 定 格 値 ( 器 具 あ た CFL:36W (+安定器 8W) = 44W
り)
FPL:72W (+安定器 16W) = 88W
消 費 電 力 実 測 値 ( 器 具 あ た CFL:45.2W
り)
FPL:90.3W
ユニット数
CFL:40 ユニット
FPL:10 ユニット
総消費電力量
2,711W
1 時間あたり消費電力量
301.2W/h
機 器変 更 実施期間
2012 年 2 月
後
9hour
1日あたり点灯時間
消 費 電 力 定 格 値 ( 器 具 あ た LED:8.3W (※安定器不要)
り)
消 費 電 力 実 測 値 ( 器 具 あ た LED:8.5W
り)
ユニット数
LED:120 ユニット
総消費電力量
1,020W
1 時間あたり消費電力量
113.3W/h
照明 機器 変更 前 後の消費 電 187.9W/h
力量(1 時間あたり)差異
※ CFL・・・ダウンライトタイプ
※ FPL・・・ベースライトタイプ
出所:実測データを基に日本総合研究所作成
<82>
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②排出削減効果を実証するための方法論、必要となる検討等
排出削減効果を実証するための方法論として、下記の2つのアプローチを検討した。
(ア) 消費電力量を計測するアプローチ
プロジェクト実施前後において、対象とする照明機器の消費電力量の変化を
計測し、電力の排出係数と掛け合わせることで排出削減量を算出するアプロー
チ。このとき、排出削減量は基本的には下式により算定される。
年間排出削減 量 = 電力の炭素排出係数 × (プロジェクト実施前の年間消費電
力量 -
プロジェクト実施後の年間消費電力量)
本アプローチにおいては、プロジェクト実施前後の消費電力量を正確に計
測する手法を検討、確立しておくことが重要となる。しかしながら、実証実験対
象ビルにおいても見られたように、インドの商業用ビルにおいては「測定対象範
囲」と「計 測可 能な単 位」が異なる可能性が高いと考えられる。この場合、測定
対象範囲に合致するよう分電盤の改修工事を行うことも考えられるが、プロジェ
クト実施者に相応のコスト負担が発生し、プロジェクト実施のインセンティブが失
われる懸念がある。このため、改修工事を要しない形での方法論を下記の通り
検討した。
(イ) 照明機器の出力(ワット数)と稼働時間の積より消費電力量を推計するアプロー
チ
プロジェクト実施前後において、対象とする照明機器の出力(ワット数)を記録
しておき、稼働時間との積により消費電力量を推計するアプローチ。このとき、
排出削減量は基本的には下式により算定される。
年間排出削減 量 = 電力の炭素排出係数 × (プロジェクト実施前の年間消費電
力量 -
プロジェクト実施後の年間消費電力量)
但し、
プロジェクト実施前の年間消 費電 力量 = プロジェクト実施前の照明機器のワット数
× プロジェクト実施前の照明機器の点灯時間(1 年あたり)
プロジェクト実施後の年間消 費電 力量 = プロジェクト実施後の照明機器のワット数
× プロジェクト実施後の照明機器の点灯時間(1 年あたり)
<83>
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本アプローチにおいては、プロジェクト実施前後の点灯時間を把握する手
法を検討、確立しておくことが重要となる。点灯時間の把握方法としては、大き
く
ⅰ)光センサー・熱センサー等を用いて点灯時間の記録をとる方法
ⅱ)日々の点灯時間を台帳類に記録する方法
ⅲ)商業用ビルにおける通常の活動状況から点灯時間を設定する方法
が考えられる。各方法の特徴を以下に記す。
i)
基本的には最も精度が高い方法であると考えられるが、プロジェクト実
施側のコスト負担が大きくなり、プロジェクト活動を拡大していく上での支障
となる懸念がある。
ii)
プロジェクト実施側の労力がさほど大きくないという点で優れた方法とい
える。但し、あくまでもプロジェクトオーナーによる記録となるため、実際の点
灯時間と齟齬が無いかどうか確認する手段に乏しいといえる。
iii)
プロジェクト実施側の労力は最も小さいという点では優れた方法である。
一方、通常の活動状況から点灯時間を設定するため、保守的な点灯時間
設定になると考えられ、排出削減効果が十分に見出せ無いケースが懸念
される。但し、商業 用 ビルの種別により、適用可否に差があると考えられる
(例えば、ホテルや小 売等の商業施設においては、比較的信頼性が高い
形で適用できる可能性がある)。
点 灯 時 間 の把 握 方 法 について、関 係 者 ヒアリングにより以 下 の点 が分 かっ
た。
 ⅰ)について、照明の点灯時間の計測にセンサーを用いた実績が少な
く、技術的な課題が大 きいため、実施は困難 である(パナソニック株式
会社より)。
 ⅱ)について、「みなし点灯時間」を設定するのは問題が無い。「営業時
間」のみ、という保守的な設定しなくとも、残業時間等も考慮し、1~2時
間は伸ばしてもいいかと考える。時間は、実態に即して設定すればよい。
個別のプロジェクトについて検証するのは現実的に困難であるため、最
初に合理的なシナリオを設定しておき、同業種・形態については展開適
用すればよいと考える(クライメート・エキスパーツ代 表 松尾直樹氏へ
の専門家ヒアリングより)。
ヒアリング結果を踏まえ、プロジェクト実施側の労力が最も少なく、かつ、専門
<84>
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家からも適格性に問題がないとの回答が確認できたⅲ)の方法を基本とし、プロ
ジェクトオーナーの意向に応じてⅰ)の方法も選択可能とする。ⅱ)については、
プロジェクトオーナーの自主申告内容の確認方法が存在しないため、採用しな
い。
(2)リファレンスシナリオ及びバウンダリーの設定:
①当該事業・活動のリファレンスシナリオとその妥当性
インドにおける LED 照明機器の導入状況を踏まえ、リファレンスシナリオを検討する
こととした。
・
インドの照明市場における直近の販売実績データより、LED の占める割合は極
めて小さい(出所:Industry Report on General Lighting、Electrical Components
Manufacturers Association)。
 LED は金額ベースで 2.0%、数量ベースでは 0.1%。
 最も割合が大きいのは、金額ベースでは蛍光灯(43%)、数量ベースでは白
熱灯(79%)。
・
上記より、照明設備の更新時に LED が選択される可能性は極めて低いと考えら
れるため、リファレンスシナリオ=BaU シナリオ(プロジェクト実施前の照明設備)と
する。
 但し、今後、低効率照明設備(例:白熱灯等)の販売・使用が規制により制
限されることも考えられる。BaU シナリオにおいて規制対象の照明設備が使
用されている場合には、その時点で最も販売シェア(数量ベース)の高い照
明設備のうち同等以上の光束を持つ照明設備をリファレンスシナリオとして
用いることとする。
・
一方、LED の価格は将来的には大きく下がることが見込まれ、これに伴い、LED
の 普 及 は 急 速 に 進 む と 予 想 さ れ て い る ( 出 所 : Industry Report on General
Lighting、Electrical Components Manufacturers Association)。
 2020 年時点の予測では、LED は市場全体の 46%(金額ベース)、及び 19%
(数量ベース)を占める。
・
LED の普及拡大に伴い、リファレンスシナリオ=BaU シナリオとする考え方は妥
当性を失うため、本プロジェクト自体が成立しないと整理することもできる。
・
LED の販売シェアが数量ベースで 50%を超えた時点で、本プロジェクトの有効
期限は切れるものとする(新規登録は行わない)。
<85>
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 LED の 販 売 シ ェ ア は 、 イ ン ド に て 発 行 さ れ て い る 統 計 資 料 ( Electrical
Components Manufacturers Association)の最新版により把握する。
 なお、各年の販売シェア実績が統計資料において明らかになるまでには、2
年程度の時間を要する。その為、各プロジェクトの登録時点において利用
可能 な最 新 年の販 売 シェア実績を参照し、プロジェクトの成立可否を判断
する。
 また、本来であれば、LED の販売シェアは、「照明市場全体」ではなく「業務
用ビル向けの照明市場」単位でみるべきであるが、利用可能な統計資料に
限界があるため、照明市場全体を採用する。
②当該事業・活動のバウンダリー
LED の普及状況は、地域により異なることが想定されるため、経済的な発展状況に
応じて地域を分類し、地域別のリファレンスシナリオを設定することが理想である。しかし、
同国においては、照明 器具の普及状況を地域別に把握しうる信頼性の高いデータが
存在しない。このため、当該事業・活動のバウンダリーとしては、インド国全体とすること
を想定している。
(3)モニタリング手法・計画:
本事業におけるモニタリング対象項目としては、プロジェクト実施前後の消費電力量、
もしくは、プロジェクト実施前後の照明機器の出力(ワット数)と点灯時間を想定している。
以下、方法論のアプローチ別に概要を記載する。
(ア) 消費電力量を計測するアプローチ
モニタリング項目
モニタリング手法
単位
プ ロ ジ ェク ト 実 施 前 商 業 用 ビル配 電 盤 等 へ電 力 計 を 設 置 し、 kWh/日
の消費電力量
頻度
1 回/日
プロジェクト実施(LED への入れ替え)前の
一定期間を対象として、電力消費量を計測
※電 力 消 費 量 データは記 録 媒 体に蓄 積し
ておくことを想定
プ ロ ジ ェク ト 実 施 後 商 業 用 ビル配 電 盤 等 へ電 力 計 を 設 置 し、 同上
の消費電力量
プロジェクト期間全般にわたり電力消費量を
計測
<86>
同上
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(イ) 照明機器の出力(ワット数)と稼働時間の積より消費電力量を推計するアプロー
チ
モニタリング項目
モニタリング手法
単位
プ ロ ジ ェク ト 実 施 前 プロジェクト実施(LED への入れ替え)前に W
の照明機器の出力
頻度
1回
対象となる商 業ビルの現地調査を行い、対
象となる全ての照明機器の出力を記録して
おく
プ ロ ジ ェク ト 実 施 後 プロジェクト実施(LED への入れ替え)後に 同上
の照明機器の出力
1 回/年
対象となる商 業ビルの現地調査を行い、対
象となる全ての照明機器(LED)の出力を記
録しておく
点灯時間のモニタリング方法については、基本的に、商業用ビルにおける通
常の活動状 況から点 灯時間を設定する方法を採用することとする。この場合、
商業用ビルの用途に応じて、妥当であると考えられるみなし点灯時間の考え方
を予め設定しておき、該当する商業用ビルの場合のみ、この方法を採用するこ
とができるとする。現時点で想定している用途例・みなし点灯時間の考え方は下
表のとおり。
No
用途
みなし点灯時間の時間帯・範囲
備考
1
オフィス
【時間帯】始業時刻~終業時刻
就業時間内において消灯してい
【範囲】フルタイム勤務者が通常職
る ケ ー ス は 無 い か ( 昼 休 憩 時 )、
務にあたる執務室内、受付・廊下等
採光がよい等の理由で消灯して
の共用スペースの照明設備
いるケースは考えられないか等
※会議室等は除く
のチェックポイントについて、登
録時に確認する
※自己申告もしくは審査機関等
による検証時に確認
2
小売店舗
【時間帯】営業時間帯
上記と同様
【範囲】顧客対応を行うスペースの
照明設備
3
ホテル
【時間帯】営業時間帯(24 時間)
<87>
上記と同様
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【範囲】フロント、エントランスフ
ロアー等(24 時間点灯しているこ
とが妥当と考えられるスペースの
照明設備)
4
病院
【時間帯】営業時間(24 時間)
上記と同様
【範囲】受付、非常灯等(24 時間
稼動していることが妥当と考えら
れるスペースの照明設備)
一方、上記の用途に該当しない商業ビルや、対象とする照明設備の範囲を
広げる場合(例:オフィスにおける会議室の照明設備)、また、上記に該当する
場合においてもプロジェクトオーナーが希望する場合については、光センサー・
熱センサー等を用いて点灯時間の記録をとる方法も採用可能とする。その場合
のモニタリング項目は下表のとおり。
モニタリング項目
モニタリング手法
単位
点灯時間
光センサー・熱センサー等を用いて、1 日あ Hour
頻度
1 回/日
たりの点灯時間を自動的に計測。何らかの
記 憶 媒 体 に情 報 を自 動 蓄 積 する仕 組 みと
する。
なお、点灯時間に関しては、プロジェクト実施前後で大きな前提条件の変更
が無い場合は、プロジェクト実施前後いずれかの点灯時間をもって、他方の点
灯時間とみなす。
(4) 温室効果ガス排出量及び削減量:
①当該事業・活動における温室効果ガス削減量
現時点では、実証実験の結果が得られていないため、下記設定に基づき GHG 削減
量を推計した。
<設定条件>
・
プロジェクト実施前の照明機器の出力
 2,711W
・
プロジェクト実施後の照明機器の出力
 1,020W
<88>
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・
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プロジェクト実施後の照明の総点灯時間
 9 時間
※商業用ビルの年間稼働日数
 200 日と仮定
<推計結果>
当該事業・活動における GHG 削減量
インド国における炭素排出係数
=
× (プロジェクト実施前の消費電力量 - プロジェクト実施後の消費電力量)
×(1 日あたりのみなし点灯時間)
×(商業用ビルの年間稼動日数)
=
0.89(t-CO2/MWh)
× (2,711W-1,020W)
× 9(hour)
× 200(day/year)
≒
2.71(t-CO2/year)
②当該事業・活動を普及させた場合のホスト国全体での排出削減ポテンシャル
ここでは、実証実験の結果得られた GHG 削減量より、下記設定に基づき推計を行っ
た。
<設定条件・考え方>
・
ホスト国 全 体に適 用した場合の個々の排出削減量は、実証実験の結果得られ
たものと同程度の削減量を示すものと考える。
 LED1ユニットあたり同量の排出削減量が得られると考える。
 実証実験では 120 ユニットの LED を使用
・
ホスト国全体に適用した場合の当該事業・活動の普及範囲に関しては、インドに
おける LED の導入量のうち 2 割が当該事業・活動の対象になると仮定する。
 インドにおける将来の LED 導入量については、下記数値を用いる。
 2015 年:1900 万ユニット、2020 年:16500 万ユニット(出所:Industry Report
on General Lighting、Electrical Components Manufacturers Association、
及びインド市場に参入 している照明器具メーカーへのヒアリング結果より日
本総研作成)
<89>
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最終報告書(詳細版)
<推計結果>
LED1 ユニットあたりの年間排出削減量
=
実証実験における年間排出削減量÷ユニット数
=
2.71 ÷ 120
≒
0.023(t-CO2/年・ユニット)
※商業用ビルの年間稼働日数を 200 日と仮定
ホスト国全体での削減ポテンシャル(2015 年)
= 0.023(t-CO2/年・ユニット) × 1900 万(ユニット) × 20%
= 85,784(t-CO2)
ホスト国全体での削減ポテンシャル(2020 年)
= 0.023(t-CO2/年・ユニット) × 16500 万(ユニット) × 20%
= 744,970(t-CO2)
(5)排出削減効果の測定・報告・検証(MRV)手法:
①MRV 手法の概要
CDM における既存方法論を分析した結果、AMS-II.J をベースとして MRV 手法を作
成することとした。なお、既存方法論の分析については、本項にて後述する。
(ⅰ)適用条件
本方法論は、以下の適用条件を全て満たす場合に適用することが出来る。
・
インド国内の商業用ビルにおいて、LED 照明機器にて LED 照明機器以外の照
明機器を代替する活動であること
・
プロジェクト活動に使用する LED 照明機器は他のプロジェクト活動にて利用され
ているものでないこと
・
交換する LED 照明機器の明るさは交換される照明機器の総ルーメン数と同等
かそれ以上であること。総ルーメン数は国内/国際的な基準に基づいて決定され
る
・
使 用 する LED 照 明 機 器については、インド国 エネルギー効 率 局(Bureau of
Energy Efficiency )より公表予定の LED 省エネ基準において、一定以上の効
率性を備えた LED 機器とする
<90>
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最終報告書(詳細版)
 具体的な基準については、同局からの公表内容を持って決めることとする
(ⅱ)バウンダリー
プロジェクトバウンダリーは、LED 照明機器を設置する建物とする
(ⅲ)追加性
前述のとおり、現時点ではインド国内における LED の普及は、商業用ビルに限らず
ほとんど進んでいない(数量ベースで 0.1%)ことより、LED の普及に対するバリアが存在
すると考えている。具体的には、経済的バリア(イニシャルコストが他の照明より高く投資
回 収に長 期間を要する点、イニシャルコスト負担を軽減するための資金提供スキーム
(リース制度等)が存在しない)が存在すると想定している。
(ⅳ)排出削減量
(ア) 照明機器の出力(ワット数)と稼働時間の積より消費電力量を推計する場合
プロジェクト活動による消費電力抑制量は以下の式にて算定する。
<個別事業において対象となる証明機器のみなし点灯時間が全て同一の場合>
m

n
1
1


× ∑ (Pi,BL )− ∑ (Pj,PJ ) × O
ES y =
1 − TD 1000  i =1
j =1



記号
(1)
定義
単位
ES y
年間消費電力抑制量
kWh 年
TD y
年間系統ロス
%
i
プロジェクト実施前の照明機器の ID 番号
m
プロジェクト実施前の照明機器の数
j
プロジェクト実施後の照明機器の ID 番号
n
プロジェクト実施後の照明機器の数
個
P i,BL
プロジェクト実施前の照明機器 i のワット数
W
P j,PJ
プロジェクト実施後の照明機器 j のワット数
W
プロジェクトのみなし点灯時間
時間/年
O
<91>
個
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<個別事業において対象となる証明機器のみなし点灯時間が異なる場合>


n
1
1
m

ES y =
× ∑ (Pi,BL × O i , BL )− ∑ (Pj,PJ × O j , PJ )
1 − TD 1000  i =1
j =1



記号
(2)
定義
単位
ES y
年間消費電力抑制量
kWh 年
TD y
年間系統ロス
%
i
プロジェクト実施前の照明機器の ID 番号
m
プロジェクト実施前の照明機器の数
j
プロジェクト実施後の照明機器の ID 番号
n
プロジェクト実施後の照明機器の数
個
P i,BL
プロジェクト実施前の照明機器 i のワット数
W
P j,PJ
プロジェクト実施後の照明機器 j のワット数
W
O i,BL
プロジェクト実施前の照明機器 i のみなし点灯時間
時間/年
O j,PJ
プロジェクト実施後の照明機器 j のみなし点灯時間
時間/年
個
(イ) 消費電力量を計測する場合
プロジェクト活動による消費電力抑制量は以下の式にて算定する。
ES y =


1
1
× n × Qi -Qj 
1 − TD 1000


記号
(3)
定義
単位
ES y
年間消費電力抑制量
kWh 年
TD y
年間系統ロス
%
プロジェクト実施前の消費電力量
Wh/日
Qj
プロジェクト実施後の消費電力量
Wh/日
N
当該ビルの稼働日数
日/年
Qi
<92>
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なお、上記の何れのケースにおいても、プロジェクト活動による排出削減量は
以下の式にて算定する。
記号
定義
単位
ES CO2,ELEC 電力排出係数
ER y
t-CO2/kWh
t-CO2/年
年間排出削減量
電力排出係数については、プロジェクトにて算定する必要はなく、プロジェクト
実施国にて公表している排出係数や直近に登録された CDM プロジェクトにて
使用されている排出係数を利用することが可能である。個別事業に適用できる
排出係数は、当該事業の各クレジット期間の所属する年ごとに、公表されている
最新の排出係数を利用するものとする。
(ⅴ)クレジット期間
クレジット期間の開始日は LED 照明機器を導入した日とする。クレジット期間の終了
日は、プロジェクトにおいて導入した LED 照明機器の 50%以上が寿命を迎えた日とす
る。
(ⅵ)モニタリング
モニタリング手法については、(3)モニタリング手法・計画にて詳述したとおり。
②既存方法論の分析
二国間オフセット・クレジット制度による資金提供スキームに適用する MRV 方法論を
検討するにあたっては、CDM にて確立されている既存の方法論を分析し、利用できる
ところを取り込みつつも、プロジェクト活動自体には不要であるが CDM のルール上は必
要となっている部分について厳格性への影響を考慮しながら削除できるものは削除し、
簡易で使いやすい MRV 方法論へと調整していくことが最も効率的である。
CDM には、想定排出削減量に応じて、通常規模(Large scale)と小規模(Small scale)
があり、方法論についてもそれぞれで別のものが用意されている。小規模方法論はシン
プルに作られており、プロジェクト登録に要するコストが抑制されるように制度設計され
ている。しかし、一部の小規模方法論は非常に複雑なものもあり、小規模方法論であれ
ば簡易で使いやすい MRV 方法論になるというわけではない。
現在、LED 照明機器への交換に適用可能と考えられる CDM の方法論は通常規模
<93>
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方法論の AM0046、小規模方法論の AMS-II.C および AMS-II.J の 3 種類である。
AM0046 は 2007 年に方法論として認証されたものの現在までに国連登録された案件
は無く、パイプラインに 2 件が存在しているのみである。一方、AMS-II.J は 2008 年に方
法論として認証され、これまでに通常プロジェクトとして 10 件、プログラム活動として 1 件
が登録され、パイプラインには通常プロジェクト:41 件、プログラム活動:3 件が存在して
いる。
図表19
既存の類似 CDM プロジェクトにおける利用方法論(電球交換)
出典:UNFCCC 登録データおよび UNEPFI 資料より作成
AM0046 が使われていない背景には、通常規模方法論であるため、プロジェクトサイ
ズを大きくしなければプロジェクトのコスト効率が悪いことと電球型蛍光灯を導入した家
庭で照明の電力消費量の測定が必須になっていることが挙げられる。最低でも電球型
蛍光灯を導入した世帯としていない世帯のそれぞれ 400 世帯において消費電力量を
モニタリングしなければならず、非常に手間とコストがかかるものとなっている。例えばパ
イプラインにあるエクアドルのプロジェクトでは、照明用に電力計を用意し、その測定デ
ータを電話回線にて送信するシステムでモニタリングすることとされている。インフラが整
っているとしても電力計や回線使用料など様々なコストが追加的に必要となり、プロジェ
クトコストを捻出するにはある程度規模を大きくしなければならなくなってしまう。
一方、最も利用されている AMS-II.J では、電球の消費電力量をモニタリングする必要
はなく、使用時間についても 3.5 時間の規定値が利用可能である。このため、モニタリン
グの負荷は非常に小 さく、配布された電球型蛍光灯のワット数が正確に記録されてい
れば、規定値を利用して消費電力量を算定し、排出削減量を決定することが可能であ
る。小規模方法論であるため、規模の制約はあるもののプロジェクトコストを抑制できる
ことから多くのプロジェクトにおいて利用されている。
AM0046 および AMS-II.J に共通の課題としては、各方法論が適用できる高効率照明
について、電球型蛍光灯のみを指定しており、例えば LED 電球などのより高効率な照
明については方法論が利用できないことが挙げられる。これについては、LED 電球に
<94>
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適用できない事や将来的に様々な高効率照明が開発されることをふまえると白熱電球
と同等の照度を確保しながらも、消費電力が少ない照明に適用できるように変更すべき
であると考える。
CDM の方法論は通常規模・小規模方法論いずれも保守的に作られている。このため、
基本的な方法論の構造は守りつつ、保守的な部分について実測方法を工夫して実際
の排出削減量に近づけることが必要であると考える。
上記の分析結果を踏まえ、最も利用されている AMS-II.J をベースとしつつも、①消費
電力量のモニタリングも採用しうる方法論へと改定し、②LED などのより光高率な照明
について方法論の利用を拡張することで方法論を構築することとした。
既存の CDM 方法論をベースとしていることから、当該 MRV 手法は妥当であり、際的
な MRV ガイドラインとして採用され得る水準に達しており、またインドにおいても受け入
れられるだけの厳格性を担保していると考える。また、モニタリング方法についても、プロ
ジェクトオーナーの負荷低減を意識したことにより、余計な手間や労力がかからない方
法論としてつくりあげることができたと考えている。これにより、インドにおいても受け入れ
られるものとなっていると考える。
(6)環境十全性の確保:
悪影響については、LED 生産段階において一部有害物質を使用する工程が存在
するが、LED の生産は一般的に先進国を出自とする大手電機メーカーにより担われて
いる点を踏まえると、環境に対する悪影響をもたらすとは考えづらい。
好影響については、先進国では照明機器の変遷が電球⇒蛍光灯⇒LED という順序
で進んだのに対し、インドという新興国において LED の普及を加速させることで、蛍光
灯に使用される水銀、鉛等による土壌汚染等が回避できる可能性がある。
なお、好影響の担保、及び悪影響の回避のための特別な措置は必要ない。
(7)その他の間接影響:
当該事業・活動の実施により、インドにおける LED の需要拡大が見込める。それに伴
い、インド国内に現存する白熱灯、蛍光灯等の照明機器の需要が減少し、国内の生産
<95>
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拠点が縮小、雇用の減少につながる懸念がある。一方、LED の需要増に伴う生産拠点
の新設、国内雇用の創出につながる可能性も十分に考えられ、より高付加価値な産業
構造への転換にも寄与する可能性が高い。この点を踏まえると、悪影響を回避する方
策は特に必要ないものと考える。
(8)利害関係者のコメント:
本事業の利害関係者から以下のようなコメントを得た。
(ア) TERI(The Energy and Resources Institute)
LED は現在のコストパフォーマンスでは役に立たない。LED のメリットは、水銀
を使用していないこと。CFL もわずかだが水銀を使っており、この部分はメリット
になる。
(イ) エネルギー効率局(Bureau of Energy Efficiency)
Dr. Ajay Mathur(長官)は LED について次のように述べている。
様々な日本の技術をインド国は求めているが、省エネ技術の中では、総電力
使用量から考えて最も効果的な LED と扇風機に注目している。
LED は初期投資が高いため導入が進んでいない状態である。価格差は、電
球の場合は通常の電球と LED 電球では 12 倍、蛍光灯では 13 倍の差が存在
する。初期投資に対する政府の補助金も存在しておらず、消費者が費用を負
担している状態である。1 つのアイディアだが、低価格化の実現の為に、LED
のオフィスや商業施設 での使用を促進し、生産量を拡大させてコストを削減し
た後に、家庭用を推進したらいいのではないだろうか。
また、二国間オフセット・クレジット制度に対しては支持を示さなかった。ただ
し、フィージビリティスタディを推進するのであれば、次の 3 つを明らかにする必
要があると述べた。1 つ目は現制度よりも実用性がある事の証明、2 つ目は今
後の制度の仕組み、3 つ目は二国間オフセット・クレジット制度の国際的な制
度の位置付けである。
(ウ) Energy Efficiency Services Limited (EESL)
EESL のプロジェクトにおいて LED を使ったことはない。理由としては投資回収
期間が長いため。ESCO 事業では投資回収期間が重要で、CFL は3~4年で
投資費用を回収できるが、LED は6~7年がかかってしまう。
<96>
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(9)事業・活動の実施体制:
日本政府とインド政府が二国間オフセット・クレジット制度に関する二国間協定を締
結する前提で、二国間オフセット・クレジット制度における日本メーカーの製品の普及に
よる GHG 削減プロジェクトとして登録する。二国間オフセット・クレジット制度に登録され
ることにより、日本政府の制度金融を活用しやすくなることが期待され、インド及び日本
の政府系・民間金融機関を通じてプロジェクト向けに融資を行うファンド等のファイナン
ス・スキームを構築できる可能性がある。
なお、実際にクレジットを申請する主体は、日系製造業者の現地代理店が考えられる。
図表20:想定される事業体制
日本政府
インド政府
申請
関連ファイナンス
各種現地支援
BCOM
委員会
金融機関
クレジット取得
日系製造業者
現地代理店
機器リース
機器納入
LED
計測機器発注
施工管理依頼
現地事業管理会社
計測機器製造会社
計測機器納入
施工業者
施工業者
施工業者
施工業者
施工
業務用ビル
業務用ビル
業務用ビル
業務用ビル
<97>
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(10)資金計画:
インドにおけるLED照明器具の導入にあたって、資金スキームの基本コンセプトとして、LED
照明導入によって削減された電気代の一部を購入代金に当てるものが挙げられる。
図表21:「あかり安心サービス」の考え方
電気使用料
削減による
電気代削減
電気代
節約
返済 or
使用料
融資の返済金又は
リースのリース料
の原資となる。
電気代
LED 照明に代 替
パナソニックは、日本国内で「あかり安心サービス」と呼ばれる代理店と各商業ビルオーナー
宛のリース事業を行っている。
この「あかり安心サービス」を前提にしたファイナンス・リース型取引をインドで行った場合を想
定して、そのポイントと考えられる点につき、調査を行った。
①あかり安心サービスとは:
LED照明導入にあたって1つのファイナンスストラクチャーとして、パナソニックが国内で展開
する「あかり安心サービス」が挙げられる。このサービスは、代理店と各商業ビルオーナーとのリ
ース契約に基づき、商業ビルオーナーに対する初期資金負担を軽減し、商業ビルオーナーへ
LED照明を提供するものである。
<あかり安心サービスの基本スキーム図>
処理委託
パナソニック
LED
販売
代金支払
使用後
LED 回収
代理店(リース会社)
(所有者・排出責任)
LED
設置
リース
契約
提携リサイクル会社
リース料
支払
商業ビルのオーナー
<98>
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あかり安心サービスへのファイナンス・スキームの重要なポイントとしては、LED照明機器の代
理店の役務履行能力と、及びLED照明の最終ユーザーである商業ビルのオーナーの返済能
力の重要性が上げられる。代理店はLED照明機器導入後に確実に省エネが実現するように事
前査定の実施、LED照明機器の設置・保守・メンテナンスを担っており、信用と実績のある代理
店の起用が重要である。また代理店のLED照明機器の購入代金は、商業ビルのオーナーのリ
ース料(融資返済)が原資となることから、商業ビルのオーナーの返済能力が重要となる。
本取引はリース契約が前提となっているが、リース取引はそもそもLEDユーザーが必要とする
LEDをユーザーに代わって、リース会社が購入し、長期に渡り、一定のリース料を受け取ること
を条件にLEDをユーザーに賃貸する取引である。特に初期投資額が大きい設備・機器につい
ては、ユーザーが自己資金や借入により購入すると、一時に多額の資金が必要となるが、リー
ス取引を活用することによって、月々のリース料を支払うだけで、担保無しで、LEDの導入が可
能となる。メーカーにとっても、リース取引は割賦販売と異なり、リース会社から手前で販売代金
を一度に回収できるメリットがある。
リース取引には、ファイナンス・リース及びオペレーティング・リースの2種類が挙げられるが、
パナソニックが本邦で手掛ける「あかり安心サービス」は基本的にファイナンス・リースに当たる。
ファイナンス・リースは、リース期間内に機器の購入額及びその取得に係る付随費用の合計額
のほぼ全額を回収するようリース料を設定し、基本的にリース期間内の解約はせず、通常、保
守・管理費用はLEDユーザーが負担することとなる。
一方、オペレーティング・リースは、リース期間内に機器の購入額及びその取得に係る付随
費用の全額回収を予定しておらず、リース期間内の解約は可能で、LEDの保守・管理費用はリ
ース会社で負担することとなる。
この種、リース取引をインドで展開しようとする時、リース会社ではリース資金を捻出する為の、
資金調達が必要となり、財務背景/規模が看られるリース会社を発掘、協業出来るかがポイン
トとなる。
<99>
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<インドにおけるリース取引のスキーム例>
日系メーカー
融資
リース会社
金融機関
支払
保険契約
LED 納入 リース
保守
契約
保険会社
リース料
支払
顧客
②LED照明導入にあたって想定される主なリスク
プロセス
削減見込予
測
リスク項目
代理店のパフォー
マンス・リスク
LED製品
商品リスク
LED設置段
階
代理店のパフォー
マンス・リスク
リスクの内容例
LED照明機器導入による電力
使用料削減部分が、当初導入
コストを賄うことになることから、
確実に毎月の支払い額以上の
削減があることを事前に確認す
ることが重要である。
また代理店が、LEDユーザー
に対して、サービスを手掛ける
にあたって役務履行能力を果
たせるかが重要となる。
LED照明導入前には、代理店
が設置場所を訪問し、適切に
電気量の見込削減量を評価す
ることが重要。
LED照明機器は長期的に使用
するので、使用期間に故障・破
損のリスクあり。
代理店がLED照明機器を契約
内容に沿って適切に設置する
ことが重要である。
<100>
主な対応例
 代理店の事前
査定の経験及
び役務履行能
力を検証
 メーカーからの
説明・指導
 メーカー補償
責任、保証
 代理店の経験
及び役務履行
能力の検証
 メーカーからの
説明・指導
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LED使用中
その他
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商業ビルオーナ
ーの債務返済リス
ク
商業ビルオーナーは、定期的
(毎月)なリース料支払いまた
は返済を遅延無く支払うことが
重要となる。
また賃貸ビルの場合は、ビルオ
ーナーの返済原資は賃貸料に
なるので、賃貸状況についても
確認。
 ビルオーナー
の財務状況・
債務返済能力
 第三者対抗要
件の設定
 ビルの空室率
代理店のパフォー
マンス・リスク
代理店は設置したLED照明機
器の定期的な保守・メンテナン
スを適宜行うことが重要である。
 代理店の経験
及び能力
不可抗力
地震、洪水、火災などによる
LED照明機器の故障・破損。
 保険など
為替変動リスク
金利変動リスク
返済部分の為替変動リスク
ローン金利変動リスク
 為替スワップ等
 金利スワップ等
③LED照明事業へのファイナンス検討における主なポイント
ア)実績・信用のある代理店の起用
本スキームでLED照明を販売・設置・保守・メンテナンスを行う代理店は、本ス
キームの中で非常に重要な役割を果たすため、役務履行能力を果たすことは勿
論実績及び信頼のある代理店を起用することがポイントとなる。
イ)賃貸収入変動リスクへの対処
代理店のLED照明機器の購入代金は、LED照明機器導入による電力使用料
削減部分が重要となるのは既述の通りであるが、商業ビルオーナーの賃貸料収
入も初期導入コストを賄う原資となるケースも考えられる為、LEDを使用するユー
ザーの収支繰りも確認する必要がある。またルピー建て以外の米ドルなどのハー
ドカレンシーでファイナンスする場合、賃貸収入のルピーと通貨の相違が生じる
為、既述インドにおける外国銀行の参入障壁にある通り、為替/金利の変動リス
クを手当てするスワップ契約が不可欠となる。
<101>
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④その他考えられるファイナンス・スキーム
本LED照明事業で重要な役割を果たすインドの照明機器代理店は中小企業が多く、地場
銀行及び邦銀が信用リスクを取れる先が少ないのが現状である。従って、邦銀がLED照明事
業でファイナンスを行うには、日本の輸出者の信用リスクを取るサプライヤーズ・クレジット、又は
LED照明機器の売掛債権を活用した資金調達の方法が考えられる。
ア)サプライヤーズ・クレジット
輸出者(サプライヤー)が相手国の輸入者に対して、輸出代金の分割返済を認める形で借
用供与を行う延べ払い輸出金融のこと。具体的には、輸出者がJBIC及び市中銀行から協調で
日本の輸出者に融資を行い、輸出契約に必要な機器等を調達し、途上国の輸入者から輸出
代金から頭金を除いた金額の返済を延べ払いで受けるものである。
JBIC
市中銀行
保険料
融資
返済
融資
日本の輸出者
保険契約
輸出
返済
NEXI 保険
インド側の輸入者
(LED 利用者)
延べ払い
サプライヤーズ・クレジットの主なリスクとして、輸入者の輸入代金の支払いリスクがあるが、輸出
者は輸出契約等の全額についてNEXIから貿易保険を利用することで、途上国の輸入者の支
払いリスクを軽減することが可能である。
但し、輸入者がどういった先であるべきかは、JBIC/NEXIとも都度相談事項であり、基本的に
上位国営大企業 乃至は 民間財閥でもTataやRelianceなどの大手財閥であることが検討の
入り口として前提となる。
<102>
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イ)LED販売債権を前提にしたスキーム
債権買取スキームは、金融機関が債権を買取りまたは担保として融資を行うことで、LEDの資
産を持ちながらOPEX前提でファイナンスを展開しようとするLEDサービスを展開する側が、資
金調達に活用することができる。
売掛債権買取スキーム:
代理店が売掛債権を金融機関に譲渡することで資金調達を可能とするスキームで、代理店に
とっては売掛債権の決済期日前に資金調達が出来、かつ売掛債権管理・回収業務の効率化
を図ることができる。
資金
金融機関
(譲受先)
代理店
売 掛 債
LED 販売
権
譲渡・買取
売 掛 債
代金回収
権
商業ビルのオーナー
(売掛先・債務者)
売掛債権を担保に差し出す融資スキーム:
代理店が保有する売掛債権の信用力を担保に金融機関から資金を調達する方法で、売掛債
権の決済期日前に資金調達ができ、融資に対する返済が必要であるが、返済原資として回収
された売掛債権を充てることもできる。
融資
代理店
返済
融資契約
LED 販売
売 掛 債
譲渡担保
権
商業ビルのオーナー
(売掛先・債務者)
<103>
金融機関
(譲受先)
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第三者退行要件の具備:
売掛債権を譲渡する際に重要な手続きとして、第三者対抗要件の具備が挙げられる。第三者
退行要件は、債務の権利を第三者に主張できるもので、売掛債権の譲渡を受けた金融機関
の譲受先は、第三者に対して債権者としての権利を主張することができるものである。対抗要
件が具備されていないと、売掛先から資金を回収することができないこともある。
第三者退行要件を具備する方法としては、以下の2つの方法がある。
ⅰ)民法上の定めに基づいて、債務者に対して確定日付証書によって「通知」するか、もしくは
債務者から「承諾」を得る必要がある。
ⅱ)債権譲渡特例法上の定めに基づいて法務局に備えられた債権譲渡登記ファイルに「登
記」を行う。
上記は日本国内の手続きであるが、インド国内での手続きについても確認し、債権による資金
調達を行う場合は、確実に第三者退行要件を具備する必要が出て来る。
債権譲渡
金融機関
(譲受先)
代理店
①通知
①’ 承諾
登記
法務局
商業ビルのオーナー
(債務者)
売掛債権による取引の主なリスク:

売掛債権の回収不能リスク
売掛先が倒産し、代金が回収できなくなるリスク

不正取引リスク
債権自体が存在しない、存在したとしても既に譲渡されているリスク

流用リスク
債権者が支払い代金を他の目的に流用してしまうリスク
上記のリスクを軽減する為、以下の売掛債権の取引には以下の要件が備わっていることが望ま
しい。

売掛先のデータ入手・信用力評価
売掛債権の買取るには、当該売掛債権の信用力評価が重要で、そのために売掛先の
企業データ入手・評価が必要。

第三者対抗要件
売掛債権を金融機関などに譲渡する際に、「第三者対抗要件」を具備する必要がある。
<104>
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
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譲渡先指定の口座へ支払い
債権者が支払い代金を他の目的に流用しないように、売掛債権の回収には譲渡先指定
の口座へ支払いを依頼。
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(11)日本製技術の導入促進方策:
本事業のカウンターパートとなるパナソニック株式会社製の LED 照明機器を用いた
インド国全体の GHG 排出量削減ポテンシャルは、2020 年には 74.5 万 tCO2/年になる
と見込まれる。
前項で記載の「あかり安心サービス」を援用展開し、①照明機器使用後の手続きに
関する負担の軽減、及び②適正処理によるリサイクルの再資源化を実現するし、イニシ
ャル導入コストの削減を達成することができたならば、日本製技術の導入・普及にはず
みをつけることができる可能性がある。
(12)今後の見込と課題:
二国間オフセット・クレジット制度におけるプロジェクトを実施するためには、以下の 2
点が重要と考えられる。
・ 日本メーカーの省エネ設備の販売体制の構築
・ JBIC・NEXI・JICA 等の日本政府の制度金融との連携
日本メーカーの省エネ設備の販売体制の構築については、本 FS 事業の結果をもと
に、販売 規模が期待 でき、プロジェクト申請の手間がかからない法人需要を中心に開
拓していく必要がある。その際、インド全土で事業を展開する必要があることから、充実
した販売ネットワークの構築及び、州間の物品移動を前提とした物流網の構築が必要
となる。特にインド市場の場合、州をまたいだ物品の移動には州間移動税が賦課される
ことから、その点を十分に留意して事業計画を立案する必要がある。
JBIC・NEXI・JICA 等の日本政府の制度金融との連携については、事業計画が明確
化し先 導的プロジェクトの結果が見え始めた段階で、次のステップとして必要となる可
能性がある。日本政府の制度金融を使うことにより、プロジェクト全体のスピードが低下
する場合には、民間のファンドを組成することも含めて、ファイナンススキームは多様な
選択肢を見据えて検討を進めていく必要がある。
<106>
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5. コベネフィットに関する調査結果
本事業・活動のコベネフィットとしては、LED 照明の利用による使用電力量の削減に
伴う発電由来の SOX・NOX の削減効果があげられる。
削減効果の定量評価に際しては、単位発電量あたりの SOX・NOX 排出量が必要と
なる。しかし、インド国においては、いずれの電力公社においても単位発電量あたりの
同排出量を把握する設備を有しておらず、また、政府による規制値についても、大気中
の濃度に関するもののみであり、単位発電量あたりの同排出量を推測する手立てとは
ならない。よって、ここでは、過 去 の 調 査 結 果 (出 所 : Environmental status of India
Sukumar Devotta, C. V. Chalapati Rao – 2008)より、下記の数値を用いる。
・
インド国における発電時に排出される SO2
 7.4g/kWh
・
同、NOX
 6~10g/kWh のレンジ
※定量化に際しては 8gm/kWh を使用
上記数値、及び、前述の 2015 年時点のホスト国全体の削減ポテンシャルより求めた
使用電力量の削減効果より、コベネフィットの定量化を行った。
ホスト国全体での使用電力の削減量(2015 年)
= 85,784(t-CO2) ÷ 0.89(t-CO2/MWh)
= 96,387(MWh)
SO2 排出量の削減効果(2015 年)
= 96,387(MWh) ×7.4(g/kWh)
= 713(ton)
NOX 排出量の削減効果(2015 年)
= 96,387(MWh) ×8.0(g/kWh)
= 771(ton)
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6. 持続可能な開発への貢献に関する調査結果
インドが今後も高い GDP 成長率を維持し続けるためには、発電量を 2031 年までに
現在の 4 倍まで増加させる必要があり、しかし一方で、インドは今や日本を抜いて世界
で 4 番目の GHG 排出国となっている。特に経済成長に伴う排出量増加が顕著である
ことから、今後の電力供給は「量」と「質」の両方を追及することが求められるため、インド
政府は「省エネの促進 のための国家ミッション」を制定し、省エネルギー施策の拡大を
目指している。省エネルギー施 策を拡大させるためには、各州・自治体政府において
具体的な導入施策が実施され、多くの事業者が参入する環境を醸成することが重要で
ある。
3.(2)で述べたとおり、2010 年現在、インド全土で 92,848GWh の電力が不足してい
る。2021 年には、電力不足は 1,914,508GWh まで拡大すると予測している。また、現在
のインドでは、GDP(国内総生産)あたりの一次エネルギー消費量が日本の約 5 倍とい
う水準にある。インドのエネルギー消費効率の悪さは、今後の成長を阻害する要因にな
る。
一方で、インドにおける省エネに対する意識は、低い水準にある。LED 照明機器等
の需要側で電力消費を抑制する設備機器の導入が進んでいない点からも、その状況
は確認できる。背景には、「供給量を増やす」方に意識が向いていることがある。さらに
「エネルギー使用量を抑える/下げる方法を購入することで、将来にわたって自らを取
り巻く環境が向上する」ための具体的な解決策が不足していることもあると考える。
本事業の検討を通じて、インド国が電力消費の観点から経済成長を阻害することの
ないような、需要側のマネジメントが可能になると考える。
以 上
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