Comments
Description
Transcript
2ページ - Zaneli
飼い主は命の支配者であるべきか? 松川村 S子 何十年も前から、私の家の周りには野良猫がいま した。私はその猫たちを愛おしくも哀れにも思い、お 腹いっぱいの幸せだけでもと餌を切らすことは有り ませんでした。数年前に主人が重い病気を煩い、看護 と介護生活が始まりました。そして一人娘は私の思い をよそに、都会へと私たちとの生活を断ち切るよう に嫁いで行ってしまいました。心の拠り所を見失った 私の気持ちの中で猫たちとの関係は人間以上に安心 できる物に思えるようになっていきました。十数年前 に我が家に来た雄猫のテツは家族の一員として私たち 夫婦の中にすっかり住み着きました。女としてかいが いしく世話を焼く相手にふさわしく、時には介護疲 れのくたびれ果てた体をさするように私に寄り添っ てくれます。 4年前に、庭に来る野良猫の母親が5匹の子猫を置 いたまま姿を消しました。母猫の居ない子猫に変わ り母親代わりをしなくてはいけない事態に、心身と もに害い立たせて気合いを入れたのを思い出します。 まだまだ若さが残っているから大丈夫と自信もあり ました。さらに一昨年の秋、西裏の物置に来る雌猫 が子猫を2匹連れてきました。この母猫は用心深い本 当の野良猫でしたが、他に来る野良猫から子猫を守 るのに大変苦労している様子でした。その姿が可哀想 で ̄r何とかしなくては」と、自分の老いも考え、餌 やりで限りなく集まってくる野良猫に終止符を打つ事 も考え、思案の果てに、母猫の不妊手術のために捕 獲するのを機会に、家に入れてケージで飼育しようと 決めました。子猫も一緒に捕まえて大きなケージに住 まわせました。 今年の春には子猫もすっかり大きくなり、いよいよ 手術を受けさせないといけません。しかし時間が経 てば温厚になると思っていましたが、餌をあげようと 器を入れるのも大変な野良猫のままで、私の手には傷 が絶えませんでした。雌の子猫も母親そっくりで気性 が荒く、母娘で爪を出して前足で叩き付けるように手 を出し、好物の竹諭も宙に舞ってしまいます。外に来 ていた時はこんな恐ろしい猫とは想像も尽きませんで した。ねこの会の方に手伝いに来ていただき、大捕 物の末、子猫2匹の不妊手術と母子3匹の前足の爪の 切除手術を終えました。こんな怖い猫でも我が家の 飼い猫として家に迎え入れたからには絶対に外に出す ことはしまい、死ぬまで一緒に暮らそうと誓ったか らこそ、恐ろしい武器の爪の切除に踏み切ったので す。野良として厳しく暮らした生い立ちが、あの恐ろ しい猫になったことを思うと、人がなした野良の葉 を責めるには当たらないと思えるのです。 こうして 9匹の猫との生活がようやく慣れてきた頃に、風邪と 診断され2ケ月近く通院していた先で、大きな病院で の検査を勧められ、腑がんと診断されました。その 時の宣告は信じられないほどの衝撃で今でも鮮明に 覚えています。早急の入院と手術を命じられ9時間に 及ふ大手術でしたが、二個あった癌の病巣は全部取 り除くことが出来魚 残りの部分は薬物と放射線で治 療することになりました。野良猫と戦って来た日々 から一転して病魔との戦いになってしまいました。 こうして病床に居て、毎日考えることは主人の体を 思いやるよりも、あの猫たちの事ばかりです。自分が 病に倒れることを知らずに保護してしまいましたが、 「野良として屋外に放置しておくべきだったの か?」、「自分にもしもの墓があった時に猶達はど うなるだろうか?」、「人慣れしない猫だから残して いっても不憫だからと一緒に連れて行くべきだろう か?」と、命の先が見えない事がますます心配をか き立てます。「これから先何年の聞、猫の世話を続け られるだろうか?」、「餌や砂などの買い物から糞の 始末などをどうやってこなしていこうか?」「何時も 足下で寝ていた猫たちは私が不在の間どうしているだ ろうか?」果てしなく悩む喜ばかりです。猫には自由 奔放に生きる権利があろうとも、こうして人に飼われ たならば、猶らしい何処までの自由が奪われる事に もなるのだろうか? まさに飼われる富で飼い主に 拘束され、命までも束縛されることにもなるだろう か? 私の都合だけでこの猫たちを生かしているのか しら? 私は長い間忙しく働いて、家族の世話に追われて暮 らしてきました。そして猫が大好きで、餌をあげてき ましたが猫の命に大きく関わっていたことに気が付 かないで生きてきました。今こうして猫たちの事を案 じている章がこんなに苦悩であっても、猫の事を考 えている時間は今まで持ったことが有りませんでした から本当に幸せだと気付いたのです。いま私の命が紐 く揺らいでいる時にこそ、本当にあの猫たちが好き で、心から愛おしいと感じました。 豆知識 体のニオイii駁 ヽ一〇′ 猫の挨拶は鼻と寛を付き合わせて臭いを喚ぎ合うi のが第一段階で、次にお尻の臭いを喚ごうとする。 二この時にもっと相手を知ろうと強引に嘆ごうとすi る。先に喚いた猫の方が優位に立つ事になるらし く、お尻の方に廻っていち早く−嘆いた奴が勝ちとい うわけだ。他の猫の臭いが気になって仕方ないくら三 いの猫は自分が優位に立ちたいといつも思ってい る。一方、おっとりした猫はお尻の臭いを嘆がれて 本気になって怒る。人間社会でも勝つためには周り にアンテナを張り巡らせて、素早く動けないとタメ 亮と言うことだ。