...

p147~p209 - 千葉県教育振興財団

by user

on
Category: Documents
13

views

Report

Comments

Transcript

p147~p209 - 千葉県教育振興財団
Ⅳ
特
論
千葉 県下遺跡 出土の製鉄 関係遺物 の分析調査
大
,畢
正
己
i. は し aら に
千葉 県文 化財 セ ン ター が 、発掘 調査 に よって検 出 した15遺 跡 出土 の 製鉄 関係 遺物 を、 自然科
学 的手 法 を駆使 して調査 した報告 であ る。調査 対 象材 は 、製錬 滓 ・ 鍛 冶滓 。鉄 塊 ・砂 鉄 で あ り、
これ らを光 学顕微 鏡 、化学 分析 、 X線 回折 等 の 手法 を用 い て 、鉱物 組成や 金属 組織 の 同定 を行
な い 、製鉄 原料 を明 らか にす る と共 に 、製錬 滓 と鍛 冶滓
(精 錬鍛冶滓 :大 鍛冶滓 と鍛錬鍛冶滓
:
小鍛冶滓 )の 分 類 と、古代 製鉄 技術 レベ ルの 考察 を試 み た。
ii.調 査 方 法
1.供 試 試料
千葉 県下 15遺 跡 出土 の 製錬 滓 、鍛 冶滓 、鉄 塊 、砂 鉄 等 を供 試材 とした。 それ
らの 履歴 を表 8に 示 す 。
1)肉 眼観察
2。
調 査手法
2)光 学顕微鏡観察
各供 試材 は水 道 水 で充分 に洗浄後 、三 分 割 して、片方 の 中核部 を検鏡 試料 と した。検鏡 試料
は 、ベ ー クライ ト樹 脂 に埋 込 ん だ 後 、 エ メ リー研 摩紙 (コ ラ ン ダム A1203に 磁鉄鉱 を含んだ黒
灰色の結晶の粉末砥粒 を膠質の接着剤に塗布 して いる)を 使 って荒研 摩 し、次 にアル ミナ (Al.203)
粉 末水 溶液 (ア ル ミニ ウム塩の沈澱物 を焼成 して作 られた六方晶形綱粒粉末の水溶懸濁液 )を バ フ布
に注 ぎなが ら被検 面 を鏡 面 に仕 上 げて構 成鉱物 の 同定 を行 な った 。
3)化 学分析
供 試材 は 、検鏡 試料 の 片割 れ を当て た 。 二 酸 化磋素 (Si02)、 酸化 アル ミニ ウム (Aし 03)、
酸化 カル シウム (CaO X酸 化 マ グネ シウム(MgO)、 酸化 マ ン ガ ン(MnO)、 二 酸化 チ タ ン(Ti02)、
*編 集者注 …… ここに示す試 料 の 名称 は 、分析 の結果明 らか となった性情 に もとづ いて本章執 筆者
が 付 した ものであ る。 このため 、調査者 が分析前 に、肉眼観 察 の 所見に もとづ い て付 し た名称
写真 図版 11∼ 25に 記載 )と は 異な る場合が あ るこ とを付記 してお く。
-147-
(
表
Ⅳ 0
1
特
論
供 試材 の 履歴
遺 跡
名
遺 構
花
前
73号 製錬址
名
遺物 番号
0830
1363
4
0042
5
1390
6
0558
砂鉄付着製錬滓
製 錬
0797
鍛 冶 址
8
73号 製錬址
前庭部一括
製 錬 址
9
23号 製錬址
0452
精 錬 址
②
滓
製錬 滓 (精 錬素 材 として搬 入
10
0797
鍛錬鍛 冶滓 (小 鍛 冶滓 )
11
0499
鉄塊
香
○
7号 製錬址
(白
製 錬
)
○ ○
23号 鍛 治址
取
注
含鉄製錬滓
7
12
X線 回折
○ ○
3
物
錬
1159
製 錬 址
遺
製 鉄
2
遺構 の種類
鋳鉄 )
滓
13
⑮
○
14
7号 A製 練址
15
7号 B製 錬址
16
19号 C製 錬址
○
砂鉄付着製錬滓
17
製 錬
滓
18
19
20
○
10771
竪 穴鍛 治址
22
10772
竪 穴鍛 治址
23
0919
18号 製錬址
(作 業場 )
H号 製錬址
製錬 作 業場 址
製 錬 址
26
27
鉄 滓
■ 畑
錬
25
御
砂 製
24
精錬 鍛 冶津 (大 鍛 冶滓 )
○ ○
6号 鍛治址
21
⑩
鉄 塊 (白 鋳鉄 )
18号
A製 錬址
18号
B製 練址
製 錬 址
製
錬
滓
○
28
29
30
○
-148-
千葉 県下遺跡 出土の 製鉄関係遺物 の分析調査
遺
跡
名
御 幸 畑
遺
構
名
遺物 番号
18号 製錬址
17号
遺構 の種類
遺
小鉄 塊 (11共 折鋼
製 錬 址
D製 錬址
製
17号 製錬址
(作 業場 )
製錬址
錬
類
X線 回折
注
⑩
)
滓
銑鉄 片 (酸 化 して い る )
製錬作業場址
17号 B製 錬址
分
物
製
?
錬
滓
鉄塊 (白 鋳 鉄 )
17号
C製 錬址
l号 住居址
観 音 塚
鍛 治 址
製 錬 址
0383
竪 穴住 居址
No l
竪 穴鍛 冶址
○
鍛錬鍛 冶滓 (小 鍛 冶滓
鉄 器 片 (器 種不 明 )
No 3
稲 城 台
表
土
鴻 ノ 巣
25号 住居址
031-C住 居址
4
7
0
0
日秀 西
明
①
製 錬
⑬
滓
⑩
ねずみ鋳鉄 (酸 化物 )
竪穴住居址
鍛錬鍛 7台 滓 (/1ヽ 鍛ヤ
台滓
)
①
鍛 冶滓
)
⑫
)
〇
029-E住 居址
0034
亜 共析 鋼 +鉱 滓
093住 居址
0294
鍛錬 鍛 ヤ
台滓
134住 居 址
0006
鉄 塊 (白 鋳 鉄 )
佐倉天辺
006住 居址
-括
鍛錬 鍛 冶滓 (小 鍛 冶滓
江 原 台
151住 居址
0009
本 の 根
成 田層露頭
公津原LOC o5
003=L力 賣
上
(/1ヽ
竪 穴住居址
⑭
鉄
砂
201
⑩
竪穴鍛冶址
不
鍛 錬鍛 冶滓
精錬鍛冶滓 (大 鍛冶滓 )
竪穴住居址
5
3
3
3号 住居址
竪 穴住居 jL
6
3
0
0
金 楠 台
No27
︲
0
0
0
戸 張 作
1地 区24住 居址
⑮
)
鍛錬鍛 冶滓 (小 鍛 冶滓
鍛 冶 址
⑮
)
含鉄 製錬滓
公津原LOC 14
56
″
下
″
上
57
公津 原LOC 16
58
公津 原LOC 20
59
60
阿玉 台北
002住 居址
0208
019住 居址
0201
043〔 主万
]七 L
201
077鍛 治址
①
鍛錬 鍛 冶滓
竪 穴住居址
○
堅 穴住居址
鍛 冶 址
300掘 立柱
建物跡
202
004P3土 壊
0022
鉄塊 (ね ずみ鋳鉄 )
掘 立柱建 物跡
±
1廣
鉄塊
(白
注 )(イ
)
(口
)
-149-
鋳鉄
)
⑮
1∼ 60の 供試材は検鏡、分析全部実施。
遺物分類は調査デー タに もとず く結果である。
Ⅳ 特
論
バ ナ ジウム (V)、 五 酸化燐 (P205)ら につ い て は蛍光 X線 法 、全鉄分(Tota Fe)、 金属 鉄 (Meta
nた
Fe)、 酸化 第 1鉄 (FeO)ら は湿 式法 に よる化学 分析 、酸化 第 2鉄 は計算 値 、硫 黄 (S)は 燃
焼容 量法 、炭素 (C)は 電 気伝 導 法 、クロム (Cr)は 原子吸光 光 度法 で測定 を行 な った。
4)粉 末 X線 回折
X線 回折 とは 、 「単結 晶 、 または粉 末試料 に X線 を照射 す る と、それ ぞれ 固有 の X線 が 回折
す る現 象」 をい う。 X線 回折分 析法 とは、 この 回折 角 と回折 強度 か ら物 質 を同定 す る方法 であ
る。 この分 析 法 の基本 は状 態分析 法 であ る こ とであ り、物 質 中 の構 成 元素 を求 め る もの では な
く、あ くまで も形 態 とその量 を知 る こ とであ る。
試料調 整 は 、分析 用 に粉 砕 した鉄 滓 の一 部 を、 さ らに メ ノウ乳 鉢 で細粒 化 (325メ ッシュの
論 を通 る程度 )し て い る。鉱物組 成 の 同定 には 、 ASTMヵ ― ドと比較 す る方 法 を とった。
ASTMカ
ードは 、ASTM
X― ray
Powder Data Fileと 呼 ば れ 、ASTM(Amencan society
注
1)
for Testing Materね ls)か ら発 行 され て い る 。
iii.調 査 結 果
1.花 前製鉄遺 跡
遺跡 は 、柏 市船 戸字花 前 1438他 に所在 し、歴 史時代 の 国分期 (9世 紀
)
に推 定年代 を比定 され て い る。 この 遺跡 の 南側斜 面部 か ら製錬 炉 6基 、
(竪 炉 タイプ)、 鍛 冶炉
2基
(鍛 造素1片 散布 )、 炭 窯
9基
(時 期不明 )、
及び台地上 の竪 穴住居 l■
注
2)
28軒 中 17軒 か ら、製鉄 作業 に拘 る鉄 滓ゃ 羽 口片が 出土 し、鍛 冶炉 の検 出 もな され て い る。
この うち、今 回 の供 試 試料 は 、南側斜 面部 に位 置す る 073号 製錬 炉 出土 の 製錬 滓や 鉄 塊 と、
台地上 の鍛 冶 工 房 l■ とみ られ る 023号 竪 穴住居址 出土 の鍛 冶滓 と鉄塊 であ る。
1)073号 製錬炉出土炉壁 スラグ付着砂鉄
外観
:
(図 版11-1)
炉壁粘 土 付 着 の ガ ラス質鉱 滓上 に堆積 した半 溶融状 態 の砂鉄 粒子 を試料 とした。砂
鉄 は黒褐 色 を呈 して い た 。砂 鉄 を付 着 した鉱 滓表 面 はや ゝ粗 縣 で 、従 来 み られ るが ラ ス質鉱 滓
と共 に 、普 通鉱滓 質 が一 部 に 存 在す る。鉱滓厚 み は10mm前 後 で あ った 。
な を、 スサ 入 り炉材粘 土 は 、熱影響 を受 け て赤 色化 し、鉱 滓 に接 す る個 所 は青 灰色 を呈 して
い る。炉 内上 部 に位 置す る炉 壁 で あ ろ う。炉壁粘 土 こみ で 、109× 90× 19mmあ り、重 量 は 1585
gで あ った。
顕微鏡 組織
:
図版 11-1に 示 す 。鉱物 組成 は 、原料 鉱物 の 砂鉄粒 子 が 半還 元状 態 で残留 し
注 3)
てお り、基地 に は灰 白色盤状 結 晶 で あ るフ ァイヤ ラ イ ト (Fayal■ e:2 FeO・
Si02)が 認め られ
る。
化学 組 成
:
表 9(そ の 1)に 示 す 。 純 然 た る砂鉄 粒子 のみ の分析 では な く、 ガ ラス質 鉱 滓 も
混 入 して い るの で 、鉄 分 は低 目で造 滓成分 (S102+Aし 03+CaO+MgO)が 高 目であ る。
-150-
千葉県下遺跡出土の製鉄関係遺物の分析調査
全鉄 分
(Tota Fe)は 19.1%で あ り、 この うち、 金属鉄 (MetJIc Fe)が 0.08%、 酸 化 第
1鉄 (FeO)が 12.7%、 酸化 第 2鉄 (Fe203)が 13.1%の 割合 であ る。 ガ ラス質鉱 滓 の 混 入 で
造滓 成分 は 高 目で、 65.08%を 示す 。 二 酸化 チ タ ン (Ti02)も 低 日で3.73%で あ る。他 の 随伴
微 量 元素 もお しなべ て低 目傾 向 で あ る。 酸化 マ ンガ ン
硫黄
(MnO)は 0.34%、
クロム (Cr)o.02%、
(S)0.01%、 五酸化 燐 (P205)0.084%、 バ ナ ジウム (V)0.H%、 銅 (Cu)o.004%
で あ った。
これ らの 成分値 は 、該装 入砂鉄 成分 を示す の では な く、 ガ ラス質鉱滓 成分 の影響 を受 け て い
る こ とが指 摘 で きる。
:
粉 末 X線 回折
図31と 表 10に 示す 。 図31の
X線 回折 図 よ り同定 され た主 要 鉱物 組 成 は 、Ma
gnetite(Fe304→ ASTMヵ ― ドでに 19-629)と 、Fayalite(Fe2S04→ ASTMカ ー ドで No20-1139)
わずかなが らHematite(α ―Fe203
で あ り、続 い てWustite(FeO→ ASTMヵ ― ドでNo 6-615)と 、
→ASTMヵ ― ドでm13-534)及 びDiopside(CaO o MgO。 2Si02→ AST Mヵ ― ドでNo 3-860)
がFayahteに 重 な り気 味 で検 出 され る。
顕微鏡 組織 で観 察 した鉱物 組 成 と、あ ま り差 異 の な い結果 であ る。 なおDiopside(CaO o MgO
・2Si02)の 存 在 か ら、媒 溶剤 として の石灰石 の使 用 の 有無 が 、 か らん で くるが 、強度 と して
弱 いの で 、炉材粘 土 か らの 天 然産 出物 の現 われ と、み るのが 妥 当 と考 え る。
2)073号 製錬炉出土鉱滓
外観
:
(図 版 11-2)
表 皮 は淡褐 色 を呈 し、や ヽ粗雑 な肌 を有す る炉 内残留滓 であ る。 炉 内残留 滓 とは 、
炉操 業停 止時 に炉 内 に残留 した鉄 滓 で 、原鉱 (砂 鉄 )が 木炭 よ り還 元 され 、 さ らに釜土 と反応
して流 出滓 に 変化 してゆ く過程 の鉄 滓 であ るか ら、炉 内 の 残留個 所 に よ り鉱 物組 成 が 異 な り、
注
4)
非常 に 多様 な もの を含 む と言 われ て い る。
裏 面 は小 波状 の小 凹 凸で黒褐 色 を呈 し、鉄錆 を局部 的 に発 して い る。 破 面 は黒褐 色 で小 気泡
がみ られ るが 比重 は大 きい。 サ イ ズは 、46× 42× 30mmで 、重 量 は68.6gで あ った 。
顕微 鏡 組織
:
注
5)
図版 11-2に 示す 。 多量 の 白色 多角 形 のマ グネ タイ ト (Magneate:Fe3 04)
注
6)
か ら白色粒 状 の ヴ ス タイ ト (WiSute:FeO)へ と、還 元反応が進行 す る状 態 を示 して い る。鉱
物 組 成 は他 に 、淡灰 色 の フ ァイヤ ライ ト (FayJ■ e:2 FeO・
Si02)の 盤状 結 晶が認め られ る。
フ ァイヤ ライ トの 成長状 態 か らみ て 当鉱津 は徐 冷 を受 け た こ とが推 定 され 、炉 内残留滓 であ る
こ とを裏付 け て い る。
化学 組 成
:
表
9(そ の 1)に 示す 。 製錬 初期段 階 で生 成 した鉱滓 な の で 、鉄 分 は 高 目で 造
滓成分 は低 目で あ る。す なわ ち 、全 鉄 分 (TOta Fe)は 54.8%あ り、 この うち未還 元酸化 鉄 が
多 く残留 して い て 、酸化 第 2鉄 (Fe2 03)は 多 く41.7%あ り、還 元過程 の酸 化 第 1鉄 (FeO)は
32.8%で あ る。造滓 成分 (Si02+A1203+CaO+MgO)は 少 な く、 12.03%で あ った。
151-
表
Ⅳ
特
9
各種 試料 の化学 分析結果 (そ の 1)
符号1 遺跡名
1
論
1
遺構名
1
マグネシウム
区 分
73号 製錬址 は
48 2
付着鉱滓
4 97
製錬滓
2
34.6lo.oolso.ol
3
4
rs.z
1.49
2.57
16 7
3 48
41 5
2 05
29 9
2 02
5
含鉄製錬滓
6
製錬 津
4 20
7
鉄
0 54
塊
1 55
8
9
製錬 滓
3 66
10
鍛錬鍛冶滓
0 91
鉄
11
12
塊
3.05
(白 鋳 鉄 )
7号 製錬址
10 1
製錬 津
8 60
13
14
15
16
7号
A
製錬址
7号
B
製錬址
19号 C
製錬址
17
0 17
3 00
3 39
29 6
3 08
25 0
3 24
鏃
付着 鉱滓
2 69
製錬 津
4.30
18
4 04
19
3 32
20
2 92
21
6号 鍛治址 精錬鍛冶滓
22
23
129
1 28
53 8
1
0 27
12 2
1.28
45 2
1
5 3]
174
2.57
│
24
18号 製錬
作業場tL
砂
25
n号 製錬址
製錬滓
鉄
26
鉄
6 82
24 2
塊
3 79
(白 鋳鉄 )
27
製錬滓
28
29
30
1181ill址
-152-
2.99
3.53
0 22
29 0
4 95
166
5 35
25 0
4 50
27 6
4 87
千葉県下遺跡 出上の 製鉄関係遺物 の分析調 査
二酸化チタン ク ロ ム
(Ti02)
(Cr)
硫
黄
(S)
五酸 化燐
(
炭
素
ヾ
ナジウ´
(C)
(V)
(Cu)
存分
)
這成
?, t>
(
遣痒成分
1102
Total Fe Total Fe
3 73
0 02
00H
0.084
0 08
0 11
0 004
65 08
3 407
0 195
0.39
9 50
0 04
0 051
0.13
0 12
0 26
0 006
12 03
0 220
0 173
0.70
(19 62)
17 7
0 07
0 041
0 19
0 19
0 47
0 003
34 79
l KX15
0 512
0 34
0 37
(766)
0 03
00H
0 25
0 12
0 12
0 004
61 25
2 988
0 250
0 34
561
0 02
0 085
0 20
0 27
0 16
0 005
45 07
1 422
0 177
0.02
0.068
0 56
0.18
0 24
O K104
27 41
0 629
0 229
061
5 13
10.0
2 43
001
0.116
0 14
1 26
0 06
01X19
884
0 143
0 039
0.34
8 47
0 03
0.061
0.12
0 32
0 22
0 006
12 69
0 240
0 160
051
(11 98)
13.0
0 04
0 068
0 24
0 23
0 38
0.005
21 64
0.492
0.295
0 13
( 2 30)
0.02
0 078
0 13
041
0 07
0.005
22 53
0417
0.008
0 02
0 34
001
0.136
0 14
2 00
0 02
0 009
4 59
0 064
0.005
1.80
0 59
148
0 04
0 078
0 23
0 24
0 29
0 005
18.12
0414
0 338
071
16 1
0 04
0 038
0 18
0 17
0 31
0 004
16 97
0 376
0.357
041
12 8
0 06
0 017
0 34
0.10
0 25
0 006
46.08
1,713
0.476
0.62
12 8
0 04
0.010
0.35
0.05
0 23
0 004
40 59
1.289
0.406
0 06
0 034
0 082
0 27
0 15
0 003
50 26
1 753
0 257
0 49
7.35
0 65
12.8
0.05
0 054
0 31
0 08
0 27
0 002
42 85
1 428
0 427
0 59
10.2
0.03
0 038
0.30
0 23
0 19
0 002
48 74
1 799
0 376
0 59
14.4
0 06
0017
0.12
0 21
0 30
0 005
14 93
0 326
0314
0 66
14.5
0 04
0 078
0.15
0 32
0.28
0 004
27 84
0 778
0 405
0 25
4.95
0 02
0.038
0.21
0 33
0 10
0 010
21.15
0414
0 097
0 22
5.30
0 02
0 038
0 27
0 55
011
0 005
19 70
0 366
0.099
0 29
7 58
0 05
0.085
0.20
0.20
017
0 016
29 13
0 645
0.168
071
17.7
0 06
0.017
0.055
0 07
0 36
0 004
12 98
0 273
0.372
0 59
15 2
0 06
0 041
0.28
011
0 28
0 003
38 78
1 251
0 490
0 02
0 065
0 22
3 66
0 12
0 008
5 75
0 080
0011
0 08
0 81
0 66
142
0 06
0 054
0 38
0 05
0 27
0 002
48 84
2 133
0 620
0 64
146
0 06
0 082
0 18
0 28
0 29
0 004
27.40
0 736
0 392
0 57
12.5
0 07
0.061
0.34
0 04
0.24
0 004
41 69
1 371
0411
0 56
H6
0 05
0 068
0 32
0 14
0 23
0.004
45 00
1 636
0 422
②
″ ︵
︶ ″
″
″
0 10
注
①
分析 :川 崎製鉄株式会社千葉分析センター ( )内 数字は日立金属にて再チェ ンク分
-153-
Ⅳ
表
符
論
特
9(そ
の 2)
遺構名
遺跡名
御 幸畑
小鉄 塊
47 2
7 15
製錬 滓
311
0 27
銑鉄 片
74 8
製錬 滓
35 4
鉄
塊
(白 鋳 鉄 )
17号 C
製錬址
製錬 滓
1号 住居址
鍛 冶址
鍛錬鍛冶滓
鉄
1地 区24
稲城台
住 居址
戸張作
金属鉄
(Nlelalhc Fe
17号 D
製錬址
l」
観音塚
全鉄 分
TOtal Fe
18号 製錬址
17号 製錬
作 業場 fJL
17号 B
製錬 L
34
分
区
表
土
031
79 4
55 2
39 2
19 8
7 47
シウム
MgO)
48 9
15 8
4 00
2 23
1 36
35 9
4 1
25 8
6 14
4 17
3 96
59 8
38
2 34
0 18
0 17
18 4
29 7
6 88
378
2.43
12.6
34 6
0 98
0 13
0 10
6 61
5 39
165
2 57
20 4
27 1
7 84
1 84
1 59
41 8
3 64
29 5
21 7
16 1
4 34
2 60
2 99
48 3
0 29
46 3
17 12
23 0
6 76
3 32
0 89
0 08
001
0 02
2 77
1 36
99 4
器
25 6
酸化第1鉄 酸化第2鉄 二酸化珪素 酸化7ル ミニウム 酸化カルシウム
f ez(J3
(CaO)
(FeO
(Si02)
(A1203)
0 58
98 9
0 067
0 15
100
鍛錬鍛冶滓
43 5
0 19
30 6
27 9
21 4
製錬 滓
46 4
1 79
29 5
30 9
H2
3 74
0.93
4 09
3 55
2 16
3 96
4 39
3 50
金楠台
3号 住居址 精錬鍛冶滓
48.9
0 65
48 6
149
15.1
鴻 ノ巣
25号 住居址
19 5
0 38
13 1
123
37.9
42 1
21 5
2.14
0 74
0 15
0 20
7.60
2.06
2 04
101
不
明
031-C
日秀西
住居址
029-E
住居址
本寸
093住
上
llllJll:
ねずみ鋳鉄
71 6
鍛錬鍛冶滓
61 6
0 19
55 5
26 0
含鉄鉱 滓
45 0
4.69
34 3
195
H.3
5.26
281
2 46
鍛錬鍛冶滓
56 1
0 25
57 6
15 1
170
4.46
0 77
0 49
0 19
0 10
0 07
3 74
1 06
0 63
3 16
1 44
041
鉄
塊
134住 居址
(白 鋳 鉄
88 8
23 8
5 07
75 1
13 9
53 8
0 20
37 8
34 6
59 9
0 44
32 6
48 7
22 8
0 04
鍛錬鍛冶滓
48 9
0 25
含鉄製錬滓
48 4
LOC 14
002住 居址 鍛錬鍛冶滓
48 1
公津 原
019住 居址
1ヾ
11
151住 居址
木の根
成田層露頭
公津 原
003土 墳
LOC 05
鉄
砂
│
公津 原
LOC 14
″
公津 原
LOC 14
公津 原
0 45
)
佐倉天辺 006住 居址 鍛錬鍛冶滓
江原台
136
8 23
25 5
43 2
6 34
2 71
9.95
49 2
14 8
21.7
7 70
0 96
0 71
32 2
16 2
271
1 55
3 79
0 22
44 8
186
25 5
6 46
0 65
0 33
55 8
0 29
42 1
32 5
134
5 00
1.03
0.58
511
0 13
31 0
38 4
17 4
5 16
0 84
0 50
12 0
6.32
154
5 02
LOC 16
043住 居址
56 5
0 19
53 3
21 2
14.1
4 38
121
0 62
公津 原
077鍛
53 4
0 12
46 1
24 9
159
5 70
1 22
0 77
LOC 20
,台
址
鉄 塊
掘立柱建物財 (ね ずみ銑
3110
鉄
塊
阿玉 台北 004P3土 壌
(白 鋳鉄 )
91 8
89 1
115
26
0 09
0 02
001
001
84 6
71 8
8 26
9 10
261
091
0 25
0 12
-154-
千葉 県下遺跡 出土 の 製鉄関係遺物 の分析調査
021
0 58
造
7平
成分
1102
Total Fe Total Fe
(P205)
(C)
(V)
(Cu)
0 092
0 26
0 70
0 10
0.008
23.39
0 496
0 106
0 07
0 041
0 24
0 05
0 27
0 002
40 07
1 288
0 460
(Ti02)
(Cr)
5.01
0 03
14 3
バナジウム
タロム
伴分
)
道成
マンガン 二酸化チタ
(
0 05
0 30
001
0 021
0 31
4 48
0 06
0 008
8 08
0 108
0 004
0.51
9 94
0 04
0 068
0 18
2 82
0 26
0 007
29 59
0 836
0 281
0 04
0 26
0 02
0 058
0 27
4 28
0 09
0 009
3 78
0 048
0 003
0 35
7 82
0 03
0 044
0 12
0 34
0 20
0 004
38 37
0 979
0.199
0 09
0 048
0 17
0 13
031
0.009
26.03
0 623
0 309
0.42
129
0.40
0 01
0.031
0 24
0 10
0.02
0013
33 97
0 703
0 008
001
0 03
0 002
0 005
0.080
0 19
〈0.01
0018
0 26
o o03
0 000
0 14
07:
001
0 065
0 37
0 17
0 03
0 030
35.53
0 817
0016
0 04
0 048
0 19
0 23
0 27
0 004
19 96
0 430
0 278
0.61
129
①
⑮
⑦
①
0 08
注
①
8 41
0 02
0.048
0.20
0 08
0.21
0 009
24 77
0.507
0 172
041
(991)
0 04
0 041
0 20
0 17
(0 23)
0 22
0 003
59 39
3 046
0413
0 04
0 49
0 02
0 163
0 40
3.02
0.06
0 010
3 22
0 045
0 007
0 12
2.24
001
0.034
0.27
011
0.06
0 011
12.71
0 206
0 036
0.36
(14.48)
0 04
0.102
0 21
0 10
(041)
0.009
21 83
0 485
0 298
0.05
0.36
001
0.048
0.084
0.04
001
0.012
22 72
0 405
0006
0.01
0 17
0.01
0 046
0 30
2 72
0 04
0.012
081
0 009
0 002
0.06
0.27
001
0.078
0.17
0 29
0.01
0.015
20 83
0 387
0 005
〇
0 04
0.28
001
0 061
0 15
0.38
0.02
0.010
13.24
0 221
0 KX15
〇
0 49
3.68
0.01
0017
0.087
001
0.09
0.003
62.2
2 728
0.161
0 09
0.48
0.01
0 075
0.18
0.08
0.02
0.009
31 07
0 635
0.001
0.49
(14.81)
18 4
0.17
0 044
0 12
0 10
(0.40)
0.46
0.007
13 07
0.270
0.380
0 06
0 26
001
0.007
0 057
0 03
0.01
0.009
32 94
0.685
0.005
0.06
0.52
0.01
0.054
0.090
0 32
0.02
0.007
20.01
0.359
0.009
0 06
0 42
001
0 227
0 075
0.36
0.02
0.008
23 90
0 468
0.008
0 07
0 52
001
0 105
0 14
0.11
0 02
0.010
20 31
0 360
0.009
0 07
0_36
001
0 024
0 16
0 22
0 02
0.009
23 59
0.442
0 007
001
001
0 004
0 046
0.45
3.50
001
0.015
0 13
0 001
0 000
0.01
0 03
0 001
0 129
0 14
3.25
く0 01
0 028
3 89
0 046
0 000
8 06
分析 :川 崎 製鉄 株 式 会社 千葉 分析 セ ン ター
-155-
①
0 39
″
134
①
0 36
⑫
⑮
①
⑩
( )内 数 字 は 日立 金属 に て再 チ ェ ッ ク分
Ⅳ 特
論
9.5%を 示 し、前 述 した試料 1よ り濃縮 され
原料砂鉄 の 組 成 を示す 二 酸 化 チ タ ン (T102)は 、
て い る こ とを示 して い る。 また、 バ ナ ジウム(V)も 0.26%で あ った。 他 の 随伴微 量 元素 は 、 ク
ロム (Cr)0.04%、
硫黄
(S)0.051%が や ヽ高 日で あ るが 、他 の酸化 マ ンガ ン (MnO)0.39%、
五 酸化燐 (P205)0.13%、 銅 (Cu)0.006%と 低 目であ った 。
3)073号 製錬炉出土鉱滓 (図 版 11-3)
外観
:
表 皮 は淡 茶褐 色 で なめ らか な肌 を もつ 部 分 と、や ヽ粗 豚 な部 分 が 存 在す る。裏 面 は
小 波状 の 凹 凸 を有 し、黒褐 色 を呈 す る。 破 面 は黒褐 色 で 多孔 質 であ り、製錬 が よ く進 行 した こ
とを示 して い る。大 きさは50× 45× 31mmで 、重 量 は71.3gで あ った。
:
顕微鏡 組織
注
図版 11-3に 示 す。鉱物組 成 は 、 白色 多角 形状 の ウル ボ ス ピネ ル (U市 6s● nd
7)
注 8)
:2 FeO・ Ti02)と 、針状 結 晶 の イル ミナ イ ト (IImenite:FeO・ Ti02)、 それ に ガ ラス質 の ス ラ
グか ら構 成 され て い る。 チ タ ン分 の 高 い鉱滓 に現 われ る鉱 物 組織 で あ る。
化学 組 成
:
表
9(そ の 1)に 示 す 。全 鉄 分
(Tota Fe)は 、還 元反応が か な り進行 して い て
少 な く34.6%で あ り、 この うち金属鉄 (MetallC Fe)が 0.60%、 酸 化 第 1鉄
(FeO)は 30.0%、
酸化 第 2鉄 (Fe203)が 15.2%で あ る。造滓成分 (S102+A場 03+CaO+MgO)は 、
や ヽ高 目の34.79
%で あ った。
二 酸 化 チ タ ン (Ti 02)は 、高 目で 17.7%(再 分析 :19.63%)あ り、バ ナ ジウム
%で あ った。他 の 随伴微 量 元素 は 、酸化 マ ン ガ ン (MnO)0.70%、
は 高 目で あ り、硫 黄 (S)0.041%、 五 酸化燐 (P205)0.19%、 銅
(V)が 0.47
クロム (Cr)0.07%と 両者
(Cu)o.003%と
低 日であ っ
た。
高 チ タ ン含有 の鉱 滓 で あ るが 、鉄収率 はか な り良 好 であ った と考 え られ る。
粉 末 X線 回折
:
図 31と 表 10に 示す 。 X線 回折 図 (図 31)よ り、主鉱物 は UlvoSpinel(3Fe
O・ Fe203・ T102→ ASTMヵ ― ドのNo25-417)と
IImenite(FeO o Ti02→ ASTMヵ ― ドの No 3-7
81)の 鉄 ―チ タ ン酸 化物 で あ り、 これ にわずか のQuartZ(Si02→ ASTMヵ ― ドNo 5-490)と
、
Hematite(Fe203→ ASTMヵ ― ドNo 6-502)、 Magnetite(Fe304→ ASTMヵ ― ドM19-629)、
Goethite(α 一Fe203・ H20→ ASTMヵ ― ドNo 8-97)ら が 認め られ る。
チ タ ン含 有量 の 高 い製錬 滓 にみ られ る鉱物 組 成 であ り、 これ も顕微鏡 観 察 と矛盾 の な い調 査
結 果 とな って い る。
4)073号 製錬炉出土鉱澪 (図 版11二 4)
外観
:
表 皮 は小豆 色 を呈 し、粘欄 質傾 向 の凹 凸 を有 した流 出滓 であ る。 流 出滓 とは 、炉 の
注
9)
操 業 中、排 滓 日か ら炉 外 に流 出 され た鉱 滓 で低融 点 を特 質 とす る。裏 面 は 、一部 に炉材粘 土 を
付着 し、小 波状 の 凹 凸や 木炭痕 を とどめ てお り、局 部 に鉄 錆 を発 して い る。 破 面 は茶褐 色 に千
渉 色 を混 し、鉄 分 の 多 い個 所 と少 な い個 所が み られ 、気 泡 も大小 が混 在 した不均 質 な鉱滓 で あ
-156-
千葉県下遺跡出土の製鉄関係遺物 の分析調査
る。大 きさは 、 136× 104× 70mmで 重 量 は 800gで あ った 。
顕微鏡 組織
:
図版 11-4に 示す 。鉱 物組 成 は 、
自色 多角 形状 小結 晶 のマ グネ タイ ト(Magne‐
tite:Fe304)と 灰 白色短柱状 の フ ァイヤ ライ ト(FayJ■ e:2 FeO o Si02)、 それ に地 の 暗黒 色 の ガ
ラス質 か ら構 成 され て い る。 なお 、 当顕微鏡 組織 には示 して い な いが 別視 野 に は 、砂鉄 粒 子 が
還 元 され て マ グネ タ イ トとフ ァイヤ ライ トに結 晶分 離 して ゆ く個 所 も認め られ た。
:
化学 組 成
表
9(そ の 1)に 示す。 当鉱 滓 も鉄 分 は少 な く、造滓成分 が 多 い。全鉄 分
r TotJ
Fe)は 20.5%で あ り、 この うち、金属鉄 (MetalliC Fe)が o.13%、 酸 化第 1鉄 (FeO)が 10.4
%、 酸化 第
2鉄 (Fe203)は 17.5%で あ り、造滓 成分 (Si02+A1203+CaO+MgO)は 61.25%
であ った。
二 酸化 チ タ ン
(Ti02)は 低 目で5.13%(再 分析 で7.66%)、 バ ナ ジウム (V)が 0.12%で あ っ
た。他 の 随伴微 量 元素 は低 目で 、酸化 マ ン ガ ン I MnO,0.37%、
クロム
(Cr)o.03%、 硫 黄
(S)0.011%、 五 酸化燐 (P205)0.25%、 銅 (Cu)o.004%で あ った。 試料 1に 近似 した教値
で あ る。
粉 末 X線 回折 :図 31と 表 10に 示す。当製錬 津 は鉄 分 が 少 な く、 ガ ラス化 が進 ん で い るの で 、図
31の X線 回折 図 にみ られ るよ うに 、 シ ャー プ な ピー クが乏 しい チ ャー トとな って い る。 主要
鉱物 組 成 は 、Kennedyite(Fe2・ Mg o Ti3010→
→ASTMヵ ― ドNo
とQuartz(Si02→
ASTMヵ ― ドNQ13-353)と IImenite(FeO・
Ti02
3-781)で あ り、 他 に わずか のMagnetite(Fe304→ ASTMカ ー ドNo19-629)
ASTMヵ ― ドNo 5-490)が 同定 され て い る。
5)073号 製錬炉出土含鉄鉱津 (図 版 12-5)
外観
:
表 皮 は淡 茶褐 色 を呈 し、や ヽ粗 豚 さを もった鉱津 で あ るが 、中核 部 は黒褐 色 で金属
鉄の風化 (酸 化)し た塊Fあ る。破面は黒色で小気泡が散在し、磁性を有する。鉱滓側には木
炭 を噛 み 込 ん で い る。大 きさは60× 64× 42mmで 重 量 は 154.3gで あ った。
顕微鏡 組織
:
図版 12-5に 示す 。 組織 写真 の左 側 は鉱滓 部分 であ る。 自色 多角 形結 晶 のマ
グネ タイ ト (Magnetite:Fe304)と 微 小結 晶 の フ ァイヤ ライ ト (Fayalite:2 FeO o Si02)と
、
地 の 暗黒 色 の ガ ラス質 か ら構 成 され て い る。
組織 写真 右側 は 、錆 化鉄 部分 で あ り、 この個 所 に は金属鉄 は残留せ ず 、金属 鉄 の 風化 した ゲ
注 10)
―サ イ ト (Goethite:Fe203・
化学組成
H20)と 、炉材溶融物 として混入 した珪砂や長石が認め られる。
: 表 9(そ の 1)に 示す。全鉄分
tallic Fe)は 1.06%、 酸化第 1鉄
(TOt」
Fe)は 31.7%で あ り、この うち金属 鉄 (Me
(FcO),が 12.0%で あ り、酸化第 21失 (Fe2 03)力 蒲計も多 く
て30.4%で あった。 この酸化第 2鉄 は、金属鉄が風化作用 を受けて酸化 した もの である。この
供試材は、顕微鏡組織で確認 した ように鉱滓 と金属鉄酸化物 が混在す るものであ り、成分 もこ
れ を念頭 にお いて読む必要がある。
-157-
Ⅳ 特
論
造滓 成分 (Si02+A1203+CaO+MgO‐ )は 45.07%、 二 酸化 チ タ ン (.T102)5.61%、 バ ナ ジウ
酸化 マ ンガ ン (MnO)0.34%、
ム (V)0.16%、
化燐 (P205)0.20%、 銅
クロム (Cr)0.02%、 硫 黄 (S)0.085%、 五 酸
(Cu)Q005%で あ る。炭素 (C)が 0.27%と
、や ヽ高 目傾 向 に あ るの
は噛 み 込 み 木炭 の 影響 もあ ろ う。
6)073号 製鎌炉出土鉱滓 (図 版 12-6)
外観
:
表裏 共 に赤褐 色 を呈 し、左程粗 豚 さを示 さな い炉 内残留滓 であ る。 外見は赤錆 を 多
く発 して い るの で鉄 塊 に 見間違 えそ うであ るが 、磁性 は弱 く金属鉄 の錆 とはや ヽ異 な る。破 面
は黒褐 色 と、約 %の 面積 は赤褐 色 を示 し、気 泡が な く緻 密 な鉱 滓 であ る。大 きさは90× 55× 55
mmで 、重 量 は279.7gで あ った。
顕微鏡 組織
:
図版 12-6に 示す 。 原鉱 の砂鉄粒 子 が還 元不 十 分 の ため 残存 し、金属鉄 が凝
集分 離す るこ とな く留 まって い る。鉱 滓組 成 は 、砂鉄粒 子 の 外に フ ァイヤ ライ ト (Faydite:
2 FeO o Si02)と ガ ラス質 の ス ラ グか ら構 成 され て い る。
化学 組成 : 表 9(そ の 1)に 示 す。 全鉄 分 (TotJ Fe)は 43.6%で あ り、 この うち、金 属鉄
(MetJhC Fe)が 3.91%残 留 し、酸化 第 1鉄 (FeO)は 28.9%、 未還 元砂鉄粒 子 と、金 属 鉄 の酸
化物 と考 え られ る酸化 第 2鉄 (Fe203)が 24.6%で あ る。造滓 成分
(Si02+AL03+MgO+CaO)
は27.41%で 低 目で あ り、 還 元製錬 が十 分 に進行 しなか った こ とを示 して い る。 二酸 化 チ タン
(T102)は 10.0%、 バ ナ ジウム (V)は 0.24%で あ る。 当鉱 滓 は酸 化 マ ンガ ン (MnO)0.61%、
五 酸 化燐 (P205)0.56%、 硫 黄 (S)0.068%と 高 日であ る こ とが特徴 的 であ る。銅 (Cu)は 普通
レベ ルの0004%で あ った。
7)o23号 鍛冶工房址 出土鉄塊
外観
:
(図
版12-7)
茶褐 色 を呈 す る鉄 塊 で あ る。 外皮 は鉄 錆 に覆 われ て い るが 、新 しい破 面 をみ る と、
銀 白光玉 鋼 状 を呈 して い る。半 溶融状 態 で製錬 され た鉄塊 であ る。強 磁性 で あ り、大 きさは57×
49× 19mmで 、75.3gで あ った。
顕微鏡 組織
:
図版 12-7に 示 す 。金属鉄 の 風化 した ゲーサ イ ト (Goethie:Fe203・ H20)音 6
分 が か な り多いが 、 組織 写真 は金属鉄 を 3%ナ イ ター ル 液 で腐 食 (etchlng)し た組 織 を示 す。
この 金属 組織 は 、炭素
(C)含 有量が 0.85%以 上 の鋼 に現 われ る過 共析鋼
(Hypereutectoid s―
注 11)
ted)で あ る。 白い長柱状 の部分 は初 析 セ メン タ イ ト (Proeutectdd Cemendte)で あ り、 自黒
まだ ら模 様 は共 析 晶 の パ ー ライ ト (PeaH■ e)で あ る。 この鉄 塊組織 は 、製錬 炉 内で高温度 (900
注 13)
注 14)
℃以 上)状 態 か ら冷却過程 でセ メン タ イ ト (Cemen● te)が ォー ステナ イ ト (Austenite)の 粒 界
に 網 状 に析 出 し、 オー ステナ イ ト地 は パ ー ライ トとな ったの で あ る。
900℃ 以上 の 高温度下 に さ
らされ た為 、熱影響 を受 けて 、 オー ステナ イ ト粒 は粗 大化傾 向 を示 して い る。
化学 組 成
:
表
9(そ の 1)に 示 す。 全鉄 分 (Tota Fe)は 61.7%で あ り、 この うち、金 属鉄
-158-
千葉県下遺跡出土 の製鉄関係遺物 の分析調査
(Metalhc Fe)が 12.0%残 留 し、金属鉄 の 酸化物 で あ る酸化 第 2鉄 (Fe203)は 53.0%、 酸 化 第
1鉄 (FeO)が 16.2%で あ った 。 鉄 塊 中 の 炭素 (C)含 有量 は 、126%で 検鏡 でみ られ た組 織 と
対 応す る。
注 15)
この鉄 塊 は 、製錬 炉 に 残 され た ま まで、 まだ精錬 され て い な いの で非金属 介在物 らの 不純物
を 多 く含 有 して い る。造 滓成分
(Si02+A1203+CaO+MgO)が
、8.84%あ り、 これ らに随伴 し
(V)0.06%で あ る。 また 、酸化
(Cr)が 0.01%で あ る。硫 黄 (S)が 0116%と 高 目で あ る
た と考 え られ る二 酸化 チ タ ン (T102)が 2.43%、 バ ナ ジウム
マ ンガ ン
(MnO)が 0.10%、
クロム
の は 、酸化鉄 の一 般 的傾 向 で 、当鉄 塊 本来 の 含有 量 では な い もの と考 え られ る。 五 酸化燐 (P2
05)は 、0.14%で や ゝ高 目で あ り、 また銅 (Cu)も 鉄 に随伴 す る元素 であ り、や ヽ高 目を示 し
て0.009%で あ った 。
0.)073号 製錬炉前庭部出土鉄塊
外観
:
(図 版 12-8)
黒褐 色 を呈 す る小鉄 塊 であ る。 7点 あ るが 、 いず れ も表 面か らの錆 化が か な り進 ん
で い る。代 表 的 な もの を計測 す る と、31× 20× 17mmで 18.2gあ った。
顕微鏡 組 織
:
図版 12-8に 示す 。 当組織 も金属鉄 を 3%ナ イ ター ル液 で腐 食 (etchlng)し
て現 われ た もの であ る。 自黒 まだ ら模 様 は パ ー ラ イ ト
(Peante)で ぁ り、 そ の 周囲 を白 い結
注 16)
晶が発達 して い るのは フ ェ ライ ト (fernte)で あ る。 そ の粗 大 フ ェラ イ トの 中央 をつ らぬ く様
注 17
に 自色長柱 状 の初析 セ メンタ イ ト (PrOeutectold Cemendte)が 析 出 して い る。
900℃ 以上 の 高 温雰 囲気 で木炭 に 周囲 を囲 まれ
当鉄 塊 は 、還 元直後 は極低 炭素鋼 で あ ったが 、
て さ らされ 、発生 す ゆ一 酸化 炭素 (CO)ガ スが鉄 塊表 面 か ら浸 入 し、続 い て浸 入 した炭素 が拡
散 し、この様 な炭素 量 の鉄 塊 に なった の で あ る。す なわ ち、浸炭現 象 が起 って生成 され て い る。
なお 、組織 写真 に示 して い な い別視 野 には 、 ガ ラス質 の ス ラ グ中 に マ グネ タイ ト (Magne―
ite:Fe304)と イル ミナ イ ト (mmenite:FeO・ Ti02)の 存 在す る個 所 も認め られ た。
化学 組成
(Met」 IC
:
表 9(そ の 1)に 示す 。 全鉄 分 (Tota Fe)は 52.8%を 示 し、 この うち金属 鉄
Fe)の 残 留 は0.92%で あ り、 金属鉄 の 風化 に よる酸化 第 2鉄 (Fe203)は 52.3%で
あ った 。 また、未還 元鉄 の酸化 第 1鉄 (FeO)は 19.6%で あ り、造滓 成分 (Si02+Aし 03+CaO+
MgO)は 12.69%で あ った。鉄 中 の炭素 (C)含 有 量 は0.32%で あ り、浸炭 に よる炭素 量 の増加
であ る。
二 酸化 チ タ ン (T102)は 8.47%と 高 目で、 組織 観 察 の 写真 に示 して い な い個 所 に イル ミナ イ
トが 晶 出 して い て 、 チ タ ン分 が 高 目に 出 るの も うなず け る。 バ ナ ジウム
た。 酸 化 マ ン ガ ン
(V)は 0.22%で あ っ
(MnO)は 、やや 高 目で0.34%、 クロム (Cr)003%、 硫 黄 (S)0.061%、
五 酸化 燐 (P205)0.12%、 鋼 (Cu)o.006%と 、随伴微量 元素 もお しなべ て 高 目であ った 。
9)023号 鍛冶工房址出土鉄滓 (図 版13-9)
-159-
Ⅳ
表 10
論
特
製錬滓 ・ 鍛 冶滓 の 粉末 X線 回折結 果
Uiv6spinel
符号
遺
跡
名
区
分
推定 年代
3FeO・
FeЮ 。
・Tio
25-417
花
前
砂鉄付着製錬滓
鍛錬鍛冶i宰
製 錬 滓
8C前 半
15
20
21
精 錬鍛 冶津
│
◎
◎
公 津 原
鍛錬 鍛 冶滓
M91
白須山たたら
製 錬 滓
30
◎
○
36
◎
精 錬鍛 冶津
八幡 平 た た う
製 錬 滓
Q‐ 92
L‐
901
小 六 たた ら
8B‐ 91
長 門峡 た た ら
8Y‐ 912
尻高山たたら
○
◎
田
精錬鍛冶津
奈良時代後半
811
八
熊
製 錬 滓
奈良時代
Mn
真名子鉄山
Y‐ 1
田屋たたら
2F901
大蔵 池南
2J‐
902
近 世
6C後 半∼7C初
◎
○
精錬鍛冶滓
2G7
釜 田 1号 墳
゛-91
野路 小野 山
製 錬 滓
△
7C後 半
◎
7C末 ∼8C前 半
-160-
◎ ◎ △
塚
○ ○ ○
K‐ 901
C‐
△
○ ◎ o
◎ ◎ ◎
Q91
○
◎ △ △
L‐ 91
近 世
○
△ △ 〇
54
8C後 半
O
◎
○
◎ Λ一
〇
製 錬 滓
FeO
6-615
◎
0
◎ ○ △
御 幸 畑
○
○
22
27
19--629
ヽ
Vistitc
○ ○ ◎
香
3-781
△
◎ ○ ○ ○
取
24-537
○ ○
9
13
Fe304
◎
◎ ○ △
4
10
magnetite
9∼ 10C
製 錬 滓
3
Ilmenite
FeO・ Ti02
○ ○ ○
1
Ulvilspinel
2FeO・ Ti02
○
○
千葉県下遺跡 出土の 製鉄関係遺物 の分析調査
Fayalite
Alpha Iron
Hematite
d-Quartz
Diopside
Fe2S04
Fe
FezO:
Si02
CaO・ MgO・ 2Si0
20--1139
6-696
13--534
5-490
3-860
○
Akermanrte
Kennedyite
2Sの
り・
Fe2MgTi3010
2CaO.Ⅳ
4-681
二 酸化 チ タン
3.73
△
○ △
0
注
Ti02
13-353
②
177
5.13
◎
`
`Mondcdhte
00M80・ S02
lH29△
、
130
,
○
1.80
O △
○ ○ ○
△ △
○
16.1
④
128
14 5
0
○
4.95
5 3Cl
△
11.6
○ △
○ ○
△ ◎
○ ◎ ○
O o
①
14.2
7 82
④
0.26
○
16.7
◎ ○ ○
2.2
△
15 3
①
△
26 7
0
13 1
◎
①
◎
″
186
0
○
26
△
①
35
○
①
◎
29
△
″
28 5
◎
△ △
35 8
①
56
◎
19 8
◎
0 81
○
強
-161-
△弱
(◎ 〉○ 〉○ 〉。
Ⅳ
特
論
M:Magnetite
G:Goethite
I: Ilmenite
F:Fayalite
H: Hematite
W: Wiistite
U:
Q: Quartz
Ulvdspinel
K: Kennedyite
Mon: Monticellite
試 料番号
I
│
G
試料番号
3
︱︱コ
K
K M | ---Ll
脚 鉤酬
試料番号
lYw
80°
ur F
F.FF
70°
60°
20
50°
40°
図 3! 花前製 鉄遺 跡 出 上の 製錬 滓・ 鍛 冶滓 の 粉 末 X線 回折
(Target:Co.2KV)
-162-
9
千葉 県下遺跡 出土 の 製鉄関係遺物 の分析調査
Ulviispinel
M: Magnetite
W: Wiistite
Iron: Alpha Iron
F: Fayalite
K: Kennedyite
D I I =
M
一
Goethite
I: Ilmenite
D: Diopside
H: Hematite
G:
U Illi====■
U:
XH IF
P I FF
Y
試料番号 15
x cMl x
lronMU 6
MU
|
I
G
試 料番号 20
FW
F
MF
FF
り
UW
80°
Ψ
70°
60°
FU
FU[
20
50°
40°
図 32 取 香 製 鉄遺 跡 出 上の製 錬 滓・精 錬 鍛 冶滓 の 粉末 X線 回折
(Target:cO.2KV)
163-
M
脳
W
Mリ
Ⅳ
特
論
U: Ulviispinel Ak: Akermanite
D: Diopside Iron: Alpha Iron
M: Magnetite B: Brookite
F: Fayalite
Q: Quartz
H: Hematite
I: Ilmenite
試料番号 27
試 料番号 30
IAK Ui
F
試料番号 36
Y IM
QBI
試料番号 54
AK
F F AkAk
80°
70°
FFF FH
60°
20
F■ F 5
50°
40°
Ak:.q
30°
20°
図 33 御 幸畑 製 鉄遺 跡 及 び 公津 原遺 跡 出上の 製錬 滓・鍛 錬 鍛 冶滓 の 粉 末 X線 回折
(Target:cO.2KV)
外観
:
表 皮 は赤褐 色 を呈 し、粗 豚 で気 泡 の 多い鉄滓 であ る。裏 面 は カー プ を もち、局 部 的
に粘 土 を付着 し、木炭痕 を多数 残 して い る。 破 面 は黒褐 色 に一部 茶 褐 色 を混 じ、気 泡 が 散 在 す
るが緻 密 で比重 の 大 きい鉄 滓 であ る。鍛 冶工 房 址 の 出土 であ るが 、製錬滓 の 炉 内残留 滓 の 可能
性 が あ る。大 きさは62× 55× 40mmで 、重量 は 141.6gで あ った 。
顕 微鏡 組織
:
図版 13-9に 示す。鉱物組 成 は 、淡灰 色 多角 形状 のマ グネ タイ ト (Magneate
-164-
千葉県下遺跡出土の製鉄関係遺物の分析調査
:Fe304)に 少量 の 淡灰 色粒状 の ヴ ス タイ ト (Wusdte:FeO)、
灰色短柱状 の フ ァイヤ ラ イ ト
(FayJte:2 FeO oSi02)、 自色不 整 形 の 金属鉄 (Met」 Ic
それ に地 の 暗灰 色 の ガ ラス 質
Fe)、
か ら構 成 され て い る。
:
化学 組 成
表 9(そ の 1)に 示 す 。全鉄 分 (Tot」 Fe)は 44.0%で 、 この うち 、金属鉄 (Me
tJIc Fe)が o.60%、 酸化 第 1鉄 (FeO)の 占め る割 合 が38.8%、 酸化 第 2鉄 (Fe203)が
18.9
%で あ った 。
(Si02+A1203+CaO+MgO)は 、21.64%で あ り、二 酸化 チ タ ン (Ti02)が 13.0%、
造滓 成分
(分 析再チェックで11.98%)、 バ ナ ジウム
(V)が 0.38%で 、 この 両者成分 が 高 日で 、 これか ら
判 断す る と製錬 滓 に分類 され る。
他 の 随伴微 量 元素 も高 目傾 向 で 、酸 化 マ ンガ ン
黄 (S)0.068%、 五 酸化燐 (P205)0.24%、 銅
(MnO)が 0.51%、
クロム
(Cr)o04%、 硫
(Cu)o.005%で あ った。
当鉄 滓 は 、鍛 冶 工 房址 の 出土 で あ り、顕微鏡 組織 か らみ て精錬鍛 冶滓 に分類 して もお か し く
は な いが 、化学 組織 の二酸化 チ タ ンや バ ナ ジウム 、 また随伴微 量 元素 の 含有量 レベ ルか らは製
錬 滓 に 区分 すべ きで あ る。精錬素 材 の 含鉄 鉱滓 として 、鍛 冶工 房 に搬 入 され たが 、含有鉄 分 が
低 くて放 置 され たの で あ ろ う。
10)023号 鍛冶工房址出土鍛錬鍛冶滓 (図 版 13-10)
外観
:
赤褐 色 の表 皮 を有 し、気 泡 と木炭痕 とで粗 豚 さを示す椀 形鍛 冶滓 で あ る。裏 面 は表
皮 と同色 を有 す るが 、凸部 中央 に鉄 錆 を多 く発生 して い る。破 面 は気 泡 多 く、 コー クス状 の 多
注 18)
孔質 で局部 には鉄錆 が認め られ る。 外観 か らみ て鍛 錬鍛 冶滓 (小 鍛冶滓 )の 椀 形滓 とみ うけ ら
れ る。 大 きさは70× 70× 39mmで 重 量 は 172.2gで あ った。
:
粉 末 X線 回折
-629)、
図31と 表 10に 示 す。 鉱物 組 成 は 、Magneute(Fe304→
Ulvё spinel(3FeO・ Fe203・
ASTMヵ ― ド No19
T102) 、W` tite(FeO→ ASTMヵ ――ドNo 6-615)ら が
主体 をな し、 これ に わずか なが らの Monticellite(CaO o MgO o Si02→
ASTMヵ ― ドNoll-129)
が 同定 され て い る。
UlvOspinelの 強度 が 、Magnetiteの 次 に強 くでて い るの で 、鍛 冶滓 では な く、製錬 滓 とみ る
べ きであ ろ う。
顕微鏡 組織
Fe203・
:
図版 13-10に 示す 。鉱物 組 成 は 、金属鉄 の 風化 した ゲーサ イ ト (Goeth■ e:
H20)が 多 く存 在 し、 これ に灰 色粒 状 結 晶 の ヴ ス タイ ト (Wusate:FeO)と
白色不 整 形
の 金属鉄 (Met」 IC Fe)、 小結 晶 の 多角 形状 のマ グネ タイ ト (Magnedte:Fe304)が 少量 と、そ
れ に地 の 暗黒色 ガ ラス質 か ら構 成 され て い る。
化学 組 成
金属鉄
:
表
(Met』 IC
9(そ の 1)に 示す 。全 鉄 分 (TotJ Fe)は 、54.0%と
非常 に 高 く、 この うち 、
Fe)が 3.16%、 酸 化 第 1鉄 (FeO)が 34.0%、 酸化 第 2鉄 (Fe203)が 34
-165-
Ⅳ 特
諭
.8%で あ った。 金属鉄 の 風化 で ゲーサ イ ト (Goethlte:Fe203・
H20)が
増加 して い るの で 、
酸化 第 2鉄 が 高 目に存在す るの であ ろ う。
(Si02+AL03+CaO+MgO)は や
造滓 成分
8%(再 分析で2.30%)、
13%、
バ ナ ジウム
ク ロム (Cr)0.02%、
ヽ多い 日で22.53%あ り、二 酸化 チ タ ン (T102)1
(V)0.07%と 低 目であ る。 また酸化 マ ンガ ン (MnO)は 0.
硫 黄 (S)0.078%、 五 酸 化燐 (P205)0.13%、 銅 (Cu)o.005%と
随 伴微 量 元素 は低 目傾 向 で 、 これ らを総 合勘 案 す る と、鍛 錬鍛 冶滓 (小 鍛冶滓 )に 分 類 で きる
粉 末 X線 回折 :図 31と 表 10に 示す 。 鉱物 組成 は 、Magnedte(Fe304→ ASTMヵ ― ドNo19-629
)と Fayalite.(Fe2Si04→ ASTMヵ ― ドNo20-1139)及 びWustite(FeO→ ASTMヵ ― ドNo 6-615
)ら が主 な る もの であ り、他 に微 量 のUlv6spinel(2FeO・
ASTMヵ ― ドNo25-417)、
Ti02→
eO o Fe203・
→ASTMヵ ― ドNo
Ti02→ ASTMヵ ― ドNo24-537と 、 3F
これ に 金属鉄 の 風化 した Goethite(α FeO(OH)
3-249)が 検 出 され た 。
2FeO・ T102と 3FeO・
当鍛 冶津 か らUlVё Spinelの うち、
Fe2031・
Ti02の 2種 が 同定 され てい る。
‖)123号 鍛冶工房址出土自鋳鉄塊 (図 版 13-H)
外観
:
茶褐 色 を呈 す る鉄 塊 で あ る。全 面 が 錆 に 覆 われ てお り、一 部 に木炭 を付着 して い る。
強磁性 で あ った。大 きさは50× 39× 25mmで 、重量 は60gあ った。
顕微鏡 組織
:
図版 13-11に 示す 。組織 は金 属鉄 (Met」 IC Fe)を 、 3%ナ イ ター ル 液 で 腐
注 19)
注 20)
食 (etchlng)し た もの で 、 自鋳鉄 (White cast lon)の 亜 共 晶組織 で あ る。 組織 写真 の 白い部
分 は 、 セ メン タイ ト (Cemendte)、 黒 い部 分 は オー ステナ イ ト (Austenite)よ り変化 したパ ー
ラ イ ト (Pean■ e)、 蜂 の 巣状 の部 分 は セ メン タイ トとオー ステナ イ トの 共 晶 であ る レデ プ ラ イ ト
注 21)
(に debunte)で
あ る。
自鋳鉄 は別 名 白銑 ともいい 、銑 鉄 の 1種 で凝 固冷却 速度 が速 くなれば セ メン タイ トが 晶 出 し
自鋳鉄 とな り、冷却 速度 が お そ くなれば黒鉛 が 晶 出 して、ねず み鋳 鉄 と呼 ん で い る。
化学 組 成
:
表
9(そ の 1)に 示 す。 当鉄 塊 の 全鉄 分 (Tota Fe)は 71.4%で あ り、 この う
ち金属鉄 (Met」 hC
Fe)が 33.0%残 留 し、 金属鉄 の 風化 した酸化 第 2鉄 (Fe203)は 34.2%で
あ り、酸 化 第 1鉄 (FeO)は 18.6%で あ る。炭素 (C)含 有量 は2.00%含 有 され 、顕微鏡 組織 で
亜 共 晶 の 自鋳鉄 で あ った こ とと矛盾 しな い。 また 二 酸化 チ タ ン (T102)は 0.34%で あ り、砂 鉄
製錬 で生 成 した鉄 塊 であ るこ とを示 して い る。
この 自鋳鉄 の ままでは 、一般 鉄 器 に加 工 して も、 もろ くて実 用 品 と して使 用 で きな いの で 、
注 22)
鍛 冶炉 で左下 げ法 に よ り炭素 量 を減 して製 品加工 に 供す る素 材 に あ てたの であ ろ う。
随伴微 量 元素 と しては 、酸 化 マ ン ガ ン
0.14%、 銅
(MnO)002%、
硫 黄 (S)0.136%、 五 酸化燐 (P205)
(Cu)o.009%で あ った。造 滓成分 (Si02+Aし 03+CaO+MgO)が 非 金属介在物 と
考 える と、や ゝ高 目で 、4.59%で あ った。
-166-
千葉県下遺跡出土 の製鉄関係遺物 の分析調査
小
結
花 前製鉄遺 跡 073製 錬址
〈1〉
(竪 炉
)か ら出土 した鉱 滓 は 、 おお まか に分 け て 、 低 チ タ ン
系 (Ti02:513∼ 13%、 V:0.12∼ 0.38%)と 、高 チ タ ン系 (Ti02:177%、
V:0.47%)が 存 在
す る。 前者 の 鉱物 組 成 は Magnetiteを 主体 と し、後者 は UlvOspinel及 び 1lmeniteで あ る。
く2〉
炉壁鉱 滓 に付 着 した砂鉄 は 、低 チ タ ン系 に属 す る。 原料砂鉄 は 複数 以上 の 産地 か ら供 給
され た と推 定 され る。
製錬 滓 (073製 錬炉 )と 鍛 冶炉 (023鍛 冶工房 )で 、鉱物 組 成 と化学 組成 の差 異 を示せ ば下
〈3〉
表 の 如 くな る。
判[成
製
錬
物
鉱
試料
組
成
Ti02
ざ碍覗尋
滓
513∼
=:l tt Fayalite
Wiist i te
鍛 錬 鍛 治滓
Goethite
f
成
F:
V
177%
1.2∼ 0.47%
1.8%
f a}alrte
0 07'6
注 24)
注 23)
く4〉
073製 錬 炉 で生 成 され た鉄 塊 は 、鐸 に 属す る低 炭素 系
(C:032%)と 、銑 に 属す る高炭素
系 (1.26%∼ 2.0%)が 存在す る。製錬 炉 周辺 では前者 の低 炭素 系が 、023鍛 冶 工 房址 で は後 者
の 高炭素 系が検 出 され た。
後者 は左下 げ法 に よ り脱炭 して鉄 器鍛 造素 材 に な った と推 定 され る。 (た だ し、073製 錬炉は、
吸炭機能 をそなえた竪炉であ り、
操業生成物は高炭素系の銑が 多かった と考えられ る。今回採取 の低
)
炭素系は、 竪炉で製造 された ものであるが選別時にセ レク トされた もの と考えられる。
く6〉
023鍛 冶工 房址 よ り検 出 され た符号 9鉱 滓 は 、外観 及び化 学組 成 か らみ て製錬 滓 であ る。
023鍛 冶 工 房址 では 、鍛錬鍛 冶 (小 鍛冶 )以 外 に精錬鍛 冶 (大 鍛冶 )的 作業 もな され た こ とを
示唆 す るの で あ ろ う。
〈7〉
花 前 製鉄 遺跡 での製錬 滓 か ら鍛錬鍛 冶滓 ・ 白鋳鉄 塊 の 成分移行 を示せ ば下表 の如 くな る。
T.Fe M.Fe
073
023
MnO
C
S
P205
Cu
Cr
TiO
V
製錬滓
34.6
0 60
0 19
0.70 0.041 019
0.003
0.07
製錬 滓
44.0
0 60
0 23
051
0.24
0.005
0 04
鍛錬鍛治滓 54.0
3.14
0.41
0 13 0 078 0.13
0 005
0.02
1 80
0.07
71.4
33.0
2.00
0 02
0 14
0 009
001
0.34
0.02
白鋳鉄
2.取 香 製鉄遺 跡
0 068
0 136
17.7
0 47
0.38
遺跡 は成 田市取 香字和 田戸 711他 に所在す る。検 出 され た遺構 は 、台地
斜 面 に分 布 す る製錬 炉 3基 、大 型炭 窯 8基 、小 型炭窯 3基 と台地上 の 竪
注 25)
穴住居址 6軒 で 8世 紀後半 に比 定 され る。
-167-
Ⅳ 特
論
この うち、今 回調査 に供 した試料 は 、台地 西端 に あ る 7号 址 A・
B2基 の 箱 型製錬 炉 か ら排
出 され た鉱 滓 、 及び南端 の19号 llLに 位 置す る竪 型 製錬 炉 出 土 の 鉱滓 で あ る。 又 、台地 上 の 竪 穴
住居址 は 、 6軒 す べ てか ら鉄 滓 (製 錬滓 と鍛冶滓 )を 、3軒 か ら砂鉄 を出土 してお り、 台地斜
面部 遺構群 との関連性 を強め て い るが 、 この うち鍛 冶 工 房 と考 え られ る火窪 遺構 を もつ 6号 址
か ら出土 した精錬鍛 冶滓 の 3′ 点につ い て調査 を行 な った。
12)7号 址
外観
:
(箱 形製錬炉 )出 土鉱滓 (図 版13-12)
製錬 炉 内生 成鉄 片 として採 り上 げ られ た小塊 で あ る。 黒褐 色 を呈す る不 定 形塊 で37
×30× 32mm程 度 の もの 14片 を供 試材 に され て い たが 、実際 に調査 した塊 は金属鉄 残留 の少 な い
もの で あ ったの で、鉱 滓 に分類 した。
顕微鏡 組織
:
図版 13-12に 示す 。組織 の 大部分 は 、金属 鉄 が 風化 した酸化物 の グーサ イ ト
H20)で 占め られ 、 これ に フ ァイヤ ラ イ ト (Fayahte:2 FeO o Si02)や マ ク
ネ タイ ト (Magneute:Fe304)、 部 炉材捲 き込 み爽雑 物 の桂 砂 らが認め られ た。
(Goethite:Fe203・
:表 91(そ の 1)に 示す 。全鉄 分
化学組 成
(TOtJ Fe)は 43.8%で あ ったが 、 この うち、金属
鉄 の 酸化 した酸化 第 2鉄 (Fe203)が 多 く含有 され て35.5%あ り、 これ に未還 元鉄 分 の 酸化 第
鉄
1
(FeO)が 23.7%、 金属鉄 (MetJhC Fe)は 、 わずか のO.54%で あった。
造滓 成分 (Si02+Aし 03+CaO+MgO)は 低 目で 18.12%で あ り、二酸 化 チ タ ン (T102)は 14.8
%、 バ ナ ジウム
(V)0.29%で あ った。 製錬 滓 の 成分傾 向 を強 く残 してお り、他 の 随伴微 量 元
素 は酸化 マ ンガ ン(MnO)0.59%、
クロム(Cr)o.04%、 硫 黄 (S)0.078%、 五 酸化 燐 (P205)
0.23%、 鋼(Cu)o005%で あ った 。
13)7号 址 (箱 型製錬炉 )出 土鉱滓
外観
:
(図 版 14-13)
表 皮 は凹 凸少 な く、茶褐 色 を呈 し、鉄 塊 を思 わせ る。裏 面 は表 皮 と同色 で滴下状 を
有 して い る。破 面 は気 泡 な く、黒褐 色 で局部 的 に銀 白色 の 金属鉄 部 分 が認め られ る。 比重 は大
き く磁性 を有 す。大 きさは91× 59× 31mmで 重 量 は 169.3gで あ った。
顕微鏡 組織
:
図版 14-13に 示す 。鉱物 組 成 は 、四面体 状 結 晶 の イル ミナ イ ト (lmenie:
FeO o Ti02)が ガ ラス質 ス ラ グ中 に主 体 をな して い る。 この結 晶 の 周 辺 は 、 自色 を呈 す るヘ マ
注26)
タイ ト (Hematite:Fe203ま たはα―Fe203)が 生 じて薄層化 して い る。前述 の イル ミナ イ ト結
注27)
品 の 周辺 に生 した二次 ヘ マ タイ ト結 晶は、新 潟 県真 木 山遺跡 出土 の鉱 滓や 、山 口県長 門峡 た た
注28)
ら出土 鉱 滓 で も確 認 され て い る。
化学組成
:
表
9(そ の 1)に 示 す 。 全鉄 分
47%、 酸 化 第 1鉄
(FeO)が 26.6%、
分 (S102+Aし 03+CaOtt
%、 バ ナ ジ ウム
酸化 第
(Tot」
Fe)が 45.1%で 、 この うち金 属 鉄 が 5.
2鉄 (Fe203)が 27.1%の 割 合 で 存 在 す る 。 造 滓 成
MgO)は 少 な く16.97%で あ る。 二 酸 化 チ タ ン (Ti02)は
高 目で 16.1
(V)が 0.31%で あ っ た 。 随 伴 微 量 元素 は酸 化 マ ン ガ ン (MnO)0.71%、 ク ロ ム
-168-
千葉県下遺跡出土の製鉄関係遺物 の分析調査
(Cr)0.04%、 硫 黄 (S)0.038%、 五 酸 化燐 (P205)018%、 銅 (Cu)o.004%で あ った。
:
粉 末 X線 回折
i02→
図32と 表 10に 示す 。 同定 され た主 要 鉱 物 は 、 Ulv6splnel(3FeO o Fe203・
ASTMヵ ― ドNo25-417)と Alpha lron(Fe→ ASTMヵ ― ドNo 6-692)で あ り、
微 量 のWuStite(FeO→ ASTMヵ ― ドNo 6-615)、
カー ドNo
IImenite(FeO・ Ti02→ ASTMヵ ―
Goethite(α FeO(OH)→ ASTMヵ ― ドNo 3-249)、
6-502)ら
他に
Diopside(CaO o MgO。 2Si02→ ASTMヵ ― ドNo
2-657)、 Magnetite(Fe304 >ASTMヵ ― ドNo19-625)、
ドNo 3-781)、
T
Hematite(Fe203→ ASTM
で あ る。
14)7号 址 A炉 (箱 型製錬炉)出 土鉱滓 (図 版 14-14)
外観
:
青 褐 色 を呈 す る流 出滓 で あ る。裏 面 は小砂粒 を付 着 し、大小 の 気 泡 を発 して い る。
破 面 は黒 色緻 密 質 で 、 磁性 はほ とん どな い。 大 きさは 138× 125× 90mmで 重 量 は2100gで あ
った 。
顕 微鏡 組織
:
図版 14-14に 示す 。鉱物 組 成 は 、 自色 スケル トン (Skeに ton)状 のマ グネ タ
イ ト (Magnedte:Fe304)と 灰 色木ず り状 の フ ァ イヤ ライ ト (Fayal■ e:2 FeO o Si02)及 び 暗 灰
色 の ガ ラス質 か ら構 成 され て い る。Si02濃 度 が 高 く比較 的還 元雰 囲気 で晶 出 したマ グネ タイト
で あ る。
金属鉄
:
9(そ の 1)に 示す 。全鉄 分 (TotJ Fe)は 低 く26.9%で あ り、 この うち、
(Met」 Ic Fe)が o.28%、 酸化 第 1鉄 (FeO)29,9%、 未還 元酸化 鉄 の 残留 は ほ と
化学 組 成
表
ん どな く、酸化 第 2鉄 (Fe203)は
二 酸化 チ タ ン (T102)12.8%、
る。造 津 成分
48%で あ った。 鉄収率 の よ い鉱滓 であ る。
バ ナ ジウム
(V)0.25%で 、製錬 滓 としての傾 向 を示 して い
(S102+AL03+CaO+MgO)は 46.08%含 有 され 、 この うち二 酸化珪 素
(Si02)の
量 が 多 く29.6%で 、顕微鏡 組織 で示 した Si02濃 度 の 高 か った こ とを裏 付 け る。 酸化 マ ンガ ン
(MnO)0.41%、
るが 、硫 黄
:
鋼 (Cu)o.006%ら は 、12、
13の 製錬 滓 と近 似 して い
(S)だ けが低 目で0.017%で あ った。 還 元 lll木 炭 成分 の 影響 であ ろ う。
15)7号 址 B炉
外観
ク ロム (Cr)0.06%、
(箱 型製錬炉 )出 土鉱滓 (図 版 14-15)
小 豆 色 の 表 皮 を もつ 流 出滓 であ る。裏 面 は黒 色 で滴下状 凹 凸 を有 して い る。破 面 は
黒色で気泡はほとんどなく緻密である。大きさは83× 138×
142 mmで 重量は2225gの 大塊であ
るが 、破 面 を有 して い る。
顕微鏡 組織
:
図版 14-15に 示 す。 白色 多角 形状 の マ グネ タイ ト (Magnedte:Fe304)と 灰
色木ず り状 の フ ァイヤ ラ イ ト (Fayalie:2 FeO・ S102)、 地 の 暗灰 色 ス ラ グ質 か ら構 成 され て
い る。 S102に 富 み 、 比較 的還 元雰 囲気 ス ラ グ溶液下 で晶 出 したマ グネ タイ トとフ ァイヤ ライ
トが共 存 して い る組 織 で あ る。
化学 組 成
:
表 9(そ の 1)に 示 す。
全鉄 分
-169-
(TOtJ Fe)31.5%で や
ヽ低 日で あ り、 金
Ⅳ 特
論
属鉄 (Metalた
Fe)が o.19%、
(FeO)は 37.2%、 酸化 第 2鉄
(Si02+Aし 03+CaO+MgO)は 高 目で 40.59%で
還 元過程 で残 され た酸 化 第 1鉄
(Fe203)は わず か の3.4%で あ る。造滓 成分
あ り、 この うち、二 酸化駐 素 (S102)は 高 日で25.0%で あ る。
二 酸化 チ タ ン (Ti02)12.8%、
ンガ ン
(MnO)が 0.62%と
バ ナ ジウム
(V)0.23%で あ り、他 の 随伴微 量 元素 は酸化 マ
高 目で あ るが 、他 はお しなべ て低 日で、 クロム (Cr)0.04%、 硫 黄
(S)0.01%、 五 酸 化燐 (P205)0.35%、 銅 (Cu)o.004%で あ った。 14と 組織 的 に大差 な い 。
粉 末 X線 回折
:
図 32と 表 10に 示 す 。同定 され た主 要 鉱 物組 成 は 、Magnetite(Fe304→
カー ドNo19-629)と Fayalite(Fe2Si04→
ASTMヵ ― ドNo20-1139)で
ASTM
あ り、他 に少量 のUlv6 spi―
nel(2FeO・ Ti02→ ASTMヵ ― ドNo24-537)と 、微 量 のDiopside(CaO・ MgO。 2Si02→ ASTMカ
ー ドNo 3-860)、 Hematite(Fe203→ ASTMヵ ― ドNo13-534)ら であ る。
16)19号 址 C炉
外観
:
(竪 型製錬炉 )出 土砂鉄付着鉱澪 (図 版14-16)
炉壁 に溶 着 したス ラ グに焼結状 に付 着 した砂鉄 を掻 き取 り供 試材 とした。砂鉄粒 子
は赤褐 色 を呈 し、粒 状 を残す もの と溶融 した個 所が み られ た。 スラ グ質 も供 試材 に混 入 して い
る。母 材 の 大 きさは41× 24× 26mmの 塊状 で 、重 量 は 19.40gで あ った。
顕微 鏡 組織
:
図版 14-16に 示 す 。 原鉱 の砂鉄粒 子 が ス ラ グ融液 中 で 、マ グネ タイ ト (Mag‐
neite:Fe304)に 晶 出 しかか って い る。他 の鉱 物 組 成 としては 、灰 色盤状 結 晶 の フ ァイヤ ライ
ト (Fayal■ e:2 FeO o Si02)と 暗 黒色 の ス ラ グが 認め られ る。
化学 組 成
:
全鉄 分 (TOt」
Fe)は 低 日で28.6%で あ る。 この うち、金属鉄
(Met」 hC Fe)が
0.13%、 還 元反応 で残留 して い る鉄 分 の酸 化 第 1鉄 (FeO)19。 3%、 それ に原鉱 の 未還 元酸化
鉄 分 として の酸 化 第 2鉄 (Fe203)が 19.2%で あ る。
分析 試料 に ス ラ グ質 が混 入 して い るため鉄分 が 低 く、造滓 成分
(Si02+AL03+CaOtMgO)
が 高 日で50.26%で あ った 。 二 酸化 チ タ ン (Ti02)が 7.35%、 バ ナ ジウム
(V)0.23%で あ るが 、
これ らは砂鉄 原鉱 としての成分 では な く、 ス ラ グ質 に よ って うすめ られ た値 と理解 す べ きで あ
ろ う。
他 成分 は 、酸化 マ ン ガ ン (MnO)0.49%、
クロム (Cr)0.06%、 硫 黄 (S)0.034%、 鋼 (Cu)
0.003%で 、他鉱滓 成分 と大差 な いが 、五 酸化燐 (P205)が 0.082%と 低 目であ ったのが特 徴 的
であ る。花 前 製鉄 遺跡 073号 製錬 炉 の鉱 滓付着 の 砂鉄 に似 た傾 向 を示 して い る。
17)19号 址 C炉
外観
:
(竪 型製錬炉 )出 土鉱滓 (図 版 15-17)
表 皮 は黒褐 色 で小 ジワの よった流 出滓 であ る。裏 面 は小 豆色 を帯 び た黒褐 色 で滴下
状 凹凸個 所 と、 なめ らか な個 所が あ り、花 同岩粒 子 が 付着 す る。 破 面 は黒 色 と淡茶褐 色部 が あ
り、微 小 気 泡が 多数 発生 して い るが比重 は大 きい。 サ イ ズ は 102× 58× 31111nlで 、重 量 は 278.3
gで あ った 。
-170-
千葉県下遺跡出上の製鉄関係遺物の分析調査
顕微鏡組織
:
図版 15-17に 示す。鉱物組成は、自色 スケル トン (Skeに tOn)状 及び、樹枝
状 のマ グネタイ ト (Magnetite:Fe304)と 木ず り状の フ ァイヤ ライ ト (Fayalite:2 FeO o Si02)
か ら構成 されて い る。Si02濃 度が高 く、比較的還元雰囲気で晶出 したマ グネタイ ト (Magne_
tite:Fe304)で ある。
表 9(そ の 1)に 示す。 全鉄分
:
化学組成
(TOtJ Fe)は 30.0%で あ り、 この うち、
大部分は酸化第 1鉄 (FeO)が 32.2%で 、酸化第 2鉄 (Fe203)は 6.9%、 金属鉄 (MetJIc Fe)
は0.13%で ある。造津成分 (Si02+Aし 03+CaO+MgO)は 42.85%、 二酸化チ タン (Ti02)12.8
%、
バ ナ ジウム
%、
硫黄 (S)0.054%、 五酸化燐 (P205)0.31%、 炭素 (C)0.08%ら は他鉱滓 と大差 ないが 、
(V)0.27%で ある。 また、酸化 マ ンガ ン (MnO)0.65%、 クロム (Cr)0.05
銅 (Cu)が 0.002%と 低 目であった。
18)19号 址 C炉 (竪 型製鎌炉)出 土鉱澪 (図 版15-18)
外観
:
表皮は淡茶褐色を呈 し、肌は粗豚なが らも局部的に飴状部分 を有 し、微細な砂粒子
を付着 して い る。裏面 は本来面ではな く破面であ り、茶褐色 多7L質 であるが比重は大 きい。断
面は表皮側は黒灰色を呈してガラス質であり、約%以 下より茶褐色鉱滓となる。羽口近くの高
温域 で生成 され た炉 内残留津 で あ ろ う。
顕微鏡 組織
:
図版 15-18に 示す 。 鉱物 組成 は 、 自色 スケル トン (Skeに tOn)状 のマ グネ タ
イ ト (Magnedte:Fe304)と 少量 の盤 状 結 晶 の フ ァ イヤ ラ イ ト (Fayahte:2 FeO o Si02)、
それ
に暗黒 色 ガ ラス質 ス ラ グが 多量 に 存在す る。
化 学組 成
:
全鉄 分 (Tot」
Fe)は 低 目で27.1%、 この うち、金属鉄 (MetamC Fe)が 0.15
%、 還 元時 に 残 留 した鉄 分 として の 酸化 第
1鉄 (FeO)は 29.4%、 未還 元酸化鉄 として の酸化
第 2鉄 (Fe203)は 5.8%と 、製 錬状 態 が 良好 で残留鉄 分 は少 なか った。
造滓 成分
ジウム
(Si02+A1203+CaO+MgO)は 高 目で48.74%、 二酸 化 チ タ ン (Ti02)10.2%、 バ ナ
(V)0.19%で あ る。随 伴微 量 元素 は 、酸 化 マ ンガ ン (MnO)0.59%、
%、 硫 黄
(S)0.038%、 五 酸化燐
クロム (Cr)0.03
(P205)030%で あ る。鉄収率 が 良好 な鉱滓 であ るため 、銅
(Cu)は 低 目の0.002%で あ った 。
19)19号 址 C炉 (竪 型製鎌炉)出 土鉱澪
外観
:
(図 版 15-19)
茶褐 色 を呈 して、錆 フ ク レ を もつ 台形状 の 塊 で あ る。大 きさは40× 34× 21mmで 重 量
は29.7gで あ った。
顕微鏡 組織
:Fe203・
:
図版 15-19に 示 す 。組織 の 大部分 は金属鉄 が 風化 したゲーサ イ ト (Goeth■ e
H20)で あ り、 これ に イル ミナ イ ト (■ men■ e:FeO・ Ti02)と
ガ ラス質 ス ラ グが混在
す る。
化学 組 成
:
表
9(そ の 1)に 示す。
全鉄 分
-171-
(TOtJ Fe)は 45.8%で 、 この うち、金属
Ⅳ 特
論
鉄 の 風化 酸化物 として の酸 化 第 2鉄 (Fe203)が 多 くて51.1%で あ り、酸 化 第 1鉄
1%、
(FeO)12.
金属鉄 (Metalic Fe)が 0.63%で あ る。 顕微鏡 組織 でみ た よ うに 、 ガ ラス質 ス ラ グが 存
在 してお り、造滓 成分 (Si02+Aし 03+CaO+Mgo)が 14.93%、 二酸 化 チ タ ン (Ti02)が 高 目で
14.4%、 バ ナ ジウム
(V)0.30%で 、風化 した 鉄 塊 と鉱 滓 が共 存す る塊 で ある。
随伴微 量 元素 は大 きな変動 が な く、酸化 マ ン ガ ン (MnO)0.59%、
クロム (Cr)0.06%、 硫
黄 (S)0.017%、 五 酸化燐 (P205)0.12%、 銅 (Cu)o.005%で あ った。
20)19号 址 C炉
外観
:
(竪 型製錬炉 )出 土鉱滓 (図 版 15-20)
外皮 は 茶褐 色 を呈 し、 その 面積 の約 半 分 には砂 鉄粒 子 を付 着 して い る。 破 面 は黒 色
部 と赤褐 色部 が あ り、両 者 とも気 泡 はほ とん ど認め られ な い 。金属 鉄 の錆 も共 存す る。大 きさ
は 114× 53× 20mmで 、重量 は
顕微鏡 組織
:
1249gで あ った。 当初 、鉄 片 として採 り上 げ られ て い た。
図版 15-20に 示 す 。 鉱物 組 成 は 、組織 写真 対 角線上 に現 われ て い る金属鉄 の
風化 した ゲーサ イ ト (Goethie:Fe203・ H20)と 自色葉 片状 の イ ル ミナ イ ト (lmenite:FeO・
T102)と 暗黒色 の ガ ラス 質 か ら構 成 され て い る。
化学 組 成
表 9(そ の 1)に 示 す 。 全鉄 分 (TOt」
:
Fe)は
、35.8%で あ る。 検鏡 で金
属鉄 の 風化 した ゲー サ イ トが 多か ったが 、分析 にお い て も酸化 第 2鉄
%で あ り、酸化 第 1鉄 (FeO)は 8.55%、
金属鉄
(Fe203)が 多 くて41.1
(MetJhC Fe)は 0.37%で あ った。造滓 成分
(Si02+Aし 03+CaO+MgO)は 27.84%で あ り、 二 酸化 チ タ ン
(Ti02)が 14.5%、
バ ナ ジウム
(V)0.28%で あ り、鉱 滓 成分 で あ る。
随伴微 量 元素 は 、酸化 マ ンガ ン
(MnO)が 0.66%、
鉄 が 存在す るせ いか 高 目‐ .078%、 五酸 化燐
クロム (Cr)0.04%、
硫 黄 (S)は 酸 化
(P205)0.15%、 鋼 (Cu)0.004%で あ った。
粉 末 X線 回折 :図 32と 表 10に 示 す。主要 鉱物 組成 は 、lmenite(FeO・ Ti02→ ASTMカ ー ドNo
3-781)、 UlvOspinel(3FeO・
Fe203・ Ti02)、
9)で あ り、他 に微 量 のGoethite(α
Magnetite(Fe304 )ASTMカ ーードNo 19-62
―Fe203・ H20→ ASTMヵ ― ドNo 8-97)、 Alpha lron(Fe
→ASTMヵ ― ドNo 6-696)、 Kennedyite(Fe2° Mg o Ti3010→
ASTMヵ ― ドNo13-3由 )ら が 同定
され た。
21)6号 址
外観
:
(竪 穴住居址)出 土椀形鍛冶滓 (図 版 16-21)
黒褐 色 を呈 す る椀 形鍛 冶滓 であ る。 表 皮側 は平 担 であ るが 、や ヽ粗 豚 な肌 で あ る。
裏 面 は滴下状 の 凹 凸 を有 し、一部 に炉材粘 土 を付 着 して い る。 表裏 共 に木炭痕 を有 して い る。
破 面 は黒褐 色 で小気 泡 を有す る。大 きさは 105× 96× 51mmで 、重量 は 423.5gで あ った 。
顕微鏡 組織
:
図版 16-21に 示す 。鉱 物組 成 は 、 自色粒 状 の ヴ ス タイ ト (Wusute:FeO)と
多角 形状 マ グネ タイ ト (Magneite:Fe304)、 灰 色長柱状 の フ ァ イヤ ラ イ ト (Fayal■ e:2 FeO・
Si02)、
それ に地 の 暗灰 色 ガ ラス質 か ら構 成 され て い る。 なお一 部 に 、 白色 の 金属鉄 が 残留 す る。
-172-
千葉県下遺跡 出土の 製鉄関係遺物 の分析調査
注 29)
精錬鍛 冶滓 に ヴ ス タイ トとマ グネ タイ トの 共存 す る組織 は時折 確 認 され て い る。
:
化学組 成
.1%、
表 9(そ の 1)に 示 す。 全 鉄 分 (TotJ Fe)は 、製錬 滓 に比 べ る と高 目とな り51
この うち、金属鉄 (MetJIc Fe)が 0.18%、 酸 fヒ 第 1鉄 (FeO)38.2%、
酸化 第 2鉄 (F
e203)30.3%で あ る。
造滓 成分 (S102+Aし 03+CaO+MgO)は 低 目で21.15%、
バ ナ ジウム
(V)0.10%と
二酸 化 チ タ ン (Ti02)は 4.95%、
、 この二 成分 は製錬 滓 レベ ル とは異 なって低 目 とな って い る。 また
他 の 随伴微 量 元素 も全般 的 に低 目傾 向 を示 し、酸 化 マ ン ガ ン
(MnO)が 0.25%、
クロム (Cr)
0.02%、 五 酸化 燐 (P205)0.21%で あ るが 、鋼 (Cu)は 鉄 分 の 濃縮分 だけ上 昇 して 0.010%と
高 目を示 して い る。
該 品は精 錬鍛 冶滓 (大 鍛冶滓 )で あ り、 製錬 滓 に比べ る と、鉄 分 が増加 して造滓 成分や 二 酸
化 チ タ ン、バ ナ ジウム らは大幅 に減 少す る。
粉 末 X線 回折
etite(Fe304→
:
図32と 表 10に 示す 。図 32と
X線 回折 図 よ り同定 され た鉱 物組 成 は 、 Magn
ASTMヵ ― ドNo19-629)、 Fayalite(Fe2Si04→ ASTMヵ ― ドNo20-1139)、 Wu
stite(FeO→ ASTMヵ =ド No 6-615)で あ り、微 量 としてUlvOspinel(3FeO・ Fe203・ T102→
ASTMヵ ― ドNo25-417)、
Goethite(α ―Fe203・ H20→ ASTMヵ ― ドNo 8-97)で あ った。
顕微鏡 観 察結果 にほぼ 、対 応 して い る。
22)6号 址
外観
:
(竪 穴住居址)出 土椀形鍛冶滓 (図 版 16-22)
淡茶褐 色 を呈 す る椀 形鍛 冶滓 であ る。 表 面 は粗 係 な肌 で 、局部 的 に鉄 錆 を発 して い
る。裏 面 は滴下状 の 凹 凸 を有 し、木炭痕 を残 して い る。 破 面 は黒褐 色 で 、 コー クス状 の 気 泡 を
有 し、鉄 錆 で褐 色 に変 した木炭 を噛 み 込 ん で い る。大 きさは63× 59× 42mmで 、重量 は93.9gで
あ った 。
顕 微鏡 組織
:
図版 16-22に 示す 。鉱物 組 成 は 自色粒状 の ヴス タイ ト (Wust■ e:FeO)と 灰
色長柱状 の フ ァイヤ ラ イ ト (Fayalte:2 FeO・ Si02)、
それ に地 の 暗灰 色 の ガ ラ ス質 か ら構 成
され て い る。
この組 織 の視 野 に現 われて い な いが 、や は り試料 21と 同 じよ うに 、 多角 形状 のマ グネ タイ ト
(Magnedte:Fe304)力 甥り視 野 で認め られ る。
化学 組 成
:
金属鉄 (Metalた
表 9(そ の 1)に 示 す。 全鉄 分
(TOtJ Fe):ま 53.8%で あ り、 この うち、
Fe)は 0.27%、 酸化 第 1鉄 (FeO)が 43.8%、 酸化 第 2鉄 (Fe203)が 27.8
:て
%で あ る。顕微鏡 組織 でみ た よ うに 、 ヴ ス タイ トが 多量 に晶 出 し
い た様 に 、酸化 第 1鉄 の 残
留 が 多い。
造滓 成分
(Si02+A1203+CaO+MgO)は 19.70%と 低 日で あ り、二 酸化 チ タ ン (Ti02)が 5.30,
%、 バ ナ ジウム
(V)0.11%と 精 錬鍛 冶滓
(大 鍛冶滓 )レ ベ ル で 、製錬 滓 と鍛 錬鍛 冶滓 (小 鍛冶
-173-
Ⅳ 特
論
滓 )の 中間的数 値 で あ る。他 の 随伴微 量 元素 も酸 化 マ ン ガ ン (MnO)0.22%、
02%、 硫 黄 (S)0.038%、 五 酸 化燐 (P205)0.27%、 銅
(Cr)o.
クロム
(Cu)o.005%で あ った 。炭素 (C)量
が0.55%と 高 目であ るの は 、断面 に 木炭 を噛 み 込 ん で い たの で 、そ の 影響 が 出 た もの と考 え ら
れ る。
前述 の 試料 21と 同 じ精錬鍛 冶滓 で あ るが 、該 品 は小型 で あ り、鍛 冶作業 量が 少 な い段 階 で生
成排 出 され た滓 と考 え られ る。
粉 末 X線 回折
:
gnetlte(Fe304→
Ma
ASTMヵ
図32と 表 10に 示 す 。 鉱 物 組 成 はWusute(FeO→ ASTMヵ ― ドNo 6-615)と
ASTMヵ ― ドNo16-629)を 主体 と し、
これ にFayalite(Fe2Si04→
― ドNo20-■ 邸9)と UlVbspinel(3FeO・ Fe203・ Ti02)、 Alpha lron(Fe→
ASTMヵ ――ドNo 6-
696)ら が 微 量 同定 され た 。
23)6号 址
外観
:
(竪 穴住居址)出 土鍛冶澪 (図 版 16-23)
表裏 共 に赤 褐 色 を呈 し、や ヽ粗 継 さを もった鉄 滓 で あ る。断面 は 中核部 のみ黒 褐 色
を示す鉄 滓 で、周縁部 は鉄 錆 状 塊 で あ る。 磁性 はほ とん どな い。大 きさは71× 44× 32mmの 大 き
さで 、重 量 は88.7gで あ った。
顕 微鏡 組織
:
図版 16-23に 示す 。 白色不定 形 の 塊 は 、残留 した金属鉄 (Metalた
Fe)で あ
り、そ の 周辺 を暗黒 色 の 溶融 ス ラ グが と りま き、 そ の 中 に樹枝状 に 晶 出 したマ グネタイト (M
agnet■ e:Fe304)が
化学 組 成
:
表
存 在す る。 羽 口直下 の 高 温域 で の 生 成物 で あ ろ う。
9(そ
の 1)に 示 す 。 全鉄 分
金属鉄 tMet」 hc Fe)が531%、 酸化 第 1鉄
(TotJ Fe)は 45.2%で あ り、
(FeO)が 16.7%、 金属鉄 (MetJhc Fe)の 風化酸
化物 であ る酸化 第 2鉄 (Fe203)が 38.4%で あ る。造滓 成分
13%、 二 酸化 チ タ ン (Ti02)が 7.58%、
バ ナ ジウム
(Si02+A1203+CaO+MgO)は
(V)0.17%で あ った。
有 した鍛 冶滓 であ る。随 伴微 量 元素 は 、酸化 マ ン ガ ン
硫 黄 (S)0.085%、 五 酸化燐
この うち 、
(MnO)が 0.29%、
29.
金属鉄 を多 く含
クロム
(Cr)005%、
(P205)0.20%で あ り、金属 鉄 と五酸 化燐 (P205)0.20%で あ り、
金属鉄 と酸化鉄 が 高 目であ ったの で銅 (Culが 0.016%と 高 目に な って い る。
′
卜 結
く1〉
*
取 香遺跡 の 製錬 炉 は 、箱 型炉 と竪 型炉 の 2種 が 存在す る。両 製錬 滓 は 、成分 的 に大差 な
く、同 系砂鉄 を装 入 した もの と考 え られ る。 原料 砂鉄 は 、二 酸 化 チ タ ンが 5∼
8%含 有 の も
のが 主体 で あ った ろ う。
く2〉
箱型 炉 と竪 型炉 か ら排 出 され た製錬 滓 の 鉱物 組 成 は 、マ グネ タイ ト (Magneute:Fe304)
+フ ァイヤ ライ ト (Fayal■ e:2 FeQ o S102)を 基本 とす るが 、二 酸 化 チ タ ン濃度 が上 昇 した
*編 集者注 …… 調査 担 当の西 川は 7号 址 B炉 を箱形炉 と断定す るこ とを避 けて い るが
参照 )、 共 同研究者 の一 人であ る山 口は 箱形炉 とす る見解 を とって い る (Ⅲ
-174-
-4参 照
(Ⅲ
)。
-2
千葉県下遺跡出土の製鉄関係遺物 の分析調査
もの に イル ミナ イ ト (1lmenite:FeO・ T102)が 晶 出す る。
く3〉
台地 上 の鍛 冶工房址 よ り出土 した鉄 津 は 、精錬 鍛 冶椀 形滓 (大 鍛冶滓 )で あ る。 製錬 滓
と鍛 錬鍛 冶滓 (小 鍛冶滓 )の 中間的成分 で あ る。取 香遺跡 出土 の鍛 錬鍛 冶滓 の 分析 値 が な い
の で 、 これ を除 い て比 較値 を示せ ば次表 の様 に な る。精錬鍛 冶滓 は製錬 滓 に比べ る と、二 酸
化 チ タン (T102)、 バ ナ ジウム (V)、 酸化 マ ン ガ ン (MnO)、
クロム
(Cr)ら
は減 少 し、
鋼 は逆 に増 加 す る。
成 分 (%)
T102
V
MnO
Cr
Cu
精錬鍛 治滓
4 95-5.30
0.10∼ 0.11
0 22-0 25
0 02
0.005--0.010
錬
10.2-16.1
0.19-0 31
0 41-0.66
0.04-0 06
0 002-0.006
製
滓
3.御 幸 畑製鉄遺 跡
遺跡 は 、成 田市 東峰字御 幸 畑 89他 に所在 す る。検 出 され た遺構 は 、台
地斜 面 の 製錬 炉 、作業場 、炭 置場 等 が組 合 わ さった遺構群 3ヶ 所 で 、
製錬 炉 6基 、製錬 炉 の 痕 跡 lヶ 所 、製錬 炉 の 可能性 の あ る もの lヶ 所 、炭 窯 6基 、木炭 を出土
す る浅 い掘 り込 み 2基 、大 型土鑽 及び ピ ッ ト群 3ヶ 所 、 溝 1条 等 と、 台地上 の 竪 穴住居址 4
軒 で あ る。
11号 址
:
製錬 炉 1基 は 、 ソフ トロー ム 層 中 に直 接粘 土 を貼 って構築 され てお り、裏 込 め は
な い。楕 円形 を呈 し、壁 内側 の 計 測値 は長 さ60Cm、 幅 25cmで あ る。調査 遺物 は25の 製錬 滓 と、
26の 鉄 塊 (白 鋳鉄 )で あ る。
17号址
:
製錬 炉 3基 で U字 の掘 り込み の最 奥部 に55× 50cmの 円形焼 あ とが 存在。竪炉 で あ
ろ う。 調査 遺物 は 、32の 製錬 滓 、33の 銑鉄 片 、34の 製錬 津 、35の 鉄 塊 (自 鋳鉄
)、
36の 製錬 滓 で あ
る。
18号址
:
等 高線 に 直交 して長 い 溝 を掘 り、溝 内に裏 込 め を充損 した後 、 2基 の 製錬 炉 を設
置 して い る。溝 は長 さ11.5m、 幅
1.5mか ら 1.Om、 深 さは北端 の最 も深 い所 で 156m、 南端
の最 も浅 い所 で0.13mを 測 り、溝底 に約 4度 南 に傾 斜 して い る。横 断面 は鍋 底状 であ る。 溝 内
の 製錬 炉 下部 は 、特 に 入念 な防温施 設が認 め られ た 。溝 の 両側 壁 を 2mか ら 2.5mに わ た って
焼 い た後 、粉 炭 と思 われ る黒 色層 に 、径 10Cm以 上 の 本炭 を多数並 べ なが ら厚 さ15Cm程 敷 きつ め 、
そ の上 に小鉄 滓 を混 した黒褐 色 土 をお き、炉 の 直下 に は厚 さ約 10Cmの 黒 色 の砂 を敷 い て い た 。
A炉 は 、長方 形 の 炉 底滓 を残 し、長 さ96∼ 70× 巾60∼ 61× 厚 み 30cmで 、炉 形 は箱状 な い しは
四角柱状 と予 想 され る。羽 口は未検 出 。調査 遺物 は 、27、 28の 製錬 滓 で あ る。
B炉 の 炉底滓 は 、最 大幅 40cm、 前 後長 さ45∼ 50cmで 排 滓 口の 幅 は 8
cmで あ り、炉形 は円筒状
に 近 い ものが 推 定 され る。 羽 回は 未検 出。 調査 遺物 は 、29、 30の 製錬 津 と、31の 小鉄 塊 (鋼 )
-175-
Ⅳ 特
論
で あ る。
なお 、製錬 作業場 出土 の砂鉄 (24)の 調査 も行 な った。
台地上 竪 穴住居址
: 4軒 中 3軒 か ら鉄 滓 が 出土 す るが 、各住居址 とも床 面 か ら鍛 冶遺構 に
相 当す る ものは 認め られ な い。 この鉄 滓 は製錬 滓 の 外観 を して い る。 また住居址群 の 南 東 5∼
10mの 所 には径 7mほ どの 範 囲 に鉄 滓が 多量 出土 して い る。 意 識的 に打 ち割 られ てお り鉄 分 を
多 く含 ん だ もの もか な り在 るこ とか ら選鉄 を行 な った と考 え られ る。
調査 遺物 は37の 製錬 滓 で あ る。
この 遺跡 の推 定年代 は 、 18号 址 が 8世 紀後半 であ り、台地上 竪 穴住 居址 が 8世 紀 前半代 で あ
注30)
った。
24)10号 址製錬作業場址出土砂鉄 (図 版 16-24)
外観
砂鉄 は微 細粒子 で 、や ゝ青 味 がか った黒 褐 色 を呈 して い る。PI出 土 の もの を水 洗
:
して ロー ム 層 を除 き、供 試材 とした。磁選 は して い な い。
顕微鏡 組織
化学 組
申
:
:
図版 16-24に 示す 。 150γ 前後 の粒 子 で不 整 な粒 形 を示 して い る。
表 9(そ の 1)に 示す 。 砂鉄 の 主成分 は 、 鉄 分 と二酸 化 チ タ ン、 バ ナ ジウム
であ る。全 鉄 分
(TOtJ Fe)は 47.6%で 、 そ の うち金属鉄
(Met」 IC Fe)o o3%、
酸 化 第 1鉄
(FeO)19.0%、 酸化 第 2鉄 (Fe203)が 46.8%の 割 合 であ る。 二酸 化 チ タ ン (T102)は 砂鉄
に必 然的 に含有 され てお り、該 品は高含有量 で 17.7%で あ った 。 バ ナ ィ ウム
(V)は 0.36%。
他 の 不 純物 としては 、 二酸 化位 素 (Si02)が 6.82%、 酸化 アル ミニ ウム (A1203)2.73%、
酸化 カル シウム (CaO)0.44%、
酸化 マ グネ シウム
(MgO)2.99%で
あ り、 これ らの 成分値 か
ら塩 基性砂 鉄 に分 類 で きる。
なお 、砂 鉄 で注意す べ き微 量成分 は 、五 酸化燐 (P205)0.055%、 硫 黄 (S)o.017%、 銅
Cu)0.004%、 クロム (Cr)0.06%ら であ り、 い ずれ も低 含有 量 であ った。
参考 までに砂 鉄 の 酸性・ 塩 基性 の分 類 を行 な えば下表 の如 くな る。
砂 鉄 の 分 類 注31)
酸
酸 化 チ タ ン (Ti0 2)
ア
ル
石
砂
鉄
塩 基 性 砂 鉄
5
0.2∼ 6.5%
20%
17.7 %
2∼
14
6.82%
ナ (A1203)
1∼
5
2.73
灰
(CaO)
(MgO)
(P)
マ グネシヤ
燐
∼
24:砂
(Si02)
酸
位
性
1.5 -
0.005-0.2
2.5
0 44
10
2.99
0 05 - 0.78
-176-
0.022
鉄
(
千葉県下遺跡出上の製鉄関係遺物 の分析調査
25)11号 址出土鉱滓
外観
:
(図 版 17-25)
表 皮 は黒 褐 色 に小豆 色 を帯 び た飴状 流 出滓 で あ る。裏 面 は淡茶褐 色 で 、折 れ 目状 シ
ワ と小 気 泡 が 散 在す る。 破 面 は 茶褐 色 を呈 し、小 気 泡 が 散 在 す る。 大 きさは65× 56× 33mmで 重
量 は 124.6gで あ った 。割 れ 口 を もった破 片で あ る。
顕微鏡 組織
:
図版 17-25に 示す 。鉱物 組 成 は 、 自色 多角 形状 のマ グネ タイ ト (Magnedte
:Fe304)と 灰 色微 細 結 晶 の フ ァイヤ ライ ト (Faydite:2 FeO o Si02)、 それ に暗黒 色地 の ガ
ラス質 か ら構 成 され て い る。樹枝 状 に 晶 出 した小 型 のマ グネ タイ トや フ ァイヤ ラ イ トの 未発達
具 合か らみ て 、当鉱 滓 は 急冷 され た もの と推定 され る。
化学 組 成
:
表 9(そ の 1)に 示 す 。 全鉄 分
Metallc Fe)が o.73%、
(Tota Fe)は 31.0%で 、
還 元反応 の 途 中 で残留 した酸化 第 1鉄
還 元酸化鉄 で あ る酸化 第 2鉄
この うち金属鉄
(FeO)が 29.9%、
(
原鉱 の 未
(Fe203)は 10.0%で あ った。造滓 成分 (Si02+Aし 03+CaO+M
gO)は 、38.78%で あ り、 この うち、酸化 カル シウム (CaO)が 5.00%と 高 目で あ る。
二 酸化 チ タ ン (T102)15.2%、 バ ナ ジウム
(V)0.28%と
両 者 高 目で 、原料砂鉄 中 の チ タ ン
も高 目で あ った こ とが うかが われ る。随伴微 量 元素 は 、酸化 マ ン ガ ン (MnO)0.59%、
クロム
(Cr)006%、 硫 黄 (S)0.014%、 五酸 化燐 (P205)0.28%、 銅 (Cu)o.003%で あ った。
26)‖ 号址出土鉄塊
外観
:
(自 鋳鉄 )(図 版 17-26)
黒褐 色 と赤褐 色 を混 した鉄 塊 で 、蝶 ネ クタイ状 に流 出 した塊 であ る。 表裏 ともに鉄
錆 に よる フ クレ と、本炭 付着 が 認め られ る。新 しい破 面 では銀 白色 を呈す るの で 、 自鋳 鉄 で あ
るこ とが判 る。大 きさは n3× 41× 16 mmで 、重 量 は
顕微鏡 組 織
:
141.8gで あ った。
図版 17-26に 示す 。 金属鉄部 分 をナ イ タル (N比 』)腐 食 した組織 で左側400
倍 、右側 が 100倍 の 撮 影 であ る。 破 面 が銀 白色 を呈 して い た こ とか ら、 自鋳鉄 であ るこ とが判
ったが 、組織 観 察 にお い て も、それ を裏 付 け た 。組織 は亜共 晶組 成
で あ る。 白 い部 分 はセ メン タイ ト (Cementite:Fe3C)、
(C:43%以
下 )の 白鋳 鉄
黒 い部 分 は オー ステナ イ ト(Austenite)
が 変化 したパ ー ラ イ ト (Peanie)、 蜂 の 巣状 の部 分 はセ メン タイ トとオー ステナ イ トの 共 晶 で
あ る レデ プ ライ ト (Ledebul■ e)で あ る。
鋳鉄 は冷却 速度 と成分 に よって 白鋳鉄 と、ねず み 鋳鉄 に分 か れ る。該 品は冷却 速度 が 比較 的
速 か ったの で 自銑化 した の であ ろ う。 ただ し、亜 共 晶 白鋳鉄 は炭素 含 有量 が低 い ため 徐 冷 して
も自銑 化 しや す い。 一般 に炭素
(C)量
2∼
3%程 度 、 け い素 (Si)1%程 度 では 、徐冷 して
注32)
も自銑化す るといわれて い る。
化学組成
:
表 9(そ の 1)に 示す。 炭素含有量 は 、 3.66%の 鋳鉄 である。 全鉄分 (TOtJ
Fc)は 72.0%で 、 この うち金属鉄 (MetdhC Fe)は 比較的残 りが よ くて23.1%、 酸化第 1鉄
(FeO)が 51.3%、 酸化第 2鉄 (Fe203)は 12.8%で あった。
-177-
Ⅳ 特
論
鉄 中 の 不純物 としては 、二 酸化桂 素 (Si02)3.79%、 酸化 マ ン ガ ン (MnO)0.08%、
燐 (P205)0.22%、 硫 責 (S)0.065%、 銅
(Cu)o.003%で
五 酸化
あ り、砂 鉄 製錬 の銑鉄 として純
度 の 高 い もの で あ る。 二酸 化 チ タ ン (Ti02)0.81%、 バ ナ ジウム
(V)0.12%で あ った 。
当 鉄 塊 は 、砂 鉄 が 木炭 で もって還 元 され て低 炭素 の 海綿鉄 とな り、 これが 炉 内 にお い て 高 温
に さ らされ 、木炭 と接 触 して炭素 が 海綿鉄 の 内部 へ 拡 散 して ゆ き、滲 炭 が 進 ん で銑鉄 とな った
もの であ る。 炉 外 で急冷 され て 自鋳 化 して い る。 製錬炉 の 生成物 とみ るべ きであ ろ う。
27)10号 址 A炉 流出津 (図 版 17-27)
外観
:
表 皮 が小 豆 色 を呈 し、 なめ らか な肌 を もつ 流 出滓 で あ る。裏 面 は黒 色 で 、や ヽざら
つ く肌 を有 して い る。 破 面 は黒色 で気 泡 な く緻 密 で あ る。細 長 く流 出 した滓 で 、途 中 で折 損 し
て い た。 大 きさは 、86× 44× 24mmで 重 量 は n4.4gで あ った 。
顕微鏡 組織
:FeO・
:
図版 17-27に 示 す。鉱物 組 成 は 、 自色針状 に晶 出 した イル ミナ イ ト(1lmenlte
Ti02)と 、 自色 多角 形状 の ウル ポス ピネル
の フ ァイヤ ライ ト (Fayalte:2FeO o Si02)、
化 学組 成
:
(UIVё Spind:3Fe203・
それ に ガ ラス質 か ら構 成 され て い る。
9(そ の 1)に 示す 。 全鉄分 (TotJ Fe)は
表
T102)、 灰 色 木ず り状
訳 は金属鉄 (Metaluc Fe)が 0.12%、 酸化 第 1鉄 (FeO)23.6%、
で 、未 還 元酸化鉄 が 少 な い こ とを特 徴 とす る。造 滓 成分
少 な く22.9%で あ り、 そ の 内
酸化 第 2鉄
(Fe203)6.3%
(Si02+Ab03+CaO+MgO)は 高 目で
48.84%あ り、当鉱滓 も酸化 カル シウム (CaO)が 多 くて775%を 含 有 され て い る。
鉱物 組 成 で 、 イル ミナ イ トや ウル ポ ス ピネルが 検 出 され た様 に 、二 酸 化 チ タ ン (T102)も 高
目で 14.2%あ り、バ ナ ジウム
(V)0.27%で あ った。他 の 随伴微 量元素 は 、酸化 マ ン ガ ン (Mn
o)0.66%、 ク ロム (Cr)0.06%、 硫 黄 (S)0.054%、 五 酸 化燐 (P205)0.38%、 銅 (Cu)
0.002%と 、 お しなべ て低 目で あ る。
粉 末 X線 回折
:
図 33と 表 10に 示 す 。 鉱 物 組 成 の 主 体 は UlV6spinel(3FeO・ Fe203・ T102→ AS
TMカ ー ドNo25-417)で
あ り、 他 に わ ず か なが らDlopside(CaO o MgO・ 2S102→ ASTMヵ ― ドNo
ll-654)と Magnetite(Fe304→ ASTMヵ ― ドNo19-629)ら
が 同定 され た 。
20)10号 址 A炉 炉 内残留澪 (図 版 17-28)
外観
:
表 皮 は青 味 がか った黒 褐 色 で 、一 部 に 小豆 色 を混 して 、や ヽ粗琢 な肌 を もつ 炉 内残
留滓 で あ る。裏 面 は黒 褐 色 で滴下状 の 突起 がみ られ る。破 面 は黒褐 色 を呈 し、気 泡 はほ とん ど
認め られ な い。 大 きさは51× 26× 8 mmで 重 量 は20gで あ った。
顕微鏡 組織
:
図版 17-28に 示 す 。 四面体 結 晶 の イル ミナ イ ト (lme面 te:FeO・ T102)が 、結
晶周縁 を酸 化 され て 白色 を呈 す るヘ マ タイ トに変 じて い る。 炉 内残留滓 として 、か な りの 時 間
酸 化 され た状 態 を示 して い る。他 の 鉱物組 成 は 、灰 色長 柱状 の フ ァイヤ ラ イ ト(FayJite:2FeO
°Si02)と 、少量 の 金属鉄 (Metalhc Fe)の
残留 、それ に ガ ラス質 か ら構 成 され て い る。
-178-
千葉県下遺跡出土の製鉄関係遺物の分析調査
化学組成
:
表 9(そ の 1)に 示す 。 全鉄分 (TOtJ Fe)は 37.2%で 、 この うち、金属鉄
(Metallc Fe)1.15%、
酸化第 1鉄 (FeO)14.2%、 酸化第 2鉄 (Fe203)が 35.7%で ある。
酸化第 2鉄 の 多いの は 、顕微鏡組織 と対応す る。
造滓成分
ム
(Si02+A1203+CaO+MgO)は 27.40%で あ り、 この鉱滓にお いて も酸化 カルシウ
(CaO)が 、や ヽ高 目で5.35%が 認め られ る。二酸化チ タン (T102)14.6%、
V)0.29%で あ り、他成分は酸化 マ ンガ ン (MnO)0.64%、
0.082%、 五酸化燐 (P205)0.18%、 銅
バ ナ ジウム
(
クロム (Cr)0.06%、 硫黄 (S)
(Cu)o.004%で あった。
試料27の 流出滓 と主成分は大差 ない。
29)10号 址 B炉 出土流出滓 (図 版18-29)
外観
:
小豆色 の なめ らかな肌を有する流出滓である。裏面 は鉄錆 を含ん だ赤褐色で気泡が
わずかに散在す る。破面は黒色で気泡な く緻密 である。大 きさは57× 38× 35mmで 、重量は79g
であった。
顕微鏡組織
:
図版 18-29に 示す。鉱物組成は 、自色 多角形状 のマ グネタイ ト (Magnedte
:Fe304)と 、灰色木ず り状 のフ ァイヤ ライ ト (Fayalie:2FeO o Si02)、 それに地 の暗黒色 の
ガラス質か ら構成 されて い る。
化学組成
:表 9(そ の 1)に 示す。全鉄分
(Tot」
Fe)は 30.4%、 その うち、金属鉄 (Me―
tJIc Fe)が o.40%、 酸化第 1鉄 (FeO)が 36.8%、 酸化第 2鉄 (Fe203)は 2.0%で 、原鉱
の未還元酸化鉄はほ とん ど残留 して いない。
造滓成分
バ ナ ジウム
(Si02+A1203+CaO+MgO)は 多くて 41.69%あ り、二酸化チ タン (Ti02)12.5%、
(V)0.24%で あった。随伴微量元素は、酸化 マ ンガン (MnO)0.57%、
クロム
(
Cr)0.07%、 硫黄 (S)0.061%、 五酸化燐 (P205)0.34%、 鋼 (Cu)o.004%で あった。
30)10号 址 B炉 炉底下炉床滓 (図 版18∼ 30)
外観 : 表皮は灰色を呈 し、小型椀形滓 をお もわせ る楕円形 の鉱滓で中央部に鉄錆 を発 してい
る。表側の周縁部 は凹凸少な く、中央部 のみ粗豚 さをもつ 。裏面 は全般に凹凸少な く、椀状の
カー プ をもち、小粒子 の砂 を付着 して い る。破面は黒色で多孔質であるが、気泡は小型で黒色
に光沢がな く、鍛冶滓 とは趣 を異にす る。大 きさは76× 43× 27mmで重 量は56gで あった。
顕微鏡組織
ネル
:
(Uivё spinel
図版 18-30に 示す。鉱物組成 は 、 巨大結晶 となった灰色 多角状 のウルポスピ
i3FeO.F6203)と 、針状結晶の イル ミナ イ ト (1lmenite:FeO・ T102)、 それ に
金属鉄 の風化 したゲーサ イ ト (Goethie:Fe203・ H20)、 金属鉄 (Met」 hC Fe)、 ガラス 質 か
ら構成 されて い る。
化学組成
: 表 9(そ の 1)に 示 す。全鉄分
金属鉄 (MetJhc Fe)は o.46%、 酸化第 1鉄
(Tot」
Fe)は 低 目で27.5%で ある。 この うち、
(FeO)は 20.8%、 酸化第 2鉄 (Fe203)は
-179-
15.5
Ⅳ 特
論
%で あ った。 酸化 第 2鉄 は 、金属 鉄 の 風化 した ものが 多 くを 占め る もの と考 え られ る。
(Si02+AL03+CaO+MgO)は
造滓 成分
バ ナ ジウム (V)0.23%、
、 45.00%で あ り、二 酸化 チ タン (T102)11.6%、
他 の 随伴微 量 元素 は 、酸化 マ ン ガ ン (MnO)0.56%、
0.05%、 五 酸化燐 (P205)0.32%、 銅
(Cu)o.004%で
クロム (Cr)
あ り、構 成成分 としては A・
B炉 の 流
出滓や 、炉 内残留滓 と差 異 が な い。 同系砂 鉄 原料 を装 入 して 、製錬 反応 もさほ どか わ らな い。
粉 末 X線 回折
:
図 33と 表 10に 示す 。同定 され た主 体 鉱物 組 成 は 、1lmenite(FeO・ Ti02→ AS
TMカ ー ドNo 3-781)で あ り、他 に少量 のFayalite(2FeO o Si02→ 9 307)、 Dlopside(Ca0
。MgO・ 2S102→ ASTMヵ ― ドNo 3-860)、 UIVё spinel(3FeO・ Fe203・ T102)ら と微 量 の Mag―
netite(Fe304→ ASTMヵ ― ドNo19-629)と Alpha lron(Fe→ ASTMヵ ― ドNo 6-696)ら が検
出 され た。
31)10号 址 B炉 裏込め使用小鉄塊 (亜 共析鋼)(図 版18∼ 36)
外観
:
や ヽ青 味 がか った黒褐 色 で光 沢 を有 し、部分 的 に 茶 色 を示す 小鉄 塊 であ る。 表 裏 と
もに酸化 を受 けて錆 のふ くらみ をみせ て い る。大 きさは45× 30× 19mmで 、重 量 は42.7gあ った 。
顕微鏡 組織
:
図版 18-36に 示す 。金属 鉄 (Met」 Ic
Fe)を ナ イ タル で腐 食
(etchlng)し
た組織 であ る。 白 い部 分 は フ ェ ライ ト (fernte)、 黒 または層状個 所 は パ ー ライ ト (Peanite)
で あ り、 この パ ー ライ トの 占め る面積 か ら炭素
(C)含 有量 が 0.6%程 度 と推 定 され る。(写 真
中央部 の漆黒部は割れ 日であ り、パー ライ トではない フェ ライ トは過 熱 の ため粗 大化 して い る 。
)。
化学 組成
:
属鉄 (MetJhё
表 9(そ の 2)に 示 す。 全鉄 分
Fe)が 7.15%、
酸化 第 1鉄
(TotJ Fe)が 47.2%で あ り、 この うち、金
(FeO)が 7.47%、
酸 化 第 2鉄 (Fe203)が 48.9%
で 、金属 鉄 が 風化 を受 け て含水酸化鉄 (Fe203・ ″H20)に 大部 分 が 変 じて い る。
造滓 成分 (Si02+A1203+CaOtt MgO)は 23.39%と 多 く含 有 され 、 この影響 か らか 二 酸化 チ
タ ン (Ti02)が 5.01%、 バ ナ ジウム
ガ ン (MnO)0.21%、
(V)0.10%で あ った。随伴微 量 元素 としては 、酸化 マ ン
クロム (Cr)o.03%ら は低 目であ るが 、硫 黄
(S)は 含水酸化鉄 に な っ
て い るの で 高 目の O.092%、 五 酸 化燐 0.26%、 銅 (Cu)は 鉄 分 が 高 い ため 多い 日で 0.008%で
あ った。
炭素
(C)含 有量 は 、0.70%の 亜 共析鋼 であ り、顕微 鏡 組織 と若千 の ズ レが あ るの は酸 化鉄
が 多 く爽雑 物 を含有 す るか らで あ ろ う。
32)17号 址 D炉 出土製錬滓
外観
:
(図 版 18-32)
表 皮 の大部 分 は黒褐 色 で 、部分 的 に小豆 色 を呈 す る流 出滓 で あ る。裏 面 は灰 色 で小
気 泡が散 在 し、や ヽ粗豚 であ る。 破 面 は漆黒色 で気 泡少 な く緻 密 であ った。大 きさは69× 61×
27mmで 、重 量 は
顕微鏡 組織
:
181gで あ った。
図版 18-32に 示 す。鉱物組 成 は マ グネ タイ ト
-180-
(Magnedte:Fe304)が 大半 を
千葉県下遺跡出土の製鉄関係遺物 の分析調査
占め て い る。 明瞭 な晶癖 を示 す 少量 の 大結 晶 と、樹枝 状 の 小結 晶 が 多量 に 存在す る。前者 は ス
ラ グ融 液 中 で溶 解析 出機構 に よ って粒 成長 した結 晶 で あ る。 後者 は冷却過程 で晶 出 した もの で
注33)
あ る。鉱物 組成 は マ グネ タイ ト (Magnetite:Fe304)の 他 に 、 フ ァイヤ ライ ト(Fayalite:2FeO
°S102)と ガ ラス質 が認め られ る。
:
化学 組 成
鉄
表 9(そ の 2)に 示す 。 全鉄 分
(Metamc Fe)0.27%、
酸 化 第 1鉄
(TOtJ Fe)は 31.1%あ
(FeO)が 35。 9%、
酸化 第 2鉄
り、 この うち、金属
(Fe203)は 4.1%と
少 な い 。造津 成分
(Si02+A1203+CaO+MgO)は 40.07%で あ り、二 酸 化 チ タ ン (Ti02)が 14
.3%、 バ ナ ジウム
(V)0.27%で あ る。随伴微 量 元素 は酸化 マ ン ガ ン (MnO)0.58%、
ク ロム
(Cr)0.07%、 硫 黄 (S)0.014%、 五酸 化燐 (P205)0.24%、 鋼 (Cu)o.002%で あ った。
11号址 、18号 址 の鉱 滓 成分 と、大差 な い成分構 成 で あ る。
33)17号 址製鎌炉生成鉄片
外観
:
(図 版19-33)
黒褐 色 と茶褐 色が まだ ら状 に混 じあ った三 角 形 に近 い形 を示す鉄 片 であ る。 局部 的
に錆 ふ くれが 発生 し、鉄 片 であ るこ とが判 る。大 きさは49× 34× 4 mmで 、重 量 は 18.6gで あ っ
た。
顕微鏡 組織
:
図版 19-33に 示す 。 顕微鏡 試料 には 、金属 鉄
ず 、全組織 が 金属鉄 風化 物 の ゲーサ イ ト (Goethte:Fe203・
化 学組 成
:
表 9(そ の 2)に 示 す 。 全鉄 分
金属鉄 (Metallc Fe)は 25.6%、 酸化 第 1鉄
(Metahc Fe)が 残留 して い
H20)で あ つた 。
(TOtJ Fe)は 74.8%で あ り、
この うち、
(FeO)が 59.8%、 酸化 第 2鉄 (Fe203)が 3.8%
であ った。顕微 鏡観 察用 の 試料 は 、酸化 第 2鉄 が 多 くて 、化学分析値 と相 反す る結 果 とな った。
この鉄 片は 、炭素
(C)含 有量 が4.48%の 銑鉄 成分 であ り、二 酸化 チ タ ン (Ti02)0.30%、
バ ナ ジウム (V)0.06%、
銅 (Cu)o.008%を 示 して い る。 また 、酸 化 マ ンガ ン (MnO)0.05%、
クロム (Cr)o.01%、 硫 黄
34)17号 址 B炉 出土製錬澪
外観
:
(S)0.021%と 低 日で 、金属鉄部 分 の分 析結 果 と考 え られ る。
(図 版 19-34)
表 皮 は茶 色 を帯 び た黒褐 色 を呈 し、木炭 を噛 み 込 ん だ粗 豚 な肌 を もつ 炉 内残留滓 で
あ る。裏 面 はや ゝ光 沢 を もつ 灰 色 で 、 さ ざ波状 の 凹 凸 を有 して い る。破 面 は黒褐 色 と茶褐 色 に
分 か れ 、前者 はや ゝ多孔質気味 であ り、後者 は緻 密 であ った。大 きさは85× 79× 44mmで 、重 量
は 289gで あ った 。
顕微鏡 組織
:
図版 19-34に 示す 。鉱物 組 成 は 、 自色 多角 形状 のマ グネ タイ ト (Magnedte:
Fe304)と 、灰 色長柱状 の フ ァイヤ ライ ト (Fayaltte:2FeO o S102)、
それ に暗黒 色 の ガ ラス質 か
ら構 成 され て い る。
化学 組 成
Met」 hc
:
表 9(そ の 2)に 示す 。 全鉄 分
(TOtJ Fe)は 35.4%、 この うち、金属鉄
(
Fe)が o.31%、 還 元過程 での酸化 第 1鉄 (FeO)が 18.4%、 酸 化 第 2鉄 (Fe203)が
-181-
Ⅳ 特
論
29.7%で あ る。造 滓 成分 (Si02+A1203+CaO+MgO)が 29.59%、 二酸 化 チ タ ン (T102)9.94
%、 バ ナ ジウム
%、 硫 黄
(V)0.26%、 随伴微 量 元素 は酸 化 マ ン ガ ン (MnO)0.51%、 クロム (Cr)0.04
(S)0.068%、
35)17号 址 B炉 出土鉄塊
外観
:
五 酸 化燐 (P205)0.18%、 鋼
(Cu)o.007%で
あ った。
(自 鋳鉄)(図 版19-35)
表 皮 は茶褐 色 を呈 し、錆 化 して い るが粗豚 さが な く、新 しい破 面 は銀 白色 を示 す 金
属 鉄 が 残留 す る。金属鉄 は溶融状 態 を経 て 、冷却 され た銑鉄 で あ る。大 きさは 、74× 36× 26mm
で 、重量 は
122.6gで あ った。
:
顕微鏡 組織
図版 19-35に 示 す 。 外観 で破 面が 銀 白色 を示 して い た よ うに 自鋳 鉄 組織 で あ
る。左側 に 自然腐 食 (etchlng)を 受 け た ところ を、右側 にナ イ タル 腐 食で の 組織 を示 す 。 いず
れ も 100倍 であ る。
この 金属鉄 は 、過 共 晶組成 の 自鋳 鉄 であ る。 自色板状 結 晶は 、初 品 の セ メン タイ ト (Cemen
ute:Fe3C)で 、地 は オー ステナ イ ト (Austenie)、
常 温 ではパ ー ライ ト (Pean■ e)と セ メン
タ イ トとの 共 晶 、 レデ ブ ライ ト (Ledebulite)で あ る。 当鉄 塊 は 、完全 溶融状 態 か ら急冷 され
た熱 履 歴 を経 て い るこ とが判 る。
化学 組 成
:
表 9(そ の 2)に 示す 。炭素
(C)含 有量 が4.28%を 示 す 白鋳鉄 であ る。全
Fe)は 、79.4%で あ り、 この うち、金属鉄 (Met」
Fe)の 残留 は55.2%と 多
鉄 分 (Tot」
1に
い。 酸 化 第 1鉄
(FeO)は 12.6%、
風化 され た鉄 の 酸化 第 2鉄
二 酸 化桂 素 (Si02)は 2.57%、 酸 化 マ ン ガ ン
%、 硫 黄
(Fe203)は 34.6%で あ った。
(MnO)0.04%と 低 く、五 酸化燐 (P205)0.27
(S)0.0058%、 銅 (Cu)o009%、 二 酸化 チ タ ン (T102)0.26%、 バ ナ ジウム (V)
0.09%と 純度の高 い銑鉄であった。
36)17号 址 C炉 出土鉱滓 (図 版19-36)
外観
:
表 皮 は茶 色 で凹 凸激 し く割 れ 目に ガ ラス質 が 露 出す る炉 内残留滓 であ る。裏 面 は粗
豚 さは な く、灰 黒色か ら暗 赤色 を呈 して い る。破 面 は黒褐 色 でわずか に気 泡 が 散 在す るが 比重
は 大 きい 、サ イ ズは76× 73× 39mmで
顕微 鏡 組織
:
295gで あ った。
図版 19-36に 示 す 。鉱物 組 成 は 、灰 白色 の 長柱状や針 状 に 晶 出 した イ ル ミナ
イ ト (lmenie:FeO・ Ti02)と 、灰 色木ず り状 の フ ァイヤ ライ ト (Fayalte:2FeO o Si02)、
暗
黒 色 ガ ラス質 で構 成 され て い る。 なお 、不 整 形の 金属鉄 (MetJIc Fe)と 、 ゲーサ イ ト(Goe_
thie:Fe203・ H20)も か な り認め られ る。
化学組成
:
表 9(そ の 2)に 示す 。 全鉄分 (TotJ Fe)は 、39.2%で あ り、その うち、
金 属 鉄 (Metallic Fe)
で あ る。 酸 化 第
造滓成分
2鉄
が 198%、 酸 化 第 1鉄
(FeO)6_61%、
酸化 第
2鉄 (Fe203) 20.4%
は 、ゲー サ イ トが 大 部 分 を 占め る と考 え られ る。
(S102+A1203+CaO+MgO)は 38.37%、
-182-
二 酸 化 チ タ ン (Ti02)は や `低 目で 7.82
千葉県下遺跡出土の製鉄関係遺物 の分析調査
%で あ る。 二 酸 化 チ タ ン (Ti02)は
、顕微鏡 組織 か らみ る と、 イル ミナ イ トの 晶出 が あ るこ と
か ら、 も う少 し高 目に な る もの と考 え られ るが 、 10%を 割 る値 であ った。 試料 間 の バ ラツ キで
あ ろ うか。 バ ナ ジウム
0.03%、 硫 黄
(V)0.2%、
酸化 マ ン ガ ン
(MnO)が 若千低 日で0.35%、
クロム (Cr)
(S)0.044%、 五 酸化燐 (P205)0.12%、 銅 (Cu)o004%で あ った。
粉 末 X線 回折
:
→ASTMヵ ― ドNo
図 33と 表 10に 示す 。 図 33と
X線 回折 図か ら主体 鉱物 組 成 は Alpha lron(Fe
6-696)が 同定 され 、他 にMagnetite(Fe304→ ASTMヵ ― ドNo19-629)と
Q―
uartz(S102→ ASTMヵ ― ドNo 5-490)が 少量 と、1lmenite(FeO・ T102→ ASTMヵ ― ドNo 3-78
―ドNo25-417)、 Brookite(Ti02→
1)、 Ulvbspinel(3FeO・ Fe203・ Ti02→ ASTMヵ ―
ドNo
ASTMヵ ―
3-380)ら が 微 量検 出 され た 。
粉 末 X線 回折 と顕微 鏡 観 察 では 、lmeniteや Ulvbspinel lこ 、量的 な差 異 がみ とめ られ た。 試
料 内 の 偏析 に よるの であ ろ う。
37)1号 址
外観
:
(竪 穴住居址 )出 土製錬滓 (図 版20-37)
表皮 は黒褐 色 に鉄 錆 を発 し、肌 は粗豚 さを もった鉱 滓 であ る。裏 面 はサザ 波状 の凹
凸 を有 し、赤褐 色 を呈 して い る。破 面 は黒褐 色 で局部 的 に鉄 錆 が み られ 、小 気 泡 が 散 在す る。
磁性 あ り。大 きさは31× 25× 18mmで 、重 量 は 19.6gで あ った 。
顕微 鏡 組織
:
図版 20-37に 示 す 。鉱物 組 成 は 、灰 色大 型 多角 形状 マ グネ タ イ ト (Magnetite
:Fe304)と 、暗灰 色地 の ガ ラス質 で あ り、 これ らの粒 界に金属鉄 (Metalc Fe)が 不 整形
状 に残 留 して い る。 なお金属鉄 の 周縁部 の一 部 はヘ マ タイ ト (Hemedte:γ 一Fe203)化 して い
る。
化学 組 成
:
表 9(そ の 2)に 示す。全鉄 分
その うち、金属鉄
(Metamc Fe)が 3.64%、
(TOtJ Fc)は や
ヽ多い 目の41.8%で あ り、
酸 化 第 1鉄 (FeO)29.5%、
酸化 第 2鉄
(Fe2
03)21.7%で あ る。造 滓 成分 (Si02+Ab03+CaO+MgO)は 、 26.03%で あ り、二 酸化 チ タ ン
(T102)12.9%、 バ ナ ジウム (V)0.31%、 随伴微 量 元素 は 、酸化 マ ンガ ン (MnO)0.42%、
ク ロム (Cr)0.09%、 硫 黄
(S)0.048%、 五 酸化燐 (P205)0.17%、 銅 (Cu)は 鉄分 が 高 目
のせ いか 多 くて 0.009%で あ った。
当鉱 滓 は 、竪 穴住 居址 か ら出土 して い るが 、顕微 鏡 組織 のマ グネ タイ トの 晶 出や 、化 学組 成
の二 酸 化 チ タ ン (Ti02)12.9%、 バ ナ ジウム
(V)0.31%と
高 目か ら製錬 滓 に分類 で きる。 11
三 者 ともに成分 系 は近 似 して
号址 、 17号 l■ 、18号 l■ の いずれかか ら運搬 して きた の であ ろ うが 、
お り、 どの 遺構 か の 判定 は難 しい。
竪 穴住 居址 で検 出 され た鉱 滓 は 、鉄分 を 多 く含有 してお り、各製錬 炉 よ り運搬 して きて精錬
用 に選別 した の で あ ろ う。 この選 別 作業 を行 な った鉱滓 出土 の 住居址 出土類例 として 、千葉 県
流 山市 の 中 の坪 I遺 跡 が あ り、 ここ よ り出土 した鉱 滓 の鉱 物 ・ 化学 組 成 は 、御 幸畑 遺跡 出土鉱
-183-
Ⅳ 特
論
滓 に 近似 した もの で あ った。
小
結
〈1〉
御 幸畑 遺跡 の11号 址 に所 在す る製錬 炉 は 、60× 25cmの 楕 円形炉 であ る。 これ よ り排 出 さ
れ た鉱 津 は 、砂 鉄 を原料 とし、鉱物 組 成 はMagneite+Fayahte
.2%、
で、化学 組成 は 、T102 15
V O.28%の 成分 を とって い る。 同一 炉 よ り生成 され た銑鉄 は 白鋳 鉄 で炭素 量 は3.66
%で あ った。
この 白鋳鉄 と鉱 滓 の 随伴微 量 元素 は 、下 表 に示す よ うな成分 関係 を示 して い る。
T.Fe
11
M.Fe
C
製錬 津
MnO
S
0 59
0 041
0 28 0 003
0 06
0 08
0 065
0 22
0 02
P205
Cr
Cu
Ti02
V
0.28
址
号
白鋳鉄
72.0
3.66
0 008
0.81
0.12
17号 址 の 製錬 炉 は 、 U字 掘 り込 み最 奥部 に 残 存す る55× 50cmの 焼 け跡 か ら竪 炉 が推 定 さ
〈2〉
れ る。 3基 の 製錬 炉 は 、各 々砂鉄 を原料 とし、鉱 津 成分 はTi02 7 82∼ 14.3%、
∼0.27%で あ る:鉱 物 組 成 は二 基 の 鉱滓 にMagnetite+Fayahte
V O.20
を晶 出す るが 、1基 (C炉 )
はHmeniteで あ った。
この竪 炉検 出 の鉄 塊 は 、高炭素 含有量 の銑鉄 で Cが 2.82∼ 4.48%あ った。 製錬 滓 と銑鉄 の
成分 間 の動 きを示 す と下表 の 如 くな る。
T.Fe
17号 址
B炉
鉄
74.8
25.6
4.48
MnO
S
P205
0 58
0.041
0 24
0 002
0.05 0.021 0.31
0.008
Ti02
V
0 07
14.3
0.27
0.01
0 30
0 06
0.18 0 007 0.04
9.94
0 26
0.04 0 058 0.27 0.009 0.02
0.26
0.09
0.068
製錬津
自鋳鉄
〈3〉
C
製錬 津
銑
17号 l■
M.Fe
79.4
55.2
2 89
Cr
Cu
18号 址 の A炉 は 、炉底滓 のサ イ ズが 、96∼ 70× 60× 61で 厚 み が30cmあ り、 これか ら炉 型
を推定 す る と、箱状 も し くは四 角柱状 とな る。 この 炉か ら検 出 され た 流 出滓 、炉 内残留滓 は 、
と もに鉱 物 組成 にnmeniteが 晶 出 し、化学 組 成 はTi02 が 14.2∼ 14.6%、
Vが0.27∼ 0.29%
であ る こ とか ら、高 チ タ ン含 有 の砂 鉄使 用が うか が われ る。
B炉 の 炉 底滓 は 、40× 45∼ 50cmで 排 津 口 8
cmを もつ 形状 で 、炉 型 は円 筒状 が推 定 され る。
この 炉 の 流 出滓 及び炉 底下 の 炉床滓 は 、T102 が 11.6∼ 12.5%、
成分 で あ る。鉱 物 組成 は流 出津 にMagnctitc、
Vが0.23∼ 0.24%で 、同系
炉床滓 にUlvё spincltt1lmcnite が検 出 さオ
tた 。
なお 、同炉 の裏 込 め使 用 の 小鉄 塊 は 、金属鉄 が 7.15%と 低 目で 、造滓 成分 が 23.4%と 鉱 滓
を 多 く含 ん で い るの で 、製錬 滓 との成分 比較 は で きなか った。小鉄 塊 の 金属 組織 は 、亜 共析
-184-
千葉県下遺跡出上の製鉄関係遺物 の分析調査
鋼 で結 晶粒 は粗 大化傾 向 を示 して い た。純 鉄 に近 い海綿鉄 が 、滲炭 雰 囲気 に お い て 、加 炭 さ
れ た もの と考 え られ る。 B炉 は 、主 として海綿鉄 が 製造 され た もの と推 定 され る。
18号址 PL出 土 の 砂鉄 は 、T102が 17.7%、
Vが 0.36%を 示 し、全鉄 分 が47.6%で あ った 。
18号址 出土 鉱滓 のTi02 は 11.6∼ 14.6%で あ り、当砂鉄 単独 装 入は考 え られ な い。 この砂 鉄
の単 独 装 入 であれば 、鉱滓 中 のTi02 は30%前 後 の 高 い もの に な る筈 であ る。
台地上 竪 穴住 居址 (1号 址 )出 土 の鉱 滓 は 、Ti02 が 12.9%、
〈4〉
Vが 0.31%か
らみ て製錬
滓 であ り、 多 くの金属鉄 の 残留 が 認め られ た 。精 錬鍛 冶 (大 鍛冶 )用 に選 別 した鉱 滓 であ ろ
う。 11号址 、17号 址 、 18号址 の い ずれ か ら搬 入 され たか 、 さだか で な いが 、同一 遺跡 内 の も
の であ る こ とは疑 い な い。
御 幸畑 遺跡 内 の 製錬 炉 は 、竪炉 と箱炉 (低 炉 )の 存在 が推 定 され る。 原料砂鉄 は 同一 成
く5〉
分 系 の ものが 使 用 され た と考 え られ る。
炉 の 形態か ら機能 を考 え た場合 、竪炉 は 高炭素 量 の 銑鉄 用 で 、箱炉 (低 炉 )は 低 炭素 含有
量 の 海綿鉄 製造 が推 定 され る。す なわ ち 、竪 炉 は炉 身 が 高 いの で長 い還 元帯 を もち、炉 内温
度 が上 昇 す る と共 に COガ ス と砂鉄 の接 触時 間 が長 くな る。 これ に送 風風 圧 を上 げ る と炉 内
温度 が 高 くな り、生 成 され た鉄 中 内部 へ 炭素 が 、 よ り多 く拡 散 し、滲 炭 が進 ん で銑鉄
(C:
1.7%以 上 )と な る。 出来 た銑鉄 は 、硬 くて もろ いの で 、左下 げ法 で脱炭 した り、低 炭素 材
と混 じて錬鉄 素 材 と した もの と考 え られ る。
また 、箱炉 は低 温還 元 の 原理 を利用 して炭素 量 をわず か しか 含 まな い海綿鉄 をつ くり、材
質的 に軟 らか く鍛 造 の容 易 な材料 を供 給 した の であ ろ う。
この 高炭素 含有量 の銑鉄 と、低 炭素 含有量 の 海綿鉄 の二 者 を組合 せ て 、精錬鍛 冶 (大 鍛冶 )
作業 を行 な い 、各 種 鉄 器 を製造 したであ ろ う。
精錬 鍛 冶 の 原料 を選 別 した所 は 、台地上 竪 穴住居址 であ り、住居 址群 の 東南 5∼ 10mの 所
の径
7mほ どの 多量鉱 滓 は 、そ の 残滓 と考 え られ る。 この 遺構 周辺 に は 、精錬鍛 冶 遺構 の 存
在 も予 測 され る。
4
遺跡 は千葉 市千葉寺 町
720-8他 に所在 し、平安 時代 に比 定 され て い る。
観 青塚遺 跡
検 出 され た遺 構 は 、住 居址 19、 鍛 冶址
1、
土 塘 15、 員 を含む 土墳 1で あ る。
この うち、鍛冶址は、長 さ3.85m、 幅 2.2m、 深 さ0.25mの 形状 で、その 中に炉址が30× 40cm
で確認 された。 この炉址 周辺 か らは、椀形鍛冶滓 、
未成鉄器、鍛造剥片等 が 出土 したの で 、前
11塙 片や羽 口片が表 面採取品 として得 られて いる。
者 2種 の調査 を行 なった。なお 、Jl遺 跡では、
*編 集者注 …… 調査担1当 の 西 川は 、竪 穴住居 内で精錬鍛冶 原料 が選別 され た と考 える こ とには
1真
重 であ る。(II-3参 照 )。
-185-
Ⅳ 特
論
30)鍛 冶址出土鍛鰊鍛冶椀形滓
外観
:
(図 版20-38)
表皮 は 、や ゝ青 味 を帯 び た黒褐 色 に一 部茶 色 を混 し、平坦 な面 に も若千 の 気 泡 と粗
豚 さを もつ 椀 形鍛 冶滓 で あ る。裏 面 は灰 色 に鉄錆 を発 し、凸 レン ズ状 の 形 で 中央部 に気 泡 を 多
発す る。 破 面 は青 味 がか った茶褐 色 で級 密 質 であ る。大 きさは 、85× 82× 26mmで 、重 量 は 240
gあ った 。
顕微鏡 組織
:
図版 20-38に 示す 。鉱物 組 成 は 自色粒状 の 多量 の ヴ ス タイ ト(Wusute:FeO)
と、長柱状 の フ ァイヤ ライ ト (Fayahte:2FeO o S102)、
それ に地 の 暗黒 色 の ガ ラス質 か ら構
成 され て い る。
化学 組 成
表 9(そ の 2)に 示す 。全 鉄 分
:
mc Fe)は 0.29%、
酸化 第 1鉄
(TotJ Fe)は 高 日で48.3%、
(FeO)が 多 くて46.3%、
酸 化 第 2鉄
金属 鉄 (Meta
(Fe203)は 17.12%で
あ った。
造滓 成分 (S102+Aし 03+CaO+MgO)は 33.97%、 二 酸化 チ タ ン (Ti02)は 0.40%、 バ ナ ジ
ウム
(V)0.02%と
0.01%、 硫 黄
両 者 とも低 目で あ る。 また 、酸 化 マ ン ガ ン (MnO)0.08%、
(S)0.031%、
クロム (Cr)
五 酸 化燐 (P205)0.24%と 、随伴微 量 元素 はお しなべ て低 日 と
な って い るが 、銅 (Cu)の み は 0.013%と 高 目であ る。
この鉄 滓 は 、鍛 冶滓 で も製 品加 工 時 の鍛錬鍛 冶滓 (小 鍛冶滓 )で あ り、製錬 滓や 精錬鍛 冶滓
に比 べ て随伴微 量 元素 は低 日 とな って い る。 高 目成分 は 、鉄 分 と銅
30)鍛 冶址出土未成鉄器
外観
:
(Cu)で あ る。
(図 版20-39)
長 さ45mm、 最 大幅 16mm、 高 さ1lmmの 角棒 状鉄 器半 製 品 で あ る。表 面 は黒褐 色 の鉄 錆
に 覆 われ て い るが 、金属鉄 の 残留 は よ く、磁性 も強 い。 重量 は 22.05gで あ った。
顕微 鏡 組織
:
図版 20-39に 示す 。角状 鉄 器 の鍛伸 方 向 に対 して直角 にサ ンプ リン グ した組
織 で 、ナ イ タル 腐 食 (etchlng)で あ る。結 晶粒 は歪 を受 け 斉粒 とな って い な い。焼 な ま しを受
け てお らず 、冷 間加 工 段 階 で放 置 され たの であ ろ う。組織 写真 の 右側 は表 層近 くで 、脱炭 され
炭素 含有 量 は低 く純鉄 組織 であ る。写真 左側 は 、や ヽ黒味 を帯 びて い るが 、 これは炭 素 量 が 高
目で 、パ ー ライ ト (Peanite)が 認め られ る。 鉄 器 内部 で炭素 含有量 が 濃 くな って い る。鋼 中 の
非 金属 介在物 は少 な く純度 の 高 い もの で あ った 。
化学組成
:
表 9(そ の 2)に 示す。 鉄分の残留は非常に良好であ り、 全鉄分
(Tot」
Fe)が 99.4%あ り、この うち、金属鉄 (MetalllC Fe)は 98.9%を 示す。あ とは酸化第 1鉄 (Fe
O)‐ ∞ .58%、 酸化第 2鉄 (Fe203)で 0.067%で あった。
炭素 (C)含 有量 は0.19%で 軟鋼
%、
(C:013-020%)レ ベ ル である。二酸化桂素
(Si02)0.15
酸化マ ンガ ン (MnO)0.01%、 硫黄 (S)0.005%と これ らは非常に低 く、五酸化燐 (P205)
0.080%、 鋼 (Cu)o.018%、
二酸化チ タン (Ti02)0.03%、
-186-
バ ナ ジウム
(V)0.01%以 下 で
千葉県下遺跡出上の製鉄関係遺物 の分析調査
あ る。 原料素 材 は 砂鉄 製 品 と考 え られ る。
1ヽ
結
観 音塚 遺跡 出土鉄 滓 は 、製品加 工 の段 階 で排 出 され た鍛 錬鍛 冶滓 (小 鍛冶滓 )で あ り、鍛 冶
炉 の 火窪 曲面 を残 す椀 形滓 であ った。鉱物 組成 は Wustite+Fayaliteで あ り、化学 組成 は 、鉄
分 48%代 と多 く、造 滓 成分 は40%代 、T1020.40%、
VO.02%
で両 成分 は精 錬鍛 冶滓 に比較
して約 1/10以 下 の低 目で あ る。
観音塚鍛錬鍛冶滓は 、取香、御幸畑両遺跡出土の精錬鍛冶滓 とは明 らかに構成成分が異なっ
て い る。
半成品 の鉄器片は 、結晶粒 に歪が残 って い るところか ら、冷間加工過程 で放置 された と推定
される。炭素含有量 は端部 が脱炭 を受け、内部 に Pearl■ eを 残 して、これ らの平均値で0.19%
と軟鋼 レベ ル であった。
鍛錬鍛冶滓 と鉄器片の成分間 の動 きを示す と下表 の如 くなる。
分 T.Fe
M.Fe
C
鍛錬鍛治滓
鍛 7台
士
止
器
鉄
99.4
98.9
0.19
MnO
S
P205
Cu
0 08
0.031
0 24
0 013
Cr
0 01
0 01 0 005 0.080 0.018 0.002
Ti02
V
0.40
0.02
0.03 く0.01
注 37)
5.稲 城 台遺 跡
遺跡 は千葉 市 東寺 山町 454∼ 464番 地 に所在 す る。24住 居址は鬼高期に属す る。
40)東 寺山 1地 区24住 居址 出土鍛錬鍛冶椀形澤 (図 版20-40)
外観
:
表 皮 は淡 茶褐 色 を呈 し、粗 継な部 分 と、平 担 面 を有す る椀 形津 であ る。裏 面 は灰褐
色 で小 凹 凸 を有 し、気 泡 多 く砂 の粒 子 を付着 した部 分 も認め られ る。 表裏 ともに局部 的 に鉄 錆
が 発生 して い る。破 面 は 、茶褐 色 で小 気 泡 を発す るが緻 密 で あ る。 大 きさは 、68× 53X36mmで
重 量 は 118.7gで あ った。
顕微鏡 組 織
:
図版 20-40に 示す 。鉱物 組 成 は 、 自色粒状 の ヴス タイ ト (WiSute:FeO)と
多量 の 盤状 結 晶 の フ ァイヤ ライ ト (Fayalte:2 FeO・ Si02)、 地 の 暗灰 色 ガラス質か ら構 成 され
て い る。
化学組 成
:
表
9(そ の 2)に 示す 。
全鉄 分 (TOtal Fe)は 、43.5%、 その うち、金 属鉄
(MetJIC Fe)o.19%、 酸 化 第 1鉄 (FeO)30.6%、 酸化 第 2鉄 (Fe203)27.9%で あ る。造滓
成分
ム
(Si02+AL03+CaO+MgO)は 35.53%で あ り、二 酸化 チ タ ン (Ti02)0.71%と
バ ナ ジウ
(V)0.03%と この二 者 の 含有量 は低 目であ る。
ま た 、酸化 マ ンガ ン (MnO)0.14%、
クロム (Cr)0.01%、
硫 黄 (S)0.065%、 五 酸化燐 (P2
05)0.03%と 、 これ ら随伴微 量 元素 は低 く、銅 (Cu)は 0.030%と 高 目であ った。 これ らの構
-187-
Ⅳ 特
論
成成分 か ら、鍛 錬鍛 冶滓 (小 鍛冶滓 )に 分 類 され る。
′
卜 結
出土鉄 滓 は 火窪 の 底 面 の 曲率 を もった形状 の椀 形滓 で あ り、鉱物 組 成 と化学 組成か らみ て鍛
錬鍛 冶滓 (小 鍛冶滓 )で あ る。
6.戸 張作遺 跡
遺跡 は東寺 山遺跡 と同 じ く千葉 市 東寺 山町 に位 置す る。
41)戸 張作表土 中出土鉱澪 (図 版21-41)
:
外観
表裏 ともに暗黄褐 色 で 、未還 元砂鉄 粒子 を付着 した炉 内残留滓 であ る。 破 面 は黒褐
色 で 、気 泡皆無 の個 所 と、黒 色 で小 気 泡 を有す る個 所 が混在 し、一部 に磁 気 が感 じる ところが
認め られ る。大 きさは58× 45× 40mmで 、重 量 は 126.6gで あ った。
顕微 鏡 組織
:
図版 21-41に 示す 。鉱物 組 成 は砂 鉄 粒 子 の 未 還 元 状 態 で あ る マ グネ タイ ト
(Magnette:Fe304)と 、盤状 結 晶 の フ ァイヤ ラ イ ト (Fayahte:2 FeO o Si02)、 それ に金 属鉄
の 風化 した ゲー サ イ ト (Goethlte:Fe203・
H20)か
ら構 成 され て い る。 白色 小 塊状 の 金属鉄
(MetJIC Fe)も 一 部 に 残留す る。
化学組 成
:
表 9(そ の 2)に 示す 。 全鉄 分 は46.4%で 、 この うち、 金属鉄 (MetJhC Fe)
が1.79%、 還 元進行過 程 の 酸化 第 1鉄
(FeO)が 29.5%、
金属鉄 の 風化 した酸化鉄 と原鉱 の 未
還 元酸化鉄 の酸 化 第 2鉄 (Fe203)が 30.9%で あ る。
造 滓 成分
(Si02+A1203+CaO+MgO)が 19。 96%と 低 目で あ り、二 酸 化 チ タ ン (T102)は 12.9
%、 バ ナ ジウム (V)0.19%、
銅
(Cu)o.004%で あ る。
製錬 滓 で 、炉 内残 留 中 に砂鉄 が 投 入 され 、 これが未還 元 の ま ま付着 して い る。
1ヽ
結
製錬滓 であ るが 、精錬 鍛 冶 用 で選 別 用 に搬 入 され た鉱 滓 の 可能性 が あ る。
7.金 稿 台遺 跡
遺跡 は松 戸市紙 敷字西 金 楠 台に所在 す る。 7世 紀 末に比定 され る住居址 よ
注39)
り出土 した鉄 滓 で あ る。
42)金 楠台 3号 住居址 出土精錬鍛冶滓 (図 版21-42)
外観
:
表 皮 は茶褐 色 を呈 し、粗 豚 な肌 を もつ 鉄 滓 であ る。鉄錆 もが な り発生 して い る。 35
×30× 25mmで 、重 量 は20gで あ った 。 4個 あ る うち、最 も大 きい もの を供 試材 とした。
顕 微鏡 組織
:
図版 21-42に 示 す 。鉱物 組 成 は 、や ヽ小型 白色粒状 の ヴ ス タイ ト (Wusute:
FeO)と 、灰 色 多角 形状 のマ グネ タ イ ト (Magne● te:Fe304)、
灰 色木 ず り状 の フ ァ イヤ ラ イ ト
(Fay」 ■e:2 FeO o Si02)、 地 の 暗黒 色 の ガ ラス質 か ら構 成 され て い る。 わずか なが ら金属鉄
(Metallc Fe)も 残留 す る。
-188-
千葉県下遺跡出土の製鉄関係遺物 の分析調査
化学組 成
:
表 9(そ の 2)に 示 す。全鉄 分
(TOtJ Fe)は 高 目の48.9%で あ り、 この うち、
(FeO)は 48.6%、
酸化 第 2鉄 (Fe203)は 14
.9%で あ った。 造滓 成分 (S102+A1203+CaO+MgO)は 24.77%、
二 酸化 チ タ ン (Ti02)は 鍛
酸 化 第 1鉄
金属鉄 (Metallic Fe)は o.65%、
冶滓 と しては高 目の8.41%、 バ ナ ジウム
(V)0.21%で あ る。随 伴微 量 元素 は 、
酸 化 マ ンガ ン
(MnO)0.36%、 クロム (Cr)0.02%、 硫 黄 (S)0.048%、 五 酸 化燐 (P205)0.20%、 銅 (Cu)
は 高日 で0.009%で あ った。
1ヽ
結
該 品は 、鉱物 組 成 及び化学 組 成か らみ て 、製錬 滓 と鍛錬 鍛 冶滓 (小 鍛冶滓 )の 中間 工程 に 当
る精錬 鍛 冶滓 (大 鍛冶滓 )で あ る。
遺跡 は 、柏 市 鴻 ノ巣 。西 高野・ 花野井 の地 籍 に 含 まれ る地域 に立地 す る。
3.鴻 ノ巣遺 跡
B地 区 の 24・ 25住 居址 よ り鉄 滓 及び小鉄 塊 が 出土 して い るの で 、 これ らの
調査 を行 な った 。 なお 、24号 住居址 か らは 、土 製 馬形 品 と多量 の鉄 滓 が 出土 してお り、祭祀 行
為 が 行 なわれ た と推 察 され て い る。 25号 住 居址 は 、鉄 滓 、鉄 塊 と炉址状 遺構 が 検 出 され て い る
注40)
こ とか ら鍛 冶炉 と考 え られ る。
43)鴻 ノ巣 25号 住居址 出土鉄澪 (図 版21-43)
外観
:
外皮 は黒褐 色 を呈 し、本炭痕 と粗 豚 な肌 を もつ 鉄 滓 であ る。 破 面 は 多量 の ガ ラス質
部分 と、 コー クス状 に黒色 で 多孔質部分 が 存在 す る。大 きさは51× 49× 45mmで 、重量 は89gで
あ った。
顕微鏡 組織
:
図版 21-43に 示す 。鉱物 組 成 は 自色粒状 の ヴ ス タイ ト (Wustite:FeO)と 、
灰 色木 ず り状 の フ ァイヤ ライ ト (Fay」 ite:2 FeO o Si02)、
それ に暗黒 色 ガ ラス質 (写 真中央に
対角線状に存在す る)か ら構 成 され て い る。
化学 組 成
:
表 9(そ の 2)に 示 す 。破 面 外観 で認め られ た よ うに 、 ガ ラス 質 の 多 い鉄 滓 で
あ り、全鉄 分 (TOt」
%、 酸化 第
Fe)は 少 な くて 、19.5%で あ り、そ の うち、金属鉄
(Met」 IC
Fe)が 0.38
1鉄 (FeO)13.1%、 酸化 第 2鉄 (Fe203)12.3%で あ る。
造 滓成分 (Si02+AL03+CaO十
MgO)は 高 く59.39%で あ り、 この うち二酸 化桂 素 (Si02)が
高 くて37.9%を 占め る。 二 酸化 チ タ ン (T102)は 8.06%(再 分析‐ .91%)、 バ ナ ジウム (V)
0.22%(再 分析0.23%)で
%、 硫 黄
(S)0.041%、
鉱物組成が
あ る。随 伴微 量 元素 は酸化 マ ンガ ン (MnO)0.41%、 クロム (Cr)0.04
1五 酸化 燐
(P205)0.20%、 銅 (Cu)o.003%で あ った。
Wustie+Fayaliteで
あ るが 、T102が 8.06%と 高 日で あ り、 これ まで に類 例 を
み な い成 分 値 で あ っ た 。
44)鴻 ノ巣 不明遣構 出土鉄塊 (図 版21-44)
-189-
Ⅳ 特
外観
論
:
黒褐 色 の鉄 錆 を発 し、表 面 は凹 凸 を有す る小鉄 塊 で あ る。新 しい破 面 は黒褐 色 で 、
金属鉄 を数 点 、点状 に散 在 させ る。 大 きさは 、38× 27× 20mmで 、 18gあ った 。他 に小 片が 6点
存在す る。
顕微鏡 組織
:
図版 21-44に 示 す。 金属鉄 は 風化 を受 け て 、 ほ とん ど残 留 せ ず ゲ ーサ イ ト
(G∝ thite:Fe203・
H20)と な って い る。 ただ し、 この酸 化鉄 には グラフ ァイ ト (Graphite)の
痕 跡 が認め られ る ところか ら、 ねず み銑鉄 であ った こ とが うか が われ る。
化学 組織
:
表 9(そ の 2)に 示 す 。全 鉄 分 (Tot」
」Ic Fe)23.8%、
酸化 第 1鉄 (FeO)42.1%、
Fe)は 71.6%で あ るが 、金属 鉄 (Met
酸化 第 2鉄
(Fe203)21.5%で あ る。
検鏡
組織 では 、金属鉄 の 残留 は認め られ なか ったが 、分析 値 では23.8%が 検 出 され てお り、試料 間
の バ ラ ツ キであ ろ う。
炭素 (C)量 は 、3.02%で 銑鉄 成分 であ る。 二 酸 化桂 素
(Si02)は や
`高 目で2.14%、 酸 化
マ ンガ ン (MnO)0.04%、 硫 黄 (S)0.163%、 五 酸化燐 (P205)0.40%、 銅 (Cu)o.010%、 二
酸 化 チ タン (Ti02)0.49%、
バ ナ ジウム
(V)0.06%で あ る。
砂鉄 製錬素 材 を原料 と した銑鉄 で、鍛 冶炉 にお い て左下 げ法 に よ り脱炭後 、製 品化 す る錬 鉄
素材 とな るの であ ろ う。
′
卜 結
鴻 ノ巣遺跡 25号住 居 址 出土鉄 滓 は 、 精錬 鍛 冶滓 (大 鍛冶滓 )に 分類 され るが 、 特 異 な成 分
系 であ った。 鉱 物組 成 は Wustite+Fayaliteで 、 ガ ラス質 を 多 く含有 して い るが 、 通常 の 組
織 であ る。 しか し、化学 組織 は造滓 成分 が 高 く59.39%あ り、Ti02 8.06%、
V O.22%と
、こ
れ も高 目で他 に類例 をみ な い構 成成分 であ った。
不 明遺構 出土 の 小鉄 塊 は 、 ねず み銑 で炭素 含有 量 は3.02%で あ った。
精錬鍛 冶津 とねず み銑 小塊 の 成分差 を示 せ ば 下表 の 如 くな る。
成分
試 料
25号 住居址
精錬鍛治滓
不 明遺 構
ねずみ銑
9。
日秀西遺 跡
T.Fe
71 6
M.Fe
23.8
C
3.02
MnO
S
P205
0.41
0.041
0.20
0.04
0 163
0.40
Cr
Ti02
V
0.003
0.04
8.06
0.22
0.010
0.02
0.49
0 06
Cu
遺跡 は 、我孫子 市 日秀 西 に所 在す る。古墳 時代 後期 (鬼 高期 )│こ 属す る住
注41)
居址 よ り出土 した鉄 滓 の 調査 を行 な った。
45)日 秀西遣跡031C住 居址 出土鍛錬鍛冶椀形澪 (図 版22-46)
外観
:
外皮 は灰茶 褐 色 を呈 し、や ヽ粗 豚 さを もつ 椀 形鍛 冶滓 の 約 1/6の 破 片であ る。裏 面
は灰褐 色 で小 気 泡 を有 し、砂粒子 を噛 ん で い る。破 面 は コー クス状 の黒 色 多孔 質 であ る。 大 き
-19()一
千葉県下遺跡出土の製鉄関係遺物 の分析調査
さは44× 58× 21mmで 、重 量 は20.4gで あ った。
顕微 鏡 組織
:
図版 22-45に 示 す。鉱物組 成 は 、 巨大 白色粒状 の ヴ ス タイ ト (Wust■ e:FeO)
と、そ の 間隙 にみ られ る フ ァイヤ ラ イ ト (Fayahte:2 FeO・ Si02)か ら構 成 され て い る。
:
化学組 成
全鉄 分 (Tot」
が0.19%、 酸化 第 1鉄
Fe)は 61.6%と 非常 に高 い 含有量 であ る。 金属鉄 (MetJhC Fe)
(FeO)が 55.5%、 酸 化 第 2鉄 が26.0%で あ った。造滓 成分 (Si02+A12
03+CaO+MgO)は 12.7%と 逆 に低 目で あ る。 二 酸化 チ タ ン (Ti02)2.24%、
0.06%で 、鍛錬鍛 冶滓
バ ナ ジウム (V)
(小 鍛冶滓 )の 成 分 で あ る。
随伴微 量 元素 は 、酸化 マ ン ガ ン (MnO)0.12%、
クロム (Cr)0.01%、
硫 黄 (S)0.034%、
五 酸化燐 (P205)0.27%と 全般 に低 目で 、銅 (Cu)は 0.011%と 高 目で あ った。
46)日 秀西遺跡029-E住 居址出土含鉄鉱滓 (図 版22-45)
:
外観
茶褐色 で角 が とれ、鉄塊特有の割れ 日の入った小 塊である。破面は赤褐色で気泡が
ない個所が大部分で、局部的に黒色 コー クス状 多孔質部 分が混在す る。50× 41× 30mmで 、重量
は124.7gで あった。
顕微鏡組織
:
図版22-46に 示す。組織写真 として示 したのは 、金属鉄 (Metamc Fe)を ナ
イタル腐食 (etching)し た ところである。 白い部分は フェ ライ ト (Fernte)、 黒 または層状は
パー ライ ト (PeaJ■ e)で ある。 このパー ライ トの 占め る面積 は、炭素含有量 の増加に ともなっ
て増 して くる。焼ならし状態で 0.4%前 後で約半分、0.77%で 全部 パー ライ トとなる。写真に
示すパー ライ ト量であれば、0.15%前 後であろ う。
なお、別視野には巨大 マ グネタイ ト (Magne● te:Fe304)が 晶出 して い るが、 スペ ー スの関
係で割愛 した。製錬炉で生成 された含鉄鉱滓で、選別用素材 と考 えられる。
化学組成
:
全鉄分 (TotJ Fe)は 45.0%で あ り、 この うち、金属鉄 (Mct」 hC Fe)が 4.69%
残留 し、還元過程 の酸化第 1鉄
(FeO)が 34.3%、
金属鉄 の風化 した酸化第 2鉄 が 19.5%で あ
った。
鉄 中の炭素
(C)量 は 0.10%で 、 亜 共 析 鋼 で あ る 。 二 酸 化 珪 素 (Si02)は
日で 11.3%、 酸 化 マ ン ガ ン
(Cu)0.009%、
(MnO)0.36%、
、鉱 滓 共 存 な の で 高
硫 黄 (S)0.102%、 五 酸 化 燐 (P205)0.21%、
クロム (Cr)0.04%で ある。 二酸化チ タン (T102)13.4%、
銅
バ ナ ジウム (V)
0.39%。 これ らの成分か らみて砂鉄 を原料 とす るが、金属鉄 と鉱滓 のマ グネタイ ト組織 を合せ
て も、二酸化チ タンは高 目傾向 を示 して い る。
小
結
日秀 西遺跡 031C竪 穴住居址 出土 の鉄 滓 は 、鉱 物 組成 と化学組 成 か ら鍛錬 鍛 冶椀 形滓 (小 鍛
冶滓 )に 分類 で きた。鉱物 組 成 は 、 巨大 Wustite tt Fayaliteで 典 形的 晶癖 を示 した 。化学 組織
は 、全鉄 分 が61.6%と 最 高 に 高 く、Ti02 が 2.24%と 鍛錬 鍛 冶滓 としては 、 多い 目を示 した。
-191-
Ⅳ 特
論
この種 の鉄 滓 で
T102が 1%を 超 え るのは 少 な い。
同 じ く029-E住 居址 出土 の 含鉄 鉱滓 は 、精錬鍛 冶 原料 とな る選 別鉱滓 と考 え られ る。全 鉄 分
が45.0%金 属鉄 4.69%が 残留 し、炭素 量 は 0.1%の 亜共析鋼 で あ った。Ti02 13.4%、
VO.39
%で あ った。
10.村 上 込 の 内遺 跡
遺跡 は 八 千代 市村上 字 込 の 内に所 在す る。歴 史時代 の 国分期 (9世 紀
注42)
に 当 る住居址 よ り出土 した鉄 滓 と鉄 塊 の調査 を行 な った 。
)
47)村 上込の内遣跡 003住 居址 出土鍛鰊鍛冶椀形津 (図 版22-47)
外観
:
表皮 は青 灰 色 に鉄 錆 を混 じ、木炭痕 に よる凹 凸 を もつ が 、全体 的 に 平 坦 な椀 形鍛 冶
滓 であ る。裏 面 は表 皮 と同色 で 、滴下状 凹 凸 が 木炭 に よ り圧縮 され て角 ば った形状 に な って い
る。気 泡 が 散 在す る。破 面は 、 コー クス状 で 、黒 色 に鉄 錆 を混 じ、 多孔質 で あ るが 比重 は大 き
い。 サ イ ズは 、半 欠で あ るが 56× 53× 34mmで 、重量 は 141.2gで あ った。
顕微鏡 組織
:
図版 22-47に 示 す。 鉱 物組 成 は 、 大 きな 白色粒 状 の ヴ ス タイ ト (Wustte:
FeO)と 、灰色 盤状 結 晶 の フ ァイヤ ラ イ ト (Fayalite:2 FeO o Si02)か ら構 成 され て い る。
化学 組 成
:
表 9(そ の 2)に 示 す。全鉄 分
talllc Fe)が 0.25%、
造津 成分
ウム
酸化 第 1鉄
(TotJ Fe)は 56.1%、
(FeO)が 57.6%、
酸 化 第 2鉄
そ の うち、金属鉄 (Me
(Fe203)が 15.1%で あ る。
(S102+AL03+CaO+MgO)が 22.72%で あ り、二 酸 化 チ タ ン (Ti02)0.36%、
(V)0.01%か
(MnO)005%、
バナ ジ
ら鍛錬鍛 冶滓 (小 鍛冶滓 )に 分類 で きる。 随伴微 量 元素 は 、 酸化 マ ンガ ン
クロム (Cr)0.01%、 硫 黄 (S)0.048%、 五 酸 化燐 (P205)0.084%と 、 お し
なべ て低 目であ り、銅 (Cu)は 鉄 分 が 高 いの で 、随行 して 多 く0.012%あ った。
鉄 製 品製造過程 におけ る最 終排 出物 の 滓 であ る。
40)村 上込の内遺跡 134住 居址 出土鉄塊
外観
:
(自 鋳鉄 )(図 版22-48)
茶褐 色 を呈 し、鉄 錆状 の 凹 凸 と、割 れ 目を有す る鉄 塊 で あ る。新 しい破 面 は 、銀 白
色 を示 し、 自鋳 鉄 であ る こ とが判 る。 大 きさは 、69× 57× 50mmで 重 量 は343.4gあ った。
顕微鏡 組織
:
図版 22-48に 示 す。 ナ イ タル 腐 食 (etchlng)で 、 白 い組織 の部分 が セ メン タ
イ ト (Cementite:Fe3C)で あ り、黒 い部分 は オー ステナ イ ト (Austenite)よ り変化 した パ ー ラ
イ ト (Pearhte)で あ る。 白い セ メン タ イ ト中に黒 色点 が み え るの は 、 セ メン タ イ トとオー ステ
ナ イ トの 共 晶で あ るレデ プ ラ イ ト (Ledebunte)で ぁ る。この鉄 塊 は 、亜 共 晶組 成 の 自鋳鉄 であ
る。 この種 の鉄 塊 は 、冷却速度 が 左程 速 くな くとも、黒鉛 を析 出せ ず に 、 セ メンタ イ トや パ ー
ライ トが 存在す るの で あ る。
化学組 成
:
表 9(そ の 2)に 示す 。 全鉄 分
(Tota Fe)が 88.8%で 、 この うち、 金属鉄
(Metallc Fe)が 75.1%、 酸化 第 1鉄 (FeO)が 5.07%、 酸化 第 2鉄 (Fe203)13.9%で あ る。
-192-
千葉県下遺跡出土の製鉄関係遺物の分析調査
炭素
(C)含 有量 は 、2.72%で 、亜共 晶組 成鋼 に分 lrtで きる。 二 酸化珪 素 は 、0.45%、
ンガ ン
(MnO)001%、
硫 黄 (S)0046%、
化 チ タ ン (Ti02)017%、 バ ナ ジウム
五 酸 化燐 (P205)030%、
(V)0.04%と
酸 化マ
31pl(Cu)0012%、 二 酸
純 度が 高 く、砂鉄 を製錬 した生 成物 とい
え る。
小
〈1〉
結
村 l_込 の 内跡 出土鉄 滓 は 、 鍛 錬鍛 冶滓 (ノ 鍛冶滓 )で あ ったっ鉱物 組 成 はWustiteが 鍛 冶 :宰
1ヽ
特 有 の 摩1癖 を示 す。化学組 成 は 、全鉄分 が 561%と 高 く、造滓 成分 は 、
22.72%と 低 目であ る。
また、Ti02が 036%で
〈2〉
1%を 割 り、Vが 001%と
小数 2桁 目の数 字 で あ った。
鉄 塊 は炭 素 量 が 272%の 白鋳鉄 であ る。 含有微 量 元素 も全般 に低 日で砂鉄 を原料 とす る。
該 品 も鍛 冶炉 にお い て左下 げ法 を行 な い 、脱炭 して成 品化 す る素材 と推 定 され る。
成 分
試料
093-0294
鍛錬鍛治滓
134-0006
白鋳鉄
T.Fe
M.Fe
88.8
11.佐 倉 天辺 内 山遺 跡
MnO
C
2 72
S
P202
Cr
T102
V
001
0.36
0.01
0012 0 01
0 17
0 04
Cu
0 05
0.048 0.084 0.012
0.01
0 046
0.30
遺跡 は 、佐 倉市天辺字 内 山 162-3他 に所在 す る。推定年 代 は 、真
lL43)
間 ∼ 国分期 が 考 え られ る。 6号 住 居址 出土 の鉄 滓 を調査 した。
49)佐 倉天辺 出土鍛鰊鍛冶椀形澪 (図 版23‐ 49)
外観
:
外皮 は灰褐 色 を呈 し、サザ 波 の 凹 凸 を有 す る椀 形鍛 冶滓 の 1/4程 度 の破 片 であ る。
裏 面 も灰褐 色 で気 泡が 多 く、本炭痕 を有す る。 ただ し裏 面 か ら表 へ か け ての 周縁部 には気 泡 は
発生 して い な い。 破 面 は コー クス状 で 、黒 色 多孔 質 で あ る。大 きさは64× 54× 22mmで 、重 量 は
78.6gで あ った 。
顕 微鏡 組織
:
図版 23-49に 示 す。 鉱物 組 成 は 、 自色粒 状 で樹枝状 に 晶 出 した ヴ ス タ イ ト
(wusite:FeO)と 、灰 色長柱状 の フ ァイヤ ライ ト (Fayal■ e:2 FeO o Si02)、 それ に金 属鉄 の
風化 した ゲー サ イ ト (Goethite:Fe203・
化学組 成
:
H20)か ら構 成 され て い る。
表 9(そ の 2)に 示 す。 全鉄 分 (Tota Fe)が 53.8%、 そ の うち、金属鉄 (Me
tamc Fe)o.20%、
酸化 第 1鉄 (FeO)37.8%、
金属鉄 の 風化 した酸 化 第 2鉄 (Fe203)が 34
.6%で あ る。
造滓 成分
(Si02+A1203+CaO+MgO)は 20.83%、 二 酸 化 チ タン (T102)0.27%、 バ ナ ジウム
(V)0.01%と 低 目であ り、鍛 錬鍛 冶滓
ガ ン (MnO)0.06%、
(小 鍛冶滓 )に 分類 され る。 随伴微 量 元素 は 、酸 化 マ ン
クロム (Cr)0.01%、 硫 黄 (S)0.078%、 五酸 化燐
目傾 向 に あ り、鋼 (Cu)が 0.015%と 高 日で あ る。
-193-
(P205)0.17%と 低
Ⅳ 特
1ヽ
論
結
当鉄 滓 は 、鉄 成 品鍛 冶加工 時 に排 出 され た滓 で 、製錬 滓や精 錬鍛 冶滓 とは 、T102や
Vが
低 目で二次 滓 で あ る こ とが判 る。
12。
江原 台遺 跡
遺跡 は 、佐 倉市 自井 田字 江 原台 505番 地 他 に所 在す る。 歴 史時代 に比 定 さ
注
れ る住居址 よ り出土 した鉄 滓 の 調査 を行 な“った 。
)
50)江 原台 151住 居址出土鍛錬鍛冶椀形澪 (図 版23-50)
外観
:
茶褐 色 を呈 す る表 皮 で 、肌は木炭痕 を有 し、や ヽ粗 琢 さを もつ 椀 形鍛 冶滓 であ る。
中央部 に黒褐 色 と、 ひび割 れ を示す部分 が あ り、鉄 分 残留 の 多い所 であ る。裏 面 は滴下状 寸前
の 凹 凸 と木炭痕 を残 し、茶褐 色 を有 して い る。破 面 は コー クス状 の 黒色 多孔 質部 分 と、黒褐 色気
泡部 分 に わかれ る。後者 は磁性 を帯 び 、鉄 分 が 残 留 して い る。大 きさは64× 45× 33mmで 、 133.
lgで あ った。
顕 微鏡 組織
:
図版 23-50に 示す 。鉱物 組成 は 、 多量 に晶 出 した 自色粒 状 の ヴ ス タイ (W is
tite:FeO)と 、 少量 の フ ァイヤ ラ イ ト (Fayahte:2 FeO o Si02)、 それ に ガ ラス質 と金属鉄 の
風化 した ゲーサ イ ト (Goethie:Fe203・
化学 組 成
:
H20)か ら構 成 され て い る。
全鉄 分 (TotJ Fe)は 59.9%と 高 目であ り、 この うち金属鉄 (Met」 IC
0.44%、 酸 化 第 1鉄 (FeO)32.6%、
Fe)が
金属鉄 の 風化 した酸 化 第 2鉄 (Fe203)が 48.7%で あ る。
造 滓 成分 (Si02+Aし 03+CaOttMgO)は 低 く13.24%、 二 酸 化 チ タ ン (T102)0.28%、 バ ナ ジ
ウム (V)0.02%、 他 の 随 伴微 量 元素 は 、酸 化 マ ンガ ン (MnO)0.04%、
ク ロム (Cr)0.01%、
硫 黄 (S)0.061%、 五 酸 化燐 (P205)0.15%ら は低 目で 、鍛 錬鍛 冶滓 (小 鍛冶滓 )の 成分構 成
であ る。 なお 、銅 は0.010%と 、や ゝ高 日であ った。
小
結
江 原 台住居址 出土鉄 滓 は 、Wustitの 晶出 、 T102が
1%以 下 の0.26%、 VO.02%か ら鍛 錬
鍛 冶滓 (小 鍛冶津 )に 分類 され る。
51)木 の根遺跡成 田層露頭天然砂鉄 (図 版23-51)
外観 : 0.5 mm以 下 の 石英 質砂鉄 を 多 く含み黒 色 を呈す る。磁性 は弱 い。砂 鉄 採取位 置 は 、
成 田 層上 面 よ り約 70∼ 80cm下 。
顕微鏡 組織
: 23-51に 示 す 。写真 に示す組織 は 、マ グネ タイ ト (Magneute)粒 子 であ る
c
*編 集者注 …… 成 田市本の根 に所在す る、新東京 国際空港 内No 6遺 跡 を 2分 す る形で設け られ
た 、工事 用道路 の 露頭 に認め られ る天然砂鉄 を試料 とした。 肉眼観察 では 、試料No24の 砂鉄
ときわめ て近 似 してお り、両者 の関係 を調べ るため分 析 を行 ってみ た。
-194-
千葉県下遺跡出土の製鉄関係遺物 の分析調査
写真視 野 外には 、格子 状 組織 を もつ 粒子 も散 在す る。 各粒 子 ともに文雑物 をか な り含 ん で い る。
化学 組成
:
表
9(そ の 2)に 示す 。 磁選 な しの採 取 品 なの で 、砂粒 をか な り含 有 し、 そ の
影響 が分 析値 に もで て い る。 全鉄 分 (TotJ Fe)が 22.8%、
酸化 第 1鉄
が0.04%、
(FeO)が 6.32%、
酸 化 第 2鉄
そ の うち 、 金属鉄 (MetJhc Fe)
(Fe203)が 25.5%で あ る。 二 酸化佳
素 (Si02)は 高 く43.2%、 酸化 アル ミニ ウム (A1203)6.34%、
酸 化 マ グネ シウム
酸化 カル シウム (CaO)2.71%、
(MgO)9.95%で あ る。 二 酸化 チ タ ン (Ti02)は 低 目で3.68%、
バ ナ ジウム
(V)0.09%で あ った 。
1ヽ
結
該 品 の この ままの 全鉄 分 では 、鉄 分不 足 で製錬 効 率 が 非常 に悪 くて生産 に な らな い。例 えば
比重選 鉱法 の よ うなか た ちで品位 を上 げて装 入 した もの と考 え られ る。
13.公 津原遺 跡 遺跡 は下 記 に示す 所 に所 在す る。組文 時代 と歴 史時代 の遺 構 が あ った。
1)Loc.o5は 成 田市 台方 、橋 賀台 に所在 す る。推 定年代 は
2)Loc.14は 成 田市 字 中台 及び 同字南 囲護 台 で古墳 時代
3)Loc.16は 成 田市 字郷 部・堀 尾 で 奈良 ∼ 平安
4)Loc。
世 紀 頃 であ る。
(五 領期 ∼鬼高期 )に 比定 され る。
(真 間∼国分期 )で あ る。
20は 成 田市 山 口字船塚 台 及び 同字石塚 、
同字 池之 台 の三 地籍 にわ た る。奈 良 ∼平安 時
代 で あ る。 この四 遺構 よ り出土 した鍛 冶滓 と鉄 塊 の調査 を行 な った。
52)公 津原 L∝ .o5oo3土 士廣出土鍛錬鍛冶椀形滓 (図 版23-52)
外観
:
表 皮 は灰褐 色 を呈 し、一 部 平坦 面 と木炭痕 を有す る凹 凸が 残留 す る。裏 面 は茶褐 色
を示 し、滴下状 凹 凸 と、 これ に 高熱 で青 灰 色 に 変 色 した炉材粘 土 を付 着す る。 鉄錆 と気 泡 も一
部 に 残 して い た 。大 きさは55× 40× 29mmで 、重量 は87.5gで あ った。
顕微鏡 組織
:
図版 23-52に 示す 。鉱物 組成 は 、 自色 粒 状 で樹 枝 状 に 晶 出 した ヴ ス タイ ト
(wusate:FeO)と 、灰 色長柱状 で大 き く成長 した フ ァ イヤ ライ ト (Fay」 ■e:2 FeO・
Si02)、
灰 色 多角 形 のヘ ー シナ イ ト (HerCyn■e:FeO o A1203)、 地 の 暗黒 色 ガ ラ ス質 らが存在す る。
化学 組 成
:
表
9(そ の 2)に 示す 。全 鉄分
金属鉄 (MetJIc Fe)が 0.25%、 酸化 第 1鉄
(Total Fe)は
48。
9%と 高 目で あ り、この うち、
(FeO)が 多 く49.2%、 酸化 第 2鉄 (Fe203)が 14
.8%で あ る。
造滓 成分
ム
(Si02+AL03+CaO+MgO)は
31.07%、 二酸 化 チ タ ン
(T102)0.48%、 バ ナ ジウ
(V)0.02%と 後者 2成 分 は低 目で あ る。 また、 他 の 随伴 微 量 元素 も低 日であ り、 酸化 マ ン
ガ ン (MnO)0.09%、
クロム (Cr)0.01%、 硫 黄 (S)0.075%、 五酸化燐 (P205)0.18%、 銅
(Cu)0.009%で あ った 。
二 酸化 チ タ ンが
1%以 下 、パ ナ ジウムが小数 1桁 目に数 字 が な く、低 目であ るこ とか ら製錬
-195-
Ⅳ 特
論
滓や精 錬鍛 冶滓 (大 鍛冶滓 )で は な く、鍛錬鍛 冶滓 (小 鍛冶滓 )に 分 類 され る。 なお 、 AL03/
CaO=8で あ る ところか ら、ヘ ー シナ イ トの 存在 が 予 測 され るが 、顕微鏡 組織 で も確 認 で きた 。
53)公 津原 L∝ .05003土 tr中 上部出土含鉄鉱澪 (図 版24-53)
外観
:
外皮 は黄褐 色部 分 と、鉄 錆 の茶褐 色部分 が あ り、後者 の一 部 に光 沢部 分 が 認め られ
る。 破 面 の 鉱滓部 分 は 、 コー クス状 多孔質 であ り、含鉄部 分 は黒褐 色 で磁性 を有 す る。57× 41
×31mmの 大 きさで 、重 量 は40.4gで あ った。
顕微鏡 組織
:
図版 24-53に 示す 。組織 を示 した個 所 は 、残留 金属 をナ イ タル 腐 食 (etching)
して い る。全体 の 白 い地 は 、 フェ ライ ト (Fernte)で あ り、黒 く細 い線 は フ ェ ライ ト粒 界 を示
注 48)
す。結 晶粒 の粒 度番号 は 5∼ 6番 であ る。 この組 織 か ら炭素
(C)量 を推 定 す る と、0.03%前 後
であ る。
なお 、別視 野 には 、 マ グネ タイ ト (Magnet■ e:Fe304)の 巨大粒 が認め られ る。恐 ら く製錬 炉
で生成 され た鉄素 材 として搬 入 され た もの で 、 まだ精錬鍛 冶炉 に 入れ る前 の 塊 と考 え られ る。
化学 組 成 :全 鉄 分 (Tota Fe)は 48.4%で あ り、金属 鉄 (MetalhC Fe)の 残留 は12.0%、 酸
化 第 1鉄
(FeO)が 32.2%、 酸化 第 2鉄 (Fe203)が 16.2%で あ った。造滓 成分 (Si02+A1203+
CaO+MgO)は 少 な く13.07%、
バ ナ ジウム
(V)0.46%(再
二 酸化 チ タ ンは偏析 か らか 高 目で 18.4%(再 チェック :14.81%)
チェック :0.40%)で あ った。
他 の 随 伴微 量 元素 は 、酸化 マ ンガ ン (MnO)0.49%、
%、 五 酸化燐
クロム (Cr)017%、 硫 黄
(S)0.044
(P205)0.12%、 銅 (Cu)o.007%で あ る。
鍛 冶以 前 の 塊 で あ るこ とが証 明 され る。
化学 組 成 か ら も該 品 が 製錬 炉か ら出て きた生成物 で 、
54)公 津原 L∝ 。14002住 居址出土鍛錬鍛冶椀形滓 (図 版24-54)
外観
:
表 皮 は青 灰褐 色 を呈 し、や ヽなめ らか な凹 凸 を もつ 椀 形滓 で あ る。裏 面 は鍛 冶炉 の
炉底 曲面 を示す アー ル を示 し、凹 凸 な く青 灰 色 に 変 色 した炉材粘 土 と砂粒 を付 着 し、 ところに
よ って鉄 錆 を滲 ませ て い る。 破 片 で あ るが大 きさは90× 64× 35mmで 、重量 は 262gで あ った。
顕微鏡 組織
:
図版 24-54に 示 す。鉱物 組成 は 、 自色粒状 の ヴ ス タイ ト (Wustite:FeO)、 灰
色盤状結 晶 及び長柱状 の フ ァイヤ ライ ト (Fayahte:2 FeO o Si02)、 灰 色 多角形状 のヘ ー シナ イ
ト (Hercynite:FeO・ AL03)、 地 の 暗黒色 ガ ラス質 か ら構 成 され て い る。
化学 組 成
:
表 9(そ の 2)に 示 す 。 全鉄 分 (Tot」
tJIc Fe)が 0.22%、
酸化 第 1鉄
(FeO)が 44.8%、
Fe)は 48.1%で 、この うち、金属鉄 (Me
酸化 第 2鉄 (Fe203)が 18.6%、
造滓 成
分 (Si02+Aし 03+CaO+MgO)が 32.94%で ある。 造滓成分のなかで A1203/CaO=9,94と
な り、ヘ ー シナ イ トの 存在 が 予 測 され る。
二 酸 化 チ タ ン (T102)は 026%、 バ ナ ジウム
マ ン ガ ン (MnO)0.06%、
ク ロム (Cr)0.01%、
(V)0.01%で
あ り、他 の 随伴微 量 元素 は酸化
硫 黄 (S)0.007%、 五 酸化燐
-196-
(P205)0.057
千葉県下遺跡出土の製鉄関係遺物の分析調査
%、 銅
(Cu)o.009%で あ った。 二 酸 化 チ タ ン以 下 の 各成分 が低 目であ る ところか ら、鍛 錬鍛
冶滓 に分類 され る。
粉 末 X線 回折
:
図33と 表 10に 示 丸
Si04→ ASTMヵ ― ドNo20-1139、
当鉄 滓 の鉱 物組 成 の 主 な る もの は 、Fayalite(Fe2
同 じく2FeO o Si02→
ASTMヵ ― ドNo 9-307)で あ り、他 にQuar―
tZ(Si02→ ASTMヵ ― ドNo 5-490)、 Wustite(FeO→ ASTMヵ ― ドNo 6-615)が 少量 と、Hema―
tite(Fe203→
ASTMヵ ― ドNo13-534)と Akermanite(2CaO・ MgO・
2Si02→ ASTMヵ ― ドNo 4-
681)ら が 微 量 同定 され た 。
55)公 津原 L∝ 。14019住 居址出土二段生成鍛錬鍛冶椀形滓
外観
:
(下 段部分)(図 版24-55)
表 皮 は青 灰褐 色 を呈 し、粗 豚 な肌 で木炭痕 を有 す る椀 形滓 であ る。裏 面 は表 皮 と同
色 で鉄錆 を若 千発生 し、凹 凸激 し く木炭痕 も多い 。破 面 は コー クス状 の黒 色 多孔 質 で木炭 の 噛
み 込 みが 認め られ る。大 きさは 、 2段 重 ね で 、83× 80× 69mmあ り、重量 は 442.6gで あ った。
顕微鏡 組織
03・
:
図版 24-55に 示 す 。 写真視 野 は金 属鉄 の 風化 した ゲーサ イ ト (Goeth■ e:Fe2
H20)と フ アイヤ ライ ト (Fayalite:2 FeO・ Si02)、 ガ ラス質 で 占め られ て い るが 、別視 野
では 自色粒状 の ヴ ス タイ ト (Wus● te:FeO)と 灰 色木ず り状 の フ ァイヤ ラ イ ト、及びヘ ー シナ
イ ト (Hercynite:FeO・ A1203)と 地 の 暗黒 色 の ガ ラス質か ら構 成 され て い る。
化 学組 成
:
全鉄 分 (Total Fe)は 55.8%と 鍛 冶滓特 有 の 高 日であ り、 この うち、金属鉄 (M
etJhc Fe)が o.29%、 酸化 第 1鉄 (FeO)が 42.1%、 金属鉄 の 風化 した酸 化 第 2鉄 (Fe203)が
32.5%で あ る。
造 滓成分 (Si02+Aし 03+CaO+MgO)は 低 目の 20.01%で あ り、 この うち
A1203/CaOの
比
が 4.85で ヘ ー シナ イ ト (HerCynie:FeO o Aし 03)が 存 在す る。 二 酸化 チ タ ン (T102)は 0.52%、
バ ナ ジウム(V)002%と 両者低 目で あ る。他 の 随伴微 量 元素 も全般 的 に低 目で あ り、 酸化 マ ン
ガ ン (MnO)0.06%、
ク ロム (Cr)0.01%、 硫 黄 (S)0.054%、 五 酸化燐 (P205)0.090%、
銅
(Cu)0.007%で あ った。
56)公 津原 L∝ 。14019住 居址出土二段生成鍛錬鍛冶椀形滓
外観
:
(上 段部分)(図 版24-56)
表 皮 は淡茶褐 色 を呈 し、肌 は凹 凸 を有 す るが 、下段 よ り平坦 さを もつ 椀 形滓 で あ る。
裏 面 は滴下状 凹 凸に木炭痕 を残 す。破 面 は 、 コー クス状 の 黒色 多孔 質 で 、下段 外観 と大差 な い。
顕微鏡 組織
:
図版 24-56に 示 す 。鉱物 組成 は 自色粒 樹枝 状 の ヴ ス タ イ ト (Wusute:FeO)
と灰 色盤状 結 晶 の フ ァ イヤ ラ イ ト (FayJ■ e:2 FeO・ Si02)、 灰 色 多角 形状 のヘ ー シナ イ ト
(HerCynite:FeO・ A1203)、 金属鉄 の 風化 した ゲー サ イ ト (Goethlte:Fe203・ H20)、 地 の 暗黒
色 の ガラス質 か ら構 成 され て い る。
化学 組 成
:
表 9(そ の 2)に 示す 。 全鉄 分 (TOt」
tJhc Fe)が 0.13%、
酸 化 第 1鉄 (FeO)31.0%、
-197-
Fe)51.1%で
金属 鉄 (Me
、この なか に は 、
酸化 第 2鉄 (Fe203)が 38.4%、
造滓 成分
Ⅳ 特
論
(Si02+AL03+CaO+MgO)が 23.9%で あ る。A1203/CaO■ 6.14か
二 酸化 チ タ ン (T102)0.42%、
バ ナ ジウム
らヘ ー シナ イ トが 存 在す る。
(V)0.02%、 他 の 随伴微 量 元素 は酸化 マ ンガ ン
(MnO)0.06%、 ク ロム (Cr)0.01%、 硫 黄 (S)が 高 目のO.227%、 五 酸化燐 (P205)0.075
%、 銅
(Cu)o.008%で あ る。
試料55の 下段 椀 形滓 と、組織 的 に も成分 的 に も差 異 が ほ とん どなか った (但 し硫黄含有量 のみ
差あ り)。
同一 素材 の鍛錬 鍛 冶 を行 な った際 の排 出物 であ り、下段排 出 の椀 形滓 を除 くこ とな
く、次 の 作業 に 入 った もの と考 え られ る。
57)公 津原
外観
:
Loc。
16043住 居址 出土鍛錬 鍛 冶椀 形滓 (図 版25-57)
外皮 は茶褐 色 を呈 し、比較 的平 かつ な肌 を もつ 椀 形滓 であ る。 ただ し椀 形滓 の 周縁
を欠失 した 中核 部 で あ る。裏 面 は表 皮 と同色 で凹 凸 が あ り、本炭痕 を有す る。 破 面 は コー クス
状 の黒 色 多孔 質 で あ る。 大 きさは71× 54× 24mmで 59.8gで あ った。
顕微鏡 組織
:
図版 25-57に 示す 。鉱物 組 成 は 多量 の 自色粒 状 の ヴ ス タイ ト
(Wusute: Fe
O)と 、灰 色長柱 状 の フ ァイヤ ライ ト (Fayalie:2 FeO o Si02)、 地 の 暗黒色 の ガ ラス質 か ら 構
成 され て い る。
化学 組 成
:
表
9(そ の 2)に 示 す。全鉄 分
金属鉄 (MetJIc Fe)0.19%、
(Tot」
Fe)が 56.5%と
酸化 第 1鉄 (FeO)53.3%、
高 日で あ り、そ の う ち、
酸 化 第 2鉄
(Fe203)21.2%で
あ る。
造滓 成分 (Si02+Aし 03+CaO tt MgO)は 20.31%と 低 目であ り、二 酸化 チ タ ン (Ti02)0.52%
バ ナ ジウム
(V)0.02%と 少 な い。他 の 随伴微 量 元素 は酸 化 マ ン ガ ン (MnO)0.07%、 クロム
(Cr)0.01%、 硫 黄 (S)0.105%、 五 酸化燐 (P205)0.14%、 銅
(Cu)o.010%で
あ った 。硫
黄 の 含有 量が高 日であ るのは 木炭樹種 もし くは木炭 組 成 のせ い であ ろ うか 。 この鉄 滓 も鍛錬鍛
冶椀 形滓 で あ る。
50)公 津原 L∝ .20 077鍛 冶址 出土鍛錬鍛冶椀形滓 (図 版25-58)
外観
:
表 皮 は灰 茶褐 色 で 、一 部 に凹 凸が あ るが 、 ほぼ平 な椀 形滓 であ る。端部 の一 部 を欠
失す る。裏 面 は鍛 冶炉底 の 曲面 を示 し、滴下状 の 凹 凸で木炭 噛 み 込 み と、木炭痕 を有す る。 色
は黒褐 色 を呈 し、鉄 錆 を発 して い る。破 面 は 、 コー クス状 で黒 色 多7L質 であ った。 大 きさは76
×69× 30mmで 重 量 は 202.5gで あ る。
顕微鏡 組織
:
図版 25-58に 示す 。鉱物組 成 は 自色粒状 の 多量 の ヴ ス タイ ト (Wusute:FeO
)と 、そ の 隙間 に灰 色盤状 の フ ァイヤ ラ イ ト (Faydite:2 FcO o Si02)、 それ に金 属鉄 の 風化
した ゲーサ イ ト (Goethie:Fe203・
化学組 成
:
H20)が 存在 す る。
表 9(そ の 2)に 示す 。全鉄 分
鉄 (Metallic Fe)が o12%で あ り、 酸化 第 1鉄
(TotJ Fe)は 53.4%と 高 く、 その うち、金 属
(FeO)が46.1%、
-198-
酸化 第 2鉄 (Fe203)が 24
千葉県下遺跡出土の製鉄関係遺物 の分析調査
.9%で あ る。
造滓 成分
(Si02+A1203+CaO+MgO)は 23.59%、 二 酸 化 チ タン (T102)0.36%、 バ ナ ジウム
(V)0.02%、 他 の 随 伴微 量元素 は酸 化 マ ン ガ ン (MnO)0.07%、
(S)0.024%、 五 酸化燐 (P205)0.16%、 銅
クロム
(Cr)o01%、
硫黄
(Cu)o009%で あ った。
当鉄 滓 も鍛錬鍛 冶滓 (小 鍛冶津 )に 分類 で きる。
59)公 津原
:
外観
Loc。
20300掘 立柱建物跡 出土ねずみ銑鉄塊 (図 版25-59)
全体 が 茶褐 色 で卵 形 を呈 す る鉄 塊 であ る。 ひび割 れ部 と、小 さ くそば立 ちをみせ る
肌は鉄 酸化物 特 有の もの であ る。 金属鉄 の破 面 は 、金属光 沢 を もつ 灰 色 で 、ねず み銑 鉄 であ る
こ とが判 る。
顕 微鏡 組織 ,: 図版 25-59に 示 す。 金属組織 は左側 に 腐 食な し、右側 にナ イ タル 腐 食 (etch
ing)の 結 果 を示 す。 炭素 (C)の 大部分 が 片状 黒鉛 に な ってお り、ねず み 鋳鉄 (gray cast廿 on)
と呼 ばれ る鋳 鉄 で あ る。腐 食組織 で片状 黒鉛 の まわ りには 、1黒 色 の パ ー ライ ト (Peanie)、
自
い組織 の フ ェ ラ イ ト (Fernte)が 析 出 して い る。 当鉄 塊 は 、銑鉄 が冷却 過程 で徐冷 を受 け た こ
とを示 して い る。
化学 組 成
:
表
9(そ の 2)に 示 す。 全鉄 分
(Tot』
Fe)は 91.8%で 、この うち金属鉄 (Meta
mc Fe)が 89.1%と 非常 に 残 りが 良 い。 酸化 第 1鉄 (FeO)11.5%、 酸化 第 2鉄 (Fe203)2.60
%で あ る。 炭素 (C)含 有 量 は3.5%、
01%、
硫 黄 (S)0.046%、 五 酸 化燐 (P205)0.45%、
0.01%、 バ ナ ジウム (V)0.01%、
1ヽ
く1〉
二 酸化桂 素 (Si02)は 0.09%、
酸 化 マ ンガ ン
銅 (Cu)o.015%、
(MnO)0.
二 酸化 チ タ ン (T102)
クロム (Cr)0.004%と 純度 の 高 いねず み銑鉄 であ った。
結
公津 原遺跡 の Loc.5、 Loc.14、 Loc.16、 Loc.20の 各遺跡 か ら出土 した鉄 滓 は 、
鍛錬 鍛
冶滓 (小 鍛冶滓 )で あ る。 い ずれ も鉱物 組成 は 、Wusiteを 晶 出 し、化 学組 成 の
%以 下 で 、0.36∼ 0.52%、 Vが 0.01∼ 0.02%と
Ti02は
1
低 目で あ る。 又、 全鉄 分 は48.1-55.8%と
ヽとした工 房址 と考 え られ る。
し
高 目で 、造 滓成分 は20∼ 31%あ った。 小鍛 冶 を中′
〈2〉
鍛 錬鍛 冶滓 7個 中 4個 か ら Hercyniteが 検 出 され た。Hercyniteは A1203/CaOの 比 が
4以 上 の鉄 津 で認め られ て い る。 公津 原遺跡 で の 製錬 及び精錬鍛 冶素 材 の 成分 的特徴や 、鍛
冶作業 での熱 履 歴 の 反映 として注 目され る。
参考 までに Hercynite検 出鉄 津 の類例 を示せ ば下表 の如 くで あ る。
注53)
山滓
草形
へ
129み
千椀
公 津 原
椀 形 マ
宰
視喝蕩韓
高 岡廃 寺
鉄
'宰
門田南側台地
鉄
?宰
46, 61
80, 99
0, Loc14-→
G
9, Loc14
-199-
→
61
大牟田 3号 墳
鉄
'宰
Ⅳ 特
〈3〉
論
Loc.14出 土 の鍛 錬鍛 冶椀 形滓 は 2段 重 ね であ った。この類 例 としては千葉 市教育委 員会
調査 の荻生 道 遺跡 出土 品が あ る。
く4〉
Loc.5か ら出土 した含鉄 鉱 津 は 、Ti02が 18.4%、 VO.46%で 製錬 滓 成分 で あ る。含 鉄
中 の 金属鉄 は 12.0%で あ り、 この 金属組 成 は極 低 炭素鋼 (C:0.02%前 後 )で あ った 。該 品は
精 錬鍛 冶用 に搬 入 され た もの と考 え られ る。
く5〉
Loc.20出 土 の鉄 塊 は 、炭素 含有量が 3.50%の 銑鉄 であ り、金属組織 は冷却 速度 の 遅 い鋳
鉄 に現 われ る片状 黒 鉛 を析 出 したねずみ銑 で あ った。鍛錬鍛 冶 (小 鍛冶 )に おけ る原料 と考
え られ る。
く6〉
公津 原遺跡 出土 の 製 錬 滓 と鍛 錬 鍛 冶 滓 と鉄 塊 の 成分 間 の動 きを示せ ば 下 表 の如 くにな
る。
Loc 20
M.Fe
C
MnO
含鉄製錬滓 48 4
120
0 10
0 49
0.044
鍛錬鍛治滓 48.9
0.25
0 08
0 09
鍛錬鍛治滓 53 4
0.12
0.22
91.8
89 1
3.50
銑
鉄
14.阿 玉台北 遺 跡
C0
Loc 5
分T.Fe
Cr
Ti02
V
012 0 007
0.17
184
0 46
0 075
0 18
0.009
001 0 48
0 02
0 07
0.024
0 16
0.009
0.01
0 36
0 02
0.01
0.046
0 45
0.015 0.004
0.01
0.01
P205
Cu
遺跡 は香取郡 小 見 川町五 郷 内字立 山に所 在す る。 時期不 明 の土塘 中 よ り
注55)
出土 した鉄 塊 の調査 を行 な った。
60)阿 玉台北遺跡 004P3土 塘 出土自鋳鉄塊 (図 版25-60)
外観
:
全体 的 に は黄褐 色 で あ るが 、鉄錆 の茶褐 色部 分 が散 在す る。 表側 は 中窪 みが あ るが
平 であ る。 破 面 は銀 白色 の光 沢が あ り、 自鋳鉄 で あ るこ とが判 る。大 きさは66× 55× 29mmで 、
重 量 は241.6gと 重 た い。
顕微鏡 組織
:
図版 25-60に 示す 。組織 は金属鉄 をナ イ タル 腐 食 (etchlng)し た もの で 、亜
共 晶組 成 の 自鋳 鉄 であ る。 白い部分 はセ メン タ イ ト (Cemendte:Fe3C)、 黒 い部 分 は オー ステ
ナ イ ト (Austenie)よ り変化 したパ ー ライ ト (Pearhte)、 蜂 ノ巣状 の部 分 はセ メン タ イ トとオ
ー ステナ イ トの 共 晶 で レデ ブ ライ ト (Ledebunte)で ぁ る。
化学 組 成
:
表 9(そ の 2)に 示す 。 全鉄 分 (Tot』
Fe)は 84.6%で 、この うち金属鉄 (Meta
nc Fe)が71.8%, 酸化 第 1鉄 (FeO)が 8.26%、 酸化 第 2鉄 が 9.10%で あ る。 金属鉄 の 残留
状 態 は良好 で あ る。 炭素
ン
(MnO)001%、
硫黄
(C)含 有量 は3.25%、
二 酸 化桂 素 (Si02)が 2.61%、
酸化 マ ン が
(S)0129%、 五 酸 化燐 (P205)014%、 銅 (Cu)は 高 目で 0028%
であ る。 二 酸化 チ タ ン (Ti02)0.03%、
バ ナ ジウム
-200-
(V)001%以 下 、 クロム (Cr)0.001%で
千葉県下遺跡出土 の製鉄関係遺物の分析調査
あ った。
小
結
随伴微 量 元素 が低 く、純度 の 高 い 白鋳鉄 であ る。 鍛 冶炉 にお い て脱炭 し、鉄 器製造 の素 材 と
す るの であ ろ う。
市 。 ま とめ と 2・
1.UlvOsp:nd組
3の 問 題
花 前 製鉄 遺跡 は 、 9∼ 10世 紀代 の 竪 型 製錬 炉
成 式 か らみ た製 錬技 術
と鍛 冶炉 を、取 香製鉄 遺跡 は 8世 紀前半 代 、御
幸畑 製鉄 遺跡 は 8世 紀後 半代 で 、 この 両遺跡 か らは い ずれ も竪 型 製錬 炉 と箱 型 製錬 炉が検 出 さ
れ た。
これ らの 製錬 炉 か ら採取 され た鉱滓 は 、砂 鉄 を原料 として い て 、二 酸化 チ タ ン (Ti02)が 10
%以 上 と高 く (但
し花前遺跡 の一部 を除 く)、
鉱物 組 成 はUlヾ 6spinel、
nmenite、
Magnedteら
で 占め られ て い る。 この うち、UlvOspinelの 組 成式 は3FeO・ Fe203・ Ti02タ イプで あ る。
これ に対 して 、表 10に 示 した西 日本 の 近世 たた らを中心 に 出土す る鉱 滓 のUIVё spinelは 、2Fe
O・ T102の 組 成式 で示 され る タ イプ であ る。 房総 半 島型UlvOspinelの 3FeO・ Fe203・ T102
と、 西 日本 型Ulvё spine1 2FeO・ Ti02の 溶融 点 を図34に 示 す FeO― Ti02系 状 態図か ら類推 す
れば 、前者 は 1380℃ 前 後 、後者 は 1470℃ とな る。
この温 度差 を房総 半 島古代 製錬 炉 (8∼ 10世 紀代 )と 、西 日本 近世 たた ら (18∼ 19世 紀代 )と
の 製錬 技術 レベ ルの 格差 として とらえ るのか 、単 な る地域差 に よる原料砂 鉄 中 の 脈石 の影響 な
Fe― Ti-0
fttCi職
°
ApЮ J/
1″ ∝
言
」.Grieve
C①“〓∪
①一
一
︵
Fe0 5
20
い ︵b ﹄
〇一
f侶 3 こ ︶
0
40
357 42
60
526
80
100
Ti02
and J.White,J.Roy.Techo Coll.(Glasgow),
4,444(1939)。
図 34 FeO― Ti02系 状 態 図
-201-
Ⅳ 特
論
のか を追求 す るこ とも、今 後 の重要 な研 究課題 に な る もの と考 え る。
なん となれ ば 、鉱 滓 溶融温度 が鉱 物 生成 温度 を全 面的 に 律 しな い まで も、炉 況傾 向や 炉 内反
応 を押 え る フ ァ クター として検 討す べ き項 目 と考 え られ る し、 また 、西 日本 型Ulvё spinel:2Fe
O・ T102が 、岡 山県稼 山遺跡群 の 6世 紀 後半 か ら 7世 紀代 の 鉱 滓 の一 部 に 検 出 され てお り、製
鉄 原料 中 に含 有 され た不純物 の 脈石 の影響 も無視 す る訳 に いか な い状 況に あ る。
この 様 にUIVё spinelに 存在す る 2種 の 組 成式 も、古代 製鉄 研 究上 の 1つ の 問題 点 として提 示
してお く。
2.箱 型及 び 竪型製錬炉 の共 存理 由
取 香 及 び御 幸 畑 の 両遺跡 には 、箱型 及び竪 型 の 製錬 炉
が検 出 され た。 一 つ の 遺跡 にお い て 2
タ
イプ 製錬炉 が
存在 す る理 由 は何 であ ろ うか。 これ は生成 され る鉄素 材 の 炭素 含 有量 に 係 わ る問題 と考 え る。
鉄 器 に要 求 され る性 質 は 、用途 に応 じて種 々 あ るが 、最 終 的 には工具 、農具 、武 器 共 に鋭 利
性 、強靭性 、耐摩耗性 等 であ る。 これ らの性 能 を満 たす には 、鉄 ―炭素 合 金 であ る鋼 を製造 す
る こ とであ る。
鉄 器 製造 の鉄素 材 を得 る場 合 、次表 に示 す よ うに 、箱 型製錬 炉 は炉 の構 造上 、比較 的低 い 温
度 (1,000℃ 前後 )の 半 溶融状 態 で の還 元反応 であ るの で 、生 成 され る鉄 は極低 炭素鋼 であ り、
柔軟 で可鍛性 に 富 むが 、そ の ままであれば焼 入れ は し難 く、刃物 と して の鋭 利性 が乏 しい もの
に な る。 これ を改善 す るには 、木炭 と鉄素材 を同時加 熱 して鍛 打 す る滲 炭 とい う手 間 のかか る
熱処理 が必 要 とな る。
これ に対 して、竪 型製錬 炉 は炉 断面 に比べ て炉 高 の たか い もの で、炉 の構 造上 か らみ て還 元
箱 11製 錬 炉 一一 →
錬 鉄 (炭 素含有 量01%以 下
)
鍛 製 0
つ
げ で 滓 い
た 態 鉄 な
し 状 た 少
造 融 し は
製 溶 成 量
で 半 生 有
.
死 ヽ
に 含
還 く 間 素
温 低 晶 炭
低 度 結 て
接 温 鉄 い
直 の ヽ て
ら 時 ヽ
わ し
ヽ
か 錬 か 在
製
m
ヽ佛 晰
で
鉄 の 物
む も 在
一
昌 た ・介
に し 属
性 造 金
鉄
砂
は
鉄
錬
鉄素材
白鋳鉄
竪 型製錬 炉 →
(炭 素含有量 17%以 上
銑鉄
ね ずみ銑
ヽ 1 ′ /
い
と し
低
=皿 ま
て 乏
0 に
0
2
︲ 性
鍛
一
0
0 可
H て
は ノ
ヽ
度 脆
融 質
溶 性
/ ′
ヽ
i l
-202-
)
千葉県下遺跡出土の製鉄関係遺物の分析調査
帯 が長 い。最 上 部 が 予 熱層 とな り装 入原料 は加 熱 乾燥 され 、次 の還 元層 で砂鉄 は殆 ん ど還 元 さ
れ て金属鉄 とな る。 ここでは 、 まだ溶融 点 まで達 して い な いの で海綿状 を呈 し、炉体 の下 層 に
至 って 、木炭 と接 触 して炭素 を吸収 して溶融 点が 降下 し、加 炭 層 とな り、溶解 層 にお い て木炭
の 間 を溶下 す る。 そ の 間 には炭素 を飽 和 して炉床 に 集積 す る。 こ こで生 成 され た鉄 は 高炭素 含
有 量 とな り、冷却 速度 の 速 い時 は 自鋳鉄 とな り、徐 冷 され た もの はね ずみ銑 とな る。
この 高炭素鋼 の銑鉄 は 、そ の ままでは脆 くて鍛 造 出来 な いの で 、何 らか の 形 で鍛 造 可能 な鋼
とす る手法 が とられ た もの と考 え られ る。最 も古 くか ら行 なわれ た方法 は左下 げ法 であ ろ うが 、
他 の 方法 は なか ったの で あ ろ うか 。
『天工 開物』 に よる と、灌鋼 とい う製鋼 法 が あ る こ とを示 して い る。錬 鉄 と銑鉄 を組合せ た
製鋼 法 であ る。 この 製鋼 法 は 、低 炭素 含有 量 の錬 鉄 を鍛 打 して指 先 の 幅 ほ どの 簿 片 を作 り、長
さを二 寸半 ばか りとす る。 この鉄 片 を束ね て強 くしめ 、銑 鉄 (生 鉄 )を そ の 上 にお く。 これ を
竪 炉 に入れ て送 風す る。 火力 が まわ る と銑鉄 が まず 溶け て錬鉄 の 中 に しみ こみ 、両者 はす っぽ
りま ざ りあ う。 と り出 して打 ち鍛 え、 さ らに精 錬 して 、 さ らに打 つ 。一 回ではす まな い。 こ う
して鍛 造 可能 な鋼 を製造 す るの であ る。
箱型 製錬 炉 で柔軟 な低 炭素錬 鉄素 材 を、竪 炉 で 高炭素 含有 の脆 くて硬 い銑鉄 を製造 して複合
精 錬 した と考 え られ る。
以上 の よ うに箱炉 と竪 炉 の 同時操 業 にお い て 、灌鋼 な どの 存在 の 可能性 が 考 え られ たの で あ
注 63)
るが 、製錬 炉 の推移 動 向か らみ る と箱式炉 が先行 して 、竪 炉 が後 追 した痕 跡 もみ とめ られ る。
製錬 技術 の 流れ として 、箱炉 か ら竪 炉 へ 変 換 した の であれば 、箱炉製錬 の鉄素 材 は柔軟 で 、鉄
器性 能 を高め るに は滲 炭処理 で手 間 ど り、非能 率 で需要 に追 いつ け な い とい う問題 も生 じた も
の と考 え られ る。 これ に ひ きか え、竪炉 生成素 材 の銑 鉄 は 、左下げ法 で脱炭す るこ とに よ り、炭
素 量 コン トロー ル は容 易 で省 力化 とな り、精錬 鍛 冶 技術 も定 着 して東 日本 の 高 チ タ ン砂 鉄 の 豊
富 に産 す る地域 にお い て竪炉 が主 流 とな った もの と推 察 され る。
なお 、竪 炉 で製錬 され た銑鉄 は 、製鋼 法 として 、左下 げ法 以 外 に 、沙鋼 も考 え られ る。 中国
大 陸 の 戦 国秦 漢 に開 発 され た方 法 で 、 これ は銑鉄 (生 鉄 )を 加 熱 溶解 し、空気 中 で攪 梓 脱炭
(
酸化による)し て鋼 にす る方法 で あ る。 又 、他 に鋳 鉄 脱炭鋼 とい う、製 品に鋳 込 ん だ後 に脱炭
して性能 改善 す る方 法 もあ る。 これ らは 、鉄 製 品 の 調査 に よ り、 どの様 な製鋼 法 が とられ たか
注 65)
明 らかになるこ とであろ う。
v。
お わ りに
取香、
御幸畑 らの諸製鉄遺跡は、竪炉や箱炉 の製錬炉 と共に黒炭製炭用窯 が共伴 し、か
花前、
つ工房址 や 集落跡 などが有機的な関係 で捕 えられ た事例 として、古代製鉄 を研究す る上で重要
-203-
Ⅳ 特
論
な ところであ る。
今 回 、 この様 な遺跡 をは じめ として 、千葉 県下 15遺 跡 よ り出土 した原料砂 鉄や 鉱滓 、 また精
錬鍛 冶滓や鍛錬鍛 冶滓 及び鉄 塊 らに つ い て 、冶金学 的基礎 デー タの一部 で あ る鉱物 組 成 と化学
組 成 の 所 見 を提 出す る こ とが で きた。 しか し、古代 製鉄 におけ る冶金学 的研 究 の 究極 の 目的 は 、
操 業過程 での炉 内反応性 まで考 察す べ きで あ ろ う。 それに は 、原鉱 、木炭 、炉材粘 土 、鉱 滓 、
生 成 され た粗鉄 、粗 銑 、鍛 冶滓 等 の 総合 デー タが収 集 され て可能 に な るわけ で あ る。拙稿 は 、
そ の一 部 の 資料 を、速 報 的 に提 示 した もの で 、今 後 の研 究 発展 に い ささか で も寄 与 で きた ら と
念ず る次 第 であ る。
末尾 に な ったが 、本稿 発表 の機 会 を も うけ て頂 い た千 葉 県 文化 財セ ン ター の 沼澤豊 氏 と産 業
史研 究所 の 穴澤 義功 氏 に謝 意 を表 します 。
注
1
2
3
鎌 田仁 『最近 の鉄鋼状態分析 』 ア グネ社 、昭45
本書 Π -1参 照。
フ ァ ィ ャ ラ イ ト (Fayalte:2FeO・ Si02)。
斜方 晶系 に結 晶す る鉄 ケイ化物 の こ と。
2FeO+Si02→ 2FeO・ Si02の 反応 に よる生成物。
光学的性 質;フ ァイヤ ライ トは斜方 晶系 に属 し、反射偏光 を示す :屈 折率 (Ng=1886)
溶融点 99∝ 、 比重 4∼ 42。
は酸化鉄鉱物 に比べ れば低 く、マ トリックスの け い酸塩 の 中で は比較 的高 い。 フ ァイヤ ラ
イ トは焼結 中に現 われ る場合 、 スラ グ中 に 、 よ く木ず り状 とな って晶出す るため 、 この場
合 その特徴 あ る組織か ら他 鉱物 との識別 は容 易であ る。透過光 では、開 ニ コル で無色 であ
り、交差 ニ コル で淡黄 色、黄緑色 、黄橙 色 な どを呈す る。
微 小硬度 1
4
微小硬 度 は600∼ 700Hv程 度 である。
丸山益 輝 「鉄滓 に よる “たた ら"炉 内反応 の解析」 『たた ら研究 第22号 Jた た ら研究会 、
昭 53
5
マ グネ タイ ト (Magnetite:Fe3 04)。
FeO・ Fe2 03で も表 わ され 、FeOの 2価 のFeは 、
Mgま たはNiで 置換 され 、 また別にTi02を 含 む こ ともあ る。立方晶 で普通正 八面体 。
鉱物特性
光学的性 質;
マ グネ タイ トは等軸 晶系に属 し、屈折率 はNg=2.42で 、
わずかに黄色 を
含む灰 白色 を呈 し、反射光 度 は弱 い。反射 偏光 を示 さず、 この こ とは屈折率 の低 い こ とと
共にヘ マ タイ トと明瞭に識別 で きる。 マ グネ タイ トは不規 則塊状 の大 きい結 晶 を生成 し、
また往 々に して樹枝状 、四面体 、 八面体 などで観察 される。晶癖 の面 か らヘ マ タイ トとは異
なる。透過光 では不透明 であ る。
と
ξ lる Fllξ :::III套 最
ilttT暦 :貧 与
I了 1チ ││:奮 11:り IIII(1と
:昴 lξ
を呈 す るのでヴス タイ トと識別 され る。
微小硬度 ; 500∼ 600 Hvで ヘ マ タイ トとは相 当 の差 異 を有す る。
*腐 食液 のSnC12飽 和 アル コー ル溶液 の代 用 として 、SnCし の 1%HCl飽 和 溶液 を代 用 して
もよい。
-204-
千葉 県下遺跡 出土の 製鉄関係遺物 の分析調査
6 ヴス タイ ト (Wistie:FeO)。 Fe― ○系二元状 態図 におけ る鉄 と酸素 との固溶体 の こ と。
FeO(02 22%)は αFeに 分かれ る共析 反応 (euteCtOidreaction)を お こす 。す なわ ち
wustite 570℃
Fe304+α 鉄 となる。
鉱物特性
光学的性 質; マ グネ タイ トと同様 に等軸 晶系に属 し、反射偏光 を示 さな い。屈折率 もマ
グネ タ イ トよ りわずかに低 く、色調 もマ グネ タ イ トよ り灰色 を帯 びて い るが 、その差 はあ ま
り大 き くな い。形状 は一般 に球状 、樹枝状 お よびマ グネ タイ トとの 共品 の 形 で観察 され るが 、
光学 的性 質 だ け ではマ グネ タイ トと識別 しが た い。透過光 ではマ グネ タ イ トと同様 、不透 明
であ る。
腐 食性 ;
ヴス タィ トの 明確 な識別 は 、エ ッチ 。テ ス トに よるのが よ く、 SnC12飽 和溶液
に よ り 1∼ 2面 nで 完全か 、それに近 い程度 まで腐 食 され るのでマ グネ タイ トと識別 され る。
7
ウルボス ピネル (Ulvbspinel). TiFe2 04な る尖 晶石 に産地 Uivb lslands, Angerman
land群 島 (北 瑞典 )に 因ん で与 え られ た もの であ るが含チ タン磁鉄 鉱 の最 も普通 な成分 で磁
鉄鉱 の
(100)に 平行 に甚 だ細か い溶離葉 片 をなす こ とが明か になった。 Fredrik Moge‐
nsen 194Q Paul Ramodohr、
8
イル ミナ イ ト (IImenite,
1953。
(鉱 物 として の 説明 )
チ タン鉄鉱 Menaccanite又 はT■ anic lron Oreと も言 う。三
菱面像 、 C軸 =1.3846、
結 晶は通常厚板状 ;鋭 菱面体 、薄板状 又は葉 片状 をなす こ と多し。
塊状 、緻 密 :粒 状 、砂状 、原子構造 は鋼玉 に同 じくAl原 子 の半分 をFeに て 、 又残 りの半 分 を
Tiに よって代表す。断面 貝殻状 、硬度 5∼
6、
比重 45∼
5、
亜金属光 沢 、鉄 黒色 、条痕 亜
金属質 、粉 末は黒色及至褐赤色 、不透 明 、磁石 に僅かに感ず 。FeT103=FeO、 Ti02即 ち ○
31.6、
Ti 31.6、 Fe 36.8=100時 に
ものあ り、Picrotitan■ eと 称 し
(Fe、
(Fe、
Ti)203と も書 く。又Feを Mgに よって置換す る
Mg)O・ Ti02な
る組成 を有す。分析結果 に差 違 あるは
少な くもそ の一 部 は赤鉄鉱 又は磁鉄鉱 と密 なる平行連 品 を示す ため な り。産地Mask in the
1lmen Mtsに 因みて命名 さる。(以 上 は鉱石 として の 説明 である、本稿 では 人工鉱物 であ る
9
丸 山益輝 前掲 書 4
10
ゲーサ ィ ト (Goeth■ e:Fe203・ H20)。 褐鉄鉱 の構 成物質 の一 つ で 、Fe2 03=89.86%、
)
H20=10.14%。 一般 に黄褐 色 、赤褐 色 を し、条痕 は黄色 で結 品質 の ものか ら土状 の 非品質
の もの まであ る。硬 さ 5∼ 55。 比重 423∼ 3.3。 熱す るこ とに よ り脱水 し、赤鉄鉱 に変化す
る。
過共析鋼 (C085%
初析 セ メンタ イ ト (Proeutecdd cementite:free cement■ e)
以上 )に お い て Acm線 上か ら析 出す るセ メンタイ トをい う。 このセ メン タイ ト (Fe3 C)
11
は オー ステナ イ トの結 晶境 界にそって析 出 し、その 形状 は網状 を呈す るの で 、網状 セ メンタ
イ トともい う。顕微鏡的 には 、 ピ ク リン酸 アル コー ル 溶液 で腐 食すれば 、 白色 の網状 にで る
の で初析 フェ ライ トと区別 しに くいが 、 ピ ク リン酸ナ トリウム溶液 中で煮沸す る と黒 く出 る
ので 、初析 フェ ライ トと十分 に 区別す るこ とが で きる。
12
パ ー ライ ト (Pearlte)。 フェラ イ トとセ メンタイ トの共析 晶 (eutectoid)を パ ー ライ
トとい う。顕微鏡的 には フェ ライ トとセ メンタ イ トの薄 片 (厚 さ25/10,000∼ 5/100,000
mm)が 互 いに 層状 になってお り、 斜光 線 を用 いて検鏡す る と、 ち ょうど真珠 (Pearl)の よ
うな光 沢 を呈す るの でパ ー ライ トと名ずけ られ た。 パー ラ イ ト組織 は オー ステナ イ ト状態 の
鋼 を徐冷 (焼 な ま し)し た ときに得 られ る組織 で、 いわゆ る焼 な ま し状態 の もの であ る。 パ
ー ライ ト組織 を加 熱す れば Al変 態 (726℃ )に お いて全部 オー ステナ イ トに変化す る。 パ ー
ライ トは硬 さ、強 さは小 で磁性 を有 し、か つ 比重 は オー ステナ イ トとマ ル テ ンサ イ トの 中間
で鋼 の組織 中で もっ とも安 定 である。従来 のパ ー ライ トは フェラ イ トとセ メンタ イ トとの機
-205-
Ⅳ
特
論
そ の混合 形態 に応 して 、 層
械 的混合物 (混 合比 ■一 定 )に 対 して与 え られ た組 織名 の ため 、
状 の もの を層状 パ ー ライ ト(lamellav Pcarlite)、 球状 パー ライ ト (granular Pearlite)
と名づ けて い たが 、
最近 では フェ ライ トとセ メンタ イ トとが 層状 になって い る もののみ をパ
ー ライ トといい 、その 層間隔 の大小 に よ って普通 パ ー ライ ト (norml or coarse Pearh‐
中パ ー ライ ト (medium Pearhte)、 微細 パ ー ライ ト (fine Pearite)の 二 つ に分
類 して い る。
te)、
13セ メンタ イ ト (Cem entite)。 Fe3 Cで 示 され る正斜 方品 の炭化鉄 につ け られ た組織 の 名
称。
14
ォー ステナ イ ト(Austenite)(大 洲 田 )。 炭素 を固溶 して い るγ鉄 、す なわ ち固溶体 (侵 入
型 )を オー ステナ イ トといい 、焼 き入れ鋼 の組織 の一 つ であ る。 イギ リス人 Sir Robert
Austen氏
の偉大 な研究 を記念するために命令 された。わが 国 にお い ては本 多博 士 が顕 微鏡
ヽ
組織 に関連 させ て大洲 田 と当て字 され た。結 晶構造 は面′
立方晶系 (facecentred cubた
し
で、鋼 を
)
Al変 態点 (726℃ )以 上 に加 熱 した とき得 られ る組織 であ る。
炭素 含有量 に
応 して オー ステナ イ トは物理的お よび機械 的性 質 を異にす る。 た とえば炭素 量 の 多い オー
ステナ イ トほ ど硬 さは大 となる。 オー ステナ イ トは非磁性体
(nOnmagnedc)で 電気抵抗
は大 であ る。硬 さはマ ル テ ンサ イ トよ りも小 で あ るが 、号1張 強 さに比較 して伸 びが大 であ
る。 また常 温にお い ては不 安定 な組 織 で 、常 温加工 を施せ ば マ ルテ ンサ イ トに変化す る。
顕微鏡 的には 多角形 の組 織 を示す。焼 き入れ鋼 におけ るオー ステナ イ トの量は高炭素 の鋼
ほ ど、 また焼 き入れ温度 の高 い ものほ ど多 く、その最大 量は50∼ 60%に も及ぶ とい われ て
い る。
15
非金属 介在物 (nOn metanに includon)鉄 鋼中に介在す る固形体 の非金属性不純物 、す
なわ ち鉄 、マ ンガ ン、珪素 お よび燐 な どの酸化物 、硫 化物 、珪 酸塩 な どを総称 して非金属
介在物 とい う。脱酸生成物 お よび製鋼炉 での精錬過程 で除去 し得 なか っ た非 金 属 粒 子 、
また出鋼 時 、造塊時 に混 入 した耐 火物 または鋼滓粒子 な どが そ の まま鋼 中 に内包 され た も
のであ る。 サ ン ド・ マ ー ク (sand mark)も この類 に属す る。
16 フェ ライ ト (fernte L α鉄 を組織学上 フ ェライ トとい う。 ラテ ン語 の鉄 (Ferrum)よ り
きた言葉 であ る。 その 成分 はほ とん ど純鉄 に近 い もの であ る。085%C以 下 の鋼 にお いて
は、 い わゆ る free ferrite(初 析 フェ ライ ト)と して存在 して い る。 ピク リン酸 または硝
酸 のアル コー ル 溶液 な どで腐 食す る ときは着 色 されず 、 白色 の 組織 として現われ る もの で
あ る。 フェ ライ トはや わ らか く、展延性 が 大 で 、強 磁性体 であ る。 しか し保磁 力は小 であ
る。
17
18
`
析 出 (Preclpita● on)。 固溶体 か ら異相 の結 晶が分 離成長す る現 象。
椀 形滓 「椀 形滓 は鍛 治滓 の一 種 であ り、直径 12∼ 18cmの や ヽ楕 円形 を呈 した浅 い椀 形の
鉄滓 であ る。鍛 冶工房 で大鍛 冶や鍛 え鍛冶 に ともなって発生す る もの と、小鍛冶 の 作業 に
ともなって発生す る ものが あ り、前者 の表 面はやや 製錬津 に近 い 外貌 を してお り、後者の
方はや ヽ小 形で質 も均 一 に粗豚 であ る。 いずれ も吹子 直下 の 火床 中 に形成 され る もの で、
鉄滓 と藁灰 、あ るい は山土 との焼結状 態 を呈 して い る。」以上 は窪 田蔵郎 『鉄 の考古学』雄
山閣、昭47
19
白鋳鉄 (White cast iron)。 別名 白銑 (White pig iron)と も呼 ぶ 。 破面が 自色 を して
い る銑鉄 を
「 1銑 とい う。 白銑 は鋳 込 み 条件 の差 (冷 却速度 の速 い場合 )な どに よって生
ので
じる も
、セ メン タイ トとパ ー ライ トよ りな り、 白色 のセ メン タイ ト部分 が きわめ て 多
いの で 白色 を呈す。
20
亜共 晶 (Hypo eutectic unterutektisch L Fe C状 態 図にお いて 、共 晶成分
-206-
(C43%)
千葉県下遺跡 出土 の 製鉄関係遺物 の分析調査
の もの よ り低 炭素 の範 囲組成 の もの を亜共晶組成 とい う。 この組成 に相 当す る ものは 、初
晶 として オー ステナ イ トを晶出す る。
レデブ ライ ト (ledebunte)鉄 ―炭素合金 におけ るオー ステナ イ トとセ メン タイ トとの 共
21
晶 をレデブ ライ トとい う。 これは発 見者
LEDEBOUR(独
)の
名 を とった もので別名Wust
ともよばれ る。炭素量は43%、 生成温度 は 1,140℃ であ る。
22左 下 げ法 。和 銑 または鐸 を原料 とし、これ を加 熱半融 し、脱炭 して鍛冶 し、錬鉄す なわ ち
庖丁鉄 を製造す る方法 。
23
鐸 (け ら)。 日本古 来 の 直接 製鋼法 ともい うべ き鐸押 し (和 鋼 製造法 )に おけ る粗 製品で 、
成分上 は 各種 品質 の鋼 の 集合体。 たた ら炉 内か ら引 き出 した大塊 は単 に鐸 塊 とよばれ るが、
これが破砕選別 されて各種 の和鋼 (ひ はがね 。みず はがね 。つ くりはがね等 々 )と な るわ
けであ る。
24
銑 (ず く)。 -11に 銑鉄 、 わけて も鋳物銑 の こ とを「 ず く」 と呼ぶが 、歴 史的 には古 来 の
砂鉄 製錬 法 (た た ら吹 き)に よって製出 された和銑 (わ ず く)を さす 。生鉄 (な まがね
とも呼 ばれ る。和銑 はす べ て 白銑 で赤 目砂鉄 を原料 とした 白銑 は赤 目白銑 (あ こめ しろづ
く)、 真砂砂鉄か ら製出 され た ものは真砂 白銑 (ま さ しろず く)と い う。往時 は鉄 びん 。な
)
べ・ か まな ど国内 の 日常鉄器 の鋳 造用原料 として ひろ く使 われ た。
25
26
本書 H-2参 照
α―ヘ マ タイ ト (α ―Hemaite;Fe203)
鉱物特性
光学 的性 質 ;六 方晶系 に属 し、屈析率
(Ng=322)が 非常 に大 き く、焼結鉱 中 に 出現す る
る鉱物 の うちでは もっ とも明 る く、青 白色 を呈 し、 さらに反射偏平 を示 して、マ グネ タイ
ト、ヴ ス タイ トと識別 され る。-11に ヘ マ タイ トは、再結 晶がほ とん ど均 質 に行 なわれ 、
小結 晶が無数 に形成 されて 、それ らの相互融着 に よ り大 きい結 晶へ 生成 して い く傾 向 を有
す るため 、焼結鉱 中 に生成す るヘ マ タイ トは 再 酸化 に よる もの を含め て 自形 の結 晶形 を
とるこ とが 多 く、針 状 、板状 、あ る いは三 角 形か ら六 角形 まで種 々の 多角形 の 形で現 われ
る。透過 光でわず か に赤褐 色 を呈す る。
腐 食性
;
王水 (塩 酸 3容 、硝酸 1容 )に よ り侵 されず 、 マ クネ タイ トは黄変 し、ヴス
タイ トは瞬 時 に黒 変す るこ とに よ り識別 され る。
微小硬度 : 顕微鏡 の 視野 一 面 が ヘ マ タ イ トの 場 合 、 または微粒子 で識別 困難 な とき
に 、ヘ マ タイ トは微小硬度約 1,000Hvを 示 し、酸化鉄鉱物 中 もって も高 い硬度 を示す ので
識別 の一 助 とす る。
γ ―ヘ マ タイ ト (/一 Hemaute,Fe2 03)
光学的性 質 の 中 で 、α ―ヘ マ タイ トと偏光 しな い点 だけ 異な り、他 は α―ヘマ タイ トと
同様 で 、腐 食性 、微小硬度 も変わ りな い。
27 大澤正 己「真 木山遺跡 出土の鉄 滓・ 鉄塊 の調査」 『真木 山製鉄 遺跡J(豊 浦町文化財報
告 二 )新 潟 県豊浦町教育委 員会 、昭56
28
大澤正 己「 山 口県 の 製鉄遺跡 出土 の鉄 津調査」 『生産遺跡分布調査報告 書』 〈採鉱 ・ 冶
金 〉 (山 口県埋蔵文化財 調査報告 書 第67集 )山 口県教育委 員会 、昭57
29
精錬鍛 冶滓 と鍛錬鍛 冶滓 でマ グネ タイ ト (Magneate:Fe304)が 検出 されて い る もの と
して14例 が あ る。
大澤正 己「寄居町 中山遺跡 1号 住居跡 出土鉄滓 の調査」 『中山遺跡』 埼玉県埋蔵文化財
調査事 業団 、昭 57
30
本書 Π -3参 照 。
-207-
Ⅳ
特
論
31
32
33
岩瀬慶 三 『砂鉄 の研 究』科学主義 工 業社 (555頁 )、 昭 17
宮崎勢 四郎他 『鋳鉄 。鋳鋼』 (鉄 鋼工学 講座 9)朝 倉書店 (68頁 )、 昭45
湊秀雄 ・ 佐 々 木稔 「 タタラ製鉄鉱滓 の鉱物組成 と製錬 条件 につ い て」 『 たた ら研究 第 14
昭43
号』、
34
穴澤義功 「千葉 県流山市 中 ノ坪 I・ H製 鉄 遺跡」H召 和56年 度 たた ら研究会大会研究 発表
要 旨、昭56。 鉱滓の顕微鏡組織 と分析結 果は大澤提 出デ ー タであ る。
35
36
本書 H-4参 照。
焼 な ま し (Annealng)。 鉄鋼 を適 当な温度 に保持 した の ち徐冷す る操 作。 そ の 目的 は 、
内部応 力 の 除去 、か た さの低下 、被削性 の 向上 、冷間加 工性 の 改善 、結 晶組織 の調整 あ る
い は所要 の機械 的 、物理 的 または 、その他 の性 質 を得 るこ とな どである。
37
38
39
40
41
丸子 l二 『 千葉市東寺 山遺跡群発掘 調査報告 書』(孔 版
千葉 県文化財 セ ンター 『京葉 H』
)
(千 葉市東寺 山戸張作遺跡
)、
昭52
沼澤 豊 『松 戸市金楠 台遺跡J千 葉 県都市公社 、昭49
古 内茂 ・ 矢戸三 男他 『柏 市鴻 ノ巣遺跡J千 葉 県都市公社 、昭49
千葉 県教育委 員会 『千葉 県我孫子市 日秀 西遺跡 発掘 調査報告 書』 千葉 県文化財 セ ンター 、
日
召55
42
43
天野 努他『 八千 代市村上 遺跡群』 千葉 県都市公社 、昭49
矢戸三 男・ 池 田大助 「佐 倉市天辺 内山遺跡 」 『パ イプ ライ ン』 千葉 県文化財 セ ン ター 、
昭56 窪 田蔵 郎 『鉄 の 考古学』 雄 山閣 (190頁
44
)昭 48
高 田博他 『佐 倉市江原台遺跡 発掘調査報告 書
千葉 県文化財 セ ン ター 、昭 52 高 田博
I』
他『佐 倉市江原台遺跡 発掘調査報告 書 HJ千 葉 県文化財 セ ン ター 、昭55
千葉 県教育委 員会『公津 原 Iコ 、昭50
45
46
47
千葉 県教育委 員会 『公津 原 HJ、 昭56
ヘ ー シナ イ ト (HerCyn■ e:FeO・ Ab03)。 Aし 03/CaOの 比が大 きい場 合 に 多 く認め ら
れ る鉱物組成 。Hercyniteの 形成は、鉱物組成 中 のア ノルサ イ ト (Anorthi l CaO・ A1203
CaOを 満 たす に十分 なAし 03を 取 り上 げ 、残 りは FeOと 結 びつ いて Sp―
・ 2 Si02)が
inel Hercyniteに な ったの であ ろ う。
48
フェ ライ ト粒度番号。」
IS G 0552に 準 して測定 した。 この規 格 は 、主 として炭素 含有量
02%以 下 の 炭素 の フ ェラ イ ト結 晶粒度 を測定す る試験 方法 につ い て規 定 され て い る。粒
度は鋼 の フ ェ ライ ト結 晶粒 の大 きさをいい 、 これ を粒 度番号 であ らわす 。
顕徴鏡 100倍 にお
け る25mm平 方中の
結晶粒 の平均数
粒
49
度
番
00625 01250
-3
号
2
-1
0
1
2
4
l
2
3
4
5
6
8
9
大澤正 已「千草 山鍛冶遺構 出土 の鉄津 ・ スケー ル・ 鉄釘 の調査」 『千草 山遺跡』千草 山
遺跡 発掘 調査 団 、昭54
50
大澤正 己 「寄井町 中山遺跡 1号 住居跡 出土鉄滓 の 調査」 『中山遺跡J埼 玉 県埋蔵文化 財
調査事 業 団 、昭57
51 大澤正 己 「高岡寺 院跡 出土 の鉄滓 ・ 釘 の 分析調査 J『 高 岡寺 院跡 発掘 調査報告 書』 高 岡
寺 院跡 発掘 調査 会 、昭53
52
大澤正 己 「 門田遺跡 出土鉄滓 及び羽 口先端 溶着鉄滓 の調査結果」 『山陽新線関係文化財
調査報告 書 (Ⅲ
)』
福 岡県教育委員会 、昭 52
-208-
千葉県下遺跡 出土の 製鉄関係遺物 の分析調査
53
大澤正 己 「福 岡平野 を中心 に 出土 した鉱滓 の分析」 『広石古墳群』 福 岡市教育委 員会 、
日
召52
54
55
56
萩生道遺跡 出± 2段 重 ね椀 形滓は 、薬師寺崇 氏調査 で空堀 第 2区 よ り検 出 されて い る。
矢戸三 男他 『阿玉台北遺跡 』 千葉 県土地 開 発公社 、千葉 県都市 公社 、昭50
北 九州 市小倉南区大字 曽根 に所在す る潤崎遺跡 にお い て、 5世 紀後半 に比定 され る祭祀 ピ
ッ トよ り、現在 では列 島内最 古 と考 え られ る製錬滓が 多量 に出土 して い る。 この鉱洋は 、検
鏡結果 よ りUlvOspinelが 確 認 され て い る。 また、長崎 県南高来郡北 有 馬町今福字今福 の 今福
遺跡にお いて 、 13世 紀代 の 鉱滓 にUlVё spinelが 晶出 してお り、 これ ら 2つ の鉱滓 の粉 末 X線
回折 の 測定値が 出て くれば 、西 日本 1l L」 lvOspinelの 組成式が 、 もう少 し整理 されて くる と考
えて い る。 デー タは近 日中に揃 う予定。
57
大澤正 己 「 白須山たた ら製鉄関係遺物 の調査」 『 白須 たた ら製鉄 遺跡 』 (山 口県埋蔵文化
財調査報告
58
第65集
)山
口県教育 委員会 、昭56
大澤正 己 「 山 口県下 の 製鉄遺跡 出上の鉄滓調査 」 『生産遺跡分布 調査報告 書
〈
採鉱 ・ 冶
召57
金 〉』 (山 口県埋 蔵文化財 調査報告 書 第67集 ) 山 口県教育委 員会、日
大澤正 己 「二 丈町深江・ 塚 田遺跡 出土鉄 滓 の分析調査 」 『今宿 バ イパ ス関係 埋 蔵文化財調
59
査報告
60
第 7集 』
福 岡県教育委員会、昭57
大澤正 己 「八熊遺跡 出土鉱滓 ・砂鉄 の分析調査 と考察」 『八熊製鉄遺跡 ・ 大牟 田遺跡』
(
第 2集 )志 摩町教育委 員 会、昭57
ヽ
「
とす る鉱滓 ・鍛 冶滓 の検 討 」『稼 山遺跡群』Ⅳ 岡山県
大澤正 己 大蔵 池南製鉄遺跡 を中′
し
志摩町文化財調査報告 書
61
久米開発事 業 に伴 う文化財 調査委 員 会、昭57
62
63
宋應星撰 ・ 藪 内清訳注 『天工 開物』 東洋文庫
130
平 凡社
岡山県久米町所在 の大蔵 池南遺跡 の 製鉄炉炉床部 は 、無
(271頁
40cm、
)
長辺80cmの 箱 型であ り 6
'辺 では他 に 8∼ 9世 の の とし
世紀末か ら 7世 紀初頭 に比定 されて い る。 6基 検 出。西 日本
紀 も
て兵庫 県西下野 、岡山県 キナザ コ、石生天皇 、石生 天皇南 、高本 、福 岡県糸島半 島 の八熊遺
心に 8世 紀代 に入 って 出現す る。
跡 の 箱式炉が ある。竪炉 は東 日本 を中′
64
65
北京鋼鉄学 院 『中国冶金簡 史』科学 出版社 、
列 島内で鋳鉄脱炭鋼 が東大 阪市 の 鬼虎川遺 跡で発見 され て い る。弥生時代 中期 の鉄鏃 とノ
ミ状鉄 器 であ る。 国内産 ではな く、大陸製 (中 国 もし くは朝鮮 )の 可能性 が大 きい と推 定 し
て い る。 この様 な製造技術 が 国内に定着 したか否 か今 後 の研究課題 とな る。
大澤正 己「鉄鏃 と盤状鉄器 の 冶金学的調査」 『 鬼虎川 の金属器関係遺物』 (第 7次 発掘調
2)東 大阪市文化財協 会、日召57
査報告
*
専 門用語 の解 説は 、鉄鋼新聞社 『鉄鋼辞典 』 ]1業 図書 出版 と、川 口寛之編 『金属材料辞典 』、
IS用 語辞典 (V
日刊工 業新 聞社 『焼結鉱組織写真 お よび識別法』昭 43年 、 日本規格協会 」
金属・化学・窯業編ら、
木下亀城『岩石鉱物辞典』風間書房H召 41等 を主として使用しており、
一 部 につ い ては筆 者 の加筆 の ある こ とをお こ とわ りしてお く。
-209-
Fly UP