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世界中の痛む足のために生まれた”ハッシュパピー”

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世界中の痛む足のために生まれた”ハッシュパピー”
第33回
世界中の痛む足のために生まれた
ハッシュパピー
定番名品は、
こうして生まれた
大塚製靴
なぜ、ハッシュパピーのキャラク
①M-120FX
③M-1629FX
②L-220FX
「アメリカからの輸入靴では、どう
ターが犬(バセットハウンド)なのか。 しても日本人の足に合いません。大
④L-7257
ハッシュパピーの代名詞ともいえる“赤底、外
羽根、プレーントウ”のオーソドックスな
シューズ(写真①紳士・②婦人)マイナーチェ
ンジを繰り返し、
日本オリジナルモデルやパン
プスも多数(写真③④)
。全国49店舗のハッ
シュパピーストアや全国有名百貨店などで販
売。男性用シューズのイメージが強いが、
実は
女性客が6割を超えている。
ハッシュパピーのネーミングには、
塚製靴は1872年(明治5年)の創業で、
ちょっとおもしろいエピソードがあ
日本人の足を見続けてきた実績があ
る。
りました。そこで、当社が企画・製造
「Hush Puppies」とは、アメリカ南
したハッシュパピーを売り出したの
部の魚を入れた揚げ団子のような郷
です。しかし当時は、靴といえば男性
て寸”という爪先と靴の間にある隙
土料理のこと。食事中に食べ物をね
は革のビジネスシューズ、女性はパン
間です。以前はかなり狭かったので
だる犬(バーキング・ドッグス)を静
プスというような時代で、まだカジュ
すが、現在はボリュームや長さを持た
かにさせるために、
「Hush Puppies
アルシューズが一般化していません
せた形状になっています。底面の意
(しっ! 子犬たち)
」といってこの
でした」と教えてくれたのは、商品開
匠は、滑りにくいように考慮されたオ
料理を与えたという。もともと靴が
発室室長の猪山純史氏だ。「“足を靴
リジナルの意匠を使用しています。
合わずに痛む足のことを、俗に「バー
に合わせる”という言い方があった
こうしたマイナーチェンジは10年く
キング・ドッグス」といっていたこと
ように、自然なフィット感がある靴に
らいの間隔で行っています」と猪山氏。
から、いくら履いても痛くならない靴
対する意識も低かったのかもしれま
オーソドックスな短靴は「『今履い
を「ハッシュパピー」として売り出し
せん」
(同氏)
。
ている靴と同じものを』とお求めに
たのだそうだ。
1960〜70年代のアイビーブームと
なるお客様もいらっしゃる」
(猪山氏)
このハッシュパピー、アメリカでは
ともに、ハッシュパピーの靴は一世を
くらいリピーターが多い。だから、む
カジュアルシューズの代名詞のよう
風靡し、多くの人に愛されるように
しろ大きな変更はできないかもしれ
な存在で、世界約160カ国で販売され
なっていった。
ない。だが、長く使えるものというこ
ている。日本では大塚製靴がライセ
ンス契約を結び、1965年から販売さ
ブランドの根底には
「履き心地の良さ」が
れている。
「最近は靴もカジュアル化が進み、スニーカーで
通勤される人も増えています。ハッシュパピー
の定番も、さらなる改良を、これからも繰り返し
ていきます」
(猪山氏)
20
とは陳腐化しないということだ。ど
んな時代になっても求められる靴の
基本なのだ。
ハッシュパピーといえば誰もが思
ところが現在、ハッシュパピーには
い出すのが、スエードのような革
ブーツからサンダル、スニーカーまで
(ハッシュパピーレザー)にレンガ色
さまざまな種類が揃えられている。
のソールの短靴だろう。だが、現在で
お客様のライフスタイルの変化に対
は私たちがよく知っているそのベー
応するため、毎年新製品も投入されて
シックタイプは、男性用で4種類、女
いる。
「ハッシュパピー」という1つ
性用では1種類しか残っていないそ
のブランドの中にさまざまな顔があ
うだ。
るような印象を受ける。しかし、
「常
「やはり流行がありますから、オー
に履き心地を追求し続ける精神」は、
ソドックスなものでも少しずつデザ
ハッシュパピーブランドのすべての
インは変化しています。例えば“捨
靴に貫かれている。
2014年1月新春号 日本小売業協会発行
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