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プレス金型内における高圧エア発生ユニット の開発およびその応用実験 高

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プレス金型内における高圧エア発生ユニット の開発およびその応用実験 高
平成24年度研究助成対象・研究成果報告
プレス金型内における高圧エア発生ユニット
の開発およびその応用実験
高(GAO) 峰(Feng)
研究報告者
~プロフィール~
最 終 学 歴
平成 13 年 3 月
九州工業大学情報工学研究科
博士後期課程 満期退学
専 門 分 野
生産技術分野
学
位
博士(情報工学)
所属団体名
西日本工業大学
工学部 総合システム工学科
役
職 名
教 授
今 後 の 抱 負
金型はものづくりにおける大量生産の母機であり,関連技術の進化は直接に成形品の品
質および生産性に決定的な影響を与えます.プレス加工分野において,新技術の開発によ
る金型機能の高度化,加工工程の集約化は本分野における技術進化の方向の1つでありま
す.
今回提案した金型内に設置できる高圧発生ユニットは,プレスの力を利用するため,小型
でありながら強力な動力源になることができます.本報は,この発想を応用して,金型分野に
おいて従来から難題となっていたカス上がり問題の解決に非常に有効な方法を提供しまし
た.将来,このユニットの構成の最適化,標準化を行い,カス除去だけではなく,材料送り,
金型の補助動作,また,その力を利用した二次加工の実現も期待することができ,機能の高
度化によってプレス生産の高能率化高品質化に貢献したいと考えています.
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1.はじめに
近年,自動車,携帯端末やデジタルカメラが代表としたものづくり業界において,製品
の世代交代がますます加速化する傾向がある.これらの製品の構成部品を量産する金型に
対して,更に高い生産性および成形性,かつ,低い製造コストの実現が求められる.金型
の設計開発において,既存技術の有効活用および改良を実施すると同時に,新しい技術の
開拓も重要である.
本研究は,金型を用いた加工を行う際にプレス機の往復運動に着目して,それを利用し
て金型内に設置可能,一般的に工場に使用されている圧縮エアの10倍以上の圧力の圧縮
能力持つ小型コンプレッサーユニットを開発する.このユニットは,金型内に取り付けれ
る1つの動力源として,材料送りや成形品の突き出しなどの補助動作,メインの成形工程
の中での二次加工,また抜きカスの除去に利用することが可能である.本報は,試作機の
高圧エア発生ユニットの開発およびそれを利用したカス除去実験の結果ついて報告する.
2.金型内で強力な高圧エアを発生させる有利条件および金型機能高度化への応用
2.1.金型内で強力な高圧エアを作るに有利な条件
金型内で強力な高圧エアを作るには有利な条件がある.まず,プレスの上下往復直線運
動は,エアの発生に必要な圧縮運動方向に一致し,ピストン・シリンダー構造のコンプレ
ッサーの動作に利用しやすい.次に,プレス機は通常数十トン以上の能力を持つ,エア圧
縮に充分なパワーが提供できる.また,エア発生装置をユニット化にして,金型内に取り
付けることが可能である.本研究は外部動力源を使用せず,プレスの上下運動を利用して
金型内に設置できる高圧エア発生ユニットの開発を行う.
2.2.自発強力な高圧エアによる金型機能の高度化
一般的に工場に使用されている圧縮エアの圧力は0.5-0.7mPa(5-7kgf/cm^2)である.エア
シリンダーやエアガンなどの多くのエアを動力源として駆動する機器はこの圧力よって能
力を決まる.よりパワーの必要な動作を実現するには,金型の外部で高圧コンプレッサー
また電動式の動力源を設置しなければならない.一方,本研究が提案したプレス金型内で
の5mPa(50kgf/cm^2)以上の自発高圧エアを実現すれば,圧力不足の問題の解決が期待でき
る.また,圧縮ユニット金型内に設置することを想定して,金型以外の設備の増設が必要
ない.通常のプレス加工を行うと同時に,高圧エアを蓄積しることによって,連動運転状
態の利用もできる.金型内に新たに動力源を設置することによって,従来解決困難な問題
の徹底解決,また従来のない機能を加えることができ,金型機能の高度化を実現する.
3.本研究の目的および狙い
提案した技術の基礎研究として,初期段階は以下の目的を用いる.金型内のガイドポス
トの位置に設置可能な高圧エア発生ユニットの開発を行う.金型の稼働実験を実施し,ユ
ニットの動作および圧縮機能を検証する.応用例とて,金型分野における従来から難題で
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あるカス上がり問題の解決に適用し,カス除去の効果を検証する.高圧エア発生ユニット
の開発およびその応用実験を通して,本研究の技術基礎を構築する.
また,金型内で発生した高圧エアの活用により,材料送り,製品の突き出しなどの機能
の実現を目指す.多工程のプレス加工あるいは順送金型の加工において,従来の複数の生
産工程を一工程に集約する有効な方法を模索し,工程数の減少によって全体的に金型製作
費用の低減および加工時間の短縮は本研究の最終的な狙いである.
4.高圧エア発生ユニットの開発
4.1.高圧エア発生ユニットの設計要件
エア発生ユニットの汎用性を持たせ,実用的な技術として確立するため,以下の設計要
件を満たせる必要がある.(1)充分な圧力を発生する能力を有する.前述のように,通
常の工場のエア圧力10倍以上の圧力値を目標設定する.(2)一定な量の高圧エアを蓄
積する能力を持つ,連続稼働のエア供給に対応する.(3)金型内に収まる小型化するこ
とができる.(4)機能集約する.エア圧縮ユニットをダイセットのガイドポストの位置
に固定し,通常のガイドポストのガイド機能も兼用する.
4.2.実験機の高圧エア発生ユニットおよびダイセットの構造
図1に今回開発の高圧エア発生ユニットおよびダイセットの構造を示す.右側の高圧エ
ア発生ユニットは主に圧縮ピストンとシリンダーにより構成され,金型の上下往復運動に
よる圧縮室内のエアが圧縮される.続いて圧縮エアがピストン先頭部に設置された一方通
過のバルブを経由してエアタンクに送られる.金型の稼働回数の増加に伴い,エアタンク
内の圧力が上昇する.エアタンクの上部に圧力の上限をコントロールするための安全バル
ブがと付けられ,設定圧力が超えた場合,安全バルブが解放されることによって減圧す
る.本実験機の最大圧力は9.8Mpa(100kgf/cm^2)で設計した.図1の中央部は,本技術をカ
ス除去に適応するための打ち抜き金型構造である.金型側にエアを噴射するタイミングを
コントロールする機構が設置された.
図1 高圧エア発生ユニットおよびダイセットの構造
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図2 高圧エア発生ユニットを装着した金型の試作機
図2に試作した高圧エア発生ユニットを装着した金型を示す.通常の金型のガイドポス
トの場所に,2つの圧縮ユニットが設置された.パンチは中央に穴加工された購入品を使
用する.下死点近傍の瞬間に打ち抜きの反力でエア噴射のバルブを開く.試作機のサイズ
は240(H)mm×350(W)×280(D)mm(シャクおよび圧力ゲージの部分を除く)である.
5.高圧エア発生ユニットの機能検証実験
高圧エア発生ユニットの機能を検証するため,本装置の増圧と保圧の実験を行った.実
験用のプレス機はアマダ製のTP45プレス機を使用した.プレス能力は45トン,ストロー
クは100mm,サイクル時間は1sであった.サイクル時間に依存した高圧エア噴射時間の計
算値は約0.05sであった.
図3 高圧エア発生ユニットの加圧・保圧の圧力値の変化
確認実験は,まず,試作機の増圧能力および保圧性能を検証した.図3に増圧する際に
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圧力値とプレスストローク回数の関係,および保圧する際に圧力の減衰と時間の関係を示
す.取得したデータにより圧縮エアの最大圧力値は6.8Mp(68kgf/cm^2)に達したことを確認
した.また保圧状態の圧力減衰からエアの微小漏れが存在することを判明した,これは実
験装置の加工および加工精度によるものと考えられる.
6.自発高圧エアによるカス除去への応用実験
6.1.カス上がりの防止および現行対策の問題点
カス上がりの主な原因は抜きパンチの上昇につれ,パンチ先端表面と被切断材料の間に
形成した真空状態によるカスがダイフェースの上に上がる成形トラブルである.また,油
膜,せん断面のカエリや磁気による吸着現象も発生の原因と考えられる.
現行の対策では,主に4つの面から実行される.(1)カスとダイの切刃側面の摩擦抵
抗を増やす.例えば,ダイの切刃側面に微小な溝付け,逆テーバー,デポジトロン処理な
どの対処を行う.(2)真空状態を回避する.パンチに通気孔を設置する,またはパンチ
の先端面にシャー角を付けるなどの対策を取る.(3)深く切り込み,カスが上がりにく
くする.パンチの長さを延長するやダイの切刃側面の上下方向の幅を短縮するなどの方法
は効果的である.(4)外力で突き落とす.パンチにキッカーピンの設置やウレタンキッ
カーの設置,またはパンチ先端から圧縮エアで吹き出す方法などを挙げられる.
対策(1)から(3)は,パンチやダイの形状設計および金型内における配置は理想状
態から変更され,刃物の寿命短縮および安定性を損なう結果に招く.また,(4)のキッ
カーピンとウレタンキッカーを使用する場合,刃物周辺の構造が複雑になり,空間的に限
界が生じる同時に,切る前に突き出し構造が被加工材料に接触することから,材料送り,
位置決め,不要な材料変形の防止に影響する恐れがある.これらの方法の中,比較的に,
エアで吹き出す方法は構成が簡単で,刃物の機能に殆ど影響しないが,通常の工場のエア
の圧力値は0.5Mpa(5kgf/cm^2)程度であるため,場合によって,カス除去に充分な力を提供
できい問題点がある.
6.2.自発高圧エアによるカス除去の提案
圧縮エアを使用する方法において,パンチ内に穴を加工する作業あるいは既成の穴付け
の購入品を使用することによって実現容易である.また,刃物の構造密着箇所に大幅な改
造がなく,ダイの形状修正は不要,刃物の寿命および機能に影響しない,動作のタイミン
グ制御が可能などのメリットがある.強力なエア源を備えれば,カス上がり問題の徹底解
決に理想的な方法として期待できる.
本研究が開発したエア発生ユニットは強力なエア供給能力をもつため,ガス除去に有効
な方法として提案する.
6.3
カス除去の検証実験
図2に示したエア発生ユニットを取り付けた金型を用いて,カス除去の検証実験をおこ
なった.直径5mmの穴を打ち抜く際にカスを発生させ,厚みはそれぞれ0.1,0.2,0.5,
1.0mm4種類の銅板材料C1100(九州黄銅株式会社製)によりカスの除去状況を観察する.ま
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た各パターンに5枚のカス重ねる状態でエア噴射の動作も検証する.
実験は以下の結果を得た.高圧エア発生ユニットのおよび金型のバルブ開閉は確実に動
作した.1枚または5枚重ねのケースにおいてもカスが完全に落とされ,ダイの中への残
存はなかった.圧力ケージの値の変化が少なく,1ストロークのエア消費量が少なかっ
た.エア噴射する際に発生した音から判断するとエアの放出時間は極めて短かった.図4
に除去した4種類のカスのサンプルを示す.(a)と(b)は比較的に材料の厚みがあるため変
形が少なかった.(c)(d)は激しく変形しており,高圧エアの力によるものと判断する.
図4 高圧エアによる除去したカスのサンプル
7.今後の課題
金型内での自発高圧エア発生ユニットの開発およびそれをカス除去への応用実験は本技
術開発の第一歩である.金型内で設置てきる強力な動力源として,様々な応用への展開が
考えられる.工程集約化の二次加工,金型の補助動作である材料送りや製品の突き出しな
どを今後の開発方向とする.また,これらの技術を実用化するための機能最適化の設計,
低コスト化の構成,標準部品としての推進も今後の課題とする.
8.まとめ
本研究は,プレス機の上下往復運動を利用して,金型内のガイドポストの位置に取り付
けられ,通常の工場のエアの圧力値10倍以上の高圧エア発生ユニットを開発した.プレ
ス機に搭載した稼働実験を用いて,エア発生ユニットの動作を確認し,最大6.8Mpaの圧力
値を得た.発生した高圧エアを利用して,カス除去の応用実験を行った.その結果は,カ
スは金型ダイの中に残存せず,完全に除去したことを確認した.よって,本手法は,カス
上がり問題の完全解決に有効,かつ,安定性耐久性が優れた方法として期待できる.発生
した高圧エアを金型の補助動作や二次加工への利用が可能と考え,今後の課題とする.本
研究は,公益財団法人三井金型振興財団の助成を頂くことにより継続開発は進行してお
り,深く感謝の意を表する.
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