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シリコンバレーで進展するインフラ整備(米国)【PDF:74KB】

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シリコンバレーで進展するインフラ整備(米国)【PDF:74KB】
NEDO海外レポート
NO.983,
2006.8.16
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海外レポート983号目次 http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/983/
【産業技術】IT
シリコンバレーで進展する無線通信のインフラ整備 (米国)
インターネット接続のワイヤレス化が本格化し、米国では都市全域において無料で
インターネットが利用できるようなインフラ整備のプロジェクトが各地で検討され、
サンフランシスコ、シアトル、ポートランド、アラメダ、フィラデルフィア等の主要
都市で既に具体的計画が進展している。こうした動きは世界的にも進行しているが、
特にサンフランシスコ及びシリコンバレーの動きは、Google 社の積極的な戦略が刺激
となっている。Google 社は、本社のある地元マウンテンビュー市で同市全域をインタ
ーネット無料接続化するテストを既に開始しており、サニーベール市にある Tropos
Networks 社製のトランシーバ 380 機を既に設置し、200 軒以上の住宅で実証実験を
行う計画を進めている。同社はサンフランシスコ市でも、同様なインターネットの無
料接続化のためのインフラ整備を行う予定であり、同市と合意を結んでいる。
こうした中で、各市単位ではなく、シリコンバレー全域を無線通信で繋ぐインフラ
整備プロジェクトに 7 社が相次いで名乗りを挙げ、激しい競争状態となっている。サ
ンフランシスコを拠点とする Blue Horizon グループは、家庭で使用されるレベルの回
線を無料で配布し、利用者には月額 9.95 ドルを課金する計画を示した。同社の計画に
は、一般の利用者への課金に加え、地元自治体へ警察、火災時などの連絡網を提供し、
自治体へも課金するシステムを推奨している。既に、Yahoo 社、Microsoft 社などと協
議し、将来的にはカリフォルニア州全域をカバーする計画がある。
パロアルト市を拠点とする Community Wireless 社は、市街の広告収入の一部を費
用負担にあて、1 Mbit/sec までのサービスを無料にする計画を立てている。同社は、
12 歳から 21 歳までの若年層に的を絞り、Yahoo 社、Google 社、eBay 社、Sony 社、
Microsoft 社と連携をとり、個人端末用コンピュータにバンドル形式でユーザの獲得を
狙う。また、マウンテンビュー市を拠点する MetroFi 社は、1 Mbit/sec までのサービ
スを広告付きの無料サービスと月額$19.95 で無広告サービスの 2 段構えでサービスを
提供する計画を発表している。その他、NextWLAN 社(ロスガトス市)、Fire2Wire 社
(カーメル市)、VeriLAN 社(ポートランド)などの企業が、それぞれマイクロノー
ドを使用し DLS ラインと繋げローカルの電話会社のインフラを利用する方式、サブス
クリプション方式、ISP 方式等を提案している。更に、IBM 社、Azulstar 社、シスコ
システム社の3社共同による計画もある。
ワイヤレス・ネットワークは、これまでも有料で提供され利用者も着実に増加して
きている。喫茶店や空港ラウンジ、書店、ホテル、コンベンションセンター等でのサ
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NEDO海外レポート
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ービスを展開し、接続を提供、料金は繋ぎ放題で月額 20 ドル台が相場である。接続可
能な地点(ホットスポット)の数では、米国、英国が多く、日本も第5位(その多く
は東京)に位置する。米国内では、ニューヨーク、シカゴという大都市に続いてサン
フランシスコが第3位であり、IT 拠点のシリコンバレーを擁する地域らしい環境とな
っている。そうした状況において、ワイヤレス・インターネットを無料で提供する場
合の収入源は広告収入であり、検索ビジネスと同じモデルである。コンピュータ、イ
ンターネットが今や人間の日常生活にとって「便利」な手段ではなく「必須」のイン
フラとなりつつあることを考えれば、ワイヤレス無料インターネット接続は全ての市
民をインターネットに参加させる意味からも有効な方向と言える。有料サービスに比
べ、参加者が増大することは間違いなく、事業者から見ても勧誘の営業活動コストを
削減し、サービスの質の向上により集中できるメリットもある。なにより、自治体か
らすれば、サービスを市民全体に「無料で」提供するというアナウンス効果は大きく、
ほとんど全ての自治体はこのモデルを採用しようとしている。
しかし一方で、Google 等の検索ビジネス等でも議論になっている個人情報の扱いの
問題が、無線インターネットサービス提供にも生じる恐れがある。すなわち、ある特
定の地域でほぼ全ての市民が参加する無料の無線インターネット接続提供事業者は、
その地域の各人の行動、嗜好をはじめ医療情報等も全て把握し管理することが可能な
立場となる。無料の無線インターネット接続サービス提供事業者には、個人情報の侵
害に対する厳しい罰則規定を設けた上で事業許可を各自治体が出さなければ、「無料」
であることでややもすればインターネット接続が事実上「義務」化され、未加入者が
著しい不利益を被る構造となり、かつ接続自体は無料でもそれ以上のサービスから
様々な収益を吸い上げることにならないように留意する必要がある。本年5月 10 日、
サンフランシスコの地元紙「San Francisco Chronicle」の報道によれば、Northern
California ACLU、The Electronic Frontier Foundation、The Electronic Privacy
Information Center の3団体が、シリコンバレーの 34 自治体に対し、無料の無線 LAN
インターネット接続サービス計画に関して上記の趣旨の警報を発したと報道している。
日本においても、行政サイドが事業者側と十分に議論し意思疎通を図った上で、冷静
な事業許可を発出することが肝要であろう。
以上
(参考)
・”Visions for a wireless valley”, The Mercury News, 2006 年 7 月 12 日,
http://www.mercurynews.com/mld/mercurynews/business/15019615.htm
・”Mtn. View WiFi net being tested by 100 users”, The Mercury News, 2006 年 7 月 14 日,
http://www.mercurynews.com/mld/mercurynews/business/15037109.htm
・”Motorola M1000 info posted by FCC”, Mobile Tracker, 2005 年 2 月 16 日,
http://www.mobiletracker.net/archives/2005/02/16/motorola-m1000
・”EDITORIAL: Hidden cost of ‘free’ wireless”, San Francisco Chronicle, 2006 年 5 月 10 日,
http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?file=/chronicle/archive/2006/05/10/EDGDOIJKE11.
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