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価値創造型ビジネス パート2 ~ケイズネットライン社との協業

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価値創造型ビジネス パート2 ~ケイズネットライン社との協業
CAC グループ企業から
価値創造型ビジネス
パート2
―ケイズネットライン社との協業について―
株式会社カティエント
取締役
ビジネスディレクタ
大須賀正之
独立後、菅社長はこうした経験を活かし、多くの金融機
1.はじめに
関に対して、実務に即した業務運用コンサルティングを提
供する一方、「社団法人金融財政事情研究会」の参与とし
お客様企業の価値向上を可能とする提案の実現を目指
し、昨年設立しスタートした「株式会社カティエント」も、
て、講演、講習などでも活躍されてきた。
金融CRM構築を支援するコンサルティング会社として
この3月で設立1周年を迎えた。この1年、カティエントは
スタートしたケイズネットラインのビジネスの基本は現在
企業としての基盤と体制の構築を行う一方で、セミナーの
も変わっていないが、設立後徐々に金融実務経験豊かな人
開催、新たな提案・ソリューションの構築、ユニークな技
材を揃え、金融BPR(Business Process Reengineering)、
術やメソッドを有する企業との協業など、さまざまな試み
営業活動支援といった銀行業務全般のコンサルティングと
を展開してきた。
ITを活用した地域活性化ビジネスの推進という二本柱も有
そうした活動の1つに、金融向け営業顧客管理に強みを
持つ業務支援コンサルタント「株式会社ケイズネットライ
ン(以下ケイズネットライン)
」との協業がある。
するユニークな企業に成長している。
ケイズネットラインの強みは、何と言っても、実務に即
した業務支援コンサルティングノウハウにある。菅社長が
本稿では、このケイズネットラインの保有する技術・ソ
よく口にする「金融機関はゼネラリストを優遇し、スペ
リューションの簡単なご紹介をすると共に、今後どのよう
シャリストを冷遇する」という状況を逆手に取り、金融実
なコラボレーションを想定しているかについてご紹介した
務のスペシャリストとして、徹底した現場主義、顧客目線
いと思う。
の戦略構築コンサルティング技術、実践的なフォローを展
開し、顧客金融機関から多大の信頼を得る存在になってい
2.ケイズネットライン
ケイズネットラインは、1994年、住友銀行(現三井住友
銀行)OBである菅 恭二(かん やすつぐ)社長が設立した、
る。
3.金融機関向けCRMと提案型事業性営業
支援ツール
銀行向けCRM構築と実践サポートを行うコンサルティン
グ会社である。
菅社長は、住友銀行、日本総研で20年余りにわたって、
昨年秋の業務提携以来、カティエントならびにCAC金
融コラボレーション本部とは、既存顧客、ターゲット顧客
業務ユーザーの観点から情報検索、営業支援資料作成を行
への新たなアプローチとして、ケイズネットラインのノウ
うなど、銀行の持つ巨大システムの中に埋もれた多くの情
ハウ紹介を行ったり、既存顧客の課題解決策に向けた提案
報をいかに活用するか、あるいは営業支援に向けどのよう
として、ケイズネットラインと共同提案を行ったりと、具
な情報を利用すれば良いかについて研究・実践し、「金融
体的な営業活動を展開し始めている。
マーケティング」という新たな分野を確立した金融実務の
スペシャリストである。
VOL.29・NO.1
ここでは、ケイズネットラインが有する代表的なソ
リューションを2つ紹介したい。
37
3.1
金融機関向けCRM
ついて、例えば公共料金等の自動引落情報など、各金融機
関の保有する既存情報を利用し、さらにケイズネットライ
菅社長は、「金融機関にCRMは不要」と言われる中、効
率的な営業戦略を構築、実践する上で、いかに情報活用を
ン独自の分析に基づく消費性向に潜む法則・仮説を用い、
行うべきか、いかにターゲットを絞り込むべきか、という
より精緻な対象先抽出やマーケティング戦略作成を指導・
観点から、常に現場担当の視点に立ち、金融機関にとって
支援している(そのための数百パターンのノウハウを有し
のマーケティングの重要性、CRMの必要性を説いてきた。
ている。図1)。
ケイズネットラインでは、MCIF(Marketing Customer
ケイズネットラインのMCIF戦略は、決して、銀行が保
Information File)のテンプレートを独自に開発している
有している現行のCIF情報や取引先DBを否定し、リプ
が、そのカスタマイズ率は10%以下である。こうした汎用
レースを薦めるものではない。むしろ、エンドユーザーの
性の高さは、このテンプレートが、銀行利用者の立場から
営業戦略を元に、既存の情報系システムから、どうすれば
どのような提案を行うべきで、そのためには本来顧客サー
戦略にふさわしい情報抽出が可能なのかを検証し、既存情
ビスにどのような情報が必要かを捉えられるようにモデル
報系システムの有効活用方法を検討することから始める。
化されているからこそ実現できているのだ。
こうしたアプローチが、現場ユーザーの安心感を呼び、
例えば、カードローンの拡販キャンペーンを行いたいと
ユーザーがそもそも抱える課題を引き出すことができると
考えているとき、単純に一定の預金残高を保有している顧
いう真のコンサルティングサービスへと結びついている。
客を抽出し、キャンペーン活動を行って、本当に効果があ
もちろん、結果として、不足している項目を追加開発し
るだろうか。まず最初に問題になるのは、カードローンの
たり、場合によっては全面入替といった大型案件に結びつ
拡販目的が、単純に利用額の拡大にあるのか、それとも収
く可能性もある。
益の拡大にあるのかという点が、明確になっているかであ
3.2
る。目的が収益の拡大にあるとすれば、コストが賄える利
提案型事業性営業ツール
用額水準に基づき、その水準で安定的に利用し、確実に返
「提案営業」という言葉はIT業界でもキーワードとなっ
済を行う層をターゲットとして抽出し、キャンペーンを打
ているが、金融業界でも営業戦略上のキーワードとなって
つことが最善の戦略となる。
いる。景気回復基調の中、各金融機関は取引先企業から適
確なアドバイスや商品設計提案を求められている。また、
ケイズネットラインは、このような各金融機関の課題に
データウェアハウス
勘定系
開発業務コンサル
論理モデル+
導入/活用コンサル
人事
教育
チャネル統合支援(心臓)
MCIF(頭脳)
経営者
収益管理 エリア戦略
本店各部管理者
管理
サーバー
ALM
営業店管理者
戦略・施策・推奨
キャンペーン結果・収集情報
目標実績
管理
論理モデル+
開発コンサル
経費管理
物件管理
SFA
サーバー
融資支援
サーバー
ATM監視
サーバー
ソリューション提供
インターネット
サーバー
ダイレクトチャネル
サーバー
自動審査
サーバー
コンサル
コンサル
ソリューション提供
BPR
チャネルコントロール
渉外
店頭
ロビー
図1
38
コンサル
ATM
ローンセンター
融資窓口
DM
コールセンター
サンデーバンキング メールオーダー
高度知的サービス インターネット
CS・CATV
センター
金融CRMにおけるケイズネットラインのコンサルティング分野
SOFTECHS
金融庁の検査でも、リレーションシップバンキングの推進
足から、不適格な取引先が多く含まれたり、逆に必要以上
状況がヒヤリング項目に入ることから、各銀行では機能強
に絞り込まれ肝心な取引先が含まれなかったりといった、
化に力を注がざるを得ない状況にある。
無駄なコストが発生する可能性がある。
しかし一方で、ひとことで提案営業といっても、金融機
一方、現場担当者が十分に金融知識や取引先情報を理
関が高度な金融知識と豊富な営業経験を有した営業マンを
解・認識している場合であっても、情報システムが営業戦
十分な数だけ揃えられない状況であれば、現場がこれを遂
略を目的に整備されていない場合、戦略立案に必要な情報
行することは容易ではない。
が容易に抽出できず、市場ニーズに即した営業活動も望み
そこをサポートするのが、ケイズネットラインの提案型
事業性営業ツール「リモートVIPルーム」である。
「リモートVIPルーム」は、金融機関が保有している取
にくい状況に陥ることがある。リモートVIPルームはこう
した問題の解決支援ツールとして考案されたものである。
さらに、リモートVIPルームには、TV会議システム、
引情報、信用情報などを活用し、それをベースに、取引先
あるいはインターネットTV電話システムを活用した双方
ごとに提案できる案件を抽出したり、逆に提案先としてふ
向通話の相談機能もある(リモートVIPルームのリモート
さわしい候補先を抽出したりすることのできる営業支援
はここに由来する)。
前述のような提案を営業担当が取引先に持参したとして
ツールである(図2)
。
も、その担当者が提案内容についての専門家ではない場合、
通常、業務推進の手順は、
① 設定シナリオ(営業方針)に従い、適すると思われる
詳細の説明ができない可能性がある。そこで、お客様を店
舗へ誘導し、店頭設置のPCから、あるいは営業担当者持
対象取引先を抽出し、
② 対象取引先にDMなどの営業行為を実施し、
参のPCから、本部専門相談員と直接会話をして頂くこと
③ 反応顧客に対する現状確認を行い、
でお客様の疑問、関心事に対応するというものだ。
④ 対応策を元にシミュレーションなどを用いながら、提
現在このツールはβ版が構築されており、地銀、第二地
銀を中心に幾つかの引合いも来ているが、本格的な実装段
案を実施し、
階に入った際、各銀行の既存インフラ環境対応や、安定稼
⑤ 最終提案書の作成を行う、
といった流れとなる。
動に向けた支援が必要となってくるため、業務運用支援な
しかしながら、これでは適すると思われる対象取引先の
らびに実装作業を、CACを交えた協業で推進することを
抽出判断が各現場(担当者)によるため、担当者の理解不
ターゲットラインWebの機能
内部保有の法人情報の活用
与信残高
融資データ
自己査定
格付
与信方針
融
資
実
績
営業規模
決算書データ
安全性
収益性
想定している(次ページ図3)
。
業
績
融資提案・財務改善・決算対策等の
テーマを選択
↓
テーマに合致するシナリオを
自動抽出
↓
左記顧客を解析
提案可能企業を自動抽出
↓
提案書自動作成
成長性
提案したい企業を選択
↓
財務情報
外部企業
データソース
他行取引
営業内容
企
業
情
報
提案できるシナリオを
自動抽出
↓
提案書自動作成
経営者情報
図2
VOL.29・NO.1
リモートVIPルームの機能(ターゲットラインWeb)
39
センター
拠点
カメラ
マイクセット
プリンタ
カメラ
サーバーPC
①Webサーバー
②アプリケーションサーバー
③DBサーバー
④Flash関連
ルーター
クライアントPC
①ブラウザ(IE)
②Flash Player
HUB
モデム
営業テーブル
VIP用テーブル
外部DB
相談員/TGLクライアント
ルーター
クライアントPC
①ブラウザ(IE)
②Flash Player
カメラ
VI
P相談
クライアントPC
①ブラウザ(IE) マイクセット
②Flash Player
③Office
…
カメラ
TGL用テーブル
連携
店舗2
マイクセット
プリンタ
VIPサーバ/TGLサーバー
店舗1
店舗3
…
相談員/TGLクライアント
マイクセット
プリンタ
ルーター
クライアントPC
①ブラウザ(IE)
②Flash Player
カメラ
クライアントPC
①ブラウザ(IE) マイクセット
②Flash Player
③Office
プリンタ
図3
リモートVIPルーム システム構成例
んで、初めて第一段階が完了したといえる。中小金融向け
4.今後のビジネスプラン
BTOサービスでは、こうした一連の業務支援までをオー
ルインワンで提供する「真のCRMサービス」を目標とし
ケイズネットラインとの協業の目的は、①上記ケイズ
ている(図4)。
ネットラインのソリューション、ノウハウ活用によるカ
ティエントおよびCACの銀行向け営業強化、②ケイズ
4.2
金融実務シンクタンク
ネットラインとの共同活動やOJT(On the Job Training)
さらにもう1つのプランは、ケイズネットラインとカ
によるマーケット主導型人材育成強化にあるが、さらに、
ティエントによる「金融実務をサポートする本邦唯一のシ
今後に向けたプランもある。
ンクタンク」を目指し、MCIF、リモートVIPルームだけ
でなく、金融営業・戦略を支援する新たなソリューション
4.1
中小金融向けBTOサービス
の開発を行う組織を目指すことである(図5)
。
1つ目のプランは、CAC、ケイズネットライン、カティエ
これまで金融機関は、ともすれば横並び意識の中、周囲
ントによる中小金融向けBTO(Business Transformation
と同じ行動をとることが安全な経営戦略の1つと考えられ
Outsourcing)サービスの提供である。MCIF高度利用に
ていた。しかし、金融自由化の進展と景気回復の流れの中、
よる営業戦略がこれからの金融機関に重要であることは論
各金融機関は、いかに自行の特徴を打ち出し、顧客満足度
を待たないが、情報維持管理、分析、対顧客キャンペーン
を上げ、金融のスペシャリストとして適確な提案、助言、
を継続して行うことは、特に中小金融機関にとっては負担
サービスの提供ができるかが、問われるようになってきた。
が重い。そこで、構築・運用だけでなく、データ分析、戦
そのためには、サービス業として顧客目線の情報管理・市
略立案、キャンペーン提案、アウトバウンドサービス、と
場分析・商品開発が必要となる。
いった実務支援コンサルも含めたアウトソーシングビジネ
すなわち、銀行として自分たちが提供したい、あるいは
スを展開しようというものである。CRMシステムは開発
提供できるものをオファーするだけではなく、市場や利用
導入すればそれでおしまいというものではない。導入した
者が何を求めているのかを把握し、それに対して可能なこ
システム、構築されたデータを分析活用し、実際の営業活
とを提供する姿勢が必要となる。
動成果に基づき、次の活動に反映するというところまで進
40
また、これは金融機関以外にも言える話だが、システム
SOFTECHS
金融機関単独での
開発・運用
S
I
(システム・インテグレーション)
システムの共同化
システム+ノウハウの共同化(BTO)
一般的な共同サービス
CRM BTOサービス
【メリット】
部 品 の 共 同 化 によるコストダウン
単独での構築とほぼ変わらない要件
必 要 に 応 じた 利 用 形 態 も 可 能
M CIF 運 用 要 員 は 必 要 な し
シ ス テ ム の 陳 腐 化 リス ク が な い
【メリット】
要望を柔軟に満たす開発が可能
ハード・ソフト・著作権は金融機関
資産
【メリット】
初期投資が長期に分散される
システムの陳腐化リスクがない
運用に手間が比較的かからない
【デメリット】
【デメリット】
汎用的サービスの為お客様環境に
準じた仕様変更ができない
業務適用ノウハウの提供がない
ハード・ソフトの購入もあり高価
運用のための要員確保が必須
システムの陳腐化リスク
システムコストを圧縮する一方で従来の金融機関が
MC
I
Fをうまく活用できなかった点をコンサルティングで
カバーすることにより長期にわたって効果的な活用を
実現します!
コストを抑え効果的な活用を
実現するためにシステム+
ノウハウ+運用のご提案を
いたします。
図4
新
商
品
開
発
業
務
コ
ン
サ
ル
支
援
+
MC
I
F分析等のマニュアルを提供する
営業戦略全般のコンサルがセットされ
ている。
DM発信業務・アウトバウンド業務がセット
されている。
かどうかを確認して初めて1つのシステム案件が一巡した
CAC
調
査
報
告
(共同利用の為)ハード・ソフト・著作権は
サービス提供会社の資産
CRM BTOサービスの特長
金融コラボレーション本部、バンキング業務センターなど
営
業
相
互
協
力
【デメリット】
シ
ス
テ
ム
開
発
案
件
発
掘
業
務
要
件
定
義
策
定
支
援
金融実務をサポートする本邦唯一のシンクタンクを目指す
と言える。このことは、システム導入の投資対効果を計測
する上でも重要なポイントである。
ケイズネットライン、カティエントは、こうした上流か
ら下流まで、フロントからバックに至るまでのあらゆる局
面で、システムの導入だけでなく、金融実務の観点から提
案、支援、協力をするサービス主体を目指している。
(システム開発案件に結びつく案件を主体に)
カティエント
ファイナンスグループ
図5
ケイズネットライン
CACグループ(含むカティエント)との連携
5.おわりに
本稿では、カティエントの「価値創造型ビジネス」の実
現形態の1つである協業によるサービスの一例として、ケ
導入時、システムのリリースが行われるとすべてが終わっ
イズネットラインとの協業ならびに同社の有する特色と将
たような気持ちになっているケースが、ユーザーのみなら
来ビジョンの一端をご紹介した。カティエントでは、これ
ず、導入を支援したベンダー、コンサルタントにも見られ
以外にもさまざまな企業との協業、新たなサービス・技術
る。しかし、実際は、事前検討、業務要件定義の時点で導
の提供、事業の設立・稼動も手掛けている。次回以降、そ
入の前提となった事務フロー、業務フローに対し、導入シ
うした協業先や新しいサービス・技術・事業を紹介してい
ステムを想定通り活用でき、初期の目標を達成できている
きたいと思う。
VOL.29・NO.1
41
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