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蛋白質核酸酵素:ヒト内在性レトロウイルス遺伝子の構造と発現
ルス遺伝子の構造と発現加藤宣之・加藤美枝子 ヒ トレ トロウ イル ス は, エ イズ や 成 人T細 胞 白血 病 の原 因 ウ イル ス と して注 目 さ れ, さ かんに 研 究 が な され て い る。 一 方, す べ ての 脊 椎 動 物 の染 色 体 上 に は, レ トロ ウ イ ル ス 様 構 造 を もつ 内在 性 レ トロ ウ イル ス遺 伝 子 が 多数 存 在 して い る 。 近 年, 多 くの こ の よ うな 遺 Database Center for Life Science Online Service 伝 子 が ク ロー ン化 さ れ, る 。 本 稿 で は, 情 報 が 蓄積 しつ つ あ る が, ERV3と 依 然 と して そ れ らの機 能 は 不 明 で あ 呼 ばれ る 内在 性 レ トロ ウ イル ス遺 伝 子 の構 造 と 発現 に 関 す る 最 新 の 知 見 を 中 心 に そ の 周 辺 を 概 説 し, そ の 生 物 学 的 機 能 お よび 意 義 を 考 察 す る 。 は じめ に レ トロ ウイ ル ス はRNAを 遺 伝 子 と し, 細 に 従 い, 宿 主 の遺 伝 子 と して 安 定 な 形 で継 代 さ れ る。 こ 胞 に感 染 後, この遺 伝 子 に コー ドさ れ て い る逆 転 写 酵 素 の 内在 性 レ トロ ウイ ル スDNAは, の働 き に よ り 生 成 したDNAが DNA上 宿 主 染 色 体 に組 み込 ま れ る とい う特 徴 を 有 して い る。 組 み込 まれ た ウイ ル ス DNAか らは, 再 びRNAが 転 写 され て ウ イル ス粒 子 が すべ ての脊椎動物 の に 多 数存 在 して い る^<1)>。 従 来, 内 在 性 レ トロ ウ イ ル スは 進 化 の過 程 に お け る外 来 性 レ トロ ウ イ ル ス感 染 を 示 す 化 石 と考 え られ が ち で あ るが, そ の真 の生 物 学 的 意 義 は い まだ 不 明 で あ る。 ト リ 形 成 され る。 こ の レ トロウ イ ル ス の研 究 は, ト リや マ ウ スな どの 動 や マ ウ ス では, 多 くの 内在 性 レ トロウ イ ル ス遺 伝 子 に つ 物 系 に お い て進 展 して いた が, 近 年, ヒ トにお い て も, い てか な り詳 し く調 べ られ てお り, 細胞 分 化 や発 生 へ の 成 人T細 胞 白血 病 ウ イ ル ス (HTLV-I) 原 関 与 を示唆 す る報 告 も あ る^<2,3)>。 また, そ れ 自体 で は発 癌 な どが 性 が な い と考 え られ て い るが, マ ウ ス の系 で は 内 在性 レ やAIDSの 因 ウイ ル ス で あ る ヒ ト免 疫 不 全 ウ イ ル ス (HIV) 発 見 され, レ トロウ イ ル ス と ヒ トとのか か わ り合 い が大 き く ク ロー ズ ア ップ され て き て い る。 図1に は, 現 在 ま で に 同定 され て い る ヒ トレ トロ ウイ ル ス を大 ま か に分 類 し て み た 。個 体 間 で 水平 伝 播 す る よ うな レ ト ロ ウ イル スは 外 来 性 と呼 ば れ るの に 対 して, 内 在 性 レ トロ ウ イル スは ウイ ル スDNAの 図1. 形 で通 常 の遺 伝 子 と同 様, 元 来, 正 常 人 の HTLV-I, 染 色 体 に組 み 込 まれ て い る もの で あ り, 生 HIV-1, HSRV 殖 細 胞 を通 して 親 か ら子 ヘ メ ンデ ル の 法 則 Nobuyuki Kato, Tsukiji, Mieko Chuo-ku, Kato, 国 立 が ん セン タ ー 研 究 所 Tokyo 104, (〒104 H ヒ ト レ トロ ウ イ ル ス の 分 類 : 成 人T細 胞 白 血 病 ウ イ ル ス, 2 : ヒ ト免 疫 不 全 ウ イ ル ス, タ イ プI, タ イ プ1, タ イ プII。 タ イ プ2。 : ヒ ト ス ピ ュ ー マ レ トロ ウ イ ル ス 。 東 京 都 中 央 区 築 地 5-1-1) [National Cancer Center Research Institute, Japan] 国 立 小 児 病 院 医 療 研 究 セン ター (〒154 東 京 都 世 田谷 区太 子 堂 3-35-31) [National Children's Medical Research Center, Taishido, Setagaya-ku, Tokyo 154, Japan] Structure and Expression of Human Endogenous Retroviral Genes Key【ヒ wordト】 【内 在 性 レ トロ ウ イル ス 】 【遺 伝 子発 現 】 2357 26 蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol. 33 No. 13 (1988) トロ ウ イル ス遺 伝 子 ど う しの 組 換 え に よ り発 癌性 を 獲 得 い う3つ の必 須 遺 伝 子 が, 数 百 ヌ ク レオ チ ドに 及 ぶ 両端 した 例 が知 られ て きて い る^<4∼6)>。 そ の詳 細 に関 して は, 優 の く り返 し配 列 (long terminal repeat ; LTR) には さ れ た 総 説 が あ るの で, こ こ では 割 愛 させ て いた だ く^<7,8)>。 まれ た 形 を とっ て お り, これ ら の遺 伝 子 は, ウ イル ス粒 最 近 で は, ヒ トに つ い て も研 究 が 進 展 し, 多 くの内 在 性 子 の形 成, 増 殖, 感 染 な どに必 要 な 蛋 白質 を コ ー ドして レ トロウ イ ルス 遺 伝 子 フ ァ ミ リー の 同定 が な さ れ て い い る。 また, LTRに る。 そ して, す べ て の ヒ トが す べ て の フ ァ ミリー を有 し ばか りで な く, 転 写 調 節 や 宿 主DNAへ て い る こ とが 明 らか に な りつ つ あ る。 筆 者 ら もERV3 か わ る情報 が複 雑 に組 み込 ま れ て い る。 は 転 写 の開 始, 終 止 に関 す る情 報 の組 込 み に か レ トロ ウイ ル ス の起 源 は確 定 して い な い が, と呼 ばれ る ヒ ト内在 性 レ トロ ウイ ル ス遺 伝 子 の構 造 解 析 シ ョウ お よび そ の発 現 に 関 して 多 くの 知 見 を 得 た の で, そ れ ら ジ ョウバ エ や酵 母 に 存 在 す る 転移 性遺 伝 要 素 (transpo の 成果 を 含 め て本 稿 を進 め, ヒ ト内在 性 レ トロ ウイ ル ス sablegenetic の 生物 学 的 意 義 を 考 察 した い 。 とか ら, レ トロ ウ イ ル スは これ らTGEか element ; TGE) の構 造 と よ く似 て い る こ ら進 化 した と も考 え られ て い る^<17,18)>。TGEと レ トロ ウ イル ス との 類 I. ヒ ト内 在 性 レ トロウ イ ル ス お よび 似 点 の1つ に は, Database Center for Life Science Online Service その遺伝子の発見 1970年 代 か ら80年 代 前 半 にか け て, 胎 盤^<9,10)>, 卵母 ウイ ル スDNAが 逆 転 写 され る際 に 必 要 な プ ライ マ ー の結 合 部 位 (primer binding pbs) 流 に 隣 接 し, 特 の 存 在 が あ る。pbs 定 の転 移RNA (tRNA) は5'-LTR下 の3'末 端 側 約18ヌ site ; ク レオ チ 細 胞^<11)>, 奇 形 癌 腫 細胞^<12)>, 胎 児^<13)>な どで 電 顕 的 にC型^<*1> ドが こ の pbs の レ トロ ウイ ル ス粒 子 が 観 察 され, 遺 伝 子 レベ ル に お い マ ー と して利 用 され て い る。 外 来性 レ トロ ウイ ル ス や て も, 1974年, TGEの 初 め て Todaro らが, ヒ トDNA上 に に結 合 し, 逆 転 写 反 応 に お け る プ ライ プ ラ イ マ ーtRNAの 種 類 は, 個 々 の フ ァ ミ リー ヒ ヒ内 在性 レ トロ ウイ ル ス遺 伝 子 と類 似 した遺 伝 子 の存 に特 異 的 で あ る。 た とえ ば, 在 を 示 唆 す る報 告 を 行 な った^<14)>。 性C型 さ らに, DNA組 換 え技 術 の進 歩 に伴 い, ほ ぼ 同 時 期 に, か つ 独 立 的 に2つ の研 究 室 よ りヒ ト内 在 性 レ トロ ウ イ ル ス遺 伝 子 が 初 め て 単 離 され, そ の存 在 が 確 固 た る も の とな った^<15,16)>。 彼 らは, 類 似 の 霊 長 類 由来 の 内在 性 レ トロ ウ イル ス遺 伝 子 の pol 領 域 を プ ロ ー ブ に用 いた に も マ ウス お よび ヒ トの外 来 レ トロ ウイ ル ス で は プ ロ リ ンtRNAが, B型 レ トロ ウ イ ル ス で は リジ ンtRNAが い る。 そ の他, TGEの tRNAが 一 種 で あ る297で また, 利 用 され て はセ リン プ ライ マ ー とな っ て い る。 そ して, 現 在 ま で に単 離 され た 内在 性 プ ロ ウ イル スに つ い て, プ ラ イ マ ー tRNAを 予 想 して み る と, 驚 くこ とに, そ の種 類 が 多 岐 か か わ らず, 得 られ た 遺 伝 子 間 の塩 基 配 列 上 の相 同性 は に渡 っ て お り, 数 多 くの異 な った フ ァ ミ リー の存 在 を示 低 く, 両 者 は別 個 の フ ァ ミ リー に属 す る もの で あ っ た。 唆 して い る。 プ ロ ウイ ル ス 内部 の塩 基 配 列 な どが 出揃 っ そ の後, 続 々 と新 しい フ ァ ミリー に属 す る遺 伝 子 群 が て い な い 現 時 点 に お い て は, プ ロウ イ ル ス の コ ピー数 や に は 多 くの 異 な った 種 類 の 内 在 プ ラ イマ ーtRNAの 性 レ トロ ウイ ル ス遺 伝 子 が存 在 して い る こ とが 判 明 して の 分 類 を試 み た。 単 離 さ れ, ヒ トDNA上 違 いを も とに 内 在 性 プ ロ ウ イル ス きて い る。 次 節 に お い て, これ ら遺 伝 子群 の 分 類 を 行 な い つ つ, そ れ らの遺 伝 子 溝 造 に つ い て ま とめ て み た い。 1. EkV1, II. 1コ ピー タ イプ のC型 プ ロ ウ イル ス ERV3お よびS71と 名 づ け られ た3種 類 の 内 在 性 プ ロ ウ イ ル スが, こ の タ イ プに 属 す る。 これ ら の プ ロウ イ ル ス の 構 造 プ ロウ イ ル ス は1倍 染 色 体 あた り, そ れ ぞ れ1コ 内 在 性 レ トロ ウ イ ル ス遺 伝 子 は, 外 来 性 レ トロウ イ ル スが 宿 主DNA上 に組 み 込 まれ た 形 (プ ロ ウ イル ス) と 基 本 的 に 同 じ構 造 を有 して い る。 した が っ て, 本 稿 で は 在 し, 外 来 性 のC型 ピ ー存 レ トロ ウイ ル ス と部 分 的 相 同性 を 示 す。 ERV1とERV3は 筆 者 らが 滞 在 した Cohen 博士 の 以後, これ らの遺 伝 子 を 内在 性 プ ロ ウイ ル ス と呼 ぶ こ と 研 究 室 に 事 い て, チ ンパ ン ジ ー の 内在 性 プ ロウ イ ル ス にす る。 プ ロ ウイ ル ス は 多 く の 場 合, gag (CH2) 質), pol *1 (逆転 写 酵 素) お よび env (構造 蛋 白 (外被 膜 蛋 白質) 電 顕 的 観 察 に お け る ウ イル ス粒 子 の形 態 で , A, の がC型 2358 の 特 徴 で あ る。 B, C, と D型 の pol 領 域 を プ ロー ブ と して ヒ トの全 染 色 体 ラ イ ブ ラ リー よ り単 離し た も の であ る^<16,19)>。 に もか かわ ら と区 別 され てい る。 核 様 体 が 出芽 の過 程 と と もに 完 成 され てい く ヒ ト内 在 性 レ トロ ウイ ル ス 遺 伝 子 の 構 造 と発 現 27 図2. ERV3プ ロ ウ イ ル ス の遺 伝 子 構 成 ヒ ト全 染 色 体 ラ イ ブ ラ リー よ り単 離 され た λ クローン に挿 入 さ れ て い た ヒ トDNAの を 示 す 。 下 線1∼4は ず, 両 者 の pol 領 域 以 外の 部 位 は お互 い に塩 基 配 列 上 相 ドンが 見 つ か った こ とか ら, ERV3そ 同性 が 低 く, 通 常 の条 件 下 では ハ イ ブ リダイ ズ しな い 。 ル ス粒 子 形 成 は 考 え に く く, ERV3は 不完 全な プロウ イ ル ス で あ る と考 え ら れ る。ERV3は 第7染 色 体 に存 ERV1は, 染 色 体18q22とq23の お り^<20,21)>, ERV1の Database Center for Life Science Online Service 部 分 (約16kb) 塩 基 配 列 が 決 定 さ れ た 部 分 で あ る。 間 に存 在 して 塩 基 配 列 決 定 は ヒ トにお け る 内在 性 れ 自体 か らの ウ イ 在 し^<19)>, 詳 細 な解 析 の結 果, 7q36に 位 置 して い る こ と プ ロ ウイ ル ス の存 在 を直 接 的 に証 明 した 最 初 の報 告 とな が判 明 して い る^<26)>。 こ のERV3に っ た^<19)>。 しか し, ERV1は, ス は, 新 世 界 お よ び 旧 世 界 ザル に も存 在 して お り, 現 トロ ウイ ル ス (BaEV) ス (M-MuLV) 塩 基 配 列 上, ヒ ヒ内在 性 レ や Moloney と部 分 的 に50%以 も のの, 5'-LTRを マ ウス 白 血病 ウイ ル 上 の相 同 性 を 示 した 欠 失 した も の で あ った 。pol 領域に お け る塩 基 配 列 はERV1とCH2間 で99%の が あ り, さ らに, それ らの3'-LTR下 流 の領 域 も保 存 さ れ て い る こ とか ら, ヒ トに お け るERV1は ー のCH2に 一方 相同性 チ ンパ ンジ 対 応 す る も の で あ る と考 え られ る^<16)>。 , ERV3は, アル ギ ニ ンtRNAに 対 応 す る pbs よ く似 た プ ロ ウ イ ル 在, そ れ らの ク ロ ー ニ ン グが 進 行 中 で あ る^<26)>。 サ ル 肉 腫 付 随 ウ イ ル ス (SSAV) の ゲ ノム 全 体 を プ ロ ー ブ と して ク ロ ー ン化 され たS71と イ ル スは, い う内在 性 プ ロ ウ C型 レ トロ ウイ ル ス に 相 同性 を 示 す gag pol 領 域 お よび1つ のSSAV関 る^<27)>。 最 近, このS71は 連LTRを 有 して い 染 色 体18q21に 濾 胞 性B細 胞 リ ンパ腫 に お け る14 と 同 定 され^<28)>, ; 18転 座 の位 置 に対 応 して い るの で 注 目 され る。 を もち, 図2に 示 す よ うに, 5'-LTR-gag-pol-env3'-LTRの 遺 伝 子 構 成 を もつ9.9kbの ル ス で, 図2の1∼4の 乳 類 のC型 内在 性 プ ロ ウイ 領 域 の 塩 基 配 列解 析 に よ り, 哺 レ トロ ウ イル ス と の 部 分 的 相 同 性 が 見 い だ され た^<19)>。env領 域 には, (open reading frame ; ORF) 合 部 位 (Asn-X-Ser/Thr) 型 的 な577ア 1,940bpの 長 い読 取 り枠 が あ り, 7ヵ 所 の糖 鎖 結 を もつ レ トロ ウイ ル ス に典 ミノ酸 か らな る 外被 糖 蛋 白質 の 生 成 が予 想 され て い る^<22)>。ERV3の 両LTRは, スに 特 徴 的 なTG---CAの DNAへ レ トロ ウイ ル 末 端 配 列 を も ち, 宿 主 組 み込 まれ る際, ウ イ ル ス と宿 主DNAの 点 で形 成 され る4bpの た, LTRに は 転 写 開始 に 必 要 なTATA配 配 列 や ポ リA付 加 シ グナ ル で あ るAATAAA配 か に, 13bpの 境界 く り返 し配列 も み られ る^<23)>。 ま く り返 し配 列 がU3領 列, CAT 列 のほ 域 に存 在 し, それ 2. マ ル チ コ ビー タ イ プ のC型 プ ロ ウ イ ル ス こ の タ イ プ に属 す る プ ロ ウイ ル ス群 と して は, Martin らに よ り得 られ た も のが 詳 細 に調 べ られ て い る。 彼 らが 得 た い くつ か の ク ロー ンは, MuLV 相 同性 を示 すC型 で, や BaEV と部 分 的 レ トロ ウ イ ル ス関 連 の プ ロウ イ ル ス 1倍 染 色体 あ た り50か ら100コ ピー も存 在 し, 1 つ の フ ァ ミ リー を 形 成 して い る^<15)>。 さ らに, こ の フ ァ ミ リーは8.8kbの プ ロ ウ イ ル ス のほ ぼ 全 長 を もつ ク ラ ス と env 領 域 を 欠 失 した 約6kbの 遺 伝 子 を もつ ク ラ スに 分 け られ る^<29,30)>。 プ ロ ウイ ル ス の 全 長 を も つ クラス の LTRは 典 型 的 な 転 写 調 節 シ グ ナ ル を もち, pbs 配 列 か ら グル タ ミン酸tRNAが の塩 基 そ の プ ラ イ マ ー と して 予 想 され て い る。 全塩 基 配 列 が 決 定 され た こ の ク ラス の 1つ の ク ロー ン (4-1)^<31)>の gag や pol 領 域 に は, 9カ らは グル コ コル チ コ イ ド^<24)>あ る いは プ ロゲ ス テ ロ ン受 所 の終 止 コ ドンが あ り, 胎 盤 な ど で観 察 され る レ トロ ウ 容 体^<25)>が 作 用 す る と考 え られ るTGTTCT配 イル ス粒 子 が この ク ロ ー ンか ら生 じる とは考 え に くい 。 い る。 した が っ て, ERV3は 列 を含んで グル コ コル チ コイ ドや プ ロ ゲ ス テ ロ ンに よ り発 現 調 節 され て い る可 能 性 が あ る。 し しか し, env 領 域 に は約1.3kbのORFが あ り, 3'側 を若 干 欠 いた 糖 蛋 白質 の 生成 が 可能 で あ る。 この フ ァ ミ や pol 領 域 お よび 膜 貫 通 (ト リー に属 す る プ ロ ウイ ル ス は 多数 存 在 す るた め, ウ イ ル ラ ンス メ ンブ レ ン) 蛋 白質 を コー ドす る領 域 内 に終 止 コ ス粒 子 を形 成 で き る少 数 の プ ロ ウ イル ス の存 在 は否 定 で か し, 残 念 な こ とに, gag 2359 2360 28 蛋 白 質 核 酸 きな い。 ま た, こ の フ ァ ミ リー と約70%の す2コ 酵 素 Vol. 33 相同性を示 4. そ A. MMTV関 色体 特 異 的 に 存在 す る の で, 胎 児 の性 別 診 断 な どに利 用 で き るか も しれ な い。 そ の他 の フ ァ ミリー と して, RTVL-Hプ ロ ウイ ル ス の全 塩 基 配 列 も最 近 決 定 され て い る^<33)>。RTVL-Hは ス チ ジ ンtRNAに 対応 す る pbs を も ち, 第11染 ヒ 色体 の β-グロ ビ ン遺 伝 子 ク ラス タ ー近 傍 を 解 析 中偶 然 見 い 有 し, 全 長5.8kbで トロ ウ イル ス, と くに, HTLV-Iの gag した 構 造 を もつ が, env (UUUア 上 のORF プ ロ ー ブ と して 得 られ た プ ロ LTRは こ の タ イ プ の プロ ウ イルス 群 は, プ ロ リ ンtRNAに 対応 する 立 的 に報 告 され て い る^<36∼40)>。 そ れ らは, マ ウ ス乳 癌 ウ イ ル ス (MMTV) (IAP) あ る い は ハ ム ス タ ー の 小 胞 内A粒 子 の ウ イル ス ゲ ノ ムDNAを プ ロ ー ブ と して, ヒ ト全 染 色 体 遺 伝 子 ライ ブ ラ リーか ら単 離 され, そ れ ぞ れ の 塩 基 配 列 解 析 に よ り, 得 られ た ク ロー ンは 同 じフ ァ ミ リー に 属 す る プ ロ ウ イ ル ス で あ る こ と が 確 認 され て い る。 哺 乳 類 のC型 名 づ け ら れ た ク ロー ンに 関 して は, ロ ー ニ ン グの 手 法 を 用 い た もの で あ った 。 原 田 お よ び 筆 者 ら は, 精 製 し た プ ロ リ ンtRNAを す る こ と に 成 功 し, P1, P2, oneyマ LTRを もち, そ の env レ トロ ウイ ル ス に類 似 した 領 域 はA型 に最 も近 く, ま た pol 領 域 はB型 の も のに 類 似 してい る。 こ の よ うな モ ザ イ ク型 プ ロ ウ イル スは 進 化 にお け る複 雑 な遺 伝 子 間 の相 P3) pbs は ビス ナ ウイ ル ス^<41)>やD型レ トロ ウ イル ス (SRV-1^<42)>やMPMV^<43)>) ン チ コ ドン) に対 応 して い る。 また, LTRは968bpと 比 較 的 長 く, 両LTR間 の塩 基 配 列 も わ ず か2塩 基 のみ 異 な る だ け で あ り, 各 領 域 のORFも み 込 まれ た も の と推 察 され る。 ヒ トDNAに Kroger ら は, Mol に 相 補 的 な22bpの プ ロ リン を も つ プ ロ ウ イ ル ス, HuRRS-P 分 の 塩 基 配 列 の 比 較 に よ り, HuR RV-P3はHuRRS-Pと 同 じ種類 に 属 す る こ とが判 明 そ の5'-LTR中 して 得 られ た ク ロー ンの 中 に に AluI フ ァ ミ リ ー が1コ ピー挿 入 さ れ て い る も の が あ り, お そ ら く宿 主DNA上 イ ル ス と し て 組 み 込 ま れ た の ち に, AluI 移 動 挿 入 し, 5'-LTRの にプ ロウ フ ァ ミリーが 不 活 性 化 を導 いた も の で は な い か と推 測 さ れ る 。 こ れ ら の プ ロ ウ イ ル ス 群 の 内 部 構 造 は ま だ 解 析 が 進 ん で お ら ず, C. ど の 程 度, 他 のプ イ ソ ロ イ シ ンtRNAに 組 対応する pbs をもつ プ ロウ イル ス こ の タ イ プ の プ ロ ウ イ ル ス は, 伝子 (Hpr) 伝 子 の 第1イ 完 全 な も の に近 い。 したが っ て, こ の モ ザ イ ク型 内在 性 進 化 上 か な り最 近, 3種 類 の プ ロ ウ イ ル ス 群 (HuRRV- を 単 離 した 。 一 方, 対 応 す る pbs 5'-LTRに リボ ヌ 伝 子 と区 別 合 成 オ リ ゴ ヌ ク レ オ チ ドを プ ロ ー ブ と して, で 利 用 され て い る リジ ン tRNA_<1,2>(CUUア プ ロ ウ イル スは, ク ロ ー ニ ン グ の 際, ウ ス 肉 腫 ウ イ ル ス の pbs tRNAに tRNA ロウ イ ル ス群 と の相 同 性 を 示 す か は 不 明 で あ る。 互 作 用 の結 果 を反 映 して い る も の と考 え られ る。HERV -K10の 列 を 含 む が, 理 に よ り プ ロ リ ンtRNA遺 は, タ イ プ の プ ロ ウ イ ル ス はD型 ク レ オ チ ドを プ ロ ー ブ と 端 のCCA配 遺 伝 子 は 含 ま な い こ とか ら, ク レ ア ー ゼA処 ア 7-メ チ ル グ ア ノ シ ン の 部 分 で 特 はtRNA末 HERV-K10は の ど の型 とも部 分 的相 同性 を有 して い た。 つ ま り, こ の ヒ トで も こ の タ イ さ れ て い る^<48,49)>。 偶 然 に も そ れ ら はか な りユ ニ ー ク な ク し て い る。HuRRV-P1と レ トロ ウ イル ス をもつプロウ 筆 者 ら と他 の 研 究 室 か らほ ぼ 同 時期 に単 離 そ の全 塩 基 配 列 が 決 定 さ れ て い る^<39)>。 そ れ に よ る と, 奇 妙 な こ とにA∼D型 (約 レ トロ ウ イ ル ス は す べ て プ ロ リ ンtRNA を 単 離 した 。LTR部 HERV-K10と pbs を プ ラ イ マ ー と して 利 用 し て い る が, し た 。Pbs 3つ の研 究 室 か ら独 その 特 徴 的 な 長 いLTR ル カ リーア ミ ン処 理 し, マ ル チ コピ ー タ イ プ の モ ザ イ ク型 プ ロウ イ ル ス し か し, とは 異 な って い る。 異 的 に 切 断 し て 得 た3'側30ヌ 3. じ リ ジ ンtRNA_3 に 対 応 して い る。 約42qbpでMMTVに は, イル ス ウイ ル ス群 の報 告 もあ るが^<35)>, その詳細については検討 され て い な い。 領 域 に 相 同 性 を も つNMWV 場合 と同 ン チ コ ド ン) プ の も の が, は な く, 蛋 白質 の 生 成 に つ い て は 否 定 的 で あ る^<33)>。 ま た, BaEVのLTRを と pol 1,330bp) と pol に類 似 い。 解 析 した ク ロ ー ンに関 して は, 600bp以 連 プ ロ ウ イル ス MMTV^<46)>やHIV-1^<47)>の レ に相 当 す る遺 伝 子 は含 ん で いな 他 4と 名 づ け ら れ た プ ロ ウ イ ル ス^<44,45)>のpbs B. そ の 内部 に哺 乳 類C型 の (1988) MMTVの gag だ され た も の で あ る^<34)>。 この プ ロ ウ イル ス は415bpの Database Center for Life Science Online Service 13 ピー の 内在 性 プ ロ ウ イル ス がY染 色 体上 に も見 い だ され て い る^<32)>。 これ らはY染 LTRを No. の 解 析 中 偶 然 見 い だ さ れ た も の で, Hpr ロビ ン遺 伝 子 遺 ン ト ロ ン 内 に 組 み 込 ま れ て い た^<50)>。 この内 在 性 プ ロ ウ イ ル ス の pbs し, RTVL-Iと ハ プ ト グロ ビ ン 関 連 遺 は イ ソ ロ イ シ ンtRNAに 命 名 さ れ て い る 。Hpr (Hp) 対応 遺 伝 子 は ハ プ トグ と と も に 染 色 体16q21-22に 存在 ヒ ト内 在 性 レ トロ ウ イ ル ス遺 伝 子 の構 造 と発 現 して い るが, Hpr 遺 伝 子 に組 み 込 ま れ たRTVL-Iが 性 プ ロ ウイ ル スがヒ ト染 色体 上 に存 在 して い るか が わ か Hpr 遺 伝 子 を 偽遺 伝 子 化 して い るか否 か は不 明 で あ る。 こ のRTVL-Iは, 全 長 約9kbで 要 な情 報 を含 ん でい るが, env を コー ドす る領 域) に AluI 両LTRは の3'側 29 転写に必 る。 次 節 に お い て は, これ らプ ロ ウイ ル ス の 細 胞 丙 に お け る発 現 に関 して述 べ てみ た い。 (膜 貫通 蛋 白質 フ ァ ミ リーが 挿 入 され て い III. プ ロウ イ ル ス の 発 現 る との こ とで あ る^<51)>。 D. に は, 内在 性 プ ロ ウ イル スに 関 連 す る と 転 写 レベ ル で の 発 現 前 節 で述 べ た プ ロウ イ ル ス フ ァ ミ リー の うち2, 3に 考 え られ る トラ ンス ポ ゾ ン様 の構 造 も, さ ら に多 数 存 在 つ い て は, RNAの して い る。 本 稿 で は, 詳 し く述 べ な いが, た とえ ば, そ 転 写 量 お よび 特 異 性 に 関 し て は よ くわ か って い な い。 れ らの1つ 筆 者 らは1コ LTRを と して “O” フ ァ ミリーが あ り, 350bpの もつ2.3kbの 10,000コ 構 造 単 位 が1倍 染 色 体 あた り, ピー も あ り, さ らに, LTRの と呼 ば れ て い る) で30,000コ され て い る^<52,53)>。 そ して, Database Center for Life Science Online Service 1. トラ ン ス ポ ゾ ン様 因 子 ヒ トDNA上 DNA中 み (solo-LTR ピー存 在 して い る と推 定 この 大部 分 は 染色 体 外 性 環 状 に見 いだ され て い る。 しか し, ク ロー ン化 さ れ たTHE-1遺 伝 子 に は 明 白な pbs が 存 在 せ ず, その生 ピー タ イ プ のERV3プ ロ ウ イル ス に関 し て詳 細 に検 討 した。 ま ず 最初 に, レ トロ ウ イル ス粒 子 が 高 頻 度 に観 察 され るこ とが 知 られ て い る正 常 胎 盤 か ら全 RNAを 抽 出 した 。RNAの 抽 出 方 法 は, リチ ウムー尿 素 法 の 原 報^<55)>を 改 良 して 用 いた 。 こ の方 法 の特 色 は, 超 遠 心操 作 を 必 要 と しな い し, 一 般 に用 い られ て い る グ ア ニ ジ ウ ムチ オ シ ア ネ ー ト法 と比 較 して収 量 も よ く, 10 kb程 成 機 構 は 不 明 であ る^<54)>。 発 現 が 報 告 され て い るが, そ れ ら の 度 のRNAも 無 傷 の ま ま抽 出 で き る 点 に あ る。 以 上 述 べ た 多 くの フ ァ ミ リー に 関 して は, 表1に わ か ノー ザ ンブ ロ ッ トの結 果, 図3に 示 す よ うに, 調 べ た りや す くま とめ て み た 。 これ に よ り, い か に多 くの 内在 胎 盤 全 例, とくに 絨 毛 膜 に 多 量 に 発 現 して い る こ とが 観 表1. a) チ ソバン ジ ー内 在 性 プロ ウ イル ス, e) β-グ ロ ビン 遺 伝 子 下 流 に 偶 然 見 い だ され た, 粒 子, b) ヒ ト内 在 性 レ トロ ウ イル ス遺 伝 子 群 の分 類 マ ウ ス 白血 病 ウ イ ル ス, f) 成 人T細 c) ヒ ヒ内在 性 レ トロ ウイ ル ス, 胞 白血 病 ウ イ ル ス, i) ハ プ トグロ ビン 関連 遺 伝 子 の イン トロン 中 に 偶 然 見 い だ され た 。ND g) d) サ ル 肉腫 付 随 ウイ ル ス, マ ウス 乳 癌 ウ イ ル ス, h) マ ウス 小 胞 内A : 未決定。 2361 30 蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol. 33 No. 13 (1988) 個 人 差 を除 外 す るた め, で き る か ぎ り 同一 患 者 の正 常 お よび 癌 組 織 を 集 め る努 力 を した。 図4に, そ の1例 を 示 した が, ほ とん どの組 織 に お い てERV3の 発 現 が認 め られ た 。 胎 盤 を除 くす べ て の正 常 お よび癌 組 織 で は9 と3.5kbRNAあ 7.3kbRNAは RNAは, る い は9kbRNAの み が検 出 され , 検 出 され なか った 。 した が っ て, 7.3kb 胎 盤 特 異 的 なRNAプ ロセ シ ン グに よる も の と考 え られ る。 図5に 現 在 ま で得 られ て い る結 果 を ま と め て み た。 大 部 分 の組 織 にお い て は, 正 常 と癌 の間 に差 は認 め られ ず, そ れ らの発 現 量 は胎 盤 の10%以 図3. ヒ ト胎 盤 お よび 胎 児 に お け るERV3の 発現 そ れ ぞ れ の組 織 か ら抽 出 した 全RNA10μgを 流 し, ERV3 の env 領 域 (1,9kbのORFを 含 む) を プ ロ ー ブに 用 い て, ノ ーザン ブ ロ ッ トを 行 な っ た 。 1か ら7ま で は 妊 娠3カ 月 目ま で の も の を示 し, 8と9は 妊 娠 末 期 の双 子 の胎 盤 を 示 す 。BRL社 のRNA ladder (9.5∼ 0.33kb) を マ ー カー と し て用 い てRNAの サ イ ズ を 推 定 した 。 Database Center for Life Science Online Service 下 であ った。 しか し, 同時 に い くつ か 興 味 あ る結 果 も得 た。 あ る 胃癌 患 者 で は, 正 常 お よび癌 組 織 に お い てERV 3の 発 現 が ほ とん ど観 察 され な い に もか か わ らず, ポ リ ープ部 に お い て は 特 異 的 に そ の発 現 量 が 増 加 して いた (胎盤 の25%程 度)。 こ の現 象 が 一 般 化 で き るか ど うか は, 症 例 を増 や す こ とが 必 要 だ し, 大 腸 ポ リー プ につ い 察 され た。 そ の発 現 量 は ドッ トブ ロ ッ トの 結 果 か ら 全 て も検 討 の価 値 が あ る。 また, ホ ル ボ ル エ ス テ ル (TPA) mRNAの0.05%程 に よ り マ ク ロフ ァ ー ジ様 細 胞 に 分 化 したU937細 度 と推 定 してい る。 こ の発 現 量 は 妊 娠 の時 期 に関 係 な く, おそ ら く全 期 間 を通 して維 持 さ は胎 盤 の60%程 れ て い る と考 え られ, 9, 7.3お の5'-LTR中 mRNAが よび3.5kbの3種 類の 検 出 さ れ た。 しか し, 同 時 に得 られ た 胎 児 に お い て は, 非 常 にそ の発 現 量 が 低 く, 組 織 特 異 性 が 予 想 胞で 度 に発 現 量 が 増 加 し て い た 。ERV3 に は, TPAに よる転 写 活 性 の 上 昇 に 関 与 す る と考 え られ る塩 基 配 列^<56)>は 存 在 して い な いた め, こ の発 現 誘 導 は 別 の機 構 を 介 して い る もの と思 わ れ る。 され た 。 そ こ で, 組 織 特 異 性 あ る いは, 正 常 お よび 癌 組 最 も興 味 あ る結 果 と しては, 胎 盤 由 来 の絨 毛 膜 癌 細 胞 織 に お け る発 現 量 の違 い を調 べ る こ とを 目的 と して, 臨 に お い て得 られ た 。 例 外 な く高 い発 現 量 を示 す 正 常 胎 盤 床 材料 か ら ヒ トの組 織 を多 数 集 め た 。 そ の 際, 発 現量 の に比 べ て, そ こか ら派 生 した 絨 毛 膜 癌 樹 立 細 胞 株 で は, 図4. ヒ ト各組 織 に お け るERV3の 発現 図3と 同様 に ノー ザン ブ ロ ッ トを 行 な っ た (各 上 図)。RNAの 品質 を確 か め る た め, し て 同 じ メン ブ レン に 対 して 再 度 ノー ザン ブ ロ ッ トを 行 な っ た (各 下 図)。 A1 B1, 2362 トリの β-ア クチンcDNAを プロー ブ と : 甲 状 腺, 2 : 腎臓, 3 : 精 巣, 4 : 子 宮 筋 層, 5 : 胸 腺, 6 : 脾 臓, 7 : 胎 盤 (以 上 正 常)。 2 : 神 経 膠 腫, 3 : 乳 腺 (正 常), 4 : 乳 腺 (癌), 5 : 横 紋 筋 肉腫, 6 : ウ ィル ムス 腫 瘍, 7, 8平 滑 筋 肉 腫, 9 : 胎 盤 (正 常)。 ヒ ト内 在 性 レ トロ ウイ ル ス 遺 伝 子 の 構 造 と発 現 ERV3のRNA発 + :培養細胞。 現 量 の 比 較 そ れ ぞ れ の組 織 や 細 胞 か ら抽 出 した 全RNAの 一 定 量 に 対 して, ○ : 正 常 組 織, 図5. ● : 癌 組 織, 31 ERV3の env 領域 を プ ロ ー ブ と して ドッ トプ ロ ッ トを 行 な い, そ れ らの 発 現 量 を 比 較 推 定 した 。 1 : ウ ィル ムス 腫 瘍, 2 : 胃 ポ リー プ, 3 : U-937, 4 : U-937 (TPA処 理)。 図6に 示 す よ うに, 調 べ た5例 全 例 でRNAの 発 現 はほ ぼ完 全 に抑 制 さ れ て い た^<57,58)>。 さ ら に筆 者 ら は, 絨 毛 膜 癌 の 前駆 体 と考 え られ て い る胞 状 奇 胎 組 織 を調 べ る機 会 Database Center for Life Science Online Service を 得 た が, この 胞 状 奇 胎 に お い て も完 全 に転 写 は抑 制 さ れ て い た 。 この こ とは 癌 化 の初 期 にす で に転 写 抑 制 が起 こ って い る こ とを 示 唆 して い る。 こ の転 写 抑 制 の原 因 と して, 当 初, プ ロ ウ イル ス の構 造 上 の変 異 を考 え た が, プ ロ ウ イル ス上 の 特 定 の欠 失 や 組 換 え は 認 め られ ず, さ らに, メチ ル化 の パ タ ー ンに も 差 は 認 め られ な か っ た^<57,58)>。 予 想 外 に, 高 い発 現 量 を示 した 正 常 胎 盤 にお い A 〓 図6. ERV3 env 絨 毛 膜 癌 細 胞 に お け るERV3発 現の抑制 の領 域 を プ ロー ブ と した ノ ー ザン ブ ロ ッ ト。 B ト リの β-ア クチンcDNAを ロ ッ ト。 プ ロー ブ と した ノ ーザン ブ C 泳 動 後 の臭 化 エ チ ジ ウ ム に よる 染 色 。 筆 者 ら の経 験 に よ る と, 従 来 か ら 信 じ られ てい る よ うな 染 色 に よ る転 写 お よび ハ イ ブ リダ イ ゼ ー シ ョン の効 率 の 低下 は ニ ト ロセ ル ロ ー スに お い て認 め られ な い 。 1 : 胎 盤 (正 常), EIfa, 8kbRNAは 4 : GCC-SV, 2∼6 : 絨 毛 膜 癌 細 胞 5 : JAR, (2 : Dosmi, 3 : 6 : BeWo)。 図7. ERV3プ ロ ウ イル スか ら 転 写 され るRNA分 子種の構造 胎 盤 に お い て は, 他 の3種 のRNAに 比 べ て転 写 量 が 少 な い た め確 認 で きな い が, 他 の 組 織 で は9あ る い は3.5 kbRNAと 同 程度 に 転 写 さ れ て い る。 IVS : イン トロン, 〓 : エ キ ソン 。 2363 I 32 蛋 白 質 て もERV3プ ERV3の 核 酸 酵 素 Vol.33 No. 13 (1988) ロ ウ イル スは 高 度 に メチ ル 化 され て お り, 発 現 誘 導 には 何 か 特 異 的 な 転 写 因 子 の 関 与 が 想 定 され る。 正 常 胎 盤 に お い てERV3プ る3つ のRNA分 ロ ウ イル スか ら 発 現す 子 種 の構 造 に 関 し て は, ERV3が1コ 幸運 に も ピ ー で あ る こ とか ら 詳 細 な ノ ーザ ンプ ロ ッ トやS1ヌ ク レア ーゼ マ ッ ピ ン グに よ る解 析 が 可能 で あ った 。 結 果 は, 図7に 示 す よ うに 予 想 外 で あ った。 当 初, 筆 者 らは9kbのRNAをERV3の ゲ ノムRNA と予 想 して い た が, 3種 のRNAに の 大部 分 (5.9kb) を欠 くス プ ラ イ ス され たmRNAで あ った。3種 らの3'側 のRNAは す べ て gag と pol 同 じ転 写 開 始 点 を もつ が, そ れ が大 き く異 な って い る。3.5kbmRNAは レト ロ ウイ ル ス一般 に 観 察 され る env 蛋 白質 を コー ドす る Database Center for Life Science Online Service mRNAに 流20ヌ 対 応 し, 3'-LTR内 に存 在 す るAATAAA下 ク レオ チ ドで ポ リAが 付 加 して い る。 一 方, お よび7.3kbmRNAは, 3'-LTRを 9 越 え,さ らに370 ヌ ク レオ チ ド下 流 に お い て 再 び ス プ ラ イ ス され て い た^<59)>。 した が って, 9お よび7.3kbmRNAは, の 3'側 下 流 に そ れ ぞ れ5.5お それ ら よび3.8kbの プロ ウ イ ル ス 以 外 の ヒ ト由 来 の 情報 を 含 ん で い る こ とに な る。 最 近, 筆 者 らは, 3'-LTR下 を想 定 して, 胎 盤mRNAよ 流 に あ る種 の細 胞 遺 伝 子 り作 製 した λgt10のcDNA ライ ブ ラ リー (ラ ン ダ ム プ ライ マ ー を 使 用) か ら こ の 下 流 領 域 を 含むcDNA断 片 (2.6kb) を単離す るこ と に成 功 した^<60)>。 サ ザ ン ・ノ ーザ ン プ ロ ッ トに よ る解 析 か ら, 3'-LTR下 流 約8kbに600ヌ ク レオチ ド以下 の エ キ ソ ンが 確 認 され, さ らに 下 流 に 多 くの エ キ ソ ンの存 在 が 示 唆 され た。 一 部 の塩 基 配 列 を決 定 した とこ ろ, 図8 に示 す よ うに, ORFが 存 在 して お り, さ ら に下 流 に続 い て い る も の と思 わ れ る。 お ど ろ くこ とに, そ のORF 内 に は, 転 写 調 節 蛋 白質 な ど に見 られ るZn^<2+>結合 フ ィ ンガ ー構 造^<61)>の 少 な く とも9回 以 上 の く り返 しが 存 在 し, と くに, シ ョウ ジ ョウバ エ の “Kruppel” 遺 伝 子 に 関 連 す る マ ウス の mkr2 遺 伝 子^<62)>と 高 い相 同性 を 示 し た 。 興 味 深 い こ と に, ORF上 配 列 やCAT配 流 の適 当 な位 置 にTATA 列 が 存 在 して い る。“Kruppel” 遺 伝 子 は 胚 形 成 にお いて 重 要 な 遺 伝 子 で あ る こ とを考 え る と, ヒ トに お け る この部 分 も独 自の プ ロモ ー タ ー に よ り胚 形 成 期 に特 異 的 に発 現 して い る可 能性 が あ る。 したが っ て, ERV3は あ る種 のDNA結 合蛋 白質 を コ ー ドす る遺 伝 子 の近 傍 に組 み込 まれ て い た こ とに な る。 そ の ほ か, 筆者 らは, り, か つERV3か 2364 上記3種 のmRNAと は異 な ら転 写 され る と考 え られ る8kbの図8. ERV3の9および7.3kb RNAの3'-LTR 下流に相当する領域のcDNA断片の構造胚形成期などの Database Center for Life Science Online Service ヒ ト内 在 性 レ トロ ウ イ ル ス遺 伝 子 の構 造 と発 現 図9. 細 胞遺 伝 子近 傍 へ の レ トロ ウイ ル ス 組 込 み に よ っ て起 こ る異 常 なRNAプ トリ白血 症 ウイ ル ス (ALV) の場 合^<63)>。 A B マ ウス 白 血 病 ウ イル ス (M-MuLV) が生じる。 C ERV3の mRNAを 33 場 合 。--- の 場 合^<64)>。 こ の 場 合, : 推 定 され る イン トロン, 〓 見 いだ して い る^<60)>。 ノー ザ ン プ ロ ッ トに よ る 解 析 で は, この8kbmRNAはERV3の5'-LTR領 域 の プ ロ ー ブで 検 出 され るが, 3'-LTR (U3の み) な ど c-myb ロセ シン グの バ タ ーン 領 域 に 新 しい エ キ ソン (〓 で 示 した) : 推 定 され る エ キ ソン 。 お り^<65)>, そ の発 現 調 節 にお け る プ ロ ウイ ル ス の 関 与 が 予 想 され て い る。 ERV3以 外 の フ ァ ミ リー に つ い て も, い くつ か 発 現 の他 の 領 域 の プ ロ ー ブ とは ハ イ ブ リダ イ ズ しな い 。 さ ら に関 す る報 告 が み られ る の で簡 単 にふ れ て お きた い 。 マ に, 3'-LTR下 ル チ コ ピ ー タ イ プのC型 流 に 隣 接 す る領 域 の プ ロー ブで も検 出 さ れ な い こ と よ り, 3'-LTRか ら転 写 が 開 始 さ れ たRNA env やLTR領 プ ロ ウ イ ル ス フ ァ ミ リー で は, 域 を 含む4つ 分 子 種 とは 考 え に くい 。 したが っ て, こ の8kbmRNA は 図7に 示 す よ うに, 5'-LTRか ら転写 が始 ま り, ス プ て い る^<66,67)>。3.0と1.7kbに ラ イ シ ン グに よ り 直 接3'-LTR下 流域に 及んでい るも の であ る と推 定 して い る。 cDNA断 よび1.7kb) のRNA分 2.2お 子 種 (3.6, 3.0, が 胎 盤, 乳腺, 大 腸 な どで 検 出 され 対 応 す る と 考 え られ る 片 も単 離 解 析 され て い るが, それ らは 内部 に終 止 コ ドンを 有 して お り, レ トロウ イ ル ス に典 型 的 な 蛋 白 外 来 性 レ トロ ウ イル スの 場 合 に お い て も, ERV3の 質 の生 成 は 否 定 的 で あ る^<68)>。 マ ル チ コ ピー タ イ プ の モ ザ 場 合 と 同様 の変 則 的 な ス プ ラ イ シ ン グパ ター ンが最 近2 イ ク型 プ ロ ウ イル ス フ ァ ミ リー で も小 野 らが そ のRNA 例 ほ ど報 告 され て い る^<63,64)>。 それ らは, の 発 現 を報 告 して い る^<69)>。 ゲ ノ ム サ イ ズ のRNAと ル ス (ALV) ト リ白血 症 ウイ が発 癌遺 伝 子 で あ る c-erb Bに, 血 病 ウ イル ス (M-MuLV) が c-myb マ ウス 白 遺 伝 子 に組 み込 ま られ る8.8kbmRNAが 考え 乳 癌 由 来 の細 胞 株 (T47D) 含 む 数 種 の 培 養 細 胞 で 検 出 され て い るが, を そ の発 現量 れ た 場 合 で あ り, 図9AとBに 示 す よ うに, どち らの ケ ー スに お い て も, そ れ ぞ れ の5'-LTRか ら転 写 が始 ま は あ ま り高 くな い よ うで あ る。 また, 黒 色 腫 由 来 の 細 胞 り, gag あ る い は env 領 域 か ら直 接 ス プ ライ シ ン グに よ お よび6.8kb) り c-erb Bや いRNA分 c-myb 遺伝 子 に 連 結 した 異 常 なRNA分 子 種 が 検 出 され, 癌 化 の 原 因 と考 え られ て い る。ERV3 に な る もの と思わ れ る。 最 近, で は8.8kbの ほ か に3種 のRNA (20, 14 が 検 出 され て い る。 ゲ ノ ム サ イ ズ よ り長 子 種 に つ い て は, ERV3の 場 合 と同 じ よ うな 将 転 写 様 式 を反 映 して い るの か も しれ な い。 こ の フ ァ ミリ ー のLTR中 には , グル コ コル チ コイ ドあ る い は プ ロ ゲ の関 係 が 明 らか ス テ ロ ン受 容 体 が 作 用 す る と考 え られ る共 通 配 列 が存 在 の 場 合 もそ れ らの転 写様 式 と よ く似 て お り (図9C), 来, この下 流 遺 伝 子 の発 現 とERV3と (HMT-2) 唾 液 腺 型 の α-ア ミラー ゼ 遺 伝 子 の 転写 調節 領 域 に も, 4-1に 代 表 され る マ ル チ コ ピー タイ プ のC型 プ ロ ウイ ル ス の挿 入 が見 いだ され て して お り, 実 際, mRNAの 発現 は エ ス トラジ オ ー ル お よび プ ロ ゲ ステ ロ ンに よ り顕 著 に誘 導 され る^<69)>。 また, 最 近, MMTV関 連 プ ロ ウ イ ル ス と して紹 介 し 2365 34 蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol. 33 No. 13 (1988) た フ ァ ミ リーに つ い て も, 9つ の グル ー プ分 け が な さ であ る。 実 際, ヒ トに お い て ク ロー ン化 され た 内在 性 プ れ, 各 グル ー プに お け るRNAの ロ ウ イル スの ほ とん どは, す で に 感染 性 の あ る ウイ ル ス 発 現 が 検 討 され てい る^<70)>。 そ れ に よ る と, ほ とん ど の グ ル ー プ で1.2か 12kbに 及 ぶ そ れ ぞ れ に特 徴 的 なRNA分 ら 子種が発現 し て お り, 詳 細 な 検 討 が 待 た れ る と ころ で あ る。 粒 子 を 形成 で きな い構 造 とな って お り, プ ロ ウイ ル ス の 遺 伝 子 形態 す ら と って い な い もの もあ る。 した が っ て, こ の よ うな 内 在 性 プ ロ ウイ ル ス は不 活 性 な もの と して 捉 他 の フ ァ ミ リーに 関 して は, 現 在 まで の と ころ 転 写 レ え られ るで あ ろ う。 しか し, 冒頭 に も述 べ た よ うに, 胎 ベ ル で の解 析 は 進 ん で い な い。 しか し, 近 い将 来, ERV 盤 組 織 な どに お い て は, C型 レ トロ ウイ ル ス粒 子 が 観 察 3に お い て み られ た よ うな 異 常 な 転 写 様 式 が, 他 の フ ァ さ れ て お り, ウイ ル ス粒 子 を形 成 で き る少数 の 内在 性 ミ リーに お いて も 証 明 され る ので は な い か と 期 待 され プ ロ ウ イル ス の存 在 も示 唆 され て い る。 この よ うな ウ イ る。 ル ス粒 子 の 形 成 が あ る頻 度 で起 こ る とす る と, 逆 転 写 さ れ た ウ イル ス ゲ ノ ムDNAが 2. 遺 伝 子産 物 す で に 述 べ た よ うに, 蛋 白質 の生 成 が 可 能 な 数 種 の内 在 性 プ ロ ウ イル スが 得 られ て い るが, 今 まで の と ころ, Database Center for Life Science Online Service 宿 主DNAへ 組 み込 ま れ る で あろ う。 この 組込 み は あ る程 度 ラ ン ダ ムに起 こる と 考 え られ, それ に 伴 って 細 胞 遺 伝 子 の 機 能 を 破 壊 した り, 遺 伝 子 の発 現 制御 に影 響 を与 え る ケ ー スが 想 定 され これ らの 遺 伝 子産 物 を 同 定 ・単 離 した とい う報 告 は な い 。 る。 さ らに は, ERV3の env DNA再 領 域 か ら予 想 さ れ る生成 物 に つ い て は, 大 腸 菌 の 系 で 大量に 発 現 され た env 蛋 白質 を ウサ ギ に 内在 性 プ ロ ウイ ル ス それ 自体 を 介 す る 配 列, あ る い は転 座 に よる影 響 も考 え られ る。 そ の よ うな例 と して, マ ウス で は発 癌 遺 伝 子 の1つ で あ 免 疫 して 得 られ た 抗 体 を用 い て蛋 白質 の 同 定 を試 み て い る c-mos る段 階 に あ る。 免 疫 グ ロブ リ ン遺 伝 子 の不 活 性 化^<78)>が 報 告 さ れ て お り, 胎 盤 な どで は, 霊 長 類 由 来 の レ トロ ウ イル ス関 連 gag や イ ン ター ロイ キ ン3遺 伝 子 の活 性 化^<76,77)>や ま た, 発 癌 遺 伝 子 産 物 が 内在 性 プ ロ ウイ ル ス のLTRを 抗 原 が 免 疫 学 的 手 法 を 用 い て 検 出 され た 例 が あ る^<71∼73)>。活 性化 す る とい う話 も あ り^<79)>興 味 深 い。 しか し, ヒ トの しか し, これ ら の抗 原 が 内 在 性 プ ロ ウ イル スか らの 産物 例 は ま だ報 告 され て お らず, 非 常 に低 頻 度 で起 こ る現 象 で あ る証 拠 は な い 。 また, ERV1の gag な の か も しれ な い。 対 応 す る合成 ペ プチ ド (11ア 用 い て75Kの 領 域 の一 部 に ミノ酸) に 対 す る 抗 体 を 蛋 白質 を 検 出 した 報 告 も あ る が^<74,75)>, ERV-1が5'-LTRを 欠 く こ と, さ らに, RNAが 一 方 , 内在 性 プ ロウ イ ル スが 宿 主 の生 存 に有 利 に 働 い て い る の で は な いか とい う見 方 も あ る。 そ の一 つ に は, 検出 外 来 性 レ トロウ イ ル ス感 染 に対 す る遺 伝 的 宿 主 抵 抗 性 因 領 域 か ら由 子 と して の役 割 が 考 え られ る。 マ ウ スや ト リで は, こ の 来 した産 物 とは考 え に くい。 こ の よ うに, 内在 性 プ ロ ウ よ うな 因子 の い くつ か が 内 在 性 プ ロ ウ イル ス の産 物 で あ イ ル ス の産 物 に関 して は, ほ とん ど不 明 で あ り, 今 後 の る こ とが 判 明 して い る。 つ ま り, 内 在 性 レ トロ ウ イル ス 大 き な課 題 で あ る。 由来 の env の細 胞 表 面 発 現 に伴 い, そ れ が 細 胞 表 面 上 の IV. の受 容 体 へ の吸 着 を阻 止 す る とい うも の で あ る。 そ の例 さ れ な い こ とか ら考 え る と, ERV-1の gag ウイ ル ス受 容 体 を吸 収 し, 類 似 の外 来 性 レ トロ ウ イル ス プ ロ ウ イル ス の生 物 学 的 意 義 と して は, マ ウ ス のFv-4遺 す べ て の 脊 椎 動 物 のDNA上 に 何 百 何 千 コ ピー と存 伝 子^<80)>, ニ ワ トリのev-3, 6, 9遺 伝 子^<81)>が 知 られ て い る。ERV3の プ ロ ウ イル ス 在 す る 内在 性 プ ロウ イ ル ス は, 多 くの場 合, 化 石 化 しつ につ い て も, env 領 域 の発 現 が 認 め られ る こ とか ら, 宿 つ あ る プ ロウ イ ル ス, つ ま り進 化 の 過 程 で 宿 主DNA 主 抵 抗 性 を 担 う遺 伝 子 であ る可 能 性 が あ る。 この よ うな に 組 み 込 まれ た 外 来 性 レ トロ ウ イ ル ス の痕 跡 と して取 り 宿 主 抵 抗 性 は ヒ トに お い て も充 分起 こ りう る現 象 で あ る 扱 わ れ て い る。 は た し て, そ うであ ろ うか? が, ATLの は, 本節で ヒ トお よび 比 較 的 研 究 の 進 行 して い る ト リや マ ウス の 系 で 明 らか にな った こ とか ら, こ の点 に関 して 考 察 し て み た い。 原 因 とな るHTLV-IやAIDSの ル ス で あ るHIVの 原因 ウイ 感 染 に 対 す る宿 主 抵 抗 性 因 子 は ど う や ら ヒ トには 存 在 して い な い よ うで あ る。 別 の可 能 性 と して は, 進 化 の 過 程 で 内 在 性 プ ロ ウイ ル 化 石 説 の根 拠 とな る も の と して は, 宿 主 に何 の影 響 も ス 内 で の再 編 成 が起 こ り, そ の遺 伝 子産 物 が発 生 や 分化 与 え な け れ ば, プ ロ ウイ ル ス の多 数 の 痕 跡 は 何 の制 約 も な ど に密 接 に 関 与 して い るの で は な い か とい う点 が 考 え 受 け ず に メ ンデル の法 則 に 従 い継 代 され る とい う考 え 方 られ る。 ヒ ト以 外 の 系 で は, この説 を 示 唆 す る報 告 は 従 ヒ ト内 在 性 レ トロ ウイ ル ス 遺 伝 子 の 構 造 と発 現 来 か ら散 見 され るが, 最 も注 目され る の は, 免 疫 グ ロブ プ ロ ウイ ル ス群 か らは, 正 常 の大 腸 粘 膜 にお い てLTR リン の1つ の ク ラス で あ るIgEの を 含 む3.6kbのmRNAが 合 因 子 (IgE-BF) 生 合 成 を調 節 す る結 の 遺 伝 子 が マ ウス の 内在 性 レ トロ ウ イ ル ス の一 種 で あ る小胞 内A粒 子 (IAP) の遺 伝 子 の一 多 量 に発 現 して い る と報 告 して い る。 しか し, 大 腸 癌 で は, そ の発 現 が 有 意 に低 下 して い る。 こ のmRNAはLTR以 部 で あ った とい う事 実 で あ る^<82∼84)>。 つ ま り, ウイ ル ス ゲ は 含 ま ず, “solo”LTRか 外 の ウ イル ス ゲ ノ ム らの転 写 物 と考 え られ る こ と ノ ム 自身 が 宿 主 の新 しい遺 伝 子 に な って しま った例 とい か ら, こ の “solo”LTRが, え る。 そ の他 に, 赤 血 球 形成 能 を有 す る体 液性 因子 (エ 現 を調 節 して い る 可 能 性 が あ る。ERV3プ リス ロ ポ イエ チ ン) の遺 伝 子 が 多 くの レ トロ ウイ ル ス の の系 で も, 先 に述 べ た よ うに, LTRが gag 領 域 と相 同性 を示 す こ と^<85)>か ら, 内 在 性 プ ロ ウイ ル スが 利 用 され てい る可 能 性 が 考 え られ て い る。 ERV3プ ロ ウイ ル ス の env そ の下 流 の 細胞 遺 伝 子 の発 ロウ イ ル ス 下 流 のDNA結 合 蛋 白 質 を コー ドす る遺 伝 子 の発 現 を 調 節 して い る と考 え られ るか ら, 内在 性 プ ロ ウ イル スのLTRは 領 域 は 胎 盤 に お い て 多量 に発 現 して い る こ とを 先 に示 した が, 一 般 に, レ トロ ウ イ ル ス の env 領 域 か ら産 生 され る 遺 伝 子 産 物 に は 興 味 深 い 性質 が あ る。 そ れ は, 外 被 糖 蛋 白質 (MuLVで は gp70) の 細 胞融 合 能 と膜 貫 通 領 域 の蛋 白質 (MuLVで Database Center for Life Science Online Service 35 宿主 にお け る細 胞遺 伝 子 の発 現調 節 に 広 く利 用 され て い るの か も しれ な い。 また, ERV3プ ロ ウ イ ル ス の場 合, プ ロ ウイ ル スの 発 現 抑 制 と絨 毛 膜 癌 と の強 い相 関 を認 め て い る^<57)>。 こ の場 合 の転 写 抑 制 は, ERV3プ 再 配 列 あ る いはDNAの メチ ル化 に よる もの では な い こ ロ ウ イ ル ス の 欠失 や の免 疫 抑 制 効 果 で あ る^<86,87)>。 哺 乳 類 にお い て とか ら, 癌 化 に よっ てひ き起 こ され た 転 写 因 子 な ど の異 は, 細胞 融合 と免 疫 抑 制 は着 床 や 胎 盤 形 成 に 関与 す る現 常 に よ る も の で あ る と 考 え る のが 妥 当 で あ ろ う。 し か はp15E) 象 で あ る こ とか ら, ERV3の env 領 域 か らの産 物 が こ れ らに 密 接 に か かわ っ て い るのか も しれ な い。 い くつ か の 可能 性 を示 した が, す べ て の 内在 性 プ ロウ し, 絨 毛 膜 癌 に お け る特 定 の発 癌 遺 伝 子 の 活 性 化 お よび 染 色 体 異 常 は 今 の とこ ろ 見 つ か っ て お らず, ERV3プ ロ ウイ ル ス の発 現 抑 制 が癌 化 へ の1つ の ステ ッ プ と な っ イル スが 宿 主 に とっ て不 必要 な もの か否 か につ い て は, て い る可 能 性 あ る い はERV3遺 現 在 の と ころ, そ の解 答 は 得 られ て い な い。 それ は, 内 抑 制 因子 と して作 用 して い る可 能 性 も残 され て い る。 伝子産物 が腫瘍化へ の 在 性 プ ロ ウ イル スが ま った く存在 して い な い とされ て い た ニ ワ トリに も^<88)>, 別 種 の プ ロ ウイ ル ス群 が 多数 見つ か った か ら で あ る^<89,90)>。 この 点 を 明 らか に す るた め の別 の お わ りに ヒ ト内在 性 プ ロ ウイ ル スに 関 す る研 究 の現 ア プ ロー チ と して, プ ロ ウ イル スの 構 造変 化 や発 現 異常 状 を 紹 介 した が, ま だ理 解 で きな い 点 が 多 く残 され て い と種 々 の疾 病 との関 連 を 探 る研 究 もな さ れ つ つ あ る。 仮 る。 そ れ らは, これ らプ ロ ウイ ル ス の起 源, プ ロウ イ ル に, 内在 性 プ ロウ イル スの 欠 失 や 異 常 が 特 定 の疾 患 と結 スか らの 生 成 産 物 の 機 能, 細 胞遺 伝 子 と の相 互 作 用, 疾 びつ い て い るな らば, そ の プ ロ ウイ ル ス は正 常細 胞 に お 病 と の関 係 な ど であ る(図10に い て何 らか の機 能 を果 た して い た と予 想 され る。 疾 病 へ の 関 与 に 関 して は, 癌 化 の み な らず, 従 来 か らマ Gattoni-Celli らは^<67)>, マ ル チ コ ピ ー タ イ プのC型 関 連 図10. ウ ス (NZBマ そ れ らを ま とめ てみ た)。 ウ スな ど^<91)>) で 提 唱 され て い る 自己 免 疫 疾 内在 性 プ ロ ウ イル ス の起 源 とそ の遺 伝 子 産 物 の機 能 に 関 す る モデ ル 破 線 で 示 す よ うに, い まだ 未 解 決 の部 分 が 多 い。 2367 36 蛋 白 質 核 酸 酵 素 患 と の 関 連 を ヒ トに お い て も示 唆 す る報 告 が あ り^<92)>, 内 在 性 レ ト ロ ウ イ ル ス と 自 己 免 疫 疾 患 と の 関 係 も興 味 深 い 課 題 で あ る 。 ま た, Vol. 33 No. 13 19•zO'Connell, C., hen,M.: 20) nell,C., プ ロ ウ イ ル ス 群 は 格 好 の 素 材 で あ る と思 わ れ る。 そ の ほ (1983) 21) プ ロ ウ イ ル ス のLTRを 利 用 した相 同組 換 え とい う 夢 の よ う な 研 究 に 将 来 利 用 さ れ る か も しれ な い 。 い ず れ S. こ の 分 野 の 分 子 生 物 学 的 研 究 は, ま だ 日が 浅 い 23) 進 行 しっ つ あ る 現 在, 意 外 な 事 実 が 明 ら か に さ れ る 日が く る の で は な い か と期 待 さ れ る。 ERV3に 関 す る 研 究 の 大 部 分 は, レデ リ ッ クが ん 研 究 所 の Maurice れ た もの で あ り, Maurice Cohen に 深 く感 謝 致 します 。 ま た, 25) ご助 言 を い た だ い た 多 く Larsson Database Center for Life Science Online Service 博 士 に 感 謝 致 しま す 。 (1987) M., Powers, M., Virology, C., Scheidereit, C., Sci. USA, 81, von der 313, Leib-Mosch, 2) Liebermann, Sachs, 3) 32, D., L.: Hehlmann, 29) Repaske, S.: Proc. 7371-7375 Natl. J., Virology, 7) pp. Sci. J.: 1, 181-191 (1982) 4, 333-339 (1986) Janowski, 158, Coffin, Acad. M., 82-102 in A.: 1109-1203, Cold 34) Viruses, Spring P.: Vol Harbor Stoye, Vol. 9) J., 2, Coffin, pp. Kalter, S. Panigel, 10) 13) Dirksen, 59, K., Kurth, R.: Mondel, Viruses, Heberling, K., Strickland, Cancer Int., 37) R. 50, J. 28, 551-557 Lower, J., Virol., 64, 2549-2559 Wi Proc. USA, 71, 4513-4518 Bryan, Proc. Natl. T., Can Acad. S., Sci. USA, Natl. I., Acad. Sci. 285, H. Natl. M.: C., Cohen, M.: USA, 79, Mizutani, 550-554 Cell, 4709-4713 S., Temin, 43) 78, 599-600 Ono, Martin, R. Virol., Bryan, T., Biol., R., Rab 54, 764- Willey, 7, (1982) M.: R., 1559-1562 46) P. S.: M., Virol., Proc. 61, Natl. (1984) Takano, T.: Nucleic (1982) W., Chiu, Tronick, Sci. I. -M., B. S., Schlom, USA, 79, 5503- Virol., C., 58, R. Tro A., Sch (1985) 937-944 (1986) Miyata, 589-598 Sweet, S. 1208-1211 T., 60, J. F. H., Aaronson, 228, Virol., K. Wong, A., Yasunaga, J. Deen, T., Ushikubo, (1986) W.: J. Virol., 57, 422- (1986) Sonigo, P., Alizon, Cole, Haase, Power, A., D., B., P., K., Retzel, Wain-Hobson, F. E. E., Klatz E., S.: Tiol Cell, 42, A., Bryant, Luciw, M. P. A.: L., Gar Science, (1986) 45, B., C., Hunter, 375-385 E., Wain-Hob (1986) Westley, Diggelman, 4127-4139 F. E. P. P. J., Barker, Cell, May, Staskus, Danos, O., Marx, Barr, 1567-1572 May, M., S., (1985) M. Sonigo, Moore, J. 7510-7514 2865-2878 Roe, J. M., 11, 45) J. D.: Acad. R., M.: 743-749 (1980) J. Cell. 81, Science, Buetti, (1980) 21, T., (1984) O'Neill, B., Drohan, R., s on,S.: Proc. H. Mar USA, (1982) 231, Khan, 44) O'Connell, K., Nature, R., Proc. dner,M. (1981) T. A. 10, J.: 369-382 (1974) Rasheed, P. E., Sci. Bryan, E., Henthorn, Callahan, l ais,P., 42) J.: B., A.: Kurihara, mann,D., (1983) G. P. M. 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E., Martin, USA, Reddy, M.: Beato, C., 678-682 Silver, 33) 5) ˆä•ì—m“ñ : ŽÀŒ±ˆãŠw, Merregaert, 32) (1980) (1982) 4) •²•ûŒ÷•K : •×–E•HŠw, 6) B., Science, Kato, (1985) A.: 772 121-134 C., (1985) R.: Ž„•M Steele, (1983) 107, Cell O'Connell, M.: D., R., son,A. Hoffman-Liebermann, 74-77 (1986) 28) 30) 5-6 Virology, Rasheed, 79, Cell, O'Con Cytogenet. Cohen, Hehlmann, 31•zRepaske, R.: R.: Co M.: Ž„•M V., (文献番号を太字にした ものは特に重要な文献であ ることを示す) Jaenisch, M., 303, 449-458 Ahe, 706-709 27) M. 1) Cohen, 147, R., Cohen, 80, 献 B. G., (1984) tin,M. 文 I., 167-170 26) の方 々 に深 く感 謝 致 します 。 ヒ トの 種 々 の 組 織 を 集 め る た め ご 尽 力 を い た だ い た ス ウ ェー デン, ウ プサ ラ大 学 の Erik Reeves, W. (1984) Nature, 44, Renkawitz, 博 士 の も とで 行 な わ 博 士 な らび に 研 究 室 の 皆 様 ご指 導, J., T. G.: M. 1206 24) Bonner, W. O'Connell, 米 国 メ リー ラン ド州 の フ Cohen J., Nash, Nash, 225-235 Genet., 22•zCohen, こ と も あ り, 多 く の ヒ ト内 在 性 プ ロ ウ イ ル ス 群 の 解 析 が S. J., 138, Renan, N.: に せ よ, O'Brien, Virology, O'Brien, 分 子 進 化 と い う観 点 か ら も こ れ ら の か, (1988) B. 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