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(2) ヒアリング調査

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(2) ヒアリング調査
(2) ヒアリング調査
文献調査の結果を基に、我が国の社会経済的・自然的特性に合致した事業フレーム、支
援枠組みの方向性をもつと思われる海外の先進事例を選定した。
現地を訪問し、関係者に対して、文献調査からは把握できない「農林水産資源の経済的
評価手法」や「農山漁村の生物多様性保全を支援する民間参画のしくみ」に関する成果や
課題についてヒアリングをおこなった。
図表 31 ヒアリング先一覧
国
組織
プログラム
Sustainable Catchment Management Programme:
United Utilities(水道事業者)
SCaMP
Natural England (非政府執行機関)
Delivering Nature’s Services Programme
- WATER
イギリス
Westcountry River Trust(NGO)
- Upstream Thinking
PES, biodiversity offset, Ecosystem markets Task
Defra(イギリス環境・食糧・農村地域省)
force
フランス
Royal Society for the Protection of Birds (RSPB)
Biodiversity Technical Assistance Unit (BTAU)
(NGO)
Project
Agrivair(Vittel 農業環境支払のために設立された
ネスレ子会社)
ドイツ連邦環境基金
Nachhaltichkeit Stiften!
DBU (Deutsche Bundesstiftung Umwelt )
(開発事業の森林代償プール制度)
Gottfried Friedrichs(水産加工メーカー)
ドイツ
Vittel 水源保全活動への直接支払い
WWF Germany (NGO)
MSC 認証
ブランデンブルク州環境庁(地方自治体)
ユネスコエコパーク(生物圏保存地域)
Angermuende 町内認証取得事業者(パン屋、本
屋・出版)
91
Schorfheide-Chorin における地域ブランド認証
1)United Utilities:Sustainable Catchment Management Programme (SCaMP)(イギリス)
① 活動概要

58,000ha の所有地(うち 30%が特別科学関心地域:Sites of Special Scientific
Interest:以下 SSSI)における水源地の生態系保全と水質改善のため、設備投資
を中心に借地農家の環境汚染対策を直接的に財政支援。包括的な水源地環境対
策がコスト低減に有効との認識の下、水道利用者に意向確認、イギリス水道サ
ービス規制局 Ofwat (Office of Water Services) の認可を得て 2005 年に開始。

同社のプログラムは同様の制度や生物多様性保全上の政策目的を共有する環
境庁、Natural England や環境 NGO 等に支持されており、連携し、公的な農業環
境支払制度と組み合わせて実施されている。具体的には、同社が協力して農家
の活動計画を立案し、その実施にかかる資本的支出を同社が負担する。後に公
的補助金が得られた分については、農家から同社へ返還される。
② 活動のフロー
SSSI水源地の農家
United Utilities(水道事業者)
水 道料金 (
保 全費用 上乗せ)
■支援内容
• 環境保全(水質汚染の防止や生物多様性の保護・増
進)に資する設備投資に対し資金拠出
■支援の理由
• 浄水場施設の能力を超える色水等の削減(濁度・病原
菌負荷を低減し将来の浄水コスト増を回避)/CSR
Natural England、森林委員会
(農業環境所得補填金は別途)
助成例:農家28軒に年間15万ポンドを10年間
■支援の理由
• 生物多様性国家戦略や森林創出目標の達成
• 農業環境政策、条件不利地対策
設備投資 資金 (+環境 ・農業 経済的アドバイス)
実績:5年間で1,070万ポンド投資
■活動内容
• 環境保全に資する設備改善プロジェクトを実施
(例)土壌改善、生け垣や柵の設置、エコツーリズム用ホリ
デーコテージ等の建設、固有種の天然更新
• 公的な農業環境直接支払制度をNatural Englandや森
林組合へ申請し補助金を受けることも可能で、UU社か
らの受け取り資金と重複する分はUU社へ返還
■費用の算出方法
• 基本的に、設備改善にかかる見積もりベース
• プロジェクト作業計画を共同作成して合意(契約)
• 信頼関係の醸成がポイント
効果(長期的視点)
環境NGO(ナショナルトラスト等)
■支援の理由:自然保護、生物多様性の増進
水道利用者
将来の高コスト負担のリスク回避
公共(自然にアクセスする全ての人々)
※短期的には計画どおり実施されたことの確認
および濁度や病原菌等の水質モニタリング
• 泥炭地の保全による、
•水質改善
•洪水や水源汚濁の防止
•炭素吸収・貯蔵能力の向上
• 農村コミュニティの維持(過疎化、農業放棄を防ぐ)
• レクリエーション機能の向上、田園風景や文化遺産の保全
• 野鳥、ほ乳類、植物等の地域固有種の保護・増進
生物多様性の保全、福利厚生の向上
③ 活動のポイント

費用対効果の面から規制当局が浄化設備への投資よりも水源地対策を推進す
るという後押しがあった。

個別農家の具体的な改善計画の策定には専門の NGO と協働。RSPB(Royal
Society for the Protection of Birds)を同社が雇い入れてアドバイスを得る形。

水質改善の他に、農業不適地での農村コミュニティの維持や、文化遺産の保
全、レクリエーション機能向上等に貢献。地域の生物多様性計画とも整合。

信頼関係の醸成がポイント。同社の場合は自社所有地での活動から始めてい
92
るため、借地農家との関係は構築しやすかった。
④ 今後の予定

一番の課題は活動によるこれまでの改善点の数値化。Ofwat は取水流域にもた
らされる便益に着目しており、この便益は長期的にしか計れないため、生物多
様性と水質の 2 つの観点から Ofwat に対しアピールするための方法を考える必
要がある。

2015 年以降は同社の所有していない土地へ活動を拡大する予定。ある程度影
響力のある地域の団体と協働のパートナーシップを組んでいくことが考えられ
る。
2)Westcountry Rivers Trust: WATERS & Upstream Thinking Project(イギリス)
① 活動概要

WATERS(Wetted land: the Assessment, Techniques & Economics of Restoration )
プロジェクトは、水質だけでなく炭素吸収や生態系全体の便益に対する支払制
度の理論構築を目指す英仏国際プロジェクトで、欧州委員会(欧州地域開発基
金:European Regional Development Fund、ERDF)より 4 百万ユーロの助成金を
得て 2009 年に開始された。

Upstream Thinking プロジェクトは、イングランド南西部の水道事業者 South
West Water が、水源地域の農家に対し水質を保全するような土地利用や修繕を
行うことについてその費用を支払う制度で、2010 年に開始された。この制度は
複数の NGO や、環境庁、Natural England 等の公的機関がパートナーシップを組
んで SWW 社の各水源地で運用されており、一例として Tamar 川流域では倫理
的ブローカー(仲介者)の WRT が推進している。WRT は WATERS で構築し
たモデルを Upstream Thinking にて現実に実施している。
UU の事例との違いは、
SWW と地域農家の間に直接的な関係
(UU のような借地契約関係)
がないため、
仲介者として WRT が入っている点である。および、WATERS の成果である個
別の生態系サービス買い手向け費用便益算出ガイド(作成中)に基づき、複数
の受益者間で農家の費用負担を按分できる点も異なる。
② 活動のフロー
93
WATERS
目的:
-水源地の生態系回復関連主体の特定
-民間事業者投資を促す費用便益指針の作成
方法論:
-ケーススタディの収集とモデル化
(水文学的流出係数モデルなどを使用)
成果の活用方法:
-湿地回復事業の便益の受益者(複数)に情報提
示し費用の負担方法を協議
実践
Upstream Thinking
Tamar流域担当
WRT工数1.5人/1.5年
Tamar流域農家
450軒中100軒*9割参加
目的:WATERSで構築したモデルの実践(※他にも類似のケーススタディサイトが複数ある)
<生態系サービスの買い手例>
<仲介者>
<生態系サービスの売り手>
費用見積
資金
South West Waters
Westcountry Rivers
農家
Trust(NGO)
(水道事業者)
・農業資源管理計画
の作成
資金
・投資効率65分の1 水質データ ・生態系回復事業の
助言、支援
・助成されなかった分
・水道利用者から65p
費用の2分の1助成
の投資額負担
上乗せ料金徴収
・ファンドレイズ、
管理コスト最小化
・営農方法の変更
・モニタリング支援
資金
・受益に応じた費用
港湾管理当局
効果
負担のあり方提案
(ex.水質改善、保水機能向上)
森林委員会
③ ポイント

関係者間の信頼関係の構築が重要。仲介者が農業者のビジネスを理解し参加
による経済的便益を啓発すること、(不参加であっても)農家の営業機密を守
ること、買い手事業者間の費用の按分方法の決定における合意形成などの局面
で重要となる。
④ 今後の予定

SWW との関係強化(水質改善を進めより満足を得ること)

より多くのバイヤー集め
①大口・単一の利害関係者に個別に順次アプローチ、
②複数の細かな利害関係者と一斉に検討すること
(参考)イギリスにおける公的農業環境支払い制度
 政府の農業環境支払制度について
イギリスには欧州の共通農業政策(Common Agricultural Policy, CAP)による農家
に対する単一支払制度(Single Payment Scheme, SPS)が存在する。これの受給
94
には、環境保全を含む最低限の「クロス・コンプライアンス」要件を満たして
いる必要がある。
さらに、
イギリス独自の環境スチュワードシップ制度
(入門レベル及びハイレベル)
に基づく農業環境支払制度も存在する。
単一支払制度と環境スチュワードシップ制度の関係は以下のように整理できる。
農業環境支払制度の概要
ハイレベル環境スチュワードシッ プ
(HLS)
入門レベル環境スチュワードシッ プ
・イギリス内の公的農業環境支払制度
・社会的に見て維持すべきとされる水準以上の環境便益の提供に対して助成
・比較的広い地域を対象とするELS と環境価値の高い特定の 地域(SSSI等) を対象とするHLS に分かれる
・ポイント付与の対象となる取り組みのオプシ ョンはELSで60 程度、HLSでは300以上
・取り組み項目は3年間の調査研究を経て生物多様性の保護に有効なものを選定
(ELS)
単一支払制度
(SPS)
・欧州共通農業政策(CAP)の一部で生産要素と切り離した所得支援
・支払いを受けるためには「クロス・コンプライア ンス」要件を満たす必要がある
・クロス・コンプライアンスは公衆衛生、家畜衛生・植物防疫、動物福祉、環境保全、景観に関するEUおよび英国法
環境保全型営農方法を定めた英国法的基準(Standards of Good Agricultural and Environmental Condition, GAEC
等からなる
(資料) [野村, 矢部, 和泉, 平井, 西尾, 2010]11、 [石井, 2007]12、[Defra, 2011]13、[Defra, 2012]14
(参考)欧州・イギリスにおける農地の環境的価値評価方法
 農地の自然的価値・生物多様性の定量評価とその利用について
(1)欧州レベルの評価・選定
・ 欧州委員会研究総局と欧州環境庁等が営農によって高い生物多様性が維持
されている「自然的価値(High Nature Value, HNV)の高い農地」選定手法を
研究開発しており、CAP 補助金への反映がなされている。
・ HNV 農地には 3 つのタイプ(①半自然植生の割合が高い農地、②低集約農
業または半自然植生と高地のモザイクかつ小規模な農地、③希少種の生息地
またはヨーロッパや世界の総個体数の多くの割合が生息する農地)がある。
欧州における HNV 農地は放牧地や野草地などの半自然草地、あるいは混牧
林地などの低投入の農地である点が大きな特徴。
・ 評価には土地被覆データに加え生物相データ(稀少・絶滅危惧種や生息地指
令、鳥類指令に基づく地域データ、野鳥データベース:Important Bird Areas,
IBA、蝶類データベース:Prime Butterfly Areas, PBA、植物分布データベース:
Important Plant Areas, IPA 等)を使用して統合。
・ 農業の集約化と農地管理の放棄のいずれもが好ましくないという考え方に
基づいている。
・ HNV 農地は生息地として質の高い特定の農地を抽出することを目的として
いる(よって通常の営農方式が支配的な地域での評価にはつながらない)。
(2)イギリスにおける評価
・ 農村地域の環境変動をモニタリングするための CSI(Countryside Information
95
System)と CS(Countryside Survey)がある。
・ CIS は農業生態系タイプごとの生物生息情報を収集し、他機関のデータと関
連づけ、農業環境変化に伴う生物相の変化を把握。CS は衛星データを用い
た全国土の土地被覆図作成と野外調査により農村地域の自然環境に関する
時系列データを収集。この 2 つを組み合わせることにより社会経済的条件を
加えた土地利用変化シナリオ分析に基づく環境変化予測に役立てられてい
る。
 イギリスの特別科学関心地域(SSSI)制度について
・ 特別科学関心地域(Sites of Special Scientific Interest:以下 SSSI)とは、自然
保護の観点から重要な地域であり、法に基づき国が指定する。SSSI では農業
方法や土地利用形態などが管理・制限される。
・ SSSI の状態は【良好】、【良好ではないが、回復している】、【良好ではな
く、変化無し】、【良好ではなく、さらに劣化している】の 4 段階に評価さ
れる。20 世紀後半に行われた集約的農業促進政策の影響等により SSSI の状
態は劣化。2003 年時点で良好な状態にある SSSI は 57%であった。このため
イギリスは生物多様性アクションプランの中で、SSSI の保全状況に関する目
標を設定。【良好】または【回復している】とされる地域を 2010 年までに
95%とする目標を掲げた。なお 2010 年末にはこの目標は達成された。
(資料) [Defra, 2010]15 、[大黒, 山本, 三田村, 2008]16、 [山本 楠本, 2008]17
96
3)Defra: 生態系サービスと経済に関する政策全般(イギリス)
① 活動概要

2011 年 6 月、世界に先駆けて英国の国家生態系評価(UK National Ecosystem
Assessment)発行。
・英国内のさまざまな生息地を特定し、それぞれの生息地がどのような生態系
サービスを提供し、どのような機会があるかを論じている。
・結論: 短期的には最も機会が大きいのは水道事業者であるとされた。

同年同月、自然環境白書“The Natural Choice: securing the value of nature”発
行。
・目下取り組んでいるコミットメントは、PES のベストプラクティスを紹介す
ることと、自然資本を保護、改善しながら英国産業界が最大限の利益を得る
ようにすることである。

Ecosystem Market Task Force(生態系市場タスクフォース)について
・2012 年発足。自然資本委員会(Natural Capital Committee、政府に対し経済界
の生態系サービスへの取り組みに関して助言を行う機関)の下に設置。委員
長: 日用品メーカーKingfisher Ian Cheshire 氏。メンバー: 産業界より
9 名(UU 社 CFO, Unilever, ジャガー・ランドローバー、倫理ブローカー・
コンサルタント等)
・政府、企業、消費者にとって生態系に配慮した取り組みの機会を特定し、ま
たそれらの経済性、採算性について検討する。例えばハビタット・バンキン
グについても調査研究。
・2013 年にとりまとめを政府にレポート予定

農業分野の生態系保全に関する見通し
・どれくらい自然環境の状態が向上したかを重視 → 農業環境支払制度に関して
も、現在のマネジメント評価から今後は成果に焦点をあてた評価へ(白書 2.50)
97
4)Natural England: Delivering Nature’s Service Programme (Uplands Project)(イギリス)
① 活動概要

英国国家生態系評価(National Ecosystem Assessment, NEA)が 2011 年に出され
るなど生態系サービスの便益や手法が示されつつあるなかで、実際のプロジェクトに
生態系アプローチを適用しようとする試み。

3 か所のプロジェクトサイト(Yorkshire Water、UU 社、RSPB)で、経済評価を実施し、
生産管理手法を変えた場合の生態系、生態系サービスの評価を示し、農家等の意志
決定をサポートした。
② 活動のフロー
■各種環境データを利用
関係主体とのパートナーシッ プ構築・対象地域の確定
現在の生態系サービスの特定・受益者の特定
・高地生態系サービスアトラス データ(2009年、 NE)
・国立公園、水道事業者、環境庁洪水リスクマッ プ、面積あたり家畜頭数、
泥炭地質層・炭素吸収データ 等
将来の生態系サービス供給シナリオの開発
現状と比較したシナリオの評価
将来の生態系サービス供給に関する関係主体の合意の形成
生態系保全活動の実施に向けた協同と資源の準備
土地管理方法の決定・実施計画の策定
生態系保全活動の実施
■シナリオの費用対効果の算出
・Upland ProjectではDefra指針(2007年)に基づく試行実施
・対象サービス:炭素貯留、水質等。
生物多様性、自然アクセス、レクリエ ーションの定量化はデータ不足により不可能で
あるため、便益移転法を用いて推計。
・初期費用情報としてはHLSコストデータを使用。
③ シナリオ経済評価のポイント

推計は、Bateman18を参考に、Christie19他 及び NEA 、エネルギー・気候変動省
(DECC)等の成果を活用して実施。

評価項目および評価の手法は以下の通り:
-炭素貯留、吸収(直接法)
-水質変化(直接法)
-生物多様性(便益移転)
-レクリエーション(便益移転)
-洪水調整(便益移転)

NEA,DECC の成果を利用した推計では、集水域に 1 ポンド支払った場合には 2.96
ポンドの便益、集水域に 1 ポンド支払わなかった場合は 5.20 ポンドの損失となった。

Christie el al の結果を利用した推計では、集水域に 1 ポンド支払った場合には
1.31 ポンドの便益、集水域に 1 ポンド支払わなかった場合は 2.03 ポンドの損失となっ
98
た。

なお、利用するデータについては慎重に実施し、過大評価が生じないように留意し
ている、また、感度分析を実施しているが、いずれのシナリオでも B/C は 1 を超えてい
た。
④ 今後の課題

よ り多くの バイヤーを集め 、生態系サービ スのパッケ ージ化 を図り、仲介者
(Environment Bank)による販売を実施する。
99
5)Agrivair(Nestle Waters): Vittel 水源保全活動への直接支払い(フランス)
① 活動概要

地下に天然水(ナチュラルミネラルウォーター)を育む水源地の農村に対し、水源
保全にかかる費用を補助し、水源汚染しない農業活動への変革(農業技術基準書の
30 年間遵守)を契約。具体的には①用地購入と長期無償貸与②農機具購入補助③
農法移行期の収入補填、その他の無形支援として農業技術指導、農作業の支援(技
術的に適正な管理の提供)等。

調査により特定された各天然水の濾過地面積および土地利用形態は下表の通り。
CONTREX
農地
VITTEL
2 500 ha
3 600 ha
25 ha
600 ha
建物
600 ha
400 ha
森林
975 ha
400 ha
4 100 ha
5 000 ha
公園およびゴルフコース
TOTAL
(資料)Agrivair

専門子会社の Agrivair を設立して技術基準書の実行と農家への無償コンサルティ
ング等、水質や社会経済指標モニタリングに対応。

水源地周辺における農業やゴルフ場での農薬等の使用により地下水の硝酸塩濃
度が高まり、汚染によりブランドである天然ミネラル水を生産できなくなる事業リスクに
対応。(ただし Agrivair の事業は商品リスクでもあり、長い間宣伝は控えられてきた。
最近は状況変化してきているとのこと。)
100
② 活動のフロー
Agrivair
農家(及び他の地域経済主体)
資金・技術支援・モニタリング
対象地域の調査
-水文学的・地質学的特徴の把握
-地域の産業・経済状況、汚染源の把握
水源地保全の法定グッド・プラクティスの確認
-EUレベルの基準
-フランス国レベルや、地方自治体等の基準
地域の農業経営者の実態調査(3年間)
-調査統括(経済学者)
-人文系(歴史学、地理学、社会学等)
-自然科学系(農学、土壌学、動物学等)
-戸別訪問聞き取り、データシミュレーション等
研究者(賃金負担)※物件費ネスレ負担
国立農業研究所(共同研究)
営農変更(18~20年間の長期基準書実践)
説得、合意形成&農家と契約締結
農業従事者のタイプ別アプローチ
-営農形態、現在の経営状態や将来の経営状態
の予測、持続性などで分類
-農法の変更の受入条件の模索、経済的メリット
の提案
農業技術基準書の作成
-目標:農薬不使用、地下の窒素化合物
沈下量10mg未満/1L
-営農基準(例):
-トウモロコシ作付を止めウマゴヤシに変更
-家畜糞尿の堆肥化
-クローバー含む輪作導入
-牧畜の粗放化 等
他
新会社化・ビジネス化、地域雇用創出、投資回収
水源地面積の
9割以上に適用
※初期には農業省が一部負担しデータ共有
財政支援
-土地の無償貸与
-所得補填(1haあたり月200ユーロ*5年間)
-設備投資費助成(農家1件当たり15万ユーロ)
無形の支援
-農業経済的な技術助言、農場経営指南
-技術的能力をもつ職員の農作業従事(堆肥管理等)
地方自治体
助言
汚染予防、資源循環、エネルギーインフラ改善
生物多様性保全施策
効果
天然ミネラル水ビジネスの維持
水源地(水質)保全、生物多様性の保護・増進
地域農業経済の発展
-農家の負債軽減、農業の維持、収入増加
-新産業立ち上げ(メタンガス、無農薬ベビーフード等)
③ 活動のポイント

農家に農法変更をしてもらうためには、農家の経営状態を把握し、現在及び将来
にわたる収入の確保・改善が可能となることの説得材料の提示が重要である。

同じ方法論は他に展開可能、初期の現地状況把握に注力した。

地域を巻き込み新産業の発展につなげると共にネスレは投資額を回収しつつあ
る。

欧州共通農業政策の農業環境補助金に比べコスト効率は 2 倍である。
101
6)Royal Society for the Protection of Birds(RSPB): BTAU Project(イギリス・欧州全域)
① 活動概要

民間銀行による中小零細事業者(SME)向け生物多様性ビジネス融資の構想開発。
企業、個人、第 3 セクターなどから共同投資資金を集め、SME 向けに融資すると共に、
生物多様性の査定やモニタリング業務に従事するエキスパートをプロジェクト単位で
派遣契約するしくみを提供。2007 年初頭から 2010 年 4 月まで約 3 年間のプロジェク
ト で あ り 、 そ の 後 「 生 物 多 様 性 に 配 慮 し た ビ ジ ネ ス ( Pro-Biodiversity Business,
PBB)」は独立採算で維持される。

PBB の例:有機農法、有機農産物生産、エコツーリズム、スポーツフィッシング、伝
統的な畜産、種子採取(育種)、牧草地管理、持続可能な魚類養殖、林業・木材加工
② 活動のフロー
融資可能性検討
投融資プロジェクト提案、要望調査
金融機関
RSPB/BTAU
技術コンサル、訓練
(調査研究・メカニズム開発)
欧州Natura2000地域(草地、海洋、森林、
湿原)にあるSMEが生物多様性保全ビジ
ネスに取り組むための資金調達における
機会と課題の特定
“Probioprise”(2004-006)
教訓:SMEには積極的なアプローチと
技術的支援が必要(融資の受け方や自然
保護手法などの技術が不足)
欧州内の民間銀行、欧州復興開
発銀行、欧州投資銀行
世銀、
Troiodos bank(蘭の倫理銀行)
ブルガリア、ハンガリー、ポーランドを拠点
に生物多様性保全ビジネスに取り組む
SMEを技術支援するユニットを設置
-生物多様性保全ビジネス計画策定支援
-投融資者(企業、金融機関)の要望調査
-資金調達の機会と限界の確認
-ハンドブック作成
BTAU(2007-2010)
その他の付加的プロジェクト
2件
教訓:単一企業への投資には限界があり、
生態系保全には生息地単位での産業クラ
スターへ投資する必要あり
プロジェクトサイトをEU域外のアジア草原
持続可能な資金調達(2011)
ビジネス化支援、資金調達支援
投融資申込
金融機関
SME(農家等)
BTAU
モニタリング支援
生物多様性保全ビジネス計画の策定
SMEの事業をプロバイオの方向へ変更
貸付
地帯(ロシア、カザフ)へ拡大し産業クラス
ターを対象に試行
自然資本関連の中小企業
対象:(業種)1次産業(農業等)、
2次産業(食品加工等)、
3次産業(観光業等)
(規模)従業員数 1,2人~100人
収益 5万~100万ユーロ
生物多様性に配慮した事業計画の立案
実施
(例)有機農法、持続可能な魚類養殖、
エコツーリズム
成果:産物エコラベル等の認証取得
※今のところ5つのプロジェクト成果は
BTAU設置手順、投融資審査基準の開
発、実際のSMEとの協同スキーム試行
まで。金融機関を含むPBB投融資の試
行には至らず、今後の課題。
資金提供者
政府(補助金交付機関)
企業基金
(技術支援)
変化を支援する資金提供の方法(3つ)
1)寄付(返還義務なし)
2)政府補助金(条件に応じ支払い)
3)民間銀行融資
▼
選択あるいは組み合わせ検討
それぞれの課題:
1)短期間では成果が出せず失敗しやすい
2)制度の利用方法が農水産業者にわからず使われない、
支払金が終了すると事業も止まる(次の支払条件へ移行し継続しない)
3)SMEには土地以外に担保がない、長期的視点の投資に商業的金融機関が難色(評価方法がわからない)
問題解決のためのツール開発(2つ)
1)複数資金の組み合わせ方法(Blended Finance Instruments)
2)自然保護地域にフォーカスし保全要求事項に照らしてビジネス機会計画(行動計画)を策定する方法
投融資/助成等の申込
農村のネットワーク活用した融資審査
・財務スクリーニングや法的デューデリ
チェックを地域銀行が実施
・環境デューデリはBTAUが実施
環境審査基準
・Natura2000等の自然保護地域における管理オプションの適用
・外部の認証制度(土壌協会の有機農法基準など)の活用
・(地銀が)融資決定
102
③ 活動のポイント

生物多様性保全ビジネス変革に向けた SME の積極的啓発と技術支援(認証活用
等)

一定の“地域”単位、産業クラスター全体での取り組み(による銀行の取引コスト低
減)
④ 課題

企業、銀行、関連官庁、NGO 等の利害関係者を一堂に集めて参加させる枠組み
支援の必要性(政府への要望)

(MURC 憶測:金融機関の関心、生態系ビジネスチャンスやリスクへの理解を十分
に高めるためのしくみ不足)
103
7)ブランデンブルク州環境庁: Schorfheide-Chorin 地域ブランド認証“Prüfzeichen”(ドイツ)
① 活動概要(ブランデンブルク州環境庁 Schorfheide-Chorin 保全地区管理担当課の
取り組み)

UNESCO 指定保護区である Schorfheide-Chorin 地域(面積約 13 万 ha、住民約 3
万人、土地利用割合:森林 49%、農地・牧草地 35%、湖 7%、住居・道路等 5%)にお
ける生態系維持と地域の経済維持の両立を目指して、森林や生物資源の管理を維
持するような生産基準を満たした生産物にブランド価値を与える地域ブランド認証の
事例。

EU の LEADER+プログラム基金を得て Schorfheide-Chorin 認証制度を確立、
UNESCO が 1990 年に認可。ラベリングは畜産物、農産物、はちみつ、水産物から手
工芸品まで幅広くにわたる。エコツーリズム、旅館業、木材加工などにも適用。
② 活動のフロー
行政
中間組織(公益法人)
認証制度の設計、基準開発、改定
認証付与のための審査
認証基準作成には外部の科学的研
究や他の信頼性高い認証基準を参考
に検討
認証事業者の広告宣伝支援
認証基準は業種別に作成
認証基準のクライテリア構成(例
-地域性
-環境(水、廃棄物・リサイクル、エネルギー)
-品質
-監視システム
クライテリアごとに①必須項目と②追加的
項目があり、実施点数によって認証を付与
事業者
1次(農・漁業者等)、2次(食品加工、
手工業等)、3次(宿泊・飲食業、レクリ
料金 エーション等)
認証取得費用:60~105ユーロ
地域認証マークの品質管理・調整
広告宣伝支援費:15~120ユーロ
ライセンス料の徴収
収入
効果
伝統野菜、伝統的家畜種の増進
5年間の平均売上増加率 5%
地域産物の積極的利用
地域の結束強化
地域資源循環・バイオエネルギー
マーケット拡大
(副次的・長期的)地域環境教育
2011年時点で84社認証取得
Prüfzeichen ロゴのついた商品(肉加工品・パン)
104
図表 32 認証取得事業者の内訳(2012年2月時点)
ツーリズ
ム, 2, 3% 工芸品, 1,
1%
園芸, 4, 5%
狩猟, 1, 1%
漁業, 1, 1%
農業, 7, 8%
養蜂, 23,
27%
小売店, 11, 13%
食料品,
19, 23%
宿泊、飲食, 15,
18%
(資料)ブランデンブルク州環境庁より MURC 作成
(注)数値は件数と割合(%)
③ 活動のポイント

「地域性」「伝統」にフォーカスし、自然保護の項目に加えて地域アイデンティティの
向上(地元産物の利用や地域貢献)に注力。

バリューチェーンに着目し“地域”認証制度の対象範囲を広域に拡大(しかし“地
域”に制限)することで経済的メリット創出
④ 課題

助成金終了後の認証制度の維持コスト(認証費用は非常に安く、そうでなければ経
済的理由で事業者が認証を返上してしまう)。

地域内部へのブランディングが不十分(大都市では売れるが地元の関心が低い、
プレミア価格は地域内ではつきづらい)。当該地域は経済的に豊かではないため、と
のことであった。
105
8)Gottfried Friedrichs & WWF: MSC 認証への取組(ドイツ)
① 活動の概要

Friedrichs について: 1908 年設立、本社ハンブルク、従業員数 400 人。
主要製品は高級スモークサーモン、キャビア、ニシン等。WWF ドイツと協働し 10 年前
から責任ある水産物調達に率先的に取り組む。水域の自然環境に配慮した養殖や、
混獲・乱獲を防ぎ海洋資源を保全する漁法を採用する漁業事業者からの調達契約を
増やしている。(2011 年時点で 4 割が MSC 認証品。目標は 8,9 割を MSC または ASC
にする)

MSC 認証水産物の市場規模:認証ラベル製品数 1 位ドイツ(3,494 品)、2 位オラ
ンダ(1,173 品)、3 位イギリス(1,034 品)

取り組み動機:将来のマーケティング、持続可能性、商品のプレミア化、ブランド化、
漁業者や市場への社会的責任

漁業者への金銭的支援は特になく、認証品を買い付けるという間接的なものしかな
い。
② 活動のフロー
MSC(海洋管理協議会)
第三者認証機関
認証制度の設計、基準の開発、改定
認証付与のための審査、認証
FAO責任ある漁業行動規範
審査費用の徴収
水産物エコラベルガイドライン 準拠
審査
審査費用、
ライセンス料
認証ラベルの管理
基準
MSC漁業認証
魚
プレミア価格
卸売・加工・流通・小売・外食
ISEAL社会環境規準規範 準拠
天然漁のみ(養殖は→ASC)
漁業者
認定機関(認証機関の認定)
MSC CoC認証
魚
効果
プレミア価格
消費者
過剰漁業の抑制による漁業資源の保全、状態改善
海の生態系への影響が少ない(多様性、生産力、機能の維持ができる)漁業の実
施による
・非対象魚種、混獲種、危惧種への影響
・生息域、生態系への影響
の低減
国内外のルール遵守、持続可能な水産資源の利用ができる管理システムの構築
情報・啓発
研究者・NGO
科学的知見、市民モニタリング、普及啓
発
価格プレミアム
106
図表 33 認証制度の区分
(資料)Gottfried Friedrichs
③ 活動のポイント

漁業者に MSC 取得のメリットを説得するのが重要(需要の大きさ、価格プレミア、取
り組まない場合のデメリット)

MSC 製品販売当初は小売の認知度が低く、MSC でも仕入れ単価は上げられない
と言われたが、現在はサステナビリティの概念が浸透。

国際的な認証=世界共通のラベルは、消費者に訴える効果が高い。逆に、国別ラ
ベルの取り組みは同社にとって「後退」との認識。
107
9)ド イ ツ 連 邦 環 境 基 金 、 ミ ュ ン ス タ ー 大 学 森 林 セ ン タ ー 、 財 団 法 人 Hof Hasemann :
Nachhaltigkeit Stiften! (持続可能性助成基金を設立しよう!の意)
① 財団法人 Hof Hasemann について

Hasemann 家はニーダーザクセン州オズナブリュック郡ブラムシェ町にて
1,000 年以上続く自作農家であった。

1969 年、所有地(全 85ha、うち約 30ha は 1937 年より連邦自然保護法の下保
護され生産に使用しない草湿地)を小作農に貸し付け。

1980~90 年代に多く行われた科学的な農地の自然生態系調査の結果、農地の
維持には再湿地化と面積拡大が必要と判明。

1998 年、都市計画法の改正により、Hasemann 家所有地のうち 55ha(うち 34ha
が農地、21ha が林地)が「オズナブリュック市モデル1」に基づき、開発の代償
用地プールとして 980,000 エコポイントの価値と認定される。
・このうち 450,000 エコポイントをブラムシェ町が購入。2010 年までの 10 年
間ローンとし、毎年 45,000 エコポイント以上を返済。
他にもオズナブリュック郡や周辺地自体が公共事業の実施のために購入。
・また、民間事業者が風力発電建設等のために購入し、2010 年現在では 90,000
エコポイントが購入可能な状態で残っている。

2000 年、 Hasemann 氏はエコポイントの売上金を資本として、自然と歴史建
造物を含む農林地の伝統的景観の保護を目的とする公益財団法人 Hof Hasemann
を設立(Hof は農場、農園の意味)し、所有地等の財産を全て同財団法人に移
譲。ドイツ国内で初めて、民法上の財団法人というかたちで、民間の土地所有
者が提供する生態系サービスとして代償用地とエコポイントを事前に確保し、
開発事業の計画時に即提供する仲介業を行うというモデルを作り出した。(こ
のことにより 2003 年には州環境大臣より表彰される。)
② ミュンスター大学森林センターの Nachhaltigkeit Stiften! / 手続き標準化研究

同センターは財団法人 Hof Hasemann の事例を優良事例として、NRW 州にお
いて「代償地プールを提供する財団法人」の普及に向けたモデル事業を実施、
エコポイント算出の統一化、簡素化、市場化可能性(収入源となりうるか)等
を検証した。また、農業生産プロセスと生態系保全をつなげるため、農業生産
地を対象にエコポイント財団法人化することによる課税の問題を研究。 (DBU
研究助成:2006 年~2010 年、485,000 ユーロ)

1
エコポイントの具体的な価値の査定方法は当該土地を所有する郡レベルで異
価値の算出方法は隣接する NRW 州とほぼ同一の手法(p.110参照)。オズナブリュックと隣州 NRW 州ミュ
ンスターは互いに隣接する郡である。
108
なり、NRW 州内だけで 396 のエコポイント算出方法がある。この理由は、各郡
で重点保護する自然区域(ビオトープ)が異なる為、重み付け係数が異なるこ
とによる。そこで NRW 州内のエコポイント査定手続きの標準化を研究。まと
められたガイドラインは認証機関の TÜV がエコポイント算定基準として認め
ている。
③ ドイツ連邦法 Impact Mitigation Regulations (IMR)、Federal Nature Conservation
Act の概要

1976 年より、ノーネットロスを実現するための影響ミティゲーション規制
(IMR)という予防原則に基づく強制法規がある。連邦環境保全法の下に全て
の環境アセットを対象とする。自然保護庁が所管。

90 年代に連邦建築都市計画規制に組み込まれたときに市場メカニズムを大幅
に導入。

2002 年連邦自然保護法において「自然区域(ビオトープ)」の概念を確立。
同一サイトにおける生態系回復による相殺措置か、または同一価値の「エコポイ
ント」をオフサイトでの代償措置に利用可能。

エコポイントの計算方法は各州のビオトープリストや、州の下の地域(郡レ
ベル)の指針に定められており、地域的な環境保全政策の優先順位によってビ
オトープの価値が異なる。

開発サイト周辺のミティゲーションのための土地や代償地プールが不足して
いること等が原因で、オフセットされない影響が最終的にどうしても残る影響
については、開発による価値(公共福祉にとっての価値など)と失われる自然
環境および景観の価値と照らし合わせ、認められる場合には州の自然保護法規
に基づく金銭によるオフセット(財政的補償)が可能な州がある(例:ニーダ
ーザクセン州)。

この制度が定められている州では、支払金は各州の自然保護官庁などへ支払
われることで、代償地プール等の手法における土地の確保や管理に利用される
こととなっている。

しかし、この制度は資金が本当に代償措置となる自然保護活動に使われたか
どうかが不透明になり、自然保護団体からの批判が多い。
109
10)代償地プール、エコポイント、エコ口座制度のしくみ(ドイツ)
① 代替地プール、エコポイント、エコ口座制度の仕組み
自治体
(※開発事業者の場合もある)
一定の自然保護義務、開発事業規制(環境影響評価とミティゲーション、相殺、代償措置を含む開発計画の認可)
ビオトープ別エコポイント算出方法の設計
連邦自然保護法
エコ口座の開設許可、クレジット(エコポイント)の認定
連邦建築法(都市計画規制)
土地台帳への記録
エコ口座の開設
クレジットの申請・プール
土地台帳への記録
環境影響緩和策の実施(回避、最小化)
残留環境影響の緩和(復元)
残留環境影響の代償(オフセット)
・必要エコポイントの算出
エコポイント購入
・エコ口座からエコポイントの購入
(保全活動資金提供)
▼
事業計画の認可
生態系保全活動の実施、モニタリング
・農地
エコポイント売却
・森林地帯(現在、実施事項未定)
Etc.
計画の申請
エコポイント認定
エコポイント査定申請
EU生息地指令、野鳥指令
開発事業者
土地所有者(農家、財団)
開発計画の許可申請・取得
エコ口座提供者は複数あり、
それぞれエコポイント提供価格も異なる
開発事業の実施
金銭的代償措置制度:
効果
長期間にわたる農耕地の保全と環境配慮の約束
一部の州では、具体的な代償地プールが不足し、残留エコポイント相当の金銭
を事業者が自治体へ支払い、自治体がこれをプールして将来の代償地へ投資
することができる制度がある。
保全活動の資金調達(後日補填)
しかし、自然保護団体(NABU等)は資金使途が不明瞭として批判。
ノーネットロス原則に基づく生物多様性(生息地等)の保全・増進
② NRW 州におけるエコポイント算出方法
州ごとにビオトープ別のエコポイント査定基準リストを策定
ビオトープごとのエコポイント算出クライテリア:
1)自然への人為的介入の程度
2)修復措置のしやすさ
3)理想の生息地状態に比べた構成要素(動植物種など)の完全性
4)脆弱性
+地域ごとの(開発・回復地ごとの状態を考慮した)補足的なビオトープ価値
査定
ビオトープの価値の算定
(開発事業の実施前と後)
「前」と「後」の差分=価値の損失分
(マイナスのエコポイント)の査定
ビオトープの価値の算定
(復元措置の実施前と後)
「前」と「後」の差分=価値の増加分
(プラスのエコポイント)の査定
「損失分」と「増加分」の相殺
110
図表 34 NRW州ビオトープリスト(例):農耕地のエコポイント(現状値)
農耕地, 平地 および縞状
クライテリア間は等価であり、総合ポイントには各カテ
ゴリー点数の平均値(小数点以下四捨五入)を採用。
野草: 当該土地での存在頻度; 土地の端のみや優勢種のみで全体を評価しないこと
HA
次の場合、1ポイント上乗せ:
- 根拠ある特定の種の保全上重要な「フローラ」、州指定の植物種絶滅危惧カテゴリー2以上 等
エコポイント
(現状)
次の場合、1ポイント減点:
- 非常に集約的な農耕地利用、野草なし、
HA0, aci
HA0, acme
農耕地, 集約的, 野草が広範に欠落している状態
農耕地, 栄養素の豊かな土地に野草が十分ある状態
2
4
HA3/HA4, ace 農耕地, 栄養素の豊かな砂地(HA3) ・石灰地 (HA4)に野草が十分ある状態
5
クライテリア
点数
1)自然性
2)代替性
3)完全性
4)希少・危惧性
2点
1点
2点
1点
平均値
2点
(資料)NRW 州環境庁, 201020
図表 35 NRW州ビオトープ別土地利用措置リスト(例):農耕地の拡張における持続可能な措置に付与さ
れるエコポイント(実施措置分を積算)
対象ビオトープ
エコポイント
計画値
土地耕作パラメーター
農薬
3 農薬の使用中止
施肥
-
-
3 除草剤の使用中止
-
a)毎年2月末までの穀物の刈り株の放置量が少なくとも耕作地の5%、刈り株高
さ少なくとも20cm
または
b)毎年2月末までの少なくとも穀物帯の幅3mにわたる刈り株放置が少なくとも
耕作地の5%
4 農薬の使用中止
無施肥
-
4 農薬の使用中止
-
a)1ha未満の耕作地への区画細分化、3m以上の路肩設置を伴う
b)穀物の列の間隔を2倍にする
4 農薬の使用中止
無施肥
毎年2月末までの少なくとも穀物帯の幅3mにわたる刈り株放置が少なくとも耕
作地の5%
農耕地、並の野草量
農耕地, 栄養素の豊かな土地に野草が十分ある状態
管理方法
または
(資料)NRW 州環境庁, 2010
③ 課題

ドイツ国内で毎日 100ha が開発される中で代償用地が不足 →実際に農業生
産に使用している農耕地を代償プールに使う傾向増加。

州内でも郡ごとにエコポイント算出方法が異なり、ある程度の連携、標準化
が必要。(州レベルでのオブザーバー的組織は存在)
111
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