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統合インフラスト ラクチャは今が買 い時か ? 運用面および戦略上のチャンスに関する 経営陣によるディスカッション エグゼクティブ・サマリー 企業の IT インフラストラクチャの管理における長年の中心的 な課題は、サーバ、ストレージ、ネットワークといった要素を 連動させることでした。 ◗SkyscapeCloudServices は新規事業を立ち上げ、安全性と 信頼性の高いクラウド・コンピューティング・サービスに 対して英国政府からの認定を早期に獲得しました。 本書では、CI のメリットと実装の成功要因のほか、ビジネス 戦略およびテクノロジー戦略の両面で CI の画期的な機能を活 用するために経営幹部が知っておくべきことは何かについ て、詳しく説明します。 統合インフラストラクチャ(CI)により、その連動は見えな いところでより早く完了します。したがって、インフラスト ラクチャの設置、導入、更新、管理が簡単になり、パフォーマン スを最適化し、コストを最小限に抑え、ビジネス・バリューを ❱❱ 統合インフラストラクチャ:その正体と導入の 最大化することも容易になります。IT 組織は能力の高いスタッ 理由 フを、「ただ電気を付けておく」ためだけの業務から解放し、 企業の IT 部門の進化には、次のような決定的なテーマがあり 新しいテクノロジーに対応したビジネス・チャンスに気づか ます。一般的な活動あるいは「コモディティ化された」活動を せることができます。 通じて作業を減らしつつ、ビジネスにおける情報システムの 活用を実現させることに時間と労力を注ぎ込むということで CI は急速に広まっています。IDC によると、今後 2 年間で企 す。このような移行は、一般的なビジネス機能において統合 業の IT 部門の 44% が採用すると予想されています。 ソフトウェア(SAP、Oracle など)を活用できることで、ア プリケーション開発において大々的に行われてきました。IT 本書では、早期導入した 3 社の経験について説明します。 部門はコモディティ・ソフトウェアの開発業務から手を引き、 ◗MolinaHealthcare は、テクノロジー・コストとデータセン エンタープライズと、顧客に対するパフォーマンスとを差別 ターの設置面積を削減しながらビジネスの急速な成長を実 化する小規模かつ特殊なアプリケーションに注力することが 現しました。 できました。 ◗CanadianPacific は、アウトソーシングされていた IT 部門を 高性能の社内データセンターに取り込み、カスタマー・サー ビスを改善しました。 2 ❱❱ ホワイト・ペーパー統合インフラストラクチャは今が買い時か ? 今度はインフラストラクチャ管理の番です。ほとんどのテク ノロジー・ベンダーは、コンピューティング、ストレージ、ネッ トワークといった各社それぞれの「スタック」と、それらの スタック全体を統合する顧客の支援にのみ関心を払ってきま した。しかし、統合された単純なソリューションとして各コン ポーネントをバンドルしたベンダーは、近年まで存在しません でした。「インフラストラクチャ・イン・ア・ボックス」は、 どこも提供していなかったのです。 統合インフラストラクチャとは、まさにこのことです。これ は非常に高度なエンジニアリングを内部に収めた、拍子抜け するほどシンプルな概念です。CI は、コンピュータ / サーバ、 データ・ストレージ、ネットワーク機器、仮想化およびその 他のインフラストラクチャ管理用ソフトウェアといった基本 コンポーネントを、最適化された統合ユニットにまとめて収 めています。CI は、構成済み、テスト済み、認定済みの状態 でオンサイトに届くため、CI ソリューションはインストール や保守が簡単です。CI は仮想化と密接に関連しています。コン ピューティング・リソースはプールされ、アプリケーション や他のワークロードによって共有され、ハイパーバイザおよ びその他のコントロール・ソフトウェアの助けを借りて最適 化されます。これが、CI とは「何か」という定義の部分です。 次に、「なぜ」導入するかの部分について説明します。IT 部門 は CI によって次のことが可能になります。 ◗システムの統合と標準化 ◗インフラストラクチャの迅速な導入と拡張 ◗使用率の増加とコストの削減 ◗インフラストラクチャ管理の簡素化 ◗信頼性の向上と、セキュリティおよび災害復旧に対する統合さ れたアプローチによるビジネス・リスクの低減 ◗新しいインフラストラクチャと、それに依存するアプリケー ションのタイム・トゥ・マーケットを短縮することによるビ ジネスの革新および俊敏性の実現 新たなスタック 統合インフラストラクチャ 管理 仮想化 ストレージ ネットワーク コンピューティング 1 アプリケーション開発に対してソフトウェア・スイートが実現 したもの、つまり総所有コストの削減、動作パフォーマンスの 向上、IT 部門のコモディティ作業を付加価値の高い作業に置き 換えるといったことを、インフラストラクチャ管理に対して CI が実現することを約束します。CI のおかげで、インフラストラ クチャはビジネス制約ではなくビジネスの実現要因となり、 「容 量が足りません」という言い方から、 「新しいプラットフォー ムの立ち上げをいつ手伝いましょうか ?」という言い方に変わ ります。 CI 市場が急拡大していることは、驚くことではありません。 IDC1 によると、2012 年の 5 月時点で調査を行った組織の 4 分 の 1 以上が CI をすでに使用中であるか使用を予定しており、 割合は 1 年前より倍増しました。IDC では、採用は 2015 年ま でに 44% に達すると見込んでいます。年平均成長率を 40% と すると、CI 市場は 2012 年に 46 億ドル、2016 年には 178 億ド ルまで成長します。 業界のリーディング・カンパニー VCE を通じて、CI を大々的 に実装した組織の IT 担当役員が自らの経験を語りました。次に、 これらの 3 つの組織について簡単に紹介し、CI の運用上およ び戦略上の能力に関してこれらの組織から学んだ教訓と、CI を 採用するメリットおよび課題について説明します。 ❱❱ Molina Healthcare がビジネスの成長を実現 MolinaHealthcare の仮想化および CI 戦略の実行を牽引したのは、 ビジネスの急成長でした。Molina は、低所得者向け医療費補助 制度、高齢者向け医療保険制度など、政府が支出するプログラ ムを通じた医療を受診する、15 の州に広がる 430 万人の個人と 家族に対して医療サービスの調整を行い、医療情報管理ソ リューションを提供しています。これらのプログラムでデータ 取扱量が急増したため、請求処理やその他のトランザクション 負荷が増加していました。その結果、Molina のインフラストラ クチャが急速に増大し、新たな戦略を実行しなければ、アルバ カーキのメイン・データセンター内のスペースが不足する懸念 が浮上してきました。 この企業は仮想化と統合によって、流れを逆転させることに 成功しました。データセンターの設置面積は約 60% 減少し、 それに関連したエネルギーおよび冷却コストも削減した結果、 ビジネスにおいて拡張性が高く、余裕のある成長が可能とな りました。CI テクノロジー導入の概念実証がわずか 3 日で完 了し、アプリケーションの初期の移行がたったの 5 日で終わっ たとき、Molina では、これはいけるかもしれないという期待 が生まれました。 Molina における CI の基本的なメリットは、インフラストラク チャの総所有コストの改善です。CIO の RickHopfer 氏は、次の ようなその他の多くの点を挙げています。アプリケーションの パフォーマンスと可用性が改善されました。インフラストラク チャの速やかなプロビジョニングが可能なため、アプリケー ション開発チームは作業を速く完了できるようになりました。 災害復旧が改善、簡素化され、信頼性の高い運用が可能になっ たことで、Molina ではトランザクション量の急上昇を処理し、 州の政府機関が求める重要な SLA(ServiceLevelAgreement)を すべて満たすことができます。さらに、CI への移行は業務の運 用を止めることなく完了しました。 IDC へのすべての参照は、ホワイト・ペーパー「ConvergingtheDatacenterInfrastructure:Why,How,SoWhat?」(RichardL.Villars、RandyPerry、JedScaramella、2012 年 5 月)に対す るものです。 3 ❱❱ ホワイト・ペーパー統合インフラストラクチャは今が買い時か ? CI はまた、 Molina の IT 部門が「1 つの店舗」として運営され、 サー ビスとしての IT の配信モデルに向けて変化するための「接着剤」 としても機能しています。テクノロジーの基盤ができたため、 Hopfer 氏は組織の移行に注力しています。かつては構造もスキ ルも孤立してばらばらでしたが、CI によって、 「プロセス、構造、 能力、キャリアをトップダウンにより再構築する」機会が提供 されました。たとえば、新しいインフラストラクチャの管理に 必要な上級エンジニアとアーキテクトの数は減少しますが、ス タッフは、より万能であることが求められます。この最適な候 補としては、管理職に昇進した経験豊富なスタッフが挙げられ ます。したがって、IT 部門はマネージャから上級エンジニアへ の異動を促進する、管理職コースと平行した専門職としての昇 進コースを作成中です。また、Molina の IT 部門は、折に触れて 「本当のマネージャは誰か ?」と自問し、 それに応じてスタッフを 配属しています。さらに IT 部門は、テクノロジー・パートナー および調査サービス・パートナーと積極的に連携して、CI 管理 のベスト・プラクティスについて学習し、採用しています。 ❱❱ Canadian Pacific が顧客指向性を高める CanadianPacific(CP)では、ビジネス戦略と顧客へのコミッ トメントにより、CI への移行が後押しされました。この鉄道 会社は、カナダの 6 州とアメリカの 13 州に及ぶ 1,000 を超え るコミュニティの顧客に対してサービスを提供しています。 2012 年に E.HunterHarrison 氏が CEO として入社すると、す ぐに企業全体のサービスに対する説明責任に着目しました。 ほとんどアウトソーシングを行っていた IT 部門は、サービス のコストを再検討し、顧客に対して本当の説明責任を果たす には、インフラストラクチャを社内に戻す必要があると結論 づけました。 仕切り直す機会を得たこの企業は、CI を使用した 2 つの新しい データセンターを構築することを決定しました。CIO の Mike Redeker 氏は、この理由を次のように説明しています。 「目標 はコストの削減とサービスの向上です。どんな対策があるで しょうか。数多くの契約会社に大きく依存することは財務的な 持続性がなく、またインフラストラクチャの総合的な管理を高 める道はありません。今後のある時点で、 さらに統合されたイン フラストラクチャに変えることになります。それが今なので しょう。 」 古いメインフレーム、サーバ、ストレージ・デバイスから新 しい CI にすべてのワークロードを移行させる CP のプロセス は、ほぼ半分を終えました。最初に移行を終えた主なアプリ ケーションには、輸送業界で最大級のシステムであるコアの SAP システムがあります。テクノロジーの移行は 2013 年 12 月に完了する予定で、2014 年の半ばまでには CP が契約会社 なしで自立することを計画しています。 この鉄道会社では、インフラストラクチャ支出の 30% 削減と、 それに見合う水準のスタッフの生産性向上を期待しており、 効果は現れ始めています。また IT 部門は、連動する二重のデー タセンターがもたらすバックアップ、リカバリ、ビジネス継 続性というメリットについても着目しています。これまでの ところ、信頼性は完璧です。 Redeker 氏は、最大の課題はスキルの伝達にあると言います。 CI の経験者は需要が増加しており、すべてに配属させるには 数が不足しています。したがって、CP は教育とオン・ザ・ジョ ブ・トレーニングの両方を通じてベンダーからの知識の伝達を 行っています。進め方は、次のとおりです。「私たちのために 運営し、一緒に運営し、最後に私たちが運営する。」 IT 部門は新たなサポート組織を一から構築中です。これは立 ち上げ初期の組織のように活動し、その優位性を持っていま す。既存のスタッフは新たな職務に取り組み、IT 部門は「将 来の方向性のための採用」を行うことができます。非常に高 いスキルを持つ世界各地の希望者をはじめとする IT 専門家は、 最先端のテクノロジーを持つ企業で働くことを望んでいます。 ❱❱ Skyscape Cloud Services がビジネスを構築 新規事業を開始する場合、特にそれがテクノロジー・サービ ス事業であれば、CI を使用して開始するべきです。これは SkyscapeCloudServices とその CTO である SimonHansford 氏 が、2 年前の会社設立時に採った戦略でした。CI テクノロジー は当時まだ未熟だったため、Hansford 氏は「私たちは少々賭 けに出ました。しかしそれは良い賭けであって、かなりの報 いがありました」と語っています。 Skyscape が英国の公共部門の顧客に対して提供する、非常に 信頼性が高く、高度に自動化され、コスト優位性を備えた高 品質のクラウド・サービスを提供するには、CI が唯一の方法 であるということを、Hansford 氏は経験から知っていました。 その経験は、英国の大規模な管理サービス・プロバイダ向け に IT を運営する彼の前職で得たもので、プロバイダはインフ ラストラクチャを独力で統合する必要がありました。きわめ て適切に実行できたとしても、パッチ適用、アップグレード、 テストといった作業に終わりはなく、人為的ミスまたは自動 化のミスが原因で、コンポーネントが完全に同期されること はありませんでした。 その企業では統合サービスを提供するために、Hansford 氏は 20 名のチームで従来のスタックの統合に従事していました。 Skyscape では、2 人のスタッフがインフラストラクチャを管 理しています。鍵となる相違点について、CI では「すべてが 事前に設計、統合、テスト済みで、認定を受けています。スタッ フはリソースを統合するのではなく、最適化することに注力 し、アップグレードはシステムを停止しません」 (Hansford 氏)。 4 ❱❱ ホワイト・ペーパー統合インフラストラクチャは今が買い時か ? 運用およびスタッフに要するコストの節減は非常に大きく、 容量管理が簡素化されます。「インストール時間が分かってい るため、販売予測に合わせてジャスト・イン・タイムで容量を 追加導入できます」(Hansford 氏)。ただし、CI の信頼性につ いて言えば、Hansford 氏がおそらく最も熱心でしょう。同社は、 顧客から認識できるダウンタイムを一度も経験したことがあ りません。 「当社は 100% の可用性というお客様への約束を守っ ています。」 信頼性と拡張性に優れたプラットフォームを配備することに より、Skyscape は、クラウド・サービスの動的プロビジョニン グ、モニタリング、管理、使用に応じた課金を行うためのカ スタマー・ポータルを中心に据え、簡単に採用して使用でき るようにすることに集中して取り組んでいます。顧客は新し いサービスをほんの数分で稼働できるという並外れたパ フォーマンスを体験できます。 CI は Skyscape の戦略と成長の鍵を握っています。同社は英 国の国家安全保障局から、クラウド・サービスの「政府総合 認定」を初めて取得した企業の 1 つです。セキュリティに関 心が高くリスクを嫌う公共機関から見れば、この認定取得は 非 常 に 重 要 で、 顧 客 リ ス ト は 増 加 し、GovernmentDigital Services(政府の Web サイト統合支援)や防衛省のほか、さ まざまな警察部隊が名を連ねています。 Hansford 氏は自身の姿勢を次のように総括しています。「本 来そうであるべきですが、コンピューティング能力はクラウ ド内でますますユーティリティサービスになりつつあります。 私たちはこのテクノロジーを上手く取り込む能力を磨き、ビ ジネスに利用するための方法を中心に考えるべきです。ビジ ネス・バリューはもっと速く引き出せるはずです。CI はそれ に役立ちます」。Skyscape は自社の顧客に集中し、基盤とな るインフラストラクチャを構成するのでなくサービスを売り 込むことに注力できます。 パフォーマンス。CI は、インフラストラクチャの使用率と信 頼性の両方を大幅に改善できます。高度に仮想化された環境 では、サーバの使用率はすでに高いかもしれません。CI はこ の効率の良さをストレージおよびネットワーク・ポートの使 用率にまで拡張し、インフラストラクチャ全体のさらなるパ フォーマンス最適化を実現します。 可用性。より高い(場合によってはほぼ完璧に近い)信頼性 が得られることによって、インフラストラクチャ、アプリケー ション、サービスの可用性が高まります。CI によって、IT 部 門は SLA(ServiceLevelAgreement)を満たし、ビジネスは顧 客に約束したパフォーマンスを守ることが可能になります。 組織は CI を活用して、24 時間 365 日のビジネス運用に飛躍す ることができます。 速度。これまでにない速さでインフラストラクチャを導入で きます。IDC の調査によると、CI によって新規サービスのタ イム・トゥ・マーケットが半減しました。新しいインフラス トラクチャがアプリケーション開発(DevOps)向けの場合、 インフラストラクチャをほぼ瞬時に稼働させることができ、 つまり開発者は業務を速やかに行うことができます。IT 部門 はビジネス要求に対して、 「2、3 か月待ってください」ではな く「今すぐ利用できます」と答えることができます。また、 テクノロジー・ベースの製品のタイム・トゥ・マーケットを 加速できます。 拡張性。CI を使用すると、ワークロードの変化やビジネス取 引量のピークおよび谷間に合わせて利用可能なリソースを簡 単に拡張または縮小ができます。IDC が「第 3 のプラットフォー ム」と呼ぶインターネット、クラウド、モビリティ、ソーシャ ル・メディア、ビッグデータといったリソースを組織で活用 することを望む場合、拡張性はビジネス上欠かせません。 スタッフ。CI では、運用および管理に要する IT スタッフを減 らせます。このメリットを、労働コストの削減と捉えること ができます。また、スタッフを追加せずにビジネスおよびイン ❱❱ 統合インフラストラクチャのメリット フラストラクチャの成長を支える能力からくるコスト回避と これらの事例から理解できるように、CI の潜在的なメリットは 捉えることもできます。あるいは、IT リソースを再配備する 多岐にわたり、相互に関係しています。この多様性をよく理解 し、組織でどのようなメリットが得られるかを予想するために、 チャンスと捉えることもできます。仮に IT プロフェッショナ ルが、インフラストラクチャの統合および管理の仕組みに費 これらのメリットを 9 つの着眼点から見ていきます。 やす時間を減らした場合、より付加価値の高い活動に時間を 割くことができるため、顧客に向き合う時間を増やし、素早 シンプルさ。顧客とのやり取り、製品の提供、テクノロジー く対応することができます。IT 組織がレガシー機器を維持し、 管理などの多くのビジネス活動において、IT の課題は複雑さ 「ただ電気を付けておく」ためにエネルギーおよび予算の が増加の一途をたどることです。このような場合、シンプル 75% を費やしているならば、CI はその割合を変更して、ビジ 化が大きな影響力を持ちます。CI のメリットの多くは、複数 ネスの変革と成長を支援するための時間を IT 部門に割り当て のテクノロジー・スタックの代わりに統合されたプラット フォームを操作するというシンプルさと標準化に由来します。 ることができます。 インフラストラクチャを導入するプロセス全体(計画、購入、 導入、アップグレード、トラブルシューティング、パフォーマン ス管理、ベンダー管理)が、シンプルで簡単になります。また、 セキュリティや継続性に関与するビジネス・クリティカルな プロセスも、同様のことが言えます。 5 ❱❱ ホワイト・ペーパー統合インフラストラクチャは今が買い時か ? 調 達。テクノロジーがバンドルされているため、従来の テクノロジー・スタックの場合と比べてスケール・メリッ トを享受し、ベンダーを活用でき、購入またはリースする 際の支払い額が少なくなります。 n 物理的運用。使用率の高さは、単位コストの低さにつな がります。また、電力および冷却コストが大幅に低下す ることが理解でき、設置面積が小さくなるため設備コス トも少なくなります。 n インフラストラクチャ管理。インフラストラクチャの導 入および管理のためのプロセスが、さらに効率的になり ます。これにはキャパシティ・プランニングやアップグ レードのインストールなどの定期的な活動と、インフラ ストラクチャ・パフォーマンスのモニターや最適化など の継続的な活動の両方が含まれます。 n スタッフ。インフラストラクチャの管理に必要な労務コ ストは低下し、インフラストラクチャ・スタッフの生産 性は上昇するはずです。 n リスク。ベンダーは実際大きなリスクを負っていますが、CI は調達管理や機器のテストおよび認定を通じてインフラスト ラクチャのサプライ・チェーン・リスクを低下させます。CI は、 セキュリティなどのインフラストラクチャ制御のための堅牢 かつ包括的なツールに加え、人為的ミスを最小限に抑える自 動化によって運用リスクを低下します。CI はまた、高可用性 および信頼性、停止の少ないアップグレード、災害復旧の強 固なプラットフォームによって、ビジネス継続性へのリスクを 低下します。 イノベーション。CI を利用することで、ベンダーは先進テクノ ロジーを構築してプラットフォームを最新の状態に保つため、 企業は革新的な技術を享受できます。さらに重要なのは、CI は 2 つの強力な手段によってビジネス革新を促進するということ です。1 つ目は、クラウドへの簡単なアクセスです。ここで企 業は、増え続ける革新的かつ特化された多様なソフトウェアお よびサービスを使用したり、これらを利用していろいろと試す ことができます。2 つ目は、ソフトウェア開発者はコンピュー ティング環境をオン・デマンドで使用する場合、試験回数を増 やし、多くのプロトタイプを作成し、ビジネス・パートナーと ともに繰り返し作業し、さらに優れたビジネス・ソリュー ションを見出すことができることです。 コスト。CI のコスト上のメリットはあらゆる切り口に分解で きますが、4 つの基本的な領域で節減を認識および測定できま す(繰り返しになりますが、相互に排他的なものではありま せん)。 その結果、ほとんどの組織で、インフラストラクチャの総所有 コストを 25% 以上節減できます。IDC の調査では、100 ユーザー あたりのデータセンターの年平均コスト節減が 68% といった、 さらに高い範囲の計測値も得られています。この投資回収期 間は魅力的なものかもしれません。ただし、インフラストラ クチャ・コストは CI の最大の財務的メリットではない場合も あるということに留意してください。 メリットの着眼点 シンプルさ 統合 インフラストラクチャ コスト 管理 パフォー マンス イノベー ション 仮想化 ストレージ リスク ネットワーク 可用性 コンピューティング スタッフ スピード 拡張性 6 ❱❱ ホワイト・ペーパー統合インフラストラクチャは今が買い時か ? 他のすべてのメリットを財務的な観点から検討すれば、CI は ビジネス・コストもインフラストラクチャ・コストも引き下げ られることが分かります。たとえば、 測定するのは困難ですが、 ビジネス継続性が向上することに関連した収益機会とコスト 回避のほか、システムベースの製品およびサービスがもたらす イノベーション能力の拡大とタイム・トゥ・マーケットの短縮 の価値について、およその数値を示してはいかがでしょうか。 速度、拡張性、スタッフの配置転換、イノベーション能力のす べてのメリットを見た場合、CI はビジネス・アジリティのた めの優れたプラットフォームであることが分かります。 ❱❱ 統合インフラストラクチャについて検討する タイミング 組織が CI について真剣に検討する一般的な状況として、次の 3 つがあります。 ◗仕切り直すとき。Skyscape の場合はまったくの新規ビジネス です。CanadianPacific の場合、アウトソーシングされていた IT 部門を社内に取り込むために必要な新規データセンターです。 ApolloGroup の場合、これは新しい製品およびサービスを実現 するための新規プラットフォームです。仕切り直す場合、徹底 的な統合および一貫性という追加の優位性が得られます。 ◗ビ ジネスの成長により、インフラストラクチャの急成長が 必要になる場合。Molina の場合、トランザクション量がデー タセンターの容量を間もなく圧迫する状態でした。Kimpton Hotels&Restaurants の場合、ビジネスのサイズを倍増する 計画により、コンピューティング容量を増やすだけでなく、 新たに取得あるいは開店した物件ごとに規模を拡大する能力 が必要でした。 イ ◗ ンフラストラクチャが活力を失いつつある場合。これは、 テクノロジーの陳腐化や、単位コストの引き下げが継続でき ないことが原因である可能性があります。面白いことに、IDC によると、高水準のサーバ仮想化を実現したインフラストラ クチャでも、全体を統合および管理することの難しさが増え るため、コストがじわじわと増加する可能性があることが分 かっています。この対策として、CI の導入があります。 これらはすべて、導入を推進する状況です。他の組織では、 組織のインフラストラクチャを健全かつ高性能に維持するた めの継続的な取り組みの一環として CI を評価しています。イン タビューに答えた IT 担当役員の何人かは、CI はインフラスト ラクチャ・アーキテクチャおよび管理の進化の中での自然な 次のステップであり、移行は単に時期と理由だけの問題だと 語っています。CanadianPacific の Redeker 氏は実務的な姿勢を 取っており、「他の方法を探すこともあるかもしれないが、そ 大きな変革の兆しが見え始めると、現状それ自体が「しない」理由という形で自己主張します。CI に関して提起される一般的な 懸念事項と、IT 担当役員および業界アナリストからの回答の一部を以下に示します。 懸念事項 回答 「ベンダー・ロックインをおそれている」 このリスクを複数ベンダーによるサプライ・チェーン・リスクと比較してください。多く の企業はすでに数を減らしたベンダーを中心として統合を進めています。CI 戦略によって、 ベンダーとの緊密な関係を築き、ベンダーへの影響力を高めることができます。 「仮想化率は 80% に達しているのに、何を 求める必要があるのか ?」 1 つのメリットから多くを得ていますが、今度は他のどのメリットを獲得したいですか ? 仮想化は CI への移行を容易にするということを忘れないでください。 「私たちは最善のコンポーネントを求めて いる」 IDC の説明によると、CI によって、「選択肢を捨てることと引き替えに、インストールの 容易さと管理の簡単さの両方が手に入る」ことになります。最善のコンポーネントを組み 合わせれば、ソリューション全体が必ずしも最適になるわけではありません。 「アウトソーシングの度合いが大きいため、 やり方の変更は無理」 多くの企業はインフラストラクチャを社内に戻すかどうかという選択肢について考察して います。最低でも、ベンダーの CI 計画について調べ、CI 方式と比べてコスト・パフォーマン スのベンチマークを行い、それに応じて交渉してください。 「社内のスタッフやスキルが孤立しすぎて いる」 この問題には遅かれ早かれ取り組む必要があり、CI を IT 組織を一新して活性化させる絶 好の機会とすることができます。 「過剰な業務停止を招く」 「壊れていないものを直すことはない」 ワークロードの移行を慎重に計画する必要がありますが、CI は、現在の作業(初期移行) および未来の作業(簡素化されたアップグレード)の両面で、業務停止を最小限に抑える ように設計されているはずです。 「壊れる前に対処を。」テクノロジー・インフラストラクチャは、劣化、不完全な統合、保 守の課題といったことが原因で、常に部分的に壊れています。問題は、壊れるまで待つの か、最大の価値を提供する方法に先手を打つかということです。 7 ❱❱ ホワイト・ペーパー統合インフラストラクチャは今が買い時か ? こに価値がある以上、統合インフラストラクチャに注目する 必要がある」と語っています。 最も速くメリットが得られるのは、仕切り直す場合や、イン フラストラクチャのかなりの部分を移行する場合です。ただ し、CI はオール・オア・ナッシングの提案ではありません。 多くの組織では、小規模な DevOps プラットフォームで開始 することによって、概念とその値を実証しています。その他 の組織では、専用サーバおよびストレージ上ですでに実行中 の主要アプリケーション(SAP など)から開始し、これにより、 拡張性の向上とリソース最適化によるメリットがすぐに得ら れます。 ❱❱ 統合インフラストラクチャの実装の課題 新しいテクノロジーに関するもっと根本的な課題は、人々が 新しいやり方でテクノロジーを使用し、働き方を変え、テク ノロジーの付加価値を人々に理解してもらうことにあること は言うまでもありません。計画、インストール、保守、アッ プグレード、導入、モニタリング、最適化といったインフラ ストラクチャ管理の基本的な運用プロセスは変更されます。 また CI を使用すると、人々はいくつかの慣れた作業(パッチ 適用、テストの形式)を行うことを止め、新しい方法を学習 します。 インフラストラクチャのための財務管理プロセスは、通常は 改良する必要があります。予算のカテゴリーおよび割り振りを 簡素化でき、投資はジャスト・イン・タイムに近くなります。 KimptonHotels&Restaurants は、インフラストラクチャをリ フレッシュして管理を改善するための複数年にわたる投資計 画に従っています。企業が CI 採用の計画を完了したとき、デー タセンターの拡張など、計画中の多くのことを行う必要がな くなっていることが分かります。 人、プロセス、テクノロジーという 3 つの中で、最も大きい課 題は人の問題、つまり スタッフ、スキル、構造の問題です。 複数の特殊なサイロを一本化して、統合インフラストラク チャ・サービス組織を形成する必要があります。必要なスタッ フ数は減りますが、スタッフは、より万能である必要があり ます。「ボックス内での」故障 / 修理といった種類の作業を行 う必要は少なくなりますが、ビジネスに焦点を合わせたアー キテクトおよびエンジニアが行うべき重要な作業は依然とし て存在します。また IT スタッフは、他の重要な取り組みに移 ることができます。 組織変更は落ち着かないものになるかもしれませんが、良い ❱❱ インタビューに答えた IT 担当役員は全員一致で、CI テクノロ ジーの導入は「簡単な部分」だった(正しく設計された新規 テクノロジーの場合と同じ)と語っています。それよりもずっ と多くの努力が振り向けられたのは、アプリケーションおよ びその他のワークロードを新規インフラストラクチャに移行 することで、必要に応じてこれらを最初に仮想化する作業も 含まれます。移行は通常いくつかのフェーズに分けて行われ、 ワークロードはカットオーバー時点まで古いハードウェア上 と新しいハードウェア上で並列実行されます。さらに、移行 は詳細に計画する必要があり、特にそのプロセスが、「車が動 いている間に車輪を交換する」のと同等なビジネスであれば なおさらです。 新しいテクノロジー分野の採用を増やした場合、需要を満た す経験を備えた実務担当者が十分に存在しません。したがっ て、担当者を育成し、スキルを養成する必要があります。アー キテクトおよびエンジニアが CI プラットフォームのコンポー ネント・テクノロジーになじんでいれば、楽になります(た とえば VCE の Vblock 製品は、EMC のストレージ、Cisco のネッ トワーキング、VMware の仮想化を統合したものです)。しかし、 成功の鍵はベンダーのスタッフからユーザーの担当者への知 識および経験の伝達です。CanadianPacific のやり方を思い出 してください。「私たちのために運営し、一緒に運営し、最後 に私たちが運営する。」ベンダーを評価するとき、テクノロジー および継続的なサポートよりももっと先を見てください。ス キル伝達の観点で、ベンダーの能力と取り組みはどのような ものですか。 統合の度合いの判断基準 新しいテクノロジー分野が生まれて市場での弾みが付く と、既存のベンダーは自社製品を改善して磨きをかけま す。そして新規参入組が参加し、完全ではない製品を持 ち込んだり、古い製品を改称して売ったりします。どの 業者を評価する場合であっても、インフラストラクチャ 製品が実際どの程度統合されているかということに十分 注意を払ってください。本当に統合されているかどうかを 知らせてくれる簡単な「リトマス試験」の一例を以下に 示します。 ◗立ち上がりが速いこと(初期インストールだけでなく、 新規インフラストラクチャを導入するときはいつでも)。 オンサイトでの構成作業は最低限でなければなりません。 ◗ アップグレードが単純で、頻度が少なく、業務を停止 させないこと。アップグレードはベンダーによってテス ト済み、認定済みであり、自動実行されます。 ◗CI 全体の管理と最適化が可能であること。自動化とコン トロール・ソフトウェアの組み合わせにより、かつてな いほどの可視性とパフォーマンスが提供されるはずです。 ◗ 全般的に支出が少ないこと。CI は新機能を導入しなく ても、トレードオフ(速度と品質など)を取り払うのに 役立ちます。 ◗ 仮想化、プライベート・クラウド、ハイブリッド・ク ラウドなど、必要なアーキテクチャを持つことができ、 バックアップ / リカバリ・サービスとの互換性があるこ と。境界部分で膨大な作業をしなくてもよいはずです。 ◗ 単にリファレンス・アーキテクチャというだけではな く運用可能なソリューションであることインフラストラ クチャ統合用の説明書やツールを提供することは、統合 ソリューションの提供とは懸け離れています。 8 ❱❱ ホワイト・ペーパー統合インフラストラクチャは今が買い時か ? ニュースと言えば、新しいテクノロジーの学習に意欲的なの は、最高のスタッフだということです。管理者が目標をしっ かり伝えれば、IT 組織全体は示された指示によって活性化し ます。また、最先端テクノロジーに携わるために、 高いスキルを 持った技術者が組織に引き寄せられるでしょう。CI の採用に よって、インフラストラクチャ・サービス組織を再考して再 構築するチャンスが提供され、弱点をカバーすることから将 来のビジネス・ニーズを満たすことの方へ関心を振り向ける ことができます。 ❱❱ 経営者が知っておくべきこと インフラストラクチャ・サービスは、通常は見えないところ で動作します。これらはビジネスでは当然あるものとして捉 えられ、動作しなくなったときに初めて気づきます。CI への 移行も、見えないところで行われる必要があります。すべて が機能していれば、ビジネスではテクノロジー構成を気にす る必要がなく、CI 実装の目標は、ビジネスの停止を回避する ことです。 ただし、CI を採用する意思決定は、CEO、CIO、CFO を含めた 経営陣によって行う必要があります。CFO はもちろん、コス ト的なメリットと、IT 予算への必要な変更に特に関心を払っ ています。CIO と CFO が連携することで、基本的な期待とメリッ トに対する経営陣全体の理解が促されます。 ◗CI はコストを下げる。リソースの使用率が高まると、イン フラストラクチャの単位コストが低下し、簡素化によって インフラストラクチャ管理の人件費および処理コストが低下 します。 ◗CI はパフォーマンスを高める。可用性、信頼性、インフラ ストラクチャ導入のスピードの改善により、サービス・レベ ルとビジネス・パフォーマンスが向上します。 ◗CI はビジネス・リスクを下げる。信頼性が高いことは、ビ ジネス・ダウンタイムが少ないことを意味します。標準およ び統合されたインフラストラクチャは、セキュリティおよび ビジネス継続性プロセスを簡素化します。 ◗CI はビジネス・アジリティを高める。迅速な導入とインフ ラストラクチャの拡張性によって、応答性が高まり、タイム・ トゥ・マーケットが短縮されます。コンピューティング能力 がオン・デマンドで得られることにより、ビジネス担当者お よび IT 担当者が実験回数を増やし、多くのプロトタイプを作 成し、革新を速めることができます。 CI が何であるか、また CI をなぜ導入するかを理解することで、 企業が情報テクノロジーをどのように使用するかに関する 3 つの戦略的な質問に経営陣が答えることができます。 ◗何 を標準化し、どのように革新するのか ? CI はコア・イン フラストラクチャを簡素化して標準化する取り組みであり、 一方で企業における変革の実施のために小規模なコンピュー ティング環境を拡張できます。 ◗IT 組織はどのようなビジネスに属するのか ?技術的な製品を 構築して保守する従来ビジネスなのか、容易に消費できるビ ジネス・サービスを提供するビジネスなのか、どちらかとい うことです。CI は、インフラストラクチャをオン・デマンド・ サービスとして提供するためのプラットフォームであり、新 たな価値を生成するために IT 部門が時間を費やすためのプ ラットフォームでもあります。 ◗技術的制約が少なければどのように運営するのか ?技術的な 能力が高ければ、ビジネスでもっと多くのことができ、やり 方が変わり、別のことを行い、優れた判断を下すことができ ます。CI のおかげで、ビジネスの制約要因からインフラスト ラクチャの可用性と容量を外せます。 最後の質問は、今日の IT を取り巻く環境の核心に踏み込んで います。つまり、制約が早いペースでなくなってきています。 「オーバーフロー」に対して拡張可能なインフラストラクチャ とクラウド・コンピューティングを組み合わせると、コン ピューティング容量は必ずしもビジネス制約にはなりません。 また同時に、企業の内部と Web 経由の両方で、利用できる情 報が爆発的に増えています。この情報にも制約はありません。 ビッグデータをフィルタリングおよび分析するテクノロ ジーを使用すれば、すべてのデータを前もって定義したり、 従来の方法で構造化したりする必要はありません。 今日のビジネス制約は、テクノロジーとはあまり関係なく、 すべては想像力に関係します。新たな問いかけを行う企業、 実験と変革を絶え間なく行う企業、新しい情報を新しい用途 に適用する企業、新たな自由に麻痺することなく古い制約を 捨て去った企業が繁栄の道を歩みます。CIO と IT 組織は、自 社のビジネスがこの難関を超えることによって、価値を最大 限に発揮することができます。 統合インフラストラクチャは、コスト、パフォーマンス、リス ク、俊敏性に関する実利的な目標を達成することができます。 CI はまた、技術的な制約が少なくなる世の中において、企業 の運用と変革の在り様を決定することができます。n