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気候系監視速報(2008 年(平成 20 年)7月)
平成 20 年8月 14 日 気象庁 地球環境・海洋部 気候系監視速報(2008 年(平成 20 年)7月) 気候系の特徴(2008 年7月) ・東・西日本では顕著な高温、少雨となった。 ・アルジェリア北部からサウジアラビア南西部周辺では、異常高温となった。 ・東アジア上の亜熱帯ジェットは平年よりも弱く、日本付近の梅雨前線の活動は不活発だった。 ・インド洋西部で対流活動が非常に活発であり、6月後半以降持続している。 ・太平洋赤道域の海面水温は中部の負偏差域が狭まり、東部で正偏差が強まった。 日本の天候(図1~3、表1) 梅雨前線の活動が平年に比べて弱く、西日本を中心 に高気圧におおわれ晴れて暑い日が多かった。西日本 ット気流は、リッジの発達した東シベリアで南北に分 流した(図7)。東アジア上の亜熱帯ジェットは平年よ りも弱く、日本付近の梅雨前線の活動は不活発だった。 では 1946 年以降、 7月としては3番目の高温となった。 対流圏下層の気温は、リッジの発達したグリーンラン また、東日本太平洋側と西日本では、顕著な少雨とな ド周辺とオホーツク海周辺で高かった。移動性擾乱の り、 西日本太平洋側では 1946 年以降7月としては最も 活動は北西太平洋で不活発、ヨーロッパで活発だった。 少なく、東日本太平洋側では2番目に少なかった。一 方、北日本は、低気圧や前線の影響で曇りや雨の日が 多く、寡照となった。 熱帯の循環(図8~10) 熱帯の対流活動は、インド洋西部で非常に活発、東 平均気温:東日本と西日本でかなり高く、北日本と沖 部太平洋、大西洋でも活発だった(図8)。インド洋西 縄・奄美で高かった。 部で対流活動活発な状態は6月後半以降持続している。 降 水 量:東日本太平洋側と西日本でかなり少なく、 一方、フィリピンの東方海上から中部太平洋にかけて 東日本日本海側と沖縄・奄美で少なかった。 不活発だった。なお、北西太平洋の 20°N 帯における 日照時間:西日本でかなり多く、東日本太平洋側で多 対流活動は、対流圏上層における寒冷低気圧の南下に かった。一方、北日本では少なかった。 対応して活発となった。赤道季節内振動(MJO)の活発 な位相の東進は、7月上旬には不明瞭だったが、中旬 世界の天候(図4・5) から下旬にかけてはインド洋からインドネシア付近に 2008 年7月の 世界の月平均地上気温平年差 は+ かけて明瞭に見られた(図9) 。これと同期して、アジ 0.28℃で、1891 年の統計開始以来、7番目に高い値と アモンスーン域における対流活動活発域の北進が明瞭 なった。7月の世界の平均地上気温は、上昇傾向が続 に見られた。対流圏下層の循環を見ると、対流活動が いており、長期的な上昇率は 0.62℃/100 年である(図 不活発だったことに対応して、フィリピン付近から中 4)。 部太平洋にかけて高気圧性循環偏差が明瞭となった ○モンゴル周辺は、暖かい南風が入ることが多く異常 (図 10) 。 高温となった(図5)。 ○アルジェリア北部からサウジアラビア南西部周辺で は、上空の高気圧の影響で異常高温となった。 海況(図 11・12) 7月の太平洋赤道域の海面水温は、中部の負偏差域 ○ヨーロッパ北部からグリーンランド周辺、カナダ北 が狭まり、東部で正偏差が強まった(図 11) 。NINO.3 部では、異常高温となった。 海域の月平均海面水温偏差は 0.5℃(基準値との差は ○アルゼンチン北部周辺では、暖かい北よりの風が入 0.5℃)だった(図 12) 。北太平洋では、熱帯域の日付 ることが多く異常高温となった。 変更線付近から東北東に延びる顕著な負偏差が、その 北側で顕著な正偏差がそれぞれ見られた。また、45° N 中・高緯度の循環(図6・7) の日付変更線付近からオホーツク海にかけて顕著な正 500hPa 面高度場では、寒帯前線ジェットに沿った準 偏差が見られた。南太平洋では 30° S、150° W 付近で顕 定常ロスビー波の波束伝播に伴いリッジが発達したグ 著な正偏差が見られた。北大西洋の英国西方を除く リーンランド東部と東シベリアで明瞭な正偏差となっ 30° N 以北と大西洋熱帯域では、顕著な正偏差が見られ た(図6) 。一方、上旬と下旬にトラフの発達したアラ た。インド洋ではスマトラ島付近、ベンガル湾、マダ スカ付近では負偏差となった。上旬には、南鳥島付近 ガスカル島付近で、 それぞれ顕著な負偏差が見られた。 で活発だった対流活動の影響を受け、日本の南の太平 一方、インド洋中央部の赤道の南側には顕著な正偏差 洋高気圧の勢力は平年よりも弱かった。北半球のジェ が見られた。 1 平成 20 年8月 14 日 図1 月平均気温・月降水量・月間日照時間の 平年差(比)(2008 年7月) 平年値は 1971~2000 年の平均。図2~ 3、表1も同様。 気象庁 図2 表1 図3 地球環境・海洋部 旬降水量および旬間日照時間地域平年比 の時系列(2008 年5月~7月) それぞれの上側が降水量(%) 、下側が日 照時間(%) 2008 年7月の平均気温、月降水量、 月間日照時間の地域平均平年差(比) 地域平均気温平年差の5日移動平均時系列 (2008 年5月~7月) 2 平成 20 年8月 14 日 気象庁 地球環境・海洋部 +1.0 世界の7月平均気温平年差 +0.5 ( 平 年 差 0.0 ) ℃ -0.5 -1.0 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 年 図4 世界の7月平均地上気温の平年差の経年変化(1891~2008 年:速報値) 棒グラフ:各年の平均気温の平年値との差、太線(青):平年差の5年移動平均、直線(赤): 長期的な変化傾向。平年値は 1971~2000 年の 30 年平均値。 図5 異常天候発生地点分布図(2008 年7月) △:異常高温 ▽:異常低温 □:異常多雨 ×:異常少雨 3 平成 20 年8月 14 日 図6 図8 図9 北半球月平均 500hPa 高度・平年偏差 (2008 年7月) 等値線の間隔は 60m ごと。陰影は平年偏差。 平年値は 1979~2004 年の平均。 気象庁 図7 地球環境・海洋部 北半球月平均 200hPa 風速および風ベクトル (2008 年7月) 等値線の間隔は 10m/s ごと。平年の 20m/s の等 値線を緑色で表す。 平年値は 1979~2004 年の平均。 月平均外向き長波放射量平年偏差(2008 年7月) 等値線の間隔は 10W/m2ごと。平年値は 1979~2004 年の平均。 赤道付近(5° N-5° S)の5日平均(左)200hPa 速度ポテンシャル平年偏差、(右)850hPa 東西風平年 偏差の時間・経度断面図(2008 年2月~2008 年7月) 等値線の間隔は(左)2×106m2/sごと、(右)2m/sごと。平年値は 1979~2004 年の平均。 4 平成 20 年8月 14 日 気象庁 地球環境・海洋部 図 10 月平均 850hPa 流線関数・平年偏差(2008 年7月) 等値線の間隔は 2.5×106m2/sごと。陰影は平年偏差。平年値は 1979~2004 年の平均。 図 11 月平均海面水温平年偏差図 (2008 年7月) 等値線の間隔は 0.5℃。灰色ハッチは海氷域を表す。平年値は 1971~2000 年の平均。 図 12 エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差[℃](上)と 南方振動指数の推移(下) 細線は月平均値、太線は5か月移動平均値を示す(海面水温の基準値はその年の前年までの 30 年 間の各月の平均、南方振動指数の平年値は 1971~2000 年の平均)。赤色の陰影はエルニーニョ現象 の発生期間を、青色の陰影はラニーニャ現象の発生期間を示している。 気候系に関する詳細な情報は、気象庁ホームページ内「地球環境・気候」の「地球環境の診断(大気の総合情 報)」のうち、主に「日本の天候」 「世界の天候」 「大気の循環・雪氷・海況」 「エルニーニョ/ラニーニャ現象」 「地球温暖化」の各項目に掲載しています。 気象庁ホームページ内「地球環境・気候」:http://www.data.kishou.go.jp/climate/index.html 本件に関する問い合わせ先:気象庁 地球環境・海洋部 気候情報課 5