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第5会場 長野県臼田高等学校(PDF)

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第5会場 長野県臼田高等学校(PDF)
第2分科会:第5会場
農業高校で学んだ知識や技術をクラブ員の
将来に生かすためにはどうしたらよいか
クラブ員代表者会議北信越ブロック連盟
長野県臼田高等学校
グリーンライフ科
3年
佐塚
○○
グリーンライフ科
2年
松本
○○
※1
これより私たち、環境緑地科・グリーンライフ科の授業や農業クラブ活動を通じた取
り組みを紹介します。※2
私たちは、農林業・環境学習を通じた様々な地域連携活動に取り組んでいます。今年4
月には、CO2 削減イベントとして「キノコの駒打ち」を本校農場周辺で行い、今回は約8
0名の人が集まりました。※3
2年生による「臼高自然塾」は今年で7年目になる地域開放講座です。今年も信州大学
や信州そまびとクラブの皆さんを外部講師に迎え、昆虫や森をテーマにした自然学習会を
定期的に土曜に開催しています。※4
3年生の選択 S3 の物活用では、今年「発達と保育」の選択講座と連携して、臼田保育
園とのサツマイモの栽培交流を園児のヒマワリのような笑顔と楽しい雰囲気の中で交流し
ています。※5
更には、近隣の小学生とラッカセイ栽培やお米作りを通じて小さな同士達とのコミニケ
ーションを通じ、相互交流に発展しています。※6
このように地域との結びつきを大切にしてきた私たちは、今年はじめてインテリア科と
連携しての「学校演習林ネイチャリングツアー」を企画開催しました。 ※7
約40名の一般参加者が集う中で、午前中は東京農業大学上原先生による森林療法講座、
※8
お昼は環緑名物!スコップで豪快にかき混ぜる「鉄板焼き肉」、 ※9 その後はそまびと
クラブや環緑生徒による森のミニ講座、※10
午後に行われた、インテリ科の生徒や先
生方によるクラフト教室では、演習林にある木の葉や小枝を利用した壁飾りを作成しまし
た。参加者の多くが、自然の中にある素材に触れながら、夏の思い出づくりにひたってい
ました。※11
これらの、地域連携の中で、地域に根ざした研究活動も展開しています。それでは、7
年目を迎える「オオアカウキクサ農業利用地域プロジェクト」についてご紹介します。
しりゅうかたかいかわじょうりゅう
私たちは7年前より、千曲川の 支 流 片 貝 川 上
流 に位置する佐久市十二新田地蔵
池のオオアカウキクサの調査研究をしています。このウキクサは普通のウキクサと違い、
シダ植物の仲間で、学名を「アゾラ」といいます。
このアゾラという言葉は”乾燥で死ぬ”という意味で、近い将来いなくなってしまう生物・
ぜつめつ き
ぐ しゅ
絶滅 危惧 種 として長野県で指定されています。※12
ひょ うご けん りつだ い
す ず き たけし せ ん せ い
地蔵池のアゾラは兵庫 県立 大・鈴木 武 先生 により東日本に分布している「オオアカウキ
クサ」但馬(たじま)タイプとDNA鑑定して頂きました。
最大の特徴として、アゾラ
は空気中の窒素ガスを、自分の体の中にいる微生物の力をかりてアンモニア肥料に変えま
す。※13
しゅうらくきょうてい
【十二新田地区との 集 落 協 定 】
しぜん せいたい けい
ほぜん
私たちは、平成17年9月より十二新田地区の方々と「自然 生 態 系 の保全 に関する学校
教育との連携」として5年間の集落協定を結び、現在も オオアカウキクサの保護と農業へ
の活用を目的に、
「オオアカウキクサ・プロジェクト」を実践しています。以下、オオアカ
ウキクサを『アゾラ』と表現します。※14
【これまでの地蔵池の調査・基礎実験から】
私たちは、平成17年より地蔵池の調査を継続的に行ってきました。 その結果アゾラが
地蔵池に生息する要因として、年間を通じた水温が平均11℃であることや、※15
りんさん
わきみず
池の湧水 にアゾラの繁殖に欠かすことのできない「 燐 酸 」が豊富に含まれていることがわ
りんさん の う ど
さんけつぼう
かりました。また、アゾラは水中の燐酸 濃度 がある一定量より下回ると、リン酸 欠乏 で成
りんさん
長が出来なくなることもわかり、年間で変わらない水温と豊富な燐酸 が、重要な要素とな
っているのです。※16
そして、農業利用への基礎実験として、イネ 科植物であるマコモ タ ケ栽培を通じて 、ア
ゾラを栽培田に入れ る ことにより、雑草抑 制 効果や生育、収量へ の 緑肥効果が確認され
ました。※17
【アゾラを人工的に増やす方法の確立】
広い水田にアゾラを入れるためにはアゾラの量産が必要です。これまでに、学校ハウス
内では、ミズノメイガの食害やカビの発生などで思ったより増えない年もありましたが、
換気や水管理に気を配りながら、増やし方を研究してきました。※18
その結果、なるべく早い時期に、アゾラをハウス内から、風通しの良い野外の人工池に
つ い ひ
か
り
ん さんせっかい
せ
ひ
りょうさんりつ
移し追肥 に過 リン 酸 石灰 を施 肥 することで、アゾラの成長が良くなり、量 産 率 を高めるこ
とができました。※19
現在は、3月下旬から4月にかけてビニール温室で、5月以降は外の池で増やし、田ん
ぼに入れるようにしています。この方法によって、必要なアゾラを安定的に確保すること
ができるようになりました。※20
【稲作への導入】
平成19年からの継続的な水田実験から、アゾラを水田に投入し、水面に広く繁殖させ
らく す い ご
ふしょく
ることにより、雑草を抑制し、落 水後 土壌中で腐植 、分解されることにより緑肥効果が表
れ、多収量が見込まれることがわかりました。※21
また、強風でアゾラが寄ってしまったことから、その対策として、 パイプカバーを利用
はんしょく
したウキを、クイで固定しながら、繁殖 に合わせ尐しずつ広げていく栽培方法を実施し、
アゾラが水面を広い範囲で覆うことが出来ました。※22
しかし、イネ科の雑草であるヒエは、収量に大きな影響を与え、成長も早く、アゾラが
広がるまでには、繁殖してしまいます。そこで私たちは、ヒエ対策をテーマに、除草効果
ふかみずさいばい
があるとされる深水 栽培 とアゾラを組み合わせることにより、雑草抑制効果や緑肥効果を
引き出せるか検討してきました。※23一昨年は、深水栽培を可能にするため、育苗期間
が長くなり、田植えが遅れ、緑肥効果が十分に発揮されませんでした。※24
この反省から、昨年度は、田植えを通常の時期に戻し、波板でアゾラ区と対照区を設け、
両区とも田植え後に、除草剤を入れ、5日後にアゾラを投入し、※25
ふかみず
1㎡の調査区を各試験区3地点設けました。 深水 8cm以上を保持しながら、アゾラの
繁殖力を高めました。水量が一定であることから、アゾラの繁殖も良好となり、※26
こ
のように例年以上に水面を覆いました。※27
きわ
これによって、1㎡当たりの平均雑草発生数は、アゾラ区が対照区に比べて極 めて尐なく、
生育状況もアゾラ区で成長が良い結果となりました。※28
収量については、アゾラ区が対照区に比べ、10a当たりにすると 約180kg多い結
ふかみずさいばい
果となりました。この要因としては、アゾラと深水 栽培 の組み合わせによるヒエの発生抑
けんちょ
制とアゾラの緑肥効果が顕著 に表れたからと考えられます。水田の条件による差はありま
もと
ふきゅう
すが、この栽培方法を基 に今後、一般農家への普及 を視野に入れながら、※29
すいとうさいばい
実際に水稲 栽培 にアゾラ導入している農家とも情報交換を続け、継続研究に取り組めれ
ばと思います。※30
じっせんてき
そして今年度は、アゾラ試験区を拡大して、より実践的 な栽培技術として研究を進める
と同時に、アゾラが水面に広がるまでの除草方法を農薬以外で検討しており、 現在「米ぬ
か」とアゾラの組み合わせを試しています。※31
きゅうこう で ん か ん り
【 休 耕 田 管理 の可能性検討】
私たちは、これらの研究を通じて、昨年度からアゾラの更なる農業利用方法を検討して
こうはいち
います。現在農家の高齢化による農地の放置や荒廃地 の増加が日本農業の課題の一つとな
っている現在、中山間地域である十二新田集落も例外ではないことを地区の 文化祭等で多
うかが
くの方から 伺 いました。※32
きゅうこうで ん か ん り
そこで、私たちは、アゾラを地力の保持と 休 耕 田 管理 に活用できないかを検討し始めて
います。これまでに、基礎実験を実施してきた地蔵池近くの水田で、5年間作付けをしな
いで、アゾラのみを繁殖させた試験区に、昨年初めてマコモタケを栽培しました。※33
そして、アゾラの組み合わせによるマコモタケ継続栽培区とアゾラを入れない対照区と
の生育と収量を比較しました。試験区は、水 温を一定に保つため、蛇行させ、風対策のた
め波板を入れました 。 ※34
その結果、5年間作付けをしていないで、アゾラのみを繁殖させた試験区が、 生育や収
きゅうこうで ん か ん り
量のいずれも他試験区を上回りました。アゾラによる地力の保持と 休 耕 田 管理 の可能性を
探る重要なデーターが得られたと言えます。※35
今後の課題としては、冬場の水の確保や水管理がありますが、地蔵池からの湧水を引き
ちりょく
すい
込める、本実験田においては、これからも継続研究を行い、マコモタケ栽培による 地力 の推
い
移 を調べていきたいと思います。※36
【アゾラの研究を通じた地域連携】
アゾラの研究を通じた私たちの取り組みは、佐久市十二新田地区を中心に地域に広がり
を見せています。多くの人の取り組みで農業利用を進めたいと、 6年前から切原小学校5
年生のイネの学習にアゾラを取り入れてもらいました。アゾラついての学習やアゾラを増
せいぶつ し げ ん
やすための池作りをしながら、足元の生物 資源 を利用した農業や食育について相互交流を
深めています。※37また、一昨年に続き今年6月、JA佐久浅間主催の「農業体験教室」
を本校水田で開催し、アゾラについての学習や田植え体験、最後は、参加者全員で収穫に
期待をしながらアゾラを水田に入るなど、地域との交流は深まっています。
※38
このように地域連携の中で、多くの方達に支えられながらの研究を私達は、様々な形で
地域に発信し続けています。※39
これまでに、JAXAとの情報交換からアゾラの宇宙食としての活用を知り、「人と宇
宙を結ぶ食と農業」をテーマに佐久市にて継続的に「フォーラム」を開催し、地域の方々
と、宇宙や農業、食料、について意見交換をする貴重な機会となりました。 ※40
また、一昨年からは、宇宙食をもっと身近に感じていただきたいと思い、JAXAから
いただいた材料やレシピを参考に、本校オリジナルの「アゾラクッキー」を各種イベント
で試食していただき、好評でした。※41
しょくもつ せ ん い
名古屋女子大学 片山直美先生によると「アゾラは 食 物 繊維 やビタミンK・Cが比較的
多く含まれている」とのことです。そこで本年度は大人から子供まで楽しめる、ケーキや
ゼリーへの利用を検討していきたいと思います。
※42
に ほ ん
このようにして、地域連携の中で展開してきた私たちの活動は、平成20年度の 「日本
み ず たいしょう
の う り ん す い さ ん だ い じ ん しょう
水 大 賞 ・農林 水産 大臣 賞 」の受賞や昨年度の「地域に根づいた食育コンクール2009」
し ん さ い ん と く べ つ しょう
審査員 特別 賞 の受賞につながり、「アゾラ・プロジェクト」を全国に発信しています。
※43
十二新田「地蔵池」にそっと息をしていたアゾラ、「星の町臼田」で農業に利用される
アゾラ、そのアゾラが食料生産や休耕田管理、更には食材や宇宙食に利用されながら、 私
たちの夢をのせ、宇宙(そら)へと打ち上げられることを願い、これからも地域と共に「ア
ゾラ・プロジェクト」に取り組んでいきたいと思います。
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