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タイ湾でのサンゴ白化の現状
【2010 年 5 月レポート】 タイ湾でのサンゴ白化の現状 ○ はじめに 2010 年 3 月より暑気に入り、タイ湾沿岸各地では高気温が観測された。それに 伴ない、タイ湾の海水温も例年になく上昇した。海洋沿岸資源センターの調査 によると 2010 年 4 月中旬より、水深 10mでの海水温が 30℃を越えサンゴ礁の 白化が始まった。2010 年 5 月の最新情報では、水深 0m(海水面)が 33~36℃、 水深 5mが 32~34℃、水深 10m が 31~33℃、水深 20mが 30℃との報告である。 サンゴ虫は、海水温が 30℃を越すと、サンゴと共生する褐虫藻が減少し、白化 現象が発生する。これらの褐虫藻が失われるとサンゴ本来の色である白色を呈 するのである。通常サンゴは、褐虫藻の光合成に頼ってエネルギーを補給して いる為、長期間白化の状態が続くとサンゴは死滅する。 海洋沿岸資源センターの調査によるとタイ湾では、最深部のラヨーン沖の被害 が最も深刻で、続いて東部チャンタブリ沖、西部チュンポン、スラタニ沖とな っている。サムイ島、アントン諸島は 5 月下旬の調査予定で、まだ現状がつか めていない。 また、海洋沿岸資源センター(プーケット)の報告によるとタイ湾だけでなく アンダマン海側(クラビ、プーケット近海)でも白化が観察されている。現状 では、水深 10mより浅い場所で白化が見られ、10%ほどがすでに死滅とのこと である。 ○タイ湾西部(チュンポン沖)の現状 2010 年 4 月 20 日以降、チュンポン近海のサンゴ礁でも白化が始まった。5 月中 旬時点では、約 80%が白化、5%が死滅の現状である。 【4 月上旬(左)、5 月 13 日(右)の様子】チュンポン沖 20 キロ ゴガーム 白化が著しいのは、ミドリイシ類、キッカサンゴ類、クサビライシ類のサンゴ 礁である。一部のソフトコーラルにも白化の影響が見られる。 【白化がすすむスゲミドリイシ(左)、白化したサンゴ(右)】ゴガーム 水深 10m より浅い海域では、ミドリイシ類の白化が顕著であった。 【ネジレクサビライシ(左)、水深 3m(右)】ゴクラ 水深が 5mより浅い所では、一部死滅しているサンゴも観察された。 【ヒラフキサンゴ(左)、死滅したサンゴ(右)】ゴマプラオ ヒラフキサンゴ類は、大型の物ほど白化が顕著であった。小型の物はまだ白化 してないものが多く観察された。 【サンゴ礁同様、褐虫藻を共生させているシャコガイの白化】ゴマプラオ サンゴだけでなく、外套膜に褐虫藻を共生させているシャコガイの白化も数多 く観察された。特に浅い水深での白化は顕著であった。 ○ 今後の推移 海洋沿岸資源調査センター(タイ湾中央:チュンポン県)によると、サンゴの 白化は約 10 年間隔で以前も観察されていたとの事。しかしながら、今回は過去 にないほど、急速に且つ広範囲に白化が見られている。今後の天候によっては、 更なる拡大が予想されるとの事。 現状では、白化を防ぐ手段は無く、海水温が低下するのを待つのみである。同 センターでは、調査を継続し、現状の把握に努めるとのことです。