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Untitled - 北区ボーカル研究会

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Untitled - 北区ボーカル研究会
途中にあったカフェとそば屋さん
写真いろいろ撮ったけど
動きがないから使い回しちゃう
後日、天気が良い日に撮影
論文10
手嶌 葵 (てしま あおい:ゲド戦記・テルーの歌など)
今、だれよりも沁みるしっとりしたウィスパーボイス
手嶌 葵
タイトルからして主観的になっていますが、私が思うに、現在世界で一番心に
沁み入るシンガーです。一番好きなアルバムは映画『コクリコ坂から』の挿入歌
とオリジナル曲を収録した『コクリコ坂から歌集』、音がよく、手嶌さんの歌い
方とマッチした曲もそろって秀逸なアルバムです。
ルーツはジャズ・映画音楽
手嶌さんは1987年、福岡生まれ。洋楽や映画の好きなご両親の影響でミュー
ジカル映画に親しみ、中学生になるとルイ・アームストロング氏の『Moon
River』に衝撃を受け、その後はジャズファンになったそうです。そして中学卒
業後は音楽学院に通うようになり、本格的な音楽の教育を受け始めました。数年
後の2005年に韓国で開催された「日韓スローミュージックの世界」にて、映
画『ローズ』の主題歌である『the Rose』を歌い、高い評価を受けました。
するとそのテープがヤマハの関係者からスタジオジブリのプロデューサー・鈴
木敏夫氏に手渡され、その歌声を気に入った鈴木氏と監督・宮崎五朗氏によって
映画『ゲド戦記』
(2006)の主題歌を任されました。ちなみに映画ではヒロイン・
テルーの声優も務めています。
さて、その主題歌シングル『テルーの唄』がリリースされるとオリコンチャー
トは5位まで上がり、音楽配信では65万件というジブリの主題歌では最高の記
録となりました。翌年2007年にはセカンドアルバム『春の歌集』、2008
年には手嶌さんのルーツとも言える映画音楽のカバーアルバム『The Rose 〜
I Love Cinemas 〜』をリリースしました、このカバーアルバムにはデビュー
のきっかけになった『the Rose』も収録されています。
いかなる場合でも、この書籍の文章を無断で転載・複製することを許可しません。
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手嶌 葵
大御所との共演、たしかな存在感
その後、2010年にはオムニバス『にほんのうた 第四集』にて坂本龍一氏
と、同年内に管野よう子さんの作曲したシングル『Because』にて大物作家た
ちとのコラボレーションが続きました。そうして2011年には映画『コクリコ
坂から』が公開され、またも宮崎五朗監督とタッグを組んで主題歌をリリースし
ています。最初に書いたアルバム『コクリコ坂歌集』も同じ年に発売されていま
す。いくつか端折りましたがその間も年一枚のペースでアルバムをリリースして
いて、カバーアルバムが多いですが2014年の『Ren'dez-vous(ランデブー)』
が10枚目のアルバムリリースとなりました。
声質と音楽性の兼ね合いからセールスに恵まれることは少ないのですが、CM
で『瑠璃色の地球』などを歌うたびにちょっとした話題になり、国内では確かな
存在感を放っています。2016年にはそうしたタイアップ曲を集めたアルバム
『Aoi Works 〜 best collection 2011-2016 〜』をリリースし、また、1
月からは月9ドラマの主題歌を歌うことも決定しています。
日本人では珍しい「子音は強く、母音は弱く」
声の特徴は、内緒話でもするかのような秘めやかなウィスパーボイスです。こ
れは非整数次倍音と、カリギュラ効果という禁止されたものを覗き見したくなる
という心理効果によって、つい耳を澄まして聴いてしまうという魅力があるわけ
です。
また、デビューのきっかけになった『the Rose』を始め、その後も数多い英
語歌詞の曲をレコーディングしていて、子音の扱いは抜群にうまいです。なので
日本語歌詞でもそれを活かし、母音は息っぽく軽い発音なのに子音ははっきりと
いかなる場合でも、この書籍の文章を無断で転載・複製することを許可しません。
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手嶌 葵
聴かせていて、まるで外人さんが日本語で歌っているような印象になっています。
こうしたウィスパーボイスだと発音も弱くなって言葉が聴きづらいことが多いの
ですが、手嶌さんは子音を強くすることで言葉がしっかり伝わるようにしている
のです。
『テルーの唄』の時はデビュー当初であることと、ジブリ側の要求が若干特殊
であったためはっきり日本語で歌っていますが、『コクリコ坂から』のころにな
ると子音が優位となった、日本人としてはかなり特殊な発音で歌うようになりま
す。それによって、より秘めやかに、まるでリスナーの耳元で歌っているかのよ
うな印象になり、ますます訴求力の高い歌声となっています。ちなみにジブリ側
の要求というのは「唱歌のように一つ一つの言葉を大事に歌う」ことでした。
スモーキーな中にキラリと光るミドルボイス
チェストボイスでは息の量を多めにし、かつ鼻にかかったような鼻が詰まった
ような感じの声を出し、その際には子音を強くして言葉を強調するようにしてい
ます。なので母音「あいうえお」の発音と、それに子音が加わる時とでは声の印
象が変わり、それだけでちょっとした抑揚になっています。それと、例えば文の
最後が「か」の場合は「かぁ〜」と伸ばすのではなく「かはぁ」というように、
母音の発音よりも息を吐く音として聴こえて、これも母音の強い日本語の発音と
しては特殊なものです。
ミドルボイス1はチェストボイスと特徴が似ていますが、若干明るく広がる感
じです。それに対してミドルボイス2は意識的に明るく、軽く発声していて、そ
れまでのスモーキーな声の中でキラッと光るアクセントになります。ウィスパー
ボイスによって耳を澄ましているリスナーにとってこのミドルボイス2は薄暗い
中でのライト光のようなもので、温かみや安心感を与えるものになっています。
いかなる場合でも、この書籍の文章を無断で転載・複製することを許可しません。
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手嶌 葵
また、その際も息の量は多いままなので耳障りだったりガツンとやかましい声に
はなりません、そういう意味では相当安定した発声ができているのではないで
しょうか。ミドルボイス3もその延長上の声で、より明るく、鼻から上に向かっ
て出ていくような声になっています。
映像から見てとれるのは裏拍への強い意識
映像からわかる特徴は、全体的に目を細めたりつむったりして眉毛を上に向か
わせるような力感があり、また唇や口も声が緩まないよう緊張していることが多
いです。しかし口角や頬ははにかんだような状態になっていて、その笑顔のよう
な表情が声を明るくしているのでしょう。
それとあまりビブラートを利かせる方ではないので文の最後の子音、例えば「で
す」を伸ばす場合は口が「す」の形のまま声を伸ばしています。これはビブラー
トをかけたい時は避けるべきことで、「です」のあとに「う」の発音に切り替え
た方がリラックスして声を揺らしやすいです。ですが手嶌さんは子音と息のバラ
ンスで音色を維持することを優先しているため、やたらに口の形を変えるのは避
けているのではないでしょうか。
そして子音を強く発音する分、口もはっきりと動かしています。ウィスパーボ
イスのシンガーは声を軽くするために発音と口の動きが曖昧になることが多いの
ですが、手嶌さんの場合は強い子音を鳴らすために素早い動きが必要になるので
しょう。その際も口の中の空間を維持するような軽い力感があり、それがあのエ
アリーな声になっているのだと思います。
チェストボイスとミドルボイス1はあまり特徴が変わらず、どちらも口をあま
り開かずに発声しますが、ミドルボイス2になるとアゴが少し下がり、口腔がタ
いかなる場合でも、この書籍の文章を無断で転載・複製することを許可しません。
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手嶌 葵
テに伸びる感じになります。ですが大まかな変化はなく、声区の変化よりも音色
や発音の調整のために表情が変わっていきます。
挙動に関してはテンポに合わせてゆったりとタテに動いていて、ジャズに傾倒
した影響か、動きを見ていると裏拍(2拍目と4拍目)への意識が強いようです。
ゆったりした挙動ですがキレは良いので、あの声質でもぼんやりした印象になら
ないのは相当にリズム感、グルーブ感が優れている証ではないでしょうか。そう
したことから、このグルーブ感といい発音の仕方といい、分析していくと洋楽ジャ
ズからの継承が多く見られて、それらへの敬愛と研究度合いが伝わってくるシン
ガーです。
余談ですが、手嶌さんはまだライブDVDをリリースしておらず、個人的には
そうした映像作品も発売してほしいと思っています。ユーチューブで色々観るこ
とはできるのですが、やはり1ステージ通した映像が欲しいなぁと思うのです。
「これだけ凄まじいシンガーにライブDVDがないなんてどういうことだね」と、
私は異議を申し立てたいわけであります。
ボーカル分析『愛をこめて。海』(2011)
作詞:宮崎吾朗
作曲:谷山浩子
著作権の都合で譜面が載せられないため、歌詞で分析箇所を指示していきます。
一緒に追っていきたい場合はネットに歌詞がありますので音源とともに用意して
おくとわかりやすいです。
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手嶌 葵
最初の「あなたと」
まずは midD → midG → hiA → hiB ♭というメロディ、チェストボイス→
ミドルボイス1→ミドルボイス2→ミドルボイス2と大きく動きます。「あな」
の声はどちらもスモーキーですが、「たと」はそれよりも艶がありキラッとした
感じになっています。
「出会ったころ」
今度は下降メロディです、hiB ♭→ hiA → midF → midD → hiA → midG。
ミドルボイス2の声が「あなたと」よりもスモーキーになり、他の声区と声の印
象が近くなっています。そして「こ」を hiA よりちょっと低く抑えることで自
信なさげにトーンが下がっていく雰囲気を作っています。これにOKを出したプ
ロデューサーの英断です。
「咲いていたことを」
息のシューっとした音が出ていますが子音が強く、「s」や「t」の音がしっか
り鳴っています。それに対して最後の「を」は「ほ」に近い発声で、かなり軽い
発音です。日本語はこれらが一緒くたになることが多いですが、ここではしっか
り区別して使っています。
ヘッド
ホイッスル
ミドル1
ミドル2
ミドル3
ヘッド
hihiC
ミドル3
hihiB
hihiA
hiG
hiF
hiE
hiD
hiC
hiB
hiA
mid G
mid F
ミドル2
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hihiA#
hiG#
hiF#
hiD#
hiC#
hiA#
midG#
midF#
mid E
チェストボイス
mid D
mid C
mid B
mid A
ミドルボイス1
midD#
midC#
midA#
low G
low F
low E
low D
チェスト
lowG#
lowF#
lowD#
男
女
ホイッスル
ボーカル研究法
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手嶌 葵
「まだ憶えてますか」
今さらですが、ここで息がシューっと鳴る音と声が混じって非整数次倍音とな
り、その深刻そうな響きは人の注意を引き付けます。手嶌さんはこうしたウィス
パーボイスのスペシャリストなんです。
1番「古い石垣と生垣」
この「古い」の「い」は普通に発音していて、やはり軽く発音する時と区別を
しています。最後の「生垣」の「き」は子音がしっかりなるのですが、その後に
息っぽい母音が付いていって「きひぃ」のように聴こえます。こうしたテクニッ
クはとても勉強になります。
「かたむいた電信柱」
「かたむいた」はチェストボイスの声区ですが息の量が多く軽い声です、子音
がないとあまり声にならず、「い」はやはり「ひ」に近くなります。あと「でん
しんばしら」の「ら」に微妙にビブラートがかかっていて、ちょっと虚ろな雰囲
気を出しています。本当にちょっとだけ揺らしています。
ヘッド
ホイッスル
ミドル1
ミドル2
ミドル3
ヘッド
hihiC
ミドル3
hihiB
hihiA
hiG
hiF
hiE
hiD
hiC
hiB
hiA
mid G
mid F
ミドル2
いかなる場合でも、この書籍の文章を無断で転載・複製することを許可しません。
hihiA#
hiG#
hiF#
hiD#
hiC#
hiA#
midG#
midF#
mid E
チェストボイス
mid D
mid C
mid B
mid A
ミドルボイス1
midD#
midC#
midA#
low G
low F
low E
low D
チェスト
lowG#
lowF#
lowD#
男
女
ホイッスル
ボーカル研究法
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手嶌 葵
「自転車で」
ミドルボイス2になる「て」(hiB ♭)の発音がとても軽いのですが子音だけ
で声にしているような感じです。母音が「え」なので明るく、「黒くて重たい」
に比べてパッと冴えた雰囲気です。
「私を丘の上から」
「私を」がチェストボイスなのですが、声を明るくするため音程がちょっと上
ずっています。また、「の」(hiB ♭)もちょっと上ずっていて、「う」(hiB ♭)
と同じ音程なのにちょっと印象を変えています。
サビ「旅だったころ」
ここの「た」(hiB ♭)が珍しく口腔をタテに伸ばしたような母音になり、
「t」
の発音と相まって元気な感じに聴こえます。
「コクリコの花が」
言葉を大事にするということがどういうことか、この「コクリコ」の子音の鳴
ヘッド
ホイッスル
ミドル1
ミドル2
ミドル3
ヘッド
hihiC
ミドル3
hihiB
hihiA
hiG
hiF
hiE
hiD
hiC
hiB
hiA
mid G
mid F
ミドル2
いかなる場合でも、この書籍の文章を無断で転載・複製することを許可しません。
hihiA#
hiG#
hiF#
hiD#
hiC#
hiA#
midG#
midF#
mid E
チェストボイス
mid D
mid C
mid B
mid A
ミドルボイス1
midD#
midC#
midA#
low G
low F
low E
low D
チェスト
lowG#
lowF#
lowD#
男
女
ホイッスル
ボーカル研究法
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手嶌 葵
り方が参考になります。「kkrk」という発音がしっかり鳴っていて、声質に比べ
てとてもビビッドに聴こえます。強調したい言葉がある場合、このパートは参考
になります。
「まだ憶えてますか」
曲の最初のサビ出しもそうでしたが「え」が hiD でミドルボイス3、母音だ
けですがさすがに息っぽい声ではなくなります。この曲は声区を行き来するメロ
ディがかなり多いのですが、それらを違和感なくつなげているあたり、聴いてい
る以上にハイレベルなことをやっています。
2番 A メロ「輝く海に浮かぶ船影」
メロディは1番と同じですが、声の成分が多くなってガサガサした音が増えま
す。声量自体は少し大きくなった程度でしょうが、印象は結構違っています。
「それはやっぱり悲しかったけど」
歌詞のわりに声が明るく、ちょっと笑顔に近い表情で歌ったんじゃないかと思
います。それに伴い「かった」(hiB ♭→ hiA → hiA)のミドルボイス2も明る
くなり、大分温かい印象になりました。
ヘッド
ホイッスル
ミドル1
ミドル2
ミドル3
ヘッド
hihiC
ミドル3
hihiB
hihiA
hiG
hiF
hiE
hiD
hiC
hiB
hiA
mid G
mid F
ミドル2
いかなる場合でも、この書籍の文章を無断で転載・複製することを許可しません。
hihiA#
hiG#
hiF#
hiD#
hiC#
hiA#
midG#
midF#
mid E
チェストボイス
mid D
mid C
mid B
mid A
ミドルボイス1
midD#
midC#
midA#
low G
low F
low E
low D
チェスト
lowG#
lowF#
lowD#
男
女
ホイッスル
ボーカル研究法
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手嶌 葵
「もう一人でも」
最後の「も」が変わった発音になっています。「m」(も)なのか「w」(うぉ)
なのか、とても繊細な発音になって儚い感じがします。
2番サビ「坂道」
ここも hiB ♭の「ち」ですが、今までの hiB ♭の声に比べてスモーキーな雰
囲気です、やっぱり色々調整できるんですね。
「潮風が」
また発音のことになりますが、
「しおかぜ」の「ぜ」がとても繊細で、
「せ」「ぜ」
「づぇ」のどれでもない発音です。やはり子音の扱いが抜群にうまいですね。
「きっと、ずっと、あなたが」
ミドルボイス3の「と」がとてもきれいなのですが、それ以上に「あなたが」
の「が」の伸ばし方が特徴的です。「がー」ではなく「が ha ー」みたいに、
「が」
のあとに息を吐いて伸ばしたような声になります。
ヘッド
ホイッスル
ミドル1
ミドル2
ミドル3
ヘッド
hihiC
ミドル3
hihiB
hihiA
hiG
hiF
hiE
hiD
hiC
hiB
hiA
mid G
mid F
ミドル2
いかなる場合でも、この書籍の文章を無断で転載・複製することを許可しません。
hihiA#
hiG#
hiF#
hiD#
hiC#
hiA#
midG#
midF#
mid E
チェストボイス
mid D
mid C
mid B
mid A
ミドルボイス1
midD#
midC#
midA#
low G
low F
low E
low D
チェスト
lowG#
lowF#
lowD#
男
女
ホイッスル
ボーカル研究法
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手嶌 葵
3番 A メロ「わたしはとても元気です」
1番と同じく秘めやかな声に戻ります、しかし1番よりも鼻が詰まったような
感じで重く聴こえます。これもウィスパーボイスに変化をつけるのに有効ですね。
「去年より背が伸びました」
歌と関係ありませんが、ここの歌詞が個人的に泣けます。いや、映画の内容を
知っているのでどうも…。
「わたしはいつもここにいて」
伴奏が加わるとともに声もちょっと強くなりました。
「あなたの旅の無事を」
「あなたの」は普通に歌うのですが、「たびの」から息の量が増え、その変化が
キュンときます。「ラストは強く歌う」というイメージがありますが、このよう
に非整数次倍音をアクセントにすることもできる、という例です。
ヘッド
ホイッスル
ミドル1
ミドル2
ミドル3
ヘッド
hihiC
ミドル3
hihiB
hihiA
hiG
hiF
hiE
hiD
hiC
hiB
hiA
mid G
mid F
ミドル2
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hihiA#
hiG#
hiF#
hiD#
hiC#
hiA#
midG#
midF#
mid E
チェストボイス
mid D
mid C
mid B
mid A
ミドルボイス1
midD#
midC#
midA#
low G
low F
low E
low D
チェスト
lowG#
lowF#
lowD#
男
女
ホイッスル
ボーカル研究法
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手嶌 葵
最後の「愛をこめて」
さて、最後の最後になりますが、この「て」は珍しく子音も弱く、とても曖昧
な発音となります。しかしそれが独特の温かみを生んでいて、幕引きとして効果
的な演出になっています。先ほどの「旅の無事を」もそうですが、セオリーとは
違う歌い方を効果的に聴かせるのは刺激を受けますね。
今ではめずらしい、トーンを磨き続けるシンガー
聴き比べるとわかるのですが、この曲のころと『ゲド戦記』のころとではトー
ンの聴かせ方が結構ちがっています。『テルーの唄』のときはスモーキーですが
ちょっと負けん気の強い印象で、高い声区になってもしっかり発声しています。
しかし『コクリコ坂から』の頃になるともっと近くでささやいているような歌い
方になっていて、高い声区はより鋭く、キラッと光るような美しさがあります。
声量やビブラートといったことではなく、自らが選んだトーンという武器をひ
たすら研いだような印象です。このように、トーンだって磨くことでどんどん美
しくなっていくもので、「もう歌える音域だから」といって雑に扱っては勿体な
いわけです。
ヘッド
ホイッスル
ミドル1
ミドル2
ミドル3
ヘッド
hihiC
ミドル3
hihiB
hihiA
hiG
hiF
hiE
hiD
hiC
hiB
hiA
mid G
mid F
ミドル2
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hihiA#
hiG#
hiF#
hiD#
hiC#
hiA#
midG#
midF#
mid E
チェストボイス
mid D
mid C
mid B
mid A
ミドルボイス1
midD#
midC#
midA#
low G
low F
low E
low D
チェスト
lowG#
lowF#
lowD#
男
女
ホイッスル
ボーカル研究法
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手嶌 葵
先ほどの2曲を比較しているとき、なんだかテルーと海ちゃんというヒロイン
2人の個性が歌に出てるみたいだとも思いましたが、同時期の他のアルバムの曲
でも同様の違いがあったので、これは確かな進歩なわけです。デビューしてから
これだけトーンを改良していくシンガーは珍しく、これからが楽しみであり見習
うべきシンガーなのです。
ヘッド
ホイッスル
ミドル1
ミドル2
ミドル3
ヘッド
hihiC
ミドル3
hihiB
hihiA
hiG
hiF
hiE
hiD
hiC
hiB
hiA
mid G
mid F
ミドル2
いかなる場合でも、この書籍の文章を無断で転載・複製することを許可しません。
hihiA#
hiG#
hiF#
hiD#
hiC#
hiA#
midG#
midF#
mid E
チェストボイス
mid D
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mid B
mid A
ミドルボイス1
midD#
midC#
midA#
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lowD#
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