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Sustainability Report
2010
森林管理協議会(Forest Stewardship
Council: FSC)
によって認証された、適
切に管理された森林の木材を原料とした
用紙を使用しています。
印刷用インキに使われる石
油系溶剤の一部を植物油
に置き換えた「植物油イン
キ」
を使用しています。
揮発性有機化合物を含む
湿し水を使わない「水なし
印刷」
を採用しています。
本冊子は色覚の個人差を問わず、
できる
だけ多くの方に見やすいようカラーユニ
バーサルデザイン
(CUD)に配慮して作
成し、NPO法人カラーユニバーサルデザ
イン機構
(CUDO)
から認定を受けました。
CONTENTS
編集方針
2
目次・編集方針
3
三菱商事について
4
社長メッセージ
6
三菱商事の環境・CSR
「サステナビリティレポート 2010」では、ステークホルダーの皆様
に三菱商事の環境・CSR 活動をご理解いただくために、三菱商事
の事業活動における環境・CSR 分野の主要課題を整理し、当社に
とってのマテリアリティ(重要性)の特定を行いました。その上で、各
部門・営業グループにおける重点課題と、事業を通じた社会価値・
環境価値の創出を目指した取り組みをご報告しています。なお、詳細
12
三菱商事における環境・CSRの重点課題
データや補足事項、最新の活動については三菱商事のウェブサイト
28
環境・CSRアドバイザリーコミッティー
に掲載しますので、本レポートと併せてご覧ください。
29
環境・CSR 担当役員より
30
三菱商事の環境パフォーマンス
私たち三菱商事は、本レポートをステークホルダーの皆様とのコミュ
ニケーションを深めるツールとして活用したいと考えています。お読み
いただいた皆様の率直なご意見をぜひお聞かせください。
環境・CSR活動報告についての方針
Web版
冊子版
冊子版では紹介し切れな
三菱商事の環境・CSR 活動
かった詳細なデータや補
の方針、事業を通じた社会価
足事項、および最新の活
値・環境価値の創出につい
動状況などについてお知ら
てご報告しています。
せしています。
三菱商事の環境・CSRウェブサイト
http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/
このマークをつけた内容は、当社ウェブサイト
「環境・CSR 活動」などで情報を掲載しています。
参考にしたガイドライン
GRI「サステナビリティ
・レポーティング・ガイドライン2006
(G3)
」
※ GRIガイドラインと本レポートの対照表については、当社ウェブサイトをご参照ください
(「環境・CSR活動」よりご覧いただけます)
。
環境省「環境報告ガイドライン
(2007年版)
」
報告書対象範囲
三菱商事株式会社、主要連結子会社および関連会社 562社
報告書対象期間
2009年 4月∼ 2010年 3月
(一部、2010年 4月以降の活動内容を含みます)
報告書発行
2010年 9月
報告書発行責任者
代表取締役社長 小林 健
本報告書に関するお問い合わせ
住所 : 〒100-8086 東京都千代田区丸の内二丁目3 番 1 号
三菱商事株式会社 環境・CSR 推進室
電話 : 03-3210-7076 FAX : 03-3210-8063
E-mail : [email protected]
Website : http://www.mitsubishicorp.com
三菱商事について
三菱商事は、国内および海外約80カ国に200超の拠点を持つ総合商社です。
エネルギー、金属、機械、化学品、食料や資材に加え、環境・水、ITや金融などのあらゆる産業において、
500社を超える連結対象会社と共に、世界中のお客様とビジネスを展開しています。
これからも私たちは、常に公明正大で品格のある行動を信条に、豊かな社会の実現に貢献することを目指していきます。
グローバルネットワーク(2010年8月1日現在)
欧州 CIS
北米
中国
日本
中東
アジア・
大洋州
アフリカ
● 海外事務所など ■ 海外現地法人
南米
会社概要(2010 年 3月31日現在)
社名 : 三菱商事株式会社(証券コード:8058)
創立 : 1954 年 7月1日(設立 1950 年 4月1日)
資本金 : 203,228,112,456 円
発行済株式総数 : 1,696,686,871 株
本店所在地 : 三菱商事ビルディング
東京都千代田区丸の内二丁目3 番 1 号(登記上の住所)
丸の内パークビルディング
東京都千代田区丸の内二丁目6 番 1 号
従業員数 : 連結 58,583 名 単体 5,742 名
連結対象会社数 : 562 社 ※子会社にて連結される会社数は含まれていません。
組織体制(2010年8月1日現在)
財務ハイライト(連結 2010年3月期)
株主総会
監査役
監査役室
新産業金融事業グループ
監査役会
取締役会
取締役社長
社長室会
チーフ・コンプライアンス・オフィサー
環境・CSR担当
■ 連結経営基盤整備担当
ガバナンス・報酬委員会
国際諮問委員会
エネルギー事業グループ
監査部
経営企画部
金属グループ
コーポレートスタッフ部門
機械グループ
ビジネスサービス部門
化学品グループ
営業企画委員会
ポートフォリオ・マネジメント委員会
■ 開示委員会
■ コンプライアンス委員会
■ 環境
・CSR委員会
■ HRD委員会
■ ITマネジメン
ト委員会
■
■
2,731億円
営業グループの当期純利益
当期純利益
(単位:億円)
新産業金融事業グループ
■
■
当期純利益
売上高
170,987億円
地球環境事業開発部門
生活産業グループ
エネルギー事業グループ
△76
719
金属グループ
1,379
機械グループ
236
化学品グループ
324
生活産業グループ
451
社長メッセージ
地球が最大のステークホルダー
∼経済価値のみならず、社会価値・環境価値も含めた、
継続的企業価値の創出を目指します
世界の経済情勢や地球環境を取り巻く状況は大きく変化
こと”
として掲げています。
「継続的企業価値」とは、
「継続
しており、新たな時代への対応が求められています。新興国
的経済価値」
、
「継続的社会価値」
「継続的環境価値」を
の成長に牽引される形で、金融危機後の世界経済は持ち直
統合した新しい概念です。
しつつあるものの、従来のように好不況が定期的に繰り返
「継続的経済価値の創出」とは、
弛まぬ収益モデルとポー
す時代ではなくなったと考えています。世界のどこで突発的
トフォリオの変革により、健全な利益成長及び企業価値の
に経済危機が発生し、どの程度のインパクトで世界経済に
増大を目指すという意味です。
影響するか、不透明かつ不安定な状況と言わざるを得ませ
「継続的社会価値の創出」とは、企業市民として社会と
ん。また、新興国が経済成長する中での、環境問題の深刻
の共生という観点から、新エネルギーを含む電力や水、交通
化という流れを背景に、インフラや環境、スマート化など新
システムなどのインフラ事業をはじめ各種事業を通じて、経
たな巨大成長市場が出現しつつあります。加えて、ステーク
済社会の発展に寄与することを意味します。
ホルダーとしての社会や地球の存在感が急速に増していま
「継続的環境価値の創出」とは、地球を最大のステーク
す。気候変動や生物多様性といった地球環境に関する意識
ホルダーと捉え、自らの事業活動における環境負荷の回避・
の高まりが世界的な潮流となり、地球環境や社会との共生
低減に努めるとともに、環境・水事業などを通じて持続可能
という意識を高いレベルで保持できなければ、企業として存
な社会の構築に取り組むことで、地球環境の保全と改善に
続できない状況となっています。
貢献していくという意味です。
企業として利益成長を目指すことは当然ですが、これに加
4
こうした世界の変化を踏まえ、当社では2010年7月に新
えて、社会との共生や地球環境への配慮や貢献を意識した
たな中期経営計画を発表しました。この『中期経営計画
経営を行い、継続的に社会価値、環境価値を創出できなけれ
2012』では、
「継続的企業価値の創出」を“会社が目指す
ば、中長期的な成長は望めないと認識しています。
全てのステークホルダーの要請・期待を踏まえ、
事業活動を通じて日本や世界の課題解決に貢献しながら、
『継続的企業価値』を創出する。
継続的経済価値
弛まぬ収益モデルとポートフォリオの変革により、
健全な利益成長及び企業価値の増大を目指す
『継続的企業価値』の創出
継続的社会価値
企業市民として、
“社会との共生”
という観点から
“経済社会の発展”に寄与する
継続的環境価値
地球を最大のステークホルダーと捉え、
“地球環境の保全・改善”に取り組む
当社は、全てのステークホルダーの要請・期待を踏まえ、
3,000億円の投資を計画するなど、積極的に事業を推進し
事業活動を通じて日本や世界の課題解決に貢献しながら、
ていく考えです。
「継続的企業価値」を創出していきます。
「継続的企業価値」の構成要素である
「継続的社会価値」
長引く先進国経済の停滞や、中国をはじめとする新興国
「継続的環境価値」を創出すべく、環境・CSRを経営の最
の急成長など、世界経済の様相が変貌する一方で、気候変
重要課題の一つと位置付け、多様なステークホルダーとのコ
動や生物多様性、さらには人権や貧困など、地球規模で取
ミュニケーションを継続的に行い、ステークホルダー・エン
り組むべき課題もますます多様化・複雑化しています。当
ゲージメント(対話、協働)を推進していきます。また、全社
社は、こうした課題を真正面に据え、真摯に取り組んでいき
をあげた取り組みとするために、環境・CSRに対する従業員
ます。これまでも、事業活動や社会貢献活動を通じて、さま
のさらなる意識向上にも継続的に努めていきます。
ざまなかたちで社会価値・環境価値の創出に取り組んでお
り、私は、こうした活動に誇りを持っています。今後は、これ
私が6月に社長に就任して真っ先に感じたのは、次世代の
をさらに発展させることで、全てのステークホルダーから認め
収益の柱を育てることが急務だということであり、その柱の
られ、必要とされる存在となることを目指していきます。
一つと考えているのが、
『中期経営計画 2012』の重点分
野に位置付けたインフラ・地球環境事業です。これらは、
社会の持続的な発展にとって重要な、まさに社会価値・環
境価値の創出に資する事業として、全社の知見とノウハウを
代表取締役社長
動員しながら取り組みます。そのために、社長直轄の組織
として地球環境事業開発部門を新たに設置し、3カ年で約
5
三菱商事の環境・CSR
三菱商事の原点「三綱領」
所期奉公
事業を通じ、物心共に豊かな社会の実現に努力すると同時に、
かけがえのない地球環境の維持にも貢献する。
処事光明
公明正大で品格のある行動を旨とし、
活動の公開性、透明性を堅持する。
立業貿易
全世界的、宇宙的視野に立脚した
事業展開を図る。
(2001年1月、三菱グループ各社で構成される三菱金曜会にて申し合わされた現代解釈)
「三綱領」は、
三菱四代社長岩崎小彌太の訓諭をもとに、
の中に息づいています。また三綱領は、三菱グループにお
1934年に旧三菱商事の行動指針として制定されました。
いても経営の根本理念となっています。さまざまな分野で
旧三菱商事は1947年に解散しましたが、三菱商事におい
活躍する三菱グループ各社は、同じ伝統と理念を共有する
てもこの三綱領は企業理念となり、その精神は役職員の心
もの同士として、切磋琢磨を続けています。
事業活動を通じた社会価値・環境価値の創出を目指す
企業活動の
フレームワーク
三菱商事では、企業理念である「三綱領」をすべての
企業活動の土台とし、その上で「企業行動指針」を定め、
事業活動の目的やそのあり方、人権・社員の人格の尊重、
地球環境への配慮などを規定しています。また、地球環境
への配慮に努めるための方針として
「環境憲章」を制定し、
これらに立脚した事業活動を推進しています。
私たちを取り巻く地球環境および社会の課題は、年を
追うごとに大きく変化しています。幅広い産業を事業領域
とする三菱商事では、広範囲にわたる地球環境と社会の
変化をいち早く捉え、事業活動を通じて課題解決に貢献
しながら、社会価値・環境価値を創出していくことを目指
します。
また、さまざまな社会貢献活動や海外での国際貢献活
動も、社会価値・環境価値を高めていくためには不可欠で
す。環境・CSRの取り組みを進めるに当たっては、ステー
クホルダーの皆様との継続的な対話を通じて、その声を反
映していくことが重要であると考えています。
「企業行動指針」の内容についてはウェブサイトをご覧ください。
6
社会価値・環境価値の創出
環境憲章を改定
三菱商事では1996年に環境憲章を制定しましたが、時
「気候変動」
「生物多様性」
「資源の持続可能な利用」を
代とともに環境に関する意識や課題が変化したことを受
新たな項目として加え、環境保全・負荷低減に貢献する事
け、
「環境・CSRアドバイザリーコミッティー(28ページ参
業を後押しするために「環境価値の創出・向上」に努める
照)
」および社内での議論などを経て、今年7月、環境憲章
ことを掲げました。当社は、この新しい環境憲章を礎に、
を改定しました。
環境・CSRを経営の最重要課題の一つと位置付け、積極
改定の主なポイントは、地球規模での課題となっている
的な取り組みを展開していきます。
三菱商事
環境憲章
三菱商事は、地球が最大のステークホルダーであると認識し、
事業活動を通じて持続可能な社会の実現を目指します。
■ 私たちは、新技術や新たな仕組みを活用し、温室効果ガスの削減に取り組みます。
■ 私たちは、資源(エネルギー、鉱物、食料、水等)の持続可能な利用に努めます。
■ 私たちは、生態系がもたらす様々な恩恵の重要性を認識し、
生物多様性への影響を緩和するとともにその保全に貢献します。
■ 私たちは、環境負荷低減や環境保全によって生じる環境価値の創出・向上に努めます。
■ 私たちは、環境に関する企業情報を適時・適切に開示し、多様なステークホルダーとの
コミュニケーション・協働を推進します。
■ 私たちは、環境諸法規を遵守するとともに、国際行動規範に則した行動を取ります。
事業投資と環境・CSR
三菱商事では、社長室会における投融資案件の審議に
国際金融公社(IFC)のガイドラインなどを参照しています。
際して、経済的側面だけでなく、事業活動による環境面・
また、案件を進める上での留意点を取りまとめたCSR
社会性面への影響についても総合的に審議・検討を行っ
チェックリストを作成し、環境面での審査に加え、グローバ
ています。また、案件によっては、さらに取締役会で審議
ルな視点から見た人権・労働への配慮など、社会性項目
されます。
についても審査を行っています。
社長室会での投融資案件の意思決定は、社内専門部局
の提言を考慮したポートフォリオ・マネジメント委員会(PM
委員会)の諮問を基に行われます。PM 委員会では、次の
投融資案件の
審査フロー図
取締役会
システムを導入しています。
●
環境・CSR推進室が環境・社会への影響について審査
意見提出
ポートフォリオ・マネジメント委員会
案件申立
●
申立部局(コーポレートスタッフ部門、全社開発部門、各営
業グループ)が、投融資案件の申立書において環境・社会
への影響を自ら記載
社長室会
意見提出
環境・CSR 推進室
CSR 対応チェック
環境・CSR 推進室の審査に当たっては、
「環境社会配
慮確保のための国際協力銀行(JBIC)ガイドライン」や、
申立部局
●地球環境(気候変動・生物多様性など)
●地域・社会(先住民・文化遺産など)
●人権・労働(児童労働・強制労働など)
7
三菱商事の環境・CSR
環境分野での取り組み
環境マネジメントシステム
技術革新が、大きな役割を果たすと考えています。
三菱商事では、幅広い産業を事業領域として、グローバ
自らのCO2排出量削減に努めるとともに、新しい技術や仕
ルなビジネスを展開しています。当社がかかわる「商品取
組みの開発を通じて、地域社会や産業界における社会全
引活動」と、国内外におけるさまざまな「事業投資活動」
、
体の低炭素化にも貢献していきます。
そして「オフィスにおける業務活動」と環境とのかかわり
を把握し、気候変動や生物多様性などの地球規模での課
当社は、グローバルに事業活動を展開する企業として、
CO2排出量削減の取り組み
題や、社会性面(人権・労働など)の課題に対応する能力
三菱商事は、オフィス業務や物流などを含む、事業活動
のレベルアップを図ることが重要と考えています。そこで、
のあらゆる場面において、CO2の削減に取り組んでいます。
社長を最高責任者とし、
各グループ、
および国内コーポレー
当社では、2003年からCO2排出量を含めた気候変動に
トセンター(国内支社・支店を統括)に環境・CSR 推進
対する考え方やパフォーマンス情報をCarbon Disclosure
責任者を配置し、
ISO14001に則した環境マネジメントシス
Project(CDP)に開示しています。また、CO2排出量の
テムの推進体制を構築しています。
報告内容に対する信頼性の確保を目的に、グローバル連
当社では、商品取引先・請負先あるいは事業投資先に
結ベースでのCO2排出量集計に対して第三者からの助言
対して、環境面や社会性面の取り組み状況に関するアン
を受けています。
ケート調査やヒアリング、さらには現地視察を行い、環境
2009年4月からは、全社 CO2削減運 動「CO2 Action
管理の状況、
緊急時の対応などを確認する
「環境レビュー」
Project」をスタートさせ、
「オフィスにおけるCO2削減」
を行っています。その結果、レビュー先へ提言や要望の伝
部門・営業グルー
と
「勤務や営業活動に伴うCO2削減」を、
達を行い、双方で環境負荷軽減につながる結果を得るこ
プごとに目標を掲げて推進しています。
とを目標としています。
当社(単体ベース)の2009年度におけるCO2排出量
2009年度は、
本店各グループにおいて「商品取引活動」
(電力使用に伴う間接的なCO2排出量)は、前年度から約
10件、
「事業投資活動」11件の環境レビューを実施しま
2.3% 減となる3,988トンとなりました。詳細は30ページ
した。レビュー先に対する環境負荷軽減に向けた提言や
の「環境パフォーマンス」をご覧ください。
要望の伝達を行ったほか、取引先や事業投資先と共に定
量的な目標を設定して、具体的なビジネス展開につなげる
事業を通じた低炭素社会への貢献
など、環境マネジメントシステムのツールをサプライチェー
三菱商事は、交通インフラや新エネルギー開発などの事
ン全体の環境管理に活用しています。
業を通じて、低炭素社会の推進に貢献していきます。 2010年4月、社長直掌組織として新設した「地球環境
気候変動
8
事業開発部門」では、
新エネルギー、
環境・水事業に加え、
海外電力事業やエネルギーソリューション事業を集約し、
三菱商事では、気候変動を地球規模での対応が求めら
地球環境を視野に入れたインフラ事業への取り組みを強
れる喫緊の課題であると認識しています。この課題を改
化しました。また、各営業グループでは、炭素の回収・貯
善の方向へと導くためには、気候変動対策における国際
留、再生可能エネルギー、クリーン開発メカニズム、電気自
的な枠組み作りと、その実施が極めて重要です。また、低
動車など、低炭素社会の実現に貢献する技術やビジネス
炭素社会の実現に向けて、産業界の自主的な取り組みや
モデルの開発に取り組んでいます。
生物多様性
私たちは、多様な生物によって構成される生態系から多
大な恩恵(生態系サービス)を受けています。例えば、食
料や水などの
「供給サービス」や、
気候調節・水質浄化の
「調
節サービス」など、さまざまな生態系サービスがあります。
これらのサービスは、地球上の数多くの生物種やそれらに
よって成り立つ生態系の豊かさとバランス、すなわち生物
多様性によって支えられています。
多岐にわたるビジネスを展開している三菱商事では、世
界のさまざまな地域で生態系サービスの恩恵を受けていま
す。従って生物多様性の維持・保全に努めることは当社
にとっても重要な課題であると考えています。
当社は、生態系サービスの基盤となる地球を最大のス
テークホルダーと捉え、事業活動による生物多様性への
影響の緩和に努めるとともに、事業活動および社会貢献
活動を通じた生態系の保全に貢献していきます。
資源の持続可能な利用
三菱商事は長年にわたり、金属、エネルギー、食料など
の資源を、日本のみならず世界中に安定供給しています。
エネルギー、食料、水などの資源をめぐる課題は、気候変
動や生物多様性などの地球環境の課題と不可分であり、
国際社会が一致団結して取り組むべき重要なテーマとなっ
ています。今後、さらなる人口増加が予測される中、事業
活動を通じて世界中で必要とされる資源の安定供給に努
めると同時に、再生可能エネルギーの開発や水事業など
を通じて、資源の持続可能な利用に努めていきます。
環境パートナーシップと環境に関する貢献活動
三菱商事はNGOなどとのパートナーシップを通じて、貴
重な地球生態系の保全に寄与するとともに、環境に関する
課題認識と理解を深める機会を社員に提供しています。
●三菱商事は生物多様性維持・保全のため、最前線の科学
の現場と一般市民をつなぐ活動に取り組む
国際環境 NGOのアースウォッチと1993年に
パートナーシップを結びました。同団体が世
界各地で進める環境調査研究活動に三菱商
事の社員が参加しています。社員はさまざま
な環境保全プロジェクトにおいて、データの収
集などで科学者・専門家をサポートしています。
●海洋生態系の中で重要な役割を担うサンゴ礁。三菱商事は
2005年より
「サンゴ礁保全プロジェクト」を実施しています。
沖縄、ミッドウェイ、セーシェルの3拠点で、サンゴ礁の健全
性保持と回復技術の確立・普及を目的に、大学・NGOと協
力しながら産・学・民連携の研究プロジェ
クトを進めています。社内外のボランティ
アが調査研究活動をサポートするほか、
セミナーを開催して研究成果を公表する
など、地球全体のサンゴ礁保全に活かす
ために取り組んでいます。
●世界各地での熱帯林の減少は、生物多様性や地球温暖化
に大きな影響を及ぼします。三菱商事では1990年より、
「熱
帯林再生実験プロジェクト」に取り組んでいます。このプロ
ジェクトでは、現地固有の樹種を密植・混植方式で植林し、
40∼50年という短期間で自然林に近い生態系を蘇らせる
ことを目指しています。現在、マレーシア、
ケニア、
ブラジルで活動しており、
マレーシ
アでは社員による植林ツアーも行われ、
現地住民との交流を通じた熱帯林保全
の理解促進にもつながっています。
9
三菱商事の環境・CSR
社会性分野での取り組み
人権
サプライチェーン・マネジメント
三菱商事は、
世界中でさまざまなビジネスを展開するに当
三菱商事では、サプライチェーンにおける環境・CSR
たり、人権への配慮がCSRの重要な要素であると考えてい
のマネジメントを重要な課 題の一つと認識しています。
ます。三菱商事役職員行動規範では、
「人権の尊重、人種・
2008年2月に「サプライチェーンにおけるCSR 行動方針」
民族・信条・宗教その他事由による差別の禁止、セクシャ
を定め、ウェブサイトでの公開だけでなくサプライヤーに直
ル・ハラスメントの禁止、人権問題に対する正しい理解と
接伝え、関係者の皆様と共有しています。
認識、各国・地域の文化・慣習・言語の尊重、国際社会や
地域社会との調和」が明記されています。また、世界人権
宣言やILO 国際労働基準、安全と人権に関する自主的原則
サプライチェーンにおけるCSR 行動方針
など、人権に関する主要な国際行動規範を支持しています。
三菱商事は、多様な取引形態を有しており、それぞれ
さらに、2010年より国連グローバ
の業界が持つ特性に応じたサプライチェーン・マネジメ
ル・コンパクトに参加し、人権、労
ントを進めていく必要があります。三菱商事は、
「サプ
働、環境、腐敗防止の4分野に関す
る10の原則の支持を宣言し、各分
野における取り組みを推進していき
ます。
先住民の権利
三菱商事は、人権尊重へのコミットメントの一環として、
先住民の権利に関する方針を策定しました。先住民が在
住する地域での事業活動においては、先住民が固有の文
化や歴史を持つことを認識し、事業活動を行う国・地域の
法律や国際的な取り決め(ILO 第169号条約、先住民族
の権利に関する国際連合宣言など)に定められた先住民
の権利への配慮を行います。なお、
「先住民の権利」とは、
ライチェーンにおけるCSR 行動方針」を定め、サプライ
ヤーに対して三菱商事の基本的な考え方をお伝えする
とともに、以下に定める項目への賛同と理解、実践を期
待します。
1. 強制労働の禁止
2. 児童労働の禁止
3. 安全で衛生的かつ健康的な労働環境の提供
4. 従業員の団結権の尊重
5. 差別の禁止
6. 非人道的な扱いの禁止
7. 労働時間の適切な管理
8. 適切な賃金
9. 地球環境への配慮
10. 情報開示
人権のみならず、先住民族の土地、文化、歴史、言語など、
10
広義での権利を指す概念となっています。
当社では、サプライチェーン・マネジメントの一環として、
三菱商事が行っている新規の投融資に当たっての審査
サプライヤーに対するアンケート調査や現地視察を行って
においても、
「先住民の権利」を確認事項の一つとしてい
います。今後とも当社のサプライチェーンにおけるCSR 行
ます。また、国際金融公社(IFC)の「パフォーマンス・ス
動方針が海外拠点や三菱商事グループ会社に十分浸透す
タンダード」など関連のある国際基準を参考とし、先住民
るよう、また地球規模でサプライヤーの理解と協力を得る
の尊厳、人権、文化などに根ざした暮らしを十分に尊重し
ことができるよう引き続き努力していきます。
た上で投融資が行われるよう、関係するステークホルダー
サプライヤーに対するアンケート調査や現地視察の結果
と協議しています。
については、適宜、
ウェブサイトにてご紹介していく予定です。
また、
社員一人ひとりがさまざまな経験とキャリア機会を
社員とのかかわり
得て、個人と組織に活力を生み出す人材配置を積極的に
三菱商事の最大の資産は人材です。世界各地で働く社
推進しています。例えば、部門や営業グループを超えた異
員一人ひとりが能力を最大限に発揮して、自らの価値を高
動、海外で採用した社員の日本への出向や日本での研修、
めることができる健全な雇用・労働環境の整備を人事の
海外拠点間での異動など、連結・グローバルベースでの
基本方針としています。採用・教育・配置・評価・処遇な
施策を進めています。
どの人事施策に加え、組織・風土の強化と働くための環
三菱商事には、性別や国籍の違いだけでなく、家庭で育
境整備も連動させ、人材強化に取り組んでいます。
児や介護に取り組んでいるなど、さまざまな社員が在籍し
三菱商事は、
グローバルに事業を展開する企業として、
そ
ています。多様な人材が集い、切磋琢磨しながら成長して
れを担う人材のさらなる開発と、多様な人材に対する雇用
いくことが、継続的に企業価値を創出していくためには不
機会均等の推進に積極的に取り組んでいます。人材の国
可欠であると考え、
「自社の最大の強みである人材がさら
際化を進めるグローバルHRD(人材開発)では、各国の法
に成長し、働きがいを持って大いに活躍できる体制と環境
規を遵守するとともに、文化的側面の一つである職場環境
づくり」のためのさまざまな施策を推進しています。
の違いにも配慮することはもちろん、連結子会社の社員や
三菱商事の人事施策に関する詳細は、ウェブサイト「社
海外拠点の社員の人材開発も積極的に推進しています。
員とのかかわり」もご覧ください。
社会貢献活動
三菱商事は、豊かな社会づくりに貢献する
ために、地域社会や国際社会と共に発展して
いきたいと考えています。社会貢献活動にお
いては、幅広い分野での取り組みとともに、社
員の自発的な参画を積極的に支援しています。
三菱商事の社会貢献活動は、
「地球環境」
「福祉 」
「教育」
「文化・芸術」
「国際交流」
の分野を中心に、世界各地の社員が自発的に
参加して汗を流すとともに、継続して活動に取
り組むことを重視しています。また、社員一人
ひとりが社会貢献に対する意識を高めていく
ことが重要と考え、ボランティア休暇制度や
昼休みを利用した社内で行われるボランティ
アプログラムの開催など、社員のボランティア
活動への参加を促すさまざまな取り組みを進
めています。
三菱商事の社会貢献活動に関する詳細は、
ウェブサイトの「環境・CSR 通信」をご覧くだ
さい。
『社会貢献活動レポート』の発行も予
定しています。
ラオスの子どもたち50人が小学校を卒業する
までの奨学金を寄附するプログラム
1974年から継続して開催されている
「母と子の自然教室」
11
三菱商事における環境・CSR の
重点課題
事業を通じた社会価値・環境価値の創出
三菱商事では、事業活動を通じて社会価値・環境価値を創出していくことが、多様なステークホルダーからの要請・期
待に応えることになると考えています。同時に、それらの価値創出が当社の企業価値向上につながるとの認識に立ち、
環境・CSRを経営の最重要課題の一つとして取り組んでいます。
三菱商事のマテリアリティ
三菱商事では、事業活動において重要性(マテリアリティ)の高い環境・CSR 分野の課題として、
「気候変動」
「生物
多様性」
「資源の持続可能な利用」
「汚染・事故の未然防止」
「人権・労働」
「先住民の権利」を特定し、自らの事業
においてそれらの課題とどのようにかかわり、持続可能な社会の構築に向けてどのように取り組んでいるのかを整理しま
した。次ページ以降では、各部門・営業グループごとに重点課題を整理するとともに、それらの課題解決に貢献しながら
社会価値・環境価値を創出する事業活動をご紹介します。
ステークホルダーの関心・期待
三菱商事へのインパクト
● 環境・CSRアドバイザリーコミッティーからの指摘
● 三菱商事における重点施策
● SRIインデックスやNGOなどとの対話
● 新たな事業機会の創出
● 国内外のメディアモニタリング
● 事業を進める上でのリスクマネジメント
● 国際条約などの動向(気候変動、生物多様性など)
● 法規制などの強化
気候変動
生物多様性
多くの事業投資先を有する三菱商事では、連
結・グローバルベースでのカーボンマネジメ
ントの強化が重要な課題であると考えていま
す。また、交通インフラや新エネルギー開発
など、社会の低炭素化に資する事業に取り組
んでいます。
資源の持続可能な利用
エネルギー、鉱物、食料、水など、世界中で
さまざまな資源にかかわる事業を展開する
三菱商事にとって、資源の持続可能な利用
に努めることは重要な課題となっています。
多岐にわたるビジネスを展開している三菱商
事では、世界のさまざまな地域で生態系サー
ビスの恩恵を受けています。したがって生物
多様性の維持・保全に努めることは当社に
とっても重要な課題であると考えています。
三菱商事の
事業活動
先住民の権利
資源開発案件を中心に、先住民の居住する地域
での事業を展開する三菱商事にとって、先住民が
固有の文化や歴史を持つことを認識し、事業活動
を行う国・地域の法律や国際的な取り決めに定
められた先住民の権利への配慮を行うことは重要
な課題となっています。
12
人権・労働
世界中でさまざまなビジネスを展開し、多
種多様な商品を取り扱う三菱商事にとっ
て、人権への配慮、特にサプライチェーン
における人権・労働面の配慮は重要な課
題となっています。
汚染・事故の未然防止
環境面、および労働安全衛生面からも、
汚染や事故の未然防止に努めることは
重要であり、そのための仕組み作りと管
理に継続的に取り組んでいます。
事業を通じた社会価値・環境価値の創出
グリーンITをサポートするソフトウェアの国内販売
三菱商事は、100% 出資子会社の情報セキュリ
〉
〉ビジネスサービス部門
ティ事業会社インフォセック
(本社 : 東京都)
を通じて、
オフィスのPC、
モニターが消費する電力を削減するソ
フトウェア「BigFix」
(米国 BigFix 社製品)を販売し
ています。オフィスの消費電力では、PCとモニターの
気候変動
割合が多くを占めるといわれており、ほとんどのPCは
スリープモードなどの省エネ設定が可能となっていま
すが、利用者のエコ意識に依存するため適切に活用
されていないのが実情です。
「BigFix」では、
省エネ設定状況の「見える化」と、
その状況を踏まえた適切な省エネ設定の強制適用
を可能とします。海外での豊富な導入実績を持ち、
さ
らに国内では東大グリーンICTプロジェクト※や自治
体での導入検証が進んでおり、その効果が実証され
始めています。
※ ITおよびITを活用した省エネの技術を持ち寄り、東京大学本郷キャンパスにおいて実
証実験を行う産学連携プロジェクト
自社保有ビルにBEMS※を導入
部門概要と事業における重点課題
2010年4月に新設されたビジネスサービス部門で
は、三菱商事および三菱商事グループ企業に対する
事業価値向上、業務改革支援、事業展開を支えるIT
および物流・貿易関連の機能サービスを提供し、高
度な連結経営体制を支えていくことをミッションとし
ています。また、それらを通じて蓄積されたノウハウ
を三菱商事の既存・新規顧客にも提供し、新規事
業創出につなげていくことも目指しています。
低炭素社会の実現のためには、企業活動の効率
三菱商事が保有するMCC三鷹ビル(東京都三
鷹市)は、省エネ法の第二種エネルギー管理指定工
場に該当するため、国から「特定事業者」の指定を
受け、エネルギー管理義務を負っています。そのため
2008年2月よりBEMSを導入し、EMSに取り組んで
います。今年からは高効率空調熱源の導入やLED
照明の試験導入に加え、ビルテナントへ省エネを啓
発するための温暖化対策協議会を毎月実施するな
ど、さらなる対策を進めています。なお、2009年度
のCO2排出量は前年度比約88%を達成しました。
※ Building Energy Management System=ビルの機器や設備などの運転管理によって、
エネルギーの削減を推進するシステム
化と最適化への取り組みが重要と考えています。そ
こでITの果たす役割は大きい一方、その普及が進む
につれ、IT 関連の消費電力は増加していきます。当
部門では、自らの省エネルギー推進を図るとともに、
ITサービス・ソリューションの提供を通じた、顧客お
よび社会の効率化・最適化とCO2排出量の削減を
目指し、低炭素社会の実現に寄与していきたいと考
えています。
13
部門概要と事業における重点課題
2010年4月に新設された地球環境事業開発部門
では、これまで取り組んできた新エネルギー事業、環
〉
〉地球環境事業開発部門
境・水事業に加え、営業グループから海外電力事業
やエネルギーソリューション事業を移管・集約し、全
社戦略分野として地球環境を視野に入れたインフラ
事業への取り組みを強化しています。
世界の人口は増加の一途をたどり、現在の約67
気候変動
億人から2050年には90億人に達するとみられてい
ます。増え続ける人口に対し、今後も安定的にエネ
ルギーや水を供給し続けることは重要な課題です。
資源の持続可能な利用
しかし一方、地球上の資源は有限であり、より多く
の人が共存するためには、代替エネルギーの開発や
資源の効率的利用を図り、
持続可能な社会を構築す
る必要があります。
また、地球の受容能力にも限界が見え始めており、
「気候変動」や「生物多様性の保全」に配慮し、新
技術や新たな仕組みを活用して環境負荷低減や環
境の保全・改善に取り組まなければなりません。
これらの課題に対し当部門では、ビジネスを通じ
て有効なソリューションを提供していきます。
具体的には、長期安定的な電力供給事業に加え、
CO2を排出しない太陽熱・太陽光・風力など自然エ
ネルギーによる発電事業を推進します。さらに、
持続
可能なバイオ燃料の製造事業、電気自動車の心臓
部とも言える大容量リチウムイオン電池の開発・製
造事業、CO2排出量とエネルギー使用量の低減を可
能とする省エネルギー事業の推進など、エネルギー
の供給・貯蔵・需要の各ステージにおいて、環境価
値の創出・向上を目指した事業に積極的に取り組ん
でいきます。
タイで省エネルギー事業会社を設立
TOPICS
三菱商事は、産業セクターにおけるエネルギー使
用を合理化し、CO2排出量とエネルギー使用量の
低減を可能とする省エネルギー事業を、アジアを軸
に推進していくため、東洋タイグループと合弁にて、
2010年3月にGlobal New Energy Co., Ltd.(GNE
社)をバンコクに設立しました。
当社はGNE 社を通じ、当社の持つ排出クレジット
創出事業ノウハウと東洋タイグループの持つグロー
バルなエンジニアリング能力を融合した、国際競争
力のある省エネルギー事業を展開していきます。
14
また、増加を続ける人口に比例して需要が高まる、
安心・安全な水の確保・供給を目指し、官民連携し
て水事業に取り組むなど、持続可能な社会を構築す
るためのインフラ整備に貢献していきます。
事業を通じた社会価値・環境価値の創出
安全な水を世界へ──日本を代表する総合水事業会社を目指して
新興国の経済成長に伴い、安全な水を安定的に供給することへのニーズが高まっ
ています。特に急激な人口増加によりインフラ整備が追いつかない地域では、水不
足とそれに伴う衛生面での懸念も生じています。
かねてより、世界各国で水道インフラ整備などの水関連ビジネスに携わってきた三
菱商事は、水道設備の設置のみならず、運営や維持管理などを含めた水道オペレー
ションをトータルに提供することを目指しています。マニラ水道会社(MWC※1)への
経営参画などに加え、本年4月より日揮と共に、荏原製作所の水事業子会社である
荏原エンジニアリングサービスが機械・電気設備を担当したアフリカ・
ジンバブエの下水処理施設
■ UUA社の事業所在地
荏原エンジニアリングサービスの株式を1/3ずつ取得。三菱商事、荏原製作所、日
上水道
上下水道
下水道
D 工場排水処理
A
B
揮の3社による共同経営体制をスタートさせ、日本を代表する総合水事業会社の構
C
築を目指しています。
A
B
海水淡水化施設
また、本年5月に三菱商事は産業革新機構 、日揮およびMWCと共に、豪州の
※2
D A
水道事業会社であるUnited Utilities Australia(UUA)の買収に合意。日本初の海
外水ビジネスにおける官民連携案件が実現しました。
B
UUAは英国最大手の水道事業会社United Utilitiesが1991年に設立し、豪州に
て上下水道、海水淡水化、工場排水処理など14事業を展開、約300万人に給水を
クイーンズランド州
D A
サウス
オーストラリア州
行っています。
豪州では深刻な干ばつが続いていたこともあり、
海水淡水化設備が普及し、
人々は
「水は貴重な資源」という高い意識を持っています。豪州において日本の高い水処
理技術を導入し、水事業運営のノウハウを蓄積していくことは、東南アジアや中東を
はじめとする他地域で水事業を推進する上での強みになっていくと考えています。今
後も、事業投資先および出資先の持つ実績やノウハウを活用して、世界各地での水
資源の効率的な利用と安全な水の供給に貢献していきます。
ニューサウス
ウェールズ州
C C
A C A
C
A
ビクトリア州
B A
※1 Manila Water Company=フィリピンの大手コングロマリットで
あるAyalaグループなどと共に1997年設立。マニラ東地域で
取水、料金徴収、下水やし尿処理までの上下水道すべての領
域を担う。2005年にフィリピン証券市場に上場
※2 オープンイノベーションの推進を通じた次世代産業の育成を目
指して2009年7月に官民共同出資により設立された会社。総
額8,000億円の投資能力を有し、革新性を有する事業に対し
出資などを行うことで産業革新を支援することをミッションとし
ている。海外水ビジネスでは、東京都水道局との相互協力協
定を締結している
世界最大級の太陽光発電事業で、現地の新エネルギー政策にも貢献
三菱商事は、100% 出資の事業投資先であるDGA ※3を通じ、香港の電力会社
CLP※4、タイの大手 IPP事業会社 EGCO※5と共同で、タイ・ロッブリ県に世界最大
級となる発電容量73MWの太陽光発電所を建設・運営することとなりました。
NED を事業主体として、この太陽光 発電所の全 発電量をタイの電力公社
※6
Electricity Generating Authority of Thailand 向けに25年間売電する事業を行う
タイ
ロッブリ県
バンコク
もので、2011年末までの発電開始を目指しています。敷地面積は200ヘクタールで
太陽光パネルを54万枚使用。タイの約4万世帯をカバーする電気を供給します。こ
れにより、従来の火力発電所と比較し、年間4∼5万トンのCO2削減に寄与します。
タイでは、2022年までに全エネルギーの20%を新エネルギーとする計画がありま
す。この太陽光発電事業の実現は、タイの新エネルギー普及政策のみならず、アジ
アでの低炭素社会の実現に貢献していくと考えています。
※3 Diamond Generating Asia Limited= 東南アジアおよび台湾でのIPP 事業を統括する会社として2009年4月に設立(本社 : 香港)
。
IPP(Independent Power Producer)とは、自社保有の設備で発電し、その電力を電力会社に卸売する事業者(独立系発電事業者)のこと
※4 CLP Holdings Limited
※5 Electricity Generating Public Company Limited
※6 Natural Energy Development Co., Ltd.= DGA、CLP、EGCOが33.3%ずつを出資
プロジェクト完成予想図
15
グループ概要と事業における重点課題
新産業金融事業グループでは、
総合商社が得意と
する「モノ」の知見に、
「金融」を結びつけた商社
〉
〉新産業金融事業グループ
型産業金融事業を展開しています。主な事業は、ア
セットファイナンスや企業のバイアウト投資から、リー
ス、不動産(開発および金融)
、物流、保険までと多
岐にわたります。幅広い産業界との接点と、金融機
気候変動
関と異なった視点での事業やモノに対する目利き・
知見を活かした金融ビジネスの展開が当グループの
強みです。
2010年以降は新興国を中心とした需要の回復に
よる業績の持ち直しが期待されていますが、当社の
企業理念である「三綱領」を拠り所に、公明正大で
品格のある行動を心掛けていきます。もちろん、活
動の公開性や透明性を担保することは言うまでもあ
りません。
当グループの収益の柱の一つに、ショッピングセ
ンターや大規模マンションなどの不動産開発があり
ます。これらの施設では、
「人と環境への考慮」を
最大のテーマに掲げ、省エネルギーやCO2排出量削
減はもちろん、ユニバーサルデザインの採用など、人
に優しい施策も盛り込みました。加えて、
電気自動車
のリースや物流分野でのモーダルシフトの加速、地
域社会との共生など、今後も、
「人と地球に優しい」
事業を目指していきます。
低炭素型集合住宅の販売
TOPICS
三菱商事では、環境配慮型マンションの開発を積
極的に進めています。2009年秋に販売を開始した
「テラス東陽町ネクスタワー」
(東京都江東区)は、エ
ネルギー効率に優れた設備の導入による「CO2排出
量削減」や、緑化面積を増やす「住環境・地域環境
の向上」
、再生材や節水型設備の積極的な採用によ
る「限りある資源の有効利用」といったテーマで開
発しました。
また、三菱自動車の電気自動車
『i-MiEV』をカーシェアリングに使
用するなど、ハード・ソフトの両面
で住環境と地域環境の向上に貢
献しています。
テラス東陽町ネクスタワー完成予想図
16
事業を通じた社会価値・環境価値の創出
人と環境に配慮したmozo wondercity
三菱商事は「環境への配慮」
「街とのつながり」
「サステナビリティ」を意識した
街づくりに取り組んでいます。三菱商事の役割として、地域住民の声を聞き、ニーズ
や課題をしっかりと把握した上で、総合商社の信用力・情報力を活かして、関係者
と連携しながらプロジェクトを推進する「都市開発のプロデューサー」が挙げられま
す。さらに必要な資金を調達するため、不動産証券化などさまざまな金融ノウハウを
活用する「金融面のサポート」や、三菱商事グループが持つ設計や施工の技術力や
建材・設備機器などの調達力を活かし、コスト管理や品質の維持・向上を図りなが
らプロジェクト全体をコントロールする「エンジニアリング機能」を果たすことも重要
な役割です。これらを通じて、
「人と暮らしと環境を豊かにする」とのコンセプトの下、
地域に喜ばれる街づくりを推進しています。
2009年4月に愛知県名古屋市に開業した「mozo wondercity」は、テナント数
約230、駐車場台数約5,000台を擁する都市型ショッピングセンター。明日の豊か
な暮らしを提案する施設として、地域環境への配慮や地域とのつながりを重視して
開発しました。例えば、建物の外壁には合計約1,700m に及ぶ壁面緑化を実施し、
2
開発型証券化案件
(開発中の不動産物件を証券化する金融手法)
としては三菱商事では過去最大級の案件。三菱商事の開発機能と
金融機能が最大限に駆使されています
建物の圧迫感解消やCO2排出量削減を図りました。また、氷蓄熱空調システムの導
入で、年間約1,975トンのCO2(東京ドーム約23個分の森林面積に相当)の削減を
目指しています。さらに、ショッピングセンター敷地内で、地域住民の皆さんと共に、
地域に適した樹木を中心に約2万本の苗木を植樹したほか、敷地内の一部を通学路
として開放。開業から1年以上が経過したmozo wondercityは、引き続き地域住民
からの高い評価を得られるよう努力していきます。
自動車リースにおける環境対応のサポート
三菱オートリース(MAL: 三菱商事50% 出資先)では、自動車
リースを通じてお客様の環境への取り組みをサポートしています。
MALは、三菱 UFJリース(MUL: 三菱商事20% 出資先)が調
達した排出クレジットを活用し、
「排出権付きリース(カーボンオ
フセットリース)
」を提供しています。これは、リース車両から排出
される温室効果ガスをオフセットするという仕組み。リース契約
により、その契約に定めた量の排出権の償却手続きをMALがお
■ 排出権付きリースの仕組み
排出クレジット償却
日本政府
リース契約
MAL
MUL
お客様
償却証明書発行
■ EVテレマティクスサービスの仕組み
三菱自動車工業(MMC)
お客様
本社
MAL
客様に代わり手配し、お客様の排出量オフセットを実現します。
また、三菱自動車の電気自動車『i-MiEV』に、GPS 機能付き
事業所
の車載器(ドライブレコーダー)を装備し、車両運行情報や電力
緊急ダイヤル・対応
(i-MiEV専用ダイヤル)
消費量などEV 特有のデータを通信で効率的に収集・管理できる
「EVテレマティクスサービス」を『i-MiEV』の発売当初から提供
しています。このサービスによって、お客様自らが環境に関する導
安全運転意識の向上も支援しています。
i-MiEV
専用コールセンター
インターネット
サービス
運行データ
電池データ
入効果を確認できるだけでなく、運行管理も容易となります。さ
らに、収集したデータの分析によって、より環境に優しい走り方や
車両購入
i-MiEVデータフィードバック
i-MiEV
専用車載器
通信
アクション
メール
MALサーバ
i-MiEV
関連データベース
ASPサーバ
整備実施
MMCディーラー
整備・点検実施データ
メンテナンス依頼
17
グループ概要と事業における重点課題
エネルギー事業グループでは、石油・ガスのプロ
ジェクト開発および投資のほか、原油、石油製品、
〉
〉エネルギー事業グループ
LPG、LNG、炭素製品などの取引業務を行っていま
す。国内外の需要家や産油・産ガス国、
オイルメジャー
などと長年にわたり良好な関係を構築し、築き上げて
きたグローバルなネットワークを活用して、
エネルギー
の安定供給を通じて社会の発展に貢献することを目
気候変動
指しています。
一方、当グループが取り扱う商品に共通する課題
として地球温暖化があります。CO2削減という目標
資源の持続可能な利用
に向かって、化石燃料の消費を抑えることが世界的
なコンセンサスとなっています。この課題に対応する
汚染・事故の未然防止
ため、地球環境事業開発部門とも協力し、バイオ燃
料をはじめとする新エネルギーの開発にも積極的に
取り組んでいます。
また、石油・ガスの開発といった上流事業では、
優良な資源を確保することがますます難しくなってき
ています。エネルギーの安定供給のために、石油・
ガス資源の権益の確保・維持が必要となりますが、
そのためにはインフラや医療・教育といった分野で
の貢献も含め、資源国のさまざまなニーズに対応して
いくことも重要と考えています。
■ エネルギー事業グループが関与する主な海外プロジェクト
英領北海
開発・生産
(原油)
E
アラスカLNG
カザフスタン
探鉱・開発
(原油)
E
チュニジア
開発 E
(天然ガス) E リビア
探鉱
(原油)
ガボン
L
L サハリンLNG
米国メキシコ湾
探鉱・開発・生産
(原油・天然ガス)
E
オマーンLNG
L
探鉱・開発・生産
(原油)
E
マレーシアLNG
L
E
アンゴラ
探鉱・開発・生産
(原油)
西オーストラリアLNG L
E
L
18
石油・ガス探鉱開発事業
LNG事業
E
E
ブルネイLNG
L
ドンギ・スノロLNG
L
L タングーLNG
カンゲアン
探鉱・開発・生産
(原油・天然ガス)
MEDCO社への出資
E
ベネズエラ
重質油開発
(原油)
事業を通じた社会価値・環境価値の創出
液化天然ガス(LNG)の安定供給に向けて
LNGは石油や石炭と比べ、温室効果ガスの排出が少なく、硫黄酸化物はゼロと、
環境に優しいエネルギー源として、近年では世界中で積極的に導入が進められてい
ます。また、中国・インドなどの新興市場の台頭により、今後10年間で世界における
海上貿易量は倍増するとみられます。
1969年に、アラスカから日本初となるLNGの輸入を実現させた三菱商事は、その
1969年に参画以降、現地政府や関係者と深い関係を構築してい
るブルネイLNGプロジェクト。ブルネイ産 LNGは現在日本の LNG総
輸入量の約 1割を占めています
後ブルネイでのLNGプロジェクトに参画し、液化・販売部門に出資しました。そして
今日まで、マレーシア、豪州、オマーン、サハリン、インドネシアと順調に権益を獲得し、
現在では世界最大のLNG 輸入国である日本の輸入量の約4割を取り扱い、供給先
は韓国、台湾、欧州、北米へと広がっています。
三菱商事の天然ガス事業では、グローバルなLNG 需要の高まりを見据えつつ、
LNGの安定供給を最大のミッションとしています。そのため世界の主な産ガス国で
権益を確保するとともに機能強化にも取り組み、ガス田の探鉱・開発、生産、液化、
LNG 船事業、輸入代行業務など、LNGバリューチェーンの幅広い領域に事業を拡大
してきました。
今後は、既存事業のさらなる機能の強化に取り組むとともに、LNG 液化基地のオ
ペレーターとなることも目指します。また、北米、南米、中東、オセアニアなどにおける
※
新規 LNG 事業機会の追求やコールベッドメタン、シェールガスなどの非在来型ガス
田の開発、天然ガスの洋上開発などの検討にも積極的に取り組んでいきます。この
ようなエネルギー資源の開発に当たっては、自然環境や地域社会との共生が重要な
三菱商事、ガスプロム、ロイヤルダッチシェル、三井物産による合弁
会社であるサハリンエナジー社が推進する
「サハリンII」プロジェクト。
2009年 3月からLNGの出荷を開始しました
■ 天然ガスのクリーン性
硫黄酸化物(SOx)
天然ガス
0
石油
68
石炭
100
0
50
課題と考えています。事業による環境影響の回避・最小化はもちろん、社会性面へ
窒素酸化物(NOx)
の配慮も十分に行いながら事業を進めていきます。
天然ガス
100
20∼37
石油
※特殊な回収技術を必要とし、従来は技術的・経済的に採掘が難しいとされていたガス。埋蔵量は極めて多いと推定され、技術革新により近
年では北米を中心に開発が進んでいる
71
石炭
100
0
上流
天然ガス
液化設備
物流
販売
57
石油
80
石炭
ブルネイ
マレーシア
オーストラリア
ロシア
(サハリン)
インドネシア
アメリカ
(アラスカ)
オマーン ほか
100
0
探鉱・開発・生産
LNG生産
LNG船による輸送
ブルネイにおける太陽光発電共同実証プロジェクト
三菱商事では、ブルネイ・ダル
100
二酸化炭素(CO2)
■ LNGのバリューチェーン
資源保有国
50
日本および海外市場
50
100
※石炭を100として換算
出典:
「IEA/Natural Gas Prospects to 2010
(1986)
」
ほか
TOPICS
の 太 陽 光 発 電 設 備 を 設 置し、
サラーム国が推進している新エネ
2010年上期中に稼 働予定です。
ルギーの導入によるエネルギー供
今後は同国政府と共同で実証研
給源の多様化に協力するため、太
究・運用評価を行い、そこで得られ
陽光発電共同実証プロジェクトを
たデータやノウハウを、ブルネイに
2008年8月に開始しました。東南
おける将来の普及・実用化につな
アジア最大級の定格出力1.2MW
げていくことが期待されています。
19
グループ概要と事業における重点課題
金属グループは、薄板・厚板などの鉄鋼製品、石
炭・鉄鉱石などの鉄鋼原料、銅・アルミなどの非鉄
金属原料と製品の分野において、販売取引、事業開
〉
〉金属グループ
発・投資などを行っています。この「投資」と「販売」
を核として、世界市場で良質の原料・材料・製品を安
定的に供給し続けることを通じて社会に貢献するこ
気候変動
とが、当グループの使命であると考えています。国内
生物多様性
外の事業投資先と共に、資源の探鉱・開発、原料・
材料・製品の調達、
製造、
加工、
流通販売、
トレーディ
ングを通じて最終需要家へとつながる金属・鉄鋼産
資源の持続可能な利用
業全体の幅広い範囲を事業領域としています。
原料炭では、三菱商事が豪州に100% 出資により
先住民の権利
設立した資源子会社を通じて、クイーンズランド州の
BMA 炭鉱の権益を50% 保有しているほか、世界各
地での鉄鉱石や銅といった金属資源開発に加えて、
近年ではクリーンな燃料としてのウラン資源の開発
にも力を入れています。
当グループの事業は、地球環境とのかかわりが大
きい事業であり、それだけにマーケットへの安定供給
と並んで、環境対応も注力すべき課題です。従って、
事業領域全体で、地球規模の視点から環境面の課
題に対応していく必要があると認識しています。資
源開発に際しては、事業による環境影響の回避・最
小化に努めるとともに、採掘跡地の環境修復も行っ
ています。また、現地の環境保護やインフラの整備、
教育などの資源国に対する地域貢献にも積極的に
取り組んでいます。
■ 金属資源分野の展開
C
I
S
CO
A
U
石炭
鉄鉱石
ステンレス原料
銅
アルミニウム
ウラン
既存プロジェクト
探査・探鉱・開発プロジェクト
※( ) 内の数字は、三菱商事の持分権益を示しています
I
ウラン探鉱
(モンゴル)
U
大平洋金属
(日本・8.15%)
S
A
S
CO
Mozal
Gresik
(モザンビーク・25%) (インドネシア・9.5%)
A
Crosslands Resources
(豪州・50%)
Kintyre(豪州・30%)
U
I
C
C
C
Hlsmelt
Hernic Ferrochrome Oakajee Port & Rail
(豪州・10%)
(南アフリカ・50.975%) (豪州・50%)
Coal & Allied(豪州・10.2%)
20
Antamina Copper and Zinc Mine
(ペルー・10%)
BMA(豪州・50%)
I
Clermont(豪州・31.4%)
A Boyne Smelters
I
IOC
(カナダ・26.18%)
Albras
(ブラジル・2.7%)
Asahan
Weda Bay
(インドネシア・1.475%) (インドネシア・30.06%)
ボーキサイト探鉱
A(ギニア)
S
U
ウラン探査
(カナダ)
鉄鉱石探鉱
(カナダ)
CO
Escondida Copper Mine
CO
(チリ・8.25%)
CMP
I
(豪州・9.5% (L1&2), 14.25%(L3)) (チリ・25%)
Warkworth(豪州・28.9%) Los Pelambres Copper Mine
(チリ・5%) CO
Ulan(豪州・10%)
A
事業を通じた社会価値・環境価値の創出
豪州原料炭炭鉱での環境および社会性分野の取り組み
MDP※1を通じて50%の権益を保有するBMA ※2の炭鉱では、高品質な原料炭を
中心に年間約5,000万トンの石炭が生産されています。BMAの炭鉱は露天掘りに
よる操業も行っていることから、石炭採掘後に自然環境を採掘前の状態に戻す修復
(リハビリテーション)を行っています。
リハビリテーションでは、石炭の採掘のためにはがした表土を別の場所にいったん
保管し、採掘終了後にその表土をかぶせた後、採炭前に保存した草木や周辺で採取
した種子を使って植栽を行います。修復後も、草木がしっかり根付いているか、生物
が戻っているかなど、回復状況を定期的にチェックしています。
また、石炭の洗浄に使用した水は、徹底した水質管理を行い、石炭の洗浄や植栽
への散水に再利用。さらに雨水や地下水も炭鉱内の複数の場所に貯水して粉じん
飛散防止や植栽への散水用の水として有効活用しています。そのほか、近隣地域の
インフラ整備や文化財の保護、大学への寄附講座、先住民コミュニティとの対話な
ど、地域社会への貢献にも積極的に取り組んでいます。
採炭跡地の様子。リハビリテーション前
(上)と後
(下)
※1 Mitsubishi Development Pty Ltd = 金属資源への投資、生
産・販売を行う三菱商事100% 出資の事業投資先(本社 :シ
ドニー)
※2 MDPとBHPビリトンがそれぞれ50%を出資する石炭合弁事
業体(クイーンズランド州)
南アフリカにおけるフェロクロム製造・販売事業と地域貢献活動
南アフリカ・ヨハネスブルグ郊外にある、ハーニック・フェロクロム社は、年間生産
量で世界第4位、世界シェアで6%となる約40万トンのフェロクロム※を製造していま
す。三菱商事は同社に約51%を出資し、
鉱石採掘および製錬事業を展開しています。
南アフリカの電力不足が、
フェロクロム生産に影響を与えていますが、
この解決策とし
て、生産工程内で発生する排ガスを利用した自家発電設備の設置を計画しています。
この自家発電を軌道に乗せることで、製造工程でのエネルギーの有効活用と生産量
アップを目指しています。
また、同社は「地域・環境との共生」を経営ポリシーの一つとして、社会貢献活
動にも力を入れています。三菱商事と共同で行う小学校への寄附に加え、
職業トレー
ニングプログラムの提供や奨学金制度、地域経済の育成などに取り組んでいます。
これらの活動の一つに、同社の従業員の多くが在住する地区にあるモレワネ小学校
への支援があります。例えば、
校内に菜園を作り、
野菜作りの技術指導に加え、
物品・
金銭面で支援しています。そのほか、設備の充実や教師のレベル向上など、学校の
「野菜菜園計画」と呼ばれる校内菜園作りでは、収穫した野菜を給
食に利用しています
※ クロム鉱石を製錬して、付加価値を高めたステンレスの主要原料
教育環境を一定水準まで向上させる取り組みや、学校給食の改善の援助、HIV/エイ
ズに関する教育プログラム実施のサポートなども行っています。
地域に密着したボランティア活動の推進
三菱商事が60%を出資する鉄
TOPICS
メタルワングループ社員の環境に
鋼総合商社、メタルワンのグルー
対する意識の向上を図り、今後も
プ各社では、毎年、植樹、海浜清
各地でさまざまな環境ボランティ
掃、町 内 清 掃などの 環 境 ボラン
ア活動を推進していきたいと考え
ティア活動を行っています。自然
ています。
環境への配慮、
保全活動を通じて、
21
グループ概要と事業における重点課題
機械グループは、電力・ガス・石油・化学・製鉄
などの主要産業素材の製造にかかわる大型プラン
〉
〉機械グループ
トから、船舶・鉄道・自動車などの物流・輸送機器、
宇宙・防衛産業向け機器、建設機械・工作機械・
農業機械などの一般産業用機器まで、幅広い分野
の機器を取り扱っています。
気候変動
このように当グループは、
「機械」という切り口
でさまざまな産業と社会に幅広く対面しています
が、中でも「気候変動」への取り組みは重要と考え
資源の持続可能な利用
ています。電力分野におけるCO2排出量削減の観
点から、世界的に原子力発電や石炭ガス化複合発
電(IGCC※1)・CO2回収・貯留(CCS ※2)が注目
されており、当グループでも顧客・パートナーと協
力し、原子力発電所の建設やクリーンコールテクノ
ロジー※3のプロジェクトを推進しています。また、
新興国を中心に注目を集めている社会インフラ開
発分野においても、CO2排出量の削減に貢献する
鉄道プロジェクトや、EV(電気自動車)
・ITS(高
度道路交通システム)を中心としたスマートコミュ
ニティ案件への取り組みを進めています。
三菱商事が長い経験とそれに伴う知見・ノウハ
ウを有する大型プラント開発の分野においても、
気候変動だけでなく、生物多様性への配慮や汚
染・事故の未然防止への取り組みは必要不可欠で
あり、これらには提携メーカーと共に万全を期して
取り組んでいます。
※1 Integrated coal Gasification Combined Cycle= 石炭をガス化、
精製してガスタービ
ンで発電し、その排ガスの熱で蒸気タービンでも発電する。従来型の石炭火力発電
に比べて発電効率が高く、大気汚染や温暖化の原因となる排ガス量が少ない。埋蔵
量が豊富で安価な石炭を環境負荷の低い形で継続利用する新技術として注目されて
いる
※2 Carbon Dioxide Capture & Storage= 発電所などの排ガスからCO2を分離・回収し、
半永久的に大深度の地層や海洋に閉じ込める技術。温暖化の原因となるCO2排出
量の大幅削減に貢献する新技術として世界中で研究が進んでいる
※3 環境負荷を低減させる石炭利用技術の総称。石炭火力発電所における発電効率の
向上や大気汚染物質・温室効果ガス排出の抑制など、石炭が環境に与えるマイナス
面を総合的に解決することを目指す
スマートコミュニティに関する取り組み
TOPICS
三菱商事は、2010年7月1日付で機械グループ内に「インテグレー
ション強化推進室」を設置し、発電、送配電設備、鉄道、住宅・ビル、
再生可能エネルギー、電気自動車、交通システム、情報システムなどに
関する社内の知見を全社横断的に統合・検討する体制を構築しました。
今後は同推進室を中心に、低炭素・省エネ社会(スマートコミュニティ)
実現に向けた取り組みを推進していきます。
22
事業を通じた社会価値・環境価値の創出
石炭ガス化複合発電(IGCC)とCO2の回収・貯留(CCS)で環境負荷を低減
経済成長と地球温暖化防止を両立するためには、
石炭の継続利用も含めたバラン
スの良い電源開発が重要です。当グループでは金属グループと共に、クリーンコール
発電事業の商業化を世界に先駆けて進めています。
三菱重工業と共同で参画した、豪州・クイーンズランド州のゼロジェンプロジェク
トは、環境負荷が低く発電効率の高いIGCCにCCS
機能を組み合わせた発電事業で、従来の石炭火力
ゼロジェンプロジェクト完成予想図
■ ゼロジェンプロジェクトの仕組み
発電に比べ、
CO2排出量を最大90%まで削減できま
す。2010年6月に、適切なCO2貯留地の提案などを
ガス化炉
ガス精製・
CO 2 回収
ガスタービン
係者との協議を継続していきます。
電気
石炭
含めたプレ・フィージビリティ・スタディの報告書を
提出。2013年の着工に向け、今後も豪州政府や関
発電
排ガス
CO 2
土木用
材料など
として
再利用
スラグ
(ガラス状の
石炭の燃えカス)
発電
電気
硫黄
CO 2 地中貯留
環境に優しい鉄道を世界中へ
蒸気タービン
廃熱回収
ボイラ
煙突
鉄道は飛行機や自動車に比べて環境負荷の少ない公共輸送手段であり、交通渋
滞による大気汚染や経済損失の軽減策として世界的にニーズが高まっています。三
菱商事では、さまざまな国と地域のニーズに合わせて、鉄道をはじめとする交通シス
テムビジネスを展開しています。
三菱商事の交通システムビジネスは、車両や信号・通信などの機器やシステムの
製造・据付から開業後のメンテナンスまで、土木・建築工事を含めて幅広くワンストッ
プで提供しています。建設においては、各国の法令や規制の遵守、環境影響の調査
総延長が 76kmに及ぶドバイメ
トロ
はもちろん、近隣住民や環境団体との対話を重ねて事業に反映させるなど、透明性
を確保して進めています。
2009年度はインド・バンガロール向け車両などの交通システムを新たに受注し、
ドバイで建設していた世界最長の全自動無人運転鉄道が開業を迎えました。今後
も環境に優しい交通手段として世界中で見直されている交通システムビジネスを通
じ、環境負荷の低減やそこに住む人々の快適な暮らしに貢献していきます。
インドのバンガロールに建設中のバンガロールメトロは、総延長約
33kmで2011 年開通予定
■ 三菱商事がかかわる世界各地の交通システム事業
ドバイ(アラブ首長国連邦)
デリー(インド)
[新交通システム
(ドバイメ
トロ)
]
路線総延長:76km
車両、
信号、通信、駅務設備、
土木・建設工事一式、保守
[デリーメ
トロ Phase-I, II]
路線総延長:190km
(Phase-II全線開業時)
地下鉄車両納入
※4社連合での参画
※5社連合での参画
台湾
カイロ(エジプト)
[カイロ地下鉄]
地下鉄車両納入
(1号線、2号線、3号線)
[台湾高速鉄道]
路線総延長:345km
総事業費:1.6兆円
コアシステム
(車両・信号・変電・通信等)
および
軌道工事を納入
バンガロール(インド)
[バンガロールメ
トロ]
路線総延長:33km
地下鉄車両納入
※4社連合での参画
パナマ(パナマ)
[パナマ運河の船舶牽引車両]
総納入車両数:100両
シンガポール(シンガポール)
※日本連合7社での参画
[センカン・プンゴールLRT/チャンギ空港APM]
センカン・プンゴールおよびチャンギ空港向け新交通システム
(車両・信号・変電・通信等)
を納入
また、現在チャンギ空港APMではO&M
(オペレーションとメンテナンス)
を履行中
23
グループ概要と事業における重点課題
化学品グループは、川上の原料を扱う汎用化学品
分野、川下の製品を扱う機能化学品分野において事
業を展開しています。
〉
〉化学品グループ
対面する市場は、自動車、電子材料、包装資材、住
宅建材、塗料・接着剤、農薬、医薬品、化粧品、洗剤、
食品など広範囲に広がっており、
私たちの「衣・食・住」
気候変動
のあらゆる分野にわたって、豊かな社会の実現に貢
生物多様性
献することを目指しています。そして、環境のめまぐる
しい変化を捉え、想像力を駆使して、中核ビジネスの
強化と新しいビジネスモデルの創造に日夜取り組ん
でいます。また、REACH※をはじめとする世界各地
の化学品法規制に対応して、化学品関連の最新情
汚染・事故の未然防止
報の発信源としての役割も担っています。
当グループは、取引や事業投資のネットワークを駆
使して、地球環境を守り、次世代へとつなぐ試みとし
て、従来の石油由来のプラスチックに比べて、CO2排
出量を約30% 減らすことができるCO2ポリマーの研
究を産学連携で進めているほか、土壌浄化栄養剤
の普及活動にも積極的に取り組んでいます。私たち
の生活になくてはならない数々の化学製品を、安心・
安全に提供していくため、当グループでは、今後も化
学品や化学物質に関する情報発信や環境対応型
商品の開発を進め、次世代へとつなぐ事業を展開し
続けていきたいと考えています。
※ Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals= 事業者に
製品に対して含まれる化学物質の登録などを義務づける新化学品規制。2007年6月
施行
■ 化学品グループのバリューチェーン
原料
原油
合成繊維・合成樹脂・機能化学品
汎用化学品
ナフサ
パラキシレン AMSB
エチレングリコール SHARQ
ポリエチレン樹脂
天然ガス
メタノール METOR
アクリル繊維
アンモニア KPI
海洋資源
鉱産資源
石炭
植物
24
ポリエステル繊維
PET樹脂
塩 ESSA
塩ビ原料
リン安
三菱商事プラスチック
塗料・接着剤、合成ゴム、
特殊樹脂、肥料 など
エムシー・ファーティコム
塩化ビニル樹脂
化成肥料
対面市場
包装材料・建材
三菱商事
アグリサービス
興人
医薬中間体
農薬中間体
マルチトール、
(甘味料)
キシリトール
バイオ
力菱
ファインケミカル
乾電池原料、半導体薬品
研磨材料、ナノ炭素繊維
デンプン
(トウモロコシ・タロイモ)
自動車部品
三菱商事
ケミカル
塗料・接着剤
肥料
化粧品・洗剤
医薬・農薬
電子材料
食品添加物
三菱商事
フードテック
バイオ
など
事業を通じた社会価値・環境価値の創出
世界最大の天日塩田で、自然環境への配慮や雇用創出に貢献
三 菱 商 事が49%、メキシコ 政 府 が51%を出 資 する製 塩 会 社、
Exportadora de Sal, S.A. de C.V.(ESSA)は、
メキシコ北西部のバハ・
カリフォルニア半島中央部に1954年に設立され(三菱商事は1973年
に経営参画)
、世界最大の天日塩田を運営しています。同社は日本の塩
輸入量の約半分を供給し、クロールアルカリ事業を支える製塩会社とし
て確固たる地位を築いています。ESSAで生産された塩は主に、塩化ビ
ニルや苛性ソーダの原料に利用されています。
三菱商事はESSAでの事業開始に当たり、投資先国の国益に配慮す
年間 750万トンに及ぶ高純度の塩を、日本をはじめ、アジア、米国へ安定的に
供給
ること、そのために経営は基本的に現地の人に委ね、三菱商事は世界
的なネットワークを活かして販売面で協力していくことなどを基本方針に
掲げました。ESSAの経営・販売は順調に推移し、日墨合弁事業のモ
デルケースと言われるほどにまで成長。1994年と2002年には、メキシ
コにおける輸出企業の模範例として「メキシコ最優秀輸出企業」の表
彰も受けています。
塩田事業の推進に当たっては、常に周辺の生態系に配慮しています。
汚染の防止、自然資源の保護、文化の育成の三つのポリシーを掲げ、環
境と調和した持続可能な開発を地元コミュニティと共に実現しています。
また、ESSAは、WHSRN により国際重要保護地域に選ばれ、同団体
※
塩田に集まる鳥の種類や個体数の調査、ミサゴやハヤブサの繁殖期の観察、巣
作りの場所の維持や保護など、WHSRNの活動に協力
の活動に協力するなど、自然環境の保護に努めています。
塩田のあるゲレロ・ネグロ地区周辺には現在950人のESSA 従業員
が暮らしています。ESSAを核に、従業員やその家族が暮らすコミュニ
ティが生まれ、学校、病院、教会や商店などの施設が整備されました。
その中にはESSAが経営するスーパーマーケットもあり、このコミュニ
ティで発生したさまざまな雇用も、地域社会の安定に貢献しています。
ゲレロ・ネグロ
「ESSAプロジェクト」
※ Western Hemisphere Shorebird Reserve Network(西半球ショアバード(岸辺に住む野鳥)保護ネットワーク)= 米国の
野鳥保護団体
メキシコ
メキシコ シティ
TOPICS
「RC(Responsible Care)活動」を展開
さまざまな化学物質を取り扱う当グループでは、
ほか、安全点検や製造・物流関連の事故・トラブル・
事 業 投 資先の製 造・物 流 現 場における、HSEQ
ヒヤリハットへの対応、環境保全活動も支援してい
(Health, Safety, Environment and Quality)面で
ます。
の適切な配慮を行うため、化学メーカー出身の専門
当グループは化学品の輸出・輸入・外国間貿易
家を招聘し、2004年から「RC 活動」を展開。主に
や国内取引をシームレスに展開する「アセットホール
日本国内の事業投資先メーカーのオペレーションを
ディング・トレーダー」として、さまざまな取引や事業
総点検し、必要に応じた支援を行っています。
投資に当たり、今後もコンプライアンスの遵守はもち
この活動では、オペレーションにおける法的要求
ろん、健康・安全・環境への適切な配慮を徹底して
事項の整理、対応状況のフォローを行います。その
いきます。
25
グループ概要と事業における重点課題
生活産業グループでは、食料、衣料、紙・包装材、
セメント・建材、医療・介護など、人々の生活に身近
な分野で、原料・素材の調達から消費市場に至るま
〉
〉生活産業グループ
での幅広い領域において、商品・サービスの提供、
事業開発、投資などを行っています。
当グループの事業は川上から川下まで広範囲に
及ぶため、環境面への配慮に加え、人権の尊重・労
生物多様性
働規範の遵守といった社会的側面に配慮したサプ
ライチェーン・マネジメントについても重要な課題と
人権・労働
なっています。
また、農水産品、畜産品、油脂、食品原料など、当
グループの取り扱っている食料・農業分野において
先住民の権利
「食料の安定調達」という社会的使命を果たすと
同時に、
「食の安全確保」
「食料資源の持続可能な
利用」といったテーマにも高い意識を持って取り組
んでいます。
消費者に身近な商品・サービスを提供するグルー
プとして、消費行動や価値観の変化に迅速に対応
し、持続可能な社会の構築に貢献していきます。
■ 食料ビジネスのバリューチェーン
調達(集荷・物流)
製造
流通販売
小売
穀物
子会社
マーケティング
全国卸
砂糖
関連会社
販売促進
油脂
戦略パートナー
情報システム
菱食
畜産
重要顧客
ほか
明治屋商事
水産
コーヒー豆
地方卸
ほか
投資
取引
加工食品
投資
コンビニエンスストア
(ローソン ほか)
取引 外食産業
(日本ケンタッキー・
フライド・チキンほか)
取引
MFG(三菱商事食品グループ)
金 融
26
スーパー
(ライフ ほか)
投資
投資
事業を通じた社会価値・環境価値の創出
持続可能な森林管理で地域社会と共存するカナダでのパルプ事業
三菱商事70% 出資の事業投資先であるALPAC FOREST PRODUCTS(以下
アルパック)は、カナダ・アルバータ州で製紙用パルプを生産しています。
アルパックは1993年の創業以来、地域や自然との共生を理念とした経営方針を
貫いています。同社は、先住民、地域住民との対話による相互理解を進めながら、自
らが管理する森林の自然再生能力を損なわない規模で森林を伐採しています。さら
に、森林内に生息するカリブー(トナカイ)などの野生生物の生態調査を継続して行
うとともに、自主的に森林内に保護区を設けベンチマークとし、生物多様性や森林生
態系の保全にも努めています。これらの取り組みが認められ、同社の管理する森林
は2005年にFSC※1認証を取得しました。また、アルパックでは420人の従業員のう
ち、過半数が先住民を含む地元出身者、地域全体では1,200人近くが直接・間接
的に同社の仕事に携わっており、地域貢献にとどまらず雇用の多様性にも貢献して
います。
州政府との契約に基づきアルパックが管理する森林面積は580万
ヘクタール。年間生産量は65万トンで、北米、日本、中国、韓国な
どの製紙メーカーに販売しています。FSC認証を受けた550万ヘク
タールの面積は、単一林区としては世界最大です
※1 Forest Stewardship Council( 森林管理協議会)=環境保
全の面から適切で、社会的な利益にかない、経済的にも持続
可能な森林管理を推進する国際機関。WWF(世界自然保護
基金)やグリーンピースをはじめとする環境団体や先住民団
体、各国政府などが参加
※2 森林産業の新たな環境施策による、
産業構造転換を支援する
プログラム
アルパックの工場で使用する電力は、非常時を除きパルプ製造過程で生じる廃液
や木くずを燃料としたバイオマス発電で賄われ、余剰分はグリーン電力として地域に
供給されてきました。2009年にはカナダ連邦政府によるGreen Transformation
Program※2を通じ補助金を受けることが決まり、バイオマス発電能力拡大事業を実
行しています。これにより、グリーン電力供給能力を増やし、逼迫する電力需要や温
室効果ガス排出量削減といった、地域社会の喫緊の課題解決の一助となる努力を
継続しています。
コロンビアコーヒー生産者連合会(FNC※)との取り組み
小規模農園でのていねいな手作業によって支えられている南米コロンビアのコー
ヒー産業。コロンビアの50万世帯を超えるコーヒー生産者を代表する組織である
FNC(1927年設立)
は、
コーヒー豆の品質と生産者の生活の向上を目的として、生産
に関する研究開発の支援や、輸出向けコーヒーの品質チェック、コーヒー市場で働く
コロンビアのコーヒー生産は、約 500万人の生計を直接・間接的に
支えているといわれています。三菱商事はFNCと共に、コロンビアの
コーヒー生産農家とのコミュニケーションを通じて、相互理解を深め
ています
人々の生活保護や生産性向上や農業指導、教育インフラの整備などを行っています。
同国のコーヒー産業において重要な役割を果たしているFNCと三菱商事とのかか
※Federación Nacional de Cafeteros de Colombia
わりは古く、FNCと共同開発した「エメラルドマウンテン」は、コロンビアで生産され
るコーヒー豆全体の1%しか認定されない希少な高品質豆として、三菱商事が日本で
の輸入を一手に引き受けています。このコーヒー豆を使った商品が、日本コカ・コー
ラ社の缶コーヒー「エメラルドマウンテンブレンド」で、1994年の発売以降、現在も
高い人気を誇っています。
「エメラルドマウンテン」は海外企業との共同事業として
FNCの中でも最大の成功例となっており、コロンビアのコーヒー農家にもその名前は
浸透し、より高い品質のコーヒーを生産する動機付けともなっています。
マグロ資源に関する動き
TOPICS
三菱商事は、水産物を取り扱う企業
の1社として、漁業資源の保全や次世代
への水産物の供給確保が当社にとって
の課題の一つと考えています。地中海・
大西洋からのクロマグロについても、当
社はクロマグロ資源の保全と漁業の持
また、三菱商事はコロンビア政府主導の下で進められている小規模農家支援プロ
続が重要と考え、そのためにできる限り
ジェクトに参画しています。
これは、
コロンビア大統領府、
FNCおよび地域コミュニティ
の継続的な努力をしています。
との共同事業で、三菱商事は2007年より10年間、総額100万ドルの支援を行ってい
ます。この資金は、延べ2,880軒の農家に向けて「品質・生産性向上」
「農民教育
当社の「大西洋クロマグロに関する
声明」については、当社ウェブサイトを
ご覧ください。
およびトレーニング」
「環境保全」の三つの分野に充てられています。
27
ステークホルダー・エンゲージメント
環境・CSRアドバイザリーコミッティー
三菱商事では、社外の有識者8名をメンバーとする「環境・CSRアドバイザリーコミッティー」を設置しています。
2009年11月と2010年4月に「環境・CSRアドバイザリーコミッティー」を開催し、
三菱商事グループの環境・CSR 活動などに対し、広範囲にわたりアドバイスをいただきました。
環境・CSR 活動全般について
○気候変動に関する会社全体の“Risk”と“Opportunity”
○具体的な施策や経営からのメッセージなどを通じて、三
菱商事の環境・CSRの全体像・方向感を示していって
を整理し、サプライチェーンも含めた総合的なマネジメン
トを推進していくことが望まれる。
○生物多様性に関し、三菱商事としての“原理・原則”を
ほしい。
○ ISO26000やOECD 多国籍企業ガイドラインなど、環
境・CSR 分野の国際規則の新設・見直しが相次いでい
る。日本におけるグローバル企業の代表として、そのよ
うなスタンダードの策定にも関与していってもらいたい。
○国際貢献や社会貢献の活動を紹介するだけではなく、そ
早急に確立し、
気候変動のように中長期的な目標を設定
してアクションを起こしていってもらいたい。
ステークホルダーとのコミュニケーション
○グローバルな視野で国際貢献活動を継続するとともに、
れによってどのような成果があったのか、地域社会に対
国内の社会的課題にも積極的なサポート活動を期待し
するインパクトと三菱商事に対するインパクトの両面か
たい。
ら、
成果が見える指標で評価できるとよいのではないか。
○ステークホルダーや社会と協働し、未来を作っていくとい
う姿勢を示してほしい。
地球規模の課題への対応
○「気候変動」や「生物多様性」については、一般の方々
○気候変動など地球規模の課題に、三菱商事がビジネス
の関心も高まっている。三菱商事の取り組みを一般の
を通してどう立ち向かおうとしているのか聞きたい。それ
人たちに理解してもらうためにも、積極的かつ継続的な
がステークホルダーの関心であり、三菱商事に対する期
コミュニケーションを行ってほしい。
待である。
環境・CSRアドバイザリーコミッティーメンバー(敬称略)
足達 英一郎
鬼頭 宏
日比 保史
日本総合研究所創発戦略センター
副所長
上智大学大学院教授・
地球環境研究所長
コンサベーション・インターナショナル
日本プログラム代表
海野 みづえ
末吉 竹二郎
ジェームズ・E・ブラム
株式会社創コンサルティング
代表取締役
国連環境計画金融イニシアティブ
特別アドバイザー
米国三菱商事
エグゼクティブアドバイザー
勝 恵子
ピーター・D・ピーダーセン
キャスター
28
株式会社イースクエア
代表取締役社長
鍋島 英幸(議長)
副社長執行役員
(環境・CSR 担当)
環境・CSR 担当役員より
環境・CSRアドバイザリーコミッティーでの議論を活かし
継続的企業価値の創出につなげていきます
環境・CSRアドバイザリーコミッティーでは、社外有
最大のステークホルダーであると認識し、事業活動を
識者の方々に、当社の環境・社会貢献活動に対し、さ
通じて持続可能な社会の実現を目指すという当社の
まざまな角度からアドバイスや提案をいただいています。
取り組み姿勢を社内外に示したことは大きな一歩と考
えています。
2009年11月と2010年4月に開 催したコミッティー
では、
今後、こうした当社の取り組み姿勢については、ス
・ 明確な意識を持って三菱商事らしい環境・CSR 活
テークホルダーとの対話で積極的に伝えていくととも
動に取り組んでもらいたい
に、ステークホルダーからの要請、期待を当社の環境・
・ 環境・CSRの全体像、方向感を示してもらいたい
CSR 活動に結びつけていくべく、環境・CSRアドバイ
・ 中長期的な目標を設定してアクションを起こしていっ
ザリーコミッティーの皆さんと議論し、その結果を活か
てもらいたい
などのご指摘をいただき、その後の社内の会議を経て、
して継続的企業価値の創出につなげていきたいと思い
ます。
私は当社役職員全員が環境・CSRにどのように取り
組んでいくかというビジョンをしっかりと定め、社内外
に明確に打ち出すことがスタートラインになると強く認
識いたしました。
こうした認識の下、7月に発表した当社の中期経営計
画では継続的経済価値の創出に加えて、継続的社会
価値の創出、継続的環境価値の創出を盛り込み、三つ
を統合した概念として継続的企業価値を目指すことに
いたしました。
また新たに改定した環境憲章では、地球規模での
課題となっている「気候変動」
「生物多様性」
「資源
の持続可能な利用」を新たな項目として加え、地球が
副社長執行役員(環境・CSR 担当)
29
三菱商事の環境パフォーマンス
電力使用量
本店
8,387
2009年度
廃棄物排出量
国内支店等
1,145
9,532
8,569
1,220
9,789
2008年度
2007年度
8,536
1,209
9,745
2007年度
8,000
9,000
10,000
本店
3,509
2008年度
3,585
510
2007年度
3,571
506
0
479
3,000
2008年度
75,680
4,077
2007年度
72,547
0
5,000
(単位:t-CO2)
・上記の電力使用量から換算
・The Greenhouse Gas Protocol (GHG Protocol)“GHG emissions from purchased electricity”
(WRI/WBCSD)の係数を使用
83,500
80
90
1,000(単位:t)
100
(単位:%)
7,916
8,194
8,410
70,000
82,253
83,874
80,957
80,000
90,000
(単位:千枚)
・コピー用紙の使用量
43,382
80,000
90,000
・エネルギーの使用の合理化に関する法律
(省エネ法)
に基づき、
三菱商事を荷主とする国内輸送にかかわるもの
32,853
2008年度
95,100
2007年度
70,000
70
2009年度
2008年度
0
900
水の使用量
70,800
2009年度
800
国内支店等
4,095
物流起因のCO2排出量
96.2
700
本店
74,337
4,000
96.3
・本店厚生施設
(診療所、
社員食堂)
は除く
・2009年度は、
オフィス移転などの影響により増加
2009年度
3,988
95.7
廃棄リサイクル率
745
紙の使用量
国内支店等
2009年度
764
0
(単位:千 kWh)
CO2排出量
862
2009年度
2008年度
0
廃棄物の排出量
31,198
2007年度
0
100,000
(単位:t-CO2)
10,000
20,000
30,000
40,000
・2009年度から丸の内パークビル内のオフィスが稼動した影響により増加
[対象期間]
2009年4月1日〜2010年3月31日
[方針・基準]
環境関連法規に準拠し、
「環境管理基本規程」
「環境影響評価実務基準」など
の社内規程に基づき記載しています。
[集計範囲]
当社の環境マネジメントシステムの適用範囲(本店および国内支社・支店等)を
対象としています。
50,000
(単位:m3)
電力使用量…… 三菱商事ビルの共用部分、データセンターなどの電力使
用量は含んでいません
廃棄物排出量… 本店(三菱商事ビル、丸の内パークビル、および東京に所
在する一部のビル)を集計対象としています
紙使用量……… データセンターおよび一部の事業所の紙使用量は含んで
いません
水使用量……… 本店(三菱商事ビル、丸の内パークビル、および東京に所
在する一部のビル)を集計対象としています
グローバルベースでの CO2排出量
(単位 :t-CO2)
2007年度
2008年度
2009年度
12,971
12,819
12,480
子会社および孫会社
1,978,236
1,337,828
1,391,638
合計
1,991,207
1,350,647
1,404,118
三菱商事
当社は、上記グローバル連結ベースでのCO2排出量の集計を自己の責任において実施し、その
信頼性の向上を目的として2008年度および2009年度のデータ集計について(株)あらたサス
テナビリティ認証機構より助言を受けています。
30
1. 集計対象 : 購入電力使用に伴うCO2の間接排出(GHGプロトコルに定め
るスコープ2)を対象
2.集計範囲 : 三菱商事(株)
、株式持分50% 超の子会社および孫会社(3月
31日時点)
※3カ年平均で、約65%の子会社・孫会社から有効回答を得た
3.集計方針 : 子会社および孫会社のCO2排出量については、当社からの出
資比率によらず全量を集計に含める
4.排出係数の出所
・The GHG Protocol“GHG emissions from purchased electricity”
・CO2 Emissions from Fuel Combustion
(International Energy Agency)
www.mitsubishicorp.com
社会責任投資(SRI)インデックス
国際的な取り組みへの参加
三菱商事は、これまでの環境・CSR の取り組みと、情報
三菱商事は、WBCSD
(持続可能な開発のための世界経済人会
開示における透明性を評価され、国内外の社会的責任投資
議)
、国連グローバル・コンパクト、カーボン・ディスクロージャー・プ
(SRI: Socially Responsible Investment)のインデックスに
ロジェクトなど、環境・CSR 分野における国際的な取り組みに参加し
組み込まれています。
(2010 年 7月現在)
ています。
Sustainability Report
2010
森林管理協議会(Forest Stewardship
Council: FSC)
によって認証された、適
切に管理された森林の木材を原料とした
用紙を使用しています。
印刷用インキに使われる石
油系溶剤の一部を植物油
に置き換えた「植物油イン
キ」
を使用しています。
揮発性有機化合物を含む
湿し水を使わない「水なし
印刷」
を採用しています。
本冊子は色覚の個人差を問わず、
できる
だけ多くの方に見やすいようカラーユニ
バーサルデザイン
(CUD)に配慮して作
成し、NPO法人カラーユニバーサルデザ
イン機構
(CUDO)
から認定を受けました。
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