...

は じ め に 算数・数学における基礎・基本の確実な定着を図る学習指導

by user

on
Category: Documents
11

views

Report

Comments

Transcript

は じ め に 算数・数学における基礎・基本の確実な定着を図る学習指導
学習指導調査研究委員会
研究主題
○
算数・数学における基礎・基本の確実な定着を図る学習指導について
∼「算数事前調査用プリント集」の活用を通して∼
は
じ
め
に
中学校学習指導調査研究委員会委員長
来年度から小学校において新しい学習指導要領が全面実施となり、中学校では、来年度が移行期間
の最終年となります。これまでに、小中学校で「算数・数学、理科」が先行実施となり、授業時数が
増加し、学習内容も新たなものが加わりました。そのような状況の中、各学校では、基礎的・基本的
な知識・技能の習得の徹底を図るとともに、学習内容の増加や移行に伴って、指導事項の確実な履修
に注意を払い、新たに加わった内容の指導法の研究に取り組んできました。
そこで、本学習指導調査研究委員会では、算数・数学の基礎・基本の確実な定着を図り、授業での
学習効果を上げるために、平成19年度から小学校学習指導調査研究委員会で作成している「算数事
前調査用プリント集」の活用の成果を踏まえて、同プリント集のさらなる活用の可能性を研究しまし
た。
まず、小学校学習指導調査研究委員会では、昨年度までに作成した「『数と計算』編」「『量と測
定』編」「『図形』編」の事前調査用プリント集に加え、新たに「数量関係」(ともなって変わる量)
の領域についてのプリント集の作成に取り組みました。このプリント集「『数量関係』編」の完成をも
って、小学校の算数で学習する全領域を網羅します。各学校においては、これまでの活用事例(研究紀
要 35 号∼37 号)等も参考にしていただきながら、引き続きの活用をお願いしたいと考えております。
また、中学校学習指導調査研究委員会では、これまでに作成してきた「算数事前調査用プリント集」
の中学校での活用について研究しました。数学における知識・技能の習得を徹底するには、学年間で
反復学習することが効果的であり、本プリント集の使用は、その反復の効果を十分に引き出すことに
なるのではといった仮説のもと研究に取り組みました。内容は、「数学の授業での活用」「特別支援
学級での活用」「朝の学習での活用」「授業外の学習会での活用」です。
本研究が、学力の重要な要素の1つである「基礎的・基本的な知識・技能の習得」のために、少し
でもお役に立てれば幸いです。
―――――研
究
委
≪小学校学習指導調査研究委員会≫
員―――――
≪中学校学習指導調査研究委員会≫
委 員 長
(旗川小学校教諭)
委 員 長
(南中学校教諭)
副委員長
(犬伏東小学校教諭)
副委員長
(吾妻中学校教諭)
委 員
(船津川小学校教諭)
委 員
(田沼東中学校教諭)
委 員
(石塚小学校教諭)
委 員
(葛生中学校教諭)
委 員
(三好小学校教諭)
委 員 (常盤中学校教諭)
委 員
(葛生南小学校教諭)
委 員
(氷室小学校教諭)
(担当)
(学校教育課指導主事)
(担当) (学校教育課指導主事)
(担当)
(教育センター副主幹)
(担当)
学習指導
-1-
(教育センター指導主事)
Ⅰ
研究内容
1
「算数事前調査用プリント集」の中学校での活用について
(1)
数学の授業での活用Ⅰ
①
活用の意図
数学という教科は積み重ね学習が重要な教科であり、小学校で習った学習内容が中学・
高校・大学とその後の数学の学習に大きな影響を及ぼす。それだけに「学び直し」の機会
を効果的に設け、学年・領域に関係なく、スパイラル学習をすることは必要不可欠である。
そこで、小学校学習指導調査研究委員会の作成した「算数事前調査用プリント集」を中学
校の授業で取り入れ活用することは、生徒に基礎的・基本的内容を着実に身に付けさせる
ために、とても有効であると考えた。
②
実践の様子
ア
レディネステストとしての活用
平成21年度までに作成されたプリント集の中から、中学校で指導する内容に照らし合
わせ、レディネステストとして活用できる内容を検討した。その結果、中学2年生で学習
する単元「平行と合同」のレディネスを図るのに有効な下記のプリントを用いて単元全体
の指導を考えることにした。
≪結果≫
2年生108人
正
1
2
今回のレディネステストで利用したプリント
(4 年生までに学習した内容を 5 年生で復習するプリント)
学習指導
-2-
実施時期10月上旬
解
不正解
正解率
①
100 人
8人
92.6%
②
104 人
4人
96.3%
③
108 人
0人
100.0%
ア
92 人
16 人
85.2%
イ
88 人
20 人
81.5%
イ
レディネステストの結果からの単元の指導方針の決定
学年全体のおよそ2割の生徒が、角度についての基礎的事項の習得が不十分であること
が明らかとなった。中学2年生では、図形の基本的な性質について、平行線の性質(同位
角・錯角)や三角形の合同条件などをもとにして確認することにより、既習の図形の性質
や新たな図形の性質についての理解を深める学習を行う。またそれらの性質を証明する過
程において、図形についての数学的な推論に関する能力を伸ばし見通しをもって論理的に
考察することができるようにすることを目指す。レディネステストの結果から、本単元を
学習するにあたり、数学的な推論に関する能力を伸ばす土台となる、図形についての基礎
的事項を常に振り返りながら学習に取り組ませたいと考えた。
ウ
指導の実際
単元全体を通して、重要語
句や定理についての掲示物
を作成し、教室内に常時掲示
することで、生徒がいつでも
復習できるようにした。これ
により、学習に対する興味・
関心を高めるとともに、授業
の中でもそれらを見直させ
ることで数学への苦手意識
の解消に努め、基礎的な知
識・技能を身に付けさせたい
と考えた。
エ
③
指導略案(次ページ)
考察
単元終了時に同テストを実施し
≪結果≫
た結果は右の通りとなった。生徒
2年生108人
全員が全問正解できてはいないも
のの、既習の事項を振り返りなが
正
解
不正解
正解率
①
108 人
0人
100.0%
ら学習を行うことの効果を再確認
②
108 人
0人
100.0%
することができた。
③
108 人
0人
100.0%
ア
99 人
9人
91.7%
イ
94 人
14 人
87.0%
「算数事前調査用プリント集」
1
実施時期11月上旬
2
は、小学校でどのような内容を学
習し、どのように問題として出題
されているのかを把握するのに有効である。また1枚1枚のプリントの問題が精選されて
いて、中学生であれば数分で解けるので、単元等のはじめに生徒の実態を把握する良い教
材であると感じた。
学習指導
-3-
1
題目
補助線を引きいろいろな角を求めよう
2
ねらい
・ブーメラン形の角を求める課題に関心をもち、いろいろな視点から図形を考察しよう
とすることができる。
(数学への関心・意欲・態度)
・ブーメラン形の角を求める方法を、演繹的な推論をもとに表現することができる。
(数学的な表現・処理)
学
1
習
活
動
既習事項を振り返りな
がら、課題①を解く。
指導上の留意点
・これまでの学習を振り返り、本時の活動でそれらを生かせ
るよう働きかける。
・①を解く際に様々な補助線の引き方があったことを振り返
らせる。
2
本時の学習課題を把握
する。
補助線を利用し、いろ
課題:∠x の大きさを求めなさい。
①
②
いろな角を求めよう。
3
課題を解決する。
(1)課題②に補助線を引く。
・机間指導を行い、生徒に補助線を引かせる。
(2)補助線を確認する。
・様々な引き方があることを確認させる。
(3)解き方を記入する。
・同じ補助線を選択した生徒を集め、グループごとに問題解
決をさせる。
・既習事項を根拠に、求め方をワークシートに丁寧に記入さ
せたい。
アドバイス
考えに困ったら、掲示物を積極的
にみて友達と相談しながら解き方
を考えてみよう!
4 発表する。
・代表例を生徒の解答から抽出し、黒板に示しながら説明さ
せる。
・図形の性質を利用して補助線を引くと、いろいろな考えで
角を求めることができることに気付かせたい。
5 練習問題を解く。
・求めた結果をもとに具体的な角度を求める問題を解く。
6 自己評価を行う。
・本時の学習を振り返り自己評価を記入させる。
学習指導
-4-
(2)
数学の授業での活用Ⅱ
①
活用の意図
中学1年生の単元「平面図形」では、
円について、その対称性や弧、弦、円
の接線などについての学習を行う。小
学校においても、円については基本的
な用語の理解や、コンパスを用いた円
のかき方、円周率、円周の長さ、面積
等について学習をしている。これらの
内容は、中学校においても円の学習を
行う際には、必ず振り返る内容である。
そこで、今回は「算数事前調査用プリ
ント集」を、レディネステストとして
実施することで、生徒に振り返りの機
会を提供し、また生徒一人一人の定着
の様子を把握したいと考えた。
②
実践の様子
ア
レディネステストとしての活用
「算数事前調査用プリント集」の「量
と測定」編の「『14
円』の学習の
ために」を使用した。平面図形の円の
学習を行う授業で、単元のレディネス
テストとして実施したが、全員で答え
合わせをしたところ全問正解者が予想
に反して少なかった。そこで、プリン
トに出ていない内容も含めて「自分が
知っている円についての復習ノートを
作って、友達に紹介する」という学習
活動を取り入れた。
イ
復習ノートの作成
ノート作成の時間は10分間とし
た。生徒はテストとして行ったプリン
トをもとに、ノート作成に取り組んだ。
円の面積や円周についてもノートにま
とめている生徒のことを紹介すると、
友達と確認しながら競い合うようにノ
ート作成を行うことができた。
学習指導
-5-
まとめたことを友達に紹介
作成後に友達に紹介するという一言が大きかったのか、ノートを書き終わった後も、自
分のノートを真剣に見つめる生徒の姿が印象的であった。その後の紹介の時間も真剣その
ものだった。
③
考察
授業の数日後に、同じプリントでテストを行った。生徒は自信をもって解答していた。
レディネステストの結果と授業後に行ったテストの結果は以下の通りである。
<1年生2クラス(64人)で実施>
レディネス
番号
問
題
授業後
正解
正解率
正解
正解率
(人)
(%)
(人)
(%)
1①
図を見て(直径)と答える
44
68.8
63
98.4
②
図を見て(中心)と答える
35
54.7
64
100
③
図を見て(半径)と答える
43
67.2
64
100
④
円の直径を軸として回転させると(球)になる
9
14.1
64
100
円の直径は半径の(2倍)
44
68.8
61
95.3
②
直径が6cm の円の半径は(3)cm
57
89.1
61
95.3
③
半径が9cm の円の直径は(18)cm
51
79.7
61
95.3
④ア
図の大きい円の(半径)の長さは、
33
51.6
59
92.2
イ
小さい円の(直径)の長さに等しい
33
51.6
60
93.8
37
57.8
61
95.3
2①
⑤
小さな円の半径が2cm であると、大きい円の直径は
(8)cm
学習指導
-6-
レディネステストでは、直径、半径を「直経」、「半経」と書き間違える生徒が続出し
た。また1−④の回転体に関する問題の正解率が極端に低かった。しかし、復習ノートの
作成やそれを友達に紹介する学習活動を行った後は、どの問題も正解率が90%を超える
という結果が出た。このことからもレディネステストの実施は、生徒自らが自分の理解度
を把握する良い機会となることが再確認された。また、指導者としては、生徒がどこでつ
まずいているかを把握しながら、丁寧な指導を心がけることができた。このことからも中
学校おいて、「算数事前調査用プリント集」を活用することの有用性が確認されたと考え
る。
今後も、「算数事前調査用プリント集」を授業、家庭学習、補習等で活用していくこと
で、分かりやすい指導を心がけたい。
(3)
特別支援学級での活用
①
活用の意図
特別支援学級に在籍する生徒の自立を促し、社会的な実践力を高めるためには、基礎・
基本の確実な定着が必要である。その中でも、コミュニケーションを円滑に図るための言
語力、数量・図形などについての知識や処理能力は、特に必要とされるものである。
そこで、その必要とされる能力のうち、数学的な分野の能力の向上を図るために、特別
支援学級での数学の授業に「算数事前調査用プリント集」を取り入れた。
②
実践の様子
ア
対象学級
情緒障害特別支援学級
イ
実践方法
a 数学の授業で実施。指導は基本的に学級担任が行ったが、数学の教科担任の協力も受
けた。
b プリントの問題をカスタマイズ(順序の入れ替え・数字の変更)し、誤答問題の傾向を
把握する。
c 数週間後に同じプリントを用い、定着の度合いを確認する。
d 長期休業の課題として提示し、自主学習で使用する。
ウ
使用プリント
小学校の1、2学年用のプリント
学習指導
-7-
エ
実践の例
「6
どれだけおおい」のがくしゅうのために
おはじき等を使用せずに問題を解くことができた。数週間後の実施でも、同様に解く
ことができた。
「7
10よりおおきいかず」のがくしゅうのために
(数週間後)
1回目の実施で、⑨、⑩の問題を間違った。その後、問題をカスタマイズし同様のプ
リントを行ったが、同じような間違いを繰り返した。そこで、指導者が助言をすること
により、間違いを克服することができた。しかし、数週間後に実施した同じ問題では、
前半の問題を間違えてしまった。その結果、問題の読み取りを誤っていたことが判明し
た。
(数週間後)
「8
3つのかずのたしざん、ひきざん」のがくしゅうのために
「『6
どれだけおおい』のがくしゅうのために」のプリントと同様に問題を解くこ
とができた。数週間後に実施しても、全く同様の結果が得られた。
学習指導
-8-
「10
たしざん」のがくしゅうのために
「『7
10よりおおきいかず』のがくしゅうのために」のプリントと同様に、問題
の読み取りを誤っていたことが分かった。そこで、問題文の読み取りによる誤答を減らす
ための工夫を、指導者とともに考え、間違いを克服することができた。
(数週間後)
③
考察
本プリントを利用することによって、「○+△=?」のような問題を機械的に解くこと
ができても、「○と△では?」といった問題では、問題の読み取りの間違いが誤答を招い
てしまうことが分かった。この結果をもとにして、数学の指導だけでなく、改めて、国語
の文章の読み取りの指導を行うことができた。
今後の活用方法としては、問題をカスタマイズしながら、徐々に学年を上げていくこと
によって、更に発展した指導の展開ができるのではないかと思われる。
(4)
朝の学習での活用
①
活用の意図
学習指導要領の改訂に伴い、基礎・基本の徹底を図るための学習方法の工夫・改善を、
改めて各校で試みている。中でも、計算力を身に付けることは重要で、その学習には中学
校課程の数学だけでなく、小学校課程の算数の領域を繰り返し学習することも必須である。
そこで、小学校学習指導調査研究委員会の作成した「算数事前調査用プリント集」を中
学校でも取り入れ、基礎・基本の定着を図りたいと考えた。
②
実践の様子
ア
対
象
中学校の学習のプレ学習として行えるように、対象を1年生とした。
学習指導
-9-
イ
方
法
a 時間設定
朝の会の前(8:10∼8:25)に実施
b 期間
『計算トレーニング』として1週間連続で実施
学年
番号
5年
1
整数の見方
中学生にとって基本として
2
小数
押さえておきたい内容を教科
5
c 使用プリント
担任と協議の上精選し、5・
7
6年生対象のプリントを使用
8
した。(右別表参照)
d 使用方法
6年
自分で好きなプリントを複
計算
小数と整数のかけ算、わり算
小数のかけ算
小数のわり算
分数の大きさとたし算、ひき算
12
わり算と分数
1
8
する。
数と
単元名
10
2
数枚選び、終了後は自己採点
領域
9
10
整数の見方
数と
計算
分数のたし算、ひき算
分数と整数のかけ算、わり算
分数のかけ算
分数のわり算
e 事後アンケートの実施
ウ
アンケート結果より(複数回答可)
1
朝の計算トレーニングは…
・学習する気持ちに切り替えられた。
31.6%
・授業前のウォーミングアップになり、すっきりした。
47.4%
・朝読書の時間が減ってしまい残念。
52.6%
学習指導
- 10 -
2
計算の難易度は…
・簡単すぎた。
10.5%
・ちょうどよかった。
63.5%
・中学校の範囲のものがよかった。
15.8%
3
計算トレーニングをやってみて…
・意外とミスがあって、気をつけなければと思った。
・テストでも計算ミスが多いので、その練習になった。
・よい復習になった。
・とても簡単だった。
・小学校の復習ができてよかった。苦手なところをもう 1 度復習しようと
思った。
・小学校の算数だけど、わからないところが結構あった。
・自分の苦手がわかったので、自主学習でもう一度復習しようと思います。
・朝読書の時間が減ってしまって残念だった。
・忘れかけていたものもあったので、復習できてよかった。
・簡単にできたので楽しかった。
・分数の復習になった。
・分数の最後の 3 枚が難しかった。
・また小学校に戻りたい。
・毎日DSでも脳トレをやっていますが、計算トレーニングはやっていて
とても気持ちがいいです。
4
今後もこのような朝学習をやってみたいですか。
・中学生のレベルでやってみたい。
31.2%
・他の教科でもやってみたい。
36.8%
・朝読書の方がよい。
36.8%
・その他(朝学習と朝読書を半々でやりたい。たまにやりたい。)
③
考察
「算数事前調査用プリント集」は、朝の短時間でも手頃に取り組める学習量で、数学に
苦手意識をもっている中学生にも、気軽に手を伸ばせるものであった。また、登校してか
ら授業が始まる前のワンステップとして、学習に向かう姿勢作りにも役立つものであった。
そして、ともすると忘れてしまい、つまずきやすい分数や小数を反復学習できる良い機会
となり、基礎・基本の確認を自ら行えるものとしても有効であった。
ただし、朝読書の習慣が身に付いた生徒にとっては、貴重な読書の時間を奪われること
は残念だったようである。また、生徒によっては内容が容易過ぎと感じ、中学校の学習内
容で実施したいという回答もあった。
しかし、ほとんどの生徒が今回の計算トレーニングを有効であったと感じており、基礎・
学習指導
- 11 -
基本の定着には反復的に学習する必要があると自ら感じてくれたように思う。今後は、定
期的に実施してその成果を自己確認したり、対象学年を広げたり、中学校の学習内容を取
り込んでいくなどの工夫を加えて実施していくことも有効であると考える。
(5)
授業外の学習会での活用
①
活用の意図
ア
生徒一人一人の学力を把握するため(縦割り班を編成するために利用)
イ
基本的な計算技能を身に付けさせる問題プリントとして利用
②
実践の様子
ア
対
象
イ
方
法
全校生徒
a 時間設定:放課後等
b 期間:1年(月1回実施、全11回、50分)
c 使用プリント:数学科作成のプリント+算数事前調査用プリント集
d 学習会実施の流れ(★が活用場面)
1)生徒一人一人の学力の把握を行う。★
2)単元ごとに、生徒の習熟度に応じて縦割り班を編成する。
3)全生徒が各グループの計画に基づき、プリント学習を50分間一斉に実施する。
・数学を苦手とするグループで個別指導時に活用★
4)採点を行い、間違えた問題は「やり直しシート」にてもう一度解く。
5)利用したプリントをファイルに保存する。
・グループの学習会後の宿題として活用★
※算数事前調査用プリント集を使うかどうかはグループによって異なる。
e グループ分けと各グループの学習の進め方
1)各グループの学習の進め方
Aグループ:可能な限り個別指導
Bグループ:少人数指導、生徒同士の教え合い
Cグループ:個々のペースで計算問題を解かせる。
2)答え合わせの方法
A、Bグループは、教師が答え合わせを行う。
Cグループは、答えを掲示して自己採点をさせる。
3)各グループの学習内容と利用した算数事前調査用プリント
※学習会実施の一例です。(次ページ)
学習指導
- 12 -
グループ
教 室
担当教師
学習内容
A①
音楽室
1人
小数の加減乗除
活用した調査用プリント
5年
A②
進路センタ
ー
2
小数
5
小数と整数のかけ算、わり算
5年
1人
小数の加減乗除
7
小数のかけ算
8
小数のわり算
5年
A③
図書室
1人
分数の加減乗除
10
分数の大きさとたし算、ひき算
12
わり算と分数
6年
B①
1年教室
2人
分数の加減乗除
2
分数の大きさとたし算、ひき算
8
分数と整数のかけ算、わり算
9
分数のかけ算
10分数のわり算
③
考
B②
2年教室
2人
B③
3年教室
1人
C
会議室
1人
分数の四則計算、
割合
分数の四則計算、
割合
(自作プリント利用)
正の数、負の数
察
・学習会前に「算数事前調査用プリント」を利用したことによって、生徒の実態を的確に捉
えることができた。
・つまずいている生徒に「算数事前調査用プリント」を振り返り用として活用したことによ
って、基礎基本の定着を図ることができた。
・限られた時間の中で「算数事前調査用プリント」のどこをどのように活用していくか研究
することが、今後の課題である。
2
算数事前調査用プリント集及び教科書対応表の作成について
(1)
算数事前調査用プリント集『数量関係』編について
小学校学習指導調査研究委員会では、「算数事前学習プリント集」を平成19年度から毎
年作成してきた。19年度は「数と計算」領域、20年度は「量と測定」領域、21年度は
「図形」領域を作成した。そして、今年度は「数量関係」領域を作成したので、これで、全
領域の「算数事前学習プリント集」が揃った。
「算数事前学習プリント集」は、これから学習する単元に必要な力が、どの程度定着して
いるか把握することを目的に作ったものである。事前に学習プリントに取り組ませた結果を
分析することによって、単元の学習に入る前に、その児童のつまずきや既習内容の定着度を
確認することができる。単元のまとめのテストの後や朝の学習の時間など、ちょっとした時
間で行えるように、問題数を必要最小限にしてある。
学習指導
- 13 -
(2)
教科書対応表の作成について
今年度作成した「算数事前調査用プリント集『数量関係』編」は、新学習指導要領の学年
の内容に合わせた。過去に作った「算数事前調査用プリント集『数と計算』『量と測定』『図
形』編」について、今年度の調査研究委員会において平成23年度版教科書対応表を作成し
た。下記の対応表を参考に、各学校で、適宜プリントを入れ替えていただき、使用していた
だきたい。
○平成 23 年版教科書対応表
単
一
年
二
年
元
A 数と計算
名
1
なかよし
2
いくつかな
3
なんばんめ
4
いくつと
いくつ
5
ぜんぶで
いくつ
6
のこりは
いくつ
7
どれだけ
おおい
8
10より
大きい
9
とけい(1)
10
かたちあそび
11
くらべかた
12
3 つのかずの たしざん、ひきざん
○
13
たしざん
○
14
ひきざん
○
15
大きな
16
とけい(2)
17
どんな
18
かたちを
B 量と測定
C 図形
D 数量関係
○
かず
○
○
かず
○
しきに
なるかな
○
つくろう
1
表と
グラフ
2
時こくと
3
たし算
○
4
ひき算
○
5
長さ(1)
6
100より
7
たし算と
8
水のりょう
9
三角形と
○
時間
○3 年より
○
大きい数
ひき算
○
○
○3 年より
四角形
○
10
かけ算
○
11
かけ算九九づくり
○
12
九九の表
○
学習指導
- 14 -
三
年
四
年
13
長さ(2)
14
1を分けて
15
図をつかって考えよう
16
1000より大きい数
17
はこの形
○
○
1
かけ算のきまり
○
2
たし算とひき算
○
3
時刻と時間
4
わり算
5
長さ
6
表と棒グラフ
7
あまりのあるわり算
○
8
10000より大きい数
○
9
重さ
○
○
○
○
10
□を使った式と図
○
11
かけ算の筆算(1)
12
分数
13
円と球
14
小数
15
かけ算の筆算(2)
16
二等辺三角形と正三角形
17
そろばん
1
大きな数
○
2
わり算の筆算(1)
○
3
折れ線グラフ
4
がい数
5
わり算の筆算(2)
6
式と計算
7
がい数を使った計算
8
整理のしかた
9
面積
○
10
角
○
11
小数のしくみとたし算、ひき算
12
垂直、平行と四角形
13
そろばん
14
小数と整数のかけ算、わり算
15
変わり方
16
分数の大きさとたし算、ひき算
○
○
○4 年より
○
○
○5 年より
○
○
○6 年より
○
○5 年より
○
○5 年より
学習指導
- 15 -
17
五
年
六
年
Ⅱ
立体
1
整数と小数
2
小数のかけ算
3
合同な図形
4
小数の割り算
5
体積
6
整数の性質
7
分数の大きさとたし算、ひき算
8
単位量あたりの大きさ
9
わり算と分数
○
○6 年より
○
○
○
○6 年より
○6 年より
○6 年より
10
三角形や四角形の角
11
ともなって変わる量
○
12
割合
○
13
帯グラフと円グラフ
○
14
四角形や三角形の面積
15
分数と整数のかけ算、わり算
16
正多角形と円
○
17
角柱と円柱
○
○
○
1
文字を使った式
○
2
対称な図形
3
分数のかけ算
○
4
分数のわり算
○
5
比例と反比例
6
円の面積
7
速さ
8
角柱と円柱の体積
9
比
○
○
○
10
拡大図と縮図
11
場合の数
○
12
資料の調べ方
○
13
いろいろな単位
○
成果と課題
1
成果
・今回、小学校学習調査研究部で作成した「算数事前調査用プリント集」の中学校での活用につ
いて研究を行った。研究内容に示したとおり小学校での事前調査だけでなく、中学校でも様々
な場面で活用できることが分かった。今まで小学校での学習内容や問題の形式について実際に
学習指導
- 16 -
目にする機会が少なかった中学校で、小学校の学習内容や個々の単元について具体的に把握す
ることによって、算数・数学科という積み重ねが大切な教科についての接続の大切さを再認識
することができた。また、小学校での学習の内容や出題の仕方を理解することで、中学校での
基礎・基本の定着を図ることに役立てることができた。
・数量関係(ともなって変わる量)の領域の「算数事前調査用プリント集」が完成し、新学習指
導要領の全ての領域に対応できる「算数事前調査用プリント集」が完成した。また、「平成2
3年度版教科書対応表」を作成することにより、昨年度までに作成した「算数事前調査用プリ
ント集『数と計算』『量と測定』『図形』編」が、来年度からの教科書に対応できるようにな
った。
・今回、小中合同で調査研究委員会を開催し、調査研究を行った。互いの研究の成果を取り入れ、
活用したり、情報交換したりすることにより、互いの学習内容や問題づくり、授業の様子等に
目を向けることができ、小中間の先生方の相互理解を深めることができた。また、協議の中で
学習指導以外の面においての情報交換も行うことができた。中1ギャップの解消に向けて、小
中連携の重要性が増す中、小中連携を図るきっかけを作ることができた。
2
課題
・今後は、実態把握のための事前調査を行う時期や方法、結果をどう授業に生かしていくかとい
うことについて研究を深めることで、算数・数学科における基礎基本の定着を図っていきたい。
・事前調査という目的だけでなく他の場面での「算数事前調査用プリント集」の活用の仕方を研
究し、活用例を示していきたい。
Ⅲ
おわりに
新学習指導要領に対応できる小学校での全領域の「算数事前調査用プリント集」が完成した。プ
リント作成では、短時間で有効にその単元に必要な知識や技能を調査するためにはどんな問題が適
当かということについて何度も話し合い、問題数や内容、表現などを改善し、より授業に生かせる
よう工夫した。
4年間かけて作成したので、その間、事前プリントを活用し、その有効性を感じてくださってい
る先生方も多いのではないだろうか。今回、中学校においても活用の仕方を研究し、「算数事前調
査用プリント集」の有効性が確認できた。今後は、新しい単元の学習前に事前調査を実施し、つま
ずきをしっかりと把握した上で、個に応じた授業の展開を図り、算数・数学科の基礎基本の確実な
定着がなされる学校がさらに増えていくことを願っている。
今年度の研究のまとめも、佐野市全体の共通のサンプルとして、先生方の授業の中で活用してい
ただければ幸いである。
学習指導
- 17 -
Fly UP