平成27年度心臓血管外科年報

心臓血管外科
【スタッフ】
上野 安孝 副院長、栗栖 和宏 部長、木村 聡 医長、山下 慶之 医師（～3 月）、
満尾 博 医師（4 月～）の４名体制で診療を行いました。
【診療概要】
心臓血管外科では、成人の心臓疾患（虚血性心臓病、弁膜症、重症心不全、不整脈など）
や大動脈疾患（胸部大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤、腹部大動脈瘤など）
、末梢動静脈疾患など
の手術を中心とした診療を行っています。
狭心症に対する冠動脈バイパス術では、低侵襲で合併症の少ない心拍動下冠動脈バイパ
ス術（人工心肺を使用しない手術）を第一選択として行っています。また、バイパスグラ
フトには長期開存性に優れる動脈グラフトを多用する方針としています。
僧帽弁膜症に対する手術では心機能維持に優れる弁形成術をできるだけ行う方針として
います。
大動脈疾患に対する治療では、通常の手術（開胸・開腹下の手術）に加えてステントグ
ラフト内挿術も行っています。この治療は侵襲が軽減できるため、これまで手術が困難と
思われてきた患者さんにも適応拡大できると期待しています。また胸部大動脈瘤において、
通常の手術時にステントグラフト内挿術を組み合わせる方法（オープンステントグラフト
法）を取り入れ、良好な結果を得ています。
末梢動脈疾患（閉塞性動脈硬化症、急性動脈閉塞症など）に対しては、血行再建（血管
内治療やバイパス手術）を行っています。また、下肢の静脈瘤に対する治療は、静脈抜去
術が一般的ですが、血管内焼灼治療（いわゆるレーザー治療）も行っています。
なお心臓大血管疾患では、突然病態が悪化する疾患（急性冠症候群、大動脈瘤破裂や急
性大動脈瘤解離、急性動脈閉塞症など）があり、その際には緊急手術を行っています。
【診療実績】
（平成 28 年 1 月～12 月）
心臓血管外科の平成 28 年の、外来患者延数は 2,262 人、初診 319 人、紹介率 96％、逆
紹介率 134%でした。入院延数は 2,583 人・日、平均在院日数 15.9 日でした。
心臓血管外科における平成 28 年の手術実績は下記の通りであり、手術室における手術件
数は 168 件でした。
A.心臓大血管手術
開心術症例数(人工心肺症例＋人工心肺非使用冠動脈バイパス症例＋胸部ステントグラフ
ト症例)は 52 例でした。そのうち冠動脈バイパス術は心拍動下手術（人工心肺を使用しない
手術）を 10 例、人工心肺使用手術を 9 例に行いました。弁膜症手術は 13 例でした。心臓
腫瘍手術を 1 例に行いました。胸部大動脈手術は 19 例でした。うち 4 例に対してステント
グラフト内挿術を行いました。なお急性大動脈解離の症例 12 例に緊急手術を行いました。
B.腹部大動脈瘤
腹部大動脈瘤に対する手術総数は 19 例でした。人工血管置換術を 8 例に、ステントグラ
フト内挿術を 10 例に行いました。また胸腹部大動脈瘤に対して腹部動脈分枝のデブランチ
手術を 1 例に行いました。
C.末梢動脈手術
末梢動脈手術総数は 41 例でした。内訳は大動脈閉塞に対するバイパス術及び下肢動脈閉
塞に対するバイパス術を 11 例、内膜剥離 7 例などでした。また緊急の血栓除去術を 11 例
に行いました。
D.下肢静脈疾患
下肢静脈瘤手術総数は 56 例でした。内訳は伏在静脈抜去術 46 例、血管内焼灼治療 2 例
などでした。また、外来手術にて高位結紮術または静脈瘤切除術を併せて 6 例に行いまし
た。
＜心臓血管外科手術統計＞（平成 28 年 1 月～12 月）
心臓手術 33 例
冠動脈疾患手術
冠動脈バイパス術 19 例
弁膜症手術
13 例
（体外循環非使用心拍動下手術 10 例）
大動脈弁置換術 6 例 （＋冠動脈バイパス術 3 例）
大動脈弁置換術＋僧帽弁置換術 1 例 （＋不整脈手術 1 例）
大動脈弁置換術＋僧帽弁形成術 2 例 （＋冠動脈バイパス術 2 例）
大動脈弁置換術＋三尖弁形成術 2 例 （＋不整脈手術 2 例）
僧帽弁置換術 1 例
僧帽弁置換術＋三尖弁輪形成術 1 例 （＋不整脈手術 1 例）
心臓腫瘍手術
1例
大血管手術 38 例
上行弓部大動脈置換術
4 例 （＋大動脈基部置換
2例
＋オープンステント治療 2 例、
急性 A 型大動脈解離 2 例）
部分弓部大動脈置換術
2 例 （急性 A 型大動脈解離 2 例）
上行大動脈置換術
8 例 （急性 A 型大動脈解離 8 例）
上行大動脈仮性瘤手術
1例
胸部大動脈ステントグラフト内挿術
4例
腹部大動脈置換術
8例
腹部大動脈ステントグラフト内挿術
10 例
腹部大動脈分枝デブランチ
1例
末梢血管手術 97 例
腸骨動脈瘤手術
1例
腋窩-大腿動脈バイパス術
1例
大腿-大腿動脈バイパス術
1例
大腿-膝上膝窩動脈バイパス術
3 例 （＋大腿-大腿動脈バイパス術 1 例）
大腿-膝下膝窩動脈バイパス術
6例
血栓除去術±血管形成術
21 例
血管内膜剥離+パッチ形成術
7例
シャント造設術（人工血管）
1例
下肢静脈瘤手術
50 例 （血管内焼灼 2 例）
下肢静脈瘤高位結紮術
6例
【業績集】
＜学会・研究会＞
開催年月日
演題名
演
者
学会名
2016.5.20
腹部大動脈瘤の治療について
木村
聡
第 12 回心血疾患研究
下関
会
（下関グラ
～生活習慣病のリスク管理～
場
所
ンドホテル）
2016.5.25
～27
弓部置換術後の難治性左鎖骨
山下慶之
第 44 回日本血管外科
東京
下リンパ漏に対し、ミノサイ
栗栖和宏
学会学術総会
（ホテルグ
クリン局所注入が有効であっ
木村
聡
ランパシフ
た2例
上野安孝
ィ ッ ク LE
DAIBA）
2016.5.25
～27
広範囲胸部大動脈瘤
木村 聡
第 44 回日本血管外科
東京
どう治療しますか？
栗栖和宏
学会学術総会
（ホテルグ
山下慶之
ランパシフ
上野安孝
ィ ッ ク LE
DAIBA）
2016.5.27
広範囲胸部大動脈瘤
木村
聡
どう治療しますか？
第 22 回福岡心臓血管
二日市
外科懇話会
（大丸別荘）
2016.6.10
重症下肢虚血を伴う急性 A
満尾 博
第 108 回日本循環器
松江
～11
型大動脈解離に対する治療
栗栖和宏
学会中国・四国合同
（くにびき
の経験
山下慶之
地方会
メッセ）
木村 聡
上野安孝
2016.6.23
術後遠隔期早期に発症した
満尾 博
第 18 回下関循環器
下関
僧帽弁位生体弁機能不全
栗栖和宏
研究会
（東京第一
木村 聡
ホ テ ル 下
上野安孝
関）
開催年月日
2016.7.21
～22
演題名
学会名
場
第 49 回日本胸部外
鹿児島
Report Award 審査員（心
科学会九州地方会総
（かごしま
臓・大血管）
会
県民交流セ
Student
演
Award ・ Case
者
栗栖和宏
所
ンター）
2016.7.21
肺動脈カテーテル挿入で生
満尾 博
第 49 回日本胸部外
鹿児島
～22
じた完全房室ブロックの一
栗栖和宏
科学会九州地方会総
（かごしま
例
山下慶之
会
県民交流セ
木村 聡
ンター）
上野安孝
2016.7.28
2016.8.5
窮迫した呼吸不全を伴う感
満尾 博
第 109 回山口県循環
山口
染性心内膜炎に対する手術
木村 聡
器談話会
（山口グラ
の一例
栗栖和宏
ン ド ホ テ
上野安孝
ル）
一般演題座長
上野安孝
下関循環器カンファ
下関
レンス
（下関グラ
ン ド ホ テ
ル）
＜論文＞
雑
誌 名
著
者
論
文
Gen Thorac Cardiovasc
Masayoshi Umesue,
Immediate and mid-term result of
Surg 64 260 2016
Hironori Baba,
restrictive
Satoshi Kimura
using a small semi-rigid ring.
Yoshiyuki Yamashita,
Successful treatment of iatrogenic
Satoshi Kimura,
subclavian artery pseudoaneurysm
Kazuhior Kurisu,
by
Yasutaka Ueno
injection.
Kazuhiro Kurisu,
Left ventricular rupture resulting
Manabu Hisahara,
from
atrial
laceration
following
Takashi Kajiwara
translocation
mitral
valve
Ann Vasc Surg
9
108
2016
Indian
J
Cardiovasc
Thorac
Surg
32
160 2016
mitral
annuloplasty
ultrasound-guided
thrombin
replacement.
Indian
Cardiovasc
272 2016
J
Thorac
Surg
32
Yoshiyuki Yamashita,
Reconstruction
of
an
isolated
Kazuhiro Kurisu,
vertebral artery during total arch
Satoshi Kimura,
replacement to preserve cerebral
Yasutaka Ueno
perfusion.