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JICA の気候変動分野における協力
独立行政法人国際協力機構(JICA) 地球環境部気候変動対策室 JICA の気候変動分野における協力 〒102-8012 東京都千代田区二番町 5-25 二番町センタービル URL: http://www.jica.go.jp/activities/issues/climate_change/ Email: [email protected] 2014 年 11 月 日本と JICA の協力 グローバルパートナーシップ 2013 年 11 月、日本政府は「攻めの地球温暖化外交戦略」を発表しました。この戦略では、日本がイノベーション(技術革新)、アプリケーショ JICA と日本の ODA ン(技術展開)、パートナーシップ(国際的連携)の三本柱をもって、技術で世界の温暖化対策に貢献することを目指しています。JICA は これを踏まえ、途上国における低炭素成長及び気候変動への適応力強化を支援するための協力を推進しています。 アジア、アフリカ、島嶼国との政策対話 アジア(2013 年 8 月) アジアでは、温室効果ガス排出量を抑制しながらの成長の実現と、気 候変動への適応力の強化が課題となっています。「アジア諸国向け気 候変動政策対話」では、アジアの気候変動問題への効果的な対応を図 るために意見交換が行われました。中央政府のみならず、自治体や NGO、企業など様々な主体が連携して日本の技術や知見をアジアで活 用することや、二国間クレジット制度の活用などが期待されています。 島嶼国(2014 年 7 月) 小島嶼開発途上国(SIDS)は、気候変動への適応能力に課題があり、 集中豪雨、干ばつ、海水面の上昇による低地の水没といった気候変動 の影響を受けやすいという特徴を有しています。「島嶼国向け気候変 動政策対話」は、島嶼国における気候変動と低炭素成長について幅広 く意見を交換するために実施され、日本と島嶼国間の協力関係強化に ついて活発な意見が交わされました。 1954 年以来、日本は政府開発援助(ODA: Official Development 日本は、途上国に対する気候変動対策(緩和策・適応策)の支援 Assistance)を行い、開発途上国のニーズに応じた技術協力、資 を官民レベルで積極的に実施しています。2009 年 12 月から 金協力等を実施してきました。 2012 年末までの支援実績は 176 億ドルに上っており、このうち JICA は、長年の開発途上国支援の経験・成果や日本の技術・知見 2010 年以降の公的資金による支援額は約 135 億ドルで、気候変 を最大限活用し、途上国の低炭素成長・持続可能な開発への協力 動枠組条約締約国会議(COP)の決定のもとで進められている先 を行っています。具体的には、温室効果ガス排出量の削減に寄与 進国全体の短期支援(FSF)の 2010 年から 3 年間の実績の約 4 する緩和策および気候変動のもたらす影響への適応策など、途上 割を占めています。 国の持続可能な開発に必要不可欠な分野の取組に対して、技術協 力、資金協力を有機的に組み合わせた協力を行っています。 ODA 二国間 援助 日本は、アフリカ地域を支援する上で、地域が抱える気候変動の影響 に対する脆弱性に着目し、気候変動対策を支援の一つの柱としていま す。「アフリカの気候変動対策・支援に関する政策対話」では、各国 において低炭素成長や気候変動に適応できる持続可能な開発に必要な 支援のほか、今後の国際交渉で望まれる協議の観点などについて、幅 広く意見交換が行われました。 多国間 援助 70 JICA 技術協力 有償資金協力 (円借款 、海外投融資) 無償資金協力* JICA では、途上国の気候変動対策を支援する際の方針の検討やプ ロジェクトの形成に役立てるため、下記①②の内容をまとめた参考 資料 JICA Climate-FIT を作成しました。 ① 温室効果ガス(GHG)の排出削減や吸収に貢献する活動(緩和 事業)の定量評価に関する測定・報告・検証(MRV)を実施す るための方法論 ② 気候変動に対する脆弱性の低減や適応能力・抵抗力の維持・増 加に貢献する活動(適応事業)において適応に関する要素が適 切に組み込まれるようにするための考え方及び指針 報告書掲載先ウェブサイト URL: http://www.jica.go.jp/activities/issues/climate_change/ 本ツールの対象セクター 適応 ■水資源 ■農業・食糧 ■森林・自然環境保全 ■防災 ■都市・地域開発 ■交通運輸 ■衛生改善 JICA は、タ イ 国 家 温 室 効 果 ガ ス 管 理 機 構 (TGO)が運営する「気候変動国際研修センター (CITC)」が、ASEAN 諸国向けの気候変動対策 の実践的研修機関として機能するために必要 な能力強化と ASEAN 各国との連携協調の推進 を支援しています。 2014 年 10 月 31 日に開催された第 3 回東アジア低炭素成長パートナーシッ プ対話において、JICA は東アジア低炭素成長ナレッジ・プラットフォーム と CITC の連携の展望について紹介を行いました。アジア各国政府、国際機 関、経済界の関係者とともに、情報拠点の整備の重要性につき意見を交換 しました。 15% 36% 49% 30 20 10 0 緩和 適応 緩和&適応 約138億ドル 約13.8億ドル 約24.5億ドル JICA は、以下の方向性に基づき、気候変動対策支援を進める方針です。 包括的な 支援 PDCA サイクル* (MRV**等) グローバルな課題である 気候変動問題 <緩和策:低炭素な社会づくり> 持続可能な開発と 気候変動への対応の両立 エネルギー、運輸、 廃棄物管理、森林等 国家計画・セクター戦略 効率的なシステムの構築 資金協力 ■森林・自然環境保全 ■交通運輸 ■産業施設の省エネルギー ■エネルギー ■再生可能エネルギー ■下水道・都市衛生 タイ国 東南アジア気候変動緩和・適応能力向上プロジェクト(2013 ∼ 2016) 支援種類の割合 途上国の低炭素成長・持続可能な開発への JICA の協力の方向性 技術協力 緩和 OOF(その他政府資金) 40 *外交政策遂行上の必要から外務省が自ら実施するものを除く 東アジア低炭素成長ナレッジ・プラットフォーム 東アジア首脳会議(EAS)地域は、世界の 世界の CO2 排出量(2011 年) 成長センターを内包しており、世界最大の に占める EAS 諸国の割合 温室効果ガス排出地域(世界全体の約 64%) となっています。日本政府は、同地域にお いて、温暖化対策と経済成長を両立させる 中国 低炭素成長モデルの構築を目指す「東アジ EAS 26% 以外 ア低炭素成長パートナーシップ構想」を推 36% 進しています。JICA は、国立環境研究所 米国 (NIES)、地球環境戦略研究機関(IGES)と 17% ともに「東アジア低炭素成長ナレッジ・プ ラットフォーム」の推進を通じて、各国の その他 6% 日本 知見や経験の共有と、ネットワークの構築を ロシア インド 6% 4% 5% 推進しています。 円借款 50 市民参加協力 情報拠点の整備 無償 60 国際緊急援助 気候変動対策支援ツール 支援総額:176 億ドル 支援分野別内訳 (USドル) 80 (政府開発援助) アフリカ(2011 年 10 月、11 月) 気候変動分野における日本の二国間支援 温室効果ガス 排出削減 公正な 経済成長 政策・制度改善、資金メカニズム、 人材育成 気候変動 への対応 持続可能 な開発 気候モデリング・脆弱性評価 適応力の 強化 人間の 安全保障 低炭素技術の開発・普及等 気象災害等への適応能力強化 政策対話 民間連携 調査・研究 変化に強いインフラの整備等 <適応策:変化に強い社会づくり> 防災、水資源、 農業、衛生等 *PDCA サイクル: Plan、Do、Check、Action の 4 ステップからなる活動の継続的改善をはかるマネージメントサイクル ** MRV (Measurable, Reportable, Verifiable): 緩和事業の温室効果ガス排出削減量を測定・報告・検証(MRV)可能なものとする取組み 開発途上国の低炭素成長と気候変動への対応力強化に向けた JICA の協力 2014 年 11 月 適応 エジプト【再生可能エネルギー】 ガルフ・エル・ゼイト風力発電事業(有償資金協力) スーダン【水分野】カッサラ市給水計画(無償資金協力) エジプト政府は、急速な経済成長による電力需要の増大と、地球温暖化 緩和 フィジー、ソロモン【防災分野】 大洋州地域コミュニティ防災能力強化プロジェクト (技術協力) エリトリア国境に近いカッサラ市では、20 年以上続いた内 への問題意識の高まりを背景に、新・再生可能エネルギーを推進してい 供給が追いつかず、慢性的な水不足に直面しています。近 220MW の風力発電施設を新設し、電力需要の増加に対応するとともに、 の自然災害に対し脆弱で、気候変動等による海 システムの整備は重要な課題です。本事業では、老朽化し の両立を支援します。 ます。また、国土が拡散している国が多く、災 戦による難民や国内避難民の流入により急増する水需要に ます。本事業では、紅海沿いのガルフ・エル・ゼイト地域において、 大洋州地域は、台風、地震・津波、火山噴火等 年の気候変動による渇水の多発化に備えるためにも、給水 温室効果ガスの排出抑制に寄与し、エジプトの経済発展と地球環境保全 面上昇や異常気象の影響を受け易い環境にあり 適応 害情報が住民まで迅速、的確に伝達されず、災 た給水関連施設や機材の整備を支援し、安全な水へのアクセス率を高めます。これ 害時緊急援助も行き届きにくいため、コミュニティレベルでの災害対策 により、住民約 20 万 5 千人に安全な水の供給が可能になります。 ベトナム【省エネルギー】 省エネルギー研修センター設立支援 プロジェクト(ステージ2)(技術協力) への関心、ニーズが高まっています。日本は、フィジーとソロモンにお いて、中央レベル、コミュニティレベルの防災能力強化を通じ、住民が 緩和 洪水時に適切に避難できる体制をつくるための協力を行っています。 ベトナムでは、経済成長を上回るエネルギー消 適応 費量の増大を背景に、JICA が 2008-2009 年に実 タンザニア【農業分野】 小規模灌漑開発事業(有償資金協力) 施した「省エネルギー促進マスタープラン調査」 の提言を踏まえ、「省エネ及びエネルギーの効率 タンザニア国は、高い農業・灌漑開発ポテンシャルがある 的利用に関する法律(省エネ法 )」が 2011 年に ものの、灌漑面積は開発ポテンシャルの約 1 パーセント強 施行されました。本事業では、エネルギー管理士およびエネルギー診断 にとどまっています。気候変動の影響により、更なる水環 士を育成するための省エネルギー研修センターの設立と人材育成を通 境の悪化が予測される中、灌漑施設の建設、改修およびそ じ、省エネ法を推進するための体制強化を行います。また、省エネ促進 の技術の普及は気候変動への適応の側面からも重要な課題 のためのラべリング制度構築のための技術協力も、別途計画されています。 です。本事業は、灌漑面積の拡大による農業生産性の向上 ブラジル【森林分野 (REDD+)】 アマゾンの森林における 炭素動態の広域評価(SATREPS) 緩和・適応 ブラジルアマゾンの熱帯林は世界最 大の面積をもち、大気中の CO2 の吸 収に大きく貢献していますが、2030 を図るものであり、JICA が現在実施中の技術協力と相乗効果を図りながら、 年までに最大約 60% が消失するとの 持続可能な農業、灌漑事業の推進を目指します。 指摘もあります。ポスト京都議定書 の枠組みとして森林減少・劣化の防止による CO2 排出量の 削減が検討されているものの、この実現には削減量の定量 的評価が必要です。そのために本研究では、炭素蓄積量の 緩和 動態を表すマップを作成するなど、劣化した森林を含むア インド【都市交通】 デリー高速輸送システム建設事業フェーズ3 (有償資金協力) マゾン森林の炭素動態の定量的な評価技術の開発を目指し ています。 フィリピン及びペルー【防災分野】 災害復旧スタンドバイ借款(有償資金協力) デリー首都圏において、総延長約 103 キロメートルの大量高速輸 送システムを建設する計画です。地下鉄車両には、日本で活用さ れている省エネ技術である「電力回生ブレーキ」が導入される予 適応 日本政府は、2013 年度から「災害復旧スタンドバイ借款」を創設しました。これは、 定です。通常の車両に比べて約 33 パーセントの電力が節約され 相手国における災害発生後の復旧段階で発生する資金需要に対し迅速な支援を行う ることから、クリーン開発メカニズム(CDM)プロジェクトとし て国連 CDM 理事会に登録されました。本事業では、地域経済の発展、都市環境の改善、 ならびに気候変動の緩和に貢献します。 べく,災害発生時に相手国からの要請をもって速やかに融資を実行できるよう,災 害発生に備えて融資枠を合意するものです。2014 年、フィリピン及びペルーとそれ ぞれ同借款契約を締結しました。フィリピンに対しては、2013 年 11 月に発生した 台風ヨランダからの復旧・復興に同借款資金が活用されています。 タイ【気候変動政策一般】 バンコク都気候変動マスタープラン (2013 年 -2023 年 ) 作成・実施能力向上プロジェクト(技術協力) 適応 熱帯氷河が集中するアンデス高地 では、気候変動による氷河の消失 緩和・適応 バンコク首都圏庁(BMA)では、バンコク都気候変動対策実行計画(2007 ∼ 2012)に続き、より包括的な気候変動対策として、バンコク都気候変動対策 マスタープラン 2013-2023 年の計画を進めています。本事業は、運輸交通、 エネルギー、廃棄物・排水、都市緑化、適応分野の5分野にわたる効率的な気 候変動対策を推進するために、国レベルの上位政策との整合性を持った計画策 ボリビア【水分野】 氷河減少に対する水資源管理 適応策モデルの開発(SATREPS) 定、BMA 外関連機関との協力体制の構築及び、マスタープランの実施に係る能力強化を図るものです。 インドネシア【気候変動政策一般】 気候変動対策能力強化プロジェクト(技術協力) 緩和・適応 インドネシアでは、温室効果ガス排出削減のための大統領規則発 令など、積極的に緩和策を進める一方で、気候変動の影響に対す る脆弱性の高さから、適応策を国・地域レベルの開発計画で主流 化していくことも必要となっています。本事業は、開発計画にお ける緩和策と適応策の主流化、農業分野および関連セクターにお ける適応行動のための能力強化、国家温室効果ガスインベントリ能力強化を行うことで、 緩和策・適応策を推進するための包括的な支援を行っています。 SATREPS(サトレップス:地球規模課題対応国際科学技術協力)とは、独立行政法人科学技術振興機構(JST)と JICA が共同で実施している、地球規模課題解決のために日本と開発途上国の研究者が共同で研究を行う 3 ∼ 5 年間の研究プログラムです。(http://www.jst.go.jp/global/) REDD+ は、開発途上国が森林減少・劣化の抑制や森林保全により、温室効果ガス排出量を減少させた際あるいは森林の炭素蓄積量を維持・増大させた際に、その排出削減量あるいは維持・増大した炭素蓄積量に応じて、先進国が途上国へ経済的支援(資金支援等)を行うものです。 が急速に進んでいます。氷河は水 資源であると共に、水力発電によ る電力供給源でもあり、氷河の消 失がアンデス高地に居住する特に貧困層の生活・経済活動 に深刻な影響を及ぼすことが懸念されています。本事業は、 氷河の消失を考慮した水資源賦存量の分析と具体的な対策 を検討するための水資源管理モデルを構築する実践研究を 行うものです。本研究で得られたモデル、科学的知見を基 に、今後適応策が検討されていくことになります。