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子宮頸がんの診断と治療

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子宮頸がんの診断と治療
子宮頸がんの診断と治療
産科婦人科学 教授 藤原
寛行
子宮頸がんとは
子宮に発生するがんには、子宮頸(けい)がんと子宮体(たい)がんがあります。この二つは「子宮
がん」として混同されがちですが、子宮体がんの多くは女性ホルモンが影響するのに対し、子宮頸がん
の多くはウイルスが関与して起こる、全くタイプの異なるがんです。子宮体がんの発症は 80%が 50 歳以
降ですが、子宮頸がんの発症は 30~40 歳代が多く、前がん病変(がんになる前の状態)と早期がんは 20
~30 歳代と若い世代に多いのが特徴です。
子宮頸がんは、子宮の入り口である頸部(けいぶ)に発生するがんで、初期段階では自覚症状がほと
んどありません。ですから無症状であっても検診を受けることがとても大切です。早期に発見できれば
治癒率も高く、自らの命を守ることができます。しかし本邦では検診を受ける人の割合は、諸外国に比
べとても低いのが現状です。特に若い世代で低率で、妊娠の際に行う検査で偶然発見されることもある
のです。早期であれば妊娠を継続したり、子宮を温存したりすることも可能ですが、進行している場合
はそれが出来なくなってしまいます。自らの命と子宮の両方を守るためにも検診を受けることが大切で
す。
診断と治療
子宮頸がんの診断の基本は診察と病理学的検査です。検診では子宮頸部からブラシなどで細胞を採取
し、この形態から疾患を推定します。細胞診で病変があることが疑われる場合、精密検査として組織の
一部を採取し(生検)
、良悪性を判定します。このような検査で病変があると診断された場合は、内診や
超音波検査、さらに MRI や CT 検査を行い、病変の広がりを測定し、その結果によって治療法を決定しま
す。
前がん病変(異形成)や上皮内癌(子宮の上皮に留まっている癌)であれば子宮頸部のみを一部円錐
状に切除する方法(円錐切除術)で子宮を残すことができます。しかし進行していた場合(浸潤がん)
は、追加で子宮を切除しなくてはなりません。病変が子宮頸部を超えて、広く進行している場合は、放
射線治療が選択されることもあります。通常、放射線と同時に抗がん剤(化学療法)を併用して治療を
行います。手術と放射線のどちらにもメリット、デメリットがあるため、病期(病気の進行度)と患者
さんの状況を総合的に判断して、治療法を決定します。
ヒトパピローマウイルス(HPV)と子宮頸がん
子宮頸がんの発症には、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が大きく関わっています。HPV はごく
ありふれたウイルスで、一度でも性交渉の経験があれば年齢、性交渉の回数、人数に関係なく誰でもか
かる可能性があります。
HPV に感染しても、その多くは一過性で自然に消滅しますが、持続感染を起こす場合があります。中で
も「ハイリスクタイプ HPV」と呼ばれるものが持続感染をすると、がん化しやすいといわれています。し
かし、感染から子宮頸がんを発症するまでには数年から十数年のタイムラグがあるため、この間に検診
を受けて、ごく初期の段階で発見できれば治癒が可能です。検診で細胞診と一緒に、この HPV を測定し、
ハイリスクタイプ HPV の有無を判定する
「細胞診-HPV 検査併用検診」
が行われるようになってきました。
また HPV 感染を防ぐ「予防ワクチン」が開発され、子宮頸がんにかからないようにするための様々な施
策が行われています。このように HPV を中心に子宮頸がんの発症を抑える糸口が見えてきています。
子宮頸がん撲滅へ向けて
世界では、年間約 50 万人が子宮頸がんを発症し、約 27 万人がこの病気で亡くなっています。日本で
は年間 9 千人近くが子宮頸がんにかかり、約 2700 人(1日約7人)が命を落としています。子宮頸がん
はとても恐ろしい病気ですが、同時に高い確率で防ぐことができる病気でもあります。講演では、子宮
頸がんの診断と治療を説明するとともに、この疾患に罹患(りかん)しないようにする様々な取り組み
をお話しします。
≪講師略歴≫
氏
名
学歴及び職歴
主 な 著 書
藤原 寛行(ふじわら ひろゆき)
昭和 40 年 4 月 26 日生
平成 2 年
山口大学医学部卒業
平成 2 年
日本医科大学救命救急センターレジデント
平成 3 年
沖縄米海軍病院インターン
平成 4 年
国立小児病院(現国立成育医療センター)麻酔・集中治療科
平成 7 年
自治医科大学産科婦人科学講座 入局
平成 15 年
自治医科大学産科婦人科学講座 講師
平成 20 年
自治医科大学産科婦人科学講座 准教授
平成 27 年
自治医科大学産科婦人科学講座 教授
藤原寛行:第 2 章 CQ11. 卵巣がん治療ガイドライン 2015 年版. 日本婦人科腫瘍学会編.
東京 金原出版. P84-87, 2015.
藤原寛行:子宮頸部細胞診報告様式ベセスダシステムと ASC-US の取り扱い. 日本医事
新報 p51, 2014.
藤原寛行:子宮頸がん検診の進化-本邦の検診事情と将来像-. In 小西郁生(監):
子宮頸癌トータルマネージメント―啓発から予防・管理・治療まで―. 東京 メディカ
ルレビュー社、p50-52, 2014.
藤原寛行:再発癌に対して推奨される標準的な化学療法は? In 杉山 徹等編集. E
BM婦人科疾患の治療 2013-2014. 東京 中外医学社, p397-404, 2013.
藤原寛行:子宮体がん検診・スクリーニング検査の実態と問題点. 産婦人科の実際
p383-388,2012.
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