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技術開発促進事業終了報告書 - 地球環境産業技術研究機構

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技術開発促進事業終了報告書 - 地球環境産業技術研究機構
平 成 14 年 度 ∼ 1 5 年 度
地球環境保全関係産業技術開発促進事業
京都議定書目標達成産業技術開発促進事業
技術開発促進事業終了報告書
古紙とリサイクル石膏を用いた軽量新素材の開発
<公開版>
平成16年3月
I−30グループ
RITE−仙台若林研究室
RITE−仙台宮城野研究室
1.まえがき
市場から廃棄される石膏ボード等の建設材料は最終処分場の法的な規制もあり、廃棄材料の
出来る限りのリサイクル化が望まれている。本研究では、廃石膏ボードに含まれる石膏を利用
し 、 古 紙 に 代 表 さ れ る セ ル ロ ー ス 成 分 お よ び 有 機 質 の バ イ ン ダ ー (粘 着 剤 )と を 融 合 さ せ 、 防 音
および断熱効果等省エネ効果のある建材、および、脱ホルムアルデヒド機能を備えた低環境負
荷型の軽量建材等の開発を行うことを目標とする。
本開発の中心課題は古紙‐廃石膏系混合物を軽量かつ現状の素材よりも高強度の硬化体に変
換 す る こ と で あ る 。 古 紙 発 泡 ス ラ リ ー の 硬 化 体 製 造 に 関 し て は 古 紙 発 泡 ス ポ ン ジ 材 (弊 社 商 品
名:パ ル フ ォ ー ム )の 開 発 を 通 し て 、そ の ノ ウ ハ ウ を 蓄 積 し て き た が ,こ れ に 石 膏 が 加 わ っ た 系
については新規に技術開発が必要である。石膏には無水,半水,二水の状態があり,それぞれ
硬 化 特 性 が 異 な る 。石 膏 ボ ー ド か ら 回 収 し た 廃 石 膏 が い か な る 硬 化 挙 動 を 示 す か を 詳 細 検 討 し ,
製造の最適条件を確立しなければならない。石膏は条件によっては急結性を示すことより,原
料粉末の貯蔵,輸送,混合,混練,成形等の要素技術の確立が必要となる。
本技術の開発効果としては、弊社が以前より研究している古紙発泡スポンジ材に石膏に代表
される無機素材による硬さが付与されることで,クッション効果およびある程度の強度をもっ
た素材が期待される。本素材が開発できれば、弊社のこれまでの古紙発泡素材ではユーザーニ
ーズに応えられなかった軽量建材,重量物保護材,土木資材分野および重量物梱包箱等の新用
途への展開が望める。
既存の石膏ボードにおいては、内部構造は石膏単身の硬
化体であるため、本質的には脆く,表面に紙を被覆(コー
ト)することによって粉化防止と強度の確保を図っている
のに対し,今回の開発品は古紙に由来するセルロース繊維
によって強化された石膏硬化体であり,石膏ボードと異な
り表面のコート紙なしに大きな強度が期待される。石膏は
国内生産の排煙脱硫,リン酸工業等からの副生品だけでは
需要を満たすことができず,年間数百万トン程度の天然石
膏が輸入されている。セメントに利用された石膏はリサイ
廃 石 膏 の投 入 および破 砕
廃 石 膏 と古 紙 の分 離 ( 乾 式 )
古紙
廃石膏
微粉化
(繊 維 長 約 1m m)
細 粒 化 および
粒度選別
古 紙 、廃 石 膏 および
バイ ンダ ー等 の添 加
古 紙 、廃 石 膏 の混 練 および
発泡成形
クル不可能であるが,ボードに加工された石膏は廃棄物と
乾 燥
なった場合にリサイクルが可能である。むしろ貴重な資源
軽量素材完成
としての石膏をリサイクルすべきである。我が国の場合,
廃石膏ボードのリサイクルは輸入される天然石膏量の削減
軽 量 新 素 材 開 発 のフロー図
を 可 能 に す る も の で あ り , そ の 採 掘 , 輸 送 に 係 る エ ネ ル ギ ー の 低 減 , し た が っ て CO 2 の 発 生 量
低減に寄与できるものである。
1
2.技術開発の概要
市場から排出される廃石膏ボードを分別装置により石膏と紙に分別し、本石膏を利用した軽
量 新 素 材 製 造 の 要 素 技 術 を 確 立 す る 。 具 体 的 に は 、 本 素 材 の 最 適 バ イ ン ダ ー の 選 定 (粘 着 剤 )、
石膏、古紙等の配合条件の検討および、混練、発泡、成形、乾燥等を検討する。さらに、スケ
ールアップテストを実施し、試作品の製造までの暫定プロセスの開発を行う。また、本材素材
の用途開拓として、本素材のもつ軽量かつクッション性を有する特徴を生かし、襖の中芯、軽
量内装材、防音材、保温・断熱材等の建材分野および弊社に従来の古紙発泡成形体では困難で
あ っ た 重 量 物 輸 送 の 梱 包 材 料 (物 流 通 函 等 )の 分 野 に 取 組 む 。
3.技術開発の内容
3−1.最適バインダーの選定
本 石 膏 軽 量 素 材 の 開 発 に あ た り 、 バ イ ン ダ ー (接 着 材 )の 果 た す 役 割 は 製 造 上 非 常 に 大 き い 。
すなわちバインダーの能力として、石膏および古紙を均一に分散・結合させると同時に空気抱
き込み自らが発泡することが求められる。また、素材の軽量化を図るうえで、スラリーの発泡
化は重要である。このような能力を有するバインダーの選定を目的にした。
(1)ゼラチンバインダーについて選定条件の検討
1)目的
古紙および廃石膏を結合させ、かつ発泡性を有するバインダーとしての能力について知
見を得るため、とくにゼラチンバインダーについて有用性を検討する。
2)方法
本製造プロセスに適するバインダーの選定にあたり、基本特性として①水溶性であるこ
と 、② 乾 燥 さ せ る こ と に よ り 固 形 化 す る こ と (圧 縮 硬 さ 10∼ 60N/cm2
25% 歪 )、③ 適 度 な
発 泡 性 が あ る こ と 、 ④ 低 環 境 負 荷 (生 分 解 性 等 )の バ イ ン ダ ー で あ る こ と 、 ⑤ 完 成 し た 素 材
が 軽 量 ( 素 材 の 嵩 比 重 が 0.1∼ 0.3g/cm 3 程 度 ) で あ る こ と 等 が 上 げ ら れ る 。 そ こ で 、 従 来
からの弊社古紙発泡素材の原材料データを参照し、本石膏素材に適合すると思われるバイ
ンダーについて選定を行う。選定基準の物性項目としては、ゼラチンをバインダーにする
場合としては、過去の発泡性に関するパラメータよりゼリー強度 1) 、油脂分 2) および起
泡度 3) に着目し、これをもって有用性の判断をする。
1) ゼ リ ー 強 度 : ガ ラ ス 製 の ゼ リ ー カ ッ プ 中 で 10℃ に 冷 却 し た ゼ ラ チ ン ゲ ル の 表 面 を 4 mm 押 下 げ た と
き の 加 重 の 応 力 値 。 単 位 は bloom (JIS K6503 に よ る )
2 ) 油 脂 分 : 試 料 40g を 6 N の 塩 酸 に 入 れ て 分 解 し 、 n― ヘ キ サ ン で 抽 出 後 、 残 留 物 の 重 量 を 測 定 。
単 位 は g/100g。 (JIS K6503 に よ る )
3 )起 泡 度:本 素 材 の 発 泡 性 を 見 極 め る う え で 有 用 な 代 用 特 性 と な り 得 る も の と し て 、バ イ ン ダ ー (ゼ
ラ チ ン )の 起 泡 度 試 験 が 挙 げ ら れ る 。こ の 試 験 の 実 施 規 格 に 「パ ギ ー 法 (写 真 用 ゼ ラ チ ン の 品 質 規 格 テ
ス ト )」が あ る が 、 規 格 書 記 載 の 機 器 は 大 掛 か り で あ り 規 格 書 ど お り の 測 定 は 不 可 能 な た め 、 弊 社 独
自 の 方 法 に よ っ た 。試 験 操 作 と し て 、検 液 温 度 60℃ 、検 液 濃 度 10% 、液 量 5ml を 試 験 管 (内 径 13mm
φ ±1mm)に 採 取 し 、 試 験 管 ミ キ サ ー ( パ ソ リ ナ 試 験 管 ミ キ サ ー NS− 80) で 2800rpm、 10mm ス ト ロ ー
クで偏心円運動をさせて、1分間撹拌する。検液発泡後、発泡層の下面と上面とに印を付け、試験
管 を 60℃ の 温 水 中 に 浸 漬 し 、 1 分 後 の 発 泡 層 の 高 さ 測 定 し 、 起 泡 度 と す る 。
2
3)結果・考察
従 来 の 古 紙 発 泡 素 材 の デ ー タ よ り 、 ゼ リ ー 強 度 に つ い て は 150bloom 以 上 の も の 、 油 脂
分 0.2% 以 下 の も の 、起 泡 度 が 2mm 以 上 で あ れ ば 、古 紙 を 加 え た 系 で ス ラ リ ー の 発 泡 性 に
関 し て 有 効 と の 知 見 を 得 た 。 こ の 知 見 を も と に 、 新 田 ゼ ラ チ ン ㈱ 製 の GO タ イ プ を 選 定 し
た。
4)まとめ
これまでのデータおよび起泡度試験の結果に基づき、本素材の製法上有用と思われるバ
インダーについて選定を行った。しかしながら、石膏などの無機物を混入した場合につい
ては、素材の混練スラリーの発泡性どのような影響をあたえるのか、今後の混練実験によ
る検討が重要と思われる。
( 2 ) PVA お よ び メ ト ロ ー ズ バ イ ン ダ ー に つ い て 選 定 条 件 の 検 討
1)目的
本素材の製法において、バインダーの最適配合量を検討するうえで、濃度の異なるバイ
ンダーにて起泡度試験を実施することは、有用である。本実験では、バインダーの基本的
な 発 泡 能 力 を 確 認 す る た め 、PVA に つ い て は 粘 度 ま た は ケ ン 化 度( 部 分 ケ ン 化 品 、中 間 ケ
ン 化 品 ) の 異 な る 種 類 に つ い て 、 濃 度 が 5 % 、 10% 時 の 起 泡 度 を 確 認 し た 。 一 方 、 メ ト ロ
ーズについては粘度の異なる数種類について検討した。
原 料 と し て は 、PVA に つ い て は 日 本 酢 ビ ・ ポ バ ー ル ㈱ 、メ ト ロ ー ズ に つ い て は 信 越 化 学 工
業㈱の製品を使用した。
2)方法
〈 PVA 種 類 に つ い て 〉
ポ リ ビ ニ ル ア ル コ ー ル ( PVA) は 酢 酸 ビ ニ ル の 重 合 体 で あ り 、 生 分 解 性 プ ラ ス チ ッ ク の
材 料 と し て 広 く 知 ら れ て い る 。 以 下 に 検 討 し た 各 種 PVA つ い て 記 す
表1−1
PVA 種 類
〈低粘度〉――――――――――――――――――――>〈高粘度〉
中 間 ケ ン 化 品 UF050MG
UF170MG
UF230MG
UP
UP
UP
UP
UP
UP
UP
UP
部分ケン化品
040G
050G
100G
150G
180G
200G
240G
300G
〈メトローズ種類について〉
メ ト ロ ー ズ は 水 溶 性 の セ ル ロ ー ス エ ス テ ル で あ り 、 そ の 構 造 は セ ル ロ ー ス の OH 基 を メ
チ ル 基 、( CH 3 ) ヒ ド ロ キ シ プ ロ ピ ル 基 ( CH2CHOHCH3 )、 ヒ ド ロ キ シ エ チ ル 基
( CH2CH2OH) に 置 き 換 え た も の で 、 特 性 と し て は 冷 水 に 溶 解 し 、 恒 温 に な る と 凝 固 す
ることから、これに石膏および古紙を混ぜ成形する事ができれば、温風乾燥時に素材が凝
固し、素材のバインダーなどの溶出が防げるため、素材の寸法安定性が向上するものと期
待される。
以下にメトローズ各種について記す。
3
表1−2
〈低粘度〉――――――――――――――――>
〈高粘度〉
メトローズ
SEB− 04T
90SH− 4000
SM− 4000
HE− 30000
種類
置 換 基 (ヒ ド ロ キ
置 換 基 (ヒ ド ロ キ
置 換 基 (メ チ ル )
(高 粘 度 タ イ プ )
シエチル)
シプロピル)
〈実験手順ついて〉
使 用 機 器 と し て パ ソ リ ナ 試 験 管 ミ キ サ ー NS( イ ウ チ ㈱ 製 )を 用 い た 。60℃ の バ イ ン ダ ー
溶 液 ( 5 ま た は 10% ) を 内 径 13φ の 試 験 管 に 5ml 分 取 し 、 上 記 の 試 験 管 ミ キ サ ー に て
2800rpm、 10mm ス ト ロ ー ク で 偏 心 円 運 動 さ せ 、 1 分 間 攪 拌 す る 。 試 験 管 内 の 検 液 発 泡 後
に 発 泡 層 の 下 面 と 上 面 に 印 を 付 す 。試 験 管 を 60℃ 温 水 中 に 浸 し 、1 分 お よ び 5 分 経 過 時 の
発 泡 層 の 高 さ を 測 定 す る 。な お 、メ ト ロ ー ズ に つ い て は PVA と 同 様 の 方 法 に よ っ た が 、粘
性が非常に高いため、検液濃度を1%とした。
3)結果・考察
〈 PVA に つ い て の 結 果 〉
この結果、中間ケン化品は部分ケン化品に比べいずれの濃度においても、発泡能力が劣
ることがわかった。一方、部分ケン化品においても各種類により、大きく発泡性は異なっ
起 泡 度 (m m )
た 。ま た 、低 濃 度( 5% )で 発 泡 す る も の や 、高 濃 度( 10% )で 発 泡 す る も の が 存 在 し た 。
表 1−3
PVA種類別起泡度(5%)
PVA の起 泡 度 (mm)
種類
品名
濃 度 :5%
80
UF050MG
0分
1分
5分
70
UF170MG
UF050MG
12
10
2
中間
60
UF230MG
ケン化 UF170MG
40
37
13
50
UP040G
40
品
UF230MG
50
45
45
UP050G
30
UP040G
60
58
51
UP100G
20
UP150G
UP050G
23
19
18
10
UP180G
UP100G
19
19
10
部分
0
UP200G
UP150G
21
17
5
ケン化
0分
1分
5分
UP240G
UP180G
20
11
5
品
放置時間(分)
UP300G
UP200G
67
65
58
グラフ 1−1
UP240G
21
16
6
UP300G
49
47
40
PVA種類別起泡度(10%)
表 1−4
中間
ケン化
品
部分
ケン化
品
品名
UF050MG
UF170MG
UF230MG
UP040G
UP050G
UP100G
UP150G
UP180G
UP200G
PVA の起 泡 度 (mm)
濃 度 :10%
0分
1分
5分
15
10
3
30
26
15
3
0
0
2
1
1
38
19
11
55
54
30
34
28
16
40
38
38
17
12
7
60
50
起 泡 度 (m m )
種類
40
30
20
10
0
0分
グラフ 1−2
4
1分
放置時間(分)
5分
UF050MG
UF170MG
UF230MG
UP040G
UP050G
UP100G
UP150G
UP180G
UP200G
UP240G
UP300G
UP240G
UP300G
23
1
19
0
18
0
〈メトローズについての結果〉
溶 液 調 製 の 際 ダ マ に な り や す く 、 溶 解 し づ ら い こ と が わ か っ た 。 ま た 、 4% 以 上 で は 高
粘性のもち状となり、流動性が著しく低下したため、溶液濃度は1%とした。起泡度試験
の 結 果 は 、低 粘 度 タイプか ら 高 粘 度 ま で の い ず れ の 種 類 に よ っ て も 発 泡 し た が 、前 述 の PVA
にくらべ、バインダーの粘性が高いことから、試験管の壁に溶液がくっついてしまい、空
気との混合が円滑に進まずに、このため取り込まれた気泡粒子が粗く、安定した気泡層が
得 ら れ な か っ た 。メ ト ロ ー ズ 単 体 で の 使 用 は 困 難 な た め 、PVA お よ び 界 面 活 性 剤 等 の 起 泡
性のある物質との混合系にて、起泡度テストを実施した。この結果、単独時と比べると気
泡層の粒子は緻密となり改善された。
表 1−5
メトローズ単 体
種類
品名
0分
1分
5分
SEB−04T
21
21.3 19.8
メト
90SH−4000
40.8 39.8 10.3
ローズ SM−4000
31.4 30.6 30.6
HE−30000
28.2 28.2 10.2
0分
22.9
40.1
26.8
36.3
PVA 併 用
1分
5分
21.9 11
38.7 34.6
26.7 10.5
35.3 32.8
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
メトローズ-PVA混合系
起泡度(mm)
起泡度(m m )
メトローズ単独で起泡度
HE-30000
90SH-4000
SM-4000
SEB-04T
0分
グラフ 1−3
1分
界面活性剤併用
0分
1分
5分
27.1
27.1
26.7
34.3
32.4
10.1
30.4
27.6
10.2
33.5
33.5
10.2
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
5分
HE-30000
90SH-4000
SM-4000
SEB-04T
0分
放置時間(分)
グラフ 1−4
1分
5分
放置時間(分)
起泡度(mm)
メトローズ-界面活性剤混合系
40
35
30
25
20
15
10
5
0
HE-30000
90SH-4000
SM-4000
SEB-04T
0分
グラフ 1−5
1分
5分
放置時間(分)
4)まとめ
バ イ ン ダ ー と し て の PVA お よ び メ ト ロ ー ズ の 起 泡 度 は 、種 類 に よ り 大 き く 異 な る 事 が 分 か
っ た 。ま た 、本 テ ス ト の 結 果 よ り 通 常 ゼ ラ チ ン の 場 合 で 、検 液 濃 度 5% お よ び 10% で 20mm
以 上 と な る こ と か ら 、 PVA で は ゼ ラ チ ン と 同 様 に 5 ~10% 程 度 、 メ ト ロ ー ズ は 1% 程 度 が 添
加量として妥当であると思われる。実際に古紙および石膏を加えた系においても、かなりの
5
差 異 が 生 じ る も の と 予 想 さ れ る 。PVA 種 類 に よ っ て は ゼ ラ チ ン に 比 べ て 、か な り 発 泡 性 が 良
い事から、素材の低比重化のうえで重要と考える。また、メトローズについては、溶解の困
難性および流動性の無い事などから、本素材のバインダーとしては、適用しにくいのではな
いかと思われる。
3−2無機質材料の石膏と有機質の融合処方の検討
廃石膏を効率的に配合できる処方を開発するため、バインダーの種類、配合比、石膏の種類
について条件の検討を行った。
(2)小スケールでの軽量素材の処方検討
1)目的
ゼ ラ チ ン お よ び PVA 両 バ イ ン ダ ー を 用 い て 、小 ス ケ ー ル( 古 紙 100g ベ ー ス )に お け る
石膏の配合量把握、素材スラリーの混練状態の確認を目的とした。
2)方法
原料について
使 用 す る 原 料 に つ い て は 、 廃 石 膏 は 上 述 の ㈱ カ ネ ト 製 作 所 製 分 離 装 置 に よ り 粒 径 1mm
程 度 に 粉 砕 し た も の を 使 用 し 、 古 紙 は 段 ボール古 紙 ま た は 白 上 質 古 紙 を ㈱ 山 本 百 馬 製 作 所 製
の 乾 式 粉 砕 機 (商 品 名「 ア ト ム ズ M4− 500 型 シ ュ レ ッ ダ ー 」に よ り 3000r p m で 約 6 分 間
稼 動 し 、 繊 維 長 1mm に 微 粉 化 し た も の を 使 用 し た 。 バ イ ン ダ ー と し て 、 ゼ ラ チ ン (新 田 ゼ
ラ チ ン ㈱ GO タ イ プ )、 PVA(日 本 酢 ビ ・ポ バ ー ル ㈱ 部 分 ケ ン 化 品 : JP− 20)、 グ リ セ リ ン (坂
本 薬 品 ㈱ 製 純 度 99% 以 上 )を 用 い た 。ま た 、添 加 剤 に は 、ゼ ラ チ ン 使 用 時 に は ミ ョ ウ バ ン (硫
酸 ア ル ミ ニ ウ ム カ リ ウ ム 12 水 )を PVA 使 用 時 に は 硼 砂 (硼 酸 ナ ト リ ウ ム )を そ れ ぞ れ 使 用 し
た。
ま た 、バ イ ン ダ ー お よ び 添 加 剤 の 調 製・準 備 に つ い て は 、以 下 の ① ∼ ④ 手 順 に て 行 っ た 。
① 顆 粒 状 の PVA を 所 定 量 計 量 す る 。
② 加 熱 撹 拌 用 ス テ ン レ ス 容 器 に 一 定 量 の 水 を 加 え て お き 、容 器 を 約 60℃ の 湯 浴 中 で 加 熱 す
る。
③ 撹 拌 し な が ら PVA を 少 量 ず つ 投 入 し 、 完 全 に 溶 解 し た 後 ソ ル ビ ン 酸 カ リ ウ ム を 入 れ 、
均一に成るまで混合する。
④ グ リ セ リ ン (柔 軟 化 剤 )、 ミ ョ ウ バ ン ま た は 硼 酸 ナ ト リ ウ ム (架 橋 剤 )も 同 様 に 約 60℃ の 湯
浴中で加熱する。
〈卓上小型ミキサーによる混練状況確認〉
実験手順は以下①∼⑤の通りである。なお配合処方は下表の通りである。
① 上 述 の と お り 、 ゼ ラ チ ン ま た は PVA 水 溶 液 、 柔 軟 化 剤 、 添 加 剤 水 溶 液 を 準 備 す る 。
② 古 紙 を 100g 計 量 し 、 卓 上 混 練 機 付 属 の ス テ ン レ ス 製 の ボ ー ル に 移 す 。
③石膏を所定量計量し、上記ボールに移す。
④ ① の 水 溶 液 、柔 軟 化 剤 を 上 記 ボ ー ル に 移 し 、ヘ ラ で 各 々 が な じ む ま で 予 備 的 に 混 合 す る 。
表 2−1:処 方 配 合 表
紙
№
段 ボール
(g)
白上質
(g)
原 材 料 の配 合 比 (g で表 示 )
バインダー
柔軟化剤
石 膏 (g)
(g)
ゼラチン(g) PVA(g)
6
添加剤
(g)
添加水量
(g)
1
2
3
4
5
6
7
8
100
100
100
100
100
100
100
100
-----------------
23
100
200
100
23
100
200
100
34
34
34
34
---------
--------34
34
34
34
45
45
45
--45
45
45
---
--1.75
1.75
1.75
--0.39
0.39
0.39
660
660
660
660
660
660
660
660
⑤卓上混練機 4) を使用し、低速で1分間の混練した後、最高速で 8 分間、合計 9 分間混
練する。
4 )湯 煎 ジ ャ ケ ッ ト 付 き 卓 上 混 練 機 KENMIX(㈱ 愛 工 舎 製 作 所 製 )を 使 用 す る 。本 機 械 は 低 速 ∼ 最 高 速
ま で 無 段 階 で 切 替 が 可 能 。 (混 練 軸 の 回 転 数 ; 低 速 : 132rpm∼ 最 高 速 : 594rpm)
⑥ 混 練 終 了 後 に 100ml の 丸 底 の カ ッ プ (比 重 測 定 用 カ ッ プ )に 混 練 ス ラ リ ー を 充 填 し て 、
はかりで重量を測定する。これによって、混練スラリーの嵩比重を求める。
3)結果・考察
卓上ミキサーによる混練テストの結果
得 ら れ た 結 果 を 表 2 − 2 に 示 し た 。ゼ ラ チ ン お よ び PVA の 両 バ イ ン ダ ー で 検 討 し た 結 果 、
紙および石膏との混合状態は両バインダーを用いても良好であり、乾燥後の素材について
は 、 外 観 は 良 好 で あ っ た が 、 耐 水 性 に 関 し て は PVA を 用 い た も の は 良 く な い 。( № 1 お よ
び 5 の 比 較 ) ま た 、 石 膏 の 配 合 量 の 検 討 に つ い て 、 古 紙 100g に 対 し て 石 膏 が ど の 程 度 の
配合できるのか検討した。この際の混練状況、素材の外観等を評価した。石膏の添加量を
段階的に増やした場合において、混練された素材スラリーでは石膏と古紙の混合状態は比
較的良いものと判断したが、型取り・乾燥後の素材の断面組織を観察すると、石膏の添加
量 の 増 加 に と も な い 、 石 膏 の 分 散 が 不 均 一 に な る 傾 向 が 認 め ら れ た 。( No1 ∼ 4 お よ び
No5 ∼ 8 ) こ の た め 、 古 紙 と 石 膏 と の 配 合 比 は 各 々 1 : 1 程 度 が 適 当 と 考 え ら れ る 。
表 2−2 種 々の配 合 での混 練 および素 材 の評 価
段
№ ボー
ル
白
上質
1
2
3
4
100
100
100
100
---------
23
100
200
100
34
34
34
34
---------
45
45
45
---
--1.75
1.75
1.75
660
660
660
660
0.562
0.50
0.430
0.625
◎
◎
○
○
型 取 り・乾 燥 後 の
素材評価
外観評価
素材
断
比重
面
g/cm
表
裏
組
3
織
0.190 ○
○
○
0.236 ○
○
○
0.335 ×
×
×
0.233 ○
×
×
5
100
---
23
---
34
45
---
660
0.350
○
0.162
○
×
○
6
7
8
100
100
100
-------
100
200
100
-------
34
34
34
45
45
---
0.39
0.39
0.39
660
660
660
0.298
0.312
0.373
○
○
○
0.20
0.193
0.221
○
○
○
○
○
×
×
×
×
紙 種 類 (g)
原材料の
配 合 比 (g で表 示 )
バインダー(g)
柔軟
石
ゼラ
膏
PVA 化 剤
チン
(g)
(g)
(g)
(g)
混練過程の
スラリーの評 価
添加
剤
(g)
添加
水量
(g)
混練
比重
g/cm 3
混
合
状
況
耐
水
性
○
○
◎
◎
×
×
×
×
×
※スラリーの混 合 性 が最 もよいものを◎、良 いものを○、あまり良 くないものを×、特 に良 くないものを××で評 価 した。外
観 評 価 は表 、裏 、断 面 について行 い、表 、裏 面 の平 滑 度 および断 面 組 織 が緻 密 なものを◎、中 位 のものを○、荒 いも
のを×で評 価 した。
7
4)まとめ
今回は、石膏の添加割合に重点を置き、混練テストを行ったが、さらに、ゼラチンおよび
PVA 等 の バ イ ン ダ ー の 添 加 量 を 替 え て 実 験 を す べ き で あ り 、石 膏 、バ イ ン ダ ー 双 方 の 最 適 な
割合を把握する必要があると思われる。また、素材のコスト低減には、バインダーの使用量
低減について検討が必要である。
3−3原料粉末の混合、混練、成形等の要素技術の検討および確立
廃石膏ボードから得られる石膏についての知見をえるために、廃石膏ボードの破砕試験、廃
石膏および新規石膏との粒度分布の比較、古紙・バインダーを配合しての混練および成形過程
における要素技術を検討し、その確立を目指した。
(1)廃石膏ボードからの石膏と紙との分離テスト
1)目的
石膏ボードを分離装置にかけ、石膏と紙との分離状況および処理能力を確認する。
2)方法
市場から排出される廃石膏ボートから、石膏と紙の分離を行う。装置として、石膏
ボ ー ド ・ 紙 分 離 装 置 (型 式 KS− 2000DX、 ㈱ カ ネ ト 製 作 所 )を 使 用 し 、 実 験 試 料 と し て 含 水
率 5% 未 満 の 廃 石 膏 ボ ー ド を 500mm×800mm 未 満 に 裁 断 し た も の を 使 用 す る 。 な お 、 運
転 条 件 は 出 力 11kw、 回 転 数 は 1440rpm と し た 。
3)結果・考察
石 膏 ボ ー ド ・ 紙 分 離 装 置 (型 式 KS− 2000DX、 ㈱ カ ネ ト 製 作 所 )に よ り 、 市 場 か ら 排 出 さ
れ る 廃 石 膏 か ら 石 膏 と 紙 と の 分 別 を 行 っ た 。 実 験 試 料 と し て 含 水 率 5% 未 満 の 廃 石 膏 ボ ー
ド を 500mm×800mm 未 満 に 断 裁 し た も の を 400kg 使 用 し 、こ れ を 本 装 置 に 投 入 し た 。石
膏および紙が下表のとおりの分離比率で得られた。左欄に弊社実績値、右欄にメーカー公
称値を示した。なお、下表の集塵機という表記に関しては、集塵機内の微細な古紙粉体、
石膏、ほこり等種々の混合物のことである。
表3−1のように、公称値に比べて石膏が少なく分離される結果となった。分離装置か
ら排出された試料について、紙に若干の石膏の付着が認められたが、石膏成分に関しては
外観上、石膏粒および石膏粉ともほぼ完全に分離されていた。
表 3−1:石 膏 ボード紙 分 離 実 験 の結 果
石膏粉
質量
(kg)
割合
(%)
石膏粒
紙
集塵機
合計
実績値
公称値
実績値
公称値
実績値
公称値
実績値
公称値
実績値
公称値
149
175.2
138
168.4
82
45.6
31
10.8
400
400
37.3
43.8
34.5
42.1
20.5
11.4
7.8
2.7
100
100
4)まとめ
メーカーの公称値には及ばなかったが、本試料の種々の石膏ボードが混在しており、こ
のような下回る数値になったものと思われる。しかしながら、石膏粉に異物等の混入はな
8
く、本石膏を新素材開発の材料として利用できる確証を得た。
(2)混練方法の検討
1)目的
ゼ ラ チ ン お よ び PVA 両 バ イ ン ダ ー を 用 い て 、 ナ ウ タ ー ミ キ サ ー ( 古 紙 1kg ベ ー ス ) の 回
転速度と混練時間との関連性、それに伴う混練スラリーの状態変化を確認することを目的と
した。
2)方法
〈使用原料について〉
使 用 す る 原 料 と し て 、 廃 石 膏 は ㈱ カ ネ ト 製 作 所 製 分 離 装 置 に よ り 粒 径 1mm 程 度 に 粉 砕 し
た も の を 使 用 し 、古 紙 は オ フ ィ ス 古 紙 と し 、㈱ 山 本 百 馬 製 作 所 製 の 乾 式 粉 砕 機 (商 品 名「 ア ト
ム ズ M4− 500 型 シ ュ レ ッ ダ ー 」 に よ り 3000rpm で 粉 砕 し 、 繊 維 長 1mm に 微 粉 化 し た 。
バ イ ン ダ ー は 、ゼ ラ チ ン (新 田 ゼ ラ チ ン ㈱ GO タ イ プ )、PVA(日 本 酢 ビ ・ポ バ ー ル ㈱ 部 分 ケ ン 化
品 : JP− 20)、 グ リ セ リ ン (坂 本 薬 品 ㈱ 製 純 度 99% 以 上 )を 用 い た 。 ま た 、 添 加 剤 に は 、 ゼ ラ
チ ン 使 用 時 に は ミ ョ ウ バ ン (硫 酸 ア ル ミ ニ ウ ム カ リ ウ ム 12 水 )を 、 PVA 使 用 時 に は 硼 砂 (硼 酸
ナ ト リ ウ ム )を そ れ ぞ れ 使 用 し た 。
バインダーおよび添加剤の調製・準備については、以下の①∼④手順にて行った。
① 顆 粒 状 の バ イ ン ダ ー (ゼ ラ チ ン ま た は PVA)を 所 定 量 計 量 す る 。
② 加 熱 撹 拌 用 ス テ ン レ ス 容 器 に 一 定 量 の 水 を 加 え て お き 、 容 器 を 約 60℃ の 湯 浴 中 で 加 熱
する。
③撹拌しながらバインダーを少量ずつ投入し、完全に溶解した後ソルビン酸カリウムを
入れ、均一に成るまで混合する。
④ グ リ セ リ ン 及 び ミ ョ ウ バ ン 〈 ゼ ラ チ ン 使 用 時 〉 ま た は 硼 酸 ナ ト リ ウ ム 〈 PVA 使 用 時 〉 も
同 様 に 約 60℃ の 湯 浴 中 で 加 熱 す る 。
〈配合処方について〉
配合処方については以下に示す通りである。
表 3-2 原 材 料 の配 合 比 (g で表 示 )
シュレッダー
バインダー
廃 石 膏 (g)
古 紙 (g)
ゼラチン(g)
PVA(g)
1000
1000
340
--1000
1000
--340
1000
1000
170
170
柔軟化剤
(g)
450
450
450
添加剤
(g)
17.5
17.5
17.5
添加水量
(g)
6600
6600
6600
〈混練機操作について〉
ナ ウ タ ー 型 混 練 機 ※ を 使 用 し 、上 記 配 合 表 の と お り シ ュ レ ッ ダ ー 古 紙 、ゼ ラ チ ン ま た は PVA、
そ の 他 添 加 剤 を 加 え 、 低 速 (140rpm)、 中 速 ( 192rpm )、 高 速 ( 320rpm) の 順 で 1 分 ご と に 混 練 比
重を計測しながら混練する。比重の数値が一定値に収束した時点で、次の混練スピードにシ
フトする。
※ ) 湯 煎 ジ ャ ケ ッ ト 付 き ナ ウ タ ー 式 混 練 機 AM− 30(㈱ 愛 工 舎 製 作 所 製 )を 使 用 す る 。 本 機 械 は 低 速 、 中 速 、
高 速 、最 高 速 の 4 段 切 替 が 可 能 。(混 練 軸 の 回 転 数;低 速:140rpm,中 速:192rpm,高 速:320rpm,最 高 速:383rpm)
3)結果・考察
混練テストの結果について表3−3およびグラフ3−1に記す。
9
ゼ ラ チ ン お よ び PVA の 両 バ イ ン ダ ー は 、混 練
混練
速度
低速
(140rpm)
中速
(192rpm)
高速
(320rpm)
比 重 (g/cm)
ゼラチン
PVA
0.86
0.8
0.82
0.78
0.76
0.79
0.71
0.69
0.67
0.67
0.64
0.67
0.6
0.61
0.58
0.6
0.58
0.62
0.57
0.57
0.55
0.58
0.54
0.55
0.52
0.5
0.52
0.49
0.51
0.49
0.5
0.48
0.48
0.44
0.45
0.44
0.43
0.42
0.46
0.41
0.44
0.39
0.43
0.4
0.4
0.39
0.4
0.36
0.38
0.35
0.4
0.36
時間の経過にしたがって、比重は低下すること
が、明らかとなった。最終的にゼラチンにくら
べ PVA の ほ う が 比 重 は 低 下 し 、 気 泡 の 分 散 が
良い結果となったまた、混練時間が長くなると
両 バ イ ン ダ ー と も に 、比 重 は 一 定 値 で あ っ て も 、
紙の繊維自身での絡みつきが優位となり、
素材スラリーがダマ状となった。また、内部に
取り込まれた気泡の緻密さが失われ粗くなり、
古紙・石膏・バインダーの均一混合の状態から
変化が生じた。
バインダーの混練比重の推移
混練比重(kg/L)
表 3−3
時間
(分 )
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
ゼラチン
PVA
低速
140rpm
1
グラフ3−1
3
5
中速
192rp
7
9
高速
320rp
11 13 15 17 19 21 23 25
混練時間(hr)
4)まとめ
素材の混練比重は時間経過に伴い、それ以上混練時間を延長しても、一定の値に収束す
ることが判明した。また、長時間の混練はスラリーの分散性の低下に影響することが確認
できた。これらより、混練時間は短時間で実施することが妥当と判断される。
(3)発泡化、軽量化の検討
1)目的
ゼ ラ チ ン お よ び PVA 両 バ イ ン ダ ー に よ る 混 練 工 程 後 の ス ラ リ ー に つ い て 連 続 発 泡 機 に
おける空気厚入量を調整し、素材スラリーの比重がどの程度まで低下できるか検討した。
2)方法
予め、表3−2に示した配合処方に従い混練した混練スラリーを連続発泡機 ※ のジャケ
ット部に投入する。使用する古紙、バインダー、添加剤については(2)に記載した原料
10
の と お り で あ る 。発 泡 工 程 に お け る 機 械 の 運 転 条 件 は 、元 圧 6 kgf/ cm 2 、バ ッ ク 圧 3.0kgf
/ cm 2 と し 、 空 気 注 入 量 を 0NLか ら 段 階 的 に 0.3NLづ つ 上 げ 、 1.8NLま で 注 入 し た 。 そ の
際の得られる本素材の発泡スラリーの比重を計測した。
※ ) 連 続 発 泡 式 ミ キ サ ー TM− 50(㈱ 愛 工 舎 製 作 所 製 )を 使 用 す る 。 混 練 し た ス ラ リ ー を 連 続 的 に 供 給 し 、 空 気
を コンプレッサーに て 圧 入 し 、素 材 の 発 泡 化 を 行 う 装 置 。素 材 、空 気 供 給 量 、ロータ回 転 、バック圧 等 の 制 御 が 可 能 。
3)結果・考察
実験結果について、表3−4および、グラフ3−2に示す。
表 3-4
ゼラチン
混 練 比 重 (g/cm3)
0.59
発 泡 比 重 (g/cm3)
0.47
0.43
0.35
0.31
0.25
0.22
---
空気
注入量
(NL/min)
0
0.3
0.6
0.9
1.2
1.5
1.8
バインダーの種 類
PVA
混 練 比 重 (g/cm3)
0.55
発 泡 比 重 (g/cm3)
0.42
0.33
0.32
0.27
0.23
0.19
0.15
PVA+ゼラチン
混 練 比 重 (g/cm3)
0.49
発 泡 比 重 (g/cm3)
0.43
0.36
0.28
0.26
0.26
0.2
0.13
空気量による発泡比重の推移
発泡比重(kg/L)
0.5
ゼラチン
PVA
0.4
PVA+ゼラチン
0.3
0.2
0.1
0
0
グラフ3−2
0.5
1
1.5
2
空気注入量(NL/min)
ゼラチンをバインダーに使用した場合には、空気注入量が多いほど発泡スラリーの比重
は 低 下 し た 。 空 気 の 注 入 量 が 0.9NL/min ま で は 、 空 気 溜 り 、 脈 動 の 不 良 は 生 じ な い が 、
1.2L/min に な る と 発 泡 機 内 に お い て 混 練 ス ラ リ ー へ の 空 気 供 給 が 過 多 と な り 、大 き な 気 泡
が混入し、緻密な気泡構造が得にくくなるため、良好な発泡成形体は得られなくなった。
こ の 結 果 か ら 、 空 気 の 供 給 量 は 0.6∼ 0.9NL/min 程 度 が 良 い と 考 え ら れ る 。
一 方 、PVA で は ゼ ラ チ ン の 場 合 と 同 様 に 空 気 注 入 量 が 多 い ほ ど 発 泡 ス ラ リ ー の 比 重 が 低
下 し た 。空 気 注 入 量 は 最 大 で 1.8NL/min 混 入 し た が 、緻 密 な 気 泡 構 造 を 維 持 し ゼ ラ チ ン に
くらべ注入量が多くでき、軽量化できる知見が得られた。しかしながら、乾燥工程での厚
み 収 縮 や 素 材 強 度 の 低 下 等 を 考 慮 す れ ば 、 注 入 量 は 0.6NL/min が 妥 当 で あ る と 判 断 し た 。
さらに、両バインダーの混合系についても実施したが、両バインダーはともに混和性が
良く、発泡性においても問題ないことが確認された。
11
4)まとめ
空気圧入量の増加により、素材の比重が低下することが確認されたが、あまり空気を入
れすぎると乾燥後の厚み低下の要因となることから、製品の厚みとのバランスをとりなが
ら空気量を設定する必要があると思われる。
(4)混練時および発泡時における石膏の添加量の検討
1)目的
石膏の添加量を増やすために、古紙に対しての石膏の添加量を、混練、発泡、成形の各
要素について検討する。また、混練、発泡、成形に関して石膏の影響を探るため、石膏の
粒度・スラリーへの分散状態の把握を目的とした。
2)方法
古 紙 に 対 す る 石 膏 添 加 量 の 比 率 を 変 え 、 ナ ウ タ ー 式 混 練 機 (AM-30) 、 小 型 連 続 発 泡 機
(TM-50)お よ び 小 型 の 搬 送 装 置 に て 板 状 ス ラ リ ー の 成 形 を 試 み る 。ま た 、ス ラ リ ー に 含 ま れ
る石膏の粒度を確認するため、廃石膏のレーザー法による粒度分布測定を行った。比較検
討 の た め 、 食 品 添 加 物 に 使 用 さ れ る 2 水 石 膏 (以 下 新 石 膏 と 記 載 )に つ い て も 合 せ て 測 定 す
る。また、本素材スラリーへの石膏の分散状態を把握する方法として、走査型電子顕微鏡
による観察を実施する。
3)結果・考察
〈石膏添加量についての結果〉
石膏の添加量に伴う、混練から成形までのテストについて記す。
表 3−5
配合比
古 紙 :廃 石 膏
1:1
古 紙 :廃 石 膏
1:2
古 紙 :廃 石 膏
1:3
バインダー:ゼラチン
バインダー:PVA
混練
性
混練
比重
発泡
性
発泡
比重
成形
性
混練
性
混練
比重
発泡
性
発泡
比重
成形
性
○
0.46
○
0.36
○
○
0.39
○
0.28
○
×
0.57
×
×
○
0.46
×
0.41
×
×
0.91
×
×
×
0.89
×
発泡
不可
成形
不可
発泡
不可
成形
不可
※)混 練 性 、発 泡 性 および成 形 性 については、○または×にて目 視 による状 況 評 価 を行 った
表 3 − 5 に 示 し た よ う に ゼ ラ チ ン に 比 べ PVA の 方 が 石 膏 を 多 く 添 加 で き る こ と は 確 認 で
きたが、流動性が悪く発泡機に掛かる負荷が大きいため、安定した成形物が得られない結
果となった。
〈粒度分布測定について〉
グ ラ フ 3 − 3 に 示 し た と お り 、廃 石 膏 に つ い て は 5 ㎛ と 100 ㎛ 付 近 の 二 つ ピ ー ク が あ り 、
粒 度 分 布 が 一 定 で は な い 。 一 方 、 新 石 膏 に つ い て は グ ラ フ 3 − 4 の と お り 10 ㎛ 付 近 に
12
ピークがあり粒度が一定であることがうかがえる。このことから、粒度が一定な新石膏を
用いれば、石膏の添加量を増やした場合でも均一なスラリーが得られる可能性はあると思
われる。今後、廃石膏の有効利用を考えるうえで、廃石膏の分球方法の確立が重要な課題
である。
グラフ3−4 新 石 膏 の粒 度 分 布
グラフ3−3 廃 石 膏 の粒 度 分 布
〈電子顕微鏡観察について〉
走 査 型 電 子 顕 微 鏡 に よ る 観 察 の 結 果 、 古 紙 繊 維 の 構 造 体 の 内 部 に 大 粒 の も の で 50∼ 15
㎛の石膏粒が散在している様子が確認された。また、石膏以外に素材表面付近に石膏ボー
ド由来と思われる糊状成分が沈着している状態が見られた。
廃 石 膏 入 り素 材
新 石 膏 入 り素 材
4)まとめ
混練、発泡および成形の要素技術を確立させるためには、装置面の制御条件だけでは
なく、原料の品質調査並びに物性等の管理が重要と思われる。特に、廃石膏の場合につ
いては粒子のバラツキをある程度に収めるため規格幅を設定する必要がある。
13
3−4
本軽量素材の暫定製造プロセスの開発
石膏の添加量、バインダーの種類、配合量、混練時間、発泡比重の制御等の要素技術につい
て、前述の通りの知見に基づき、本素材の暫定的な製法プロセスの検証を行った。
(1)ベンチスケールでの本素材の製法プロセスの検討
1)目的
混練及び発泡の各テストにおいて得られた知
見 に 基 づ き 、ベ ン チ ス ケ ー ル に よ る 本 軽 量 素 材 の
古紙
バイ ンダ ー及 び
添 加 剤 の水 溶 液
廃石膏
試 作 を 行 い な が ら 、一 連 の 製 造 工 程 で の 不 具 合 等
ナウタ−型 混 練 機 による予 備 混 練
を見出すことを目的とした。
2)方法
連 続 発 泡 機 に よる空 気 圧 入
および 高 速 撹 拌
古紙と石膏の重量配合比が1:1の場合に
ついて、ベンチスケールで検討を行った。製造
の工程として、ナウターミキサーによる混練、連
続発泡機による発泡シート材の連続成形、ラック
積および乾燥機による素材の乾燥を経て、素材の
ノズルからのシート材
押出成形
ベルトコンベアでの
素材搬送
温風乾燥
完成に至るまでの一連の製造実験を実施した。
下記に本素材の製造に用いる原料、製造処方
軽量素材完成
(表 4 − 1)お よ び 各 製 造 工 程 に つ い て の 詳 細 を
図 4−1 古 紙 発 泡 成 形 体 の製 造 フロー
記述した。また、図4−1に試作試験の概略の
フローを示した。
表 4−1:製 造 処 方 配 合 表
紙
№
1
2
3
4
段 ボール
(g)
1000
-------
白上質
(g)
--1000
1000
1000
原 材 料 の配 合 比 (g で表 示 )
バインダー
柔軟化剤
石 膏 (g)
(g)
ゼラチン(g) PVA(g)
1000
--500
1000
340
340
340
340
---------
450
450
450
450
添加剤
(g)
添加水量
(g)
17.5
17.5
17.5
17.5
6600
6600
6600
6600
〈ナウター型大型混練機 1) による混練工程〉
上述配合量のとおりゼラチンに古紙、柔軟化剤を加え、低速で1分間混練する。次いで
中速で4分、高速4分、合計 9 分間混練する。
1 )前 述 の 3− 3( 2)の 湯 煎 ジ ャ ケ ッ ト 付 き ナ ウ タ ー 式 混 練 機 AM− 30(㈱ 愛 工 舎 製 作 所 製 )を 使 用 し た 。
〈連続発泡機 2) とマニフォールドからなる発泡シート材の連続成形工程〉
上述の本混練物を連続発泡機のジャケット部に投入する。発泡工程における機械の運転
条 件 は 、 元 圧 6 kgf/ cm 2 、 バ ッ ク 圧 3.0kgf/ cm 2 と し 、 概 ね 得 ら れ る 本 素 材 の 発 泡 ス ラ
リ ー の 比 重 を 0.3g/ cm 3 で 生 産 量 30kg/ hと な る よ う に 設 定 し た 。
2 ) 前 述 の 3− 3( 3) の 連 続 発 泡 式 ミ キ サ ー TM− 50(㈱ 愛 工 舎 製 作 所 製 )を 使 用 す る 。
14
また、本機の成形工程では、マニホールドとよばれる扇状のノズルから上述の発泡ス
ラ リ ー を 受 け ト レ ー ( 340×900mm) へ 押 出 す 。 抑 え 板 で な ら し な が ら 、 ス ラ リ ー の 厚 み
を 均 一 化 す る 。 こ の 工 程 は ベ ル ト コ ン ベ ア (60∼ 120Hz)と 連 動 し て 行 う 。 そ の 際 340m m
幅 で 押 出 さ れ る ス ラ リ ー の 中 央 部 の 厚 み を 計 測 器( キーエンス㈱ 製 )に よ り リ ア ル タ イ ム で 厚 み
の 確 認 を 行 う 。 そ の 後 、 移 載 機 に て ラ ッ ク 積 み す る 。 素 材 の 寸 法 は 概 ね 、 幅 340mm 長 さ
900mm 厚 み は 13mm と な る よ う に 設 定 し た 。
な お 、厚 み に 関 し て は 乾 燥 後 の 素 材 の 目 標 厚 み 10mm と し 、厚 み 収 縮 分 を 予 想 し た た め 、
13mm と し た 。
〈温風式乾燥機による乾燥工程〉
上 記 の ラ ッ ク 積 み さ れ た 素 材 ス ラ リ ー を 温 風 循 環 型 乾 燥 機 WFL− 700S( 東 京 理 化 ㈱ 製 )
で 、 温 風 温 度 100℃ 、 風 速 3 m /sec で 4 hr 乾 燥 さ せ た 。
〈本素材の評価:
混練・発泡・乾燥後の各比重、含水率および圧縮硬さ〉
比重については予備混練時のスラリー、連続発泡時のスラリー、素材完成品の各段階で
測定する。前 2 項目については、プロセス管理上の指標となるものであり、3項目につい
ては製品の物性評価のためのものである。
さ ら に 、 素 材 の 柔 ら か さ (ク ッ シ ョ ン 性 )を 測 定 す る た め 圧 縮 硬 さ の 測 定 を 実 施 す る 。 混
練 比 重 ・ 発 泡 比 重 は 、 100cc の 比 重 カ ッ プ に 本 素 材 を 所 定 量 い れ 、 重 さ を 計 量 す る こ と に
よ り 求 め る 。 ま た 、 完 成 品 の 嵩 比 重 は 80℃ で の 絶 乾 状 態 お よ び 20℃ 、 湿 度 60% で の 2 条
件 で 比 重 を 求 め る 。方 法 と し て サ ン プ ル を 10mm×10mm に カ ッ ト し 、80℃ で 4hr 後 放 置
後 の サ ン プ ル 重 量 か ら の 絶 乾 比 重 、 ま た 、 イ ン キ ュ ベ ー タ 内 に 20℃ 、 湿 度 60% 雰 囲 気 下
で 4 時 間 放 置 後 の 重 量 か ら 比 重 を 測 定 し て い る 。 ま た 、 含 水 率 (% )に つ い て は こ れ ら の 重
量の差から求める。
素 材 の 圧 縮 硬 さ 測 定 は 本 来 JIS 規 格 の K6767 に 従 い 測 定 す べ き で あ る が 、 ま ず は 、 簡
易的に弊社既存の装置であるテクスチャルアナライザー(㈱島津製作所製)を使用し測定
す る 。 具 体 的 に は 、 測 定 持 具 (プ ラ ン ジ ャ ー )を 2 種 用 意 し 、 平 面 で そ の 直 径 が 20φ 、 球 形
で そ の 直 径 が 5φ の も の に よ り 、 素 材 の 表 面 硬 さ 、 内 面 の 硬 さ を 測 定 す る 。
3)結果・考察
表4−2にベンチスケールにおいて得られた結果をまとめた。混練工程、発泡工程お
よび素材評価の順で以下に見解を記す。
15
表 4−2:ベンチスケールでの混 練 ・発 泡 ・シート成 形 における結 果
原 材 料 の配 合 比 (g で表 示 )
紙 種 類 (g)
バインダー(g)
スラリー
柔軟 添加 添加
の
石膏
ゼラ
水量
剤
PVA 化 剤
段 ボ
白
混合
(g)
チン
№
(g)
(g)
(g)
(g)
ール
上質
状況
(g)
1
2
3
4
1000
-------
--1000
1000
1000
1000
--500
1000
340
340
340
340
---------
450
450
450
450
17.5
17.5
17.5
17.5
6600
6600
6600
6600
○
◎
○
○
製 造 過 程 の評 価
混練
比重
g/cm3
スラリー
の
発泡
状況
発泡
比重
g/cm3
シート材
の
成形
状況
0.46
0.75
0.53
0.54
○
○
○
○
0.37
0.52
0.44
0.42
○
○
○
○
※スラリーの混 合 状 況 および発 泡 状 況 が最 もよいものを◎、良 いものを○、あまり良 くないものを×、特 に良 くない
ものを×× で評 価 した。ノズルからのシ ート材 の 成 形 状 況 につい て、平 滑 でエア ー溜 (クレータ ー)がないこと 、ノズ
ルの両 端 から均 一 にスラリーが放 出 されることに留 意 し、良 い場 合 を○、不 具 合 の場 合 を×とした。
表 4 − 2 に 示 す と お り 、 小 ス ケ ー ル 実 験 の 混 練 比 重 (表 2 − 2 )に 比 べ 、 本 混 練 工 程 で の
比重は高い数値となっているが、ナウターミキサーは卓上ミキサーに比べ、回転数が低い
ため空気混入比が小さいため、混練時のスラリーの比重が低めとなっている。
しかしながら、この混練比重の差については後段の発泡工程にて空気圧入量等の調整等
で解消可能ではないかと思われる。石膏の添加量の増加に伴い、石膏添加量分だけ混練ス
ラリー重量が増し、比重が増加すると思われたが、むしろ低下する結果となった。これに
つ い て の 要 因 は よ く わ か ら な い が 、石 膏 の 何 ら か の 成 分 が 、空 気 抱 き 込 み (エ ア レ ー シ ョ ン )
を助長したためと思われる。
連続発泡機による発泡シート材の連続成形工程の結果
上 述 の 小 ス ケ ー ル (古 紙 量 100g ス ケ ー ル )で の 検 討 結 果 よ り 、古 紙:石 膏 の 割 合 は 重 量 比
で1:1程度が妥当であると判断し、同割合にてベンチスケールでの実験を実施した。混
合 は 、30 分 間 程 度 、大 型 の ナ ウ タ ー 型 ミ キ サ ー で 撹 拌 し 、終 了 後 に 連 続 発 泡 機 に よ り 、空
気を圧入しつつ押出し成形を行い、発泡シート材を得た。スラリーの混合性、発泡性は良
好であり、素材の外観評価も問題ないものとなった。
なお、混練および発泡の工程時に素材スラリーの嵩密度を計測しており、概ね、混練時
で は 0.7∼ 0.5 発 泡 時 で は 0.5 ∼ 0.3 程 度 で あ っ た 。
発泡工程においても混連工程と同様に、石膏の添加量の増加に伴い比重の低下傾向が、
見られた。
素材の乾燥の結果
乾 燥 は 電 気 加 熱 式 の 温 風 乾 燥 機 を 使 用 し た 。小 規 模 ス ケ ー ル 実 験 (古 紙 100g)で は 、プ ラ
ス チ ッ ク デ ィ ス ポ ト レ ー (280×190×35mm)に 素 材 ス ラ リ ー を 分 取 し 、 凝 固 後 ト レ ー か ら
取 り 出 し 、 温 風 で 乾 燥 さ せ た 。 一 方 、 ベ ン チ ス ケ ー ル 実 験 (古 紙 1kg)で は 、 混 練 後 に ア ル
ミ 製 平 板 (900×340×35)を 受 け 面 と し て 15mm厚 さ で 連 続 発 泡 成 形 を 行 い 、 温 風 で 乾 燥 さ
せ た 。 い ず れ の 場 合 に お い て も 、 乾 燥 の 条 件 設 定 は 100℃ で 4hrで あ る 。 乾 燥 後 の 成 形 物
の 嵩 比 重 は 概 ね 0.2∼ 0.1g/cm 3 の 範 囲 で あ っ た 。
16
本素材の評価結果(混練・発泡・乾燥後の各比重、含水率および圧縮硬さ)
得られた素材にについて、弊社の装置にて簡易的に測定を実施した。結果を表4−3に
示す。参考のため、既存の石膏ボートの物性も合わせて記した。石膏の添加量の増加に伴
い 、完 成 品 の 嵩 密 度 は 増 加 し 、圧 縮 硬 さ は 各 々 の 条 件 で 低 下 し た 。ま た 、興 味 深 い こ と に 、
含水率は石膏の添加に伴い、減少する傾向を得ている。
表 4−3
№
1
2
3
4
石 膏 入 り素 材 の評 価 結 果
古紙 1 ㎏
に対 する
石 膏 の
添 加 量
(㎏)
完 成 品 の嵩 密 度
(g/cm 3 )
80℃
絶乾
1
20℃
60%
素 材 の評 価
圧縮硬さ
(素 材 厚 の 25%)
含水率
(%)
20φ
5φ
(N/cm 2 )
(N/cm 2 )
N0 .1については測 定 未 実 施 、 外 観 評 価 のみ 実 施
0
0.5
1
0.12
0.13
0.14
0.13
0.14
0.15
13.4
11.3
8.0
3.98
2.38
2.17
4.70
4.01
3.18
外観評価
表
裏
断面
組織
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
○
◎
○
○
耐水
性
◎
○
◎
◎
石 膏 *)
上限値外
上限値外
--0.59
0.63
6.3
--- --- ----測定不能
測定不能
ボード
外 観 評 価 は 表 、裏 、断 面 について行 い、表 、裏 面 の平 滑 度 および断 面 組 織 が 緻 密 なものを◎、中 位 のものを○、
荒 いものを×で評 価 した。
*)外 観 については、評 価 対 象 が違 うと思 われ、一 概 に比 較 できないのであえて評 価 からはずした。
得 ら れ た 結 果 に つ い て 、下 図 の 通 り に 示 す 。石 膏 の 添 加 量 に 伴 い 、混 練・発 泡 工 程 で は 、
嵩比重の低下傾向が見て取れるが、乾燥工程で水分が蒸発し完成品の段階となると、一定
の 比 重 値 に 落 ち 着 く こ と が 分 か る 。 (グ ラ フ 4 − 1 )ま た 、 石 膏 の 添 加 量 に 従 い 圧 縮 硬 さ は
減少した。
( グ ラ フ 4 − 2 )推 測 で は あ る が 、古 紙 の 繊 維 ど う し の 絡 み つ き が 、石 膏 に よ り
分断されるために起こり得るのではないかと思われる。
石膏の添加量と完成品の圧縮硬さ
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
5
混練比重(g/cm3)
発泡比重(g/cm3)
完成品の比重
(g/cm3)20℃,60%
圧縮硬さ(N/cm2)
比重(g/cm3)
石膏添加量の増加に対する混練、発泡工程
および完成品の比重
4
素材の圧縮硬さ20
φ(N/cm2)
素材の圧縮硬さ5φ
(N/cm2)
3
2
1
0
0
グラフ 4−1
0.5
0
0.5
古紙1kgに対する石膏の
添加量(kg)
グラフ 4−2
1
古紙1kgに対する石膏の
添加量(kg)
17
1
混 練 スラリー放 出
混 練 装 置 、石 膏 ホッパー
発 泡 および成 形 工 程
ラック積 ・乾 燥 工 程
4)まとめ
石膏の添加により、圧縮硬さが低下するという結果を得たが、当初は強度増加を目指し
ていたので、残念な結果となった。その一方、石膏を入れることで、含水率の低下、耐水
性の向上が確認され、効果が認められた。まだ、データ数が少ないため、一概には言えな
い面がある。今後、さらに詳細なデータの取得をしなければいけないと考える。
(2)量産スケールでの本素材の製法プロセスの検討
1)目的
ベンチスケールでの混練および発泡テストにおいて得られた石膏配合量に基づき、弊社工場
のプラント機を用いて、本素材の量産規模での製造における不具合、生産性などの検証を
目的とした。
古紙
2)方法
バイ ンダ ー及 び
添 加 剤 の水 溶 液
廃石膏
〈実機装置の運転条件について〉
製造の工程として、実機プラント設備の大型エルバ式
ミ キ サ ー (200L)に よ り 60HZ( 54rpm) に て 混 練 、 連 続
発 泡 機 (TM70)に よ る 発 泡 シ ー ト 材 の 連 続 成 形 、マ イ ク ロ
波乾燥機での素材乾燥を経て、素材の完成までの一連の
製造実験を実施する。図4−1に連続運転概略のフロー
を示す。また、下記に本素材の製造に用いる原料・製造
エルバ式 大 型 混 練 機 による予 備 混 練
大 型 連 続 発 泡 機 による空 気 圧 入
および 高 速 撹 拌
ノズルからのシート材
押 出 成 形 1m 幅
ベルトコンベアでの
素材搬送
処方および発泡機の運転条件を示す。
マイ クロ波 乾 燥
軽量素材完成
18
図 4−1 実 機 による連 続 製 造 フロー
表 4−4 1バッチあたりの原 材 料 の配 合 処 方 (kg で表 示 )
シュレッダー
古紙
5kg
廃石膏
ゼラチン
5kg
1.7kg
柔軟化剤
2.25kg
添加剤
0.0875kg
添加水量
33kg
表 4−5 大 型 発 泡 機 (TM-70)の運 転 条 件
スラリー輸 送
ポンプ
44
rpm
ミキシング
ローター
2000
rpm
空気
注入量
0.60
NL/min
レギュ
レータ圧
0.20
Mpa
目標発
泡密度
0.35
g/cm3
目標
生産量
70kg/バッチ
(200L)
成 形 工 程 に つ い て 詳 述 す る と 、 1m 幅 の 扇 状 の マ ニ ホ ー ル ド 成 形 ノ ズ ル よ り 上 述 の 発 泡
ス ラ リ ー を 17m の テ フ ロ ン 平 織 り シ ー ト の コ ン ベ ア へ 抑 え 板 で 抑 え 、直 接 成 形 し ス ラ リ ー
の 厚 み を 均 一 化 し な が ら 押 し 出 す 。厚 み 中 央 付 近 の 2 台 の セ ン サ ー お よ び 端 部 の 2 台 の セ
ンサーにて連続的に確認する。ベルトコンベアのスピードは素材の乾燥度合いに合せて調
整 す る が 、 初 期 値 は 0.23m /min に 設 定 し た 。
ま た 、 マ イ ク ロ 波 連 続 乾 燥 機 の 条 件 は 出 力 51kw で あ る 。 乾 燥 後 、 切 断 機 に て 1m の 長
さ で カ ッ ト し 、移 載 機 に て ラ ッ ク 積 み す る 。素 材 の 寸 法 は 概 ね 、幅 1000mm 長 さ 1000mm
厚 み は 10∼ 11mm と な る よ う に 設 定 し た 。
表 4−6 連 続 式 マイクロ波 乾 燥 機 の運 転 条 件
マイクロ波
出力
51kw
ヒーター
ダンパー開 度
前半
後半
前半
100℃
60℃
70%
後半
70%
コンベア
速度
0.23m/min
目標
成 形 厚
み
乾燥
成形幅
10mm
1000mm
〈量産工程での評価方法について〉
比重測定については予備混練および連続発泡時のスラリー、乾燥後の各段階で測定する。前
の 2 項目に ついては、プロセス管理上の指標となるものであり、後の3項目については製
品 の 物 性 評 価 の た め の 管 理 項 目 と な る 。さ ら に 、乾 燥 後 の 素 材 で は 、柔 ら か さ (ク ッ シ ョ ン
性 )の 指 標 と し て 圧 縮 硬 さ を 測 定 す る 。
混 練 比 重 ・ 発 泡 比 重 の 測 定 方 法 は 、 100cc の 比 重 カ ッ プ に 本 素 材 を 所 定 量 い れ 、 重 さ を 計 量
し 求 め る 。 ま た 、 乾 燥 後 の 素 材 の 比 重 は 80℃ で の 絶 乾 状 態 お よ び 20℃ 、 湿 度 60% で の 2
条 件 で 求 め る 。 方 法 は 、 素 材 を 10mm×10mm に カ ッ ト し 、 こ れ を 測 定 サ ン プ ル と す る 。
続 い て 、 乾 燥 機 内 で 80℃ 4hr 放 置 し 、 サ ン プ ル 重 量 か ら 絶 乾 時 の 比 重 を 求 め る 。 さ ら に 、
イ ン キ ュ ベ ー タ 内 に 20℃ 、 湿 度 60% 雰 囲 気 下 で 4 時 間 サ ン プ ル を 放 置 し 、 そ の 重 量 か ら
吸 湿 時 の 比 重 を 求 め る 。 ま た 、 含 水 率 (% )に つ い て は こ れ ら の 重 量 の 差 か ら 求 め る 。
19
素 材 の 圧 縮 硬 さ 測 定 法 に は 、 JIS 規 格 で ( K6767) 定 め ら れ て い る が 、 簡 易 法 と し て テ
ク ス チ ャ ル ア ナ ラ イ ザ ー( ㈱ 島 津 製 作 所 製 )に よ り 測 定 す る 。測 定 持 具 (プ ラ ン ジ ャ ー )を 2
種 用 意 し 、平 面 で そ の 直 径 が 20φ 、球 形 で
そ の 直 径 が 5φ の も の に よ り 、 素 材 の 表 面
大型混練機による混練工程
硬さ、内面の硬さを測定する。
3)結果・考察
〈エルバ式大型ミキサーでの結果について〉
混練工程では石膏は手投入、古紙および
バインダー、添加剤は自動投入で行い、そ
の 後 、60Hz で 15 分 間 混 練 し た 。混 練 結 果
は 、比 重 が 0.55g/cm3 程 度 で 、86L 程 度 の
混練スラリーが得られた。また、混練時の
石膏添加による不具合は認められなかった。
〈 連 続 発 泡 機 TM70 で の 結 果 に つ い て 〉
発 泡 工 程 で は 、 混 連 し た ス ラ リ ー を 下 部 の ス ラ リ ー 受 け か ら 、 モノポンプに よ り 44rpm
で 発 泡 機 内 の 2000rpm で 回 転 し て い る ミ キ シ ン グ ロ ー タ ユ ニ ッ ト へ 供 給 し た 。 生 産 量 は
18 秒 あ た り 360g で 、発 泡 比 重 は 0.35g/cm3 程 度 で あ っ た 。こ の 結 果 よ り 1 時 間 当 た り の
生 産 量 は 205L と 予 想 さ れ る 。 発 泡 ス ラ リ ー は マ ニ フ ォ ー ル ド と 呼 ば れ る ノ ズ ル お よ び 均
し 板 に て 、 1 m 幅 ・ 10mm の 厚 さ で 板 状 に 成 形 さ れ た 。 成 形 時 の 素 材 の 流 動 性 は 良 好 で あ
り 、 板 状 成 形 途 中 で の 途 切 れ 、 レギュレータの 圧 力 低 下 に よ る 脈 動 な ど は 生 じ な か っ た 。
素材発泡スラリー
発泡機マニフォールドによる素材成形
〈マイクロ波乾燥の結果について〉
マイクロ波連続式乾燥機による工程では、
マ イ ク ロ 波 出 力 51KW 稼 動 で 、1 m 幅・10mm
厚の板状成形体を乾燥させた。コンベアの
搬 送 ス ピ ー ド 0.23m /min で 稼 動 さ せ 、 乾 燥
開 始 か ら 終 了 ま で の 乾 燥 時 間 は 45 分 を 要 し
た 。本 シ ー ト 材 の 製 造 枚 数 は 、古 紙 5kg を 投
入 し 、 10mm 厚 1 ㎡ で 16 枚 製 造 さ れ る 結 果
となった。
20
μ波乾燥機による素材乾燥
〈量産素材の評価結果(比重・圧縮硬さのデータ)について〉
今回製造した量産素材の比重・および圧縮硬さについて、これまでに小規模実験で試作
したサンプルと比較しながら、相違点等の評価を行った。
〈製品の圧縮硬さ測定の結果について〉
表 4−7
No
製品条件
温風試作
ブランク
温風試作
廃石膏入り
温風試作
新石膏入り
温風試作
PVA・ゼラチン
MW 量 産
ブランク
MW 量 産
廃石膏入り
MW 量 産
新石膏入り
1
2
3
4
5
6
7
製造工程比重
(g/cm3)
混練
発泡
工程
工程
製品比重
(g/cm3)
80℃
20℃・60%
絶乾時
調湿時
含水率
(%)
0.538
0.371
0.099
0.105
0.542
0.422
0.172
0.582
0.382
0.49
圧 縮 硬 さ(N/cm2)
20φ
平面
5φ
球面
12.4
2.641
4.089
0.185
8.1
7.52
11.18
0.158
0.165
7.5
7.34
10.51
0.434
0.182
0.191
11.0
13.82
27.14
0.525
0.408
0.07
0.076
8.8
2.26
5.16
0.581
0.344
0.132
0.143
8.1
4.38
6.87
0.61
0.35
0.151
0.163
7.2
4.76
5.83
表 4 − 7 よ り 、 含 水 率 に つ い て は 、 最 大 で 12.4% 、 最 小 で 7.2% で あ っ た が 、 石 膏 を 添
加したものは、添加しないものと比べ、含水率が低下していることが分かった。このこと
で、石膏を添加すれば、湿度による影響を受けにくくなるのではないかと推測される。石
膏の添加量のほかにバインダーの条件および乾燥条件でかなり圧縮硬さに差が生じること
が分かった。前述の表をもとに、製品が完成するまでの工程ごとの比重の推移をグラフ
4−1に示した。
素材の圧縮硬さ測定状況
比重(g/cm3)
各工程での比重
混練比重
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
発泡比重
乾燥比重
(絶乾)
り
り
り
り
ク
ク
ン
入
入
入
入
膏
膏
ラン 膏
ラン
ラチ
膏
ブ
ブ
石
石
ゼ
石
石
・
W
燥
廃
新
廃
新
A
M
乾
風
風
MW
PV
MW
風
温
温
風
温
温
グラフ4−1
乾燥比重
(調湿)
乾燥条件および石膏原料別
グラフ4−1より、マイクロ波乾燥のほうが、石膏の種類に関わらず、製品の比重が軽
い 傾 向 に あ る 。マ イ ク ロ 波 乾 燥 で は 温 風 の 4 時 間 の 乾 燥 に 比 べ 、40 分 程 度 と 乾 燥 が 短 い た
め、厚みの収縮がなく、気泡の逃げが少ないためと思われる。また、石膏を添加した条件
としない条件を比較すると、石膏を入れた条件での製品比重は、乾燥過程により水分が蒸
21
発 す る た め 、 石 膏 重 量 分 だ け 比 重 が 増 加 す る こ と が 、 確 認 さ れ る 。 さ ら に 、 80℃ の 絶 乾 状
態 か ら 、 20℃ 60% の 条 件 で 3h r 放 置 し た 場 合 に は 、 製 品 の 比 重 が い く ら か 増 加 す る 。 こ
のことから、水分の吸収作用が確認できた。
4)まとめ
今回は量産化の取り組みとして、弊社実機による製造実験をこころみたが、各工程での不具
合等は認められなかった。製造された素材は、温風乾燥による試作品にくらべ、比重は軽
く、圧縮硬さは低いものとなった。このことから、乾燥プロセスが異なった場合には、製
造される素材が影響されることが確認された。より一層の生産効率を上げるため、乾燥時
間の短縮を目指す必要があると判断される。
3−5乾燥方式の検討
本素材の生産性を考える場合、乾燥工程をできる限り短縮し、生産量を多くすることを考え
な け れ ば な ら な い が 、 従 来 の 温 風 乾 燥 で は 所 定 の 水 分 量 (15% 程 度 )ま で 、 約 4 時 間 を 要 し て い
る 。 ま た 、 プ ラ ン ト 機 の 乾 燥 機 に お い て も 40 分 を 要 し て い る の が 現 状 で あ る 。 こ う し た 状 況
下、効率の良い乾燥方法を見出すための検討を行った。
(1)新しい乾燥方式の検討
1)目的
乾燥時間の短縮を試みるため、名古屋市の㈱荒川製作所にてジェットゾーン乾燥機によ
り 、本 素 材 の 乾 燥 に 適 合 す る か ど う か 検 討 す る 。本 乾 燥 機 は 25m/秒 の 風 速 で 温 風 を 吹 き つ
ける方式の乾燥機であり、乾燥時間の大幅な低減が期待される。
2)方法
乾燥テストは以下に示す条件で実施した。
〈乾燥テストの条件〉
○
風 速 : 25m/秒
○
ジ ェ ッ ト ノ ズ ル 開 口 率 : 1.6% (開 口 率 : 乾 燥 機 に 占 め る ノ ズ ル の 本 数 )
○
乾 燥 温 度 200℃
○
素 材 寸 法 : 縦 ×横 ×厚 さ → 180×110×13mm( 石 膏 な し ブ ラ ン ク 素 材 )
縦 ×横 ×厚 さ → 180×120×14mm( 石 膏 入 り 素 材 )
3)結果・考察
グ ラ フ 5 − 3 よ り ジ ェ ッ ト ゾ ー ン 乾 燥 機 に お け る 200℃ で の 乾 燥 時 間 は 石 膏 な し 素 材 で 14
分 程 度 、 石 膏 入 り 素 材 で 22 分 程 度 を 要 し て い る 。 石 膏 を 添 加 し た 場 合 に は 、 添 加 し な い 場
合に比べ8分乾燥時間が延びる結果となった。サンプルの寸法が若干異なっているので、一
概に比較はできないが、石膏粒ボードに試用される糊成分が表面を多い、水分の蒸発を遅ら
せ た た め で は な い か と 推 測 し た 。こ れ ま で に 温 風 乾 燥 で は 4hr、マ イ ク ロ 波 乾 燥 で は 40 分 の
乾燥時間を要したが、今回のジェットゾーン方式では、乾燥時間が大幅に短縮された。しか
し、本素材の外観については、高温条件下での乾燥のためゼラチンの変質やグリセリンの揮
発が生じ、重量の低下や素材表面の硬化が見られた。対策として表面の送風温度を低く設定
するか、蒸気の注入を試みるなどを実施したい。
22
90
200
90
石膏入り含水率
200
180
80
石膏入り表面温度
180
70
160
70
160
60
140
60
140
石膏なし含水率
80
石膏なし表面温度
50
(%)
40
120
(℃)
100
50
(%)
40
120
(℃)
100
30
80
30
80
20
60
20
60
10
40
10
40
20
0
0
0
2
4
6
8
0
グラフ5−2
10 12 14 16 18 20 22
(分)
グラフ5−1
20
2
4
6
8 10 12 14 16 18 20 22
(分)
含水率(%)
石膏素材および石膏なし素材の含水率の推移
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
グラフ5−3
石膏なし
石膏入り
0
2
4
6
8
10 12 14
乾燥時間(分)
16
18
20
22
(4)まとめ
ジ ェ ッ ト ゾ ー ン 乾 燥 機 に よ る 、廃 石 膏 入 り 素 材 の 乾 燥 テ ス ト を 実 施 し た 結 果 、乾 燥 時 間 の
短 縮 が 図 ら れ 、本 乾 燥 機 の 有 為 性 が 明 ら か に な っ た 。今 後 、外 観 の 不 具 合 を 考 慮 し た 新 た な
方法を検討したい。
3−6素材の物性・性能に関する試験および評価
本研究において試作した様々な素材について、外部機関に依頼し、本素材の有する諸物性を
把握するため、分析評価を実施した。以下にこれまで行った試験の種類および試験結果を列記
する。
23
3−6−1
本素材の物性データ取得
(1)本素材の緩衝性能に関する試験
1)目的
本素材の試作品について本素材についての梱包材および緩衝材としての性能を把握する
ため動的緩衝試験および瞬間最大歪の包装設計に関わる試験を実施した。具体的には、石
膏の添加量の違いおよび石膏の種類の違いによる性能比較を行った。さらに、温風乾燥ま
たはマイクロ波乾燥による乾燥工程の影響を比較した。また、本素材に関する引張り強度
や圧縮クリープ等の耐久性を見るためのデータ取得を行った。
2)方法
本製造にて試作した素材について、緩衝材料としての有用性を調べるため、包装・設計
のメーカーである㈱サイデックに依頼し、緩衝特性のデータを取得する。測定方法は、
JIS の Z0235 に 準 拠 し 、本 素 材 の 動 的 緩 衝 試 験 を 行 い 、最 大 加 速 度 − 応 力 曲 線 図 を 作 成
す る 。 ま た 、 財 )化 学 物 質 評 価 研 究 機 構 を 通 じ て 試 作 品 の 物 性 デ ー タ (JISK6767『 発 泡 プ
ラ ス チ ッ ク − ポ リ エ チ レ ン の 試 験 方 法 』 に 基 づ き 測 定 デ ー タ を 取 得 す る 。( 詳 し く は JIS
規 格 を 参 照 さ れ た い 。)
3)結果・考察
動 的 緩 衝 試 験 の 結 果 か ら 作 成 し た 最 大 加 速 度 − 静 的 応 力 曲 線 図 を グ ラ フ 6− 1 − 1 に 瞬
間 最 大 歪 曲 線 を グ ラ フ 6− 1 − 2 に 示 し た 。な お 、グ ラ フ 6− 1− 1 お よ び 2 は 1 回 目 の み
衝 撃 値 か ら 得 ら れ た デ ー タ を プ ロ ッ ト し た も の で あ り 、グ ラ フ 6 − 1 − 3 お よ び 4 は 2∼ 5
回の平均値をプロットした図となっている。また、参考までに緩衝材として広く使われて
い る EPE(発 泡 ポ リ エ チ レ ン )も あ わ せ て 測 定 し た 。グ ラ フ 6− 1− 1 か ら 発 泡 ポ リ エ チ レ ン
は 、 緩 衝 の 特 性 は 最 小 G 値 (谷 の 部 分 )の 絶 対 値 が 50G と 低 く 、 全 体 的 に 低 い G 値 で 推 移
し て お り 、 緩 衝 能 力 が 高 い こ と を 示 し て い る 。 一 方 、 本 試 作 品 で は 最 も よ い デ ー タ (石 膏
0)で も 、 最 小 G 値 が 70G で あ り そ の 差 が 20G ほ ど で あ る 。 さ ら に 、 石 膏 の 添 加 割 合 を 多
く す る に 従 い 緩 衝 の 最 小 G 値 (グラフの 谷 の 部 分 )は 左 に 移 動 し て い る 。 す な わ ち 、 応 力 値 が
低下していることを意味しており、素材の強度が低下していることを表している。この結
果から、緩衝特性は、既存の緩衝材に比べて低く、緩衝材料としてはあまり期待できない
の で は な い か と 思 わ れ る 。 ま た 、 6− 1− 2 の 最 大 瞬 間 歪 に 対 し て は EPE 緩 衝 材 と 同 等 の
歪の傾向を示している。
120
100
80
60
衝撃最大加速度(G値)
140
100
90
80
70
60
50
40
30
20
石膏0
石膏0.5
石膏1
EPE45倍
40
0.001
0.01
0.1
静的応力(Mpa)
0.001
1
グラフ 6−1−1
0.01
0.1
静的応力(Mpa)
瞬間最大歪 (%)
瞬間最大歪曲線(1回目)
最大加速度−静的応力線図(1回目)
石膏0
石膏0.5
石膏1
EPE45倍
1
グラフ 6−1−2
※EPE:発 泡 ポ リエチレン (e xpande d polye thyle ne ) ※45 倍 : 発 泡 倍 率 、 この数 値 が大 きいほど発 泡 倍 率 が高 いことを示 す。
24
ま た 、錘 の 落 下 回 数 2 ∼ 5 回 の 平 均 を 示 し た 図 が 、グ ラ フ 6 − 1 − 3 お よ び 4 で あ る が 、
落 下 を 繰 り 返 す と 素 材 自 体 に に 劣 化 が 生 じ 、EPE を 含 む い ず れ の サ ン プ ル に お い て も 、最
小 G 値 は 低 下 し た 。ま た 、本 素 材 サ ン プ ル で は 、応 力 値 が わ ず か な が ら 左 に シ フ ト す る 傾
向 を を 示 し た 。瞬 間 最 大 歪 (グ ラ フ 6‐ 1− 4)に つ い て は 、1 回 目 の 落 下 と 傾 向 は 変 わ っ て い
ない。
最大加速度−静的応力線図(2∼5回平均)
0.001
0.01
0.1
80
70
石膏0
石膏0.5
石膏1
EPE45倍
60
50
40
石膏0
石膏0.5
石膏1
EPE45倍
30
20
0.001
1
静的応力(Mpa)
瞬間最大歪(%)
100
90
最大衝撃加速度(G値)
250
230
210
190
170
150
130
110
90
70
50
瞬間最大歪曲線(2∼5回平均)
0.01
0.1
1
静的応力(Mpa)
グラフ 6‐ 1− 3
グラフ 6‐ 1− 4
※EPE:発 泡 ポ リエチレン (e xpande d polye thyle ne ) ※45 倍 : 発 泡 倍 率 、 この数 値 が大 きいほど発 泡 倍 率 が高 いことを示 す。
一方、石膏の種類及び乾燥条件の違いについては、動的緩衝試験の結果から作成する
最 大 加 速 度 − 静 的 応 力 曲 線 図 を グ ラ フ 6− 1 − 5、7 に 、瞬 間 最 大 歪 曲 線 を グ ラ フ 6− 1− 6、
8 に 示 し た 。 な お 、 グ ラ フ 6− 1 − 5 お よ び 6 は 1 回 目 の み 衝 撃 値 か ら 得 ら れ た デ ー タ を
プ ロ ッ ト し た も の で あ り 、 グ ラ フ 6 − 1 − 7 お よ び 8 は 2∼ 5 回 の 平 均 値 を プ ロ ッ ト し た
図となっている。
ま た 、 比 較 デ ー タ と し て EPE(発 泡 ポ リ エ チ レ ン )も あ わ せ て 測 定 し た 。 グ ラ フ 6− 1− 5
を み る と 発 泡 ポ リ エ チ レ ン は 、緩 衝 の 特 性 は 最 小 G 値 (谷 の 部 分 )の 絶 対 値 が 50G と 低 い が 、
本素材は石膏の種類(廃石膏、新石膏)および添加の有無にかかわらず、ややばらつきは
認 め ら れ る が 、 60G 程 度 の G 値 を 示 し て い る 。 こ れ ら か ら 、 緩 衝 G 値 の 絶 対 値 で は EPE
に及ばないものの、谷の部分の傾向が一致しており、類似の緩衝特性を示すものと予想さ
れる。
最 大 瞬 間 歪 に 対 し て は グ ラ フ 6− 1− 6 を 見 る と 、線 の 傾 き が EPE 緩 衝 材 と 同 等 で あ り 、
同じような歪傾向を示した。
最大加速度-静的応力線図(1回目)
瞬間最大歪(%)1回目
120
100
80
60
新石膏MW品
新石膏温風品
廃石膏MW品
EPE45倍
衝撃最大加速度(G値)
新石膏 MW品
新石膏 温風品 180
廃石膏 MW品 160
EPE 45倍
140
0.010
0.100
静的応力(MPa)
90
80
70
60
50
40
30
20
10
40
0.001
100
瞬間最大歪(%)
200
0
1.000
0.001
グラフ 6‐ 1− 5
0.010
0.100
応力N/cm2
1.000
グラフ 6‐ 1− 6
※EPE:発 泡 ポリエチレン( expande d polye th ylene) ※45 倍 : 発 泡 倍 率 、この 数 値 が大 きいほど発 泡 倍 率 が高 いことを示 す。
25
一方、錘の落下回数2∼5回の平均データについては、落下の繰返しにより素材自体が
劣 化 し た た め に 、い ず れ の サ ン プ ル に お い て も G 値 は 低 下 し た 。ま た 、本 素 材 サ ン プ ル で
は 、 瞬 間 最 大 歪 (グ ラ フ 6− 1− 8)に つ い て は 、 1 回 目 の 落 下 と の 差 は 見 ら れ な か っ た 。
瞬間最大歪(%)2∼5回平均
200
180
160
140
120
100
80
60
100
新石膏MW品
新石膏温風品
廃石膏MW品
EPE45倍
衝撃最大加速度(G値)
新石膏 MW品
新石膏 温風品
廃石膏 MW品
EPE 45倍
90
80
70
60
50
40
30
20
10
40
0.001
0.010
0.100
静的応力(MPa)
瞬間最大歪(%)
最大加速度-静的応力線図(2∼5回平均)
0
0.001
1.000
グラフ 6‐ 1− 7
0.010
0.100
応力(N/cm2)
1.000
グラフ 6‐ 1− 8
※EPE:発 泡 ポリエチレン( expande d polye th ylene) ※45 倍 : 発 泡 倍 率 、この 数 値 が大 きいほど発 泡 倍 率 が高 いことを示 す。
表 6− 1− 1 に 試 作 品 の 種 々 の 物 性 値 を 記 載 し た 。こ れ に よ る と 、石 膏 を 入 れ る こ と に よ
り、素材の伸び率、引裂き強度、反発弾性率の数値が低下している。これについては、石
膏をいれることで、古紙繊維の結びつきがむしろ、阻害されているのではないかと推測さ
れる。一方、見かけ密度、圧縮強度、永久圧縮歪などの数値は増加している。見かけ密度
は、石膏の分だけ増えるのは当然だといえるが、加圧時の耐久性については石膏の特性に
よるものと評価できる。
表 6−1−1
素 材 の物 性 試 験 ((財 )化 学 物 質 評 価 研 究 機 構 の測 定 による)
見 かけ密 度 (g/cm3)
引 張 強 度 (N/cm2)縦 方 向
引 張 強 度 (N/cm2)横 方 向
引 張 り伸 び率 (%)縦 方 向
引 張 り伸 び率 (%)横 方 向
引 裂 強 度 (N/cm)縦
引 裂 強 度 (N/cm)横
反 発 弾 性 率 (%)
圧 縮 強 度 (N/cm2)
永 久 圧 縮 歪 (%)
熱 伝 導 率 (W/m・K)
ブランク品 (石 膏 なし)
石 膏 入 り素 材
0.10
44.9
23.4
6
7
16.4
12.8
25
2.43
42
0.043
0.15
50.2
17.5
5
4
11.1
7.9
16
5.57
67
0.050
さらに、表6−1−2の圧縮クリープテストにおいて、石膏入りの素材のクリープ歪は
cm2 あ た り の 6・86N の 荷 重 に 対 し て 、50% 程 度 で 、石 膏 な し と 比 較 す る と 20% 程 度 少 な
い歪率となっている。これにより、石膏をいれることで長時間の加圧に対して、強度保持
が成されるものと期待できる。
26
表 6−1−2
圧 縮 クリープ試 験 ((財 )化 学 物 質 評 価 研 究 機 構 の測 定 による)
試 料
ブランク品 (石 膏 なし)
石 膏 入 り素 材
クリープ歪
面積荷重
面積荷重
面積荷重
面積荷重
面積荷重
面積荷重
(%)
2.94N/cm 2 4.90N/cm 2 6.86N/cm 2 2.94N/cm 2 4.90N/cm 2 6.86N/cm 2
放置時間
1 時 間 後 (1hr)
34.8
49.2
60.7
11.0
21.2
37.9
1 日 後 (24hr)
47.0
55.7
65.5
18.3
32.4
44.7
4 日 後 (96hr)
54.5
61.4
69.9
26.0
38.3
49.4
7 日 後 (168hr)
55.8
62.7
70.4
28.1
39.9
50.5
4 )ま と め
本素材の種々の物性評価から石膏を添加した場合のメリットとして圧縮クリープの性能
が向上することが分かった。これにより石膏を添加すれば、継続的加重に対しては、強度
保持が可能と判断される。一方デメリットな点として、落下テストによる緩衝特性では新
石膏では特に影響は見出せないが、廃石膏を用いた場合には緩衝特性が低減されてしまう
ことから、梱包材料としては用途が制限されうることを確認した。
(2)本素材の環境への影響調査および新用途利用のための性能試験
1)目的
本素材の廃棄時における環境に及ぼす影響を把握するため、オフガス試験および溶出
試験、蛍光物質についての試験を実施し、有害物質の含有量を調べる。また、本素材の
新たな用途を探る上で必要な性能を見出すため、エチレンガス吸着、遠赤外線効果等の
試験を実施する。
2)方法
本素材の試験方法については、下記の各々の試験の該当箇所に記載した。
3)結果
結果は下表に示すとおりである。
〈溶出試験およびオフガスについて〉
試験方法は溶出試験の硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、アンモニウムイオンに
つ い て は 、 イ オ ン ク ロ マ ト グ ラ フ 法 、 鉛 、 カ ド ミ ウ ム に つ い て は ICP 発 光 分 光 分 析 法 、 ホ
ルムアルデヒドについては、アセチルアセトン吸光光度法、砒素については水素化物発生
原 子 吸 光 法 に よ っ た 。 ま た 、 溶 出 方 法 は 、 昭 和 48 年 環 境 庁 告 示 第 13 号 に よ っ た 。 ま た 、
オフガス試験については、亜硫酸ガス、二酸化窒素、アンモニア、塩化水素についてはイ
オンクロマトグラフ法、硫化水素はガスクロマトグラフ法、ホルムアルデヒドについては
AHMT 吸 光 光 度 法 、塩 素 ガ ス に つ い て は 、o-ト リ ジ ン 吸 光 光 度 法 に よ っ た 。前 処 理 と し て は 、
素 材 約 20g を 10L の テ ド ラ ー パ ッ ク に い れ 、純 空 気 を 充 填 し 、60℃ 24 時 間 放 置 後 の 空 気 を
吸収液に吸収させた。
27
表 6−1−3 素 材 のオフガス試 験
定量
(単 位 :μg/50g)
下限
亜 硫 酸 ガス(SO2)
50
硫 化 水 素 (H2S)
5
二 酸 化 窒 素 (NO2)
50
アンモニア(NH3)
10
塩 化 水 素 (HCl)
5
塩 素 ガス(Cl)
25
ホルムアルデヒド(HCHO)
20
ブランク品 (石 膏 なし)
石 膏 入 り素 材
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
表 6−1−4 素 材 の溶 出 試 験
(単 位 :μg/50g)
定量
下限
ブランク品 (石 膏 なし)
石 膏 入 り素 材
硫 酸 イオン(SO4 2 − )
硝 酸 イオン(NO3 − )
塩 化 物 イオン(Cl − )
アンモニウムイオン(NH4 + )
ホルムアルデヒド(HCHO)
鉛 (Pb)
カドミウム(Cd)
砒 素 (As)
500
500
200
500
500
500
50
50
260000
900
5800
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
3600000
900
5400
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
試験の結果については、オフガス試験ではすべての対象ガス成分で不検出であった。ま
た、溶出試験においては、硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオンが検出されたが、これ
らは、石膏およびミョウバン由来の硫酸イオンによるものである。硝酸イオンの由来は明
確 で は な い が 、塩 素 に つ い て は 古 紙 に 含 ま れ る 漂 白 剤 な ど に よ る も の と 考 え ら れ る 。ま た 、
カドミウム、鉛、砒素等の特に環境に悪影響をもたらす成分については検出されない。
〈蛍光物質試験の結果について〉
結果を表6−1−5に示した。
表 6−1−5 蛍 光 物 質 試 験
1 回目
2 回目
3 回目
廃 石 膏 なし温 風 品
溶 出 する
溶 出 する
溶 出 する
廃 石 膏 入 り温 風 品
溶 出 せず
溶 出 せず
溶 出 せず
廃 石 膏 なし MW 品
溶 出 する
――――
――――
廃 石 膏 入 り MW 品
溶 出 せず
――――
――――
サンプル名
蛍 光 物 質 を使 用 した 器 具 また は容 器 包 装 の 検 査 法 について( 昭 和 46 年 環 食 第 244 号 ) に準 じて試 験 した。溶 出 割 合 : 見
かけの表 面 積 1cm2 あたり 2m l
蛍光物質試験については、素材の安全性を調べるために測定したもので、特に内装材と
して使用した場合に幼児等の口から体内に摂取され得る場合を想定したものである。結果
として、石膏なしの場合で溶出との結果であった。
28
〈エチレンガス吸着試験の結果について〉
結果を表6−1−6に示した。
表 6−1−6 エチレンガス吸 着 試 験
経過時間
サンプル名
10 分 後
1時 間 後
3時 間 後
5 時間後
24 時 間 後
48
47
47
47
47
47
48
49
49
49
48
47
47
47
47
51
50
50
50
49
ブランク素 材
MW 品
廃 石 膏 入 り素 材
温風品
新 石 膏 入 り素 材
MW 品
空試験
初 期 条 件 : ガ ス濃 度
約 50 ppm
エ チ レ ン ガ ス 吸 着 試 験 に つ い て は 、 初 期 濃 度 50ppm の エ チ レ ン ガ ス 雰 囲 気 下 に お い て
本素材がどの程度、ガス吸着の効果を有するかを確認するために、実施した。しかしなが
ら、吸着効果はほとんどないことが、明らかとなった。濃度についてはガスクロマトグラ
フにて分析した。
〈遠赤外線放射率の結果について〉
結 果 に つ い て グ ラ フ 6− 1− 9 に 示 す と お り で あ る
グラフ 6−1−9
測定法としては黒体(炭素)と試料を同一温度に保ち、フーリエ変換赤外分光光度計に
よ り 、黒 体 と 試 料 と の 遠 赤 外 線 放 射 強 度 測 定 し 、そ の 比 率 か ら 放 射 率 を 求 め る も の で あ る 。
なお、グラフの縦軸は、放射輝度で放射源の微小面からある方向への放射強度をその方向
へ の 正 射 影 面 積 で 割 っ た 値 を 示 す も の で あ る (単 位:
W ・sr - 1 ・cm - 2 )。横 軸 は 波 長 (24 ㎛ ま
で )を 示 し て い る 。
測 定 の 結 果 は 、本 素 材 は 黒 体 と 比 較 し 60% の 放 射 率 で あ り 、特 に 有 効 な 遠 赤 外 線 を 放 射
29
してはいないとのことであった。
4)まとめ
環 境 に 対 す る 影 響 を 知 る う え で 、本 試 作 品 の 溶 出 試 験 お よ び オ フ ガ ス 試 験 を 実 施 し た が 、
オフガス試験ではすべての対象ガス成分で不検出であり、溶出試験においては、硫酸イオ
ン、塩化物イオンが検出されたが、これらは、本素材の原料である石膏およびミョウバン
由来の成分である。一方、カドミウム、鉛、砒素等の重金属成分については、検出されな
いことから、環境に対する安全性が確認された。
一方、蛍光物質試験は食品衛生法上の試験ではあるが、建材(内装材)の子供・幼児等
への安全性評価の試みとして今後有用なデータと考える。
また、エチレンガス吸着効果および遠赤外線放射効果は、残念ながら認められない結果
であった。
3−6−2
試作品の実用化に関する試験
1)目的
本 素 材 が 建 材 の 内 装 材 と し て 利 用 さ れ る 場 合 に つ い て 、具 備 す べ き 条 件 を 検 討 す る た め 、
難燃性および調湿性について評価を実施した。
2)方法
日東紡技術本部および㈱ハイウッドの協力を得て難燃性については、コンカロリーメー
タ に よ る 発 熱 性 試 験 、調 湿 性 に つ い て は 、調 湿 能 力 試 験( HCC:humidity control capacity)
を行う。難燃性の規格については下表に示す通りである。
表 6−2−1
難 燃 性 について
・総 発 熱 量 が8MJ/㎡以 下 であること
難 燃 性 の規 格
・200KW/㎡超 過 継 続 時 間 が 10 秒 以 下
・裏 面 に達 する亀 裂 及 び貫 通 穴 のないこと
3)結果・考察
〈日東紡技術本部による難燃性テストの結果ついて〉
結果を表6−2−2に示す。
表 6−2−2
試
コーンカロリーメータ試 験 結 果
験
難 燃 性 能 (5 分 加 熱 )
試験体種類
試
料
数
石 膏 なし
廃 石 膏 35.5%配 合
新 石 膏 35.6%配 合
①‐1
①‐2
②‐1
②‐2
③‐1
③‐2
大 きさ(mm)
99×99
99×99
99×99
99×99
99×99
99×99
厚 さ(mm)
9.3
10.1
8.7
8.8
9.7
10.1
質 量( g )
10.4
10.9
16.1
15.1
16.2
16.4
200KW/m 2 超 過
継 続 時 間 (秒 )
9.7
9.5
0.0
0.0
2.7
1.5
30
総発熱量
(MJ/m 2 )
最高発熱速度
(kW/m 2 )
裏 面 に達 する亀 裂
15.9
16.9
14.1
14.1
14.8
15.2
281.3
272.5
183.4
194.3
204.9
202.9
あり
あり
あり
あり
あり
あり
表 の 記 載 に あ る よ う に 、総 発 熱 量 が 15MJ/m2 程 度 あ り 、規 格 値 で あ る 8MJ/m2 の 2 倍 の デ ー タ
と な っ た 。 ま た 、 裏 面 に 達 す る 亀 裂 (写 真 参 照 )が 見 ら れ た 。 こ の こ と か ら 、 石 膏 の 添 加 の 有 無
に関わらず、難燃性の評価基準には達しないことが分かった。
石膏なし試験前
石膏なし試験後
廃石膏入り試験前
廃石膏入り試験後
〈ハイウッド㈱による調湿性能テストの結果について〉
下 表 に 示 す と お り 、 廃 石 膏 入 り 素 材 の 調 湿 能 力 は 17.7 で あ り 、 石 膏 な し (ブ ラ ン ク 素 材 )の
数 値 の 12.1 と 比 較 す る と 、5.6 程 度 上 回 る 結 果 と な っ た 。し か し な が ら 、長 時 間 の 高 湿 度 雰 囲
気下で、表面に濡れが生じる問題があるため、今後の対策が必要と思われる。
表 6−2−3
石 膏 入 り素 材 の調 湿 性 能 評 価
含 水 率 (%):[水 分 重 量 /乾 燥 試 料 重 量 ]×100
石 膏 なし素 材 (ブランク)
90%RH=15.8
55%RH=3.7
HCC=12.1
廃 石 膏 入 り素 材
90%RH=22.7
55%RH=5.0
HCC=17.7
注)
調 湿 能 力 試 験 (HCC)は試 料 を 110℃で 4 時 間 乾 燥 させたのち、相 対 湿 度 90%時 の試 料
の含 水 率 から 50%時 の含 水 率 を引 いた値 として求 める。
31
18.0
17.0
16.0
含水率 [水分重量/乾燥試料重量] ×100
15.0
14.0
13.0
12.0
11.0
10.0
9.0
8.0
7.0
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
グラフ 6−2−1
1.0
0.0
0
1
2
3
4
5
経過時間 [ h ]
6
7
8
9
発泡シート(紙のみ)HCC曲線
26
24
含水率[水分重量/乾燥試料重量]×100
22
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
グラフ 6−2−2
0
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20 22 24 26
経過時間 [ h ]
28
30
32
34
36
38
40
42
44
発泡シート(石膏)HCC曲線
(4)まとめ
本素材が内装材に利用される場合を想定して、難燃性および調湿性について検討したが、難
燃性については、所望の結果は得られなかった。石膏以外にホウ素系の難燃剤等の配合が有用
との情報を教えていただいた。また、調湿性能については。石膏の添加した効果が見られた、
今後、長時間の高湿度条件下での対策が必要と思われる。
3−6−3
分析評価
分析評価については、昨年に引き続いて弊社の宮城野研究室および東北大学工学部の協力を
32
頂き、燃焼実験および残渣分析を行ったので報告する。次頁以降を参照されたい。
=古 紙 とリサイクル石 膏 を用 いた軽 量 新 素 材 の開 発 =
古 紙 −廃 石 膏 系 新 素 材 の燃 焼 に関 する基 礎 検 討
【実 験 目 的 】
現 在 開 発 中 の古 紙 ‐廃 石 膏 系 新 素 材 を廃 棄 物 として焼 却 処 分 する際 、石 膏 の分 解 により硫 黄 酸 化 物
が生 成 することが考 えられる。硫 黄 酸 化 物 は大 気 汚 染 防 止 法 でその排 出 が規 制 されており、また燃 えが
らを最 終 処 分 する場 合 、その安 全 性 が確 保 されなければならない。このことから、今 回 、古 紙 −廃 石 膏
系 新 素 材 の燃 焼 及 び適 切 な処 理 方 法 に関 する基 礎 的 知 見 を得 ることを目 的 に実 験 した。
【石 膏 パルフォームの熱 分 解 反 応 】
通 常 、石 膏 ボードに使 用 される石 膏 は二 水 石 膏 であり、加 熱 に伴 って脱 水 転 移 し1100℃以 上 の高 温 で
なければ熱 分 解 は起 こらない。しかし、石 膏 パルフォームの場 合 は古 紙 と混 合 しているため、古 紙 中 の有
機 物 の燃 焼 により生 成 する炭 素 化 合 物 の影 響 が考 えられ、
CaSO 4 + 2C = CaS + 2CO 2
2CaSO 4 + C = 2CaO + 2SO 2
CaSO 4 + CO = CaO + SO 2
+ CO 2
+ CO 2
CaSO 4 + 2CO + H 2 O = CaO + 2CO 2
+ H2S
といった反 応 が低 温 で起 こることが予 想 される。
その反 応 の模 式 図 を図 1に示 す。
H2O
H2O
CaSO 4 ・2H 2 O
SO 3=SO 2 +1/2O 2
CaSO 4
CaSO 4 ・1/2H 2 O
CaO
C,CO
C,CO
CO 2
CO 2
H2O
CaS
H2S
CaO
O2
SO 2
O2
SO 2
図 1 石 膏 燃 焼 時 の反 応 模 式 図
33
CaO
【実 験 方 法 1】
燃 焼 時 の SOx生 成 量 及 び残 さの性 状 に関 する検 討 を、電 気 炉 を用 いた実 験 によって行 った。装 置 図
を図 2に示 す。
試 料 100mgをアルミナボートに載 せ、石 英 反 応 管 入 り口 に設 置 する。電 気 炉 が所 定 温 度 に達 したら、
試 料 を石 英 反 応 管 内 の均 熱 部 に挿 入 し、所 定 条 件 (雰 囲 気 、温 度 、時 間 )で燃 焼 する。このときに生 成
するSOxをH 2 O 2 水 でSO 4 2 − としてトラップし、燃 焼 終 了 後 、反 応 管 を冷 却 しながらさらに 10 分 間 ガスを流
した。このSO 4 2 − をイオンクロマトグラフで定 量 した。全 ガス流 量 を 100ml/min、空 気 雰 囲 気 時 は窒 素 :
酸 素 =8:2と設 定 した。また、水 蒸 気 雰 囲 気 実 験 時 はガスの配 管 を温 浴 側 に切 替 え、40℃の温 水 をバ
ブリングさせて水 蒸 気 を発 生 させた。 また、このときの残 さをX線 回 折 装 置 で定 性 した。
石英反応管
フローメーター
電気炉
シリコン栓
リボンヒーター
リボンヒーター
サンプル
アルミナボート
N
H2O2水
ホットスターラー
温度計
図2 燃焼実験装置図
【実 験 結 果 1】
燃 焼 実 験 の実 験 結 果 を表 1に、表 1中 の①∼④について残 さのX線 回 折 の結 果 を図 3に示 す。
廃 石 膏 、パルフォーム(添 加 剤 にゼラチン、PVAを使 用 したもの)とも燃 焼 してもほとんどSOxの生 成 が
みられなかった。石 膏 パルフォームは添 加 剤 の種 類 に関 係 なく、燃 焼 温 度 を上 げるとSOx生 成 量 が多 くな
る傾 向 が見 られ、石 膏 パルフォーム(ゼラチン)を1000℃で燃 焼 したものが最 大 分 解 量 を示 した。これをサ
ンプル中 のS量 からのSO 2 転 化 率 に換 算 すると21.7%となり、弊 社 エコミュージアム21の焼 却 炉 で焼 却 す
る場 合 、図 10より投 入 量 を20kg/h以 下 にすればSOxの排 出 基 準 値 以 下 で処 理 可 能 である。また、初
期 温 度 を800℃とし1000℃まで昇 温 することにより(表 1の№17)、先 に有 機 物 が燃 焼 してしまうためSOx
生 成 量 を抑 制 することができた。したがって、実 際 に大 量 処 分 する場 合 には焼 却 炉 入 り口 での温 度 制 御
が重 要 となる。
窒 素 雰 囲 気 での燃 焼 実 験 (№18)では、空 気 雰 囲 気 時 と比 較 してSO 2 生 成 量 が少 なかった。この残 さ
のX線 回 折 を見 ると(③)CaSが生 成 していることがわかる。この後 空 気 雰 囲 気 に切 替 えた実 験 結 果 (№1
9、④)は通 常 の空 気 雰 囲 気 実 験 と同 様 であることから、二 次 燃 焼 室 で完 全 燃 焼 させることでCaSの生 成
をふせぐことができる。 水 蒸 気 雰 囲 気 実 験 は、水 蒸 気 を導 入 しないものとほぼ同 様 の結 果 となり、水 蒸
気 の影 響 は見 られなかった。
34
表1 燃焼実験結果
№
サンプル
1
2①
3
雰 囲 燃 焼 温 度 燃 焼 時 SO 4 2 - 測 定 濃 度 SO 2 発 生
気
(℃)
間
(ppm/L;液 量 0.2 量 (mg−
(min)
L)
S)
空気
6
7
10
900
廃石膏
4
5
1000
パルフォー
ム
(ゼラチン)
8 石膏
9② パ ル フ ォ ー
10 ム
900
40
800
10
12
13
0.01
0.05
0.12
0.01
0.04
N.D.
N.D.
0.00
0.11
0.007
0.04
1000
1.26
0.08
-
900
1.16
0.08
-
800
0.43
0.03
-
1000
21.6
1.44
21.7
900
6.58
0.44
6.63
800
3.07
0.20
3.09
パルフォー
ム
(PVA)
1000
0.13
0.01
0.00
900
0.23
0.02
0.00
800
14 石 膏
15 パ ル フ ォ ー
16 ム
(PVA)
17
率 (%)
0.14
(ゼラチン)
11
SO 2 転 化
N.D.
N.D.
0.00
1000
19.7
1.31
19.7
900
3.61
0.24
3.61
800
1.19
0.08
1.19
空気
800→
1000
800 ℃ ; 5
昇温;9
1000 ℃ ;
5
2.86
0.19
2.88
10
1.54
0.10
1.55
18
窒素
③ 石膏
9④ パ ル フ ォ ー 窒 素
ム
→空
(ゼラチン)
気
800
800 窒 素 10
空 気 10
3.36
0.22
3.38
20
空気
水蒸
気
800
10
3.88
0.26
3.91
21
窒素
水蒸
気
800
10
1.46
0.10
1.47
35
④
③
②
①
CaSO 4
CaS
図 3 X線 スペクトルの比 較
【実 験 方 法 2】
TG/DTA−MS 同 時 測 定 装 置 を用 いて熱 重 量 測 定 及 び示 差 熱 分 析 を行 った。
He 雰 囲 気 、昇 温 時 間 を各 パルフォームサンプル10℃/min、廃 石 膏 5℃/min とし、800℃まで昇 温 し
た際 の重 量 と示 差 熱 の経 時 変 化 を測 定 した。同 時 に MS スペクトルを測 定 して生 成 したガスの定 性 分 析
を行 い、その結 果 から、重 量 変 化 及 び熱 変 化 が起 こった温 度 でどのような反 応 が起 きたのか推 測 した。
【実 験 結 果 2】
TG/DTAの結 果 を図 4、5にMSスペクトルを図 6∼8に示 す。廃 石 膏 は約 150℃で水 和 水 が取 れただ
けで分 解 は起 こらなかった。パルフォーム、石 膏 パルフォームは、ともに 380℃付 近 で重 量 減 少 、発 熱 反
応 が起 こり、MSで 18、28、44 のピークが検 出 されていることから、パルフォームの有 機 分 が熱 分 解 して
H 2 O、CO、CO 2 が生 成 していることが推 察 される。また、実 験 1の燃 焼 実 験 で検 出 されたSOxの生 成 が
みられなかった。これは、サンプル量 が少 なく、燃 焼 温 度 も 800℃までであったため、SOxが検 出 されるま
でにいたらなかったと考 えられる。
石 膏 パルフォームでは約 150℃で18のピークが検 出 されており、石 膏 パルフォーム中 の石 膏 も無 水 石
膏 に転 移 していることが分 かった。
15
100
廃石膏
80
10
石膏パルフォーム(ゼラチン)
DTA〔μV〕
TG〔%〕
5
60
石膏パルフォーム(ゼラチン)
40
石膏パルフォーム(PVA)
パルフォーム(ゼラチン)
0
48
142
196
251
307
363
419
476
532
589
645
251
307
363
419
475
532
廃石膏
0
90
196
-10
パルフォーム(PVA)
50
142
-5
パルフォーム(ゼラチン)
20
90
-15
701
Temp〔℃〕
Temp〔℃〕
図 4 TG 曲 線 の比 較
図 5 TDA 曲 線 の比 較
36
588
644
700
【結 言 】
以 上 の結 果 から、次 のことが分 かっ
た。
1)
廃 石 膏 は 1000℃程 度 の高 温
ion
で燃 焼 しても分 解 しない。
2)
パルフォームは高 温 で燃 焼 し
て も SO x を 微 量 し か 生 成 せ ず 、
ion
28.0
焼 却 炉 で焼 却 することができる。
3)
ion
石 膏 パルフォームは空 気 雰 囲
気 で燃 焼 しても SOxを生 成 する。
焼 却 時 は燃 焼 温 度 800℃で
図 6 廃 石 膏 の分 子 イオンピーク
焼 却 量 を 150Kg/h以 下 に
すれば規 制 値 以 下 で処 理 する
ことができる。
4)
石 膏 パ ルフ ォ ーム は 窒 素 雰 囲 気
ion
で燃 焼 するとCaSを生 成 する。CaS
を含 有 する廃 棄 物 が水 と接 触 する
ion
と H 2 Sが発 生 するため、二 次 燃 焼
室 で 完 全 燃 焼 さ せ CaS を 生 成 さ せ
ion
ないことが肝 要 である。
5)
ion
ion 46.0、64.0
水 蒸 気 は10%程 度 であれば影
響 しない。
図 7 パルフォーム(ゼラチン)の分 子 イオンピーク
したがって、弊 社 産 業 廃 棄 物 処 理
施 設 エコミュージアム21で、通 常 ど
おりに処 分 すれば硫 黄 酸 化 物 を生
ion
成 せずに処 理 することが可 能 である
ことが示 された。焼 却 の際 には、燃
ion
焼 温 度 、焼 却 物 の種 類 、焼 却 物 量 、
空 気 量 に十 分 に注 意 し、安 全 に
ion
処 理 することが絶 対 条 件 である。
ion
ion
46.0 、
図 8 石 膏 パルフォーム(ゼラチン)の分 子
イオンピーク
37
以 下 に、エコミュージアム21の焼 却 処 理 フロー図 と、予 想 硫 黄 酸 化 物 生 成 量 の計 算 式 を示 す。
【エコミュージアム21 焼 却 処 理 フロー】
図 9 エコミュージアム21 焼 却 処 理 フロー
【SOx生 成 量 計 算 式 】
Sc (焼 却 物 中 の S 量 )〔Kg/h〕 = W (サンプル焼 却 量 )〔Kg/h〕 × Sp (サンプル中 の S 含 有
量 )〔%〕
SOx 〔Nm 3 /h〕
SOx 〔ppm〕
= Sc〔Kg/h〕 / 32 × 22.4
= SOx〔Nm 3 /h〕 / Gd (乾 きガス量 )〔Nm 3 /h〕
× 10 6
Gd:焼 却 炉 メーカー計 算 の一 般 的 な産 廃 燃 焼 時 の値 7213〔Nm 3 /h〕。石 膏 パルフォーム燃 焼 に伴 う
排 ガス
量 の増 加 は無 視 する。
38
【最 大 排 出 量 計 算 式 】
q (硫 黄 酸 化 物 量 )〔Nm 3 /h〕
= K × 10 − 3 × He 2
K:大 気 汚 染 防 止 法 で定 める値 仙 台 市 宮 城 野 区 7
He:有 効 煙 突 高 〔m〕 メーカー計 算 値 16.4
∴q=1.88〔Nm 3 /h〕 ≒ 260〔ppm〕
← バグフィルターにより 80%除 去 後 の値
バグフィルター入 り口 : 260 /(1−0.8) = 1300〔ppm〕
一 般 的 な産 廃 燃 焼 時 の SOx生 成 量
1.66〔Nm 3 /h〕 ≒ 230〔ppm〕
(二 次 燃 焼 室 出 口 )
これより石 膏 パルフォーム焼 却 時 の SOx
150.0
石膏パルフォーム焼却量
許容量は
−
230 〔 p p m 〕
20kg/h
=
1070〔ppm〕
しかし、バグフィルターが機 能 しない場 合
を考 え、
⊿CSO2(ppm)
1300 〔 p p m 〕
100.0
10kg/h
50.0
260〔ppm〕 − 230〔ppm〕 = 30〔ppm〕
最大排出量
5kg/h
これを最 大 排 出 量 とした。
この最 大 排 出 量 を、石 膏 パルフォーム
0.0
0
(ゼラチン)焼 却 時 の SOx生 成 量 試 算 値
の図 に示 した。
20
40
60
SO2転化率(%)
80
図 10 石 膏 パルフォーム(ゼラチン)焼 却 時 の
SOx 生 成 量 試 算 値
39
100
3−7
本素材の用途に関する調査報告
本素材の用途調査を実施したので、新たにこの項目を設け報告する。
〈目的〉
本研究開発によって得られた軽量素材に類似する製品の用途(主に建材メーカーの市場構成
と代表的な商品アイテム)の調査を行い、商品化及び事業化の見通しの検討をした。
結果について、表7−1に示す。
表 7−1
市場構成
大 手 メーカー安 定 型
専 門 メーカー安 定 型
競争開始型
成 熟 市 場 シェア安 定 型
競 争 激 化 への移 行 型
地域産業優勢型
下 位 メーカー
競争激化型
商 品 アイテム
石 膏 ボード
アルミサッシ
アルミ玄 関 ドア
新生瓦
雨樋
グラスウール
ロックウール
押 出 発 泡 ポリスチレン
セルロースファイバー
単 板 ガラス、複 層 ガラス
シャッター雨 戸
ALC
断 熱 アルミサッシ
断 熱 玄 関 ドア
電 動 シャッター雨 戸
屋 根 材 一 体 型 ソーラー発 動 システム
システム収 納 、床 下 収 納 箱
可動間仕切り
クッションフロア
ロールスクリーン
内 容 タイル
スチール製 玄 関 ドア
木 製 玄 関 ドア
壁 クロス
畳 (床 )材
樹 脂 サッシ
天窓
金 属 屋 根 材 (アルミ)
ガーデンデッキ
室 内 ドア
地下室
造下室
粘土瓦
木 質 パネル
窯 業 系 サイディング材
カーボート
クローゼット扉
玄関収納
階 段 ユニット
40
木質床材
タフテッドカーペット
カーテン
硬 質 ウレタンフォーム
木 製 サッシ
金属製屋根材
市場規模や伸長率、商品の価格動向と共にメーカーシェア構造によって分析すると、市場特
性は次のとおりである。
1. 大 手 メ ー カ ー シ ェ ア 安 定 型
住宅建材の大手総合メーカーの力が圧倒的に強くシェアの大半を占めている。
新規参入も難しく上位メーカーの事業戦略によって市場の方向性が決定づけられる。
2. 専 門 メ ー カ ー 安 定 型
専門メーカーがシェアの大半を占めている構造。
特別な開発技術を要する商品が多い為、住設建材メーカーの大手でも参入は難しい。
市場の伸縮にかかわらず大きなシェア変動が起こる可能性は少ないと予測。
3. 競 争 開 始 型
現在では上位メーカーのシェアが高いものの今後参入する会社も増えると予測。
シェア争いは厳しくなる。
4. 成 熟 市 場 シ ェ ア 安 定 型
市場の推移・業績は安定している。細かいニーズの開拓により多少の変動が起こる。
5. 競 争 激 化 へ の 移 行 型
市場での要因によっては競争激化の可能性も大。新規参入もあり得る。
6. 地 域 産 業 優 勢 型
地 場 メ ー カ ー が 高 い シ ェ ア を 持 つ 。し か し 大 手 メ ー カ ー の 浸 透 に よ り 地 場 メ ー カ ー は 衰 退 可
能性大。
7. 下 位 メ ー カ ー
顧客に選定されたメーカーのみ生き残られると予想。安定した市場動向の商品が多い。
8. 競 争 激 化 型
大手メーカーと肩を並べるようなシェア構造により価格競争に対応できるメーカー、付加
価値商品を作り出すメーカーのみ勝ち組みメーカーとなる。
〈結果・考察〉
本素材の商品化及び事業化の可能性を狙った場合に住宅用建材商品という大きな枠での市場
特性については、市場規模や商品価格の動向とメーカーシェア構造によって簡易的ではあるが
市場分析が可能である。
大手メーカーシェアの上位での商品アイテムは、石膏ボード、アルミサッシ、アルミ玄関ド
ア等々があり、特性としては住宅建材の大手総合メーカーの力が圧倒的に強くシェアの大半を
占め、上位メーカーの事業戦略によって市場の方向性が決定づけられる為、新規参入は大変困
難であると判断した。
専門メーカーシェアでの商品アイテムは、グラスウール、ロックウール、押出発泡ポリスチ
レン、セルロースファイバー等々があり、特性としては専門メーカーがシェアの大半を占めて
41
いる構造となっており特別な開発技術を要するアイテムが多い為、住設建材メーカーの大手と
いえども参入は難しく、市場の伸縮にかかわらず大きなシェア変動が起こる可能性は少ないと
考えられる。よってこの分野についても新規参入は困難と判断した。
市場構造の中で唯一検討余地があると思われる分野は競争激化している市場である。
商品アイテムは、木質床材、硬質ウレタンフォーム等々があり、物性面や機能面では同等な競
争が可能だが、価格競争の進んでいる商品である為簡単に参入出来るとは考えにくい。但し、
価格と付加価値のバランスが取れている商品や他社にないコンセプトを持つ商品の開発が可能
であれば参入も可能と推測する。
〈まとめ〉
当該研究開発で創り上げた素材に置き換えると、この「古紙とリサイクル石膏の商品」は環
境を重視した商品であるというコンセプトは持っていると自負出来るものの、価格面では市場
価 格 の 3 倍 ∼ 5 倍 と な り 、今 後 コ ス ト ダ ウ ン を 進 め て も 競 争 出 来 る 価 格 に 到 達 困 難 で あ り 、又 、
価格と付加価値とのバランスが合致しない状態である為、市場参入は難しいと判断した。
4.技術開発成果の概要
平成14年度の研究開発成果としては、廃石膏ボードより分別された廃石膏を原料とし、
廃石膏を含んだ素材が暫定的にではあるが開発された。これにより、廃石膏が利用可能であ
ることが分かった。また、原料面においてもゼラチンおよびPVAの有機系バインダーを選
定し、混練テストを実施した結果、石膏の混練スラリーへの分散状態は良く、これらのバイ
ンダーを使用できることを確認した。製造面においては、従来の古紙素材の製造プロセスを
利用しても、特に石膏を用いることによる不具合等は無く、本製造プロセスで石膏入りの素
材シートが、製造可能なことが実証できた。
さらに、製造した試作品の評価においてはまだ十分なデータは得られていないが、引裂き
強度、反発弾性率の低下等のデメリットを持つこと、また、圧縮永久歪、圧縮クリープ等の
試験から、加圧しても強度維持されるといった特性を把握できた。
平 成 15 年 度 の 研 究 開 発 の 成 果 と し て は 、石 膏 ボ ー ド 由 来 の 廃 石 膏 を 添 加 し た 素 材 の 実 機 に
よる製造実験を実施し、混練・発泡から成形・乾燥にいたる各工程で条件が確認でき素材製
法が確立された。これにより、廃石膏の利用の可能性を見出したが、一方で、原料について
の分析をおこなった結果、石膏粒のバラツキ等が明らかとなり、原料の品質管理の重要性が
認識され得る所となった。
また、有機系バインダーとしてPVAについて混練テストを実施した結果、石膏の混練ス
ラリーへの分散状態は従来のゼラチンバインダーに比べて良く、PVAバインダーによる素
材製造の有用性を確認した。また、製造プロセスにおいて、弊社実機プラントにおいても、
製造が可能である事が確認され、量産化の目途をつけることができた。石膏を用いることに
よる機械に与える影響は、特に、問題はないと思われるが、廃石膏のバラツキ低減が本素材
の品質安定の鍵になると思われる。
実機製造による素材についての評価は、遠赤外線効果やエチレンガス吸着と言った効果は見
42
出せなかったが、調湿効果があることは明らかに証明された。
本素材の用途として、軽量建材等の壁材・内装材、土木資材分野などについて市場価格、
性能等の調査をしたが、大手メーカーのシェアが大きく、本素材の価格はこれらに比べ 5 倍
以上となり、競争力がかなり乏しいことが分かった。また、本素材の緩衝性、難燃性などの
性能から判断しても、性能上これらの商品を補完できるレベルには至っておらず、商品展開
が困難であると判断した。
5.あとがき
平 成 14 年 お よ び 15 年 度 と 2 年 間 に わ た り 、 軽 量 新 素 材 の 研 究 開 発 を 行 っ て き た が 、 そ の 間
弊 社 の も つ 古 紙 発 泡 化 技 術 を 応 用 し 、無 機 材 料 で あ る 石 膏 を 添 加 し た 軽 量 素 材 を 開 発 し て き た 。
そのなかで、本素材の緩衝特性、圧縮クリープ特性等の梱包材として具備すべき特性を検討
したが、従来素材の性能には及ばなかった。また、本石膏素材の難燃性については、期待した
とおりの効果は得られなかったが、調湿効果といった新たな性能を有することが見出された。
2 年 間 を 通 し て 廃 石 膏 の 有 効 な 利 用 方 法 と し て 本 素 材 の 製 造 方 法 を 検 討 し 、試 作 を 行 い な が ら 、
計量建材等の壁材・内装材、土木資材分野などでその用途および市場性を探ってきたが、性能
的な問題もあり、有効な用途が見出す事ができず、コスト的にも適正なレベルへ到達する事が
困難であることから、本事業を終了することとした。
これまでお力添えを頂いたRITEの方々に感謝申し上げる次第である。
43
技術開発促進事業終了報告書<公開版>の取扱いについて
本報告書は、参加企業の研究報告を目的に作成したものです。このため報告書の
内容について引用等される場合には、参加企業及びRITEの許可が必要ですので、
ご連絡いただくようお願い致します。
連絡先
①鈴木工業株式会社 パルフォーム事業部
TEL 022-288-9201
FAX 022-288-9293
課長
②財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)
研究企画グループ研究公募チーム
田中、渕上
TEL 0744-75-2302
FAX 0744-75-2314
44
豊島
展
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