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教職大学院の現状と課題 - Kei-Net

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教職大学院の現状と課題 - Kei-Net
特集
①
教職大学院の
現状と課題
今年度、新たに教職大学院が発足した。
教員養成系学部における教職実践演習の
新設・必修化、教員免許更新制の導入な
どと並んで、教員養成制度改革の切り札
の 1 つに位置付けられている。しかし、
CONTENTS
既存の修士課程との違いや教職大学院修
了後の処遇等、課題も抱えている。
今回の特集では、教職大学院の教育内
容は意図された制度設計を反映したもの
になっているのか、また、今後どのよう
な方向性を見せていくのかを、各教職大
学院に関するアンケートに基づきながら
検証した。
概説
■概説:「理論と実践の融合を目指したカリキュラムに
基づいた教育を実践、教職大学院は実践研究の場
としての明確な位置付けが必要」
横須賀薫 宮城教育大学名誉教授 ……………………… 2p
■アンケート結果からみる教職大学院 ………………… 6p
■コラム1「教職大学院と既存の修士課程との違い」… 10p
■コラム2「教員採用選考時の対応と
教職大学院修了後の展望」………………… 11p
■大学生からみた教職大学院 …………………………… 12p
■東京学芸大学教職大学院………………………………… 13p
■上越教育大学教職大学院………………………………… 16p
理論と実践の融合を目指したカリキュラムに基づいた教育を実践
教職大学院は実践研究の場としての明確な位置付けが必要
学校現場を取り巻く環境の変化に伴い
求められる教員の資質能力の向上
校等の深刻な状況など、学校
教育における課題は、一層複
雑・多様化するとともに、LD
2004年10月、文部科学大臣から、「今後の教員養成・
(学習障害)、ADHD(注意
免許制度の在り方について」の諮問を受けた中央教育審
欠陥/多動性障害)や高機能
議会は、初等中等教育分科会・教員養成部会の下に「専
自閉症等の子どもへの適切な
門職大学院ワーキンググループ」と「教員免許制度ワー
支援といった新たな課題も生
キンググループ」を設置。審議を重ねて、2006年7月に
じてきている。このような状
答申を公表した。
況の中で、学校教育に対する
横須賀薫 宮城教育大名誉教授
教員養成の在り方について検討が必要になった要因
国民の期待に応え、信頼される学校づくりを進めていく
を、答申では、「近年、子どもたちの学ぶ意欲の低下や
ためには、何よりも教員自身が自信と誇りを持って教育
規範意識・自律心の低下、社会性の不足、いじめや不登
活動に当たることが重要である」と述べている。
2 Guideline September 2008
特集①
こうした学校現場を取り巻く環境の激変に伴い、これ
まで以上に教員の資質能力の向上が期待されているのだ。
その上で問題になるのが、教員の年齢構成だ。現状で
教職大学院の現状と課題
のになっている。
カリキュラムは、「教育課程の編成・実施」「教科等の
実践的な指導方法」「生徒指導、教育相談」「学級経営、
は、大量採用期の40∼50歳代の層が多く、いわゆる中
学校経営」「学校教育と教員の在り方」の5領域を中心
堅層以下の世代が少ない構成になっている。団塊の世代
に編成されている。授業形態は単なる講義形式にはとど
が退職期を迎えたことにより、文部科学省の試算では、
まらない。答申では「理論と実践の融合を強く意識した
2018年までに公立小中学校教員の4割が入れ替わるとい
体系的な教育課程を編成すべき」と明記されており、そ
う結果もある。そのため、これから短期間に大量の新人
のための具体的な教育方法として、事例研究、模擬授業、
教員が必要になる。経験の浅い教員の割合が高まる中で、
授業観察・分析、ロールプレイングなど、新たな教育手
複雑・多様化する教育ニーズに対応できるのか、心もと
法を積極的に開発・導入することを求めている。
ないのが実情だ。そこで、優れた教員を養成・確保する
ための抜本的な改革が求められたのである。
当然のことながら、連携協力校(付属学校を含む)で
の実習も重視され、必要修得単位数45単位のうち、10
単位以上を学校における実習に充てることが義務づけら
スクールリーダーの養成を目指す
れている。実際には、教職大学院のほとんどが、それ以
上の実習単位を用意している。
この状況を乗り切るために、答申が掲げた具体的方策
こうした実践的な教育を機能させるために、専任教員
の柱が、教員養成系学部における教職実践演習(仮称)
に占める実務家教員の比率を4割以上にしていること
の新設・必修化、教員免許更新制の導入、そして教職大
も、教職大学院の特徴だ。他の専門職大学院の実務家教
学院制度の創設であった。
員の比率は3割以上だから、それだけ実践力を重視して
教職大学院が対象とする学生は、大きく2つのタイプ
に分かれる。1つは、学部新卒者を対象とする新人教員
の養成であり、これから増加する見込みの新人教員の質
を向上させることが狙いだ。
もう1つはスクールリーダーの養成で、現職教員が主
な対象になる。答申では、スクールリーダーとは「校
いることの証明と言える。
初年度は「教職大学院」が浸透せず
定員割れも
このような制度設計のもとに、今年4月、国立15校、
私立4校の19校で教職大学院が発足した。
長・教頭・教科主任など、特定の職位を指すものではな
本誌のアンケート調査によると、初年度の入試状況
く、将来管理職となる教員も含め、学校単位や地域単位
は< 表 > の通り。回答した 19 校の平均倍率(受験者
の教員組織・集団の中で、中核的・指導的な役割を果た
数/合格者数)は1.3 倍であり、定員を充足できなかっ
すことが期待される教員」と定義されている。ここで、
たところも数校あった。ちなみに、入学者段階で、現職
学校単位だけでなくあえて地域単位と記載されているの
教員の割合は 53.4 %、学部新卒者は 35.8 %、その他が
は理由がある。少子化によって、一部の都市部を除いて
10.8%だった(*注1)。
学校が小規模化。同じ教科を専門とする教員が同一学校
新聞などでは、定員割れした大学があったことから人
内に少なくなっていることなどから、学校内だけでは新
気低迷とも報道されたが、この入試結果をどう捉えるか
人教員を指導する機能が低下している。広く地域単位で
は見解が分かれる。専門職大学院ワーキンググループ主
お互いの指導力を向上させるような環境づくりが必要に
査を務めた横須賀薫・宮城教育大学名誉教授・十文字学
なっているのだ。
園女子大学特任教授は、比較的健闘したとの見方だ。
そのほか、教職大学院には、大学卒業後いったん社会
「個人的な見解ですが、私は初年度からこれほど多く
に出て、他の職種・業種に就いた人が、あらためて教職
の大学が教職大学院を設置するとは想定していませんで
を目指す際の養成機関の役割も視野に入っている。
した。なぜなら、教職大学院は現職教員のための学びの
場が主体であるべきであり、まずは以前から現職教員を
理論と実践の融合を意識したカリキュラム
数多く受け入れて、教育をしてきた実績のある大学でス
タートし、徐々に増えていくのが望ましいと考えていた
教職大学院は、現場ですぐに通用する実践的能力を高
からです。この規模の入学定員にもかかわらず、全体で
めることが目的であり、教育システムもそれに沿ったも
9割以上の定員充足率を示したのは、健闘したと言える
(注1)アンケートに回答した19校のうち、内訳を発表していない早稲田大学は集計から除く。
Guideline September 2008 3
<表>初年度の入試状況
大学名
研究科名
専攻名
定員
志願者数
受験者数
合格者数
入学者数
倍率
(人)
(人)
(人)
(人)
(人)
(受験者/合格者)
北海道教育大学 大学院教育学研究科
高度教職実践専攻
45
55
54
45
42
1.2
宮城教育大学
大学院教育学研究科
高度教職実践専攻
32
33
33
33
32
1.0
群馬大学
大学院教育学研究科
教職リーダー専攻
16
東京学芸大学
大学院教育学研究科
教育実践創成専攻
30
102
85
39
39
2.2
上越教育大学
大学院学校教育研究科
教育実践高度化専攻
50
39
39
38
32
1.0
福井大学
大学院教育学研究科
教職開発専攻
30
37
37
31
31
1.2
岐阜大学
大学院教育学研究科
教職実践開発専攻
20
24
23
22
22
1.0
愛知教育大学
大学院教育実践研究科
教職実践専攻
50
37
37
27
23
1.4
京都教育大学
大学院連合教職実践研究科
教職実践専攻
60
76
75
66
63
1.1
兵庫教育大学
大学院学校教育研究科
教育実践高度化専攻
100
112
107
97
85
1.1
奈良教育大学
大学院教育学研究科
教職開発専攻
20
38
37
25
23
1.5
岡山大学
大学院教育学研究科
教職実践専攻
20
24
24
20
20
1.2
鳴門教育大学
大学院学校教育研究科
高度学校教育実践専攻
50
37
37
37
36
1.0
長崎大学
大学院教育学研究科
教職実践専攻
20
24
24
24
24
1.0
宮崎大学
大学院教育学研究科
教職実践開発専攻
28
39
39
32
30
1.2
創価大学
大学院教職研究科
教職専攻
25
90
89
30
30
3.0
玉川大学
大学院教育学研究科
教職専攻
20
28
24
22
17
1.1
早稲田大学
大学院教職研究科
高度教職実践専攻
70
102
97
59
57
1.6
常葉学園大学
大学院初等教育高度実践研究科
初等教育高度実践専攻
20
29
29
18
18
1.6
706
926
890
665
641
1.3
全体/平均 *注3
17
*注2
(注2)従来の教育学研究科修士課程の改組により、教育学研究科の合格者から教職リーダー専攻の所属変更を実施。
(注3)定員と入学者数のみ、群馬大学の人数を含む。
のではないでしょうか。特に、現職教員については各校
ンファレンスの場を設けていました。その方式を教職大
とも受け入れに十分に努力した結果だと評価しています」
学院でも取り入れています」
現職教員は一定数入学者を確保できたが、学部新卒者
がそれほど積極的に流入しなかったことが、教職大学院
の倍率があまり高くなかった要因と言える。これは初年
ただし、いくつかの課題も感じられると、横須賀教授
は指摘する。
「教職大学院の多くは、地域の教育委員会と連携し、
度ということで、学部生への周知が十分でなかった面も
派遣された現職教員を受け入れています。もちろん、教
あるようだ。本誌が教員免許状の取得を目指す学生を対
育委員会との連携は重要ですが、教育委員会の推薦を受
象に行ったアンケート調査(12頁参照)でも、
教職大学
けた現職教員が多くなると、個性の強い教員が入学しな
院やその教育内容が浸透していない様子が見てとれた。
くなる可能性もあります。それで本当に力のあるスクー
この点については、実際に教職大学院が誕生し、実績を
ルリーダーが養成できるのか、疑問も生じます。さらに、
蓄積することによって、学部生の意識も変わってくると
教育委員会から推薦された連携協力校での実習では、課
考えられる。
題に基づいた実習が十分ではない懸念もありますし、教
育委員会と連携協力校で同じような考え方を共有してい
教職大学院同士の相互交流が重要に
た場合、固定的な教育方法、考え方に陥りがちで、発展
性がないことも考えられます。こうした点を解消するた
教職大学院の教育内容については、横須賀名誉教授は
次のように解説する。
めには、教職大学院同士が相互交流を図り、他の地域で
教育実践をしている教員同士が刺激を受けるようにする
「まだスタートしたばかりで、詳細な分析はしていま
ことが大切です。教育大学協会などの主導で、協議会な
せんが、少なくともカリキュラムを見た範囲では、理論
どを立ち上げ、実践交流を促進することが望まれます」
と実践の融合に配慮したものになっています。それぞれ
また、学生への指導が実習校任せになってしまうこと
の伝統、実績を基盤とした特色ある教育が展開されてい
ます。例えば福井大学では、以前から現職教員が自主的
に大学に集まり、現場での実践を事細かに報告し合うカ
4 Guideline September 2008
も避ける必要があると言う。
「制度設計に関わった一人として後悔しているのは、
学校での実践について『実習』という言葉を使った点で
特集①
教職大学院の現状と課題
す。それでは教え方、やり方を習って、自分でできるよ
るはずはありません。教科専門の教員を十分に配置する
うになることを目的とする学部段階の教育実習と同じよ
ことは、教職大学院にとって非常に重要なことです。そ
うなものと勘違いされてしまう可能性があります。教職
の上で、私は、今後の教員養成系の大学院は、教職大学
大学院の学校現場での学びは、単に『習う』のではなく、
院に一本化していくことが望ましいと考えています。そ
有効な実践成果を挙げて、外部に公表し、その評価も受
して、教職大学院は実践研究の場だと、明確に位置付け
けなければならないところに大きな違いがあり、『実践
ることも重要です。そうでないと、既存の修士課程と同
研究』あるいは『臨床研究』と名付けるべきだったと思
じようになってしまうことも考えられますし、逆にノウ
っています。そうした実践研究を展開するには、実習校
ハウ継承の意味合いが強くなると、教育委員会の教員研
選びにも配慮が必要になります。自校の課題をきちんと
修との差別化が図れない危険性もはらんでいます」(横
整理して研究を続けている学校を選んで学生を送り、現
須賀名誉教授)
場の教員と長期にわたって協力して実践研究を続けるこ
とが重要なポイントになります」
(横須賀名誉教授)
現職教員と学部新卒者の
学びあいの関係をどう構築するか
現場を経験した上での入学が望ましい!?
教職大学院の設置校の中には、学部にその導入的なコ
ースを設けて、6年間で実践力を養成しようという動き
そのほか、現職教員と学部新卒者が学び合う関係の構
もある。ちなみに東京、静岡では、教員採用試験に合格
築も教職大学院の課題だ。というのも、両者の間には、
した人が教職大学院に進学する場合、採用を留保して、
経験や知識に相当の差があると推測されるからだ。学部
教職大学院修了後に採用とする制度を設けている。こう
新卒者にとっては、現職教員とともに学ぶことで、学部
した制度が広がっていけば、教職大学院に進学する学部
段階の教育実習と比べて質の高い教育が期待できる。だ
新卒者も増加すると推測され、6年一貫化の動きに拍車
が、一方の現職教員にとってのメリットは何か。その点
がかかりそうだ。
について、横須賀名誉教授は、現職教員にとっても大き
な意義があると語る。
「現職教員、実務家教員、専任教員がチームを組んで、
学部新卒者を教育していく。つまり、流行りの言葉でい
だが、横須賀名誉教授は、教員養成の場合は、学部か
ら大学院に直接進学するという6年一貫教育ではない方
がよいと説く。
「逆に、教職大学院に合格した学部新卒者に対して、
えば、現職教員がメンター(良き助言者)的役割を果た
合格を留保して、いったん現場に出し教職を経験させた
すわけです。将来スクールリーダーとなる現職教員には、
方がよいと思います。そして、教員になって自分なりに
新人教員の教育、同僚を支援する役割も求められます。
課題を見つけた上で、教職大学院で学び直すようにする。
そのためのシミュレーションになるのです」
それによって、より充実した実践研究が可能になるはず
です」
既存の修士課程との棲み分け
教職大学院修了者への優遇措置は必要か
もう1つの課題は、既存の修士課程との棲み分けだ。
今年度、教職大学院を開設した大学のうち、宮崎大学は、
最後に、教職大学院の修了者に対して、何らかの優遇
従来の学校教育専攻・学校教育専修と教科教育専攻(10
措置を与えることは必要なのかという問題にも触れてお
専修)を廃止して、教職実践開発専攻(教職大学院)に
こう。この点について、横須賀名誉教授はこう語る。
移行(ただし、そのほかに学校教育支援専攻を設置)。
「私は、ポスト、給与などで優遇措置を設けるべきだ
しかし、ほとんどの大学では定員の変更はあるものの、
という意見です。これまで教育現場は、皆がほぼ同じ立
既存の修士課程と教職大学院が併存する形になってい
場でしたが、これからは相応の能力を備えた人材が、き
る。アンケートでは、その理由として、教科専門の分野
ちんと評価されるべきです。もちろん、教職大学院が優
の教員がいない教職大学院に完全移行すると、教科専門
遇措置にふさわしいだけの人材を育成できることが大前
分野の研究・教育がおろそかになるという意見もあった。
提です。教職大学院を修了した人材が実績を残し、周り
「それは大きな誤解です。教科専門をきちんと踏まえ
た実践者でなければ、生徒や保護者、地域から評価され
に評価される人材を育成することが、教職大学院に求め
られています」
Guideline September 2008 5
アンケート結果からみる
教職大学院
3. 修了要件
設置基準では2年間以上在学し、45単位以上の修得
(うち10単位以上は小学校等を活用した小学校等の教育
に関する実習)となっているが、北海道教育大(52単位)、
河合塾では2008年度創設された各教職大学院へのアンケ
兵庫教育大・岡山大(50単位)、鳴門教育大(52単位)
ート調査を実施した(2008年6月実施)。
のように50単位を超える大学もある。また、設置基準
今回はその結果の一部をご紹介する。アンケート結果の
における修了要件では単位の修得となっているが、大学
詳細については、Kei-Netにて公開する予定である。なお、
によっては「リサーチペーパーの作成」(宮城教育大)、
アンケートにご協力頂いた教職大学院の皆様にお礼を申し
上げます。
「課題研究について成果を報告し、学内外の関係者で構
成される評価委員会による評価を受ける」(群馬大)、
「『長期実践報告』をまとめ、この報告によって総合的・
1. コース・定員・対象学生
最終的に確認・評価する」(福井大)、「『課題研究報告』
ほとんどの教職大学院は現職教員と教員免許状取得者
または『実習ポートフォリオ報告』を提出し所定の審査
を対象としている。一方で、免許状未取得者も入学対象
に合格する」(愛知教育大)、「目標達成確認科目を課す。
としている大学は兵庫教育大学、奈良教育大学、長崎大
その中には課題研究も含まれる」(宮崎大)など、単位
学の3大学であった。中には現職教員のみを対象として
修得以外の修了要件を求めている大学院もある。
いるコース・専攻もあった。現職教員の経験年数の指定
は、コース・専攻によって異なり、3年以上から、10年
4. 実習科目の単位数とその内容 <表2>
以上まで多様である。
設置基準では、小学校等を活用した小学校等の教育に
関する実習を10単位以上としている。アンケートでは、
2. 専任教員数とその内訳 <表1>
実習科目の単位数と数多くある実習の中から特色ある実
実務家教員の割合は、教職大学院によってかなり差が
習を1つ紹介して頂いた。
ある。教職大学院の設置基準である4割の大学院もある
に占める割合が半数を超える大学(東京学芸大、玉川大、
5.「理論と実践の融合」が実現した科目、
その科目の目的・内容と、具体的な教育手法 <表3>
早稲田大、常葉学園大)もある。
教職大学院では、「理論と実践の融合」を目指し、事
一方で、6割を超えている福井大学をはじめ、専任教員
<表1>専任教員数とその内訳
大学名
入学
専任
研究者
実務家
定員
(人) 教員(人) 教員(人) 教員(人)
実務家教員の経歴
北海道教育大
45
21
12
9
公表していない
宮城教育大
32
17
13
4
元小学校校長、教育委員会指導主事など
群馬大
16
12
7
5
元小学校校長,県教育委員会
東京学芸大
30
18
8
10
上越教育大
50
16
9
7
福井大
30
15
5
10
岐阜大
20
11
8
3
元教育委員会、元小学校教諭
愛知教育大
50
17
9
8
元小学校校長、元小学校教頭、元小学校教諭、元教育事務所指導主事、元保護観察所保護観察官
京都教育大
60
20
12
8
公立学校教員、教育委員会指導主事、元公立学校校長
兵庫教育大
100
45
37
8
元高等学校校長、元小学校教諭、元高等学校教諭、元指導主事、元スクールカウンセラー教員
奈良教育大
20
8
5
3
県教育委員会から2名、残る1名は本学教員(ただし、6年前までは中学校および教育委員会に勤務)
岡山大
20
14
8
6
元小・中学校教員、教育センター経験者、元養護学校教員
鳴門教育大
50
22
12
10
公立学校教員経験者(教育委員会指導主事、小学校校長、中学校校長、小学校教諭、幼稚園教諭)、
元少年鑑別所主席専門官
長崎大
20
17
10
7
元中学校校長、元教育課程調査官、元教育委員会指導主事、元公立学校教諭、スクールカウンセラー
宮崎大
28
19
14
5
県教育委員会との人事交流協定により、指導主事3名と退職者(教育次長:学校教育課課長級)3名
(2008年度2名、2009年度1名)。実務家教員にはみなし2名を含む。
創価大
25
12
7
5
元小学校校長、元幼稚園園長、小学校教員経験20年以上が3名
玉川大
20
12
6
6
元小学校校長など
早稲田大
70
13
6
7
元小学校校長、元中学校校長、元高等学校校長、元特別支援学校校長
常葉学園大
20
12
6
6
元小学校校長、元中学校校長、元高等学校校長、元県総合教育センター所長、元小学校教頭、元小学校教諭、カウンセラー
元小学校校長、元教育委員会指導主事、附属学校教員
元小学校校長、元中学校校長、元高等学校校長
元小学校校長、小中高校教員、県教育委員会課長、スウェーデン障害児教育現職教員指導者、民間企業社長
河合塾「教職大学院に関するアンケート」より
6 Guideline September 2008
特集①
教職大学院の現状と課題
例研究、模擬授業、授業観察・分析、ロールプレーイン
●教職大学院に関する周知がまだまだ不十分であること
グなど、新しい教育手法を積極的に導入することが求め
を感じる。教職大学院が設置されたばかりで、教職大
られている。その内容を1科目ずつ紹介して頂いた。
学院では何ができるのか、どういった成果が得られる
のかがまだ見えないため仕方がない部分もあるが、い
6. その他特色
ずれにせよ積極的な周知活動を実施する必要がある。
実習科目および「理論と実践の融合」が実現した科目、
●主として現職教員を対象とする3コースでは8割、学
就職支援等以外の特色について記述して頂いた。その中
卒学生を対象とするコースでは3割の定員充足率であ
からいくつか紹介すると、「小学校に特化した教職大学
ったことから、広報等を見直すこととしている。私立
院」(玉川大、常葉学園大)、現職教員に対して「1年履
大学等へも積極的に訪問し、募集要項等を配布し、協
修プログラム」(東京学芸大)、「授業は原則火曜日、金
力が得られれば、個別に当該大学内での説明会も行う
曜日、土曜日、夏季集中講義に行う教育課程」(愛知教
等、教職大学院への入学を積極的に働きかけることと
育大)、小学校教員免許状の取得を希望する学生を対象
している。
にしたコースを設置(愛知教育大、兵庫教育大、奈良教
育大、長崎大)などがある。
●制度的なインセンティブが設定されていない状況では
定員確保は困難である。
志願者への進学説明会やポスターなどの広報を行うと
7. 教職大学院の入試に関する感想・意見
同時に、入学者が充実した学生生活を送れるよう学校
全体的には募集や広報活動に関するコメントが多かっ
として努力することが大事である。
た。入学者の確保は共通の課題のようである。
●現職教員が有給で入学できる制度の拡張を期待したい。
●地域経済の長い不振のせいか、一般の進学状況が芳し
くない。加えて、財政事情がよくない中、派遣枠も少
8. 教職大学院での授業の感想・意見
ない。先行きに対しては相当の努力が必要と考え、広
新しい教育手法の導入、学部新卒者と現職教員との比
較、理論と実務との融合などの実情について伺った。
報活動に力を入れる。
<表2>実習科目の単位数とその内容(例)
大 学 名
北海道教育大
実習科目の単位数
10
実 習 科 目 の 内 容
授業科目名「学校課題俯瞰実習」(225時間、5単位)。授業の目的:学校全体を広く俯瞰するような視点から学校現場の課題を解決する
能力を育成するための実習である。そのために学校全体の組織・運営の実態を学ばせる目的で4つの領域に関わる課題を設定した。事前
指導と事後指導を実習の前後に配置し、事前指導では実習の意義と方法についてオリエンテーションと講義・討論を行い、事後指導では
、2年次に行う「自己課題解決・検証実習」に向けての課題の焦点化と具体的実践計画を立てさせることを目的とする。
福井大学
10
<教職専門性開発コースの実習・学部卒者の場合>
1年次の4月から3月、週3日間をインターンシップとして、拠点校の1年間の授業と行事と生活に教師集団の一員として参加し、授業
づくりにとどまらず、クラスづくり・生徒指導・生活指導、そして教師としての組織的な活動や協働研究にも関わって教師としての仕事
を総体として把握し役割を果たしていく。長期インターンシップを行う。学校での個別の支援・協働の研究、大学院でのカンファレンス
によって多重に支援する。
*拠点校:教職大学院と協定を結び、新しい学校作りに取り組む学校で、そこから毎年中堅的な現職教師がスクールリーダー養成コース
に入学する。ストレートマスターは拠点校の1つが実習校となり、そこで現職教員と大学院の協働研究の展開に学びながら1年間のイン
ターンシップを進める。
鳴門教育大
現職教員
《現職教員を対象とした実習科目について》
対象3コース
現職教員を対象とした実習は、勤務校で行う「課題分析実習」、「課題解決実習」および県内の連携協力校において行う「異校種実習」
(10単位)
で構成される。
学卒学生
「課題分析実習」(2年次:4月から4週間、週5日の実習)は、1年次に履修する「学校プロジェクト事例演習」で整理した学校の課題
対象コース
と改善方略の構想を基に、学校の現状をさらに分析し、改善方略の具体化と学校における初期的実践を行うことを主要な内容とする。
(12単位以上)
「異校種実習」(2年次:9月から4週間:週3日の実習)は、勤務校と異なる校種における児童生徒の実態の把握、教職員の活動(教科
指導、学級経営、課外指導等)の理解、学校運営システムの理解を実地に学習する。
「課題解決実習」(2年次:10月または11月から4週間、週5日の実習)は、課題分析実習の成果を基に、課題の改善法略をさらに実践
的有効性、実行可能性の観点から精緻化し、その実践と評価を行う。
玉川大
10
早稲田大
10
教職専門実習(基本、5週間)で小学校1校、同実習(発展、3週間)で別の小学校1校、同実習(発展、2週間)でさらに別の小学校
1校か中学校1校を経験し、多様な学校における体験によって、多様な学校環境への適応力を身に付ける。
学校臨床実習は、
「学校臨床実習Ⅰ」「学校臨床実習Ⅱ」「学校臨床実習Ⅲ」により構成される。「学校臨床実習Ⅰ」は、集中型の総合
実習で、授業力のさらなる向上と教職全般の職務について実習を行う。「学校臨床実習Ⅱ」は、週1回の実習を数カ月間継続し、課題の
解決にあたる実習であり、授業力・学級経営・生徒指導・キャリア教育・特別支援教育・地域連携等について各自で課題を設定して実習
を行う。「学校臨床実習Ⅲ」は集中型もしくは通年型の課題別実習であり、「学校臨床実習Ⅰ」「学校臨床実習Ⅱ」を通じて発見した各
自の課題をさらに深める。
河合塾「教職大学院に関するアンケート」より
Guideline September 2008 7
<表3>「理論と実践の融合」が実現した科目の目的・内容と具体的な教育方法(例)
大学名/
教育課程における領域/
科目名
群馬大
「教科等の実践的な指導方法」
『学習支援の課題と実践』
目 的 ・ 内 容
具 体 的 な 教 育 方 法
児童生徒の学習を支援するための基礎として、思考・判断・記憶
①知識の定着、②思考力の育成、③自己を振りかえる力の育成、と
など、学習活動を支える認知機能について、認知心理学の知見を
いう3つのテーマを設定している。そしてそれぞれについて、(1)
参考に学修する。その上で、児童生徒の知識の定着、知識の活用、
研究者教員による理論面の講義、(2) 実務家教員による学校現場の
創造的な思考などを促す教授学習の方法を検討する。
実態に基づく講義、(3) 受講生による指導案の提案、(4) まとめ、
というサイクルで授業を構成している。
東京学芸大
「共通科目」
『協働による子ども支援』
課題をかかえた児童・生徒への指導、支援計画の立案能力と、学
【前期】個々の子どもの実践事例をもとに、子どもに対する指導・
校内で支援体制を確立し、チームで生徒指導、教育相談、特別支
支援方法を計画・立案して、教育相談、児童・生徒指導領域に必要
援教育を行える教師を育成する。具体的には、レベルに応じて、
な技量と、コンサルテーションの技量を学び、適宜、現実の問題に
①特別活動や道徳的実践と関連づけながら先進的実践事例を理解し、 関するカンファレンスを行い、指導、支援方法の計画立案の基本的
チームで関わるコーディネートの視点を学ぶ。②各自の生徒指導、
教育相談、特別支援教育に関わる実践事例をもとに、指導・支援
計画を相互に立案し、相談技量を高めつつ、同僚教師へ効果的に
な技能とカンファレンスの基本姿勢を学ぶ。事例研究コンテストに
よる評価。
【後期】個々の事例になりきってのロールプレイングにより個別支
支援する方法を学ぶ中で、相互に批評し合うカンファレンスの技
援のスキルアップを行う。実際に教育委員会の不登校対策事業に、
量を高める。③最先端での支援プログラムに参画しつつ、連携協
紙上コンサルテーションで参画する経験も得る。
力校を想定して、協働での子ども支援の実施計画を立案し、現実
可能性について検討、評価を加え、総合的に学ぶ。
上越教育大
「実習科目および選択科目」
『学校支援プロジェクト
(学校支援フィールドワーク・
学校支援リフレクション・
学校支援プレゼンテーション)』
理論と実践がどう関係しており、その関係を生きたものにするに
連携協力校の学校課題への取組を支援する活動を通して学ぶ「アク
はどうするかについて理解することを目的としている。その目的
ション・ラーニング」を実施している。そのなかには、連携協力校
を達成するため、学校現場での生の実践に触れるとともに、その
において授業観察や分析をしたり、それをもとに授業案を立案して
経験を理論的に考察し、考察した結果を学校現場での実践に生か
実践したりといった活動も含まれている。さらに、支援活動を通し
していく活動を行う。
て学んだことをプレゼンテーションすることによって自らの学びを
自覚化するとともに、他者と学びを共有できるようにしている。
岐阜大
『学校評価の理論と実践』
受講生の勤務校や実習校の種別に応じて、各校の学校評価を事例
にグループでの開発を中心に展開する。
本学教職大学院において開設される授業はすべて演習形態をとり、
愛知教育大
指導には研究者と実務家教員が T・T であたる。指導教員は事前に
ミーティングを持ち、教員レベルにおいて「理論と実践の融合」を
図る。実際の授業では「基礎理論」の修得のための授業であっても
模擬授業、ロールプレイングといった形態を取り入れ、具体の中で
理論の修得に努め、理論や技術の必要性および意味づけを行う。ま
た「応用」の授業にあっては、事例研究として、授業参観、学級参
観、学校参観、分析などを行うことに加え、附属学校において研究
授業参加、現任校の課題分析などによって検証を行う。
京都教育大
「共通科目」
『学校の組織構造と経営実践』
学校が教育組織体として、どのような特質を持ち、それによる学
○小・中2校におけるフィールドワーク:校長等からの説明、質疑、
校の組織経営がどのように展開されているかを、実際の学校を事
資料収集・分析、校内参観。
例として分析し、理解させる。小・中2校でのフィールドワーク
○事例分析:領域毎の班によって、事例校の実態・問題点を分析す
を通じて、教育目標・教育課程経営、内部組織編成、学校評価と
る。
親の参加等について改善案を策定させる。
兵庫教育大
学習指導要領の理解を踏まえて、小学校の教科の教材研究と授業
づくり、授業分析と評価に関する理論と方法を実践を通して習得
「小学校教員養成特別コース」
『教科の授業づくりと授業分析・評価』 することを目的とする。
実務経験を有する特任教授を含む4人の教員による T・T を原則に
しつつ、
①小学校の諸教科に関する授業観察と授業分析
内容については、①学習指導要領の理解、②教科の教材研究と
②小集団による教材研究・授業設計と模擬授業の実践
学習指導案の作成、③学校環境や個に応じた学習指導法、④教科
③授業評価と授業改善に関する相互の批判的検討
の授業分析と評価法等を取り扱い、小学校の熟練教師による実際
を主たる方法として、授業を展開する。
の授業観察と授業分析の検討を通してアプローチしていく。
なお、授業研究の対象となる教科としては、指導教員の専門性
と教科の特性を勘案し、社会(内容教科)、算数(用具教科)、体
育(技能教科)の3つを設定している。
奈良教育大学
「実践科目」
『フィールドベースの演習科目
(アクション・リサーチ、
ポートフォリオ、ケース・
スタディ、
授業省察で各1単位)
』
1年次の5月∼6月に実施する教育実習科目(学校実践ⅠからⅡ)
これらの学びについては、各院生は、デジタル・ポートフォリオに
に対応して、上記の4科目を実施し、小中学校の教育実践から問
「概要」「自分が考えたこと」「自分が発展させたいこと」をその都
題を発見したり(アクション・リサーチ)、記録に残したり(ポー
度記しており、院生相互に学び合い、また教員からの指導助言も行
トフォリオ)、特定の事例に焦点化したり(ケース・スタディ)、
えるような体制になっている。このシステムは、上記科目を含む教
振り返りながら新たな学びを方向づけたり(授業省察)している。
職大学院すべての授業科目で使用されている。また、それぞれの科
目については、到達目標をカリキュラム・フレームワークによって
明確にして示している。
※表中ティーム・ティーチングは T・Tと表記。
8
Guideline September 2008
教職大学院の現状と課題
特集①
大学名/
教育課程における領域/
科目名
岡山大
「教育実践研究」
『教育実践研究Ⅰ(課題発見)』
目 的 ・ 内 容
具 体 的 な 教 育 方 法
実習校での継続的な実習(課題発見実習)と必修科目を通じた事
参画型で行う課題発見実習での成果を教育実践研究の授業で話し
例分析も活用し、自己課題や学校課題を明確にし、課題解決の目
合い議論・討論(観察・分析)を行う。この授業での成果を実習
標を設定する。必要に応じて模擬授業等も活用する。
に持ち帰る(理論と実践の融合)。この繰り返しを行い課題を明確
にしていく。また、この中で行われる授業実習等は、ビデオ撮影
を行い、実習後、それを活用し授業や指導教員(研究教員と実務
家教員)から指導を受ける。
長崎大学
「教科等の実践的指導」
『複式学級の教育と実際』
今日のへき地教育、複式教育の実態や利点・課題について理解し、
複式授業特有の学び方、指導の仕方について考え、工夫すること
①複式授業の観察(間接指導と直接指導)(わたりとずらし)(小
集団学習)
のできる能力を備えることを目的としている。
②模擬授業(分析、ロールプレイング) ③指導案作成
児童・生徒が抱える生徒指導上の諸問題をカウンセリングの視点
実務家教員と研究教員の共働講義を実施。また、現職教員と学部
「生徒指導・教育相談に関する領域」 から理解し、ケーススタディを通して、児童・生徒の問題行動等
『学校カウンセリングの実践と課題』 への適切な対処法に習熟する。
新卒の院生によるグループを作り、グループ討議を多く取り入れ
宮崎大学
ている。教材は事例報告(メール支援事例逐語録)などの実践的
なものを使用し、ロールプレイング(不登校児役と教員役)、こと
ばかけの練習、評価表の立案、個別支援計画の立案・シミュレー
ションといった活動を実施している。
創価大学
「教科等の実践的な指導方法に
関する領域」
『教科等の特性に応じた学習指導・
方法技術』
常葉学園大学
「コース別科目」
『実践的教材開発研究Ⅱ(社会)』
各教科等の特性に応じた多様な指導方法・指導技術等がテーマで
T・T 方式、事例研究、プレゼンテーション、ワークショップ、マ
あり、教育的効果の視点から理論的、体系的に整理するとともに、
イクロティーチング
それらに基づいて自ら授業実践を行ったり、他者の授業を分析・
評価し、助言や提案を行うことができるようになることを目的と
している。
こどもの生活基盤である地域の特性を生かした教材の開発を中心に、 研究家教員と実務家教員の T・T により授業を行う。授業ではロ
授業の組織化と構成に関する理論を実践を通して構築していく。
ールプレイング、討議、研究発表、附属小学校における授業実践
研究等、多様な学習方法を取り入れながらすすめている。
河合塾「教職大学院に関するアンケート」より
●現職教員の大学院生の勤務する学校等で、学習するコミュ
了後の処遇の問題、認証評価への対応、教職大学院であ
ニティづくりが生まれていることがあげられる。授業改善
ることの意味、教員養成制度全体への言及などがあった。
を中心にすえた校内の授業研究に教職大学院のカンファレ
●他の教職大学院との連携を介して、教育実践の成果を共有
ンスで行っているラウンドテーブル形式が取り入れられ、
授業後の研究会を大事に、子どもの学びに目を向けた小グ
ループでの伝え合いが展開している。
●現職教員学生には、これまで自らの実践を省察する機会と
し、協働で問題を検討し解決を図る必要がある。
●修了後の待遇あるいは採用時の優遇措置は、教育委員会の
判断によるため、教職大学院としてのメリットが明確では
ない。
なるとともに、知識や理解をアップ・トゥ・デイトするべ
●今後、教職大学院が教育委員会、学校現場をはじめとして
き重要な今日的課題を取り上げる機会になり得ているよう
社会的信頼を得るためには、カリキュラム開発、実習等の
に感じとれる。また、学部直進学生・社会人学生には、現
改善・評価等において、教育委員会や学校現場との緊密な
職教員学生の多様な実践事例・経験を併せて学べる機会と
連携の構築や認証評価等を通して教育研究の質の維持・向
なり、理論を実践的に幅広く、深く理解することができる
ように思われる。
上に資することがますます重要になってくる。
●3年後の認証評価で、定員不足や授業評価で欠格になる大
●現職教員学生が学部新卒者に及ぼす影響は大きく、1つの
学がいくつか生じると懸念している。いくつかの大学にマ
教育事象にかかわってさまざまな要因が複雑に絡まってお
ネジメント(特に学生募集上のマネジメント)能力がない
り、それを解きほぐしつつ、問題解決に取り組むようにな
ことを不安に感じる。
っている。また、教育実習に専任教員全員が付き添い、教
●現在の教員採用増が終息する2020年頃を目途に、わが国教
科指導や生徒指導等の検討にもかかわる中で、教員同士の
員資格の高度化(修士を基礎資格とする)を制度設計すべ
共通理解も深まり、問題意識も共有されるようになっている。
きである。それに向けて教職大学院モデルを確立し、量的
拡充に向けることが求められる。このためには教職大学院
9. 教職大学院における課題
が初期の役割を果たすこと、また中等教員養成のための教
教職大学院が始まったばかりで数年間やってみなけれ
職大学院モデルを構築することが必要とされる。
ば分からないというコメントもあったが、教職大学院修
Guideline September 2008 9
COLUMN1
教職大学院と既存の修士課程との違い
―教職大学院アンケート結果より―
教職大学院は高度専門職業人養成
既存の修士課程は研究者養成だけでなく
高度職業人養成も期待されている?
別化を図っている」
他は、以下のように、各大学によって棲み分けの仕方
はさまざまだ。既存の修士課程の特徴として、教科や領
域の専門性の高さ、研究能力を違いとしている大学が多
教職大学院制度が創設される前から、大学院段階にお
ける教員養成は行われており、現職教員が学ぶ場として
修士課程が整備されていた。2006年7月の「今後の教員
いようだ(大学は匿名)
。
●本研究科は教育実践に対する臨床的な指導原理に立って
「理論と実践の融合」を図る教員養成を推進するのに対し、
養成・免許制度の在り方について」(答申)では、教職大
教育学研究科は教育学および教科教育学、教科内容学につ
学院制度の発足にあたって、大学院の諸機能を整理し、
いて専門的に研究する教員を養成する。従って、教職大学
既存の修士課程は、「研究者養成・学術研究コースとして
院は教育学研究科における教育理論研究と教育現場の教育
各分野における深い学問的知識・能力の育成等に重点を
実践を架橋する機能も有する。
置くもの」と述べている。一方、教職大学院は「高度専
門職業人養成コースとして学校現場における実践力・応
用力など教職として高度な専門性の育成に重点を置くも
の」としている。大学院の機能をそのように整理した上
●修士課程は、特定の教科・領域等における専門性を有し、
得意分野で優れた実践を展開できる教員の養成(例えば教
科等の領域におけるエキスパート教員の育成)
。教職大学院
は、幅広い視点からの問題分析力・対応力・解決力を有し、
学校や地域で指導力を発揮できる教員の養成である。
で、答申では改めて、「既存の修士課程でも、研究者(大
●教育学研究科は直接的に学校に寄与するとは限らない理論
学教員)の養成だけでなく、高度職業人養成も期待され
的研究に重点を置いている。教職大学院は、学校教員・管
ため、既存の修士課程と教職大学院の
理職や教育行政職員になることを前提として、理論的思考
る」としている
(注)
違いがあまり明確ではない。結局、答申では、修士課程
と教職大学院の関係は、各大学の位置付けや構成・特
色・設置目的等により異なるとして、各大学での棲み分
けを求めている。なお、教職大学院の授与する学位は、
「教職修士(専門職)
」である。
既存の修士課程では
特定の教科や領域の専門性を深めるのが特徴?
では、実際、各大学では既存の修士課程と教職大学院
にはどのような違いがあるのか、アンケート結果から見
てみよう。
教職大学院の設置に伴い、既存の修士課程を廃止した
力を基盤とした実践的能力の開発を目指している。
●既存の大学院修士課程は、制度や資源といった問題をも考
察の対象とし、教育のあるべき方向性を打ち出していく力
(構想力)の育成を目的としている。教職大学院では、学校
現場で生起する課題を適切に把握し、制度的な制約や限ら
れた時間と資源といった条件のもとで最善の対処を行う力
量(即応力)の育成を目的としている。
●教育学研究科3つの専攻は、補い合って21世紀の知識基盤
社会に生きる力を育てる学校教育の実現を目指すものであ
るが、それぞれの教育目的・養成する人材像は以下の通り
である。
<教職開発専攻>21世紀の学校を協働して実現する学校改
革のスクールリーダー(総合力・実践力のあるプロフェ
ッショナルマネジメント・協働実践力)
のは宮崎大学である。教職大学院の発足に伴い、「従来の
<教科教育専攻>21世紀の学力を培うカリキュラム・授業
学校教育専攻・学校教育専修(教育学部専修)と教科教
を開発する教師(授業づくり・教育内容の専門性を深め
育専攻(10専修)を廃止して、教職実践開発専攻(教職
大学院)に移行したため棲み分けの問題は生じていない」
とのことである。また、教職大学院は既存の修士課程の
た教師カリキュラムデザイン・教育内容開発)
<学校教育専攻>地域・社会総がかりの教育改革を支える
学校と地域を結ぶ実践者(教育と地域社会への広い視野と
コーディネート力を持つ学校・地域・福祉・行政の担い手)
1専攻という位置づけの大学もある。
「本学教職大学院は、教育学研究科の1つの専攻として
などが、回答として挙がっている。
位置付けられている。そして、学校教育専攻とは、より
アンケート結果を見る限り、研究者志望なのか、教員
学校現場の問題解決に傾斜する点において、教科教育専
志望なのかという自分の希望と、各大学のそれぞれの設
攻とは、生徒指導とも絡めて授業を捉える点において差
置目的・特徴を見て決めることになりそうだ。
(注)
「高度の専門的知識・技能を背景に優れた指導力を有する高度職業人としての教員を養成するとともに、教員が優れた指導力を発揮する上で、その背景とな
る高度の知識・技能や、教員が広い視野を持ち複雑な現状を的確に分析し理解する上で必要となる理論等の研究や指導を行うことが期待される」
10 Guideline September 2008
特集①
教職大学院の現状と課題
COLUMN2
教員採用選考時の対応と教職大学院修了後の展望
−教職大学院に関するアンケート結果より−
各都道府県によって異なる教員採用選考時の措置
者のうち新人教員)を念頭に、各教職大学院で教員採用選
考における配慮・措置、就職支援について聞いた<表>。
2006年7月の「今後の教員養成・免許制度の在り方につ
教員採用選考において何らかの配慮・措置がある、と
いて」(答申)では、修了者の処遇として、具体的には、
回答したのは6校。教員採用試験に合格し、教職大学院
校長・教頭等に学校における一定の職務・位置付け、給与
にも合格した場合、名簿掲載が1∼2年間保証されると
面等での処遇の取扱が考えられる、とされている。給与面
いうもので、教職大学院修了後に、教員として採用され、
の処遇については、
「個々の教員の能力や業績を適正に評価
各校に赴任することになる。現在、そのような措置がな
し、これを適切に処遇に反映することが重要であり、新た
い教職大学院も各都道府県教育委員会と検討を始めており
な教員評価システムに関わる取り組みの中で検討すること
(宮崎大など)
、今後、このような措置が広がる可能性は高い。
になる」としている。新人教員については、
「例えば教員採
学部卒業後、教員採用選考試験を受験せずに教職大学
用選考試験において、通常の採用選考方法とは異なる観
院に進み、修了した後の同試験で、何らかの措置がある
点・方法で選考することなどの工夫も考えられるが、教
のかも気になるところだ。東京都教育委員会では各教職
員採用選考は都道府県教育委員会等の責任において適切
大学院と協定を結び、教職大学院から推薦された学生に
に検討することが期待される」と述べるにとどまっていた。
は特例選考を行う予定だ。このような動きが、各教育委
今回のアンケートでは、学部新卒者(教職大学院修了
員会に広がっていくのかについても注目される。
<表>教員採用選考における配慮・措置、就職支援の内容
大学院
教員採用選考時の対応と就職支援の内容
北海道教育
北海道・札幌市公立学校教員採用登録の有効期限について、北海
大学院
兵庫教育
大学
道内にある教職大学院へ進学する場合は、本人の申し出により登
大学
教員採用選考時の対応と就職支援の内容
学部卒業生の教員就職率全国第1位の実績を基に、年に数回、就
職セミナーや教職講座等を開催。さらに今年度から、大学院1年生
録期間を1年間延長する措置が取られている。
に対する合宿研修を開始。また、地元の教育委員会を中心とした
宮城教育大学
就職支援については、学部生と同様の体制である。
関係団体へ、以下の事項について要望することを検討している。
群馬大学
学部新卒者に対しては、教員採用試験の対策につながる個別指導
・教員採用試験において、教職大学院修了者については、別途
を実施。
東京学芸
大学
の選考(試験科目の免除等)を行うこと。
・東京都教員採用試験名簿登載期間(2年間)の保証
・在学期間中に教員採用試験に合格した大学院学生については、
・教職大学院を修了した者のうち、本学から推薦のあった者につ
大学院修了まで採用の延期の措置を講じること。
いて、東京都教員採用選考の特例を東京都教育委員会が設ける
奈良教育
教職大学院の特任教員は、県や市の教育委員会で教員の採用や
上越教育
就職支援は既存の大学院と同様に以下の内容を行う。
大学
研修指導に係わってきており、
ノウハウも豊富である。その教員を
大学
①大学院学生教員養成強化研修
岡山大学
1年次に教員採用試験を受験し、合格した者について、
1年間採用
②民間のノウハウも活用した教員採用試験対策全般におけるトー
中心に、大学の就職支援室と連携して、万全の対策を講じている。
タルな教職講座
を見送り、
2年次も教職大学院に在籍ができる配慮・措置を行って
③キャリアコーディネーターによる論作文、面接、模擬授業の指導
いる。
④教員採用に関する情報の収集・分析・提供
教職大学院連携協力会議を設置し、教育委員会等と連携・協力し
教育委員会と連携・協力した教員採用における配慮、措置は現在
て教員採用における配慮・措置について検討していくこととなって
のところ行っていない。
福井大学
岐阜大学
いる。
就職支援:<教職専門性開発コース>
鳴門教育
県内の教育委員会とは、教育委員会における人材養成研修(10年
学部卒者:毎週のインターンカンファレンスの中での指導。それ以
大学
次研修等)と本専攻への派遣研修との関連、修了者の処遇につい
外での相談活動
て協議することとしている。特に新人教員の養成については、教育
臨時任用教員:教員同士のグループに教職大学院スタッフが関わ
委員会が本専攻の教員養成特別コースにおける力量形成に強い
り、研究会を行う、その中での支援活動
期待を寄せているが、学部卒業と同時に教員採用される者との兼
教育委員会等と連携・協力した教員採用における配慮・措置は、特
ね合いから、当該コース修了者の力量を確認しつつ、教員採用時
になし。
に教職大学院修了者の特別枠を設ける可能性等について、今後も
本院への入学者(ストレートマスター)で、採用試験合格者は名簿
掲載が2年間保証される。
検討することとしている。
創価大学
東京都教育委員会との連携協定により、教職大学院から推薦した
愛知教育
教員採用試験の合格を2年間猶予すること、および教職大学院修
学生について、東京都教員採用試験の特例選考を受験することが
大学
了者の1次試験を免除することなど、教員採用試験における特例
できる。
(内容の詳細については未発表)
措置について、愛知県教育委員会と交渉を継続中である。
常葉学園
静岡県教育委員会(政令指定都市の静岡市教育委員会、浜松市教
京都教育
大学として実施している就職支援(各種セミナー等)への参加の
大学
育委員会)と教職大学院検討委員会を設置し、定期的に教員派遣
大学
ほか、研究科としても教員採用試験直前セミナー(面接対策)等を
や教員採用についての情報交換を行う。また、本年度より大学院1
実施している。
年目で教員採用試験に合格した者は、大学院を修了する1年後ま
教員採用における配慮・措置については、協議中である。
で名簿登録され、修了後正式採用となることとなった。
※該当項目に回答があった大学のみ本文と表に掲載
Guideline September 2008 11
COLUMN3
大学生からみた教職大学院
「教職大学院を知らない」という意見が多数
今回の特集にあたって、大学生が教職大学院について
どのように考えているのかを知るため、教員免許状の取
<表>教職大学院について、大学でどのような説明が
ありましたか。
ガイダンスの実施
その他
10%
5%
得を考える大学生・大学院生にアンケートを実施した
授業での
アナウンス
(2008年7月実施)
。
5%
アンケートを実施してわかったのは、教員免許状取得
を目指す学生の多くが「教職大学院を知らない」という
説明なし
状況である。
70%
パンフレット等
の配布
10%
教職大学院への進学は「未定」が85%
アンケートでは、まず、「教職大学院への進学を考えて
いるか」と質問したところ(回答件数66件)、「未定」と
あったか」という質問に対する回答結果が<表>である
いう回答が85%を占め、一部の学生は大学卒業後、また
(回答件数177件)。7割の学生が大学から何も説明を受け
は教員として勤務後に通ってみたいと回答した。それぞ
れの回答理由をいくつか紹介する。
<大学卒業後に進学を希望>
●大学だけで教職の内容が満たされるとは思えないし、大学では、
教職ではなく専門の数学を学びたいから、教職大学院で教職に
ついてじっくり学びたい。
<教員として勤務後に進学を希望>
ていないことがわかった。
最後に、教職大学院についての意見・感想(自由記述)
で、一番多かった回答は「教職大学院とは何か?」であ
った(回答件数41件)。多くの学生が教職大学院の存在を
知らず、その実態を教えて欲しいという意見が寄せられ
た。中には、「教職大学院の課程を修了するメリットがわ
からない」、「教育内容に魅力を感じない」という厳しい
意見もあった。
●今は教員になりやすい時期なので、とりあえずは教員になるこ
とを優先したい。
<未定>
●教職大学院の存在価値が分からない。興味が出れば行きたい。
●教職大学院は設立したてで展望が見えないから。
●小学校に勤めなければ教職大学院への進学はあまり意味がない
と聞いている。また、ハードな内容とも聞いているので、つい
ていけるか不安。
●生徒との年の近さがプラスに働くのは学校生活の中にあるはず
だ、という思いと勉強不足な面が生じたら学びたい、という思
いがあるから。
●初めて聞いたので、具体的に何をするのか知りたい。
●全くアナウンスがないので、全然知らない。もっと普及してほ
しい。
●教職大学院とは初めて聞いたが、教育学部の大学院とは別物な
のか?
●通常の修士課程よりも実践的で、実習を中心としたものらしい
が、現職教員が教職大学院に来ても意味があるのだろうか。
●具体的にどのようなことをするのか。教職大学院に行くことで
生まれるメリットは何か。
●法科大学院の二の舞にならないかが心配。課程を修了した学生
●教職大学院に行く必要があるかどうか分からない。大学院に進
の受け皿がしっかりできていないまま、導入されている印象が
学するなら、専門職大学院ではなく、普通の大学院に進学した
ある。また、教職大学院で養成しようとしている教員像が画一
方がよいと考えている。
的で気に入らない。カリキュラムを見ても目新しいものがない。
●教職大学院のコンセプトがいまいち伝わってこない。何を身に
7割の学生が「教職大学院の説明は受けていない」
付けさせたいのか、何を研究として取り上げるのか…統一感が
ない。また、内容が漠然としすぎていて、興味が持てない。
次に、「教職大学院について、大学でどのような説明が
12 Guideline September 2008
特集①
教職大学院の現状と課題
「協働する力」を有する教員を
アクティブな教育方法によって育成する
東京学芸大学教職大学院
各教職大学院では、それぞれ立地する地域の実情に合
選択科目には、社会の変化に応じた科目群と
学校教育の普遍的な課題を扱う科目群を設置
わせた特色あるカリキュラムを用意しているが、同大は、
「現代的教育課題に対する学校全体の取組みにおいて中心
東京学芸大学は、創立以来、伝統ある教育系大学とし
的役割を果たし、教職員・保護者・地域の人々・専門家
て発展してきた。同大では今春、教職大学院発足に伴い、
と協働して問題解決にあたるリーダー的存在としての教
大学院教育学研究科に教育実践創成専攻を開設して、よ
員(スクールリーダー)を養成する」ことをアドミッシ
り高い資質を持つ教員養成の一翼を担うことになった。
ョン・ポリシーに掲げて、カリキュラムを構築した。
具体的に履修科目を見る
修得したとみなされる単位数
<表1>授業科目と履修例
2年目に履修する科目
科 目 等
共
通
科
目
職大学院で必修となる5つの
履 修 例
科 目 等
と<表1>、まず、全ての教
例1
例2
例3
例4
例5
領域に対応する共通科目が、
7科目設置されている。他に、
領域①
1
カリキュラム開発の方法
4
4
4
4
4
領域②
2
授業研究の方法
4
4
4
4
4
領域③
3
協働による子ども支援
4
4
4
4
4
4
学校組織マネジメント
2
2
2
2
2
らは2科目、選択科目Bから
5
地域社会との協働による学校運営
2
2
2
2
2
は3科目を履修することとし
6
未来の学校教育
2
2
2
2
2
7
教師のコンピテンシー
2
2
2
2
2
ている。
計
20
20
20
20
20
領域④
領域⑤
選
択
科
目
A
選
択
科
目
選
択
科
目
B
1
現代的教育ニーズへの対応Ⅰ
2
現代的教育ニーズへの対応Ⅱ
3
学校と教育委員会による教育創造
4
教育プログラムの開発と運営
5
体験活動を通した人間形成
6
子どもの心を耕す教育
必
修
2
2
2
2
2
2
2
2
2
計
4
1
教師のライフサポート
2
2
学校教育ファシリテーターの育成
3
教育ネットワークの構築方法
4
相互評価による授業力の形成
5
校内研修・研究コーディネーターの育成
6
子どものライフサポート
7
学校間の移行と接続
8
学校文化と風土
9
学力を向上させるための工夫
10
教育フィールドの開発
4
4
4
4
2
を科目化したもので、社会の
変化に応じて科目や内容は変
わる予定だ。現在、
「現代的教
育ニーズへの対応」では、特
別支援教育と国際理解教育に
ついて学び、
「学校と教育委員
2
2
3
科
目
選
択
選択科目Aは、社会の変化
に伴って対応すべき教育課題
2
2
科
目
選
択
選択科目として選択科目Aか
会による教育創造」では、教
2
2
2
2
2
2
育特区などの規制緩和や、文
2
部科学省による優れた教育プ
2
ログラムに対する予算の重点
2
配分などについて学ぶ。
2
21年度
開設
一方、選択科目Bは、学校
2
計
6
6
6
6
6
計
10
10
10
10
10
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
題を科目化したものである。
2
2
2
2
2
例えば「教師のライフサポー
6
6
6
6
6
7
7
7
7
7
課
題
研
究
科
目
1
課題研究Ⅰ
2
課題研究Ⅱ
3
課題研究Ⅲ
実
習
科
目
1
課題発見実習
2
課題達成実習
必
修
計
必
修
教育において普遍的かつ常に
改善を図っていくべき教育課
ト」では、指導力不足の教員
3
3
3
3
3
がいた場合にどのようにバッ
計
10
10
10
10
10
クアップしていくか、教師と
合 計
46
46
46
46
46
しての人生設計などについて
Guideline September 2008 13
学び、
「学校教育ファシリテー
<図2>実践と理論が往還するカリキュラム編成
ターの育成」では、リーダー
実践と理論が往還するカリキュラム編成
ではなくファシリテーター、
教育活動をプロデュース
すなわち仲間として同僚の教
開 発
員を支援していくために横の
関係を構築していく技量につ
いて学ぶ。
小林正幸大学院院長
また、科目履修にあたって
課題
(再)
発見
連携
協力校等
大 学
は、
「学校教育プロデュース履
実践
修モデル」
(履修例1.3.4)と「学習活動プロデュース履修
点 検
評 価
モデル」
(履修例2.5)の2つを設け、学生が興味関心に応
学校内外の協働とプロデュースのサイクル
じて科目を履修できるように提案している。前者は、若
手教員への指導やいわゆる指導力不足教員等への対応・
指導などの方策、保護者や地域、教育委員会などとの連
携方策、学校評価や説明責任など、これからの学校改革
経験を有する者は、
「課題発見実習」は免除されている。
「課題達成学習」では、週3∼4日連携協力校に赴き、
に求められる力を付けることを目的とし、後者は、授業
1年次に発見した課題について改善プランを構想し、プ
力向上の方策、校内研修の改善方策、子どもの理解や実
ランに基づいて検証と実践を行う。そして並行して履修
態に即したカリキュラムデザイン力などを付けることを
している共通科目や選択科目が、実践プランについて教
目的としたものである。
員や学生同士と議論し理論的裏付けを得る場となり、理
ところで、教職大学院修了者について教員採用におけ
る配慮や措置がなされているかも気になるところだ。同
大の学生の中には教員採用選考試験に合格したが、教職
論と実践が双方向に機能する<図2>。このように同大
では2年間で540時間を超える実習を実施する予定だ。
さらに、入学時に設定した「課題研究」のテーマに基
大学院で学んでいる者もいる。東京都教育委員会とは、
づき教授陣の協働による指導を受け、
「課題達成実習」か
東京都教員採用選考試験名簿登載期間(2年間)が保証
ら得た成果を、従来の修士論文とは異なる形の成果物と
されているほか、同大の教職大学院修了者のうち、大学
してまとめる予定だ。同大学院院長の小林正幸教授は
から推薦を得た者について、東京都教員採用選考の特例
「課題は学生の興味によるところであり、かつ連携協力校
を設けるといった連携をとっている。
講義・演習科目と実習科目を往還しながら
確かな実践力が身に付くカリキュラムを構築
さて、教職大学院に共通する、従来の大学院教育との
の課題を解決していくもの、さらに他の学校にも意義あ
るものを選びます。また、優れた成果物が一定以上蓄積
されたら、2∼3年後には出版し、全国の学校で幅広く
活用してもらえるようにしたいと考えています」と意欲
的だ。
大きな違いは、
「理論と実践の融合」を意識した新しい教
実習先は、学部卒業後(社会人等)
、教職大学院に進学
育方法を積極的に開発・導入する点である。同大でもこ
したストレートマスターは、東京都推薦の連携協力校で
の点を重視して、充実した実習・演習機会を確保してい
行い、現職教員は通えるならば勤務校を原則としている。
る。
また、他県から派遣された現職教員は、同大が協力を依
まず実習科目として、1年次での「課題発見実習」と
頼した、近隣の東京都小金井市・小平市・国分寺市の3
2年次での「課題達成実習」を設置。
「課題発見実習」は
市の小・中学校や、同大附属小学校・中学校で行う。な
週に1∼2回連携協力校に赴く。連携協力校では、例え
お、現職教員は、東京都だけでなく神奈川県、静岡県か
ば、学校経営や学級運営、生活指導や進路指導、教員と
らも来ているそうだ。
しての在り方など、学校における教育活動や実務全般に
ついて総合的に観察する。具体的にはシャドウイングな
どを通じた観察記録の取り方や、課題解決に向けた学習
現実の学校での課題を用いた
ケース・スタディなどの演習が充実
指導計画案の作成について、実践的な構想力を身に付け
また同大では、講義に加え、フィールドワーク、ワー
ることを目的としている。なお、現職教員のうち一定の
クショップ、ロールプレイング、ケース・スタディ、ケ
14 Guideline September 2008
特集①
ース・カンファレンスなどの演習を豊富に織り交ぜて、
<図3>学びのサポート構造
実践力の育成を図っている。
学びのサポート構造
具体的には、
「例えば、新学習指導要領について学ぶ時
間では資料を渡し、講義だけでなく、グループで要旨を
教職大学院の現状と課題
学部卒学生
ナナメの関係
まとめた学級新聞を作成しました。新学習指導要領につ
現職教員学生
いて理解を深めるのと同時に、要旨を分かりやすく説明
タテの関係
することや、児童に学級新聞を作成させる時のノウハウ
を学ぶのが目的です。また、本学の教職大学院では、全
複数の大学教員のコンサルテーション
ての授業を公開しています。中には、教室には40名もい
るのに、教職大学院の学生は10名程度という人気の講義
もあります。その際、参観者に評価シートを配布し、授
員と実習科目を担当する教員、課題研究を担当する教員
業評価をしてもらっています。こうすることで学生は、
が協働して学生の指導にあたる<図3>。同じ領域の課
授業評価の手法と、評価することの意義を学ぶことにな
題を持つ学生同士も、実習先の学校を相互に訪問したり
ります」と小林教授は語る。
意見交換をしたりして、学びあう。
「このとき、ストレー
また、教育臨床心理学が専門の小林教授ご自身の授業
トマスターの学生は、現職教員から支援を受けることに
では、実際の事例に基づいたケース・スタディを中心に
なりますが、現職教員にとってストレートマスターへの
授業を進めている。まず、現職教員に実際の生徒の状態
支援は、職場で横の席に座った新任教員に対する接し方
についてシートに記入してもらい、そのシートに基づき、
や支援法を学ぶよい機会となります」
(小林教授)
。
学生全員が、自分がその生徒の相談に乗っているつもり
さらに、先述した授業参観者からの授業評価、熊谷市
で回答案を作成し、お互いの回答について点数を与えて
からの事例提供なども、学外との協働である。問題が複
評価している。また、回答案についてグループ・ディス
雑化する現代社会では、1人で解決できる事柄は少なく、
カッションし、自分以外の人の意見でよい回答を選ばせ、
多様な立場の人と協働して解決する力が必須である。小
最後に小林教授が模範解答を配布している。ほかに、小
林教授は、
「大学院での学びを通して協働を体験すること
林教授が実際に教育相談のコンサルテーションを学生の
は、真の実践力向上につながります。このように、実践
目の前で行い、グループ別に、小林教授が言ったこと、
力を向上するプログラムをあらゆる機会を捉えて用意し、
相談者が言ったことを書き取り、その中で何がその人の
今後も教員や、教員を志す学生にとって魅力的なプログ
問題解決につながっていったのかを見せたりもしている。
ラムを提供していきたいと思っています」と抱負を語っ
「私の授業ではこれらの体験の後、事例研究コンテストを
てくださった。
行い、学生が決めたテーマについて回答を書き、お互い
に評価し合っています。また、実践として、熊谷市が行
っている不登校児減少の取り組みへの協力を予定してい
ます。小学校から中学校に申し送る生徒の状況について
記した「小中連携支援シート」を、個人情報がない状態
で提供してもらい、本学の学生が対処方法を作成し、そ
の内容を私が添削してから熊谷市に返却し、活用しても
らうのです。この方法で、熊谷市では不登校児を約3割
減らしてきています」
(小林教授)
東京学芸大学教職大学院DATA
◆研究科・専攻名:教育学研究科教育実践創成専攻
◆入学定員:30名
◆対象学生:教員養成課程修了者・非教員養成課程修了者
(免許状取得者)
、現職教員
◆専任教員:18名(研究者教員 8名、実務家教員10名)
キーワードは「協働する力」
そしてもう1つ、同大が掲げる大きな特徴が、「協働」
という言葉に集約される、互いに協力して問題を解決す
るための多様な仕掛けである。例えば実習科目の指導に
◆2008年度入試結果:
全 体
現職教員
内
学部新卒者
訳
その他(社会人等)
志願者(人)
受験者(人)
合格者(人)
102
85
39
入学者(人)
39
19
18
17
17
67
53
19
19
16
14
3
3
際しては、課題に関係する領域の共通科目を担当する教
Guideline September 2008 15
従来の現場主義で培った成果を活かし
実践的な教育を展開
上越教育大学教職大学院
既設の大学院修士課程との違いは
学びのアプローチ
上越教育大学は、国立の新構想教育大学の1校として、
ません。対して、
既存の修士課程
は、制度自体の
在り方も含め
1978年10月に誕生した。当時の新構想教育大学の設立
て、より原理的
趣旨には「主として現職教員の研究・研鑽の機会を確保
なところから教
する趣旨を持つ大学院と、初等中等教員の養成を行う学
育をとらえ直し
部を有し、全体として大学院に重点を置く大学として設
ます。例えば、
置し、学校教育に関する実践的な教育研究を推進する」
2011年度から施行が予定される新学習指導要領を例にと
と記載されている。
ると、既存の修士課程なら、そもそも学習指導要領とは
写真左より 藤田武志准教授、松本修教授
この趣旨に呼応して、上越教育大学の大学院学校教育
いかにあるべきかがテーマになりますが、教職大学院は
研究科(修士課程)の学生は、約3分の1が教育委員会
新学習指導要領の中で、どのような教材づくり、授業展
から派遣された現職教員で占められ、実践的な教育・研
開を図るかを具体的に考えていくわけです。学ぶ分野は
究が展開されてきた。
類似していても、アプローチの方法が大きく異なるので
そうした背景を持つだけに、同校にとっては、まずは
既存の修士課程と教職大学院の棲み分けをどうするかが
課題であった。今年度の教職大学院の入学者を見ると、
現職教員とそれ以外の学生の割合はほぼ半々。現職教員
す」
選択科目と実習科目を連動させ
連携協力校から提示される課題に取り組む
以外の学生の中には、既存の修士課程ではほとんど見ら
学校の現実の教育課題を解決する力を養成するため
れなかった他職種・業種を経験した社会人などの学生が
に、教職大学院のカリキュラムにはさまざまな工夫が凝
いるという違いはあるものの、現職教員の比率が高いこ
らされている。
とに変わりはない。現職教員が入学先を決める際に、自
分にとってどちらが向いているのか、選択の一助にする
同大の開講科目は、臨床共通科目、コース別選択科目、
実習科目の3本柱で構成されている<表1>。
ためには、教職大学院
ならではの明確な教育
<表1>上越教育大学教職大学院の授業科目と単位
指針を打ち出す必要が
あるだろう。この点に
ついて、同大学院の松
本修教授は次のように
解説する。
「教職大学院は、現
行の学校制度を前提と
した上で、その中で起
こっている課題を解決
する方法を模索してい
きます。現行の制度を
変えようというアプロ
ーチは念頭に置いてい
16
Guideline September 2008
特集①
「多くの教職大学院は、そ
教職大学院の現状と課題
<図2>学校支援プロジェクトの概念図
れぞれの科目群を独立して教
授するスタイルです。それに
対して、本学では、2年間と
もに、前期は臨床共通科目を
中心に履修し、後期は選択科
支援チーム
目と実習科目をリンクさせた
(実践)
『学校支援プロジェクト』だ
けに専念するところに特色が
あります」(同大学院、藤田
とは、どのような流れなのか、
授業計画・実施
データ記録・分析
考察・発表
協力
連携・協力校等
(実習校)
成果還元
武志准教授)
『学校支援プロジェクト』
協働履修
学校支援
フィールドワーク
(4∼5人)
現職院生
学卒院生
専任教員
学校支援
プレゼンテーション
実践の省察
学校支援
リフレクション
見てみよう<図2>。
まず学生は、専任教員が主
催するチームの中から、自分
が興味を持ったものを選んで
所属する。その上で、チームごとに、上越市・妙高市の
の関わり方が有効な場合もある。そのため、実習期間・
公立小・中学校など97校・施設の協力を得ている連携
体制などは柔軟な運用になっている<図3>。
協力校(今年度は13校で実施予定)と事前打ち合わせ
また、このプロジェクトを円滑に推進するために、2
を行う。チームごとに連携協力校を1校選び、連携協力
名(来年度は4名に増員予定)の実習コーディネーター
校側から提示された、その学校が解決したいと考えてい
(特任教授)が配置されている。指導主事や校長などの
る課題や、それまで計画的に進めてきた教育活動の改善
経験者であり、どの学校がどのような課題を抱えている
策といったテーマから1つ選ぶ。今年度は、「子ども同
かを把握していることから、連携協力校とのマッチング
士のかかわり合いを高めるピアサポートの在り方」「学
がスムーズになる。
習になかなかついていけない子どもをどう支援するか、
「さらに重要なのが、実習生を『部外者扱い』になら
特に自己肯定感を高める方法について」「特別支援学級
ないようにすることです。それでは踏み込んだ提言にな
と普通学級の連携」「いわゆるPISA型の書く力を伸ばす
らないからです。そこで、教育委員会に依頼して、実習
にはどうすればいいか」など、極めて具体的なテーマが
生を非常勤講師なみの扱いとし、教育スタッフの一員と
俎上に登っている。
して受け入れてもらうようにしました。実習生の机も、
このテーマを持ち帰り、チーム単位で専任教員や学生
同士が議論し、解決策を考え、それに沿った指導計画な
どを立案するのが、選択科目の『学校支援リフレクショ
ン』という科目だ。また、実際に連携協力校に出向き、
多様な活動を行う実習科目が『学校支援フィールドワー
ク』、さらに、実習で実行した成果を客観的に分析して、
課題に関連する教員(あるいは学年団)の近くに配置し
てもらうつもりです」(松本教授)
共通科目は3つの段階に分けて「協働力」を養成
現職教員と学部新卒者が共に学ぶ効果は大きい
こうしたプロジェクト活動を機能させるためには、学
改めて有効な改善案を連携協力校に提言するのが、選択
生に相応のコミュニケーション力、チームワーク力が備
科目の『学校支援プレゼンテーション』だ。このように、
わっていることも不可欠になる。学生同士、および連携
後期の授業では、実習科目と選択科目を連動させて、実
協力校の教員と一緒に活動するケースが多いからだ。同
例に基づいた教育・研究が進められるわけだ。学習成果
校では、この能力を「協働力」と名付け、養成に力を注
を広く情報発信する場として、2月にフォーラムの開催
ぐ教育システムを構築している。
も予定されている。
「前期の臨床共通科目はすべて、全体で30時限を3つ
当然のことながら、課題によって、連続して学校に出
の段階に分けています。最初の10時限は知識を得る時
向く必要がある場合もあるし、週1∼2回など、分散型
間、次の10時限は提示される課題に対し、班ごとに議
Guideline September 2008 17
論・追究する活動、
<図3>学校支援フィールドワーク(集中型、分散型)
最後の 10 時限は班
でまとめた見解を他
の班にプレゼンテー
ションする活動にな
っています。知る→
考える→共有すると
いう一連の流れを通
して、協働力の養成
を図っているわけで
す。学生の学びのモ
チベーションは高
く、活発な活動が展
開されています」
(藤田准教授)
これらの活動の中
で、教職大学院なら
ではの動きも見られ
るという。
「各班は、必ず現
職教員と学部新卒者を混在させており、経験値の高い現
あわせて、教職大学院で学んだことが人事面で何らか
職教員と一緒に議論することで、学部新卒者の力量も大
の形で生かされるように働きかけていく必要性も感じて
幅にアップしています。また、教職大学院はスクールリ
いると、藤田准教授は語る。
ーダー養成の使命も担っていますが、近い将来の新卒採
「学生が最も期待しているのは、やはり採用・人事面
用教員である学部新卒者をどう支援すればいいのか、現
での配慮になることでしょう。例えば、教員採用選考試
職教員にとっても良いシミュレーションの場にもなって
験の1次試験免除や、フィールドワークで実践したこと
います。学部新卒者が発表する際には、同じ班の現職教
を自己アピール書に記載できるなど、さまざまな方策が
員の方が緊張しているほどです」(松本教授)
拡大することを願っています」
教職大学院と連動した学部のコースを新設
ところで、同校の今年度の入学者数は32名。定員の
50名を満たすことはできなかった。その点をどう解消し
ていくかは、今後の課題でもある。
「初年度ということで、教職大学院の具体的な教育内
容が浸透していなかったことが大きな要因でしょう。今
上越教育大学教職大学院DATA
◆研究科・専攻名:教育研究科教育実践高度化専攻
◆入学定員: 50 名(教育実践リーダーコース 30 人、学校
運営リーダーコース20人)
後は、『学校支援フィールドワーク』で学生が積極的に
◆対象学生:専修免許状または一種免許状取得者、現職教員
活動している様子に触れることで、教職大学院に興味を
◆専任教員:16名(研究者教員9名、実務家教員7名)
持つ現職教員が増えてくることを期待しています。また、
◆2008年度入試結果:
志願者(人)
受験者(人)
合格者(人)
全 体
39
39
38
32
現職教員
16
16
16
16
14
14
13
10
9
9
9
6
本学では、学校教育学部に 2009 年度の2年次生から、
教職デザインコースが誕生する予定です。これは教職大
学院と連動した教育内容であり、このコースで学んだ学
生が教職大学院に入学してくる可能性も高いと考えてい
ます」(松本教授)
18
Guideline September 2008
内
学部新卒者
訳
その他(社会人等)
入学者(人)
Fly UP