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RNA - SFC Bio
生物学的情報をゲノムからプロテ オームへと伝える出来事の検証 Chapter 8 ゲノムへの接近 (p.243-260):9月26日 真核生物ゲノムの活性化 Chapter 9 転写開始複合体の構築 (p.263-298):10月3日 転写開始はどのように始まるのか? Chapter 10 mRNAの合成とプロセッシング (p.300-342):10月10,17日 RNAの種類と機能 Chapter 11 プロテオームの合成とプロセッシング Chapter 12 ゲノム機能の調節 本日 本スライドで使用した 図のうち、細胞Fig. と 書かれたものは、細 胞の分子生物学 第 4版(ニュートンプレ ス)の該当する番号 の図です。 来週 この章のねらい 本日 来週 原核生物と真核生物の遺伝子発現の違い 原核生物の転写では、修飾を 受けずにそのままでmRNAと なり、その場で翻訳される 真核生物は一次転写産物が5’キャップ構造形成、スプライシング、3’ポリアデニル化 (ポリA化)されてmRNAが出来る。その後核外に運ばれて翻訳される。 原核生物と真核生物のmRNAの違い ポリA 原核生物 mRNAの修飾なし 1つのmRNAに1個以上の遺伝子 真核生物 一次転写産物が5’末端がキャップ付加、スプライシング、3’末端 切断後のポリAの付加を受けてmRNAとなる 基本的に1つのmRNAに1遺伝子 Fig.6-21 RNAポリメラーゼ(前回の復習) DNAからRNAの転写を行う酵素 DNA依存性RNAポリメラーゼ 真核生物 3種類ある。それぞれ8∼12個のサブユニットからなる RNAポリメラーゼI リボソームRNA (28S、5.8S、18SrRNA) RNAポリメラーゼII RNAポリメラーゼIII タンパク質遺伝子(mRNA) 転移RNA (tRNA) 5SrRNA その他 原核生物 1種類のみ。α2、β、β‘、σの5つのサブユニットから成る。 α α 古細菌 1種類 真核生物型 β’ σ β σ因子は 数種類 10.1 mRNAの合成とプロセッシング 10.1.1 細菌mRNAの合成 図10-1 細菌では、転写と翻訳はしばしば共役している 10.1.1 原核生物mRNAの合成 細菌の転写の伸長段階 核小体 カハール小体 図10-2 大腸菌の転写伸長複合体の模式図 RNAポリメラーゼは12∼13bpの 転写の泡構造を含む約30bpのDNAを覆っている。その中では、RNAが8bp程度 のRNA-DNA塩基対を介してDNAの鋳型鎖と結合している。 原核生物のσ(シグマ)サブユニット2 シグマ因子は プロモーター配列の 認識に関わり、転写開始後 数個のRNAを連結したのち にコア酵素から外れる Dojin news N0.094より プロモーター配列はシグマ因子ごとに異なる ゲノムサイエンスと微生物分子遺伝学(培風館)より 原核生物のRNAポリメラーゼの構造 α α β β’ 原核生物の転写終結 内在ターミネーター Rho因子非依存性ターミネーターとも言う Tが続く(多くの場合6個以上) 回文配列 原核生物 Rho因子依存性ターミネター Rho ヘリカーゼ(塩基対をほどく活性を有する酵素) Rhoは、転写産物をつたってRNAポリメラーゼを追いかけるヘリカーゼである。 ポリメラーゼがヘアピンで停止するとRhoは追いつき、RNA-DNA塩基対を解消して 転写産物を放出させる。 図10.4 原核生物 抗転写終結(アンチターミネーション) アンチターミネータータンパク質 オペロンの転写開始点付近 のDNAに結合し、RNAポリ メラーゼが最初の終結シグ ナルを通過する際に、ポリメ ラーゼへと移動する。抗転 写終結タンパク質は、内在 性ターミネーターの不安定 化作用を打ち消したり、Rho 依存性ターミネーターにおけ る停止を阻害することによっ てポリメラーゼに終結シグナ ルを無視させると考えられて いる。 図9.5 図10-5 原核生物 転写減衰(アテニュエーション) リーダーペ プチドの遺 伝子 アミノ酸合成系によく見られる リーダーペプチド(非常に短い ペプチド)に最終産物のアミノ 酸を含むようになっており、特 定のアミノ酸が欠乏してリダー ペプチドの合成が進まないと、 リボソームがその上で停止す るためにRNAの2次構造が変 化し、内在ターミネーターのヘ アピンループ形成が阻害され るため下流の転写がかのうと なる。 図10.6 リーダーペプチド トリプトファン(W)が2個ある 大腸菌のトリプトファン オペロン制御 1−2、2−3、3−4はそれぞれ ヘアピンループを形成できる。ループ3−4 の形は内在ターミネーター 1−2 2−3 1−2 3−4 トリプトファンがあるとき リーダーペプチドが簡単に 出来てループ1−2が形成し その結果ループ3−4も出来るために 内在ターミネーターが現れ mRNAがポリメラーゼから外れる トリプトファンがないとき リーダーペプチドが出来ず 途中でリボソームが停止する ため、ループ2−3ができる するとループ3−4が出来ないので 4以降の転写が可能となる 3−4 1−2 2−3 Yanofsky, 図10.6 C.RNA 2007 枯草菌トリプトファンオペロンの制御 大腸菌の制御に似ているが TRAP(trpRNA結合転写減衰 タンパク質)を利用する点が 異なる。 TRAP-RNA複合体 11量体 球状の分子が トリプトファン 図10.7 A B 黄色 トリプトファン 付きTRAP結 合する配列 枯草菌トリプトファ ンオペロン制御 TRAPタンパク質が関与 Yanofsky, C.RNA 2007 トリプトファンがあるとき TRAPタンパク質にトリプトファンが つくとAの黄色の配列に結合し、 ループB(ターミネーター)が形成し mRNAがポリメラーゼから外れ 下流を転写できない。 B トリプトファンがないとき TRAPタンパク質がmRNAに結合 しないために、ループAが出来る ため、下流の転写が可能となる A 10.1.2 真核生物mRNAの RNAポリメラーゼIIによる合成 プロモータークリアランスとプロモーターエスケープ プロモータークリアランス 転写開始前複合体からRNA合成を 開始した複合体への移行をさす プロモーターエスケープ ポリメラーゼがプロモーター領域から 離れ、転写産物の合成に専念しはじめ るまでの過程をさす 図10.8 キャップ形成因子は最初に RNAポリメラーゼII上に存在する 約25ヌクレオチド 合成後RNAに 乗り移る Fig.6-23 キャップ構造 RNAを約25ヌクレオチド合成後に5’末端にキャップが付加 翻訳(タンパク質合成)をするための目印 通常のRNA合成とは 逆向きであることに注意 図10.9 ポリAの付加 一次転写産物の3‘末端を特異的に切断後、ポリAを付加する 切断促進因子F 切断ポリアデニル化 特異因子 図10.10 約200個の“A”を付ける ポリ(A)付加とRNAポリメラーゼIIによる 転写終結との関係 RNAポリメラーゼIIに 乗っかってやってくる F 図10.11 B型DNA Fig.7-6 ポリA付加の詳細 Fig.6-38 10.1.3 イントロンのスプライシング イントロン 真核生物によく見られるコードDNAの様々な領域を隔てる介在配列 図10.12 イントロンの頻度 高等真核生物は高く、下等真核生物は低い 例 酵母ゲノム全遺伝子約6000のうち、イントロンのある遺伝子は239に対して、 哺乳類では、多くの遺伝子に50以上のイントロンが存在する。 イントロンの成り立ちの仮説 イントロン後生説 イントロンは比較的最近出現し、真核生物のゲノムに徐々に 蓄積したという仮説 イントロン前生説 イントロンは古代から存在し、真核生物のゲノムから徐々に 失われてきたという仮説 イントロンの種類 真核生物のタンパク質コード領域中に見出されるイントロンは2種類 ・GU−AGイントロン 最も多く見出される一般的なイントロン ・AU−ACイントロン 非常に少ない(ヒトで20種ぐらい?)が、GU-AGイントロンと 似たような機構でプロセッシングを行う ヒトのイントロンの例 1遺伝子中のイントロンの数はまちまち 脊椎動物のGU-AGイントロンの保存配列 GU-AGイントロンは、5’-GU-3’で始まり、5’-AG-3’で終わる 図10.13 詳細 Py: ピリミジン塩基(UまたはC) Fig. 6-28 GU-AGスプライシングの概要 2段階の反応 エステル転移反応(1) 投げ縄構造 エステル転移反応(2) 1段階 5’末端の切断 イントロン配列内に位 置するアデノシンヌクレ オチドの2’-炭素につい たヒドロキシル基による エステル転移反応が起 こり、5’のホスホジエス テル結合が切断され、 イントロンの最初のGと 内部アデノシンとを結 ぶ新たな5’-2’ホスホジ エステル結合が形成さ れ、投げ縄構造を形成 図10.14 2段階 3’切断部位の切断とエキソンの結合 上流エキソンの3’末端のOH基が、3’末端切断部位のホスホジエステル結合を攻撃し、 投げ縄構造のイントロンを遊離させる。それと同時に、上流エキソンの3’末端は下流 エキソンに生じた5’末端と結合し、スプライシング反応が終了 スプライシングの2つの異常な形態 イントロンが長くなると潜在的に間違う可能性が高くなるが、これを防止する方法がある 図10-15 エキソンの 長さはほぼ 一定だが イントロンには とても長い ものもある (特にヒト) Fig.6-32 GU-AGイントロンのスプライスソーム スプライスソーム(splicesome) snRNPなどによってスプライシング反応が行われる場所 snRNA 核内低分子RNA (small nuclear RNA) snRNP 核内低分子リボ核タンパク質 (small nuclear ribonucleoprotein) 図10.16 snRNA snRNAがタンパク質と結合した複合体 U1、U2、U4、U5、U6 (脊椎動物では106塩基[U6]から185塩基[U2]) が関与する。 スプライソソームの形成 前駆複合体 U1 ・U1-snRNP 5’切断部に結合 ・SF! 分岐部位に結合 U2 ・U2AF35 ポリピリミジン部位に結合 ・U2AF65 3’切断部位に結合 前駆スプライソソーム複合体 ・U2-snRNPが分岐部位に結合 ・U1-snRNPとU2-snRNPが相互作用し 5’切断部位と分岐部位が接近する スプライソソーム ・U4/U6-snRNPとU5-snRNPが結合 ・3’切断部位が5’切断部位と分岐部位 の近傍にくる ・U6-snRNPによって2つのエステル 転移反応が連続反応として起こる 図10-17 SRタンパク質 スプライシング部位の選択に重要な役割をする C末端にセリン(略号S)とアルギニン(R)に富んだ領域を含むことから名付けられた 前駆体複合体内でU1-snRNPとU2AFの結合を確立 エキソンスプライシングエンハンサー(ESE)とも相互作用する 1つめ 2つめ 図10-18 前駆複合体の集合に関するもう1つのモデル(図10.17に対する) 個々の前駆体(黄もしくは青)はエキソンをまたいで形成されるところが特徴 エキソン明示仮説 SRタンパク質はmRNA前駆体のエキソンに結合して、snRNPを適当なイントロン/エキソン 境界へと誘導するという説。SRタンパク質によるエキソンの範囲決定は転写と同時に起こり、 5’末端のCBC(キャップ結合複合体)のところで始まる。mRNA前駆体のイントロンには極端 に長いところがあるが、hnRNP(ヘテロ核内リボ核タンパク質)複合体に詰め込まれて扱い やすい構造となり、おそらくあやふやなスプライス部位も隠れるのだろう。hnRNP好んでイン トロンと結合し、スプライソソームがエキソンとイントロンを区別するのを助けているとされる。 しかし、図にあるように、少なくとも一部のhnRNPはエキソンにも結合する。 Fig.6-33 AU-ACイントロンの特徴 (GU-AGに対して) GU-AGイントロン AU-ACイントロン ほとんど似た機構で進む が、両者で共通なのは U5-snRNPが用いられる だけで、あとのsnRNPは 異なるものが使用される。 コンセンサス配列も異なる Fig.6-34 選択的スプライシングにより 様々なタンパク質が出来る(1) 図10.19 選択的スプライシングにより 様々なタンパク質が出来る(2) 1種類の遺伝子から複数種類のタンパク質が作られる タンパク質数 85,000から100,000種(ヒト) 遺伝子数 25,000程度(ヒト) Fig.6-27 ショウジョウバエの性決定遺伝子のスプライシング 制御(1) 図10.20(A) ショウジョウバエの性決定遺伝子のスプライシング 制御(2) 図10.20(B) ショウジョウバエの性決定遺伝子のスプライシング 制御(3) 図10.20(C) 選択的スプライシングの例 ヒトslo遺伝子 Wikipedia 蝸牛(かぎゅう)の基底膜上にある有毛細胞の聴覚特 性を決定 20∼20,000Hzの異なる周波数の音に応 答 細胞の応答性は部分的にSloタンパク質の特性に よって決まり、500種類以上のタンパク質が1種類の遺 伝子から作られる 聴毛 蝸牛 入口 Gravely, BR.. Trends in Genetics 2001 入口 奥 奥 基底膜 上 選択的スプライシング 下 構成的スプライシング 図10.21