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地球温暖化と農業 ~GTAP モデルによるシミュレーション

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地球温暖化と農業 ~GTAP モデルによるシミュレーション
地球温暖化と農業
~GTAP モデルによるシミュレーション~
滝澤 聡志*・亀山 宏**
* 神戸大学国際協力研究科・修士課程、**香川大学農学部助教授
要
約
気候変動は、さまざまな手段によって人類社会や生態系に影響を及ぼしているが、本
研究では、気候変動の農業に対する効果を中心に考察を行い、今日の世界の農業に対す
る中期的な気候変動の効果を実験した。
GTAP モデルの 8 地域・8 産業・財の区分を用いて気候変動の効果を計測し、部分均
衡と一般均衡の厚生インパクトの間の差異を検討した。気候変動をそれぞれの地域にお
ける農業部門のヒックス中立的な技術変化として捉えた。作物成長に対する CO₂の影
響を含んだシナリオと、含まないシナリオを用いた。
作物成長に対する CO₂の直接的影響を加味したデータを用いてシミュレーションを
行った結果、平均的な消費者の財、サービスに対して支払う額の変化の地域差を示した。
特に上昇の激しい地域は、メキシコとアセアンで、それぞれ、3.54%、1.44%の消費者
物価指数の上昇を経験し、逆に、中国の消費者物価指数は 0.68%低下した。総合的には、
メキシコとアセアンの厚生はそれぞれ 2.78%、1.73%低下した。
この二つの地域は、最も大きい作物生産性の低下を被った地域である。その他の地域
はすべて、厚生が相対的にわずかではあるが上昇し、その他の地域 ROW は 0.12%の厚
生の低下をもたらす。メキシコ、アセアン、ROW が厚生の増加した地域によって損失
分を補償されると仮定するならば、世界全体の厚生は非常にわずかではあるが増加する。
カナダと EU は、すべての農産物について輸出シェアを増加させる。アメリカはコメ
貿易において比較優位を持つ。作物によっては生産性の相当な低下がみられるにもかか
わらず、農産物に対する最終需要はかなり非弾力的であり、農産物に対する世界の需要
量(または生産量)の増加はごくわずかである。しかし、消費者はさまざまな非農業の
生産要素を必要とする加工農産物を消費する傾向があるために、消費者に対するインパ
クトは鈍化する。加工農産物の価格は農産物そのものと比較して気候変動の影響を受け
にくい。
Keywords:GTAP モデル、応用一般均衡分析、気候変動
111
1.序論
現在、世界には、63 億人の人口が存在している。さらには、世界銀行の報告によれ
ば、2025 年までに 83 億人まで増加し、そのうちの 85%は開発途上国に住む人々にな
ると報告されている。その 83 億人の人口が十分な食料を得、良好な栄養状態を維持す
るためには、食糧生産の飛躍的な増加が必要となる。そのためには、耕作地の拡大や更
なる技術進歩が必要となってくるが、これらの不可能性も存在している。さらに、近年
懸念されている問題として挙げられるものは、地球規模的な気候変動であり、それによ
る農業へのインパクトの問題である。
気候変動は、地球上で常に起こってきた現象ではあるが、産業革命以降、石炭、石油
などの化石燃料の利用の結果発生する CO₂の蓄積によって加速度的に進行し、さらに
は木材調達のための森林伐採によりその勢いは加速されてきている。気候変動を懸念し、
自然科学系を中心に様々な研究機関が気候変動のシミュレーションを行ってきた。その
なかで代表的なものである、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は以下のような
シミュレーション結果を提供している。(1)地球規模の意味での気温は現在より 2025 年
までに1℃、21 世紀中に3℃上昇する(2)地域的な気候変動は、特に降雨量について地
球規模の意味でのそれと異なる(3)高緯度地域では地球規模の意味での気温の上昇より
も大きく上昇する(4)世界平均降雨量は 3~15%増加する(5)土壌湿度は高緯度地域では
増加するが北中緯度地域では蒸発のため減少する。
このような影響をもっとも強く受ける産業は農業である。農業は製造業、サービス業
等とは異なり、温度、湿度、土壌条件等の自然の影響を強く受ける産業である(荏開津
1997)。
そのため、気候変動の影響について農業を中心に経済学の視点で研究することには大
きな意義がある。この研究では、気候変動による農業生産の地球規模、地域規模での変
化が世界の各地域の産業構造、貿易構造、経済厚生等にどのように波及していくのかを
GTAP(general trade analysis project)model,ver.5 を用い、応用一般均衡分析(CGE 分
析)に基づき、定量的に分析する。
112
2.課題と方法
2.1 既存の研究の成果と課題
第1章で述べたように、農業は他の産業と比較して、気候変動の影響を強く受ける。
そのため、いくらかの経済学者は気候変動の経済学的関連を、農業に焦点をあてながら
研究してきた。そのなかで、代表的な研究は、John Reilly の研究グループによるもの
である。Kane,Reilly, and Tobey(1991)は、気候変動が経済に与えるインパクトを評価
するために、SWOPSIM(the Static World Policy Simulation)モデルを使用し、気候変
動を作物生産性の変化の結果生じる農産物の供給関数のシフトとしてモデルを拡張し
た。その結果、彼らは、気候変動は地球規模の現象であり、国際貿易の調整が必要にな
ると主張した。この主張は正しい。しかしながら、SWOPSIM モデルは部分均衡モデ
ルであり、所得変化は微小で、非農業部門は気候変動による影響は受けないと仮定され
ている。そのため、地球規模の現象である気候変動の経済学的影響を考察するに当たっ
ては、GTAP モデルのような、応用一般均衡分析モデルが必要になってくる。さらには、
これらの部分均衡分析による厚生評価が一般均衡によるそれの合理的な近似を与えう
るか否かも研究されなければならない。
Kokoski and Smith(1987)は、閉鎖経済における気候変動が経済厚生に与える影響を、
部分均衡分析により評価した。彼らは、アメリカ経済に近似させた合成データベースを
用いて、アメリカ経済を表現したモデルでは、部分均衡分析は一般均衡分析のかなりの
近似を与えるが、開発途上国を表現したモデルについてはそうならないと結論付けた。
この研究では、部分均衡分析が一般均衡分析の合理的な近似を与えるか否かという問題
を世界的なコンテクストのなかで考察していない。
2.2
課題
今研究では、前節で挙げた既存の研究が気候変動の影響を大きく、ないしは小さく評
価していた程度を是正し、気候変動によって世界の農業に起こりえる経済学的なインパ
クトの包括的な評価を、部分、一般均衡両方の結論を用いて考察してみようと思う。
2.3 実験方法
a.モデル
実験方法は、GTAP model の最新のバージョンである GTAP model,ver.5 を用いる。
このモデルの過去のバージョンとの違いは以下のとおりである。
(1)1997 年の世界経済を反映した新しいデータベース
(2)サービス貿易の扱いの改善
(3)OECD 諸国における国内農業支持政策の扱いの改善
(4)農業と製造業に対する関税範囲の改善
(5)IEA に基づくエネルギー使用データの使用
113
(6)地域、産業区分の追加
以上のような特徴を GTAP model,ver.5 は持っている。
b.地域と産業の区分
この研究では、GTAP モデルの 24 の地域、37 の産業とそれぞれ 8 つに区分する。そ
の明細は表 1 に示してある。地域はカナダ(CAN)
、アメリカ(USA)、メキシコ(M
EX)、EU、中国(CHN)、ASEAN、オーストラリア(AUS)、その他の地域
(ROW)に区分される。産業は、米、小麦、その他の穀物、その他の作物、家畜、加
工農産物、製造業、サービス業に区分される。
c.気候変動の捉え方
作物生産性は気候変動により地域規模、地球規模でかなりの影響を受けるはずである。
そのため、今研究では気候変動を作物セクターにおける Hicks-neutral な技術変化とし
て捉えることとする。
作物生産性に対するインパクトの仮定は、表2のとおりである。表 2-a で示されてい
るものは、作物成長に対する CO₂の直接的影響を加味しない場合の作物生産性の変化
率である。この表を見ると、すべての地域で収量が下がっており、世界平均で見ても、
小麦の-16%から米の-26%と、かなりの差が見られる。地域別に見ても、メキシコの-43%
から、カナダの-3%までと、作物別で見た場合よりも大きな差が見られる。
一方、表 2-b で示されているものは、作物成長に対する CO₂の直接的影響を加味し
た場合の作物生産性の変化率である。この仮定は、表 2-a で示されたものとはかなり異
なっている。メキシコ、カナダ、その他の地域を除いて、作物生産性はプラスに転じて
おり、すべての地域での作物生産性は表 2-a のそれよりも好転している。
今研究を通して、表 2-b の仮定のほうをシミュレーションに用いることにする。なぜ
なら、CO₂の影響を加味したデータのほうが、加味しないデータよりもより現実的であ
るためである。しかし、シミュレーション結果の仮定に対する当てはまりを検証するた
めに、図 2-a のデータをもちいてシミュレーションを行う。
本研究において、3つの点が気候変動をモデリングする上で強調されなければならな
い。
(1) 表2の仮定を、作物生産性の Hicks-neutral な変化として解釈する。すなわち、
気候変動は GTAP におけるすべての投入の生産性に影響を与え、その影響の強度
は投入量の水準に関係がない。
この仮定は GTAP の生産関数の特徴(付加価値と中間投入の代替不可能性)によく
当てはまり、表2の産業区分にもよく当てはまる。
(2) 気候変動に反応して農家が選択する技術変化はないと考える。
今研究は中期フレームで行われているため、この仮定は適切である。農家にとって生
114
産技術の変更は長期の時間を要する。
(3) 気候条件の改善による、利用可能な土地の潜在的な拡大の有益なインパクトは考
慮しない。
2.4
GTAP データから得られる情報
表3は、今研究で利用するGTAPデータ(個人家計の予算シェア、生産シェア、消費
シェア、需要弾力性)を示している。
3.GTAPモデルの概要
GTAP モデルとは、アメリカのパデュー大学の T.W. Hertel 教授を代表として国際貿
易が世界各国に与える影響を評価する目的で 1992 年に設立された国際貿易分析プロジ
ェクト(The Global Trade Analysis Project)によって開発された応用一般均衡モデルで
ある。応用一般均衡モデルの多くがそうであるように、GTAP モデルもまたデータベー
ス、モデルおよびソフトウエアが一体となったものである。データベースは 45 の国・
地域、50 の産業部門からなる国際産業連関表が基礎となっている。一方、データベー
スを管理したり、モデル記述・解法するソフトウエアとして GEMPACK が用いられて
いる。
GTAP モデルは、データベースとモデルが公表されており、世界的な規模で GTAP
コンソーシアムが形成されている。モデルは、世銀、WTO などの国際機関や、各国政
府によっても利用されている。
3.1
GTAPモデルの特徴
経済構造政策にかかるモデル・シミュレーション分析においては、経済主体の部門別
の動向を捉えることが重要であり、一部門からなるマクロ計量モデルでは不充分である。
ここで使う応用一般均衡モデルと一般均衡モデルは現実経済における経済主体の行
動を構造的に捉え経済政策の変更が資源配分、所得配分、経済厚生などに及ぼす効果を
分析評価することができる。
応用一般均衡モデルの一つであるGTAPモデルは、国際貿易が世界各国に与える影
響を評価する目的で国際産業連関表を基礎に作成されたものである。また国際経済問題
の定量的分析をはじめる際のコスト削減にも貢献してきた。
GTAPモデルのデータベースは、各国・地域内の産業間の投入産出データだけでな
く、各国・地域間の貿易財の取引、輸送コスト、及び、関税・非関税障壁データを統合
したものである。またこのデータベースはオーストラリアの産業委員会が進めてきたS
ALTER(Sectoral Analysis of Liberalizing Trade in the East Asian Region)のも
115
のを使用しており、国・地域区分・産業区分の分類は表にある通りである。
また、GTAPモデルでは各国地域ごとに、生産者、民間家計、政府の存在が仮定さ
れており、民間家計と政府は地域家計における広義の取引主体としている。図1は基本
的なマクロ経済の枠組みであり、各取引主体はこのような流れで貨幣が流通していると
仮定することができる。
そして、このデータベースにおける特徴としては、輸入自主規制や非関税障壁によっ
て実現された割当量については、関税によっておきかえられるということがある。例と
してあげると、米の輸入関税はゼロであり、輸入が全て禁止されると、国内米の価格が
世界平均価格の二倍であるとするならば、関税率は 100%として計算されているのであ
る。また、このデータベースでは、輸出額と輸入額において、輸出額が本船渡し額(F
OB)であり、輸入額は関税及び保険・運賃も含んだ価格(CIF)であるので、輸送
サービスといった部門も導入されているのである。
GTAPモデルでは、同一の財を取引するにあたっての市場価格(market
と要素価格(agent
price)
price)の二つに存在する差を TAX として表現している。これら
の価格は企業の生産財・企業の生産要素・中間投入・地域家計の購入財・企業の輸出財
といったことにより計測されている。すなわち、国・地域により産業別にわけられてい
るのである。また、等価変分の変化の代替的な計算が可能であり、その際には技術進歩
による変化・交易条件の変化・資源配分変化・生産要素の変化といった要因に分解する
ことも可能である。
116
地 域 家 計
民 間 消 費
民 間 家 計
政 府 消 費
貯
蓄
貯
蓄
政
要 素 所 得
民間国内取引
地 域 投 資
生
産
者
生産者間取引
その他の世界
基本的なマクロ経済構造
117
政府国内取引
府
3.2
GTAPモデルにおける基本的な構造
GTAPモデルにおける基本的な構造を示すと次のようになる。
(ただし、GTAP
モデルでは、複数の財について取引市場が存在し、それぞれの市場において需要と供給
が均衡することが仮定されている。
)
・ 貿易可能な財について
VOMir =
VDMir
+ VSTir + Σs∈REG VXMDir
VOMir:r国で生産されたi財の市場価格で評価された額
VDMir:r国で需要されるi財の市場価格で評価された額
VSTir:r国からのi財の輸出にしはらわれる輸送費用
VXMDir:r国からi国に輸出されるs財の輸出額
すなわち、生産される財は貿易に関しては、生産された財の価値はどの国に輸出しよ
うが、国内で需要された額と輸送費用・そして輸出額との合計によって表すことができ
る。
また、産業連関から、つぎのような式にあらわすこともできる。
VOMir =∑j∈prod VFMijr
VFMijr:r 国の j 産業の i 生産要素に対する需要
・
国内需要(VDMir)と、輸入に対する、需要(VIMir)に関しては、それぞれ、
次のような式が成り立っている。
VDMir=VDPMir+VDGMir+∑j∈prodVDFMirj
VDPMir:r国におけるi財に対する民間家計の国内需要
VDGMir:r国におけるi財に対する政府の国内需要
VDFMirj:r国におけるi財に対するj産業の中間財国内需要
VIMir=VIPMir+VIGMir+∑j∈prod VIFMirj
VIPMir:r国におけるi財に対する民間家計の輸入需要
VIGMir:r国におけるi財に対する政府の輸入需要
VIFMirj:r国におけるi財に対するj産業の中間輸入需要
これら 2 つのモデル式はGTAPモデルが民間家計と政府は、地域家計という広義の
取引主体として考えられているのでそれぞれ成立しているのである。
118
市場における評価額は前に述べたようになるが、各産業部門における費用構造は次のよ
うにあらわすことができる。(各産業における企業は超過利潤が 0 となることが仮定さ
れている。すなわち各産業は新規参入企業が少ない状態である長期均衡にはいっている
とかんがえている。
)
VOAir=∑j∈TRADVDFAijr+∑j∈TRADVIFAijr+∑i∈ENDWVFAijr
また、企業の中間投入・支払いは、支出税をふくんでいるので、各企業のエージェン
トプライスから支出税を差し引いたものが市場価格として表現することができる。
3.3
企業行動
GTAPモデルにおける企業行動は、産業連関において、企業は、規模に関して収穫
一定の技術を持ち、生産量を所与として中間投入と生産要素投入を費用最小化原則に基
づいて決定する。 すなわち小さい方の投入要素量にあわせるように生産量は決定され
るのである。このようなことからモデルはレオンチェフ型関数であることがいえる。し
かし、生産に関してはこのようなことがモデル化できるが、生産要素である土地・労働・
資本についてはそれぞれ一定の代替性が働くのでモデルの関数はCES型関数である
といえる。このことは中間投入である国内財と輸入財においてもあてはめることができ
る。
(図 2)
・ CES型関数
QVAir=eavajrt{∑i∈ENDWdijr(QFEijreafeijr t)σj
QFEijr:r国j産業におけるi生産要素の投入需要量
dijr :r国j産業におけるi生産要素の投入量シェア
afeijr:r国j産業におけるi生産要素集約型技術進歩率
σj :j産業における生産要素間の代替弾力性
上のモデル式は生産要素におけるCES型関数であり、生産要素投入量(QVAir )は
土地・労働・資本の 3 つの代替弾力性に大きく左右されるということがわかる。また、
企業は費用最小化行動をとるので、生産要素における最適条件は次のようになる。
pvajr=∑i∈ENDWSVAijr(pfeijr-afeijr)
pvajr :r国i産業における生産要素の集計価格
SVAijr:r国i産業における生産要素の費用比率
pfeijr :r 国i産業における生産要素の価格
また、同様にCES型関数である中間投入における輸入財と国内財の振り分けについて
もモデル式を仮定し最適条件を導くことができる。
119
QFijr=eafijrt(dDijrQFDijr+dMijrQFMijr
QFDijr:r国 j 産業における国内財i財の中間投入量
QFMijr:r国j産業における輸入財i財の中間投入量
dDijr:r国j産業におけるi財の国内中間財シェア
dMijr:r国j産業におけるi財の輸入中間財シェア
σDi:i財の国内財と輸入財の代替の弾力性
中間投入における輸入財と国内財のCES型関数のモデル式は上のようになる。
そして、企業は中間投入においても費用最少化行動をとるので、最適条件を導き出すと
次のようになる。
qfdijr=qfijr-σDi(pfdijr-pfijr)
qfmijr=qfijr-σDi(pfmijr-pfijr)
Pfijr=FMSHRijrpfmijr+(1-FMSHRijr) pfdijr
pfdijr :r 国 j 産業における国内中間財i財の価格
pfmijr :r 国 j 産業における輸入中間財i財の価格
pfijr:r 国 j 産業における中間財i財の価格
FMSHRijr
:r 国 j 産業における輸入中間財i財の費用比率
となる。またアルファベットの小文字で表したものは各数値の伸び率である。
120
労
働
地
資
本
国
内
財
C E S 型
中 間 投 入
C E S 型
産
輸
入
財
121
土
生 産 要 素
レオンチェフ型
生
生産の構造
3.4
地域家計行動
GTAPモデルにおいては、各国・地域における民間家計と政府は、地域家計という
広義の取引主体として扱う。そして地域家計は限られた予算のなかで、効用を最大にす
るように行動すると仮定される。また、GTAPモデルのなかでは、民間家計動学的最
適化行動を分析する方法として効用関数としてコブ・ダグラス型のものが使用されてお
り、各支出のシェアは固定されていることになる。そして、効用関数に貯蓄を導入する
ことにより、貯蓄は一つの財とみなして計算することが可能になる。ここで地域家計は
民間家計と政府の集合体と考えられるが、消費支出においては、政府は輸入財と国内財
とに区別して考える必要が生じるので別に考えなければいけない。民間家計において支
出関数は、CDE関数が使われており、この関数は代替弾性の差が一定であるのが特徴
である。すなわちCES関数が代替性固定関数であるのに対して、CDEは可変的に使
用することができるのである。 このような事柄をモデル化すると次のようになる。
INCOMEr=PRIVEXPr+GOVEXPr+SAVEr
PRIVEXPr=PPRIVrUPrPOPr
GOVEXPr=PGOVrUGr
SAVEr=PSAVErQSAVEr
INCOMEr:所得
PRIVEXPr:民間家計の消費支出
GOVEXPr:政府の消費支出
SAVEr :貯蓄
UPr :民間家計の一人あたりの実質消費支出
UGr :政府の実質消費支出
QSAVEr:貯蓄量
POPr:人口
PPRIVr:民間家計の消費支出価格
PGOVr:政府の消費支出価格
PSAVEr:貯蓄価格
この上のモデルからもわかるように貯蓄はただ量や全額ではなく一つの単位として
あつかわれている。また、一人あたりの効用水準は民間家計の消費支出から表すことが
でき、つぎのようになる。
Ur=UPr UPSHRr (
UPSHRr:民間家計消費支出の所得に占めるシェア
UGSHRr:政府消費支出の所得に占めるシェア
QSAVESHRr:貯蓄の所得に占めるシェア
122
この関数は前述の通りコブ・ダグラス型であり、各支出のシェアは固定されているこ
とになり代替弾力性は 1 をしめすことになる。
そこで、消費支出を民間家計と政府の二つの立場からみてみると、民間家計における消
費支出は次のモデルで表すことができる。
YPr=E(UPr
,PPir)
=min{∑i∈TRAD
PPir QPir|U(QPir : i∈TRAD ) UPr}
YPr :民間家計の消費支出額
QPir:i 財への消費支出
PPir:価格ベクトル
・ CES 型関数
∑i∈TRAD Bir Uprβirγir (
βir
) βir=1
:
3.5
世界貯蓄の概念
GTAPモデルでは、貯蓄・投資バランスについても注意を払う、必要がある。G
TAPモデルは多くの国や、地域で構成されているので、各地域の貯蓄と投資は一致
する必要はないが、全世界における銀行セクターをもうけることにより各国・各地域
の貯蓄の総計である世界総貯蓄と、投資の合計である世界総投資とは、一致する必要
がある。これをモデルにすると次のようになる。
GLOBINV=∑r∈REG(REGINVr-VDEPr)
=∑r∈REG SAVEr=GLOBSAVE
GLOBINV:世界の総投資
GLOBSAVE:世界の総貯蓄
REGINVr:r 国における粗投資
VDEPr:r 国における減価償却
SAVEr:r 国における貯蓄
また、銀行セクターの導入により、各国における減価償却を上回る投資、すなわ
ち、純投資をひきだすことができる。減価償却についてその割合を減価償却率
(DEPRr)であらわすと次のようになる。
123
KEr=REGINVr ‐VDEPr + KBr
=REGINVr +(1-DEPRr ) KBr
KBr:期首の資本ストック
KEr:期末の資本ストック
また、今までと同様に伸び率を小文字であらわすと次のようになる。
ker=INVKERATIOrreginvr+(1-INVKERATIOr)kbr
INVKERATIOr:
また、GTAPモデルにおいては、レンタル財からの収益と資本からの収益を分けて考
えることにより純資本収益率(RORCr)については次のようになる。
RORCr =
RENTALr:資本サービスのレンタル費用
PCGDSr :資本サービス価格
また、これも同様に伸び率であらわすと、
rorcr
すなわち
GRNETRATIOr とは r 国における粗収益と純収益との比率であるという
ことがあらわされている。このような状況において投資決定に重要な意味をもってくるの
は期待資本収益率(ROREr)であり、これは r 国において投資が実施されたとして、それ
によって資本収益率が減少されるであろうことが予想されるときにその数値を予想するこ
とを目的に使われる。
ROREr=RORCr
であらわされ、伸び率は
rorer=rorcr- RORFLEXr(ker -kbr )
となり、RORFLEXr は資本ストックに対する期待資本収益率の弾力性である。
GTAPモデルにおける銀行セクターにおける貯蓄の投資については以上の通りで
あるが、その貯蓄を分配する段階においては2つの枠組みに各国・地域を分けることに
よって分類している。つまり、第一のパターンは期待資本収益率が各国・地域間で均等
化される場合であり、国際間で資本移動が自由に行われることを意味する。この場合そ
れぞれの期待収益率は、世界全体の資本の期待収益率(rorg)と一致する。第二のパター
ンは第一パターンとまるで逆である状況、つまり国際的に資本移動が自由ではないため
124
に期待資本収益率が各国・地域間で異なっている状況である。この場合、各国における
投資と貯蓄の伸び率は同じとなる。
第一パターン):
rorer=rorg
第二パターン):
rorg =Σr∈REG
3.6
輸送サービスの概念
国際貿易においてGTAPモデルでは、前述した通り FOB ベースと CIF ベースが存
在しており、その差である輸送費用について明確にモデルにとりいれる必要がある。そ
こで世界銀行セクターのように世界中の輸出入に関する費用を取り扱うセクターを取
り入れて考えていく必要がある。すなわち、このセクターは取引国間の貿易の FOB ベ
ースと CIF ベースの差である輸送サービスを提供するものとして考える。
このセクターにおけるサービス総額(VT)は、
VT =∑i∈prodΣr∈REG VSTir
=∑i∈TRADΣr∈REGΣs∈REG VTWRirs
VTWRirs= VIWSirs-VXWDirs
VSTir:i 財の r 国からの輸出に支払われる輸送サービス総額
VTWRirs:i 財の r 国から s 国への輸出で支払われる輸送サービス額
VIWSirs:i 財の r 国から s 国への CIF ベースの輸入額
VXWDirs:i 財の r 国から s 国への FOB ベースの輸出額
とあらわされ、銀行セクターのように総額を単価と数量であらわすと次のように
表すことも可能である。
VT =QTPT
QT:輸送サービス総量
PT:輸送価格
これから輸送技術の進歩をコブ・ダグラス型関数であらわすと次のようになる。
VT pt=∑i∈TRADΣr∈REG VSTirpmir
125
qstirs+pmir=qt+pt
VTqt=∑i∈TRADΣr∈REGΣs∈REG VTWRirs( qxsirs-atrirs)
qstirs:i財の r 国への輸送セクターへの販売量
pmir :i財のr国における市場価格
qxsirs :i 財のr国からs国への輸出量
atrirs :i財のr国からs国への輸送技術進歩率
これらのことより、i財のr国からs国への輸入価格(pcifirs)はつぎのように求めるこ
とができる。
pcifirs =FOBSHRirspfobirs+TRNSHRirs(pt-atrirs)
pfobirs:i財のr国からs国への FOB ベースの輸出価格
FOBSHRirs:i財のr国からs国への FOB ベースの輸出比率
TRNSHRirs:i財のr国からs国への輸出に占める輸送費比率
3.7
各関数のまとめ
これまでに述べたようにGTAPモデルにおいて外部からのさまざまな弾力性はモ
デルの設定及び解析においてとても重要な役割を担っているといえる。GTAPモデル
で使われる弾力性として4種類に分別できる。
1.企業部門の生産関数における生産要素の代替の弾力性
2.国内財と輸入財、また、輸入財の輸入元間の代替の弾力性
3.民間家計の消費支出の価格弾力性と所得弾力性
4.資本ストックの変化に対する期待資本収益率の弾力性
(1)代替弾性(生産要素)
GTAPモデルでは財・産業別にはことなっているが、国・地域間では、全て共通の
値となっている。また、企業部門における代替弾力性は生産要素間の組み合わせの滑ら
かさを示すものである。代替弾性がゼロの場合相対価格が変化しても固定された一定量
のそれぞれの生産要素が必要になる。(レオンチェフ型関数)また、弾性値が1の場合、
常に相対価格の変化に応じて分配率を一定にするように数量調整がされることになる。
(コブ・ダグラス型関数)産業別に見てみると農林水産業部門では相対的に低く、サー
ビス産業ほど高くなっているのがわかる。
126
(2)代替弾性(輸入財と国内財)
輸入財と国内財の代替の弾力性は、内外財の相対価格が変化した場合に、国内供給量
と輸入量の相対的な数量の比率の変化をあらわすものである。輸入財と国内財が同一財
について共存しているという現実を捉えるために、財の不完全代替を想定して用いられ
ており、この値がゼロということは、相対価格が数量に無関係ということになる。また、
サービス業などに比較して一部の製造業で相対的に大きくなっている。なお、異なる地
域間の輸入に対する輸入元間の代替弾性は、内外財の代替弾性の二倍とされている。
(3)需要の弾性値
GTAPモデルの需要(消費)の所得弾性値(γir)及び(補償されてない)自己価
格に対する弾性値(εir)は国・地域により産業別にわけられている。需要の所得弾性
値は、所得が一単位変化したときにどれほど需要が変化するかしめしたものであり、所
得水準に応じてそれぞれの財への需要シェアが変化するためにCDE関数を使用して
いる。また(補償された)自己価格の弾性値(βir)は需要所得弾力性から次のように
計算される。
βir =εir +ѕirγir
εir =-ѕirγir
ѕir:財の支出シェア、ω:所得の限界効用の逆数のマイナス
(4)資本ストックの変化に対する期待資本収益率の弾力性
GTAPモデルにおいては各地域間で異なる値を設定することが可能である。この弾
性値は小さくなればなるほど、新たな資本の供給は、期待収益率の変化に対してより感
応的になる。すなわち、地域間での変化を均等化させるためには、各地域における投資
の変化が大きくなる必要がある。
127
4.実験のシナリオ
ここでは、モデルの 4 つの異なる実験結果を比較する。まず 2 つの部分均衡(PE)
実験、一般均衡(GE)実験を行う。2 つの部分均衡実験にあたり生産性ショックのデ
ータは表 2-b(作物成長に対する CO₂の直接的影響を加えたもの)である。この実験の
結果を同様のデータを使用して実験された一般均衡実験の結果と比較する。最終的に、
本論文では、表 2-a のデータを用いて一般均衡の実験を行う。これにより農業と世界規
模の厚生への気候変動のインパクトを評価するうえでの作物成長に対する作物成長に
対する CO₂の直接的影響の相対的な重要性を評価する。
部分均衡シミュレーション(PE1)では、気候変動の影響を農業財にのみ限定する。実
験ではでは、以下の 4 つの事柄を仮定する。(1)作物・家畜産物の価格と生産量は内生
変数とする、(2)農業以外の部門の産物の価格と生産量は外生変数とする、(3)生産要素
価格のなかで地代価格のみが内生変数である、(4)家計の所得変化が消費者需要に与え
る影響は考慮しない。このように、実験では、作物・家畜部門は 6 つの新しい価格(米、
小麦、その他の穀物、その他の作物、家畜、地代)に直面して、産出供給と投入需要を
調整する。
他の部門は産出供給は一定のままであり、生産要素と中間投入要素の需要も変えない
(しかし、相対価格の変化に応じて特定の農産物の供給地のパターンを変える)。すべて
の財に対する家計需要は相対価格変化により変化する。すべての産業部門と家計は、作
物や家畜の国内生産品、輸入品、または生産地にかかわりなく需要の構成を変える。
作物部門の生産性が低下するにつれて、その産出物の価格が上昇し、生産要素やその
他の投入要素の需要が削減される。地代は部門における土地の重要性に比例して増加す
る。高い地代と飼養のコストの増大は家畜製品の生産費を増加させる。農産物生産の比
較優位と貿易収支の変化は、最終的な均衡を決定する。
二番目の部分均衡の実験(PE2)は最初のものよりもわずかに一般的である。ここ
では、農業加工産業が新しい経済環境に反応するのを許容する(すなわち、その産出価
格と生産水準が内生となる)。結果、農産品価格の上昇は農業加工産業のコストの上昇
に反映される。同様に、このことは加工製品の需要に影響を与え、それゆえに、農業製
品の需要を引き出す。実験PE1と同様に、地代のみが内生の生産要素で、家計の所得
は消費者需要に影響を与えない。
一般均衡のクロージャーはGTAPの標準的なものを用いる。中期の実験では、すべ
ての部門は新しい経済環境に調整すると仮定され、すべての市場は不確実性がなく、家
計所得の変化は十分に消費者需要に反映される。
なお、今回の実験における GTAP の solution method 等は以下のとおりである。
Solution method(gragg)、Number of solutions(3)
、Steps of solutions(2,4,6)、
Automatic accuracy(94%)
、figures(4)である。
128
5.実験結果
5.1.部分均衡シミュレーションの結果
表 4-1 は、部分均衡シミュレーション 1(内生変数を農産物に限定)の結果である。
表 4-1-a は各地域における生産者価格の変化率である。生産地が異なれば別の生産物と
して扱うというアーミントン仮定が効いてかなり変化している。予想どおり、世界平均
の農産物価格は変化している。しかし、世界平均の供給量(4-1-b)は大きく変化していな
い。その他の穀物の生産者価格が最も大きく上昇しており(21.34%)、これはその生産
性のショックが最も大きいためである。
地域ごとにみると、カナダがその他の地域と比較して作物生産性がかなり増加してお
り、小麦を除いた生産者価格は下落している。一方、メキシコとアセアンは、生産性の
低下が最も大きく生産者価格はもっとも上昇している。生産性の変化は、比較的小さい
フローが地域の需要と供給を均衡に導くために変化せざるを得なくなる貿易変化にお
いて強調される。カナダと EU はすべての農産物について、輸出量が増加する。メキシ
コとアセアンは、すべての農産物について、輸入量が増加する。より一般的には、純輸
出国の生産性が低下すると、貿易市場で取引される財の量は減少する。
この実験では、家畜の産出量は、その他の穀物、その他の作物の価格変化によって大
きく左右される。例えば、アメリカではその他の作物の価格は低下しているがその他の
穀物の価格が上昇しているため、結果として飼養のコストが上昇し、家畜の産出量は
0.25%減少している。逆に、カナダでは、その他の穀物、その他作物の両方の価格が低
下し、飼養のコストが低下し、家畜の産出量は 5.61%増加している。
消費者価格の変化は正確には、消費者が他の需要者(中間投入として需要する企業等)
と同様に価格が異なる率で変化する輸入財も需要するため、生産者価格の変化と一致は
していない。消費者物価指数(CPI)は消費者の直面するすべての価格水準へのインパク
トを要約したものである。アメリカ、EU、カナダの消費者物価指数の変化はほかの地
域に比べて小さい。その原因は、(1)農産物に対する消費者の予算シェアが小さい、(2)
ほかの地域と比較して消費者価格があまり変化しない、などである。
本研究の部分均衡シミュレーションでは、消費者、納税者、生産者それぞれの余剰の
変化の総計を厚生変化の指標としてとらえる。納税者余剰、生産者余剰は所得変化とし
てとらえることとする。その他の地域を除くすべての地域で消費者余剰の変化は所得変
化を上回っている。生産性の低下の大きいメキシコとアセアンにおいて厚生は低下する。
表 4-1 の結果は GTAP の弾力性の性質に依存している。結果を決定する上でもっと
も重要なパラメーターは外国財への需要のアーミントン弾力性である。表 4-1 の生産者
価格の結果は、アーミントン弾力性が相対的に硬直的な貿易パターンを生み出している
ことを示唆している。この硬直的な貿易パターンによりカナダ、アメリカ、メキシコの
小麦価格にかなりの開きが生まれている。アメリカはカナダの小麦を少量だけ輸入し、
129
それによりアメリカの小麦価格は上昇を免れている。しかし、カナダからの輸入量はア
メリカの小麦価格とカナダのそれとを同じにするには不十分である。もし貿易パターン
がもっと弾力的であれば、カナダ、アメリカ、メキシコの小麦価格は世界平均の約 0.6%
低下するはずである。しかし、同時にメキシコでは作物生産性が低下するため、必然的
に耕作地を削減せざるを得なくなり、最大の食料輸入国となると見込まれるが、明らか
に、このことは中期の間には起こりえない。そのため、アーミントン仮定は GTAP に
適していると考えられる。
表 4-2 は、加工農産物部門を内生変数として追加した場合の部分均衡シミュレーショ
ンの結果である。メキシコとアセアンにおいて、加工農産物の生産者価格はそれぞれ
6.34%、3.03%上昇している。その理由として、
(1)これらの地域では、作物生産性が低下し、貿易パターンも硬直的であるため農産
物の価格が上昇する、(2)加工農産物部門にとって、主な原材料は農産物である、など
の 2 点があげられる。
加工農産物に対する需要は世界平均で 0.64%低下する。結果、農産物価格は部分均衡
シミュレーション 1 の結果ほどは上昇しない。また、地域によっては農業が気候変動に
よる生産性の低下を相殺するだけの労働、資本の雇用を創出できなくなる。このことは、
部分均衡シミュレーション 1 よりも農業雇用の上昇が小さいメキシコとアセアンにつ
いて言える。
表 4-2-j の厚生変化をみると、消費者余剰の損失によってメキシコとアセアンの厚生
が大きく低下している。。消費者余剰の損失は、加工農産物の価格の上昇によって説明
でき、所得の増加も部分均衡シミュレーション 1 よりも小さい。
5.2
一般均衡シミュレーションの結果
表 4-3 において、一般均衡シミュレーション 1 の結果は、生産量、輸出量はともに部
分均衡シミュレーション 2 の結果とほぼ同様だが、厚生変化については異なる。とくに、
カナダとメキシコにおいては異なっている。カナダは農産物の純輸出国であり、気候変
動により作物生産性のもっとも大きな増大を得た地域である。一方、メキシコは農産物
の純輸入国であり、作物生産性のもっとも大きな減少を被った地域である。カナダは農
産物の生産が増加し、非農業部門は縮小する。また、消費者物価指数はサービス業と製
造業の価格が上昇するため高くなるが、生産者余剰が消費者余剰の損失を相殺するため
社会的厚生は約 26 億ドル増加する。メキシコは、農産物の生産が減少し、非農業部門
も縮小する。消費者物価指数は農産物、非農産物の価格が上昇するため高くなる。生産
者余剰、消費者余剰がともに減少し、社会的厚生は約 82 億ドル減少する。
部分均衡シミュレーションの厚生インパクトと一般均衡シミュレーションの厚生イ
ンパクトの比較は表 4-3-h に示されている。表 4-3-h の上段は、部分均衡シミュレーシ
ョン 1 の厚生変化の結果がどの程度一般均衡シミュレーションの厚生変化の結果を低
130
く見積もっているかを示唆するものである。アメリカを除いて、加工農産物を考慮しな
い部分均衡シミュレーション(PE1)は 50%以上も厚生に対する気候変動のインパクト
を低く見積もっている。カナダは、PE1 は 73.98%厚生に対する気候変動のインパクト
を低く見積もっている。加工農産物を考慮に入れた部分均衡シミュレーションは、アメ
リカを除いて、必然的に厚生への気候変動のインパクトをよりよくシミュレートできる
と見込まれる。
表 4-4 は、作物成長に対する CO₂の直接的影響を加味しない場合の作物生産性イン
パクトに基づく一般均衡シミュレーションの結果である。すべての財の価格が世界で見
て上昇している。生産者余剰の増加は消費者余剰の損失を相殺するほどには増加してお
らず、よってすべての地域で厚生は減少している。このことは、作物成長に対する CO
₂の直接的影響は必然的に気候変動の負の影響を相殺することを示している。また、そ
の影響を的確に計測することはシミュレーションを行う上で重要であるということも
示している。そのためには、気象学等の自然科学との学際的な研究が必要である。
6.考察
本研究では、気候変動の農業に対する影響を、需給均衡モデルによってシミュレーシ
ョンした。その結果、CO₂の作物成長に対する直接的影響を加味すれば、わずかながら
も世界の厚生水準は高まるという結果が導き出された。しかし、メキシコ、アセアンの
ようにかなりの影響を被る地域も存在するし、気候変動は予測しがたく、事前に対策を
立てておく必要がある。また、気候変動は本研究では世界的には厚生の減少をもたらさ
ないかもしれないが、経済以外にも、島嶼国の水没、生態系の変化、熱帯雨林の消失な
どさまざまな重大な影響を与えるものと考えられる。そのため、気候変動を経済的な理
由で無視することはできない。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)に代表される国
際機関を通じての国際協調は避けられない。
さて、本研究では、次のような2点が今後に残された課題である。
第 1 に、本研究で用いた地域区分の問題である。カナダ、アセアンなど、具体的な地
域に区分されたものに関して問題はないが、ROW に関してはさらに非集計化して区分
けする必要がある。ROW の中には、日本、南米、サブサハラアフリカなど、気候条件
の著しく異なる地域が集計して扱われているからである。トルコなどについてその影響
を検討するには、ROW から非集計化して扱う必要がある。気候条件が異なれば、当然、
作物生産性に対する気候変動の影響も異なってくるものと考えられる。つまり、ROW
にも作物生産性の上昇する地域と低下する地域が一括して取り扱われていることがあ
りうる。著しく気候条件の異なる地域を ROW として同じものとして区分するのではな
く、類似する気候条件の地域に区分しなおす必要があると思われる。
第 2 に、アーミントン仮定の適正についての疑問である。これにより農産物貿易に関
する非弾力性を仮定してきた。しかし、近年、中国の WTO 加盟等によって、世界経済
131
はグローバル化の様相を呈してきており、中期的にも、各国の農産物価格が世界価格と
同水準、ないしは近い水準になることがありえる。世界貿易のグローバル化という問題
は、各国の利権や、途上国政府の輸入代替等の開発主義的な通商政策、さらには民族間
の摩擦といった非経済的要因によって妨げられながらも、今後、経済のグローバル化は
さらに進むものと思われる。そのため、本研究で設けたアーミントン仮定は必ずしも適
切な仮定とはいえない。
もし、世界経済がすでにグローバル化されているとすれば、生産性の低下したメキシ
コとアセアンにおいて、農産物の大量の輸入が行われるものと思われる。そして、農産
物の輸入を行えば、農業に雇用されている労働者が失業者となる可能性が高く、これら
の地域では、失業対策としての社会保障制度を充実させて、失業者を再就業させるため
に労働訓練を行う必要もある。さらには、国家の主要産業である農業が縮小せざるを得
ないため、第二次産業、第三次産業を活性化する必要も出てくる。
参考文献
荏開津
典生:農業経済学、岩波テキストブックス、岩波書店、1997。
川崎 研一:応用一般均衡モデルの基礎と応用―経済構造改革のシミュレーシ
ョン分析、日本評論社、1999。
経済企画庁経済研究所編:経済分析、第 156 号、1998。
経済企画庁経済研究所編:規制改革による経済効果分析のための応用一般均衡
モデルの開発、1999。
チャールズ I.ジョーンズ:経済成長理論入門、日本経済新聞社、1999。
Thomas W. Hertel:Global Trade Analysis ― Modeling and Applications―
Cambridge University Press, New York, 1997
Tsigas, M., Frisvold G. B., and Kuhn B. 1997: Grobal Climate Change and
Agriculture, in Chapter 11 Global Trade Analysis, edited by T V. Hertel,
Cambridge University Press, pp. 280-304.
132
133
表2
気候変動の作物生産性へのインパクト
2-a 作物成長へのCO?の直接的影響を加味しない場合のインパクト(%)
CAN
USA
MEX
EU
CHN
ASEAN
米
0
-18
-43
0
-24
-35
小麦
-12
-21
-53
-12
-5
0
その他の穀物
-5
-20
-43
-8
-21
-40
1
-15
-43
-10
-15
-35
その他の作物
地域平均
-3
-17
-43
-9
-17
-34
AUS
-13
-18
-16
-16
-16
ROW 世界平均
-26
-26
-22
-16
-16
-18
-23
-19
-22
2-b作物成長へのCO?の直接的影響を加味した場合のインパクト(%)
CAN
USA
MEX
EU
CHN
ASEAN
米
0
1
-24
0
-3
-8
小麦
27
-2
-31
8
16
0
その他の穀物
15
-16
-35
1
-14
-33
26
14
-18
15
13
-11
その他の作物
地域平均
24
2
-24
11
3
-11
AUS
-12
8
5
9
8
ROW
表3
a.個人家計の予算シェア
CAN
米
0.001
小麦
0.012
その他の穀物
0.008
その他の作物
1.052
家畜
0.256
加工農産物
1.277
製造業
18.776
サービス
68.614
合計
100
-8
5
-3
2
-1
世界平均
-7
6
-9
6
GTAP モデルのデータベース
USA
0.002
0.008
0.018
0.549
0.15
8.571
16.282
74.418
100
MEX
0.001
0.001
1.485
3.169
1.441
23.887
15.461
54.581
100
EU
0.013
0.141
0.132
0.581
0.935
17.299
16.122
64.774
100
CHN
ASEAN
5.02
0.306
2.131
0.467
5.504
0.427
11.251
5.792
10.623
1.915
26.982
28.086
17.739
18.827
20.745
44.176
100
100
AUS
0.001
0.001
0.014
1.064
0.583
14.839
16.524
66.971
100
ROW
0.504
0.158
0.422
2.197
1.144
18.647
16.181
60.742
100
CAN
0.01
6.5
1.66
1.72
2.32
1.83
USA
1.17
20.94
21.6
14.32
15.02
15.22
MEX
0.16
1.18
4.81
2.99
2.56
2.11
EU
0.26
17.3
5.89
14.66
33.9
28.09
CHN
ASEAN
15.22
8.38
14.67
0.84
21.18
1.34
11.93
6.33
7.8
1.94
4.76
3.24
AUS
0.06
2.94
0.45
1.36
1.7
1.06
ROW
WORLD
74.75
100
35.62
100
43.07
100
46.69
100
34.76
100
43.68
100
CAN
0.01
0.65
1.31
1.91
2.15
1.86
USA
1.02
15.02
17.63
13.52
14.92
15.52
MEX
0.17
1.42
5.26
2.91
2.57
2.18
EU
0.36
15.78
5.78
17.79
34.33
27.99
CHN
ASEAN
15.22
8.36
17.29
2.28
20.37
1.5
11.51
5.75
7.62
1.99
4.2
2.98
AUS
0.05
1.17
0.22
1.18
1.17
0.99
ROW
WORLD
74.8
100
46.38
100
47.93
100
45.44
100
35.24
100
44.27
100
CAN
-0.984
-2.789
-0.98
-1.01
-0.399
-1.038
USA
-0.392
-0.881
-0.438
-0.763
-0.186
-0.664
MEX
-0.17
-0.418
-0.228
-0.552
-0.218
-0.639
EU
-0.642
-0.453
-0.415
-0.806
-0.159
-0.617
CHN
ASEAN
-0.029
-0.009
-0.381
-1.128
-0.161
-0.427
-0.248
-0.905
-0.307
-0.242
-1.327
-1.495
AUS
-0.809
-2.207
-1.913
-0.736
-1.506
-1.344
ROW
WORLD
-0.017
-0.012
-0.898
-0.029
-0.586
-0.028
-0.467
-0.039
-0.202
-0.043
-0.588
-0.211
b.生産シェア
米
小麦
その他の穀物
その他の作物
家畜
加工農産物
c.消費シェア
米
小麦
その他の穀物
その他の作物
家畜
加工農産物
d.需要の弾力性
米
小麦
その他の穀物
その他の作物
家畜
加工農産物
134
表4-1
部分均衡シミュレーション1の結果
4-1-a 生産者価格の変化率(%)
CAN
USA
米
2.09
-0.82
小麦
-19.19
1.5
その他の穀物
-10.67
19.87
その他の作物
-20.55
-13.44
家畜
-3.83
3.82
MEX
45.32
55.49
75.2
28.42
15.29
EU
-0.08
-9.05
-1.14
-14.52
-0.7
CHN
ASEAN
3.93
10.34
-16.95
-1.33
21.82
62.15
-14.25
11.65
0.89
1.03
AUS
15.77
-6.7
4.63
-3.39
0.69
ROW
WORLD
11.63
11.2
-0.63
-0.63
4.63
21.34
-3.39
-4.41
0.69
2.16
4-1-b 生産量の変化率(%)
CAN
米
1.76
小麦
52.38
その他の穀物
39.43
その他の作物
20.86
家畜
5.61
USA
4.73
-11.1
-3.74
8.7
-0.25
MEX
-12.12
-30.46
-13.49
-16.28
-8.1
EU
5.18
-0.48
8.11
9.1
1.16
CHN
ASEAN
0.67
-4.53
1.62
-9.18
1.38
-15.56
2.46
-16.81
0.47
-3.44
AUS
-3.67
-0.42
34.01
4.14
2.04
ROW
WORLD
-0.33
-1.08
-2.44
-0.01
5.35
6.936
-3.55
1.0775
-0.52
-0.378
4-1-c 輸出の変化率(%)
CAN
米
23.34
小麦
57.27
その他の穀物
137.1
その他の作物
75.55
家畜
30.8
USA
35.53
-35.2
-15.98
29.39
-8.39
MEX
-69.56
-89.67
-85.56
-70.99
-45.7
EU
38.56
0.07
65.16
36.39
7.78
CHN
ASEAN
17.69
-10.95
50.09
-26.91
-12.8
-55.83
39.28
-48.51
-1.23
-1.42
AUS
-25.58
-1.86
63.65
17.05
2.76
ROW
WORLD
-19.14
-1.26
-8.46
-6.83
28.67
15.5
-15.28
7.86
-0.68
-2
4-1-d 輸入の変化率(%)
CAN
米
6.68
小麦
-36.27
その他の穀物
-41.07
その他の作物
-14.88
家畜
-7.51
USA
-16.34
50.71
54.78
-23.02
10.27
MEX
99.84
132.12
75.05
71.96
28.46
EU
-5.74
8.53
-20.61
-14.69
-2.9
CHN
ASEAN
-12.33
4.55
-9.63
0.91
70.07
40.77
-20.6
26.72
2
-0.62
AUS
25.89
24.9
-8.14
-6.36
-0.7
ROW
16.28
0.83
-9.81
5.42
-0.83
4-1-e 地代の変化率(%)
CAN
18.12
USA
-0.45
MEX
20.55
EU
-1.8
CHN
ASEAN
-0.42
-0.284
AUS
3.334
ROW
0.408
4-1-f 農業雇用の変化率(%)
CAN
労働
11.34
資本
11.34
USA
0.694
0.694
MEX
13.36
13.36
EU
-0.01
-0.01
CHN
ASEAN
-0.01
2.792
-0.01
2.792
AUS
6.084
6.084
ROW
0.816
0.816
4-1-g 消費者物価指数の変化率(%)
CAN
USA
-0.35
-0.05
MEX
3.55
EU
-0.26
CHN
-0.49
ASEAN
1.57
AUS
-0.19
ROW
0.16
4-1-h 消費者余剰
CAN
700
0.13
USA
2493
0.05
MEX
-5620
-1.9
EU
3493
0.06
CHN
1309
0.29
ASEAN
-2016
-0.56
AUS
183
0.07
ROW
-145
0
WORLD
398
4-1-i 所得変化($)
CAN
-15
USA
-1162
MEX
2953
EU
252
CHN
-474
ASEAN
972
AUS
-45
ROW
4762
WORLD
7243
4-1-j 厚生変化($)
CAN
684
USA
1331
MEX
-2667
EU
3745
CHN
835
ASEAN
-1043
AUS
138
ROW
4618
WORLD
7641
変化率(%)
変化量($)
135
表4-2
部分均衡シミュレーション1の結果
4-2-a 生産者価格の変化率(%)
USA
-0.8
1.5
19.9
-13.4
3.82
0.0
MEX
45.3
55.5
75.2
28.4
15.29
6.3
EU
-0.1
-9.1
-1.1
-14.5
-0.7
-1.1
CHN
3.9
-17.0
21.8
-14.3
0.89
-0.3
ASN
10.3
-1.3
62.2
11.7
1.03
3.0
AUS
15.8
-8.8
-1.1
-9.2
0.07
-0.8
ROW WORLD
11.6
11.0
-6.7
-0.6
4.6
21.3
-3.4
-4.4
0.69
2.16
0.9
0.8
4-2-b 生産量の変化率(%)
CAN
USA
米
1.8
4.7
小麦
52.4
-11.1
その他の穀物
39.4
-3.7
その他の作物
20.9
8.7
家畜
5.61
-0.25
加工農産物
2.9
0.2
MEX
-12.1
-30.5
-13.5
-16.3
-8.1
-6.4
EU
5.2
-0.5
8.1
9.1
1.16
1.2
CHN
0.7
1.6
1.4
2.5
0.47
1.4
ASN
-4.5
-9.2
-15.6
-16.8
-3.44
-5.5
AUS
-25.6
-1.9
63.7
17.1
2.76
6.0
ROW WORLD
-19.1
-1.0
-8.5
0.0
28.7
6.9
-15.3
1.1
-0.68
-0.38
-3.0
-0.6
4-2-c 輸出の変化率(%)
CAN
米
23.3
小麦
57.3
その他の穀物
137.1
その他の作物
75.6
家畜
30.8
加工農産物
10.7
USA
35.5
-35.2
-16.0
29.4
-8.39
1.8
MEX
-69.6
-89.7
-85.6
-71.0
-45.7
-25.9
EU
38.6
0.1
65.2
36.4
7.78
8.1
CHN
17.7
50.1
-12.8
39.3
-1.23
3.1
ASN
-11.0
-26.9
-55.8
-48.5
26.72
1.2
AUS
-25.6
-1.9
63.7
17.1
2.76
6.0
ROW WORLD
-19.1
-1.3
-8.5
-6.8
28.7
15.6
-15.3
7.9
-0.68
-2.01
-3.0
-1.4
4-2-d 輸入の変化率(%)
CAN
米
6.7
小麦
-36.3
その他の穀物
-41.1
その他の作物
-14.9
家畜
-7.51
加工農産物
-2.6
USA
-16.3
50.7
54.8
-23.0
10.27
-0.6
MEX
99.8
132.1
75.1
72.0
28.46
8.7
EU
-5.7
8.5
-20.6
-14.7
-2.9
-3.8
CHN
-12.3
-9.6
70.1
-20.6
2.01
-1.6
ASN
4.6
0.9
40.8
26.7
-0.62
1.2
AUS
4.6
0.9
40.8
26.7
0.62
1.2
ROW WORLD
25.9
16.3
24.9
0.8
-8.1
-9.8
-6.4
5.4
-0.7
-0.83
-1.9
1.4
4-2-e 地代の変化率(%)
CAN
14.54
USA
-0.57
MEX
15.74
EU
-1.62
CHN
-0.26
ASN
-1.18
AUS
1.83
ROW
0.17
4-2-f 農業雇用の変化率(%)
CAN
USA
労働
9.92
0.62
資本
9.92
0.62
MEX
10.07
10.07
EU
0.19
0.19
CHN
0.22
0.22
ASN
1.41
1.41
AUS
5.39
5.39
ROW
0.55
0.55
米
小麦
その他の穀物
その他の作物
家畜
加工農産物
CAN
2.1
-19.2
-10.7
-20.6
-3.83
-1.7
4-2-g 消費者物価指数の変化率(%)
CAN
USA
MEX
-0.35
-0.05
3.55
4-2-h 消費者余剰
CAN
USA
MEX
変化率(%)
1274
2313
-8613
変化量($)
0.24
0.04
-2.89
EU
-0.26
CHN
-0.49
ASN
1.57
AUS
-0.19
ROW
0.16
EU
10910
0.19
CHN
1288
0.29
ASN
-3397
-0.95
AUS
348
0.13
ROW WORLD
-8063 -3940
-0.11
4-2-i 所得変化($)
CAN
-3
USA
-1123
MEX
1924
EU
-546
CHN
-98
ASN
-319
AUS
-11
ROW
3669
4-2-j 厚生変化($)
CAN
1271
USA
1189
MEX
-6689
EU
10364
CHN
1190
ASN
-3716
AUS
337
ROW WORLD
-4394
-447
136
WORLD
3494
表4-3
一般均衡シミュレーション1の結果
4-3-a 生産者価格の変化率(%)
CAN
USA
米
0.34
-1.7
小麦
-19.21
1.48
その他の穀物 -10.69
19.85
その他の作物 -20.58 -13.47
家畜
-3.86
3.79
加工農産物
-1.71
0.02
製造業
0.52
0.06
サービス業
0.57
0.07
MEX
42.61
55.46
75.17
28.39
15.27
6.32
-1.03
-1.39
EU
-1.31
-9.06
-1.16
-14.53
-0.72
-1.16
0.23
0.28
CHN ASEAN
1.98
7.89
-17.01
-1.43
21.73
61.93
-14.34
11.48
0.65
0.77
-0.43
2.62
0.15
-0.55
0.3
-0.98
AUS
13.56
-8.84
-1.18
-9.21
-0.01
-0.78
0.22
0.27
ROW WORLD
9.29
9.08
-6.8
-0.68
4.52
21.27
-3.55
-4.48
0.46
2.04
0.7
0.7
-0.09
-0.06
-0.11
-0.12
4-3-b生産量の変化率(%)
CAN
USA
米
2.45
4.16
小麦
52.39 -11.15
その他の穀物
39.33
-3.8
その他の作物
20.73
8.61
家畜
5.49
-0.33
加工農産物
2.75
0.14
製造業
-1.35
-0.04
サービス業
0.08
0.02
MEX
-11.87
-30.47
-13.5
-16.3
-8.11
-6.43
1.84
-0.84
EU
4.96
-0.53
8.05
8.96
1.08
1.12
-0.29
0.09
CHN ASEAN
0.83
-4.08
1.76
-9
1.49 -15.26
2.54 -16.63
0.62
-3.11
1.53
-4.99
-0.09
2.01
0.27
-0.2
AUS
-3.66
-0.39
34.02
4.08
1.86
1.78
-0.41
0.05
ROW WORLD
-0.17
-0.92
-2.24
0.05
5.53
6.98
-3.43
1.07
-0.38
-0.36
-0.63
-0.59
0.18
0.23
-0.01
-0.07
4-3-c 輸出の変化率(%)
CAN
USA
米
23.38
31.65
小麦
57.29 -35.19
その他の穀物 137.02
-16
その他の作物
75.12
29.12
家畜
30.52
-8.82
加工農産物
10.05
1.17
製造業
-2.79
-0.31
サービス業
-2.2
-0.36
MEX
-69.42
-89.67
-85.57
-71.07
-45.81
-26.26
6.27
5.68
EU
35.44
0.07
65.08
36.03
7.06
7.36
-1.36
-1.34
CHN ASEAN
18.11
-9.12
50.51 -26.56
-12.6 -55.62
39.39 -48.38
-0.81
-1.02
3.27 -11.03
-0.86
3.13
-1.55
3.68
AUS
-25.04
-1.7
63.81
16.97
2.47
5.36
-1.21
-1.19
ROW WORLD
-17.44
-1.56
-8.11
-6.67
29.05
15.65
-15.09
7.76
-0.22
-2.03
-2.53
-1.58
0.59
0.43
0.43
0.39
4-3-d 要素価格の変化率(%)
CAN
USA
地代
14.26
-0.96
労働賃金
6.4
0.05
資本価格
6.4
0.05
MEX
15.5
6.43
6.43
EU
-1.95
-0.19
-0.19
CHN ASEAN
-0.74
-1.76
-0.05
0.87
-0.05
0.87
AUS
1.43
3.26
3.26
ROW
-0.6
0.15
0.15
4-3-e 消費者物価指数の変化率(%)
CAN
USA
MEX
-0.35
-0.05
3.54
EU
-0.27
CHN ASEAN
-0.68
1.44
AUS
-0.2
ROW
0.1
4-3-f 所得変化(%)
CAN
0.7
USA
0.06
MEX
-0.98
EU
0.35
CHN ASEAN
0.45
-1.32
AUS
0.35
ROW
-0.09
CAN
2629
6.4
USA
2026
0.05
MEX
-8273
6.43
EU
17253
-0.19
CHN ASEAN
2397 -6216
-0.05
0.87
AUS
681
3.26
ROW
-8958
0.15
4-3-h 厚生比較(%)
CAN
$ millionUS$
73.98
%
51.65
USA
34.3
41.31
MEX
67.76
19.15
EU
78.29
39.93
CHN ASEAN
65.16
83.22
50.35
40.22
AUS
79.74
50.51
ROW
4-3-g 厚生変化
$ millionUS$
%
137
50.95
表4-4
一般均衡シミュレーション2の結果
4-4-a 生産者価格の変化率(%)
CAN
USA
米
11.51
28.64
小麦
24.24
33.03
その他の穀物
15.37
31.54
その他の作物
7.94
27.53
家畜
8.48
12.03
加工農産物
3.68
5.6
製造業
1.07
0.5
サービス業
1.14
0.53
MEX
128.51
169.02
123.5
115.83
33.2
14.88
-1.61
-2.42
E_U
4.23
20.44
14.24
17.15
3.49
3.8
0.68
0.69
CHN
50.02
11.51
42.52
29.86
12.78
11.53
0.57
-0.23
ASN
80.54
5.35
97.29
76.71
10.78
19.33
-1.13
-3.04
AUS
30.31
33.48
32.32
33.29
7.66
5.74
1.13
1.18
ROW
WORLD
59.61
49.17
41.49
42.32
31.04
48.48
46.94
44.41
10.66
12.39
10.95
9.44
-0.25
0.12
-0.65
-0.35
4-4-b 生産量の変化率(%)
CAN
米
24.88
小麦
16.83
その他の穀物
21.59
その他の作物
36.35
家畜
4.68
加工農産物
3.82
製造業
-2.58
サービス業
-0.35
USA
6.97
-2.17
1.21
9.24
0.55
0.39
-0.7
-0.33
MEX
-20.61
-42.29
-22.01
-24.28
-15.24
-12.67
2.21
-2.22
E_U
32.98
8.65
11.29
21.78
2.37
2.74
-1.32
-0.78
CHN
-4.01
-3.75
-3.5
-1.91
-9.68
-11.85
-4.85
-4.73
ASN
-16.9
11.37
-26.95
-25.25
-14.52
-20.97
2.83
-2.28
AUS
15.18
-7.35
0.47
6.06
2.32
2.11
-2.71
-0.57
ROW
WORLD
-3.61
4.36
-13.15
-3.98
-3.87
-2.72
-7.84
1.77
-5.2
-4.38
-5.9
-5.29
-0.46
-0.95
-1.1
-1.55
4-4-c輸出の変化率(%)
CAN
米
201.95
小麦
18.38
その他の穀物
65.71
その他の作物
175.83
家畜
18.31
加工農産物
22.74
製造業
-5.34
サービス業
-4.98
USA
51.24
-6.8
6.85
45.05
-3.81
13.41
-2.92
-3.89
MEX
-83.4
-95.5
-89.63
-81.77
-56.09
-27.73
10.5
9.32
E_U
319.68
38.45
74.15
103.72
33.49
24.99
-4.32
-5.13
CHN
-6.36
76.12
-14.11
40.34
-15.09
-13.92
-3.54
-2.08
ASN
-58.7
98.78
-63.54
-58.27
-6.26
-37.75
6.02
10.13
AUS
57.47
-14.2
-2.36
34.36
4.19
14.83
-6.62
-6.69
ROW
WORLD
-42.78
54.89
-30.24
10.62
-1.93
-3.11
-19.18
30.01
-8.84
-4.26
-11.24
-1.83
1.21
-0.63
0.94
-0.3
4-4-d 要素価格の変化率(%)
CAN
USA
地代
52.48
48.09
労働賃金
20.86
16.95
資本価格
20.86
16.95
MEX
5.94
18.73
18.73
E_U
34.07
15.62
15.62
CHN
24.47
7.85
7.85
ASN
33.64
7.58
7.58
AUS
33.05
16.06
16.06
ROW
37.95
11.38
11.38
4-4- e 消費者物価指数の変化率(%)
CAN
USA
MEX
1.57
1.14
7.58
E_U
1.46
CHN
13.29
ASN
8.68
AUS
2.19
ROW
3.16
4-4-f 所得変化率(%)
CAN
USA
MEX
1.26
0.44
-0.85
E_U
0.14
CHN
0.25
ASN
-2.89
AUS
1.59
ROW
-0.38
4-4-g 厚生変化率(millionUS$)
CAN
USA
MEX
-90.44
-29399
-19443
E_U
-59949
CHN
-31037
ASN
-26648
AUS
ROW
WORLD
-531 -177879
-43122
138
139
140
141
142
143
144
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