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持続可能な社会の実現に向けた NTTグループの取り組み
地球環境憲章 NTTの環境貢献を支える技術 主要行動計画目標 環境貢献ビジョン 持続可能な社会の実現に向けた NTTグループの取り組み NTTグループでは,持続可能な社会の実現に向け, 「NTTグループ地球環 境憲章」の理念・方針に基づき,グループ一体となって環境保護活動に取り にのみや 組んでいます.本稿では,事業活動に伴う環境負荷低減活動に加え,ICTサー 二宮 裕一郎 /杉山 泰之 ゆういちろう すぎやま やすゆき ビスの普及拡大による社会全体の環境負荷低減を目指した活動について, NTT環境推進室 NTTグループの取り組み事例を紹介します. 持続可能な社会の実現に向けて セプトとして1999年に制定した「NTT グループ・エコロジー・プログラム21」の Corporate Social Responsibility) もと,環境保護と事業活動の両立にグ を制定しました .図1に示すように, 降,環境問題に対する世界中の人々 ループ一丸となって取り組んでいます. 本憲章は,グループのCSRのあり方を の意識が高まっており,国内において ここでは,事業活動に伴う環境負荷低 表現した「CSRメッセージ」と,コミュ も,チームマイナス6%等の国民運動 減活動に加え, ICT(Information ニケーションをキーワードとして具体的 が実施されるなど,環境に対する取り and Communication Technology: な重点取り組みテーマを示した4つの 組みが活発化しています.企業にとっ 情報通信技術)サービスの普及拡大に 「CSRテーマ」から構成され,企業の ても,社会的責任の観点から,環境経 よる社会全体の環境負荷低減を目指 社会的責任として,グループ一体と 営の推進はこれまで以上に重要な経営 した活動について,NTTグループの取 なってCSR活動を行っていくための基 課題となっています. り組み事例を紹介します. 本方針を明示しています. 昨年2月16日の京都議定書発効以 NTTグループでは,環境問題がク ローズアップされる以前から,持続可 能な社会の実現に向けた取り組みを実 施しており,環境保護活動の基本コン 環境に対する考え方 ■NTTグループCSR憲章 N T T グループは, 本 年 6 月 に 【CSRメッセージ】 【CSRテーマ】 ■人と社会のコミュニケーション ①私たちは,より豊かで便利なコミュニケーション環境を実現するととも に,情報通信技術を活用し,人口減少・高齢化社会における様々な課題 解決に貢献します. ■人と地球のコミュニケーション ②私たちは,自らの環境負荷を低減し,地球にやさしいコミュニケーショ ン環境を構築するとともに,情報通信サービスの提供を通じて社会全体 の環境負荷低減に取り組みます. ■NTTグループ地球環境憲章 CSRテーマの1つである「人と地球 のコミュニケーション」では,「自ら の環境負荷低減」と「情報通信サー ③私たちは,情報セキュリティの確保や通信の利用に関する社会的な課題 に真摯に取り組み,安心・安全な利用環境と新しいコミュニケーション 文化の創造・発展に尽くします. ④私たちは,社会を支え生活を守る重要なインフラとして,災害時にも強 い情報通信サービスの提供に努め,いつでも,どこでも,だれとでもつ ながる安心と信頼を提供します. ■チームNTTのコミュニケーション ⑤私たちは,“チームNTT”の一員として,責任と誇りを胸に,高い倫理観 を持って事業に取り組み,個の成長に努めるとともに豊かな地域社会づ くりを推進し,社会的使命を果して行きます. ※チームNTTとは,派遣社員・契約社員も含めたNTTグループで働く社員のみならず, パートナーの皆様,NTTグループのCSRに賛同する退職した方々です. 図1 NTTグループCSR憲章 NTT技術ジャーナル 2006.12 (1) ■安心・安全なコミュニケーション 私たちNTTグループは,情報通信産業の責任ある担い手として,最高の サービスと信頼を提供し,“コミュニケーション”を通じて,人と社会と地 球がつながる安心・安全で豊かな社会の実現に貢献します. 6 「 N T T グループC S R 憲 章 」( C S R : 特 集 ビスの提供による社会全体の環境負 荷低減」をうたっています.N T T グ 通信系事業会社全体の契約数当りの CO2排出原単位を35%以上削減する (通信系事業会社:NTT東日本,NTT西日本,NTTコミュニケーションズ,NTTドコモ) ループ・エコロジー・プログラム21の 温暖化防止 コンセプトに基づき,地球環境保護に ソリューション系事業会社全体の売上高当りの CO2排出原単位を 25%以上削減する (ソリューション系事業会社:NTTデータ,NTTコムウェア,NTTファシリティーズなど) 関する基本理念と基本方針を示した 廃棄物削減 「NTTグループ地球環境憲章」では, 紙資源削減 ①法規制の遵守と社会的責任の遂行, 最終廃棄量を1990年レベルの15%以下に削減する 純正パルプ総使用量を1990年比の80%以下に削減する (2004年度に目標達成) ②環境負荷の低減,③環境マネジメ 図2 NTTグループ主要行動目標 ントシステムの確立と維持,④環境技 術の開発,⑤社会支援等による貢献, ⑥環境情報の公開,を掲げ,NTTグ 換算係数を前年と同等とした場合 ループ各社の環境憲章の礎となってい (2) ます . 1.0 1.0 1.0 0.77 0.8 事業活動に伴う環境負荷低減活動 ■NTTグループ主要行動計画目標 全国各地でサービスを提供するNTT グループは,事業規模が大きいため, 換算係数を前年と同等とした場合 1.2 1.2 1.0 0.73 0.75 0.8 0.6 0.6 0.4 0.4 0.2 0.2 0.0 電力使用量が全国の電力購入量の約 1990 2004 2005 2010 目標(年度) 0.0 0.69 1990 (a) ソリューション系事業会社 0.9%に達するなど,地球環境に対し 1.0 1.0 0.70 2004 2005 0.65 2010 目標(年度) (b) 通信系事業会社 図3 NTTグループのCO 2 原単位指数 て大きな負荷を与えています.そこで NTTグループは,事業活動に伴う代表 的な環境負荷として,情報通信設備 は,NTTグループが所有する全国のビ 力使用の削減などにより,約5%改善 の電力使用などに伴う温室効果ガス排 ル約4 000棟におけるエネルギーマネジ されています.一方通信系事業会社に 出,使用済み通信設備や建設工事, メントの推進,エネルギー効率の高い ついては,ブロードバンドサービスや携 オフィスからの廃棄物,電話帳などの 電力装置や空調装置の導入,サーバ・ 帯 電 話 関 連 設 備 の拡 充 により, 約 紙 資 源 の使 用 の3 項 目 を認 識 し, ルータなどIP関連装置への直流給電化 1 . 6 % 上 昇 する結 果 となりました. 2010年までの主要行動計画目標を策 による低消費電力の推進,および太陽 NTTグループは,今後も温暖化防止 定し,目標達成に向けて継続的な環境 光・風力発電システムなどのクリーン 目標の達成に向け,通信設備の効率 負荷低減に努めています(図2). エネルギーによる電力自給率の向上な 的な展開などを推進していきます. ■温暖化防止 どに取 り組 んでいます. その結 果 , ■廃棄物削減 NTTグループは,情報通信サービス の提供などにより,事業活動に伴う 2005年度は,グループ全体で約1.7億 kWhの電力削減を実現しました. NTTグループの目標であるCO 2 原単 CO 2 排出量の90%以上が電力の使用 *1 NTTグループでは,資源循環型社 会の形成を目指し,廃棄物のリデュー ス・リユース・リサイクル(3R)活 に起因しています.そこで,NTTグルー 位指数 の2005年度実績は,電力使 動を積極的に推進しています.特にグ プでは,1987年から「Save Power運 用量からCO 2 排出量への換算係数の変 ループ内における主な廃棄物排出要素 *2 動 」, 1995年 か ら 「 Super Save 更 Power運動」,1997年から「トータル 社,通信系事業会社ともに2004年度 パワー改革(TPR)運動」へと省エネ に比べ上昇しました(図3).しかし, *1 ルギー運動を拡大し,電力消費量の抑 2004年度と同じ換算係数で算出した *2 制にグループ一丸となって取り組んで 場合,ソリューション系事業会社の原 います.現在行っているTPR運動で 単位指数は,オフィスビルにおける電 もあり,ソリューション系事業会 である通信設備の撤去に伴う廃棄,建 CO2原単位指数:1990年度を1としたとき の各年度の相対的なCO2原単位. 2006年の地球温暖化対策推進法の改正によ り電力使用量からCO2排出量への換算係数 が2004年度の0.378 kg/kWhから2005年度は 0.555 kg/kWhに変更. NTT技術ジャーナル 2006.12 7 NTTの環境貢献を支える技術 築・土木工事に関連する廃棄,オフィ ラスチックなどの廃棄物についても,各 源の削減対策として,電話料金のお支 ス活動からの廃棄について,グループ 事業所においてISO14001をはじめと 払いを口座振替などで行っているお客 全体で最終廃棄量の削減に取り組ん し た EMS( Environmental Man- さまを対象に,インターネットや電子 でいます. agement System:環境マネジメン メール,携帯端末からいつでも請求明 交換機や通信ケーブルなどの通信設 トシステム)の構築に積極的に取り組 細などを確認できるビリングサービス 備は,撤去後,リユース可能なものに んでおり,分別回収によるリサイクル の普及拡大に努めています.N T Tグ ついてはグループ内で積極的にリユー 率向上に努めています. ループにおける2 0 0 5 年度のビリング スを行い,それ以外の設備については, これらの活動の結果,NTTグループ サービスの契約者数は約358.2万件に 可能な限りリサイクルを行っています. の2005年度の最終廃棄量は4万tと 達し(図5),従来の方法に比べ年間 例えば通信ケーブルについては,外 なり,2010年度の目標値(7.2万t) 約698.6t(A4用紙1億7 500万枚 被を剥離・ペレット(pellet)化し, を前倒しで上回ることができました. 相当)の紙資源を削減することができ 新しいケーブルの外被として再利用す NTTグループは,今後も廃棄物の3R ました. るなど,素材レベルでのリサイクルを 活動をさらに推進していきます. (3) 推進しています .これらの活動によ ■紙資源削減 ス内での事務用紙の両面印刷,電子 り,2005年度の撤去通信設備のリサ N T Tグループでは,多くの紙資源 決済によるペーパーレス化などに継続 イクル率は99.5%になり,2004年度 を使用しています.特に年間で約1億 的に取り組んでおり,2005年度の純 に続きゼロエミッションを達成しまし 2 950万部発行される電話帳による紙 正パルプ使用量は2.6万tまで削減す た(図4) . 使用量は約8万tにものぼり,全国で ることができました.紙資源削減につ ビルの建築・取り壊しや通信ケーブ 使用される紙全体の約0.3%にあたり いては,2010年目標である純正パルプ ルの敷設などの際に発生するコンクリー ます.そこでNTTグループでは,回収 使用量8.4万tを継続的に上回ってい トや木くずなどの建築・土木工事廃棄 した古い電話帳から新しい電話帳をつ ること,電話帳や電報用紙の古紙配合 物については,NTTファシリティーズな くるクローズドループリサイクルシステ 率は技術的な限界に達していること, どが中心となり,通信ビルなどの建物 ムを構築し,2001年4月から運用し さらにオフィス内における紙削減対策 の延命化施策による排出抑制や,より ています.古い電話帳は,新しい電話 がグループ内に浸透したことなどから, リサイクル率の高い中間処理業者の選 帳をお届けした際に回収するように心 2004年度末で目標を達成としました. 定によるリサイクル率の向上などに努 掛けており,2005年度は約4.7万tの 現在は,現状の純正パルプ使用量を維 めています. 古電話帳を回収することができました. 持するために,継続的な削減活動に努 またお客さまサービスにおける紙資 めるとともに,さらなる削減努力を行っ またオフィスから排出される紙・プ コンクリート電柱 交換装置類 通信ケーブル その他 撤去通信設備リサイクル率 (万t) (%) 97.6 30 98.1 99.2 99.5 100 94.7 リ サ 20 イ ク ル 量 10 26.4 21.0 20.4 22.1 0 2001 2002 2003 2004 21.8 NTT技術ジャーナル 2006.12 リ 90 サ イ ク ル 80 率 70 2005 (年度) 図4 撤去通信設備のリサイクル率とリサイクル量 8 その他の紙資源対策として,オフィ (t) 800 (万件) 400 700 紙削減量 350 600 契約者数 300 紙 500 削 減 量 400 250 契 約 者 200 数 300 150 200 100 100 50 0 0 2002 2003 2004 2005(年度) 図5 ビリングサービスの契約者数と紙削減量 特 集 NTTグループ環境貢献ビジョン NTTグループはブロードバンド・ユビキタスサービスを中心とするICTサービスの開発・普及により ライフスタイルやビジネスモデルの変革を促し,お客さまや社会の環境負荷の低減に貢献します 2010年の指標 ICTサービスにより削減されるCO2量 2010年に向けた 活動内容 ICTサービスの提供に伴うCO2量 CO2削減量1 000万トン ①環境負荷低減に資するライフスタイル・ビジネスモデルを実現する光アクセス利用者の拡大 ②ブロードバンド・ユビキタスサービスの拡大 ③事業活動に伴う環境負荷低減 ④お客さまの通信機器電力削減 図6 NTTグループ環境貢献ビジョン ています. 荷低減効果を,誰もが簡単に評価する サービスの開発および普及拡大に取り ことを可能にしたシステムです.本シ 組み,社会全体の環境負荷低減に貢 ステムを用いることにより,環境的側 献していきます. 面からのICTサービスの普及拡大に向 ■参考文献 CSR憲章における人と地球のコミュ けた取り組みが可能になりました.例 ニケーションにうたわれた「情報通信 えばNTT西日本広島支店では,すで サービスの提供による社会全体の環境 に事業所内で構築しているEMS活動 負荷低減」に向けた基本的な考え方と の一環として,お客さまへのソリュー (1) NTT CSR推進室:“NTTグループCSR報告書 2006,”2006. (2) 二宮・青木:“NTTグループの環境負荷低減 に向けた取り組み,”NTT技術ジャーナル, Vol.17,No.1,pp.8-11,2005. (3) NTT CSR推進室:“NTTグループCSR報告書 2005,”2005. して,「NTTグループ環境貢献ビジョ ション提案の際にシステムの環境負荷 ン」を策定しました(図6).NTTグ 低減効果を算出し,お客さまにシステ ループ環境貢献ビジョンは,N T T グ ム導入効果として提示するための活動 ループの事業活動そのものである情報 を行っています.またNTTデータでは, 通信サービスの提供と拡大によって, 自社におけるシステム開発の際に必ず 地球環境保護に貢献することをより明 環境影響評価を実施するように活動を 確にしたものです.情報通信サービス 展開しています.NTTグループは,今 の提供による2010年のお客さまと社会 後もお客さまや社会全体の環境負荷を 全体のCO 2 削減量の指標値,および削 低減するために,環境にやさしいICT 減を実現するための活動内容を定めて サービスの開発および普及拡大に努め, います. 2010年にCO 2 削減量1 000万tという ■ビジョン達成に向けた取り組み 環境貢献ビジョンの指標実現を目指し ICTによる社会全体の環境負荷低減活動 ■NTTグループ環境貢献ビジョン NTTグループでは,NTTグループ環 境貢献ビジョンの達成に向けた取り組 みを推進するために,NTT情報流通基 ます. 今後の取り組み 盤総合研究所においてICTサービスの NTTグループでは,NTTグループ 環境負荷低減効果を定量的に算出で C S R 憲 章 および地 球 環 境 憲 章 の理 きるシステム「環境しろう」を開発し 念・方針に基づき,今後も事業活動 ました.環境しろうは,これまで環境 に伴う環境負荷低減活動を継続的に の専門家しか評価できなかった環境負 実施するとともに,環境にやさしいICT (左から)二宮 裕一郎/ 杉山 泰之 NTTグループは,自らの環境負荷を低減 するために温暖化対策,廃棄物対策などを 継続的に実施するとともに,環境にやさし い ICTサービスの開発・普及に積極的に取り 組み,環境貢献ビジョンの実現を目指しま す. ◆問い合わせ先 NTT環境推進室 TEL 03-5205-5326 FAX 03-5205-5329 E-mail [email protected] NTT技術ジャーナル 2006.12 9