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静岡県立科学技術高等学校 国際化推進室
静岡県立科学技術高等学校 国際化推進室 月報 第3巻 5 号 発行 平成 25年 2月 22日 p1 今年の秋から冬にかけ、本校職員がヨーロッパ、アフリカ、アジア各地を訪れ、様々な見聞を得て てきました。身近な方々の貴重な経験を共有して、国際的視野を広げていきたいものです。 教員海外産業教育事情研修へ参加して 目次 ~ ドイツ・デンマーク ~ 「教育海外産業教育事情研修に 電子工学科 大村 整 参加してードイツ・デンマーク」 私は、今回平成 24 年度 教員海外産業教育事情研修 電子工学科教諭 大村整 p1 デンマーク に参加し、ドイツのフレン 「キリマンジャロ登頂記」 スブルグとデンマークのコ ペンハーゲンを訪問する機 コペンハーゲン 都市基盤工学科教諭 大澤俊幸 会を得ました。そこで見聞 したことをご報告します。 (インタビュー・構成 国際化推進室) p4 この研修には全国各地か フレンスブルグ 「第二回アジアショットガン・チャン ら産業教育に携わる 18 名 ピオンシップに参加して」 の教員が参加しました(農 ドイツ連邦共和国 業・水産の教員が5名、工 理科専門支援員 竹中利明 p6 業の教員が7名、商業・家 庭科教員が6名)。渡航先 のフレンスブルグ(ドイツ)では次の4か所の施設:HannahArendt-Schule(職業学校)、Krones AG-Werk Flensburg(ボトル・洗浄・充填機械製造)、Windpark Ellholt(風力発電)、Vega Salmon GmbH(鮭加工)を訪問し、またコペンハーゲンでも3か所の施 設を見学しました。海外産業教育の実情を知ることが本研修の一つの目的であり、それぞれの国の職 業学校を訪問し、お話を伺いました。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー フレンスブルグにて ードイツの職業教育デュアルシステムについて フレンスブルグはドイツ連邦共和国最北の町で、港町でもあるためドイツの中でも魚を食べる数少 ない町である。また国境の町でもあり、デンマーク人が買い物に訪れる所だ。このフレンスブルグで、 ドイツの職業教育システムである「デュアルシステム」を中心に話を聞くことができた。デュアルシ ステムは、企業と学校が共に教育に携わるものであるが、ドイツでは、地元商工会議所も関係してく ハンナーアレント職業学校にて 職業学校の生徒達 風力発電所 る。徒弟制度が残っているためである。日本と大きく違うのは、職業学校に入学するために、どこか 静岡県立科学技術高等学校 国際化推進室 月報 第3巻 5 号 p2 風力発電内部(12F に分割) 風力発電機械室(地上 68m) 鮭の燻製工場 の企業と見習い契約を結んでいなければいけないことである。 見習いの後に職人になるが、職人に なるために、資格が必要となる。その資格の試験を商工会議所が行うシステムになっている。すなわ ち、学校では理論と一般常識を学び、企業では実技を習得する。したがって、生徒は毎日学校へ通う わけではなく、学校へ登校する曜日が決まっている。また、見習いから職人になる資格試験は、ドイ ツでは地元の商工会議所が担っている。まさに、学校と企業と商工会議所が連携し職人を育てている のである。ちなみに、会社の社長になるためには、マイスターの資格を持っていないとなれないそう で、訪問した学校の先生たちもマイスターの資格取得者だった。 職業学校は複数個所に存在し、それぞれ担当する職種によって場所が分かれている。今回訪問した ハンナーアレント職業学校は、食に関する職種(コック、ウエイターなど)のレストラン関係であっ た(前ページ写真参照)。学校内の説明会場もレストランをそのまま再現した実習室とのことだった。 ドイツでは、教育にかかる費用は全て役所で持っているため、教育に全くお金がかからない。訪問 した職業学校では、他に福祉関連職種の教育も行なっていた。福祉には「見習い」がないため、1 日学 校で教育を受ける。ここでは、卒業するというより、資格を取得する場所として学校が存在するよう だ。授業教室は全てに鍵が掛けられており、部外者が教室内に入ることはできないようになっていた。 また、デュアルシステムを行っている企業も視察した。従業員 530 名の会社で、デュアルシステムで 45 名雇っているそうである。デュアルシステムで企業と見習い契約をすると約3年間の期間内に全て の部署を体験できるように、定期的に部署を異動させているとのことだった。 風力発電所もドイツでは有名である。Ellholt 風力発電所で、実際に風力発電装置の内部に入るチャ ンスを得た。高さが68メートルある柱の中は、12フロアに区切られて、はしごを登る形であった。 最上部にある機械室の屋根を開けて外を見ると、そこには、デンマークとの国境が目の前に広がって いた。オーナーに話を聞くと、2000 年に6機設置し、現在は借り入れたお金(900万ユーロ)は完 済し、収入を得るだけの状態となっている。この設置州では、発電量に対し使用電気量が少ないため、 発電を停止したりしているが、今後は、電気を海外に売って収入を得る計画だそうである。また、最 後に Vega という鮭の燻製工場を見学した。2012 年9月に稼働したばかりの工場で、1日に30トンの 鮭を燻製にするそうである。我々がこの工場を見学に訪れた最初の外国人グループということで大変 なもてなしを受けた。 コペンハーゲンにて フレンスブルグから貸切バスでコペンハーゲンに向かった。国境を全く意識することなくデンマー クに入国した。幸福度が世界5指に入る国だそうだが、その理由に興味を持った。コペンハーゲンは デンマークの首都で北ヨーロッパを代表する世界都市である。市名はデンマーク語の(商人たちの 港)"Kjøbmandehavn"に由来する。建物も、歴史的な建造物ばかりで、町全体に統一感があり大変美 しく感じた。 コペンハーゲンでは、スーパーマーケット、職業学校、自転車の製造販売事業所を訪問した。また、 静岡県立科学技術高等学校 国際化推進室 月報 第3巻 5 号 p3 半日自由な時間を取り、市内散策をすることができた。コペンハーゲン市民は健康に意識が高く、価 格は高いがオーガニック商品の購入を心がけているようである。ちなみに、間接税が25%もかかる ので、余計に高いと感じてしまう。また、労働時間も日本より短く、国の決まりで必ず1週間に1日 休暇を入れなければならず、土曜・日曜にスーパー等の店が開いているのは珍しいとのことだった。 スーパーマーケット内 生徒作品の椅子 クリスチャニアスバイク(社長) 北欧は家具が有名であるが、その職種の学校でもある Sukkerttoppen 生産技術高等学校を見学でき た。訪問した学校では、建築関係・歯科技工士関係・プロセスオペレータ関係・電子電気工学関係・ 家具関係の5つの職種に対応していた。家具の授業では、家から古い家具(椅子)を持ちより、オリ ジナルの椅子を考案作成する授業を行っていた。黄色いカバーがかかっているのは、生徒の作品で、 花からイメージして作成したそうである。完成後レポートにまとめ教員が評価するということだった。 次に、小さな町工場のような自転車製造販売会社を訪問した。CHRISTIANIABAIKE である。ここが、 自転車の前部に子供を乗せることのできる自転車を開発した会社である。コペンハーゲンの写真には、 必ず登場する乗り物である。自動車の走行が禁止されていたことから自転車が普及し、子供ができた 時乗せることができるように考えられたそうである。工場は、ボーンホルムへ移転してしまったが、 開発した場所を大切にするために、販売をこの場所で続けているとのことだった。また、この地は、 歴史的に複雑な場所であり、今回訪問しても写真を撮ったり走ったりしてはいけない、と忠告を受け て向かった場所でもあった。 コペンハーゲンというと、チボリ公園が一番に挙げられる。チボリ公園は、1843 年に開園し、施設 内には、色彩豊かな花々、屋外劇場、レストラン、乗り物、小さなお店などが入り子供から大人まで 楽しめる。開園期間は4月~9月で、秋冬はハロウィーンとクリスマスの季節だけ開園となる。惜し くも、帰国の日にクリスマス開園とのことで入園することができなかった。 コペンハーゲン庁舎 花火を見上げるアンデルセン 自転車道 市庁舎周辺には博物館や美術館があり、国立博物館ではデンマーク地方の歴史を多くの展示物で表 していた。この地方の風土の良さから多くの保存状態のよいミイラが多く展示されている点に驚いた。 また、バイキング時代の出土品も多く船の破片を組み合わせ、実物大で再現されている。多くの展示 物があるにも関わらず入館料は一切かからない。 文化・芸術の町であると強く感じた。 静岡県立科学技術高等学校 国際化推進室 月報 第3巻 第5号 p4 キリマンジャロ登頂記 都市基盤工学科教諭 大澤俊幸 (インタビュー国際化推進室) Q: この冬休みに、単身アフリカのキリマンジャロ山に登頂されたそうですが・・・。 A: 2012年12月26日に関空を出発し、ドーハ経由で27日にタンザニアに到着。28日に山に 入りました。登山は富士山以外の山は初めて、海外に行くのも初めて、しかも一人旅で、英語にも苦 労しましたが、たいへん良い経験ができました。 Q: ツアーではなく、個人でチャレンジされたのですか? A: はい。航空券は旅行会社にとってもらいましたが、個人で現地ガイドとポーターを手配し、3人で 登頂しました。大きな荷物はポーターさんが担いでくれましたが、自分でも 5.6kg を持ち、1日20 キロ歩き、キリマンジャロ山頂を目指しました。 Q:現地のガイドさんたちとはどのように意思疎通を図ったのですか? A:ガイドさんは英語を話せましたが、むこうの喋る英語は早口で聞 き取るのが難しかったです。もっぱら紙と鉛筆で「英語で筆談」を しました。英単語を覚えていったのが役にたちました。 (写真→)同行した現地ガイド・ポーターさんと Q: なぜ、遠いアフリカのキリマンジャロを目指されたのですか? A:キリマンジャロは南半球にあるため日本の冬休みに夏山装備で登れるからです。またエベレストな どは800万円程の非常に高額な入山料がかかりますが、今回のキリマンジャロ登頂は、飛行機・ガ イド・山小屋宿泊代すべて込みで41万円の費用ですみました。 Q:今回のキリマンジャロ登頂で感じられたことを教えてください。 A:山小屋に泊まりながら、毎日、 遥かに見える山頂を目指し歩きま した。アフリカは、暑いイメージ がありますが、頂上付近に近づい た最後は、マイナス20℃の永久 凍土の氷の壁に囲まれ、雪の中を 歩きました。頂上から下ると、花が咲いていて心を癒されまし た。生きている喜びを感じました。 静岡県立科学技術高等学校 国際化推進室 月報 第3巻 第5号 p5 Q:その他、今回の旅で印象に残られたことはありますか? A 現地の人々が家族を大切にしていることも印象に残りました。電気・水道もない土地で、子どもたち が外国人の旅行者に英語で話しかけてきます。食べ物をあげてもその場では食べず、家に持ち帰り皆 で分けて食べるようです。経済的に貧しくても心は豊かだなと思いました。また、生きていくために、 アフリカの子どもたちが達者に英語をしゃべるのに驚きました。自分も今回キリマンジャロへの一人 旅の際、英語を使いながら行動しましたが、これからの世界に生きる日本人の若者にとって、英語を 身につけることは本当に大切だと思いました。 Q ありがとうございました。今後も海外登山のご計画があるとのこと。ぜひまた色々教えていただくようお願いします。 ↓(写真)キリマンジャロ登山途中の風景より 静岡県立科学技術高等学校 国際化推進室 月報 第3巻 第5号 p6 第 2 回 アジア ショットガンチャンピオンシップ に参加して 理科専門支援員 竹中 利明 平成 24 年 11 月 30 日より 10 日間、私はインド北部パンジャブ 州にあるパティアラという街で行なわれたクレー射撃のアジア 選手権に日本代表として参加した。本会参加にあたり、こころ よく送り出してくださった科学技術高校の諸先生方に深く感謝 するとともに、試合の様子やインドで感じたことをお伝えしたい。 〔→地図 赤色がパンジャブ州〕 クレー射撃には男女各 3 種目があり、私はトラップ射撃種目の選手とし て参加した。トラップ種目とは、素焼きでできた標的が、15m 先から機械 によって時速約 100 キロで放出され、それを散弾銃で撃ち落とし、その数 を競う競技である。 今回アジアショットガンチャンピオンシップが行われた パティアラまでは、飛行機でニューデリー経由約 12 時間 の道程であるが、乗継が悪く、途中ニューデリーで一泊し ての到着であった。右写真はチャンピオンシップ試合中の 様子である。 試合には文字通りアジア中の選手が集まっており、大会 会場はさながら人種の見本市となっていた。この大会は毎 年行なわれ、各国がオリンピックを見据え、国の威信をか けてトップ選手を送り込んでくる大会であり、各国の強化 方針や、競技に対する動向がいち早くわかる。 今大会にはゲストでイタリアからも選手が来ていたが、オリン ピック選手である。(←左写真中央) 日本チームも次回のオリンピックを念頭に強化が始まっており、 アジアチャンピオンシップはその最初の試合となった。 結果として、わがトラップチー ムは団体 3 位、個人でも 2 位には いる選手が出るなど、まずまずの 成果であった。 私自身は、個人ではあまりふるわなかったが、今後のオリンピックト ライアルに向け、より練習を重ねなければと思っている。 また、インドの様子についても、感じたことをつづってみたい。知ってのとおり、インドは人口 10 億人とも 12 億 人とも言われ、町中に人があふれていた。また、それにともなって出るゴミの量も多く、いたるところにゴミが散乱 しており、廃棄物問題が顕著になっている様が見て取れた。 静岡県立科学技術高等学校 国際化推進室 月報 第3巻 第5号 p7 次の写真は、試合が行われたインド北部パティアラの街の風景である。 どこへ行っても人でいっぱい。 毎日道も大渋滞。 左車線が 空いている理由は、我々チャン ピオンシップ選手団の移動の ため警察が道路規制していた ため。 泊まったホテル(写真左)は、 すばらしい部屋だった。しか し、身分制度のためか貧富の 差が激しく、写真(右)のような スラム街が街中いたるところ にあった。 街はどこもゴミだらけ。一方、国民の 8 割以上がヒンドゥー教徒であるこの国では、牛は神聖なものであり、街中 でもこのように道をのんびりと歩いている。もちろん誰も怒らない。左写真の丸いもの はウシの糞を手でこねて固めたもので、燃料に使う。 現地でよく食べたご飯は・・・世界中で人気のマック!! でも、ウシは神聖なので食べられない。あるのはコロッケ バーガーとチキンバーガーとフィッシュバーガーとハムサラ ダバーガーだった(笑)。 編集後記:国際化推進室では、科技高教職員・生徒の「国際化」をめぐる様々な体験や知見を発信していき たいと考えています。感想をお寄せいただければ幸いです。 (国際化推進室 竹内美芳) 国際化推進室月報 第3巻 5号 発行: 2013年 2月22日 問い合わせ先: 〒420-0886 静岡市葵区長沼 500 番地の 1 静岡県立科学技術高校(国際化推進室) 電話 054(267)1100 FAX 054(267)1123