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(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 不死化ヒトケラチノサイト細胞系統で

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(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 不死化ヒトケラチノサイト細胞系統で
JP 3557172 B2 2004.8.25
(57) 【 特 許 請 求 の 範 囲 】
【請求項1】
不死化ヒトケラチノサイト細胞系統であって、該細胞系統が第8染色体において余分な長
いアームの同位染色体を有することを例外として、46の正常染色体組を含んでなり、該
細胞系統がATCC CRL−12191であることを特徴とする前記不死化ヒトケラチ
ノサイト細胞系統。
【請求項2】
異種遺伝子によりトランスフェクションされた請求項1の不死化ヒトケラチノサイト細胞
。
【請求項3】
10
導入遺伝子がマーカー遺伝子であることを特徴とする請求項2に記載の細胞系統。
【請求項4】
細胞が単層培養培地またはバイオフィルム中にあることを特徴とする請求項1に記載の細
胞系統。
【請求項5】
細胞が器官型培養培地にあることを特徴とする請求項1に記載の細胞系統。
【請求項6】
マーカー遺伝子がグリーン蛍光タンパク質をコード化することを特徴とする請求項3に記
載の細胞系統。
【請求項7】
20
(2)
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テスト用腫瘍細胞修飾剤の効果を測定する方法であって、
a)培養培地が悪性扁平上皮細胞と自然発生的不死化ヒトケラチノサイトとを含んでなり
、この培養培地が再構築表皮を形成する、ヒト重層扁平上皮細胞培養培地を得る工程、
b)テスト用腫瘍細胞治療剤により表皮を処置する工程、および、
c)表皮内の悪性細胞を評価する工程、
を含んでなり、前記ケラチノサイトがATCC CRL−12191であることを特徴と
する前記方法。
【請求項8】
悪性細胞が遺伝子工学的に標識化されていることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
10
遺伝子マーカーがグリーン蛍光タンパク質であることを特徴とする請求項8に記載の方法
。
【請求項10】
悪性細胞増殖の測定が蛍光活性化細胞分取によるものであることを特徴とする請求項9に
記載の方法。
【請求項11】
ヒトケラチノサイトが遺伝子工学的に標識化されることを特徴とする請求項7に記載の方
法。
【請求項12】
マーカーがグリーン蛍光タンパク質であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
20
【請求項13】
工程(c)の評価が細胞増殖に関するものであることを特徴とする請求項7に記載の方法
。
【請求項14】
工程(c)の評価が細胞サイズまたは形状に関するものであることを特徴とする請求項7
に記載の方法。
【請求項15】
悪性細胞が個々の患者組織から分離されていることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項16】
不死化ヒトケラチノサイトとヒト扁平細胞がん(SCC)細胞の組み合わせを含んでなり
30
、該ケラチノサイトがATCC CRL−12191であることを特徴とする器官型培養
培地。
【請求項17】
SCC細胞がSCC13y細胞であることを特徴とする請求項16に記載の培養培地。
【請求項18】
SCC細胞がグリーン蛍光タンパク質をコード化する遺伝子によりトランスフェクション
されることを特徴とする請求項16に記載の培養培地。
【請求項19】
SCC細胞が個々の患者組織から分離されたものであることを特徴とする請求項16に記
載の培養培地。
40
【請求項20】
コラーゲンと線維芽細胞の基底層からさらに含んでなる請求項16に記載の培養培地。
【請求項21】
ヒト毒性に関するテスト化合物を評価する方法であって、
a)請求項1に記載の細胞系統に対してテスト化合物を曝露する工程、および、
b)該細胞系統上で該化合物の効果を評価する工程、
を含んでなる方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願の相互参照)
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適用できず。
【0002】
(連邦政府により援助された研究開発に関する陳述)
本発明は、以下の機関により支給された、合衆国政府の援助のもとでなされた:国立衛生
研究所(NIH)からの許可番号第AR40284号。合衆国は本発明において所定の権
利を有する。
【0003】
(発明の背景)
ヒトケラチノサイト
重層扁平上皮から分離されるヒトケラチノサイトはインビトロ(in vitro)で容
10
易に培養することができる(リー(Leigh)ら、1994に総説)。培養されたケラ
チノサイトは初期継代で容易に複製され、インビボ(in vivo)で扁平分化のある
特徴を示す大量の細胞を発生する。培養された正常ヒトケラチノサイトがマウスに移植さ
れる場合、表皮組織構造はある期間にわたり秩序立ってされる(ブライトクルッツ(Br
eitkreutz)ら、1997)。移植手順と以後のモニタリングに関して皮膚が利
用し易いことと相俟ってヒトケラチノサイトの培養と移植の容易さがあるので、この体性
細胞型は治療用遺伝子デリバリーに関しては魅力的なものになっている。しかし末端分化
の開始によって、ケラチノサイトでの導入遺伝子発現は、使用されている遺伝子発現の方
策にはかかわらず、常に喪失している。いくつかの報告が、遺伝子工学的に処理されたヒ
トケラチノサイトは全厚表皮を再現することができ、したがって、幹細胞様の特性を備え
20
た細胞が移植された細胞集団のなかに存在したことを示している(コエート(Choat
e)とカバーリ(Khavari)、1997;コエートら、1996;ジェラール(G
errard)ら、1993;ガーリック(Garlick)ら、1991;グリーンハ
ーフ(Greenhalgh)ら、1994;ボーゲル(Vogel)、1993;フェ
ンジブス(Fenjves)、1994)。
【0004】
重層扁平上皮から誘導したヒト細胞を利用するインビトロ組織培養測定(アッセイ)
正常インビボ組織のコンテクストを維持する付着細胞の単層培養培地を使用したインビト
ロ測定は、ヒト組織に関しては存在しない。動物モデルは、ヒト組織治療の反応に関わり
があるプロセスのうちのいくつかを模倣する能力を有している。しかし、動物の体系は腫
30
瘍増殖の定性的および客観的評点にのみ相応しい。従来、簡単なインビトロ増殖測定には
プラスチック組織培養皿上でげっ歯類あるいはヒト細胞系統の単層培養培地が使用されて
きた。コロニーの規模あるいは細胞数が放射線治療後のがん細胞の生存と増殖の程度を推
測するために評価される。このアプローチの主な欠点は、それではその腫瘍細胞環境内で
何らの付着あるいはパラクリン増殖因子シグナルが説明されないことである。このため、
正常周囲細胞が存在しない場合の腫瘍細胞の増殖についての研究は、腫瘍細胞のインビボ
増殖特性を正確には反映していないことがある。
【0005】
例えば、ヒトの頭部と頸部(H&N)腫瘍については、毎年アメリカ合衆国では43,0
00人の患者で、また、世界中では750,000人以上の患者で診断が下されている。
40
原発性腫瘍の部位の近くでの腫瘍再発は、治療の失敗とこれらの患者の死亡の圧倒的な原
因となっているにもかかわらず、治療後の腫瘍再増殖に寄与している分子イベントについ
てはほとんど何も分かっていない。臨床および放射線生物学的には、腫瘍の増殖率は放射
線曝露を原因とする創傷後に実際には増加していることがある(ホール,イー.ジェイ.
(Hall,E.J.)、1988;ペテレイ,ディー.ジー.(Petereit,D
.G.)ら、1995)。創傷環境が強い腫瘍増殖シグナルを供給していることが示唆さ
れている(ハドウ,エー.(Haddow,A.)、1972)。例えば、創傷床に存在
する細胞外マトリックス(ECM)糖タンパク質は、正常組織再生に必要となる強い増殖
刺激因子を供給するおよび/または隔離する。これらの観察から、失敗したがん治療の後
に腫瘍がはじめに発生するおよび/または再増殖するという組織のコンテクストは、腫瘍
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増殖には有意な影響を与える場合があることが明確なものになった。
【0006】
細胞生物学に関する当業技術で必要なものは、正常染色体組に近いものを備えた自然発生
的の不死化ヒトケラチノサイト細胞であり、またインビトロ組織測定におけるこの不死化
細胞系統を使用するための方法である。
【0007】
(発明の要約)
1つの実施態様では、本発明は1つの不死化ヒトケラチノサイト細胞系統であり、その細
胞系統は第8染色体の長いアーム上の同位染色体外因子を例外として46の正常染色体組
を含んでなる。1つのとくに利点のある実施態様では、細胞系統はATCC CRL 1
10
2191である。
【0008】
もう1つの実施態様では、本発明は異種遺伝子によりトランスフェクションされたトラン
スジェニック不死化ヒトケラチノサイト細胞系統である。この遺伝子はマーカー遺伝子で
ありうるし、もっとも好適にはグリーン蛍光タンパク質(GFP)である。
【0009】
本発明はまた、悪性扁平上皮細胞、好適にはヒト重層扁平がん細胞(SCC)を含んでな
る、また自然発生的不死化ヒトケラチノサイトを含んでなる、ヒト重層扁平上皮細胞培養
培地を得ることにより、テスト腫瘍細胞治療剤の効果を測定する方法でもある。この培養
培地はその後に、再構築される表皮のなかに形成される。その後、テスト腫瘍細胞治療剤
20
により表皮を治療することができ、また表皮内のSCCの増殖を評価することができる。
【0010】
本発明の利点は、不死化ケラチノサイト細胞系統が提供されることである。
【0011】
本発明のほかの目的、特徴および利点は、本明細書、特許請求の範囲および図面を概観し
た後、明らかになることであろう。
【0012】
(発明の簡単な説明)
A.不死化ヒトケラチノサイト細胞系統
幹細胞様の特性を備えたヒトケラチノサイトは外因性遺伝子の安定したトランスフェクシ
30
ョンの最適標的である。安定トランスフェクタントは細胞のなかに外因性DNAが導入さ
れ、ホスト染色体のなかに組み込まれた時作製される。その後の娘細胞は、導入遺伝子の
遺伝子産物を発現させ、またその後の世代を通してその発現が無制限に遺伝する場合には
、安定したものとなる。遺伝子療法適用に関しては、関心の対象である形質導入遺伝子の
発現を維持しながら、組織代謝回転の複数サイクルにわたって全厚表皮を再生する能力を
備えた幹細胞様ケラチノサイトを使用することが必須である。
【0013】
1つの実施態様では、本発明は、細胞型特異的増殖の所要量を保持し、分化マーカーを発
現させ、また安定的にトランスフェクションすることができる、自然発生的不死化ヒトケ
ラチノサイト細胞系統、BC−1−Ep/SLである。BC−1−Ep/SLは、ブタペ
40
スト条約に定められた条件にしたがって、米国、バージニア州20110−2209、マ
ナサス市、ユニバーシティー ボウレバード 10801にあるアメリカ タイプ カル
チャー コレクション(American Type Culture Collect
ion)に、受入番号CRL−12191の下に1996年9月20日に寄託された。
【0014】
BC−1−Ep/SLケラチノサイトは、腫瘍発生性のものではなく、また器官型培養に
おいて扁平分化を受ける。器官型培養は、真皮に類似し、また空気培地インターフェイス
に曝される基質上で、ケラチノサイトが増殖する培養培地である(リーとワット(Wat
t)、1994)。
【0015】
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われわれは、このヒトケラチノサイト細胞系統が、高い効率と長期上皮導入遺伝子発現を
維持することができる長期寿命の表皮始原細胞の1つの資源として役に立つことを構想し
ている。BC−1−Ep/SLケラチノサイトは、重層扁平上皮における増殖と分化に関
する研究のための1つの重要な新しい細胞試薬を代表するものである。
【0016】
もう1つの実施態様では、本発明は不死化ヒトケラチノサイト細胞系統であって、好適に
は、BC−1−Ep/SL、好適にはATCC CRL−12191であり、少なくとも
1つの導入遺伝子を含んでなる。以下の例は、トランスジェニック細胞系統を作り出す好
適な方法を示している。分子生物学に関する当業者には多くのほかの方法が明らかなこと
であろう。われわれは、ひとつの方法を開発したが、それによって、トランスフェクショ
10
ンされたBC−1−Ep/SLケラチノサイトが、GFPの発現をベースにして同定され
、また形態学とGFPの発現の程度をベースにして選択され、また、細胞プレトランスフ
ェクションの最高度のもの、天然状態/質を保存するなどを行う。この技術はF418、
メトトレキセート、ヒグロマイシン−B、アミノプテリン、マイコフェノール酸、ゼオシ
ンなどの標準化学試薬により優位選択可能なマーカーをベースにした選択による潜在的な
形質変更圧力を避けている。
【0017】
われわれは、単層細胞培養培地による器官型培養の形成、ヒトあるいは研究動物に短期お
よび/または長期移植のための適当なヒト組織遺伝子工学産物、また、例えば、経静脈的
に患者に途切れることなく投与される遺伝子産物を製造する機械の一部としてのバイオフ
20
ィルム成分として、さまざまな用途で、不死化ヒトケラチノサイト細胞系統の使用方法を
人々が望むことを構想している。
【0018】
B.モデル器官型システムとしてBC−1−Ep/SLの使用法
上述のように、本発明の細胞系統は正常ヒト重層扁平上皮の組織構造を再生するという実
質的な利点を有する。このモデルはヒト腫瘍増殖の測定方法として適している。組織様環
境内で悪性ヒト上皮細胞増殖を完全に再構築することにより、腫瘍細胞増殖特性は生理学
的に関連あるコンテクストでモニターすることができる。
【0019】
さらに、各個々の腫瘍細胞が、グリーン蛍光タンパク質(GFP)などのマーカータンパ
30
ク質を発現させるために、遺伝子工学的に処理することができるので、定量的なエンドポ
イントをモニターすることができる(以下の例には、マーカー遺伝子によりBC−1−E
P/SLをトランスフェクションする好適な方法が示されている)。このモデルシステム
は、重層扁平上皮がんの治療に使用される薬物あるいは剤のスクリーニングのための技術
的進歩を代表するものである。例証となるがんには、頭部と頸部、皮膚、口腔粘膜、子宮
頸部、気管のがんが含まれる。
【0020】
したがって、本発明は、腫瘍細胞増殖と再増殖の比率を測定するために設計されたヒト重
層扁平上皮モデルシステムである(略図的に示されている例の図6を参照)。
【0021】
40
1つの実施態様では、そのモデルシステムは、遺伝子工学的に標識化されたヒト扁平細胞
がん(SCC)と非標識化自然発生的不死化ヒトケラチノサイト、BC−1−EP/SL
の器官型混合培養培地から成る。SCC細胞の増殖特性を比較することで、その細胞が再
生可能な環境のコンテクストを提供するので、BC−1−EP/SLケラチノサイト系統
は、このモデルシステムにおいては非常に重要な構成要素である。すべての正常ケラチノ
サイトの特性を保持している、すなわち、末端分化、アポトーシス、非腫瘍形成特性が残
っているので、BC−1−EP/SL不死化細胞系統には非常に利点がある。
【0022】
以下の例には、再構築された表皮を作り出す好適な方法が開示されている。手短に言うと
、BC−1−EP/SL とSCC細胞は正常ヒト線維芽細胞を含むコラーゲン基剤上に
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接種される。混合培養は、BC−1−EP/SLケラチノサイトの標準的な数のもので、
標識化されたSCCのさまざまな希釈液に接種される。
【0023】
本発明のインビトロでの腫瘍/正常組織モデルはまた、腫瘍進行と再増殖を司る分子メカ
ニズムの実験において助けとなる。この同じモデルもまた、腫瘍再増殖を遅らせることが
できる潜在能力のある静細胞因子と特異的腫瘍選択性を備えた化学的予防剤を同定するの
に使用することができる。例えば、再構成された器官型培養培地は、例えば、物理的(例
えば、X線照射)あるいは化学的/生物学的剤(すなわち、化学療法剤、静細胞因子剤)
などさまざまな腫瘍細胞修飾剤により処理することができ、また、好適にはGFP標識を
使用してSCC細胞の(再)増殖の程度あるいは欠如を定量化して、その培養培地はモニ
10
ターすることができる。このように、BC−1−EP/SLモデルシステムは、頭部と頸
部、皮膚、口腔粘膜、子宮頸部、気管およびほかの上皮のがんのための治癒的治療を受け
るがん患者のための抗増殖剤、あるいは全般的に、新規な、新しい抗がん対策の同定と開
発に寄与することになるであろう。
【0024】
腫瘍細胞増殖は以下のように、もっとも都合よくモニターすることが可能である。すなわ
ち、BC−1−Ep/SL細胞の数に対する腫瘍細胞の総数と比率が、GFP蛍光をベー
スにしたフローサイトメトリー技術を使用してもっとも都合よくモニターすることができ
る。腫瘍細胞量とその局在化は、共焦点顕微鏡によりもっとも都合よくモニターされる。
細胞間相互作用は免疫染色とインシトゥ(in situ)ハイブリッド形成技術を使用
20
して組織学的切片でもっとも都合よくモニターされる。
【0025】
GFPの哺乳動物への導入は、インビトロと動物モデル系に利用されることが増加してい
る。今日まで、GFPの発現により哺乳動物の細胞増殖が改変されたことを記述している
報告はまだない。これらのモデルは、予想されたようにモデルが行動するという事実から
は、GFP発現がとくに害はなく、またしたがって理想的なマーカータンパク質であるこ
とが示唆される。本研究において観察されたものからはまた、GFPのヒト扁平細胞がん
細胞系統、SCC13yのなかへの導入は、顕著な生物学的エンドポイントの上では効果
がないことが確かめられている。その結果から、これらの実験においては、GFP発現は
研究された細胞型の増殖および分化特性には干渉しないことを示唆している以前の諸研究
30
を支持していることが観察された。GFP発現の安定性は、ある期間にわたってマーカー
としてGFPを使用するモデルの成功に非常に重要であるもう1つの変数である。われわ
れの実験における観察では、GFP発現は少なくとも1つの悪性細胞系統であるSCC1
3yでは安定していることが示唆されている。遺伝子マーカー法のほかの諸方法、例えば
、酵素活性および/または培養装置は、同じ培養サンプルの反復測定を可能にするもので
あると考えられる。
【0026】
異常および正常ヒトケラチノサイトの混合培養が最近、エー.ジャバヘリアン(A.Ja
vaherian)と共同研究者により報告されている(ジャバヘリアン,エー.ら、1
998)。この研究では、遺伝子工学を使用した不死化されたケラチノサイト細胞(Ha
40
Cat)が器官型培養培地のなかで増殖される。不死ではあるが、これらの細胞は腫瘍形
成性ではなく、すなわち、ヌードマウスでは悪性腫瘍を形成することができ、またしたが
って、一般的に悪性細胞の顕示することはない。SCC13y
G F P +
細胞系統は実際の
患者の腫瘍から誘導されたものであり、また腫瘍発生性のものであるため、悪性腫瘍の根
絶を目的とする諸研究にはより適切なものであろう。
【0027】
器官型混合培養モデルは、製薬およびバイオテクノロジー産業により直面される非常に重
要な少なくとも3つの問題には有用であろう。すなわち、(1)腫瘍再増殖の新規な静細
胞因子阻害剤に関するスクリーニングをいかに行うか、(2)治療の前の化学療法あるい
は放射線療法に対して患者特異的な応答反応をいかに判定するか、(3)新規な、生物学
50
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的治療剤をいかに開発するかである。腫瘍細胞を直接的に標的とする伝統的な細胞毒性剤
とは異なり、腫瘍増殖の静細胞因子阻害剤は、個々の腫瘍あるいはその微環境を標的とす
ると考えられる。細胞毒性剤の主な目的は腫瘍細胞を殺傷することであり、一方、静細胞
因子阻害剤の目的は、腫瘍増殖拡大を遅らせるあるいは停止させることであり、必ずしも
それを殺傷することではないという理由から主にこの差違は生じる。理論的には、これは
、細胞の増殖に直接干渉することにより(例えば、細胞周期阻害剤)、あるいは腫瘍増殖
に関してより支持的ではないものに周囲の正常組織を仕向けることを、周囲の正常組織で
間接的に改変を行うことにより(例えば、創傷再生シグナルの阻害)、達成できる。
【0028】
新規の抗腫瘍の方策は、腫瘍および正常組織応答反応のインビトロでの機能は再構築され
10
たヒト組織において直接測定することができるので、器官型腫瘍/正常組織混合培養培地
を使用して同定することが可能である。ヒト腫瘍細胞の単層培養培地の増殖をベースにし
た現行のインビトロでの測定方法では、正常組織機能を必要とせず、また悪性細胞の微環
境の影響を考慮に入れていないので、この点に関しては失敗する。腫瘍微環境を理解する
ことは、進行性悪性特性をまだ発症する場合に、腫瘍の発生開始を予防することに焦点を
当てている化学的予防剤の同定ではとくに重要なことであると思われる。通常の細胞毒性
あるいは外科的療法を生き延びる悪性細胞の再増殖の予防にはこれはまた重要なことであ
ろう。さらに、器官型腫瘍/正常組織混合培養による静細胞因子剤はまた、臨床的放射線
療法に同時使用するのには有用であろう。この場合は、治療の間に腫瘍の増殖を遅らせる
静細胞因子剤の能力は、腫瘍を除去する際に非常に重要であり、また通常の治療に付随す
20
る炎症により生じる合併症を減衰させることであろう。
【0029】
器官型腫瘍/正常組織混合培養培地モデルにおける腫瘍再増殖をモニターすることはまた
、治療応答性および治癒率に関する治療前の患者特異的情報を提供するのにも有用であろ
う。現行の諸測定法は、単層培養培地におけるヒト腫瘍のインビトロでの増殖と実際の患
者の腫瘍応答反応には弱い相関関係のみが見られる。もっと強い相関関係が、インビトロ
モデル内で正常組織コンテクストを含めることにより達成することができると考えられる
。
【0030】
ほかの適用法は、患者の治療に直接的に影響を及ぼす潜在能力を備えたさらに予後の、お
30
よび/または生物学的材料を提供する可能性がある。例えば、腫瘍生検から得られる細胞
は、GFP標識化BC−1−Ep/SL細胞とともに混合培養することができ、本出願に
おいてはそれを「反転培養培地」と定義する。反転培養培地モデルは、インシトゥでの腫
瘍微環境をほぼ同じように模している再生可能な培養環境を提供し、また個々の患者の腫
瘍細胞の測定法を可能にすることであろう。特異的な治療法は、実際の患者の治療が開始
される前に、培養培地のなかにある生検で得られた腫瘍サンプルでその後にテストするこ
とができる。このように、治療はテストの応答反応をベースにして各患者に対して個々に
テーラーメイドされることが可能である。
【0031】
器官型腫瘍/正常組織「反転」混合培養培地モデルの重要な1つの特性は、その患者に特
40
異的な腫瘍微環境を近くまで模倣することが可能であることである。免疫療法などの生物
学的治療の何らかの新規な形態の開発には非常に利点があることであろう。免疫療法の目
的は、その患者自身の免疫エフェクター細胞、例えば、B細胞、ヘルパーT細胞、細胞溶
解T細胞(CTLs)、あるいはナチュラルキラー細胞(NK)をインビトロで用意し、
またその後にこれらの活性化された細胞を、腫瘍を標的とし、また根絶するために、その
患者に戻すことである。現行のインビトロでの培養は、免疫エフェクター細胞の用意を行
う器官型培養ほどは有効ではないと考えられる。免疫エフェクター細胞の活性化の欠如に
対する1つの潜在的な理由は、適切な腫瘍特異的抗原(TSAs)を有効ではなく、およ
び/または成功しないような体裁にしてしまうことである。器官型腫瘍/正常組織「反転
」混合培養モデルは、この問題を取り除くことができる。というのは、このモデルは、イ
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ンシトゥでの腫瘍微環境を正確に再構築するからであり、TSAsはさらに器官型培養培
地で発現し、またしたがって、免疫エフェクター細胞に対してより高い確率でよりよい機
会が提供されると考えられるからである。
【0032】
B.他の諸実施態様
1.適当な上皮組織の修復および/または支持のための生体組織産物における普遍的なド
ナー表皮細胞型としての使用法。適用の1つの例は、静脈脚潰瘍であるが、米合衆国では
約百万人が、また全世界では3百万人が罹患している。また、糖尿病性潰瘍や圧迫潰瘍(
床ずれ)などのほかの潰瘍状態には全世界ではおよそ1千万人が罹っている。BC−1−
Ep/SLケラチノサイト細胞系統はまた、広範囲の臨床適用、例えば、急性熱傷範囲、
10
皮膚科的外科手術により創傷、ドナー部位創傷(他所で使用されるように皮膚が採取され
た後の範囲)に使用することができる。
【0033】
2.使用法には、クリーム、ローション、液体、スプレー形態に適用される治療用、美容
医療用、美容用の皮膚用製品の製薬製剤で使用される薬剤の開発とテストが含まれる。細
胞は、こうした剤の毒性、潜在能力、効能をテストするため、ヒトケラチノサイトという
堅実なソースを提供する。細胞はこれらの測定法のための単層培養培地で、あるいは器官
型培養で使用することができる。器官型培養培地は、組織構造、分化、細胞の重複培養と
増殖、障壁機能、組織強度についての剤の効果を開発しまた測定するのに使用することが
できる。
20
【0034】
3.使用法には、ウイルスに対抗するワクチンを製造することができるように、ヒトパピ
ローマウイルスなどの生物学的剤の培養のためのリシピエント細胞が含まれている。その
細胞系統はまた、抗ウイルス薬物や剤を開発し、またテストするのに使用することができ
る。60以上の異なるタイプのヒトパピローマウイルスが、女性の子宮頸部がんや男性の
陰茎がんの発症に緊密な関連性がある性器いぼやウイルス病変を含む、いぼをヒトにおい
て作り出している。ヒトパピローマウイルスは、ヒト集団において広範にみられる小さな
二本鎖DNAウイルスである。それらは完全に上皮親和性のものであり、また、解剖学的
部位の範囲から言うと、皮膚あるいは粘膜皮膚にしか感染しない。ヒトパピローマウイル
スは、分化を行っているヒト上皮細胞でのみ複製する。
30
【0035】
例
1.自然発生的不死化近二倍体ヒトケラチノサイト細胞系統、BC−1−Ep/SLにお
ける正常増殖と分化
A.材料と方法
細胞培養
正常ケラチノサイト(BC−1−Ep)は、ヒト新生児包皮から分離された。ケラチノサ
イト培養培地は、アレン−ホフマン(Allen−hoffmann)とラインバルト(
Rheinwald)(1984)により説明されているように、マイトマイシンC処理
スイスマウス3T3線維芽細胞の存在下で単一細胞懸濁液の分割量を塗布することにより
40
確立された。標準的ケラチノサイト培養培地は、2.5%仔ウシ血清(FCS)、0.4
μg/mlヒドロコルチゾン(HC)、8.4ng/mlコレラ毒素(CT)、5μg/
mlインスリン(Ins)、24μg/mlアデニン(Ade)、10ng/ml上皮増
殖因子(EGF)、100単位ペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン(P/
S)により補足したハム(Ham)のF12:ダルベッコの変法イーグル培地(DME)
、(3:1、0.66mMカルシウム)である。この細胞は支持細胞付きの100mm
組織培養皿上で3x10
5
2
細胞で週毎に継代培養された。形質転換細胞、BC−1−Ep
/SL(同時発生的系統)が継代16で現れた。継代55でBC−1−Ep/SL細胞が
テストされ、マイコプラズマに関しては陰性であった(ウィスコンシン州衛生研究所(W
insconsin State Laboratory of Hygiene)、マ
50
(9)
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ジソン(Madison)市、ウィスコンシン州)。組換えヒトEGFは、R+Dシステ
ムから得られた。形質転換増殖因子β(TGF−(1)はヒト血小板から精製された。
【0036】
染色体分析
指数増殖期における細胞は、50ng/mlコルセミドにより分裂中期で停止され、その
後にトリプシン処理され、またフラスコから定液量を取り、遠心分離にかけた。培地とト
リプシン除去後、その細胞は20分間低浸透圧の75mM KCl溶液に懸濁され、3:
1メタノール/酢酸で3回固定され、またガラススライドの上に滴下された。スライドは
2週間熟成され、軽くトリプシン処理され、ギムザ法で染色された(シーブライト(Se
abright)、1971)。各サンプルにおいて、染色体同一性と染色体異常が、写
10
真の分析と、相同染色体のバンド間比較のために少なくとも2つの核型の切断によりよく
拡散したGバンド分裂中期において測定された。
【0037】
DNAフィンガープリント
DNAはキアゲン(Qiagen)QIAamp血液キット(キアゲン社、サンタクラリ
タ市(Santa Clarita)、カリフォルニア州)を使用してケラチノサイトか
ら分離された。DNAフィンガープリント分析には、GenePrint(フルオレセン
トエスティーアールシステム(Fluorescent STR System))を製
造業者によって推奨されたプロトコルにより使用した。12のプライマー対が3つの四重
式(CTTv、FFFL、GammaSTR)に分割された。各四重式は鋳型としてDN
20
Aの25ngを使用して別々の反応で増幅された。増幅はパーキン−エルマー(Perk
in−Elmer)9700熱循環器(パーキン−エルマー(Perkin−Elmer
)社、ノーワーク市(Norwalk)、コネチカット州)で行われた。PCR産物は、
BRL配列決定装置(ライフテクノロジー(Life Technologies)社、
ゲティスバーグ市(Gaithersburg)、メリーランド州)の42cmx33c
mx0.4mmポリアクリルアミドゲル上で電気泳動にかけられた。ゲルはその後、日立
(Hitachi)FMBIO II蛍光スキャナー上でスキャンされた。
【0038】
無胸腺症マウスにおけるBC−1−Ep/SL細胞の増殖
BC−1−Ep/SL細胞は、腫瘍を形成することができるかどうかを判定するため、ヌ
ード無胸腺症マウスに注入された。100μlハムのF12のなかに入れた5x10
6
30
細
胞の懸濁液が6匹のヌードマウスの側腹部に皮下的に注入された。陰性対照として、親B
C−1−Ep6(細胞が、3x10
として、SCC4細胞が3x10
6
6
細胞/100μl F12で注入された。陽性対照
細胞/100μl F12で注入された。マウスの体
重が計られ、また腫瘍は26日後に測定された。
【0039】
半固形培地における懸濁
懸濁研究に関しては、前全面生長(プレコンフルエント)培養培地は、培養皿から0.5
mM EDTA、0.1%トリプシンにより取り除かれ、いかなる残留トリプシンも不活
性化するために、血清含有培地のなかで洗浄された。短時間遠心分離(3分間440xg
40
)の後、細胞は、サデクおよびアレン−ホフマン(Sadek and Allen−H
offmann)(サデク,シー.エム.とビー.エル.アレン−ホフマン、1994)
のなかで説明されているように、3部のハムのF−12プラス1部のDMEに1.68%
メチルセルロース(4,000センチポアズ、フィッシャーサイエンティフィック(Fi
sher Scientific)社、フェアローン(Fairlawn)市、ニュージ
ャージー州)を加えて作られた半固形に、1x10
6
細胞/mlで再懸濁された。細胞は
無血清培地により繰り返し希釈することにより懸濁液から回収され、また遠心分離にかけ
られた(10分間440xg)。リン酸緩衝生理食塩水(0.137 M NaCl;2
.7mM KCl;8.1mM Na2 HPO4 ;1.4mM KH2 PO4 ;pH7.
2)(PBS)による1回の洗浄後、CE形成に関する測定を行うため、PBS(pH7
50
(10)
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.2)において再懸濁されるか、あるいはDNA断片化を測定するため、SLS緩衝液(
50mMトリス;10mM EDTA,pH8.0;0.5%(w/v)ラウロイルサル
コシンナトリウム)のなかで洗浄されるかのいずれかが行われた。対照は、3部のハムの
F−12プラス1部のDMEのなかで同様の回数処理された付着ケラチノサイトから成る
。
【0040】
ノーザン分析法
細胞は、3T3支持細胞層上にある標準的ケラチノサイト培養培地で増殖された。この支
持細胞層はPBSのなかで0.02% EDTAによりRNA分離の24時間前に取り除
かれた。ポリA
+
RNAは、以前に説明されているように(サデクとアレン−ホフマン
、1994)、指数的増殖細胞から分離された。ポリA
+
10
RNAは、ホルムアルデヒド
を含有する1.2%アガロースゲルのなかで電気泳動にかけられ、また、ゼータプローブ
膜(バイオ−ラドラボラトリー社(Bio−Rad Laboratories)、リッ
チモンド市(Richmond)、カリフォルニア州)にエレクトロブロッティングが行
われた。その膜はプレハイブリッド化され、またその後に、供給者により推奨されている
とおりに無作為プライマー[
3 2
P]−dCTP−標識化cDNAプローブの存在下でハ
イブリッド化された。検出用に使用されたcDNAプローブには、ラットグリセルアルデ
ヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、pGPDN5(フォート(Fort)ら、1985
)、サルTGF−β1(シャープルズ(Sharples)ら、1987)、EGF受容
体(ウー(Xu)ら、1984)、マウスケラチン14(デニス・ループ(Dennis
20
Roop)氏から贈呈)、TGF−α(クドロー(Kudlow)ら、1988)、ヒ
トc−mycの830−bp 5’断片(ミヤモト(Miyamoto)ら、1989)
が含まれる。
【0041】
角化エンベロープ(CE)形成
ケラチノサイトは、培養板から取り除かれ、また前に説明したように懸濁液から回収され
た。各処理から得た細胞はカウントされ、また1% SDS 20mMジチオトレイトー
ルを含有するPBS(pH7.2)における10
6
細胞/mlで再懸濁された。サンプル
は水槽で5分間煮沸され、それから室温まで冷却された。DNアーゼ(0.5μg/ml
)が加えられ、またCEが血球計を使用してカウントされた。CE形成は入力細胞のパー
30
センテージとして計算された。
【0042】
ヌクレオソームDNA断片化の分析
DNAは分離され、また前に説明したように標識化された(サシュセンマイヤー(Sac
hsenmeier)とアレン−ホフマン、1996)。手短に言うと、2.5x10
6
細胞が50mMトリス、10mM EDTA pH8.0と0.5%(w/v)ラウロイ
ルサルコシンナトリウム500μlのなかで洗浄された。溶解産物は、フェノール:クロ
ロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1、v:v:v)で抽出され、またエタ
ノール沈降が行われた。DNAは20μl TE緩衝液、pH8.0のなかで分解され、
また260nmで吸光することにより定量化された。完全なものと断片化されたDNAは
40
、ティリー(Tilly)とフーシェ(Hsueh)(1993)により説明されている
、末端ジデオキシヌクレオチドエキソトランスフェラーゼを使用して[α
3 2
P]−dd
ATPにより3’末端標識化された。各標識化サンプルの半分が1.5%アガロースゲル
上に充填され、また電気泳動される。ゲルはSE 1200 Easy Breeze(
ホッファサイエンティフィック(Hoefer Scientific)社、サンフラン
シスコ市、カリフォルニア州)を使用して熱により乾燥され、またコダックバイオマック
ス(Kodak Biomax)MRフィルムに露光された。
【0043】
器官型培養培地の形成
器官型培養培地は以前に説明されているように増殖された(エヌ.パレントー(N.Pa
50
(11)
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renteau)、1994)。コラーゲンラフトは、正常ヒト新生児線維芽細胞CI−
1−Fを、10%FCS+F12+ペニシリン/ストレプトマイシンのなかに入れたI型
コラーゲンと混合することにより形成された。ラフトは5日間収縮するに任せた。親細胞
、BC−1−Ep(5°)とBC−1−Ep/SL(38°)細胞は、1.88mMカル
シウムを含有する50μl 2% FCS+3F12:1DME+HC+Ade+Ins
+CT+P/Sのなかの3.5x10
5
細胞でラフト上に塗布された。細胞は追加して1
3mlの培地(0日目)を加える前に2時間結合するのに任せた。1日目と2日目に、細
胞は再供給された。4日目には、細胞は綿パッド付きの空気インターフェイスまで持ち上
げられ、角化培地(1.88mMカルシウムを含有する2% FCS+3F12:1DM
E+HC+Ade+Ins+CT+P/S)に切り換えられた。細胞は3日毎に角化培地
10
を供給された。15日目には、ラフトは、0.1 M カコジル酸塩緩衝液のなかに入れ
た3%グルタルアルデヒドと1%パラホルムアルデヒド(室温でpH7.4、3時間)で
新鮮に作成された変法のカルノフスキー(Karnovsky)固定液により固定された
。その培養培地を取り除く前に、固定液が角化層が流出するのを防ぐためにラフトの一番
上にある細胞にやさしく加えられた。引き続いて、培養培地は吸引され、また培養培地の
穴は固定液で満たされた。ラフトは半分に切断され、半分は光学顕微鏡用に処理され、ま
たもう半分は電子顕微鏡用に処理された。
【0044】
組織切片
固定されたラフトは、ウィスコンシン州マジソン市にある大学病院の外科病理学教室でパ
20
ラフィンのなかに包埋されて切片化され、またヘマトキシリンと、エオジンにより染色さ
れた。染色された切片は検討され、また35mmカメラを装備しているオリンパス(Ol
ympus)IX−70顕微鏡を使用して写真を撮影された。
【0045】
電子顕微鏡
固定培養培地は0.1 Mカコジレート緩衝液、pH7.4により3回洗浄された。解剖
顕微鏡下で、小刀が、プラスチック挿入からラフト培養培地を支えているポリエステルメ
ッシュを切り離すのに使用された。ラフトは小刀でおよそ2mmx4mmの小片に切断さ
れ、緩衝液のなかに一夜保存された。4℃にて1%四酸化オスミウムにより再固定後、ケ
ラチノサイトは、2%水性酢酸ウラニルにより1時間一体染色される前に、0.1 Mマ
30
レイン酸、pH6.5で各15分間4回洗浄された。蒸留水で洗浄後、ケラチノサイトは
エタノール濃度を増加させて、100%プロピレンオキシドで脱水し、1:1プロピレン
オキシド:エポネートで一夜浸透させた。ラフトは、ダイアモンドナイフを装備したライ
シャートE3超薄切片作製器(Reichert Ultracut E3 ultra
microtome)上で直角に切断することができるように、新鮮なエポネートの平ら
な包埋型のなかに包埋され、また方向が揃えられた。薄切片はクエン酸鉛により染色され
、また75kVで運転される日立H−7000電子顕微鏡(日立、サンホセ市(San Jose)、カリフォルニア州)で調べられた。
【0046】
トランスフェクション細胞培養
40
トランスフェクションの実験に関しては、BC−1−Ep/SL細胞が、100mm皿に
マイトマイシンC処理されたスイスマウス3T3線維芽細胞上に3x10
5
細胞の密度で
塗布された。細胞は付着するのに48時間が与えられ、その度に3T3層が0.5mM EDTAにより取り除かれた。細胞はDMEにより2回洗浄され、また血清含有培地が加
えられた。細胞は24時間後にトランスフェクションされた。
【0047】
プラスミドDNA
プラスミドDNAはエンドトキシン遊離マキシプレップキット(Maxiprep Ki
t)(キアゲン社)により作製された。pGreenLanternがXmnIを使用し
て線形化された。pcDNA3 neoとpTracer−SV40(インビトロゲン(
50
(12)
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Invitrogen)社)がBglII(プロメガ(Promega)社)を使用して
線形化された。グリーン蛍光タンパク質(GFP)の発現は、pGreenLanter
nとpTracer−SV40プラスミドの両方で構成的に活性であるCMVプロモータ
ーにより推進される。
【0048】
BC−1−Ep/SL細胞のトランスフェクションのための最適条件の決定
BC−1−Ep/SL細胞継代30°∼40°がポリカチオン性脂質GeneFECTO
R(ベンノバ(VennNova)社)を使用してトランスフェクションされた。トラン
スフェクション混合物は、各100mm皿に500μl無菌逆浸透水に20∼33μg線
形化プラスミドDNAを加えることにより作製される。GeneFECTORの異なる量
10
が、1:2から1:4まで変化するGeneFECTORに対する総量DNAの割合によ
り加えられる。トランスフェクション混合物はやさしく渦巻き状に攪拌し、また室温にて
15分間インキュベートされた。培地はBC−1−Ep/SL細胞から取り除かれ、プレ
ートはDMEで2回洗浄され、またDMEの5mlが再供給された。トランスフェクショ
ン混合物は滴下様に各プレートに加えられ、また細胞は5% CO2 下で37℃で5時間
インキュベートされた。その培地は取り除かれ、また細胞はDMEで2回洗浄され、また
血清含有培地により再供給された。細胞は、トランスフェクション後24時間で、分析前
にトランスフェクションが成功裡に行われたことを検査するために、IX−70反転蛍光
顕微鏡(オリンパス社)あるいは蛍光標示式細胞分取器(FACS)により検討された。
【0049】
20
最適一過性トランスフェクション効率
BC−1−Ep/SL細胞継代30°∼40°がポリカチオン性脂質GeneFECTO
R(ベンノバ社)を使用してトランスフェクションされた。トランスフェクション混合物
は、細胞の各100mmプレートに500μl無菌逆浸透水に15μgの線形化pGre
enLanternと5μgのpcDNA3neo(20μg総量DNA)を加えること
により作製される。GeneFECTORがその後に、総量DNAの3倍(DNAのGe
neFECTORに対する比率が1:3)加えられる。トランスフェクション混合物はや
さしく渦巻き状に攪拌し、また室温にて15分間インキュベートされた。培地はBC−1
−Ep/SL細胞から取り除かれ、プレートはDMEで2回洗浄され、またDMEの5m
lが再供給された。トランスフェクション混合物は滴下様に各プレートに加えられ、また
30
細胞は5% CO2 下で37℃で5時間インキュベートされた。その培地は取り除かれ、
また細胞はDMEで2回洗浄され、またケラチノサイト培地により再供給された。細胞は
前述にように検討された。
【0050】
フローサイトメトリー
トランスフェクション後24時間で、BC−1−Ep/SL細胞は培養培地から0.5m
M EDTA、0.1%トリプシンにより取り除かれた。短時間の遠心分離(5分間44
0xg)の後、細胞は、2x10
6
細胞/mlで血清含有培地に再懸濁された。この細胞
懸濁液の500μlが42μmメッシュ(テトコ(Tetko)社)により濾過され、ま
た分析の直前に5μg/mlヨウ化プロピジウム(PI)により染色された。トランスフ
40
ェクションされたBC−1−Ep/SL細胞は、488nmに調整されたレーザーを装備
したFACScanあるいはFACSCaliburベンチトップフローサイトメータ(
ともにベクトンディッキンソン(Becton Dickenson)社製)かのいずれ
かで分析された。一万件のイベントが得られ、またCellQuestソフトウエア(ベ
クトンディッキンソン社)を使用して分析され、また分析は、PI染色をベースにして生
存イベントのみに限定された。細胞生存率と一過性トランスフェクション効率データが得
られた。
【0051】
細胞分取
われわれは、安定したGFP発現BC−1−Ep/SL細胞を得るために、以下のプロト
50
(13)
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コルを使用した。トランスフェクション後24時間で、BC−1−Ep/SL細胞は培養
培地から0.5mM EDTA、0.1%トリプシンにより取り除かれた。短時間の遠心
分離(5分間440xg)の後、細胞は、血清含有培地に5∼7x10
6
細胞/mlの密
度で再懸濁された。この懸濁液はその後に、42μm無菌メッシュ(テトコ社)により濾
過された。分析の直前に細胞は5μg/mlヨウ化プロピジウムにより染色された。トラ
ンスフェクションされたBC−1−Ep/SL細胞は、488nmに調整された干渉性ア
ルゴンレーザーを装備したFACStar(ベクトンディッキンソン社)上で分取された
。トランスフェクション効率データはCellQuestソフトウエア(ベクトンディッ
キンソン社)により得られた。細胞は2000/秒の割合で分取され、またサンプルは分
取後、生存率とGFP発現を検査するために回収された。
10
【0052】
コロニー形成効率
コロニー形成効率(CFE)は1000件のイベントをマイトマイシンC処理スイスマウ
ス3T3線維芽細胞の存在下で二重60mmプレート上に塗布することにより得られた。
1週間後、10%ホルマリンのなかで10分間固定され、水道水で洗浄され、またメチレ
ンブルーで一夜染色された。コロニーはカウントされ、また、最終的なCFEを得るため
に塗布されたイベントの数に分けられた。計算されたCFEに基づいて、形成されたコロ
ニーの総数が、イベントの数にCFEを乗算することにより得られた。GFP発現コロニ
ーは、GFP短帯域パスフィルターを備えたIX−70反転蛍光顕微鏡を使用して分取後
10∼12日でカウントされた。GFP発現コロニーの数は、安定したGFP発現コロニ
20
ー形成効率を得るために、形成されたコロニーの総数により除算された。
【0053】
安定pGreenLanternトランスフェクションされたBC−1−Ep/SL細胞
の分離と同定
BC−1−Ep/SL細胞は、前述のように、pGreenLanternによりトラン
スフェクションされ、また蛍光に基づいて分取された。細胞分取直後に、GFP陽性 B
C−1−Ep/SL細胞は培養培地に再度加えられた。細胞は100mm皿当たり2∼3
x10
4
細胞という低い密度でマイトマイシンC処理スイスマウス3T3線維芽細胞上に
塗布された。細胞は隔日に、GFP短帯域パスフィルターを備えたIX−70反転蛍光顕
微鏡(オリンパス)を使用してモニターされた。非GFP発現コロニーが削り取られて取
30
り除かれ、また安定したGFP発現コロニーは拡張するのに任せた。GFP発現コロニー
が1000細胞あるいはそれ以上の推定密度にまで増殖されたときに、リングクローニン
グにより分離され、またリングマイトマイシンC処理3T3の60mmプレート上に塗布
され、拡張された。
【0054】
安定pTracer−SV40トランスフェクションされたBC−1−Ep/SL細胞の
分離と同定
BC−1−Ep/SL細胞はpTracer−SV40の20μgを使用してトランスフ
ェクションされ、またGeneFECTOR(ベンノバ社)に対してDNAの比率が1:
4であった。トランスフェクション後24時間で、細胞は0.5mM EDTA、0.1
%トリプシンにより取り除かれ、細胞は、血清含有培地に2x10
再懸濁された。3x10
6
6
40
細胞/mlの密度で
細胞が、マイトマイシンC処理スイスマウス3T3線維芽細胞
を加えた2つの100mmプレート上に再塗布された。継代培養後48時間で、GFP陽
性細胞が5日間、250μg/mlゼオシン(zeocin)(インビトロゲン社)によ
り選択された。安定GFP発現BC−1−Ep/SL細胞は無菌細胞分取器を使用して精
製され、また前述のように拡張された。
【0055】
トランスフェクションされた器官型培養培地の組織学的分析
継代43(でGFP発現BC−1−Ep/SL細胞は3x10
5
細胞/コラーゲンラフト
の密度で塗布され、16日間器官型培養培地で増殖された。ラフト培養培地はパラフィン
50
(14)
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に包埋される前に4%パラホルムアルデヒドで少なくとも1時間で固定された。ウィンス
コンシン大学マジソン校(UW−Madison)の外科病理学教室(Surgical
Pathology)で5μm切片が切断され、代わりの切片がヘマトキシリンとエオ
ジン(H&E)により染色された。非H&E切片は再び脱水され、15分間、5μg/m
lヘキスト(Hoechst)染料(33258)により染色され、Cytoseal取
付け培地(ステファンズサイエンティフィック社(Stephens Scientif
ic))を使用して脱水し、取付けられた。切片は二重FITC−ヘキストフィルタを装
備したIX−70反転蛍光顕微鏡(オリンパス)を使用して検討され、また写真が撮影さ
れた。
【0056】
10
共焦点顕微鏡によるGFP発現の分析
継代43°でGFP発現BC−1−Ep/SL細胞は3x10
5
細胞/コラーゲンラフト
の密度で塗布され、16日間器官型培養培地で増殖された。ラフト培養培地は4%パラホ
ルムアルデヒド−PBSで一夜で固定され、また4℃にて0.1 Mグリシン−PBS溶
液のなかで1時間洗浄された。ラフト全体が取付けられ、ベクタシールド(Vectas
hield)取付け培地(ベクターラボ(Vector labs)社)を使用してカバ
ーガラス培養され、ゴムセメントにより密封された。GFP発現は488nmで励起し、
また500∼530nm帯域パスフィルタで検出する共焦点レーザースキャニング顕微鏡
(ニコンダイアフォト200(Nicon Diaphot 200))を使用して分析
された。画像は上部の角化層で開始して10μm間隔で撮られた。顕微鏡は、ウィンスコ
20
ンシン大学マジソン校のダブリュー.エム.ケック(W.M.Keck)神経画像研究所
に所在している。
【0057】
B.結果
BC−1−Ep/SL細胞系統の分離
細胞はトリプシン処理により新生児包皮から分離された。ケラチノサイトは、0.66m
Mカルシウムを含有する標準的なケラチノサイト増殖培地において、マイトマイシンC処
理スイスマウス3T3支持細胞層上にその細胞の懸濁液の分割量を塗布することにより培
養が開始された。線維芽細胞は、10%仔ウシ血清により補われているハムのF−12培
地を含有する組織培養プレート上の細胞懸濁液の分割量を塗布することにより培養が開始
30
された。
【0058】
およそ9日後、ケラチノサイトを示す株BC−1−Epの初代培養培地は凍結保存され、
支持細胞層上で継代培養された。線維芽細胞培養培地は全面生長近くまで増殖され、また
凍結保存された。初期継代では、BC−1−Ep細胞は培養された正常ヒトケラチノサイ
トには非定型である形態学的あるいは増殖の特性は何も示さなかった。培養されたBC−
1−Ep細胞は、プログラムされている細胞死の特徴だけではなく、層化も示した。
【0059】
重複培養されたものの寿命を測定するため、BC−1−Ep細胞は100mm皿当たり3
x10
5
細胞の密度で標準的なケラチノサイト増殖培地で老化期にまで連続して継代培養
40
された。継代15までに、集団のなかのほとんどのケラチノサイトは、大きくて、扁平な
細胞をみせる無数の不稔性コロニーの存在によって判断されるように老化をみせていた。
【0060】
しかし、継代16で、小さな細胞のサイズをみせるケラチノサイトが明らかになった。継
代17までに、小さなサイズのケラチノサイトが、培養培地に存在し、また大きくはない
老化ケラチノサイトが明らかになった。危機を生き延びた小さなケラチノサイトの結果的
に生じた集団は、形態学的には均一であるようにみえ、また細胞間付着や明らかな鱗屑産
生を含めた定型のケラチノサイト特性を示すケラチノサイトのコロニーを作り出していた
。
【0061】
50
(15)
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老化現象を生き延びたケラチノサイトは、100mm皿当たり3x10
5
の密度で59継
代の間、連続して継代培養され、その細胞が不死に到達したことを示した。元々の老化集
団から出現したケラチノサイトは、BC−1−Ep/自然発生的系統(BC−1−Ep/
SL)と呼ばれる。
【0062】
細胞発生学的分析とDNAフィンガープリント
染色体分析が、継代3の親BC−1−Ep細胞と継代31と54のBC−1−Ep/SL
細胞について行われた。親BC−1−Ep細胞は第46XYの正常染色体組を有している
。継代31では、すべてのBC−1−Ep/SL細胞が第8染色体の長いアームの同位染
色体外因子が原因となって第47染色体を含んでいた(図1)。ほかの全体的な染色体異
10
常あるいはマーカー染色体は検出されなかった。継代54では、細胞には第8同位染色体
が含まれていたが、しかし、第1染色体の長いアームの付加的な同位染色体と、マーカー
染色体は、集団の小分画に存在していた(付録1の表1)。BC−1−Ep/SL細胞は
プロウイルスHIV DNA配列の存在に関してスクリーニングが行われ、また陰性であ
ることが見出された。HIVプロウイルスの領域は酵素的に増幅され、放射能標識HIV
−1特異的DNAプローブにハイブリッド化され、また増幅されたDNAはサイズにより
分けられ、またアガロースゲル電気泳動法とオートラジオグラフィを使用して視覚化され
た。ポリメラーゼチェン反応産物はサイズまた公知のHIV−1陽性および陰性対照に対
する特異性により比較された。HPV16と31ウイルス配列の存在はサザン分析により
評価され、1つも検出されなかった。
20
【0063】
BC−1−Ep/SL細胞系統とBC−1−Epケラチノサイトに関するDNAフィンガ
ープリントはすべて12の遺伝子座で同一である。無作為確率により親BC−1−Ep DNAフィンガープリントを有するBC−1−Ep/SL細胞系統の確率は4x10
6
− 1
である。ED−1−Ep、SCC4、SCC13yに対するDNAフィンガープリント
はBC−1−Epパターンとは異なる。われわれのBC−1−Ep/SL細胞系統のDN
Aフィンガープリント分析から得られるデータでは、それは親BC−1−Ep細胞に起因
していることが証明されている。このデータはまた、ほかのヒトから分離されたケラチノ
サイト、ED−1−Ep、SCC4、SCC13yは、BC−1−Ep細胞あるいはほか
のそれぞれとは関連がないことを示している。BC−1−Ep/SLのDNAフィンガー
30
プリントデータからは、BC−1−Ep/SL細胞系統を同定する明白な方法が提示され
る。
【0064】
BC−1−Ep/SLケラチノサイトは無胸腺症ヌードマウスでは腫瘍形成性のものでは
ない
親BC−1−Epケラチノサイトと不死BC−1−Ep/SLケラチノサイト細胞系統の
腫瘍形成性を判定するために、細胞が無胸腺症ヌードマウスの側腹部に注入された。ヒト
扁平細胞がん細胞系統、SCC4が、ヌードマウスにおける腫瘍産生に関する陽性対照と
して使用された。各動物が一方の側腹部にSCC4の注入を受け、また反対側の側腹部で
親BC−1−EpケラチノサイトあるいはBC−1−Ep/SL細胞かのいずれかを受け
40
るように、サンプルの注入は計画された。この注入計画により、腫瘍産生における動物間
でのバラツキが取り除かれ、またマウスが腫瘍形成細胞の激しい増殖を支えることが確か
められた。親BC−1−Epケラチノサイト(継代6)もBC−1−Ep/SL細胞(継
代35)もヌードマウスでは腫瘍を産生することはなかった。腫瘍形成性テストの結果は
付録1の表2に示す。
【0065】
インビトロでの増殖特性
BC−1−Ep/SLケラチノサイトは非腫瘍形成性であり、また、マイトマイシンC処
理3T3支持細胞の存在下では標準的ケラチノサイト増殖培地での培養時に正常ヒトケラ
チノサイトの形態学的特性を示す。BC−1−Ep/SL細胞の増殖特性をさらに評価す
50
(16)
JP 3557172 B2 2004.8.25
るために、われわれはケラチノサイト増殖の公知の自律分泌調節因子の安定状態mRNA
値を調べた。BC−1−Ep/SL細胞系統から得られるmRNAのノーザン法による分
析では、上皮増殖因子受容体(EGFR)とc−mycの値だけではなく、形質転換増殖
因子α(TGF−α)と形質転換増殖因子β(TGF−β)などの自律分泌増殖因子の発
現が、同一ではないとしても、親BC−1−Epケラチノサイトとほぼ同じであることが
明らかになった。
【0066】
われわれは次に、BC−1−Ep/SL細胞の最適な増殖には、標準的なケラチノサイト
増殖培地のどちらの構成要素が必要とされるのかを判定した。上皮増殖因子(EGF)が
ない場合の継代培養は、EGF含有対照培養培地に比較して、各継代での細胞数において
10
60∼90%という結果を生じた(図1)。BC−1−Ep/SL細胞の増殖に関してE
GFへの依存は、1つの安定した特性と成っているようにみえる。継代50でのBC−1
−Ep/SL細胞は、最適増殖に関してEGFへの依存を継続して示している。
【0067】
上皮恒常性維持において重要な役割を演じているもう1つのポリペプチド増殖因子は、形
質転換増殖因子β1(TGF−β1)である。インビトロでは、TGF−β1は培養され
た正常ヒトケラチノサイトの阻害剤の1つである(ピエンテンポール(Pientenp
ol)ら、1990)が、しかし、ケラチノサイトの悪性形質転換からしばしばTGF−
β1誘発増殖阻害の減衰が結果的に生じる(バスコム(Bascom)ら、1989;パ
ーキンソン(Parkinson)ら、1983;ピエンテンポールら、1990;ライ
20
ス(Rice)ら、1992)。正常親BC−1−Epケラチノサイトのように、TGF
−β1は、BC−1−Ep/SL細胞系統の増殖を阻害する(図3)。TGF−β1誘発
増殖阻害は、親とBC−1−Ep/SLケラチノサイトの両方で可逆的なものである。
【0068】
BC−1−Ep/SLケラチノサイトのインビトロでの最適増殖に関して必要条件をさら
に特徴付けるために、培養培地が2.5%仔ウシ血清、EGF、標準的な増殖培地の個々
の構成要素により補われる培地のなかで培養された。図4は、インスリンのみの追加が細
胞数において15倍の増加を促進していることを示している。しかし、標準的なケラチノ
サイト増殖培地のすべての構成要素を追加した場合には、BC−1−Ep/SL細胞数で
30倍の増加を促進している。これらの発見からは、インビトロでの増殖に関する細胞型
30
特異的な必要条件をBC−1−Ep/SL細胞系統が保持していたことが示されている。
【0069】
インビトロでの分化特性
われわれは次に、BC−1−Ep/SL細胞が、表面培養と器官型培養の両方で正常な分
化を行うことができるのかどうかを研究調査した。われわれは、扁平分化、角化エンベロ
ープ(CE)の形成のマーカーをモニターした。培養されたヒトケラチノサイトでは、C
E集合体の初期段階は、被膜シスタチン−aと他のタンパク質から成る未成熟角化エンベ
ロープの形成という結果を生じるが、それが成熟角化エンベロープのもっとも内側の第3
のものを代表している。われわれは、親細胞とBC−1−Ep/SLケラチノサイトにお
けるCE形成を調べた(付録の表3)。付着細胞あるいはBC−1−Ep/SL細胞系統
40
のいずれかからケラチノサイトの2%未満がCEを産生する。この発見は、活発に増殖す
る、全面成長までは到っていない集密度のケラチノサイトは、5パーセント未満のCEし
か産生しないことを示すわれわれの以前の研究と一致している(ハインズ(Hines)
とアレン−ホフマン)。分化するよう誘発されるときに、BC−1−Ep/SL細胞がC
Eを産生することができるのかどうかを判定するために、細胞が表面培養培地から取り除
かれ、メチルセルロースにより半固形に作製された培地のなかに24時間の間減濁液に置
かれる。ケラチンの分化発現(ドロズドフ(Drozdoff)とプレジャー(Pled
ger)、1993)とCE形成(グリーン(Green)、1977)を含む末端分化
の多くの態様は、ケラチノサイト細胞間および細胞−下層付着の喪失により、インビトロ
で引き金を引かれる。われわれは、BC−1−Ep/SLケラチノサイトが、多くのCE
50
(17)
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を、親ケラチノサイトよりも通常多くのCEを産生したことを見出した(付録1の表3)
。これらの発見からは、BC−1−Ep/SLケラチノサイトが、この細胞型特異的分化
構造を作製する能力においては欠陥はないことが示されている。
【0070】
BC−1−Ep/SL細胞には付着の喪失後にアポトーシスが起こる。
われわれは次にBC−1−Ep/SLケラチノサイトが、アポトーシスを受けるかどうか
を、DNAのヌクレオソーム切断を測定することにより判定した。オリゴヌクレオソーム
断片への特異的DNA切断はアポトーシスの1つの特徴である(アーレンズ(Arend
s)ら、1990;ウィリー(Wyllie)、1980)。今日までに研究されたすべ
ての種のケラチノサイトは、インビボとインビトロの両方でアポトーシスを受けることが
10
できる。表皮ケラチノサイトは、その分化経路の一部として、脱核し、また代謝活性を喪
失するように運命付けられている。多くの対応するものが、ケラチノサイト末端分化とア
ポトーシスの間に存在している。われわれは、懸濁後にヌクレオソーム切断を受ける親と
BC−1−Ep/SLケラチノサイトの能力を評価した。正常培養ヒトケラチノサイトは
、半固形培地における懸濁により細胞間と細胞−下層接触が奪われるときに、アポトーシ
スの形態学的および生物化学的特徴の両方を示す。24時間の間無血清、付加物無しの培
地で増殖された親あるいはBC−1−Ep/SL細胞系統から得られる付着、前全面生長
(プレコンフルエンス)ケラチノサイトは、検出可能なDNA断片はみせなかった。同様
に、同一時間の間、半固形、無血清、付加無しの培地により処理された付着細胞は、ヌク
レオソーム断片化は示さなかった。半固形培地で懸濁されるとき、親とBC−1−Ep/
20
SLケラチノサイトの両方ともDNA断片化を示した。これらの発見は、付着の喪失によ
り分化が誘発された正常ヒトケラチノサイトはそのDNAを断片化することを示す、われ
われの研究所から得られた以前の研究と一致する(ハインズとアレン−ホフマン、199
6a,b;サシュセンマイヤーら、1996)。まとめると、これらのデータからは、B
C−1−Ep/SLケラチノサイトは、分化することができ、また細胞型特異的シグナル
に正常に応答し、アポトーシスを受けることが示されている。
【0071】
BC−1−Ep/SL細胞の器官型培養は正常扁平分化を示す
BC−1−Ep/SLケラチノサイトが正常な扁平分化を受けることができることを確か
めるために、その細胞を器官型培養培地で培養した。培地下にプラスチック下層上で培養
30
されたケラチノサイトの分化は、増殖と制限された分化を促進する。とくにヒトケラチノ
サイトは全面生長となり、重層上皮に似ている複数層シートに層化させ、それらを産生す
る。しかし、光学および電子顕微鏡により、組織培養において形成された複数層シートの
構造と完全なヒトの皮膚の間には驚くべき相違があることが分かった。器官型培養はイン
ビボ様条件下でケラチノサイトを培養する技術である。すなわち、正常機能の下層、真皮
線維芽細胞に埋め込まれている原線維性コラーゲンに付着している細胞は、その細胞が空
気に曝されている上部シートおよびコラーゲンゲルによる拡散によってもたらされる栄養
の勾配にもっとも近い、増殖している基底細胞とともに増殖することができる。これらの
条件下で、正確な組織構造が形成される。
【0072】
40
われわれは、器官型培養培地で増殖する親細胞BC−1−Ep 5°とその細胞系統BC
−1−Ep/SL 38°の両方を比較した。正常分化表皮のいくつかの特性が明らかに
なった。親細胞とBC−1−Ep/SL細胞系統の両方において、立方体様基底細胞の単
層が、表皮と真皮等価物の接合点に位置を占めている。円形の形態と細胞質に対する高い
核の比率がケラチノサイトの活発な分裂増殖を示す。正常ヒト表皮においては、基底細胞
が分裂すると、組織の分化している層のなかに上方に向かって移動するよう娘細胞をその
基底細胞が誘発する。その娘細胞はサイズにおいて増大し、また平坦および扁平になる。
最終的には、これらの細胞は脱核し、また角化、ケラチン化した構造を形成する。この正
常分化のプロセスは、BC−1−Ep親細胞とBC−1−Ep/SL細胞の両方の上部細
胞において明らかである。平坦化した扁平細胞の外見は、基底細胞の上に位置するケラチ
50
(18)
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ノサイトの上部層において明らかであり、また、層化が起こったことを示している。その
組織の一番上の部分(AとB)には、脱核した鱗屑が培養培地の一番上から剥がれている
のが示されている。今日まで、われわれは、器官型培養培地で増殖する親BC−1−Ep
ケラチノサイトとBC−1−Ep/SLケラチノサイト細胞系統の間の分化における何ら
かの組織学的相違を、光学顕微鏡下のレベルでは観察したことがなかった。
【0073】
われわれの組織学的観察を確かめるため、BC−1−Ep 6°とBC−1−Ep/SL
38°を電子顕微鏡を使用して分析した。より高い倍率により、われわれはラフト培養
培地における正常分化のさらに詳細な特徴のある構造を観察することができた。顕微鏡写
真を調べることにより、われわれは、BC−1−Ep/SL細胞が器官型培養培地では正
10
常な層化を蒙ることが納得できた。これは、親BC−1−Ep細胞にみられたこととほぼ
同じであった(データは図示せず)。われわれはまた、基底層にある半接着斑の形成に気
づいた。これは、またその細胞系統が正常ヒト表皮にみられる構造を形成することができ
ることを示唆している。半接着斑は、基底層へのケラチノサイトの接着を増加させ、また
一体化とその組織の強度を維持するのを助ける特殊化した構造のものである。光学顕微鏡
のレベルおよび電子顕微鏡のデータは、BC−1−Ep/SL細胞系統が器官型培養培地
では正常に層化し、また分化することができることを示している。
【0074】
BC−1−Ep/SL細胞系統の最適一過性トランスフェクション効率
われわれは、トランスフェクションのマーカーとして、グリーン蛍光タンパク質(GFP
20
)に関する遺伝子を含んでいるプラスミド、pGreenLanternを使用する選択
を行った。GFPは天然で蛍光を発する、紫外線に曝すと容易にみられるクラゲを形作る
非毒性タンパク質である。さらに、いくつかの実験には、G418の存在下で細胞の増殖
を可能にするネオマイシン抵抗性に関する遺伝子を含んでいる、もう1つのプラスミドで
あるpcDNA3neoとのpGreenLanternとのコ−トランスフェクション
が含まれる。しかし、選択方法としてのG418の使用は、ケラチノサイトに対してきわ
めて毒性がある可能性があり、また、陽性にトランスフェクションされた細胞をうっかり
して殺傷してしまうことがある。われわれは、GFP発現をベースにして無菌的に細胞を
分取することは、陽性トランスフェクタントを選択する近道を提供し、また現在入手が可
能なもっとも毒性が少ない選択方法であると考えている。
30
【0075】
このシステムにおけるトランスフェクションの最適化を考慮するためのパラメータが多く
あった。われわれは、最大のトランスフェクション効率を得るためにこれらを3つのもっ
とも重要不可欠なものに絞り込んだ。これらのパラメータには、細胞集密度、DNAの総
量(濃度)、トランスフェクション試薬に対するDNAの比率(GeneFECTOR)
が含まれる。トランスフェクションは、設定されたパラメータを使用して完了し、また細
胞は次の日に、GFP発現の存在に関して反転蛍光顕微鏡により分析される。さらに、フ
ローサイトメトリーが生存率とGFP陽性細胞についての情報を得るために使用される。
【0076】
細胞集密度は、最大トランスフェクション効率を得るには非常に重要なものであるように
40
みえる。さまざまなレベルの集密度でBC−1−Ep/SL細胞は、20∼25μgのD
NAの範囲でトランスフェクションされ、その後フローサイトメトリーで24時間分析さ
れた。いくつかの実験から得た一過性トランスフェクション効率では、5∼7x10
5 細胞/ 100mm皿という低い集密度が(∼30%集密度)が10∼19.5%の範囲
のもっとも高いトランスフェクション効率を生むことを示唆している。2∼4x10
6
細
胞/100mm皿(∼70%集密度)という高い集密度で完了したトランスフェクション
は1∼3%という非常に低い一過性トランスフェクション効率を生んだ(図5)。
【0077】
最適DNA密度はまた、20∼33μgの範囲のpGreenLanternとpcDN
A3neoの総量を使用してテストが行われた。ほかのすべてのパラメータは定常に保た
50
(19)
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れた。われわれは、総量DNAの値が高ければ高いほど一過性トランスフェクション効率
が良くなるのではないことを発見した。われわれのデータからは、20μgのDNA総量
はBC−1−Ep/SL細胞のトランスフェクションには最適であり、3.79∼13.
64%という範囲のトランスフェクション効率を結果的に生むことが示唆されている(付
録1の表4)(細胞集密度は実験間のトランスフェクション効率におけるバラツキを説明
するためにこの表のなかに含められている)。われわれは、DNAの量がさらに大きくな
ると、それが細胞に対する毒性を増大させる原因になることを観察した(フローサイトメ
トリー、データは図示せず)。
【0078】
BC−1−Ep/SL細胞のトランスフェクションを最適化する際の第3のパラメータは
10
、トランスフェクション試薬に対するDNAの比率であった。GeneFECTORに対
するDNAのいくつかの異なる比率(それには1:2、1:3、1:4が含まれる)が研
究調査された。三重の実験から回収された一過性トランスフェクション効率は、3部のG
eneFECTORに対して1部のDNAの比率(1:3)が、10∼19.5%の範囲
のトランスフェクション効率を伴い、最適であることが示されている(付録1の表5)(
細胞集密度は実験間のトランスフェクション効率におけるバラツキを説明するために含め
られている)。われわれは、30%(5∼7x10
5
細胞/ 100mm皿)という細胞
集密度、20μgのDNA総量、GeneFECTORに対するDNAの比率1:3が、
BC−1−Ep/SL細胞系統における最適な一過性トランスフェクション効率のための
条件であると結論付けた。
20
【0079】
安定GFPトランスフェクションBC−1−Ep/SL細胞の同定と分離
一過性トランスフェクション効率に関する最適化条件を使用して、われわれは成功裡に、
安定GFP発現BC−1−Ep/SL細胞を分離し、また得た。安定発現はホスト細胞の
染色体のなかにGFP遺伝子を組み込むことにより定義される。一過性にトランスフェク
ションされたGFP陽性細胞の初期の観察からは、もっとも高いGFP発現を有し、もっ
とも輝度の高い細胞は、表面培養倍値に再塗布するときに、あまりに分化しすぎているた
めにコロニー形成能力を維持することができないのではないかという問題があった。これ
をテストするために、細胞がトランスフェクションされ、また、もっとも輝度が低いもの
からもっとも輝度の高いものまでのGFP発現の蛍光強度に基づいて無菌的に分取された
30
。細胞分取から得られたGFP陽性細胞は塗布され、また安定コロニーが検出され、また
分取後10∼12日後にカウントされた。これらのコロニーにおけるGFP発現のバラツ
キは特に記されるべきものである。分化細胞が大きいほど、GFP発現では輝度が高くな
るようにみえる。安定した、GFP陽性コロニー形成効率(CFE)は前述されているよ
うに計算された。3つの別々の細胞分取実験が完了され、また安定GFP陽性細胞のパー
センテージが、3.2%、4.7%、5.64%であると計算された。これらの実験の1
つを示すサンプル表が示されている(付録1の表6)。三重実験で得られたデータでは、
もっとも高いGFP蛍光強度を有する細胞は、より低いGFP蛍光強度のものよりもコロ
ニー形成効率が低いようにみえることが示唆されている。GFP陽性CFEにより、われ
われは、安定的にトランスフェクションされたコロニーの妥当な数を得るために、塗布す
40
る必要があるGFP陽性細胞の数を推定することが可能となった。
【0080】
無菌細胞分取の結果として、われわれは安定GFP発現BC−1−Ep/SL細胞のいく
つかのクローン系統を分離し、また拡大することができた。pTracer−SV40と
pGreenLanternの両方のベクターから得たGFPを発現させる系統は、細胞
形態学における明らかな変化あるいはGFP発現における減少なしに連続して継代培養し
た。
【0081】
グリーン蛍光タンパク質を発現させるBC−1−Ep/SLケラチノサイトの安定トラン
スフェクタントは、器官型培養培地では正常な層化を示す
50
(20)
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正常組織構造を再創造するように安定的にトランスフェクションされるGFP陽性BC−
1−Ep/SL細胞の能力をテストするために、われわれはこれらの細胞を器官型培養培
地に塗布した。培養培地のこのタイプでは、三次元微環境で可能なかぎり完全な皮膚の特
徴の多くのものを表示することが細胞には可能である。この手順は、三重にして繰り返さ
れ、また結果生じた組織は共焦点顕微鏡だけではなく、蛍光顕微鏡により組織学的に分析
された(データは図示せず)。 安定的にトランスフェクションされた細胞は、トランス
フェクションされていないBC−1−Ep/SL対照と同様に分化すると考えられる。両
方の培養培地とも、光学顕微鏡のレベルで気が付く組織学的相違がなく同じような細胞層
化を示している。興味深いことに、GFPの外見は培養培地の分化した上部層でもっとも
蛍光強度が高い。われわれは、蛍光と共焦点顕微鏡の両方によりこの発現パターンを観察
10
した。GFP強度における相違は細胞層に蓄積されたタンパク質の量のバラツキの結果で
はないかと考えられる。代替的には、GFP発現を促進するCMVプロモーターは、その
細胞がさらに分化した状態に達するまでは活性にはならないことが考えられる。
【0082】
2.ヒト扁平細胞がんの増殖をモデルにして作製するため、器官型培養培地システムのな
かで自然発生的に不死化したヒトケラチノサイトBC−1−Ep/SLの使用法
A.材料と方法
細胞成分の説明
BC−1−Ep/SL細胞系統は、正常ケラチノサイト増殖と分化特性を保持している自
然発生的に不死化したヒトケラチノサイト細胞系統である。これは、新生児包皮サンプル
20
から得た初代ケラチノサイトの増殖のための標準的な方法を使用して分離された。ケラチ
ノサイト培養は、アレン−ホフマンとラインバルトにより説明されているように、マイト
マイシンC処理スイスマウス3T3線維芽細胞の存在下で、単一細胞懸濁液の分割量を塗
布することにより確立された(ラインバルト,ジェー.ジー.ら、1981)。
【0083】
MW−1−F線維芽細胞は、正常ヒト新生児から分離され、また新生児包皮のトリプシン
解離のための標準的な方法に従って培養された。その培養は10%仔ウシ血清を補足した
ハムのF−12培地を含む組織培養プレート上にある、解離された細胞懸濁液の分割量を
塗布することで開始された。線維芽細胞培養培地の第2世代またそれに続く継代が、以下
に説明されているように、器官型培養モデルの非表皮成分の一部として使用される。
30
【0084】
SSC13y細胞系統は、器官型混合培養モデルの開発のための原型H&N悪性細胞系統
として役に立つ。SCC13yはSCC13細胞系統から継代培養された。SCC13は
放射線療法後に再発した顔の表皮の腫瘍から誘導される(ラインバルト,ジェー.ジー.
ら、1981)。コラーゲナーゼ解離プロトコルは、腫瘍の外科的生検から得られる単一
細胞懸濁液を作製するのに使用された。細胞懸濁液は初代培養の分離と拡張を可能にする
マイトマイシンC 3T3線維芽細胞支持細胞層上に塗布された。SCC13細胞系統は
培養培地における連続継代培養により確立され、またそれが誘導された腫瘍の異数体核型
が保持された。SCC13yは、メチルセルローズ懸濁液後に分化する制限された能力を
保持しているが、それは正常ケラチノサイトにおける一定の分化マーカーと構造の発現を
40
促進する1つの技術である。しかし、SCC13yはヌード(無胸腺症)マウスにおいて
は腫瘍形成性である。
【0085】
細胞培養
BC−1−Ep/SL細胞は標準ケラチノサイト増殖培地で増殖された。標準ケラチノサ
イト培養培地は、2.5%胎児クローンII(FCII−はHycloneから得られる
仔ウシ血清の代替物である)、0.4μg/mlヒドロコルチゾン(HC)、8.4ng
/mlコレラ毒素(CT)、5μg/mlインスリン(Ins)、24μg/mlアデニ
ン(Ade)、10ng/ml上皮増殖因子(EGF)、100単位ペニシリン、100
μg/mlストレプトマイシン(1% P/S)により補足したハムのF12:ダルベッ
50
(21)
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コの変法イーグル培地(DME)、(3:1、0.66mMカルシウム)の混合物である
。細胞はマイトシンC不活性化スイスマウス3T3線維芽細胞支持細胞層により、100
mm
2
組織培養皿上の3x10
5
細胞で、週間隔で継代培養される。
【0086】
MW−1−F線維芽細胞株は10%仔ウシ血清により補われたDMEのなかで維持され、
また、100mm
2
組織培養皿の上で週毎に継代培養される。
【0087】
SCC13y細胞系統株はSCC培地で維持される(0.4μg/ml HC、1%スト
レプトマイシン(P/S)により補足したDME)。細胞は、マイトマイシンC不活性化
スイスマウス3T3線維芽細胞支持細胞層により100mm
2
組織培養皿の上で週毎に継
10
代培養される。
【0088】
器官型培養の形成
器官型培養は前述のように増殖された(パレントー,エヌ.、1994)。この手順は変
更が加えられたもので、再構築された表皮/真皮皮膚等価物内の腫瘍病巣の増殖を可能に
している(図2)。コラーゲン基剤は正常ヒト新生児線維芽細胞、MW−1−F(5°)
をI型コラーゲンと、10% FCII+F−12+ペニシリン/ストレプトマイシンの
なかで混合することにより形成された。このコラーゲン基剤は5日間収縮するに任せた。
BC−1−Ep/SL(31°)細胞は、0.2% FCS+1.88mMカルシウムを
含有する3F12:1DME+HC+Ade+Ins+CT+P/Sの50μlのなかに
入れた3.5x10
5
20
細胞でコラーゲン基剤上に塗布された。ケラチノサイトと悪性細胞
を層化させる混合培養に関しては、SCC13y
G F P +
細胞が、塗布前に、3x10
5
個のBC−1−Ep/SL細胞に対して500、5000、10,000個のSCC13
y
G F P +
細胞の割合で、BC−1−Ep/SL細胞と混合された(図1)。細胞は追加
の13mlの培地を加える前に2時間付着させるに任せた(0日目)。1日目と2日目に
は、細胞には再度供給が行われた。4日目には、細胞は綿パッド付きの空気培地インター
フェイスまで持ち上げられ、また、角化培地(1.88mMカルシウムを含有する2% FCS+3F12:1DME+HC+Ade+Ins+CT+P/S)に切り換えた。細
胞は3日毎に角化培地が供給された。15日目には、培地は取り除かれ、また器官型培養
培地は4%パラホルムアルデヒドにより一夜固定され、また0.1 Mグリシンを加えた
30
PBSのなかに保存された。
【0089】
GFP発現ベクターとSCC13yのトランスフェクション
市販されていて入手可能なヒト化グリーン蛍光タンパク質(GFP)発現ベクターである
pGreenLantern(ライフテクノロジー社、ゲティスバーグ市、メリーランド
州)がSCC13y細胞系統を遺伝子工学的に標識化するのに使用された。GFPの発現
は、安定的にトランスフェクションされたSCC13y細胞のなかにGFPが蓄積される
よう構成的活性ヒトサイトメガロウイルスプロモーターにより制御される。プラスミドD
NAは、エンドトキシン遊離マキシプレップキット(キアゲン社)を使用してベクター形
質転換細菌株か作製された。
40
【0090】
トランスフェクション実験に関しては、SCC13y(継代60)細胞が、6穴プレート
のなかに入れたマイトマイシンC処理スイスマウス3T3線維芽細胞支持細胞層上に1x
10
5
細胞の密度で塗布された。SCC13y細胞には、3T3層が0.5mM EDT
Aにより取り除かれた時点で、接着するように24時間が与えられた。SCC13y細胞
はDMEにより2回洗浄され、そして血清含有培地が加えられた。細胞は24時間後にト
ランスフェクションされた。
SCC13y細胞(60)は、ポリカチオン性脂質GeneFECTOR(ベンノバ社)
を使用してトランスフェクションされた。本明細書では、GFPをトランスフェクション
された細胞は、SCC13y
G F P +
として呼称されることとする。継代10は、トラン
50
(22)
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スフェクション後の第1継代である。トランスフェクション混合物は、6穴プレートの各
穴に対して200μlの補足していなかったDMEにpGreenLanternの10
mgを加えることにより作製された。GeneFECTORの30μgがDNA溶液に加
えられ、最終的にGeneFECTORに対するDNAの比率が1:3で、また総量が4
00μlとなった。トランスフェクション混合物はやさしく渦巻き状に攪拌され、また室
温で暗所に15分間温置された。培地はSCC13y培養培地から取り除かれ、プレート
はリン酸塩遊離DMEにより2回洗浄され、また、リン酸塩遊離、未補足DMEの2ml
により再度供給が行われた。トランスフェクション混合物が滴下様に各プレートに加えら
れ、また細胞は5% CO2 インキュベータのなかで37℃にて3時間インキュベートさ
れ、30分後とに振とうした。その培地は取り除かれ、また細胞はDMEにより2回洗浄
10
され、またSCC培地により再度供給が行われた(抗生物質は加えない)。24時間後、
培地は抗生物質を補ったSCC培地に取り替えられた。
【0091】
フローサイトメトリーによる検出とGFP発現の定量化
SCC13y細胞は0.5mM EDTAと0.1%トリプシンにより、トランスフェク
ション後24時間で培養培地から除去された。細胞は、遠心分離(5分間440xg)に
より回収され、また2x10
6
細胞/mlの細胞密度で血清含有培地に再懸濁され、また
5mg/mlヨウ化プロピジウム(PI)により染色された。この500μlの細胞懸濁
液は、凝集塊を除去するための分析の直前に42μmメッシュ(テトコ社)により濾過さ
れた。トランスフェクションされたSCC13y細胞は、488nmレーザーを装備した
20
FACScanか、あるいはFACSCaliburベンチトップフローサイトメータ(
ともにベクトンディッキンソン社製)かのいずれかの上で分析された。1万件のイベント
が得られ、またCellQuestソフトウエア(ベクトンディッキンソン社)を使用し
て分析された。PI染色され、非生存細胞は分析から除外された。一過性トランスフェク
ション効率あるいはSCC13y
生存SCC13y
+
G F P +
G F P +
のパーセンテージが、生存細胞の総数のうちの
細胞のパーセンテージとして計算された。SCC13y
G F P
集団中経時的なGFP発現の安定性を測定する実験では、GFP発現細胞のパーセンテ
ージが4週間間隔で測定された。
【0092】
安定SCC13y
G F P +
細胞の分離と同定
30
トランスフェクション後、一過性にトランスフェクションされたSCC13y細胞は、1
00mm
2
組織培養皿上で連続して継代培養された。1週間の拡張後、これらの細胞は再
び、150mm
2
組織培養皿上で継代培養され、また1週間追加して増殖することができ
た。これにより、一過性トランスフェクタントにおけるGFP発現の喪失だけではなく、
安定トランスフェクタントの拡張が可能になった。細胞は0.5mM EDTAと0.1
%トリプシンを使用して除去された。遠心分離(5分間440xg)後、細胞は5mg/
mlPIを加えた5x10
6
細胞/mlという密度で血清含有培地のなかに再懸濁された
。この懸濁はその後、42μm無菌メッシュ(テトコ社)により、細胞分取直前に濾過さ
れた。トランスフェクションされたSCC13y細胞が、干渉性アルゴン488nmレー
ザーを装備したFACStar Plus(ベクトンディッキンソン社)上で分取された
40
。細胞は2000/秒の速度で分取され、またサンプルは、生存率とGFP発現をチェッ
クするために、細胞分取後に回収された。非生存細胞は回収されなかった。
【0093】
細胞分取の直後に、SCC13y
(典型的には1∼3x10
4
G F P +
細胞培養が再開された。得られたすべての細胞
)は、マイトマイシンC処理スイスマウス3T3線維芽細胞
支持細胞層を加えた100mm
2
皿上に塗布された。細胞は、GFP短帯域パスフィルタ
を備えたIX−70反転蛍光顕微鏡(オリンパス社)を使用して隔日にモニターされた。
非GFP発現コロニーは、その皿からコロニーを削りとることにより除去された。安定G
FP発現コロニーには再び供給が行われ、また、拡張が可能となった。GFP発現コロニ
ーが1000細胞あるいはそれ以上の推定密度にまで増殖したときには、細胞はマイトマ
50
(23)
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イシンC処理3T3支持細胞層を加えた100mm
集団におけるSCC13y
G F P +
2
皿上に塗布され、また拡張された。
細胞のベースラインパーセンテージが、上述のように
、フローサイトメトリーにより確定された。
【0094】
連続継代培養によるSCC13y
SCC13y
G F P +
G F P +
細胞の安定性
細胞は以下の条件下で標準的SCC培地で増殖された。すべての細
胞は、マイトマイシンC不活性化3T3支持細胞層を加えた6穴プレートの3穴で三重に
増殖された。6日目毎に、各培養培地は、0.1%トリプシンにより回収され、また1x
10
5
細胞が支持細胞層を加えた6穴プレートの新しい穴に回された。培地は週に2回変
えられた。4週間間隔で、サンプルが、2x10
6
細胞/ml懸濁され、また上述のよう
10
に、フローサイトメトリーによりGFP発現について分析が行われた。
【0095】
SCC13y
G F P +
のインビトロでの増殖
増殖プロフィールはマイトマイシンC処理マウス3T3支持細胞層を加えずに6穴組織培
養プレートの重複培養穴に1x10
5
細胞を塗布することにより測定された。各サンプル
に対する重複培養穴は1日で回収され、また血球計カウントにより細胞総数が測定された
。平均細胞数については、標準ANOVA統計分析法を使用してSCC13y対照(非ト
ランスフェクション)とSCC13y
G F P +
の間の相違に関してテストした。
G F P +
細胞の増殖
【0096】
無胸腺症マウスにおけるSCC13y
20
腫瘍異種間移植として増殖するGFP発現SCC13y細胞の能力が、補足されなかった
DMEの5∼10x10
6
細胞/100μlの無胸腺症ヌード(nu/nu)、3∼4週
齢、雌マウス(ハーラン−スプラグ−ダーレイ(Harlan−Sprague−Daw
ley)社)のなかに注入することにより測定された。各動物は、トランスフェクション
されていないSCC13yとSCC13y
G F P +
のそれぞれ1つは背部に、1つの腹部
に皮下注入により接種された。各場所で注入された細胞タイプは、代替マウスでは切り換
えた。各細胞系統に関して1つのテストを行った総数8匹のマウスが調べられた。すべて
のマウスが公の動物研究施設に収容され、また実験技術とプロトコルが再検討され、ウィ
ンスコンシン大学マジソン校の保健科学動物保護委員会により承認された。
【0097】
SCC13y
30
G F P +
クローン形成細胞生存率
コロニー形成効率(CFE)は、マイトマイシンC処理マウス3T3支持細胞層を含む重
複培養6穴プレートに指数増殖培養培地から細胞密度のある範囲を塗布することにより測
定された。標準SCCプレートでおよそ2週間増殖後、10%ホルマリンのなかで10分
間固定され、水道水で洗浄され、またメチレンブルーで一夜染色された。∼50細胞のコ
ロニーがカウントされた。CFEが[(カウントされたコロニー数)/(接種された細胞
数)]x100%として計算された。平均CFEが重複培養に関して測定され、またトラ
ンスフェクションされていないSCC13y対照とSCC13y
G F P +
の間の相違に関
して、標準ANOVA統計分析法を使用してテストされた。
【0098】
SCC13y
40
G F P +
の放射線照射生存率
SCC13yとSCC13y
G F P +
細胞についての放射線照射生存率が、0、1、3、
6、10Gy線量で重複培養指数増殖培養培地を照射することにより測定された。培養培
地は25mm
度で
1 3 7
2
組織培養フラスコのなかに維持され、また5.86Gy/分の現行線量速
Cs放射性ボックスにより照射されたときにはフラスコ当たり1−2x10
6
細胞総数を有していた。照射後、細胞はトリプシン処理され、カウントされ、希釈され、
また、コロニー増殖の検出が可能になる細胞密度の範囲にわたってマイトマイシンC処理
3T3支持細胞層上の3−5∼60mm
2
皿に塗布された。コロニー形成効率は上述のよ
うに測定された。平均CFEが重複培養に関して測定され、またトランスフェクションさ
れていないSCC13y対照とSCC13y
G F P +
の間の相違に関して、標準ANOV
50
(24)
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A統計分析法を使用してテストされた。
【0099】
トランスフェクションされた器官型培養培地の組織学的分析
継代9(でSCC13y
G F P +
細胞が、500、5000、100,000細胞/コラ
ーゲン基剤という密度で塗布され、16日間器官型共培養培地で増殖された。器官型培養
培地はパラフィンに包埋される前に4%パラホルムアルデヒドで一夜固定された。切片(
5μm)は切断され、代替切片が取付けられ、また、ウィンスコンシン大学マジソン校病
院の外科病理学教室(マジソン市ウィンスコンシン州)によって、ヘマトキシリンとエオ
ジン(H&E)により染色された。非H&E切片は再び水和化され、5mg/mlヘキス
ト染料(33258)により15分間染色され、脱水され、またサイトシール(Cyto
10
seal)取付け培地(ステファンサイエンティフィック(Stephens Scie
ntific)社)を使用して取付けられた。切片は、二重FITC−ヘキストフィルタ
(470nm±20と525nm±帯域パス)を装備したIX−70反転蛍光顕微鏡(オ
リンパス社)を使用して検討された。
【0100】
共焦点顕微鏡によるGFP発現の分析
継代9(でGFP発現SCC13y細胞が500細胞/コラーゲンラフトの密度で塗布さ
れ、また上述のように、16日間器官型培養培地で増殖された。器官型培養培地は4%パ
ラホルムアルデヒド−PBSで一夜固定され、また>1時間、4℃にて0.1 Mグリシ
ン−PBS溶液で洗浄された。培養培地が取付けられ、ベクタシールド取付け培地(ベク
20
ターラボ社)を使用してカバーガラスをかぶせ、またゴムセメントにより密封された。G
FP発現が、488nmの励起波長と500∼530nm帯域パスフィルタによる検知力
を備えた共焦点レーザースキャニング顕微鏡(ニコンダイアフォト200)を使用して分
析された。画像は上部の角化層で開始しておよそ1μm間隔で撮られた(ウィンスコンシ
ン大学マジソン校のダブリュー.エム.ケック神経撮像研究所(Neural Imag
ing Laboratory))。
【0101】
B.結果
SCC13yのトランスフェクションの効率
この実験セットの1つの目的は、SCC13yのトランスフェクション効率を最適化する
30
ことであった。一過性トランスフェクションは、トランスフェクション後48時間内に起
こるトランスフェクションされた構築物の陽性発現として定義される。トランスフェクシ
ョン効率についての効果に関する主に3つの変数があり、それらの変数が調べられた。す
なわち、DNAの濃度、GeneFECTORの濃度、細胞密度である。付録1の表7に
、フローメトリーにより測定されたトランスフェクション後のGFP細胞の観察されたパ
ーセンテージが要約されている。21.4%という最適SCC13yトランスフェクショ
ン効率は、DNA:GeneFECTORの比率1:2を使用して入力DNA10μgで
観察された。トランスフェクションに関する最適細胞密度は、細胞が指数増殖期にみられ
たが、しかし、それは培養培地が全面生長に達する以前の時点であった。非生存細胞は陽
性トランスフェクタントである場合もあるが、これらの細胞は、フローサイトメトリーソ
40
フトウエアによりこの集団をゲートで制御することにより分析から除外された。すべての
実験では、観察された死亡細胞の総数は分析された細胞の総数に対しては相対的に小さい
ものであった(<8%)。
【0102】
SCC13y
G F P +
集団の分離
上述の最適一過性トランスフェクション条件を使用して、指数増殖SCC13yが、pG
reenLantern GFPプラスミドによりトランスフェクションされ、また安定
SCC13y
G F P +
細胞が分離された。安定トランスフェクションは、連続継代培養の
4週間未満ではない期間の間の陽性GFP発現として定義される。一過性にトランスフェ
クションされた細胞のGFP発現は、フローサイトメトリーヒストグラム上でおよそ2ロ
50
(25)
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グの範囲にわたって変化しており、またトランスフェクション細胞の総集団の4%を示し
た。分取された細胞の塗布後、個々のSCC13y
G F P +
コロニーがコロニー内(およ
びそれらの間)での発現のさまざまな値を有することが観察されたが、しかし、混合GF
P
+
/GFP
F P +
−
コロニーは稀にしか観察されなかった。第3継代までに、SCC13y
G
集団分取後の分取後検査では、細胞のおよそ85%でGFP発現したことが示され
た。
【0103】
SCC13y
G F P +
トランスフェクタントにおける安定GFP発現
継代7におけるSCC13y
G F P +
のプールされた集団は、非GFP発現SCC13y
で検出された自己蛍光背景よりもおよそ1ログ大きなGFP発現のベースライン値を示し
10
ている。
【0104】
集団におけるSCC13y
G F P +
細胞のパーセンテージは、FACS分析ソフトウエア
を使用し、90%であることが分かった。これは、上で論議された初期継代での分取後に
見つかったGFP
P +
+
細胞のパーセンテージ(85%)によく匹敵する。SCC13y
G F
細胞は、可変性、非トランスフェクションSCC13y細胞で検出されたもっとも高
いGFPシグナルよりも大きなGFPシグナルを有するすべてのイベントとして定義され
た。蛍光顕微鏡を使用した視覚的な観察では、もしあるとしても、この集団には非GFP
発現SCC13yはほとんど存在しないことが確かめられている。
【0105】
20
もう1つの実験セットでは、SCC13yにおけるGFP発現は、長い期間にわたって安
定していることが示されている。安定SCC13y
れたGFP発現のヒストグラムは、GFP
+
G F P +
の分離後に継代12で決定さ
(85%)のパーセンテージではほとんど変
化がなく、またGFPシグナルは、非GFP発現対照よりもおよそ1ログ大きいままであ
った。蛍光顕微鏡により、視覚的に、細胞の100%が緑色にみえることが確認された。
【0106】
GFP発現によってインビトロでのSCC13y増殖は影響を受けない
次に、SCC13y
G F P +
細胞のインビトロでの増殖が、GFP発現がSCC13y増
殖に影響を与えたかどうかを判定するために調べられた。SCC13y
G F P +
細胞と非
トランスフェクションSCC13y細胞はほぼ同じ増殖速度で増殖し、また、インビトロ
30
での増殖の6日後にほぼ同じ細胞総数に達した。さらに、両方の細胞系統で、指数的な、
急速な増殖期の後に続く遅い増殖の典型的な開始遅滞期を示した。
【0107】
SCC13y
G F P +
は腫瘍形成性のまま残る
SCC13y細胞系統は悪性であり、またヌードマウスで腫瘍を形成する。SCC13y
G F P +
細胞は、外因性GFP発現が腫瘍異種間移植を形成するSCC13y細胞の能力
を変えるかどうかを判定するために調べられた。両方の細胞系統で注入された8匹のマウ
スについては、各マウスが注入後第1週内に観察できる腫瘍を産生した。さらに、いずれ
の腫瘍も退縮したものはなかった(8週間までモニターした)。各腫瘍は必ずしも同じ速
度で増殖したわけではないが、これらの実験は続けられて、すべての腫瘍が週単位をベー
40
スにしてサイズが増加した。
【0108】
SCC13y
G F P +
の非改変放射線照射応答反応
SCC13y細胞系統の放射線照射応答反応がよく特徴付けられている(ペテレイト,デ
ィー.ジー.ら、1994)。6Gyの放射線線量では、指数増殖細胞のおよそ99%(
2ログ)を殺傷し、10Gyではおよそ99.9%(3ログ)を殺傷する。同じ線量範囲
のGFP発現SCC13y細胞についての同様な実験では、ほぼ同じ結果を生んでいる。
また、このクローン形成生存測定で測定されたSCC13y
G F P +
コロニーの形態学は
、非トランスフェクションSCC13y細胞とほぼ同じである。コロニーは、2週間以上
にわたる測定期間でコロニー規模あるいは細胞密度において何らの相違も示さなかった。
50
(26)
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これらの観察で、SCC13y放射線感受性へのGFP発現の効果の欠如が確かめられて
いる。
【0109】
SCC13y
G F P +
の共培養はBC−1−Ep/SLケラチノサイトの正常層化を改変
しない
BC−1−Ep/SL細胞は、器官型培養では完全に分化した皮膚を形成することを前に
示している
7
。この機能的に正常な組織に悪性細胞型を導入することによって、正常な扁
平分化を示すBC−1−Ep/SLの能力を改変するようにはみえない。BC−1−Ep
/SLとSCC13y
G F P +
細胞の共培養の増殖を観察することにより、重層上皮にほ
ぼ同じである複数層のシートが同定されている。このBC−1−Ep/SL細胞は継続し
10
て正常に分化する表皮のいくつかの特性を示している。基底細胞は、表皮と真皮等価物の
接合点に位置を占めている立方体様細胞の単層を形成しているのが観察される。円形の形
態および細胞質に対する高い核の比率が、ケラチノサイトが活発な分裂集団であることを
示している。細胞が平坦になり、また扁平に成り、またその組織の上部層で核を失いなが
ら、皮膚表面に向かって上の方に移動していく細胞における正常分化は明らかである。
【0110】
器官型培養SCC13y
G F P +
とBC−1−Ep/SL重層上皮における3−D腫瘍病
巣の同定
悪性SCC13y
G F P +
細胞系統が、優勢な非悪性ケラチノサイト培養培地で腫瘍病巣
を形成することができるかどうかを判定するために、さまざまな数から成るSCC13y
G F P +
細胞が器官型BC−1−Ep/SLケラチノサイト培養培地に接種された。SC
C13y
G F P +
20
細胞は300,000 BC−1−Ep/SL細胞毎に500、500
0、100,000細胞が実験の開始時に塗布された。培養の2週間後、すべての実験群
で、GFP
+
細胞の増殖する腫瘍病巣が形成された。SCC13y
G F P +
細胞のもっと
も高い濃度(300,000個のBC−1−Ep/SL細胞に対して100,000個の
SCC13y
G F P +
見えたGFP
+
細胞)により、BC−1−Ep/SL細胞の増殖を圧倒するように
細胞の連続シートが作り出された。三次元での器官型培養培地を調べるこ
とを可能にする共焦点顕微鏡により、BC−1−Ep/SL細胞の器官型培養培地により
形成される正常組織様構造内で増殖する個々のSCC13y
の形成が確かめられた。SCC13y
G F P +
G F P +
腫瘍病巣のいくつか
病巣は、球状の形状をした塊で優勢に増殖
し、また病巣当たり50個細胞未満が含まれていた。興味深いことに、SCC13y
P +
30
G F
細胞病巣がBC−1−Ep/SL(緑色ではない)共培養細胞により中断されること
なく増殖し、すなわち、病巣のすべてのGFP
+
細胞は互いに隣接しているように見えた
。これらの観察により、SCC13y悪性細胞は遺伝子工学的に作られたヒト組織内で混
合培養することが可能であり、また、GFP発現が非常に小さなヒト腫瘍病巣であっても
同定し、また視覚化するのに使用することができる効率的な標識化方法であることが確か
められている。
【0111】
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ts),1994。
22.ペテレイト,ディー.ジー.ら,「急速に分裂する頭部と頸部腫瘍のための放射線
30
療法による結合ポリアミン除去:改善移動領域制御に関する方策」(Combining
polyamine depletion with radiation ther
apy for rapidly dividing head and neck t
umors:strategies for improved locoregion
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40
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25.ラインバルト,ジェー.ジー.ら,「ヒト扁平細胞がんから培養された、基質と線
維芽細胞支持を必要とする腫瘍形成性ケラチノサイト系統」(Tumorigenic keratinocyte lines requiring anchorage a
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50
(29)
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g growth factor β1 inhibits nucleosomal fragementation in human keratinocytes fo
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IA1は生体異物がない正常ヒトケラチノサイトに急速に誘導される:CYPIA1発現
に対する1つの新規な懸濁仲介メカニズム」(Cytochrome P450IA1 is rapidly induced in normal human kerat
inocytes in the absence of xenobiotics:A
novel suspension−mediated mechanism for
10
CYPIA1 expression),J.Biol.Chem.269:1606
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28.シャープルズ,ケー.ら,DNA6:239−244,1987.
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過剰産生されたさまざまなRNAに相同性である」(Human epidermal growth factor receptor cDNAis homologous
to a variety of RNAs overproduced in A4
20
31 carcinoma cells),Nature 309:806−810,1
984。
【0112】
補足I
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
30
(30)
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10
20
【0115】
30
【表3】
40
50
(31)
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【0116】
【表4】
10
20
【0117】
【表5】
30
【0118】
【表6】
40
(32)
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10
20
【0119】
【表7】
30
【図面の簡単な説明】
【図1】BC−1−Ep/SL細胞の染色体分析である。核型分析が継代31でBC−1
−Ep/SL細胞上で行われた。細胞には、第8染色体の長いアームの同位染色体外因子
40
があるため、47染色体が含まれていた。染色体外因子、i(8q)は、正常男性核型を
示した親ケラチノサイト(BC−1−Ep継代3)ではみられない。
【図2】BC−1−Ep/SL細胞の連続継代培養について表皮増殖因子(EGF)に対
する所要量を示す。BC−1−Ep/SL細胞は標準培地+/−10ng/mlEGFの
なかで連続継代培養された。細胞はEFGなしではほとんど増殖しなかった。
【図3】形質転換増殖因子β−1(TGFβ−1)がBC−1−Ep/SLケラチノサイ
トの増殖を阻害することを示す。親細胞であるBC−1Ep(6°)とBC−1−Ep/
SL(28°)はEGFあるいは3T3支持細胞層を含まない標準培地に塗布された。細
胞は、EGFを含まない標準培地で∼20%集密度であったときに+/−5ng/mlT
GF −β1で処理された。細胞は3∼5日後にカウントされた。TGF−β1処理の効
50
(33)
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果は対照のパーセンテージとして示した。
【図4】BC−1−Ep/SL細胞の増殖因子所要量を示す。継代31でのBC−1−E
p/SL細胞は、2.5% FCS+3F12:1DME+10ng/mlEGFを補足
して増殖因子は追加せず(−GF)、0.4μg/mlヒドロコルチゾン(HC)、8.
4ng/mlコレラ毒素(CT)、24μg/mlアデニン(Ade)、5μg/mlイ
ンスリン(Ins)、あるいはすべての増殖因子(+GF)において増殖された。細胞増
殖は各増殖因子のみの存在下で増加したが、しかし最適増殖はすべての増殖因子の存在下
で達成された。
【図5】増加した細胞集密度(コンフルエンス)がBC−1−Ep/SL細胞における一
過性トランスフェクション効率を下げることを示す。BC−1−Ep/SL細胞はGen
10
eFECTOR(ベンノバ(VennNova)社)を使用してGFP含有プラスミドp
GreenLantern(ギブコ(Gibco)社)とpcDNA3 neo(インビ
トロゲン社)によりトランスフェクションされた。線形化されたpGreenLante
rn 15∼20μgとpcDNA3neo 5∼6.7μgが使用された。細胞数は血
球計を使用してトリプシン処理とケラチノサイトのカウントにより得られた。低密度は6
∼7.5x10
5
細胞/100mm皿として定義された。高密度は、3∼4x10
6
細胞
/100mm皿として定義された。トランスフェクション効率は蛍光標示式細胞分取器(
FACS)を使用して得られた。グラフの各棒グラフは単一実験を表わしている。
【図6A】皮膚と器官型SCC13y
G F P + /
BC−1−Ep/SL培養培地の断面略
図である。図6Aは皮膚に存在する複数層の略図である。図6Bは示されているように3
20
つの構成要素から基本的に構成される腫瘍/正常組織モデルの略図である。基底層はコラ
ーゲンと線維芽細胞から構成される真皮等価物である。この層の上にあるのは、BC−1
−Ep/SL上皮細胞(陰影部)を分化させることにより形成された再構築された表皮で
ある。この表皮等価物内にはSCC13y
G F P +
腫瘍(陰影をつけていない部分)病巣
である。
【図6B】皮膚と器官型SCC13y
G F P + /
BC−1−Ep/SL培養培地の断面略
図である。図6Aは皮膚に存在する複数層の略図である。図6Bは示されているように3
つの構成要素から基本的に構成される腫瘍/正常組織モデルの略図である。基底層はコラ
ーゲンと線維芽細胞から構成される真皮等価物である。この層の上にあるのは、BC−1
−Ep/SL上皮細胞(陰影部)を分化させることにより形成された再構築された表皮で
ある。この表皮等価物内にはSCC13y
である。
G F P +
腫瘍(陰影をつけていない部分)病巣
30
(34)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6A】
【図6B】
【図5】
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(35)
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フロントページの続き
7
(51)Int.Cl.
C12Q
FI
1/02
G01N 33/15
Z
G01N 33/15
G01N 33/50
Z
G01N 33/50
C12N 15/00
A
(72)発明者 アレン−ホフマン, リン
アメリカ合衆国 ウイスコンシン 53711 マデイソン カウンセル クレスト ロード 3
905
(72)発明者 シュロッサー, サンドラ ジェー
アメリカ合衆国 ウイスコンシン 53575 オレゴン トムソン ランド 145
(72)発明者 ピッカート, ミカエル エー
アメリカ合衆国 ウイスコンシン 53703 マデイソン イースト ギルマン ストリート ♯304 122
審査官 長井 啓子
(56)参考文献 欧州特許出願公開第00851028(EP,A1)
Crook T. et al., Oncogene. vol.5, pp.619-622 (1990)
Gilles C. et al., Int.J.Cancer, vol.53, pp.872-879 (1993)
Boukamp P. et al. J.Cell Biol., vol.106, pp.761-771 (1988)
7
(58)調査した分野(Int.Cl. ,DB名)
C12N 5/10
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
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