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Title エンドトキシン吸着療法が奏効した急性腎盂腎炎に伴う 敗血症性
Title Author(s) Citation Issue Date URL エンドトキシン吸着療法が奏効した急性腎盂腎炎に伴う 敗血症性ショックの1例 阿部, 和弘; 和田, 鉄郎; 上田, 正山; 大石, 幸彦 泌尿器科紀要 (2000), 46(11): 803-805 2000-11 http://hdl.handle.net/2433/114407 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 803 泌 尿 紀 要46:803-805,2000 エ ン ドトキ シ ン吸着 療 法 が奏 効 した急 性 腎孟 腎炎 に 伴 う敗 血 症性 シ ョ ックの1例 富 士 中央病 院泌 尿 器科(部 長:上 田正 山) 阿部 和 弘,和 田 鉄 郎,上 田 正山 東 京慈 恵 会医 科 大学 泌 尿 器科 学 教 室(主 任:大 石幸 彦 教 授) 大 石 幸 彦 A CASE OF EFFECTIVE ENDOTOXIN ADSORPTION THERAPY FOR SEPTIC SHOCK DUE TO ACUTE PYELONEPHRITIS Kazuhiro ABE, Tetsuro WADAand Masataka UEDA From the Departmentof Urology,Fuji General Hospital Yukihiko OIsHI From the Departmentof Urology,Jikei Universityof Medicine Although septic shock has a high mortality rate of 43%, recently the endotoxin adsorption column was established and its efficacy is interesting. We report a very effective case of endotoxin adsorption the rapy for septic shock due to acute pyelonephritis. A 59-year-old man with chief complaints of pyrexia and right backache was referred to our hospital with a small right ureteral stone (4 mm) associated with a low degree of right hydronephrosis. Since it was diagnosed as right acute pyelonephritis, antibiotics were administered ; and then septic shock occurred on the day of hospitalization. Endotoxin adsorption therapy was performed for two days and hemodynamic stability was achieved. The concentration of blood endotoxin was reduced remarkably and the efficacy of endotoxin adsorption therapy was suggested. (Acta Urol. Jpn. 46: 803-805, 2000) Key words : Endotoxin adsorption, Septic shock, Acute pyelonephritis 入 院 時 検 査 所 見:血 緒 言 中 球95.0%,リ 液 検 査:WBCl2,500/μ1(好 ン パ 球4.1%),Hb14.2g/dl,血 敗 血 症 性 シ ョッ クは致 死 率 の高 い疾 患 で あ るが,近 lLO万/μ1,BUN29.Omg/dl,Crl.4mg/dl,CRP 年,エ 3.lmg/dl.尿 ン ドトキ シ ン吸 着 カ ラムが 開発 され,有 効性 が 注 目 され て い る.わ れ われ は尿 管 結 石 に伴 う急 性 腎孟 腎炎 に起 因 す る敗 血 症 性 シ ョック に対 し,吸 着 療 法 を 19/1視 検 査:赤 血 球1--4/5視 小板 野,白 画 像 診 断:KUBに て(Fig.1)右 尿 管Ulの 部位 尿 管 結 石 が 認 め ら れ た.超 音波検 施 行 した と ころ劇 的 に奏 効 した症 例 を経 験 した の で報 に 直 径4×4mm右 告 す る. 査 で 右 腎 は ご く軽 度 に 水 腎 症 を 呈 して い た. 入 院 後 経 過:右 症 例 患 者:59歳,男 性 尿 管 結 石 に起 因す る急性 腎孟 腎 炎 の 診 断 で 抗 生 剤(PIPC2,0g/day)を 4時 間 後,血 投 与 し た が,開 圧 が70/50mmHgと 主 訴:発 熱,右 背 部痛 41.0度 既 往 歴 家族 歴:特 記 すべ きこ とな し shock)と 現 病 歴:1998年7月8日,右 与 と 抗 生 剤 をIPMICSに 背 部痛 が 出現,近 医 で に 上 昇 し た た め,敗 判 断 し た.直 低 下 し,体 ち に 昇 圧 剤(Dopamine)の 変 更 し た.昇 受 診 し結 石 発 作 を疑 わ れ抗 生 剤 の投 与 を受 けた が,翌 7月9日,39.0度 μ1,血 小 板6.2万/μ1,APTTlO6.2秒,TT50.0%, 入 院 時 現 症:体 温38.0度,血 拍70回/分.体 圧llO/60 mmHg,脈 格,栄 養 中等 度,意 識 清 明,右 背 部 に 著 明 な叩 打 痛 が 認 め られ た. なleukocytosisお 認 め た.敗 温 は 投 圧 剤 の増 量 を 液 検 査 で はWBC28,300/ PT66.0%,AT358.0%,FDP11.0μg/mlと,著 な っ た. 始 血 症 性 シ ョ ッ ク(warm 行 う が 血 圧 は 上 昇 せ ず,血 の 発熱 を認 め 当 科 を受 診 し,入 院 と 血 球15-- 野. 明 よび 敗 血 症 に伴 う凝 固 能 の低 下 を 血 症 性 シ ョ ッ ク の 改 善 お よ び エ ン ド トキ シ ン の 除 去 を 目的 に エ ン ド トキ シ ン 吸 着 カ ラ ム(東 レ社 804 泌 尿 紀 要46巻11号2000年 ド トキ シ ン(endotoxin)で リ ピ ドA,コ あ る.エ ア糖 鎖,0多 ン ド トキ シ ン は 糖 か ら 構 成 さ れ,な リ ピ ドAは 強 力 な 生 物 活 性 を 有 し,エ 毒 性 に 重 要 な 役 割 を担 う と さ れ る.PMXの は,1976年Morrisonら 開発 原 点 に よ る3)エ ン ド トキ シ ン の 構 成 成 分 で あ る レ ピ ドAが ポ リ ミ キ シ ンBに 合 す る こ との 報 告 で あ る,PMXは 灘1 かで も ン ド トキ シ ン の 特 異 的 に結 ポ リ ミ キ シ ン を繊 維 状 担 体 に 固 定 化 し た も の で,80∼100ml/hの 流 量 で 約2時 血 液 間 の 灌 流 を施 行 す る こ と に よ り有 意 に 血 中 エ ン ド トキ シ ンの 低 下 を も た ら す こ と が 報 告 さ れ て い る4)。 ま た,PMXの 館 ル .騰 み な らず,シ 癒 鞭 薪 効 果 は エ ン ド トキ シ ン除 去 の ョ ッ ク 状 態 の 進 行 に 関 与 す るサ イ トカ イ ン の 除 去 に も よ る と 報 告 さ れ て い る5) 自験 例 で は 吸 着 療 法 に 伴 い 血 中 の エ ン ド トキ シ ン は ' 明 らか に減 少 して い る が,エ 症 例 に お い て も,エ ン ド トキ シ ン濃 度 が 低 い ン ド トキ シ ン 吸 着 療 法 の 奏 功 し た Fig.1.Plain丘1mofabdomenshowssmall rightureterstone(4×4mm)andresi- 報 告 例 が 散 見 さ れ る6)エ dualbariuminintestinum. 例 に お い て も エ ン ド トキ シ ン吸 着 療 法 が 奏 功 す る 背 景 と し て,エ 製,以 下PMXと 略 す)を 着 療 法 を施 行 した.吸 用 い て エ ン ド トキ シ ン吸 着 開 始 後 約1時 間 で次 第 に血 圧 ン ド トキ シ ン濃 度 の 低 い 症 ン ド トキ シ ン 濃 度 の 測 定 感 度 の 問 題, TNF一 α,IL-1,IL-6を は じ め と す る サ イ トカ イ ン の 吸 着 療 法 に よ る 除 去 が 考 え ら れ て い る.エ ン ド トキ シ の 上 昇 を認 め 昇 圧 剤 の 減 量 が 可 能 と な っ た.翌7月10 ン吸 着 療 法 は 臓 器 不 全 に 陥 る 前 の シ ョ ッ ク早 期 に 開 始 日,再 す る べ き で,そ 度 吸 着 療 法 を施 行,同 た.7月23日 日に シ ョックか ら離脱 し に は 自 然 排 石 が 確 認 さ れ た(結 蔭 酸 カ ル シ ウ ム).な お 入 院時 血 液 お よ び尿 培 養 か ら い ず れ も大 腸 菌 が 検 出 さ れ,敗 た.な おPIPC,IPM/CSに 血 症 の 原 因菌 と同定 し 対 す る薬 剤 感 受 性 は 良 好 で あ っ た 。 血 中 エ ン ド トキ シ ン値(エ 法,基 準 値10.Opg/ml以 19.4pg/mlと mlと 石 成 分: 下)は ン ドス ペ シ ー 吸 着 療 法 施行 前 に は 高 値 を 示 し た が,施 行 後 に は10.4pg/ 察 の 流 入 に起 因 す る 病 態 で,低 増 大 と い っ たwarmshockに 血 圧,頻 脈,心 報 告 し て い る.敗 環 不 全,呼 血 球 数 の 減 少,エ ン ド トキ シ ン の 減 少 を認 め た と 報 告 さ れ て い る7) 菌 薬の て い る.放 出 さ れ る エ ン ド トキ シ ン の 量 を 規 定 す る 因 要 で あ り,抗 吸不全へ tein)と の 結 合 に よ り もた ら さ れ る 菌 体 の 形 態 学 的 変 もた ら 化 が,様 々 な エ ン ド トキ シ ン産 生 性 を 規 定 す る こ と が ョ ッ ク を伴 う もの 血 症 性 シ ョ ックは敗 血 症 に くな っ た状 態 とす る 定 義 が 広 く支 持 され て き た.し か 身 炎 症 性 反 応 症 候 群(Systemicinflammatory 下SIRS)と の機 度 に 多 くの 菌 体 が 破 壊 さ れ る こ と に よ い でcold 末 梢 循 環 不 全 を 合 併 し,生 体 の 恒 常 性 の 維 持 が で き な い う新 しい 概 念 染 症 に 起 因 す るSIRSが 菌 薬 とPBP(penicillinbindingpro- わ か っ て い る.わ 結 合 す る が,こ れ わ れ の 用 い たPIPCはPBP-3に の 結 合 が 菌 体 の 結 合 を 引 き 起 こ し大 量 の エ ン ド トキ シ ンの 放 出 を誘 導 す る こ とが 知 ら れ て お り,一 方IPM/CSはPBP-2に と の 結 合 が 菌 体 をspheroplastと 親 和 性 が 強 く,PBP-2 呼 ば れ る エ ン ド トキ シ ンの産 生 が少 な い形 態 に誘 導 す る こ とが報 告 され て 敗 血 症 で あ る と認 識 さ れ る よ う に な っ た2) 敗 血 症 性 シ ョック発 現 の 主役 は グ ラム 陰性 菌 の細 胞 壁 構 成 成 分 の1つ 有 効 群 は 血 圧 の 安 定 化,白 子 と して は使 用 す る抗 菌 薬 の 種 類 お よび作 用 機 序 が 重 敗 血 症 の致 死 率 につ い て シ ョ ッ ク を伴 わ な い も の は13%,シ に 提 唱 さ れ,感 着療 法 有 効 群 お よび不 良群 に お い て 各 種 パ ラ メ ー タ ー の 比 較 検 討 が 行 わ れ て い る が, 拍 出量 の と 移 行 し,MOF(multipleorganfailure)を す 病 態 で あ る.Boneら1)は が1992年 関 与 す る と さ れ る.吸 梢血 管抵抗 織 酸素 代 謝 の改 善 に り大 量 の エ ン ド トキ シ ン が 放 出 さ れ る こ と が 想 定 さ れ は じ ま る.つ 呼 ば れ る チ ア ノー ゼ,循 responsesyndrome:以 圧 上 昇,末 圧 剤 使 用 量 の 減 少,組 序 と し て は,一 敗 血 症性 シ ョ ックは感 染 巣 か らの病 原 菌 の血 液 中 へ し,全 の 増 大)昇 使 用 に よ り病 態 が さ ら に 悪 化 す る 場 合 が あ り,こ 考 は43%と 去 と 共 に 循 環 動 態 の 改 善,(血 敗 血 症 で は抗 菌 化 学 療 法 が 放 行 さ れ る が,抗 低 下 して い た. shockと の 効 果 に つ い て は エ ン ド トキ シ ン の 除 で あ る リ ポ ポ リサ ッ カ ラ イ ドの エ ン い る8'9)今 回 の わ れ わ れ の 症 例 に お い て もPIPCの 初 回 投 与 後 に 急 速 に敗 血 症 性 シ ョ ック が 進 行 して お り,PIPCの 投 与 に よ り血 液 中 へ 急 激 な エ ン ド トキ シ ンの放 出が 起 っ た可 能性 は否 定 で きな い. 上 部 尿 路 閉 塞 を 伴 う急 性 腎 孟 腎 炎 は 泌 尿 器 敗 血 症 の 阿 部,ほ か:エ 805 ン ド トキ シ ン吸 着 療 法 ・敗 血 症 原疾 患 と して 最 も重 要 な 疾 患 で あ る.RogerらDは polymyxinBtothelipidAportionofbacteria SIRSの lipopolysaccharides.Immunochemistry13:813- 報 告 の な か で感 染 源 の半 数 は腹 腔 お よび 泌尿 818,1976 生 殖 器 が 占め た と報 告 して お り,今 後尿 路 感 染 症,特 に複 雑 性 尿 路感 染 に伴 う敗 血 症 に対 す るエ ン ド トキ シ 4)嶋 岡 英 輝,中 ン吸 着 療 法 の有 用 性 を検 討 す る必 要 が あ る.エ ン ド ト キ シ ン吸 着 療法 は敗 血 症 を根 治 す る治療 法 で は な い. か:エ ン ドト 田 寿 昭,池 田 一 美,松 野 直 徒,ほ か:外 科 領 域 に お け る エ ン ド ト キ シ ン 吸 着 カ ラ ム(PMX)の 菌 作 用 の効 果 的併 用 療 法 と して時期 を逸 さず に導 入 す 価.日 6)川 MRSA敗 語 評 外 会 誌22:85-90,1997 股 知 之,今 泉 均,本 キ シ ン 吸 着 が 奏 功 結 宅 一 晃,ほ 693-698,1996 5)池 しか し外科 的 ドレナ ー ジ,抗 生 剤 に よる殺 菌 お よび静 る こ とが重 要 で あ る と考 え る. 田 一 夫,安 キ シ ン 吸 着 療 法 の 有 用 性.ICUとCCU20: 田 亮 一,ほ し た 高TSST-1血 血 症 性 シ ョ ッ ク の1例.集 か:エ ン ド ト 症 を伴 う 中 治 療7: 631-635,1995 エ ン ド トキ シ ン吸 着療 法 が 奏功 した急 性 腎孟 腎 炎 に 伴 う敗血 症 性 シ ョ ックの1例 を報 告 し,若 干 の文 献 的 7)兼 坂 茂,飯 塚 一 秀,刑 部 義 美 池:敗 害 に 対 す る 血 液 吸 着 法.日 血 性 還 流 障 救 急 医 会 関 東 誌13: 72-76,1992 考 察 を加 え た. 8)PieroPandTeresitaM:Newcriteriaforselecting 文 献 theproperantimicrobialchcmotherapyf()rsevere sepsisandsepticshock.IntJAntimicrobAgents 1)BoneRC,FisherCJandClemmerTP:Sepsis syndrome:avalidclinicalentity.CritCareMed 17:389-391,1989 2)RogerCandB()jeMD:Towardanepidemiology andnaturalhistoryofSIRS(systemicinflammatory responsesyndrome).JAMA268:3452-3455, 1992 3)MorrisonDCandJacobsDM:Bindingof l2:97-105,1999 9)HanbergerH,NilssonLE,KihlstomE,etal.: Postantibioticeffectofβ 一lactamantibioticson Eschen'chiacolievaluatedbybioluminescenceassay ofbacterialATP.AntimicrobAgentsChemother 34:102-106,1990 俣:::謡監器 就ll:1器1)