Institute of Environment Rehabilitation and Conservation
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E R E C O N 2014-2 2015. 1 Non-Profit Organization <ERECON> JAPAN Institute of Environment Rehabilitation and Conservation 2014 年度フィリピン国における持続可能な発展を目指した植林事業 フィリピン国ボホール島およびレイテ島の農山村域における現地住民と協働した植林活動 特定非営利活動法人環境修復保全機構(ERECON)は公益社団法人国土緑化推進機構の支援を得て植林活動を推進しています。 1 N E W S L E T T E R E R E C O N N E W S L E T T E R Ⅰ. 2014 年度 普及プログラムの進捗報告(普及センター) 1. 普及プログラムの進捗状況 (1) 環境修復保全に関する事業 1) タイ国東北部の塩類集積地における環境修復保全事業: 森 林伐採に伴い地下岩塩層から可溶性塩類が毛管上昇して、塩 類集積が進んでいるタイ国コンケン県プラユン地区で、継続して 塩類土壌の修復保全とともに、現地農家と協働で持続的農業の 推進に取り組んでいます。昨年度から継続して 2014 年度も塩害 対策の一つであるアグロフォレストリーの適用を目指して、植林活 動に取り組んでいます。 2) フィリピン国ボホールにおける持続可能な発展を目指した植 林活動の推進(フェーズ 3): フィリピン国ボホール州では急速な 人口増加に伴い、森林伐採や焼畑農業に起因する深刻な土壌 侵食の発生や生物多様性の減少が生じています。また 2013 年に はボホール島直下型地震によって、農山村域でも大きな被害が 発生しました。そこで本事業では、傾斜畑における土壌侵食を緩 和させるとともに焼畑に依存した営農体系を改め、生物多様性の 保全を目指して、植林を軸としたアグロフォレストリーを普及して います。その他、現地住民を対象としたワークショップの開催にも 取り組んでいます。 4) タイ国南部津波被災地におけるマングローブ植林活動(フェ ーズ 2): 2004 年 12 月 26 日に発生したスマトラ島沖地震による 被災地の一つであるタイ国南部パンガ県トゥンラック村を対象とし て、本団体では 2008 年よりトゥンラック村植林活動グループと協 働した植林活動を継続するとともに、グループが運営するマング ローブ・ラーニング・センターの活動を支援しています。植林にお いては、地域住民や小学生らと協働でニッパヤシ(Nypa fruticans) の種子を泥湿地に播種(埋め込み)し、ヒルギ科植物(Rhizophora mucronata) の苗木を植林しています。 (2) 自然資源の持続的利用に関する事業 1) カンボジア国農村域における里地・里山保全による自然資源 の持続的活用の促進: 本事業ではカンボジア国東部のモンドル キリ州に重点を置いて、農村域で生計を立てている現地農家や 将来農家になる子供達に自然資源の保全手段や活用方法につ いての技術と知識を波及し、地域住民による持続可能な里地・里 山保全が実践される基盤づくりを進めています。これまでに現地 農家および小学生と協働した植林活動を実施するとともに、現地 農家および小学生を対象として森林劣化と森林再生に関するパ ンフレットを配付して里地・里山保全ワークショップを開催しました。 また、2 月にはコンポンチャム州とバッタンバン州の小学校を対象 として、里地・里山保全ネットワークミーティングを予定していま す。 2013 年ボホール地震による地割れが生じた傾斜地での植林 (フィリピン国ボホール州) 3) フィリピン国レイテ島北西部の台風被災地における地域復興 を目指した植林事業: フィリピン国レイテ島は 2013 年 11 月の巨 大台風により人命およびインフラに壊滅的な被害を受けました。 台風は現地住民の収入源であるココヤシを打撃し、多くの人々は 生計の手段も失いました。そこで本事業は、台風被災地における 地域復興と、今後の自然災害に対する耐性を高めることを目指し て、レインフォレステーションを適用した現地固有種の植林活動を 推進しています。その他、現地住民を対象としてワークショップを 開催しています。 現地農家や小学生と協働した植林活動 (カンボジア国モンドルキリ州) 2) カンボジア国コンポンチャム州における持続可能な農業生産 環境の構築(フェーズ 4): 本事業ではコンポンチャム州サムロン グコミューンの 11 村および 10 小学校で構成されるクラスターを対 象に、環境に配慮した資源循環型農業を軸とした持続可能な農 業生産環境の構築を進めています。本年度これまでに低化学肥 料・低農薬農産物販売所の運営を開始するとともに、農産物の販 売戦略について議論を進めました。 現地大学生と村人との植林活動(フィリピン国レイテ州) 低化学肥料・低農薬農産物販売所の開所式 (カンボジア国コンポンチャム州) 2 E R E C O N 併せて、良質な堆肥の作成を目指したバチラス菌の添加およ び大腸菌の殺菌に関する研修を実施するとともに、小学校クラス ターに属する 10 小学校の代表者をタイ国に派遣して食農環境教 育指導者研修を実施しました。 3) カンボジア国クラチェ州における持続可能な農村開発を目指 したノンフォーマル教育の総合支援事業(フェーズ 2): 本事業 では、カンボジア国で最も開発が遅れている地域に位置するクラ チェ州スヌール地区の 7 村において、ノンフォーマル教育の一環 としてファーマーズスクールを立ち上げるとともに、自然資源を活 用した有機農業資材の生産と販売を通した現地農家の収入向 上を目指しています。具体的には、定期的にファーマーズスクー ルを実施し、クメール語、算数、環境に関する現地農家の理解を 深めるとともに、各村で形成された有機農業資材生産者グルー プが中心となって自然資源を活用した有機農業資材づくりを進 めています。併せて、カンボジア国内やタイ国における研修会を 実施するとともに、ペレット堆肥センターの設置を進めています。 N E W S L E T T E R 本部小野路里山ギャラリー圃場での実習 (東京都町田市) 3) 緑の国際ボランティア研修(フィリピン国): 2015 年 3 月 2 日 より 3 月 10 日の 9 日間、緑の国際ボランティア研修を実施しま す。この研修では、フィリピン国レイテ州およびボホール州にお けるレインフォレステーションやアグロフォレストリーについて学 ぶとともに、被災からの復興に向けた植林活動地を視察する内 容です。併せて、現地住民や学生と協働して植林活動を実施し て、日本やフィリピン国のような自然災害の多発地における持 続可能な発展に向けた植林活動の意義について理解を深める ことを目的としています。 (4) その他目的を達成するために必要な事業 1) 創立 15 周年記念事業: 特定非営利活動法人環境修復保 全機構が 2000 年に創立してから、来年度で 15 年目と迎えます。 この創立 15 周年を記念した事業の実施について、本部で検討 を始めています。事業内容としては、これまで本団体で発行し ていた機関紙を束ねた冊子の作成と配布および記念講演会の 開催等を計画しています。 2. 普及プログラムへの助成・支援について 特定非営利活動法人環境修復保全機構が実施する普及プ ログラムは、エコポイント、NGO アリーナ寄付サイト、NGO サポ ート募金(JANIC)、イーココロ・クリック募金、igreen、株式会社キ ューセン、株式会社河辺商会等を通してご寄付頂いた方々を はじめ、多くの市民の方々からのご支援に支えられています。ま たこれまで公益社団法人国土緑化推進機構、公益財団法人イ オン環境財団、独立行政法人国際協力機構、公益財団法人日 本国際協力財団、外務省等より、助成や委託を受けて各普及 プログラムを実施しております。ここに記して深謝申し上げま す。 (理事長/PD 三原真智人) ファーマーズスクールの開催(カンボジア国クラチェ州) (3) 環境教育啓蒙に関する事業 1) NGO インターン・プログラム: 東南アジア諸国において環境に 配慮した持続可能な開発に取り組める人材の育成を目標として、 昨年度から継続してインターンシップを実施しています。具体的 には本部での国内業務の補助に加え、カンボジア国におけるワ ークショップの開催や、ESD 関連の国際会議等の補助を通して、 実践力を育成してもらっています。 2) JICA 日系研修員受入事業: 2014 年 10 月から 2015 年 3 月まで東京農業大学に協力して、独立行政法人国際協力機構 より委託された日系研修員受入事業において「住民参加型手 法による土壌保全対策」コースを実施しています。研修ではブラ ジルでも適用可能な土壌保全対策や有機農法の習得を目指し ています。 Ⅱ. 会員の動向 現在、正会員 131 名、国際正会員 24 名、国内準会員 15 名 を含めた全会員数は 170 名です。法人賛助会員も募集してお りますので、会員の皆様の関係者の方でご興味がある方がいら っしゃいましたら、ご紹介頂けますようよろしくお願いいたしま す。 (本部管理センター 小林加奈子) Ⅲ. カンボジア国の自然と農業 ‐イオンモール・プノンペン2014 年 6 月 30 日にカンボジアの首都プノンペンにイオンモ ールが開業しました。カンボジア国内最大級の商業施設である イオンモール・プノンペンについて紹介します。イオンモール・ プノンペンは敷地面積が約 6 万 8000 平方メートルに建設され、 延べ床面積は約 10 万平方メートルです。売り場面積は 1 万 8000 平方メートルであり、今までの商業施設と比較すると凡そ 2 倍の大きさです。同施設はプノンペンの中間所得層や増加して いる核家族層を主なターゲットとし、「新しいライフスタイル」や 「より豊かな生活」を提案する店舗を目指しています。 イオンモールにはイオンプノンペン店以外にも約 190 の専門 3 E R E C O N N E W S L E T T E R 店が入っています。飲食店は日本食から洋食まで幅広く揃って おり、その他家電量販店から雑貨屋まで豊富な品揃えとなって います。生鮮売り場ではカンボジア国内で生産された農産物も 多く販売されています。ERECON が栽培契約締結に向けて連 携している Japan Farm Products や日系 NGO の International Volunteer of Yamagata 等の有機農産物も販売されています。 エンターテイメント施設としても、映画館やボーリング場、カラオ ケ、ゲームセンター、テレビ局のスタジオを有しています。またイ オンモール・プノンペンでは、顧客へのサービスや環境への配 慮もなされています。具体的には、年配者や障害者への配慮と して施設内は全てバリアフリーとなっており、出入り口付近には 屋根付きの優先駐車スペースが整備されています。さらに、カ ンボジアでは初めての試みとして乳幼児連れの方のために、授 乳室を設けたベビールームも設置されています。一方、環境に 対しては、カンボジアの商業施設としては初めて太陽光発電設 備を導入しています。二輪車駐輪場の屋根やテラスアベニュー の歩道に太陽光発電設備が設置され、発電される最大出力 225 kw の電力はモール内の照明や空調に使用されています。 現在、カンボジア国の市場では、周辺国から輸入された農産 物が広く販売されています。しかし、イオンモール・プノンペン がカンボジア産の良質な農産物を販売することで、世界基準で 競えるカンボジア産の有機野菜および低化学肥料・低農薬農 産物の存在やその利点について、消費者の理解を得られるの ではないでしょうか。今後、本団体が JICA 草の根技術協力事 業を実施しているサムロングコミューンの農産物も、このイオン モール・プノンペンでも取り扱われることを期待しています。 (本部普及センター 藤平 純) Ⅳ. 書評 「住民」の複雑で多様なリアリティに対する認識の過ちのことで あると分かります。著者自身がアフリカやアジアで農村開発を実 施してきた経験に基づくものでしょう。本書は現場で活動を実 施する人たちだけでなく、国際協力に携わるすべての人たちが 住民のリアリティを理解し、住民が主体的に参加できる環境を つくるように、わたしたちが変わらなくてはならないのだと考えさ せてくれます。国際協力に係る開発調査・実施をしていく中で 当然生まれる過ちに気付き、どう方向修正するのか、或いはつ き進めてしまうのか、著者のチェンバースが言う「自己批判的な 認識を持つこと」が私たちの行動様式に期待されることなのでし ょう。 (本部管理センター 小林加奈子) 参加型開発と国際協力 -変わるのはわたしたち- 出版:明石書店 ロバート・チェンバース 著 発刊:2000 年 6 月 定価:3,800 円+税 ISBN:9784750313078 本書はイギリス人の参加型開発の専門家ロバート・チェンバ ース氏の著書です。14 年前に出版された本書には援助する側 の思い込みや過ちに対する批判が随所にちりばめられていま す。その批判とは、チェンバース自身もそうでありながら「専門 家」と言われる外部側の人たちに対してであり、支援を受ける Ⅴ. 本部センター便り 1. JICF 助成事業報告会(普及センター) 公益財団法人日本国際協力財団(JICF)による助成金により実 施している「カンボジア国クラチェ州における持続可能な農村開 発を目指したノンフォーマル教育の総合支援事業」の一般向け 国内報告会を 2014 年 11 月に東京農業大学世田谷キャンパス にて実施しました。 2. 研究サロンの開催(研究センター) 文部科学省より科学研究費補助金取扱研究機関の指定を 受けている研究センターでは、研究サロンを 11 月 3 日と 1 月 3 日に開催しました。本サロンでは研究センターに所属する研究 員や客員研究員が研究計画や成果について議論を深め、研 究センターでの研究推進を図っています。 3. インターンシップの実施(管理センター) 本団体ではインターンシップとして、国際環境協力分野での 活躍を希望している学生を受け入れています。本年度は 2014 年 8 月 25 日から 9 月 5 日にかけて帯広畜産大学 3 年生の山 本香織さんをインターンとして受け入ました。組織運営に関する 研修や国際協力に関する講義の後、事務局業務の補助やグロ ーバルフェスタ JAPAN への出展準備の補助等に従事して頂き ました。また、最終日には課題の発表を行って頂きました。今後 のご活躍を期待しています。 4. グローバルフェスタ JAPAN2014 出展報告(管理センター) 2014 年 10 月 4 日と 5 日の 2 日間にわたり、日比谷公園にて 日本最大級の国際協力イベントであるグローバルフェスタ 2014 が開催されました。24 回目を迎えた今回は本団体を含む 294 団体(前回 278 団体)が出展し、多くの来場者で賑わいました。 今年は国際協力 60 周年の記念の年として「Smile Earth! 地球 の明日(みらい)への“笑顔”のタネまき!」というテーマのもとに、 ケニア北部一帯の先住民マサイ族や AKB48 等がゲストとして 参加しました。残念ながら 2 日目は台風 18 号の影響のため、 正午で終了となってしまいましたが、団体活動を広報する貴重 な機会となりました。 グローバルフェスタ JAPAN 2014 本団体ブースの様子 5. 町田発国際ボランティア祭 2014 夢広場への出展報告 (管理センター) 2014 年 11 月 3 日(祝)に「第 17 回町田発国際ボランティア 祭 2014 夢広場」が町田市 “ぽっぽ町田イベント広場”で開催さ 4 れ、本団体は初めてブースを出展しました。今年は「この星に 平和と希望を」のキャッチフレーズのもと、“町田から世界につな がり行動する人達が集い、平和の想いを広げる場”として様々 な国際協力団体、異文化交流団体等が出展し、海外の方々を 含む多くの訪問者で賑わいました。本団体は 2015 年 3 月にフ ィリピンで実施される「緑の国際ボランティア研修」の案内ととも に、カンボジア、フィリピン物産品の展示や販売を行いました。 (本部普及センター、研究センター、管理センター) Ⅵ. 国際協力に取り組む顔 1) 藤平 純 の貧富の差を目の当たりにしました。また、大学院修了後はエ 私は、小学生の時にフィリピンのストリートチルドレンに関する クアドルにて自然保護のボランティア活動に従事しました。エク 国際環境協力に取り組む顔 ビデオを観て、世界の貧困問題と国際協力に興味を持ち始め アドルでは住民の環境への意識が低く、自然環境破壊が身近 ました。学部時代はタイでの現地調査を重ねるとともに、タイの に起こっている事実を目にしました。これらの経験から環境保全 現地 NGO と協力してタイ人売春婦を支援する Project Cheers! を目指した国際協力に携わりたいと強く考えるようになりました。 に参加することで途上国の貧困問題への理解を深めました。貧 帰国後は国際環境 NGO グリーンピースにてインターンシップを 困に直面していると言われる農村域の実情を様々な農村で確 経験しました。グリーンピースでは先進国、発展途上国で起き 認したいと思い、修士課程にはタイで貧困率の高い東北部に ている様々な環境問題に関わることができ、視野を広げるととも 位置するコンケン大学を選びました。大学院修了後は日本の に理解を深めました。2014 年 4 月より特定非営利活動法人環 一般企業で勤務の後、特定非営利活動法人環境修復保全機 境修復保全機構の普及センターに所属し、カンボジア国にて 構の国際緑化ボランティア研修やインターンを経て、2011 年 4 現地調整業務にあたっています。現地調整業務においてまだ 月に正職員となりました。現在は普及センターに所属し、JICA まだ不慣れな点も多くご迷惑をお掛けすることもありますが、今 草の根技術協力事業の現地調整業務を担当しています。カン 後とも国際環境協力における経験を積み、持続可能な開発を ボジアにおける持続可能な農業生産環境の構築を目指して頑 目指した草の根活動を実施していきたいと考えています。 齋賀 優寛 張ります。 1985 年 大阪府生まれ 2008 年 拓殖大学工学部 卒業 2013 年 ブリッティシュコロンビア大学大学院森林学専攻 修士課程 修了 2013 年 国際環境 NGO グリーンピース インターン 2014 年 特定非営利活動法人環境修復保全機構 勤務、現在に至る 藤平 純 1983 年 2006 年 2008 年 2009 年 2010 年 千葉県生まれ 日本大学国際関係学部 卒業 コンケン大学大学院修士課程 修了 五洋建設名古屋支店 勤務 特定非営利活動法人環境修復保全機構 インターン 2011 年 特定非営利活動法人環境修復保全機構 勤務、現在に至る 4) 三輪 幸司 私は幼い頃より海外の異なる文化や環境を発見することに好 奇心を抱いており、国際舞台で活躍することを夢みていました。 そのために、大学時代には英語を鍛え、在学中にカリフォルニ ア州立大学に 1 年間留学しました。その留学中に貴重なボラン ティアの経験を得ることができました。アメリカの中でも犯罪率が 国平均を上回る地域において、ホームレスの社会復帰を目指 す支援活動の一環として、彼らと一緒に有機庭園で営農活動 に携わりました。それが私の人生で初めて有機農業の経験とな り、環境保全に向けた意識を高めるきっかけとなりました。更に 国際的な視点とコミュニケーション力を鍛える必要を感じ、スウ ェーデンのストックホルム大学大学院に進学を決意しました。ス ウェーデンでは国際化の中における環境や社会の変動を社会 科学および自然科学の両方の観点から分析する学際的なアプ ローチについて学びました。帰国後は、持続可能な社会の実 現に向けて国際的な舞台で環境保全を軸とした普及活動に従 事したいと考え、2014 年 5 月に特定非営利活動法人環境修復 保全機構の職員に就きました。これまでフィリピン国を中心に植 林事業に携わっています。今後はより積極的に事業を企画し、 さらなる国際環境協力を実施し、現地の人々および世界中の 人々や自然のために貢献していきたいと考えています。 2) 小林加奈子 私の母が染織や織物に関係しており、以前よりテキスタイル に興味を持っていました。また、開発途上国の対日輸出支援事 業に携わった経験から、海外の物産品の開発に関わっていき たいと考えていました。2012 年度緑の国際ボランティア研修に 参加する機会を得て、そこでエリ蚕養蚕(エリシルク)を通した農 村開発事業に出会い、特定非営利活動法人環境修復保全機 構の職員に応募することを決意しました。普及センターに所属 し、カンボジアに駐在している際に感じた事は、村の人たちは 幸せそうな顔をしているということです。もちろん今よりもっと良 い暮らしがしたいと希望しているのですが、現在の日々の暮ら しに強い不満を持っている人は少ないのです。彼らを見ていて、 現地の声を聞き、文化や習慣を尊重し、支援する側の知識や 技術を教えるだけでなくその土地に馴染むような努力が支援す る側に必要なのだと再認識しました。どのようなかたちでも柔軟 で広い心を持ち、現地力を信じて、取り組んでいきたいと思いま す。 小林加奈子 1978 年 千葉県生まれ 2000 年 神田外語学院 卒業 2001 年 派遣会社や政府系機関 勤務 三輪 幸司 1988 年 愛知県生まれ 2008 年 カリフォルニア州立大学モントレーベイ校 留学生 2010 年 名古屋外国語大学外国語学部英米語学科 卒業 2010 年 デンマーク International People’s College 留学生 2014 年 ストックホルム大学大学院修士課程 修了 2014 年 特定非営利活動法人環境修復保全機構 勤務、現在に至る 2011 年 青山学院大学文学部 卒業 2011 年 民間企業 勤務 2013 年 特定非営利活動法人環境修復保全機構 勤務、現在に至る 3) 齋賀 優寛 私が国際協力に興味を持ったのは大学院在学中でした。在 学中にメキシコ国ハリスコ州にある森林保全地区における持続 可能な森林管理を目指した森林管理/経営計画作成に携わり ました。その際、フィールド調査でメキシコを訪れ、発展途上国 5 E R E C O N N E W S L E T T E R E R E C O N N E W S L E T T E R 農業と環境 連載コラム 「環境保全と国際協力」 -第 8 回- 国際的に協力して湿地を保全しようという「ラムサール条約」についてご存知の方は多いと思う。正式名称は、「特に水鳥の生息地 として国際的に重要な湿地に関する条約」といい、1971 年にイランのカスピ海沿岸にある“ラムサール”という町で採択されたことか ら、一般にラムサール条約と呼ばれている。 何故こんな長い名前が付けられたかであるが、条約交渉が行われていたのは、まだ東西冷戦の時代。当初は単に“湿地条約”とし て交渉が進められていたが、ロシア(当時はソ連)の交渉担当者が本国から何故頻繁に西側諸国の人たちと会うのかと疑念をかけら れ、このままでは交渉に向けて参加することは難しい、渡り鳥であれば国境に関係なく移動するので、それを守るための国際的な湿 地条約の交渉だとわかるような名称にしてもらえないかとの主張があったためだと聞く。 湿地には国境をまたぐものもある一方で、水鳥を例にとり、そのほとんどは渡りをし、繁殖地、渡りの中継地、越冬地全てが湿地 で、そのどこかの湿地環境が悪くなったら水鳥の生息に影響する、だから国際的に協力して湿地を保全する必要性があるのだとラム サール条約の存在意義の一つをわかりやすく説明するのに、この長い名称は役に立つように思う。 “湿地”というと一般に尾瀬のような湿原を思い浮かべる人が多いと思われるが、ラムサール条約が対象とする湿地は幅広い。河川 や湖沼、湧水地や地下水系、人間が作った水田やダム湖、沿岸域でも水深 6 メートル以浅のところまで含む。例えば、干潟、サンゴ 礁、藻場、マングローブ林なども含まれ、およそ水と関係する場所はすべて対象にしようという意欲的な条約である。 ラムサール条約は、湿地およびそこに生息・生育する動植物を保全するとともに、湿地の「賢明な利用(英語で Wise Use)」を進め ることを目的としている。 環境問題に関する初の地球規模の国際会議であった国連人間環境会議がスウェーデンのストックホルムで開催された 1972 年の 前年の 1971 年に採択され、環境に関する条約では最も早期に採択されている。そればかりでなく、上述のように目的に保全ばかり ではなく、利用の側面が明示されているという点でも先駆的である。現在であれば、“持続可能な利用”としていたであろうが、持続可 能という言葉の概念がまだ確立されていなかったので、賢明な利用としたと思われるが、あの時期にこういう考え方を導入したことは、 大いに評価される。 筆者は、過去 2 回のラムサール条約に深くかかわったので、次号ではその経験を踏まえ、ラムサール条約のいくつかの側面を紹 介したい。 (公益財団法人長尾自然環境財団 名執芳博) *************************************************************************** 理事長 三原真智人:東京農業大学地域環境科学部 教授 理 事 安富 六郎: 東京農工大学 名誉教授 山路 永司: 東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授 牧田 東一: 桜美林大学リベラルアーツ学群 教授 竹内 康: 東京農業大学地域環境科学部 教授 上野 貴司: 特定非営利活動法人環境修復保全機構本部 管理センター長 顧 問 Mario T. TABUCANON, Prof. Dr.: アジア工科大学院大学 名誉教授 Bunthan NGO, Prof. Dr.: カンボジア王立農業大学 学長 ERECON NEWSLETTER 2014-2 2015 年 1 月 15 日 編集幹事 伊川 綾 発行 特定非営利活動法人 環境修復保全機構 [ERECON 本部] 〒195-0064 東京都町田市小野路町 2987-1 Tel/ Fax: 042-736-8972 E-mail: [email protected] URL: www.erecon.jp [ERECON 東南アジア事務局] In Association of Environmental and Rural Development, 93/64 Moo.3 Sinsab village, Bungyeetho sub-district, Thanyaburi district, Pathum Thani 12130, Thailand Tel: +66-2957-8064 E-mail: [email protected] URL: www.erecon.jp 6