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第4章 北海道ITアジャイル戦略~新たな「北海道ITスタイル」
第4章 北海道ITアジャイル戦略 ~新たな「北海道ITスタイル」を確立!~ 4-1 目標像 道内IT産業が着実に成長し、併せてIT利活用により地域産業の競争力を高め、地域 経済が持続的に発展するため、これまで進めてきた北海道IT産業の構造改革を更に推し 進め、地域はもちろん、全国、さらには世界を相手に市場を開拓することが重要である。 北海道には、専門分野で全国的にも高い技術・サービスを有するIT企業が数多く集積 しており、今後は各企業の総合力とスピードを兼ね備えた「アジャイル型の製品開発力」 を武器に存在力を高め、ビジネスを推進していくことが期待されている。 こうしたことから、10 年後の北海道IT産業の将来像を見据えた、新たなIT振興戦略 として、3 つの柱からなる「北海道ITアジャイル戦略」として取りまとめる。 なお、目標像達成に向けては、現在の情報インフラ構造を劇的に変革しつつある「クラ ウドコンピューティング」への対応や「モバイル端末」のビジネス活用といった技術革新 を常に念頭に置き、業界だけではなく行政や大学等を含めた地域が一体となった支援体制 により、重点的に推し進めることが必要である。 目標像 10年後、「ソフト開発なら北海道のIT企業」と呼ばれる存在感のある産業へ 数値目標 売上高:平成 32 年度(2020 年度) 6,000億円(平成 27 年度 5,000億円) 雇 用:平成 32 年度(2020 年度) 25,000人(平成 27 年度 22,000人) (個別目標) <ソフト開発関連> ○売上目標のうち、新規事業分の平成 32 年度 売上目標 1,000億円 <グローバル展開> ○海外連携企業数 平成 32 年度 100社(平成 27 年度 70社) <IT利活用> ○農林水産業、観光分野の売上比率 平成 23 年度(2010 年度) 1% →平成 32 年度(2020 年度) 10% <起業・創業> ○世界に通用するITベンチャー 平成 32 年度(2020 年度)までに10社創出 35 4-2 戦略の3本柱 ①クラウドやモバイルに対応するソフトウェア・アプリケーションの開発拠点形成 北海道IT産業が、クラウドコンピューティングやモバイル、CGM(消費者生成メ ディア) 、ソーシャルネット等の積極的な活用を通じて、従来の受託業務構造から脱却し、 顧客が訴求する斬新かつ先進・安心なシステム・ソフトウェアを直接提案・提供するプ ロダクツ型産業への変革を推進する。 ⅰ)クラウドコンピューティングビジネスの推進 今後一層の普及が見込まれるクラウドコンピューティングを活用し、北海道IT産業 がこれまで培ったシステム開発力を活かしたシステム・サービスを提供するプロダクツ 型産業への変革を推進する。 このため、クラウドコンピューティングビジネスに係るネットワーク組織の活用や当 局の技術開発支援ツール等を最大限活用し、全国・海外市場展開型企業の技術開発・首 都圏販路開拓を強力に推進する。 <当面のアクションプラン> -北海道地域クラウドビジネス協議会(仮称)の設置 -新技術・サービス創出モデルの研究開発支援(補助金・委託費等活用) -ユーザーマッチングの開催 -首都圏展示会への出展(クラウドEXPO、CEATEC JAPANなど) ⅱ)モバイルコンテンツビジネスの推進 これまでの豊富な実績を有する音や画像、ゲーム等多様なコンテンツ素材の開発・提 供力に加え、最新の「Android OS」や「3D技術」を始めとする各種高度な技術力を活 かした、付加価値や創造性の高いソフトウェア・アプリケーションの供給拠点のメッカ を形成する。 このため、道内企業のネットワーク組織である北海道モバイルコンテンツ推進協議会 と連携し、組織・活動の強化を図るとともに、携帯情報端末向けアプリケーションの開 発支援や販路開拓を強力に推進する。 <当面のアクションプラン> -当局が提唱した「モバイルコンテンツサミット」の全国展開 -東京ゲームショウへの継続出展 -異業種連携マッチングの開催 -新技術・サービス創出モデルの研究開発支援(補助金・委託費等活用) 36 ⅲ)ソフトウェア開発プロセスの強化 我が国が強みを有する情報通信技術関連の研究開発の重点的支援を通じて、他社との 差別化を可能とする技術力を確保し、競争優位があるソフトウェアサービスの提供を実 現する。中でも、現在北海道の産学官が中心となって研究開発が進められている「形式 手法」分野を中心に、ソフトウェアの高信頼性確保・開発の効率化を推進し、安心・安 全等付加価値を高めたソフトウェア開発力を武器に他地域・他社との差別化を実現し、 北海道が重要なソフトウェア供給拠点形成を達成する。 このため形式手法の中でも「形式的仕様記述」分野にける研究開発プロジェクトを強 力に推進し、本分野で北海道からリーディングカンパニーを輩出する。 また、ソフトウェア開発における「アジャイル開発プロセス」を実際に活用したプロ ジェクトを数多く輩出し、アジャイル開発の先進地として他地域に先駆けたブランドを 確立する。 <当面のアクションプラン> ○形式手法 -形式的仕様記述研究開発プロジェクトへの支援 -フォーマルメソッド普及促進セミナーの開催 -北海道大学との連携による形式手法に係る寄付講座の開設検討 ○アジャイル開発 -オープンソースを活用した国産コードジェネレーターや専用ツール開発等のアジャ イル開発プロジェクトの立ち上げ -全国組織との連携 ⅳ)海外展開促進等 道内IT企業の多くが関心を寄せている中国やベトナム等アジア諸国との連携構築を 支援し、海外市場の獲得や技術提携を飛躍的に増大するなど、企業の海外展開を積極的 に促進する。 また、グリーンIT分野における研究開発を推進し、当該分野における道内企業の存 在感を高めるとともに、事業展開を支援する。 さらに、就業予定者等に対する業界イメージの向上対策など、IT人材確保に向けた 取組について、引き続き業界団体等と連携、協力して推進する。 <当面のアクションプラン> -ベトナム地域への北海道IT企業ミッション派遣 -北海道グリーンIT研究会(仮称)の設置 -インターン受入窓口の一元化、情報発信 37 ②食・観光分野で北海道を最先端のIT利活用地域へ ITを活用した産業の高次化、とりわけ北海道の基幹産業に対するIT利活用を強力に 推進し産業競争力を高めるとともに、我が国におけるIT利活用最先端地域を標榜する。 ⅰ)農業・食クラウドの推進(農業情報の活用による付加価値向上) 農業に関しては、現在、通信インフラの農村部への普及やクラウドサービスの多様化に より、IT利活用の環境が整いつつある状況であることから、積極的に本分野に参入する 企業も出現しているところ。 また、食の安全・安心への社会的な関心が一層高まる中、IT利活用による生産履歴管 理手法等の重要性が増している。 しかし、農林水産業関係者とIT企業との間には互いの業務への理解不足等により、他 産業に比べてまだ改善の余地が多く残されていることから、相互の業界・業務に対する啓 発活動を始め、GPSや生産履歴システムなど、クラウドコンピューティングを活用した 「コスト管理」と「絶対品質」の確立、さらには、農業現場に活用が検討されるITシス テム(遠隔農業)やロボット等の実用化に資する技術開発の促進を、関係機関と連携して 取り組み、利活用拡大を図る。 <当面のアクションプラン> ○ITリテラシー向上に向けた啓発活動 -JA訪問キャラバン・視察会を通じた啓発活動 -地域IT活用研究会の開催による、具体的な課題解決策の検討 -専門コーディネータの育成 ○IT経営(精密農業)確立に向けた農業・食クラウドの推進 -農業クラウド研究会(仮称)の設置による関係者への情報提供 -未導入JAを対象とした、生産履歴システムの導入促進 -生産・加工等現場におけるGAP規制への対応支援 -農業経営ナレッジシステム(知の見える化)の普及啓発 -GPSガイダンスシステムの低廉化検討 ○農業IT化実証プロジェクトの研究開発支援 -モバイル端末の活用による農作業軽減システムの研究開発促進 -除草ロボット等の研究開発促進 38 ⅱ)観光クラウドの推進(集客促進) 観光産業に関しては、ソーシャルメディア(ツイッターやFacebook、Mixi等)や空間(三 次元)位置情報サービス、AR(拡張現実)技術などを積極的に活用・導入し、これまで の「人の行動」を変化・変革させることにより生み出される新たなサービスモデルの先導 事例が全国に存在しており、北海道においても、アプリケーション素材・技術(音源、写 真、Web素材、ゲーム、検索、AR、3DCG、電子書籍等)で競争力を有する道内企 業連合により、先進的な位置情報サービスモデル事業を輩出する。 また、地域観光情報の一元化を図ることにより、新たなクラウド事業の創出が期待され ていることから、こうした基盤構築に向けた取組を加速する必要がある。 さらに、増加する海外観光客に対する「おもてなし」を支援するITツールの拡充支援 を推進し、観光産業のIT利活用を拡大する。 <当面のアクションプラン> -観光庁が指定する広域観光圏(道内5ヶ所)などを対象に、IT集客支援を目的とし た、位置情報サービスモデル事業の実施・支援。 -地域観光情報の一元化による、スマートフォンやデジタルサイネージ向けクラウド サービスの実施・支援 -海外観光客向け「おもてなし」支援ツール(翻訳・ガイド等)の開発支援 -モバイルコンテンツ推進協議会とユーザーとの連携によるアプリケーション開発促進 ③世界に通用するITベンチャーの輩出 北海道のIT産業が将来にわたり成長・発展する上で、ベンチャー企業の輩出は必要不 可欠である。北海道におけるITベンチャー集積の母屋となった「サッポロバレー」の第 2ステージ(ネクストジェネレーション)を実現し、ベンチャーがベンチャーを輩出する 好循環サイクルの再現が、北海道IT産業の活性化に直結する課題である。 他方、クラウドやモバイルの進展により、IT業界は従来のビジネスモデルに捕らわれ ず、市場の垣根も存在しないため、産学官が連携し、起業時から世界市場を意識し、世界 で通用するITベンチャー創出に取り組むことが求められている。 また、高度IT人材を国内外から獲得・育成し、北海道が我が国におけるITイノベー ション拠点としての存在価値を高めることが重要である。 このため、優秀なIT起業家・経営者の輩出に向けた長期人材育成ビジョンを関係機関 で共有するとともに、毎年継続的なアントレプレナー/若手経営者の発掘・育成事業をは じめ、経営者のスキルアップ支援等を実施し、起業家輩出サイクルをシステムとして確立 する。 39 <当面のアクションプラン> -IT起業家・経営者輩出に向けた長期人材育成ビジョンの策定 ○継続的なアントレプレナー/若手経営者発掘/育成事業の実施 -ITベンチャー企業経営者による「ITクラーク塾」の開催と継続実施の方策検討 -IT業界による大学・専門学校への講師派遣体制の整備 -専門学校生等向け「Androidアプリケーション開発コンテスト」の開催 -豊富なオープンソースコミュニティ(Java、Android、アジャイル等)等との連携 -関係機関によるベンチャースタートアップ環境提供用データセンター設置の検討 40