...

「スマートペイメント」∼進む脱現金化 - Nomura Research Institute

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

「スマートペイメント」∼進む脱現金化 - Nomura Research Institute
NRI K NOWLEDGE INSIGHT
2015 JAN. VOL.36
Copyright ⓒ 2015 Nomura Research Institute,
当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断
Ltd. All rights reserved. No reproduction or
転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の
著作権法及び国際条約により保護されています。 republication without written permission.
1
「スマートペイメント」∼進む脱現金化∼
ICT・メディア産業コンサルティング部
上田恵陶奈 上級コンサルタント
展望を述べる。
と利用範囲が拡大していること、電子マネー
くことが欠かせない。具体的には、スマー
ペイメントの移行を進め、キャッシュレス
率が高く、非接触 ICカードタイプの電子
の利用可能な店舗が順次拡大しているこ
トフォンやシンクライアント端末(サーバー
を実現していく契機として期待される。自
マネーが容易に所持できる我が国では、
◇電子マネー利用の加速
ともその背景にある。
に機 能を持たせることで価 格を低く抑え
国でキャッシュレスに慣れている外国人に
銀 行 口 座 開 設やクレジットカードの取 得
スマートペイメントとは、企業と個人間
電子マネーは、3.2兆円(2013年度)
他方、主要な電子マネーは、カードに
つつ、決済にとどまらずポイントやクーポ
とって、日本の現金主義は滞在中の困難
に厳格な海外諸国に比べると、キャッシュ
(B2C)の商取引における電子的な決済
から11.3兆円(2020年度)へと高い成長
内蔵されたICチップを利用していることから
ンなど多機能を提供できる端末)を積極
の上位にあげられている。外国人がスマー
レス手段を入手すること、あるいは変更(ス
手段のことであり、その市場規模は成長
を遂げると考えられる。2013年4月に開始
(非接触式ICカードタイプ)、ECなど非対
的に活 用することが 求められている。な
トペイメントで容易に決済できる環境を整
イッチング)することが容易である。こう
を続けており、2013年度の50.0兆円から
され、都市部を中心に普及した交通系IC
面決済での使い勝手についてはクレジット
かでもスマートフォンは、加盟店端末とし
備することは、オリンピック開催期間中は
したことから今後は、消費者の選択に耐
2020年度には87.4兆円に達する見込みで
カードの相互利用(それぞれの地域で発
カードに 及 ばない。このため、 年 平 均
てだけではなく、フィーチャーフォンにおけ
もちろん、訪日外国人を増加させるため
えられる手段に支持が集まり、逆に消費
ある(図表1)。
行された交通系の各電子マネーが、異な
11.5%の割合で拡大を続けるEC市場を取
るおサイフケータイのように消費者側の決
の中長期的な効果にもつながると期待さ
者ニーズを満たさないものは淘汰されると
店頭での買い物など、支払い相手と同
る地域でも利用できるようになった)を機に、
り込むためには、電子マネーの価値がネッ
済媒体としても活用が期待されている。
れる。但し、加盟店端末さえ整備すれば
考えられる。
じ場所で決済する場合(対面決済)は、
成長を加速させている。相互利用に関す
ト上に格納されている「サーバー管理型
1
スマートペイメントとは
電子マネー」を活用することが課題となる。
こうした課題を克服するために必須とな
国人については当てはまるかも知れないが、
るのがマーケティングとの連携である。キャッ
電子マネーとクレジットカード以外のス
日本 の 消 費 者には 十 分とは 言えない。
シュレス社会への移行は、決済手段の変
いまだに現金が88.7兆円(2013年度)と
る大々的な報道や告知によって、「電子マ
最大であるが、電子商取引(EC)のよう
ネーが、場所を気にせずに使えて、便利
に支払い相手と異なる場所で直接対面せ
になる」という印象が消費者に与えられ、
◇成長を続けるクレジットカード
マートペイメントとしては、 近 年、 各 種
キャッシュレスを普及させるためには、店
化にとどまらず、マーケティングの進化とも
ずに決済する場合(非対面決済)は、ク
従来以上に利便性の高い決済手段として
高額決済(決済単価が5000円以上)
の 新しいプリペイドカードが登場してきて
舗と消費者双方にその意義を浸透させる
密接に関係している。スマートペイメントは、
レジットカードを中心としたスマートペイメン
認知されるようになったことが、その要因
を中心に中額決済にかけて普及している
いる。たとえば、コンビニエンスストアな
必要がある。
顧客を認識し属性を判断できることから、
トが普及している。
としてあげられる。
クレジットカードは、対面決済と非対面決
どの店頭で入金(チャージ)して利用する
スマートペイメントを利用する際には決
その意義は大きく、既に電子マネーとポイ
1
2020年度にかけて年平均成長率8.3%
加えて、 少 額 決 済(決 済 単 価が1000
済を合わせて44.1兆円(2013年度)の
「POSA* カード」は、ゲームへの課金や
済事業者に手数料を支払うことになるため、
ントプログラムが緊密に連携している例や、
におよぶスマートペイメントの高い成長を支
円未満の場合)を中心とした小銭代わり
実績を持ち、すでに現金に次ぐ利用規模
ECでの商品・サービス購入といった非対
店舗に対しては、それ以上のメリットがあ
クレジットカードの利用履歴から最適なクー
えるのは、主に電子マネーとクレジットカー
の利用にとどまらず、中額決済(決済単
である。ただし、クレジットカードは、電
面決済において、クレジットカードを利用
ることを知覚させることが鍵となる。たと
ポンを発行する例がある。
ドである。そこで、まずこの両者について
価が1000円以上5000円未満の場合)へ
子マネーよりも長い歴史を持ち、消費者
図表1:スマートペイメント市場の実績と予測
(兆円)
100.0
90.0
80.0
70.0
60.0
50.0
40.0
45.6
0.5
2.7
1.2
50.0
0.5
3.2
1.7
54.2
0.6
4.0
2.0
58.2
0.7
4.9
2.3
30.0
20.0
40.6
44.1
47.0
49.7
62.7
0.9
5.9
2.5
52.8
67.5
1.1
6.8
2.8
56.3
72.2
1.3
7.6
3.0
59.9
78.7
1.5
8.8
3.1
64.8
えば、現金決済には強盗などのリスク管
今後は、対面決済でも非対面決済で
い若年層が利用し始めている。このような
理に対する人件費や警備費用が発生して
も、マーケティングの「場」としてスマート
ので、 高 額 決 済が 行
新しいプリペイドカードの多くは 、サーバー
いることを課題認識させることが必要であ
フォンの役割が高まるであろう。たとえば、
われる店 舗の大 半に
管理型電子マネーであり、システムや流通
る。さらに、スマートペイメントにはそうし
ネット上で検索した商品情報の閲覧履歴
は端末(加盟店端末)
経路といったプラットフォームが汎用化され
たコスト抑制の競争力が備わっていること、
をもとにクーポンを発行し、実際の店舗で
が設置済みである。
ていることが特徴である。このため、中小
また、そこから得られるビッグデータをマー
スマートフォンに表示されるポイントやクー
したがって、引き続
規模の小売店といった小規模な事業者で
ケティングに活用できることを認識させるこ
ポンを利用してもらうことで一連の購買過
11.3
きスマートペ イメント
あっても、参入する際の初期投資や運用
とも重 要 で ある。 消 費 者 にとっても、
程を把握(O2Oサービス)できることが、
3.2
70.5
の 中 核として 成 長 を
のコストを低く抑えることが可能である。
ATMで現金を引き出す費用と時間を節
さらなる普及に伴い、一般化していくであ
キャリア収納代行
維 持 するため には、
以上のように、共同利用型プラットフォー
約できること、スマートペイメントで提供し
ろう。
電子マネー
大 胆なキャッシュレス
ムの普及が、プリペイドカードを発行する
たパーソナルデータが 有 効に活 用され 、
より進 化したマーケティングから多くの
プリペイドカード
需 要の取 込 みが求め
敷居を引き下げる役割を果たしており、発
最終的には自らに恩恵をもたらすという好
果実を得るためにも、スマートペイメント
デビットカード
られる。とりわけ、 加
行企業の増加が今後も予測される。
循環が生じることを周知することが肝要で
を普及させ、高度な利用を促進すること
クレジットカード
盟店端末が十分に普
あろう。
は意義深い。
及していない 中 額 決
しては、 初 期 投 資 負
2
担を低く抑えることで
◇キャッシュレス文化の醸成
トが登場しており、さらに増え続けると想
端末設置を促進してい
2020 年の東京オリンピックは、スマート
定される。また、クレジットカードの普及
済が中心の店舗に対
0.0
2012
したくない人や、クレジットカードを持たな
の多くに普及している
87.4
1.8
10.0
1
自動的に普及するという想定は、訪日外
◇新たなプリペイドカードの動き
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020 (年度)
スマートペイメントのさら
なる普及に向けて
◇マーケティングとの連携
市場には既に数多くのスマートペイメン
*1 Point of Sales Activationの略。店頭で入金(チャージ)
すると、レジのPOS端末を通じて利用可能になる(アクティベー
トされる)
2
Fly UP