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7 リウマチ・他(福田 孝昭)
統合講義「免疫・アレルギー疾患」 [総論・検査] 統合講義 2007年度 3年生 講義担当:福田孝昭 膠原病に多い主訴 原因不明の発熱(微熱、高熱、弛張熱) 関節炎または関節痛(多発性が多い) 皮疹、粘膜疹 筋肉痛、筋力低下 全身倦怠感、易疲労感、体重減少 レイノー現象 腹痛、下痢、下血 膠原病の特徴 ①全身性炎症性疾患である ②多臓器障害を呈する ③疾患相互間に症状の重複がみられる ④遺伝的素因の関与がみられる ⑤免疫異常の関与がみられる ⑥血管結合組織が重要な病変の場になっている 膠原病・自己免疫疾患を疑う臨床症状・所見 ・発熱・関節症状・皮膚症状・筋症状 ・レイノー現象・腎症状・呼吸器症状 ・中枢神経症状・循環器症状・消化器症状 ・リンパ節腫脹・眼症状 膠原病診断のアプローチ 膠原病は多臓器症状を示し、症状の増悪と寛解を繰り返す慢性炎症性疾患である。 病歴を十分聞き、全身の診察を順序だてて細かく行うこと。 膠原病のなかには好発年齢、性別に特徴のある疾患がある。 患者の家族の中に同一のまたは他の膠原病患者が存在することがある。 症状はしばしば感染症と紛らわしいが、特定の起因菌や病巣を見出せない。 全身性の炎症症状に対して抗菌薬が無効である。 同一の患者に2つまたはそれ以上の膠原病諸疾患が重複することがある。 膠原病各疾患にかなり特徴的と考えられている自己抗体が認められることが多い。 膠原病またはその近縁疾患のなかには特定の薬剤の長期服用が起因していることがある。薬剤誘発 ループスのとしてサルファダイアジン、ハイドララジン、ヒダントイン、イソニアジド、プロ カインアミドが知られている。 膠原病と鑑別を要する疾患 感染症 腫瘍 結核 敗血症 亜急性細菌性心内膜炎 ブルセラ症 梅毒 寄生虫症(旋毛虫症、トキソプラズマ症) 伝染性単核球症 ウイルス性肝炎 主な膠原病の関節症状 初発部位 RA リウマチ熱 SLE SSc Behcet病 皮膚筋炎 PN 小関節 (とくに手指の PIP,MCP) 大関節 (膝、手、首、 肘、足首) あらゆる関節 大関節 悪性リンパ腫 Hodgkin病 Plasma cell dysclasia Atrial myxoma with emboli 腎癌 肝癌 代謝性疾患 ポルフィリン症 組織球症histiocytosis multicentric reticulohistiocytosis 好酸球性肉芽腫 Schuller-Christian病 Gaucher病 関節炎の特徴 変形・強直 左右対称性 多発性 あり 遊走性 なし 関節内外の 硬化病変 と吸収 一般に一時的 一般に一時的 関節症状の特徴 最終的に強直や拘縮をきたし,変形と機能障害をきたす ⋯関節リウマチ PIP,MP 関節⋯慢性関節リウマチ DIP,PIP 関節⋯変形性関節 DIP 関節⋯乾癬性関節炎 症 仙腸関節⋯関節リウマチではおかされにくいが, 強直性脊椎炎では必発 突発的な発症⋯痛風, 偽痛風,感染性関節炎, 外傷性関節症 無菌性骨壊死症, 一過性⋯痛風, 偽痛風 大関節を中心に比較的急性発症で移動性⋯リウマチ熱 1日∼1週間程度の発作繰り返す⋯回帰性リウマチ その他 薬物アレルギー 結節性紅斑 炎症性腸疾患 Weber-Christian病 サルコイドーシス アミロイドーシス 原則としてない 手指の屈曲拘縮、 遠位指骨の骨融解 なし なし なし 主な膠原病における皮膚所見 1.全身性エリトマトーデス( SLE): 顔面紅斑,蝶形紅斑,脱毛,光線過敏症,円板状エリテマトーデス,口腔内潰瘍 じんま疹 様紅斑, 凍瘡様皮疹,深在性エリテマトーデス,水疱性エリテマトーデス,爪周囲紅斑,白色萎縮症様皮疹 2.皮膚筋炎: ヘリオトロープ疹,ショールサイン, Gottron 徴候,メカニックハンド(機械工の手,逆 Gottron 徴候), 爪周囲紅斑 3.強皮症: 強指症( sclerodactyly ),指尖陥凹性瘢痕( digital pitting scar ),舌小帯短縮肥厚,皮膚硬化 色素沈着,色素脱出,毛細血管拡張,レイノー現象,爪上皮肥厚,出血点,皮膚潰瘍,壊疽 4.シェーグレン症候群: 口腔乾燥に伴う舌炎,口角炎,口唇炎,など環状紅斑, 凍瘡様皮疹,紫斑 5.血管炎症候群: 皮膚潰瘍,壊疽,紫斑 膠原病における末梢白血球数の変動 白血球の増加 PN、側頭動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、大動脈炎症候群、Wegener肉芽腫症、RA、 成人Still病、 全身型JRA、Behcet病、Reiter症候群、結節性紅斑、薬物起因性(ステロイド) 好中球増加 PN、成人Still病、全身型、JRA、RF、薬物起因性(ステロイド) 好酸球増加 PN、過敏性血管炎、アレルギー性肉芽腫性血管炎、好酸球性筋膜炎、 薬物起因性(薬物アレルギー) 白血球減少 SLE、MCTD、Sjogren症候群、Felyty症候群、薬物起因性 好中球減少 Felyty症候群、薬物起因性 リンパ球減少 SLE 間接蛍光抗体法による抗核抗体の染色型と対応抗原 染色型 均質型 (homogenous pattern) 辺縁型 (peripgeral pattern) 斑紋型 ( speckled pattern) 微細斑紋型 (discrete speckled pattern) 核小体型 (nuclealar pattern) 細胞質型 (cytoplasmic pattern) 主の対応抗原 DNA-ヒストン複合体 ヒストン 2本鎖DNA 可溶性核抗原 (U1RNP、Sm、SS-B、Scl-70など) セントロメア 核小体抗原 (U3RNA、RNAポリメラーゼ、7-2RNP) ヒスチジル tRNA合成酵素 リボゾームP蛋白、SS-A、ミトコンドリア 疾患特異的抗体 全身性エリテマトーデス⋯ 抗ds-DNA抗体,抗Sm抗体 強皮症 ⋯ 抗Scl-70抗体 多発性筋炎 ⋯ 抗Jo-1抗体 混合性結合組織病 ⋯ 抗U1RNP抗体 CREST症候群 ⋯ 抗セントロメア抗体 Wegener肉芽腫症 ⋯ 抗好中球細胞質抗体(C-ANCA) 膠原病における疾患特異的自己抗体の発現とその臨床的意義 疾患 自己抗体 対応抗原 頻度 関連する病態 SLE 抗dsDNA抗体 2本線DNA 40∼60% ループス腎炎 抗Sm抗体 U1,U2,R4/U6,U5RP 15∼30% 中枢神経障害、遅発性腎炎 LE因子 DNA-ヒストン複合体 30∼50% 活動期SLE 抗リボゾームP抗体 ribosomalP蛋白 10% 中枢神経障害、遅発性腎炎 抗PCNA抗体 DNApolymeraseδ補助蛋白 <5% 血小板減少、腎炎 抗SS−A/Ro抗体 hY1∼hY5RNP 30∼50% SCLE,neonatal lupus、sjogrem症候群 抗U1RNP抗体 U1RNP 30∼51% Raynaud現象、関節炎、筋炎 SSc 抗Scl-70抗体 DNAtopoisomeraseⅠ 30% 広汎性皮膚硬化型、間質性肺炎 抗セントロメア抗体 セントロメア 20∼30% 限局性皮膚硬化型、CREST症候群 抗U3RNP抗体 U3RNP(fibrillarin) <10% 広汎性皮膚硬化型 抗7-2RNP抗体 RNaseP,RNaseMRP <10% 限局性皮膚硬化型 抗RNApolymeraseⅠ抗体 RNApolymeraseⅠ <5% 広汎性皮膚硬化型、強皮症腎 Sjogren 抗SS-A/Ro抗体 hY∼hY5RNP 50∼70% SCLE,neonatal lupus 抗SS-B/La抗体 RNApolymeraseⅢ転写終結因子 20∼30% 再発性環状紅斑 PM/DM 抗Jo-1抗体 histidyl-tRNA合成酵素 20% 肺繊維症合併、antisynthetase syndrome 抗SRP抗体 シグナル認識粒子(SRP) 5% ステロイド抵抗性筋炎 MCTD 抗U1RNP抗体 U1RNP 100% MCTD、Raynaud現象 重複症候群 抗Ku抗体 DNA依存性蛋白キナーゼ補助因子 30% SSc-PM重複 抗PM-Scl抗体 核小体蛋白複合体 10% SSc-PM重複(日本人では稀) 検査からみた膠原病診断の進め方 免疫異常? 無or? 有 (免疫グロブリン?白血球?) 疾患マーカー? 抗核抗体? 陽性(染色型?) 特異自己抗体 (疾患標識) 抗DNA抗体(SLE) 抗トポイソメラーゼ1抗体(SSc) 抗SS-B抗体(SjS) 症状特異抗体 抗U1-RNP抗体(レイノー) 抗セントロメア抗体(レイノー) あり 陰性 抗細胞質抗体? フェリチン 抗Jo-1抗体(PM/DM) (含抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体) ANCA(ウェゲナー肉芽腫症,MPA) 抗リボゾーム抗体(SLE) 抗SS-A抗体(乾燥症状) (スチル病) (自己抗体以外) なし 補体は? Cold activation (C型肝炎による血管炎) ベーチェット病? 非細胞成分に対する自己抗体 リウマトイド因子(関節炎) 抗リン脂質抗体(抗リン脂質抗体症候群) ANCAの出現頻度* 疾患 Wegener肉芽腫症 顕微鏡的多発血管炎 アルレギー性肉芽腫血管炎 pauci-immune型半月体形成性糸球体腎炎** 結節性多発動脈炎 *複数の文献の頻度を総合したデータ **腎限局型の顕微鏡的多発血管炎 PR3-ANCA(%) 80∼90 50 10 30 10 MPO-ANCA(%) 20 50∼75 70 70 20 リウマトイド因子 変性IgGを抗原とする抗体:RAテストなどの凝集反応で検出されるのは主にIgMクラス。 IgGのリウマトイド因子は血管炎や関節外症状を有するRAに出現し、免疫複合体を形成する。病体との関与あり。 リウマトイド因子陽性を示す疾患 ①膠原病:RA,SLE,MCTD,SjS ②急性ウイルス感染症:伝染性単核球症,肝炎,ワクチン接種後 ③寄生虫感染:トリパノソーマ病,カラアザール,マラリア,住血吸虫症,フィラリアなど ④慢性炎症性疾患:結核,らい,いちご腫,梅毒,ブルセラ症,細菌性心内膜炎,サルモネラ症など ⑤新生物:放射線療法,化学療法の治療後 ⑥高γーグロブリン血症:高γーグロブリン血症性紫斑病をきたす疾患:クリオグロブリン血症,慢性肝疾患 サルコイドーシス,他の慢性肺疾患 その他の自己抗体 抗GAL欠損IgG抗体(CARF):RA患者は、ガラクトースを欠損したIgGが多く、 GAL欠損IgGに対する抗体の出現が見ら れる、陽性頻度は高いが、特異性は低い。 抗CCP抗体:環状シトルリン化ペプチドに対する抗体。発症以前にも陽性に出ることがあり、特異性が高い。早期診断、 確定診断に有用。 補体価 低補体: ①補体欠損症(遺伝性血管神経性浮腫,C1r欠損,C2欠損, C3欠損,C4欠損,C9欠損) ②膠原病(SLE,悪性関節リウマチ,強皮症,シェーグレン症候群) ③腎疾患(連鎖球菌感染後急性腎炎,膜性増殖性糸球体腎炎, ループス腎炎) ④肝疾患(B型肝炎,慢性肝炎,肝硬変,肝硬変を伴う肝癌 激症肝炎,ルポイド肝炎) ⑤血液疾患(溶血性貧血,発作性寒冷血色素尿症, 混合型クリオグロブリン血症) ⑥その他:重症筋無力症,神経性食思不振症,脂肪異栄養症, ショック(グラム陰性菌敗血症), 亜急性細菌性心内膜炎,低補体性蕁麻疹 高補体: ①感染症 ②膠原病(関節リウマチ,リウマチ熱,結節性多発動脈炎, 皮膚筋炎,潰瘍性大腸炎,サルコイドーシス, ライター症候群,ベーチェット病, 原発性胆汁性肝硬変) ③癌(急性リンパ腫,肺癌など)〔末期では低下〕 ④その他:甲状腺炎(活動期),痛風 免疫複合体 検出される主な疾患 膠原病:RA,SLE,シェーグレン症候群,結節性多発動脈炎 Wegener肉芽腫症,クリオグロブリン血症, シェーラインヘノッホ紫斑病,ベーチェット病 サルコイドーシス その他:糸球体腎炎,感染症,炎症性腸疾患,悪性腫瘍, 肺疾患(肺線維症など), 慢性肝疾患(慢性肝炎,肝硬変,原発性胆汁性肝硬変) 神経疾患(ギランバレー症候群,多発性硬化症, 筋萎縮性側索硬化症,亜急性硬化性全脳炎など) 血液疾患(溶血性尿毒症候群,白血病など), 内分泌疾患(橋本病), 皮膚疾患(結節性紅斑,帯状疱疹など) 膠原病の治療 全身療法に用いられるコルチコステロイド薬 種類 ヒドロコルチゾン(コートリル) プレドニゾロン(プレドニン) メチルプレドニゾロン(メドロール) 抗炎症作用の力価比 1 4 5 トリアムシノロン(ケナコルト) ベタメタゾン(リンデロン) 5 20∼30 デキサメタゾン(デカドロン) 20∼30 浮腫、ナトリウムの蓄積 カリウムの欠乏 高血圧 精神の興奮 食欲亢進、体重増加 消化器潰瘍 紫斑 満月顔 多毛 皮膚効果 骨粗鬆症 糖尿病 局所効果 副腎萎縮 力価 対応量(mg) 20 5 血漿半減期(分) 70 4 0.75 150 200 200 0.75 200 150 生物学的半減期(時間) 8∼12 12∼26 12∼36 24∼48 36∼54 36∼54 ハイドロコー プレドニゾ メチルプレ トリアムシ デキサメ ベタメサゾ チゾン +++ ++ + + ++ + + ++ ++ + ++ ++ +++ +++ 0.25 ン ロン ++ + ++ ++ ++ +++ +++ ++ ++ + +++ +++ +++ +++ 1 ドニゾロン ノロン + 0 + ++ + + + + + 0 ++ +++ ++ +++ ++ +++ ++ +++ + +++ +++ +++ +++ ++ ++ +++ +++ +++ 1.25 1.25 サゾン + + + ++ +++ ++ ++ ++ + + ++ + ++ ++++ 7 0 0 ++ + +++ ++ ++ ++ 0 + ++ ++ ++ ++++ 7 長期コルチコステロイド療法の副作用 高頻度に発現 低頻度に発現 ・高血圧 ・カルシウム負のバランス、二次性副甲状腺機能亢進症 ・窒素の負のバランス ・中心性肥満;満月様顔貌;鎖骨上窩脂肪沈着;後頚部脂肪沈着 (野牛肩);縦隔拡大(脂肪腫症);体重増加 ・創傷治癒障害;顔面紅斑;皮膚菲薄・脆弱化;紫線条;点状出血、斑状出血 ・座瘡 ・小児成長障害 ・視床下部−下垂体−副腎系抑制による副腎皮質機能不全 ・高血糖;糖尿病 ・高リポ蛋白血症;アテローム性動脈硬化 ・ナトリウム貯留;低カリウム血症 ・感染リスク増加;好中球増多;単球減少;リンパ球減少;遅延型過敏反応抑制 ・ミオパシー ・骨粗鬆症;脊椎圧迫骨折 ・大腿骨頭やその他の骨の骨壊死(無菌性骨壊死) ・多幸感、情緒不安定、不眠、抑うつ、食欲亢進のような気分や行動の変調 ・後嚢下白内障 ・代謝性アルカローシス ・糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧非ケトン性糖尿病性昏睡 ・消化性潰瘍疾患(通常は胃)、胃出血 ・「無症候性」腸穿孔 ・眼圧上昇、緑内障 ・良性頭蓋内圧亢進、偽脳腫瘍 ・骨折 ・精神病 免疫抑制剤とステロイド剤の違い 薬の特性 作用のしくみ 抗炎症作用 免疫抑制作用 抗癌作用 副作用 骨髄抑制、血球減少 感染しやすい 生殖に及ぼす影響 悪性腫瘍の発生 奇形 その他 免疫抑制剤 ステロイド剤 細胞毒 ホルモン 正常の細胞も含め細胞の 種々のホルモン作用を有する が、その作用に炎症や免疫に 代謝などに必要な物質を かかわる物質を抑えたり、炎症 阻 害 す る 働 き が あ る 。 を抑える物質を合成する働き が あ る 弱い(遅効性) 強い(速効性) 強い(薬による) あり 多量使用で強い なし あり なし あり あり あり なし 可能性あり なし 可能性あり なし 薬剤により、肝障害、腎障 糖尿病、胃潰瘍、精神症状、骨 害、脱毛、出血性膀胱炎、 粗しょう症、副腎機能不全、多 間質性肺炎など 毛、にきび、満月様顔貌など ごくまれに発現 ・大量パルス療法の急速投与による突然死 ・全身性エリテマトーデス患者にみられる心臓弁膜病変 ・疾病素因を有する患者にうっ血性心不全 ・皮下脂肪組織炎(離脱後) ・多毛または男性化、インポテンツ、 続発性無月経 ・脂肪肝による肝腫大 ・膵炎 ・痙攣 ・硬膜外脂肪腫症 ・眼球突出 ・合成コルチコステロイドに対するアレルギーの結果として蕁麻疹、 血管性浮腫 関節リウマチ Rheumatoid arthritis (RA) 1. 病因:先天的遺伝素因に外的因子が加わって免疫異常が発現、あるいは増強さ れてRA が発症する。 a) HLA-DR4 b) 感染因子 c) 免疫学的因子 2. 病理組織:非特異的慢性滑膜炎 ;滑膜細胞増殖、 血管新生、炎症細胞浸潤、 フィブリノイド変性、 パンヌス(滑膜の肉芽組織化) 、 リウマトイド結節 (中心部の壊死組織を取り囲むフィブリノイド変性層、 柵状(palisading)に 配列した大単核細胞層,外層の線維化 しつつある肉芽層) 3. 疫学 :有病率 0.3∼1.5%、 男女比1: 3∼5、30∼50歳代 4. 臨床症状:初発症状 関節症状; 1) 朝のこわばり、2) 関節炎:変形 ( 尺側偏位、スワンネック変形、 ボタンホール変形、 オペラグラス手、 外反母趾、ハンマー状足趾 (槌趾)、 ムチランス型関節炎 、伸筋腱断裂、膝窩部嚢腫(Baker 嚢 腫) 、頸椎障害( 環軸椎亜脱臼) 5. 関節外症状 1)全身症状、2)貧血、3)皮下結節、4)皮膚症状、5)肺病変;胸膜炎、 間質性肺炎、結節性肺病変、Caplan症候群、6)心病変、7)眼病変、 8)神経症状、9)腎障害;蛋白尿、10)筋萎縮、骨粗鬆症 6. 検査所見: 1) 急性期炎症反応; 2) 末梢血; 3) 血清生化学; 4) 免疫学的検査; 5) 関節液; X線検査;Steinbrockerの4段階STAGE分類、 6) Larsen の 6 段階 grade 分類 7. 診断: 1987 年 ARA の改訂分類基準、 RAの活動性評価(Lansbury活動性指数)、ACR20,50,70、DAS28 機能障害度分類(Steinbrockerのclass分類) 8. 鑑別診断: 9. 経過予後: 10. 治療: 1) 基礎療法 2) 薬物療法; NSAIDs, DMARDs, steroid 滑膜組織 : 関節内部の殆どをカバーして、関節内部を裏打ちしている粗な結合組織。 A 型(M 型) :骨髄由来でHLA-DR抗原陽性でマクファージ の 表面形質を有する B型(F型) :線維芽細胞様細胞 C型(D型) : HLA-DR抗原陽性だがマクロファージの分化抗原 を発現していない樹状細胞(dendritic cell) 関節リウマチの分類基準 ※ 1. 朝のこわばり、 少なくとも 1 時間以上 ※ 2. 3 関節領域以上の腫脹 ※ 3. 手関節または MP、または PIP関節領域の腫脹 4. 対称性腫脹 5. 手指、手関節の X 線所見 6. 皮下結節 7. リウマトイド因子 上記 7 項目中、4 項目以上: RA と診断してよい。※印の関節症状は、6 週間以上持続 SLE、 乾癬性関節炎、MCTD の 3 疾患は、 RA と分類される率が高いので注意を要する。 早期慢性関節リウマチ診断基準 ( 厚生省) 1. 朝のこわばり 15 分以上(≧ 1 週) 2. 3 つ以上の関節域の腫脹(≧ 1 週) 3. 手関節、MCP、PIP、 足関節または MTP の腫脹(≧ 1 週) 4. 対称性腫脹 5. リウマトイド因子 6. 手または足の X 線像変化、軟部組織紡錘状腫脹と骨粗鬆症、 または骨びらん 除外項目: SLE、MCTD、AS、 ベーチェット病、 乾癬性関節炎 以上の 6 項目中、4 項目以上当てはまれば RA と診断してよい ( 日本リウマチ学会 ) 1. 3 関節以上の圧痛または他動運動痛 2. 2 関節以上の腫脹 3. 朝のこわばり 4. リウマトイド結節 5. 血沈 20mm/h 以上の高値または CRP陽性 6. リウマトイド因子陽性 以上の 6 項目中 3 項目以上みたすもの 関節リウマチの病態 ・微生物感染 (レトロウィルスほか) 滑膜組織 ・遺伝的素因 血管新生 単核球浸潤 滑膜細胞活性化 (HLA-DR4 ほか) 炎症性サイトカイン ケミカルメディエーター IL-1,TNF,IL-6 IL-8,GM-CSF, G-CSF PGE, 活性酸素、NO, コラゲナーゼ、 メタロプロテアーゼ 全身状態悪化 急性期期相蛋白増加 ・ CRP ・フィブリノーゲン ・ SAA ・血沈 ・発熱 ・貧血 ・栄養低下 (アルブミン) 感染症合併 全身性 骨粗鬆症 ・増殖因子 (FGF,PDGF,TGF) ・癌遺伝子 (fos,jun) 滑膜組織増殖 (パンヌス形成) 傍関節性 骨粗鬆症 二次性 アミロイドーシス 日常生活動作障害 関節リウマチの関節外症状 関節リウマチ患者の生命予後に影響を及ぼす疾患・要因 1.関節病変: 頸椎環軸関節亜脱臼、輪状披裂関節病変 2.関節外病変:肺線維症・間質性肺炎、 収縮性心膜炎、アミロイドーシス 3.RAに多い一般的病変:感染症、心筋梗塞、 脳梗塞、胃・十二指腸潰瘍 4.薬剤の関与が考えられる疾患:造血器疾患、 間質性肺炎、胃潰瘍、腎症(蛋白尿) 関節軟骨・骨破壊 1. 2. 3. 4. 5. 6. 貧血 リンパ節腫脹 リウマトイド結節 眼病変 喉頭病変 胸膜・肺病変: 胸膜病変、 結節性肺病変、 リウマチ性塵肺症 7. 心病変: 心膜炎、 心筋及び冠動脈病変、 心内膜病変 8. 神経・筋病変: ニュウロパチー、 頸髄障害、 圧迫によるニュ ーロパチー、 リウマトイド結節、 筋病変 9. リウマトイド動脈炎 関節リウマチの間質性肺炎 (猪熊ら) アミロイドA蛋白(SAA)の生成 症状 炎症性サイトカイン ( IL-1 IL-6 TNF) 肝細胞 所見 疾患活動性 血液 SAA 組織 ・ AA Lysosomal enzyme (SAA: serum amyloid A) 104 amino acid 12KD (AA: amyloid A) 76 amino acid 9KD 無症状、乾性咳嗽、労作時呼吸困難、 頻呼吸 Vercroラ音 胸部X線像 関節炎症状とはあまり関係しない CRP高値 α 1アンチトリプシン高値 免疫グロブリン高値 抗核抗体陽性 リウマトイド因子高力価 下肺野肺底部肺末梢側に強い、 粒状・網状影 胸部CT像 下肺の胸膜直下の粒状・網状影 免疫グロブリンの変動 間質性肺炎の悪化に伴い上昇、 改善とともに減少する 検査値 RA における間質性肺炎の病理組織像と臨床像 ステロイドの 反応性 病理組織像 (佐藤篤彦) 予後 DAD :胞隔の浮腫性、細胞正肥厚、 肺胞上皮の損傷、硝子膜形成 不良 きわめて不良 UIP (類似病変を含む) : 斑状の病変分布、胞隔の細胞 浸潤と線維性変化、蜂窩肺 不良 不良 BOOP :細気管支? 肺胞腔内における 肉芽形成、肺胞への細胞浸潤 良好 比較的良好 良好 比較的良好 良好 比較的良好 CIP :胞隔の比較的びまん性の円形 細胞浸潤 LIP :胞隔? 細気管支炎の著しい小円形 細胞浸潤(肺リンパ腫との鑑別要) DAD : diffuse alveolar damage, BOOP : bronchiolitis obliterans organizing pneumonia, LIP : lymphocytic interstitial pneumonia UIP : usual interstitial pneumonia, CIP :cellular interstitial pneumonia, Larsenの6段階grade分類(grade 0∼grade V) Grade 0:正常。変化はあっても関節炎とは関係ないもの。 Grade I:軽度の異常。関節周囲の軟部腫脹、関節周囲のosteoporosis、軽度の関節裂隙狭小化のうち1つ以上が存在する。 Grade II:初期変化。erosionと関節裂隙狭小化・(standard film参照)erosionは非荷重関節では必須。 Grade III:中等度の破壊。erosionと関節裂隙狭小化・(standard film参照)erosionは荷重関節でも必須。 Grade IV:高度の破壊。erosionと関節裂隙狭小化・(standard film参照)荷重関節で骨変形 Grade V:ムチランス変形 Steinebrockerの4段階stage分類(stage I∼IV) Stage I 初期 *1.X線写真上に骨破壊像はない。 2.X線学的オステオポローゼはあってもよい。 Stage II 中等期 *1.X線学的に軽度の軟骨下骨の破壊をともなう、あるいはともなわないオステオポローゼがある。 軽度の軟骨破壊はあってもよい。 *2.関節運動は制限されてもよいが、関節変形はない。 3.関節周辺の筋萎縮がある。 4.結節および腱鞘炎のような関節外軟組織の病変はあってもよい。 Stage III 高度 *1.オステオポローゼの他にX線学的に軟骨および骨の破壊がある。 *2.亜脱臼、尺側偏位、あるいは過伸展のような関節変形がある。線維性または骨性強直をともなわない。 3.強度の筋萎縮がある。 4. 結節および腱鞘炎のような関節外軟組織の病変はあってもよい。 Stage IV 末期 *1.線維性あるいは骨性強直がある。 それ以外はStage IIIの基準を満たす。 *印のある基準項目は、特にその病期あるいは進行度に患者を分類するためには必ずなければならない項目である。 機能障害度分類(SteinbrockerのClass分類)(藤林の分類)を追加 Class 1:身体機能は完全で不自由なしに普通の仕事は全部できる。 Class 2:動作の際に、1箇所あるいはそれ以上の関節に苦痛があったり、または運動制限はあっても、普通の活動なら何と かできる程度の機能。 Class 3:普通の仕事とか自分の身の回りのことがごくわずかできるか、あるいは、ほとんどできない程度の機能。 3a立ち上がり、階段可能、0.5∼1km歩行可能 3b杖などを用いてaが可能 3c庭程度まで歩行可能 3d屋内歩行可能 Class 4:寝たきり、あるいは車椅子に座ったきりで、身の回りのこともほとんど、また、まったくできない程度の機能。 4a非実用性歩行 4b実用性のある車椅子動作 4c実用性のない車椅子動作 4d寝たきり ACR・コア・セット (Arthritis Rheum 36:729,1993) ① 疼痛関節数 関節リウマチの治療目標 ② 腫脹関節数 ③ 患者による疼痛の評価 ・ RAの早期診断・早期治療 ④ 患者による全般的活動性の評価 ・ RA炎症の可及的速やかな最大限の抑制 ⑤ 医師による全般的活動性の評価 ⑥ 患者による運動機能の評価 ⑦ 血沈、CRPの値 ・非可逆的変化の出現の防止ないしは その進展の阻止 ⑧ レントゲン所見 ・患者の身体的、精神的、社会的な 生活の質(QOL)の向上 の8項目でリウマチの活動性の評価を行う.①と②の項目で20%以上の改善があり、 ③∼⑦のうち、3項目で20%以上の改善が認めれる場合、 「ACR基準20%の改善あり(ACR20)」 と判定する. ③∼⑤は、Visual analogue scale という10cmの物差し上に自分の評価を示して判定する.⑥は、 MHAQ を使う.しかしながら、③疼痛、④全般的活動性、⑥運動機能という、3項目は評価が困難。 DAS28の求め方 評価する28関節 4変数のDAS28 = 0.56×√(圧痛関節数) + 0.28×√(腫脹関節数)+ 0.70×ln(ESR)+ 0.014×患者による全般評価 3変数のDAS28 = [0.56×√(圧痛関節数) + 0.28×√ (腫脹関節数) + 0.70×ln (ESR)× 1.08 + 0.16 lnは自然対数 DAS28 >5.1 3.2~5.1 <3.2 活動性が高い 中等度活動性 活動性が低い ※CRPを使用する場合は式が異なる DAS28-CRP(4)= 0.56×√(圧痛関節数) + 0.28×√(腫脹関節数) + 0.36×ln(CRP+1) + 0.014×患者による全般評価+ 0.96 DAS28-CRP(3) = [0.56×√(圧痛関節数) + 0.28×√(腫脹関節数) + 0.36×ln(CRP+1)] ×1.10 + 1.15 参考:DASホームページ:http://www.das-score.nl/www.das-score.nl/index.html RAの臨床経過をかえる 抗リウマチ薬の開始 治療開始の 遅れ 早期治療 Window of opportunity リウマチ専門医へ 紹介 症状 出現 関節破壊の 開始 理想的治療 臨床経過 Ann Rheum Dis 63:627-633,2004 関節破壊の進行 自然経過 抗リウマチ剤の特徴 1. 即効性の効果はないが、 数週間から数ヶ月の使用により 抗炎症効果を発揮する。 2. 比較的長期にわたって疾患の活動性を抑制することが出 来る。 3. 慢性関節リウマチの自然経過を変える、 あるいは寛解を 導入する力を持つ。 4. responder と non-responder がいる。 5. 副作用が比較的多く、 重篤な副作用を発現することがある。 疾患修飾剤・免疫抑制剤の副作用 1. Auranofin(リドーラ) 下痢など胃腸障害 2. GST(シオゾール) 皮疹、口内炎、腎障害、白血球減少、間質性肺炎 3. D-penicillamine(メタルカプターゼ) 白血球減少、腎障害、肝障害 4. Bucillamine(リマチル) 皮疹、腎障害 5. Tiopronin(チオラ)※ ※保険対象外 肝障害、皮疹 6. CCA(カルフェニール) 腎障害、胃腸障害 7. Actarit(オークル・モーバー) 胃腸障害、皮疹 8. Salazosulfapyridine(アザルフィジンEN) 胃腸障害、白血球減少、肝障害、皮疹 9. Methotrexate(リウマトレックス) 白血球減少、肝障害、血小板減少、間質性肺炎 10. Mizoribine(ブレディニン) 白血球減少、血小板減少 11. Leflunomide(アラバ) 下痢、感染症、間質性肺炎 12. Infliximab(レミケード) 結核、感染症、アナフィラキシーショック 13. Etanercept(エンブレル) 結核、感染症 14. Tacrolimus hydrate(プログラフ) 腎障害、糖尿病 (太字は日本リウマチ財団(厚生労働省研究班)による推奨Aに相当する薬剤) RA治療管理の概要 A&R 2002 ・ RAの診断早期確定 ・疾患活動性及び障害度の記載 ・プログノーシスの推定 最初の治療 ・患者の教育 ・ 3か月以内にDMARDsの開始 ・ NSAIDの考慮 ・局所または低容量ステロイドの考慮 ・理学 /作業療法 一 般 臨 床 医 リ ウ マ チ 専 門 医 定期的疾患活動性の評価 不十分な効果 3か月以上の最大量での治療で 疾患活動性の低下がない 十分な効果と疾患活動性の低下 DMARDの変更もしくは追加 MTX未使用 MTX 他剤の 単剤使用 MTX効果不十分 多剤との 併用療法 併用療法 他剤の 単剤使用 単剤治療 多剤耐性 症状 and/or 関節構造の障害 手術療法 生物製剤 併用療法 COX-1およびCOX-2の特徴 COX-1 COX-2 相同性 60% 61% 調節 構成的 誘導性 変動の範囲 2? 4倍 10? 80倍 組織 血小板、血管内皮細胞 胃粘膜、腎 その他ほとんどの細胞 マクロファージ/単球 線維芽細胞、滑膜細胞、前立腺 卵胞、その他の細胞 刺激物質 なし サイトカインなど 糖質コルチコイド 阻害 阻害 NSAIDs * 阻害 阻害 役割 生理的機能? 炎症、細胞増殖、排卵など? *種類により阻害の選択性が異なる RAの病態と炎症性サイトカイン B細胞 リウマトイド因子産生 Others 遺伝的背景 (HLA-DR4など) + 環境因子? (ウイルスなど) 高ガンマグロブリン血症 IL-6 肝細胞 T細胞 TNF-α 骨髄巨核球 血小板産生 破骨細胞 IL-1 TNF-αはサイトカイン カスケードの最上流 骨破壊 コラゲナーゼ産生 プロスタグランジン産生 滑膜細胞 マクロファージ 活性化 CRP産生 軟骨破壊 関節痛 血管内皮細胞 接着分子発現誘導 滑膜へのリンパ球浸潤 IL-8,PAF産生 視床下部 体温中枢 発熱 TNF阻害療法 構造 機序 方法 間隔 MTX 半減期 注意点 市販 インフリキシマブ (レミケード®) エタネルセプト (エンブレル®) キメラ型抗TNFαモノク ローナル抗体 TNFαの抗体による中和 点滴静注(3mg/kg) 8週毎 併用必須 8.1日 注射時反応と結核感染 平成15年7月市販 ヒト型可溶性TNF受容体 融合蛋白質 TNFαとβのトラップ 皮下注射(10-25mg) 週2回 併用を推奨 4.8日 注射部位反応と結核 平成17年3月市販 RF陰性 HCL/SSZ RF陽性 SSZ/MTX 骨・軟骨破壊(−) 活動性低い DAS≦3.2 MTX/SSZ 骨・軟骨破壊(+) RF陰性 SSZ/MTX RF陽性 MTX/SSZ 骨・軟骨破壊(−) 活動性中等度 3.2<DAS≦5.1 極早期RA 骨・軟骨破壊(+) MTX/LEF 骨・軟骨破壊(−) MTX/LEF 活動性高い DAS>5.1 RF陰性 MTX/LEF RF陽性 MTX/ETA 骨・軟骨破壊(+) 図2 フランスリウマチ学会の極早期RAに対する第一選択のDMARDsの使用基準 (2004 proposal of the French Society of Rheumatology) 吉玉珠美;リウマチ科:36:468,2006 我国で使用可能な抗リウマチ薬(DMARDs)の効果の強さと適応の目安 弱い 中等度 強い 最強 オーラノフィン アクタリット ミゾリビン※※ ロベンザリット スルファサラジン ブシラミン GST(注射金剤) D-ペニシラミン タクロリムス※※ シクロスポリン※ MTX レフルノミド インフリキシマブ エタネルセプト 関節症状軽度 炎症反応軽度 病初期 関節症状中∼高度 炎症反応中∼高度 他のDMARD無効例 関節症状高度 炎症症状高度 骨破壊進行例 MTX無効例 骨破壊進行例 ※保険適応なし 日内会誌94:2077 ※※健康保険上は他のDMARDs無効例 抗リウマチ薬と妊娠 ミニマムエッセンシャルP253 一般名 メトトレキサー ト 金チオリンゴ酸 ナトリウム オーラノフ フィン D-ペニシラミ ン ブシラミン サラゾスル ファピリジン アクタリット ミゾリビン 商品名 リウマトレック ス シオゾール リドーラ メタルカプ ターゼ リマチル アザルフィジ ンEN オークル モーバー ブレディニン 妊娠 服薬中禁 使用中禁 奇形の報告なし 妊娠したら中止 服薬中禁 催奇形性あ り 服薬中禁 安全性確立 せず 妊娠末期禁 服薬中禁 服薬中禁 Guidelines for monitoring drug therapy in rheumatoid arthritis. American College of Rheumatologe Ad Hoc Committee on Clinical Guidelines. Arthritis Rheum 39 : 723-731,1996より一部改変 駒野有希子:リウマチ科36:501, 2006 図1. 生物学的製剤投与中における発熱、咳、呼吸困難に対するフローチャート 発熱、咳、呼吸困難(PaO2:以前の値と比べて低下) 身体所見、胸部X線(胸部CT)検査、臨床検査 MTX,生物学的製剤一旦中止 呼吸器内科医、放射線専門医の 読影が望ましい 実質性陰影 すべて陰性 喀痰培養、血液培養 抗酸菌染色・培養 いずれか で陽性 抗菌薬治療が無効 ないし悪化で病原体不明 β-DG,PCRおよび 他の病原体全て陰性 細菌性肺炎 または結核など 間質性陰影 血中β-Dグルカン(β-DG)測定 (BALFまたは誘発喀痰) Pneumocystis菌体染色・PCR マイコプラズマ、クラミジア、 レジオネラの検査 陽性 β-DG,PCRとも陰性 他の病原体検査で陽性 β-DGまたは PCR陽性 ニューモシスチス肺炎 (PCP) MTXなどによる薬剤性肺炎、 リウマチ肺など PCP以外の非定型肺炎 RAにおける結核リスク評価法 問診、胸部X線検査、ツベルクリン皮内反応 呼吸器科専門医、結核専門医、 放射線科専門医による読影が 望ましい リスク評価 結核リスク:高 胸部X線異常 活動性結核 結核リスク:低 問診リスクorツ反陽性 結核既感染 活動性結核の治療・完治 INH予防投与 TNF阻害薬の投与開始 Miyasaka N: Modern Rheumatol 16:66, 2006. 悪性関節リウマチ (Malignant rheumatoid arthritis,MRA) 定型的 RA で、 血管炎に基づく関節外症状(四肢壊疽、 皮膚潰瘍、胸膜炎、肺臓炎、 心筋炎、多発単神経炎など) を有し、 予後の悪い病態を呈する疾患 1. 疫学: RA の約 1%、 男性がやや多い、40∼60 歳に多い 2. 病型分類 : 血管炎型 A. 全身性動脈炎 (Bevans 型) 予後不良 B.末梢性動脈炎 (Bywater型) 予後良好 非血管炎型 C.肺臓炎pneumonitis型 予後不良 D .全身性感染症その他 予後不良 3. 臨床症状:関節症状ほぼ全例 , 全身症状;高熱、 全身衰弱 PN に比較して、 腎障害(血管炎) は極端に少ない 4. 検査所見:炎症反応高値 , 白血球増加、リウマトイド因子高値 (IgGクラス増加) 、低補体価、免疫複合体増加、抗核抗体陽性、 血清γグロブリン上昇 5. 診断基準: 悪性関節リウマチ(MR A)診断の手引き(厚生省研究班) 6. 予後 : きわめて悪い 診断確定後 1 年での死亡率は 34% 診断確実:慢性関節リウマチの診断基準で「確定的」以上であり、 死因;心不全、 心筋梗塞などの心障害 かつ準拠項目Aのうち少なくとも1項目と組織所見があるもの、 または準拠項目Aのうち少なくとも2項目あるもの。 診断疑い:①慢性関節リウマチの診断基準で「確定的」以上であり、 少なくとも準拠項目Aのうち1項目と検査所見のうち1項目あるもの。 ②慢性関節リウマチの診断基準で「可能性」以上であり、 少なくとも準拠項目Bのうち3項目以上あるもの。 準拠項目A:小、中血管の血管炎によると考えられる下記の臨床症状。 ①多発性神経炎。②皮膚梗塞または潰瘍。③指趾壊疽。 ④上強膜炎。⑤胸膜炎。⑥心膜炎。⑦心筋炎。⑧肺臓炎。 ⑨皮下結節、紫斑、出血。⑩腸梗塞、心筋梗塞などの内臓虚血。 準拠項目B:①関節症状として疼痛、腫腸があるもの。 ②高熱(38℃以上)、全身衰弱など全身症状が強いもの。 ③血管炎によると思われる臨床症状(準拠項目Aのうち少なくとも1項目)。 ④少量のステロイドでは症状を軽減できないもの。 組織所見:小、中血管炎の存在。 検査所見:①血沈促進(1時間値60㎜以上)。②リウマチ因子の高値。 ③補体価の低下。④白血球増加(1万/㎜3以上)。 ⑤血清γ-グロブリン上昇。⑥抗核抗体、LE細胞またはLEテスト陽性。 ⑦X線像にて骨の鮮明な破壊。 フェルティー症候群 ( Felty syndrome) 関節リウマチ、脾腫、白血球減少を三主徴とするRAの重症亜型 疫学; RA の 1%以下、 罹病期間 10 年以上の女性に多い。高齢者、 HLA-DR4. 臨床症状;関節病変:破壊・変形著しい。 関節外症状:リンパ節腫大、 肝腫大、皮下結節、難治性下腿潰 瘍、 末梢神経障害、肺線維症。 検査所見;白血球減少(顆粒球) ;感染症合併、 貧血、血小板減少 リウマトイド因子高値、 低補体価、免疫複合体陽性 顆粒球特異性抗核抗体陽性 (90%) 補体結合能、細胞傷害性 あり。 予後;自然寛解あり 反復性重症感染症;死因の殆どをしめる。 治療;薬物療法: RA の治療が基本 金製剤・ D-penicillamine; 顆粒球減少に有効 摘脾:反復重症感染合併症例、 血小板減少、重症貧血、巨大脾腫、 食道静脈瘤合併例。 カプラン症候群(Caplan’s syndrome) 塵肺症と肺リウマトイド結節を伴うRA 粉塵曝露の経験を有し、RAとしての関節症状のほかに、 塵肺症の症状として、慢性的な喀痰と咳嗽を示す。 肺病変が進展すると、労作時呼吸困難を生ずることもある。 RAに由来する異常検査所見のほかに、 胸部X線像に、特徴的異常所見を認める。この所見は肺の多発性 リウマトイド結節の存在を反映するもので、辺縁の明瞭な結節状陰影は 直径0.5∼3㎝程度の大きさで、両側の肺野全体に分布するが、 特に、辺縁部に多くみられる結節が空洞化を生ずることも少なくない。 呼吸機能検査上、換気障害の所見を得る。 JRAの病型別特徴 全身型 多関節型 少関節型 病型の割合 10% 40% 50% 発症時の罹患関節数 様々 ≧5 ≦4 男女比(F:M) 1: 1 3: 1 5: 1 ブドウ膜炎発症頻度 1% 5% 20% リウマトイド因子陽性率 < 2% 5%∼10% < 2% ANA 陽性率 5%∼10% 40%∼50% 75%∼85% JRA 臨床経過で≧ 5 の関節に波及する割合 50%∼60% 100% 40% 42% 45% 41% X 線像でびらんまたは関節裂隙狭小化が認められる割合 45% 54% 28% X 線像でびらんまたは関節裂隙狭小化が認められる 2.2 2.4 5.4 50% 16% 11% (10 年の経過観察後に活動性疾患が認められる割合) までの経過時間(発症からの年数) 、中央値 成人後の身長が<1/5 パーセンタイルになる割合 血清反応陰性脊椎関節炎 (症) Seronegative spondyloarthropathies(SNSA) 疾患:強直性脊椎炎、 乾癬性関節炎、 ライター病、 潰瘍性大腸炎、 クローン病など SNSA の臨床的特徴 a) 血清中リウマトイド因子陰性 b)X 線上仙腸関節炎をみる c) 皮下結節が欠如 d) 末梢関節炎 e)Enthesopathy f) 他の臓器障害の合併 (乾癬様皮疹、 結膜炎、 急性前房炎、 口腔内粘膜潰瘍、 腸管潰瘍、 陰部潰瘍、 生殖器、 泌尿 器系炎症、 結節性紅斑、 血栓性静脈炎、 膿皮症など) g) 家族内集積性 h)HLA-B27 との関連 HLA-B27関連疾患の特徴 疾患 特徴 HLA-B27の頻度 強直性脊椎炎(AS) 強膜炎、弁膜症 90% Reiter症候群 結膜炎、尿道炎 80% 炎症性腸疾患に伴う 関節炎 乾癬性関節炎 脊椎炎、仙腸関節炎合併例 反応性関節炎 若年性関節リウマチ のAS型 結節性紅斑 脊椎炎、仙腸関節炎合併症 多彩な関節炎 先行する細菌性腸炎 ASの若年発症 90% 60-80% 60% 強直性脊椎炎 Ankylosing spondylitis 病態; HLA-B27陽性率90%以上、 男女比10以上 臨床症状; a. 脊椎の症状 b. 関節の症状 c. 全身症状:虹彩炎、ブドウ膜炎、肺活量の減少、心症状(大動脈弁閉鎖不全症) d. X線所見:仙腸関節の炎症性強直、脊椎のsyndesmophyte (靱帯骨棘形成) 診断; 修正New York診断基準(1985) 1. 少なくとも3カ月以上続く腰痛が、運動訓練によって改善し 安静によっては改善しない。 2. 腰椎の前屈、側屈の制限。 3. 胸郭の拡張差が年齢・性差に対する正常値に比べて減少している。 4. 両側性仙腸関節炎、Grade 3-4 5. 片側性仙腸関節炎、Grade 3-4 definite AS:上記4、または5、と臨床診断基準(1、2、3)のいずれか。 理学所見: Schober test; 腰仙部前屈時の拡大距離が5cm以下 Mennnell’s sign; 大腿過伸展による仙腸関節分の痛み 胸郭の拡張差が2.5cm以下(第4肋間腔で) ライター症候群 Reiter’s syndrome 反応性関節炎 Reactive arthritis 関節炎、尿道炎、結膜炎を3主徴としHLA-B27陽性率80%、 膿漏性角化症、連環状亀頭炎(5徴) 疫学 ; 性的交渉後、赤痢後1カ月以内、たにマイコプラズマ、クラミジア、 サルモネラ、エルシニア感染後、18歳から45歳頃、男女比13:1 臨床像; a) 関節炎:膝・足などの荷重関節に好発、主徴・疼痛強く非対称性・多発性。 靱帯付着部炎、腰痛・下背部痛あり。仙腸関節炎は片側性。 b)泌尿器症状:非特異性尿道炎。分泌物は漿液性時に膿性。 c)眼症状:結膜炎は一過性。 d)皮膚粘膜病変:口腔の粘膜潰瘍は一過性。連環状亀頭炎(10? 20%) 膿漏性皮膚角化症は足底部、手掌、陰茎などに生じ、ときに乾癬と区別困難。 検査 ; 白血球増多、血沈亢進。関節液は混濁、白血球増多、ライター細胞の存在。 X線像;坐骨結節、大転子、腱付着部のびらんや傍骨性骨新生。片側仙腸関節炎。 予後 ;完全寛解は約20% 治療 ;NSAIDs,抗生剤、ステロイド剤、免疫抑制剤。 乾癬性関節炎 Psoriatic Arthritis 乾癬に、腫脹・疼痛を伴う関節炎を合併し、リウマトイド因子陰性。 病因・病理; 家族発生が多い。HLA-CW6が多い。子供はA2,B17。B38・ B39・B16は本症との関連性あり。脊椎炎や仙腸関節炎例はB27が59%。 末梢関節炎はB27,B38,DR4が、骨糜燗の強い例は、B27,DR3が関連。 臨床症状; 乾癬患者の約7%。(日本: 2? 4%)男女比1:1 a)DIP関節と爪が侵される典型的乾癬性関節炎型(17%) b)ムチランス関節炎型(5%)指骨や中手骨の骨融解。しばしば仙腸関節炎を 合併。 c)対称性多関節炎型(15%)PIP・DIP関節は骨性強直になりやすい。 d)寡関節炎型 最も多い型(70%)非対称性にDIP・ PIP・ MTP関節等を侵す。 e)強直性脊椎炎型 仙腸関節炎・脊椎炎を合併。 X線所見; 骨萎縮、破壊。pencil-in-cup形成、骨性強直、骨溶解(ムチランス) 脊椎:傍脊柱骨化、非定型的靱帯骨棘形成、片側性仙腸関節炎、 胸椎の単発性強直。 頸椎:棘間、前縦靭帯骨化。 治療; 関節炎に対して: NSAIDs中心。金剤・D-penicillamine.。 MTXの低量投与。retinoid。