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海外における政策評価と予算の連携に関する調査研究

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海外における政策評価と予算の連携に関する調査研究
平成 17 年度
政策評価調査事業
(海外における政策評価と予算の連携に関する調査研究)
最終報告書
平成 18 年3月
(株)野村総合研究所
目次
Ⅰ.イギリスにおける政策評価と予算の連携 ................................................ 3
1.政策評価制度の実態 ............................................................ 3
2.予算制度の実態 ................................................................ 5
3.政策評価と予算の連携 ......................................................... 16
4.ケーススタディ(貿易産業省)にみる政策・予算連携の実態 ....................... 17
5.連携の実態・課題の整理 ....................................................... 39
Ⅱ.アメリカにおける政策評価と予算の連携 ............................................... 42
Ⅱ-1.連邦政府....................................................................... 42
1.政策評価制度の概要 ........................................................... 42
2.政策評価と予算の連携 ......................................................... 79
3.政策評価と内部管理(財務管理)の連携 ........................................ 124
4.政策評価の連携の実態(まとめ) .............................................. 143
参考資料(アメリカ連邦政府) .................................................... 145
Ⅱ-2.テキサス州.................................................................... 146
1.業績予算制度の概要 .......................................................... 146
参考資料(テキサス州) .......................................................... 175
Ⅲ
ニュージーランドにおける政策評価と予算の連携 ...................................... 176
1.業績予算制度の概要 .......................................................... 176
2.政策評価と内部管理(人材マネジメント)の連携 ................................ 211
参考資料(ニュージーランド) .................................................... 213
Ⅳ
オーストラリアにおける政策評価と予算の連携 ........................................ 216
1.業績予算制度の概要 .......................................................... 216
2.政策評価と内部管理(人材マネジメント)の連携 ................................ 238
参考資料(オーストラリア) ...................................................... 239
Ⅴ.フランスにおける政策評価と予算の連携(参考) ...................................... 241
1.政策評価制度の概要 .......................................................... 241
2.予算制度の概要 .............................................................. 243
3.政策評価と予算の連携 ........................................................ 245
Ⅵ.まとめ............................................................................ 246
1.連携の成功要因・失敗要因分析 ................................................ 246
2.政策評価と予算との連携のまとめと我が国への示唆 .............................. 247
参考文献 ............................................................................. 248
2
Ⅰ.イギリスにおける政策評価と予算の連携
1.政策評価制度の実態
• 全政府及び各省庁が実施する政策評価制度として、各省庁が 3 ヵ年にわたって設定する公共サービス
合意(Public Service Agreement:PSA)と、サービスの提供方法について設定するサービス提供合意
(Service Delivery Agreements :SDA)、さらに、サービスを提供するための必要な投資額について定め
る省庁投資計画(Departmental Investment Plan:DIS)がある。PSA は、各省庁の長期戦略及び 5 ヵ年
計画を踏まえて各省庁が策定するビジネスプランにおいて示されている(詳細は後述)。
• PSAについては、予算制度との関わりがみられる。すなわち、PSAは、3 ヵ年にわたる予算の裁量措置
がある程度認められる代わりにその設定が義務づけられている政策指標だからである。各省庁には、3
ヵ年に及ぶ中長期的な支出枠組み(Comprehensive Spending Review:CSR)※において支出額の上限
が、単年度支出枠組み(Spending Review:SR)において単年度の支出額の上限がそれぞれ定められる
が、この支出枠組み内における裁量権が、PSAの達成状況に応じて変わる仕組みのようである。
※1960 年代以降 30 年間実施されてきた省庁別の中長期的財政計画である「公共支出調査(Public
Expenditure Survey)」に代わり、労働党政権が 1997 年度に導入した制度。
※PSAとCSR、SRとの連携は必ずしも取れていないとする論調もある。柴(2003)は、PSAは 3 ヵ年の支
出上限額になじまない項目にのみ適用される政策評価指標であるとしている。
1)目標設定について
(1)公的サービス合意(PSA) 〔1998 年~〕
• 各省庁が今後 3 年の間に達成すべき行政活動の内容を、各省庁ごとの Aim(各省庁の設置目的)、
Objective(目標)として明示し、さらに一段下のレベルの項目として Performance Target(業績達成目
標)を定めたもの。大蔵省との協議によって決定される。
• 目標(Aim、Objective、Performance Target)はできるだけアウトカムで設定することが求められるが、行
政活動との因果関係が希薄である場合もあるため、アウトプットでの目標設定も認められている。また、
他省庁と関連の強い項目は、共同目標(joint target)として設定される。
• 例えば経済貿易省(Department of Trade and Industry :DTI)では、中長期的な計画(ビジネスプラン)
上において、各項目(4 項目)ごとに中期的な目標と、必要な予算額が明示されており、目標上では政
策目標と必要財源額が明確にリンクしていると言える。
• PSA よりさらに下位のアウトプット目標に関しては、「サービス供給合意」(Service Delivery Agreement:
SDA)が結ばれる。
※「アウトプット・業績分析」(Output and Performance Analysis:OPA)から変更になったもの
• 最新の Spending Review の PSA(2000 Spending Review:Public Service Agreements)では、2001 年度か
ら 2003 年度における省庁の目標として、全部で 160 の目標が設定されている。
3
(2)サービス供給合意(SDA)
• SDA では、各省庁が事業の実施に当たり、事業を遂行するための手法はどのように改善するのか、省
庁はサービスの受益者のニーズにどのように焦点を合わせるのか、省庁の人的資源・IT 資源はどのよう
に転換していくのか、政策立案の改革はどれくらい進行しているのかといった省庁が PSA で定めた目標
を達成する手法の概要を定め、PSA を下支えする効果をもっている。
• 主な内容は、ベンチマーク(業績指標)を設定してマネジメントツールとして活用すること、組織横断的な
ベンチマークを設定すること、行政サービスを簡単に利用することができるようにすることなどがあげられ
る。
• 省庁横断的な事業は、公共サービス生産性審査会(Public Services Productivity Panel)がイニシアチブ
をとって、省庁やエージェンシーによる新しい実用的な手法の導入を支援していくこととしている。
(3)省庁別投資戦略(DIS)
• 省庁別投資戦略(DIS)は、今後 3 年の政府の事業目標とリンクし、公共サービスを改善するのに必要な
資本を提供する計画である。DISは、支出額とは個別に定められているようである。実際、公共部門の
純投資額は、2003 年度には 180 億ポンドとなっているが、これは 2000 年度の投資額の 2 倍にあたる。
2)目標設定及び確認の実態ついて
(1)PSA 設定の実態及びプロセス
•
財務省から歳出総額(SR)に関する提示が行われると同時に、各省庁とPSAに関する協議が行わ
れる(毎年度 12 月)
公的支出・公的サービスに関する閣僚委員会(PSX:Ministrial Commitee on Public Service
and Public Expenditure)
具体的には、PSA ごとに目的(Aims)、目標(Objection)、業績目標(Performance Target)に関わる成
果の記述があり、業績目標については実績値の推移が付与されることになっている。
(2)PSA 確認の実態及びプロセス
• PSA における目標達成状況は、大蔵省と各省庁間で四半期ごとに確認されている。国民に対する対外
的な発表は、各省庁の年次報告書(Departmental Report)及びにおいて行われる。
• PSA は議会で承認されるものではなく、議会にとっては、予算を審議する際の参考資料的なものと位置
づけられている。達成状況についても、政府は、議会に対する説明責任を負わない。
4
2.予算制度の実態
1)資源会計・予算(Resource Accounting and Budgeting:RAB)の全体像
•
英国の予算制度の根幹をなしているのは、複数年・発生主義会計にもとづく資源会計・予算制度
(Resource Accounting and Budgeting :RAB)である。
•
RAB は、計画(Planning)、予算(Budgeting)、監視(Monitoring)、報告(Reporting)を一つのサイクルとし
てとらえて業績評価(政策評価)と予算編成をリンクさせ、コストの明確化、業績の評価、財政運営の
能力の向上を実現し、今まで以上に効果的・効率的な行政サービスの提供を目指している。
•
RAB は、1997 年から試行的に導入され、1998 年にはすべての省庁に導入されている。これにより固
定資産、省庁の事業目的別の費用、キャピタルチャージに関する情報が公表された。
•
99 年度のみ各省庁の「資源会計報告書」(Resource Accounts)が公表されている。また、2001 年度
の発生主義をベースとした「予算見積」(Estimates)が各省庁によって作成され、それをもとに 2001
年度の「単年度歳出予算」(Appropriation Act)が編成された。
•
資源会計ベースの予算は、2001 年度から作成されており、政府全体の会計は 2005 年度に初めて
作成される(Whole of Government Account:WGA)。これは、公共企業や地方公共団体まで連結対
象とした国のバランスシートである。現在 WGA(政府全体の会計書)の作成に取り組んでいるが、
データを提供する自治体側の基盤が十分に整備されておらず、2005 年度予定の公表が 1 年あ
まりずれる予定である(財務省ヒアリングより)。
•
RABの特徴は、スペンディング・レビュー(別称スペンディングプラン)という 3 ヵ年の歳出フレームワ
ークのもとで、政策目標である公共サービス合意(PSA )、サービス供給合意(SDA)と、単年度、複
数年度の予算体系とが、資源会計(ResourceAccount)のもとで一体化を目指している。
5
図表 RAB の全体像
政府の優先政策
Government’s Priorities
財政フレームワーク
Spending Review
(New Public Expenditure Plan)
計
画
Planning
予
算
Budgeting
資本予算
Capital Budget
資源予算
Resource Budget
議会の承認
Parliamentary
Authority
省庁別投資戦略
予算見積
Estimates
Departmental Investment
Strategy
Outcomes:公共サービ
ス合意 Public Service
Agreement
Outputs:サービス供給
合意 Service Delivery
Agreement
単年度歳出予算
Appropriation Act
資源会計
Resource Accounts
報
告
Reporting
年次報告
Annual Report
2002 年度から年 2
回出版
政府全体の会計
Whole of Government
Accounts
中央政府は 2003 年度から、政
府全体では 2005 年度から出版
6
2)予算の策定について
•
予算は 3 か年1タームの複数年度制(Spending Review)であり、2 年に 1 度ローリング改訂されてい
る。
(1)中長期的歳出枠組み~Spending Review(スペンディング・レビュー)
①Spending Review の構成
•
Spending Review とは、政府の優先的政策を受けて定める 3 ヵ年の歳出のフレームワークである。これ
は 1999 年度の予算編成から導入され、中長期的な視点にたって適切に予算配分することを意図し
ている。
•
最新の Spending Review(New Public Spending Plan)は 2005 年度から 2008 年度における支出計画で
あるが 、 同じ時期に策定される Public Service Agreement(公共サービス合意)、Service Delivery
Agreement(サービス供給合意)、Departmental Investment Strategy(省庁別投資戦略)も、包括的
に Spending Review の枠組みの範囲内とらえられている。
②財政規律
•
Spending Review の策定にあたっては、1998 年に健全な財政運営を行うことを目的として定められた
「財政安定化規律」(The Code for Fiscal Stability)の財政運営ルールを遵守する必要がある。その
内容は次のとおりである。
a)The Gold Rule:
・政府が借入れを行う場合は、公共投資の目的のためだけに限られ、それ以外の現年度の支出
のために借入れてはならず、また、国債の発行額は純投資額を超えてはならない。
b)The Sustainable Investment Rule:
・公共投資のための借入れは GDP の一定比率以内におさめ、純公共負債残高は経済成長が持
続可能な水準に保たなければならない。
③Spending Review (New Public Spending Plan)と Budget の関係
•
財政規律をふまえて策定された Spending Review (New Public Spending Review)が、Spending
Review の中心となる計画であるが、これが Budget(3 ヵ年歳出予算:後述)として実際の歳出予算に
なる。
•
歳出予算には、上限額(一定のキャップ)が定められている。今後 3 年間の「省庁別歳出上限額」
(DEL : Departmental Expenditure Limit) と 、 「 各 年 度 管 理 歳 出 ( AME : Annually Managed
Expenditure)」の2つのフレームワークがある。AME は、3 年計画で合理的に管理できない歳出につ
いて毎年度単位で管理するものである。
•
省庁が予算計上した会計年度において消費しなかった資源を、次年度へ繰り越すことを認めている。
これは、歳出を適正に行い、より良い財政運営を行うためである。
•
このようにスペンディングレビュ-~Budget は、予算に関わる一種の政策目標であると考えられる。
7
•
導入当初は、減価償却、キャピタルチャージ、配分等など発生主義に関わる非現金項目は DEL から
外されていた(AME)。2004 年以降の予算見積り段階で、これらの非現金項目が DEL に組み入れら
れることになった。
8
(2)予算体系について(Budget と Appropriation)
•
予算の面からみると、3 ヵ年の歳出予算が発生主義にもとづいて作成されており、これらは一種の政
策目標であるa)Spending Review <新公共支出計画(New Public Spending Plan)>、b)公共サービ
ス合意(Public Service Agreements)、c)サービス供給合意(Service Delivery Agreements)、d)省庁別
投資戦略(Departmental Investment Strategies) をもとに作成される。
•
単年度の予算は、3 ヵ年の歳出予算をベースに策定(現金換算)されるため、政策目標を間接的に
反映していると考えられる。
①「3ヵ年度歳出予算」(Budget)
•
3 ヵ年度歳出予算は、向こう 3 年間にわたる各省庁における「省庁別歳出限度 額」(DEL:
Departmental Expenditure Limit)と毎年の支出管理を行う「各年度管理歳出」(AME:Annually
Managed Expenditure)を振り分けたうえで、中期的(3 ヵ年)の歳出をコントロールするものである(現
在のところ現金支出の上限額のみが定められている)。
②「単年度歳出予算」(Appropriation)
•
単年度歳出予算は、3 ヵ年度歳出予算の枠組みの中で、当該単年度に支出できる「資源」及び「現
金」の額を定めたものである。
•
3 ヵ年度歳出予算(Budget)の場合と異なり、各省庁が「予算見積」(Main Estimates)を作成し、大蔵
省に提出する(ボトムアップ型)。 大蔵省は、予算見積をほぼそのままの形でとりまとめ「単年度歳出
予算法」(Appropriation Act)として議会に提出する。単年度歳出予算は、毎年議会の統制を受ける
ことになっている。
•
単年度歳出予算法(Appropriation Act)は、各省庁が予算見積(Main Estimates)で提示した資源・
現金を正式に使用できる権限を保証するものである。この法律は、議会に予算統制の権限を与える
とともに、歳出額を制限するという役割をもつ。
•
Appropriation の項目は、2002 年度~2003 年度時点では、資源要求項目(RfR:Request for
Resources)は、Bugdet の RfR とほぼ一致していたが、2005 年度時点では、両者の一致は見られてい
ない。
9
[資源予算(Resource Budgeting)の具体的な構成項目]
・ 「資源予算」(Resource Budgeting)は、計画策定や支出管理の基盤として「資源会計」(Resource
Accounting)の情報を活用する。また、発生主義に基づき資源予算は会計年度に消費する予算を計上
しており、外郭団体や公営企業の消費、投資も計上する。
・ 省庁が財政投資のために資金を借り上げる場合は、利子の支払いが発生するが、これを資本費用とよ
ぶ。この資本費用は、キャピタルチャージとして各省庁が負担することとし、省庁が保有する純資産に対
する一定割合(通常 6%)で算出する。社会資本・関連投資の維持によって将来的に発生する経費を計
上することで、中長期的に必要な予算を確保することが可能となる。
・ 具体的に予算項目との関係をみると、現在のところ非現金費目(non-cash costs)であるキャピタルチャ
ージ、減価償却費、将来の支出に対応した引当金等は、主に DEL ではなく AME に含まれている。これ
は、英国では資源予算を導入して初期の段階であることから、長期的な減価償却費等の把握が困難な
ためである。これらの非現金費目が、DEL に計上されるのは 2002 年の Spending Review からの予定で
ある。2004 年度の Budget によると、減価償却費(Depreciation)は DEL に含まれている。
a. 資源予算(The resource budget)
資源予算=管理費(発生主義ベース)
+資本費用(減価償却、キャピタルチャージ等)
+計画費(発生主義ベース)
+引当金
• 資源予算とは、省庁が計画を達成するのに必要な費用のことをいう。資源予算では、管理費(給料、
賃金、リース料、国有財産の保有に関するキャピタルチャージ等)と計画費を区分して計上してい
る。キャピタルチャージや減価償却等の資本費用は、資源予算編成の移行段階として、AME の
管理費に計上している。
b.資本予算(The capital budget)
資本予算=新規投資
-資本支出からの収入
+純貸付料
• 資本予算は新規の資本支出、資産の売却や純貸付料から構成されている。また、公営企業や外郭
団体に対する投資も含まれている。
10
図表 2005 年 Appropriation Act (貿易産業省分)
Estimate/Request for Resources
DEPARTMENT OF TRADE AND INDUSTRY
1. Increasing UK competitiveness
2. Increasing scientific excellence in the UK
and maximising its contribution to society
Net Resources
authorised for use
Grants out of the
Consolidated Fund
£
£
3,635,115,000
957,149,000 1,110,638,000 UK TRADE & INVESTMENT
1. To enhance the competitiveness of
companies in the UK through overseas trade
and investments; and ensure a continuing high
level of quality foreign direct investment
DEPARTMENT OF TRADE AND INDUSTRY:
UKAEA PENSION SCHEMES
1. Effective management of UKAEA pension
schemes
EXPORT CREDITS GUARANTEE
DEPARTMENT
1. To provide export finance assistance
2. To provide export credit guarantees and
OFFICE OF FAIR TRADING
1. Advancing and safeguarding the economic
interests of UK consumers
OFFICE OF GAS AND ELECTRICITY
MARKETS
1. Protecting consumers by regulating
monopolies and promoting competition in the
electricity and gas industry
2. Expenditure in connection with the Climate
Change levy
POSTAL SERVICES COMMISSION
1. Ensuring the provision of a universal postal
service at a uniform tariff, protecting
consumers and promoting competition
出所)appropriation act 2005 より
11
44,754,000
43,784,000 57,600,000
110,277,000 0
103,163,000 0 24,543,000
25,153,000 803,000
0 315,000 0
0 [予算策定の流れ]
図表 歳出予算編成の流れ
Business Plan
公共サービス合意
4月
2006年度(同左)
2005年度(同左)
2004年度(会計年度)
3月 4月
7月
3月
9月
4月
Public Service Agreements
サービス供給合意
Service Delivery Agreements
(省庁別投資戦略)
Departmental Investment Strategies
Spending Plan
3ヵ年度歳出予算
Budget 2007 (予)
(2007~2010DEL)
Budget 2005(Spending Review 2004)
(2005~2008DEL)
Budget
【大蔵省】
協議・調整
協議・調整
Main Estimates 2005
Main Estimates 2006(予) 予算見積
Main Estimates
【各省庁】
資源会計報告書をもとに作成 Main Estimates 2005
Supplementary
単年度歳出予算法
Appropriation Act
【議会】
Appropriation Act 2005(1) Appropriation Act 2006(予) Appropriation Act 2005(2) 予算執行
【各省庁】
12
(参考)一般的な単年度歳出予算の議会承認の流れ
各省庁が作成した予算が議会の承認を得るまでの流れは以下のとおりにまとめられる。
政府(各省庁)が予算を要求する
予算説明資料として、実行すべき政策の目標・目的、必要資源額・必要現金額、
予算執行の責任者等に関する情報を単年度歳出予算として議会に提示する。
議会は、提出された予算が果たして十分であるのかを考慮し、場合によっては
それらを十分検討することを選択する可能性もある。
もし議会の承認が得られれば、法案は議決され、先に要求していた資源額及び
現金額が一般会計から拠出される。
予算執行の権限を担保するために、議会は各省庁に対し、提示された単年度歳
出予算の必要現金額の範囲内で予算を優先的に執行する強力な権限を与える。
予算の執行が行われた後、資源額と現金額の両面において、当初議決した額を
超過していないかどうか、会計検査院によるチェックが行われる。
出所)HM Treasury 資料
13
3)予算の評価確認について(査定)
(1)予算策定時における評価
①現存資源(政策目標ごと)の再配分によって対応
•
一つの省庁で政策を実施するために必要な予算が足りなくなった場合は、RfR 間で資源を再配分す
ることが定められている。RfR 間で明確な関連性が必ずしも認められない場合は、予算の範囲内に
政策を抑える可能性もある。
•
一方、RfR 間の流用に向けては補正予算を要求していない。
②追加予算を申請
•
3 ヵ年の予算枠組み内で、追加予算が必要になった場合、各省庁に対して以下の四つの選択肢を
与えている。
:キャピタル予算からリソース予算への配分を変えること
:EYF の活用
:省庁共通基金(DUP:Departmental Unallocated Provision)の利用
:偶発事態に備えた基金に対して要求を出す
•
過去の予算執行の状況、想定していた額と実績額との乖離などは、Budget において比較できるよう
な実績値(数値)の整理が行われているものの、それに対する明確な評価はされていない(貿易産
業省 HP より)。
•
一方、各省庁及び全政府(2006 年度公表)は、個別に資源会計報告書を作成しており、この報告を
通じて、資源予算、資本予算等の執行状況が確認できるようになっている。
(2)資源会計報告書
•
各省庁が毎年作成する資源会計報告書(Resource Accounting)には、業務運営と財務上のレビュ
ーが示されている。
•
報告書には、資源要求項目(RfR)ごとに、資源予算の見積額と実際の消化予算額との差異につい
て言及している(評価はしておらず理由(=解釈?釈明?)に終始している感がある)。加えて、省庁
の年次報告書で示されているPSAのパフォーマンス評価の項目を引用しながら、政策的な評価を
記述するとともに、重点施策についていかに多くの予算が使われているかを、PSAと資源消費額(R
fRベース)との関係を示しながら説明している。
•
貿易産業省の資源会計報告書をみる限り、資源会計はPSAがいかに効率的に実現されたのかとい
う視点ではなく、PSA実現のためにいかに多くの予算が活用・消化されたのか、という視点に重きが
置かれているようである。この限りにおいて、PSAと資源会計報告書との因果関係(すなわち資源会
計報告書をベースにPSAを評価する)はあまりないと言えよう。
14
(3)会計上の視点からみた評価(議会へのアカウンタビリティ)
•
RAB が議会への説明責任を果たすため、会計検査院(Accounting Officer)の役割がある。
◎財政秩序を守ること
◎適切な会計を維持しつづけること
◎慎重で経済的な管理を行うこと
◎(支出に対して)浪費や無節操な行動を避けること
◎予算の効率的な利用をはかること
◎公的な資金及び資産が議会によって決められた政策目的・方向性に使われるようにすること
[Accounting Officer のアカウンタビリティ・フレームワークの概要]
3 year
Planning
Cycle
Resource
Budget
Capital
Budget
Accounting System
General Ledger
DEL/AME
Analysis of
Resources
Public
Service
Agreements
(PSA)
Departmental
Investment
Strategies
Resources
allocated
by RfR
Accounting
Policies
Assets
FAR
Resource
Accounts
Financial
Statements
Notes
to the
Accounts
Schedule
1 Resource
outturn
Schedule
2 OCS
Schedule
3 Balance
Sheet
Schedule
4 CFS
Payroll
Purchasing
Schedule 5
By Admin/
objective
Income
Forecast
Balance
Sheet Analysis
Service
Delivery
Agreements
(SDA)
Trial Balance
Strategic
Priorities
Reporting
Reconciliation/Control Totals
Spending
Review
[SR2002]
Annual
Cycle
Debt Management
Account
Estimates/other
judgements
Other admin
costs
15
Notes to the
Accounts/
Disclosure notes
3.政策評価と予算の連携
・
主として予算策定プロセスからみた政策目標及び評価と予算策定の関連性について明らかにする。
・
英国には、大きく2つの観点から政策評価と予算との連携を捉えることができる。
○評価結果の予算編成への活用について
○予算実施結果を政策評価として活用することについて
1)項目間の整合性について
・
英国における発生主義ベースによる公会計制度。資産に関する減価償却費及び資本投資に関する資
本コストが計上されるため、行政活動に関するコストがより正確に把握できる。
・
予算区分は、まず組織(省庁)別に分かれ、さらに、資源要求事項(Request for Resources:RfR)別に分
かれている。
・
PSA における目標の設定単位と、予算区分である RfR とは必ずしも一致していないため、目標と予算と
が一対一対応では示されない。
2)予算策定段階における政策目標との関連性について
・
予算年度は 4 月から次年度の 3 月までとなっており、議会の承認は通常7月に行われる(なお、2001 年
については、資源予算移行初年度のため早目の 5 月に承認された)。なお、議会承認されるまでの期
間(通常 4~7 月)は、暫定予算が組まれる。
3)事後的な評価項目との連携
・
目標の達成状況(政策評価の結果)と予算編成とを明確にリンクさせる仕組みは設けられていない。大
蔵省は各省庁の目標達成度を監視し、これを参考材料としつつ、その他の要素も踏まえながら、総合
的な判断で予算編成を行っている。実際、毎年の議定費予算書(appropriation act)では、ごく大項目
の資源要求項目しか掲載されておらず、PSA の細項目と必ずしも一致していない。
・
政策目標と予算との対応は示されていないが、決算との対応は示されている。決算書(資源会計報告
書)の附属資料である「Ⅴ.象徴の任務・目的別資源報告書(Resources by Departmantal Aims and
Objectives)」では、Objective ごとの決算額が示されている。このように、PSA はあくまで目標達成を評価
するための指標として位置づけられており、予算編成にフィードバックすることは志向されていない。
4)政策評価と予算との連携システムの総括
・
PSA は、①予算と同じターム(3 年度複数年度)で策定されていること、②目標設定の際に大蔵省との協
議を行うこと、③達成度を大蔵省が頻繁に監視していることなどから、PSA と予算との直接的なリンクは
ないが、大蔵省としては、PSA をある程度考慮して予算編成を行っていると想定される。
16
4.ケーススタディ(貿易産業省)にみる政策・予算連携の実態
1)予算・決算・評価の全体像(貿易産業省の視点から)
①政策目標
•
貿易産業省は、まず 5 ヵ年の戦略計画書(The Strategy)をもとに、中長期的な戦略(政策の柱)を決
定し、その柱をもとに、中長期的な政策目標(PSA)、投資戦略(DIS)等を決定する。PSA や DIS は、
貿易産業省の3ヵ年の業務計画書(Business Plan)にて示され、同時に RfR(必要資源予算項目)と
必要資源予算額の見積りがなされる。この Business Plan を毎年の予算額に換算したのが Main
Estimates であり、ここではじめて現金主義予算が作成される。
②予算執行後の確認・評価段階
•
予算執行の確認・評価は、大きく2つの手段によって行われる。一つは、政策評価の観点からみた
報告書であり、大部分が毎年発行される Departmental Report で報告される。Departmental Report
には、業務計画書(Business Plan)で設定した PSA 等の成果確認が行われるとともに、必要資源額
の実績、翌年以降の必要資源額(見積り)等のデータも詳細に記載されている。もう一つは、会計の
観点からみた報告書である。The Stationaly Office が策定した Resource Accounting(資源会計報告
書)であり、もう一つは会計検査院が作成する Audit Report である。
③確認・評価の活用段階
•
資源会計及び政策評価の結果が、予算、人事、計画等にどのように反映されているか、現時点で明
らかになっていない。
17
図表 英国における予算・決算・活用方向のフロー
Budget
事前評価
事前評価
予算
予算
計画
計画
Main
Estimates(毎年)
決算
決算
Audit
Report
Business
Plan(3ヶ年)
会計
会計
大蔵省
総務庁
(HM Treasury) (Stationery Office)
Resource
Account(毎年)
政策評価
Appropriation
(毎年)
財務管理
Spending
Review(3ヵ年)
評価
評価
事後評価
事後評価
各省庁
(例:DTI)
会計検査院
(Audit)
事前評価
事前評価
人事
(次年度)
人事(次年度)
18
計画
(次年度)
計画(次年度)
政策評価
財務管理
予算
(次年度)
予算(次年度)
The Strategy
(5ヵ年)
Departmental
Report
(毎年)
2)予算策定面での実行プロセス及び関連文書の内容
政策決定から予算編成を策定するまでの必要な文書(資料)の概要は以下のとおりである。
①省庁長期戦略
•
省庁が今後中長期的(5 年間)に構ずべき戦略について“貿易産業省戦略―DTI-The Strategy”と
してとりまとめている。この戦略は、貿易産業省が今後 5 年間で達成すべき大枠の目標とそれを実現
するための手段・組織像が明示され、この戦略をもとに貿易産業省が政策・施策面で実施すべき事
項が盛り込まれた 5 ヵ年計画“DTI-five years program”が策定されている。戦略と五ヵ年計画はセッ
トで提示されているようであるが重複点が多い。
•
2003 年 9 月に公開された DTI 戦略では、省が掲げる「全ての人々に繁栄を」という大望の達成に関
する全体的な枠組みが引き続き提供されている。確かな根拠に基づいて構築された戦略(the
Strategy)では、全体として経済における生産性の向上を重視する優先事項が識別され、DTI が最
大の影響を与え得る分野に対応する。省が目指すものは、可能な限り直接貢献し、独自の達成が不
可能な場合には提携先と共同で結果を生み出すことである。
•
そして、戦略(the Strategy)を基に構築された DTI の 5 カ年計画「知識による富の創造」は 2004 年
11 月に公開された。計画(the Programme)では、戦略(the Strategy)の優先事項があらためて主張
され、急速な新興経済と新技術による挑戦を満たす強力かつ近代的な知識ベースの経済を英国が
どのように発展させるのかについて述べられている。イノベーションレポート、今後 10 年間の科学技
術およびイノベーションの取り組み、2004 年歳出報告の確定、効率計画など、今後の主要な発展に
関する更なる詳細が含まれている。
図表 貿易産業省五カ年計画の目次
貿易産業省 5 カ年計画(Department of Trade and Industry - Five year programme)
序文(Foreword)
概要(Summary)
Chapter 1. 科学技術により将来の産業を刺激する(Stimulating the industries of the future
through science and technology)
Chapter 2. 産業との新しい協力関係(A new partnership with industry)
Chapter 3. 規制への新しいアプローチ(A new approach to regulation)
Chapter 4. 欧州改革への新しい推進力(A new drive for reform in Europe)
Chapter 5. 新しい DTI(A new DTI)
19
図表 貿易産業省―戦略文書の項目
DTI‐戦略(DTI - The Strategy)
序文(Foreword)
はじめに(Introduction)
挑戦(The challenge)
-
今後 5 年間に世界はどのような変化を遂げるか?(How will the world change over the next
five years?)
-
新たな競争圧力はどこから発生するか?(Where will new competitive pressures come
from?)
-
ベストセラーとなる新製品とサービスは何か?(What will be the new best-selling products
and services?)
-
そのために使用される新技術は何か?今後直面する環境の変化は何か?(What new
technologies will be used to make them and what new environmental challenges will we
face?)
今後の予定(What we will do)
-
DTI は今後 5 年間、主要な分野における生産性の向上を優先する。(Over the next five
years, the DTI will be prioritizing its efforts on enhancing productivity in the following key
areas:)
実行手段(How we will do it)
-
達成目標は、「全ての人々に繁栄を」。ただし、最大の効果をもたらすには、DTI に適切な人
員とプロセスが必要。(We know what we want to achieve – ‘Prosperity for All’. But DTI
needs to have the right people and processes if we are going to make the greatest
impact.)
-
DTI の目標達成に向けた将来の 3 原則:顧客重視、価値の高いサービス、継続的改善。(In
future, three principles will guide DTI delivery: Customer Focus, Value for Money and
Continuous Improvement.)
-
実行する全ておよび企業サービスにこれらの 3 原則を採用することにより、顧客にはより良い
サービス、そして納税者にはより価値の高いサービスを提供すると共に、業績を継続的に改
善することを学ぶ。(By applying these principles to everything we deliver, and to our own
corporate services, we will serve our customers better, provide the taxpayer with greater
value for money and learn from experience to continually improve our performance.)
URL:http://www.dti.gov.uk/files/file12626.pdf
(長期戦略)
URL:http://www.dti.gov.uk/files/file12626.pdf
(5 ヵ年計画)
URL:http://www.dti.gov.uk/files/file27454.pdf
(投資計画)
20
②事業計画(business plan)
•
“ Department Strategy ” に 示 さ れ た 戦 略 を 実 現 す る 中 期 的 な 政 策 目 標 と し て 、 業 務 報 告 書
“Business Plan” が策定されている。戦略(the Strategy)と 5 カ年計画(Five Year Programme)にあ
る戦略的優先事項、原則および活動は、省の事業立案によって導入される。事業計画(Business
Plan)では、省の運営目標と優先活動が述べられている。本報告書では、優先活動を含む 2004-07
年 DTI 事業計画の計画に対する省の実績が説明されている。
•
“Business Plan”の最大の特徴は、具体的な政策目標が提示されているとともに、具体的な必要資源
額(毎年の予算のもとになっているもの)が示されていること、の 2 点である。具体的には、Aim-
Objective ごとの必要予算額が DEL、AME の区分ごとに示されている。
•
この Business Plan では、Objective 項目ごとに PSA 指標を設定しているが、Objective と PSA の関係
は 1 対1ではなく、Objective に対して PSA が明示されていないものもあるなど、明確な対応関係はな
い。
•
一方、この Business Plan にしたがって、2005 年度以降の中長期予算の枠組みが Spending Plan 及
び Budget によって決められているようである。しかしながら、毎年の予算について、この Budget から
どのように現金化しているかは不明である。以前は Business Plan ならびに Budget において毎年の
予算書に掲載されている RfR が示されていたが、2005 年度時点では掲載されていない(連携が十分
になされていない可能性がある)。
•
実際、2005 年度の貿易産業省の予算額は、Spending Plan 及び Budget における当該年度の見積
額と大きく乖離している。
•
省の業績管理の一環として、財務省との公共サービス協定(PSA)の枠組みの中で、事業計画の達
成度が四半期ごとに監視される。2005/06 年中に理事会により最も綿密に監視される優先活動は以
下のとおり。
-エネルギー供給の安全保障
-今後 10 年間の科学技術およびイノベーションの投資に対する取り組みの導入
-国および地域提携の発展の進展
-EU 議長国による市場開放
21
図表 DTI の Bussiness plan 内容(抜粋)
中期的な到達目標
のイメージを記述
目的(objective)
ごとに 3 ヵ年の資
源予算項目を掲示
(出所)2005-2008 の DTI Bussiness Plan (http://www.dti.gov.uk/files/file14169.pdf)
22
図表 2004-2007 年 DTI 事業計画(DTI BUSINESS PLAN 2004-2007)の目次
目次
1. はじめに(Introduction)
2. 成功するビジネスの支援(Supporting Successful Business)
3. 世界的な科学技術とイノベーションの促進(Promoting World-class Science and Innovation)
4. 公正市場の確保(Ensuring Fair Markets)
5. 債務資産管理、輸出規制および拡散防止(Liabilities and Assets Management, Export Control and
Non-proliferation)
6. 業務方針(The way we work)
付録(Annexes)
A: 2004/05 年用事業計画目標および公共サービス協定(PSA)目標(Business Plan Objectives for 2004/05
and Relevant Public Service Agreement (PSA) Targets)
B: 目標達成計画概要(Summary of Objective Delivery Plans)
C: 支出用途(How We are Going to Spend the Money)
D: 業績管理:次会計年度用省別スコアカード(Managing our Performance: Departmental Scorecard for
Forthcoming Financial Year)
図表 「付録 A(Annex A)」の記載内容
2004/05 年用事業計画目標および公共サービス協定(PSA)目標
(Business Plan Objectives for 2004/05 and Relevant Public Service Agreement (PSA) Targets)
事業計画目標一覧
Title of Business Plan Objective
OBJECTIVE 1:
業績を向上させて国内外で競争力を向上させ
る。
Improve business performance to raise
competitiveness at home and abroad.
関連する PSA 目標一覧
Title of Relevant PSA Target
PSA Target 1:
競争力を向上させて米国、フランスおよびドイツとの生産性格差を縮小
し、景気循環を通じて英国の生産性を向上させるという政府の長期目標
の進展を 2006 年までに明らかにする。財務省との共同目標
Demonstrate progress by 2006 on the Government’s long-term
objective of raising the rate of UK productivity growth over the
economic cycle, improving competitiveness and narrowing the
productivity gap with the US, France and Germany. Joint target with HM
Treasury
PSA Target 6:
(i) 起業を目指す人数の増加、(ii) 小企業の全体的な生産性の向上、(iii)
恵まれない地域社会における企業の増加により、あらゆる種類の小企業
が繁栄してその可能性を引き伸ばすことができる企業社会の構築を支援
する
Help to build an enterprise society in which small firms of all kinds thrive
and achieve their potential, with (i) an increase in the number of people
considering going into business, (ii) an improvement in the overall
productivity of small firms and (iii) more enterprise in disadvantaged
communities
PSA Target 8:
事業理解を国際的に比較測定し、情報および通信技術を利用することに
よって判断される世界で e ビジネスに最適な場所として、ブロードバンド市
場の規模と競争力で英国の地位を築き上げる
Make the UK the best place in the world for e-business, with an
extensive and competitive broadband market, judged using international
comparative measures of business uptake and use of information and
communication techniques
23
OBJECTIVE 2:
効果的な知識移転を促進し、英国のイノベー
ション能力の向上させると共に、科学と新規お
よび既存の技術の事業開発を加速させる。
Promote effective transfer of knowledge to
improve UK innovation performance and
accelerate business exploitation of science
and new and existing technologies.
OBJECTIVE 3:
力があり、保護を受けた消費者を競争体制の
中心に配置する。
Place empowered and protected consumers at
the heart of an effective competition regime.
OBJECTIVE 4:
環境への影響を最低限に抑えて社会的目的
を達成しながら、競争市場を通じて手ごろな価
格によるエネルギー供給の継続と安全保障を
確保する。
Ensure the continuity and security of energy
supply
at
affordable
prices
through
competitive markets, whilst minimizing
environmental impacts and delivering social
objectives.
OBJECTIVE 5:
欧州および世界的に自由かつ公正な市場を
拡大する。
Extend free and fair markets across Europe
and throughout the world.
OBJECTIVE 6:
あらゆる地域社会および人々を受け入れる企
業社会を構築する。
Build an enterprise society, embracing all
communities and groups of people.
OBJECTIVE 7:
PSA Target 11:
英国の取引顧客の業績において大幅な改善を行う。また、外国直接投資
で EU 内の主要な場所として英国の地位を安定させる。FCO との共同目
標
Deliver a measurable improvement in the business performance of Trade
Partners UK’s customers; and maintain the UK as the prime location in
the EU for foreign direct investment. Joint target with FCO
PSA Target 2:
英国の理工学基盤に関連する国際的な業績、科学基盤の開発、および
英国経済の全体的なイノベーション能力を向上させる
Improve the relative international performance of the UK’s science and
engineering base, the exploitation of the science base, and the overall
innovation performance of the UK economy
PSA Target 3:
力のある消費者を効果的な競争体制の中心に配置し、競争、消費者の
権利拡大および保護の英国水準を 2006 年までに最高水準まで引き上
げ、専門家の評価およびその他の証拠で体制の効果を測定することによ
り、関連する規制当局と協力して消費者と事業者に公正な取引を確保す
る
Place empowered consumers at the heart of an effective competition
regime, bringing UK levels of competition, consumer empowerment and
protection up to the level of the best by 2006, measuring the
effectiveness of the regime by peer review and other evidence, to ensure
a fair deal for consumers and business working in collaboration with the
relevant regulatory agencies
PSA Target 4:
エネルギー安全保障の維持、燃料貧困対策目標の達成を順調に成し遂
げながら、燃料 EU および G7 で最も競争の激しいエネルギー市場の上位
3 位に毎年英国が入ることを確保する。また、(DEFRA との共同目標)省
エネ技術を駆使するなど、環境および天然資源の持続可能な利用を改
善し、温室効果ガスの排出量を 1990 年の水準から 12.5%削減、また
2010 年までに二酸化炭素排出量の 20%削減を目指す
Ensure the UK ranks in the top 3 most competitive energy markets in
the EU and G7 in each year, whilst on course to maintain energy
security, to achieve fuel poverty objectives; and (Joint target with
DEFRA) improve the environment and the sustainable use of natural
resources, including through the use of energy saving technologies, to
help to reduce greenhouse gas emissions by 12.5% from 1990 levels and
moving towards a 20% reduction in carbon dioxide emissions by 2010
PSA Target 5:
英国および発展途上国にとって取引の機会の向上に結びつく貿易障壁
の大幅な削減に向けて 2005 年までに合意を確保する。DfID)および FCO
との共同目標
Secure agreement by 2005 to a significant reduction in trade barriers
leading to improved trading opportunities for the UK and developing
countries. Joint target with DfID and FCO
PSA Target 6:
(i) 起業を目指す人数の増加、(ii) 小企業の全体的な生産性の向上、(iii)
恵まれない地域社会における企業の増加により、あらゆる種類の小企業
が繁栄してその可能性を引き伸ばすことができる企業社会の構築を支援
する
Help to build an enterprise society in which small firms of all kinds thrive
and achieve their potential, with (i) an increase in the number of people
considering going into business, (ii) an improvement in the overall
productivity of small firms and (iii) more enterprise in disadvantaged
communities
PSA Target 7:
24
英国の全地域における経済活動の持続可能
な改善により、地域間に存在する成長率の格
差を補いながら、地域経済を強化する。
Strengthen regional economies through
sustainable improvements in the economic
performance of all English regions and closing
the gap in growth rates between the regions.
OBJECTIVE 8:
英国の理工学に関連する業績および政府と
社会によるその利用を向上させる。
Improve the relative performance of UK
science and engineering and its use by
Government and society.
OBJECTIVE 9:
多様で柔軟な労働市場の発展、および高い
業績を誇る職場の育成を促す取り組み方の増
加を図り、スキルレベルとその需要を向上させ
て、職場における可能性を最大化させる。さら
に、職場以外で、政府全体および国際的に男
女平等と多様性を促進する。
Maximise potential in the workplace by raising
the level of and demand for skills, developing
a diverse and flexible labour market, and
increasing the take-up of ways of working
that foster high performance workplaces.
Additionally, outside the workplace, to
promote gender equality and diversity across
Government and internationally.
OBJECTIVE 10:
事業とイノベーションの投資に向けた融資へ
のアクセスを改善して企業と生産性の向上を
支援する。
Improve access to finance for investment in
business and innovation to support enterprise
and productivity growth.
OBJECTIVE 11:
エネルギー白書で掲げる低炭素の目的達成
および持続可能な発展への事業貢献の向上
を通じて、持続可能性を促進する。
Promote sustainability, through the delivery
of the low carbon aims of the Energy White
Paper and improving the contribution of
business to sustainable development.
OBJECTIVE 12:
投資家、事業者、その他利害関係者に信頼を
与えて、企業と支払不能に対する活動の効果
的な枠組みを促進、達成する。
Promote and deliver an effective framework
2006 年までに業績を向上させる対策を明確にして、これらの対策に対す
る進展を報告することにより、英国の全地域における経済活動の持続可
能な改善を行い、地域間の成長率に根強く存在する格差を長期的に削
減する。ODPM および財務省との共同目標
Make sustainable improvements in the economic performance of all
English regions and over the long term reduce the persistent gap in
growth rates between the regions, defining measures to improve
performance and reporting progress against these measures by 2006.
Joint target with ODPM and HM Treasury
PSA Target 2:
英国の理工学基盤に関連する国際的な業績、科学基盤の開発、および
英国経済の全体的なイノベーション能力を向上させる
Improve the relative international performance of the UK’s science and
engineering base, the exploitation of the science base, and the overall
innovation performance of the UK economy
PSA Target 9:
2006 年までに全省庁と協力して、均等および社会的包摂で政府が掲げ
る目標の一環としてさまざまな指標で男女平等の大幅な改善をもたらす
By 2006, working with all departments, bring about measurable
improvements in gender equality across a range of indicators, as part of
the Government’s objectives on equality and social inclusion
PSA Target 10:
2006 年までの 3 年間で、景気循環を考慮しながら雇用率を上昇させると
共に、全体的な雇用率と少数民族の雇用率との格差を大幅に縮小する
In the three years to 2006, taking account of the economic cycle,
increase the employment rate and significantly reduce the difference
between the overall employment rate and the employment rate of ethnic
minorities
PSA Target 6:
(i) 起業を目指す人数の増加、(ii) 小企業の全体的な生産性の向上、(iii)
恵まれない地域社会における企業の増加により、あらゆる種類の小企業
が繁栄してその可能性を引き伸ばすことができる企業社会の構築を支援
する
Help to build an enterprise society in which small firms of all kinds thrive
and achieve their potential, with (i) an increase in the number of people
considering going into business, (ii) an improvement in the overall
productivity of small firms and (iii) more enterprise in disadvantaged
communities
PSA Target 4:
エネルギー安全保障の維持、燃料貧困対策目標の達成を順調に成し遂
げながら、燃料 EU および G7 で最も競争の激しいエネルギー市場の上位
3 位に毎年英国が入ることを確保する。また、(DEFRA との共同目標)省
エネ技術を駆使するなど、環境および天然資源の持続可能な利用を改
善し、温室効果ガスの排出量を 1990 年の水準から 12.5%削減、また
2010 年までに二酸化炭素排出量の 20%削減を目指す
Ensure the UK ranks in the top 3 most competitive energy markets in
the EU and G7 in each year, whilst on course to maintain energy
security, to achieve fuel poverty objectives; and (Joint target with
DEFRA) improve the environment and the sustainable use of natural
resources, including through the use of energy saving technologies, to
help to reduce greenhouse gas emissions by 12.5% from 1990 levels and
moving towards a 20% reduction in carbon dioxide emissions by 2010
該当する PSA 目標は無い
No specific PSA Target
25
for corporate and insolvency activity, giving
confidence to investors, business and other
stakeholders.
OBJECTIVE 13:
エネルギーおよびその他資産と負債の安全で
経済的、効率的、効果的な管理。
Safe, economic, efficient and effective
management
of
energy
and
other
Departmental assets and liabilities.
OBJECTIVE 14:
原子力安全保障と安全性、および兵器とその
他戦略物資の拡散防止に向けた効果的かつ
効率的な DTI の貢献を保証する。
Ensure nuclear security and safety and
effective and efficient DTI contribution to
preventing proliferation of arms and other
strategic goods.
業務方針
The Way We Work
該当する PSA 目標は無い
No specific PSA Target
該当する PSA 目標は無い
No specific PSA Target
PSA Target 12:
複数の指標による測定で、価値の高いサービスを省全体で年 2.5%向上
させる。(注:この PSA 目標は前述の全目標を対象に実行中)
Achieve value for money improvements of 2.5% a year across the
Department as measured by a basket of indicators. (Note: we are
implementing this target across all the above objectives.)
(出所)Spending Review
http://www.hm-treasury.gov.uk/Spending_Review/Spending_Review_2000/Spending_Review_Report/spend_sr00_repcha
p15.cfm
③アニュアルレポート(Department of Trade and Industry - Departmental Report 2005)
•
アニュアルレポートは、事業計画の成果報告書と、今後の事業計画を結びつける役割を担ってい
る。
•
具体的な内容としては、まずセクション A(目的と目標)の第 1 章(Chapter 1)では、省が掲げる目的と
目標が要約され、その達成の方法が述べられている。第 2 章(Chapter 2)では、公共サービス協定
(PSA)の目標達成における進展について取り上げ、2004 年歳出報告の一環として合意された PSA
目標がリストアップされている。
•
セクション B(事業計画と業績)では、2005/06 年用事業目標および 2004/05 年の業績が説明されて
いる。各章では、2004-07 年 DTI 事業計画の付録 B で述べられている計画に対して、わかりやすい
ように主題の分野および 2005/06 年用の計画ごとにまとめて報告を行っている。可能な限り、執行庁
と公共体の業務は、関連する事業目標の章に組み込まれているが、第 16 章(Chapter 16)ではこれ
らの活動は要約され、目標に対するそれぞれの業績が述べられている。
•
セクション C(省の管理)では、省の構成および管理方法について、職員、職場、ICT の使用、財務
管理、コーポレートガバナンスなどの情報も交えて詳述されている。このセクションでは、貿易産業省
の戦略、5 カ年計画および事業計画の導入を支援する企業サービス、プロセスおよび活動について
取り上げ、省の効率的な達成への取り組みが報告されている。
2005-2008 の DTI Departmental Report
URL:http://www.dti.gov.uk/files/file14169.pdf
26
図表 DTI の Departmental Report 目次(抜粋)
27
図表 DTI の Departmental Report 概要[戦略=Strategy](抜粋)
28
図表 DTI の Departmental Report 概要[PSA ターゲットの成果確認:PSA1](抜粋)
PSA ターゲットの達成度を詳述
(指標を説明するにふさわしい数値を提示)
PSA ターゲット(政策目標)の詳細記述
29
図表 DTI の Departmental Report 概要[PSA ターゲットの成果確認:PSA2の一部](抜粋)
PSA ターゲットの達成度を詳述
(指標を説明するにふさわしい数値を提示)
30
PSA ターゲット(政策目標)の詳細記述
④資源会計報告書 (Resource Acconnt)
•
毎年の省庁の目標、活動内容、資源要求項目ごとに変化した資源額等が記載されている。
•
貿易産業省の資源会計報告書には、主に以下の項目が記載されている。
○財政運営のレビュー (Operating and Financial Review)
・会計報告書の前提・範囲
:DTI の目的・目標 [aim ― objective]
:会計報告書をとりまとめるにあたっての組織構造
:各組織のミッションと責任内容
○会計責任者の記述
(Statement of Accounting officer Responsibility)
○内部監査に関する記述(Statement of Internal Control)
○貿易産業省(DTI)の連結資源会計の概要
:スケジュール1
-
資源使用結果要約
:スケジュール2 - 運営費用計算書
:スケジュール3 - 貸借対照表
:スケジュール4 - キャッシュフロー計算書
:スケジュール5 - 省庁目標別資源報告書
[貿易産業省(DTI)の 2004-2005 資源会計報告書]
URL:http://www.dti.gov.uk/files/file17806.pdf
31
32
33
34
35
36
(3)貿易産業省にみる予算と政策評価との連携
•
以上を見る限り、省庁の戦略(Business Plan)と政策評価(PSA)、省庁の戦略(Business Plan)と中長
期的予算見積り(Spending Plan 及び Budget)については緩やかな連携が認められるものの、
政策評価と予算見積りがダイレクトに連携しているとは判断しにくい面がある。
•
政策評価の結果が予算に反映されるのではなく、予算の獲得の代わりに政策目標が約束されるとい
う位置づけである。政策目標の達成状況は、当該省庁の人事(および幹部の若干の報酬)には影響
を与えるものの、予算そのものにはほとんど影響を及ぼさない。達成状況を判断するには、その要因
分析が必要(それが政策によるものなのか、不可抗力によるものか、組織の執行能力等によるものな
のか・・・)であり、中長期的なタームでしか変動しない指標が多く含まれる貿易産業省(DTI)の PSA
だけを考慮しても予算に反映させる具体的な方策を講じることができないからである。
•
資源活用の実態については、“アニュアルレポート(Departmental Report)”や“資源会計報告書
(Resource Account)”に示されているものの、その数値を活用した政策運用や組織管理の動きは明
確にみられない。
•
このように、政策評価と予算を項目レベルで統一させる動きはみられるが、政策実施の結果として示
された政策評価や資源会計を明確に利活用する動きは少ないものと判断される。
37
図表 省庁計画、予算、政策評価の関係図 (貿易産業省)
出所)Spending Review(2004)、Budget(2005)、DTI Business Plan(2006-2008)等より作成
38
5.連携の実態・課題の整理
•
政府全体を見渡しても、RAB と PSA とは表面上連携しているようなシステムであるが、実質的には相互に
密接な連携はないとの意見が大半であった。連携が実質的に難しい理由として、以下の3点が考えられ
る。
①政策評価指標と予算額との不一致
•
財務省ヒアリングによると、例えば PSA で国家資格合格率の高さを目標とした政策(教育政策)があ
ったとする。仮に過去すでに高い合格率を残していたから、今後更に多くの資源(予算)を配分する
としても、合格率が上昇するかどうかわからない(むしろ合格率が高ければ高いほど伸びの可能性は
逓減される必要がある)。
②景気動向との関連性
•
3 ヵ年という期間を、各省庁が裁量をもって政策決定するのに適切な期間として歓迎している。しかし
ながら、3 ヵ年の間に歳入が減少するなど、急速に財政状況が悪化した場合、既に取り決めた 3 ヵ年
予算を財務省のスタンスで簡単に削減できない。このため、景気が順調である場合は有効であるが、
景気が悪化した場合、弾力性を欠く結果になってしまっている。近年は、財政調整の目的で、各省
庁に対する財務省の介入度が日増しに高まっている。裁量権を与えることに総論として歓迎しては
いるが、その一方で管理も強化しなければならないという二律背反の命題に直面している状況にあ
った。
•
3 年間の予算は、各省庁の裁量権が高まるという点で歓迎すべきであるが、財政状況が厳しくなる場
合には、各省庁に対して徹底した管理が必要になるであろう。かつて各省庁にチャレンジファンドを
認めていたが、現在ではやめている。歳出計画を立ててもらう際にも、いかに費用を節約してもらうか、
という交渉が中心になっている。
39
1)成功要因と失敗要因の整理・検討
(1)失敗要因
•
政策評価を実施するうえで重要な PSA ごとの予算が整理されてはいるものの、予算を決定するうえ
で必要な費目や項目が、PSA と必ずしもマッチしていないため、政策評価の結果を予算執行の状況
で確認できない状況になっている。
•
また予算執行の状況と政策評価の状況を相互に比較することがなく、総合的に判断しにくい仕組
み・システムとなっている。
•
予算制度に比べて政策の成果を判断できる期間に時間を要し(予算制度と政策評価サイクルのミス
マッチ)政策評価結果の予算への反映、予算制度成果の評価への反映がそれぞれ難しい。
•
省庁体制や反映プロセスの不一致、制度設計の複雑性、インセンティブの不十分さ等については各
省庁からみた批判の論点である。
•
PDCA サイクルの不一致、目標単位と目標指標、評価の視点、評価主体の具体性欠如等について
も指摘されており、このことが評価結果を予算等にタイムリーに反映することを難しくしている要因で
もなっている。
•
一つは、RAB を遂行するにあたって、包括的歳出計画、Supply Estimates、Resource Account など
数多くの書類を作成する必要があり、いささか議会が混乱してきている点である。
•
二つは、ナショナルアカウントと整合しておらず、財政管理がしにくい点である。資源予算にはキャッ
シュ以外の要素が含まれていることから、現金ベースで毎年の財政収支がどのような状況にあるの
か正確につかみにくいためである。
(2)成功要因
•
政策評価の成果は、短期的には判断しにくいものも多い。複数年度予算の設定することで、中長期
的視点から予算へ反映を行うことが重要である。また政策の必要資源額を算定するうえで発生主義
ベースの予算にしておくことも重要である。
•
また、単に省庁内部で評価結果を活用することだけでなく、議会との関連性、予算統制の重要性等
を強めたことが結果として予算と政策との連携を半ば強制的に進めることにつながったことも見逃せ
ない。
40
2)連携を進めるうえでクリアすべき課題
(1)予算面での課題
•
予算書の構造・記載方法等を改善していくことである。例えば予算項目の改正、予算費目の見直し、
記載事項見直し等を進め、可能な限り政策評価項目を実現する資源・資本との関係を明確にしてい
くことが課題である。
•
予算書提出のスケジュールの改定を検討することが課題である。現行の制度を前提とすると、政策
評価報告書が提出されても、予算策定時期までには時間があり、結果を十分反映できない点がある。
政策評価書の提出を予算策定時期にあわせる 等の調整が必要である。
•
予算におけるシーリングの改定・撤廃を行うべきである。現行のような増分主義、一律一定削減 等
については、政策評価を活用するインセンティブを損なう結果になりかねない。
•
予算執行の弾力化を行うことである。予算繰越の認可、費用間(項目間)の流用の認可 等を認める
ことで、評価結果を予算に有機的に反映しやすくなるからである。
(2)評価・監査面での課題
•
(政策&財政)評価項目の改善、新たな評価項目の追加することである。例えば、分野横断型の政
策効果(評価)の充実、会計検査、各省政策評価等との整合性確保等である。
•
会計書の記載方法の見直しを図ることである。会計項目の改正、会計基準の見直し→発生主義導
入
•
等)
会計監査院機能等の強化・見直しを進め、予算の使途がその目的と照らし合わせて適正なものかど
うか十分にチェックするような仕組を整えるべきである。
•
省庁内における内部管理の充実・強化を整えるべきである。監査制度の充実などが考えられる。
•
国会によるチェック機能を強化することが課題である。単に予算の承認だけでなく、政策目標に必要
な予算が十分消化されたのか、また政策評価の実現に向けてどの程度効率的な資源活用が行われ
たのか等について、第三者の監視を促進されるべきである。
41
Ⅱ.アメリカにおける政策評価と予算の連携
Ⅱ-1.連邦政府
1.政策評価制度1の概要
•
現在、アメリカ連邦政府において実施されている政策評価制度には、「政府業績成果法(Government
Performance and Results Act:GPRA)」に基づく一連の政策評価の取組みと、「プログラム評価採点
ツール(Program Assessment Rating Tool:PART)」によるプログラム評価の2つがある。
1)GPRA 以前の政策評価制度
•
連邦政府においては、GPRA 以前にも、フーバー委員会の勧告に基づく 1950 年の「業績予算
(performance budgeting)」導入を皮切りに、PPBS、目標管理(MBO)、ゼロベース予算(ZBB)とその
時々で最新の考え方を取り入れた制度が導入されてきたが、どれも定着しなかった。
(1)PPBS(Planning,Programming and Budgeting System)
•
従来、別々に行われていた計画策定と予算策定を統合するシステム。ランド研究所が開発し、国防省
で最初に導入。1965 年にジョンソン政権によって全省庁で導入された。
•
PPBS は、以下のプロセスで実施する。
①計画策定(Planning)
組織が達成すべき目的を明らかにした上で、その目的を達成するための手段であるプログラ
ム(事業)をリストアップする。
②プログラミング(Programmimg)
各プログラムの目的について具体的な目標水準(アウトプット)を設定し、その実現に必要な資
金・人員・資材等のリソース(インプット)を、時間的に割り付ける。
③予算編成(Budgeting)
リソースを価格評価し、組織が負担すべき費用の総額を計算する。
•
PPBS では「プログラム記述書(Program Memorandam)」「分析記述書(Special Study)」「費用計画書
(Program and Financial Plan)」の作成が義務づけられているが、その中では、費用便益分析の結果を
掲載すること、過去との比較を行うことが求められている。
•
大野(1985)によると、PPBS には、以下のようなメリットおよび問題点がある。
【メリット】
○計画策定時点でコスト意識を持つようになること
○予算編成に社会情勢が反映されやすいこと
○マネジメントサイクルが定着すること
1
アメリカの政策評価制度に関しては、George Mason 大学 Mercatus Institute の Maurice Mctigue 氏が詳しい。同氏はニ
ュージーランドでの業績予算の導入にも関わっている。
42
【問題点】
○分野によっては効果の定量的な把握が難しいこと
○リーダーの強力なリーダーシップがないと、システムが組織に定着しにくいこと
○ペーパーワークの負担が大きいこと
•
PPBS は、予算の政治的なプロセスをトップダウンで律しようとする仕組みであり、議会からの反発が強
く、結果的に 1971 年に廃止された。
(2)目標管理(MBO:Management by Objectives)
•
組織の全階層において、構成員一人ひとりが、上司との話し合いによって目標設定を行い、その達成
度で、各人の貢献度を計測する管理システム。もともと民間企業で導入されていた手法を、1973 年に
ニクソン政権が連邦政府に導入したもの。(1975 年に廃止)
•
大野(1985)によると、MBO には、以下のようなメリットおよび問題点がある。
【メリット】
○組織構成員各人のモチベーションが高まること
○現実的な目標設定がされやすいこと
○自主的な管理の促進が期待できること
【問題点】
○垂直的な関係での目標の共有はなされるが、水平的な関係での部門間の調整がされにくいこ
と
○目標達成のために、非効率もしくは不正な手段がとられる可能性があること
○システムの定着に時間を要すること
○短期的な目標に重点が置かれやすいこと
•
MBO を機能させるためには、個人に対するインセンティブやペナルティの仕組みが必要。このため、
公共組織よりも民間企業の方が適している。
(3)ゼロベース予算(ZBB:Zero-Based Budgeting)
•
予算編成において、前年度の実績を積算基礎とするのをやめ、毎年、(新規・既存の区別なく)全ての
プログラムに対して一定の基準に基づいて優先順位を付け、それに基づいて予算配分を行う仕組み。
予算の増分主義(incrementalism)に歯止めをかけることが目的。これも民間で導入されていた手法を、
1977 年にカーター政権が導入したもの。(1994 年に廃止)
•
ZBB は以下のプロセスで実施する。
①意思決定ユニット(decision unit)の決定
組織の最小単位である「意思決定ユニット」を決める。ユニットの規模は、4~9のプロジェクトを
所管する程度。
②意思決定ユニットにおけるプロジェクトの存在価値検討・優先順位づけ
各ユニットで、所管するプロジェクトの存在価値を検討し、優先順位を決定する。あわせて、プロ
ジェクトの実施に必要なリソース(費用を含む)と期待される結果を明示。
③組織全体におけるプロジェクトの優先順位付け
43
②で決定した優先順位を、より上位の組織階層で再検討。これを繰り返し、組織全体での優先
順位を決定する。
④予算編成
③で決定した優先順位に従って予算を配分する。
•
大野(1985)によると、ZBB には、以下のようなメリットおよび問題点がある。
【メリット】
○予算の合理的な削減、資源の再配分が可能になること
○トップ管理者層が、下部の細かい動きを把握できるようになること
○予算作成にライン(現場)が参加できること
【問題点】
○膨大なコミュニケーション量、事務量が求められること
○ボトムアップの管理方式のため、組織全体の目標が浸透しにくいこと
○大きな部門間のプライオリティがつかないこと
○ユニットレベルで、費用を高く見積りがちになること
○正常な活動を維持していくための最低限必要な費用が確保できない可能性があること
○組織上位では、順位付けの対象となるプロジェクトが膨大になること
○順位付けの考え方が明確でないこと
•
実際には、従来の慣習を根底から洗い直すことは難しく、前年度予算枠の 65%~75%の範囲にある優
先順位の高いプロジェクトは意思決定ユニットの意見をそのまま通すこととしたため、予算の増分主
義は概ね継続することになってしまった。
44
2)政府業績成果法(GPRA:Government Performance and Results Act)
(1)GPRA の概要
•
GPRA は、1993 年、民主党クリントン政権下において、財政赤字の削減を目的として制度化された。連
邦政府においては、これまでも何度か政策評価の取組みは行われてきたが、すべて大統領府(行政
府)がイニシアティブをとっていたため、政権交代にあわせて制度が廃止されてきた。これに対し、
GPRA は議会において法律として制定されているため、政権交代の影響を受けずに制度が存続する
ことが可能である。実際に、クリントン政権の後を継いだブッシュ政権(2001~)は GPRA を強化し、予
算と連携させることを目論んでいる。
•
GPRA により、連邦省庁には、以下の3点を実施することが法的に義務づけられている。
○それぞれのミッションや戦略計画を立てること
○ミッションを達成するための業務プラン・目標を立て、その目標達成度を測定する指標や方法を
提示すること
○目標が達成されたか、その状況を測定・報告すること
•
具体的には、各省庁は、「戦略計画(Strategic Plan)」、「年次業績計画(Annual Performance Plan)」、
「業績・財務報告書(Performance and Accountability Report)」の作成が義務づけられている。
①戦略計画(Strategic Plan)2
5年を超える期間を対象として、機関の任務(mission)、全体目的(general goals)、全体目標
(general objectives)を定めるもの。目標達成の方法や、プロセス、プログラム評価の実施計画な
どもあわせて記載される。更新は3年ごと。各省庁は、行政予算管理局(OMB)や議会事務局と
密接に協議を行って作成。
②年次業績計画(Annual Performance Plan)
戦略計画の実現に向けた各年の計画で、戦略目標に包含される、各年の具体的な政策目標を
定 め る も の 。 プ ロ グ ラ ム ご と に 、 業 績 目 標 ( performance goals ) 、 業 績 指 標 ( performance
indicators)、関連予算額等を記載。各省庁は、年次業績計画を予算要求とあわせて OMB およ
び議会に提出。予算審議の参考資料として用いられる。OMB は 2005 年度から各省庁に対し、
「年次業績計画」の代わりに「業績予算書」の提出を求めているが、業績予算を作成している省
庁は一部にとどまっている模様である。
③業績・財務報告書(Performance and Accountability Report:PAR)
年次業績計画に示された目標の達成状況を報告するもの。会計年度終了後、翌年3月末まで
に作成。従来は「年度業績報告(Annual Performance Report)」と呼ばれていたが、FY2002 報告
2
戦略計画中の「年次計画における指標」は単なる例示であり、正式な指標は各年度の「年次業績計画」に示される。(田
中秀明「業績予算と予算のミクロ改革(中)」,2005)
45
書(FY2004 予算要求時に作成)から、財務状況報告書3[財務諸表](Accountability Report)と
統合され、現在の名前に変更された。
3
政府管理改革法(GMRA)に基づき、主に省庁の財務状況及び運用を通じた成果についての説明を行う報告書。内容
は、首席財務官(CFO)、監察総監(IG)が作成する財務報告が中心。発生主義ベース。
46
(2)GPRA 主要遂行機関の概要
①行政予算管理局(OMB:Office of Management and Budget)
•
OMB は、GPRA の政府全体の実施を統括。各省庁の「戦略計画」「年次業績計画」の作成にあた
り、各省庁と協議を行うほか、各省庁に対し、文書作成のスケジュールや、業績目標の設定方法
等に関する詳細なガイドラインを提供している。
•
従来、OMB は予算要求額の査定を主たる業務とし、予算教書に対する責任を負っていたが、
GPRA 導入により、政策立案・執行管理にまで業務範囲が拡げられ、政策目標の内容・水準につ
いても責任を負うことになった。これに伴い、OMB は 1994 年に「OMB 2000」と呼ばれる機構改革
を実施し、各省庁ごとの行政管理・政策立案に関する機能を拡充した。具体的には、予算査定と
行政管理に二分化されていた組織を見直し、予算査定を担当していた5部局の人員を大幅に拡
充するとともに、予算査定を担当していた「予算査定官」を「プログラム査定官」に改め、各省庁の
行政管理・政策立案に係る業務をも担当させることにした。(他方、従来の管理部門は縮小し、政
府全体にまたがる行政管理のみを扱うこととした。)
•
中小企業庁へのヒアリングによると、もともと予算査定を担当していた OMB が政策評価もあわせて
担当するようになったのは、1つの機関が予算と評価を担当することで、予算と評価の統合がなさ
れることを期待したもの、とのことである。政策評価の所管が OMB に移ってから、評価が予算に直
結する可能性があるため、各省庁が真剣に取り組むようになったとのこと。
②議会
•
GPRA では、制度上、政策評価に係る一連の作業の中に議会の関与を盛り込んでいる。
・
「戦略計画」策定にあたり、各省庁は OMB だけでなく、議会とも協議を行い、また、利害関
係者等の意見を聴取しなければならない。
・
「年次業績計画」は、予算教書提出後に、議会(予算委員会、歳出委員会小委員会、関
係する常任委員会、上院行政委員会及び下院行政改革委員会の委員長及び野党)に送
られ、同時に公表される。
・
•
「業績・財務報告書」も、議会への提出が義務付けられている。
しかし実際には、GPRA に対して議会内部で温度差がある。行政改革を担当する上院行政委員会
や下院行政改革委員会では GPRA の結果に関心が高いが、予算審議を担当する各委員会では
関心が薄い。
③会計検査院(GAO:Government Accountability Office)
•
会計検査院(GAO4)は、GPRA の実施監視機関として位置づけられ、GPRA 制定後 3 年間は、各
機関の GPRA への対応状況や、「戦略計画」「年次業績計画」「年次業績報告」の内容を外部から
チェックする機能・役割を担っていた。現在でも、各省庁における GPRA の実施状況について調
査を行い、レポートを発表している。
4
米国会計検査院は、もともと General Acounting Office(略称 GAO)と呼ばれていたが、2004 年 7 月の「GAO 人材改革法
(GAO Human Capital Reform Act of 2004)」制定にあわせて、略称はそのままに、General Accountability Office に名称変
更された。(渡瀬義男「米国会計検査院(GAO)の 80 年」,2005)
47
図表 OMB の組織構成の変化
総定員: 556人
(OMB2000前)
長官
副長官 行政管理担当副長官
13人
通信
法律問題
顧問
経済政策
2人
6人
8人
11人
国家安全保障
及び国際問題
天然資源、エネルギー
及び科学
64人
農務省
エネルギー省
内務省
NASA等
56人
国防省
国務省
CIA等
経済及び
政府
人的資源
保健
連邦財政
管理局
55人
39人
27人
教育省 保健福祉省
商務省
住宅都市開発省 労働省 退役軍人省
財務省 社会保険庁等 郵政公社
法務省
運輸省等
予算及びプログラム分野 241人
立法審査
及び行政
予算審査
42人
法律の審査
総務
連邦調達
政策局
41人
30人
73人
予算全体の調整、
予算制度との整合
性、会計の統一等
情報・規
制問題局
一般
管理課
56人
33人
連邦職員政策
査定及び立案
等
管理部門(法定局) 127人
行政管理 160人
総定員: 556人
(OMB2000後)
長官
副長官 行政管理担当副長官
通信
2人
法律問題
顧問
経済政策
8人
10人
6人
国家安全保障
及び国際問題
天然資源、エネルギー
及び科学
64人
国防省
国務省
CIA等
72人
農務省
エネルギー省
内務省
NASA等
一般政府
及び金融
16人
行政(総務)
立法審査
19人
人的資源
39人
73人
教育省
商務省
労働省
住宅都市開発省
社会保険庁等
財務省
法務省
運輸省等
27人
法律の審査
保健及び
人事
連邦財政
管理局
56人
保健福祉省
退役軍人省
郵政公社
20人
予算審査
72人
予算全体の調整、
予算制度との整合
性、会計の統一等
連邦調達
政策局
20人
情報・規
制問題局
52人
管理部門(法定局) 92人
(政府全体にまたがる行政管理等)
資源管理部門 304人
(予算査定、行政管理、執行管理) (出所)財務省(2000)p.44
48
(3)GPRA に関するドキュメントの概要
•
GPRA に基づく「戦略計画」、「年次業績計画」、「業績・財務報告書」について、商務省(Department
of Commerce)を例に、その目次構成および内容を紹介する。
①戦略計画
•
商務省の 2004-2009 年度戦略計画は計 106 ページに及んでいる。同計画では、3つの「戦略ゴール
(Strategic Goal)」および省庁運営に関する「マネジメントゴール(Management Integration Goal)」が
設定され、各戦略ゴールごとに2つないし3つの「目標(Objective)」が設定されている。
•
戦略ゴールは「米国の競争力を最大限にするための情報と手段を提供し、米国産業、労働者、そし
て消費者のための経済成長を可能にする」、目標は「民間企業と非政府組織とのパートナーシップを
発展させることによりアメリカの経済成長を強化する」というように、アウトカム的なものとなっている。
図表 商務省戦略計画(Strategic Plan 2004-2009)の目次構成
Our Mission,Vision, Strategic Goals, and Objectives
商務省の任務、展望、及び目的
Strategic Goal 1
Provide the information and tools to maximize U.S.
competitiveness and enable economic growth for
American industries, workers, and consumers
戦略ゴール1
米国の競争力を最大限にするための情報と手段を提供
し、米国産業、労働者、そして消費者のための経済成長
を可能にする。
Objective 1.1
Enhance economic growth for all Americans by
developing partnerships with private sector and
nongovernmental organizations (※次表に抜粋)
目標 1.1
民間企業と非政府組織とのパートナーシップを発展さ
せることによりアメリカの経済成長を強化する。
Objective 1.2
Advance responsible economic growth and trade while
protecting American security
目標 1.2
アメリカの安全保障を保護するとともに、責任ある経済
成長と貿易を促進する。
Objective 1.3
Enhance the supply of key economic and demographic
data to support effective decision-making of
policymakers, businesses, and the American public
目標 1.3
政策立案者、企業、一般市民が効果的な決定をできる
よう支援するために主要な経済や人口統計データを充
実させる。
戦略ゴール 2
知的財産権の保護、技術水準の向上、計測学の進歩に
よって科学技術における統率力を強化する。
Strategic Goal 2
Foster science and technological leadership by
protecting intellectual property, enhancing technical
standards, and advancing measurement science
Objective 2.1
Develop tools and capabilities that improve the
productivity, quality, dissemination, and efficiency of
research
目標 2.1
生産性、品質、普及、及び研究の効率を改善する手段
と能力を開発する。
Objective 2.2
Protect intellectual property and improve the patent
and trademark system
目標 2.2
知的財産を保護し、特許と商標制度を改善する。
Objective 2.3
Advance the development of global e-commerce and
enhanced telecommunications and information services
目標 2.3
グローバルな e コマースの発展を促進し、電気・情報通
信サービスを強化する。
49
Strategic Goal 3
Observe, protect, and manage the Earth’s resources to
promote environmental stewardship
戦略ゴール 3
環境への責務促進のために地球資源を監視、保護、管
理する。
Objective 3.1
Advance understanding and predict changes in the
Earth’s environment to meet America’s economic,
social, and environmental needs
目標 3.1
米国の経済、社会、環境のニーズを満たすため、地球
環境の変化への理解と予測を向上させる。
Objective 3.2
Enhance the conservation and management of coastal
and marine resources to meet America’s economic,
social, and environmental needs
目標 3.2
米国の経済、社会、環境のニーズを満たすため、沿
岸・海洋資源の保護と管理を向上させる。
Management Integration Goal
Achieve Organizational and Management Excellence
マネジメントゴール
すぐれた組織的な管理・運営を達成する。
Overarching Key Factors Affecting Achievement of the
Department’s Goals
Crosscutting Programs
Program Evaluations
Appendices
Appendix A: NOAA Performance Goal Crosswalk
Appendix B: Department Goals, Objectives, Outcomes,
and Performance Measures
Appendix C: Glossary of Acronyms
商務省の目標達成に影響を与える重要な要素の整理
横断的プログラム
プログラム評価
別添
別添 A:NOAA(米国海洋大気庁)の業績目標への関与
別添 B:商務省のゴール、目標、アウトカム、達成指標
別添 C:略語用語集
(出所)商務省ウェブサイト http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/Strategic04-1002.htm
50
•
商務省戦略計画における「Objective1.1 民間企業と非政府組織とのパートナーシップを発展させる
ことによりアメリカの経済成長を強化する」の記述内容は以下のとおりである。まず当該目標の達成
責 任 を担 う 組織 ( Bureau ) が 明示 さ れ 、組 織 ご とにア ウ ト カ ム 目標( Outcome) とそ の 業 績 指標
(Performance Measure)が示されている。
図表 商務省戦略計画における「Objective 1.1(目標 1.1)」の記述内容
(出所)商務省ウェブサイト http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/Strategic04-1002.htm
51
②年次業績計画
•
商務省の 2007 年度年次業績計画は、部局・外庁等の組織ごとに作成されている。
図表 商務省年次業績計画(Annual Performance Plan 2007)の目次構成
Departmental Management
Office of Inspector General
Economic and Statistics Administration - Bureau of Economic Analysis
Economic and Statistics Administration - Bureau of Census
International Trade Administration
Bureau of Industry and Security (※以下に内容を抜粋)
Economic Development Administration
Minority Business Development Agency
U.S. Patent and Trademark Office
Technology Administration
National Telecommunications and Information Administration
National Oceanic and Atmospheric Administration
(出所)商務省ウェブサイト http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/FY2007APP.htm
•
このうち、商務省産業安全局(Bureau of Industry and Security:BIS)に関する記述を以下に示す。同
局に関しては、4つの業績目標(Performance Goal)が設定され、各目標ごとに1ないし複数の業績指
標が設定されている。あわせて、過去 4 年間の実績と今後2年間の目標値も明示されている。
•
GPRA では、目標を、行政の責任においてコントロール可能な「アウトプット」ではなく、政策の真の狙
いにより近い「アウトカム」で設定するよう求めている。年次業績計画の目標についても原則アウトカ
ム目標とされているが、OMB 通達(OMB Circular)において、アウトプット目標で補完することも認め
られている。
図表 商務省年次業績計画における産業安全局(Bureau of Industry and Security)に関する記述 (1/2)
(出所)商務省ウェブサイト http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/FY2007APP.htm
52
•
また、上記の表とは別に、先述した4つの業績目標ごとに、2002~2005 年度の支出実績と、2006 年度
の大統領予算、2007 年度の予算要求額が明示され、目標の達成状況と支出との関係が比較できる
ようになっている。これは、OMB 通達による「業績予算」の作成要求に対応するものと考えられる。
図表 商務省年次業績計画における産業安全局(Bureau of Industry and Security)に関する記述 (2/2)
(出所)商務省ウェブサイト http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/FY2007APP.htm
•
この他、別表として、2005 年度の PART の結果もあわせて示されている。このように、年次業績計画で
は、同局に関する政策評価の結果が一覧できるようになっている。(PART の内容については後述)
53
③業績・財務報告書
•
商務省の 2005 年度業績・財務報告書は、「マネジメントに関する考察・分析(Management Discussion
and Analysis)」、「業績セクション(Performance Section)」、「財務セクション(Financial Section)」の大
きく3つのセクションに分かれている。下表の下線部分の箇所について、以下で具体的に分析を行
う。
図表 商務省業績・財務報告書(FY 2005 Performance and Accountability Report)の目次構成
Statement from the Secretary
How to Use this Report
商務長官からの声明
報告書の使い方
Management Discussion and Analysis
Mission and Organization
FY 2005 Performance and Financial Highlights ③-1
The Department of Commerce Process for Strategic
Planning and Performance Reporting
Most Important Results and the Future: Performance,
Priorities, and Challenges ③-2
Stakeholders and Cross-Cutting Programs
The President’s Management Agenda ③-3
Management Controls
・Federal Managers’ Financial Integrity Act (FMFIA)
of 1982
・ Federal Financial Management Improvement Act
(FFMIA) of 1996
・Report on Audit Follow-up
・Biennial Review of Fees
・Improper Payments Information Act (IPIA) of 2002
The Inspector General’s Statement of Management
Challenges ③-4
Management Challenges and Actions ③-5
Program Assessment Rating Tool (PART) Status ③-6
業務管理決定と分析
使命と組織
2005 年度業績および財政の要点
商務省戦略計画と業績報告のプロセス
FY 2005 Performance Section
Introduction to the Performance Section 58
Strategic Goal 1
: Provide the information and tools to maximize
U.S. competitiveness and enable economic growth
for American industries, workers, and consumers
③-7
Objective 1.1
:Enhance economic growth for all Americans by
developing partnerships with private sector and
nongovernmental organizations (EDA, ITA, MBDA)
③-8
Objective 1.2
:Advance responsible economic growth and trade
while protecting American security (ITA, BIS)
Objective 1.3
: Enhance the supply of key economic and
demographic
data
to
support
effective
decision-making of policymakers, businesses, and
the American public (ESA/Census, ESA/BEA)
Strategic Goal 2
: Foster science and technological leadership by
protecting
intellectual
property,
enhancing
2005 年度業績
パフォーマンス・セクション 58 について
戦略ゴール1
米国の競争力を最大限にするたもの情報と手段を
提供し、米国産業、労働者、そして消費者のための
経済成長を可能にする。
最も重要な成果と将来見通し:業績、優先度及び課題
利害関係者と横断的プログラム
大統領マネジメントアジェンダ
運営管理
・1982 年連邦管理者財務統合法(FMFIA)
・1996 年連邦財務管理促進法(FFMIA)
・会計監査事後報告書
・複数年度予算の再検討
・2002 年不正報酬情報法(IPIA)
マネジメント上の課題に関する監察総監の指摘
マネジメント上の課題および取組み
プログラム評価(PART)の状況
目標 1.1
民間企業と非政府組織とのパートナーシップを発展
させることによりアメリカの経済成長を強化する。
(EDA, ITA, MBDA)
目標 1.2
アメリカの安全保障を保護するとともに、責任ある経
済成長と貿易を促進する。(ITA, BIS)
目標 1.3
政策立案者、企業、一般市民が効果的な決定をで
きるよう支援するために主要な経済や人口統計デ
ータを充実させる。 (ESA/Census, ESA/BEA)
戦略ゴール 2
知的財産権の保護、技術水準の向上、計測学の進
歩によって科学技術における統率力を強化する。
54
technical standards, and advancing measurement
science
Objective 2.1
:Develop tools and capabilities that improve the
productivity, quality, dissemination, and efficiency
of research (TA/OTP, TA/NIST, TA/NTIS)
Objective 2.2
: Protect intellectual property and improve the
patent and trademark system (USPTO)
Objective 2.3
:Advance the development of global e-commerce
and enhanced telecommunications and information
services (NTIA)
Strategic Goal 3
: Observe, protect, and manage the Earth’s
resources to promote environmental stewardship
Objective 3.1
:Advance understanding and predict changes in the
Earth’s environment to meet America’s economic,
social, and environmental needs (NOAA)
Objective 3.2
: Enhance the conservation and management of
coastal and marine resources to meet America’s
economic, social and environmental needs (NOAA)
132
Management Integration Goal
: Achieve organizational and management
excellence (DM, OIG)
目標 2.1
生産性、品質、普及、及び研究の効率を改善する
手 段 と 能 力 を 開 発 す る (TA/OTP, TA/NIST,
TA/NTIS)
目標 2.2
知的財産を保護し、特許と商標制度を改善する。
(USPTO)
目標 2.3
グローバルな e コマースの発展を促進し、電気・情
報通信サービスを強化する。(NTIA)
戦略ゴール 3
環境への責務促進のために地球資源を監視、保
護、管理する。
目標 3.1
米国の経済、社会、環境のニーズを満たすため、地
球環境の変化への理解と予測を向上させる。
(NOAA)
目標 3.2
米国の経済、社会、環境のニーズを満たすため、沿
岸・海洋資源の保護と管理を向上させる。(NOAA)
マネジメントゴール
す ぐ れ た 組 織 的 な 管 理 ・ 運 営を 達 成 す る 。 (DM,
OIG)
FY 2005 Financial Section
Message from the Chief Financial Officer
Financial Management and Analysis
Debt Management
Payment Practices
Analysis of FY 2005 Financial Conditions and Results
Limitations of the Financial Statements
Principal Financial Statements
・Consolidated Balance Sheets
・Consolidated Statements of Net Cost
・Consolidated Statements of Changes in Net Position
・Combined Statements of Budgetary Resources
・Consolidated Statements of Financing
Notes to the Financial Statements
Consolidating Balance Sheet
Required Supplementary Information
Requirement Supplementary Stewardship Information
Independent Auditors’ Report
2005 年度財務
最高財務責任者からのメッセージ
財務管理と分析
債務管理
支払実務
2005 年度財政状況と業績
財務諸表の制限
主要財務諸表
・連結決算書
・連結純費用決算書
・連結純持高決算書
・予算財源損益・剰余金結合計算書
・資金調達連結決算書
決算報告書に関する注意事項
連結精算表
必要補足情報
監督と報告の責務に関する補足情報
独立監査報告書
Appendices
Appendix A: Performance and Resource Tables ③-9
Appendix B: Performance Goals and Measures that
Have Been Discontinued or Changed
Appendix C: Improper Payments Information Act (IPIA)
Reporting Details
Appendix D: Glossary of Key Acronyms
付録
付録 A:業績・リソース表
付録 B:廃止または変更された業績目標・指標
付録 C:IPIA に関する報告書詳細
付録 D:用語集
(注)表中の下線および※は、以下での抜粋箇所を示している。
(出所)商務省ウェブサイト http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/FY05PAR.htm
55
③-1 2005 年度業績および財政の要点(FY 2005 Performance and Financial Highlights)
•
業績に関する要点(Performance Highlights)では、業績の観点から、投じられた資源が整理されてい
る。具体的には、3つの戦略ゴール(Strategic Goals)およびマネジメントゴール(Management
Integration Goal)ごとに、投じられた支出(obligation)と労働力(full time equivalents:フルタイム換
算)が、2004 年度・2005 年度の 2 ヶ年分掲載されている。
図表 商務省業績・財務報告書における
“FY 2005 Performance and Financial Highlights- Performance Highlights”の記述
(出所)商務省ウェブサイト http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/FY05PAR.htm
56
•
また、財務に関する要点(Financial Highlights)では、2004・2005 年度末時点での資産(Assets)およ
び負債(Liabilities)、2004・2005 年度における費用(Net Cost)が整理されている。
図表 商務省業績・財務報告書における
“FY 2005 Performance and Financial Highlights- Financial Highlights”の記述
(出所)商務省ウェブサイト http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/FY05PAR.htm
57
③-2 最も重要な成果と将来見通し:業績、優先度及び課題
(Most Important Results and the Future: Performance, Priorities, and Challenges)
•
最も重要な成果と将来見通し(Most Important Results and the Future)では、戦略ゴール(Strategic
Goals)-戦略目標(Strategic Objective)-業績目標(Performance Goal)の体系を整理して示すとと
もに、業績目標ごとにその達成状況を“met”(達成)、“significantly met”(概ね達成)、“not met”(未
達成)の3段階で示している。達成状況の判定根拠については、報告書の「業績セクション
(Performance Section)」で詳細が説明されている(後述)。
図表 商務省業績・財務報告書における
“Most Important Results and the Future: Performance, Priorities, and Challenges”の記述(1/2)
(出所)商務省ウェブサイト http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/FY05PAR.htm
58
図表 商務省業績・財務報告書における
“Most Important Results and the Future: Performance, Priorities, and Challenges”の記述(2/2)
(出所)商務省ウェブサイト http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/FY05PAR.htm
59
③-3 大統領マネジメント・アジェンダ(The President’s Management Agenda)
•
2001 年、ブッシュ政権は、各省庁が取り組むべき5つの優先課題(以下①~⑤)を、「大統領マネジメ
ント・アジェンダ(President’s Management Agenda : PMA)」として発表。
①人的資源の戦略的管理(Strategic Management of Human Capital)
②財務パフォーマンスの改善(Improved Fiscal Performance)
③競争的調達(Competitive Sourcing)
④電子政府化の推進(Expanded Electronic Government)
⑤予算と業績の統合(Budget and Performance Integration)
•
さらに、PMA に対する各省庁の取組み状況を、現在の状況(status)および進捗度合(progress)という
2つの観点から、「青:上手くいっている(success)」、「黄:混在している(mixed results)」、「赤:満足で
きる結果ではない(unsatisfactory)」の3段階で評価し、「行政府マネジメント・スコアカード(Executive
Branch Management Scorecard)」として定期的に発表している。
•
業績・財務報告書でも、以下のとおり PMA の評価結果が掲載されている。
図表 商務省業績・財務報告書における“The President’s Management Agenda”の記述(抜粋)
(出所)商務省ウェブサイト http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/FY05PAR.htm
60
③-4 マネジメント上の課題に関する監察総監の指摘
(The Inspector General’s Statement of Management Challenges)
•
各省庁には、大統領または省庁ヘッドの任命により監察総監(Inspector General)が置かれ、財務監
査を担当している。
•
業績・財務報告書では、省庁運営に関する監察総監の指摘事項が整理されている。2005 年度報告
書における指摘事項は以下のとおりである。(本編では、各事項について詳細な説明が掲載されて
いる。)
図表 商務省業績・財務報告書における
“The Inspector General’s Statement of Management Challenges”の記述
Challenge: Strengthen Department-Wide Information Security
Challenge: Effectively Manage Departmental and Bureau Acquisition Processes
Challenge: Enhance USPTO’s Ability to Manage and Operate its Own Processes
Challenge: Control the Cost and Improve the Accuracy of Census 2010
Challenge: Monitor the Effectiveness of NOAA’s Stewardship of Ocean and Living Marine Resources
Challenge: Promote Fair Competition in International Trade
Challenge: Enhance Export Controls for Dual-Use Commodities
Challenge: Enhance Emergency Preparedness, Safety, and Security of Commerce Facilities and Personnel
Challenge: Continue to Strengthen Financial Management Controls and Systems
Challenge: Continue to Improve the Department’s Strategic Planning and Performance Measurement in
Accordance with the Government Performance and Results Act
(出所)商務省ウェブサイト http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/FY05PAR.htm
61
③-5 マネジメント上の課題および取組み(Management Challenges and Actions)
•
上記に続く“マネジメント上の課題および取組み(Management Challenges and Actions)”では、監察
総監の指摘事項に対する省庁の対応が示されている。
図表 商務省業績・財務報告書における“Management Challenges and Actions”の記述(抜粋)
(出所)商務省ウェブサイト http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/FY05PAR.htm
62
③-6 プログラム評価(PART)の状況(Program Assessment Rating Tool (PART) Status)
•
PART の結果は、OMB の専用ウェブサイト「ExpectMore.gov」で発表されているが、業績・財務報告書
においても、商務省所管のプログラムについて結果が掲載されている。以下を見ると、商務省の戦略
ゴール1に対しては「Economic Census」および「Current Demographic Statistics」という2つのプログ
ラムが対応し、それぞれ「効果的(Effective)」という評価結果であることが分かる。
※PART については後述。
図表 商務省業績・財務報告書における“Program Assessment Rating Tool (PART) Status”の記述(抜粋)
(出所)商務省ウェブサイト http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/FY05PAR.htm
63
③-7 業績セクション-戦略ゴール 1(FY 2005 Performance Section - Strategic Goal 1)
•
財務・業績報告書の「業績セクション(Performance Section)」では、戦略ゴール(Strategic Goal)およ
び戦略目標(Strategic Objective)ごとに達成状況の詳細が説明されている。
•
「戦略ゴール1」の記述内容は以下のとおりである。まず、当該ゴールに関して投じられたリソース(資
金および労働力)の推移が“Total Resources”で示され、さらに、当該ゴールに対応する業績指標の
達成状況が“Number of Reported Results”で示されている。
図表 商務省業績・財務報告書における“FY 2005 Performance Section - Strategic Goal 1”の記述
(出所)商務省ウェブサイト http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/FY05PAR.htm
64
③-8 業績セクション-目標 1.1(FY 2005 Performance Section - Objective 1.1)
•
「戦略ゴール 1」のうち、「戦略目標 1.1」の記述内容は以下のとおりである。当該目標に関して投じら
れたリソース(資金および労働力)の推移が“Total Resources”で示され、当該目標に対応する業績
指標の達成状況が“Number of Reported Results”で示されている。 また、 業績目標(Performance
Goal)ごとの達成状況が3段階で示されている。
図表 商務省業績・財務報告書における“FY 2005 Performance Section - Objective 1.1”の記述(1/2)
(出所)商務省ウェブサイト http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/FY05PAR.htm
65
•
そして、各業績目標(Performance Goal)の達成状況について、詳細に説明されている。当該目標に
関する業績指標の詳細は文中に記載されており、図表等では整理されていない。指標の一覧は付
録Aとして報告書の最後に掲載されている。(グラフ下の注釈を参照)。
図表 商務省業績・財務報告書における“FY 2005 Performance Section - Objective 1.1”の記述(2/2)
(出所)商務省ウェブサイト http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/FY05PAR.htm
66
③-9 付録A 業績・リソース表(Appendix A: Performance and Resource Tables)
•
戦略ゴール(Strategic Goal)、戦略目標(Strategic Objective)、業績目標(Performance goal)、業績指
標(Performance Goal Measure)の体系、リソース(資金・労働力)の投入状況、業績指標の達成状況
は、「付録A」で一覧できるようになっている。
図表 商務省業績・財務報告書における“Appendix A: Performance and Resource Tables”の記述
(出所)商務省ウェブサイト http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/FY05PAR.htm
67
(4)GPRA の実施状況・評価
●GPRA は法定化されているため実施はされているが、あまり重視されていない
• OMB の担当者は、GPRA は政策評価の考え方を周知させ、制度の基礎を築いたという面では評
価できるとしながらも、各省庁にとっては、法定化されているためやらなければならないが、実施す
るインセンティブがないため関心は低く、形式的なものになり下がっていると述べている。
• また、GPRA が軽視されている要因としては、これが前クリントン政権が導入した仕組みで、現ブッ
シュ政権は後述する PART を重視していることも大きいと考えられる。
• OMB の担当者は、GPRA の技術的な問題点として、以下の点を挙げられる。
○実施にあたり、議会のサポートが無いこと
○書類作成や情報収集など、省庁の事務作業が著しく増加したこと
○ターゲットがクリアでないこと
○達成責任の所在が不明確であること
○拘束力が低く(soft requirement)、ペナルティ等の仕組みがないこと
●各省横断的な施策や一部の分野では、目標設定が難しい
• GPRA は、各省庁単位で作業を行うため、各省横断的な施策(cross-cutting area)については適
切な目標の設定が難しい。「年次業績計画」においても、各省横断的な施策領域を明示すること
は求められているが、具体的な取組みは各省庁の連携努力に委ねられている。
• 外部効果の大きい分野(外務・経済協力関係等)、国家機密・プライバシーにかかわる分野(国務
省、司法・警察等)、研究開発分野、マクロ経済政策分野等では目標設定が難しい。
●データ入手の難しさが、目標設定の制約になっている
• 分析に必要な有益なデータ収集の難しさ(データ入手のタイミングの問題も含む)が、数値目標の
設定の制約になっているケースが多い。
• アウトカム目標については、分析過程における外部要因の排除が困難。
68
3)プログラム評価採点ツール(PART:Program Assessment Rating Tool)
(1)PART の概要
•
全省庁のプログラム(施策)の業績を横並びで評価し、格付けする仕組み。ブッシュ政権の重点課題
の一つである「予算と業績の統合(Budget & Performance Integration:BPI)」を実現するための仕組
みとして、予算編成を担当する行政予算管理局(OMB)が中心となり、2004 年度予算編成(2002 年)
から導入。予算編成の参考情報として活用することを意図している。
•
GPRA と PART の関係について、OMB は、GPRA が省庁(agency)単位の大まかな管理の枠組みで
あるのに対し、PART はプログラム単位の詳細な評価の仕組みであると説明している。そして、PART
は GPRA の枠組みの中に位置づけることができ、PART を達成することで、結果的に GPRA も達成さ
れるという関係にある、との認識を示している。
•
PART は、プログラムに関する約 30 の質問から構成されている。まず、各省庁は所管するプログラム
について質問への回答を作成し、OMB に評価結果とその説明資料を提出する(3月)。これを受け
て OMB は、各省庁に対してヒアリングを行い、結果の監査(audit)、すなわち、回答内容と説明資料
を照らし合わせて回答内容のチェックを行い、問題があれば省庁に対してさらなる説明書類の提出、
または回答の変更を要求する。OMB と各省庁との調整の後、各プログラムの格付けを決定する。そ
して、hearing committee を開催した上で、評価結果が確定する(8月)。hearing committee には、各
省庁の Deputy Secretary の中から5名が中立な立場で参加し、OMB および各省庁の意見を聞く。
各省庁は、OMB による調整の結果に納得できない場合、この場で、自分たちの意見を主張すること
ができる。hearing committee の構成メンバーは毎年変更される。(2006 年は、エネルギー省、環境保
護庁、農務省、労働省、OMB の5省庁となっている。)
•
PART の質問は、①目的とデザイン、②戦略計画、③マネジメント、④結果と達成責任、の4つのカテ
ゴリーに分かれている。各省庁は、①~③の質問には「はい」か「いいえ」の二択、④の質問には「は
い」「大部分(Large Extent)」「一部分(Small Extent)」「いいえ」の四択で回答する。さらに、必要に応
じて、さらなる説明や、証拠となる情報(evidence)等もあわせて記述する。
•
省庁からの回答を受け取った OMB は、まず、個別の質問への回答に基づき、上記カテゴリー(①~
④)ごとに 100 点満点で評価を下す。さらに、これらカテゴリー別の評価点を、各カテゴリーに設定さ
れたウェイトで統合し、施策に対する総合評価(5段階,以下参照)を決定する。あわせて、各省庁の
取組みのヒントとなるようなキー・ファインディング情報も示される。
○有効(Effective)
:スコア 85-100
○ある程度有効(Moderately Effective) :スコア 70-84
○普通(Adequate)
:スコア 50-69
○有効ではない(Ineffective)
:スコア 0-49
○評価不能(Results not Demonstrated)
※「評価不能」は、所轄官庁と OMB が成果指標について合意できなかった場合か、成果指標の質
69
に問題があった場合に下される。(これは、「有効ではない(=成果がない)」ということではない)
•
OMB によると、PART の評価結果をチェックする際には、目的がクリアに示されているか、ゴールが明
確に設定されているか、プログラムのマネジメントがなされているか、ゴールが達成できているかとい
った点に着目してチェックを行うとのことである。また、PART の audit プロセスの中では、プログラムご
とに適切な goal と、それに対応した適切な target(goal に到達するためのステップとなる目標)が設定
されているか、に関して省庁との間で調整を行うところに最も時間をかけているとのことである。
•
評価の対象となるプログラムは以下の7つのタイプに分類され、全てのタイプに共通する質問と、プロ
グラムのタイプごとに異なる質問が用意されている。
○連邦政府直轄プログラム(Direct Federal Programs)
○競争的補助金プログラム(Competitive Grant Programs)
○定額補助金プログラム(Block/Formula Grant Programs)
○規制プログラム(Regulatory-Based Programs)
○固定資産・サービス調達プログラム(Capital Assets and Service Acquisition Programs)
○融資プログラム(Credit Programs)
○研究開発プログラム(Research and Development Programs)
•
各質問は、さまざまなプログラムに対応できるよう、非常にシンプルなものとなっている。また、プログ
ラムによって、状況に合致しないような質問については回答しなくても良い、とされている。
図表 PART の質問のカテゴリー
カテゴリー
内容
質問例
ウェイト
・
プログラムの目的は明確か?
20%
① 目的とデザ 業務 の目 的・ デ
・ プログラムは特定の問題やニーズに対応したものとなっているか?
イン
ザインの明確さ・
・ プログラムは他のいかなる連邦、州、地方自治体、民間のプログラ
適切さを評価
ムと重複するものとなっていないか?
・
プログラムのアウトカムや、プログラムの目的を反映した、長期的な 10%
② 戦略計画
長期計画と年単
パフォーマンス指標があるか?
位での成果指
・ 長期的な指標においては、ターゲットやタイムフレームがあるか?
標・目 標設 定 の
・ プログラムに参加する全てのパートナーが、年間・長期的なゴール
適切さを評価
に的確に関わっているか?
・ 省庁は定期的にパフォーマンス情報を収集し、パフォーマンス改善 20%
③ マ ネジ メ ン 財務管理、改善
に活用しているか?
ト
努力を含めた業
・ 省庁幹部やプログラムパートナーがコスト、スケジュールやパフォー
務のマネジメント
マンスについて、的確に説明責任を負っているか?
評価
・ プログラム実施において、効率化、コスト効果の測定、達成を実現
するための手順があるか?
・ プログラムは長期的なアウトカムのゴール達成に向かって進んでい 50%
④ 結果・達成 戦略計画上の目
るか?
責任
標達成度を評価
・ プログラム、プログラムパートナーは年間のパフォーマンスゴールを
達成しているか?
・ 十分な範囲、質に関する独立した評価において、プログラムが効果
的で結果を出していることが証明されているか?
(出所)みずほ総研論集「ブッシュ政権の行政改革」(2004)、社会情報システムレポート第 24 号「米国連邦政府のプログラ
ム評価ツール PART とは」
(原出所)OMB(2004.2)
70
図表 FY2005 用の PART における共通設問
セクションⅠ:プログラムの目的とデザイン PROGRAM PURPOSE AND DESIGN
1.1: プログラムの目的は明快か?
Is the program purpose clear?
1.2: プログラムは、現存する問題・利害・ニーズに対応するものか?
Does the program address a specific and existing problem, interest, or need?
1.3: プログラムは、連邦・州・地方自治体や民間における他の取組みと重複しないように設計されているか?
Is the program designed so that it is not redundant or duplicative of any other Federal, State, local or private effort?
1.4:プログラムの設計において、プログラムの効果や効率性を損なうような欠点がないか?
Is the program design free of major flaws that would limit the program’s effectiveness or efficiency?
1.5: プログラムには、その投入資源が意図した受益者に到達するように、または、プログラムの目的に直接対応するよう
に、効果的な目標が設定されているか?
Is the program design effectively targeted so that resources will address the program’s purpose directly and will reach
intended beneficiaries?
セクションⅡ:戦略計画 STRATEGIC PLANNING
2.1: プログラムには、限られた数の具体的な長期業績指標(プログラムの成果に関するもので、かつ、プログラムの目的
を意義ある形で反映するもの)が設定されているか?
Does the program have a limited number of specific long-term performance measures that focus on outcomes and
meaningfully reflect the purpose of the program?
2.2: プログラムには、長期の業績達成に向けて、野心的な目標やタイムフレームがあるか?
Does the program have ambitious targets and timeframes for its long-term measures?
2.3: プログラムには、限られた数の具体的な年次業績指標(プログラムの長期目標の達成に向けた進展状況を示しうるも
の)が設定されているか?
Does the program have a limited number of specific annual performance measures that can demonstrate progress
toward achieving the program’s long-term goals?
2.4: プログラムには、年次の業績に向けて、ベースラインと野心的な目標が設定されているか?
Does the program have baselines and ambitious targets for its annual measures?
2.5: 全てのパートナー(交付金の受け手、委託先、費用分担者、政府における他のパートナー等)は、プログラムの年次/
長期の目的の達成に向けて、業務を実施しているか?
Do all partners (including grantees, sub-grantees, contractors, cost-sharing partners, and other government partners)
commit to and work toward the annual and/or long-term goals of the program?
2.6: プログラムの改善のために、有効性や問題・利害・ニーズに照らした妥当性などに関する、適切な範囲および質の独
立した評価が、定期的もしくは必要に応じて、実施されているか?
Are independent evaluations of sufficient scope and quality conducted on a regular basis or as needed to support
program improvements and evaluate effectiveness and relevance to the problem, interest, or need?
2.7: 予算要求は、プログラムの年次/長期の業績目標の達成状況に応じたものとなっているか?その予算において、プロ
グラムに必要な資源が、完全かつ分かりやすく提示されているか?
Are Budget requests explicitly tied to accomplishment of the annual and long-term performance goals, and are the
resource needs presented in a complete and transparent manner in the program’s budget?
2.8: プログラムは、その戦略計画上の課題に対して、意義ある対策となっているか?
Has the program taken meaningful steps to correct its strategic planning deficiencies?
セクションⅢ:プログラム・マネジメント PROGRAM MANAGEMENT
3.1: 省庁は、時宜を得てかつ信頼できる業績情報を、定期的に収集しているか?また、これらの情報を、プログラムの管
理、業績の改善に活用しているか?
Does the agency regularly collect timely and credible performance information, including information from key
program partners, and use it to manage the program and improve performance?
3.2: 連邦政府のマネジャーやプログラムのパートナーは、プログラムの費用、スケジュール、業績などに関して責任を果
たしているか?
Are Federal managers and program partners (including grantees, sub-grantees, contractors, cost-sharing partners,
and other government partners) held accountable for cost, schedule and performance results?
3.3: 連邦政府やパートナーからの資金は、時宜を得て出されたか?また、意図した目的のために費やされたか?
Are funds (Federal and partners’) obligated in a timely manner and spent for the intended purpose?
3.4: プログラムは、その実施に際して、効率性(費用対効果)を測定しかつ実現するための手続を有しているか?
Does the program have procedures (e.g., competitive sourcing/cost comparisons, IT improvements, appropriate
incentives) to measure and achieve efficiencies and cost effectiveness in program execution?
71
3.5: プログラムと、関連する他のプログラムの調整・協力が効果的になされているか?
Does the program collaborate and coordinate effectively with related programs?
3.6: プログラムは、財政面でのマネジメントを確実に実施しているか?
Does the program use strong financial management practices?
3.7: プログラムは、マネジメント上の課題に対して、意義ある対策を講じてきたか?
Has the program taken meaningful steps to address its management deficiencies?
セクションⅣ:プログラムの成果/達成責任 PROGRAM RESULTS/ACCOUNTABILITY
4.1: プログラムは、長期の業績目標の達成に向けて、着実に進展しているか?
Has the program demonstrated adequate progress in achieving its long-term performance goals?
4.2: プログラム(及びそのパートナー)は、年次の業績目標を達成したか?
Does the program (including program partners) achieve its annual performance goals?
4.3: プログラムの効率性(費用対効果)は、毎年の業績目標の追求に際して、改善していると言えるか?
Does the program demonstrate improved efficiencies or cost effectiveness in achieving program goals each year?
4.4:プログラムの実績は、政府・民間などによる他の同様の目的を持つプログラムと比べて、好ましい状況といえるか?
Does the performance of this program compare favorably to other programs, including government, private, etc., with
similar purpose and goals?
4.5: 適切な範囲・質を有する独立した評価を行った結果、プログラムが有効で、その目的を達成していると判断された
か?
Do independent evaluations of sufficient scope and quality indicate that the program is effective and achieving results?
(出所)国土交通省報告書(2004)
(原出所)OMB 資料
72
(2)PART 主要遂行機関の概要
①行政予算管理局(OMB:Office of Management and Budget)
•
OMB では、約 30 名のスタッフが常に政策評価(GPRA・PART)を担当している。Deputy Director
for Management が全体を統括し、その下に Counselor、さらに8名のスタッフが置かれ、資源管理
部(Resource Management Offices)に各省庁の PART 担当者が1名ずつ(計26名)置かれている。
上記関係者は、週に1回集まってミーティングを行っている。PART の audit は、この26名が中心と
なり、資源管理部の全員(約 300 名)が分担して作業を行う。レイティングはこの 26 名が行う。
•
OMB では、担当者による評価基準のばらつきを防ぐため、内部で一貫性(consistency)のチェック
を行っている。
•
どのプログラムを PART の対象とするかは、OMB と各省庁が話し合って、インパクトの大きなものを
選定する。評価対象となっているプログラムの詳細は ExpectMore.gov ウェブサイトに掲載されて
いる。
•
例えば、中小企業庁(SBA)の場合、約 30 個のプログラムを所管しているが、このうち PART の対
象となっているのは8個である。ただし、この8プログラムで SBA プログラム予算の約8割を占めて
いる。
図表 OMB における PART 担当チームの構成
Deputy Director for Management
Counselor to the Deputy Director for
Management 以下8名
OMB
OMB (8名)
Resource Management Offices
各省庁担当者 (26名)
各省庁
各省庁 PART担当者(26名)
(出所)OMB ヒアリングに基づき、野村総合研究所作成
73
(2)PART に関するドキュメントの概要
•
PART の結果は、OMB の専用ウェブサイト「ExpectMore.gov」で発表されている。例として、商務省の
プログラムの1つである「経済開発庁(Economic Development Administration)」プログラムについて、
その公表フォーマットを次頁に掲載した。
•
まず、「プログラムの概要」として、プログラム名称・所管省庁・プログラムのタイプ(先述した7タイプ)、
評価結果(セクション別のスコアを含む)、投入コストが整理されている。次に、「PART の質問及びそ
れに対する回答(Questions/Answers)」として、セクションごとの具体的な質問、それに対する回答お
よびスコア、「プログラムの業績指標(Program Performance Measures)」として、プログラムの業績指
標・測定期間・指標のタイプ(アウトプット/アウトカム等)・達成状況が示され、最後に、「プログラム改
善のための取組み(Program Follow-up Actions)」として、途中で講じられた対応策が示されている。
図表 商務省のプログラム(Program)一覧
(PART 対象プログラム)
Advanced Technology Program
Bureau of Economic Analysis
Bureau of Industry and Security
Census Bureau: Current Demographic Statistics
Census Bureau: Current Economic Statistics and Census of Governments
Census Bureau: Decennial Census
Census Bureau: Economic Census
Census Bureau: Intercensal Demographic Estimates
Census Bureau: Survey Sample Redesign
Coastal Zone Management Act Programs
Commerce Small Business Innovation Research Program
Economic Development Administration ※以下に抜粋
International Trade Administration: Import Administration
International Trade Administration: Market Access and Compliance
International Trade Administration: U.S. and Foreign Commercial Service
Manufacturing Extension Partnership
Minority Business Development Agency
National Institute for Standards and Technology Laboratories
National Marine Fisheries Service
National Oceanic & Atmospheric Administration: Climate Program
National Oceanic & Atmospheric Administration: Ecosystem Research
National Oceanic & Atmospheric Administration: Navigation Services
National Oceanic & Atmospheric Administration: Protected Areas
National Oceanic & Atmospheric Administration: Weather and Related Programs
National Telecommunications and Information Adminstration
Pacific Coastal Salmon Recovery Fund
U.S. Patent and Trademark Office - Patents
U.S. Patent and Trademark Office - Trademarks
(出所)商務省ウェブサイト“FY2007 Program Assessment Rating”より作成
(http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/default.htm)
※「プログラム」を明確に定義することは難しい。藤野雅史「アメリカ連邦政府におけるコスト情報とアカウンタビリティ
-FASAB による経営原価計算の取り組み-」では、以下のように説明されている。
西尾(1993)によると,政策(policy),施策(program),事務事業(Project)という使い分けをすることがあるという。ただ
し、SFFACNo.2 では,プログラムに明確な定義はなく,さまざまなレベルがあるとしているように,施策を中心に政策や
事務事業も含む概念であると考えられる。
74
図表 OMB ウェブサイトで公表されている PART 評価結果の詳細
(商務省 “Economic Development Administration(経済開発庁)”プログラムの例)
(プログラムの概要)
Program Code
Program Title
Department Name
Agency/Bureau Name
Program Type(s)
Assessment Year
Assessment Rating
Assessment Action Scores
Program Funding Level
(in millions)
10000032
Economic Development Administration
Department of Commerce
Economic Development Administration
Competitive Grant Program
2004
Moderately Effective
Section
Score
Program Purpose & Design
80%
Strategic Planning
100%
Program Management
90%
Program Results/Accountability
67%
FY2005 $256
FY2006 $250
FY2007 $297
PART 評価結果
予算額
Questions/Answers(PART の質問及びそれに対する回答)
Section 1 - Program Purpose & Design
Number Question
1.1
Is the program purpose clear?
Explanation:
EDA's purpose is to create wealth and minimize poverty by promoting a favorable
business environment to attract private-sector capital investment and higher skill,
higher wage jobs in distressed communities.
Evidence:
Commerce performance documents, EDA documents, and congressional budget
justifications.
・・・
Answer
Yes
Score
20%
Program Performance Measures(プログラムの業績指標)
Term
Type
Long-term Outcome
Measure:
Private sector dollars (in millions) invested in distressed communities as a result of EDA
investments. Measure is based on 3, 6 and 9 year anticipated private sector investment
resulting from investments by EDA. Results shown for 1997 investments only and
demonstrate the increased impact projects have as they are completed and attract additional
private investment.
Explanation:
Measure is based on 3, 6 and 9 year anticipated private sector investment resulting from
investments by EDA. Results are discounted by 25% to account for non-EDA funding and
other external factors. Results shown are for 1997 investments only.
Year
Target
Actual
2000
116
199
2003
581
2,475
2006
1,162
・・・
Program Follow-up Actions(プログラム改善のための取組み)
Year Began
Follow-up Action
Status
EDA's
reauthorization
now Action taken, but
2004
provides new authority to reward not completed
outstanding performance by grant
recipients who excel in carrying
out projects that create jobs.
Comments
The interim final regulations have been issued.
Final regulations will be issued after the public
comment period. Upon issuance of the final
regulations, EDA will initiate performance
assessments of grant recipients in due course,
consistent with EDA’s 9-year investment
impact horizon, and subject to funding
availability.
・・・
(出所)OMB ExpectMore.gov ウェブサイト
(http://www.whitehouse.gov/omb/expectmore/detail.10000032.2005.html)より、野村総合研究所作成
75
(3)PART の実施状況・評価
①PART の実施状況
●2008 年度までに全プロジェクトを対象とする予定
• PART は、2004 年度予算編成(2003 年度実績調査)から開始。5 年間かけて、対象とするプログラ
ムを段階的に拡大し、2008 年度に全プログラムを対象とする予定。導入初年度の FY2004 予算編
成の際には連邦政府全体で約 234 本を対象に評価が実施され、翌 FY2005 予算編成の際には、
前年度に実施した 234 本に新たなプログラムを加えた計 399 本を対象に評価を実施。そして最新
の FY2007 予算編成の際には、計 794 本のプログラムが評価の対象となっている。
●各省庁において、PART のやり方が定着してきている
• OMB は、ウェブサイトで、web 上では、FY2007 年度予算編成における PART の評価結果を公表し
ている。これを見ると、「有効」(16%)、「ある程度有効」(29%)、「普通」(28%)、「有効ではない」(4%)、
「評価不能」(24%)となっている。「評価不能」の割合は、FY2004 年度は 50%だったのが年々低下
しており、各省庁において PART のやり方が定着してきたことが伺える。
図表 PART の結果
0%
FY2004
(N=234)
FY2007
(N=794)
10%
6%
20%
30%
2 4%
16%
40%
15 %
50%
60%
2 8%
有効(Effective)
普通(Adequate)
評価不能(Results Not Demonstrated)
80%
90%
100%
50%
5%
29 %
70%
4%
24 %
ある程度有効(Moderately Effective)
有効ではない(Ineffective)
(出所)OMB 資料(http://www.whitehouse.gov/omb/budget/fy2007/sheets/part.xls)より、野村総合研究所作成
76
②PART に対する評価
●GPRA に比べて、積極的に取り組まれている
• PART は、現ブッシュ大統領のイニシアティブで導入したもので、法制化はされていないが GPRA
に比べて政権としてのプライオリティが高く、積極的に取り組まれている。
●PART 導入により、省庁職員の意識改革に効果があった、との見方がある
• 省庁職員からは、PART 導入の結果、①各省庁内部で、予算、調達、IT、業務に関連する人材が
一同に会して、今まで収集されていなかった重要な情報を収集・共有する機会が与えられた、②
PART 実施の時間的制約が、良い意味でのプレッシャーとなり、省庁内部で有益な議論ができた、
と PART に対して肯定的な意見がある。
●OMB のレビューでは、省庁による評価結果、次いで、予算要求額に関する指摘が多い
• FY2004 で対象となった 234 のプログラムには、計 612 項目の OMB 勧告が付されており、その内訳
は、プログラムの評価に関するもの(49%)、予算額に関するもの(18%)、プログラムの管理に関する
もの(18%)、プログラムの設計に関するもの(15%)となっている。
●PART の質問や評価基準について、技術的な問題点を指摘する声が多い
• PART において各省庁は、アウトカムに焦点を置いた長期的な業績指標の設定が求められており、
各省庁は、達成したいアウトカムを定義した上で、プログラムの活動がそのアウトカムの実現に寄
与しているかどうかを、業績指標を利用して判断しなければならない。しかし、実際には、プログラ
ムを通じて達成したいアウトカムが定義されていなかったり、プログラムの活動(アウトプット)とアウ
トカムのリンク付けができていないケースが多い。(GAO(2004)は、49%のプログラムで「適切なアウト
カム指標が設定されていない」と指摘。)
• 施策に複数の狙いがある場合や、同様の狙いをもった他の施策がある場合、評価対象となってい
る施策の成果だけを取り出して提示しにくい。
• プログラムが複数省庁にまたがる場合の評価手法が整理されていない。
• PART の質問の中には、表現が主観的(「意欲的な」等)で、数量的な評価がしにくいものがある。
• 業績情報がない場合、データの質に問題がある場合、プログラムに複数の目的が設定されている
場合等でも、「Yes/No」で回答する必要がある。例えば、補助金プログラムは、複数の関係者が存
在し、連邦政府の取組みの効果のみを取り出して測定することが困難なため、「no」を選択せざる
を得ず、スコアが低くなってしまう。
• OMB が、省庁からの回答内容や、省庁が設定したパフォーマンス指標が受け入れられるものであ
るか否かを判断する際に、一貫した解釈基準を持ち合わせていないとして、OMB による分析の客
観性を疑問視する意見もある。
●PART と GPRA との関係が不明確
• PART は行政府内で利用されているのに対し、GPRA は行政府、議会との間のコラボレーションプ
ロセスとして利用されており、GPRA と PART の連携は薄い。
77
• GPRA と PART は、目標設定と評価という手続きが共通しており、各省庁にとって、双方の作業を
行い、かつ両者を調整することは負担が大きい。ブッシュ政権は GPRA の作業を PART に吸収さ
せる方向で検討を進めているが、GAO は、政策レベルの評価を行おうとする GPRA の機能は、
PART で代替できるものではない、と指摘している。
●OMB および各省庁において PART をサポートするための十分なリソースが確保できていない
• 連邦政府が行っている全てのプログラムについて、OMB の数少ない人材が、省庁から提出された
評価結果の全てをレビューすることは物理的に難しい。
• また、OMB は、現在の PART における課題として、各省庁における PART の担当者の訓練が足り
ず、OMB が細かくチェック・管理しなければならないことをあげている。
78
2.政策評価と予算の連携
1)予算制度の概要
(1)予算制度の概要
•
アメリカ連邦政府の予算(budget)のうち、歳出(appropriation)は議決の対象となっているが、歳入は
対象となっていない。
•
歳出は、「義務的経費」と「裁量的経費」に分けられる。
○裁量的経費(discretionary spending)
議会が毎年可決する 13 本の歳出法(appropriation act)によってその金額が決められる経費。
歳出全体の3分の1。
(例)国防費、高速道路建設費、宇宙開発費、教育関係費、対外援助費 等
○義務的経費(mandatory spending)
毎年の立法措置がなくても、現存する権限法(authorization act)によってその金額が決めら
れる経費。歳出全体の3分の2。この経費の水準を変更する場合には、受給資格に関わる法
律本体を修正しなければならない。
(例)国債費、社会保障費、国家公務員給与 等
•
歳出額は、「予算権限(budget authority)」ベースの金額と、「支出(outlay)」ベースの金額が別々に示
される。
○予算権限ベース(BA:budget authority)
:複数年度にわたり支出する歳出額の限度
○支出ベース(OT:outlay)
:その年に実際に使われる金額
各省庁は、付与された BA の範囲で支出を行うことができる。しかし、BA が立法化されていても、毎年
度の歳出法において OT が立法化されなければ支出できない。新たに付与された BA の全額が、当
該年度内に支出されるわけではなく、翌年度以降の支出に繰り越すこともでき、また、前年度以前の
BA に基づいて、新たな手続なしに当該年度に支出を行うこともできる。このため、過去の支出額を知
りたいときは、過去の OT を見なければならない。
•
連邦政府の予算は、「発生主義」ではなく「現金主義」で編成されている5。しかし、現金主義とは言っ
ても、上記のように、複数年度にわたる支出の総額を議決の対象とする「支出負担確定主義」をとって
いるため、長期的にコストが把握できるため、予算における「発生主義」の導入については消極的と言
われている。
図表 2007 年度予算教書における連邦政府歳出の内訳
歳出:2 兆 7,700 億ドル(支出ベース)
○裁量的支出:1 兆 290 億ドル(支出ベース) ※歳出権限ベースでは 8,707 億ドル
○義務的支出:1 兆 4,940 億ドル(支出ベース)
○利払い費:2,470 億ドル(支出ベース)
(出所)外務省「2007 年度米国予算教書(概要)」(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/keizai/eco_tusho/us_2007.html)
5
予算でも一部の項目(融資プログラム等)では発生主義的な考え方が導入されている(財務省「公会計に関する海外調
査報告書」(2003))。また、財務諸表は発生主義で作成されている。
79
•
議会での議決単位は「予算項目(budget account)」または「歳出項目(appropriation account)」と呼
ばれ、連邦政府全体で約 1,200 の account がある。account 内の「細目(line-item)」が政策の単位と
なっている。account 内における流用は自由だが、account を越える流用は認められない。account の
大きさはまちまちであり、その数は年度によって変わる。
•
account とプログラムの関係はさまざまであり、account がプログラムの一部であったり、複数のプ
ログラムを構成していたりする、とのことである。
図表 商務省の歳出項目(appropriation account)
組織
Departmental Management
財源
Federal Funds:
General and special funds
Federal Funds:
Intragovernmental funds
Federal Funds:
Credit accounts
Economic Development Administration
Bureau of the Census
Economic and Statistical Analysis
International Trade Administration
Bureau of Industry and Security
Minority Business Development Agency
National Oceanic and Atmospheric
Administration
U.S. Patent and Trademark Office
Technology Administration
National Technical Information Service
National Institute of Standards and
Technology
National
Telecommunications
and
Information Administration
Trust Funds
・・・
・・・
・・・
・・・
Federal Funds:
General and special funds
・・・
・・・
歳出項目(appropriation account)
Salaries and Expenses
Office of the Inspector General
National
Intellectual
Property
Law
Enforcement Coordination Council
HCHB Renovation and Modernization
Working Capital Fund
Franchise Fund
Emergency Oil and Gas Guaranteed Loan
Program Account
Emergency Oil and Gas Guaranteed Loan
Financing Account
Emergency Steel Guaranteed Loan Program
Account
Emergency Steel Guaranteed Loan Financing
Account
Gifts and Bequests
・・・
・・・
・・・
・・・
Operations and Administration
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
(出所)OMB ウェブサイト“FY2007 予算教書付属資料”(http://www.whitehouse.gov/omb/budget/fy2007/appendix.html)
80
(2)予算編成プロセス
•
連邦政府の予算編成プロセスは、行政府(各省庁・OMB・大統領)において作成される予算教書[大
統領予算](President’s Budget)と、それを参考に審議が進められる立法府(議会)での予算承認に
分けられる。
•
行政府で作成される予算教書は、大統領から議会への予算要求及び政策提案との位置づけであり、
法的に拘束力を持つものではない。議会では、予算教書を出発点(starting point)として検討を行い、
最終的には、歳出予算法(Appropriation Bills)の決議によって成立する。歳出予算法の内容は、通
常、予算教書とは一致しない。歳出予算法は、歳出のうち「裁量的経費」の配分を決定するもので、
毎年度議決される。「義務的経費」は、法改正がない限り恒久的に支出できる仕組みになっており、
毎年予算審議を行うことはない。
•
予算編成プロセスは、2007 年度予算(2006 年 10~2007 年9月)の場合、2005 年 9 月まで各省庁内
(CFO と各 bureau の間)で調整を行い、同月、OMB に予算要求を提出。この際、各省庁は予算要求
とあわせて予算根拠資料(budget justification)を OMB に提出する。そして、11 月中旬から OMB と
各省庁間の調整が始まり、たいていは要求額の削減が図られる。(なお、11 月 15 日に 2005 年度の
Performance and Accountability Report(PAR)が公表され、これに関してもあわせて検討される。)そ
して、OMB が予算案を作成して大統領に提出し、2月、大統領はこれを予算教書として議会に提出
する。
•
各省庁は、OMB が作成した予算に納得できない場合、副大統領(vice president)に意見を述べるこ
とができる。それでも解決されない場合、最終手段として、予算教書の提出とあわせ、議会に直接、
予算根拠資料(congressional budget justification)を提出することができる。各省庁が OMB に提出
する予算根拠資料は省庁によってフォーマットも内容も異なるが、これに比べると議会向けの予算根
拠資料はフォーマットが統一されているとのことである。なお、どちらも、GPRA や PART と直接関係
するものではない。
図表 予算教書の編成プロセス
Budget Justification
の提出
各省庁
OMB
調整・フォー
マットの統一
大統領
予算教書の
提出(2月)
議会
(OMBとの調整に不満がある場合)Congressional Budget Justificationを提出可能(2月)
(出所)OMB ヒアリングに基づき、野村総合研究所作成
81
図表 連邦政府の予算編成プロセス(2006 年度予算の場合)
省庁
04年度
OM B
議会
大統領
「予算要求に関する政策ガイダンス」発表
春
06年度予算案作成
予算・オプションについて協議
6月
9月上旬
Circular-A11(予算に関する通達)
を提示
「06年度予算要求案」、
「06年度年次業績計画案」
を提出
05年度
11月末
秋期レビュー
・各省庁の予算要求案を、大統領
が提示した優先順位・実績・予算
制約等を勘案して分析。
差し戻し(「06年度予算案」の決
定を通知)
各省の予算要求案の分析結果と
予算政策案とを踏まえ、「06年度
予算案」一式を提出
変更・修正要求(12月中)
1月
予算根拠資料(議会提出用)、
「05年度 年次業績報告・財務報告」
(Performance and Accountability
Report)を提出
根拠資料の内容を審査
「06年度予算教書」を提出
①議会予算局(CBO)が、経済・
予算見込を予算委員会に報告
②各委員会が、予算概算を予算
委員会に報告
③予算委員会が、「予算決議案」
を決議
④両院協議会で上下院の「予算
決議案」を調整し、「予算合同
決議案」を決議
⑤下院で「歳出法案」可決
5月中旬
~6月末
7月中旬
● 「予算中間レビュー」を発表
06年度
10月
2~3月
07年度
3月末
● 最終の「06年度年次業績計画」
改訂版を完成。
最終の「06年度年次業績計画」を
提出
「06年度年次業績報告・財務報告」
を提出
(出所)国土交通省報告書(2004)をベースに一部修正
(注)アメリカ合衆国の会計年度は前年 10 月~当該年 9 月。2006 年度予算(FY2006)の場合、2005 年 10 月~2006 年 9 月。
82
議会における検討プロセス
•
予算のうち、義務的経費(mandatory program)は、授権委員会(authorizing committee)で決められ、
一 度 決 め ら れ る と 毎 年 継 続 し て 支 出 さ れ る ( one-time entitlement ) の に 対 し 、 裁 量 的 経 費
(discretionary program)は、予算委員会(budget committee)を経て歳出委員会(appropriation
committee)で決められ、毎年議決の対象となる。PART の対象となるのは後者のみである6。
•
議会における裁量的経費の決定プロセスは、予算委員会を中心とする「予算プロセス(budget
process)」と、歳出委員会を中心とする「歳出プロセス(appropriations process)」に分かれる。
①予算プロセス
•
歳出と歳入のバランスを考慮し、政府全体の歳出入基準(予算の大枠)を示す「予算決議(budget
resolution)」を行うプロセス。
•
大統領から予算教書が提出されると、上院(Senate)と下院(House of Representative)の各予算委員
会(budget committee)で、予算教書、各常設委員会の「予算見積報告書」、議会予算局(CBO)の
「財政政策報告書」、公聴会の意見をベースに「予算決議案7」を別々に作成。その後、各本会議
で審議・採決を行った後、両院協議会で予算合同決議案(Concurrent Budget Resolution)としてま
とめ、再度各本会議で採決して予算決議が成立する。
•
法律改正が必要な場合、予算決議案に、財政調整法(reconciliation)を含める。
•
予算決議は法律ではないため、大統領の署名を必要としない。
②歳出プロセス
•
歳出のうち「裁量的経費」の具体的な配分を規定する「歳出法(appropriation acts)」を策定するプ
ロセス。
•
裁量的経費は、予算決議においては「歳出委員会管轄予算」として盛り込まれる。予算決議がなさ
れると、上・下院の各歳出委員会(appropriations committee)8が 13 本の歳出法案(appropriation
bills)を作成9。各院の本会議で審議・採決を行った後、両院協議会で妥協案を作成し、再度各本
会議で採決後、大統領の署名を得て歳出法として成立する。
•
歳出委員会は、歳出法案を作成する過程で、政府機関の意見を把握する仕組みを設けている。具
体的には、まず 2 月上旬に、各政府機関は歳出委員会に対し、予算教書の細目版である「予算説
明資料(congressional justification)」を提出する。そして、歳出委員会は、各政府機関に対してヒア
リングを実施(ヒアリングの席には OMB の Budget Examiner も同席)。この他、OMB や各政府機
関との間で常に非公式な意見交換が行われているとのことである。
•
大統領には、議会で可決された法案に対しては署名するか拒否権を発動するかという選択しかな
く、部分的な修正を行うといったことは認められていない。拒否権が発動された場合、上院と下院
の両方で3分の2以上の賛成があれば成立する。
6
7
8
9
ただし、前者でも恩給(pension)プログラムのように、PART の対象となったものもある。
予算決議案は歳入と歳出の両方を包括するもの。歳出は、裁量的経費と義務的経費のどちらも含まれる。
歳出委員会は予算委員会に比べて権限が大きく、議員による地元利益誘導が顕著であると言われている。
各歳出委員会には、概ね歳出法案ごとに小委員会(subcommittee)が設置されており、実際には小委員会が法案を作成し、
各歳出委員会がこれを承認する。
83
•
歳出法案の大枠は、予算決議に従う必要がある。
•
年度末(9 月末)までに歳出法が成立しない場合は、政府機関の運営が途切れないよう、暫定予算
の継続決議(continuing resolution)を行う。
84
図表 議会での予算手続スケジュール
大統領予算教書を提出
CBO が「財政政策報告書」を議会に提出
上下両院の常設委員会が、各院の予算委員会に「予算見積報告書」を提出
下院予算委員会が、予算決議案を作成⇒下院本会議で審議・採決
上院予算委員会が、予算決議案を上程⇒上院本会議で審議・採決
上下両院協議会が、予算合同決議案を作成⇒両院の本会議で採決
予算合同決議が成立⇒上下各院の歳出委員会が、歳出法案作成を開始
(予算合同決議が未決の場合、下院歳出委員会が歳出法案作成を開始)
下院本会議で、歳出法案の審議・採決
上院本会議で、歳出法案の審議・採決
⇒上下両院協議会で妥協案作成
⇒上下両院の本会議で再審議・採決
⇒大統領の署名により歳出法成立
会計年度開始
2 月第 1 月曜日
2 月 15 日
予算教書提出後6週間以内
3月
4月1日
4 月 1 日~15 日
4 月 15 日
5 月 15 日
6 月 30 日
7 月 1 日~8 月 30 日
10 月 1 日
(出所)NEDO「米国の予算制定手続について」(2002)
図表 2006 年度歳出法と対応する歳出小委員会
歳出法
①農務・地域開発・食品医療品局・関連省庁
歳出法
Agriculture, Rural Development, Food and Drug
Administration,
and
Related
Agencies
Appropriations Act
②科学・国務・法務・商務・関連省庁歳出法
Science, State, Justice, Commerce, and Related
Agencies Appropriations Act
③対外活動・輸出金融・関連プログラム歳出法
Foreign Operations, Export Financing, and Related
Programs Appropriations Act
④国防省歳出法
下院歳出小委員会
Agriculture, Rural Development,
Food and Drug Administration,
and Related Agencies
上院歳出小委員会
Agriculture, Rural Development,
and Related Agencies
Science, the Departments of
State, Justice, and Commerce,
and Related Agencies
Commerce, Justice, and Science
Foreign
Operations,
Export
Financing and Related Programs
State, Foreign Operations, and
Related Programs
Defense
Defense
Energy and Water Development,
and Related Agencies
Homeland Security
Energy and Water
Department of Defense Appropriations Act
⑤エネルギー・水資源開発歳出法
Energy and Water Development Appropriations Act
⑥国土安全保障省歳出法
Homeland Security
Department of Homeland Security Appropriations
Act
⑦内務省・環境・関連省庁歳出法
Department of the Interior, Environment, and
Related Agencies Appropriations Act
⑧労働省・保健福祉省・教育省・関連省庁歳
出法
Departments of Labor, Health and Human Services,
and Education, and Related Agencies Appropriations
Act
⑨軍隊生活改善・退役軍人歳出法
Military Quality of Life and Veterans Affairs
Appropriations Act
⑩交通・財務・住宅都市開発・司法・コロンビア
特別区・独立機関歳出法
Transportation, Treasury, Housing and Urban
Development, the Judiciary, the District of
Columbia, and Independent Agencies Appropriations
Act
⑪立法府歳出法
Interior,
Environment,
Related Agencies
and
Interior and Related Agencies
Labor, Health and Human
Services, Education, and Related
Agencies
Labor, Health and Human Services,
Education and Related Agencies
Military Quality of Life and
Veterans Affairs, and Related
Agencies
Transportation, Treasury, and
Housing
and
Urban
Development, The Judiciary,
District of Columbia
Military Construction and Veterans
Affairs
-
Legislative Branch
Legislative Branch Appropriations Act
(出所)議会図書館ウェブサイト http://thomas.loc.gov/home/approp/app06.html
85
Transportation,
Treasury,
the
Judiciary, Housing and Urban
Development,
and
Related
Agencies
District of Columbia
図表 議会における予算・歳出決定プロセス
86
(3)予算に関するドキュメントの概要
①予算教書 〔大統領予算〕
(Budget of the United States Government, Fiscal Year 2007 / President’s FY2007 Budget)
•
予算教書は、OMB のウェブサイトに掲載されている。予算教書は複数の文書から構成され、大きく
「予算文書(budget documents)」と「付属文書(supporting documents)」に分けられる。予算文書
は 、 予 算 本 体 ( Budget of the United States Government ) の 他 、 「 分 析 的 視 点 ( Analytical
Perspectives)」、「PART 結果(Government-wide PART summary data)」、「経年推移表(Historical
Tables)」、「補遺(Appendix)」で構成されている。
図表 2007 年度予算教書の構成
THE BUDGET DOCUMENTS
・ Budget of the United States Government, Fiscal Year 2007
・ Analytical Perspectives, Budget of the United States Government, Fiscal Year 2007
・ Government-wide PART summary data →PART の専門ウェブサイト ExpectMore.gov にリンク
・ Historical Tables, Budget of the United States Government, Fiscal Year 2007
・ Budget of the United States Government, Fiscal Year 2007—Appendix
SUPPORTING DOCUMENTS
・ Major Savings and Reforms in the President's 2007 Budget
・ Federal Credit Supplement
・ Object Class Analysis
・ Balances of Budget Authority
・ Budget System and Concepts
・ Update to the Report on Information Technology (IT) Spending for the Federal Government
(出所)OMB ウェブサイト“FY2007 予算教書付属資料”
(http://www.whitehouse.gov/omb/budget/fy2007/appendix.html)
87
①-1 予算教書 補遺(Appendix)
•
予算教書補遺では、歳出項目(appropriation account)ごとに予算要求の根拠が文章で説明され、さら
に、目標、業績指標(Performance measures)およびその 2005 年度実績値、2006 年度見通し、2007 年
度目標値が明示されている。(ただし、目標・業績指標が示されていない歳出項目もある。)
図表 2007 年度予算教書 補遺(appendix)における
商務省産業安全局(Bureau of Industry and Security)部分の記述 (1/2)
←appropriation account
(出所)OMB ウェブサイト“FY2007 予算教書付属資料”(http://www.whitehouse.gov/omb/budget/fy2007/appendix.html)
88
図表 2007 年度予算教書 補遺(appendix)における
商務省産業安全局(Bureau of Industry and Security)部分の記述 (2/2)
(出所)OMB ウェブサイト“FY2007 予算教書付属資料”(http://www.whitehouse.gov/omb/budget/fy2007/appendix.html)
89
②商務省予算要求書
•
商務省のウェブサイトでは、「2007 年度商務省予算要求書(budget submissions)」として、以下の文書
が公表されている。下の3つは OMB のウェブサイトの予算教書にリンクしており、実際に商務省のウ
ェブサイトに掲載されているのは「2007 年度商務省予算の概要(Commerce's FY 2007 Budget in
Brief)」と「2007 年度予算ニュースリリース(FY 2007 Budget News Release)」の2つである。
図表 商務省予算要求書(FY 2007 Budget Submissions)の概要
FY 2007 Budget Submissions
Commerce's FY 2007 Budget in Brief
FY 2007 Budget News Release
President's FY 2007 Budget - Commerce Chapter →OMB サイトにリンク
President's FY 2007 Budget Appendix - Commerce →OMB サイトにリンク(①-1)
FY 2007 Program Assessment Rating - Commerce →OMB サイトにリンク
(出所)商務省予算局ウェブサイト(http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/default.htm)
•
「 2007 年 度 商 務 省 予 算 の 概 要 ( Commerce's FY 2007 Budget in Brief ) 」 の 中 の “ BUREAU
DESCRIPTIONS”で、目標(goal)ごとの予算額および業績指標が政府機関ごとに公表されている。
図表 商務省予算要求書における“Commerce's FY 2007 Budget in Brief”の構成
Commerce's FY2007 Budget in Brief
INTRODUCTION
SUMMARY TABLES AND GRAPHS
Department of Commerce Funding and Employment
Budget Authority - FY 2005-2007, 2007-2011
Outlays - FY 2005-2007, 2007-2011
FY 2007 Distribution of Resources by Strategic Goal
Historical Summary of Resources
Full-Time Equivalent Employment: FY 2005 - FY 2007
Bridge from 2006 and 2007 Appropriations to 2006 and 2007 Budget Authority
Comparison of 2007 Estimate with 2005 Actual and 2006 Enacted
Summary of Requirements with Detail of Adjustments-to-Base
Comparison by Bureau of Adjustments-to-Base
Budget Authority by Function
BUREAU DESCRIPTIONS
Departmental Management
Office of the Inspector General
Economic Development Administration
Economics and Statistics Administration
Bureau of the Census
Economic and Statistical Analysis
International Trade Administration
Bureau of Industry and Security
Minority Business Development Agency
National Oceanic and Atmospheric Administration
Patent and Trademark Office
Technology Administration
Under Secretary for Technology
National Institute of Standards and Technology
National Technical Information Service
National Telecommunications and Information Administration
AUTHORIZING LEGISLATION REQUIRED FOR FY 2007
DEPARTMENT-WIDE SUMMARY
(出所)商務省予算局ウェブサイト(http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/FY07BIB.htm)
90
図表 商務省予算要求書に示される産業安全局(Bureau of Industry and Security)の業績指標
(出所)商務省ウェブサイト“Commerce's FY2007 Budget in Brief - BUREAU DESCRIPTIONS”
(http://www.osec.doc.gov/bmi/budget/FY07BIB.htm)
91
(4)予算編成における主要遂行機関
①OMB
•
連邦政府では、大統領府に属する行政管理予算局(OMB:Office of Management and Budget)が、
省庁からの予算要求をとりまとめ、大統領予算(予算教書)を編成している10。
•
OMB は、省庁の概算要求などを約1年でとりまとめ、大統領の予算教書を作成する。大統領は
OMB に理念を伝え、それに従って OMB のリーダーシップで予算内容が固められると、省庁へ予
算案や決定事項などが伝えられて双方がやりとりするといったような、いったりきたりのプロセスを
踏む。
•
OMB の前身は財務省予算局であり、これが大統領府に移管され、1970 年に OMB に改組された
もの。現在の財務省には予算編成権はない。
②CBO
•
立法府には、付属機関として議会予算局(CBO:Congressional Budget Office)がある。OMB が、
大統領の出身政党によって立場が変わるのに対し、CBO と GAO は完全に中立の立場である。
CBO は、エコノミストなどの専門家集団で、議会のためにテクニカルな部分をカバーするために設
置されている。政策の立案や立法権限はない。
10
OMB は行政府の中で非常に力を持っていると言われている。
92
2)政策評価と予算との連携の仕組み・実態
•
政策評価と予算を連携させる仕組みは、一般に「業績予算(performance budget)」と呼ばれる。事業
費、人件費、公債費といった費目ごとに予算編成を行う従来の「費目別予算(Line item budget)」のも
とでは、前年度の予算額を前提とする「積み上げ方式」で予算編成が行われることが常で、①前年度
からの継続事業であること、②特定財源が確保されていること、③政治的に重要なものであること、と
いった基準によって予算が配分されがちである。これに対し、業績予算では、まず行政が解決すべき
課題や、達成すべき成果を明確にすることが先にあり、予算編成のプロセスでは、それらを達成する
手段(政策・施策)とリソースについての分析や検討に重点が置かれる。具体的には、まず業績情報
とコスト情報の分析結果を基に(評価)、将来に到達すべきアウトカムを明らかにして、それらを達成
するための適切な手段(計画)、およびリソース(予算)を検討するもので、評価-計画-予算編成の
3つの機能が一体になったもの、ととらえられる。
(1)GPRA と予算との連携
①連携を促進する仕組み
●目標の未達成・遅延に関して、行政に対する機械的な不利益措置は盛り込んでいない
• GPRA では、目標の未達成・遅延に関して、予算や人事への反映といった、行政に対する機械的
な不利益措置は一切盛り込んでいない。
• また(オーストラリアやニュージーランドと異なり)、GPRA の導入に際し、予算の移流用に関する各
省庁の裁量権も拡大されていない。この理由としては、①もともと年度をまたがった支出が可能で
あったこと、②議会が省庁への権限委譲に否定的だったこと、等が考えられる。
• 評価結果と予算編成を連動させないのは、60 年代の PPBS(Planning, Programming, Budgeting
System)の失敗に対する反省があると言われている。PPBS は、目標水準から演繹的・科学的に予
算配分額を決定する仕組みだったが、多くの分野で金銭的評価ができなかったこと、予算決定権
を持つ議会が予算編成に関与する機会が与えられていなかったことなどから、うまく機能せず、
1971 年に廃止された。
●ただし、OMB の予算編成プロセスにおいて、評価結果が活用されるような工夫がなされている
• GPRA の評価結果が予算編成に直接反映される仕組みとはなっていないが、一連の計画・目標と
実績を情報公開することで、間接的に強制力が働くことが期待されている。
• また、GPRA そのものは予算編成の道具ではないが、OMB の予算編成プロセスにおいて、評価結
果が活用されるような工夫がなされている。OMB は、大統領予算(予算教書)の編成にあたり、各
省庁に対し、新年度の予算要求とあわせて、新年度の年次業績計画案を提出することを求めて
いる。OMB はこれを受けて、目標水準と投入資源(予算)との関係を審査し、予算要求額および
年次目標の内容・水準について各省庁と協議を行った上で、大統領予算案を作成。予算案と、過
去の年次業績報告・新年度の年次業績計画をあわせて議会に提出する。このように、各省庁は、
スケジュール上、予算要求と年次業績計画の作成を並行して進める必要があり、かつ、それらの
整合を図ることが求められている。
93
②連携の実態
●各省庁での予算作成、議会での予算審議において、GPRA の評価結果が無視されている
• ブッシュ大統領は、「GPRA によって、各省庁は毎年 13,000 ページもの業績計画を作るようになっ
たが、そのほとんどが予算編成段階では無視されている」と指摘。GPRA の結果が活用されていな
いのは、配賦された予算が生み出した業績をフォローし、これを翌年度の予算編成にフィードバッ
クするような明確な仕組みがないためと考えられる。
• GAO(2001.5)によると、予算などの資源配分に、業績に関する情報を利用していると回答した担
当者の割合は、省庁によってばらつきがあった。最も高い人事管理庁でも7割に達しておらず、最
も低い国立科学財団では 4 分の 1 以下にとどまった。
• 田中(2005)は、GPRA 最大の問題は予算編成を巡る行政府と議会の分断にある、と指摘。アメリ
カでは、議会が予算の編成権・議決権を有しており、大統領予算はあくまで議会での検討の出発
点でしかないため、議会の各委員会が GPRA による業績情報を予算編成のために利用しないか
ぎり業績予算は機能しない。しかし、GAO(2004)によると、議会は、議員たちの予算編成に対する
影響力の低下を懸念し、予算に関わる意思決定に業績情報を使うことには基本的に消極的とのこ
と。
• 予算編成において業績評価の結果が活用されない理由として、年次業績計画の業績目標と予算
書の議決項目の不一致が挙げられる。GAO によると、これらの整合がとれている省庁は少数に留
まっているとのこと。
●人的リソースとのリンク付けが行われていないため、業績達成のインセンティブが働きにくい
• 評価結果と人的リソース(人材マネジメント)とのリンク付けが行われていないため、業績改善のイン
センティブが働かない。
• ニュージーランドのように省庁トップの目標達成責任を明確にしていないため、達成に向けてのトッ
プの関与に一貫性がない。
94
(2)PART と予算との連携
①連携を促進する仕組み
●各省庁は、OMB への予算要求の際、PART の結果を添付することが求められている
• PART は、GPRA と異なり、もともと評価結果を予算編成に反映することを意図して制度が設けられ
たもの。
• FY2004 予算編成以降、連邦政府の各省庁は、OMB への予算要求の際、PART の結果を添付す
ることが義務づけられている。OMB は、PART の評価結果を審査するとともに、予算編成の参考資
料として活用している。PART の評価結果は、予算教書に一覧表として掲載されている。次ページ
に 2007 年度予算教書に掲載されている商務省のプログラムの評価結果を掲載する。
95
図表 商務省全プログラム 評価結果一覧表(FY2007 予算編成)
PART 評価結果
Agency/Program Title
Advanced Technology Program
(先進技術プログラム)
Bureau of Economic Analysis
(経済分析局)
Bureau of Industry and Security
(産業安全保障局)
Census Bureau: Current Demographic
Statistics
(統計局:人口統計)
Census Bureau: Current Economic Statistics
and Census of Governments
(統計局:経済統計・政府センサス)
予算額
Section 1
Section 2
Section 3
Section 4
Program
Purpose &
Design (20%)
Planning
(10%)
Management
(20%)
Results
(50%)
20%
86%
100%
100%
88%
100%
100%
100%
73%
100%
100%
100%
Program Funding Level
Rating
普通
67%
(Adequate)
有効
87%
(Effective)
ある程度有効
56% (Moderately
Effective)
74%
有効
(Effective)
ある程度有効
74% (Moderately
Effective)
ある程度有効
59% (Moderately
Effective)
有効
80%
(Effective)
ある程度有効
74% (Moderately
Effective)
有効
74%
(Effective)
評価不能
20% (Results Not
Demonstrated)
評価不能
0% (Results Not
Demonstrated)
ある程度有効
67% (Moderately
Effective)
評価不能
26% (Results Not
Demonstrated)
2005実績
(Actual)
2006法定
(Enacted)
Program Type(s)
2007要求
(Request)
Type 1
136
79
0 CO
73
76
76 DF
67
75
79 RG
79
77
52 DF
139
140
156 DF
386
454
512 DF
67
68
82 DF
9
9
10 DF
10
11
11 DF
128
109
98 BF
9
8
7 CO
256
250
297 CO
64
61
61 RG
80%
100%
100%
100%
100%
86%
100%
100%
100%
80%
88%
100%
100%
88%
100%
100%
25%
67%
Commerce Small Business Innovation
Research Program
(中小ビジネス刷新のための調査プログラム)
40%
12%
90%
Economic Development Administration
(経済開発庁)
80%
100%
90%
International Trade Administration: Import
Administration
(国際貿易庁:輸入関係)
80%
44%
91%
International Trade Administration: Market
Access and Compliance
(国際貿易庁:市場アクセス・コンプライアンス)
100%
75%
86%
26%
普通
(Adequate)
40
39
39 DF
International Trade Administration: U.S. and
Foreign Commercial Service
(国際貿易庁:国内及び海外の商業サービス)
60%
75%
100%
33%
普通
(Adequate)
219
229
248 DF
Manufacturing Extension Partnership
(製造業振興パートナーシップ)
40%
86%
91%
108
105
46 CO
Minority Business Development Agency
(少数民族企業振興庁)
60%
57%
100%
30
30
30 CO
100%
100%
86%
452
569
535 R&D
708
687
649 RG
177
156
180 R&D
普通
(Adequate)
264
201
167 R&D
85
93
91 DF
普通
(Adequate)
71
56
42 RG
1,707
1,779
1,908 CA
17
18
23 DF
88
67
67 BF
1,316
1,495
1,640 DF
192
188
203 DF
Census Bureau: Decennial Census
(統計局:10年センサス)
Census Bureau: Economic Census
(統計局:経済センサス)
Census Bureau: Intercensal Demographic
Estimates
(統計局:国勢調査人口予測)
Census Bureau: Survey Sample Redesign
(統計局:サンプリング方法の見直し)
Coastal Zone Management Act Programs
(沿岸地域管理法プログラム)
National Institute for Standards and
Technology Laboratories
(国立標準化技術研究所)
National Marine Fisheries Service
(国立海洋漁業庁)
National Oceanic & Atmospheric
Administration: Climate Program
(国立海洋大気庁:気候プログラム)
National Oceanic & Atmospheric
Administration: Ecosystem Research
(国立海洋大気庁:生態系研究)
National Oceanic & Atmospheric
Administration: Navigation Services
(国立海洋大気庁:航行サービス)
National Oceanic & Atmospheric
Administration: Protected Areas
(国立海洋大気庁:保護地域)
80%
100%
46%
80%
90%
82%
60%
100%
91%
ある程度有効
80% (Moderately
Effective)
評価不能
13% (Results Not
Demonstrated)
75%
有効
(Effective)
普通
39%
(Adequate)
ある程度有効
74% (Moderately
Effective)
46%
80%
100%
100%
ある程度有効
73% (Moderately
Effective)
100%
89%
100%
39%
National Oceanic & Atmospheric
Administration: Weather and Related Programs
(国立海洋大気庁:気象関係プログラム)
100%
100%
75%
ある程度有効
61% (Moderately
Effective)
National Telecommunications and Information
Adminstration
(国立電気通信・情報庁)
80%
100%
57%
50%
Pacific Coastal Salmon Recovery Fund
(太平洋沿岸サケ復興基金)
80%
57%
67%
100%
84%
84%
100%
86%
86%
U.S. Patent and Trademark Office - Patents
(特許商標庁:特許)
U.S. Patent and Trademark Office Trademarks
(特許商標庁:商標)
普通
(Adequate)
評価不能
20% (Results Not
Demonstrated)
普通
44%
(Adequate)
ある程度有効
53% (Moderately
Effective)
Type 2
Type 3
CO
(出所)OMB 資料(http://www.whitehouse.gov/omb/budget/fy2007/sheets/part.xls)より、野村総合研究所作成
96
②連携の実態
●PART の評価結果が良いプログラムは、OMB での予算編成の際、肯定的に考慮されている
• OMB では、大統領予算の編成において PART の評価結果を参考にしているとのことである。
FY2007 年度予算編成における PART の評価結果と、OMB による予算査定との間には緩やかな
相関関係が見られ、良好な評価結果のプログラムは予算編成にあたっても総じて肯定的に考慮さ
れている模様である。
図表 PART の結果と、予算教書における予算額の増減との関係(FY2007 予算) (件数)
0
20
40
60
80
100
120
140
77
12
有効 N=125
(Effective)
36
128
30
ある程度有効 N=230
(Moderately Effective)
72
82
45
普通 N=220
(Adequate)
92
1
有効ではない N=28
(Ineffective)
評価不能 N=191
(Results Not
Demonstrated)
3
4
21
50
59
81
1
増額
増減なし
減額
不明
(出所)OMB 資料(http://www.whitehouse.gov/omb/budget/fy2007/sheets/part.xls)より、野村総合研究所作成
97
図表 PART の結果と、予算教書における予算額の増減との関係(FY2007 予算) (割合)
0%
10%
20%
有効 N=125
(Effective)
50%
60%
80%
90%
29 %
31%
13%
42%
20%
3 7%
11%
70%
10%
56 %
普通 N=220
(Adequate)
評価不能 N=191
(Results Not
Demonstrated)
40%
6 2%
ある程度有効 N=230
(Moderately Effective)
有効ではない N=28
(Ineffective)
30%
14 %
7 5%
増額
増減なし
42 %
減額
0%
0%
0%
0%
31 %
26 %
100%
1%
不明
(出所)OMB 資料(http://www.whitehouse.gov/omb/budget/fy2007/sheets/part.xls)より、野村総合研究所作成
●OMB は大統領予算の編成に PART の結果を考慮している
• OMB へのヒアリングによると、OMB が編成する大統領予算においては、予算編成に PART の結
果を考慮しているとのことである。具体的には、PART のスコアが変わらないか下がった場合、予
算は変わらないか減らされるかのどちらかで、増やされることはない。(中には、プログラムを廃止
することもある。)また、PART のスコアが上がった場合は予算が増やされる可能性がある。(全体と
して予算は抑制傾向にあるため、増やされることは少ない。)例えば、“community economic
development program”というプログラムは、PART で”no impact”、”negative impact”が何年間も続
いたため、プログラムの見直しが図られたとのことである。OMB はこのように評価のサイクルが成立
している要因として、以下の 2 点を挙げている:①OMB が政策評価と予算編成の両方を所管して
いること。②PART も予算もプログラム単位で行われており、比較可能であること。
●ただし、OMB は PART の評価結果を機械的に予算の増減に反映しているわけではない
• PART の評価結果を予算編成に反映させるといっても、評価結果が機械的に予算の増減に反映
されるわけではない。OMB は、各種の通達やマニュアル等を通じて、プログラムの予算額の算定
には様々な要素が関連するため、PART のスコアが悪く(良く)ても、必ずしも予算を削減する訳で
はない、との方針を示しており11、ヒアリングにおいても同様の意見が聞かれた。ただ、PART の評
価が悪かったプログラムで予算を確保するためには、各省庁にはその必要性に関する説明が厳
しく求められる。
• OMB によると、「PART の意義は、予算編成の参考となる情報を増やすことで、資源配分に関する
決定の質を高める点にある。評価が低くても、予算を増やせば成果を向上させられると判断され
れば、予算が増やされることになる」とのこと。
11
OMB の PART のページを参照。http://www.whitehouse.gov/omb/part/
98
●OMB 以外の主体には PART の結果は活用されているとは言いがたい
• 予算決定プロセスには、大統領府(ホワイトハウス)、議会、さまざまな利益団体など、数多くの関
係者の諸要因が存在する。十分に結果を出していないプログラムであっても、現政権や議会がそ
の必要性を認識するものであれば、引き続き予算提供を受けたり、廃止ではなく改善要求に留ま
ることも十分に考えられる。
• GAO(2004.1)は、PART の課題の1つとして「議会とのコミュニケーションとの必要性」を指摘して
いる。これによると、予算を実際に決定するのは議会だが、議会における PART の理解度は必ず
しも高くなく、予算審議の参考にされていない。GAO は、PART の制度設計や運営の過程で、議
会関係者からのインプットを増やすべき、とのことである。
• いかなるプログラムの成果も一朝一夕にしてもたらされるものではない、という点も理解されており、
結果が出ていないので即予算削減、という手段が講じられるわけではない。GAO は、実際に
PART の結果が予算の大幅な変更に影響を及ぼした例は非常に少ないとしており、PART は予算
決定要因のひとつにすぎないと言える。
• PART 導入の際には、予算編成の参考とすること以外に、省庁が、PART で設定された質問に答え
ていくプロセスを通じて、プログラムの目的や結果に対してより強い意識をもつこと、自らが行って
いるプログラムをより深く理解すること、省庁にアカウンタビリティ(達成責任)を持たせ、パフォーマ
ンスを向上させること等が期待された。予算審議の参考にされていないからといって、PART が失
敗だったとするのは間違っている、との指摘がある。
●予算の決定権限を有しているのは議会だが、議会は評価結果をほとんど考慮していない
• 議会12へのヒアリングによると、予算と政策評価の連携に関して、大統領側は関心を持っているが、
現在のところ議会の関心は薄いようである。PART はブッシュ政権のイニシアチブなので、共和党
議員はサポートはしているが、強く推進しているわけではなく、民主党は全く関心を示していない
とのこと。前クリントン政権時は財政赤字の削減が政治的な関心事(political will)であったため、
民主党も共和党も財政責任(fiscal responsibility)を重視し、支出を厳しく管理する方向で政権も
議会も行動していたが、グリーンスパンの財政規律が功を奏し、90 年代後半から黒字(surplus)に
なって以降、財政管理に対する意識は薄れているとのことである。そして、9.11、イラク派兵、カトリ
ーナ、株式市場の崩壊といった大規模な支出を要する突発的な事件が相次ぎ、財政状況は再び
黒字から赤字に逆戻りしてしまったが、政治的な関心は目先の大事件にとらわれ、財政赤字につ
いては重要視されていないようである。議会が関心を持つのは選挙活動に直結するようなテーマ
であり、国民が財政状況に関心を持ち、それが political will になってはじめて GPRA や PART と
いった政策評価制度がツールとして機能しうるが、国民が財政状況に関心を持っていない以上、
議会も評価の結果を予算配分に反映させるようとはしない。現在、議会は支出することに意義があ
るというマインドになっており、こういった時期は、支出管理や政策評価は議会にとって魅力的なト
ピックではないとのことである13。
12
13
上院予算委員会 Daniel Brandt 氏へのヒアリングによる。
議会も財政赤字に完全に無関心なわけではなく、Judd Gregg 上院議員を中心に SOS(Stop Over Spending)法が提出
された。これは、財政悪化を食い止めるため、非常時の支出(undiscretionary program)をコントロールするプロセスを議
99
• 例えば、2006 年 2 月に提出された大統領予算では、PART の結果に基づき、約 110 のプログラム
が見直し(eliminate、restructure、cost cut 等)の対象とされていた(うち 65 個は教育省のプログラ
ム)。しかし、教育は国民の関心が高いため、議会は予算を削ることに消極的で、結局、大統領予
算での提案は議会では認められなかった。
• さらに、中小企業庁の例を見ると、 “micro loan program”というプログラムは、民間企業の方が効
率的に提供できるメニューであり、PART の結果も悪いため、中小企業庁としてはプログラムの廃
止を議会に要求しているが、議会は政治的な理由からこのプログラムに毎年予算を付けていると
のことである。
• ただし、議会も PART の結果を完全に無視しているわけではない。例えば、商務省の“Advanced
Technology Program”は廃止、“Manufacturing Extension Partnership Program”)は予算が削減さ
れることになっている。
• ま た、 中小 企業 庁の“ Business Information Center” とい う プロ グラム は、 PART で 最も 悪い
“Results not demonstrated”という評価が下されたことから、プログラム自体の見直しが行われ、
「中小企業にインターネットを導入する」というプログラムの目的自体が不必要と判断され、プログ
ラムそのものが廃止されることになった。
• 議会へのヒアリングによると、予算委員会で PART の結果を確認するのは、プログラムに相当の問
題がある場合か、予算を上げる場合で、その際も、一応確認のために見る程度とのことである。ま
た、議会(floor)での審議においても、予算を変更しようとする場合に、その根拠として PART の結
果が持ち出される程度のようである。
会に導入しようとするもので、支出キャップや、filibuster(大統領が議会の決定を否定すること)の拒否などが主な内容と
なっている。政策評価とは直接の関係はない。
100
(3)業績予算(Performance Budget)
①「業績予算」導入の背景
• ブッシュ大統領は、政権が取り組むべき行財政に関する課題を整理した「大統領マネジメント・ア
ジェンダ(President’s Management Agenda : PMA)14」(2001 年 8 月発表)の中で、5つの優先課
題の1つとして「予算と業績の統合(budget and performance integration:BPI)」を挙げている。
①人的資源の戦略的管理(Strategic Management of Human Capital)
②財務パフォーマンスの改善(Improved Fiscal Performance)
③競争的調達(Competitive Sourcing)
④電子政府化の推進(Expanded Electronic Government)
⑤予算と業績の統合(Budget and Performance Integration)
• 2002 年 1 月、「大統領マネジメント・アジェンダ(PMA)」を統括する OMB のダニエルズ長官(当時)
は、業績と予算の統合が PMA の「第一の仕事」だと語っている。
②「業績予算」の制度概要
• OMB によると、業績予算(Performance budget)とは、戦略目標ごとに予算配分を行うこと、とのこと
である。すなわち、従来、プログラムごとに予算を配分していたのを、まず戦略ごとに予算を配分し
た上でプログラムごとに配分するという2段階で行うことになる。
• OMB は、上記「予算と業績の統合」を促進するため、2003 年の通達(Circular)A-11 で、各省庁に
対し、2005 年度予算編成から「業績予算(Performance Budget)」で予算要求を行うことを求めてい
る。
図表 OMB 通達 A-11 における「業績予算」に関する記述のポイント
・ 2005 年度予算要求より、GPRA で要求されている年次業績計画に代わり、業績予算
(Performance Budget)が作成されることになる。この業績予算は、予算要求書(agency
budget request)の一部を構成するものである。
・ 業績予算は、戦略目標と一体となったアウトカム目標と、プログラムレベルの業績目標によっ
て構成される業績志向の予算のフレームワークである。
・ プログラムレベルの業績目標の単位でコストを把握すること、また、そのコストには管理部門
のコストを配分することが求められている。
・ 業績予算は、目標の体系で構成されている。戦略目標の下位には、アウトカム、アウトプット
目標が設定される。
・ 要求する予算は、目標達成に必要なものであることが求められる。
・ 業績予算には PART の結果が活用される。OMB は予算配分を決定する際の資料として
PART を活用する。
・ 業績予算では、業績目標ごとに、予算要求年、現年、前年、そしてさらに過去3ヵ年の合計6
年の業績が明示される。
(出所)国土交通省報告書(2004)
(原出所)OMB Circular A-11 (2003) Section220
14ブッシュ政権が、OMB
に指示を出して、今後取り組む行財政改革の課題を整理したもの。政府全体に共通する5つのイ
ニシアティブと、個別プログラムに関する9つの改革案から構成されている。(田中秀明「業績予算と予算のミクロ改革
(中)」,2005)
101
• OMB 通達 A-11(2003)を見ると、業績予算とは、GPRA の戦略体系(戦略計画-年次業績計画)
に沿った内容・形式での予算要求であると言える。業績予算のもとでは、戦略目標や業績目標と
いった目標に対して予算を要求していくことになるため、予算書は、これまでの予算要求書
(Budget Justification)と、GPRA に基づく年次業績計画が一体化したものになる。このため、OMB
通達 A-11(2003)では、業績予算(Performance Budget)を提出すれば、年次業績計画の作成・提
出は不要とされた。
• OMB は各省庁に対して予算を業績予算(performance budget)で提出するように要求している。
OMB によると、予算は各省庁と OMB との折衝で決まるものであるから、OMB が要求している以上、
各省庁には業績予算で出した方が有利との判断が働く。各省庁にとっては OMB の要求を守らな
ければ予算が削減される可能性が高いため、業績予算を提出しようとするインセンティブが働く、
とのことである。
(参考) OMB 通達 A-11(Circular A-11,2005 年 2 月 11 日改訂版)の概要
図表 OMB 通達 A-11 目次立て
「予算の準備、提出、執行」(Preparation, Submission and Execution of the Budget)
PART 1 総則
(General Information)
PART 2 予算見積書の準備と提出
(Preparation and Submission of Budget Estimates)
I. 総則および必要事項
(General Policies and Requirements)
II. 予算の提出
(The Budget Submission)
III. MAX データ及び差戻し後に求められるその他の資料
(MAX Data and Other Materials Required After Passback)
PART 3 予算通達後の特定措置
(Selected Actions Following Transmittal of the Budget)
PART 4 予算執行に関する指示
(Instructions on Budget Execution)
I. 配分及び再配分(Apportionment and Reapportionments)
II. 予算執行報告書(Budget Execution Reports)
III. その他の報告書(Other Reports)
PART 5 連邦信用制度
(Federal Credit)
PART 6 戦略計画、年次業績計画、年次プログラム業績報告書の準備と提出
(Preparation and Submission of Strategic Plans, Annual Performance Plans, and Annual Program
Performance Reports)
PART 7 固定資産の計画、予算、取得および管理
(Planning, Budgeting, Acquisition, and Management of Capital Assets)
PART 8 付録
(Appendices)
102
図表 OMB 通達 A-11 「PART6」の抜粋・要約
210 戦略計画の準備と提出
210-1 戦略計画の準備:主な要素
・ 戦略計画には、以下の要素が含まれる。
○省庁のミッションステートメント
○1つ以上の戦略ゴール
○ゴール達成に使用する手段と戦略の説明
○年次プログラム業績ゴールと省庁戦略ゴールフレームワークの関係の説明。
○戦略ゴール達成に影響を及ぼす可能性がある主な要因の特定。
○戦略計画を準備する上で使用したプログラム評価の説明と、今後の評価スケジュール
210-2 戦略計画の準備:形式とその他特徴
・ 戦略計画の形式は、特に定められていない。
・ 戦略計画は最低でも 6 年の期間(提出時の予算年度と続く 5 年)に渡るものとする。
210-3 戦略計画の提出
・ 省庁は、前回の戦略計画提出から 3 年以内に、更新・修正戦略計画を議会とOMBに提出する。
・ 議会への通知期日から少なくとも 45 日前までに、省庁は更新戦略計画の予定原稿をOMBに提出すること。
・ 戦略計画を準備する際、省庁は議会に助言を求める。
・ 計画は省庁ヘッドから議会とOMBへ通達する。
210-4 戦略計画への暫定調整
(略)
220 業績予算の準備と提出
a) はじめに
・ 省庁は、「GPRAで義務付けられた年次業績計画」と「9 月に OMB に提出し、さらに 2 月に congressional justification
の一部として議会に提出する省庁予算要求(agency budget request)の要素」とを完全に統合した業績予算を準備す
ることになる。
・ 省庁は、PART評価結果の使用を含めて各自の予算資料が正しい形式である事を確認するために、適切な議会歳
出予算委員会(congressional appropriations committees)と協議すること。
b) 業績予算には何が含まれるか?
・ 業績予算とは、意図する業績水準の達成に向けたコストと業績ゴール間の関係を明確に説明するものである。業績
予算は一般に、戦略ゴールと、関連する長期・年次業績ゴールおよびゴール達成に貢献した特定のアクティビティの
コストとの関連付けをする。
・ 業績予算は、省庁がある予算年度で達成しようと意図する事項についての概要から始まる。各戦略ゴールに関する
概要で、可能な場合はPART評価を使った自身の相対的役割と有効性を含めた、これまで成された事柄に関する背
景や、省庁が成果を促すべく使用する分析とその状況、ゴールに貢献したプログラムの分析を述べること。各戦略ゴ
ールの期待成果とサポートプログラムの業績目標についても、概要で説明すること。省庁がどのように各戦略ゴール
向けプログラムの「ポートフォリオ」を管理し、またより大きな戦略的成果を最大限にするつもりなのかをまとめること。
・ プランは業績予算に組み込まれるため、GPRA要件に従って別紙の年次業績プランを提出する必要は無い。
c) 業績予算にはどの業績データを含めれば良いか?
・ 業績予算には、PART標準を満たす業績ゴールを含めること。
・ 省庁のPARTで報告された全ての業績評価を業績予算に含める必要は無いが、業績予算に盛り込む全ての測定は
PARTガイダンスの標準に沿ったものである必要がある。
・ 各業績ゴールについて、予算年度、今年度、昨年度、さらに過去 3 年分を含めた最大 6 年分のデータを業績予算に
示すこと。
・ セクション51の通り、業績ゴール達成に向けて使用を考えている手段と戦略も示すこと。
d) 業績予算は、戦略計画および年次業績・アカウンタビリティ報告書(PAR)とどう関連しているか?
・ 業績予算は、戦略計画と同じくゴール階層構成でまとめられる。
・ ピラミッドの頂点は、省庁の戦略計画で設定された戦略ゴールとなる。異なる省庁のプログラムが同一の戦略ゴール
に貢献する場合、各プログラムがいかにして戦略ゴールを達成する助けになるのか、業績予算で説明すべきである。
・ 各戦略ゴール(strategic goal)にはふつう複数の成果ゴール(outcome goals)があり、また各成果ゴールには通常複
数の産出ゴール(output goals)がある。
・ 年次業績報告書は、省庁の昨年度のゴール目標水準達成度合いに関する情報を示すものである。年次業績報告書
向けの昨年度要件を全て満たした年次業績・アカウンタビリティ報告書(PAR)を、全ての省庁が準備することになる。
103
e) 業績予算の公開
(略)
230 年次プログラム業績資料と業績・アカウンタビリティ報告書(PAR)の業績部分の準備と提出
230.1 業績・アカウンタビリティ報告書(PAR)の準備
a) 概要
・ GPRAに義務付けられた年次業績報告書では、省庁の戦略計画と業績予算のゴール達成における、実績と進捗に
関する情報が提供される。
・ 省庁は毎年、年次業績報告書を準備する。本報告書は年次財務アカウンタビリティ報告書と統合されるものである。
b) 年次業績報告書と年次アカウンタビリティ報告書の結合
・ CFO Act と Accountability of Tax Dollars Act の両法定により、全ての省庁に監査済み財務諸表の提出が義務付け
られた。
・ OMB Circular A-136 Financial Reporting Requirements では、プログラム業績報告書と財務諸表・アカウンタビリティ
報告書との統合が省庁に義務付けられた。
・ 2005 年度をカバーした統合PARは、2005 年 11 月 15 日までに大統領、議会、OMB宛てに通達する。省庁はドラフ
ト版PARを少なくとも期限日 10 日前までにOMBに提出し、レビュー&点検を受けること。プログラム業績情報は、ア
カウンタビリティ報告書もしくは財務諸表に統合されるため、新/追加の監査要求事項が課されることはない。
c) PARTを使用して評価したプログラムの取り上げ
・ OMBはPARTを使って連邦プログラムの効率を評価する。業績・アカウンタビリティ報告書(PAR)には、報告書で取
り上げられた年度予算構築で実施したプログラム評価に関する情報を含めること。
・ 2005 年度報告書には 2004 年度の実績と 2006 年度予算で提出した 2006 年度プログラム&業績に向けた実施アク
ションを含めることになる。(2007 年度予算に向けた大統領決定に関する情報を含んだ討議については、業績・アカ
ウンタビリティ報告書にではなく業績予算にのみ盛り込むこと。)
d) PARからの業績情報の業績予算への盛り込み
・ 業績予算には、報告書で取り上げた年度と過去 3 年の実績データを含めるのだが、このデータはPARから入手する
こと。業績予算には、(用意できなかったために)年次業績報告書で省略されたデータを含んだ、全ての入手可能な
実績データを含めること。
230.2 年次プログラム業績報告書には何が含まれるか?
a) 必要要素
・ 省庁の年次報告書には、以下の要素を必ず含めること:
○年次業績予算(または 2006 年度向け年次業績計画)で業績ゴールに設定されたターゲット業績水準と実績との
比較
○業績ゴールが達成されなかった箇所とその理由の説明
○未達成ゴールに対する今後の計画とスケジュールの概要、またはそのゴールを達成する上で非現実的・実行不
可能だと省庁が判断した未達成ゴールに対する推奨アクション
○達成された実績を考慮した上での、今年度の業績予算の評価
○報告書に盛り込んだ業績データの信頼性と完全性の評価
○少なくとも 4 年分の実績情報
b) 実績と業績ゴールターゲット水準との比較
・ 年次報告書では、例え翌年度以降そのゴールを継続・保持しないにしても、年次業績予算(または 2004・2005 年度
業績予算)で示された全てのパフォーマンスゴールの実績を記すこと。
c) 業績ゴール未達成についての説明
・ 業績ゴールが達成されなかった場合、その理由を年次報告書で説明する必要がある。
d) プログラム業績の改善に向けた省庁計画とスケジュール
・ 全てのプログラムはより効果的で効率的に作動するべきである。年次プログラム業績報告書には、業績改善に向けた
省庁努力を記載すること。
e) 実績と比較した、業績予算の業績ゴール水準の評価
(略)
f) 業績データの完全性と信頼性の評価
・ 2000 年の Reports Consolidation Act で、年次業績報告書の通知レターには、報告書に含まれた業績データの完全
性・信頼性の評価を盛り込むことが義務付けられた。評価は、データの完全性・信頼性に存在する全ての不十分要素
や不十分要素を解決すべく省庁が取り得る&取っているアクションを説明するものとする。
104
・ Reports Consolidation Act ではまた、IG オフィスに特定された通りの省庁の最も深刻な管理・業績課題のサマリーと、
それら課題への取り組み進捗を、PAR に含めることが義務付けられている。
g) 取り上げる会計年度
(略)
h) 年次報告書の他の要素と特長
(略)
i) 形式
・ 年次報告書に決められた形式は無い。
・ 省庁には、戦略計画にあるミッションステートメントとジェネラルゴール及び目的のサマリーを盛り込むことが奨励され
る。
230.3 大統領と議会への年次プログラム業績報告書の送付
・ 業績・アカウンタビリティ報告書は、大統領、議会、OMB ディレクター宛てに送付されるものである。報告書は省庁ヘ
ッドから通達されなければならない。省庁は PAR の通達に CFO といった調印者を含めても良いが、それ故に報告す
る業績について省庁内での共同責任と今後の業績コミットメントを認識すること。2005 年度 PAR の期限は 2005 年 11
月 15 日とする。
・ PAR に載せる情報は既往のもののみとする。今後の予算に向けた大統領決定に関する情報を含んだ将来の議論に
ついては、PAR ではなく業績予算に含めること。
105
③「業績予算」の実施状況
• 業績予算は、まず、5つの省庁(国防総省、保健福祉省、住宅都市開発省、社会保障庁、国務
省)で試験的に導入された。
• ブッシュ政権は大統領マネジメント・アジェンダ(PMA)の優先課題に対する各省庁の進捗度合を
評価する「行政府マネジメント・スコアカード(Executive Branch Management Scorecard)」を導入。
結果はウェブサイトで公表するとともに 2004 年以降は予算書本体にもスコアを添付している。
• 各省庁は、PMA のためにどのような取り組みを行ったかを四半期ごとに OMB に報告し、OMB はこ
れをスコアカードの形で評価している。このために、各省庁幹部(senior management officer:各
bureau のヘッドおよび CFO)は Deputy Secretary とスコアカードのためのブリーフィングを行わな
ければならない。ブリーフィングは、各四半期(10~12月、1~3月、4~6月、7~9月)の翌月後
半に行われる。評価結果は一般に公開されるため、各省庁は真剣に取り組まざるを得ない。
• スコアカードでは、「現状(status)」と「進捗状況(progress)」の2つの観点から評価を行っている。
PMA のうち、「予算と業績の統合」に関するそれぞれの評価基準を以下に示す。これを見ると、
PART の実施状況に関する項目が多くを占めていることが分かる。
図表 「予算と業績の統合」に係る評価基準(進捗状況評価)
青(success)
黄(mixed results)
赤(unsatisfactory)
計画通り実行されている。
遅延等の問題があり、予定通りに目標を達成するには、省庁による調整が必要。
イニシアティブ自体が危機的状況にあり、何らかの介入がない限り実現しそうにない。
図表 「予算と業績の統合」に係る評価基準(現状評価)
青
以下を全て満たしている場合
省庁が、
・ 省庁の上級マネジャーが、少なくとも四半期ごとに集まり、省庁の主要責務を全てカバーした財務・業績報告
書について審議を行っている。プログラムの業績および効率性の目標を毎年達成している;
Senior agency managers meet at least quarterly to examine reports that integrate financial and performance information
that covers all major responsibilities of the Department. Agency achieves planned improvements in program performance
and efficiency in achieving results each year;
・ 戦略計画に、限られた数のアウトカムゴール及び目標が盛り込まれている。また、毎年の予算及び業績文書
には、PART で特定された指標が盛り込まれ、さらに、先述した報告書に掲載されている情報に焦点を当てて
いる。
Strategic plans contain a limited number of outcome-oriented goals and objectives. Annual budget and performance
documents incorporate measures identified in the PART and focus on the information used in the senior management
report described in the first criterion;
・ 上級幹部及びマネジャーの業績評価・報償システムがあり、さらに、60%以上の従業員が、省庁のミッショ
ン・ゴール・アウトカム目標に関わり、各自のレベルに応じて成果の達成に責任を持ち、様々な業績水準を区
別し、業績ベースで結果を提供している。さらに、従業員には、何が期待されているかがきちんと伝えられ、
管理者が従業員の業績に関して計画・監視・発展・評価した結果が従業員の評価と褒章に反映され、給与と
評価が関連づけられている。省庁は、全ての従業員に対し、当該システムを適用している。
Demonstrates that it has performance appraisal and awards systems for all SES and managers, and more than 60% of
the workforce, that effectively: link to agency mission, goals, and outcomes; hold employees accountable for results
appropriate for their level of responsibility; differentiate between various levels of performance (i.e., multiple
performance levels with at least one summary rating above Fully Successful); and provide consequences based on
performance. In addition, at a beta site, there is evidence that clear expectations are communicated to employees; rating
and awards data demonstrate that managers effectively planned, monitored, developed and appraised employee
performance; and the site is ready to link pay to the performance appraisal systems. The agency is working to include all
agency employees under such systems;
・ 業績ゴール達成のフルコストを予算・業績資料で正確に報告しており、業績ゴールの変更に伴うコストの変動
を、正確に見積ることが可能である。
Reports the full cost of achieving performance goals accurately in budget and performance documents and can
accurately estimate the marginal cost of changing performance goals;
・ PART の対象となる全てのプログラムについて、効率性指標を少なくとも 1 つ備えている。
Has at least one efficiency measure for all PARTed programs;
106
・ プログラムの改善を進めるために PART の評価結果を活用し、評価結果及び業績情報が、予算要求、マネジ
メント、議会への提案に一貫して使用されている。「評価不能」とされたプログラムが、過去2年連続で、全体
の 10%以下である。
Uses PART evaluations to direct program improvements, and PART ratings and performance information are used
consistently to justify funding requests, management actions, and legislative proposals. Less than 10% of agency
programs receive a Results Not Demonstrated rating for two years in a row.
黄
以下を全て満たしている場合
省庁が、
・ 省庁の上級幹部が、少なくとも四半期ごとに集まり、省庁の主要責務を全てカバーした財務・業績報告書に
ついて審議を行っている。プログラムの業績改善に、当該情報が活用されている。
Senior agency managers meet at least quarterly to examine reports that integrate financial and performance information
that covers some of the major responsibilities of the Department. Agency can demonstrate information is used to improve
performance of agency programs;
・ 戦略計画に、限られた数のアウトカムゴール及び目標が盛り込まれている。また、毎年の予算及び業績文書
には、PART で特定された指標が盛り込まれている。
Strategic plans contain a limited number of outcomeoriented goals and objectives. Annual budget and performance
documents incorporate measures identified in the PART process;
・ 省庁のミッション、ゴール、アウトカム目標に関連した、功績ベースの評価システムと褒章プログラムが導入さ
れており、従業員は各自のレベルに応じて成果の達成に責任を持ち、様々な業績水準を区別し、上級幹部
及びマネジャーに、業績に基づく結果を提出している。さらに、公正で信頼できる透明な評価・褒章システム
が導入されており、マネジャーはマネジャーとしての役割を果たし、従業員の業績の管理に責任を持ち、従
業員に業務を与え、フィードバックを行っている。そして、省庁は、全ての従業員に対し、当該システムを適用
している。
Implemented merit-based appraisal plans and awards programs that link to agency mission, goals and outcomes; hold
employees accountable for results appropriate for their level of responsibility; differentiate between various levels of
performance; and provide consequences based on performance for all SES and managers. Implementing, at a beta site,
performance appraisal and awards systems that are fair, credible and transparent; assure managers are competent in
their role as managers; hold managers accountable for managing employee performance, as reflected in their
performance plans and ratings; and include employee involvement and feedback. The agency is working to include all
agency employees under such systems;
・ 業績ゴール達成のフルコストを予算・業績資料で正確に報告している。
The full cost of achieving performance goals is accurately reported in budget and performance documents;
・ PART の対象となるプログラムのうち 50%以上は、効率性指標を少なくとも 1 つ備えている。
At least 50% of agency programs rated by the PART have at least one efficiency measure;
・ PART の評価結果及び業績情報が、予算要求、マネジメント、議会への提案に活用されている。「評価不能」
とされたプログラムが、過去2年連続で、全体の 50%以下である。
PART ratings and performance information are used to justify funding requests, management actions, and legislative
proposals. No more than 50% of agency programs receive a Results Not Demonstrated rating for two years in a row.
赤
以下の欠陥が1つでもある場合
省庁が、
・ 省庁の上級マネジャーが、プログラムのマネジメントについて意思決定を行う際に、財務及び業績情報を考
慮することが標準的なプロセスとなっていない。
Senior agency managers do not have a regular process for considering financial and performance information when
making decisions regarding the management of Agency programs;
・ 戦略計画に、ゴールや目標が余りに多く含まれすぎて、省庁の取組みの優先順位が明確になっていない。
毎年の予算・業績資料に掲載されている業績指標が、PART の標準を満たしていない。
Strategic plans contain too many goals and objectives to provide a clear focused statement of Agency priorities.
Performance measures included in annual budget and performance documents do not meet the standards of the PART;
・ 業績評価の計画において、省庁のミッション、ゴール、アウトカム目標が関連づけられていない、様々な業績
水準がきちんと区別されていない、または、業績に基づく結果が掲載されていない。
Performance appraisal plans do not link to agency mission, goals, and outcomes, effectively differentiate between various
levels of performance, or provide consequences based on performance;
・ 予算・業績資料に掲載される業績ゴール達成のフルコストを見積もるための系統だった方法がない。
Does not have a systematic way to estimate the full cost of achieving performance goals reported in budget and
performance documents;
・ PART の対象となるプログラムのうち、効率性指標が設定されているプログラムは 50%以下にとどまっている。
Less than 50% of agency programs rated by the PART have at least one efficiency measure;
・ 予算要求、マネジメント、議会への提案に、PART の評価結果が一貫して活用されていない。また、「評価不
能」とされたプログラムの数が、過去2年連続で、全体の 50%を超えている。
Agency does not consistently use PART ratings to justify funding requests, management actions, and legislative
proposals. More than 50% of agency programs receive a Results Not Demonstrated rating for two years in a row.
(出所)大統領府ウェブサイト(http://www.whitehouse.gov/results/agenda/scorecard.html)
107
• 「業績と予算の統合」に関する最新の評価結果は以下のとおりである。
図表 「業績と予算の統合」の評点(2005.12.31)
政府機関名
農務省(AGRICULTURE)
商務省(COMMERCE)
国防省(DEFENSE)
教育省(EDUCATION)
エネルギー省(ENERGY)
環境保護庁(EPA)
保健福祉省(HHS)
国土安全保障省(DHS)
住宅都市開発省(HUD)
内務省(INTERIOR)
司法省(JUSTICE)
労働省(LABOR)
国務省(STATE)
運輸省(DOT)
財務省(TREASURY)
退役軍人省(VA)
国際開発局(AID)
陸軍工兵隊(CORPS)
一般調達局(GSA)
航空宇宙局(NASA)
全米科学財団(NSF)
行政管理予算局(OMB)
人事院(OPM)
中小企業庁(SBA)
スミソニアン協会(SMITHSONIAN)
社会保険庁(SSA)
status
△
△
△
△
○
△
△
△
△
△
△
○
○
○
△
×
○
×
△
○
○
×
△
○
△
○
progress
○
○
○
○
△
○
○
○
△
○
○
○
○
○
○
○
○
×
○
○
○
△
○
○
○
○
(注)○は「青」、△は「黄」、×は「赤」を示す。
(出所)大統領府ウェブサイト(http://www.whitehouse.gov/results/agenda/scorecard.html)
108
④「業績予算」に関する各省庁の取組み
中小企業庁(Small Business Administration:SBA)
• SBA は、議会に対する予算根拠資料(Congressional Submission)15の中で、2種類のフォーマット
で予算要求額を示している。従来のフォーマットに基づく予算(Table4-6)では、プログラムの予算
とは別に省庁全体の運営費(Operating Budget)を分けて計上しているのに対し、業績予算
(Table8)では、運営費をプログラムごとに割り振って、プログラムのトータルコスト(フルコスト)を計
上している。SBA の担当者によると、OMB は後者を重視しているのに対し、議会は前者しか見て
いないとのことである。
• Table 4 の“Non-Credit Programs”は、議会が各プログラムに割り振った予算額の合計であり、これ
はそれぞれのプログラムのために支出しなければならない。これに対して、運営費(Operating
Budget)は省庁一括で割り振られており、使途はプログラムごとに指定されているわけではない。
実際のプログラム運営上は、前者だけでは足りず、不足分は融通がきく運営費からから支出され
ている。(これらを含んだフルコストの見込み額は Table8 に示されている)。実際にプログラムにか
かる金額は Table 8 の方だが、SBA 担当者によると議会はこちらには関心がなく、SBA としてはプ
ログラムに付けられる予算を上げて欲しいのだが、運営費から無理やり支出する状況が続いてい
る、とのことである。
• 運営費に関しては、各オフィスが CFO オフィス(Deputy Chief Financial Officer)に必要経費と
Performance Goal をあわせて提出する。経費が急に上昇した時は期待される効果について説明
が必要となる。CFO オフィスが寄せられた要求を調整し、配分額を決定して Chief of Staff に
recommendation と し て 提 出 す る 。 そ の 後 、 Chief of Staff の 承 認 が 得 ら れ れ ば 、 長 官
(Administrator)が承認して決定に至る。なお、家賃や給料は agencywide cost や compensation &
benefits に含まれるため、operating budget には含まれない。
図表 SBA の Congressional Submission における予算テーブル
Table1 Summary of New Budget Authority
Table2 Sources of Funds: Summary
Table3 Sources of Funds Summary by Appropriation Account
Table4-6 Uses of Funds
Table7 Summary of Credit Programs & Revolving Fund
Table8 Total Cost by Program and Activity
Table9 Full Time Equivalent(FTE) Employees
Table10 Sources of Funds: Appropriation Detail
Table11 Sources of Funds: Detail for Business Loan Programs
(出所)中小企業庁「Congressional Submission Fiscal Year 2007」
15
Performance Budget と副題が付けられている
109
図表 従来のフォーマットで示された予算
Table 3 Sources of Funds Summary By Appropriation Account
Summary, By Appropriation Account
Salaries and Expenses
Business Loan Program
Disaster Assistance Administration
Disaster Loan Program
Inspector General
Surely Bond Guarantee Program
total
FY 2005
Actual
FY 2006
Estimates
FY 2007
Request
503,265
2,035
222,525
163,500
13,488
2,861
907,674
547,879
1,644
435,747
671,540
16,371
2,824
1,676,005
455,118
0
104,445
118,620
15,850
2,970
697,003
Table 4 Uses of Funds : Salaries & Expenses
Summary
Operating Budget
Agencywide Costs
Compensation & Benefits
Non-Credit Programs
Congressional Initiatives
Reimbursable Expenses
total
FY 2005
Actual
FY 2006
Estimates
FY 2007
Request
44,641
47,716
228,239
134,012
39,466
8,975
503,049
57,761
46,754
214,568
126,859
89,838
12,100
547,880
66,066
47,279
225,655
106,426
0
9,692
455,118
(注)単位は千ドル
(出所)中小企業庁「Congressional Submission Fiscal Year 2007」
図表 プログラムごとのフルコストで示された予算
Table 8 Total Cost by Program and Activity
Capital Access Programs
7(a) Loans
504 Loans
Microloans
Advocacy
GCBD Programs
Entrepreneurial Development Programs
Regional & District Office Programs
Total-Regular Funds
Disaster Assistance
Other
Total Obligations
FY 2005
Actual
31,568
73,207
21,812
16,485
14,741
68,003
152,422
32,119
410,358
261,248
67,415
739,020
(注)単位は千ドル
(出所)中小企業庁「Congressional Submission Fiscal Year 2007」
110
FY 2006
Estimates
26,669
67,581
19,811
15,478
13,688
63,094
148,979
29,623
384,924
491,827
123,246
999,997
FY 2007
Request
28,764
79,963
23,521
592
15,644
74,278
153,890
34,072
410,724
131,710
32,979
575,413
• SBA 担当者によると、以前は予算と評価の単位が異なっていたため、プログラムの有効性を評価
できなかったが、PART を実施し、さらにプログラムごとのフルコストを出すようになってからは、どの
プログラムにコストがかかっているかが分かるようになったとのことである。
• 予算根拠資料の後半部分では、プログラムごとの指標値(Output、Intermediate Outcome、
Outcome)と予算(決算)額が、過去5年および当該年度について一覧で掲載されている。これに
より、これまでの支出額と目標の達成状況、当該年度の目標値と予算要求額が対比できるように
なっている。例えば、“7a loan”というプログラムの単位金額あたりのコストが 2004 年から 2005 年に
かけて大幅に減っており、フルコストで見たとき、プログラムの効率性が大きく向上していることが
分かる。SBA によると、これは国民にとっては非常に重要な情報のはずだが、議会は特に見てい
ないとのことである。
農務省
• 農務省では、2005 年度予算編成に向けて、予算と業績の統合を進めるため、次官(Deputy
Secretary)が議長を務め、CFO、CIO、予算官(Budget Officer)をメンバーとする「予算・業績統合
委員会」を設置し、全プログラムの予算要求について、業績データの視点から見直しを行った。
• 同省の予算編成マニュアルによると、「予算・業績概要」では、業績指標ごとに予算額を示した「業
績目標一覧表」を作成することとされている。また、「業績・リソース計画」では、省の戦略目的とプ
ログラム活動との関連性、号席目標と手段との関連性、外部要因、達成・未達成の分析を含めた
過去の業績の分析、PART の評価結果の反映状況、業績指標・目標値などを記載することとされ
ている。
• 業績予算導入の効果として、省内の計画サイドと予算サイド間の連携が良くなった、との意見があ
った。また、作業量は増大したが、これが本来のやり方、と積極的に評価する声も見られる。
111
3)評価体系と予算体系の整合性
•
GAO(2002)は、GPRA における業績測定の単位と、議会の議決対象である歳出勘定の単位が異なっ
ているため、成果と予算、コストの関係が見えにくく、結果として、業績情報が予算編成プロセスにお
いて活用されていない、と指摘している。
•
GAO(2005)は、「予算と業績の統合」を促進するために必要な取り組みとして、PART 結果の活用、ア
ウトカム指標の改善、業績モニタリングの改善と並んで、予算体系の見直し(budget restructuring)を
挙げている。
図表 PMA における「予算と業績の統合」と、予算体系の見直し(Budget Restructuring)の関係
PMAにおける5つの目標
①人的資源の戦略的管理
(Strategic Management of
Human Capital)
「予算と業績の統合」の取組み
②財務パフォーマンスの改善
(Improved Fiscal Performance)
予算編成における
業績情報の活用
(PART)
「予算体系の見直し」の要素
③競争的調達
(Competitive Sourcing)
④電子政府化の推進
(Expanded Electronic
Government)
⑤予算と業績の統合
(Budget and Performance
Integration)
アウトカム指標の改善
予算上のプログラムと
アウトプットの結びつけ
業績モニタリングの改善
歳出項目(appropriation account)
とプログラム及びその業績
との整合
予算体系の見直し
(Budget Restructuring)
:予算・業績体系の整合
:フルコストの把握
現在認識されていないコストの
把握に資する予算勘定
(budget accounting)の変更
(出所)GAO(2005)
•
しかし、歳出勘定の見直しは、議会の承認が必要なため、抜本的な見直しは容易ではない。そこで、
GPRA で は 、業 績 情報 と予 算 配分 額を 関 連づけら れ る よ うに、 予 算上のプ ロ グ ラ ム 16 を統 合
(aggregation)、分割(disaggregation)、連結(consolidation)することにより目標と予算の関係を明示
することを求めている。しかし、目標と予算書上の経費分類が複合的に対応しているケースも多く、特
定の目標の達成状況を特定の予算額に関連付けるという対応関係は必ずしも確保されていないの
が現状である。
16予算教書補遺(Appendix)の『プログラム・財源表』に記載されている個別の活動・施策。歳出予算の基本単位。
112
図表 項目の統合により、予算体系と評価体系を合わせている例(保健福祉省)
ACF戦略目標および業績目標
(戦略計画・年次業績計画)
ACF予算会計およびプログラム活動
(予算教書)
Strategic goal:
Family support payments to states account
(プログラム活動)
Increase economic independence and
productivity for families
1.State child support administrative costs
($2,749)
2.Federal incentive/hold harmless payments to
states ($469)
・
連結
・
3.Access and visitation grants ($10)
Children’s research and technical assistance
account
Strategic objective:
Increase parental responsibility ($3,257)
Performance goals:
・
・Increase the paternity establishment percentage
among children born out-of-wedlock to 96 percent
・
・
・
1.Federal parent locator service ($30)
(注意)GAO資料より引用。単位は100万ドル。
(出所)財務省(2000)p.22
•
フル・コスト17での予算計上について、OMB Circular No.A-11(2004)では、2005 年予算は「フル・コス
トにすべき(should)」「可能な場合(where possible)フル・コストで」と、プログラム単位でのフル・コストの
算定を求めている18。しかし、その採用を義務付けているわけではなく、OMB によると、プログラム単
位でのフル・コスト算定を行っている省庁は、退役軍人省、司法省、航空宇宙局(NASA)に限られる
とのことである。
OMB の取組み状況
•
OMB は、予算の単位と、アウトプット・アウトカムの単位の不一致を解決するために、2004 年度以降、
予算教書補遺(Appendix)の「プログラム・財源表(Program and Finance Schedule)19」におけるプログ
ラム・アクティビティ・リストに、アウトプット・アウトカム情報を追加した情報テーブルを新たに追加。
•
OMB は、将来的には、予算教書をアウトカム-アウトプット体系に再構築し、PART の単位と予算上
の line-item とを一致させることを目指しているとの指摘がある。
•
ただし、今回 OMB にヒアリング 20 を行ったところ、業績予算を完全に実施するためには budget
restructuring が必要だが、OMB としてこれを提案はするものの、強要はしないとのことである。
17
フル・コストとは、給与、商品・サービスの調達、補助金などに加えて、退職給付債務および医療給付の当期費用の従
業員持分、資本使用チャージ、中央で提供されるサービス・商品の支援費用が含まれる。(田中秀明「業績予算と予算のミ
クロ改革(中)」,2005)
18 予算教書の情報テーブルでフル・コストの情報を公表すること、とされている。(田中秀明「業績予算と予算のミクロ改革
(中)」,2005.9)
19OMB による予算データ入力システム MAX(MAX A-11)を構成するデータの1つ。一般に、表 P[Schedule P]と呼称。
20 Robert Shea 氏(Counselor to the Deputy Director for Management)へのヒアリングによる
113
各省庁の取組み状況
•
GAO が 2005 年に発表した報告書“PERFORMANCE BUDGETING - Efforts to Restructure
Budgets to Better Align Resources with Performance”では、9つの省庁を対象に、業績予算の導入
と、予算体系の見直しの状況について、ケーススタディを実施している。これによると、既に一部の省
庁は、実際に予算書体系の変更に取り組んでいるとのことである。
•
GAO(2005)によると、予算体系の見直しが最も進んでいるのは、退役軍人省、航空宇宙局(NASA)、
司法省の3省庁で、歳出項目(appropriations account)そのものの見直しを行っている。環境保護庁
と中小企業庁は、歳出項目自体の見直しは行っていないが、項目に対するプログラムの割り当ての
見直しを行っている。労働省、商務省、住宅都市開発省、運輸省の4省庁は、議会向け予算根拠資
料(congressional budget justification)の見直しにとどまっており、議決の対象である歳出項目自体に
は手をつけていない。
•
OMB へのヒアリングによると、実際に予算単位を目標体系にあわせて変更したのは NASA と退役軍
人省(VA)とのことである。教育省は予算根拠資料の中で単に予算と目標体系を対応させて示した
だけで、budget restructuring と言えるほどではない、また、他の省庁はそれさえもやっていないとの
ことである。
•
なお、大統領マネジメントアジェンダ(PMA)のスコアカードで退役軍人省の評価が低いのは、PMA
のスコアカードは、budget restructuring の評価ではなく、PART の実施状況に関する評価が大部分
を占めており、退役軍人省は、PART に関しては、明確なゴールやアクションを示しておらず、評価が
低いためであるとのこと。
(例)航空宇宙局(NASA)
GPRA 導入に伴い、従来の歳出項目体系を変更。従来、各プロジェクトに対応するコストが多岐
にわたる経費の中に埋没して分かりにくかったのが、プロジェクトごとの経費分類に見直すことに
より、高コストのプロジェクトが特定可能になった。
(例)退役軍人省
議会歳出委員会の了承を得て、歳出項目と業績評価の単位をあわせる試みを実施。
議会の取組み状況
•
GAO(2005)および OMB ヒアリングによると、議会の歳出委員会は、業績予算に対しては、プロセスが
よく分からない、必要な情報が把握できないなどと否定的で、NASA を除いて承認していないとのこと
である。OMB ヒアリングによると、業績予算を認めるか認めないかは、歳出委員会に所属する議員の
考え方に大きく依存し、NASA が認められたのは偶然に近い、とのことである。
•
中小企業庁ヒアリングによると、budget restructuring(appropriation account の変更)は、議会の歳出
委員会が否定的なため、中小企業庁では実施していないとのことである。これを考えると、業績予算
が進まないのは、議会が関心を持っていないことが一番の原因であると見られる。
114
図表 各省庁における予算体系の見直し状況
退役軍人省(VA)
航空宇宙局(NASA)
司法省(JUSTICE)
環境保護庁(EPA)
中小企業庁(SBA)
商務省(COMMERCE)
住宅都市開発省(HUD)
労働省(LABOR)
運輸省(DOT)
歳出項目体系の変更
(Changes to appropriations account
structure)
歳出項目自体
歳出項目における
の変更
プログラムの変更
(Changes to
(Changes within
accounts)
accounts to program
activities)
○
○
○
○
○
○
○
○
(出所)GAO(2005)
115
議会向け予算根拠
資料の変更
(Changes to
congressional budget
justification)
○
○
○
○
○
○
○
○
○
図表 OMB 及び各省庁における業績予算と予算体系の見直しに関する取組みの経過
FY1995
OMB
FY1998
FY2000
In the Analytical Perspectives, OMB
discussed need to reexamine budge
structures to better align resources with
performance and include “full cost”
FY2001
OMB issued President’s
Management Agenda
that discussed the need
to reexamine budget
structures to better align
resources with
performance and include
“full cost”
FY2002
OMB issued A-11 for
FY2004 budget that
included guidance on
appropriations account
and justification
realignment and
capturing “full cost”
OMB proposed
legislation to better
capture certain costs in
the budget
EPA
NAS A
FY2003
FY2004
OMB issued A-11 for
FY2005 budget that
required all agencies to
submit “performance
budget” and included
guidance on
appropriations account
and justification
realignment and
capturing “full cost”
EPA submitted
FY1999 budget with
changes to program
activities and budget
justification to better
align resources with its
strategic goals
EPA submitted FY2005
budget with changes to
program activities and
budget justification to
better align resources
with its revised strategic
goals
NASA submitted FY2002
Budget proposing to
eliminate mission support
appropriations account;
The Congress
appropriated under
proposed structure
NASA submitted first “full
cost” budget and fully
integrated budget and
performance justification
for FY2004
DOL
DOL submitted first
“performance budget”
Justification for FY2004
VA
VA proposed account
restructuring and
submitted restructured
budget justification for
FY2004; Congress did
not appropriate under
proposed structure
VA proposed modified
appropriations account
restructuring and
submitted restructured
budget justification for
FY2005; Congress did
not appropriate under
proposed structure
(出所)GAO(2005)
(注)省庁の略号は、環境保護庁[EPA]、航空宇宙局[NASA]、労働省[DOL]、退役軍人省[VA]
図表 主な省庁における業績予算の取組み概要
省庁名
運輸省
(DOT)
取組み概要
・ 運輸省の Performance Budget は、省内の組織横断的課題である「安全」「移動」などをテーマに構成されてい
る。(このような構成は FY2004 予算要求から既に導入。)
・ 「安全」「移動」は、これまでに取り組んだ戦略の分析を踏まえた実施方針とプログラムの予算額を明示。
・ 省内の予算調整の際には、当該予算要求が認められると「どの戦略目標・アウトカム目標に貢献することにな
るのか」「具体的にどのようなアウトプットを出すことができるのか」という視点からの質問を課している。
労働省
・ 労働省の Performance Budget では、各プログラムを戦略目標にリンクさせるとともに、プログラム単位で過去
(DOL)
の業績、目標値、戦略目標達成に向けての戦略、要求予算額、投入人員を明記。
・ フル・コスト計算に近い計算方法でコストを計算し、プログラム単位で明示。(省全体にかかる費用はプログラ
ムに配賦されているが、局の管理コストは配賦されていない。)
・ 環境保護庁では、FY2005 予算要求のタイミングより本格的に Performance Budget の形式に移行。
環境保護
・ 5つの戦略目標の体系の下、年次業績計画と予算要求の要素を一体化させた共通のフォーマットを導入。
庁
・ 業績予算導入にあわせて、計画、予算、業績、会計の単位・項目などを大幅に見直し、庁のマネジメントの共
(EPA)
通単位として「プログラム」「プロジェクト」「アクティビティ」を設定。
・ 航空宇宙局では、FY2005 予算要求のタイミングより本格的に Performance Budget の形式に移行。
航空宇宙
・ 内容も OMB の要求水準を満たす本格的なもので、予算書は戦略目標ごとに構成されており、各プログラムと
局
戦略目標との関係が明確化されている。
(NASA)
・ 予算要求の内容も、戦略目標の達成に向けて現状の課題、対応方針、そして戦略が明記されるなど、分析
的なものになっている。また、戦略目標、プログラムの単位での予算額も明示されている。また、プログラム以
下を構成するアクティビティでは完全フル・コストで予算が整理されている(間接部門経費も配賦)。
・ 各プログラム・マネジャーには、業績目標、戦略目標の達成のため、予算執行と人員配置についての裁量が
与えられている。
・ 同局の FY2006 予算要求(継続要求)は、FY2005 予算要求の内容を基に、業績の達成状況の分析を踏まえ
て、加筆・修正して提出することが OMB より認められている。
(出所)左近靖博「米国連邦政府ブッシュ政権における『予算と業績の統合』に取組み」(2005)p.70
116
(参考) GAO“PERFORMANCE BUDGETING - Efforts to Restructure Budgets to Better Align Resources
with Performance”(2005.2)からの抜粋・要約
〔略号〕
VA:退役軍人省、NASA:航空宇宙局、DOJ:司法省、EPA:環境保護庁、SBA:中小企業庁、
COMMERCE:商務省、HUD:住宅都市開発省、LABOR:労働省、DOT:運輸省
1.財源(resource)とプログラム、財源とパフォーマンスの連携に向けた予算改革の取り組み
1)近年、OMB は予算改革に力を入れている
・ OMB は、大統領マネジメントアジェンダ(PMA)に「予算と業績の統合」を加え、各省庁に対し、パフォーマンスプランと予
算根拠資料を統合した「業績予算」の提出を要求することで、歳出項目および予算根拠資料の改革を推進している。
(1)OMB およびいくつかの省庁は予算改革を実施
・ いくつかの省庁は、2001 年の PMA 発表前から、歳出項目および予算根拠資料の改革に取り組んできた。(EPA,
NASA)
(2)OMB は省庁に対して「予算改革ガイダンス」を示し、「業績予算」の導入を要求
・ 2005 年度予算から、各省庁には「業績予算」を OMB と議会に提出することが義務付けられた。
・ 業績予算は戦略計画に基づき、プログラムが戦略ゴールの達成にどう寄与するのかを明らかにし、戦略ゴールおよび
プログラムのために各省庁が支払うべき「フルコスト」を明示することが求められる。
・ OMB は、各省庁に対し、予算改革に関するガイダンス(Circular A-11 ガイダンス)を示している。この中で、「可能で
あれば」として、以下を求めている。
○予算を見直し、「戦略ゴールに対して貢献するプログラム」の歳出項目とプログラムアクティビティを紐付けること
○プログラムアクティビティと PART を連携させること
○プログラムのフルコスト(省庁がプログラムのアウトプットを達成するために使用する全ての財源[リソース]の総計)
を業績予算に含めること
・ OMB は、予算改革が行われつつあることを議会に認識させるため、各省庁に対し、予算提出前に議会の委員会にア
ドバイスを求めることを要求している。
2)省庁によって予算改革のアプローチが異なる
(1)歳出項目体系と予算根拠資料の両方の見直しに取り組んでいる省庁もあれば、どちらか一方のみに取り組んでいる
省庁もある
①歳出項目体系(appropriation account structure)の改革
・ NASA、VA、DOJ の3省庁は、歳出項目体系を改革し、予算とパフォーマンスの紐付けを行った。さらに、歳出項目の
プログラムアクティビティリストと予算根拠資料の改革も実施。
・ NASA は、建設事業、職員の人件費、ミッションサポート(中央管理部門)に関する歳出項目を廃止。DOJ と VA は建
設部門の歳出項目は廃止したが、中央管理部門の個別歳出項目は維持。建設費に関しても、NASA と DOJ は歳出
項目として個別に識別されなかったが、VA は大統領予算教書の付録の Program and Financing Schedule でプログラ
ムアクティビティとして示しており、識別可能とされた。
例:VA
・ VA のプログラムである「メディカルケア」に関する5つの歳出項目を、「メディカルケア」という1つの歳出項
目に統合。
・ 複数プログラムに関する「主要建設費」や「一般運営費」といった歳出項目を、プログラムごとに分割。
・ しかし、議会は、NASA が提議した歳出項目には 2002 年度から資金配分を認めているが、VA と DOJ が提議した予
算項目の大半については 2004 年度、2005 年度とも受理しなかった。
②プログラムアクティビティリストの改革
・ EPA、SBA の2省庁は、歳出項目体系は変更していないが、歳出項目内で、Program and Financing Schedule のプロ
グラムアクティビティリストの改革を行っている。また、予算根拠資料の改革も行っている。
※DOT 内の FAA(Federal Aviation Administration:連邦航空局)もここに該当。
例:EPA
・ 1999 年度予算から、歳出項目のプログラムアクティビティを、プログラム(例:農薬、放射物)や歳出項目
(例:地域管理)から、戦略ゴール(例:きれいな空気ときれいな水)に変更。
・ 2005 年度予算では、プログラムアクティビティ数を集約するとともに、これを戦略計画に反映し、戦略ゴー
ルも 10 から5に集約。
・ 戦略ゴールが複数の歳出項目に関連しているため、ある歳出項目の戦略ゴールに示される総額が、そのゴールに関
わる全ての予算を示すものではない点に注意する必要がある。
117
③予算根拠資料の改革
・ Commerce、HUD、Labor、DOT の4省庁は、予算根拠資料の改革のみ実施(歳出項目体系とプログラムアクティビテ
ィリストは既存のものを継続)。具体的には、予算根拠資料におけるプログラムおよびパフォーマンスのコストに情報を
追加し、「フルコスト」として提示。
・ EPA、SBA、HUD 以外の6省庁は、予算根拠資料が歳出項目体系に基づいているが、この3省庁の予算根拠資料
は、歳出項目体系に適合していない。
例:EPA
・ 2005 年度予算では、歳出項目と予算根拠資料のフレームワークが適合していない(予算根拠資料は、戦
略ゴールに基づいて整理されている)。
・ 予算根拠資料では、一見、戦略ゴールごとに財源を示しているように見えるが、実際には1つの戦略ゴー
ルに複数の歳出項目が関わっている可能性があり、各歳出項目に関連する財源を把握するのが難しい状
況となっている。
・ このため、結局、歳出項目と戦略ゴール、プログラムとの関係を表にまとめ、補足情報の形で提出した。
(2)省庁によって、予算根拠資料における「フルコスト」の示し方が異なっている
・ 各省庁は、予算根拠資料において、プログラムの「フルコスト」を提示。しかし、その示し方は省庁によって大きく異な
っている。
(3)省庁によって、パフォーマンスに割り当てる財源が異なっている
・ 各省庁がプログラムやパフォーマンス単位で計上した「フルコスト」の財源が、省庁によって中央行政部門の財源
(central administrative resources)および IG オフィスの財源(IG office resources)の扱いが異なっている。
(4)一部省庁は、資金の振替・再計画の権限を要求
・ 一部省庁は、予算の振替権(transfer authority)および再計画ガイドライン(reprogramming guidelines)に関して、議
会の監督方針の変更を求めた。
○振替→歳出項目間で資金をシフトすること。
○再計画→ある歳出項目内で、支出目的を変えること。
・ 現在、省庁は、歳出項目間の資金振替は法律で禁じられており、また、再計画についても、何らかのインパクトが想
定される場合、適切な議会委員会に通知または相談しなければならない、とされている。
例:NASA
・ 2002 年にミッションサポート項目を廃止し、その財源を2つのミッション関連項目に計上した後、その2つの
項目間での管理財源の資金振替を行う権限が認められた。
・ 2004 年度予算で、テーマ(共通の戦略ゴールを支えるプログラム及びプログラム群)内での再計画の裁量
範囲の拡大を提議したが、認められなかった。
例:VA
・ 2004、2005 年度予算で歳出項目改革を提議した際、予算振替権も要求したが、議会の appropriator はこ
れを認めなかった。
例:EPA
・ 以前は、特定のプログラム内での資金シフトしか認められていなかったが、議会は、より幅広な戦略目的
内の資金シフトを認めた。
2.予算改革によって生じる予算の選択とニーズとの間の競争関係(トレードオフ)
1)歳出項目と予算根拠資料の改革により、予算選択(budget choices)の見直しが求められる可能性がある
・ 複数プログラムの管理費が1つの歳出項目に含まれるような予算体系では、プログラムの「フルコスト」を把握するのは
困難だが、異なるプログラム間での管理財源のシフトはやりやすい。一方、あるプログラムに関する全支出が1つの歳
出項目に含まれるような予算体系では、プログラムの「フルコスト」は把握しやすく、プログラム内の異なる費目間でのト
レードオフがやりやすくなるが、管理者はプログラム全体の管理財源のシフトがやりにくくなる。
(1)近年の予算改革により、予算選択の見直しが求められるようになってきた
・ 近年の予算改革では、インプット(input/line item)ではなく、インプットが生み出す成果を重視した予算配分を促進す
るため、予算選択の再構成(reframe budget choices)を進めてきた。
例:NASA
・ ミッションサポート項目の廃止およびその財源の他プログラムへの計上を提議。議会もこれを認めた。
・ 建設費、人件費、旅費等の情報は予算根拠資料に補足として掲載したものの、個別には歳出として計上
していない。
(2)予算選択を見直した場合、情報が不透明になったり、公開されなくなったりする可能性がある
・ プログラムに基づく予算に移行すると、個別費目に関する情報が不透明になっていく可能性がある。
118
例:NASA
・ プログラムと財源が、戦略ゴールの達成に向けてどのように役立つかに関しては詳細な情報を提供してい
るが、個別プログラムに関する詳細はほとんど提供していない。
・ 2003 年度予算根拠資料では、「スペースシャトル」というテーマ内の複数プログラム間での予算配分を明
記し、プログラムよりさらに下位の「プログラム要素」の財源も示されていたが、2004、2005 年度予算根拠資
料ではこういった情報は掲載されていない。
例:VA
・ 建設費について、2003 年度予算よりも、2004、2005 年度予算の方が不透明になった。予算根拠資料に付
属する説明資料の提出も行わなくなった。
2)予算改革が管理(management)や監視(oversight)に与える影響は、予算改革のアプローチや、付随して起こる変革に
よって異なる
(1)歳出項目の改革は、プログラムリストや予算根拠資料の改革を単独で行った場合に比べ、管理や監視に与える影響
が大きい
・ 先進的な3省庁(NASA, VA, DOJ)の歳出項目改革は、議会の予算配分のやり方を変える可能性もある。(NASA は、
予算財源間の資金振替について、実際に柔軟性を獲得した)
(2)その他の議会のコントロールも、財源の管理や監視に影響を与える
・ 議会および省庁は、歳出項目だけでなく、支出の管理・監視についても、権限を有している(具体的には、歳出法に
おける各種規定、振替権、再計画ガイドライン、歳出委員会報告など)。
・ 支出の管理・監視を改革するには、予算改革だけでなく、こういったやり方も変えていく必要がある。
例:NASA
・ 予算改革により、財源トレードオフがやりやすくなった面もあるが、内部管理統制(internal management
controls)や再計画ガイドラインにより、制約が加えられた面もある。
・ 歳出項目の統合により、プログラムマネジャーの裁量範囲は拡大したが、一般管理費や公務員人件費と
いった特定の費目に関しては、労働契約等により、予算執行中の変更は禁止されている。
・ NASA では、予算付けはより包括的なテーマレベルでなされるようになったが、再計画ガイドラインはプログ
ラムに紐付けられているため、再計画を行う場合、歳出委員会に通知しなければならない。
例:VA
・ 歳出項目の統合とあわせて、財源間のトレードオフの制限も提議。具体的には、2004 年度予算から「メデ
ィカルケア」関連の費用を1つの項目下に含めたが、あわせて一部費目の上限を規定。これにより、建設
費から管理費へのシフトは可能になったが、その逆は不可能になった。
例:EPA
・ EPA は予算改革を行い、戦略ゴール・戦略目的(strategic goals and objectives)に基づく予算に変えた
が、歳出文言や歳出委員会報告の文言が、相変わらずプログラム/プロジェクトに基づいているため、財源
のトレードオフは自由に行うことができない。
・ 予算改革前は、「プログラム間、アクティビティ間、要素間」で予算をシフトする場合は歳出委員会に通告
することが義務づけられていたが、予算改革以降、歳出委員会は EPA の再計画ガイドラインを変更し、より
包括的な戦略目的内での予算変更を認めた。
・ しかし、実際には、共通の戦略目的を支えるプログラム間で資金のトレードオフを行うのは難しい。その理
由は、
○多くのプログラムの資金配分が歳出文言(appropriations language)で規定されており、さらに、歳出委
員会報告文言(appropriations committee report language)にも配分に関する指示が記載されているた
め。(EPA によると、委員会報告に示された議会の意向に基づいて予算を執行する、とのこと。)
○EPA には歳出項目間で資金振替を行う権限がないため。一部プログラムは、複数の歳出項目にまたが
って予算が付けられている。
3)予算改革が管理・監視の改善につながったという見方がある一方、懸念や限界を指摘する見方も強まっている
(1)予算改革により、管理や監視が成果指向型(Result-oriented)になったとの意見がある
・ 予算改革のメリットとして、以下の点を挙げることができる。
○戦略計画、パフォーマンス、成果への関心が高まった
○パフォーマンスベースの予算配分に関して、より詳細な情報を提供できるようになった
○財源のトレードオフが、一部ではやりやすくなった
(2)限界や懸念の指摘もある
○予算改革は財務管理(resource management)に新たな課題を引き起こすおそれがある、との指摘あり。
119
例:VA
・ 2003 年度予算体系では、一般運営費は「VBA 給付金プログラム」向けの運営費に紐付けられており、項
目内のプログラム間での資金シフトは年間を通して可能だった。しかし、2004、2005 に提議した予算体系
下では、各プログラムの運営費が個別の項目から支払われるようになったため、項目間の資金シフトに議
会の同意が必要になった。
・ 現在、VBA 職員の給与は一般運営費(GOE)という歳出項目から拠出しているが、2004、2005 に提議した
予算体系下では、プログラムごとの3つの項目から支払われるため、職員がプログラムごとに作業した時間
を見積る必要がある。VHS でも、医師の給与がメディカルケアとメディカルリサーチに分かれており、同じ問
題が生じている。
・ VA は、プログラムに基づく6つの歳出項目間での運営費の振替権を議会に提議したが、これは人件費の
不確定要素(突発的な人員ニーズ等)に備えるため。
例:NASA
・ 以前は、職員の給与は中央予算でカバーされていたが、新予算ではプログラム予算から拠出することにな
っているため、プログラムマネジャーが、突発的な人員ニーズ等に備えるため、プログラム間の資金シフト
に消極的になるおそれがあると指摘されている。
・ その一方、人材に関する権限がプログラムマネジャーに下ろされることで、突発的ニーズや緊急事態に対
応しやすくなる、との肯定的な見方もある。
○歳出小委員会は、「予算と業績の統合」の推進を表明しているにも関わらず、以前の予算体系を推奨し、それに基づ
いて予算配分を行っている。
・ 歳出委員会は、報告書等において「予算と業績の統合」の支持を表明している。
・ しかし、同時に以下の懸念事項を指摘し、以前の予算体系および根拠資料を支持している。
①予算改革による新しいフレームワークが、議会(appropriator)のニーズに合っていない
②歳出小委員会が関心を持つ項目について、透明性が低下
③予算根拠資料があまりにも扱いづらい
①予算改革による新たなフレームワークが、議会のニーズに合っていない
・ 歳出小委員会のスタッフは、「各省庁の新たなフレームワークは、省庁が支出を追跡する単位に合っておらず、有
益な情報を提供していない。省庁の運営や、議会の資金配分のやり方に合っていない。」とコメント。
・ 歳出小委員会のスタッフは、戦略ゴールや戦略目的で予算要求されると、支出を追跡できない、とも指摘。各省庁
は、ゴール・目的ベースで予算要求するものの、そのゴール・目的ベースで支出の追跡を行っていない、とのこと。
また、ゴールは年々変化していくため、過去の支出トレンドを追跡するのが困難、とのこと。
・ また、歳出項目の、プログラムへの紐付けの根拠が乏しかったり、財源(IG オフィス財源など)との関係も分かりにく
い。新たなフレームワークでは、省庁の提供する情報そのものの価値に対する懸念もある。
②歳出小委員会が関心を持つ項目の透明性が低下
・ 予算根拠資料において、「業績」情報が充実してきた反面、歳出小委員会が必要とする以下のような情報が提供さ
れなくなった、との指摘あり。
○歳出文言(appropriation language)や配分額の変化
○過去の履歴
○コスト・業績に関する詳細(単位コスト、作業量情報、アウトプット指標)
・ 委員会は、報告書において、「前年度、今年度、予算年度の全プログラム、アクティビティ、イニシアチブ、プログラ
ム要素に関する配分額を、予算根拠資料に含めること」を要求。
③予算根拠資料があまりにも扱いづらい
・ 予算根拠資料は、歳出小委員会にとって、必要な情報が含まれていないだけでなく、不必要な情報が含まれてお
り、非常に扱いづらい、とのこと。
・ 業績情報を掲載したため、非常に大部となり、有益な情報を見つけるのが困難。
・ その他の指摘は以下のとおり。
○フルコスト表の費目と、歳出項目における費目との関係を理解するのが困難
○プログラムがどうゴールの達成に貢献するのかが分かりにくい
○プログラムや費目によって情報量にばらつきがある 等
例:EPA
・ 歳出小委員会は、戦略ゴール・戦略目的ベースの予算根拠資料を承認したが、別途、プログラム情報の
提出を要求。2005 年度予算に対する報告書で、より明瞭で透明な予算根拠資料の再作成を要求。
・ 小委員会スタッフは、新たなフレームワークではゴール単位で集約されているため、プログラム毎の支出の
変化を追跡したり、支出変化がプログラムに与える影響を特定するのが困難、と指摘。
・ 2000~2004 年の予算根拠資料におけるプログラム毎の予算内訳を補足情報として提出。
120
例:NASA
・ 提議された各省庁の予算項目のうち、議会が承認したのは NASA のみ。
例:VA
・ 歳出小委員会は、2004,2005 年度予算項目体系を却下し、VA が提出したものとは異なった新たな予算項
目体系を提案。
・ 2004 年度下院委員会報告書(House Committee report)では、2005 年度は、パフォーマンスプランは別
冊で提出し、予算根拠資料に「業績予算」を組み込まないように要求。
・ これに対し、VA は 2005 年度も新たな歳出項目体系に基づく業績予算を提出。委員会は「議会ニーズに
合わない予算を提出し続けても、議会はそのような予算は却下するだけ」と表明。
・ 2005 年度下院歳出委員会報告書では、「新たなフレームワークは、議会がレビューおよび予算配分を行う
上で必要な情報が得られない。具体的には、新たなフレームワークでは、人件費が複数の歳出項目から
充当されているが、これは、1スタッフの工数が複数のプログラムに割り当てられる可能性のある地域事務
局の運営方法に合っていない。」と指摘。
例:DOJ
・ DOJ は、建設費に関する歳出項目の変更を盛り込んだ予算項目体系を提議したが、2004、2005 年度とも
に議会は却下。
例:DOT
・ 下院歳出委員会は、2006 年度の予算根拠資料を、2003 年度以前の予算根拠資料と同じ形式で提出す
るように要求。
・ 下院歳出委員会は、2005 年度報告書で、業績情報を予算根拠資料に掲載することを禁じ、別冊で提出
するように要求。
例:HUD
・ 下院歳出委員会は、「業績予算」であれば提出しなくてよい、と通告。HUD は議会の意向を踏まえ、2005
年度の業績予算は提出せず、予算とは別に、戦略計画に財源と結果の関係を記して提出。これに対し、
議会は 2005 年度報告書で感謝の意を表明。
例:Labor
・ 上院歳出委員会は、2005 年度報告書で、2006 年度の予算根拠資料は業績予算ではなく、以前の構造で
提出し、業績情報は付録として提出するよう要求。
・ 歳出小委員会は、2004 年度の予算根拠資料に関して、追加情報の提出を要求。また、自身でも過去の
予算根拠資料を使用して参考資料を作成。
○以上のような議会の懸念に対する省庁の取組み
例:EPA
・ 2006 年度予算根拠資料から、歳出項目およびプロジェクト/プログラムごとに予算を編成。戦略ゴール・戦
略目的等に関する情報は、補足情報として提出。
例:Labor
・ 2006 年度業績予算から、5ヵ年資金履歴を含めた各種補足資料を復活。
○成果指向型マネジメントの実現に対する予算項目改革の必要性の認識にはばらつきがある
・ OMB スタッフは、歳出項目の改革は、全ての省庁に必要なわけではない、とコメント。
・ 多くの省庁は、歳出項目の変革は成果指向型マネジメントの実現に必要不可欠ではない、とコメント。
●歳出項目体系が業績改善の取り組みを妨げた例
例:NASA
・ 予算改革前の歳出項目体系は、業績達成のために用いられた財源に対するアカウンタビリティの不足をも
たらした。
・ 財源をより効率的に用いるためのトレードオフに対するマネジャーの裁量範囲を制限した。
●現在の歳出項目体系が、業績に関する議論を混乱させた例
例:DOJ
・ 現在の歳出項目体系は、1つの業績目標が複数の歳出項目に紐付けされているため、目標達成に必要
な財源の全体像が分からない。
・ 予算根拠資料のみの改革を行う場合でも、以下のような課題が指摘されている。
例:Commerce
・ 省内ではパフォーマンスベースの予算下で運営しているが、議会はいまだに、以前の歳出項目体系で予
算の割り当てを行っているため、「手間のかかる」横断表を作成して、歳出項目を戦略ゴールに置き換えて
いる。
例:EPA
・ 2005 年以前はゴール・目的・サブ目的の体系で予算の策定・執行を行っていたが、議会がプログラムベー
スで歳出するようになったため、パフォーマンスベースのフレームワークに置き換えるようになった。
121
○新しい予算体系は、成果指向型マネジメントに役立つとされるコスト・パフォーマンス情報の欠陥に対応できない場合
がある
・ OMB は、予算改革は、詳細なコスト、パフォーマンス情報の提供のための一つの手段に過ぎない、とコメント。
・ プログラムマネジャーや議会の歳出委員会は、「フルコスト」よりも、単位コストや作業量情報といった詳細なコスト・
パフォーマンス情報が重要、と指摘。
・ 内部管理・監視の改善のためには、予算改革が必要不可欠であるとは認識されていない。財務、パフォーマンス
情報の改善が予算改革の前提条件、との指摘あり。
参考図表1 航空宇宙局(NASA)全プログラム 評価結果一覧表(FY2007 予算編成)
PART 評価結果
Agency/Program Title
予算額
Section 1
Section 2
Section 3
Section 4
Program
Purpose &
Design (20%)
Planning
(10%)
Management
(20%)
Results
(50%)
Human Systems Research and Technology
(人的システム技術研究)
100%
100%
91%
International Space Station
(国際宇宙ステーション)
100%
100%
88%
NASA Aeronautics Technology
(航空技術)
100%
100%
73%
NASA Astronomy and Astrophysics Research
(天文・宇宙物理学研究)
100%
100%
91%
NASA Earth-Sun System Research
(地球・太陽システム研究)
NASA Education Program
(教育プログラム)
Solar System Exploration
(太陽光システム調査)
Space and Flight Support
(宇宙・飛行サポート)
Space Shuttle
(スペースシャトル)
100%
100%
84%
100%
75%
40%
100%
100%
100%
100%
67%
88%
100%
89%
50%
Program Funding Level
Rating
ある程度有効
48% (Moderately
Effective)
ある程度有効
47% (Moderately
Effective)
ある程度有効
67% (Moderately
Effective)
84%
有効
(Effective)
ある程度有効
74% (Moderately
Effective)
普通
40%
(Adequate)
有効
74%
(Effective)
普通
45%
(Adequate)
普通
33%
(Adequate)
2005実績
(Actual)
2006法定
(Enacted)
Program Type(s)
2007要求
(Request)
Type 1
275 R&D
Type 2
925
624
CO
1,631
1,753
962
884
724 R&D
CO
451
378
1,516 R&D
CO
2,291
2,164
2,211 R&D
CO
CA
179
162
2,981
1,582
CO
CA
474
339
367 CA
5,009
4,776
4,057 CA
1,812 CA
153 CO
1,603 R&D
(出所)OMB 資料(http://www.whitehouse.gov/omb/budget/fy2007/sheets/part.xls)より、野村総合研究所作成
参考図表2 運輸省の予算要求書(Congressional Budget Justification)における付表
(出所)GAO(2005)
122
Type 3
参考図表3 退役軍人省のメディカルケアプログラムに関する歳出項目体系の変化(FY2003~FY2004)
(出所)GAO(2005)
参考図表4 退役軍人省の一般運営支出に関する歳出項目体系の変化(FY2003~FY2004)
(出所)GAO(2005)
123
3.政策評価と内部管理(財務管理)の連携
1)内部管理制度の概要
•
連邦政府における内部管理制度には、各省庁レベルの内部管理と連邦政府全体の内部管理がある。
各省庁レベルでは、省庁ごとに首席財務官(CFO)と監察総監(IG)が任命され、CFO が財務諸表を
作成し、IG がその監査を行う仕組みになっている。また、連邦政府全体では、財務省が財務諸表を作
成し、会計検査院(GAO)がその監査を行う仕組みとなっている。
•
政府機関の監査には、大きく「財務監査」と「業績監査」の2種類があるが、近年、GAO は財務監査か
ら業績監査にシフトしつつあると言われ、財務監査は IG が行い、業績監査は GAO が行う、という役割
分担になってきている。
•
なお、連邦政府には「決算」という形で議会の承認を受ける仕組みはない。ただし、各省庁および連
邦政府全体の財務諸表(決算書類)は議会に参考資料として提出されている。
(1)各省庁における財務諸表の作成
①経緯
•
従来は予算の消化が全てとされ、効率性やアカウンタビリティといった観点からの財務管理は全く
行われていなかった。こういった状況に対し、GAO や OMB は、各省庁の財務管理およびアカウン
タビリティを強化するため、信頼するに足る財務情報を行政府および議会に対して提供することの
重要性を強く主張。1990 年に首席財務官法(Chief Financial Officers Act of 1990)が制定され、
各省庁(14 省および 9 つの政府機関)に当該機関の財務管理活動の一切を監督する「首席財務
官(Chief Financial Officer:CFO)」のポストが新設されるとともに、一部の省庁に対して、財務諸表
の作成が義務づけられた。
•
さらに、1994 年に政府管理改革法(GMRA:Government Management Reform Act of 1994)が制定
され、全ての省庁に財務諸表の作成が義務づけられた。
②CFO の概要
•
CFO の設置により、それまで省庁内の複数の組織に分散していた財務管理責任が CFO に集めら
れた。具体的には、以下が CFO の責任事項とされている。
○財務管理に関する報告
○財務管理活動の監視
○統合的な会計システムと財務管理システムの構築・維持 等
•
ここでいう財務管理(financial management)とは、省庁内の各オフィスから提出された財務書類
(financial statement)を、正しく作成されているかどうかチェックした上で統合し、省庁としての財務
書類を作成することである。これは、財務面での内部管理(internal control)であると言える。
•
CFO は、省庁のトップレベルの幹部として位置づけられている。省の CFO は大統領が指名し、上
院の承認を要する。その他政府機関の CFO は事務次官が任命する。
124
③ドキュメントの概要
•
各 省 庁 の 財 務 諸 表 は 、 業 績 情 報 と あ わ せ て 「 業 績 ・ 財 務 報 告 書 ( PAR : Performance and
Accountability Report)」としてまとめられ、議会に提出される。財務諸表は発生主義ベースで作成
される。
•
財務諸表へのキャピタルチャージの導入については、OMB で検討は行っているが、まだ実現さ
れていない。
図表 各省庁が作成すべき財務文書
【構成】
ⅰ.貸借対照表(Balance sheets)
ⅱ.純コスト計算書(Statement of net cost):部局毎に、戦略目標毎の費用と収入を記述。
ⅲ.純資産増減計算書(Statement of changes in net position)
ⅳ.予算資源報告書(Statement of budgetary resources)
ⅴ.資金報告書(Statements of finance)
ⅵ.注記(Notes to the financial statements)
ⅶ.必要補完情報(Required supplementary information)
ⅷ.必要補完管理情報(Required supplementary stewardship information)
※ⅶ、ⅷは監査対象外
※作成すべき書類の内容は、OMB 通達(OMB Bulletin No.01-09)で指示。
125
④各省庁における取り組み例
中小企業庁(SBA)
•
SBA 全体の組織構造は以下のとおりである。組織ごとに Long-Term Objective(LTO)が割り当て
られている。予算は LTO ごとに割り当てられている。LTO に対しては1つまたは複数の Outcome
Measures が割り当てられており、その達成状況が PAR に掲載されている。なお、Strategic Goal 4
は、省庁管理に関する目標であり、予算は Strategic Goal 1~3 の内数として示されている。
図表 SBA における組織構造
(出所)中小企業庁「Performance and Accountability Report 2005」
126
図表 SBA における目標体系
Strategic Goal 1. Improve the economic environment for small businesses
Long-Term Objective 1.1: Minimize the regulatory burden on small businesses
Outcome Measures 1.1.1: Achieve a yearly regulatory cost savings that increases at a rate of 10
percent annually over a base amount of $3.8 billion set in 2002, due to
Advocacy intervention, by FY 2008. ($ billion)
・・・
・・・
Strategic Goal 2. Increase small business success by bridging competitive opportunity gaps facing entrepreneurs
Strategic Goal 3. Restore homes and businesses affected by disaster
Strategic Goal 4. Ensure that all SBA programs operate at maximum efficiency and effectiveness
(出所)中小企業庁「Performance and Accountability Report 2005」
•
CFO オフィスの構造は以下のとおりである。CFO オフィスの職員数は約 100 名。①Planning &
Budget は予算担当、②Financial Analysis は loan program の管理・モデリング、③Denver
Financial Center はレポーティング、会計・支払(dispursement)等に関するオフィスの管理、④
Financial Administration はデンバーオフィスで作成されたレポ ートのチェック・仕上げ、⑤
Financial Systems は IT システムの管理、⑥Analysis, Planning, Accountability は、ブッシュ政権が
Performance Budget を重視するようになったことを背景に、Performance を Budget に反映させるこ
とを目的に 2004 年に新設された。各オフィスから提出される Performance Report の統合・調整を
行うほか、各オフィスが適切にプログラム評価を行えるようにサポートを行っている。
•
⑥Analysis, Planning and Accountability は、主に PART を担当している。PART のレイティング自
体は OMB が行うが、各省庁は OMB が正しく評価できるように情報提供を行う必要がある。具体的
には、OMB からの質問に対してプログラムの担当部署が回答を提出する、というプロセスで行わ
れるが、同オフィスは、各部署が正しく回答を行えるようサポートを行う。
127
図表 CFO オフィスの組織構造
Chief Financial Officer
Deputy Chief Financial Officer
①
Planning & Budget
②
Financial Analysis
6 Budget Analysts
2 Financial Analysts/
Specialists
③
Denver Finance
Center
④
Financial
Administration
23 Financial Specialists
26 Accountants
16 Accounting Techs.
1 Financial Manager
2 Program/Man. Analysts
1 Office Automation Clerk
計9名
⑤
Financial Systems
1
3
4
1
1
1
Deputy/Supervisory
IT Specialists(Wash)
IT Specialists(Den.)
Financial Sys. Spec.
Lead IT Specialist(Den)
Senior Accountant
計70名
3
1
1
1
Financial Analysts
Lead Financial Spec.
Program Assistant
intern
⑥
Analysis, Planning,
Accountability
計12名
6 Accountants
1 Automation Clerk
1 Financial Specialist
5 Financial Specialists
計6名
計9名
計7名
(出所)中小企業庁「Performance and Accountability Report 2005」
•
CFO office はワシントンとデンバーに分かれており、職員の3分の2はデンバーにいる。オフィス内
では、定例のミーティングが頻繁に開催されている。例えば、Loan team(Planning & Budget、
Financial analysis 、 Denver 、 Financial administration の 各 ヘ ッ ド お よ び Deputy chief ) や 、
Administrative accounting team(Planning & Budget、Denver、Financial administration の各ヘッド
および Deputy chief)のミーティングが2週間に1回のペースで開かれている。また、CFO、Deputy
chief、各オフィスのヘッドが参加するスタッフ会議をビデオ会議形式で毎週実施している。
•
CFO は、各オフィスに対し、予算要求額および業績目標について説明を求める。ただし、省内に
おける予算要求額の決定権は administrator および chief of staff にあり、CFO が各オフィスに指示
を出したり、交渉を行うわけではない。CFO は、金額や目標値、予算説明資料(justification)の内
容について、アドバイス(suggestion)を行うだけである。連邦政府における OMB のような立場にあ
ると言える。
図表 各省庁における CFO オフィスの役割
連邦政府
各省庁
議会
Administrator
Chief of staff
OMB
CFO Office
各省庁
各オフィス
128
商務省
•
商務省全体の組織構成は以下のとおりである。
図表 商務省の組織構成
(出所)商務省「Performance and Accountability Report」
129
•
また、商務省における CFO オフィスの組織構成は以下のようになっている。Budget Office に属す
る Systems, Policy and Performance Division は、GPRA が制度化された際に設置されたもの。
•
商務省担当者によると、CFO の役割は、各 bureau が適切な予算を提示できるように支援すること
にあるとのこと。CFO には予算の決定権限はなく、各 bureau に強制することはできない(CFO と各
bureau は“negotiate”するのではなく“explain”する)。各 bureau は要求予算額に対して妥当な業
績目標をあわせて示さなければならず、一定の業績をあげる責任(obligation)が課せられる。
図表 商務省 CFO オフィスの組織構成
CFO
Financial
Management
・Accounting Report
(PARの財政部分)
を担当
Budget
Office
20名
5名
Systems, policy
and performance
・PARの作成(各オフィスか
らの提出分を総括)
・Deputy Secretaryに各オフ
ィスの進捗状況を報告
(四半期・非公表)
・PMAスコアカード
5名
Management
Organisation
・Administrationの長を兼任
・CFOは大統領が指名し、上院が承認
Acquisition
Management
Administration
Service
Security
・・・
←各headは全てBudget officeの
directorに成果を報告。
5名
5名
Reports
division
Budget formation
・Budget formationから提出された
予算を省全体で集約
・予算に関する法令の情報収集
・各オフィスから提出された
予算の詳細計算
(出所)商務省ヒアリングを基に、野村総合研究所作成
•
商務省の大統領予算には、業績予算の考え方が導入されている。同予算では、省内のオフィス
(bureau)ごとに、同オフィスに関係する appropriation の詳細と、同オフィスの予算および業績目標
(performance measures)が示されている。
•
例えば、商務省に属する NOAA(National Oceanic and Atmospheric Administration)について見
ると、商務省としてのゴールの下に NOAA の5つのゴールがあり、NOAA のゴールごとに複数のプ
ログラムが対応している。(NOAA は規模が大きいため 20 のプログラムがあるが、小さい bureau は
1つのプログラムしか所管していないところもある。) 業績予算では、NOAA のゴールごとに予算
が付けられる。会計上明確にするため、1つのプログラムは1つのゴールに対応し、複数のゴール
に対応することはない。2007 年度大統領予算では、NOAA の5つのゴールごとに予算と複数の評
価指標があわせて示されている。2007 年度予算では、2005 年度の決算額と各指標値、2006 年度
の支払見込額と各指標の目標値、2007 年度の予算要求額と各指標の目標値が掲載されている。
130
(2)各省庁における監査
①経緯
•
省庁における内部管理(internal control)を強化するため、1978 年に監察総監法(Inspector
General Act of 1978 : IG)21が成立。各省庁に監察総監(IG:Inspector General)のポストが新設さ
れ、OMB のガイドラインに従って自分の省庁の監査を行い、その監査結果報告書を大統領府に
に提出する事が義務付けられた。また、IG のスタッフ組織として監察総監室(OIG:Office of
Inspector General)も設置されることになった。
•
1994 年の GMRA 制定により、全省庁に財務諸表の作成が義務づけられ、各省庁の財務監査に関
する以下のサイクルが確立した。
①CFO が年次財務報告を作成。
②監察総監(Inspector General)または外部の独立監査人が、同財務報告の監査を半年ごと
に実施し、各政府機関の長に報告。
③各機関の長は毎年 3 月 1 日までに、OMB 長官に対し監査済み財務報告(Accountability
Report)を提出。
④OMB 長官は、財務報告と全政府規模の財務管理計画(5 ヵ年)を議会に提出。
⑤GAO 院長は必要があれば各省庁の財務報告を再調査し、議会への報告を行う。
•
現時点で、主要 24 機関の財務諸表のうち、21 機関が適正意見を得ている。
②IG の概要
•
1978 年監察総監法では、IG の役割は以下の5点とされている。
○独立的かつ目的志向の監査、監察、検査の実施
○無駄づかい、汚職、乱用の防止
○経済性、効率性、有効性の促進
○審議中の法令、規則の検討
○省庁、議会に対する説明責任
•
CFO も IG も省庁内の各オフィスのチェックを行っているが、CFO の audit は事前評価(予算査定)、
IG の audit は事後評価であり、両者の役割は全く異なっている。
•
IG は、CFO が作成した財務諸表の監査を行うが、外部の監査法人に監査を委託しても良いとされ
ている。GAO(2004)によると、IG が監査を担当したのは 8 省庁のみで、外部の監査法人に監査を
委託した省庁の方が多いとのこと。
•
IG は、法令に基づく監査(auditing)、監察(investigation)22以外に、事前・事後のプログラム評価
も行っている。
•
IG は省庁のトップである次官に属するが、監査、調査の遂行において妨げられることはない。IG
には以下の権限が与えられている。
○当該省庁における全ての記録、情報へのアクセス権
21
22
監察総監法は 1988 年に改正されている。
「監察」とは、不正、無駄、乱用の発見のこと。
131
○省庁トップへの面会権
○監察、報告の遂行は IG の裁量に任される(国家安全保障や法令が禁止する事項を除く)
○省庁外向けの報告作成
○議会証言の実施
○監察総監室(OIG)における独自スタッフの雇用
•
IG は、レビューする対象の決定、必要な全ての文書へのアクセス、調査結果及びレビューに基づ
く勧告の発表、機関の長及び議会に対する調査結果及び勧告の報告に関して、独立性が法律に
よって担保されている。
•
内閣レベルの省庁の IG は大統領が指名し、上院の同意により任命される。解任権限は大統領の
みが有する。その他の省庁の IG は、省庁ヘッドが任命する。前者に比べて後者は体制および予
算の面で厳しい状況に置かれている。
•
監察総監室(OIG)のスタッフは、学歴としては経営学修士、法学博士が多く、取得資格としては
公認会計士が多い。
•
IG 法によると、IG は財務監査、業績監査、財務諸表監査、政策評価のいずれも可能とされており、
政策評価まで行うかどうかは各省庁の IG の判断に任されているが、最近は、各 IG において業績
評価や管理システムの監査が志向されるようになってきており、監査内容が OMB の関心領域に
近づいてきているとのこと。
③IG と関係組織との関係
GAO との関係
•
GAO は、IG(または外部の監査法人)が監査を行うにあたって準拠すべき「政府監査基準
(Government Auditing Standards)」や、参考にすべき「財務監査マニュアル(Financial Audit
Manual)」を作成している。また、GAO は、上記監査人に代わって財務諸表検査を行うことができ
るとされており、実際に、一部政府機関の財務諸表検査を行い、意見を表明している。
•
IG 法には、GAO と IG の連携が規定されているが、詳細な役割分担までは規定していない。
•
GAO 及び各省庁 IG は、連邦政府または各省庁における管理上の主要課題を指摘した「ハイリス
クレポート」を毎年度作成している。例えば、GAO の 2002 年度レポート(U.S. General Accounting
Office, High Risk Series)では、IT、財務管理、人材管理を最重要課題と指摘している。
OMB との関係
•
OMB は、IG の各種評価に関するガイドラインを作成している。GAO と OMB の違いは、OMB が IG
を直接指揮する立場にあるのに対し、GAO は基準やマニュアルの作成を通して IG の支援・指導
等を行っている。
その他
•
一部の省庁や州政府は、監査および内部統制に対する監視・助言を行う機関として、「財務管理
アドバイザリ・コミッティ(Financial Management Advisory Committee)」を設置している。コミッティ
が置かれている場合、IG は、議会とコミッティに報告を行うことになる。
132
④各省庁における取り組み例
中小企業庁(SBA)
•
IG office は CFO office と同様、Administrator に直属している。
•
IG の主要な役割は財務監査(financial audit)であり、業績監査(performance audit)はほとんど行
っていない(99:1 ぐらいの割合)。業績監査は、監査の一部としてやっているかもしれないが、ほと
んど重視されていない。
•
IG は、同庁の Performance and Accoutability Report の “management challenge”において、当該
省庁の弱点分野を指摘しているが、これを見ると、前年度までその1つに業績管理(performance
management)が挙げられていたが、本年度から無くなっている。SBA の担当者によると、これは
CFO office の中に PART を担当する部署(Analysis,Planning and Accountability)を新設したこと
等が評価されたため、とのことである。また、業績管理が重点課題から外されたことで、IG はさらに
業績監査を行わなくなった、とのことである。
商務省
•
商務省の財務監査は民間の監査法人(KMPG)に委託しており、IG は特定のテーマに関する監
査のみを行っている。IG の監査の結果は、Performance and Accountability Report(PAR)の
“Management Challenge”に掲載されている。中小企業庁と同様に、前年度までは IG の監査対象
テーマの1つに GPRA が挙げられていたが、本年度から対象から外されている。商務省担当者は、
この理由として、政策評価制度が導入されて何年もたち、ノウハウが蓄積され、うまくまわるようにな
ってきたと説明している。具体的な改善点としては以下の2つを挙げている:①定量的かつ現実的
で、マネジメントに役立つような指標を設定できるようになってきたこと。②プログラムごとの財務お
よび業績情報が蓄積されてきて、予算と業績の内部管理(internal control)ができるようになってき
たこと。
133
(3)連邦政府全体の財務諸表作成
①経緯
•
1994 年の GMRA で、財務長官に対し、発生主義に基づく連邦政府の財務報告(連結財務諸表)
を提出することが義務付けられた。財務長官は毎年 3 月 31 日までに、大統領と議会に対し前年度
の政府全体の監査済み財務報告(連結財務報告書)を提出しなければならない。この財務報告
書は「連邦連結財務諸表(CFR:Consolidated Financial Report)と呼ばれ、1997 年度から作成さ
れている。
•
当初、CFR と各省庁の財務諸表は別々に作成されていたが、財務省は 2004 年度から、CFR と各省
庁の財務諸表をリンクさせた新たな財務管理システムを導入したとのこと。
②ドキュメントの概要
•
連邦政府全体の財務諸表には、以下の2つがある。どちらも財務省が作成する。
○歳入歳出収支総合報告書(Combined Statement of Receipts, Outlays and Balances)
予算と対応した、現金主義ベースの財政収支実績。財務省が作成し、議会に提出される。
GAO の監査対象ではなく、わが国の決算委員会に相当するような委員会での決算審議も行
われない。
○連邦連結財務諸表(CFR:Consolidated Financial Report)
発生主義ベースの連邦政府全体の連結財務諸表23。現金主義の予算とは対応していない。
GAO の監査対象。1997 年度以降、まだ一度も適正意見が出ていない。(理由は、国防総省
の会計システムの信頼性に疑いがあること、政府機関内の内部取引が相殺されていて詳細
が不明なこと、個別政府機関からのデータ収集方法に問題があること。)
※「Financial Report[Statements] of the US Government」とも呼ばれる。
図表 CFR の構成
【構成】
ⅰ.純コスト計算書(Statement of Net Cost):省庁毎の純コスト(収入と費用の差分)を記述。
ⅱ.運営報告書兼純資産増減計算書(Statement of operations and changes in net position)
ⅲ.貸借対照表(Balance Sheets)
ⅳ.予算黒字と純収益(コスト)の調整表(Reconciliations of net operating cost and unified
budget surplus(or deficit)):PL 上の黒字と財政収支の黒字のリンクについて説明
ⅴ.資金収支変動表(Statements of change in cash balance from unified budget and other
activities):財政黒字(赤字)の政府の資金収支への影響
ⅵ.注記(Notes to the financial statements)
ⅶ.管理情報(Stewardship Information):社会保障基金や文化的遺産など、貸借対照表に記載
されていない資産・負債について記述
ⅷ.補足情報(Supplemental Information)
※ⅳ、ⅶ、ⅷは監査対象外
23
地方政府との連結は行われない。
134
(4)連邦政府全体の監査
①経緯
•
1994 年の GMRA で、会計検査院(GAO)院長に、連邦政府の連結財務諸表(CFR)の監査が課せ
られた。
•
CFO 法、GMRA と続く一連の財務管理改革の総仕上げとして制定された 1996 年の連邦財務管理
改善法(FFMIA:Federal Financial Management Improvement Act of 1996)では、GAO 院長は毎
年 10 月 1 日までに議会に対し、連邦政府の財務報告書が会計基準に合致しているかどうかの報
告(Auditor’s Report)を行うこととされている。
②GAO の概要
•
GAO は、連邦議会の付属機関として、連邦政府の財務監査や業務監査を主な役割とし、「議会の
番犬」と呼ばれている。
•
行政府から完全に独立し、行政府に対して強力な調査権限が与えられている。設立当時からこの
独立性は重視され、身分保証等によって保証されている。
•
GAO は質的に高度な検査手法を持ち、成果物の件数が他の国の会計検査院よりも圧倒的に多く、
強い影響力を有している。
•
GAO 院長(Comptroller General)は大統領が任命する。
図表 議会補佐機関の現状
会計検査院(GAO)
議会予算局(CBO)
議会調査局(CRS)
根拠法
1921 年法
1974 年法
1970 年立法府再編法
議会監督
下院政府改革委員会
下院予算委員会
図書館合同委員会
委員会
上院政府問題委員会
上院予算委員会
任務
監査、評価、勧告、裁定
予算・経済分析
調査、分析、情報提供
予算
3 億 9,400 万ドル
2,700 万ドル
7,200 万ドル
人員
3,275 人
232 人
747 人
(注)予算・人員とも 2000 年度予算
(出所)渡瀬義男「米国会計検査院(GAO)の 80 年」(2005)
図表 各国会計検査院の概要
政体
会計年度
会計検査院の名称
日本
議院内閣制
4 月-3 月
会計検査院
地位
職員数
年間支出総額
三権から独立
1254 人
161 億 2652 万円
業績検査と財務検
査の比率(コストベース)
年間業績検査報告
件数
年間財務検査報告
件数
財務諸表検査の委
託比率
業績検査と財務検
査の区別なし
-
アメリカ
大統領制・連邦制
10 月-9 月
General
Accountability
Office (GAO)
議会に所属
3110 人
4 億 1551 万 US ドル
(494 億 4569 万円)
77:23
イギリス
議院内閣制
4 月-3 月
National Audit
Office (NAO)
議会に所属
750 人
5503 万ポンド
(95 億 2019 万円)
36:64
オーストラリア
議院内閣・連邦制
7 月-6 月
Australian National
Audit Office
(ANAO)
議会に所属
283 人
4814 万 AU ドル
(30 億 3046 万円)
40:60
議会に所属
271 人
3554 万 NZ ドル
(17 億 9744 万円)
7:93
786 件
53 件
46 件
12 件
-
101 件
640 件
293 件
4007 件
0%
0%
約 17%
約 25%
約 30%
(注)ニュージーランドの財務検査では、非財務情報(サービス業績報告書)も行っている。
(出所)東信男「NPM における会計検査院の役割-その国際的動向-」(2002)
135
ニュージーランド
議院内閣制
7 月-6 月
Audit Office (AO)
•
GAO の業務は、以下の6つに大別される。「財務監査」や「特別監察」は従来からの業務である。
「プログラム評価」はいわゆる業績監査であり、近年はこの比重が高まってきている。「政策分析・政
策開発」は新しく加わった業務で、法令規則の検討は OIG でも行われている。「マネジメント検討」
は行政機関の管理体制、組織構造、業務プロセスを検討する業務で、これも 1990 年代から始まっ
た新たな活動である。
図表 GAO の業務
カテゴリー
内容
①財務監査
会計書、会計関連の監査、会計関係の内部管理や合
(Financial audits)
規性チェック、不正の防止など。
②経済性・効率性監査
対象機関における不経済、非効率の発見。
(Economy and efficiency audits)
③プログラム評価
個別プログラムの、成果・利益の達成度、効果に関する
(Program evaluations)
評価。
④政策分析・政策開発
個別政策のコスト、方法の検討。法令等の審査も含む。
(Policy analysis and policy development)
⑤マネジメント検討
政府の行政機関における管理体制、業務組織、業務プ
(General management reviews and related activities)
ロセスの見直し。
⑥特別監察
不正、無駄、乱用の発見。法令から見た犯罪性の調査。
(Special investigations)
(出所)会計検査院「欧米主要先進国の内部監査制度等の現状と課題に関する調査-アメリカ・イギリス-」(2000)
「財務監査」について
•
GAO の監査対象は連邦政府全体の連結財務諸表(CFR)であり、各政府機関の財務監査は基本
的に行わない。GAO は、議会に提出された各政府機関の監査報告を点検するのみである。ただ
し、特に問題がある事例については、GAO が直接検査を行うこともある。
「プログラム評価」(業績監査)について
•
各省庁に IG が設置されると、GAO が従来行っていた伝統的な会計検査業務(財務諸表検査、不
正・濫用の防止・発見・勧告等)は IG に移管。GAO は、財務監査については基準やマニュアルの
作成、チェックのみを行い、業績監査による政策の有効性の評価に重点を置くようになった。現在、
GAO の検査活動の9割はプログラム評価になっている24。
•
連邦政府の内部統制は GAO と各省庁の IG が担っているが、GAO は政府全体のプログラムの評
価や政策分析に長期的視点で取り組み、IG は前線で各省庁内の不正や浪費の問題に対処する
という役割分担に変わってきている。
•
GAO のプログラム評価は、時期を問わず、随時実施されている。
•
プログラム評価のうち、8割は議会の要請に基づく検査で、残り2割は GAO が自発的に行う検査
である。
•
伝統的な会計検査から政策評価へと検査活動が移行するのに伴い、スタッフの構成も変わってき
た。かつては、大半が会計士によって構成されていたが、現在では、会計学(Accounting)の出身
24イギリスの会計検査院(NAO)も、GAO
と同様に、伝統的な会計検査から政策評価に移行しつつある。(金刺
会計検査院の現状(その 2)」
136
保「各国
は全体の約 20%で、若手スタッフを中心に、行政学(Public Administration)、統計学(Statistics),
経済学(Economics)、政策科学(Policy Sciences)、オペレーティングリサーチ(Operating Research)
など、政策評価に必要な各種分野の出身者が多くなっている。
137
(5)その他関係機関の役割
①OMB
•
OMB は、従来、予算編成を主な役割としてきたが、1990 年の CFO 法により、政府全体の財務管理
の推進、財務管理システムの改革、財務報告及び内部統制強化に関する権限・責務も担うことと
なった。
•
OMB 内に、連邦政府全体の財務管理の最高責任者として「マネジメント副長官(Deputy Director
of Management)」のポストが新設され、その下に、財務管理を担う「連邦財務管理室(OFFM:
Office of Federal Financial Management)」25が設置された。
•
現在、予算編成は「資源管理部(Resource Management Offices)」が担当し、財務管理は OFFM が
担当している。
•
OFFM は、政府の財務管理を一元化して行う権限を与えられており、現在の主要業務は、財務管
理システムの整備である。また、各省庁における財務管理システムの整備は、各省庁の CFO が責
任を担っている。
OMB と関連主体との関係
•
OMB は、2000 年告示で、CFO に対して財務報告における必要事項を定めるとともに、IG に対して
監査の実施を義務付け、監査の大枠については GAO のマニュアルに従うべきことを定めている。
また、これとは別に、IG に対し、監査事項に関する規則集を作成している。このように、内部監査に
関して、制度や基準の設定は GAO が行い、実施の監督は OMB が行っていると言える。
図表 財務報告の監査に関する告示
(Audit Requirements for Federal Financial Statements : OMB Bulletin 01-02)
【宛先】
行政府内の省庁その他の機関における監察総監(Inspector Generals)および首席財務官(Chief
Financial Officers)
【表題】
連邦財務報告の監査における必要事項
【必要事項】
・ 毎年監査すること
・ 監査責任:24 省庁他の財務報告の監査は監査総監が行うこと。会計検査院は任意に監査を行うこと
ができる。
・ コミュニケーション:監査担当機関と対象部局は円滑な意思疎通を行うこと。
・ 監査の範囲:監査手続きは会計検査院が発行する政府監査基準に従うこと。
○財務諸表の監査
○管理統制の分析
○リスク関連情報
○内部管理、内部管理上のリスクに関する情報
○業績指標
○合規性検査
・ 監査報告書:政府監査基準に従い、監査報告書を作成し、省庁長官に提出すること。
○財務諸表の監査結果
○内部管理、合規性に関する監査結果
・ マネジメント・レター:監査報告書に記載する必要が無くとも、内部管理の観点から報告される事項を
まとめたもの。
25
OFFM の代表は Controller と呼ばれる。
138
・
監察総監の義務:
○本指示書に記載されるとおりの監査を行うこと
○内部監査機関および外部監査機関ほかに技術的な助言を与えること
○外部監査機関が行う監査の質の評価を行うこと
○指摘事項のフォローアップ
②関係主体間の連携を図る仕組み
•
OMB の OFFM と各省の CFO との連携を図る組織として、「首席財務官協議会(CFO Council:
Chief Financial Officers Council)」が設置されている。同協議会は、OMB の Deputy Director of
Management を議長とし、OFFM Controller、各省の CFO、財務省の Fiscal Assistant Secretary 等
で構成されている。
•
ただし、OMB ヒアリングによると、確かに OMB の Deputy Director for Management は各省庁の
CFO、IG のトップとして位置づけられているが、CFO、IG は独立性が高く、OMB との関係はそれ
ほど密接なものではないとのことである。
•
IG 間の調整・連携を促進するための組織として、内閣レベルの省庁においては「高潔性と効率性
に関する大統領委員会(PCIE:President Council on Integrity and Efficiency)」、その他の政府機
関においては「高潔性と効率性に関する幹部委員会(ECIE:Executive Council on Integrity and
Efficiency)」が設置されている。どちらも、OMB の Deputy Director for Management を議長とし、各
省庁・機関の IG、GAO、OMB で構成されている。両委員会は、毎年、各省庁の OIG の活動報告書
を出している。
•
また、各省庁・機関の OIG は、IG NET という共通のホームページを持ち、情報発信を行っている。
•
財務システムの導入を促進する組織として、GAO、OMB、財務省等をメンバーとする JFMIP(Joint
Financial Management Improvement Program)が設置されている。同委員会は、CFO Council や、
OMB の OFFM とも密に連携して省庁間の横の連携強化に努め、情報共有等の役割も担ってい
る。
図表 JFMIP のメンバー構成
①執行委員(Principals):4 名
・GAO 院長(Comptroller General)
・OMB 長官
・財務省(Department of the Treasury)長官
・人事院(Office of Personnel Management)総裁
②運営委員会(Steering Committee):6名
・GAO、OMB、財務省、人事院、GSA(General Services Administration)の幹部 等
③内局スタッフ:約10名
・各省庁から選抜された課長クラス
(出所)JFMIP Annual Report
139
(6)財務管理制度に対する評価
●CFO 法以降の一連の法定により、連邦政府全体で財務管理を徹底する組織的枠組みが確立した
•
GAO(2005)は、CFO 法制定の意義として、OFFM が連邦政府全体の財務管理を主導し、各省庁の
CFO が連邦政府の財務管理の改善に共同で責任を負う、という財務管理の組織的枠組みが確立し
たことを挙げている。オペレーションの実態についても、各省庁では優れた人物が CFO に任命され、
OFFM はシステム導入支援やガイダンスの提示等により、リーダーシップを発揮していると肯定的に
評価している。
•
OMB の指導と GAO の監督の下に連邦政府全体で財務管理を行う仕組みが確立したことについて、
アレン・シック教授は、これを「アカウンティング(会計)とバジェティング(予算編成)との統合」に向け
た取組みとして高く評価している。
●当初、財務諸表の質が低く、発表時期が遅い点が問題とされたが、最近では改善されてきている。
•
当初、財務諸表の発表時期が遅く、予算編成の参考とならない点が問題とされた。当初は、発表期
限は会計年度終了(9 月末)後の翌年 1 月 30 月とされたが、この時点では翌年度の予算申請は既に
終了してしまっている。その上、期限通りに発表できた省庁は全体の6割程度であった。
⇒しかし、最近では作成期間がとみに短縮されているとのこと。2004 年度から、各省庁の財務報告
(PAR)の提出期限は 11 月 15 日と早められ、OMB と各省庁との予算編成時のやり取りに PAR が
実質 2 ヶ月間活用できるようになった。
⇒GAO(2005)によると、2005 年度は、24 省庁の全てが、OMB が設定した提出期限(年度締め日から
45 日後)のデッドラインを遵守したとのこと。
•
また、当初は財務諸表の質の低さも問題とされた。多くの省庁で監査人から適正意見が出されず、
「意見差し控え」とされた。
⇒しかし、これも最近では改善されてきている。GAO(2005)によると、監査での「無限定意見」が増加し
てきたとのこと。
•
以上のように、GAO(2005)では、財務報告書の質は向上し、発表時期も早くなってきている点を評価し
つつも、今後の課題として、再提出率の削減、透明性の向上を指摘している。
●IG の問題点は、組織によって監査水準にばらつきがあること、内部統制の実態を把握していないこと。
•
GAO(2003)は、IG の問題点として、以下の点を指摘している。
○各 IG の監査水準にばらつきがある点
○ほとんどの IG は、各省庁の内部統制の有効性について報告を行っていない点
●今後の課題は、システムの改善、不正監察の強化、人材の確保等。
•
GAO(2005)は、内部管理における今後の課題として、以下の点を指摘している。
①財務管理システムの改善
②内部管理(不正支出の発見等)の弱さの解消
③将来に向けた人材の確保
140
④財務管理改革の確実な継続
①②については特に国防省で取組みが遅れているとのこと。②については、2005 年 7 月に、CFO 委
員会が、OMB、PCIE(IG 協議会)と連携してガイドラインを発行するなど、新たな進展が見られる。
141
2)政策評価と内部管理との連携の仕組み・実態
(1)財務管理
●政策評価において、財務諸表によるコスト情報は、インプットを測定する尺度として重要
•
GPRA の「戦略計画」には長期の業績目標、「年次業績計画」には年次の業績目標が示され、そ
れぞれの業績目標が実績と比較されて業績報告が行われるが、このような報告体系の中で、(財
務諸表による)コスト情報が、1つの業績尺度として重要な役割を果たすと考えられる
(JFMIP,1998)。コスト情報は、プログラムへのインプットを測定する尺度であり、アウトプットやアウ
トカムの尺度と比較することで、プログラムの業績測定に役立つ。
•
GAO(2002)26によると、コスト情報に基づいた評価を行うためには年次業績計画の政策目的と財務
諸表(純コスト計算書)の集計単位が一致していることが望ましいが、このような対応関係になって
いる省庁は少数に留まっている、とのこと。
●IG は GPRA における戦略計画の作成、年次計画の見直し、業績報告書作成に参加
•
1999 年度の PCIE(IG 協議会)報告書では、IG と GPRA との関係について、「多くの OIG は、助言
やワーキンググループへの参加を通じて、戦略計画の作成、年次見直し、成果報告の作成に寄
与した」、「OIG が作成する報告書は、内部管理の改善機会を特定化し、あるいはデータ所在をま
とめている」として、OIG の存在が GPRA にとって有益であるとしている。
(2)人材マネジメント
●原則として、業績の達成状況を俸給体系に反映させることは行っていない
•
(ニュージーランドと異なり)、GPRA 導入に際し、俸給体系の変更に関する各省庁の裁量権は拡
大されなかった。この背景としては、行政改革の中で人件費総額が抑制されており、労働組合と
の関係でも、これ以上の俸給体系の変更が難しい状況であったこと等が挙げられる。
●一部省庁では、幹部の俸給に業績の達成状況を反映させている
•
GPRA の、執行管理への活用については、各省庁の組織や人の意識に依存するところが大きい。
GPRA の導入に積極的な運輸省及び退役軍人省では、幹部の強い関心の下、独自の施策として、
現行の組織体制は維持しつつ、次官と各部局との間で「業績契約」を締結し、業績目標の設定及
びその達成状況について、毎月、次官が直接聴取・協議することとしている。さらに、退役軍人省
では、最も重要な10の業績目標について、現行制度の下で各省庁に与えられている裁量の範囲
内で、その達成状況に応じて実施部門の長のボーナスの額を変動させる取り決めを行っている。
•
商務省へのヒアリングによると、同省では、senior レベル(senior manegement office および program
manager)に関しては、業績と人事がリンクしているとのこと。ただし、給与は変更できないため、個
人的な評価や将来の昇進に考慮される程度とのことである。
26
“MANAGING FOR RESULTS - Agency Progress in Linking Performance Plans with Budgets and Financial
Statements”
142
4.政策評価の連携の実態(まとめ)
(1)政策評価の活用状況について
アメリカ連邦政府の政策評価制度には、省庁レベルで実施される GPRA と、プログラムレベルで実施さ
れる PART の2種類がある。このうち、GPRA は法定化されているため一応は実施されているが、形式的な
ものになり下がっている状態であるのに対し、PART の方は、実際にこの結果を用いてプログラムの見直
し・廃止が行われているほか、予算配分にもある程度考慮されている。
こうした違いが生じた要因としては、GPRA は前政権が導入したものであるのに対し、PART は現政権が
導入したものであるという政治的な理由も大きいが、この他に、PART は評価の単位と予算の単位が一致
(どちらもプログラム単位)しており、評価結果と予算が比較しやすいことが指摘できる。
ただし、PART といえども、GPRA と比べれば良いといった程度で、十分に活用されているとは言いがた
いのが現状である。その要因としては、省庁横断的なプログラムに対しては目標設定が難しいこと、データ
入手の難しさが目標設定の制約になっていること、膨大な事務作業が発生していること、といった政策評
価につきもののテクニカルな問題も指摘できるが、最大の問題は、予算の決定権限を有している議会が、
政策評価に全く関心を示していないことである。議会は、国民の関心が薄いテーマには消極的になりがち
であり、財政問題に世間の関心が集まっていない現在においては、予算審議において、評価の結果が活
用されるのは期待できない。議会での審議において、評価結果が活用されるような仕組みが必要であると
考えられる。
(2)評価と予算の連携を促進する工夫について
GPRA、PART ともに、評価結果を予算編成に活用させる、という事後評価のプロセスを明確に規定して
いるわけではない。しかし、連携を促進するような工夫がいくつかなされている。まずは、政策評価をどの
省庁が所管するかがポイントになる。アメリカでは、予算編成を所管している OMB に政策評価をあわせて
所管させ、各省庁から OMB に評価結果を提出させるような仕組みとすることで、評価と予算の連携を誘
導するような仕組みになっている。これにより、OMB が評価と予算を比較しやすいのはもちろん、各省庁
に対しても、きちんと評価をしなければ予算が減らされるかもしれないという緊張感を与えることで、評価を
真剣に行わせるような効果が期待できる。
これに加えて、新年度の業績計画と予算要求を同時に提出させることで、OMB は両者を比較して吟味
することができるようになり、省庁に対しては両者の整合を図ることを要求している。また、予算と評価の単
位をあわせていることは先にも述べた。こうした工夫を行うことによって、評価と予算の連携を促進しようとし
ている。
なお、アメリカ連邦政府では、目標の達成/未達成に対する報奨/ペナルティの仕組みは、明示的に
は導入されていない。しかし、テキサス州など制度的に導入しているところでも、機械的に適用するのでは
なく、組織間の議論の材料として使われている程度である。
(3)省庁内部の連携・マネジメントについて
アメリカ連邦政府の各省庁には、予算の事前評価を行う CFO と、決算の事後評価を行う IG とが、省庁
143
内にありながらほぼ独立の組織として設置されており、省庁の内部管理を行う仕組みが確立しているほか、
IG および会計検査院が二重で監査を行うことで、厳格に規律を担保しようとしている。
(4)予算書・予算体系の改革について
GPRA およびそれに基づく業績予算では、ゴールごとに予算および複数の指標を設定することで、予算
と評価の連携を促進しようとしている。しかし、ゴールは抽象的で実際の施策と結びつきにくく、実際には
評価のサイクルはうまく回っているとは言えない。
また、業績予算の導入にあわせて予算体系(appropriation account)の変更を行っている省庁も少数な
がら見られる。しかし、予算審議を行う議会は従来通りの予算体系を志向しており、従来のフォーマットで
再度出し直させるケースが多く、予算体系の改革はなかなか進んでいないのが現状である。
ただ、予算体系を完全に変えてしまうのではなく、従来のフォーマットと新しいフォーマットの両方で予
算を示し、情報の透明性を高めようとする取組みも見られる。中小企業庁は、議会に提出する予算根拠資
料の中で、従来どおりプログラム費用と間接費を分けて示したテーブルと、間接費をプログラムに分配して
プログラムのフルコストを示したテーブルの2つを示すことで、国民に分かりやすく、かつ議会にも受け入
れられやすい予算書を作成している。情報の透明化、という意味ではフルコストや発生主義により将来コ
ストを明示することも検討する必要があると考えられる。
144
参考資料(アメリカ連邦政府)
■連邦政府の概要
・ 連邦政府では、大統領が主催する閣議の構成員を、内閣のメンバーと考えることができる。その構成は、
おおむね以下のとおりである。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
大統領
副大統領
15 省長官
行政管理予算局(OMB)長官
経済諮問委員会委員長
中央情報局(CIA)長官
通商代表部(USTR)代表
大統領顧問
国連大使 等
・ 連邦の行政機構は、以下の機関から構成されている。
大統領府(12)
連邦各省(15)
独立機関・公社
・ ホワイトハウス事務局
・ 農務省
・ 経済諮問委員会
・ 商務省
・ 中央情報局(CIA)
・ 鉄道退職者会議
・ 環境問題委員会
・ 国防省
・ 国防原子力施設安全会議
・ 証券取引委員会
・ 国家安全保障会議
・ 教育省
・ 環境庁
・ 徴兵サービス
・ 総務局
・ エネルギー省
・ 雇用機会均等委員会
・ 中小企業庁
・ 行政管理予算局
・ 国土安全保障省
・ 米国輸出入銀行
・ 社会保険庁
・ 国家薬物取締政策局
・ 保健福祉省
・ 連邦選挙管理委員会
・ 通商開発庁
・ 政策事務局
・ 住宅都市開発省
・ 連邦緊急管理局
・ 国際開発庁
・ 国内政策委員会
・ 内務省
・ 連邦労使関係機構
・ 人権委員会
・ 国家経済会議
・ 司法省
・ 連邦沿岸委員会
・ 国際通商委員会
・ 科学技術政策局
・ 労働省
・ 連邦仲介和解サービス
・ 合衆国通商代表部
・ 国務省
・ 連邦準備システム
・ 運輸省
・ 連邦退職者投資会議
・ 先物取引委員会
・ 財務省
・ 連邦取引委員会
・ 消費財安全委員会
・ 退役軍人省
・ 政府調達局
・ 農家信用局
・ 汎アメリカ財団
・ 連邦通信委員会
・ 人事管理会議
・ 連邦住宅信用会議
独立機関
・ 連邦航空宇宙局
・ 公文書局
・ 首都計画委員会
・ 信用組合局
・ 芸術人文財団
・ 郵便料金委員会
・ 郵便サービス
独立規制機関
・ 原子力規制委員会
独立準司法機関
・ 連邦鉱山安全委員会
・ 就労安全審査委員会
公社
・ 労使関係会議
・ 国地域サービス公社
・ 労使仲裁会議
・ 連邦預金保険公社
・ 科学財団
・ 全米旅客公社
・ 運輸安全会議
・ 海外民間投資公社
・ 政府倫理局
・ 年金保険公社
・ 人事管理局
・ 特別カウンセル局
・ 平和協力隊
145
・ テネシー河谷機構
非営利公社
・ アフリカ開発財団
Ⅱ-2.テキサス州
1.業績予算制度の概要
•
テキサス州の政策評価制度である「戦略計画・業績予算システム(SPPBS:Strategic Planning
Performance Budgeting System)」は、政策評価と予算編成が一体となったシステムとして運用されて
いる。このため、本章では、政策評価制度と予算制度を区別せず、はじめに SPPBS の概要を述べた上
で、評価結果と予算編成の連携の実態について分析を行う。
1)SPPBS の導入経緯
•
テキサス州では、SPPBS 導入前にも予算制度の改革を実施してきた。
○Object of Expense Budget(~1975)
給料(Salary)、オフィス用品(Office Supply)、旅費(Travel)、賃借料(Rent)など物品や経費
ごとに予算を配分するやり方。
○Zero-based, Program Budgeting(1975~1991)
物品や経費(Objects or Expense)ではなく、プログラムやサービスごとに予算を配分するやり
方。各機関は、予算要求において、各プログラムにつき 4 つの Funding レベル(例:現予算の
80%、90%、100%、115%)の予算案を提出することが求められた。これにより、予算削減や
増加による影響などを理解することができる。議会予算委員会(LBB:詳細は後述)は業績評
価の結果を考慮して議会にアドバイスを行い、議会が予算を決定する。業績評価は活用され
ていたが、まだ予算と統合されてはいなかった。
•
そして 1991 年、州財政が予算不足に陥り、税金の引き上げおよび支出の削減が急務となった。この
際、州の予算法に予算の適正な編成・執行に関する判断材料がないということが問題となり、政府は
予算プロセスの透明性を高め、市民に予算の使途を理解してもらうため、Performance Budget を導
入することを決定。予算改革および戦略計画の法制化が州法として法定化され、これにより、各州機
関は 2 年ごとに今後 5 年間の戦略計画(Strategic Business Plan)を提出することが義務付けられ、そ
れに基づいて戦略および目標ごとに予算を振り分ける制度が確立した。1994 年予算から、業績測定
を含む予算改革が実施され、これにより、計画、予算、業績測定が結びついた業績予算システムが
完成した。このシステムは、「戦略計画・業績予算システム(SPPBS:Strategic Planning Performance
Budgeting System)」と呼ばれている。
•
このように、業績予算システムの導入は、まず戦略計画を策定し、これに従って評価システムを構築
し、その上で、予算過程との連携を図る、というプロセスで行われた。このプロセスにおいては、行政
府(知事部局)と立法府(州議会)との間で緊密な調整が行われた。
•
テキサス州では、伝統的に議会が強いリーダーシップを発揮している。SPPBS は、予算策定は行政
府と議会との間の「契約」であり、行政府は議会に対して一定の成果を挙げる責任がある、との考え
方に基づくものである。
•
テキサス州は、SPPBS の狙いとして、以下の7点を挙げている。
○業績及び達成度を基点とする予算プロセス
○成果(アウトカム)に的を絞った予算プロセス
○予算プロセスの円滑化
146
○全ての事業の単位あたりコスト(unit cost)の標準化
○重要な業績指標の達成度のモニタリング
○ニーズの変化に適合した資源の再配分
○成功・失敗に、報酬とペナルティで報いるシステム
2)業績予算制度の概要
(1)SPPBS の主要遂行機関
•
SPPBS の遂行責任は、議会予算委員会(LBB:Legislative Budget Board)と知事部局(executive
branch)の予算計画局(GOBPP:Governor’s Office of Budget, Planning and Policy)が負っている。
SPPBS に関して、立法府と行政府は緊密に連携27し、各省の戦略計画の作成や予算の提案につい
て、LBB と GOBPP とは共同でヒアリングを行い、指導にあたっている。
●議会予算委員会(LBB)
・
10 名で構成される、党派に拘束されない州議会28の委員会。SPPBS の中核的役割を担う。
・
議長は、上院議長である公選副知事(知事が指名する副知事とは異なる)、副議長は下
院議長が務める。その他の8名のうち2名は、上院の財務委員会及び歳入を扱う州務委員
会の議長、2名は下院の歳出委員会及び歳入を扱う財源委員会の議長であり、残りの4名
は上院議長が上院から、下院議長が下院からそれぞれ2名ずつを指名する。
・
LBB は、課長以下 140 名のスタッフを抱えている。
・
LBB の役割は、議会の会期が始まる前に「一般歳出予算案」(この中に目標指標が含まれ
ている)を作成し、提出すること。また、議会が会期中でない時には、州予算の変更を行う
権限が与えられている。
●知事部局予算計画局(GOBPP)
・
知事直属の部局として、予算編成及び戦略計画の策定の策定の責任を負う。議会の LBB
事務局と共に行動することが多い。
27
テキサス州では、議会の力が強く、知事に対する各行政部局の独立性も高いと言われている。(農林水産政策情報セ
ンター「テキサス州の『戦略計画・業績予算システム』」(2001))
28 テキサス州議会には 181 名の議員がおり、2 年周期で予算編成が行われている。議会は、2 年に一度開廷され、議会の
会期は 140 日間(約 5 ヶ月)だけである。議会の会期などについては、1876 年に制定されたテキサス州憲法によって定めら
れている。議会が 2 年に一度しか開廷されないため、議会は今後 2 年間の予算を 5 ヶ月間で承認する必要がある。
147
(2)SPPBS のプロセス
•
予算プロセスは、戦略計画の策定から始まる。LBB が戦略計画作成指示を偶数年の 2 月に出し、そ
れから 6 月までの間に、各機関はそれぞれの目標、戦略、指標をまとめた戦略計画を LBB に提出し
なくてはならない。このプロセスは GOBPP と協力して行われる。LBB は、GOBPP の意見を参考に、
各機関の戦略計画を検討した上で、4月から各機関と戦略計画に関する交渉を行っていく。各機関
は、戦略計画が承認されないと予算要求の作成に進むことができない。
•
戦略計画および業績予算作成に関する作業は、法律で規定されており、予算案を作成する前まで
は全て LBB と GOBPP が共同で行うが、予算案は、LBB と GOBPP は別々に作成し、州議会に提出
す る 。 予 算 の 決 定 権 限 は 議 会 の み が 有 す る 。 な お 、 GOBPP は 、 LBB の 予 算 案 ( budget
recommendation)に賛成の場合は自らの案を提出しないこともある。1980 年後半の州知事は LBB の
提案を支持したため、自らの提案を提出しなかった。どちらにしろ、州議会は GOBPP の予算案はほ
とんど考慮せず、LBB の予算案をベースに審議を行う29。
•
SPPBS のプロセスの詳細は以下のとおりである。
【戦略計画の策定】
①各機関が、目標、達成水準等を含む「戦略計画案」を作成。(5年毎に策定、2年毎に見直し)
②LBB 及び GOBPP が、各機関の戦略計画案を調整・承認。
【歳出予算の決定】
③LBB 及び GOBPP の指示(budget instruction)に基づき、各機関が2年にわたる歳出予算を要求
(歳出立法化要求)。各機関には、予算と対応した業績達成指標を付すことが求められている。
④LBB および GOBPP が共同で各機関の歳出要求を審査(あわせてヒアリングも実施)。この際、
業績の達成状況が考慮される。
⑤LBB が一般支出法案(budget recommendation)を作成。同法案では、予算額と重要な業績達
成目標(key measures)がセットで示される。
⑥議会が法案を審議し、必要に応じて修正を行う(1~5 月)。成案は、公共会計監査官のチェック
を経て知事に送られる。知事が拒否権を行使しなければ、署名・成立。
【業績のモニタリング】
⑦各機関は、予算執行と平行して、支出額及び業績データを収集し、LBB に業績報告を提出(ア
ウトプット・効率性指標は四半期毎、アウトカム指標は毎年)。LBB 及び GOBPP は、各機関の支
出及び業績目標の達成状況を監視し、レポートを議会と知事に提出。
⑧州監査局(SAO:State Auditor’s Office)が、報告された業績指標の結果の正確さをチェックし
て議会と知事に報告。いくつかの部局を選んで報告データが正しいかどうか監査を実施30。
※状況や環境の変化による目標値の変更は、州法の規定により、LBB の権限とされている。各部
29
テキサス州は、他の州に比べ、州知事の権限がきわめて小さい。州知事の予算案は内容も薄く、あまり考慮されていな
い。
30州政府における監査体制は、連邦政府の枠組みにおいて各州に任されている。例えば、ミネソタ州・メリーランド州では、
州議会に属する州監査事務局が監査業務を担当しているが、この場合、州政府全体から見ると内部監査であるが、議会に
属するため、行政府から見ると外部監査である。(会計検査院「欧米主要先進国の内部監査制度等の現状と課題に関す
る調査-アメリカ・イギリス-」(2000))
148
局が目標値を変更したい場合、LBB に申請する必要があるが、実際に受理されるのは、申請の
半分程度である。このように、目標値については相当厳格な管理が行われているが、これは目標
の達成度が部局や事業の評価と直結するためである。
149
図表 SPPBS の全体像
(出所)テキサス州 LBB「Instructions for Preparing and Submitting Agency Strategic Plans Fiscal Years 2007-2011」
図表 テキサス州業績予算システムのタイムスケジュール
150
図表 テキサス州における業績予算プロセス
9 10 11 12
1 2 3 4
5 6 7 8
9 10 11 12
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11 12
前年の流れ
本年度予算
の執行
業績報告 ( LBB
・ GOBP)
12月:年次業績
報告
5月:第ニ
四半期業績
報告
2月:第一
四半期業績
報告
8月:第三
四半期業績
報告
10月:第四
四半期業績
報告
12月:年次
業績報告
1月:第一
四半期業績
報告
4月:代に
四半期業績
報告
7月:第三
四半期業績
報告
知事
1月:施政
方針
12月:
年次業績
報告
6月:署名
予算成立
議会
2~4月:
予算法審議
~12月:一般
歳出法案作成
LBB
5月:予算
要求の
指示
1月:戦
略目標
設定
10月:第四
四半期業績
報告
1月:戦
略計画
作成指示
4~5月:
戦略計画
調整・承認
6月:予算
構造変更
承認
7~8月:予算
要求分析
5月:予算法
議会可決
6月:最高
検査官監査
1月:議会へ
法案提出
8~9月:予算
要求に関する
ヒアリング実施
GOBP
各機関
1月:戦略
計画作成
開始
・アウトプット指標と効
率性指標は四半期毎、
重要なアウトカム指標
及び説明的指標につ
いては年度ごとに報
告の義務がある
3月:予算
構造策定
3月:予算
構造・業績
指標変更要求
・LBB及びGOBPは、 機関の支出と業績
目標を監視し、業績報告を議会と知事
に提出。
・戦略計画には、使命・目標、指標が含
まれる
9月:新年度
予算発行
6月:戦略
計画作成
完了
5月:予算
要求作成
7月:予算
提出
・予算要求には、業績指標が含
まれる
9月:支出及び
業績データ収集
システム確立
・一般歳出化法案は、施策別予
算と業績達成目標がセットになっ
ている
・各機関はヒアリ ングにおいて予
算の根拠と正当性について説明
する
(出所)野村総合研究所作成
151
・一般歳出法に計上されるの
は、重要な指標( キー・メジ ャー)
のみである。
・知事は予算の個別項目に
ついて拒否権をもっている。
拒否権を行使しなければ署
名・成立
新年度予
算執行
(3)戦略計画の策定
•
州戦略計画策定法では、戦略計画に関して、以下のように規定されている。
○対象は州の機関であること
○偶数年に、次の奇数年からの5カ年計画を策定すること
○使命、目標、測定するための指標、及び、資源や達成するための手段等を含めること
○知事が、活動分野の目標を示すこと
○GOBPP と LBB が、追加的情報を求めたり、ヒアリングをすること
○GOBPP と LBB が、州全体の計画を作り、これが知事の戦略計画として扱われること
•
戦略計画には使命、目標及び目標水準、達成戦略を含めることが求められている。(これらは「予算
構造」と呼ばれる。)戦略計画は、具体的には以下の①から⑧までブレークダウンされる。
①州全体のビジョン
②州全体の分野別目標
③部局のミッション
④部局の基本的な考え方
⑤部局内及び外部環境の評価
⑥各部局の目標
⑦目標に対応した目的
⑧目的に対応した戦略
⑦の「目的」に対応して「成果指標(アウトカム)」、⑧の「戦略」に対応して「活動量指標(アウトプット)」
「効率性指標」「説明/投入指標」が設定される。そして、戦略計画の目標体系と予算体系を、各部局
レベルで連携させ、指標と予算が対応するような仕組みとなっている。
•
戦略計画の中のこの予算構造に関しては、GOBPP と LBB の承認が必要となる。これなくしては、戦
略計画を作成しても、予算として結実しない仕組みとなっている。
152
(4)予算編成
•
テキサス州では、単年度予算ではなく、「2年度予算」の方式がとられている31。会計年度は、奇数
年の9月から次の奇数年の8月までとされている。複数年度予算のメリットは、計画・実行・評価の
過程を余裕をもって実施することができ、検討する時間、モニターする時間が十分にとれることで
ある。ただし、単年度予算の連邦との関係では、弾力的、実践的対応が求められる。
•
また、SPPBS の導入にあわせて、予算執行も自由化。すなわち、形式別に事細かく各機関の予算
をコントロールするのを止め、業績を達成しさえすれば、方法については各機関により大きな権限
を委譲することにした。
•
予算編成プロセスを以下に示す。
図表 テキサス州における予算編成プロセス
1月
4~5月
偶数年
7~9月
9~10 月
1月
1~5月
奇数年
6~8月
9月1日
•
知事の施政方針発表。各機関で戦略計画の作成開始。
GOBPP と LBB が戦略計画を承認。
LBB から全州機関に対し、予算立法化要求(業績指標を含む)を指示。
各機関は、GOBPP と LBB に予算要求を提出。
GOBPP と LBB によるヒアリング及び調整。
LBB 事務局による一般歳出法案の作成。
LBB は、一般歳出法案を議会に提出。
財政委員会(上院)、歳出委員会(下院)で審議。両院で可決。
州監査官の審査後、知事が署名して一般歳出法が成立。
※テキサス州では、知事は予算の個別項目ごとに拒否権を有する。
新年度予算の発行及び実施。
LBB の予算案には、各機関の過去 3 年間の支出額、各機関の予算要求額、LBB の提案する予算
額が併記される。LBB では、予算案を以下のようにして決定する: まず、州の一般会計から拠出
できる金額の上限(キャップ)を設定する。キャップは、過去2年間の支出額を基準に、州の財政状
況を勘案して決められる 32 。今後、財政危機を迎えると想定されるため、今年は前回の予算の
10%削減を目標とし、基準額から 10%差し引いたものを今回のキャップとした。ただし、各機関は
これを上回る予算要求を提出することも可能である。これに、一般会計以外(連邦政府からの補助
金、有料サービスの収入等)からの拠出額を合わせて予算案となる。LBB が予算案を作成する際
には業績評価の結果も参考にするが、目標を達成できなかった機関にはその理由を説明する機
会が与えられており、きちんとした理由付けがされている場合には必ずしも予算が削減されるとは
限らない。州議会は概ね LBB の予算案を承認するが、予算額は変更せずに、業績目標などを高
めに設定する場合もある。
•
予算と業績目標の一体化とは、まず「目標」を示し、それが目指す「達成水準(指標)」を示し、そ
31
50 州のうち、2年度予算をとっている州は 20 を超えている(野村総合研究所,2003)。
テキサス州は昔から小さな政府が志向されており、予算規模は 50 州中 3 番目だが、一人当たり予算は 50 番目と少な
い。他州で提供しているサービスを提供していないこともある。同州では個人の所得税が課されておらず、予算のほとんど
は消費税と固定資産税(property tax)に依存しているため、予算は経済状況に大きく左右される。さらに、固定資産税のほ
とんどは教育に使われており、その他支出の財源は主に消費税に頼っている。テキサス州では州憲法で以下の4つの支出
制限が決められている: ①債務支払いは、歳入の 5%以下に抑えること、②収入よりも多くの支出をしてはならないこと
(Pay as you go)、③予算の伸び率は、州の経済成長率より高くなってはいけない、④貧困世帯への生活補助(cash
assistance)は全予算の 1%を超えてはならない。 (②は他州でも見られるが、他の3つは同州特有のもの。)
32
153
の戦略として必要な「予算額」を示すことである。これはつまり、「目標を達成するのに必要な予算
について契約する」=「これだけの金額でこの目標を達成する」ということを意味する。テキサス州
の予算は、予算のくくりが目標を中心としてきわめて大きなくくりになっている。
154
(5)業績測定の指標
①指標設定の考え方
•
SPPBS では、最も重要なのは業績目標を達成することであり、予算はそのための戦略と位置づけ
られている。このため、達成度を測る指標の設定は非常に重要な問題となる。
•
SPPBS では、指標は以下の基準を満たすべきとされている。
○結果志向:原則として、アウトカム、アウトプット指標を用いる
○選別的:最も重要な業績指標に焦点を当てる
○有効性:機関や政策決定者に価値のある情報を提供する
○入手可能:結果に関する定期的な情報を提供する
○信頼性:正確で、時間がたっても変わらない情報を提供する
•
多くの政策評価制度では、アウトカム指標を理想としながら、実際にはアウトプット指標を設定せざ
るを得ない状況に陥っているが、SPPBS では、以下の4種類の指標に、それぞれ定義と役割を与
えている。
①アウトカム指標
:機関の活動によって公共及び施策対象(顧客)が得る便益を定量的に示す指標。例え
ば、「健康状態は改善しているか」、「安全性は高まっているか」、「寿命は延びているか」、
「教育水準は高まっているか」など。最も重要だが、機関がコントロールしにくいため、あわ
せてアウトプット指標を設定する必要がある。
②アウトプット指標
:機関が算出する物又はサービスの数を定量的に示す指標。コントロールしやすいため、予
算プロセスに適用しやすい。
③効率性指標
:単位コスト、単位時間その他割合を基礎として生産性を示す定量的指標。例えば、「ライ
センスの発行に要した平均時間」、「ライセンスの発行に要した平均コスト」など。
④説明的ないしはインプット指標
:必ずしも機関の業績に関係しているわけではなく、機関が 100%コントロールできるわけ
でもないが、機関の活動に関係があり、有用な情報を提供しうる指標。補足的に示される。
例えば、「健康保険に加入していない子供の数」など。
•
業績指標は、「重要指標(key measures)」と「その他の指標(non-key measures)」に分けられる。
一般歳出法に掲載されるのは key measures のみであり、non-key measures は、各機関の戦略計
画に掲げられるだけで、LBB のウェブサイト等では公表していない。また、全ての機関の Key
measures、Non-key measures を一つにまとめたドキュメントはない。
•
これらの指標のうち、どれを、どのように使うかについては、第一義的には各省庁が考えることとさ
れているが、GOBPP や LBB が承認し、SAO が検証する(SAO は、業績結果の検証も行う)プロセ
スを経て、最も適切な指標が選択される仕組みになっている。原則として、定量的な指標が優先さ
れ、説明的な指標は出来るだけ避けられることとされている。
155
②実際の設定状況
•
業績指標は、事業に近い、比較的低いレベルで設定される。指標は、事業の影響が及ぶ範囲の
ものに限られ、指標が図ろうとする成果も、その大半が行政活動を原因とする範囲に限定される。
このため、いわゆる社会指標的な成果指標は少ない。
•
LBB 及び GOBPP では、SPPBS の理解を向上させるため、指標数の減少に努めている。
図表 テキサス州における業績測定指標の体系
要素
考え方
目標・目的
成果指標
各局の活動が住民に対して及ぼした実際の効果(impact)と事業の
に由来する
(outcome)
存在理由を一体化して評価する指標。成果指標は目的(objective)
指標
更新
年
指標数
(FY2000
/2001)
1,986
(902)
に由来し、目的は目標(goal)に由来する。
戦略に由
活動量指標
事業によって提供されたサービスや製造された財を、量的な側面か
来する指標
(output)
ら計測するための指標。戦略(strategy)に由来する。
効率性指標
一単位当たりの成果や、事業量に対してどれだけの時間や費用を
(efficiency)
費やしたかを測る指標。戦略に由来する。
説明指標
説明指標は、部局の業績に影響を与える要因、投入指標は、サー
(explanatory)
ビスを産出するために使用された資源を示す。戦略に由来する。
四半期
1,635
(828)
四半期
807
(300)
年
1,047
(121)
投入指標
(input)
(注1)目標(goal):各局単位の長期的な意図を、明確に定義したもの。
目的(objective):目標よりも短期かつ具体的で計測可能なもの。
戦略(strategy):各局が、目標および目的をいかにして達成しようとしているかを示すもの。
(注2)指標数の()内は、目標値が設定される「重要指標(key measures)」の数。
(出所)東京都政策報道室「米英の地方行政における政策評価の新しい潮流」(1999)〔現出所:STRATEGIC PLANNING
AND PERFORMANCE BUDGETING, Legislative Budget Board〕に基づき、野村総合研究所作成。
156
(6)業績のモニタリング
①概要
・
各州機関は、一般歳出法に従って予算を執行するとともに、予算の執行状況、業績目標の達成
状況及びその分析結果を、LBB および GOBPP に定期的に報告しなければならない。key
measures のうちアウトプット及び効率性指標については四半期ごとに“Explanation of Variance”と
してウェブ上で報告する。また、アウトカム及び説明的指標については年度ごとに報告する。
(non-key measures は報告の義務はない)。
・
この他、州監査局(State Auditor’s Office:SAO)が、各機関において指標が正しく機能している
かについてチェックを行う。“Explanation of Variance”で、ある指標の悪化傾向が顕著な場合には、
LBB が SAO にその指標の監査を依頼することもある。SAO が全ての機関の指標をチェック
(measurement certification)するのに、1994 年から 8 年要している。このように、設定した指標が
正確に機能しているかどうかの監査を行っているのはテキサス州だけである。こうしたチェック機
能があることで、各機関は真剣に報告を行うようになる。
・
LBB は毎年、各機関の“Explanation of Variance”や SAO の業績監査報告書を参考に、各機関に
関する予算および業績評価の情報を 2 ページのレポートにまとめ、議会と知事に報告している。こ
の業績のデータは、議会における一般歳出法の作成や中間年におけるヒアリングに使用される。
LBB によって公表されている各機関の分析レポートは、この 2 ページのレポートのみである。
・
各州機関は、指標のモニターを行うため、支出額と業績のデータをすばやく把握するためのシス
テム作りが求められる。各機関は、業績結果について、LBB が管理するコンピュータシステムで、
業績目的の数値との単純な誤りを補正する自動的予算・評価システムを経て、報告を完成させて
いる。
②5%ルール
・
達成状況の報告に関して、「5%ルール」と呼ばれる決まりが設定されている。
①各機関のキー・メジャーについて、業績目標と実績とが5%以上隔たったときは、その説明
を報告しなければならない
②この説明は,担当者だけでなく、管理者も加わるべきである
③LBB と GOBP は、この隔たりがよい結果なのか否かを検討する
④LBB と GOBP は、外部の要因について分析する
・
5%ルールは、未達の場合だけでなく、オーバーした場合も対象になる。理由は、目標を意図的
に低く設定するのを防ぐため、また、次回の目標設定の参考にするためである。
157
(7)報償とペナルティ
•
FY94-95 以降、報償とペナルティの仕組み(Enhanced Compensation System)が「一般歳出法」の中
で明確に規定されている。
●報償(ポジティブ・インセンティブ)
予算の増加、報告義務の免除、予算流用権限の増加のような、組織全体に関するものもあるが、
報奨金やボーナスといった、個人的な報償もある。
●ペナルティ(ネガティブ・インセンティブ)
予算の減額、支出の制限、予算流用権限の減少、権限を他の期間へ移す、管理者の移動勧
告等と、組織や人事に関するものが含まれている。
図表 報償およびペナルティの具体例
業績を達成した場合
業績を達成しなかった場合
・ 業績回復のための計画を策定し、評価するため
・ 課の財源割当全般を増やす
の業務監査を命じる
・ 課の報告義務の免除
・ 節約した費用の留保を認める
・ 課の財源割当の削減や制限
・ 課の「成果」が広く一般に認められるようにする
・ 課の事業費の保留や廃止
・ ボーナスを与える
・ 長の給与のカット
・ 局の責任の範囲を拡大する
・ 権限の他の課への移転
・ 課長の配置転換や監視機関の創設
(出所)東京都政策報道室「米英の地方行政における政策評価の新しい潮流」(1999)
(原出所)STRATEGIC PLANNING AND PERFORMANCE BUDGETING, Legislative Budget Board
•
上記手段の行使に関して、手法の選択権は、LBB および知事にあり、その実行ルールおよび手続き
は LBB が定めるとされている。また、「業績変動に関する理由の証言」を上院歳出委員会、下院財務
委員会にしなければならないとされており、議会が監視する仕組みが組みこまれている。
•
機関が報奨制度導入の資格を得るためには、以下の 2 点が満たされていなくてはならない:①主要
な業績目標(key performance target)の 80%が達成されていること、②監査対象となった指標の
70%が正確に機能していると証明されていること。
•
通常、職員のサラリーには上限があるが、上記 2 つを満たした機関は、成績が良かった職員に対し
て特別手当(昇給やボーナス)を与えることができる。目標の達成に最も貢献した職員や、その目標
に関するプログラムや事業の幹部職員(プログラムのマネージャーなど)が報奨の対象となる。ただし、
報奨制度を取り入れる資格を得た機関は、自らの予算から報酬を出さなくてはならない。
158
図表 報償とペナルティに関する詳細規定
一般歳出法 第9節の6の3の39より
・ ある機関または組織が業績予定を満たすか、又は上回ったとき、もしくは業績予定を達成しなかったときは、LBB 及び
知事は、以下の1以上の予算執行指示をとることができる。
①積極的な刺激又は報償:予算の増加、報告義務の免除、予算流用権限の増加、公式な表彰又は賞賛、報奨金又
はボーナス、権限の拡大、契約締結権の拡大
②消極的な刺激又は方針変更:修正計画のためのアウトカム指標不一致の評価、予算の減額、予算の廃止、予算の
制限、予算の留保、予算流用権限の減少、権限の多機関への移し変え、管理者の移動勧告、管理監査又は修正
行為の指示
③LBB は、上記の既定の実行のため、ルール及び手続きを定めることができる
④LBB は、業績に係わる報償とペナルティに監視、SAO に意見を求めることができる
・ 顕著な業績、生産性の改善及び革新的な施策の改善をより促進するため、並びに業績の高い重要な職員を保持す
るため、優秀な州機関は本法で歳出できる資金から、改善に直接貢献した職員に対する補償額を引き上げるため、
必要な額を支出することができる。当該支出は、該当する職員に限り、かつ、その報償額は当該職員の年間基礎支
払額の 6.8%を超えてはならない。この規定が有効であるためには、機関は以下の条件を満たすものとする。
①設定した重要業績指標の 80%以上で目標を満たすか、または、上回ること
ア. FY2000 については、資格は、LBB がテキサス自動予算評価システム(ABEST)に FY1999 のために報告され
た業績を基礎に定める。
イ. FY2001 については、資格は、LBB が ABEST に FY2000 のために報告された業績を基礎に定める。
ウ. 最も近い時点における SAO による検査により、少なくとも業績指標の 70%につき修正不要の証明を得てお
り、かつそれが LBB が作成し第 76 回議会に提出した「FY1998 機関の業績に関する評価概要」に示されてい
ること。この検査を受けなかった機関で、自己評価によって業績指標の 70%以上が達成されたと認めるとき
は、SAO に対して検査の請求をすることが出来る。この請求及び自己認定は、SAO の指示に従ってなされな
かればならない。SAO は当該機関の自己評価を検査し、LBB に対してこの節の規定に該当するか否かに関
して意見を述べるものとする。
②LBB、GOBPP、下院歳出委員会及び上院財務委員会と共に、改善のために必要な革新的な手法及び基準の
成功についての記録を作成し、保存すること
(業績と達成度に基づいた予算)
・ LBB は、議会の会期を通じて、常時、業績と達成度をチェックし、必要な修正と調整を行わなければならない。
・ LBB は、支払った金額よりアウトカムに焦点をあてつつ、「業績及び達成度を基礎にした予算手続き」を採用しなけれ
ばならない。
(1)「業績及び達成度予算」
①目標(質の評価及び量の測定)
②すべてのプログラムのための「標準的単位コスト」(standardized unit costs)
③主要な業績の測定による「達成度のモニター」
④ニーズとミッションの変化に応じた予算執行を通じる「諸資源の再配分」
(2)業績モニター
・ 業績及び達成度予算とは、単に、業績の測定、仕事量の測定、予算の支出額というだけではなく、「標準的な単位コ
スト」との関連で業績を測ることである。この手続きにより、サービスの提供に関する効率、非効率を明らかにすることが
期待される。
・ 四半期ごとの検証、または監査は、業績と単位コストを明らかにし、追跡する。さらに、SAO 監査官には、業績測定が
正しくなされていることを検証することが求められる。LBB 事務局は、監査官が正当と認めなかったプログラムにつき
予算を減額するか、他へ移行させるための書面による勧告を LBB に提出する
(3)予算要求
・ LBB 事務局は、予算準備手続きの合理化並びに州機関の仕事量の削減に関する権限を有する。
・ 州の監査官は、また、全ての過去と予定した業績測定を検証する。期間の予算の全体的な情報の流れは、先ず、主
要な 50 機関から直ちに、自動化されて各機関の予算システムおよび検査官室から LBB 事務局へ伝えられる。
159
3)ドキュメントの概要
①一般歳出法
•
テキサス州一般歳出法(General Appropriations Act)は、以下のように組織別に構成されている。本
稿ではこのうち交通省(Department of Transportation)に注目して具体的な記述を例示する。
図表 2006-07 年度一般歳出法(General Appropriations Act) 目次構成
RECAPITULATION - ALL ARTICLES
ARTICLE I - GENERAL GOVERNMENT
ARTICLE II - HEALTH AND HUMAN SERVICES
ARTICLE III - EDUCATION
ARTICLE IV - THE JUDICIARY
ARTICLE V - PUBLIC SAFETY AND CRIMINAL
JUSTICE
ARTICLE VI - NATURAL RESOURCES
ARTICLE VII - BUSINESS AND ECONOMIC
DEVELOPMENT
Housing and Community Affairs, Department of
Lottery Commission, Texas
Office of Rural Community Affairs
Transportation, Department of
Workforce Commission, Texas
Reimbursements to the Unemployment Compensation
Benefit Account
Retirement and Group Insurance
Social Security and Benefit Replacement Pay
Bond Debt Service Payments
Lease Payments
Recapitulation - Article VII - General Revenue
Recapitulation - Article VII - General Revenue Dedicated
Recapitulation - Article VII - Federal Funds
Recapitulation - Article VII - Other Funds
Recapitulation - Article VII - All Funds
ARTICLE VIII - REGULATORY
ARTICLE IX - GENERAL PROVISIONS
ARTICLE X - THE LEGISLATURE
ARTICLE XI - SAVINGS CLAUSE
ARTICLE XII - EMERGENCY CLAUSE
GOVERNOR’S VETO PROCLAMATION
概括 全条
第1条 一般政府
第2条 保健・福祉
第3条 教育
第4条 司法
第5条 公安・刑事裁判
第6条 自然資源
第7条 ビジネス・経済発展
住宅・コミュニティー問題省
宝くじ委員会
農村コミュニティー問題局
交通省
労働委員会
失業手当給付金・補助給付手当支出
退職金・団体保険
社会保障・補助支出
公債発行借入金返済
リース料支払
第7条概括 一般歳入
第7条概括 一般歳入 (特定)
第7条概括 連邦政府財源
第7条概括 その他の財源
第7条概括 全財源
第8条 規制
第9条 一般規定
第10条 議会
第11条 保留条項
第12条 緊急条項
州知事の拒否権声明
(出所)テキサス州 LBB ウェブサイト(http://www.lbb.state.tx.us/Bill_79/8_FSU/Bill-79_8.htm)
(注)2006-2007 年度一般歳出法の正式名称は、「Text of Conference Committee Report
Session (General Appropriations Act)—October 2005」
160
Senate Bill No. 1, 79th Regular
•
一般歳出法で規定されている交通省の歳出項目(items of appropriation)を以下に示す。同法では、
以下の項目ごとに予算額が示されている。
図表 一般歳出法における交通省の歳出項目(Items of Appropriation)
A. Goal: TRANSPORTATION PLANNING
A.1.1. Strategy: PLAN/DESIGN/MANAGE
Plan, Design, and Manage Transportation Projects.
A.1.2. Strategy: CONTRACTED PLANNING AND DESIGN
Contracted Planning and Design of Transportation Projects.
A.1.3. Strategy: RIGHT-OF-WAY ACQUISITION
Optimize Timing of Transportation Right-of-way Acquisition.
A.1.4. Strategy: RESEARCH
Fund Research and Development to Improve Transportation O perations.
B. Goal: TRANSPORTATION CONSTRUCTION
B.1.1. Strategy: TRANSPORTATION CONSTRUCTION
Transportation Construction. Estimated.
B.1.2. Strategy: AVIATION SERVICES
Support and Promote General Aviation.
C. Goal: MAINTENANCE AND PRESERVATION
C.1.1. Strategy: CONTRACTED MAINTENANCE
Contract for Transportation System Maintenance Program.
C.1.2. Strategy: ROUTINE MAINTENANCE
Provide for State Transportation System Routine Maintenance/Operations.
C.1.3. Strategy: GULF WATERWAY
Support the Gulf Intracoastal W aterway.
C.1.4. Strategy: FERRY SYSTEM
Maintain and Operate Ferry Systems in Texas.
D. Goal: OPTIMIZE SERVICES AND SYSTEMS
D.1.1. Strategy: PUBLIC TRANSPORTATION
Support and Promote Public Transportation.
D.1.2. Strategy: MEDICAL TRANSPORTATION
Support Medical Transportation.
D.1.3. Strategy: REGISTRATION AND TITLING
D.1.4. Strategy: VEHICLE DEALER REGULATION
D.2.1. Strategy: TRAFFIC SAFETY
D.3.1. Strategy: TRAVEL INFORMATION
D.4.1. Strategy: AUTOMOBILE THEFT PREVENTION
D.5.1. Strategy: RAIL SAFETY
E. Goal: INDIRECT ADMINISTRATION
E.1.1. Strategy: CENTRAL ADMINISTRATION
E.1.2. Strategy: INFORMATION RESOURCES
E.1.3. Strategy: OTHER SUPPORT SERVICES
E.1.4. Strategy: REGIONAL ADMINISTRATION
161
•
テキサス州の一般歳出法は、予算とあわせて業績目標が法律の中で規定されている点が特徴となっ
ている。交通省に関しては、各「ゴール(Goal)」およびゴールごとに設定された「戦略(strategy)」に対
して、業績指標とその 2 ヶ年の目標値が設定されており、ゴールおよび戦略の単位で、予算と達成す
べき業績目標を対応させてとらえることができる仕組みとなっている。
図表 一般歳出法における交通省の業績指標(Performance Measure Targets)
A. Goal: TRANSPORTATION PLANNING
Outcome (Results/Impact):
Project to Funding Ratio
Percent of Projects Awarded on Schedule
A.1.1. Strategy: PLAN/DESIGN/MANAGE
Output (Volume):
Number of Construction Project Preliminary Engineering Plans Completed
Dollar Volume of Construction Contracts Awarded in Fiscal Year (Millions)
Number of Projects Awarded
B. Goal: TRANSPORTATION CONSTRUCTION
Outcome (Results/Impact):
Percent of Construction Projects Completed on Budget
Percent of Two-lane Highways with Improved Shoulders
Percent of Railroad Crossings with Signalization
Percent of Construction Projects Completed on Time
Urban Congestion Index
Statewide Congestion Index
B.1.2. Strategy: AVIATION SERVICES
Output (Volume):
Number of Airports Selected for Financial Assistance
Efficiencies:
Administration and Support Costs as a Percent of Facility Grant Funds Expended
C. Goal: MAINTENANCE AND PRESERVATION
Outcome (Results/Impact):
Percent of Bridges Rated in Good Condition or Higher
Statewide Maintenance Assessment Program Condition Score
Statewide Traffic Assessment Program Condition Score
C.1.1. Strategy: CONTRACTED MAINTENANCE
Output (Volume):
Number of Lane Miles Contracted for Resurfacing
C.1.2. Strategy: ROUTINE MAINTENANCE
Output (Volume):
Number of Oversize/Overweight Permits Issued
Number of Highway Lane Miles Resurfaced by State Forces
D. Goal: OPTIMIZE SERVICES AND SYSTEMS
Outcome (Results/Impact):
Percent Change in the Number of Public Transportation Trips
Percent of Motor Vehicle Consumer Complaints Resolved
Number of Fatalities Per 100,000,000 Miles Traveled
D.1.1. Strategy: PUBLIC TRANSPORTATION
Efficiencies:
Administration and Support Costs as a Percent of Grant Expended
162
D.1.2. Strategy: MEDICAL TRANSPORTATION
Output (Volume):
Recipient One-way Trips
Efficiencies:
Average Cost Per One-way Trip
D.1.3. Strategy: REGISTRATION AND TITLING
Output (Volume):
Number of Vehicle Titles Issued
Number of Vehicles Registered
D.1.4. Strategy: VEHICLE DEALER REGULATION
Output (Volume):
Number of Motor Vehicle Consumer Complaints Resolved
Efficiencies:
Average Number of Weeks to Resolve a Motor Vehicle Complaint Resolution
D.4.1. Strategy: AUTOMOBILE THEFT PREVENTION
Output (Volume):
Number of Cars Stolen Per 100,000
Efficiencies:
ATPA Administration and Support Costs as Percentage of Total Expenditures
D.5.1. Strategy: RAIL SAFETY
Output (Volume):
Number of Federal Railroad Administration (FRA) Units Inspected
163
図表 一般歳出法における交通省部分の記述 (1/5)
(出所)テキサス州 LBB ウェブサイト(http://www.lbb.state.tx.us/Bill_79/8_FSU/Bill-79_8.htm)
164
図表 一般歳出法における交通省部分の記述(2/5)
(出所)テキサス州 LBB ウェブサイト(http://www.lbb.state.tx.us/Bill_79/8_FSU/Bill-79_8.htm)
165
図表 一般歳出法における交通省部分の記述(3/5)
(出所)テキサス州 LBB ウェブサイト(http://www.lbb.state.tx.us/Bill_79/8_FSU/Bill-79_8.htm)
166
図表 一般歳出法における交通省部分の記述(4/5)
(出所)テキサス州 LBB ウェブサイト(http://www.lbb.state.tx.us/Bill_79/8_FSU/Bill-79_8.htm)
167
図表 一般歳出法における交通省部分の記述(5/5)
(出所)テキサス州 LBB ウェブサイト(http://www.lbb.state.tx.us/Bill_79/8_FSU/Bill-79_8.htm)
168
②予算・業績アセスメント
•
評価結果は、一般歳出法の中で、予算プロセス(budget process)の一部として公表されるとともに、
LBB が毎年発表する「予算・業績アセスメント(Budget and Performance Assessments)」の中でも公
表している。
•
「2005 年度予算・業績アセスメント(Budget and Performance Assessments: State Agencies and
Institutions, Fiscal Year 2005)」(2006 年 3 月発表)の目次構成は以下のようになっている。
図表 議会予算委員会“2005 年度予算・業績アセスメント”目次構成
INTRODUCTION
GENERAL GOVERNMENT
HEALTH AND HUMAN SERVICES
EDUCATION
THE JUDICIARY
PUBLIC SAFETY AND CRIMINAL JUSTICE
NATURAL RESOURCES
BUSINESS AND ECONOMIC DEVELOPMENT
Fiscal Year 2005 Performance Summary
Department of Housing and Community Affairs
Texas Lottery Commission
Office of Rural Community Affairs
Department of Transportation
Texas Workforce Commission
REGULATORY
(出所)テキサス州議会予算委員会ウェブサイト
(http://www.lbb.state.tx.us/The_LBB/Access/Other_Documents.htm#Perform)
169
•
「2005 年度予算・業績アセスメント」では、各機関の予算の執行状況および業績の達成状況が、2ペ
ージに簡潔にまとめられている。
図表 「2005 年度予算・業績アセスメント」における交通省の記述 (1/2)
(出所)テキサス州議会予算委員会ウェブサイト
(http://www.lbb.state.tx.us/The_LBB/Access/Other_Documents.htm#Perform)
170
図表 「2005 年度予算・業績アセスメント」における交通省の記述 (2/2)
(出所)テキサス州議会予算委員会ウェブサイト
(http://www.lbb.state.tx.us/The_LBB/Access/Other_Documents.htm#Perform)
171
4)SPPBS に対する評価
●SPPBS は、業績予算の必要要素を全て包括した完成度の高いシステム
•
業績予算の要素には、「戦略計画」「業績測定」「事業別予算」があると言われるが、テキサス州の
SPPBS は、この3つを全て包括した完成度の高いシステムと言われている。
図表 業績予算の要素
要素
考え方
戦略計画
どのような目標のために資源を配分するか、使命やビジョンから目標、さらに計測可能な指標
業績測定
過去の事業の業績を、定量的な指標を用いて包括的・定期的に測定。
事業別予算
人件費や需用費といった支出の性質別ではなく、目標と結びついた事業単位で予算の承認が
にまで、体系的にブレークダウンした計画。単なる分野別の事業や政策の積み上げではない。
行われる予算システム。これにより、事業別のトータルコストの比較が可能になると同時に、事
業内における性質別の支出についての自由度も高まる。
•
GAO(2005)は、業績予算システムが完全に実施されている(fully implemented)例として、テキサス
州を紹介している。
図表 各州の業績予算制度の違い
業績予算が法
定化されている
か?
予算体系と計
画体系が連携
しているか?
評価の対象レ
ベル
指標の測定方
法
省の予算要求
の中に組み込
んでいるか?
測定結果の公
表方法
○
予算法
(Appropriation
act)
テ キ サ
ス州
○
○
省庁の戦略
戦略計画
(四半期ごとに
インターネット
上で更新)
アリゾナ
州
○
×
プログラム
年度プログラム
実施計画
○
メリー
ランド州
○
×
省庁・プログラ
ム
年度予算要求
○
バージ
ニア州
○
×
省庁
インターネット
×
ワシン
トン州
○
×
省庁・プログラ
ム
2ヵ年予算要求
○
予算法
(Appropriation
act)
予算書
(Executive
budget
document)
ウェブサイト
(Virginia
Results
Website)
予算書
(Executive
budget
document)
(出所)GAO「PERFORMANCE BUDGETING States’ Experiences Can Inform Federal Efforts」(2005.2)
図表 GAO(2005)における具体的な記述
今回調査を行ったどの州も、予算体系と計画体系の統合に向けてさまざまな努力がなされているが、そ
れが唯一実現しているのはテキサス州だけである。テキサス州では、予算は、各省庁の目標および戦略
に割り当てられる。戦略とは、目標を達成するために取るべきアクションのことで、1つの目標に対して複
数の戦略を設定しうる。予算は戦略に対して配分される。
(出所)GAO「PERFORMANCE BUDGETING States’ Experiences Can Inform Federal Efforts」(2005.2)
●政策評価の面での特徴は、戦略計画策定が法定化されていること、目標の達成状況を定期的に把握し
ていること
•
SPPBS は、政策評価制度という面では、以下の点が特徴と言える。
○戦略計画の策定が州法で根拠付けられていること
○業績目標の達成度が、定期的に把握されていること
172
●予算との連携の面での特徴は、予算法自体の中に目標値を組み込んでいること
•
SPPBS は、予算との連携の面では、予算法自体の中に、戦略目標(ターゲット)が組み込まれてい
る点が特徴と言える。すなわち、「一般歳出法(General Appropriation Act)」の中で、施策別の予
算額と、それに対応する業績目標(重要なターゲット)の値がセットで定められている。2年間予算
であるため、ある年の業績が直ちに次の年の予算変更につながるわけではないが、次回の予算
には影響を与えうる仕組みとなっている。
●内部管理の面での特徴は、報償とペナルティの仕組みを明示していること
•
SPPBS は、内部管理の面では、目標の達成度に応じた報償とペナルティの仕組みが明確に規定さ
れている点が特徴である。業績評価制度を導入している州は他にもあるが、テキサス州ほど報償
やペナルティといったインセンティブの仕組みを明確に規定している州はない。
•
LBB の担当者によると、業績情報を直接 reward/penalty に結び付けるのは必ずしも適切ではなく、
予算案を作成する際には、各機関との交渉の際の資料として活用しているとのこと。(支出が変わ
らないのに目標が下がっている場合には特に説明を求めるなど。)また、各機関にとっては、業績
評価が良ければ予算増額の根拠となり、業績評価が悪くても、予算が足りなかったために目標に
達することができなかったなどの説明も可能なため、評価が悪いことがイコール予算削減になるわ
けではなく、目標に達することができなかったプログラムの予算が上がることもある。目標を達成し
ているプログラムや機関が必ずしも意味のあるものとは限らない。民間企業のように、成績が良か
ったら Reward を、成績が悪かったら Penalty をといった単純な仕組みにはならない、とのこと。
•
LBB によると、2004 年には 17 の機関が資格を得たが、ほとんどの機関は報酬を出す余裕がなか
ったのが現状。また、成績の良くなかった職員に対して減給することもできるが、実際に減給を課
している機関はない、とのこと。
●制度が定着するに従い、設定する指標は改善されてきている
•
LBB は、2 年ごとに各機関と共に、今まで使っていた指標の再検討を行い、指標設定の改善を図
っている。LBB によると、目標設定は各機関に任せているが、現在のシステムが導入されてから既
に 15 年も経っており、各機関はおおむね問題なく目標設定できている。以前は、目標達成を測る
ために全く役立たないような指標もあった(例えば、会議数、対応した電話の数など)が、現在では
そういった指標はない。業績(Performance)に影響を及ぼす全ての変数を指標によって説明でき
るわけではない点に留意すべき、とのこと。
●GPRA との違いは予算と連携していること。PART との違いは戦略計画体系に組み込まれていること。
•
SPPBS と連邦政府の GPRA と比較すると、計画体系にのっとって目標が設定されている点は共通
しているが、GPRA では予算との連携が図られていない。また、連邦政府の PART と比較すると、
予算との連携を目指している点は共通しているが、PART はプログラム単位であり、GPRA の計画
体系とは特に関連づけられていない。SPPBS は、戦略計画を頂点とする計画体系にのっとって目
標設定がされ、それが予算体系とリンクしているため、業績情報の予算へのフィードバックも行わ
れている。
173
•
LBB の担当者によると、連邦政府とテキサス州の最も大きな違いは、テキサス州は議会が最高権
威を持っており州知事の権限が弱いのに対し、連邦政府では議会と大統領が牽制し合っている
点にあるとのこと。また、この他の違いとしては、テキサス州は全ての政府機関に対して一度に業
績予算を導入したこと、テキサス州では歳出法が1つしかなく仕組みがシンプルであること(連邦
政府には 13 の歳出法がある)等が挙げられた。
174
参考資料(テキサス州)
■アメリカにおける州制度の概要
・ アメリカの政体は、1連邦政府、50州政府からなる連邦制である。すべての州政府には、連邦政府と同様
に行政府、立法府、司法府が置かれている。行政府の首長は知事(governor)であり、知事は直接選挙に
よって選ばれる。
・ 州以外の地方政府組織には、①郡(County)、②地方自治体(Municipality:City, Borough など)、③タウ
ン・タウンシップ、④特別区、が存在する。郡は州の下部組織である。住民が住民自治のためのサービス
機関を選択した場合には、郡の中に地方自治体が創設され、業務が引き継がれる。タウン・タウンシップ
はニューイングランド地方特有の政府組織である。特別区は、1つだけの機能を有する政府であり、学校
区、消防区などがある。
■各州の政策評価制度の概要
・ 米国各州は、連邦に先んじて、成果指向型の政策運営に取り組んできた。その形態は大きく「業績予算
方式」と「ベンチマーク方式」との2つに分けられる。業績予算方式とは、予算と連動した部局単位の業績
指標を設定し、測定結果を予算編成に活用する方式であり、ベンチマーク方式とは、住民生活に直結し
た社会的な成果指標を州レベルで設定して、横断面や時系列で比較し、測定結果を計画にフィードバッ
クする方式である。
・ 業績予算方式を採用している州には、テキサス州、バージニア州などがあり33、ベンチマーク方式を採用
している州には、オレゴン州、フロリダ州、ミネソタ州などがあると言われている。
33
Hilton and Joyce(2003)によると、業績情報を実際に予算編成に活用しているのは、テキサス州、バージニア州、ミズ
ーリ州、ルイジアナ州の4州とのことである。(田中秀明「業績予算と予算のミクロ改革(中)」(2005.9))
175
Ⅲ ニュージーランドにおける政策評価と予算の連携
1.業績予算制度の概要
•
ニュージーランドにおいては、政策評価の体系と予算の体系が一体のものとして運営されていること
から、両者を明確に分けずに整理することにした。
1)政府と省庁の関係
•
ニュージーランドでは、政府(Crown)と省庁(departments)は明確に区別される。政府は、省庁に対し
て以下の2通りの立場に立つと考えられている34。
○所有者としての関心(ownership interest)
民間株式会社における「株主」の立場。政府は、省庁の「所有者」として、省庁の経営状態(効
率的に運営され投資に見合った成果をあげているか、将来に渡って財・サービスを効果的に
生産していく能力を有しているかなど)に関する情報が必要。
○購入者としての関心(purchase interest)
民間株式会社における「消費者」の立場。政府は、省庁の生産する財・サービス(アウトプット)
の「購入者」として、財・サービスの量、質、価格等の情報が必要。
•
この考え方に基づき、政府には、所有者としての立場の「責任大臣」(Responsible Minister)と、購入者
としての立場の「購入大臣」(Vote Minister)が区別して設置されている。責任大臣は各省庁に1人
ずつ置かれ、省庁と「業績契約」(performance agreement)を結び、省庁の運営を監視する。また、購
入大臣は予算の構成単位である Vote35ごとに置かれ、省庁と「購入契約」(purchase agreement)を結
び、自らの担当政策分野(portfolio)に関して必要なアウトプットを省庁から購入する。省庁の数に比
べて portfolio の方が多いため、1つの省庁に複数の購入大臣がいることになる。通常、購入大臣のう
ちの1人が、その省庁の責任大臣となる。ニュージーランドには約 20 名の大臣がいるが、1人の大臣
が様々な大臣を兼務している。
図表 業績契約と購入契約の全体像
・「所有者」としての関心
・省庁ごとに設置
責任大臣
(Responsible Minister)
業績契約
(performance agreement)
省庁
Department
政府
Crown
事務次官
(Chief Executive)
購入契約
(purchase agreement)
購入大臣
(Vote Minister)
・「購入者」としての関心
・ポートフォリオごとに設置
(出所)野村総合研究所 作成
34 これは、社会はすべて、依頼人(principal)と代理人(agent)との契約関係によって成り立っている、という「エージェンシ
ー理論」(Agency Theory)に基づく考え方。ニュージーランドの行政制度は全てエージェンシー理論に基づいて設計され
ている。(和田,2000.6)
35 「款」と訳す場合もある。
176
図表 購入者としての大臣と所有者としての大臣(98 年社会福祉省の場合)
(Vote Minister)
社会福祉大臣
戦傷者年金担当大臣
高齢者担当大臣
(Vote Minister)
(Vote Minister)
(Responsible Minister)
Purchase
OWN
Purchase
社会福祉省
社会福祉予算
(Vote)
高齢者予算
(Vote)
(出所)和田(2000.6)p.30
177
戦傷者年金予算
(Vote)
•
ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド 政 府 の 政 策 分 野 は ポ ー ト フ ォ リ オ ( Portfolio ) ま た は 責 任 項 目 ( Other
Responsibilities)と呼ばれる。ポートフォリオと責任項目の違いは、前者は予算項目(Vote)と一対一
で対応しているのに対し、後者はポートフォリオの Vote に含まれている。
図表 ニュージーランド政府のポートフォリオ(Ministerial Portfolios)一覧
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
Portfolios
ACC
・
Agriculture
・
Arts Culture and Heritage
・
Attorney-General
・
Biosecurity
・
Broadcasting
・
Building Issues
・
Civil Defence
・
Commerce
・
Communications
・
Community and Voluntary
・
Sector
・
Conservation
Consumer Affairs
・
Corrections
・
Courts
・
Crown Research Institutes
Customs
・
Defence
・
Disarmament and Arms
・
Control
・
Economic Development
・
Education
・
Energy
・
Environment
・
Finance
・
Fisheries
・
Food Safety
・
Foreign Affairs
Forestry
・
Health
・
Housing
・
Immigration
Industry and Regional
Development
Information Technology
Internal Affairs
Justice
Labour
Land Information
Local Government
Maori Affairs
Pacific Island Affairs
Police
Prime Minister
Racing
Research, Science and
Technology
Revenue
Senior Citizens
Social Development and
Employment
Sport and Recreation
State Owned Enterprises
State Services
Statistics
Tertiary Education
Tourism
Trade
Trade Negotiations
Transport
Transport Safety
Treaty of Waitangi
Negotiations
Veterans' Affairs
Women's Affairs
Youth Affairs
Other Responsibilities
Archives New Zealand
Auckland Issues
Climate Change
Disability Issues
Education Review Office
Ethnic Affairs
Government
Communications
Security Bureau
・ Law Commission
・ Ministerial Services
・ National Library
・ New Zealand Security
Intelligence Service
・ Public Trust
・ Rural Affairs
・ Small Business
・
・
・
・
・
・
・
(出所)首相・内閣府ウェブサイト(http://www.dpmc.govt.nz/cabinet/portfolios/list.asp)
178
•
首相・内閣府のウェブサイトでは、ポートフォリオおよび責任項目のそれぞれについて、担当大臣
(Minister)、省(Department)、政府機関(Crown Entities)、その他関連機関(Other Organisations)、
予算項目(Vote)、根拠法(Legislation)が明示されている。
•
ポートフォリオ「産業・地域開発(Industry and Regional Development)」と責任項目「中小企業(Small
Business)」の概要を以下に示す。
図表 ポートフォリオ“Industry and Regional Development”の概要
Minister
Minister for Industry and Regional Development
Department
The Ministry of Economic Development provides the administrative support for this portfolio.
Crown Entities
New Zealand Trade and Enterprise*
Other Organisations
None
Vote
Vote Economic, Industry and Regional Development
Legislation
New Zealand Trade and Enterprise Act 2003*
*
The Minister for Industry and Regional Development and the Minister for Trade are both responsible Ministers for
NZTE and the New Zealand Trade and Enterprise Act 2003.
(出所)首相・内閣府ウェブサイト(http://www.dpmc.govt.nz/cabinet/portfolios/industry-and-regional-development.asp)
図表 責任項目“Small Business”の概要
Minister/Responsibility
Small Business*
Department
The Ministry of Economic Development provides the administrative support for this
Crown Entities
None
Other Organisations
None
Vote
Funded through Vote Economic, Industry and Regional Development
Legislation
None
responsibility.
*
This responsibility involves monitoring and oversight of policies and issues relating to the small business sector.
(出所)首相・内閣府ウェブサイト(http://www.dpmc.govt.nz/cabinet/portfolios/small-business.asp)
179
•
ニュージーランドでは、以下のように、1人の大臣が複数のポートフォリオおよび責任項目を所管して
いる。2006 年 5 月現在のニュージーランド政府における大臣リストは以下のようになっている。
図表 ニュージーランド政府における大臣リスト(2006 年 5 月現在)の抜粋
(出所)首相・内閣府ウェブサイト(http://www.dpmc.govt.nz/cabinet/ministers/ministerial-list.html)
180
2)業績予算制度の中心官庁
•
業績予算制度の推進に主導的な役割を果たしているのは、「中枢省庁(central agencies)」と呼ば
れる、首相内閣府、行政サービス委員会、財務省の3省庁である。これらの省庁は、業績予算制
度全般及び各省庁の取り組みの質を高めるための様々な提言や指針を示している。
①首相内閣府(Department of the Prime Minister and Cabinet:DPMC)
各省庁の政策を総合調整し、首相の政策決定機能を支援・補佐する機能。
②行政サービス委員会(State Services Commission:SSC)
人事・組織に関する総合調整機能。
③財務省(Treasury)
財務・経済面の総合調整機能(予算査定など)。
•
また、会計検査院も業績予算の推進に重要な役割を果たしている。ニュージーランドの会計検査院
は、会計検査院長室(Office of the Controller and Auditor-General)と監査局(Audit New Zealand)
から構成され、前者は、監査基準の設定、国会に対する支援、VFM の監査を行い、後者が実際の
監査業務を行っている。
○政府機関の財務面および非財務面の監査
中央省庁、地方自治体、国有企業、クラウン・エンティティの、財務諸表(財務面)およびサービス業績報
告書(非財務面)の監査を行う。非財務的業績はアウトプット目標の達成度ではかられ、アウトプット指標
の信頼性や妥当性といったところまで監査の対象となる。非財務面の監査を行っているのはニュージーラ
ンドが世界初であり、他国や民間の監査法人に比べ、独自に知見を積み重ねている。
○国会に対する直接支援業務
国会の委員会が、各省庁の予算やアニュアルレポートの審査する前に、重点的に審議すべき事項に関
するレポートを提出する。
○政府のシステム全般に関する提言や指針の発表
年に 1 回以上、政府のシステム全般に関するレポートを国会に提出することが義務付けられている。会計
検査院は、3つの中枢省庁と並び、ニュージーランドの NPM を先導する役割を担っていると言える36。
36和田(2000.12)によると、会計検査院は、財務省主導で構築されてきた
的な立場にあるとのことである。(和田、2000.12,p.32)
181
NPM の「ニュージーランドモデル」に対して挑戦
3)業績予算制度の概要
(1)政策評価
•
ニュージーランドでは、一貫してアウトプット・ベースのマネジメント制度が維持されている。まず、内
閣は達成すべきアウトカムを設定し、内閣および内閣を構成する各大臣(購入大臣)はその達成責
任(accountability)を負う。そして、各購入大臣は自分の分担するアウトカムについて、その達成のた
めに必要なアウトプットの供給を受ける契約(購入契約)を各省庁のチーフ・エグゼクティブと結ぶ
(省庁でなく、例えば民間の供給主体でも構わない)。省庁のチーフ・エグゼクティブには、アウトプッ
トの達成に必要なインプットに関する権限が与えられ、購入大臣に対して約束したアウトプットを提供
する責任を負う。契約に明示されたアウトプットに対して実際に供給した財・サービスの量及び質によ
って評価される。また、省庁からアウトプットを購入してアウトカムを達成しようとする大臣は、アウトカ
ムが達成されなければ次の選挙で国民の審判を受けることになる。このようにしてアウトカムの達成
に対する責任が確保されている。このように、省庁は「アウトカム」ではなく、「アウトプット」の達成に責
任を負うことととされたのは、アウトカムは各省庁で統制が不可能であり、責任の所在が不明確になる
おそれがあるためである。
※アウトカム、アウトプットの定義は 1989 年財政法第 2 条に規定。
(2)予算
•
ニュージーランドでは、アウトプットに対して予算を配する「アウトプット予算」システムを採っている37。
•
各省庁は、財務省に対し、アウトプットクラス(同種のアウトプットを束ねたもの)単位で予算を要求し、
財務省はアウトプットクラス単位で予算配分を決定する。
•
予算書では、購入大臣(Vote Minister)ごとにアウトプット・クラス(output class)が示され、アウトプッ
ト・クラス毎の予算が、発生主義ベースで示される。
•
アウトプット予算で重要なのは、成果の価格が妥当か否かであり、そのために人件費をいくら使うか
等は各省庁次官の裁量にまかされる。この意味で、各省庁の裁量範囲は拡大したと言える。また、
財務省は、重要な施策や新しい施策に重点を絞って査定をすることになり、施策の内容に対する関
与はむしろ強まることになった。
•
アウトカム予算を採っていないのは、省庁の算出するアウトプットと、アウトカムとの因果関係が明らか
ではなく、また、アウトカムの達成度を測ることが難しい状態では、厳密なシステムとして運用すること
が難しいためと説明している。
•
ニュージーランドにおいては、予算は単年度で編成されている。ただし、予算編成過程において、各
省庁は向こう3年間にわたる予算を提示することになっている。
•
予算の編成、提出権は内閣にあり、今まで予算が国会で修正されたことはない。業績評価システム
に対しても、国会が深く関与するということはない。
37
1989 年新財政法により、予算編成の方法が、プログラム・ベースからアウトプット・ベースに変更された。
182
(3)業績契約と購入契約
①業績契約(performance agreement)
•
「業績契約」とは、各省庁が責任大臣と取り交わす契約である。政府全体のアウトカム目標である
「重要政府目標(Key Government Goals:KGGs)」と、それに貢献するために省庁のチーフ・エグ
ゼクティブが取り組むべき「重要優先事項(Key priorities)」が示される。
※2003/2004 年度予算から、文書としては「政策意図説明書(SOI:Statement of Intent)」に置き換
わっている。
図表 KGGs と KPsの概要
○重要政府目標(KGGs:Key Government Goals)
省庁に業務を遂行させるために内閣が策定する、当該政権の大きな目標。
○重要優先事項(KPs:Key Priorities)
「政府の主要目標」に貢献するために、各チーフ・エグゼクティブが優先的に実行する主要
事項。この達成状況を図るため、業績契約にはスケジュールが明示されることが多い。
図表 2002/2003 年の重要政府目標(KGGs)
・国民のアイデンティティを強め、ワイタンギ条約の原則を堅持すること
・すべての市民のために、包括的で創造的な経済を育てること
・政府に対する信頼を維持し、充実した社会サービスを提供すること
・ニュージーランド市民の技量・能力を向上させること
・医療・教育・雇用・住宅の分野における不平等を減らすこと
・環境を保護し、増進すること
(注)最新の重要政策目標は、首相内閣府のウェブサイトで閲覧可能。
(出所)平井(2003.6)
•
アウトカム指標の呼称は、政権によって異なる。下表はその変遷を示したものである。ただし、呼称
は変わるが、2段階で示されることは変わらない。
図表 政権交代に伴うアウトカムの変遷
1995 年~ 国民党政権
○戦略分野(SRAs:Strategic Result Areas)
内閣が決定する、向こう3年間の政府全体の主要なアウトカム目標。5~10程度の分野
について設定。
○重要優先分野(KRAs:Key Result Areas)
戦略分野を受けて各省ごとに、向こう3年間の重要優先分野を決定し、年次の「業績契
約」に盛り込む。業績契約には、重要優先分野の達成の具体的な量、質及び時期を明
示した里程標(milestone)も記載される。
※SRAs と KRAs は、SRAs は選挙以外の評価にさらされることはなく、KRAs は予算書上出てこ
ないなど、予算書の体系と評価体系が形式的に対応しておらず、アウトカムが軽視されると
いう問題があった。(ただし、業績契約を踏まえて購入契約が作成されることになっているた
め、そのプロセスを通じてアウトカムの実現が担保されていると見ることもできる。)
1998 年~ 国民党政権
○全体目標(OGs:Overarching Goals)
○戦略優先事項(SPs:Strategic Priorities)
SRAs に代わり「全体目標(Overarching Goals:OGs)」が、KRAs に代わり「戦略優先事項
(Strategic Priorities:SPs)」が発表された。OGs は大まかな、時期を定めない7つの全体
目標で、SPs は向こう3年間を期間とする8項目から構成。
183
2002 年~ 労働党政権
○重要政府目標(KGGs:Key Government Goals)
○重要優先事項(KPs:Key Priorities)
②の OGs、SPs に代わるもの。KPGs は時期を定めない大まかな6つの全体目標で、KPs
は中期的な目標。2002 年 3 月に「公的部門の政策と業績を誘導する重要政府目標(Key
Performance Goals to Guide Public Sector Policy and Performance)」が、同年 10 月に
「持続可能な開発の達成において公的部門を誘導する重要政府目標(Key Performance
Goals to Guide the Public Sector in Archieving Sustainable Development)」が発表され
た。
(出所)平井(2003.6)を参考に野村総合研究所作成
•
もともとニュージーランドでは、「購入契約」(後述)に基づくアウトプットの達成責任が重視され、アウ
トカムが軽視される傾向があった。これに対し、政府全体のアウトカム目標を省庁別のアウトカム目
標にブレイクダウンし、その省庁アウトカムを、大臣と省庁チーフ・エグゼクティブとの契約(業績契
約)の中に落とし込むことで、アウトカムの達成を担保しようとしている。
•
各省庁のチーフ・エグゼクティブは、行政サービス委員会が作成したフォーマットに基づき、業績
契約の素案を作成し、これを行政サービス委員長に提出する。行政サービス委員会が、財務省や
首相内閣府と調整し、省庁間の整合性を図った上で、正式締結となる。業績契約の達成度は、最
低半年に一度報告書が作成される。報告書は、大臣と行政サービス委員長に提出され、チーフ・
エグゼクティブの業績評価の資料として使われる。
②購入契約(purchase agreement)
•
「購入契約」とは、各省庁が購入大臣と取り交わす契約である。大臣が省庁から購入する全ての
財・サービス(アウトプット)の内容を、量・質・コストの面から指定する。具体的には、アウトプットごと
に「量(quantity)」「質(quality)」「コスト(cost)」に関する指標(performance measures)と、その目
標値(performance standards)が示される。
※2003/2004 年度予算から、文書としては「アウトプット・プラン(Output Plan)」に置き換わってい
るとのこと。
•
業績契約と購入契約の違いは以下のとおりである。
図表 業績契約と購入契約の違い
業績契約
購入契約
省庁が「責任大臣」と取り交わす書類。
省庁が「購入大臣」と取り交わす書類。
省庁のチーフ・エグゼクティブが達成すべき主 省庁が大臣に提供する全ての財・サービスが
な事柄が文章で明示される。
アウトプットという形で明示される。
•
購入大臣は、省庁が提供する財・サービスと、省庁以外の組織が提供する財・サービスとを、量・
質・コストの面から比較し、より良い方を購入することができる。
•
アウトプットと指標の策定方法について、財務省38や会計検査院、行政サービス委員会が指針を
示している。
38
‘Purhase Agreement Guidelines with Best Practices for Output Pergormance Measures’
184
図表 購入契約書の事例
●年金などの申請処理事務(アウトプット)
指 標
今年度目標値
量:申請数
質:[利便性]1日の最低営業時間数
[適時性]5営業日以内に処理されたものの割合
[正確性]正確性検査に合格したものの割合
[顧客満足度]
前々年度実績
25,193
20,928
26,856
7時間
70%
80%
70%
7.5時間
80%
80%
80%
7.5時間
79%
84%
86%
1,477百万NZ ドル
コスト:(税抜き)
前年度第3四半
期までの実績
1,260百万NZ ドル 1,504百万NZ ドル
●児童・家庭向けソーシャル・ワーク(ア ウトプッ ト)
指 標
今年度目標値
量:ケース数(緊急)
(通常)
家庭内の同意書締結数
計画・指令書執行数
900~1,100
(アウトプットの
900~1,100
分類が変更され
500~600
たため比較不能)
1,800~2,000
質:調査計画の策定とケースへの最初のコンタクト;
-7営業日以内に成されたもの
-28営業日以内に成されたもの
PQA指標;
-家族が、解決策を見出し実施するのに参画したもの
-ソーシャル・ワークが安寧の達成に向けてなされたもの
コスト:(税抜き)
前年度第3四半
期までの実績
75%
100%
前々年度実績
(同左)
(同左)
(同左)
35,858百万NZ ドル
(同左)
(同左)
今年度目標値
前年度第3四半
期までの実績
前々年度実績
80%
80%
●大臣のサポート事務(ア ウトプッ ト)
指 標
量:大臣の回答書
議会の質問に対する回答
情報公開に基づく 請求に対する回答
質:[適時性]
-大臣名の回答書;20営業日以内
-議会への回答(口頭);同日の正午まで
(書面);回答日の前日午前10時まで
-情報公開性の回答;法定期間内
[適切性]
-大臣名の回答;一回で大臣が承認
-議会への回答;案を大臣が承認
コスト:(税抜き)
2,500
1,200
330
2,338
929
372
2,367
1,252
401
90%
100%
100%
100%
90%
100%
100%
72%
85%
100%
100%
74%
95%
95%
93%
100%
88%
100%
2,695百万NZ ドル
2,953百万NZ ドル 3,713百万NZ ドル
*今年度の目標値を、 前年度までのそれと比較するため、「前年度第3四半期までの実績」と「前々年度実績」 も合わせて
示される。前年度が、 第3四半期までの実績なのは、 購入契約書の締結時の実績をとるためである。
(資料) Department of Social Welfare (1998) Vote Social Welfare Purchase Agreement for the year ended 30 June
1999より抜粋。
(出所)和田(2000.10)p.27
185
(4)ドキュメントの変更
•
政策評価に関するドキュメントは、2004/2005 年度から大きく変更された。
•
ニュージーランドの政策評価制度に対しては、アウトプットに比べてアウトカムが軽視されがち、作成
するドキュメントが多すぎる等の批判が多かった。そこで、2001 年、中枢3省のチーフ・エグゼクティブ
に、公務員労働組合代表、民間コンサルタント 2 名を加えた計 6 名からなる諮問グループが結成さ
れ、中央政府のレビュー(Review of the Center)を開始。同諮問グループは、2001 年 11 月に報告書
(Report of the Advisory Group on the Review of the Center)39を発表し、この中で、従来のアカウン
タビリティ・ドキュメントに代わる「政策意図説明書」および「アウトプット・プラン」の作成、アウトカムに
焦点を当てたマネジメント推進のための「探検者(Pathfinder)プロジェクト」40の実施が提案された。
図表 Report of the Advisory Group on the Review of the Center(2001)における記述
公式の事前文書の数を減らすため、国会に提出される各省の政策意図説明書(Statement of intent:SOI)
に集約させる。この文書は、幅広い業績の観点―アウトプット(とサービス)のみならず、アウトカム(と評価)、
能力及び関係―に注目する。アウトプットに関する詳細な情報は、アウトプット計画(購入契約に代わるも
の)によって提示される。政策意図説明書は、大臣と中枢省が積極的に関与する、省による目標設定と計
画策定の過程で作成される。
(出所)平井(2003.6)
•
同報告書を受けて、2001 年 12 月、「新しい計画策定に対する期待と政策意図説明書の展開
(roll-out)に関する閣議決定」がなされ、年次計画書(Departmental Forecast Report: DFR)を政策
意図説明書(SOI)に置き換えること、業績契約(performance agreement)を SOI 及びアウトプット計画
と置き換えること等を行うことが決まった。
•
さらに、同閣議決定を受けて、中枢3省を中心とする推進グループ(The Steering Group Managing for
Outcomes Roll-out) 41 が設置され、2002 年 8 月に指針「Managing for Outcomes:Guidance for
Departments 」 、 同 年 11 月 に 指 針 「 Managing for Outcomes : Output Plans Guidance for
Departments」が発表された42。
図表 Managing for Outcomes:Guidance for Departments(2003)で示された
政策意図説明書に記載すべき内容
①省の業務運営において重要な、当該省を取り巻く情勢を特定する。
②省が追求し、貢献することを目指す、不可欠で少数のアウトカムを特定し、これらのアウトカムを正確な用
語で定義する。
③個々のアウトカムの現在の状態を測定し、変化の必要性がどこにあるのかを特定する。
④様々なアウトプットがこれらアウトカムの達成にどのように助けになるか(理由を根拠付ける証拠及び仮定
を含む)、及び、当該省が対処しなければならないリスクを検討する。
⑤向こう3~5年間の、アウトカム達成のためのアウトプットの最適な組み合わせを選択する。
⑥計画期間にアウトプットごとにどのインパクトについて評価を行うべきかを決定する。
⑦省にとって、アウトプットを提供するために必要な能力(capability)を特定する。
(出所)平井(2003.12)(一部表現を修正)
39
行政サービス委員会のウェブサイト(http://www.ssc.govt.nz)で閲覧可能。
平井(2003.6)によると、公共部門のマネジメントにアウトカム情報を統合するためのプロジェクトで、行政サービス委員会
と財務省が共同で実施し、一部省庁が参加しているとのこと。
41 推進グループは、会計年度ごとに設置されている。
42 どちらも、行政サービス委員会のウェブサイト(http://www.ssc.govt.nz)で閲覧可能。
40
186
•
2004/2005 年度前後における政策評価のドキュメントの対応関係は以下のとおりである。
図表 2003/2004 年度前後のドキュメントの比較
業績明示
変更前
●業績契約(performance agreement)
(内容は先述)
●年次計画書(Departmental Forecast Report: DFR)
・ 各 省 庁 の 財 務 諸 表 及 び サ ー ビ ス 業 績(service
performance:非財務的業績)に関する年間計画
書。サービス業績としては、アウトプット指標の目
標値が示される。
・ 予算書の内容とほぼ同じ。ただし、予算書は購入
大臣ごとに示されるが、DFR は省庁ごとに示され
る。
●購入契約(purchase agreement)
(内容は先述)
業績報告
●年次報告書(Annual Report)
・ 年次計画書の達成状況を毎年報告するもの
・ 財務諸表とサービス業績報告書を含む
変更後(2003/2004 年度~)
●政策意図説明書(Statement of Intent)
・ 業績契約、年次計画書[DFR]が置き換わったもの
・ 中期(3~5年)
・ 責任大臣と各省庁チーフ・エグゼクティブが責任を負
う
・ アウトカム達成に資するアウトプットを設定するととも
に、その能力を向上させるように計画策定を改善する
ことが目的
・ アウトプット情報はアウトプット・クラス単位で記載
※「アウトプット・クラス」とは、アウトプットをグルーピング
したもの。国会で議論する際には、アウトプット単位で
は細かすぎるため、この単位で示される。
●アウトプット・プラン
・ 購入契約が置き換わったもの
・ 原則として会計年度ごと
・ 購入大臣と各省庁チーフ・エグゼクティブが責任を負
う
・ 当該省が提供するアウトプットすべてを記載
・ 期待されるアウトプットと、その業績測定方法を記載
・ アウトプットクラスではなく、個々のアウトプットのレベ
ルで提供されるサービスを詳細に記載
・ 購入大臣は、当該省からの申し出に基づき、予算の
範囲内で、量・質・納期・提供場所・コスト及び提供者
を調整可能
・ 大臣は、産出されたアウトプットに関し、定期的に公
式の報告を受ける
・ 原則として公開されていない
●年次報告書(Annual Report)
・ 政策意図説明書の達成状況を毎年報告するもの
・ 財務諸表とサービス業績報告書を含む
(出所)平井(2004.4)(一部表現を修正)
(注)変更後は、Managing for Outcomes:Guidance for Departments(2002)p.20 による。
187
4)ドキュメントの概要
①政策意図説明書(Statement of Intent)
•
政策意図説明書は、従来の業績契約、年次計画書(DFR)に代わり、各省庁単位で作成・公表さ
れている。(2003/04 年度より全省庁で作成されている。)
•
政策意図説明書は、各省が、向こう3~5年間にわたり、どのようにアウトカムのための経営を行お
うとしているかを、具体的なアウトカム、アウトプットの設定を通じて、議会及び国民に明らかにする
ための文書。政策意図説明書に関する責任は、チーフ・エグゼクティブと責任大臣にある。
•
各省庁の「政策意図説明書」には、予測財務諸表と、非財務情報としてアウトプット・クラスごとの
業績目標(質・量・適時性・コスト)が示される。また、これに対応する「年次報告書」では、財務諸
表と、非財務情報として、アウトプット・クラスの質・量等に関する業績報告が示される。
•
各省庁は、政策意図説明書の素案を作成し、責任大臣が承認する前に、財務省に提出。財務省
は、他の予算関係文書や政府全体の予算戦略との整合についてチェックするとともに、行政サー
ビス委員会に回付し、コメントを求める。以上のプロセスを経た上で、各責任大臣が承認し、政策
意図説明書が成立する。
※財務諸表について
• 1989 年新財政法で、政府部門に財務諸表(発生主義ベース)の作成が義務付けられた。組織別
の財務諸表が作成されるとともに、政府部門連結の財務諸表も作成される。ニュージーランド政府
の財務諸表は、民間企業以上に充実していると評価されている。
• 政府部門に発生主義会計を導入した理由を、「購入者としての関心」と「所有者としての関心」に
分けて整理すると、以下のとおりである。
①購入者としての関心
大臣は、省庁の財・サービスのコストを、民間の財・サービスと比較する必要がある。その
ためには、発生主義でコストを算定する必要がある。
②所有者としての関心
政府は、省庁の経営状態を把握する必要があり、そういった情報は、財務諸表の作成を
通じて初めて明らかになることが多い。
• また、政府部門と民間部門のコスト比較を可能とするため、各省庁には「キャピタル・チャージ
( capital charge ) 」 が 課 さ れ て い る ( 実 際 に 資 金 の 移 動 が 行 わ れ る 。 料 率 は 全 省 庁 一 律
8.5%[2002/03 年度])。これは、「省庁」の資産は、「政府」が投資したものであり、本来無料ではな
いとの考え方に基づくものである。キャピタル・チャージ導入には、資産活用の効率化というメリット
も期待できる。
188
•
政策意図説明書を作成している省庁は以下のとおりである。
図表 Statement of Intent を作成している省庁一覧
Ministry of Justice
Department of Labour
Land Information New Zealand
National Library
Office of the Ombudsmen
Ministry of Pacific Island Affairs
Parliamentary Commissioner for the Environment
Parliamentary Counsel Office
Parliamentary Service
The Police
Department of the Prime Minister and Cabinet
Ministry of Research, Science and Technology
Serious Fraud Office
Ministry of Social Development
State Services Commission
Statistics New Zealand
Te Puni Kōkiri
Ministry of Transport
The Treasury
Ministry of Women's Affairs
Ministry of Agriculture and Forestry
Archives New Zealand
Office of the Auditor-General
Department of Building and Housing
Office of the Clerk
Department of Conservation
Department of Corrections
Crown Law Office
Ministry for Culture and Heritage
New Zealand Customs Service
Ministry of Defence
New Zealand Defence Force
Ministry of Economic Development
Ministry of Education
Education Review Office
Ministry for the Environment
Ministry of Fisheries
Ministry of Foreign Affairs and Trade
Ministry of Health
Inland Revenue
Department of Internal Affairs
(出所)財務省ウェブサイト(http://www.treasury.govt.nz/budget2006/soi/)
189
•
経済開発省(Ministry of Economic Development)の「2006-09 年度政策意図説明書(Statement of
Intent 2006-2009)」(2006 年 5 月 18 日発表)の目次構成を以下に示す。PartA「戦略方針(Strategic
Direction)」では省庁の戦略とその設定根拠、政府全体のアウトカム目標達成への寄与等が文章で
説明されている。そして、PartB「予測財務諸表(Forecast Financial Statements)」では、Vote ごとにア
ウトプットクラスが示され、各アウトプットクラスに対して、そのアウトプットクラスに含まれるアウトプット目
標と、アウトプットクラス全体のコストが示されている。
図表 経済開発省の 2006-09 年度政策意図説明書の目次構成
Ministerial Statement
Part A: Strategic Direction
Chief Executive's Introduction
Section 1: Economic Development Context
Section 2: The Ministry's Strategy for Growth
Section 3: The Strategy in Action
Section 4: Managing for Outcomes
Section 5: Organisational Development Strategy
省庁説明
Part A 戦略方針
事務次官による序文
Section 1: 経済開発の状況
Section 2: 成長のための省庁戦略
Section 3: 戦略の実行
Section 4: アウトカム達成のための取組み
Section 5: 組織発展のための戦略
Part B: Forecast Financial Statements
Introduction
Statement of Responsibility ※1
Statement of Forecast Financial Performance for the
Year Ending 30 June 2007
Statement of Forecast Financial Position as at 30 June
2007
Statement of Forecast Cash Flows for the Year Ending
30 June 2007
Reconciliation of Operating Surplus to Net Operating
Cash Flows for the Year Ending 30 June 2007
Statement of Forecast Movements in Taxpayers' Funds
for the Year Ending 30 June 2007
Forecast of Memorandum Accounts Balances for the
Period Ending 30 June 2007
Action Taken to Address Surpluses in the Memorandum
Accounts
Details of Fixed Assets by Category
Statement
of
Departmental
Expenditure
and
Appropriations by Activity
Statement of Significant Underlying Assumptions
Followed in Compiling the Forecast Financial
Statements
Statement of Significant Accounting Policies
Output Class Specific Performance Measures
Vote: Economic, Industry and Regional Development
・ Output Class > Policy Advice and Sector
Leadership > Firm Capability, Sectoral and
Regional Development ※2
・ Output Class > Policy Advice > Small Business
Vote: Commerce
・ Output Class > Policy and Purchase Advice >
Business Law and Competition Policy
・ Output Class > Administration of Trade Remedies
・ Output Class > Administration of Part II Tariff
Concessions
・ Output Class > Registration and Granting of
Part B 予測財務諸表
序文
責任文書
2007 年 6 月 30 日締め会計年度 予測財務諸表
190
2007 年 6 月 30 日時点の財政状況予測
2007 年 6 月 30 日締め会計年度 予測キャッシュ・フロー
純営業キャッシュ・フローに対する営業余剰金調整項目
2007 年 6 月 30 日締め会計年度 税収動向予測
2007 年 6 月 30 日締め会計年度 備忘勘定収支予測
備忘勘定における余剰金への取組み
部類別固定資産明細票
活動別の支出および歳出
予測財務諸表編成のための重要な前提
重要政策
アウトプット・クラス特定業績指針
款:経済、産業、地域開発
・ アウトプット・クラス>政策的助言、セクター指導>
企業能力、セクター及び地域の発展
・ アウトプット・クラス>政策的助言>中小企業
款:商業
・ アウトプット・クラス>政策的助言・購入指導>事業
法と競争政策
・ アウトプット・クラス>貿易救済措置実施
・ アウトプット・クラス>関税譲許 2 章の実施
・ アウトプット・クラス>知的財産権の登録及び付与
Intellectual Property Rights
・ Output Class > Administration of Insolvencies
・ Output Class > Registration and Provision of
Statutory Information
Vote: Communications
(Output Class 以下省略)
Vote: Consumer Affairs
(Output Class 以下省略)
Vote: Energy
(Output Class 以下省略)
Vote: Tourism
(Output Class 以下省略)
Crown Entity/Statutory Board Monitoring
Quality Standards for Policy Advice and Ministerial
Servicing ※3
・ Quality Management
・ Policy Advice
-Quantity
-Quality
・ Ministerial Servicing Performance
・ Performance Measures for Departmental Output
Classes
-Generic Standards and Measures for Policy
Advice
- 2006/2007 Performance Measures and
Standards
Ministerial Servicing - Expected Quantities
・ アウトプット・クラス>破産管理
・ アウトプット・クラス>法令情報の登録と提供
款:コミュニケーション
(アウトプット・クラス以下省略)
款:消費者問題
(アウトプット・クラス以下省略)
款:エネルギー
(アウトプット・クラス以下省略)
款:観光
(アウトプット・クラス以下省略)
クラウンエンティティ・公的機関モニター
政策的助言と省庁のサービスに関する品質基準
・ 品質管理
・ 政策的助言
-量的なもの
-質的なもの
・ 行政サービス実績
・ 省のアウトプットクラスに対応する業績指標
-共通基準と政策的助言に対する基準
-2006/2007 業績指標と基準
行政サービス-想定量
Part C: Additional Information
Statement of Forecast Financial Performance for
Non-Departmental Activities Administered by the
Ministry of Economic Development for the Year
Ending 30 June 2007
Statement of Forecast Financial Position for
Non-Departmental Activities Administered by the
Ministry of Economic Development as at 30 June 2007
Non-Departmental Revenue
Non-Departmental Expenditure
Non-Departmental Capital Expenditure
Part C 追加情報
2007 年 6 月 30 日締め会計年度の経済開発省による外
部活動財務実績諸表
Appendix: Long Descriptions of Images
別添:図表の詳細説明
2007 年 6 月 30 日時点の会計年度の経済開発省による
外部活動財務状況諸表
外部歳入
外部歳出
外部設備投資
(出所)経済開発省ウェブサイト http://www.med.govt.nz/templates/MultipageDocumentTOC____19829.aspx
191
①-1 政策意図説明書における責任記述書(Statement of Responsibility)
•
PartB「予測財務諸表(Forecast Financial Statements)」の冒頭には、事務次官(Chief Executive)
の目標達成責任を明示した責任文書(Statement of Responsibility)が掲載されている。
図表 経済開発省 政策意図説明書における「責任記述書(Statement of Responsibility)」
The information contained in this statement of intent for the Ministry of Economic Development has been
prepared in accordance with section 38 of the Public Finance Act 1989.
As Chief Executive of the Ministry of Economic Development, I acknowledge, in signing this statement, my
responsibility for the information contained in this Statement of Intent.
The financial performance forecast for the Ministry of Economic Development in the forecast financial
statements is as agreed with the Minister for Economic Development, who is the Minister responsible for the
financial performance of the Ministry of Economic Development.
The performance specified in the Statement of Objectives for each class of outputs forecast to be achieved by
the Ministry, for the year ending 30 June 2007, is as agreed with the Minister responsible for each Vote
administered by the Ministry.
We certify that the information contained in this report is consistent with existing appropriations, and with the
appropriations set out in the Appropriation (2005/06 Estimates) Bill.
Signed:
Geoff Dangerfield
Chief Executive
3 April 2006
Countersigned:
Fergus Welsh
Chief Financial Officer
3 April 2006
(出所)経済開発省ウェブサイト(http://www.med.govt.nz/templates/MultipageDocumentPage____19840.aspx)
192
①-2 政策意図説明書における個別アウトプットクラスの記述
•
Vote「経済・産業・地域開発(Economic, Industry and Regional Development)」のアウトプットクラス
の1つである「政策アドバイス・セクター指導>企業能力、セクター・地域開発(Policy Advice and
Sector Leadership > Firm Capability, Sectoral and Regional Development)」の記述内容を以下に
抜粋する。これを見ると、各アウトプットクラスに対して、当該アウトプットクラスに含まれるアウトプット
の内容が文章で説明され、アウトプットクラス全体にかかるコストが示されていることが分かる。なお、
具体的な指標については、当該セクションでは示されず、同じ政策意図説明書の「政策アドバイス
および省庁サービスに関する質的基準(Quality Standards for Policy Advice and Ministerial
Servicing)」を参照することとされている。
図表 経済開発省 政策意図説明書におけるアウトプットクラスに関する記述内容
Vote: Economic, Industry and Regional Development
Output Class: Policy Advice and Sector Leadership > Firm Capability, Sectoral and Regional Development
This output class provides policy advice encompassing the
development, evaluation and overview of economic,
industry and regional development policies and initiatives
to promote sustainable economic development.
このアウトプットクラスが提供する政策アドバイスは、経済、
産業、地域開発政策、及び持続的な経済発展のためのイニ
チアチブを網羅している。
This includes the development and implementation of
Government's economic transformation agenda;
researching and analysis of factors influencing
capability and performance of firms, industry sectors,
regions; undertaking work on the overall management
adequacy of New Zealand's infrastructure; and
monitoring and evaluation of New Zealand Trade
Enterprise (NZTE) programmes and services.
the
the
the
and
and
the
and
これは、政府の経済変革行動計画の発展と実施を含む。こ
れには企業、産業部門、と地域の能力とパフォーマンスに
影響を与える要素についての調査・分析、全体的な運営と
ニュージーランドのインフラを充実させるための業務の受け
負い、及びニュージーランドの貿易と事業に関するプログラ
ムとサービス(NZTE)の評価とモニター等がある。
The following outputs are included in this output class for
2006/2007:
• Regional Development Policy - which relates to
economic development in the regions of New Zealand,
with a focus on policies and programmes to improve
the business environment at the regional level, a key
influence on individual firm performance. Key areas of
focus include:
・ progressing with implementation of a refreshed
framework for regional economic development
policy for the future; and
・ understanding what contributes to cities
performing well and applying this learning to our
work on improving Auckland's contribution to
New Zealand's economic performance.
2006/2007 アウトプットクラスには次のアウトプットが盛り込ま
れている。
• 地域開発政策-これはニュージーランドの地域にお
ける経済発展に関係する。特に、地域レベルでのビジ
ネス環境改善のための政策とプログラムにフォーカス
し、個々の企業業績に重要な影響を与える。焦点とな
る主要分野は次の事項である。
• Economic Transformation - which relates to the
ongoing development and implementation of the
Government's cross-agency economic transformation
agenda and promotion of associated activities
undertaken in regions, sectors and firms. Key areas of
focus include:
・ supporting the alignment of economic policy
activity;
・ reviewing the National Innovation System with the
• 経済改革-これには、進行中の開発、政府の省をま
たがった経済改革課題の実施、及び地域、部門、企
業によって行われている関係活動の促進等に関する
指標。焦点となる主要分野は次の事項である。
193
・ 将来の地域経済発展政策に向けた新たな枠組み
の実施を進展させる
・ 各都市とって何が役立つかを把握した上で、この
知見を活かしてオークランド市がニュージーランド
の経済活動に貢献できるようにする。
・ 経済政策活動の調整を支援する。
・ イノベーション政策の発展に役立つよう、National
intention of creating an evidence base to support
the future development of innovation policy; and
・ publishing the new edition of the Economic
Indicators report.
Innovation System を見直す。
・ 経済指標報告書の更新版を発行する。
• Firm Capability - which relates to the issues that
affect and influence management, business capability
and overall performance at the firm level. It includes
advice on the design, implementation and ongoing
operation of industry programmes delivered through
NZTE. Key areas of focus include:
・ contributing to Export Year 2007 by aiming to
draw the links between the importance of
exporting and the Government's broader
economic transformation agenda;
・ promoting a well-functioning market for
management and business capability development
services through involvement with the Business
Capability Partnership, an initiative comprising
public and private representation; and
・ developing measures of innovative firm activity
and examining the two-way causal relationship
between practices and performance, in particular
the ways firms respond (through changes in
practices) to market signals of their performance.
• 企業能力-これは、経営、取引能力、そして企業レベ
ルでの全体的な業績に影響を与える問題に関する指
標。その内容は、NZTE を通じて遂行された産業プロ
グラムの設計、施行、および進行中の作業に関する助
言を含む。焦点となる主要分野は次の事項である。
• Growth and Innovation Advisory Board - providing
support to the Growth and Innovation Advisory Board
and their focus of strengthening the role of
non-government stakeholders in informing the
development of the Economic Transformation
Strategy.
• 成長・革新のための諮問機関- “成長と革新のため
の諮問機関”を支援するとともに、経済改革戦略の実
施により、政府以外の利害関係者の役割の強化に焦
点を当てる。
• Research, Evaluation and Monitoring - which relates
to the evaluation and monitoring of industry and
regional
development
programmes
and
the
performance of New Zealand Trade and Enterprise
and the Venture Investment Fund Ltd. In 2006/2007,
this output includes the evaluation of a number of
specific programmes and completion of the
government's expenditure review of business
assistance programmes. All programmes will be
evaluated within a four-year cycle.
• 研究、評価、監視-これは、産業・地域発展プログラ
ムおよびニュージーランド貿易・企業・ベンチャー投資
基金の業績の評価・モニタリングに関する指標。
2006/2007 において、当該アウトプットは多くの特定プ
ログラムの評価やビジネス支援プログラムに関する政
府支出レビューの完了を含む。全てのプログラムは 4
年間以内に評価される。
• Sector Policy Development - which relates to the
factors that influence the level and quality of
sustainable economic growth from an industry
development perspective. The focus is on those
factors that influence the growth of industry sectors
and New Zealand's international connections, and
includes the design, implementation and on-going
operation of programmes delivered through NZTE.
Key areas of focus include:
・ in consultation with the industry, developing the
Government's response to the Food and
Beverage Taskforce recommendations, including
development of a work programme and addressing
the key challenges identified by the Taskforce;
• 産業部門政策-これは、産業発展の観点から、持続
的な経済成長のレベルと質に影響を与える要素に関
する指標。産業部門およびニュージーランドの国際連
携の発展に影響を与えるこれらの要素に焦点を当て
るとともに、NZTE を通じて実施される産業プログラム
の設計、施行、運営を含んでいる。
194
・ 輸出の重要性と政府の広範囲にわたる経済改革
課題を関連付けることで、2007 輸出年に貢献す
る。
・ 官と民の代表を含むイニシアチブであるビジネス・
キャパシティー・パートナーシップに関わることで、
市場における経営・事業能力の開発を促進する。
・ 革新的な企業活動の指標を開発し、取組みと効
果との間の双方向の関係について調査する。特
に、市場動向に対する企業の反応の仕方(取組
みの変化)について調査する。
・ 民間企業部門と連携し、食品・飲料タスクフォース
の提案に対して政府として取り組みを行う。これに
は、ワークプログラムの促進、タスクフォースが示し
た主要な取組みの実施が含まれる。
・ identifying the indicators, critical issues and
actions (short-term and long-term) that will
foster more globally competitive firms in New
Zealand; and
・ in consultation with key stakeholders, develop
policy and operational parameters for the
Government's Buy Kiwi Made initiative.
・ 国際競争力のある企業を育成するための指標、
課題、取組み(短期・長期)を明確化する。
• Major Events - provide secretariat support to the
Major Events Development Fund as part of the Major
Events Strategy and ensure that expenditure on
approved events is properly monitored and accounted
for.
• 主要イベント-主要イベント戦略の一環として、主要イ
ベント開発基金への支援を行うとともに、認可したイベ
ントへの支出に関して確実に監視し、説明責任を果た
す。
• Infrastructure Advice - which relates to work on a
range of infrastructure issues not covered under
Votes: Energy or Communications. The work is
directed to advice on improving the contribution of
the transport and water sectors, and of infrastructure
generally, to economic development. The Ministry
also leads the development of national guidance for
infrastructure under the Resource Management Act
1991 (RMA).16
• インフラアドバイス-これは、“エネルギー”および“コミ
ュニケーション”予算でカバーされないインフラに関す
る指標。交通、水道など経済成長に寄与するインフラ
の向上に関するアドバイスを行う。本省は、1991 年資
源管理法(RMA)によるインフラに関するガイダンスを
主導する。
Service Performance
Policy advice will be delivered as agreed with the Minister
and as detailed in the Ministry of Economic Development
Output Plan.
サービス業績
政策アドバイスは、大臣との合意の下に実施される予定で
ある。詳細は、経済開発省アウトプットプランにおいて示され
る。
Generic quantity, quality and timeliness performance
measures for all policy advice, Ministerial services and
briefings supplied by the Ministry of Economic
Development are detailed in Quality Standards for Policy
Advice and Ministerial Servicing. ※SOI 内の当該セクション
へリンク
経済開発省が行うあらゆる政策アドバイス・サービス・指示
についての、量・質・時間に関する業績指標は、「政策アド
バイスおよび省庁サービスに関する質的基準」に詳細が示
される。
・ 主要な利害関係者と連携し、政府による国内産品
購入イニシアチブに関する政策・運営条件を確立
する。
以上の記述の後に、当該アウトプットクラスのコストが、下表の形式で掲載されている。
2005/2006
2006/2007
補足見通し
予測(Forecast)
(Supplementary Estimates)
千ドル
千ドル
11,913
11,514
政府収入(Revenue Crown)
115
119
その他機関収入(Third Party Revenue)
12,028
11,633
支出(Expenses)
余剰/不足(Surplus/Deficit)
-
2005/2006
実績見通し
(Estimated Actual)
千ドル
11,913
115
12,028
-
(出所)経済開発省ウェブサイト
(http://www.med.govt.nz/templates/MultipageDocumentPage____19853.aspx#P1707_170550)
195
①-3 政策意図説明書における「政策アドバイスおよび省庁サービスに関する質的基準」
•
政策意図説明書の「政策アドバイスおよび省庁サービスに関する質的基準(Quality Standards for
Policy Advice and Ministerial Servicing)」では、省庁全体の業績指標が、量(quantity)・質(quality)・
適時性(timeliness)の観点から示されている。アウトプットクラスごとの業績指標は示されていない。
図表 経済開発省 政策意図説明書における「政策アドバイスおよび省庁サービスに関する質的基準」
Quality Management
The quality of policy advice will be supported by a quality management process including:
・ an external review of scope and methodology for major analytical work;
・ circulation of drafts for critiquing by other government agencies and other parties as appropriate;
・ internal peer review and checking procedures; and
・ adherence to the Ministry's Policy Framework.
Note: A large part of the Ministry's policy advice requires the co-operation of other government agencies and is
determined by the priorities and timetables of Cabinet and its Committees. The Ministry's performance in terms of the
standards may be affected by these factors which are outside its control. These factors will be included in the
assessment process and will be acknowledged whenever they impact performance.
Policy Advice
The Ministry will seek a written response, at least six-monthly, from Ministers on its performance against the following
quality standards.
●Quantity
Project work is agreed in the year's work programme, and modified by agreement between Ministers, the Chief
Executive of the Ministry of Economic Development and, where appropriate, the General Manager of the Ministry of
Consumer Affairs and the General Manager of the Ministry of Tourism in the course of the year.
Coverage
The Ministry will provide a comprehensive service that:
・ has the capacity to react urgently;
・ offers timely and relevant briefings on significant issues; and
・ supports Ministers as required in Cabinet Committees, Select Committees and in the House.
●Quality
The Ministry will supply high-quality individual products conforming to the quality characteristics outlined below and
assessed by the Ministers' satisfaction, as reported in the Ministers' six-monthly response sheets.
Quality Characteristics
Purpose
An objective for the policy advice has been clearly stated, including its relationship to the Government's desired
outcomes and objectives.
Focus
There is a clear and logical statement of the issue or problem and why it necessitates Ministerial action.
Viability
Viable options to address the issue are presented and the costs/benefits and winners/losers for each (relative to
the policy objective) are assessed, and any value judgement is brought to the attention of Ministers.
Logic
The assumptions behind the advice and the logic of how options will resolve issues and achieve objectives are
clear.
Accuracy
The facts are accurate and based on reliable research or evaluation findings or other appropriate information.
Practicality
The advice draws on appropriate knowledge and experience and the practicalities of implementing it are clearly
explained, including any legal, machinery of government, Treaty of Waitangi, or other issues or risks that require
management.
196
Consultation
Interested government agencies and affected parties have been consulted and their views considered.
Presentation
The advice is presented clearly, logically, in plain and grammatically correct English, free from any typographical
or spelling errors, and conforms to Cabinet Office requirements.
Recommendations
Recommendations are clear, logical, action-oriented and can stand alone from the rest of the advice.
Timeliness
Specified reporting deadlines are met.
Cost
The outturn is within budget. This is assessed by comparing the outturn with the Estimates of Appropriations.
Ministerial Servicing Performance
Draft replies to Ministerial correspondence are to be submitted to Ministers within 10 working days of receipt in the
Ministry in 100% of cases in all Votes.
Parliamentary questions and Ministerial correspondence will be responded to within agreed and statutory timeframes.
Expected quantities of Ministerial servicing for each output class will be as stated in the table set out in this report.
Performance Measures for Departmental Output Classes
This section describes the generic and specific output class performance measures and performance standards for
departmental policy advice output classes provided to Ministers in 2006/2007.
●Generic Standards and Measures for Policy Advice
The generic performance measures and standards for policy advice, included in Quality Standards for Policy Advice and
Ministerial Servicing and those set out below, apply specifically to the following output classes:
Vote: Economic, Industry and Regional Development
・ Policy Advice and Sector Leadership - Firm Capability, Sectoral and Regional Development
・ Policy Advice - Small Business
Vote: Commerce
・ Policy and Purchase Advice - Business Law and Competition Policy
Vote: Communications
・ Policy Advice - Communications
Vote: Consumer Affairs
・ Policy Advice and Support on Consumer Issues
Vote: Energy
・ Policy Advice on Energy and Resource Issues
・ Management of the Crown Mineral Estate
Vote: Tourism
・ Policy Advice - Tourism
●2006/2007 Performance Measures and Standards
Quantity
Work Programme
Policy advice will be delivered in accordance with the prioritised requirements of a work programme negotiated
annually with the Minister, or as amended by the Minister during the course of the year.
Ministerial servicing in the form of letters and Parliamentary Questions is undertaken as required by the Minister.
Quality
The Ministry's Policy Framework includes the quality characteristics listed in the sections above that apply to
policy advice and to Ministerial servicing as appropriate.
In respect of policy advice, Ministerial servicing and the provision of advice on Crown entity governance
(including the Crown's ownership interest and any risks and issues):
・ Ministers' feedback will be within the range (3) "met my expectations" to (5) "greatly exceeded my
expectations" in the six-monthly review of the Ministry's performance.26
Timeliness
100% of reports and oral advice to the Minister are delivered within the timeframes required by, and agreed with,
the Minister.
197
100% of draft Ministerial correspondence is submitted to the Minister within 10 working days of receipt in the
Ministry.
Where only an interim reply is possible, a final reply shall be provided within the following timeframes:
・ 90% within 20 working days of the original receipt in the Ministry and 100% within 30 working days of receipt
in the Ministry.
Advice to the Minister on statutory appointments to Crown entity boards as positions for renewal or appointment
fall due.
・ 100% within agreed timelines.
(出所)経済開発省ウェブサイト
(http://www.med.govt.nz/templates/MultipageDocumentPage____19860.aspx)
198
②予算要求書(Estimates of Appropriations)
•
財務大臣が議会に提出する予算書及び予算参考書類の構成は以下のとおりである。ニュージー
ランドでは、予算は予算法(Appropriation Act)として法律の形式で議決されるため、議決対象と
なるのは「歳出法案」のみである。
図表 予算書及び予算参考書類の構成
歳出法案
(Appropriation Bills)
財政演説
(Budget Speech)
財政戦略報告書
(Fiscal Strategy Report)
当初予算時経済財政見通し
(Budget Economic and Fiscal Update)
政策意図説明書
(Statement of Intent)
予算要求書
(Estimates of Appropriations)
議決対象となる予算案。Appriation Act は、基本歳
出項目(Vote)ごとの基本議決項目(appropriation)
について、歳出限度額を設定し、歳出権限を与える
もの。
予算案提出にあたっての財務大臣の演説。
予算政策書の記述と実際の予算案との比較や向こう
10 年間の財政状況の予測。
経済・財政の現状や将来見通し、予測財務諸表等。
各省庁単位で作成され、中期的なアウトカム目標や
各種予測財務諸表、省庁の提供するアウトプット・ク
ラスの業績目標(質、量、コスト等)等が提示される。
Vote 単位で歳出の目的や金額を説明した予算書の
主要部分。
※会計年度は、7 月から翌年 6 月まで
•
予算要求書では、購入大臣(Vote Minister)ごとにアウトプット・クラス(output class)が示され、ア
ウトプット・クラス毎に①指標・目標値(質・量・コスト)、②過去5年間のトレンド、③貢献すべきアウト
カムが示されている。①の「コスト」に関する指標・目標値が、すなわち予算額である。
•
予算要求書と購入契約との違いは以下のとおりである。
購入契約
予算要求書
大臣が省庁から購入するアウトプットを明示す 政府の歳入・歳出の計画書。
る書類。
大臣・省庁間の書類。
政府・国会間の書類。
アウトプット単位で示される。
アウトプット以外の歳出項目や、歳入計画も含
まれる。アウトプットに関する部分は、アウトプッ
ト単位ではなく、アウトプット・クラス単位で示さ
れる。
•
予算要求書に示される歳出議決項目(appropriation:「項、目」に相当)は以下の7つである。これ
は、基本歳出項目(Vote:「款」に相当)ごとに決められる。
①アウトプット・クラス(Output Classes)
②給付・その他の一方的経費(Benefits and Other Unrequited Expenses)
③借入費用(Borrowing Expenses)
④その他経費(Other Expenses)
⑤資本注入(Capital Contributions)
⑥国有資産の購入・開発(Purchase or Development of Capital Assets by the Crown)
⑦債務償還(Repayment of Debt)
199
•
財務省ウェブサイトに掲載されている、ニュージーランド政府 2006 年度予算の構成は以下のとおりで
ある。
図表 ニュージーランド政府 2006 年度予算(Budget 2006、2006 年 5 月 18 日公表)の構成
●Budget Documents
○Executive Summary: Minister's Statement, the Government's Finances at a Glance, New Spending in
Budget 2006
○Budget Speech
○Fiscal Strategy Report
○Budget Economic and Fiscal Update
○Estimates of Appropriations for the Government of New Zealand for the Year Ending 30 June 2007
※Vote ごとに作成
○Supplementary Estimates of Appropriations for the Government of New Zealand for the Year Ending 30
June 2006
※Vote ごとに作成
●Ministers' and Departments' Budget Documents
※各省庁の Statement of Intent にリンクしている
●Treasury Documents and Data
(出所)財務省ウェブサイト(http://www.treasury.govt.nz/budget2006/#documents)
200
•
款:経済・産業・地域開発(Vote Economic, Industry and Regional Development)の予算要求書
(Estimates of Appropriations)」は全 30 ページからなる。目次構成を以下に示す。
図表 「款:経済・産業・地域開発」の予算書の目次構成
Part A - Statement of Objectives and Trends
Part A1 - Objectives for Vote
Part A2 - Trends in Vote
Part B - Statement of Appropriations
Part B1 - Details of Appropriations
Part B2 - Details of Multi-Year Appropriations
Part C - Explanation of Appropriations for Output Expenses
Part C1 - Departmental Output Expenses
Part C2 - Non-Departmental Output Expenses
Part D - Explanation of Appropriations for Other Operating Flows
Part D3 - Other Expenses
Part E - Explanation of Capital Flows
Part E1 - Explanation of Movements in Departmental Net Asset Schedules
Part E2 - Statement of Estimated and Forecast Net Worth of Entities Owned
Part E3 - Explanation of Appropriations for Capital Expenditure
Part G - Statement of Reconciliations
Part G1 - Changes in Appropriation Categories
(出所)財務省ウェブサイト(http://www.treasury.govt.nz/budget2006/estimates/)
(注)章立ては全ての Vote で共通となっている。Vote Economic, Industry and Regional Development の場合、Part
F(Crown Revenue and Receipts)は記載がない。
•
予算要求書の文頭には以下が明記されている。
購入大臣:産業・地域開発大臣
所管省庁:経済開発省
経済開発大臣は、経済開発省の責任大臣である。
VOTE MINISTER: Minister for Industry and Regional Development
ADMINISTERING DEPARTMENT: Ministry of Economic Development
The Minister for Economic Development is the Responsible Minister for the Ministry of Economic Development.
(出所)財務省ウェブサイト(http://www.treasury.govt.nz/budget2006/estimates/)
201
•
予算要求書の Part A「目標および傾向(Statement of Objectives and Trends)」においては、関係する
政府全体のアウトカム目標が明示され、当該歳出(appropriation)がその目標達成にどのように寄与
するかが文章で説明されている。
図表 「款:経済・産業・地域開発」の予算要求書の Part A における記述
(出所)財務省ウェブサイト(http://www.treasury.govt.nz/budget2006/estimates/)
202
•
予算要求書の Part B「歳出(Statement of Appropriations)」においては、歳出項目(appropriation)ご
とに予算額が示されている。当該 vote に含まれる歳出項目は以下のとおりである。
図表 Vote Economic, Industry and Regional Development の appropriation 一覧
Departmental Output Expenses
Policy Advice - Economic Development MCOA
Policy Advice - Small Business
Policy Advice and Sector Leadership - Firm Capability, Sectoral and Regional Development
Policy Advice - Economic Development
Policy Advice - Economic, Industry and Regional Development
Policy Advice - Small Business
Non-Departmental Output Expenses
Enabling Services - Facilitating the Development and Implementation of Sector and Regional Strategies
Enabling Services - Promotion of New Zealand Business and Development of Investment Opportunities
Foundation Services - Business Information and Advice
Foundation Services - Training and Capability Building
Grant Administration and Management
Growth Services - Customised Information and Advice
Growth Services - Identifying and Leveraging New Business Opportunities
Investment Fund Management
New Zealand's Participation At Expo 2005 Aichi, Japan
Other Expenses to be Incurred by the Crown
Enterprise Development Fund
Enterprise, Culture and Skills Activities Fund
Film New Zealand
(以下省略)
Capital Expenditure
New Zealand Trade and Enterprise
Seed Co-investment Fund
Venture Investment Fund
(出所)財務省ウェブサイト(http://www.treasury.govt.nz/budget2006/estimates/)
203
•
予 算 要 求 書 の Part C 「 ア ウ ト プ ッ ト 支 出 の 根 拠 ( Explanation of Appropriations for Output
Expenses)」は、Part C1 「省庁アウトプット支出(Departmental Output Expenses)」と Part C2 「非省
庁アウトプット支出(Non-Departmental Output Expenses)」の大きく2つに分かれている。Part C1 で
は、歳出項目(appropriation)ごとに関連するアウトプットが文章で明示されている。また、Part C2 では、
歳出項目ごとに業績指標および目標値、コスト、供給主体が記載されている。
(例)Part C2 非省庁アウトプット支出の歳出項目
“Enabling Services - Promotion of New Zealand Business and Development of Investment Opportunities”における記述
(出所)財務省ウェブサイト(http://www.treasury.govt.nz/budget2006/estimates/)
204
③年次報告書(Annual Report)
•
政策意図説明書(SOI)に対応するものとして、SOI で示された目標値の達成状況が示される。
•
経済開発省「2004/05 年次報告書(Annual Report of the Ministry of Economic Development for
the Year Ended 30 June 2005)」(2005 年 9 月 28 日発表)の目次構成を以下に示す。アメリカ連邦
政府の業績・財務報告書(PAR)と同様に、財務諸表(PART B)と業績報告(PART C)があわせて
掲載されている。
•
業績契約、年次計画書が「政策意図説明書」に改められてからも、「年次報告書」では、財務諸表
のほか、非財務情報として、アウトプット・クラスの質・量等に関する業績報告が含まれている。この
非財務情報の部分も、会計検査院による年次検査の対象となっている。
図表 経済開発省 2004/05 年次報告書の目次構成
Letter to Ministers
PART A: Overview
The Year's Key Achievements
Governance and Structure
・ Statement of Resources as at 30 June 2005
・ Ministry of Economic Development Organisational Chart
Reducing Inequalities
Financial Highlights for the Year Ended 30 June 2005
PART B: Financial Statements
Statement of Responsibility
Audit Report
Statement of Accounting Policies for the Year Ended 30 June 2005
Statement of Financial Performance for the Year Ended 30 June 2005
Statement of Financial Position as at 30 June 2005
Statement of Cash Flows for the Year Ended 30 June 2005
Reconciliation of Net Surplus to Net Cash Flow from Operating Activities for the Year Ended 30 June 2005
Statement of Movements in Taxpayers' Funds for the Year Ended 30 June 2005
Statement of Commitments as at 30 June 2005
Statement of Contingent Liabilities as at 30 June 2005
Statement of Trust Monies for the Year Ended 30 June 2005
Statement of Unappropriated Expenditure for the Year Ended 30 June 2005
Memorandum Accounts for the Year Ended 30 June 2005
Notes to the Financial Statements for the Year Ended 30 June 2005
Statement of Departmental Expenditure and Appropriations by Vote for the Year Ended 30 June 2005
PART C: Statement of Objectives and Statement of Service Performance
Vote: Economic, Industry and Regional Development
Vote: Commerce
Vote: Communications
Vote: Consumer Affairs
Vote: Energy
Vote: Tourism
Policy Advice and Ministerial Servicing
・ Ministerial Servicing Performance
・ Performance against Policy Advice Standards (by Vote)
PART D: Non-Departmental Schedules
Schedules of Non-Departmental Activities for the Year Ended 30 June 2005
Schedule of Revenue and Expenditure for the Year Ended 30 June 2005
Schedule of Assets and Liabilities as at 30 June 2005
Schedule of Non-Departmental Revenue for the Year Ended 30 June 2005
Schedule of Non-Departmental Expenditure and Appropriations for the Year Ended 30 June 2005
Schedule of Non-Departmental Commitments as at 30 June 2005
205
Schedule of Non-Departmental Contingent Liabilities as at 30 June 2005
Appendices
Appendix 1: Legislation Fully or Partially Administered in the Ministry of Economic Development as at 30 June 2005
Appendix 2: Reports, Publications and Promotional Material Issued during 2004/2005
Appendix 3: Fees and Expenses Paid to Members of Statutory and Other Bodies Serviced by the Ministry of Economic
Development for the Year Ended 30 June 2005
Appendix 4: Directory of Offices as at 30 June 2005
(出所)経済開発省ウェブサイト http://www.med.govt.nz/templates/MultipageDocumentTOC____10878.aspx
206
•
PARTC 「 目 標 お よ び サ ー ビ ス 業 績 ( Statement of Objectives and Statement of Service
Performance)」は Vote の下位のアウトプットクラスごとに記載されている。例として、Vote“Economic,
Industry and Regional Development”に含まれる以下の2つのアウトプットクラスのうち、
Output Class > Policy Advice > Economic, Industry and Regional Development
Output Class > Policy Advice > Small Business
後者(Small Business)の記載内容(全文)を以下に示す。内容としては、アウトプットの取組み状況が
文章で説明されているほか、年度当初の政策意図説明書で言及していなかったプロジェクトのコスト
が掲載されている。
図表 経済開発省 年次報告書におけるアウトプットクラス“Small business”の記載内容 (1/2)
(出所)経済開発省ウェブサイト http://www.med.govt.nz/templates/MultipageDocumentTOC____10878.aspx
207
図表 経済開発省 年次報告書におけるアウトプットクラス“Small business”の記載内容 (2/2)
(出所)経済開発省ウェブサイト http://www.med.govt.nz/templates/MultipageDocumentTOC____10878.aspx
208
4)業績予算制度の実施状況・評価
(1)政策評価
•
政策評価に関して、以下のような問題点が指摘されている。
●アウトプットとアウトカムの関係が不明確
●購入大臣の利益と責任大臣の利益が相反する
●アウトプットの外部委託に関する市場は現実には存在しない
●業績向上の程度が、省庁やエージェンシーによってばらつきがある
※以上、ニュージーランド財務省による指摘
●アウトプットの達成ばかりが追求され、アウトカムの達成がおろそかになっている
●作成すべきドキュメントが多く、ペーパー・ワークに追われている
※以上、和田(2000)による指摘
●公務員の忠誠心の低下
・
ニュージーランド財務省が、公務員の倫理や忠誠心の低下を招いた点を指摘しているほ
か、和田(2000)は以下の点を指摘している。
○コスト削減ばかりが追求され、長期的な視点に立った組織運営がなされていない
○組織改革が多く、物理的コストおよび(職員の)精神的コストが増大している
○組織が細分化され、組織間のコーディネーションがうまくいっていない
●事後評価がおろそかになっている
・
ニュージーランドのマネジメント制度は、政策提言機能の充実および事前評価に重点が
置かれ、事後評価は軽視されていると指摘されている。また、事後評価には、①政策が計
画通り実施されたか、という執行状況に関する評価と、②政策がアウトカムの実現に貢献し
たか、という効果面の評価の2通りがあるが、①が中心で、②はあまり行われてこなかったと
の指摘もある。この点に関しては、行政サービス委員会や会計検査院も、効果面からの評
価を重視すべき、との報告書を発表している。
・
ニュージーランドの政策評価制度では、目標の設定とそのフォローアップという制度・手
続面の透明性や、アカウンタビリティの確保といった、事前評価に重点が置かれ、評
価結果の予算や人事への活用といった事後評価はあまり行われていない。
(2)評価と予算の連携
•
業績評価のサイクルに、財務省が運用上、行政サービス委員会と同じように関与しており、財務省の
意向が十分に伝わるようなスキームになっている。
•
反面、以下のような問題点が指摘されている。
●予算編成に、業績評価の結果が考慮されていない
・
業績評価システムの中で、財務省が関与する機会は設定されているが、実際には、業績
評価の結果によって予算編成が行われているわけではない。
・
財務省は業績評価システムに制度的にも運用上も十分関与が保証されているが、予算編
成の流れが業績評価システム、その手続等により左右されるような制度にはなっていな
い。
209
・
政策評価「結果」そのものを予算額に単純に反映することはない、とのことである。例えば、
重要な「目標」を掲げれば予算は増えるだろうし、施策が成功すれば良い「結果」を得るが、
逆に予算額は徐々に減らされることになる、とのこと。
・
政策評価と予算とは、実際には明確にリンクしているわけではない。政策評価は、あくまで
説明責任と透明性の向上のために行うものであり、予算への反映とは別の問題ととらえら
れている。
●予算はアウトプット・クラス単位、目標はアウトプット単位のため、一対一対応していない
・
財務省が予算編成を行う際、その予算折衝の中で、各施策の目標体系上の位置づけは
議論されるが、中目標の区分と予算区分が一対一対応していない(予算はアウトプットクラ
ス単位、目標はアウトプット単位)ため、政策評価の結果を単純に予算額に反映させること
ができない。
・
予算が措置される単位(アウトプット・クラス)とアウトカムとの対応関係は一対一ではない。
予算書上、一応の対応関係の表が付されているが、1つのアウトカムが複数のアウトプット
クラスと対応していたり、1つのアウトプットクラスに複数のアウトカムが対応している場合も
ある。
●政府の戦略的な政策方針と予算編成のリンクが弱い(ニュージーランド財務省の指摘)
210
2.政策評価と内部管理(人材マネジメント)の連携
1)制度
•
政府部門の人事制度は 1988 年政府部門法により、大きな改革がなされた。
○省庁最高責任者の呼称の変更
各省庁の最高責任者の呼称が、「permanent head」から、民間企業と同じ「チーフ・エグゼク
ティブ(chief executiive)」に変更された。
○省庁最高責任者の公募
チーフ・エグゼクティブは、行政サービス委員長と雇用契約を締結することとされた。適切な
人材を確保するため、チーフ・エグゼクティブの採用は、省庁の内外から公募される。人材
募集の際は、オーストラリア、カナダ、イギリスといった外国でも宣伝される。
○省庁最高責任者の任期・給与の変更
業績達成へのインセンティブ(及び制裁)として、チーフ・エグゼクティブの任期は、従来は
限定されていなかったが、5年以下の雇用契約(行政サービス委員長と締結)によるものとさ
れ、業績によって3年まで延長可能とされた。また、給与額も改革以前に比べて引き上げら
れ、さらに、業績によってはボーナスが支給されることとなった。
○省庁最高責任者の権限強化
各省庁の人材管理に関する権限が、行政サービス委員会から各省庁のチーフ・エグゼクテ
ィブに委譲された。チーフ・エグゼクティブには、必要な人材を自由に採用し、省の給与体
系を決定する権限が与えられた。これにより、業績給など、業績達成志向の人事制度が可
能となった。
•
ニュージーランドの政策評価制度のポイントは、大臣と省庁の最高責任者であるチーフ・エグゼクテ
ィブ(chief executive)との関係において、以下のような仕組みを導入したことにある。
①業績明示
大臣がチーフ・エグゼクティブに対して、達成してもらいたい業績(performance)を明示す
る。
②権限委譲
チーフ・エグゼクティブには、指示された業績を確実に達成できるように、業績の達成に必
要な「ヒト(人事)」「モノ(設備)」「カネ(予算)」などのインプットに関する権限が付与されてい
る。人材の採用や、省内の組織体制はチーフ・エグゼクティブの権限であるし、予算も、「人
件費」「需用費」といったインプット単位ではなく、アウトプット単位で付けられるので、その範
囲内で自由に使い方を決めることができる43。
③インセンティブ・制裁
チーフ・エグゼクティブが業績の達成を目指して効果的に仕事をするように、さまざまなイン
センティブが付与される。チーフ・エグゼクティブは雇用契約により期間を限定して雇用され
ており、契約の延長は業績の良否によって決定される。給与も業績給となっている。また、
「発生主義会計」や「アウトプット予算」もインセンティブの 1 つと考えられている。
④業績報告
チーフ・エグゼクティブは、指示された業績を達成できたかどうかを大臣に報告する。
•
全く省庁に勤務したことのない人物がチーフ・エグゼクティブに採用されるケースは少なく、複数の省
庁にわたって経験を積んだ後、ある省庁のチーフ・エグゼクティブに就任するケースが多い。カナダ
やオーストラリアといった外国人がチーフ・エグゼクティブに採用されたケースもある。チーフ・エグゼ
43
改革前、人事・組織・財務等に関する種々の権限は行政サービス委員会や財務省といった中枢省庁が握っていたが、
改革に伴い、各省庁のチーフ・エグゼクティブに大幅に移譲された。
211
クティブの給与は、引き上げられたとはいえ、民間企業の相当職とは依然として格差があると言われ
ている。
•
一般職員の採用も、チーフ・エグゼクティブと同様に、組織の内外からの公募で行われることが一般
的である。ポストに空きが生じた際や、新しい業務に対応するためポストを新設する際は、新聞の求
人広告等で募集される。必要な時に、必要な職に対して必要な人材を採用する仕組みとなっており、
民間企業と全く変わらない。
2)実施状況・評価
•
業績評価の結果は、チーフ・エグゼクティブに対する人事評価に反映されることとなるが、実際には
顕著な結果主義の事例(任期途中の解雇など)はない。
•
ニュージーランドの政策評価制度では、目標の設定とそのフォローアップという制度・手続面の透
明性や、アカウンタビリティの確保といった、事前評価に重点が置かれ、評価結果の予算や人
事への活用といった事後評価はあまり行われていない。
212
参考資料(ニュージーランド)
■ニュージーランドにおける行財政改革の概要
•
1980 年代初頭まで、ニュージーランドは先進国の中でも最も政府による規制の多い国だった。
•
1984 年に政権交代により労働党政権が誕生すると、財務大臣のロジャー・ダグラスを中心に、各種
改革が断行された(ロジャーノミクス)。これに始まる一連の行財政改革は、ニューパブリックマネジメ
ント(NPM)におけるニュージーランドモデルと呼ばれている。
図表 ニュージーランドにおける行財政改革の経緯
労働党政権
1987 年 国有企業法(State-Owned Enterprises Act)
・ 政府が従来行ってきた生産活動・事業部門を省庁から切り離し、国を株主とする株式会社
化する改革。目的は、当該業界の規制緩和をして他企業の参入を促した上で、将来的に
は民営化を行うこと。
1988 年 政府部門法(State Sector Act)
・ 各省庁の主に組織・人事面における改革。
1989 年 新財政法(Public Finance Act)
・ 財務面における改革。世界で初めて、政府部門の財務諸表(発生主義ベース)が作成され
ることになった。
1989 年 地方自治法(Local Government Act)改正
・ 地方自治体の改革。
国民党政権
1994 年 財政責任法(Fiscal Responsibility Act)
・ 財政に関する様々な予測情報の公表を政府に義務付け、財務情報の透明化を図ることに
より、健全な財政運営を実現しようとするもの。
労働党政権
1999 年 国有企業の民営化の停止を宣言
・ 政府が民営化を推進した最大の理由は、資産を売却することにより政府負債を返済するこ
とにあった。しかし、民営化の際に外国企業の参入も積極的に認めたことから、国有企業の
多くが外国資本の手に渡ってしまった。このことは国民の大きな不満を買ったため、現労働
党政権(1999 年~)は、事業の効率化をもたらす「国有企業化」は良いが、国民の所有を失
わせる「民営化」はしないことを宣言した。
•
行政と立法の関係は、日本と同じ議院内閣制。国会は一院制。現在では連立政権が通常。
ニュージーランドにおける NPM の基本的な考え方(ニュージーランドモデル)
・
NPM におけるニュージーランドモデルは、①公共選択理論(Public Choice Theory)、②エージェ
ンシー理論(Agency Theory)という2つの考え方がベースとなっている。
①公共選択理論(Public Choice Theory)
政治・行政の参加者である政治家、官僚、利益集団、有権者等はみな自己利益を最大化するよう
行動するため、政府の規模は必要以上に拡大する。このため、できるだけ政府の活動範囲を限
定することが望ましい、という考え方。これにより、省庁組織における政策立案機能とサービス提供
機能の分離、国有企業の民営化等が実施された。
②エージェンシー理論(Agency Theory)
社会はすべて、依頼人(principal)と代理人(agent)との契約関係によって成り立っているとする考
え方。ニュージーランドでは、大臣と省庁との関係もエージェンシー関係ととらえている。
213
行政組織の構成
・
ニュージーランドにおける公共部門の構造は以下のとおりである。
図表 ニュージーランドにおける公共部門の分類(2004 年 6 月現在)44
公共部門
国家部門
行政府
●国家部門法上の省庁(35)
●国家部門法上の「省庁」ではないが、財政法上「省庁」として扱われる機関
(6)
●クラウン・エンティティ(148)
●国有企業(17)
●議会附属機関(2)
●分類されない国家部門の機関(2)
●地方公共団体
(出所)平井(2004.6)
・
「クラウン・エンティティ」(Crown entities)とは、公的組織(政府が所有する組織)のうち、省庁と国
有企業を除いたものを指す。クラウン・エンティティは 1989 年新財政法で定義され、政府の財務
諸表に含めることとされている。国立病院、国立大学、公正取引委員会など様々な組織がこれに
含まれる。
・
地方自治体は、広域自治体(Regional Councils)と基礎自治体(Territorial Authorities)の2層構
造。広域自治体の主要業務は、環境保護、防災、地域公共交通機関管理等であり、基礎自治体
の主要業務は、都市計画、道路、上下水道、ごみ等。これらの分野以外の業務は、基本的に国
の責任分野。
省庁について
・
1986 年国有企業法以来、大規模な省庁の再編が行われた。ニュージーランドでは、「合併」では
なく、「1機能1組織」を原則に、「政策提言」や「サービス提供」などの機能別に「分割」する方向で
再編が行われた。これは、政策提言をする省庁がサービス提供部門を抱えていると、現場の既得
権益を擁護しようと、中立的な政策提言ができなくなるおそれがある45と考えられたため。
44
45
行政サービス委員会ウェブサイト(http://www.ssc.govt.nz)に掲載。
この問題は、「プロバイダー・キャプチャー」(provider capture:サービス提供者による取り込み)と呼ばれている。
214
図表 ニュージーランド運輸省の組織改革
1980年代前半、NZ運輸省には約4300人の職員がいたが、80年代後半から90年
代前半にかけて断続的に組織改革が行われ、最終的には次のような形となった。
旧運輸省 (4500人)
新運輸省 (政策提言等) (60人)
クラウン・エンティティ (航空分野の規制・監視)
クラウン・エンティティ (陸上分野の規制・監視)
クラウン・エンティティ (海上分野の規制・監視)
クラウン・エンティティ (事故調査)
クラウン・エンティティ (国道管理) [CE 合計700人]
国有企業 (航空管制)
国有企業 (気象予報) [企業合計1400人]
他省庁への業務の移管 (道路交通規制等) (1500人)
民営化 (自動車運転手の教育等) (60人)
自然退職 (500人)
(出所)財務総研(2001)p.86
・
現在、省庁は約 40 あり、規模の小さい省庁が多い。90 年代半ばには、職員数が 100 名に満たな
い省庁は 10 数個で、3000 名以上の職員を抱える省庁は、国税法、社会福祉省、矯正庁の3つの
み46。
・
各省庁では、政策提言を行う専門家として、「政策アナリスト(policy analyst)」と呼ばれるスタッフ
を配置。
46
和田(2000.7)によると、一般に「ministry」は政策提言を主要業務とする省庁に、「department」はその他の業務も行う省
庁に用いられる傾向があるとのことである。本稿では、和田(2000.7)にならい、ministry を省、department を庁と訳してい
る。
215
Ⅳ オーストラリアにおける政策評価と予算の連携
1.業績予算制度の概要
•
オーストラリアにおいては、政策評価の体系と予算の体系が一体のものとして運営されていることか
ら、ここでは両者を明確に分けずに整理している。
1)業績予算導入の背景
•
オーストラリアでは、1980 年代半ばから、イギリスやニュージーランドと同じく、行財政改革に力を入
れてきたが、その中でも、業績評価システムの確立、業績評価と予算との連動に特に力点が置かれ
てきた。
•
オーストラリアの業績評価制度は、①一貫してアウトカムを重視していること(ニュージーランドはアウ
トプット重視)、②業績評価と予算編成を1つの枠組みで行っていること、の 2 点が特徴として挙げられ
る。
•
1985 年に「プログラム管理予算(PMB)」と呼ばれる業績予算制度が導入された。これは、現在導入
されている AOOF(後述)と同じく業績評価と予算とを1つの枠組みで実施しようとするものだったが、
あくまで「インプット」を単位として測定していたため、設定される目的と、実施される事業、配分される
予算額の間の関連付けが不明確という問題があり、廃止されるに至っている。
図表 PMB の概要
・ PMB は、以下のプロセスを通じて、事業の目的とそれに対するインプット(予算投入額)、目的達成に対
する効果と効率を明らかにしようとする仕組みである。
1)各省庁ごとにプログラム(大項目)-サブ・プログラム(項目)からなる事業体系を構築。
2)各サブ・プログラムごとに達成すべき目的と具体的な活動内容、達成すべき成果、その達成度を
測る指標を設定するとともに、それぞれの予算配分額を提示。
3)各省庁は、各事業の実施・達成状況を報告するとともに、目的の達成に対する当該事業の有効
性、効率性等を評価・報告
・ PMB には、官僚の意識を、予算配分額の多寡だけではなく、結果として達成される「効果」に目を向け
させた、という意義もあったが、①達成されるべき目的と実施される事業、更に事業に配分される予算
額との間の関連付けが不明確、②目的の達成度についての情報が不明確といった問題点があった。
2)業績予算制度の全体像
(1)政策評価
•
オーストラリア連邦政府の業績予算制度は「発生主義に基づくアウトカム・アウトプット・フレームワー
ク(Accrual-based Outcomes and Outputs Framework:AOOF)」と呼ばれ、1999-2000 年度予算から
全省庁に導入されている。
•
AOOF は、行政の活動の目的(アウトカム)と、その達成に必要な行政サービス(アウトプット)を体系
化した上で、アウトカム・アウトプットごとに予算配分を行う仕組みであり、政策評価制度と予算制度が
一体化したものと言える。
•
AOOF では、予算と評価の単位が一致しており、予算から決算に至るまで同じフォーマットで財務・会
計情報が提供される。
216
(2)予算
•
AOOF の枠組みにおけるオーストラリアの予算は、「ポートフォリオ予算(Portfolio Budgeting)」と呼ば
れ、大臣所管分野(portfolio)ごとに策定される。各大臣は、所管する省庁(本省及び外局)ごとに、
それぞれのアウトカム、アウトプット、省庁管理項目を体系的に示し、個々のアウトカムに対応した省
庁管理支出及びアウトプットのコストの見積り、業績指標(質・量・価格)を明確にして予算を要求する。
歳出予算法(Appropriation Bills)上は、アウトカムごとに予算配分される(アウトカム予算)。
(注)連邦政府の支出には、各省庁のコントロール下にある「省庁裁量項目」と、連邦政府のコントロール
下にある「省庁管理項目」があり、アウトプット目標は省庁裁量項目に関してのみ設定される。
図表 省庁裁量項目と、省庁管理項目の違い
●省庁裁量項目(Departmental Items)
・ 各省庁のコントロール下に置かれている支出(職員の給与、事務管理経費等)。
・ 予算執行にあたり、各政府機関は、同一アウトカム内ならば、アウトプット間の資金移動や、省庁管理項目
下でのプログラム間の資金移動は、大臣と合意の上で可能となっている。
・ 連邦政府総支出の約2~3割程度。
●省庁管理項目(Administered Items)
・ 連邦政府のコントロール下にあり、その支出が法律に基づいて行われるもの(社会保障給付、州交付金、
補助金等)。
・ 支出が法律に規定されているため、省庁事務局で額を変更することができない。
・ 連邦政府総支出の約7~8割程度。
•
AOOF では、各アウトカムに対して省庁裁量項目のアウトプット及び省庁管理項目がひもづけられ、
各アウトプットごとに、アウトカム達成に必要な水準が、「質」「量」「評価額」の観点から定量的に示さ
れる。その評価額をアウトカムごとに合計したものが、そのアウトカム達成に必要な予算額となり、議
会での議決対象となっている。
•
アウトプット及び省庁管理項目の内容、質、量、評価額は、各省庁事務局と大臣との間で協議して決
定する。アウトプットの提供に対する責任は、各省庁事務局が負う。
•
大臣は、アウトカム達成のため、必要に応じて、所管する省庁事務局以外の省庁、更には民間事業
者から、同種のサービスを購入することが可能。(この場合、大臣が購入した価格がアウトプットの評
価額となる。)
図表 他省庁からの行政サービス購入の例
1999-2000 年度の保健高齢福祉省(Department of Health and Aged Care)の予算説明書にお
いて、同省の 10 件のアウトカムのうち「アウトカム8 高齢者の生活の質的向上」に寄与するア
ウトプット(外部委託・資金管理)の一つとして、「住み込みの老人介護を必要とする軍の年金
生 活 者 の 所 得 状 況 に 関 す る 情 報 提 供 」 と い う サ ー ビ ス を 、 退 役 軍 人 省 (Department of
Veterans’Affairs)から 25 万 6 千オーストラリアドルで購入することとしている。
(出所)財務省(2000)p.84
•
各省庁事務局は、アウトプットに係るコストを推計した上で、競合する省庁・民間事業者と比較し、適
切な価格設定を行うことが必要となる。このため、民間と同一の会計方式に準拠してコストを測定す
ることが必要であり、発生主義会計が導入された。そして、アウトプットの評価額は、人件費や物件費
だけでなく、減価償却費などの非現金項目も含めたフルコストで算定される。
•
実際の予算も、この金額が配賦されるため、このため、各政府機関は一定の内部資金を有すること
217
になるが、この使用については各機関に一定の裁量が認められている。(ただし、2003 年時点で、イ
ンプット価格に戻すとの情報あり。)
•
発生主義予算の下における現金賦与の方法には、以下の2通りが存在する。
①非現金項目(減価償却費等)も含んだ、アウトプットのフルコストに対して現金を賦与する方
法(ニュージーランド式)
②発生主義ベースの予算額を議決しつつも、実際の現金交付は、キャッシュフロー予測から
求められる必要現金額に対して行う方法(英国式)
オーストラリアでは、非現金項目をも含む発生主義ベースの予算を策定しつつ、法的には、当該予
算額に対して現金を賦与する方法を採っている。
図表 アウトカム・アウトプット体系の予算説明書
(予算行政管理ポートフォリオの例)
予算行政管理大臣
連邦補助金委員会
予算行政管理省
選挙管理委員会
略
略
資産売却・情報技術
外部委託期間
連邦公務員
退職年金管理機関
略
【アウトカム3】
議会を効率的に
機能させること
略
【アウトカム2】
政府運営の
効率化と改善
略
略
【アウトプット及び省庁管理項目のアウトカム達成への貢献指標】
○予算書類の有益性と予算決定のための説明というアウトプッ トが相手に優
秀又は平均以上と評価されることによってアウトカム達成に貢献する。
○省庁管理支出は少額のため、アウトカムに特別な貢献はしない。
アウトプット
1.1.1
政府全体の財
務諸表の作成
略
※差額は予算
以外からの収
入で補われる
【アウトカム1】
接続可能な財政
アウトプット
1.1.2
政府全体の予算
面での助言
アウトプット
1.1.3
アウトプット・アウトカム体
系に関連する助言
略
アウトプット
グループ1.1
予算
アウトプット
1.1.4
政府企業の所有者として
の政府に対する助言
アウトプット
1.1.5
予算運営
略
質
・大臣への説明の90%が優秀又は平均以
上と評価されるようにする
・大臣からの書簡に対して2日以内に回答
する
・政府企業の報告の90% を毎月第1営業日
に大臣に提出する
量
・大臣に対する説明を440回
・大臣への文書回答を330回
・政府企業の報告書18種類作成
(以下省略)
価格
420万ドル
(うちアウトプット予算397万豪ドル)
省庁管理支出 55万豪ドル
質
・当初の将来見積りと決算結果との誤差を
1%以内にする
・財務原案と決算結果との結果を0.5%以
内にする
(途中省略)
・大臣への説明の90%が優秀又は平均以
上と評価されるようにする
・大臣からの書簡に対して2日以内に回答
する
量
・予算書類を11種類作成
・大臣に対する説明を80回
・予算過程での説明を40回
・大臣への文書回答を200回
(以下省略)
価格
883万ドル
(うちアウトプット予算839万豪ドル)
【アウトカム1の評価方法】
予算過程における利害関係者からのフィードバックが中心。特に、公会計・監査共同委員会と上院立法委員会を含む議会
の委員会の論評を重視。他省庁への助言に関して は最高財務責任者フォーラムにより評価される。
【アウトカム1に関する競争入札と民間委託】
システム開発・支援、会計上の助言、スキル開発・研修など5項目で競争入札と民間委託を活用する。2000年度にこれら
のサービスの競争入札を実施し“value for money” を追求し続ける。
(原出所)DOFA, “The Portfolio Budget Statement 2000-2001” により作成
(出所)(財務総研(2001)p.145,146 の図)
218
(3)AOOF のプロセス
・
AOOF は、「戦略策定(Planning)」→「予算配分(Budgeting)」→「報告(Reporting)」というプロセス
で行われる。
①戦略策定(Planning)
•
各大臣は、所管する分野(portfolio)ごとに、いくつかのアウトカム(達成すべき目的)と、その達成に
必要な、省庁裁量項目に関するアウトプットおよび省庁管理項目の関係を明示する。
•
アウトカムは、大臣が、連邦政府全体として到達すべき政策目標などを踏まえつつ設定する。大
臣はアウトカムの設定と達成について、議会及び国民に責任を負っている。これに対し、省庁(チ
ーフ・エグゼクティブを筆頭とする省庁事務局)は、アウトカムの達成に必要なアウトプットを適切に
提供することについて責任を負っている。
•
アウトカム達成までの期間や、その達成に必要なアウトプットの範囲(単一省庁か、複数省庁か)
は自由に設定可能とされている。
•
アウトプットは非常に多岐にわたるので、いくつかのグループ(アウトプット・グループ)に整理され
て示される。
②予算配分(Budgeting)
•
アウトプット及び省庁管理項目ごとに、アウトカムを達成するために必要な水準を、「質」「量」「価
格」の観点から定量的に明示する。各アウトプットの評価額および省庁管理項目の支出額を、アウ
トカムごとに合計したものが、そのアウトカム達成に必要な予算額となる。歳出予算法
(appropriation bills)上、アウトカムごとに予算配分される(アウトカム予算)。
•
アウトプット及び省庁管理項目の内容、質、量、価格は、各省庁事務局と大臣との間で協議して決
定する。コストを優先するか、サービスの質を考慮するか等の決定は、あくまで大臣等の意思決定
権者にまかされる。AOOF はそれに対して十分な情報を提供する役割を担っている。
•
オーストラリアでは、ポートフォリオ予算書で予測財務諸表と業績目標が提示され、年次報告書で
決算財務諸表と業績報告が示される、といったように、財務情報と政策評価情報の提示が同一の
サイクルのもと、実施されている。また、政策評価の単位(アウトカム・アウトプット)と予算の単位を
一致させていることからも、財務情報と政策評価情報との間を密接にリンクさせていると言える。
•
予算編成のスケジュールを以下に示す。まず、各省庁事務局は、アウトプットの産出に要するコス
トを発生主義に基づいて見積り、アウトカム単位で合計したものを、省庁アウトプット(Departmental
Output)に係る支出とし、省庁管理項目に係る支出とあわせて、予算管理省に提出する。そして、
予算管理省と各省庁との間で、コスト等の見積りが正確に行われているか(社会経済情勢の変化
による変動リスクを考慮しているか、等)の確認が行われた上、閣僚委員会である「歳出検討委員
会(Expenditure Review Committee)」で検討が行われた後、議会に諮られ、正式決定となる。
219
図表 予算策定プロセス
10~12 月 予算編成方針の決定
12~1 月 予算要求書の作成
2 月 予算管理省による確認
3~4 月 歳出検討委員会での検討
5~8 月 予算の提出と議決
※会計年度は 7 月~翌年6月。
図表 オーストラリアの予算編成スケジュール
各省庁
予算行政管理省
財務省
首相・内閣府
10月
大 臣
要求書簡
首 相
新規政策・削減政策の提案
及び予算への影響額を提示
財 政 戦 略 の 検 討
現行予算の展望、予算年度以降の経済成
長見通しと政府財政収支見通し等を考慮し
つつ、健全財政運営原則に則した中期的
な財政戦略を検討
11月
上 級 大 臣 会 合
歳出の限度、予算の優先分野といった予算編成の基本的
な方針に関する事項を検討
12月
大 臣
1月
首 相
予算年度とその後
3年間の将来見積
りを作成
事務局
2月
教育方針に関する書簡
予算要求書
事務局
予算見積りの確認作業
予算額の見積りが正確に行われているかを双方
の事務局間で確認作業を実施
3月
歳 出 検 討 委 員 会
支出額に係るものだけでなく支出削減に係るものも含め各省庁
の新規施策を中心に実質的な検討・議論を実施
4月
5月
予
算
閣
政府 予 算案 の 議会 提出 予 算 演 説 (出所)財務総研(2001)p.150
220
議
③報告(Reporting)
•
会計年度終了後、アウトカム及びアウトプットの達成水準を整理し、実績値と目標値を比較した
「年次報告書」(Annual Report)を作成し、議会に報告・公表する。
•
年次報告書では、財務諸表に加え、ポートフォリオ予算書で示されたアウトカム・アウトプットの業
績目標が実績と対比されて示される。
図表 アウトカム・アウトプット体系の概要図
アウトカム
1
アウトプット
グループ
1.1
アウトプット
グループ
1.1
省庁管理支出
アウト
プット
1.1.2
アウト
プット
1.1.1
アウト
プット
1.1.2
アウト
プット
1.1.1
業績指標
質
量
価格
業績指標
質
量
価格
業績指標
質
量
価格
業績指標
質
量
価格
(原出所)DOFA,“The Outcomes and Outputs Framework Guidance Document”
(出所)財務総研(2001)p.143
221
(4)業績予算の主要遂行機関
•
連邦政府予算は、財務省と予算管理省が共同して責任を負っている。財務省は、財政運営及び予
算編成のマクロ面(予算フレームや中長期的な財政戦略等)を担当している。これに対し、予算管理
省はミクロ面(各省庁の予算見積り、業績評価、発生主義会計等)を担当している。このため、「予算
公正憲章」は財務省、AOOF は予算管理省の管轄である。
•
予算見積りの計算は、AOOF の導入にあわせて、予算管理省から各省庁に権限が移譲された。予
算管理省は、見積りのチェックに専念する。
•
予算管理省の役割は以下のとおりである。
○中期的・包括的な財政運営の観点から助言を行う。
○アウトプットごとに発生主義に基づいて計算されたコスト等の見積りのチェックを行う。
○アウトカムへの貢献という点から見たアウトプットの妥当性、アウトプット間での資源配分の
妥当性など、結果志向の観点に立って、過去の実績も踏まえつつ助言を行う。
•
予算管理省では、各機関の新規施策の導入が「予算支出将来見積り(Forward Estimates)」で示さ
れた支出の水準にどの程度の増大圧力を与えるかを勘案して、削減すべき額、あるいは新規支出と
同額の削減を行うべきこと等の助言を行っている。
•
各省庁の繰越が発生すれば、次年度の予算折衝において、当年度の余剰額の繰越使用を認める
代わりに、次年度予算額を削減して相殺するよう省庁に求めることが多いとのこと。
222
3)ドキュメントの詳細
•
オーストラリア連邦政府の政策評価関連ドキュメントについて、産業・観光・資源省(Department of
Industry, Tourism and Resources)の「戦略計画」、「年次報告書」、産業・観光・資源ポートフォリオ
(the Industry, Tourism and Resources Portfolio)の「ポートフォリオ予算書」を例に、その構成および
内容について分析を行う。
①戦略計画(Strategic Plan)
•
産業・観光・資源省の戦略計画は全7ページと、アメリカに比べ、非常にコンパクトなものとなってい
る。以下のとおり、省庁のビジョン、ミッション、戦略的優先事項が簡潔に記載されているだけで、ゴ
ールや目標のようなものは特に示されていない。
図表 産業・観光・資源省戦略計画“Strategic Plan 2005-08”(2005 年 9 月発表)からの抜粋
ビジョン(Vision)
The Department’s vision is increased prosperity for all Australians through internationally competitive and
sustainable business.
ミッション(Mission)
The Department achieves its vision by:
・ enhancing the development of internationally competitive and sustainable business through excellence in
policy formulation and implementation;
・ excelling in business program and service delivery; and
・ remaining a respected source of knowledge through our understanding of the business environment and
business networks.
戦略的優先事項(Strategic Priorities for the Department)
・ Implementation of commitments from the Government’s last term together with commitments made during
the last election
・ Securing Australia’s energy future
・ Capitalising on Australia’s resources
・ Measurable reduction in compliance burden
・ Commercialisation, collaboration, and investment in innovation
・ A sustainable pharmaceuticals industry for the future
・ Venture capital
・ Skills development to meet business needs
・ International engagement
・ Industry focus on whole-of-government issues
(出所)産業・観光・資源省ウェブサイト
( http://www.industry.gov.au/content/itrinternet/cmscontent.cfm?objectid=37B1C26D-65BF-4956-BEEFF4396
B58C86D&indexPages=/content/sitemap.cfm?objectid=48A31464-20E0-68D8-EDF86C32515800D4)
223
②ポートフォリオ予算書(Portfolio Budget Submission)
•
AOOF の下では、各省庁は、支出の見積額とアウトプット・アウトカム体系を盛り込んだ「ポートフォリ
オ予算書(Portfolio Budget Submission)」を予算・管理省に提出することが求められている。ポート
フォリオ予算書は、予算関連書類として、歳出予算法案とあわせて議会に提出される。
図表 連邦政府予算(Federal Budget 2006-07)の構成
Budget Overview
Summary of the Government's budget position,
economic forecasts and budget priorities
Budget Speech
Transcript of the Treasurer's Budget night Speech
Budget at a Glance
An overview of key budget aggregates and the
Government's budget priorities
Budget Paper No. 1
Details the economic and fiscal outlook, fiscal strategy,
risks to the fiscal outlook and historical data
Budget Paper No. 2
Details the expense, revenue and capital measures
Budget Paper No. 3
Details the Government's financial relations with State,
Territory and local governments
Budget Paper No. 4
Details Government agency resource requirements
(including the Appropriation Bills)
Portfolio Budget Statements ※以下に抜粋
Details outcomes and outputs for each portfolio and
identifies resource and performance requirements
Appropriation Bills
The 2006‑07 Budget is presented to the Australian
Parliament in the form of Appropriation Bills
Ministerial Statements
Statements on Australia's 2006‑07 overseas aid
program, Australia's agriculture, fisheries and forestry
sectors and continuing tax reform.
Mid‑Year Economic and Fiscal Outlook
Updated information on the economic and fiscal outlook
and policy decisions taken since the 2006‑07 Budget
Portfolio Additional Estimates Statements
Details
additional
resource
and
performance
requirements since the 2006‑07 Budget
Final Budget Outcome
Details the fiscal outcome for the 2006‑07 financial year
概説
政府財政状態の要約、経済予想、予算優先事項
予算説明
大臣の発表内容
予算の概観
主要予算額および優先事項
予算書1
経済・財政見通し、財政戦略、財政予測へのリスク、実績
データ
予算書 2
歳出、歳入、資本
予算書 3
州・地方政府との財政上の関係
予算書 4
各省庁の予算要求(歳出法を含む)
ポートフォリオ予算書
各ポートフォリオについてのアウトカムとアウトプットの詳
細、財源および達成すべき業績水準
歳出法
2006-2007 年予算は歳出法として議会に提出されてい
る。
省庁による説明
2006-2007 年の対外援助プログラム、国内の農業・漁業・
林業、税制改革の継続
中間経済・財政予測
経済・財政状況に関する最新情報、2006-2007 年予算
以降の政策決定
追加見積
2006-2007 予算案以降の追加予算と達成要求
最終予算・アウトカム
2006-2007 会計年度の会計上のアウトカム
(出所)連邦政府ウェブサイト(http://www.budget.gov.au/)
224
•
産業・観光・資源ポートフォリオのポートフォリオ予算書(2006 年 5 月発表)は全 216 ページに及ぶ。
まずはじめに、“Portfolio Overview”としてポートフォリオ全体の説明があり、その後に、“Agency
Budget Statements”として当該ポートフォリオに属する政府機関ごとの記述がある。同ポートフォリ
オに属する機関は以下の5つである。
○産業・観光・資源省(the Department of Industry, Tourism and Resources)
○オーストラリア知的財産局(IP Australia)
○オーストラリア地球科学研究所(Geoscience Australia)
○海洋石油安全局(the National Offshore Petroleum Safety Authority)
○オーストラリア観光局(Tourism Australia)
図表 産業・観光・資源ポートフォリオの全体像
(出所)産業・観光・資源省ウェブサイト
( http://www.industry.gov.au/content/itrinternet/cmscontent.cfm?objectid=D4BBFF3B-C1D7-C9F5-9CEA
4BEE0D7598BE&CFID=23045494&CFTOKEN=18050792)
225
•
以下では、“Agency Budget Statements”における産業・観光・資源省部分について、分析を行う。
当該部分の目次構成は以下のとおりである。
図表 産業・観光・資源ポートフォリオ予算書における産業・観光・資源省部分の目次構成
Section 1: Overview
1.1 Agency Outcomes and Output Groups
Section 2: Resources for 2006-07
2.1 Appropriations and other resources
2.2 2006-07 Budget measures
2.3 Other resources available to be used
2.4 Movement of administered funds from 2005-06 to 2006-07
2.5 Special appropriations
2.6 Special accounts
2.7 Administered capital and departmental equity injections and loans
Section 3: Outcomes
3.1 Summary of outcomes and contribution to outcomes
3.2 Outcomes — departmental and administered
3.3 Outcomes and performance
Section 4: Other reporting requirements
4.1 Purchaser-provider arrangements
4.2 Cost recovery arrangements
4.3 Australian Government Indigenous Expenditure (AGIE)
Section 5: Budgeted financial statements
Analysis of budgeted financial statements
Budgeted financial statements tables
Notes to the financial statements
(出所)産業・観光・資源省ウェブサイト
( http://www.industry.gov.au/content/itrinternet/cmscontent.cfm?objectid=D4BBFF3B-C1D7-C9F5-9CEA
4BEE0D7598BE&CFID=23045494&CFTOKEN=18050792)
226
②-1 セクション1:概要 (Section 1: Overview)
•
セクション1において、産業・観光・資源省に関するアウトカム目標とアウトプットグループ(アウトプ
ット目標の集合体)の対応関係が示されている。同省に関しては、2つのアウトカムが設定され、そ
れぞれについて2つないし3つのアウトプットグループが設定されている。
図表 セクション1に示されるアウトカムおよびアウトプットグループの対応表
(出所)産業・観光・資源省ウェブサイト
( http://www.industry.gov.au/content/itrinternet/cmscontent.cfm?objectid=D4BBFF3B-C1D7-C9F5-9CEA
4BEE0D7598BE&CFID=23045494&CFTOKEN=18050792)
227
②-2 セクション2:2006-07 年度リソース (Section 2: Resources for 2006-07)
•
セクション2において、アウトカムごとの予算額が、省庁裁量支出(departmental)、省庁管理支出
(administered)別に示されている。
図表 「セクション2」に示されるアウトカム別 2006-07 年度予算額
(出所)産業・観光・資源省ウェブサイト
( http://www.industry.gov.au/content/itrinternet/cmscontent.cfm?objectid=D4BBFF3B-C1D7-C9F5-9CEA
4BEE0D7598BE&CFID=23045494&CFTOKEN=18050792)
228
②-3 セクション3:アウトカム(Section 3: Outcomes)
•
セクション3において、アウトカム、アウトプットグループおよびコスト(予算額)の関係が体系的に示
されている。
図表 「セクション3」に示されるアウトカム・アウトプット・予算の関係
(出所)産業・観光・資源省ウェブサイト
( http://www.industry.gov.au/content/itrinternet/cmscontent.cfm?objectid=D4BBFF3B-C1D7-C9F5-9CEA
4BEE0D7598BE&CFID=23045494&CFTOKEN=18050792)
229
②-4 セクション 3.3:アウトカムと業績-アウトカム2:リソース
(3.3 Outcomes and performance
•
Outcome 2 resourcing)
セクション 3.3 では、アウトカムごとに、当年度(2005-06 年度)の支出見通しおよび次年度(2006-07
年度)の予算額の詳細が示されている。
図表 「セクション 3.3」に示されるアウトカム 2 に関する予算額
(出所)産業・観光・資源省ウェブサイト
( http://www.industry.gov.au/content/itrinternet/cmscontent.cfm?objectid=D4BBFF3B-C1D7-C9F5-9CEA
4BEE0D7598BE&CFID=23045494&CFTOKEN=18050792)
230
•
セクション 3.3 では、「アウトカムの達成への貢献(Contributions to achievement of Outcome)」とし
て、アウトカムの達成に必要な取組み内容が文章で述べられている。
図表 「セクション 3.3」に示されるアウトカム 2 達成に必要な取組み
(出所)産業・観光・資源省ウェブサイト
( http://www.industry.gov.au/content/itrinternet/cmscontent.cfm?objectid=D4BBFF3B-C1D7-C9F5-9CEA
4BEE0D7598BE&CFID=23045494&CFTOKEN=18050792)
231
•
セクション 3.3 では、「アウトカムの業績情報(Performance information for Outcome)」として、アウト
カムを構成するアウトプットの達成状況を評価するために必要な業績指標が、質(Quality)、量
(Quantity)、価格(Price)について具体的に示されている。
図表 「セクション 3.3」に示されるアウトカム 2 に関する業績情報
(出所)産業・観光・資源省ウェブサイト
( http://www.industry.gov.au/content/itrinternet/cmscontent.cfm?objectid=D4BBFF3B-C1D7-C9F5-9CEA
4BEE0D7598BE&CFID=23045494&CFTOKEN=18050792)
232
③年次報告書
•
産業・観光・資源省 年次報告書(2005 年 10 月発表)は、全 370 ページに及ぶ大部となっている。
•
目次構成は以下のとおりである。アメリカ連邦政府の業績・財務報告書と同様に、業績情報と財務
情報(Financial Statements)があわせて掲載されている。オーストラリアでは、ポートフォリオ予算書
で予測財務諸表と業績目標が提示され、年次報告書で決算財務諸表と業績報告が示される、と
いったように、財務情報と政策評価情報の提示が同一のサイクルのもとで実施されており、財務情
報と政策評価情報とを密接にリンクさせている。
図表 産業・観光・資源省 年次報告書(Annual Report 2004-05)の目次構成
Copyright
Contents
Letter of transmittal
Chapter 1: Secretary's review (pages 1-6)
Chapter 2: Portfolio overview (pages 7-16)
Chapter 3: Outcome 1 performance (pages 17-54)
Chapter 4: Outcome 2 performance (pages 55-66)
Chapter 5: Management & accountability (pages 67-78)
Chapter 6: Geoscience Australia (pages 79-96)
Chapter 7: IP Australia (pages 97-120)
Appendices (pages 121-144)
Financial statements (pages 145-348)
Glossary (pages 349-352)
List of tables (pages 353-356)
A-Z Index (pages 357-370)
(出所)産業・観光・資源省ウェブサイト
( http://www.industry.gov.au/content/itrinternet/cmscontent.cfm?objectid=DCDA8CB1-91E7-C3FC-9620
DDD53374AE44&indexPages=/content/sitemap.cfm?objectid=48A31464-20E0-68D8-EDF86C32515800D4)
233
③-1 第2章:ポートフォリオ概要(Chapter 2: Portfolio overview)
•
第2章において、産業・観光・資源省のポートフォリオに関するアウトカム・アウトプット・コストの体系
図が示されている。
図表 年次報告書に示されるポートフォリオ体系図
(出所)産業・観光・資源省ウェブサイト
(http://www.industry.gov.au/content/itrinternet/cmscontent.cfm?objectid=DCDA8CB1-91E7-C3FC-9620DDD5
3374AE44&indexPages=/content/sitemap.cfm?objectid=48A31464-20E0-68D8-EDF86C32515800D4)
234
③-2 第4章:アウトカム2の業績(Chapter 4: Outcome 2 performance)
•
第3章、第4章では、アウトカムごとに成果が具体的に文章で示されたあとに、アウトプットごとに以下
のような表が示され、業績目標(質・量・コスト)の達成度が整理されている。
図表 年次報告書におけるアウトプット 2.2“Policy Advice”の業績達成度
(出所)産業・観光・資源省ウェブサイト
( http://www.industry.gov.au/content/itrinternet/cmscontent.cfm?objectid=DCDA8CB1-91E7-C3FC-9620DD
D53374AE44&indexPages=/content/sitemap.cfm?objectid=48A31464-20E0-68D8-EDF86C32515800D4)
235
4)政策評価制度の実施状況・評価
•
オーストラリア政府は AOOF の意義として以下の2点を挙げている。
○行政府内部における政策判断・意思決定・業務運営の最適化・効率化
○議会、国民に対する透明性とアカウンタビリティの向上
•
その反面、以下のような問題点も指摘されている。
●情報が集約化されすぎて、不透明になっている
・
ポートフォリオ予算書には、省庁の活動の詳細については示されておらず、財務データも高
度に集約されて掲載されている。このため、議員が必要とする様々な情報を予算書から入手
することが難しく、透明性の面で問題があると言われている。
●膨大な事務作業が発生
・
AOOF によって生み出される膨大な情報に対する処理能力の欠如も問題とされている。
AOOF 導入初年度は、予算管理省の処理能力が追いつかず、アウトプット・グループごとのコ
スト・チェックを行うのがやっとで、アウトプットごとのチェックができなかったと言われている。
●アウトカム目標設定上の種々の問題
・
アウトカム目標に関しては、以下のような批判がある。
○役所の組織構成に基づいて設定されており、必ずしも社会的な目的と一致していない
○一般的過ぎる
○省庁間あるいは省庁内で重複している
○いくつかの省庁はアウトカムを1つしか設定していない 等
●事後的な業績評価が不十分
・
事後的な業績評価について、各省庁の自己評価に過ぎず、第三者機関によるチェックが必
要との指摘がある。
●予算へのフィードバックは行われていない
・ 政策評価情報の予算へのフィードバック(事後評価)は、ほとんど行われていないのが実態と
のことである。
•
予算管理省、財務省が中心となって 2001 年 7 月に取りまとめた「予算見積りの作成の整理に関する
総括」(Review of Budget Estimates Production Arrangements)では、以下の点を指摘している。
○アウトカム、アウトプットの概念整理
○予算管理省、財務省、各省庁間の責任分担の明確化
○各省庁の予算編成、財務管理のための組織上の対応強化
•
さらに、2002 年、議会調査委員会勧告では、以下の点の改善を政府に求めている。
○複数の省庁にまたがるアウトカムの特定と、関係する省庁がどのようにその達成に貢献するのか
を分析すること
○省庁のアウトカムは政府にとっての鍵となる目的を明確に定義すること。省庁管理支出がどのよ
236
うにアウトカムにインパクトを与えるのかを明確にすること
○単一のあるいは少数のアウトカムを規定する省庁は、短期の目標を示す中間的なアウトカムを
導入すること
237
2.政策評価と内部管理(人材マネジメント)の連携
1)人材マネジメントに関する制度状況
•
公務員改革など、財政・予算面以外では首相内閣府が主導的な役割を果たしている。
•
予算・管理省は、見積額のチェックだけでなく、アウトカムとアウトプットの関連、資源配分の妥当性な
どについてもチェックを行う。そして、各省庁の新規施策の導入が、あらかじめ設定された歳出水準
にどの程度の増大圧力を与えるかを勘案し、削減額等の指摘を行う。
•
ニュージーランドと異なり、次官と大臣の間には、直接の雇用関係はなく、アウトプット未達成の場合
の人事・雇用面の取り扱いは制度化されていない。
2)政策評価と人材マネジメントの連携の実態
•
AOOF では、各省庁事務局は、アウトカム達成のために大臣との間で合意したアウトプットの提供に
「責任を負う」とされている。しかし、(ニュージーランドと異なり)省庁チーフ・エグゼクティブの任免は、
首相が首相内閣府(Department of the Prime Minister and Cabinet)の助言を得て行うこととされて
おり、大臣との間に直接の雇用関係はない。このため、アウトプットの達成指標に即して十分な業績
をあげなかった場合でも、大臣は、チーフ・エグゼクティブの任免を行うことができないのが現状であ
る。
238
参考資料(オーストラリア)
■オーストラリアにおける行財政改革の概要
改革の経緯
•
経済的に結びつきの強かった英国の衰退及び EC 加盟、石油危機の発生により、オーストラリア経
済が大幅に悪化。1980 年代以降、自由化、規制緩和を通じて効率性の向上を図る構造改革が実施
された。公的部門においては、1983 年に誕生したホーク労働党政権の下で、一連の行財政改革の
取り組みが進められた。
ホーク労働党政権
1984 年 財務管理改善プログラム(FMIP)を開始
連邦公務員制度改革法を制定
1985 年 プログラム管理・予算(Program Management and Budgeting:PMB)を導入
・ 省庁ごとに、事業の目的とそれに対するインプット(予算投入額)、目的達成に対する
効果と効率を明らかにしようとする仕組み。
1987 年 中央省庁を再編(28 省→16 省に統合)
1988 年 雇用関係法を制定
キーティング労働党政権
1995 年 「国家競争政策(National Competition Policy)」を連邦政府と州政府の間で合意
・ 政府所有企業の独占的な価格設定に対する監視・規制の強化。
ハワード国民党政権
1996 年 「業務改善サイクル(Performance Improvement Cycle)」の実施を各省庁に指示
・ 各省庁自身があらゆる行政活動について、見直し→検証→実施→検証、という4つの
サイクルを通じて業務の再点検を行うもの。
1997 年 「発生主義に基づくアウトカム・アウトプット・フレームワーク(Accrual-based Outcomes and
Outputs Framework:AOOF)」の導入を発表
「財務管理・アカウンタビリティ法」(Financial Management and Accountability Act)を制定
・ 各省庁次官、政府公社・法人等の経営責任者に対し、財務管理権限を委譲するととも
に、会計検査院等への報告を義務付け。
「サービス憲章(Service Charter)制定の原則」を発表
・ 政府各機関に対し、サービスの標準的水準等を規定した「サービス憲章」の制定を促
進
1998 年 「予算公正憲章」(Charter of Budget Honesty Act)の成立
・ 財政政策に関する目標の設定及び定期的な財政報告の実施を義務付けるとともに、
「健全財政運営原則」(The Principles of sound fiscal management)を規定。政府全体
としての財政運営の方向性についての透明性・アカウンタビリティの向上を担保する枠
組み。
・ 「予算公正憲章」で財政支出の総額のコントロールを行い、AOOF でその支出の適正
配分を行うという位置づけ。
競争入札・民間委託政策の指針を発表
1999 年 新「連邦公務員法」(Public Service Act)を制定
・ 公務員の採用や、給与等雇用条件の決定権限を、各省庁の次官に委譲。
1999/2000 年度より、AOOF による予算編成を開始
•
オーストラリアの一連の行財政改革は、英国やニュージーランドの影響を強く受けている。ただし、こ
れらの国の改革モデルをそのまま取り入れるのではなく、オーストラリアの事情に合わせて取り入れ
239
られた。例えば、業績評価の確立には相当力を入れてきたが、市場メカニズムの導入(民営化、民間
委託)には消極的で、1990 年代半ばになってやっと導入されはじめた。
政府の概要
•
中央省庁の中では、財務省(Treasury)、予算管理省(Department of Finance and Administration:
DOFA)、首相内閣府(Department of the Prime Minister and Cabinet)の3省の権限が強い。
•
憲法上、連邦政府権限を限定列挙し、残りを州政府権限としており、連邦政府の権限が最小限にな
るよう意図されている。
240
Ⅴ.フランスにおける政策評価と予算の連携(参考)
1.政策評価制度の概要
1)現状
•
2000 年予算から、財政活動は、次の3つを提供しているかどうかで分類されるようになっていた。
①
direct service
②
social assist
③
support function
• 各々の分野では、目標が数値化されるとともに、それを測定するための業績指標が明らかにされるよう
になっている。
• プログラム目標に対する業績報告は、決算とともに提出される予算管理報告書に記載されている。また
2001 年 8 月に発表された組織法律第 692 号では、予算法案の付属書において、プログラム毎に、コ
スト、達成すべきアウトプット等説明することが規定されている。
・
部局単位で中期の「政策目標」を設定し、それを細分化した部門単位ごとに、年度ごとの「測定指標」お
よびその目標値(向こう 3 年間)を設定。
・
さらに、各部局は予算局の間で今後3年間の予算総額に関する「協約」を締結。協約の中では、政策目
標、測定指標、およびその 3 年後の目標値も明記される。予算総額の枠内の予算配分については、各
部局の長に裁量が委ねられる。
※これは、英国・オーストラリア・ニュージーランドと同様の仕組みだが、協約が非公開であること、協
約で合意された予算総額が議会における予算審議を拘束しえない等の問題も残る。
※ ニュージーランドと異なり、協約違反に対する管理責任を明示的に問う仕組みは採用していない。
あくまで、情報公開(目標と実績の公表)により行政努力を促すのみ。
・
政策評価の導入に際しても、既存の予算書における区分は変更せず、実現性を担保(米国と同様)。こ
のため、測定指標と予算配分との厳密な対応関係は必ずしも確保されない。
2)今後の動向
・
2001 年に「予算法に関する組織法」(Loi organique relative aux lois de finances:LOLF)が改正され、
2006 年度予算からの、目的別予算の導入とプログラムの業績情報の予算法・決算法への記載を法定
化。
241
・
予算項目を大括りの行政目標ごととし、業績評価とリンクさせる
・
予算は、プログラム単位で設定。毎年の予算法では、プログラムごとに予算額、政策目標、評価指標が
明示される。また、予算法とあわせて提出される付属書類(「国の経済社会財政の現状と展望報告書」、
「既定費・新規経費の青書」、「黄書」)の中で、過去の実績、当該年度の目標、数値化された達成指標
が示される。
・
数値目標ごとに予算を貼り付けることはせず、数値はあくまで目標達成を図るための指標として位置づ
けられる。
・
予算は現金主義で作成されるが、それとは別に、発生主義による財務諸表(貸借対照表、損益計算書)
の作成も義務付けられている。ただし、省庁別の財務諸表の作成は求められていない。
・
決算では、予算の消化状況とあわせて、目標の達成状況も示される。
・
プログラムの評価(評価指標が適切だったか、指標の測定手段が適切だったか、役所の中の組織マネ
ジメントが適切か)に関して、各省担当者や財務監査官からなる「プログラム評価委員会」が設置される
予定。
242
2.予算制度の概要
・
フランスにおいては、予算管理運営についてのはっきりした法的枠組みが存在する。予算の策定につ
いては憲法 47 条で定められ、財政法案は準憲法的な位置づけとなっている組織法に従っている。
1)予算・会計・財政の全体像
•
年次予算は中央政府の全ての支出を反映しており、以前は予算外とされていたものの多くが現在は
含まれている。たとえば、かつては郵便年金の歳出などは予算外となっていたが、現在では予算に
編入されるようになっている。
•
フランスにおいては、慢性的な財政赤字が大きな問題となっており、この削減が予算上の大きな課
題となっている。このため国家経済委員会(National Economic Commission)は、毎年スプリングレポ
ートを準備するが、そこでは、過去 2 ヵ年、進行年及び次年度分の分野別に区分した一般政府赤字
を示している。また、これらの期間の債務、支出、税金について連結ポジションも示される。また、これ
らのデータは、予算法とともに秋に公表される経済・財政レポート(Rapport économique, social, et
financier:RESF)において改訂される。
•
フランスは、原則として会計年度末までに、予算年度を含む3ヶ年の財政見通しを公表する。それで
は、一般政府部門の歳入・歳出総額等を示しており、EUの「安定と成長のための合意」要件と整合
性が保たれている。
•
年次予算の付属書である経済・財政レポートでは、財政収支等の主要計数について、過去の結果
情報は記載されている。また全ての公共機関を対象範囲として4ヶ年の中期財政見通し(収入、支出、
収支尻)を示すことが規定されている。
2)予算の策定について
•
スプリング・レポートによって、10 月に提出される予算法に関する基本方針と枠組みがセットされる。
それでは、一般政府の分野別の総計ターゲット(歳入、歳出、収支尻)とともに経済的な文脈も含ま
れる。
•
中期的な財政の持続可能性に関しては、安定化プログラムの中で吟味されている。人口学的な変
化を加味した年金システムの長期持続可能性に関するレビューもなされている。ただし、長期持続
可能性分析は、予算プロセスと機能的に統合されていない。
•
通常国会最終四半期に、翌年度の財政法案の審理と表決のため、国家経済の推移及び公共財政
の基本方針に関する報告書を提示する。中期歳入・歳出見通し等を含むことが規定されている。
•
予算閣議で正式に決定された政府予算案は、10 月の第1火曜日までに議会に提出される。国民議
会の審議(40 日以内)、元老院の審議(20 日以内)を経て、12 月に予算法案は成立する。(フラン
スの会計年度は、1~12 月)
243
3)予算の評価について
•
「安定と成長のための合意」と整合的な財政目標が、予算と財政安定化プログラムのためにセットされる。
それは、ECOFIN(the EU council of economic and financial ministers)によって毎年レビューされてい
る。
•
財政複数年計画では、歳出総額対GDP比の減少が強調されている。目標未達の場合に予算年度以
降の支出を制御するメカニズムは十分に定義されていない。過去の予算執行の状況、想定していた額
と実績額との乖離などは、Budget において比較できるような実績値(数値)の整理が行われているもの
の、それに対する明確な評価はされていない模様である。
244
3.政策評価と予算の連携
・
現状の仕組みにおいては、プログラム目標未達の場合の処置などについて明確な記述はない模様で
ある。また、2006 年度予算からの新制度についても、明確な予算との連携の仕組みは明記されていな
い模様である。
・
制度の導入は 2006 年からであり、まだ実際の運用は始まっていない。もちろん、導入に向けての準備
は進められていると予想されるが、それに伴う具体的な問題点などについては明らかになっていない。
245
Ⅵ.まとめ
1.連携の成功要因・失敗要因分析
1)成功要因
○政府が中長期的な方針に基づいて資源配分を行う仕組みが確立しており、政策レベルで事前評価が
有効に機能している
• イギリスでは、通常の戦略計画にあたる仕組みとして「公的サービス合意」(PSAs)がある。これは、財
務省が、各省庁と、予算の配賦と目標の達成について契約を結び、結果の説明を求める仕組みで
あり、各省庁のトップである大臣たちがコミットメントする形になっている。PSAs では、政府の重点政
策が明確に絞られて示され、内閣レベルの資源配分において、政府としてより優先度の高い分野を
判別するための目安を示す仕組みとして機能している。
○政策枠内での予算配分は、各省庁に裁量範囲が与えられている
• オーストラリアでは、省庁あるいは主要分野ごとの歳出総額を内閣レベルのトップダウンにより先決し、
その枠の中で省庁に資源配分について一定の裁量を与える仕組みとなっている(ポートフォリオ予
算)。各省庁は、新たな予算を要求する場合は、先決された枠(シーリング)の中でスクラップ・アンド・
ビルドが求められる。ただし、複数の省庁を所掌する大臣は、所掌する全体の枠の中での資源配分
について裁量が与えられており、また、予算の繰越や費目間の流用といった予算の弾力的な執行も
可能となっている。
• アメリカでは、議会での予算審議では業績・評価情報はほとんど活用されていないが、省庁内で、あ
るプログラムについて資金を地域別に配賦するような場合に、業績・評価情報が活用されているとの
ことである。
○会計検査院による第三者評価が行われ、評価の客観性を担保している
• 評価の恣意性を排除するためには、第三者が客観的な視点から評価を行う必要がある。アメリカ、イ
ギリス、オーストラリア、ニュージーランドでは、会計検査院が、検査対象を財務情報から業績情報に
拡大している。また、アメリカやイギリスでは、行政機関に対し、問題点を指摘するだけではなく、評
価手法や目標設定の方法に関するベスト・プラクティスのアドバイスも行っている。
2)失敗要因
○目標の単位と予算の単位が一致していないため、政策評価の結果を単純に予算に反映させること(事
後評価)ができない
• 目標の単位と予算の単位が一致していないため、業績情報が予算編成に活用できないケースが多
い。アメリカの GPRA やイギリスの PSAs は、目標の単位と予算の単位が一致していないため、結果を
次の予算編成にフィードバックできない。また、ニュージーランドは「アウトプット予算」を採用している
が、目標がアウトプット単位であるのに対し、予算はアウトプットをまとめたアウトプットクラス単位であ
るため、政策評価の結果を単純に予算額に反映させることができず、業績評価の結果によって予算
編成が行われているわけではない。
246
○アウトプット・アウトカムによる予算のコントロールは現実的には難しい
• オーストラリアは、予算の構造を抜本的に見直し、政策評価の単位(アウトカム・アウトプット)で資源
投入量(予算)を議決する仕組みに改めた。また、ニュージーランドも、アウトプットそのものではない
が、アウトプットをまとめたアウトプットクラス単位で予算を議決している。しかし、両国とも、政策評価
情報の予算へのフィードバック(事後評価)は、ほとんど行われていないのが実態である。この理由と
しては、アウトカムやアウトプットは、①分野によっては測定が難しいこと、②予算以外の変動要因が
大きいためコントロールするのが難しいこと、③目標が変更されると追跡が難しいこと等によるものと
考えられる。
• アメリカの連邦議会でも、業績予算は従来の予算システムに比べ、不正やごまかしに対して脆弱で
あるとして、従来の予算体系を支持している。
○財政当局や議会の意識改革がなされていない
• トップダウンによって予算と政策評価の連携を進めようとしても、予算体系や当事者(財政当局、議
会等)の意識・行動様式が変わっていないため、業績情報が活用されていないケースも多い。
• 例えば、アメリカの連邦政府予算は、行政府が作成した予算案(大統領予算教書)を議会で審議し
てはじめて成立する。このため、省庁が予算改革を行い、政策目標ベースの予算案を作成しても、
議会がこれを拒否した場合、その予算は成立しない。実際に、航空宇宙局(NASA)、退役軍人省、
法務省は、議決単位である歳出項目(appropriation accounts)の変更にまで踏み込んだ予算案を議
会に提出したが、議会が認めたのは航空宇宙局だけであった。
• また、イギリス、ニュージーランド、オーストラリアといった NPM 先進国であっても、財政当局の意識改
革が進まず、伝統的なインプット・コントロールを簡単には手放さないとのことである。
2.政策評価と予算との連携のまとめと我が国への示唆
• 各国の状況を見ると、業績・評価情報を活用した資源配分は、実際にサービスを提供する現場に近
いほど行いやすく、政策や施策といった上位レベルになるほど難しくなると言える。
• わが国で業績・評価情報の活用を進める場合、①政府全体の意思決定、②省庁レベルの意思決定
に分けて考えることが重要である。①に関しては、政策の優先順位を決定し、限られた資源を最も必
要な分野に戦略的に配分するために活用(事前評価)し、②に関しては、政策分野に配分された資
源を、より効率的に効果的に使用し目標を達成するために活用(事後評価)する、といったアプロー
チが考えられる。
• これを実現するためには、資源配分の方法を、トップダウンで各省庁に配分した上で、省庁内部での
資源配分に関して各省庁の裁量範囲を拡大する、というように変えることが必要になる。あわせて、
資源が効率的に配分されているかどうかをチェックする仕組みが求められる。
247
参考文献
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・ 財務政策総合研究所(大塚洋) 「我が国の予算・財政システムの透明性」(2002)
・ 財務政策総合研究所(豊岡俊彦) 「政策評価を行財政構造改革の起爆剤とするために」(2002)
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・ 財務省(富田俊基) 「各国の政策評価と予算編成について」(2000)
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・ 財務政策総合研究所(田中秀明) 「マクロ財政運営と公会計情報-公会計の役割と限界-」(2005)
・ 左近靖博「業績予算導入に向けたわが国の公共経営の在り方(2)」(2005)
・ 左近靖博「米国連邦政府ブッシュ政権における『予算と業績の統合』に取組み」(2005)
・ 衆議院憲法調査会事務局「『財政(特に、会計検査制度と国会との関係(両院制を含む)を中心として)』
248
に関する基礎的資料」(2003)
・ 田中秀明「ニューパブリックマネジメントと予算改革」(2002.6-2005.11)
・ 田中秀明「業績予算と予算のミクロ改革」(2005.6-2005.12)
・ 日本銀行金融研究所(宮田慶一) 「政策評価と公会計改革のあり方」(2001)
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・ 福井健太郎・左近靖博「業績予算導入に向けたわが国の公共経営の在り方(1)」(2004)
・ 藤野雅史「アメリカ連邦政府におけるコスト情報とアカウンタビリティ-FASAB における経営原価計算の
取り組み-」(2001)
・ 安井明彦「ブッシュ政権の行政改革」(2004)
・ 渡瀬義男「米国会計検査院(GAO)の 80 年」(2005)
・ GAO “INSPECTORS GENERAL - Enhancing Federal Accountability”(2003.10)
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・ 東京都政策報道室「米英の地方行政における政策評価の新しい潮流」(1999)
・ 野村総合研究所「道路行政におけるセルフアセスメントに関する調査」(2004)
・ 農林水産政策情報センター「テキサス州の『戦略計画・業績予算システム』」(2001)
・ GAO“PERFORMANCE BUDGETING States’ Experiences Can Inform Federal Efforts”(2005.2)
・ Julia Melkers, Katherine G. Willoughby“PERFORMANCE BASED BUDGETING REQUIREMENTS IN
STATE GOVERNMENTS”(1998.6)
249
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・ 久保田次郎「ニュージーランドにおける予算会計制度改革-透明で開かれた財政運営を求めて」(2002)
・ 経済産業研究所(田中秀明)「財政ルール・目標と予算マネジメントの改革」(2004)
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ジメント手法に関する調査」(2004)
・ 財務省(木村陽子)「各国の政策評価と予算編成について」(2000)
・ 財務省(加藤秀樹)「公会計に関する海外調査報告書」(2003)
・ 財務政策総合研究所(田中秀明)「民間の経営理念や手法を導入した予算・財政のマネジメントの改
革」(2001)
・ 財務政策総合研究所(前島優子)「我が国の予算・財政システムの透明性」(2002)
・ 財務政策総合研究所(田中秀明)「マクロ財政運営と公会計情報-公会計の役割と限界-」(2005)
・ 田中秀明「ニューパブリックマネジメントと予算改革」(2002.6-2005.11)
・ 田中秀明「業績予算と予算のミクロ改革」(2005.6-2005.12)
・ 日本銀行金融研究所(宮田慶一)「政策評価と公会計改革のあり方」(2001)
・ 平井文三「ニュージーランドのマネジメント改革の新次元」(2003.4-2005.2)
・ 和田明子「ニュージーランド・モデルの New Public Management」(2000.5-2001.3)
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・ 経済産業研究所(田中秀明)「財政ルール・目標と予算マネジメントの改革」(2004)
・ 国土技術政策総合研究所「海外(オーストラリア・ニュージーランド)における社会資本整備・管理のマネ
ジメント手法に関する調査」(2004)
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・ 財務省(加藤秀樹)「公会計に関する海外調査報告書」(2003)
・ 財務政策総合研究所(岡橋準)「民間の経営理念や手法を導入した予算・財政のマネジメントの改革」
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・ 財務政策総合研究所(田中秀明)「我が国の予算・財政システムの透明性」(2002)
・ 財務政策総合研究所(田中秀明)「マクロ財政運営と公会計情報-公会計の役割と限界-」(2005)
・ 田中秀明「ニューパブリックマネジメントと予算改革」(2002.6-2005.11)
・ 田中秀明「財政規律と予算改革-オーストラリアをケース・スタディとして」(2004.9-12)
・ 田中秀明「業績予算と予算のミクロ改革」(2005.6-2005.12)
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・ 経済産業研究所(田中秀明)「財政ルール・目標と予算マネジメントの改革」(2004)
・ 財務省「各国の政策評価と予算編成について」(2000)
・ 財務省(貝塚啓明・土居丈朗)「公会計に関する海外調査報告書」(2003)
・ 財務政策総合研究所(大塚洋)「我が国の予算・財政システムの透明性」(2002)
・ 財務政策総合研究所(田中秀明)「マクロ財政運営と公会計情報-公会計の役割と限界-」(2005)
・ 農林水産政策情報センター「フランスにおける政策評価の全体像」(2002)
250
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