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光触媒による浄水
光触媒による浄水 研究者 飯島かや子 宗和美夕 柴原万歩 指導教諭 久保田宏先生 森田純子先生 1 研究の動機 光触媒について調べていくうちに、光を当てるだけで空気浄化,抗菌,曇り止め,浄水などのさまざまな事が できると知り、興味を持った。 その中で、特に浄水に興味を持ち、どのような試料水をどこまで綺麗にできるか調べてみたいと思った。 2 研究の仮説 照射時間が長いほど、酸化チタンの量は多いほど、攪拌はする方が、より浄水される。 3 光触媒について 光触媒とは光を照射するだけで触媒作用を示す物質のことである。人体に無害であることから主に酸化チタン が用いられる。触媒作用が起きるには、紫外線が当たっていて、酸化チタンと試料が接している必要がある。 VOC…揮発性有機化合物 (volatile organic compounds) 酸化チタン(TiO2)が、紫外線を受けることで、酸化チタン表面に活性酸素が発生し、有害物質を二酸化炭素や 水に酸化分解することによって無害化・脱臭・防汚性能を発揮する。 7‐1 酸化チタンの表面に電子があり、その電子が紫外線に当たることで酸化チタン表面から電子が飛び出す。電 子が抜けた穴は正孔と呼ばれプラスの電荷を帯びている。この正孔が水中や空気中にある水酸化物イオイン などから電子を奪う。電子を奪われた水酸化物イオンはヒドロキシラジカルと呼ばれる活性酸素になる。 伝導体に移動した電子はマイナスの電荷を帯びている。この電子が水中や空気中にある酸素と結合し、スー パーオキサイドアニオンと呼ばれる活性酸素になる。 ヒドロキシラジカルやスーパーオキサイドアニオンといった活性酸素は、大抵の有機物を酸化分解できる。 酸化チタンは半導体といって、普通は電気を通さないが、光を当てることで通すようになる。酸化チタンの場 合吸収する光の波長のピークは 380 nm 以下であるため、酸化チタンには波長が 10nm~400nm の紫外線が適 している。 4 COD(化学的酸素要求量)について COD とは試料水 1L に含まれる有機物を酸素で酸化したときに必要となる酸素の質量を mg で表した値であ る。COD の値が大きければ大きいほど水は有機物が多く含まれ、汚れているということになる。 有機物とは台所や風呂などから排される水に含まれる汚れの主成分である。 (1) COD の測定方法 ①試料水 100mL を 200mL 三角フラスコにとる。 ②20%硝酸銀 5mL(AgNO3 として 1g)を①の三角フラスコに加える。続いて 6mol/L 硫酸 5mL を加える。 ③空試験(ブランク)のために、蒸留水 100mL を同様に三角フラスコにとり、硫酸を加える。 ④5mmol/L の KMnO4 標準溶液を 10mL、ピペットで加える。 このとき溶液色は赤紫である。 ⑤沸騰水に入れ、30 分間加熱する。 ⑥沸騰水から出して、12.5mmol/L の Na2C2O4 標準溶液 10mL をピペットで加え、よく振り混ぜる。溶液は透明に なる。 ⑦5mmol/L の KMnO4 標準溶液で滴定する。 溶液が無色からわずかに淡紅色になった点を終点とする。 7‐2 (2)身近な水の COD プールの水 0.55 mg/L 生物室の水槽の水 18.88 mg/L 木曽川 1.40 mg/L 万郡沢 1.36 mg/L 沢 4.45 mg/L 万 郡 川 木 曽 昇降口前の池の水 水 槽 の 水 水 ル の プ ー 池 の 水 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 上のグラフは身近な水の COD の値がどの程度なのかを調べみた結果である。 水道法の水質基準では 10mg/L、快適な水の水質は 3mg/L 以下が望ましいと言われている。 5 実験方法 (1)試料水の作成 37%ホルムルデヒドを 0.1mL とり蒸留水で 1L になるように薄める。この 37%ホルムアルデヒド液を 10000 倍に薄めたものを試料水とした。 (2)酸化チタンコーティング液を塗ったタイルの作成 ①チタンテトライソプロポキシド[(CH3 ) 2CHO]4Ti を 14.6mL、アセチルアセトン CH3COCH2COCH3 を 10.3mL加えた溶液を 1.0mL とり、エタノールC2H5OH を 9.0mL 加える。 ②このコーティング液10mL が入った容器に酸化チタン 粉末を加え、超音波洗浄機で酸化チタン粉末を分 散する。 ③作成した酸化チタンコーティング液 1.0mL をタイルに 駒込ピペットで滴下し、均一に塗布する。コーティン グ液を塗布するときは、タイルの周囲にテープを貼り、タイルの側面から酸化チタンが吸収されな いようにする。 タイルに焼き付けた酸化チタンの面積は、48.3cm2である。 ④③のタイルを 200℃のホットプレートで熱してから、電気炉に入れ 600℃で 10 分加熱する。 7‐3 (3)紫外線照射について 東芝蛍光ランプ FL20SBLB を使用。この蛍 光ランプはピーク波長が 352nm なので活性 酸素を生成するのに適している。 右図のように試料とブラックライトの距離を 7.3cm にし、紫外線を当てる。 照射する際、周りに光が漏れないようする。 右の図は、紫外線の照射方法を示したもの である。 6 実験 (Ⅰ)実験 1:酸化チタンコーティング液の酸化チタンの量の違いによる COD の値の違い ① 1.0mLあたり酸化チタン粉末 0.01g、0.05g、0.1g が含まれるコーティング液を塗布したタイルを 試料水 200mL の入った容器に別々に入れる。 ② ブラックライトで 1 時間照射する。 ③ 1 時間照射後、それぞれ試料水をメスシリンダーで 100mL 測り COD の値を測定する。 (Ⅱ)実験 2:攪拌の有無による COD の値の違い ①1.0mLあたり酸化チタン粉末 0.05g が含まれるコーティング液を塗布したタイルを試料水 200mL に入れる。 ②スターラーで攪拌するもの、攪拌しないものそれぞれブラックライトで 1 時間照射という条件で実 験を行う。(図4) ③照射後、試料水をメスシリンダーで 100mL 測り COD の値を測定する。 (Ⅲ)実験 3:照射時間による COD の値の違い ①1.0mLあたり酸化チタン粉末 0.05g が含まれるコーティング液を塗布したタイルを試料水 200mL の入った容器に入れる。 ②試料水を攪拌しながらブラックライトの照射時間を 30 分、1 時間、2 時間と変化させる。 ②照射後、それぞれの試料水をメスシリンダーで 100mL 測り COD の値を測定する。 7‐4 (Ⅳ)実験 4:水の蒸発による体積の変化と、タイルを入れない場合の COD の違い ①試料水 200mL を、攪拌しながら 30 分、1 時間それぞれブラックライトを照射する。 ②照射後試料水の体積をメスシリンダーで測り最初の試料水の体積(200mL)と比べる。 ③その後、メスシリンダーで 100mL 測り、COD の値を測定する。 7 結果 (Ⅰ)実験 1 COD 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 実験前の試料水 16.64 mg/L 酸化チタン量 0.01g 17.12 mg/L 酸化チタン量 0.5g 16.30 mg/L 酸化チタン量 0.1g 17.28 mg/L 元のCOD 0.01g/mL 0.05g/mL 0.10g/mL 酸化チタン量 0.05g のタイルより酸化チタン量 0.1g のタイルのほうが COD の値が大きくなった。 (Ⅱ)実験 2 COD 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 元のCOD 攪拌あり 実験前の試料水 16.70mg/L 攪拌あり 16.81mg/L 攪拌なし 17.10mg/L 攪拌なし 攪拌したものは攪拌していないものより COD の値が低くなった。 (Ⅲ)実験 3 COD 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 実験前の試料水 14.0mg/L 30 分照射 13.1mg/L 1 時間照射 15.4mg/L 2 時間照射 16.6mg/L 元のCOD 0.01g/mL 0.05g/mL 0.10g/mL 照射した時間が長ければ長いほど COD の値が増えている。 7‐5 (Ⅳ)実験 4 COD 20 実験前の試料水 14.46 mg/L 30 分照射 16.00mg/L 1 時間照射 16.22 mg/L 15 10 5 0 実験前 30分照射 1時間照射 ※体積に変化はなかった。 最初のホルムアルデヒドと比べ照射時間が長いほど COD の値が増えている。 (Ⅴ)実験 3・実験 4 比較 20 15 タイルあり タイルなし 10 5 0 実験前 30分 1時間 実験 3 の酸化チタンをコーティングしたタイルを入れたほうが実験 4 のタイルを入れてない場合より COD の値が小さい。 8 考察 (Ⅰ)実験1 ・ 酸化チタン量 0.05g のタイルより酸化チタン量 0.1g のタイルのほうが値が大きかったため酸化 チタンの量が多いほど浄水されるわけではないことがわかる。 ・ 酸化チタンと接する部分で酸化されるため、酸化チタンをコーティングする面積を大きくすれば、 より浄水されるのではないか。 (Ⅱ)実験2 ・ 攪拌していないものより COD の値が低くなったことから、仮説通り攪拌したほうが、より浄水できる といえる。 (Ⅲ)実験3 ・ 照射した時間が長ければ長いほど COD の値が増えている。この理由として次のことが考えられ た。 ・ ①蒸発してホルムアルヒド溶液の濃度が濃くなってしまったのではないか。②プラスチック容器か ら有機物がでているのではないか。 ※なお、予備実験よりタイルからは水を汚くする有機物は出ていないことがわかっている。 7‐6 これらの考察から実験 4 を行った。 (Ⅳ)実験4 ・ 照射前と照射後の水の体積の変化がないことから、水の蒸発によってホルムアルデヒドの濃度が 濃くなったわけではないことがわかった。 ・ 最初のホルムアルデヒドと比べ 30 分、1 時間と COD が増えていることから、容器から有機物が出 ていることが考えられるがさらに確かめる必要がある。 (Ⅴ)実験 3・4 ・ 実験 4 に比べ、実験 3 の酸化チタンをコーティングしたタイルを入れたほうが COD の値が小さい ので、多尐浄水されたと考えられる。 (Ⅵ)考察のまとめ ・ 酸化チタン量を増やすとある一定の量でタイルの面積の変化がなくなるので、酸化チタン量は多 ければ多いほど浄水されるわけではない。 ・ 攪拌をすれば全体が酸化チタンに触れることができ、攪拌をしないものより浄水できる。 ・ 照射時間を増やすほど、COD の値が増加する結果となったが、現在のところプラスチック容器か ら有機物が出ているため、そのような結果になったと考えている。 9 今後の課題 ・ 容器をプラスチック製のものではなくガラス製のものなどに変えれば照射時間を増やすほど浄水 される可能性がある。ガラス製の容器で実験してみたい。 ・ 酸化チタンは接する面でしか活性酸素を発生させることができないため、コーティングする面積 を大きくすることでより浄水できる可能性がある。面積を増やしたときにどうなるか、確かめてみた い。 10 感想 実験を始めた最初のころはどのような方法で浄水できるのかということを考え、条件や方法を変えよ り水を綺麗にしようとしてきた。しかしどの実験もほとんど COD の値は減らず逆に増えてしまっていた。 そこでタイルから汚れが出ている可能性、学校にある酸化チタンが本当に浄水する力があるのかとい う疑問や、容器から COD に影響を与えるものが出ているのではないかという問題が出てきた。 そのような問題を 1 つ 1 つ調べていき、最終的には容器から有機物が出ているらしいとわかった。 今まで使っていた容器ではなく違うもので実験してみたい。(飯島) 最初は川や池の水を使っていたが、それらは安定していなかった為に途中でホルムアルデヒドを 使った試料水を使う事にした。これにより、それまでの実験の結果は発表に使えなくなってしまい、後 半になってから非常に焦りを感じた。 川や池の水でも浄水はできていなかったが、試料水でも十分に浄水できず、何を改善したら浄水 できるのか考えるのは難しかった。後々に思いついたのだが、陶器用の粘土に酸化チタンを混ぜて 焼いたものを用いて実験してみれば良かったのかもしれない。もし来年度に同じ内容の研究をする後 輩がいれば、是非挑戦してもらいたい。(柴原) 7‐7 インターネットなどの光触媒効果を見ると、とても効果があると感じ浄水も目でわかるくらいきれいに なるのでは?と思っていたけれど、条件を変えて色々やっても、あまりきれいにならなくて残念だった。 光触媒を扱っている会社では、どんなふうに光触媒を使っているのか気になった。この研究を通して 実験には、時間もかかるし、思うような結果がでないこともあり、難しいと感じた。光触媒のことは、今ま であまり知らなかったけれど、今回この実験をしてとても優れているものだと分かりました。これから、も っとたくさん使われていくといいと思います!(宗和) 11 参考 URL・参考文献 東海大学付属第三高等学校 科学部 「研究結果報告書」 2005.1.28 垰田博史「トコトンやさしい光触媒の本」 日刊工業新聞社 平成 21 年度課題研究報告集 「光触媒への挑戦」 佐藤しんり 「光触媒とはなにか」 講談社 2004 株式会社 朝日工房 http://www.asahikoubou.co.jp/hikariecort/ 株式会社 アドバンスサービス http://www.advance1997.com/ 株式会社 光触媒研究所 http://www.photocatalyst.co.jp/index.htm 株式会社 フッコー http://www.fukko-japan.com/tiotop/tiotop.htm サトシンの光触媒のページ http://www.d7.dion.ne.jp/~shinri/ 兵庫県立大学 環境分析実験 化学的酸素要求量 http://www.shse.u-hyogo.ac.jp/kumagai/eac/4_2.htm 7‐8