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都市と郊外における女子大生の ファッションに対する意識の

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都市と郊外における女子大生の ファッションに対する意識の
都市と郊外における女子大生の
ファッションに対する意識の相違
今井礼華
2011 年 1 月 24 日
1
2
卒業研究要旨
卒論題目:都市と郊外における女子大生のファッションに対する意識の相違
学籍番号:200711298
主専攻:社会経済システム
氏名:今井礼華 指導教員:石川竜一郎
1. 目的 本研究の目的は、現代の女子大生がファッションの流行をどのように捉
え購買行動を行っているのかを明らかにすることである。今まで感覚に
たよっていた部分が大きいファッションについて科学的に分析し考察す
る。本研究では都内の女子大生と郊外の女子大生にアンケート調査を
実施し、ファッションを語る上で地域差はどれほど影響を及ぼすのか検
証する。
2. 特色
ファッションは社会学観点から考察されることが多いため数値化されて
いる事象が大変少ない。本研究ではアンケート調査を基に分析を行い
女子大生の現状を数値化した。分析方法は数量化 ii 類の手法を用い解
析を行った。
3. 結論
分析の結果、流行の敏感さに居住地域は要因として影響を与えている
ことがわかった。都内には多くの商業施設があり流行に敏感な女子大生
はファションの情報を主に店舗から得ているのに対し、郊外の女子大生
はネットを使う割合が多くファッションの情報をネットから得ている。
商品は店舗で購入するのが主流である。そのため流行の情報は得られ
るものの購入にはなかなか結びついてないという実態がわかった。流行
しているという情報は行き届いているものの購入する店舗数が少ない
ために採用していないということがわかった。
謝辞
本論文の執筆にあたって、1 年間に渡り熱心に指導してくださった指導教
員の石川竜一郎先生に感謝の気持ちを申し上げたいと思います。先生は研究
内容について常に方向性を導いてくださいました。
そして、研究を進めるにあたり、貴重な意見をくださった同じ研究室の皆
さんにも感謝いたします。
最後に、私の大学生活を心身ともに支えてくれた両親に感謝いたします。
2010 年 1 月
4
つくばにて
目次
1
序論
1.1 本研究の目的 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
6
6
本研究の背景 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
流行の普及プロセス . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
6
6
7
本研究の構成 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
7
1.2
1.2.1
1.2.2
1.3
2
ファッションにおける流行の概念 . . . . . . . . . . . .
流行に敏感である女子大生の特性とそれに関する要因分析(先行研
究)
3
2.1
調査方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2.2
2.3
分析・結果
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10
考察 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11
都内と郊外の女子大生の流行に対する意識の相違
3.1
3.2
3.3
3.4
4
9
9
12
問題意識 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12
調査方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12
分析・結果
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13
結論 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 16
今後の研究課題
17
参考文献
18
付録 A
19
5
序論
1
1.1
本研究の目的
本研究の目的は、現代の女子大生がファッションの流行をどのように捉え
ているのかを明らかにすることである。今まで社会学観点から議論されるこ
とが多く、感覚にたよっていた部分が大きいファッションについて科学的に
分析し考察する。本研究では都内の女子大生と郊外の女子大生にアンケート
調査を実施し、ファッションを語る上で地域差はどれほど影響を及ぼすのか
検証する。
1.2
本研究の背景
ファッションには流行があり、新しいものが採用されると今まで流行って
いた物は姿を消していく。流行は日々移り変わり目まぐるしく変化を遂げて
いる。そして一見流行は都心から生まれているように見える。なぜなら流行
は都心部では広まっているものの、都心から離れ郊外に行けば行くほどあま
り浸透していないことが良くあるからだ。都市部と郊外に流行の浸透の仕方
に違いがあるのはなぜであろうか。郊外に住んでいる人は、流行していると
いう情報を持っていながら採用しないのか、はたまた流行しているという情
報が届いていないのかそこを検証したい。検証に入る前にまずファッション
の流行がどのように生まれているのかを抑えておきたいと思う。
1.2.1
ファッションにおける流行の概念
ファッションの流行はインターカラー(国際流行色委員会)1 が発表する流
行色によって始まる。インターカラーとは世界 14 カ国からなる委員会で、国
際規模で流行色を選定する唯一の機関である。インターカラーでは加盟各国
が今シーズンの提案色を持ち寄り、6 月に春夏のカラー、12月に秋冬カラー
を選定している。これはおよそ商品実売期の 2 年前に発表され流行色の方向
付けがなされる。このインターカラーで発表された色を基にファッションの
流行が作られていく。次にインターカラーの選定色を受けてトレンド情報会
社2 がファッショントレンドの方向付けを行う。トレンド情報会社はスタイリ
ング、テクスチャー、キーワードなどのトレンド情報をオーディオビジュアル
とブックで表現し情報を発信している。その後、トレンド情報会社から発信
1 インターカラーとは世界 14 カ国(ブラジル、中国、イギリス、フィンランド、フランス、
ドイツ、ハンガリー、イタリア、日本、韓国、ポルトガル、スイス、タイ、トルコ)からなる国
際間で流行色を選定する唯一の機関。1963 年の発足した委員会。日本は日本ファッション教会
流行色情報センター(JAFCA)が代表として委員会に参加している。 2 トレンド情報会社とはファッションのトレンドフォーキャスティングを行っている会社。フ
ランス・パリにオフィスを構えているところが多く「トレンド・ユニオン」、
「プロモスティル」、
「ネリーロディ」、「カルラン・インターナショナル」などのオフィスが有名。
6
されるトレンド情報を参考に、ヤーン展(糸、ニット)やテキスタイル展 (服
地) などの素材展示会が世界各地で開催され、実売期の訳 1 年前に素材の方向
付けが行われる。この素材展示会によって今シーズンのトレンドとなる素材
が発表される訳である。そして素材の発表を受けてから、各有名デザイナー
が商品を製作しパリコレクションやニューヨークコレクションなどのファッ
ションショーが開催される。このファッションショーが開催されるのが実売
期の半年前である。その後これらのコレクション発表を受けて、[VOGUE」
「ELLE」などの上流ファッション雑誌が一般の消費者に向けてファッション
トレンド情報が発信する。また、同時期に国内の各アパレル企業が商品製作
を行い、展示会が開催される。展示会にはバイヤーやスタイリスト、著名人
が招待され新作商品の買い付けを行う。その後「CanCam」や「non-no」と
いった国内の一般ファッション誌からもトレンド情報が発信されるようにな
る。以上 2 年の歳月をかけてようやく小売店での商品展開を迎え、一般消費
者の手に渡っていく。
1.2.2
流行の普及プロセス
Kats and Lazarsfeld(1955) によって two-step frow of communicatuin が提
唱された。情報やメッセージが第一段階としてマスメディアからオピニオン
リーダーに流れ、第二段階としてオピニオンリーダーから少集団の他のメン
バー(フォロワー)に流れていくという考え方である。オピニオンリーダーと
はある集団の形成に方向付けをする人でフォロワーとはオピニオンリーダー
に追随する人をいう。オピニオンリーダーはある特定の分野において豊富な
知識を持ち消費者の購買に影響を与える意見を述べる人である。オピニオン
リーダーが人よりも早く新製品の情報を得て、フォロワーに伝えていくという
概念である。また、Rogers(1962) によってオピニオンリーダーの位置づけが
なされた。Rogers は新製品の普及について、イノベータと呼ばれる革新者に
始まりやがて一般の消費者へと広まっていく過程を示した。この際イノベー
タと初期採用者の間にはコミュニティ特性や能力において大きな違いが存在
している。この両者の違いを埋め合わせる役割を果たすのがオピニオンリー
ダーである。オピニオンリーダーはイノベーターの知見を理解しかつ初期採
用者に対して説明する能力を有している。初期採用者が採用することで広範
な普及が促進される。そのため、マーケティング観点からオピニオンリーダー
性が強い初期採用者に的を絞って新製品戦略を練ることが良く見られる。
1.3
本研究の構成
先行研究として辻幸恵 (2001) の研究である「流行に敏感である女子大生の
特性とそれに関する要因分析」を基に研究を進める。先行研究ではファッショ
7
ンの流行を若者の代表として女子大生を選択し近畿圏を中心として女子大生
にアンケート調査を行っている。流行に敏感である女子大生は流行をどのよ
うに捉えまたそれにどのように左右されながら購買行動をとるのかを数量化
ii 類を用いて解明している。本研究は東京とつくばの女子大生にアンケート
調査を実施し流行を語る上で地域差はどれほど影響を与えているのか検証す
る。調査対象である女子大生は、都心の大学に在籍する者と、筑波大学に在
籍する者である。アンケートのデータ解析は先行研究と同様に数量化 ii 類を
用いて分析を行った。数量化 ii 類を用いた理由は質的なデータを数値化する
ためには数量化という統計手法が最適であると判断したためである。第 2 章
では、先行研究の分析結果を纏める。第 3 章では、先行研究をもとに現代に
生きる女子大生にアンケート調査を実施した結果を纏める。第 4 章は本研究
の結論を明記した上で今後の研究課題を纏める。
8
流行に敏感である女子大生の特性とそれに関する
2
要因分析(先行研究)
辻幸恵(2001)「流行に敏感である女子大生の特性とそれに関する要因分
析」を先行研究として本研究を進める。この研究は、流行という大きな問題
の心理を探る糸口となることを目標として分析を行っている。関西の女子大
生にアンケートを実施し、その結果を数量化 ii 類を用いて分析している。研
究の目的は女子大生の中で自分自身が流行に敏感であると思っているものは、
流行をどのように捉えまたそれにどのように左右されながら購買行動をとる
のかを解明することである。流行に敏感だと思うか思わないかに大きな影響
を与えている因子を割り出し、流行を考える上で一番重要な要素を導き出す。
流行に敏感であるという事に対するいくつかの素朴な疑問の中から特に、流
行に敏感であると自分自身が思っている者は何に影響されているのかという
ことに着目する。
2.1
調査方法
関西圏に在住の女子大生 1000 人にアンケート調査を実施している。調査対
象に、女子大生を選択した理由はアルバイトが自由にできて自分自身で高価
な商品でも購入できること女子就労者と比較して自由な時間が多いと推察で
きること、友人とのコミュニケーションの時間が多いことなどが挙げられて
いる。調査期間は 1999 年 8 月∼9 月下旬。関西圏に在住の女子大学生に質問
用紙を郵送して調査を行っている。有効回答数は 672 票であった。調査票に
おいては最初に「流行に敏感か否か」を尋ね、流行という要因が他の購買要
因と比較して重要性があるか否かの質問項目を挙げている。以下質問項目概
要を示す。
1. 流行に敏感か否か
2. 年齢
3. 居住地域
4. 通学場所
5. 世帯年収
6. アルバイトの有無
7. 小遣いの金額
8. 通学時間
9. 主に買い物に行く場所
9
10. 通信販売
11. 特定のボーイフレンドがいるか否か
12. 購買要因(価格、デザイン、流行等)
2.2
分析・結果
「流行に敏感だと思いますか」という質問に「はい」と回答した人は 63 %、
「いいえ」と回答した人は 37 %であった。流行に関心がないと回答した者は
全体の 4.6 %であり、流行に敏感ではない人も流行には関心があると考えられ
る。質問項目「流行に敏感だと思うか思わないか」を決定する要因を明らか
にするために数量化 ii 類を用いて分析を行っている。影響を与える要因とし
て、世帯年収、アルバイト、居住地域、値段、ブランド、素材、色・デザイン、
着心地、扱いやすさ、似合う、着ていく場所、友達よりも敏感という12の
要因を用いて分析を行っている。数量化 ii 類は「質的な形で与えられた外的
基準を質的な要因に基づいて予測あるいは判別する方法である」と田中、脇
本3 が説明している。分析の結果、判別的中率は80.8%であった。数量化
ii 類においては判別的中率がその分析精度を示す。すなわち100%に近い
ほど精度が高い。一般的には75%以上の精度が望ましいとされている。判
別的中率が80.8%であるため分析自体の精度は高く、数量化 ii 類を用い
た分析結果を持って流行に敏感であるか、あるいは敏感ではないかを判断で
表 1: 流行に敏感だと思うことに影響する要因の順位
3 田中豊、脇本和昌
順位
要因
レンジ
1
ブランド
0.68
2
3
4
値段
0.64
0.50
0.39
5
6
友人よりも敏感
7
8
9
着ていく場所
10
11
素材
居住地域
0.04
0.02
12
世帯年収
0.01
アルバイト
色・デザイン
似合う
着心地
扱いやすさ
0.35
0.22
0.18
0.12
0.10
(1990)「多変量統計解析法」現代数学社 10
きる。数量化 ii 類の結果を表 1 に示した。レンジとは、各要因のカテゴリー
スコアの最大と最小との距離であり、目的変数に対して各要因がどの程度影
響力があるのかを知るための数値である。レンジの数値が大きいほどその目
的変数に大きな影響を与えている。一方、このレンジの数値が小さい要因は
目的変数に影響を与えていないことになる。ここでの目的変数は流行に敏感
であると思うか、思わないかである。表 1 によるとレンジの数値が大きいも
のは「ブランド」「値段」「アルバイト」である。またレンジが小さい要因と
して「世帯年収」
「居住地域」が挙げられる。つまり、世帯年収や居住地域は
流行に敏感であると思うか思わないかということに影響を与えない要因であ
る。以上より数量化 ii 類の分析結果から得られたレンジを見ると流行に敏感
だと思うものはブランドを重要視する者、値段を重要視する者、そしてアル
バイトをしている者であるということになった。
2.3
考察
女子大生にアンケートを実施し、その結果を数量化 ii 類を用いて分析した
結果、流行に敏感だと思うか思わないかに影響を与えている要因は「ブラン
ド」「値段」「アルバイト」であることがわかった。ブランドが流行に敏感で
あるかどうかに大きな影響を与えるということはブランド自体が流行である
と考えられる。ブランドの全てが流行であるとは言えないが一般的に流行と
ブランドが同じ認知のレベルで語られることもある。よってブランドを重要
視している女子大生は流行にも敏感になるのであると考えられる。次に「値
段」と「アルバイト」を重要視するということは財布の中身を指している。
自己資金がどの程度あるのかということを考えるのである。流行に敏感であ
るがゆえにそれが本当に価値があるか否かを判断する力があると推察できる。
つまり洋服を購入する際、自分自身の尺度を持っていると言える。また、
「世
帯年収」
「住居地域」は影響を与えないこともわかった。世帯年収は女子大生
の流行に敏感だと思うか思わないかということに影響を与えていないという
ことになった。世帯年収は文字通りの世帯の年収でありそれが低くても女子
大生の財布とは別なのである。アルバイトをして得たお金で購買を行うため
世帯年収は関係がないのである。居住地域については近畿圏を中心としてい
たため影響を与える要因として挙げられなかった可能性がある。これは今後
の課題として挙げられている。
そこで今回の研究ではこの先行研究を基に東京都内に通う学生と、郊外の
大学に通う学生の両方にアンケート調査を実施する。これにより流行に敏感
だと思うか思わないかに「居住地域」が影響を与えるのか分析する。ファッ
ションを語る上で地域差はどれほど影響を及ぼすのか検証したい。
11
都内と郊外の女子大生の流行に対する意識の相違
3
3.1
問題意識
先行研究(辻幸恵 2001)において、アンケート調査を近畿圏を中心に行っ
たため居住地域が「流行に敏感であるか否か」に影響を与える要因として挙
げられなかった可能性がある。そこで本研究では都内の女子大生と郊外の女
子大生にアンケート調査を実施し、ファッションを語る上で地域差はどれほ
ど影響を及ぼすのか検証する。ファッションには流行があり、流行は日々移
り変わり変化を遂げている。しかしながら、流行は都心部では広まっている
ものの、都心から離れ郊外に行けば行くほどあまり浸透していないことが良
くある。流行しているという情報を持っていながら採用しないのか、はたま
た流行しているという情報が届いていないのかそこを検証したい。
3.2
調査方法
都内の大学に通う女子大生及びつくばの大学に通う女子大生 100 人にアン
ケート調査を実施した。調査対象を女子大生とした理由は、女子就労者と比
較してオフィス用ではなく自由に洋服を選択することができることや、友人
とのコミュニケーションの時間が多いためである。また、現代を生きる女子大
生のファッションに対する意識の現状を明らかにする目的も含まれている。南
谷えり子、井伊あかり4 によれば外国と比較すると日本は「若者がファッショ
ンを牽引している」と記されている。そのため、日本のファッションを考え
る上で若者に焦点を当てて研究することは妥当であると考える。調査時期は
2010 年 12 月∼2011 年1月。都内の大学に通う女子大生 50 人とつくばの大
学に通う女子大生 50 人に質問用紙を配布し調査を行った。都内の大学に通う
女子大学生には質問用紙を郵送して記入を依頼し、また筑波大学生について
は直接配布を行い質問用紙に記入を依頼した。有効回答数は都内の女子大生
50 筑波大生 50、合わせて 100 である。調査票においては「流行に敏感か否
か」を尋ね、洋服を購買するにあたりどのようなことを重要視しているのか
を質問した。以下質問項目概要を示す。
1. 流行に敏感か否か
2. ファッションに興味があるか否か
3. 店舗での購入頻度
4. 通販での購入頻度
5. 洋服にかける金額
4 南谷えり子、井伊あかり
(2004)「ファッション都市論」平凡社新書 12
6. 友達の数
7. ネットでファッション情報を得ているか否か
8. 流行の採用速度
9. 店舗数への不満
10. 主に買い物に行く場所
11. 雑誌をよく読むか否か
以上の質問の回答を基に分析を行っていく。また、オピニオンリーダー尺度
を調べる項目をアンケートの最後に入れ、オピニオンリーダーを調べた。オ
ピニオンリーダー尺度は Childers(1986) によって提案されたものを用いた。
具体的なアンケート内容については付録に掲載した。
3.3
分析・結果
都内の女子大生 50 人と筑波大学に通う女子大生 50 人にそれぞれアンケー
ト調査を実施し、都内と郊外におけるファッションに対する認識の相違を調
査した結果、流行に敏感であると答えた者は東京では 56 %でつくばでは 36
%であった。流行に敏感であると思うか思わないかに影響を与えている要因
を明らかにするため、数量化 ii 類を用いて解析を行い分類を行った。数量化 ii
類を用いた理由は質的なデータを数値化するためには数量化 ii 類という統計
手法が最適であると判断したためである。アンケートの質問項目の中から 10
個の質問項目5 の回答を抽出しその各質問の回答から、流行に敏感か否か6 の
回答である2つのグループ (流行に敏感であるグループと流行に敏感ではない
グループ) を予測する分析を行った。ここでの説明変数は 10 個の各質問項目
の回答で、目的変数は流行に敏感か否かの回答である。説明変数である各質
問項目の回答(xn )を 0 と 1 に変換し、目的変数 (y) は流行に敏感であるグ
ループを 1 に変換、流行に敏感ではないグループを −(n1 /n2 ) に変換して重
回帰分析として解いた。n1 は流行に敏感であると回答した者の人数で、n2 は
流行に敏感ではないと回答した者の人数である。重回帰分析の結果の予測値
ŷ について、ŷ > 0 ならば観測対象は流行に敏感なグループに所属し、ŷ < 0
ならば観測対象は流行に敏感でないグループに所属するとして分類を行った。
流行に敏感であると思う者、思わない者を分類すると東京の女子大生、つく
ばの女子大生の結果はそれぞれ図 1 のようなばらつきになった。 縦軸に人
数、横軸にスコアを取りヒストグラム表示をした。スコアは予測値の値であ
る。流行に敏感であると思うものが右側+方向に、流行に敏感でないと思う
5 本研究では付録に示したアンケートの質問項目から 1、2、5、6、7、8、11、13、14、20 を
使用した。
6 アンケートの質問項目 12 を使用している。
13
図 1: 流行に敏感である者ない者のばらつき
者は左側−方向に分布している。東京とつくばを比較すると流行に敏感であ
る人の数の割合が東京の方が多い。尚、判別的中率は 88 %であり分析自体の
精度は高く、数量化 ii 類を用いた分析結果を持って流行に敏感であるか、あ
るいは敏感ではないかを判断できる。次に、レンジの計算をした結果は表 2
表 3 のようになった。レンジとは、数量化 ii 類によって得られた各説明変数
のカテゴリースコアの最大と最小との距離であり、目的変数に対して各説明
変数がどの程度影響力があるのかを知るための数値である。レンジの数値が
大きいほどその目的変数に大きな影響を与えている。一方、このレンジの数
値が小さい要因は目的変数に影響を与えていないことになる。東京とつくば
の結果を比較すると影響を与える要因の順位に違いが見られる。ここでの目
的変数は流行に敏感であると思うか、思わないかである。表 2 表 3 によると
東京においてレンジの数値が大きいものは「店舗に行く頻度」「友達よりも
流行に敏感」である。一方つくばにおいて数値の大きいものは「通販を利用
する頻度」
「友達よりも流行に敏感」であった。つまり、東京においては店舗
によく行くのか行かないのか、つくばにおいては通販をよく利用しているの
かいないのかの違いが流行に敏感である人と、敏感ではない人を二分してい
るということがわかった。店舗数には都内とつくばでは違いが見られる。し
かしながら通信販売などのネット環境は都市郊外関係なく情報を得ることが
14
表 2: 流行に敏感だと思うことに影響する要因の順位 (東京)
順位
要因
レンジ
1
2
3
店舗へ行く頻度
4
5
友達と買い物に行く
6
7
8
流行を取り入れる速さ
9
10
店舗数
友達よりも流行に敏感
ファッションへの興味
ネットで目星をつける
通販を利用する頻度
洋服にかける代金
0.96
0.91
0.63
0.62
0.46
0.42
0.39
0.19
0.15
0.05
友達の数
表 3: 流行に敏感だと思うことに影響する要因の順位 (つくば)
順位
要因
レンジ
1
通販を利用する頻度
0.57
2
3
友達よりも流行に敏感
0.50
0.45
4
5
6
ファッションへの興味
7
8
店舗数
9
10
洋服にかける代金
店舗へ行く頻度
ネットで目星をつける
友達の数
友達と買い物に行く
流行を取り入れる速さ
0.37
0.31
0.27
0.22
0.20
0.19
0.08
できる。商品を主にどこで購入しているのかを表わす数値を表 4 表 5 に示し
た。これは店舗と通信販売での購入頻度を質問した際に得られた回答である。
表 4 表 5 より、明らかに通信販売よりも店舗で商品は購入されている。また、
東京とつくばの女子大生の店舗へ行く頻度の割合は東京の女子大生の方が多
い。やはり店舗数が都心の方が多いため実際に店舗へ行きやすいのであると
考えられる。これと関連して、つくばの女子大生は都内の女子大生に比べ通
信販売の利用が多く見られる。店舗へ行く回数が少ない分、通信販売などの
サイトからファッションの流行情報を得ていると考えられる。最後に、流行
に敏感であると答えた者の内 72 %がオピニオンリーダー尺度において高い数
15
表 4: 店舗と通信販売の購入頻度の割合(東京)
東京
店舗(%)
通販(%)
週に 1∼3 回
10
0
月に 1∼3 回
72
0
年に数回
18
32
数年に 1 回
0
14
利用しない
0
54
表 5: 店舗と通信販売の購入頻度の割合(つくば)
東京
店舗(%)
通販(%)
週に 1∼3 回
2
0
月に 1∼3 回
58
0
年に数回
40
44
数年に 1 回
0
20
利用しない
0
36
値を示した。よって流行に敏感であるものは流行しているファッションの情
報を友人にオピニオンリーダーとして口コミとして広げている。したがって
流行に敏感であると思うものに焦点を当てて研究することは大変有意である
と考えられる。
3.4
結論
都内と郊外において女子大生のファッションの流行に対する意識には相違
が見られることがわかった。都内には多くの商業施設があり流行に敏感な女
子大生はファションの情報を主に店舗から得ているのに対し、郊外の女子大
生はネットを使う割合が多くネットからファッションの情報を得ていること
がわかった。また商品は店舗で購買されることが多く通信販売を通して購入
する頻度は少ない。郊外の女子大生は、通信販売などのサイトを閲覧するこ
とによって新製品の情報や流行を得ることが可能である。しかしながら、店
舗で商品を買うという形態はいまだ根強くネットで商品を購入するまでには
至っていないという実態がわかった。つまり、郊外の女子大生にもファッショ
ンの流行情報は行き届いているものの購入にまでなかなか結びつかないので
ある。流行が都市と郊外で浸透度の違いが見られるのは、流行しているとい
う情報は郊外まで行き届いているものの購入する店舗数が少ないために採用
していないためであることがわかった。分析の結果、流行の敏感さに居住地
16
域は要因として影響を与えていることがわかった。
4
今後の研究課題
流行が都市と郊外で浸透度の違いが見られるのは、流行しているという情
報は行き届いているものの購入する店舗数が少ないために採用していないた
めであることがわかった。しかしながら店舗数が少ないだけが本当に流行を
採用しない原因なのであろうか。流行という情報を持っていながら実際にそ
の流行を採用しない者に対しての心理的影響について調査できれば都市と郊
外で発生している流行の遅延についてさらに明確に実証できると考える。こ
れは今後の研究課題である。また今回はアンケート数が 100 人と少ないため、
人数を増やして再調査する必要もある。さらに郊外の学生については今回の
研究ではつくばの大学に通う女子大生のみを対象としたため他の郊外地域も
しくは郊外の大学を挙げて分析を再度行う必要がある。
17
参考文献
[1] 井出幸恵 (1996)「情報の流れとしてのファッション理論」ファッション
環境, vol.5(3): 11–19
[2] 内田治(1996)『すぐわかるEXCELによる多変量解析』東京図書.
[3] 河合玲(1992)『グローバル・ファッションと商品企画』ビジネス社.
[4] 田中豊、脇本和昌 (1990)『多変量統計解析法』現代数学社.
[5] 塚田朋子(2005)
『ファッション・ブランドの起源−ポワレとシャネルと
マーケティング−』雄山閣.
[6] 辻幸恵 (2001)『流行と日本人』白桃書房.
[7] 南谷えり子、井伊あかり (2004) 『ファッション都市論』平凡社新書.
[8] Kats, E., and P. F. Lazarsfeld (1955) Personal Influence: The Part
Played by People in the Flow of Mass Communications, The free press.
竹内郁郎訳 『パーソナル・インフルエンス』培風館、1965 年.
[9] Monneyron, F., (2006) La Sociologie de la mode, Presses Universitaires
de France. 北浦春香訳 『ファッションの社会学』文庫クセジュ、2009 年.
[10] Gladwell, M., (2000) The Tipping Point: How Little Things Can Make
a Big Difference, Little, Brown and Company. 高橋啓訳 (2007) 『急に
売れ始めるにはワケがある』ソフトバンク文庫.
[11] Childer, T. L. (1986) “Assessment of the Psychometric Properties of
an Opinion Leadership Scale,” Journal of Marketing Research, XXIII:
184–188
[12] Gupta, K., David W. Stewart (1993) “Customer Satisfaction and customer behavior,” Marketing Letters, vol7(3): 249–263.
[13] Rogers, E. M. (1962) Diffusion of innovations, The free press.
18
付録 A
ファッションに関するアンケート
筑波大学理工学群社会工学類 4 年
社会経済システム主専攻
200711298 今井礼華
[email protected]
私は現在、卒業論文でファッションの流行に関する研究を行っています。そ
の一環で、女子大生のファッションの流行の意識について調査しています。そ
こで皆さんにファッションに関する以下の事柄についてのご解答をお願いし
ます。なお、記入して頂いた情報は、本研究のみに使用し責任を持って管理
いたします。
1. ファッションに興味がありますか?
a. 大いにある b. ある c. どちらでもない
d. ない
e. 全くない
2. 洋服をどこで買うことが多いですか?
a. 店舗 b. 通販 c. その他( )
3. どのくらいの頻度で店舗において洋服を買いますか?
a. 週に4∼7回 b. 週に1∼3回 c. 月に1∼3回 d. 年に数回
e. 数年に1回 f. 買わない
4. 洋服を買いによく行く店舗はどこですか?
(例:ルミネ新宿店、109、
丸井北千住店)なおデパート・ショッピングセンター等ではない場合、
地域・地名等はどこですか?(例:表参道、原宿駅周辺)
( ) 複数可
5. どのくらいの頻度で通販を利用して洋服を買いますか?
a. 週に4∼7回 b. 週に1∼3回 c. 月に1∼3回
e. 数年に1回 f. 利用したことは無い
d. 年に数回
6. 1ヶ月あたりの洋服代は平均いくらですか?
約
円
7. よく遊ぶ友達の数は何人ですか?
約
人
8. 友達と一緒に洋服を買いに行きますか?
a. よく行く
b. たまに行く
c. ほとんど行かない
19
d. 全く行かない
9. 洋服を購入する際、次のどちらを意識することが多いですか?
a. 自分の好みではなくても流行を採り入れる
b. 流行は気にせず自分の好みで選ぶ
10. 店員に勧められて洋服を購入したことがありますか?
a. よくある b. たまにある c. ほとんどない d. 全くない
11. 洋服を買うときにネットなどで目星をつけてから買うことがあります
か?
a. ある
b. 時々ある
c. ほとんどない
d. 全くない
12. あなたはファッションの流行に敏感だと思いますか?
a. とても敏感 b. やや敏感 c. あまり敏感ではない d. 敏感ではない
13. 自分の周りの友達よりもファッションの流行に敏感であると思いますか?
a. とても敏感
b. やや敏感
c. あまり敏感ではない
d. 敏感ではない
14. あなたはすぐにファッションの流行を採り入れる方ですか?
a. すぐに採り入れる b. ある程度広まってから採り入れる
c. 完全に流行したら採り入れる d. 流行しても取り入れない
15. ファッションの流行をどこから得ていますか?
a. ファッション誌 b. テレビ
c. ファッションショー(東京ガールズコレクションなど)
d. ブログや SNS(mixi や twitter など) e. 店舗
f. 流行は気にしない
g. その他( )
16. よくファッション誌を読む人は何を読んでいますか?(例:CanCam、
non-no)
ファッション誌名( )複数可
17. ファッション誌の内容をもっと充実させて欲しいですか?
a. はい
b. いいえ
はいと答えた方に質問です。
具体的にどういう内容を充実させてほしいですか?
( )
18. あなたは買った洋服をブログや SNS にアップしていますか?
a. はい
b. いいえ
19. ネットによるファッション情報をもっと充実させて欲しいですか?
a. はい
b. いいえ
はいと答えた方に質問です。
具体的にどういう内容を充実させてほしいですか?
( )
20
20. あなたの大学周辺の洋服店の店舗数を増やしてえ欲しいですか?
a. はい
b. いいえ
c. どちらでもない
21. あなたがよく買い物に行く地域の洋服店の店舗数を増やして欲しいで
すか?
a. はい
b. いいえ
c. どちらでもない
22. この冬流行しているファッションは何だと思いますか?
( ) 複数可
ここからの質問は1∼5の中で自分に一番近い番号に丸をつけ
てください。
1. 一般的にいってあなたは友人とファッションについて話すことがありま
すか
1
2
3
4
よく話す
5
全く話さない
2. あなたが友人とファッションについて話すときどのような立場ですか
1
2
3
4
5
常に情報を与える
ほとんど情報を与えない
3. この 6 カ月間でファッションについて何人ぐらいと話しましたか?
1
2
3
4
5
大勢の人と話した
誰とも話していない
4. 友人と比べてあなたは、ファッションについて、どれくらい質問されま
すか?
1
2
3
4
非常によく質問される
5
まったく質問されない
5. ファッションについて話すときのあなたの立場は?
1
2
3
4
5
話し手になる
聞き手になる
6. ファッションについてあなたは友人からアドバイスを
1
2
3
4
5
求められることが多い
求められることはない
アンケートは以上です。ご協力ありがとうございました。
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